(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20240304BHJP
G03G 15/08 20060101ALI20240304BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
G03G21/00 510
G03G15/08 349
G03G21/00 396
G03G21/00 388
G03G15/00 303
(21)【出願番号】P 2019192043
(22)【出願日】2019-10-21
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】上島 瑞歩
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-008227(JP,A)
【文献】特開2007-086439(JP,A)
【文献】特開2019-132958(JP,A)
【文献】特開2005-266380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/08
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに画像を形成する画像形成装置であって、
センサと、
前記センサ
を用いて繰り返し検出される検出結果を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶され
た検出結果の
履歴である第1データに基づいて、該第1データ
に含まれる所定期間内の検出結果の平均値に応じた第2データを生成する生成手段と、
前記記憶手段に記憶された前記第1データ
に含まれる検出結果毎に、所定の条件を満たすか否
かを判定する判定手段と、
前記第1データに含まれる前記所定期間内の検出結果の内、前記判定手段によ
り前記所定の条件を満たしていないと判定された
検出結果の数をカウントするカウント手段と、
前記カウント手段によりカウントされた前
記数と前記第2データとを外部装置へ送信する送信手段と、を備えることを特徴とする、
画像形成装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記記憶手段に記憶された前記第1データ
に含まれる検出結果が所定範囲内である場合に、該
検出結果が前記所定の条件を満たすと判定することを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
静電潜像が形成される感光体と、
トナーとキャリアとを含む現像剤を用いて、前記感光体上の前記静電潜像を現像する現像器と、をさらに備えており、
前記センサは、前記現像器に蓄積された現像剤中のトナーの濃度である現像器内トナー濃度を検知するためのトナーセンサであり、
前記生成手段は
、前記トナーセンサにより検知された前記現像器内トナー濃度と目標濃度との差分の平均値を
、前記第2データとして生成することを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
静電潜像が形成される感光体と、
前記感光体上の前記静電潜像を現像する現像器と、をさらに備えており、
前記センサは、前記現像器内の相対湿度を検出するための湿度センサであり、
前記生成手段は、
前記湿度センサにより検出された相対湿度の平均値を
、前記第2データとして生成することを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
パターン画像が形成される中間転写体をさらに備えており、
前記センサは、前記中間転写体上の前記パターン画像の濃度を検出するパターン検出センサであり、
前記生成手段は、
前記パターン検出センサにより検出された前記パターン画像の濃度の平均値を
、前記第2データとして生成することを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記送信手段は、さらに、前記判定手段により前記所定の条件を満たしていないと判定された検出結果を外部装置へ送信することを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記画像形成装置は、トナーを収容する収容容器が着脱可能に装着され、
