(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】金属緻密層の形成方法
(51)【国際特許分類】
C23C 24/04 20060101AFI20240304BHJP
【FI】
C23C24/04
(21)【出願番号】P 2019168881
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2022-02-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳生 里紗
(72)【発明者】
【氏名】幡野 浩
(72)【発明者】
【氏名】高根沢 真
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-030103(JP,A)
【文献】特開2008-018455(JP,A)
【文献】特開2014-156634(JP,A)
【文献】特開2015-193894(JP,A)
【文献】国際公開第2018/154599(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/103028(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106086746(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 4/00
24/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接液環境で使用される金属部材における金属緻密層を形成する金属緻密層の形成方法において、
溶融温度以下の温度で金属粒子を基材に衝突させて、その運動エネルギーを用いて、成膜させる低温溶射において使用する前記金属粒子について平均粒径X0を目標粒径として前記金属粒子を製造または調達して平均粒径Xの粒径を有する前記金属粒子を得る金属粒子製造・調達ステップと、
前記金属粒子製造・調達ステップにより得られた前記金属粒子の凝集状態の解除を行なう凝集状態解除ステップと、前記凝集状態解除ステップにより
前記凝集状態が解除された前記金属粒子について、低温溶射条件の有効性が存在する所期範囲内粒径の上限粒径vX(但し倍率vは1より大きな正の実数)より大きな所定の粒径以上の前記金属粒子を除去、または、前記所期範囲内粒径の
前記上限粒径vX以上の前記金属粒子が所定の頻度以下であることを確認する選別・確認ステップと、
前記選別・確認ステップの後に、前記金属粒子を、対象とする部材の表面に低温溶射する低温溶射ステップと、
を有
し、
前記選別・確認ステップは、前記平均粒径Xに対する前記倍率vの依存性と前記平均粒径Xとから前記上限粒径vXを設定するステップを有することを特徴とする金属緻密層の形成方法。
【請求項2】
前記金属粒子の粒径は、レーザー回折・散乱法による測定に基づくことを特徴とする請求項1に記載の金属緻密層の形成方法。
【請求項3】
前記低温溶射ステップの条件は、前記平均粒径Xに基づいて設定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金属緻密層の形成方法。
【請求項4】
前記平均粒径Xは、1ないし40μmであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の金属緻密層の形成方法。
【請求項5】
前記所定の粒径は、
大粒径領域の最小値wX(但し倍率wは1より大きな正の実数)であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の金属緻密層の形成方法。
【請求項6】
前記平均粒径Xが、2μm、20μm、および40μmの場合に、前記倍率wは、それぞれ、7プラスマイナス1、5プラスマイナス0.7、および3プラスマイナス0.4であることを特徴とする請求
項5に記載の金属緻密層の形成方法。
【請求項7】
前記金属粒子の粒径の頻度分布において、前記最小値wXにおける前記金属粒子の頻度が、10%未満であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の金属緻密層の形成方法。
【請求項8】
前記選別・確認ステップは、前記所期範囲内粒径の前記上限粒径vX以上の前記金属粒子が前記所定の頻度以下であることを確認するステップであり、粒径分布の累積において、前記上限粒径vXより大きな粒径を有する累積が5%以下であれば良と判定することを特徴とする請求項
1ないし請求項6のいずれか一項に記載の金属緻密層の形成方法。
【請求項9】
前記金属粒子は、一種以上の金属元素を含有する金属の粒子、金属の合金の粒子、あるいはそれらの混合粒子のいずれかであることを特徴とする請求項1ないし請求項
8のいずれか一項に記載の金属緻密層の形成方法。
【請求項10】
