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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】液体自動充填機の故障部品特定方法
(51)【国際特許分類】
   B67C 3/00 20060101AFI20240304BHJP
【FI】
B67C3/00 K
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019167201
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021041986
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】中村 勇一
(72)【発明者】
【氏名】美馬 恒治
(72)【発明者】
【氏名】三輪 和矢
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 俊也
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-023879(JP,A)
【文献】特開2016-132457(JP,A)
【文献】特開平09-058793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品として流量計及び電磁弁を有する液体自動充填機の故障部品特定方法であって、
入味不良が発生した充填バルブユニットについて蓄積された平均流量の測定値から、その標準偏差(δx1)を算出する工程、
入味不良が発生した充填バルブユニット以外の全充填バルブユニットについて蓄積された平均流量の測定値から、その標準偏差(δa1)を算出する工程、
標準偏差(δx1)と標準偏差(δa1)とを比較する工程、
標準偏差(δx1)が標準偏差(δa1)よりも大きい場合に、流量計が故障していると判断する工程、
入味不良が発生した充填バルブユニットについて蓄積されたリキッドバルブ閉遅れ時間の測定値から、その標準偏差(δx2)を算出する工程、
入味不良が発生した充填バルブユニット以外の全充填バルブユニットについて蓄積されたリキッドバルブ閉遅れ時間の測定値から、その標準偏差(δa2)を算出する工程、
標準偏差(δx2)と標準偏差(δa2)とを比較する工程、及び
標準偏差(δx2)が標準偏差(δa2)よりも大きい場合に、電磁弁が故障していると判断する工程
を包含し、
前記各工程を記載されている順番で実施する、液体自動充填機の故障部品特定方法。
【請求項2】
入味不良が発生した充填バルブユニットの標準偏差を算出するために使用する測定値の数が4000件/1バルブユニット以上である請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体製品を個別の容器に所定の入味量充填する液体自動充填機に関し、特に、上記液体自動充填機に備えられた充填バルブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ビール等の発泡性飲料、茶、水等の飲料に例示される液体製品は、大量生産される場合、液体自動充填機を使用して容器詰めされる。特許文献1には、図2として、液体自動充填装置の構成が示されている。
【0003】
液体自動充填機においては、上端が開放した容器をコンベア等により所定の経路に沿って移動させ、その容器と共に移動する多数の充填バルブユニットを設け、容器及び充填バルブユニットが共に所定の経路に沿って移動する間に、各充填バルブユニットを対応する容器の上部に接近させてその充填バルブユニットに設けられた充填ノズルから容器内に液体製品を予め設定された入味量だけ充填するようになっている。
【0004】
液体製品の入味量は、全ての缶において同一の一定量に調節する。そうすることで、生産した液体製品を無駄なく製品化することが可能になる。液体製品の入味量を安定に制御するために、液体自動充填機には流量計及び電磁弁が備えられている。流量計は流路を流れる液体製品の流量を計測する。電磁弁は充填を開始する際に流路を開いて充填ノズルから缶に液体製品を流出させ、充填を終了する際には流路を閉じて液体製品の流出を停止させる。電磁弁は、液体製品の流量を考慮して適宜決定される時間間隔で開閉する。
