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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】放射線撮影装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 7/00 20060101AFI20240304BHJP
   A61B 6/42 20240101ALI20240304BHJP
【FI】
G01T7/00 A
A61B6/42 500W
A61B6/42 500S
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019188721
(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公開番号】P2021063729
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-10-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 弘人
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-027416(JP,A)
【文献】特開平05-038724(JP,A)
【文献】特開2003-014859(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0171039(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00 - 1/16
1/167- 7/12
A61B 6/42
B65D 77/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を検出するための放射線検出器と、
前記放射線検出器を収容する筐体であって、板状の天面部材と、前記天面部材の端部領域を前記天面部材の外周に沿った周形状の支持領域で支持する支持部材と、を含む複数の部材で構成された筐体と、
を有し、
前記支持領域には、前記天面部材と前記支持部材を接続するための接合材料が付与される溝部であって前記周形状に沿って延伸した溝部が形成されており、
前記溝部は、前記延伸した方向と直交する所定方向の幅として第1の幅を有する第1の溝部と、前記所定方向の幅として前記第1の幅よりも広い第2の幅を有する第2の溝部であって前記第1の溝部よりも前記周の中央側に突出した第2の溝部と、を含み、
前記支持部材は、前記第2の溝部が設けられた領域においてその内表面が前記周の中央側に突出している
ことを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
前記第2の溝部は、前記第1の溝部よりも深さが深い
ことを特徴とする請求項に記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記溝部は、延伸方向が変化する角部を有し、
前記第2の溝部は、前記角部から所定の距離以内に配置されている
ことを特徴とする請求項またはに記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記所定の距離は、50mmである
ことを特徴とする請求項に記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記天面部材は、前記溝部と対向する更なる溝部を備える
ことを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項6】
前記筐体を構成する前記複数の部材は、背面部材を更に有し、
前記筐体は、前記放射線検出に放射線を入射させる入射面部と、前記入射面部の反対側に位置する背面部と、前記入射面部と前記背面部をつなぐ側面部と、を有し、
前記天面部材は、前記入射面部を構成し、
前記背面部材は、前記背面部を構成し、
前記支持部材は、前記側面部を構成する
ことを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項7】
前記支持部材は、締結部材によって前記背面部材と締結するための締結部を備える
ことを特徴とする請求項に記載の放射線撮影装置。
【請求項8】
前記締結部と前記溝部は、放射線が入射する側から見て互いに重なる位置にある
ことを特徴とする請求項に記載の放射線撮影装置。
【請求項9】
前記支持部材は、CFRP、アルミニウム合金、マグネシウム合金のいずれかである
ことを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体(被検体)を透過した放射線を電気信号に変換する放射線検出器を備える放射線撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、放射線検出器として半導体センサを使用して放射線画像を撮影する放射線撮影装置(Digital Radiography)が普及してきている。この放射線撮影装置は、病院の内外を問わずにあらゆる場合での使用が期待され、可搬性、操作性の良さを求められることで、小型化、薄型化、軽量化が進められている。そのため、昨今では、ワイヤレスタイプの放射線撮影装置が多く普及してきている。