前記金属元素は、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、金(Au)のいずれかまたはそれを含む合金であることを特徴とする請求項
9に記載の金属緻密層の形成方法。
【請求項11】
前記合金は、金、銀、亜鉛、錫、リン(P)のいずれかもしくは複数を含む銅合金であることを特徴とする請求項
9に記載の金属緻密層の形成方法。
【請求項12】
前記低温溶射ステップにおいては、前記金属粒子を移送する移送ガスの温度の設定値あるいは実測値は、前記金属粒子の溶融温度より低く、かつ250℃から750℃の範囲であることを特徴とする請求項
1ないし請求項11のいずれか一項に記載の金属緻密層の形成方法。
【請求項13】
接液環境で使用される金属部材における金属緻密層を形成する金属緻密層の形成方法において、
溶融温度以下の温度で金属粒子を基材に衝突させて、その運動エネルギーを用いて、成膜させる低温溶射において使用する前記金属粒子について平均粒径X0を目標粒径として前記金属粒子を製造または調達して平均粒径Xの粒径を有する前記金属粒子を得る金属粒子製造・調達ステップと、
前記金属粒子製造・調達ステップにより得られた前記金属粒子の凝集状態の解除を行なう凝集状態解除ステップと、前記凝集状態解除ステップにより前記凝集状態が解除された前記金属粒子について、低温溶射条件の有効性が存在する所期範囲内粒径の上限粒径vX(但し倍率vは1より大きな正の実数)より大きな所定の粒径以上の前記金属粒子の除去を行う選別ステップと、
前記選別ステップで前記上限粒径vXより大きな所定の粒径以上の前記金属粒子を除去した後に、前記除去の後の前記金属粒子の平均粒径X1を確認する確認ステップと、
前記平均粒径に基づいて前記低温溶射条件を設定する条件設定ステップと、
前記条件設定ステップで設定された前記低温溶射条件に基づいて、前記金属粒子を、対象とする部材の表面に対して前記低温溶射を行う低温溶射ステップと、
を有し、
前記選別ステップは、前記平均粒径Xに対する前記倍率vの依存性と前記平均粒径Xとから前記上限粒径vXを設定するステップを有することを特徴とす
る金属緻密層の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、金属緻密層の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラ等から蒸気タービンへの蒸気の供給、蒸気タービンからボイラ等への給水、およびこれらの系統からの排水等のために使用される配管および機器の多くは、水を始めとする液体あるいは水蒸気に代表される気体に接する環境で使用される。また、大容量発電機に用いられる水直接冷却タービン発電機では、水によりシステムを冷却しており、その構成部材の一部は、水を始めとする冷却媒体等に接している。これらの系統構成部材の多くは、金属部材で構成されており、水あるいは蒸気と接する環境下で使用されることにより、各種の腐食が生ずるリスクを有している。
【0003】
一方で、系統構成部材の腐食に起因する水や蒸気の漏洩は、プラントの停止に直結し、発生原因の調査、対策の実施、対策の有効性の検証等、復旧までに多くのプロセスを必要とする。従って、一つの部品や系統における腐食の発生であっても、プラントの安定的な運転に対する大きな障害となる。このため、水環境あるいは蒸気環境に接する構成部材の劣化に対する対策技術は、各系統構成部材のみならずプラントシステム全体の信頼性を向上させる上で重要である。
【0004】
例えば水直接冷却タービン発電機におけるステータコイルにおける導電部分であるコイル導体部は、中実素線(銅線)と、冷却水が流れる孔が形成された中空素線(中空銅線)とから構成される。コイル導体の両端には、冷却配管に接続されて冷却水を供給するクリップがろう付される。クリップにおいて複数の素線を一体化し、さらに、複数の素線が一体化した素線束とクリップを結合するろう付は、電気的接続機能とともに、素線束の端面部分における冷却水のシール機能を担っている。従来、この端面部分が腐食し、水漏れを引き起こすトラブルが経験されたことから、種々の対策がなされている。
【0005】
また、異材間の接合部を始めとする異材同士の複合部を有し、かつ接液するような環境で使用される部材では、異材接合部特有の劣化要因を有している。
【0006】
例えば、前述のステータコイルのクリップ部において、クリップの材質を銅系以外の金属とする場合、この異材間の接合部については、従来、腐食加速因子を低減するために、環境のpH値を低下させる元素を含まない部材を採用する、あるいは、異材が同じ液に接液する状況に対し部品を分離することでリスクを回避するなどの対策が採られている。
【0007】