前記センサは、前記収容容器内のトナー残量を推定するために用いられることを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記画像形成装置は、トナーを収容する収容容器が着脱可能に装着され、
前記センサは、前記収容容器からのトナー補給量を推定するために用いられることを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部装置と通信可能な情報処理装置のデータの収集技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば複写機メーカは、製品を購入いただいたお客様との間で、製品のメンテナンス(部品交換、消耗品の補充、保守等)にかかる費用も含めた契約を結ぶ販売形態をとっていることも多い。画像形成装置は、部品の故障、消耗品寿命、各種の動作不良等によって稼働停止してしまうと、修理や消耗品の交換を行う間、生産性が低下してしまう。そのため、複写機メーカは、生産性の低下期間を可能な限り短くするために、故障や消耗品の寿命を前もって予測する精度を向上させる必要がある。
【0003】
故障や消耗品の寿命を前もって予測する技術の開発には、一般的に、より高精度な予測のために出来るだけ多くのデータが必要となる。しかし、実験により大量のデータを取得することは現実的には困難である。そのために、製品出荷後も予測精度の向上のために継続的にデータを収集する仕組みを画像形成装置に実装することが検討されている。しかしながら、画像形成装置は、出荷後に常に正常動作を行うとは限らない。異常動作中に画像形成装置から取得されたデータは、最終的に予測精度の向上に支障をきたす可能性がある。そこで特許文献1は、画質に関わるセンサ情報から画像形成装置の動作状態を判定して、正常動作中に取得されたデータ(センサ情報)のみを予測に用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、画像形成装置は、データ(センサ情報)を逐次取得しなければならない。そのために、画像形成装置内に蓄積されるデータ量が膨大になる。また、ネットワークを介して外部装置と画像形成装置との間でデータ(センサ情報)が逐次送受信される場合には、画像形成装置と外部装置との間のデータ通信量が膨大になる。予測制御に用いられるデータは、いわゆるビッグデータであり、画像形成装置及び外部装置の処理負荷(データ蓄積量、データ通信量)を大きくする。
【0006】
そのために、蓄積するデータ量やデータ通信量をデータ圧縮等の技術で削減して、画像形成装置のストレージ容量や通信容量に余裕を持たせる必要がある。しかしながら、蓄積するデータ量やデータ通信量を削減すると、データが持つ情報も損失することになるために、圧縮されたデータは予測精度の向上に利用できなくなる。
【0007】
本発明の目的は、上記の問題に鑑み、情報の損失を抑制しつつ、ビッグデータによる処理負荷を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像形成装置は、シートに画像を形成する画像形成装置であって、センサと、前記センサを用いて繰り返し検出される検出結果を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された検出結果の履歴である第1データに基づいて、該第1データに含まれる所定期間内の検出結果の平均値に応じた第2データを生成する生成手段と、前記記憶手段に記憶された前記第1データに含まれる検出結果毎に、所定の条件を満たすか否かを判定する判定手段と、前記第1データに含まれる前記所定期間内の検出結果の内、前記判定手段により前記所定の条件を満たしていないと判定された検出結果の数をカウントするカウント手段と、前記カウント手段によりカウントされた前記数と前記第2データとを外部装置へ送信する送信手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、情報の損失を抑制しつつ、ビッグデータによる処理負荷を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】トナー補給量の推定処理を表すフローチャート。
【
図9】感光層の削れ量推定機能を有するコントローラの構成図。
【
図11】色ずれ量の推定機能を有するコントローラの構成図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