【0005】
液体製品の入味量は入味検査機を使用して容器ごとに検査される。入味量の良不良は液体製品の過不足を基準に判断される。入味不良が発生した場合は、できるだけ早期に対策を採る必要がある。液体自動充填機の機能障害が顕在化すると、入味量の過不足による不良品が増加し、生産量が減少してしまう。
【0006】
入味量の不良発生は、液体自動充填機のいずれかの部品が故障していることに起因している。しかしながら、入味量の不良が少量の場合、または、入味不良の発生が間欠的である場合、液体自動充填機の故障箇所を特定することは非常に困難である。
【0007】
特許文献2には、ビールのような発泡性飲料の入味不良の原因が液体製品充填用のフィーリングバルブの不良にあり、フィーリングバルブの不良を充填に際して充填済みの飲料の液面上方に発生する泡の状態を評価することで検出できることが記載されている。
【0008】
また、現在稼働している液体製品充填システムにおいて、充填バルブユニットの入味量はバルブモニターで管理することができる。そのため、どの充填バルブユニットの入味量が不良であったかを特定することは可能である。
【0009】
しかしながら、液体自動充填機を構成する複数の部品のなかで、故障している部品を特定する方法に関しては、未だ知見がない。そのため、入味不良が発生した場合は、液体自動充填機のいずれかの部品を交換して入味不良の解消を確認することで、故障部品を特定しなければならない。そのため、入味不良が発生した場合の対策には、時間、労力及び交換部品の無駄が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開公報第2017/135449号
【文献】特開2001-171793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、入味不良が発生した場合に、故障している液体自動充填機の部品を特定する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、部品として流量計及び電磁弁を有する液体自動充填機の故障部品特定方法であって、
入味不良が発生した充填バルブユニットについて蓄積されたリキッドバルブ閉遅れ時間の測定値から、その標準偏差(δx2)を算出する工程、
入味不良が発生した充填バルブユニット以外の全充填バルブユニットについて蓄積されたリキッドバルブ閉遅れ時間の測定値から、その標準偏差(δa2)を算出する工程、
標準偏差(δx2)と標準偏差(δa2)とを比較する工程、及び
標準偏差(δx2)が標準偏差(δa2)よりも大きい場合に、電磁弁が故障していると判断する工程
を包含する、
液体自動充填機の故障部品特定方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、部品として流量計及び電磁弁を有する液体自動充填機の故障部品特定方法であって、
入味不良が発生した充填バルブユニットについて蓄積された平均流量の測定値から、その標準偏差(δx1)を算出する工程、
入味不良が発生した充填バルブユニット以外の全充填バルブユニットについて蓄積された平均流量の測定値から、その標準偏差(δa1)を算出する工程、
標準偏差(δx1)と標準偏差(δa1)とを比較する工程、及び
標準偏差(δx1)が標準偏差(δa1)よりも大きい場合に、流量計が故障していると判断する工程
を包含する、
液体自動充填機の故障部品特定方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、流量計を対象部品とする上記液体自動充填機の故障部品特定方法と電磁弁を対象部品とする上記液体自動充填機の故障部品特定方法とを、この順番に実施する、液体自動充填機に備えられた、部品として流量計及び電磁弁の故障部品特定方法を提供する。
【0015】
ある一形態においては、上記いずれかの方法は、入味不良が発生した充填バルブユニットの標準偏差を算出するために使用する測定値の数が4000件/1バルブユニット以上である。
【0016】
また、本発明は、液体自動充填機に備えられた、部品として流量計及び電磁弁の故障部品特定装置であって、
当該装置は、充填バルブユニットの平均流量及びリキッドバルブ閉遅れ時間を測定する測定値収集手段と、