【0003】
また、現在では、上述した可搬性に対する要求がこれまで以上に増加傾向にあり、軽さだけではなく堅牢性への要求も強くなっている。放射線撮影装置は、放射線検出器として内部にガラス製の半導体センサを搭載していることが多く、落下や衝撃による破損が懸念される。この内部の半導体センサの破損回避に関し、特許文献1では、半導体センサの角部と放射線撮影装置の側壁との接触を回避するための形状の技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-220659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
可搬性を考慮した放射線撮影装置は、軽量化を実現するために筐体を薄く、且つ比重の軽い材料を選定することとなる。そして、更なる軽量化を求めると、放射線撮影装置の外装部の組立方法もビスによる締結を回避し、接着や接合による構造を多用することになる。しかしながら、放射線撮影装置の軽量化を意識しすぎると、特許文献1の技術が想定している内部に搭載された放射線検出器の破損よりも、先に外装部が破損することや外装部の接合面が剥がれるという可能性が出てくる。そして、接合により放射線撮影装置の外装部を組み立てる場合、剥がれを考慮すると、接合部分の幅を広げる等して接合部材の量を増やすことになる。しかしながら、接合部材の量を増やしすぎると、接合時に外装部の外に接合部材がはみ出てしまい、外観の品位を損ねてしまう。逆に、外観の品位を意識するあまり、接合部材の量を少なくすると、接合強度に影響を与えてしまう(接合強度が低下してしまう)。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、接合部材を用いて外装部を接合する際に、外観の品位を損ねることなく十分な接合強度を確保できる放射線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の放射線撮影装置は、放射線を検出するための放射線検出器と、前記放射線検出器を収容する筐体であって、板状の天面部材と、前記天面部材の端部領域を前記天面部材の外周に沿った周形状の支持領域で支持する支持部材と、を含む複数の部材で構成された筐体と、を有し、前記支持領域には、前記天面部材と前記支持部材を接続するための接合材料が付与される溝部であって前記周形状に沿って延伸した溝部が形成されており、前記溝部は、前記延伸した方向と直交する所定方向の幅として第1の幅を有する第1の溝部と、前記所定方向の幅として前記第1の幅よりも広い第2の幅を有する第2の溝部であって前記第1の溝部よりも前記周の中央側に突出した第2の溝部と、を含み、前記支持部材は、前記第2の溝部が設けられた領域においてその内表面が前記周の中央側に突出している
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、接合部材を用いて外装部を接合する際に、外観の品位を損ねることなく十分な接合強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係る放射線撮影装置の外観の一例を示す図である。
図2図1(b)に示す放射線撮影装置のI-I断面における概略構成の一例を示す図である。
図3図1(b)に示す放射線撮影装置から背面筐体を取り除き、放射線撮影装置の背面部の側から内部を見た概略構成の一例を示す図である。
図4】比較例に係る放射線撮影装置の概略構成の一例を示す図である。
図5】比較例に係る放射線撮影装置において、図2の領域A1における拡大断面図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る放射線撮影装置において、枠体の角部近傍領域を放射線入射面の側から見た概略構成の一例を示す図である。
図7】比較例に係る放射線撮影装置において、図2の領域A1における拡大断面図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る放射線撮影装置において、図2の領域A1における拡大断面図である。
図9】本発明の第3の実施形態に係る放射線撮影装置において、枠体の角部近傍領域を放射線入射面の側から見た概略構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0012】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る放射線撮影装置100の外観の一例を示す図である。
【0013】