その他の対策としては、対象部を溶射で被覆し、耐食性の高い部材で表面を処理して劣化を抑制する方法の開発も進められている。溶射の技術としては、通常の高温施工による溶射の他、300℃から700℃程度の比較的低温での施工を実施する低温溶射等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発電プラント等、大型発電機器を安定して運転し、機器の信頼性を高め、円滑なエネルギー供給を実現するためには、金属部材の腐食に起因する損傷のリスクを回避する手段が必要である。
【0010】
しかし、通常の溶射では基材部への入熱が大きく、下地への熱影響や応力の残留が懸念されることから、下地となる対象基材が限定される。そこで、低温溶射法の一つであるコールドスプレー法を使用して、基材の上に金属層を形成する方法がある。
【0011】
コールドスプレー法は、例えば、溶融や溶解での金属層の形成が難しい、或いは、金属層の形成が難しいような組成の金属に対して適用されることが多い。
【0012】
一方、低温溶射でも成膜が難しい材料系の存在や、コーティング層の施工時に、溶射される粒子によるエロージョンが発生して、成膜ができない等、成膜性についての課題もあり、緻密性が確保できない材料系も少なくない。
【0013】
さらに、低融点、低軟化点、あるいはブレージングが生じる様な材料からなる部品に関しては、入熱を抑制しためっきを実施する方法等も検討されているが、基材の形状や施工箇所、施工場所等が大きく限定されているという状況がある。
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、接液環境で使用される金属部材について、その表面に金属緻密層を確実に形成することができる金属緻密層の形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
実施形態の金属緻密層の形成方法は、接液環境で使用される金属部材における金属緻密層を形成する金属緻密層の形成方法において、溶融温度以下の温度で金属粒子を基材に衝突させて、その運動エネルギーを用いて、成膜させる低温溶射において使用する前記金属粒子について平均粒径X0を目標粒径として前記金属粒子を製造または調達して平均粒径Xの粒径を有する前記金属粒子を得る金属粒子製造・調達ステップと、前記金属粒子製造・調達ステップにより得られた前記金属粒子の凝集状態の解除を行なう凝集状態解除ステップと、前記凝集状態解除ステップにより凝集状態が解除された前記金属粒子について、少なくとも低温溶射条件の有効性が存在する所期範囲内粒径の上限粒径vX(但し倍率vは1より大きな正の実数)より大きな所定の粒径以上の前記金属粒子を除去、または、前記所期範囲内粒径の前記上限粒径vX以上の前記金属粒子が所定の頻度以下であることを確認する選別・確認ステップと、前記選別・確認ステップの後に、前記金属粒子を、対象とする部材の表面に低温溶射する低温溶射ステップと、を有し、
前記選別・確認ステップは、前記平均粒径Xに対する前記倍率vの依存性と前記平均粒径Xとから前記上限粒径vXを設定するステップを有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1の実施形態に係る金属緻密層の形成方法における金属粒子の粒径の影響を定性的に示す概念的な説明図であり、(a)は条件設定に対応する目標粒径粒子の場合、(b)は、粒径が小さすぎる場合、(c)は粒径が大きすぎる場合を示す。
【
図2】第1の実施形態に係る金属緻密層の形成方法における金属粒子の粒径分布の違いを定性的に示す概念的な説明図であり、(a)は、粒径7Xの粒子を含む場合、(b)は粒径7Xの粒子を含まない場合を示す。
【
図3】第1の実施形態に係る金属緻密層の形成方法における金属粒子の粒径の第1の頻度分布の例を示すグラフである。
【
図4】第1の実施形態に係る金属緻密層の形成方法における金属粒子の粒径の第2の頻度分布の例を示すグラフである。
【
図5】第1の実施形態に係る金属緻密層の形成方法で用いられるコールドスプレー装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】第1の実施形態に係る金属緻密層の形成方法における金属粒子の
所期範囲内粒径の上限値および境界粒径の平均粒径への依存性を示す概念的なグラフである。
【
図7】第1の実施形態に係る金属緻密層の形成方法の手順を示すフロ―図である。
【
図8】第2の実施形態に係る金属緻密層の形成方法における金属粒子の金属粒子の粒径の頻度分布、累積分布、および所期範囲内粒径の例を示すグラフである。
【
図9】第3の実施形態に係る金属緻密層の形成方法における金属粒子の粒径の頻度分布の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る金属緻密層の形成方法について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重畳する説明は省略する。
【0018】
[第1の実施形態]