収集された平均流量及びリキッドバルブ閉遅れ時間の測定値を蓄積する測定値蓄積手段と、
入味不良が発生した充填バルブユニットについて蓄積された平均流量又はリキッドバルブ閉遅れ時間の測定値から、それらの標準偏差(δx)を算出し、
入味不良が発生した充填バルブユニット以外の全充填バルブユニットについて蓄積された平均流量又はリキッドバルブ閉遅れ時間の測定値から、それらの標準偏差(δa)を算出し、及び
標準偏差(δx)と標準偏差(δa)とを比較して、標準偏差(δx)が標準偏差(δa)よりも大きい場合に、入味不良が発生した充填バルブユニットに関係する流量計又は電磁弁が故障していると判断する標準偏差処理手段と、
判断結果を出力する出力手段とを備える、液体自動充填機の故障部品特定装置を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、入味不良が発生した場合に、故障している充填バルブユニットの部品を特定する方法が提供される。その結果、入味不良の問題解決に必要な時間、労力及び交換部品の無駄が解消される。また、容器詰め液体製品の入味量の安定性が向上する。更に、液体自動充填機の潜在的な故障を、それが顕在化する前に発見することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例である、液体自動充填機の故障部品特定装置の構成を示したブロック図である。
図2】本発明の実施例である、液体自動充填機の故障部品特定方法の工程を示したフロー図である。
図3】実施例1の液体自動充填機の故障部品特定方法で行われる、標準偏差の処理の工程(ステップS5)の例を示したフロー図である。
図4】液体自動充填機に備えられた充填バルブユニットの構造の一例を示した模式断面図である。
図5】流量計の故障により入味不良が発生した液体自動充填機が備える全充填バルブユニット1~120について蓄積された、充填50万回分の平均流量の標準偏差を示したグラフである。
図6】電磁弁の故障により入味不良が発生した液体自動充填機が備える全充填バルブユニット1~120について蓄積された、充填50万回分の平均流量の標準偏差を示したグラフである。
図7】電磁弁の故障により入味不良が発生した液体自動充填機が備える全充填バルブユニット1~120について蓄積された、充填50万回分のリキッドバルブ閉遅れ時間の標準偏差を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図4は、液体自動充填機に備えられた充填バルブユニットの構造の一例を示した模式断面図である。充填バルブユニット10は、エアーシリンダー11、流量計12、送液管13、ヘッドタンク14及びノズル部等の部品を有する。送液管13により、ヘッドタンク14とノズル部とが接続される。送液管13には、途中に流量計12が配設されている。ヘッドタンク14には、送液管15を介してサージタンク(非表示)から供給された液体製品が貯留される。ノズル部は、ヘッドタンク14から送液管13を介して供給された液体製品を充填口へと通流させる流路、流路に配設されたリキッドバルブ16及びゴムパッキンなどを有している。
【0020】
装置本体8は制御手段19、電磁弁20及びこれらを電気的に接続する配線9を有する。電磁弁20とエアシリンダー11とは送気管21で接続されている。制御手段19は電磁弁20を動作させ、電磁弁20は送気管21及びエアーシリンダー11を介してリキッドバルブ16を開閉させる。液体製品は充填口から容器把持部17に把持されている容器18に充填される。
【0021】
液体製品が充填された容器18は、容器把持部17からキャンフィードチェーン(非表示)に排出され、密封装置(非表示)に搬送されて缶蓋、キャップなどで密封される。
【0022】
液体自動充填機を使用して液体製品を容器に充填する工程は、次の通り進行する。制御手段19が電磁弁20にバルブ開信号を発する。電磁弁20はバルブ開信号を受領してエアーシリンダー11を動作させ、送液管のリキッドバルブ16を開く。液体製品が流動を開始して、流量計12が機能する。充填口から液体製品が流出し、容器18に充填される。充填された液体製品が所定量になった時に、制御手段19が電磁弁20にバルブ閉信号を発する。電磁弁20はバルブ閉信号を受領して送液管のリキッドバルブ16を閉じる。
【0023】