具体的に、図1(a)は、放射線撮影装置100を、放射線Rが入射する放射線入射面部の側から見た図である。図1(a)に示すように、放射線撮影装置100は、外装部101を有して構成されている。この外装部101は、上述した放射線入射面部を構成し、放射線Rを透過させる放射線透過板120と、放射線透過板120と対向する背面部を構成する背面筐体130と、放射線透過板120と背面筐体130との間に位置する側面部を構成する枠体110と、を備えている。ここで、図1(a)では、放射線撮影装置100から放射線Rの発生源である放射線源に向かう方向をz軸とし、このz軸と直交する2軸であって放射線透過板120の放射線入射面部(或いは、背面筐体130の背面部)を定める相互に直交する2軸をx軸及びy軸とした、xyz座標系を図示している。また、図1(a)では、外装部101に内包される後述する放射線検出器の有効画素領域51を矩形の点線で示している。さらに、図1(a)では、有効画素領域51の中心52を通り且つx方向に沿った線53xと、有効画素領域51の中心52を通り且つy方向に沿った線53yとを、点線で示している。
【0014】
図1(b)は、放射線撮影装置100を、放射線Rが入射する放射線入射面部と対向する背面部の側から見た図である。即ち、放射線撮影装置100を、背面筐体130の側から見た図である。この図1(b)では、図1(a)に示したxyz座標系に対応させたxyz座標系を図示している。この図1(b)では、枠体110の1つの側面部と背面筐体130の所定位置に、それぞれ、無線通信を可能とするための無線用電波透過窓111及び無線用電波透過窓131を設けている。また、図1(b)では、外装部101に内包される電源14を図示している。
【0015】
放射線撮影装置100の外装部101は、軽量で且つ強度の大きい材料が求められるため、例えば、CFRP、アルミニウム合金、マグネシウム合金等を採用し得る。また、放射線透過板120には、入射する放射線Rの透過率の良好な材質を選定する必要がある。このため、外装部101の材料として、例えばアルミニウム合金やマグネシウム合金等の金属材料を採用する場合には、放射線透過板120には、CFRP等の高剛性且つ高い放射線透過率を有する材料を採用することが好適である。
【0016】
図2は、図1(b)に示す放射線撮影装置100のI-I断面における概略構成の一例を示す図である。この図2において、図1に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。また、図2では、図1(b)に示したxyz座標系に対応させたxyz座標系を図示している。
【0017】
放射線撮影装置100の外装部101の内部には、被写体(被検体)を透過した放射線Rを光へ変換する蛍光体層4が積層されており、蛍光体層4で発生した光を電気信号(画像信号)に変換する放射線検出部(「センサ」と称してもよい)5が設けられている。本実施形態においては、蛍光体層4及び放射線検出部5は、被写体を透過した放射線を電気信号に変換する「放射線検出器」を構成する。また、放射線検出部5は、放射線遮蔽部材6を介してセンサ保持板7に取り付けられている。ここで、蛍光体層4の材料としては、一般的に、GOS(Gd22S)もしくはCsIが多く用いられる。放射線検出部5は、一般的に、ガラス基板を用いて形成されているため、強い衝撃や荷重、変位を受けると、割れが発生する。そのため、放射線撮影装置100内の放射線検出部5における放射線入射面の側には、衝撃を吸収するための衝撃吸収部材8を配置している。衝撃吸収部材8は、被写体を透過した放射線Rをできる限り減衰させないように蛍光体層4へ導くため、放射線透過率の高い材質を選定する必要がある。放射線遮蔽部材6は、被写体及び放射線検出部5を透過した放射線Rから電気基板12等を保護する機能を有する。加えて、放射線遮蔽部材6は、放射線撮影装置100を透過しその背後にある壁等で散乱した放射線Rが跳ね返り、蛍光体層4や放射線検出部5へ再入射することを防ぐ機能を有する。そのため、放射線遮蔽部材6は、材料としては、Mo,W,Pb,Al,Cu,SUSや硫酸Ba等の材料が採用されることが多く、また、それらを混ぜ込んだシート材を使用する場合もある。
【0018】
センサ保持板7における背面筐体130の側の面には、放射線検出部5で変換された電気信号を配線(「フレキ」と称してもよい)11を介して読み出すための電気基板12a(図3に記載)及び電気基板12b、電気信号を読み出した後に放射線画像の画像データを生成する電気基板12c及び12d、通信モジュール基板12e、並びに、無線通信用のアンテナ13等が設置されている。例えば、電気基板12c及び12dで生成された放射線画像の画像データは、通信モジュール基板12e及びアンテナ13を通じて、表示システム(不図示)に送信されて表示される。ここでは、無線通信接続を行う例を説明したが、有線通信接続を行うようにしてもよく、また、無線通信接続を行う場合には、例えば2.4GHz帯や5GHz帯を主として使用することが好適である。このような通信方法により、例えばPCやタブレット等に撮影した放射線画像の画像データが転送されて操作者に確認される。
【0019】
無線通信接続を行う場合に、外装部101が金属系材料で作製される場合、無線の電波は遮蔽されてしまうため、外装部101には、図2に示すように、無線用電波透過窓111及び無線用電波透過窓131を設けている。そして、アンテナ13は、これらの無線用電波透過窓111及び無線用電波透過窓131に近い位置に、無線放射特性を考慮して配置される。また、無線用電波透過窓111及び無線用電波透過窓131は、外装部101の隣接する側面を跨ぎ、一体化されていてもよい。