以下に、発明者らが確認できた知見等に基づいて金属緻密層の形成について説明し、その後に、金属緻密層の形成方法の手順を示す。
【0019】
図1は、第1の実施形態に係る金属緻密層の形成方法における金属粒子10の粒径の影響を定性的に示す概念的な説明図である。それぞれ、基材1に吹き付けられる金属粒子10が、(a)は所期範囲内粒径を有する所期範囲内粒径粒子11の場合、(b)は、粒径が小さすぎる小粒径粒子12の場合、(c)は粒径が大きすぎる大粒径粒子13の場合を示す。
【0020】
ここで、所期範囲内粒径は、コールドスプレー条件が確実に有効であると考えられる平均粒径Xを中心とする範囲の粒径である。また、所期範囲内粒径の金属粒子10を所期範囲内粒径粒子と呼ぶこととする。小粒径粒子12および大粒径粒子13のそれぞれの粒径は、所期範囲内粒径から大きく外れているものとする。
【0021】
目標粒径X0の金属粒子10を製造しようとして、実際に得られる製造後の金属粒子10の粒径の頻度分布は、通常、横軸を粒径の対数表示とすれば、たとえば、ほぼ正規分布に近い形状が得られる場合もある。以下に示す各図では、正規分布に近い形状の分布の場合を例にとって示しているが、これに限定されない。左右対称ではなく、たとえば、大粒径側に偏っている場合もある。以下の内容は、このような左右対称ではない場合についても、適用可能である。
【0022】
粒径の頻度分布について、代表する指標としては、分布の極大値を与えるモード径、累積の50%に対応する粒径(d50)であるメディアン径、あるいは算術平均径などがある。算術平均径としては、個数平均径、長さ平均径、面積平均径、あるいは体積平均径などがある。これらのいずれを用いてもよい。以下では、次の式(1)による個数平均径を用いて平均径Xを示すものとする。
【0023】
平均径X=Σ(n・d)/Σn ・・・(1)
ここで、dは、各粒径チャンネルの代表値、nはチャンネルごとの個数基準のパーセントである。
【0024】
なお、後述する選別により大粒径粒子13を除去すると、除去操作後の金属粒子10の平均粒径は、それまでの平均粒径から変化する。しかしながら、以降、平均粒径Xは、除去操作を実施する前の金属粒子10の平均粒径のままの値を言うものとする。
【0025】
コールドスプレーにおいては、基材1に吹き付けられる金属粒子10の粒径の頻度分布の例えば平均値あるいは中間値となる粒径に応じた最適の条件が設定され、その条件によりコールドスプレーが実施される。このような最適な条件で実施されたコールドスプレーの場合は、
図2の(a)に示すように、所期範囲内粒径粒子11が基材1に吹き付けられることにより、最も安定に到達付着部21が形成され、金属緻密層20の形成に至る。
【0026】
粒径が、所期範囲内粒径粒子11の径である所期範囲内粒径に比べて小さすぎる小粒径粒子12の場合は、
図1の(b)に示すように、基材1の表面に吹き付けられても付着せずに、非付着部22として飛散してしまう。
【0027】
粒径が、所期範囲内粒径粒子11の径である所期範囲内粒径に比べて大きすぎる大粒径粒子13の場合は、
図1の(c)に示すように、基材1の表面に吹き付けられると、基材1の表面の付着層30を抉り取って掘削部32を形成した後に、掘削後飛散粒子23として飛散する。
【0028】
以上のことから、金属緻密層の形成方法で供給される金属粒子10の粒径は、所期範囲内粒径から大きく外れた金属粒子10の存在は好ましくないことがわかる。前述のように、小粒径粒子12の場合は、多くが基材1の表面に付着しないことから、全体の付着効率を低下させることになる。また、大粒径粒子13の場合は基材1の表面の付着層30に掘削部32を形成することから、金属緻密層20の形成そのものの品質を低下させる。したがって、金属粒子10が、所期範囲内粒径を有する粒子を主体としていることが、品質および付着効率を確保する上で重要である。所期範囲内粒径から外れる所期範囲外粒径を有する金属粒子10のうち、大粒径粒子13の影響が、特に問題となる。
【0029】
図2は、第1の実施形態に係る金属緻密層の形成方法における金属粒子10の粒径分布の違いを定性的に示す概念的な説明図である。製造し、あるいは調達した金属粒子10について、(a)は、大粒径粒子を含む場合、(b)は大粒径粒子を含まない場合を示す。(a)に示すように、コールドスプレーする金属粒子10に大粒径粒子13が含まれているような場合は、大粒径粒子13の存在が、前述のように金属緻密層20(
図1)の形成の妨げとなる。したがって、コールドスプレーに使用する金属粒子10中には、(b)に示すように、できる限り大粒径粒子13を含まない状態であることが望ましい。
【0030】
図3は、第1の実施形態に係る金属緻密層の形成方法における金属粒子の粒径の頻度分布の例を示すグラフである。横軸は粒径(μm値)を示す対数軸であり、縦軸はそれぞれの頻度(%)である。
【0031】