(画像形成装置)
図1は、画像形成装置の構成図である。画像形成装置100は、複数色の現像剤(トナー)を用いてフルカラーの画像を形成可能である。画像形成装置100は、原稿から画像を読み取るリーダ部200と、画像を形成するプリンタ部201と、操作部90とを備える。リーダ部200は、原稿から読み取った画像を表す画像データを生成して、プリンタ部201へ送信する。プリンタ部201は、リーダ部200から取得する画像データ、或いは外部装置から入力される画像データに基づいて、シートSに画像を形成する。操作部90は、入力装置及び出力装置を備えるユーザインタフェースである。入力装置には、テンキー等の各種キーボタン、タッチパネル等がある。出力装置には、ディスプレイ、スピーカ等がある。ユーザは、操作部90により印刷枚数や画像濃度等の印刷設定や、印刷指示の入力を行うことができる。画像形成装置100は、内蔵するコントローラ1100により動作が制御される。
【0013】
プリンタ部201は、画像形成部Pa、Pb、Pc、Pd、中間転写ベルト107、転写ローラ112、定着器113、手差しカセット114、給紙カセット115、及び排紙部116を備える。画像形成部Paはイエローの画像を形成する、画像形成部Pbはマゼンタの画像を形成する。画像形成部Pcはシアンの画像を形成する。画像形成部PPdブラックの画像を形成する。中間転写ベルト107は、画像形成部Pa、pb、pc、Pdから色毎の画像が転写される無端ベルト状の中間転写体である。中間転写ベルト107は、駆動ローラ108及び従動ローラ109、110に張架されている。駆動ローラ108が回転することで、中間転写ベルト107は矢印B方向へ回転して画像を搬送する。
【0014】
転写ローラ112は、中間転写ベルト107上に担持される画像をシートSに転写するための第2ニップ部T2を従動ローラ110との間に形成する。転写ローラ112には不図示の高圧電源から転写バイアスが印加される。これにより、転写ローラ112と中間転写ベルト107との間において、中間転写ベルト107上の画像がシートSに転写される。画像が転写されるシートSは、手差しカセット114或いは給紙カセット115から給紙される。定着器113は、2つのローラとヒータとを有する。定着器113は、2つのローラの圧力とヒータの熱とによってシートSに画像を定着させる。定着器113において画像が定着されたシートSは排紙部116へ搬送される。
【0015】
中間転写ベルト107の回転方向(画像の搬送方向)で画像形成部Pdの下流側には、中間転写ベルト107近傍に、パターン検出センサ120が配置される。パターン検出センサ120は、中間転写ベルト107上に形成されたパターン画像を検出する。パターン画像は、色ずれ量や画像濃度を測定するために用いられる画像である。パターン検出センサ120は、発光部及び受光部を備える光学センサである。発光部は、例えば発光素子としてLED(Light Emitting Diode)を備える。受光部は、例えば受光素子としてPD(Photo Detector)を備える。パターン検出センサ120は、中間転写ベルト107の搬送方向に直交する方向の異なる位置に複数配置される。例えば、パターン検出センサ120は、中間転写ベルト107の搬送方向において同じ位置で且つ搬送方向に直交する方向において異なる位置に、2個(第1パターン検出センサ、第2パターン検出センサ)が配置されて構成される。画像形成装置100は、例えば、中間転写ベルト107の搬送方向に直交する方向に異なる位置に形成されたパターン画像を、第1、第2パターン検出センサより検出し、それらの検出結果に基づいて色ずれ量や画像濃度を測定することができる。
【0016】
プリンタ部201は、トナーボトルTa、Tb、Tc、Tdが着脱可能に装着される。トナーボトルTa、Tb、Tc、Tdはトナーを収容するトナー容器に相当する。トナーボトルTaはイエローのトナーが収容される。トナーボトルTaから画像形成部Paにイエローのトナーが補給される。トナーボトルTbはマゼンタのトナーが収容される。トナーボトルTbから画像形成部Pbにマゼンタのトナーが補給される。トナーボトルTcはシアンのトナーが収容される。トナーボトルTcから画像形成部Pcにシアンのトナーが補給される。トナーボトルTdはブラックのトナーが収容される。トナーボトルTdから画像形成部Pdにブラックのトナーが補給される。
【0017】