バルブ開信号が発せられた場合、流量計がカウントを開始するまでに時間差が発生する。この時間差をリキッドバルブ開遅れ時間という。リキッドバルブ開遅れ時間は、バルブ開信号が発せられた時間と流量計がカウントを開始した時間とを記録し、両方を対比することで特定される。
【0024】
バルブ閉信号が発せられた場合、流量計がカウントを終了するまでに時間差が発生する。この時間差をリキッドバルブ閉遅れ時間という。リキッドバルブ閉遅れ時間は、バルブ閉信号が発せられた時間と流量計がカウントを終了した時間とを記録し、両方を対比することで特定される。
【0025】
液体製品の平均流量は、流量計の積算流量から特定される値をいう。例えば、流量計のカウント開始時から終了時までの液体製品の積算流量を時間に対してプロットした場合、傾きをもつ直線が形成される。この直線の傾きが平均流量である。
【0026】
液体自動充填機の運転中に入味量が正常である場合、充填バルブユニットは、液体製品の充填に必要な一定の動作を一定の時間間隔で繰り返す状態にある。かかる場合、制御手段は一定の周期でバルブの開信号及び閉信号を発し、電磁弁は一定の周期で流路を開閉し、流量計は一定の平均流量をカウントする。つまり、液体製品を容器に充填する工程において、リキッドバルブ開遅れ時間、リキッドバルブ閉遅れ時間及び液体製品の平均流量は実質的に一定の値になる。
【0027】
容器詰め液体製品の充填量は、所定の入味量と同一になることが理想的であるが、液体自動充填機に異常が発生した場合には、増減することがある。入味量が増減した容器詰め液体製品は、不良品として出荷品から除かれる。
【0028】
液体製品を容器に充填する工程において、液体自動充填機のある特定の充填バルブユニットに入味不良が発生している場合を考える。入味不良の発生は、充填バルブユニットの動作が不安定であることを意味している。充填バルブユニットの動作は電磁弁又は流量計に起因するので、かかる場合は、リキッドバルブ開遅れ時間、リキッドバルブ閉遅れ時間又は液体製品の平均流量の値にばらつきが生じることになる。
【0029】
尚、バルブの開信号及び閉信号に関しては、制御手段が発信し、その周期は全ての充填バルブユニットに共通するため、制御手段に異常がある場合は、全部の充填バルブユニットに入味不良が発生する。そうすると、充填バルブユニット全体が入味不良にならない限り、制御手段は正常である。
【0030】
リキッドバルブ開遅れ時間、リキッドバルブ閉遅れ時間又は液体製品の平均流量は、全て流量計の測定値に基づく特性値である。そのため、流量計の動作異常は、直接的には平均流量に影響し、リキッドバルブ開遅れ時間及びリキッドバルブ閉遅れ時間にも影響する。そうすると、平均流量、リキッドバルブ開遅れ時間、及びリキッドバルブ閉遅れ時間にばらつきが発生していること、特に、平均流量にばらつきが発生していることは、流量計の異常を示す現象と考えることができる。
【0031】
電磁弁の動作異常はリキッドバルブ開遅れ時間及びリキッドバルブ閉遅れ時間に影響するが、平均流量には影響しない。そうすると、平均流量にばらつきが発生せず、リキッドバルブ開遅れ時間及びリキッドバルブ閉遅れ時間にばらつきが発生していることは、電磁弁の異常を示す現象と考えることができる。
【0032】
本発明の方法においては、液体自動充填機を運転する期間中、作動状態を監視するデータとして、各充填バルブユニットについて、少なくとも平均流量及びリキッドバルブ閉遅れ時間の値を測定し、蓄積する。好ましくは、各充填バルブユニットについて、少なくとも平均流量、リキッドバルブ開遅れ時間及びリキッドバルブ閉遅れ時間の値を測定し、蓄積する。蓄積した測定値に関しては、通常の方法によりばらつきを評価する。ばらつきを評価する指標としては、標準偏差を使用する。
【0033】
図5は、流量計の故障により入味不良が発生した液体自動充填機が備える全充填バルブユニット1~120について蓄積された、充填50万回分の平均流量の標準偏差を示したグラフである。図5(a)は流量計の交換前の測定値を示している。入味不良は、充填バルブユニット58で発生した。充填バルブユニット58では、平均流量の標準偏差δが2.9であった。充填バルブユニット58以外の充填バルブユニット全体の平均流量の標準偏差δは1.0であった。充填バルブユニット58の標準偏差は、これ以外の充填バルブユニット全体の標準偏差より大きいものであった。