【0020】
図3は、図1(b)に示す放射線撮影装置100から背面筐体130を取り除き、放射線撮影装置100の背面部の側から内部を見た概略構成の一例を示す図である。この図3において、図1及び図2に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。また、図3では、図1(b)及び図2に示したxyz座標系に対応させたxyz座標系を図示している。
【0021】
図3には、主として、配線11a~11l、電気基板12a~12g、アンテナ13、電源14、インターフェース15、及び、外部インターフェース16が図示されている。
【0022】
放射線撮影装置100は、ワイヤレスタイプであるため、図3に示すように、装置を駆動させるための電源14を搭載している。電源14は、充電が可能であることから一般的にリチウムイオンバッテリやリチウムイオンキャパシタ等の2次電池が採用されることが多いが、これに限定されるものではない。図3では、電源14は、容易に着脱をすることを考慮した場合の構造を示しており、具体的に、例えば背面筐体130を取り外すことなく電源14に直接アクセスできる構造とすることが好適である。また、図3には、電源スイッチ等のインターフェース15、及び、外部ユニットとの通信や電力供給のための外部インターフェース16も図示している。
【0023】
図4は、比較例に係る放射線撮影装置200の概略構成の一例を示す図である。この図4において、図1図3に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。また、図4では、図1(a)に示したxyz座標系に対応させたxyz座標系を図示している。具体的に、図4は、比較例に係る放射線撮影装置200から放射線透過板120を取り除き、放射線撮影装置200の放射線入射面部の側から内部を見た概略構成の一例を示す図である。この図4に示す比較例に係る放射線撮影装置200の枠体110には、放射線入射面の側に、溝240が枠体110の全周に亘って(外形に沿って)同一の幅で形成されている。また、図4に示す比較例に係る放射線撮影装置200では、溝240は、枠体110の全周に亘って同一の幅のみならず同一の深さで形成されているものとする。
【0024】
図5は、比較例に係る放射線撮影装置200において、図2の領域A1における拡大断面図である。この図5において、図1図4に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。また、図5では、図2に示したxyz座標系に対応させたxyz座標系を図示している。比較例に係る放射線撮影装置200では、図5に示すように、図4に示す溝240には、放射線透過板120と枠体110とを接合面510で接合させる接合部材150が収容される。
【0025】
図6は、本発明の第1の実施形態に係る放射線撮影装置100において、枠体110の角部近傍領域を放射線入射面の側から見た概略構成の一例を示す図である。この図6において、図1図5に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。また、図6では、図4に示したxyz座標系に対応させたxyz座標系を図示している。
【0026】
図6(a)に示す第1の実施形態に係る放射線撮影装置100の枠体110には、放射線入射面(図6(a)では、放射線透過板120との「接合面510」として記載)の側に、溝140が枠体110の全周に亘って(外形に沿って)形成されている。この際、図6(a)に示す溝140は、図4及び図5に示す溝240に相当する部分141と、放射線透過板120との接合面510に沿った方向において断面積が局所的に増大する部分142とを有して構成されている。具体的に、図6(a)に示す、断面積が局所的に増大する部分142-1は、接合面510に沿ったx方向において断面積が局所的に増大する部分であって、溝240に相当する部分141よりもy方向における幅が局所的に増大する部分である。また、図6(a)に示す、断面積が局所的に増大する部分142-2は、接合面510に沿ったy方向において断面積が局所的に増大する部分であって、溝240に相当する部分141よりもx方向における幅が局所的に増大する部分である。なお、図6(a)では、放射線入射面の側から見た場合に、断面積が局所的に増大する部分142が、矩形の形状である場合の例を示しているが、本実施形態においてはこれに限定されるものではなく、例えば、図6(b)に示すように、円形状であってもよい。
【0027】
即ち、図4に示す比較例に係る放射線撮影装置200では、枠体110の全周に亘って同一の幅の溝240が形成されているのに対して、図6に示す第1の実施形態に係る放射線撮影装置100では、幅が溝240に相当する部分141に加えて、溝240に相当する部分141よりも幅が局所的に増大する部分である断面積が局所的に増大する部分142を有する溝140が枠体110に形成されている点で異なっている。そして、図6に示す第1の実施形態に係る放射線撮影装置100では、溝240に相当する部分141及び断面積が局所的に増大する部分142を有する溝140に、枠体110と放射線透過板120とを接合面510で接合させる図5の接合部材150が収容される。