図2は、画像形成部Pdの構成説明図である。なお、画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは同様の構成であり、形成する画像の色が異なるのみである。画像形成部Pdは、感光体ドラム101を備える。感光体ドラム101の表面には感光層が形成されている。感光体ドラム101の周囲には、帯電器102、光走査装置103、現像器105、及びドラムクリーナ106が配置されている。
【0018】
中間転写ベルト107を介して感光体ドラム101に対向する位置には、転写ローラ104が設けられている。現像器105には、現像器105周辺の雰囲気温度を検出するための温度センサ451が備えられている。温度センサ451により検出される雰囲気温度の変化量は、パターン画像を用いずに色ずれ量を算出する際に用いられる。温度センサ451は現像器105の雰囲気温度を検出する温度検出装置である。現像器105は、トナーボトルTdから対応する色(ブラック)のトナーが補給される。
【0019】
トナーボトルTdから現像器105へのトナー補給動作について説明する。なお、他の色に対応するトナーボトルTa、Tb、Tcも同様のトナー補給動作より、トナーを対応する現像器へ補給する。
現像器105内のトナー量は、現像器105に設けられるインダクタンスセンサ453により検出される。インダクタンスセンサ453は、現像器105に収容されている現像剤の透磁率を検出し、現像剤中のトナーの割合に応じた信号を出力する。コントローラ1100は、インダクタンスセンサ453の出力信号に基づいて、現像器105に収容されている現像剤中のトナーの量を検出する。
【0020】
現像器105に収容されている現像剤は、磁性を有するキャリアとトナーとを含んでいる。そのため、現像剤中のトナーの割合(以下、「現像器内トナー濃度」と称する。)が増加すると、現像剤中のキャリアの割合が減少する。この場合、インダクタンスセンサ453の出力値が小さくなる。逆に現像器内トナー濃度が減少すると、現像剤中のキャリアの割合が増加する。この場合、インダクタンスセンサ453の出力値が大きくなる。つまり、インダクタンスセンサ453は、現像器105内に収容された現像剤中のトナーの割合に応じた出力値の信号(出力信号)をコントローラ1100に出力する。コントローラ1100は、現像器内トナー濃度の目標濃度を逐次設定する。目標濃度は、画像形成装置100に要求される画質を保つための現像器内トナー濃度である。コントローラ1100は、インダクタンスセンサ453を用いて検出される現像器105内の実際の現像器内トナー濃度と、目標濃度との差分(以下、「目標濃度差分」と称する。)を算出する。
【0021】
画像生成部Pdには、1ページ分の画像に含まれる画素毎の濃度の総和を画像データに基づいて計数する後述のドットカウンタが設けられる。計数された画素毎の濃度の総和(以下、「ドットカウント」と称する。)は、1ページのトナー像を形成することで現像器105から消費されるトナーの消費量に相当する。なお、ドットカウントを取得する方法は、公知の技術であるので、ここでの説明を省略する。
【0022】
画像形成部Pdは、トナーボトルTdが装着される装着部20と、装着部20に装着されたトナーボトルTdに係合してトナーボトルTdを回転させる不図示の補給モータと、を備えている。コントローラ1100は、インダクタンスセンサ453の検出結果及びドットカウントから算出されるトナー消費量の和が所定の閾値を超えたときに、補給モータに対して補給指令を通知する。補給モータは、補給指令を受信してトナーボトルTdを回転させる。トナーボトルTdは、カム構造を有しており、回転に同期してトナーボトルTdのポンプ部が伸縮されて内部のトナーを補給する。このカム構造は、例えばトナーボトルTdが半周するごとにポンプ部を1回押圧するような構造である。トナーボトルTdから補給されたトナーは、搬送路21を通って現像器105に供給される。
【0023】
装着部20は、トナーボトルTdの回転を検出するためのフォトインタラプタ73を有している。フォトインタラプタ73は、トナーボトルTdが例えば半周したことを検出して、検出結果をコントローラ1100に通知する。フォトインタラプタ73の構成は、公知の技術であるので、ここでの説明を省略する。コントローラ1100は、フォトインタラプタ73の検出結果を受信すると、補給モータに対して回転停止指令を通知する。これにより補給動作が終了する。このように、画像形成装置100におけるトナー補給動作は間欠的な動作である。