金属粒子10の粒径の頻度分布は、金属粒子10を調達した場合には、一般的には、金属粒子10の製造メーカにより測定される。ただし、調達した金属粒子10を入手後に、調達側が測定してもよい。実際の測定結果により得られる平均粒径Xは、通常、目標粒径X0にほぼ一致するが、目標粒径X0からずれていれば、実際の測定結果により得られる平均粒径Xに基づいて、コールドスプレー条件が設定される。
【0032】
図3において所期範囲内粒径は、対数目盛状において、平均粒径Xを中心に、X/vからvXの範囲である。ここで、「v」は1より大きな正の実数でありXに対する倍率を示す。
【0033】
製造によって得られた後の金属粒子10、あるいは、調達して得られた金属粒子10は、100μmオーダ以下の粒径の微粒子であるために、多くの場合、金属粒子10の一部あるいは多くが凝集して粒子群となり、その径も大きくなる。この結果、製造直後とは、異なる粒径の頻度分布となっている場合が多い。
【0034】
したがって、製造後あるいは調達後に、たとえば、製造後の平均粒径Xとされる粒径に対応するメッシュを用いて、平均粒径X以上の粒径の粒子の割合を確認してみることも有効である。また、このように、篩操作、すなわち、メッシュを用いて篩にかけてみることにより、凝集していた塊がほぐれて、当初の個別の金属粒子10に復帰する場合が多い。あるいは、必要に応じて、凝集体の解砕を、ビーズミルを用いてビーズによる機械的な衝撃を利用して行うこともできる。
【0035】
今、大粒径領域すなわち大粒径粒子13の粒径の領域の、最小の粒径をwXとする。ただし、「w」は1より大きな正の実数でありXに対する倍率を示す。また、X/w以下の径を有する金属粒子10を小粒径粒子12とする。また、小粒径領域にある小粒径粒子12および大粒径領域にある大粒径粒子13を除いた中間領域の粒子を中間粒径粒子、その領域を中間粒径領域と呼ぶものとする。ここで、大粒径領域と中間粒径領域との境界の粒径wXを境界粒径と呼ぶこととする。すなわち、境界粒径wXは、大粒径領域の粒径径の最小値でもある。
【0036】
所期範囲内粒径は、前述のように、コールドスプレーの条件に対応するとみなせる範囲の粒径である。したがって、所期範囲内粒径の最大値vXは、境界粒径wXよりも小さい。すなわち、倍率v<倍率wである。
【0037】
大粒径領域の大粒径粒子13は、確実に被膜形成を妨げる。また、前述のように、所期範囲内粒径の所期範囲内粒子については、平均粒径Xに対応して設定されたコールドスプレー条件が確実に有効である。
【0038】
一方、中間粒径領域の金属粒子10のうち、所期範囲内粒径よりも大きな粒径の金属粒子10については、所期範囲内粒径から離れるに従って、平均粒径Xに対応して設定されたコールドスプレー条件の有効性が減少する。すなわち、金属粒子10の中で、被膜形成に有効なもの割合が減少してゆき、境界粒径wXに至って、その割合がゼロとなる。すなわち、境界粒径wXは、コールドスプレー条件の有効性が存在する領域の上限ということができる。
【0039】
図3においてG1で示す頻度分布曲線G1は、対数軸上の平均粒径Xを中心に、左右対称の形状を有するものとする。
【0040】
頻度分布曲線G1においては、大粒径粒子13の径の領域である大粒径領域の粒径の最小値である境界粒径wXを有する金属粒子10の頻度が10%未満となっている。なお、発明者らは、たとえば、平均粒径Xが2μmの場合には、倍率wの値は、7程度の値であることを確認した。この点については、後述する。
【0041】
このように、コールドスプレーで使用する頻度分布曲線G1で分布する金属粒子10においては、たとえば、境界粒径wXの粒径の金属粒子の頻度を10%未満のように、大粒径粒子13の存在率が制限されたものとなっている。すなわち、頻度分布曲線G1で分布する金属粒子10では、大径粒子13による品質低下を制限する効果がある。
【0042】
図4は、第1の実施形態に係る金属緻密層の形成方法における金属粒子の粒径の第2の頻度分布の例を示すグラフである。
【0043】
図4に示す頻度分布曲線G2は、
図3に示す頻度分布曲線G1とは、Cで示す部分、すなわち中間粒径領域内の大粒径領域との境界近傍の部分の分布が異なっており、大粒径領域の金属粒子10が実質的に存在しない分布となっている。
【0044】
このように、頻度分布曲線G1の粒径分布を有する金属粒子10を、頻度分布曲線G1aの粒径分布を有する金属粒子10に改善するのは、たとえば、境界粒径wXに対応するメッシュを有する篩を用いて、境界粒径wX以上の粒径の金属粒子10を除去することにより可能である。
【0045】
頻度分布曲線G1aの粒径分布を有する金属粒子10を用いれば、被膜形成を妨げる大粒径領域の金属粒子10が存在しないため、金属緻密層20の形成を、さらに確実にすることができる
図5は、第1の実施形態に係る金属緻密層の形成方法で用いられるコールドスプレー装置の構成を示すブロック図である。
【0046】