【0028】
この接合部材150による2物体間(具体的に、本実施形態では、枠体110と放射線透過板120との間)の接合強度は、接合部材150の表面積と関係があり、表面積が増加することで接合強度も増加する。図6に示す第1の実施形態に係る放射線撮影装置100では、断面積が局所的に増大する部分142に収容される接合部材150の量が、溝240に相当する部分141(即ち、比較例に係る溝240)に収容される接合部材150の量に比べて増大する。このため、図6に示す第1の実施形態に係る放射線撮影装置100では、断面積が局所的に増大する部分142に収容される接合部材150の表面積が増加する結果、断面積が局所的に増大する部分142の接合強度が増加することとなる。
【0029】
可搬性を有する放射線撮影装置は、院内の場所を問わず持ち運べるため、持ち運びの際に落下する危険を多くはらんでいる。この際、放射線撮影装置の落下時の姿勢は、1つに限定されないため、あらゆる姿勢で地面と衝突することになるが、確率としては角部近傍での衝突が最初の衝突となる可能性が高い。そのため、放射線撮影装置の角部近傍が局所的に変形させられる状況が多く発生し、接合部材150による枠体110と放射線透過板120との接合としては角部近傍から剥がれることが多い。このため、図6(a)及び図6(b)に示すように、溝140として、接合部材150を大量に収容できる断面積が局所的に増大する部分142を設けて、接合部材150の表面積を増やすことで、枠体110と放射線透過板120との剥がれを回避することができる。
【0030】
なお、接合部材150の表面積を増やすのであれば、枠体110における放射線透過板120との接合面510の幅Dいっぱいに、接合部材150を収容するための溝を形成することも考えられる。しかしながら、この場合、放射線透過板120のz方向の位置が安定しないことになる。放射線撮影装置における組立上の観点から、放射線透過板120のz方向の位置を安定させるために、溝140の幅Dbは、Db≠Dとする必要がある。この点を考慮しながら、できる限り溝140の幅Dbを増やすことで接合部材150の表面積を全体として稼ぐことが可能となる。
【0031】
図7は、比較例に係る放射線撮影装置において、図2の領域A1における拡大断面図である。この図7において、図1図6に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。また、図7では、図2に示したxyz座標系に対応させたxyz座標系を図示している。図7に示す比較例に係る放射線撮影装置では、図6(a)の幅Dbをできる限り大きくした溝340に、接合部材150を収容させるべく設けた例を示している。接合部材150の表面積を増やすほど接合部材150の放射線撮影装置における全体量が増加することになるが、接合部材150の量を増やしすぎると、図7に示すように、接合部材150が放射線撮影装置の外観面にはみ出す可能性も増加する。この場合、放射線撮影装置の外観の品位を損ねることになる。
【0032】
そこで、図6(a)及び図6(b)に示す第1の実施形態に係る放射線撮影装置100では、接合部材150が放射線撮影装置の外観面にはみ出し外観の品位を損ねることを回避するため、溝140に断面積が局所的に増大する部分142を設けている。これにより、接合部材150を用いて外装部101を接合する際に、接合部材150の量を放射線撮影装置の外観面にはみ出さない量に抑えられることで外観の品位が損なわれることを回避でき、且つ、剥がれを発生させない十分な接合強度を確保することができる。
【0033】
さらに、上述したように、接合部材150による枠体110と放射線透過板120との接合としては、角部近傍が弱い箇所となる。枠体110には、高強度の材料が採用されることが多く、角部近傍が変形しやすい。そのため、図6(a)に示すように、y方向に沿って形成された溝140の幅方向の中心線610から断面積が局所的に増大する部分142-1のx方向の中心までの距離L1、及び、x方向に沿って形成された溝140の幅方向の中心線620から断面積が局所的に増大する部分142-2のy方向の中心までの距離L2が、放射線撮影装置100に対し大きくなり過ぎないことが好ましい。背面筐体130を枠体110に取り付け方法はビスによる締結が多く採用され、その際、防水や放射線撮影装置100の落下時の耐衝撃等を考慮し、締結は、放射線撮影装置100(溝140)の角部から50mm以内に設置されることが多い。このため、接合部材150による枠体110と放射線透過板120との接合についても、断面積が局所的に増大する部分142の位置を、ビスによる締結と同一の位置もしくは溝140の角部から所定の距離以内の位置に配置されていることが好ましい。例えば、図6(a)に示す断面積が局所的に増大する部分142-1及び142-2は、それぞれ、距離L1及びL2が50mm以内に少なくとも1つは配置されていることが好ましい。これにより、接合部材150による枠体110と放射線透過板120との接合において剥がれを発生させやすい箇所をピンポイントで補強することができる。
【0034】