【0024】
(画像形成プロセス)
以上のような構成の画像形成装置100による画像形成プロセスについて説明する。画像形成プロセスは、コントローラ1100による画像形成装置100の各部の動作制御により行われる。画像形成時には、感光体ドラム101が不図示の駆動モータによって矢印A方向に回転する。駆動モータの動作はコントローラ1100によって制御される。帯電器102は、感光体ドラム101の表面の感光層を一様に帯電させる。帯電された感光体ドラム101は、光走査装置103から出射されるレーザ光によって露光される。これにより感光体ドラム101上に静電潜像が形成される。現像器105は、感光体ドラム101上の静電潜像をトナー像として現像する。モノクロの画像を形成する場合、画像形成部Pdにおいてのみ画像が形成される。フルカラーの画像を形成する場合、各画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdにおいて色毎に画像が形成される。感光体ドラム101を回転させる駆動モータの駆動時間は、コントローラ1100により計測される。帯電器102による感光体ドラムの帯電時間は、コントローラ1100により計測される。
【0025】
感光体ドラム101上に形成されたトナー像は、感光体ドラム101の回転により、感光体ドラム101と中間転写ベルト107との間に形成される第1ニップ部T1に搬送される。転写ローラ104には転写バイアスが印加されており、感光体ドラム101上のトナー像が中間転写ベルト107に転写される。モノクロの画像を形成する場合、画像形成部Pdにより形成されるブラックのトナー像が中間転写ベルト107に転写される。フルカラーの画像を形成する場合、画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdにより形成される各色のトナー像が順次重ねて中間転写ベルト107に転写される。感光体ドラム101から中間転写ベルト107へ転写されずに残留したトナーは、ドラムクリーナ106によって除去される。
【0026】
中間転写ベルト107上のトナー像は、中間転写ベルト107が矢印B方向へ回転することで第2ニップ部T2へ搬送される。第2ニップ部T2では、手差しカセット114又は給紙カセット115から搬送されてきシートSに、中間転写ベルト107上のトナー像が転写される。トナー像が転写されたシートSは、第2ニップ部T2から定着器113へと搬送される。定着器113は、トナー像をシートSに定着させる。トナー像が定着したシートSは、排紙部116へ排出される。
【0027】
図3は、光走査装置103の説明図である。
図3(a)は光走査装置103の上面図である。
図3(b)は、
図3(a)におけるA-A’断面図である。光走査装置103は、光学箱401、レーザ光を出射する光源202、及び光源202を制御するための制御基板203を備える。光源202及び制御基板203は、光学箱401の外部に取り付けられている。光学箱401の内部には、レーザ光が感光体ドラム101上を所定の方向に走査するように、回転多面鏡402、モータ403、fθレンズ404、反射ミラー405、406、fθレンズ407、及び反射ミラー408が設けられる。
【0028】
回転多面鏡402は、光源202から出射されたレーザ光を偏向する。回転多面鏡402はモータ403によって回転駆動される。回転多面鏡402によって偏向されたレーザ光は、fθレンズ404に入射する。fθレンズ404を通過したレーザ光は、反射ミラー405、406によって反射され、fθレンズ407に入射する。fθレンズ407を通過したレーザ光は、反射ミラー408によって感光体ドラム101の方向へ反射される。光学箱401には防塵ガラス409が設けられている。反射ミラー408によって反射されたレーザ光は、防塵ガラス409を通過して感光体ドラム101を露光する。回転多面鏡402の回転によって等角速度で偏向されるレーザ光は、fθレンズ404、407を通過して感光体ドラム101上に結像し、感光体ドラム101上を等速度で走査する。
【0029】