【0034】
図5(b)は故障した流量計を交換して、入味不良が解消した後の測定値を示している。交換後の充填バルブユニット58では、平均流量の標準偏差δは0.7であり、充填バルブユニット58の標準偏差が、これ以外の充填バルブユニット全体の標準偏差より大きい状態は解消していた。図5に示した現象を考慮すると、蓄積された平均流量の標準偏差は流量計の異常を示す指標と考えることができる。充填バルブユニットの平均流量の標準偏差が、これ以外の充填バルブユニット全体の標準偏差より大きい場合、その充填バルブユニットの流量計が故障していると判断される。
【0035】
図6は、電磁弁の故障により入味不良が発生した液体自動充填機が備える全充填バルブユニット1~120について蓄積された、充填50万回分の平均流量の標準偏差を示したグラフである。入味不良は、充填バルブユニット100で生じた。充填バルブユニット100では、平均流量の標準偏差δが0.4であった。充填バルブユニット100以外の充填バルブユニット全体の平均流量の標準偏差δは1.0であった。充填バルブユニット100の標準偏差は、これ以外の充填バルブユニット全体の標準偏差より小さいものであった。
【0036】
図7は、電磁弁の故障により入味不良が発生した液体自動充填機が備える全充填バルブユニット1~120について蓄積された、充填50万回分のリキッドバルブ閉遅れ時間の標準偏差を示したグラフである。図7(a)は電磁弁の交換前の測定値を示している。入味不良が生じた充填バルブユニット100では、リキッドバルブ閉遅れ時間の標準偏差δが11.7であった。充填バルブユニット100以外の充填バルブユニット全体のリキッドバルブ閉遅れ時間の標準偏差δは8.6であった。充填バルブユニット100の標準偏差は、これ以外の充填バルブユニット全体の標準偏差より大きいものであった。
【0037】
図7(b)は故障した電磁弁を交換して、入味不良が解消した後の測定値を示している。交換後の充填バルブユニット100では、リキッドバルブ閉遅れ時間の標準偏差δは6.6であり、充填バルブユニット100の標準偏差が、これ以外の充填バルブユニット全体の標準偏差より大きい状態は解消していた。
【0038】
図6及び図7に示した現象を考慮すると、蓄積された平均流量の標準偏差、及び蓄積されたリキッドバルブ閉遅れ時間の標準偏差は、電磁弁の異常を示す指標と考えることができる。充填バルブユニットの平均流量の標準偏差が、これ以外の充填バルブユニット全体の標準偏差より小さく、なおかつリキッドバルブ閉遅れ時間の標準偏差が、これ以外の充填バルブユニット全体の標準偏差より大きい場合、液体自動充填機の電磁弁が故障していると判断される。
【0039】
入味不良が発生した充填バルブユニットについて、標準偏差を算出するために使用する測定値の数は、通常は、4000件/1バルブユニット以上である。上記測定値の数が多いほど故障の判定精度が向上する。
【0040】
図1は、本発明の実施形態である、液体自動充填機の故障部品特定装置の構成を示したブロック図である。
【0041】
液体自動充填機1は、装置本体8と、環状のヘッドタンク14と、複数の充填バルブユニット10とを備えている。各充填バルブユニット10は、図4を参照して、その部品として流量計12等を有している。装置本体8は、液体製品の充填作業全体をコントロールし追跡する制御手段、電磁弁及び配線等を有している。
【0042】
充填バルブユニット10の故障部品特定装置7は、測定値収集手段2と、測定値蓄積手段3と、標準偏差処理手段5と、出力手段6とを備える。測定値収集手段2は、充填バルブユニット10の平均流量及びリキッドバルブ開遅れ時間、リキッドバルブ閉遅れ時間を測定する。測定値蓄積手段3は、収集された平均流量及びリキッドバルブ開遅れ時間、リキッドバルブ閉遅れ時間の測定値を蓄積する。標準偏差処理手段5は、蓄積された測定値の標準偏差を計算し、正常値か異常値かを判断する。出力手段6は、その判断結果を出力する。
【0043】
測定値収集手段2は、例えば、流量計、タイマー、プログラマブルロジックコントローラ及びプロセッサを使用する。測定値蓄積手段3は、例えば、メモリ、サーバー又はストレージを使用する。標準偏差処理手段5は、例えば、プロセッサ、統計解析ソフト、BIソフトを使用する。出力手段6は、例えば、インジケーター、ディスプレイ、プリンタを使用する。