以上説明した第1の実施形態に係る放射線撮影装置100では、枠体110と放射線透過板120とを接合させる接合部材150を収容する溝140として、接合面510に沿った方向において断面積が局所的に増大する部分142を有するようにしている。
かかる構成によれば、接合部材150を用いて外装部101を接合する際に、外観の品位を損ねることなく十分な接合強度(例えば、地面との衝突による衝撃等に対する十分な接合強度)を確保することができる。また、接合部材150を用いて枠体110と放射線透過板120とを接合させるため、当該接合においてビスによる締結が不要となり、その結果、放射線撮影装置100の軽量化や放射線撮影装置100の製造工数の削減を図ることができる。
【0035】
なお、図6に示す例では、溝140を、放射線撮影装置100の側面部を構成する枠体110に形成する態様を示したが、本実施形態においてはこの態様に限定されるものではない。例えば、溝140を、枠体110に換えて放射線撮影装置100の放射線入射面部を構成する放射線透過板120に形成する態様も、本実施形態に含まれる。また、例えば、溝140を、枠体110及び放射線透過板120の両方に形成する態様も、本実施形態に含まれる。即ち、本実施形態においては、溝140は、枠体110及び放射線透過板120のうちの少なくともいずれか一方に設けられていればよい。
【0036】
また、図6に示す例では、断面積が局所的に増大する部分142として、2箇所に分かれて構成された断面積が局所的に増大する部分142-1及び142-2を設ける態様を示したが、本実施形態においてはこの態様に限定されるものではない。例えば、断面積が局所的に増大する部分142は、溝140の角部を介して繋がっている態様も、本実施形態に含まれる。
【0037】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、以下に記載する第2の実施形態の説明では、上述した第1の実施形態と共通する事項については説明を省略し、上述した第1の実施形態と異なる事項について説明を行う。
【0038】
第2の実施形態に係る放射線撮影装置の外観は、図1に示す第1の実施形態に係る放射線撮影装置100の外観と同様である。また、図1(b)に示す第2の実施形態に係る放射線撮影装置100のI-I断面における概略構成は、図2に示す第1の実施形態に係る放射線撮影装置100のI-I断面における概略構成と同様である。
【0039】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る放射線撮影装置100において、図2の領域A1における拡大断面図である。この図8において、図1図7に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。また、図8では、図2に示したxyz座標系に対応させたxyz座標系を図示している。なお、2の実施形態に係る放射線撮影装置100では、図2に示す領域A2においても、図8に示す構成と同様の構成を採用し得る。
【0040】
上述した第1の実施形態では、接合部材150を収容する溝140として、第1の実施形態で説明した溝240に相当する部分141に加えて、溝240に相当する部分141よりも幅が局所的に増大する部分である断面積が局所的に増大する部分142を有して構成されているものであった。これに対して、第2の実施形態では、接合部材150を収容する溝140として、上述した断面積が局所的に増大する部分142に換えて、溝240に相当する部分141よりも深さが局所的に増大する部分である断面積が局所的に増大する部分143を有して構成されている。
【0041】
図8に示す第2の実施形態に係る放射線撮影装置100では、断面積が局所的に増大する部分143に収容される接合部材150の量が、溝240に相当する部分141(即ち、比較例に係る溝240)に収容される接合部材150の量に比べて増大する。このため、図8に示す第2の実施形態に係る放射線撮影装置100では、断面積が局所的に増大する部分143に収容される接合部材150の表面積が増加する結果、断面積が局所的に増大する部分143の接合強度が増加することとなる。また、第2の実施形態では、断面積が局所的に増大する部分143が、溝240に相当する部分141(のみ)に対して、深さ方向(z方向)に接合部材150の表面積を増加させているため、接合面510の法線方向に対する引き剥がし力がより増加することが期待できる。また、断面積が局所的に増大する部分143は、深さ方向(z方向)に接合部材150の表面積を増加させているため、例えば溝140の幅を局所的に増大させることなく接合部材150による接合強度を増加させることができ、さらに、放射線撮影装置100の外観面に接合部材150がはみ出ることに対してもより回避しやすくなる。
【0042】
なお、図8に示す例では、第1の実施形態で説明した溝240に相当する部分141のx方向の幅と、断面積が局所的に増大する部分143のx方向の幅とが異なっているが、本実施形態においては同じ幅であってもよい。本実施形態においては、溝240に相当する部分141(のみ)に対して、断面積が局所的に増大する部分143の深さが深くなっていれば、これらの部分の幅は如何なる態様であってもよい。