光走査装置103は、ビームディテクタ412(以下、「BD412」と称する。)を備える。BD412は、レーザ光による感光体ドラム101の走査タイミングを決定するための同期信号を生成する。回転多面鏡402によって偏向されたレーザ光は、fθレンズ404を通過し、反射ミラー405及びBDミラー(不図示)によって反射され、BD412に検出される。制御基板203上には、光走査装置103の温度を検出する温度センサ450が実装されている。温度センサ450は、光走査装置103の温度を検出する温度検出装置として機能する。
【0030】
以下の説明では、画像形成部Pa、Pb、Pc、PdやトナーボトルTa、Tb、Tc、Tdは、色を区別する必要が無い場合に画像形成部P、トナーボトルTと記載する。また、コントローラ1100は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Random Access Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を備える。CPUはROMに格納されるコンピュータプログラムを実行することで、コントローラ1100による各種機能を実現する。この際、RAMは、ワークエリアを提供する。
【0031】
本実施形態では、コントローラ1100が、トナー補給量の推定、感光体ドラム101の寿命推定のためのデータ収集、及び色ずれ量の推定のためのデータ収集を行う場合について説明する。コントローラ1100が予兆予測装置として動作する場合、コントローラ1100は、収集したデータに基づいて、画像形成装置100の故障や消耗品の寿命の予測を行う。予兆予測装置が画像形成装置100とは別に設けられる外部装置である場合、コントローラ1100は、各機能の実現時に収集したデータを、予兆予測装置へ送信する。予兆予測装置は、コントローラ1100から取得したデータに基づいて、画像形成装置100の故障や消耗品の寿命の予測を行う。
【0032】
(トナー補給量の推定)
コントローラ1100は、トナーボトルTから現像器105へのトナー補給量を推定することで、トナーボトルT内のトナー残量の推定を行う予兆予測装置として機能する。トナー残量はユーザの使用状況等の種々の要因で変化するため、より高精度な推定を実現するためには製品出荷後のデータ取得が必要である。
図4は、トナーボトルT内の残量推定機能を有するコントローラ1100の構成図である。
【0033】
コントローラ1100は、補給回数累計部1110、補給動作間隔計測部1111、ドットカウント数積算部1112、感光体ドラム走行距離計算部1113、帯電時間計算部1114、及び感光体ドラム耐久情報計算部1115として機能する。これらの機能により、トナー補給量が推定される。コントローラ1100は、目標濃度設定部1116及び目標濃度差分算出部1117として機能する。これらの機能により、現像器105内のトナー濃度が目標濃度に制御される。コントローラ1100は、前処理用一時蓄積部1101、前処理実行部1102、トナー補給量推定部1118、適応可否判定部1103、不可判定カウンタ1104、及び外部送信用データ蓄積部1105として機能する。外部送信用データ蓄積部1105は、データ蓄積部1106及び適応不可データ蓄積部1107を含む。これらの機能により、予兆予測に用いられるデータが生成、蓄積される。
【0034】
コントローラ1100には、各トナーボトルTa~Tdの装着部20に設けられるフォトインタラプタ73、各画像形成部Pa~Pd内のセンサ、モータ等、及びサーバ通信部1108が接続される。各画像形成部Pa~Pd内のセンサ、モータ等には、ドットカウンタ66、感光体ドラム101の駆動モータ67、帯電器102の駆動モータ68、現像器105内の相対湿度検出部69、パターン検出センサ120、及びインダクタンスセンサ453がある。
【0035】
図5は、コントローラ1100によるトナー補給量の推定処理を表すフローチャートである。
図6は、トナーボトルTによる1回当たりの補給動作で現像器105に補給されるトナー補給量の説明図である。
図7は、推定値の説明図である。
【0036】
1回のトナー補給動作当たりのトナー補給量は、様々な要因でばらつくことがある。そのために、単純に補給回数の累計結果に基づいてトナー補給量を算出しても、トナーボトルT内のトナー残量を正確に推定することは困難である。コントローラ1100は、補給動作によるトナー補給量のばらつきの要因として考えられる項目のそれぞれについての誤差補正を行い、誤差補正済みのトナー補給量の推定値R1を算出する。誤差補正済みトナー補給量の推定値R1は、1回の補給動作毎に算出しても、2回以上の補給動作毎に算出しても、その算出タイミングは任意でよい。また、算出タイミングは可変でもよい。この任意に設定可能な回数の補給動作が行われている期間を、以降、「所定期間」と称し、以降はこの所定期間1単位分におけるトナー補給量の推定及び誤差補正について説明する。