コールドスプレー装置50は、金属粒子供給部51、ガス供給部52、ガス加熱部53、および噴射部54を有する。
【0047】
金属粒子供給部51は、金属粒子10を貯留する金属粒子貯留槽51aおよび金属粒子10を金属粒子貯留槽51aから噴射部54に移送する移送管51bを有する。
【0048】
ガス供給部52は、ヘリウムあるいは空気などのガスを噴射部54に供給する。ガス加熱部53は、ガス供給部52から供給されるガスを、噴射部54に流入する前に加熱する。ガス加熱部53は、たとえば、電気ヒータ、あるいは高温のガスによる加熱装置などである。
【0049】
加熱温度は、金属粒子10の融点よりは低い温度であり、かつ、コールドスプレー法に有効な温度である。たとえば、銅は入熱による脆化温度域を持つことから、施工対象の基材1についても、使用する金属粒子10についても、温度条件の選定が重要である。また、亜鉛、錫は融点が低く、高温での溶射よりも低温溶射が望ましい。このように、加熱温度は、金属粒子10の種類によって異なり、さらに、金属粒子10の粒径によっても異なるが、たとえば、概ね、250ないし750℃程度である。
【0050】
噴射部54は、金属粒子供給部51から供給される金属粒子10を、ガス供給部52から供給されるガスにより加速して噴射する。噴射される金属粒子10の流速は、たとえば、500m/秒程度である。
【0051】
図6は、第1の実施形態に係る金属緻密層の形成方法における金属粒子の
所期範囲内粒径の上限値および境界粒径の平均粒径への依存性を示す概念的なグラフである。横軸は、平均粒径X、縦軸は
所期範囲内粒径の上限値および境界粒径それぞれの平均粒径に対する倍率vおよび倍率wである。実線で示す線Vは倍率vを示し、破線で示す線Wは倍率wを示す。
【0052】
コールドスプレーは、その溶融温度以下の温度で金属粒子10を高速で基材1に衝突させて、その運動エネルギーを用いて、成膜させる方式である。このため、金属粒子10の熱容量が運動エネルギーに見合っていることが必要であり、熱容量が大きすぎる場合には、運動エネルギーが相対的に、金属粒子10を基材1に付着させるには十分ではなくなってくる。
【0053】
たとえば、平均粒径Xが2μmの場合に2μmの粒径に対応したコールドスプレー条件のもとでの境界粒径wXがその7倍であるとしても、平均粒径Xが40μmの場合に40μmの粒径に対応したコールドスプレー条件のもとでの境界粒径wXが40μmの7倍というわけにはいかない。
【0054】
すなわち、コールドスプレーは、平均粒径Xに最適な条件で実施する。一方、平均粒径Xの増加に対して熱容量は粒径の3乗に比例することから、この条件が適用できる所期粒径範囲の範囲は狭くなりその上限の倍率vは小さくなる。境界粒径の倍率wについても同様である。このため、
図6に示すように、倍率vおよび倍率wの平均粒径Xへの依存特性曲線は、右下がりの形状となる。
【0055】
なお、
図6では、それぞれの平均粒径Xにおいて、倍率vおよび倍率wの値が一つに決まるように示されているが、現実には、幅を有しており、幅については図示していない。
【0056】
幅の程度も、平均粒径Xが大きくなるに従って小さくなる。平均粒径XがX1すなわち2μmの場合には、たとえばプラスマイナス1程度である。また、平均粒径XがX3すなわち40μmの場合には、たとえば、プラスマイナス0.4程度である。幅の程度も倍率vおよび倍率wの傾向と同様の傾向であり、平均粒径X2すなわち20μmの場合には、たとえばプラスマイナス0.7程度である。
【0057】
したがって、この場合は、平均粒径XがX1すなわち2μmの場合、倍率vは4ないし6程度、倍率wは6ないし8程度となる。ただし、この場合であっても、倍率vと倍率wとの差は2程度である。この点は以下同様である。平均粒径XがX2すなわち20μmの場合、倍率vは2.8ないし4.2程度、倍率wは4.3ないし5.7程度となる。また、平均粒径XがX3すなわち40μmの場合、倍率vは1.6ないし2.4程度、倍率wは2.6ないし3.4程度となる。
【0058】
以上のような知見等に基づいて、以下、本実施形態による金属緻密層の形成方法の手順を説明する。
【0059】
図7は、第1の実施形態に係る金属緻密層の形成方法の手順を示すフロ―図である。
【0060】
まず、コールドスプレー法(低温溶射法)において使用する金属粒子10の金属元素および組成を選択する(ステップS01)。金属元素としては、単一元素の場合には、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、金(Au)のいずれか一つ、または合金の場合には、これらの組み合わせを用いる。これらの金属は、導電性であり、また鉄鋼等の構造部材の材料に比べ低融点金属である。さらには、金属粒子10の金属元素として、銅合金であって、金、銀、亜鉛、錫、リンのいずれかもしくは複数を含むものであってもよい。
【0061】