【0044】
不良充填バルブユニット特定手段4は、液体製品を容器に充填する工程において、各充填バルブユニットで充填された容器詰め液体製品の入味量をモニターする装置である。ある容器詰め液体製品が入味不良であった場合、不良充填バルブユニット特定手段4は、どの充填バルブユニットで入味不良が発生したかを特定する。
【0045】
液体自動充填機1と液体自動充填機の故障部品特定装置7とは、配線9を使用して、電気的に接続され、電気信号を送受信する。液体自動充填機1と不良充填バルブユニット特定手段4とは、配線9を使用して、電気的に接続され、電気信号を送受信する。不良充填バルブユニット特定手段4と液体自動充填機の故障部品特定装置7とは、配線9を使用して、電気的に接続され、電気信号を送受信する。液体自動充填機全体において、必要に応じて、電気信号の送受信は無線装置を使用して行ってもよい。その場合は、配線9は必ずしも必要でない。
【0046】
図2は、本発明の実施例である、液体自動充填機の故障部品特定方法の工程を示したフロー図である。測定値収集手段2は、液体製品の充填が行われる度に、それぞれの充填バルブユニットの平均流量、リキッドバルブ開遅れ時間及びリキッドバルブ閉遅れ時間を収集する(ステップS2)。測定値蓄積手段3は、収集された平均流量及びリキッドバルブ閉遅れ時間の測定値を蓄積する(ステップS3)。液体製品の入味不良が発生した場合、不良充填バルブユニット特定手段4は、どの充填バルブユニットで入味不良が発生したかを特定する(ステップS4)。標準偏差処理手段5は、入味不良が発生した充填バルブユニットに関し蓄積された測定値の標準偏差を計算し、また、入味不良が発生した充填バルブユニット以外の充填バルブユニット、即ち、正常に動作した充填バルブユニットに関し蓄積された測定値の標準偏差を計算し、比較処理を行う(ステップS5)。出力手段6は、比較処理された結果を出力する(ステップS6)。
【0047】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例
【0048】
<実施例1>
流量計故障の特定
図3は、実施例1の液体自動充填機の故障部品特定方法で行われる、標準偏差の処理の工程(ステップS5)の例を示したフロー図である。
【0049】
蓄積された測定値の中から入味不良が発生した充填バルブユニットの平均流量を所定の件数分特定し、それらの標準偏差δx1を計算する。また、蓄積された測定値の中から、入味不良が発生した充填バルブユニット以外の充填バルブユニットの平均流量を所定の件数分特定し、それらの標準偏差δa1を計算する(ステップS8)。
【0050】
不良な充填バルブユニットの平均流量の標準偏差δx1と正常な充填バルブユニットの平均流量の標準偏差δa1とを比較する(ステップS9)。標準偏差δx1の方が標準偏差δa1よりも大きい場合(ステップS10、Yes)、流量計の機能に異常が認められるため、流量計が故障していると判断する。
【0051】
<実施例2>
電磁弁故障の特定
実施例2において標準偏差δx1が標準偏差δa1以下である場合(ステップS10、No)、流量計の機能は正常と認められる(ステップS12)。そのため、電磁弁の機能を検査する。即ち、蓄積された測定値の中から入味不良が発生した充填バルブユニットのリキッドバルブ閉遅れ時間を所定の件数分特定し、それらの標準偏差δx2を計算する。また、蓄積された測定値の中から、入味不良が発生した充填バルブユニット以外の充填バルブユニットの平均流量を所定の件数分特定し、それらの標準偏差δa2を計算する(ステップS8)。
【0052】
不良な充填バルブユニットのリキッドバルブ閉遅れ時間の標準偏差δx2と正常な充填バルブユニットのリキッドバルブ閉遅れ時間の標準偏差δa2とを比較する(ステップS9)。標準偏差δx2の方が標準偏差δa2よりも大きい場合(ステップS10、Yes)、電磁弁の機能に異常が認められるため、電磁弁が故障していると判断する。
【符号の説明】
【0053】
1…液体自動充填機、
2…測定値収集手段、
3…測定値蓄積手段、
4…不良充填バルブユニット特定手段、
5…標準偏差処理手段、
6…出力手段、
7…液体自動充填機の故障部品特定装置、
10…充填バルブユニット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7