【0037】
まず、コントローラ1100は、所定期間におけるトナー補給動作の回数を累計する。補給回数累計部1110は、フォトインタラプタ73がトナーボトルTの回転を検出した回数をカウントすることで、所定期間におけるトナー補給動作の回数(補給動作回数)を累計する。補給動作1回当たりのトナー補給量にばらつきがなければ、補給動作回数に所定の定数を乗算することで、所定期間におけるトナー補給量を推定することが可能である。所定の定数は、補給動作1回あたりのトナー補給量の理論値である。理論値は予め判明している。ばらつきがない場合のトナー補給量の推定値R0を基準推定値と称する(
図7の式(a)参照)。補給回数累計部1110は、算出した基準推定値R0を前処理用一時蓄積部1101に蓄積する。
コントローラ1100は、基準推定値にばらつきを考慮した誤差補正値を加えることで、より正確なトナー補給量の推定を行うことが可能となる。以下は誤差補正値に必要な情報について説明する。
【0038】
今回の補給動作時と前回の補給動作時との時間間隔(以下、「補給動作間隔」と称する。)に応じてトナーの流動性が変化する。このことが原因で、トナーボトルTの補給動作1回当たりのトナー補給量は変化する。そのため、トナー補給動作は、補給動作間隔に応じて、補給動作1回当たりのトナー補給量が異なる。以下の説明では、補給動作として第1補給動作パターンと、補給動作1回当たりの補給量が第1補給動作パターンより少ない第2補給動作パターンとの2パターンが存在するものと仮定して説明される。補給動作間隔計測部1111は、フォトインタラプタ73がトナーボトルTの回転を検出したタイミングに基づいて、補給動作間隔を計測する。補給動作間隔計測部1111は、計測した補給動作間隔に基づいて、補給動作を第1補給動作パターンと第2補給動作パターンとに分類する(
図6参照)。
【0039】
補給動作間隔計測部1111は、予め決められた期間におけるトナー補給動作が2回以上の場合、第1補給動作パターンに分類された補給動作の回数を、当該期間に実行されたトナー補給動作の実行回数分だけカウントアップする。一方、補給動作間隔計測部1111は予め決められた期間におけるトナー補給動作が2回未満の場合、第2補給動作パターンに分類された補給動作の回数をカウントアップする。補給動作間隔計測部1111は、第1補給動作パターンに分類された補給動作の回数と、第2補給動作パターンに分類された補給動作の回数とを前処理用一時蓄積部1101に蓄積する。なお、本実施形態ではトナー補給動作を2種類の補給動作パターンへ分類しているが、分類数は任意に設定することができ、3種類以上でもよく、また分類の基準値もそれぞれ任意に設定してよい。
【0040】
ドットカウント数積算部1112は、上記したドットカウンタ66から、1ページ分の画像に含まれる画素毎の濃度の総和であるドットカウント数を取得する。ドットカウント数積算部1112は、取得したドットカウント数を所定期間分積算した積算値を前処理用一時蓄積部1101に蓄積する。これによって、所定期間において消費されるトナーの量が推定される。
【0041】
トナー補給動作は、上記の通り、インダクタンスセンサ453を用いて検出される現像器105内のトナー濃度に応じて行われる。一般にトナーボトルT内のトナー残量が少なくなると、現像器105内のトナー濃度の目標濃度への追従性が低下する。これは、トナーボトルT内のトナー残量が減少した状態では、トナー残量の潤沢な時期に比較して、補給動作1回当たりのトナー補給量が少なくなってしまうためである。そのために、現像器105内のトナー濃度の目標濃度への追従性を考慮した誤差補正が必要である。目標濃度差分算出部1117は、インダクタンスセンサ453の検出結果からから現像器105内のトナー濃度を取得し、目標濃度との差分(目標濃度差分)を算出する(
図7の式(b)参照)。目標濃度は、目標濃度設定部1116により設定される。目標濃度差分算出部1117は、所定期間内の目標濃度差分を前処理用一時蓄積部1101に蓄積する。
【0042】