次に、金属粒子10の目標粒径を設定する(ステップS02)。すなわち、製造する場合、あるいは調達する場合の仕様としての目標粒径X0を設定する。
【0062】
ここで、目標粒径X0としては、たとえば、1μm程度ないし40μm程度の範囲にある粒径、好ましくは1μm程度ないし20μm程度の範囲にある粒径を設定する。
【0063】
次に、ステップS02で設定した目標粒径X0を仕様として、金属粒子を製造、または調達する(ステップS03)。金属粒子10の製造は、乾式造粒あるいは湿式造粒であって、噴霧造粒、溶融造粒、せん断造粒、電解造粒の何れか一つ以上またはこれらの連続工程により可能である。この結果、アトマイズ粉あるいは電解粉を得ることができる。
【0064】
次に、製造後の金属粒子10の粒径の頻度分布を測定する(ステップS04)。なお、調達する場合は、多くは、製造元で、製造後の金属粒子10の粒径の頻度分布が測定され、その記録が提供されることから、改めて測定せず、その記録を用いることができる。
【0065】
また、図示はしていないが、製造後の金属粒子10の粒径の頻度分布が測定されない場合、後述するように、受け入れ段階あるいはその後の段階のいずれかにおいて頻度分布の測定を行うことでよい。
【0066】
製造後の金属粒子10の粒径の頻度分布が測定されている場合は、平均粒径はそれに基づく平均粒径Xを用いることができる。以降の説明では、製造後の金属粒子10の粒径の頻度分布が測定されない場合については、測定されるまでは、便宜的に、目標粒径X0が平均粒径Xであるものとして扱ってよい。
【0067】
ここで、金属粒子10の粒径は、レーザー回折・散乱法により粒径測定を実施して得られた粒径値であるものとする。
【0068】
レーザー回折・散乱法による具体的な装置としては、たとえば、マイクロトラックMT 3000IIシリーズ(MicrotracBEL)があり、次の測定条件(LOW-WET MT3000II MODE)で粒径分布の測定を行った。
【0069】
(1)粒子透過性;反射
(2)深媒屈折率:1.333
(3)測定時間:30秒
なお、粒子の形状については、たとえば球形あるいは回転楕円形が特に優れていることを確認した。ただし、粒子の形状は、これらに限定されるものではなく、たとえば片状等、他の形状であってもよい。
【0070】
次に、得られた金属粒子10についての凝集状態の把握、および凝集状態の解除を実施する(ステップS05)。基本的には、前述のように、篩操作により凝集状態の解除を行う。篩のメッシュは、たとえば、平均粒径X、あるは、境界粒径wXなどに対応するものを用いてよい。また、必要があれば、さらに、ボールミル等を用いた解砕によることもできる。
【0071】
次に、金属粒子10の選別・確認条件を設定する(ステップS06)。すなわち、たとえば、
図3で示した頻度分布曲線G1の頻度分布を有する金属粒子10が得られた場合に、頻度分布曲線G1aの頻度分布を有する金属粒子10を得るために、設定された条件の粒径以上の粒径の金属粒子10を除くための選別、または、設定された条件の粒径の金属粒子10が所定の頻度、たとえば10%以下であることの確認、あるいは、設定された条件の粒径以上の金属粒子10の累積が所定の累積以下であることの確認のために、その条件を設定する。以下、この意味での選別および確認を、選別・確認と呼ぶこととする。
【0072】
ここで、たとえば、期範囲内粒径の最大値であるvX以上の粒径を除去する、あるいは、境界粒径wX以上の粒径の粒子を除去するとの条件を設定した場合、具体的には、
図6に示した平均粒径Xに対する倍率vあるいは倍率wの依存性を考慮して、粒径vXあるいは、境界粒径wXの値を設定する。たとえば、平均粒径Xが、40μmの場合、粒径vXは、40μmの約2倍すなわち80μm程度、境界粒径wXは、40μmの約3倍すなわち120μm程度となる。
【0073】
次に、ステップS06で設定された選別条件に従って、金属粒子10の選別・確認を行う(ステップS07)。具体的には、設定された条件が、たとえば、境界粒径wX以上の粒径の粒子を除去するという条件であれば、境界粒径wXに対応するメッシュ、すなわち、境界粒径wX以上の粒径の粒子を通さない寸法のメッシュを用い用いて選別を行う。
【0074】
なお、小粒径粒子12についても、同様に、小粒径粒子12のみを通す、あるいは、所期範囲内粒径粒子の径の下限X/wより小さな金属粒子10のみを通す所定のメッシュの篩を用いることにより分離・除去が可能である。
【0075】
なお、金属粒子10の選別については、
図3等でも、大粒径側と小粒径側を同じように除去した場合を示してきたが、主に好ましくない大粒径粒子13の除去を目的としている。すなわち、形成効率を低下させる小径粒子12の除去の実施をしてもよいが、少なくとも大粒径粒子13側の除去を必ず実施する。
【0076】