【0043】
なお、図8に示す例では、溝140を、放射線撮影装置100の側面部を構成する枠体110に形成する態様を示したが、本実施形態においてはこの態様に限定されるものではない。例えば、溝140を、枠体110に換えて放射線撮影装置100の放射線入射面部を構成する放射線透過板120に形成する態様も、本実施形態に含まれる。また、例えば、溝140を、枠体110及び放射線透過板120の両方に形成する態様も、本実施形態に含まれる。即ち、本実施形態においては、溝140は、枠体110及び放射線透過板120のうちの少なくともいずれか一方に設けられていればよい。
【0044】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。なお、以下に記載する第3の実施形態の説明では、上述した第1及び第2の実施形態と共通する事項については説明を省略し、上述した第1及び第2の実施形態と異なる事項について説明を行う。
【0045】
第3の実施形態に係る放射線撮影装置の外観は、図1に示す第1の実施形態に係る放射線撮影装置100の外観と同様である。また、図1(b)に示す第3の実施形態に係る放射線撮影装置100のI-I断面における概略構成は、図2に示す第1の実施形態に係る放射線撮影装置100のI-I断面における概略構成と同様である。
【0046】
図9は、本発明の第3の実施形態に係る放射線撮影装置100において、枠体110の角部近傍領域を放射線入射面の側から見た概略構成の一例を示す図である。この図9において、図1図8に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。また、図9では、図4に示したxyz座標系に対応させたxyz座標系を図示している。
【0047】
上述した第1の実施形態では、接合部材150を収容する溝140として、第1の実施形態で説明した溝240に相当する部分141に加えて、溝240に相当する部分141よりも幅が局所的に増大する部分である断面積が局所的に増大する部分142を有して構成されているものであった。また、第2の実施形態では、接合部材150を収容する溝140として、上述した断面積が局所的に増大する部分142に換えて、溝240に相当する部分141よりも深さが局所的に増大する部分である断面積が局所的に増大する部分143を有して構成されているものであった。これに対して、第3の実施形態は、上述した第1の実施形態と第2の実施形態を組み合わせた形態である。即ち、第3の実施形態では、接合部材150を収容する溝140として、上述した第1または第2の実施形態における断面積が局所的に増大する部分142または143に換えて、溝240に相当する部分141よりも幅及び深さが局所的に増大する部分である断面積が局所的に増大する部分144を有して構成されている。
【0048】
図9に示す第3の実施形態に係る放射線撮影装置100では、断面積が局所的に増大する部分144に収容される接合部材150の量が、溝240に相当する部分141(即ち、比較例に係る溝240)に収容される接合部材150の量に比べてより増大する。このため、図9に示す第3の実施形態に係る放射線撮影装置100では、断面積が局所的に増大する部分144に収容される接合部材150の表面積がより増加する結果、接合部材150による接合強度をより増大させる効果を期待できる。また、溝140として、溝240に相当する部分141よりも幅及び深さが局所的に増大する部分である断面積が局所的に増大する部分144を有して構成することにより、接合部材150による接合強度を、せん断方向及び引き剥がし方向ともに増加させることが期待できる。
【0049】
なお、図9に示す例では、溝140を、放射線撮影装置100の側面部を構成する枠体110に形成する態様を示したが、本実施形態においてはこの態様に限定されるものではない。例えば、溝140を、枠体110に換えて放射線撮影装置100の放射線入射面部を構成する放射線透過板120に形成する態様も、本実施形態に含まれる。また、例えば、溝140を、枠体110及び放射線透過板120の両方に形成する態様も、本実施形態に含まれる。即ち、本実施形態においては、溝140は、枠体110及び放射線透過板120のうちの少なくともいずれか一方に設けられていればよい。
【0050】
また、図9に示す例では、断面積が局所的に増大する部分144として、2箇所に分かれて構成された断面積が局所的に増大する部分144-1及び144-2を設ける態様を示したが、本実施形態においてはこの態様に限定されるものではない。例えば、断面積が局所的に増大する部分144は、溝140の角部を介して繋がっている態様も、本実施形態に含まれる。
【0051】
なお、上述した本発明の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0052】
100:放射線撮影装置、101:外装部、110:枠体、120:放射線透過板、130:背面筐体、140:溝、141:溝240に相当する部分、142:断面積が局所的に増大する部分、150:接合部材、R:放射線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9