先に述べたように、製造後の金属粒子10の粒径の頻度分布を測定していない場合、このステップS07の終了の後、あるいは、この段階までのいずれかの適切な段階において、金属粒子10の粒径の頻度分布の測定を行う。もちろん、製造後の金属粒子10の粒径の頻度分布を測定していない場合であっても、さらに測定を行ってもよい。
【0077】
次に、コールドスプレー装置50を用いたコールドスプレーの実施条件を設定する(ステップS08)。この段階で、頻度分布測定により金属粒子10の平均粒径Xが把握されていることから、この平均粒径Xに見合う条件を設定する。
【0078】
次に、コールドスプレー装置50を用いて、ステップS08で設定された条件のもとで、コールドスプレーを実施する(ステップS09)。
【0079】
以上のように、コールドスプレー法により噴射する金属粒子10の粒径分布を、所期の粒径から大きく外れる粒径のものを除外した金属粒子10を用いて、平均粒径Xに最適の条件で、噴射することによって、金属部材10としての基材1の表面に、確実に金属緻密層20を形成することができる。
【0080】
[第2の実施形態]
本第2の実施形態は、第1の実施形態の変形であり、所期の粒径分布を別の観点で規定したものである。その他の点については、第1の実施形態と同様である。
【0081】
図8は、第2の実施形態に係る金属緻密層の形成方法における金属粒子の粒径分布、累積粒径分布を示すグラフである。横軸は、対数表示の粒径、縦軸は、実線の曲線G3は頻度(%)および破線の曲線S3はその累積(%)を示す。
【0082】
本実施形態においては、製造後の金属粒子10を、篩操作による凝集からの解放と、たとえば、大粒径領域の金属粒子10の篩分け、あるいは大粒径領域の金属粒子10の存在しないことの確認を実施したものである。
【0083】
その結果、所期範囲内粒径よりも大きな粒径、すなわち、粒径がvXを超える金属粒子の累積が、5%以下なら良と判定するものである。
【0084】
このような判定基準により、金属粒子10全体の中の所期範囲外粒子の割合を制限することにより、確実に金属緻密層20の形成を行うことができる。
【0085】
[第3の実施形態]
本第3の実施形態は、第1の実施形態の変形であり、所期の粒径分布を別の観点で規定したものである。その他の点については、第1の実施形態と同様である。
【0086】
図9は、第3の実施形態に係る金属緻密層の形成方法における金属粒子10の粒径分布、および所期範囲内粒径の例を示すグラフである。横軸は対数表示の粒径、縦軸は頻度(%)である。
【0087】
図9においてG4で示す頻度分布曲線G4は、平均粒径Xを中心に、広い範囲に頻度が分布している。すなわち、平均粒径X近傍の頻度の尖度が低く、かつ、横軸方向の両側の尾は短い分布形状である。
【0088】
一方、GXで示す比較例による頻度分布曲線GXは、逆に、平均粒径X近傍の頻度の尖度が高い一方、横軸方向の両側に長い尾を有する分布形状である。
【0089】
理想的には、平均粒径X近傍の頻度の尖度が高く、かつ、横軸方向の両側の尾は短い分布形状が、好ましい分布である。
【0090】
しかしながら、尖度が低くとも、大粒径領域側の金属粒子の割合が小さい、ないしゼロであることは、金属緻密層20の形成を妨げる要素を抑制することであり、かつ、所期範囲内粒の金属粒子10を多く含むことにより、金属緻密層20の形成を効率的に行うことができる。
【0091】
このような頻度分布の金属粒子10は、製造の結果、得られる場合もある。その場合でも、製造後の金属粒子10を凝集からの解放する篩操作、さらに、篩操作による所定粒径以上の金属粒子10が所定累積以下、あるいは所定粒径での金属粒子10が所定頻度以下であることの確認を実施する。
【0092】
また、大径側粒子が存在する場合は、上記の篩操作により、大粒径領域の金属粒子10を除去することができる。
【0093】
[その他の実施形態]
以上説明した各実施形態によれば、接液環境で使用される金属部材について、その表面に金属緻密層を確実に形成することができる。
【0094】
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
【0095】
また、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。
【0096】
また、実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0097】
実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0098】
1…基材、10…金属粒子、11…所期径粒子、12…小粒径粒子、13…大粒径粒子、20…金属緻密層、21…到達付着部、22…非付着部、23…掘削後飛散粒子、30…付着層、32…掘削部、50…コールドスプレー装置、51…金属粒子供給部、51a…金属粒子貯留槽、51b…移送管、52…ガス供給部、53…ガス加熱部、54…噴射部