相対湿度検出部69は、現像器105内の相対湿度を検出する。相対湿度検出部69は、検出した相対湿度を前処理用一時蓄積部1101に蓄積する。一般に、現像器105内の湿度が変化すると、現像器105内部のトナーの帯電量に変化が生じて、現像時に消費されるトナー量が変化する。そのため、現像器105内の相対湿度に応じて、トナー消費量の誤差補正を行う必要がある。相対湿度は直接測定された測定値であっても、別の部位の温湿度の測定値から算出された値であっても、どちらでもよい。本実施形態では後者であり、現像器105の周辺に相対湿度検出部69が配置される。相対湿度検出部69は、現像器105内の相対湿度の検出が可能であれば、どの部位にいくつ配置されていてもよい。
【0043】
現像器105の内部のトナーの帯電量の変化は、現像器105の周辺の相対湿度のみに支配されているわけではなく、現像器105の駆動等のその他の様々な要因により起こる。トナーの帯電量の変化によりトナー消費量が変化する。よって、画像濃度調整のために中間転写ベルト107の表面に形成されたトナー像(パターン画像)が、パターン検出センサ120により検出される。パターン画像の検出結果は、例えば、画像濃度(以下、「パッチ濃度」と称する。)として取得される。パターン検出センサ120により検出されたパッチ濃度は、前処理用一時蓄積部1101に蓄積される。本実施形態では、パッチ濃度を中間転写ベルト107の表面で測定しているが、感光体ドラム101の表面で測定する構成であってもよい。
【0044】
感光体ドラム101の表面の状態によって、トナー消費量が変化する。感光体ドラム101の表面の状態は、主に清掃と帯電によって変化することが知られている。感光体ドラム101の清掃は、回転駆動時にドラムクリーナ106等の清掃部材が感光体ドラム101の表面の感光層に直接接触することで行われている。この接触によって感光体ドラム101の表面が摩耗する。帯電器102による帯電によっても、感光体ドラム101の表面の状態が変化する。感光体ドラム101の回転による駆動距離と帯電器102による帯電時間とに、それぞれ所定の係数を乗算することで、感光体ドラム101の表面の状態を推定する。以下、この演算結果を「感光体ドラム耐久値」と称する(
図7の式(c)参照)。
【0045】
感光体ドラム101の回転による駆動距離は、感光体ドラム走行距離計算部1113により、感光体ドラム101の駆動モータ67の駆動時間を用いて算出される。感光体ドラム走行距離計算部1113は、所定期間における駆動モータ67の駆動時間から感光体ドラム総走行距離を算出する。さらに、感光体ドラム走行距離計算部1113は感光体ドラム総走行距離から所定期間の平均値(以下、「平均総走行距離」と称する。)を算出する。
帯電器102による帯電時間は、帯電時間計算部1114により、帯電器102の駆動モータ68の駆動時間を用いて算出される。帯電時間計算部1114は、所定期間における駆動モータ68の駆動時間から感光体ドラム101の総帯電時間を求める。さらに帯電時間計算部1114は、所定期間における総帯電時間の平均値(以下、「平均総帯電時間」と称する。)を算出する。
感光体ドラム耐久情報計算部1115は、以上のように算出された平均総走行距離と平均総帯電時間に基づいて、線形一次結合の形へ変換したものを所定期間における感光体ドラム耐久値として算出する。感光体ドラム耐久情報計算部1115は、算出した感光体ドラム耐久値を前処理用一時蓄積部1101に蓄積する。
【0046】
本実施形態では、感光体ドラム101と帯電器102とのそれぞれの駆動時間を計測することによって、感光体ドラム総走行距離と総帯電時間とが算出されるが、これら2つの時間の取得方法はどのような方法であってもよい。また、感光体ドラム101及び帯電器102のそれぞれの駆動方法もどのような方法であってもよい。
【0047】
前処理実行部1102は、以上のようにして前処理用一時蓄積部1101に蓄積された所定期間の各値(データ)から、トナー補給量の推定値R1を算出するためのデータを生成する。前処理用一時蓄積部1101に蓄積されたデータをトナー補給量の推定値R1を算出するためのデータに変換する処理を「前処理」と称する。前処理により、推定値の算出(予兆予測)に用いられるデータのサイズが圧縮される。
【0048】
前処理実行部1102は、前処理として以下の処理を行う。前処理実行部1102は、前処理用一時蓄積部1101に蓄積される基準推定値に基づいて、所定期間における基準推定値の増加量(変化量)を算出する。前処理実行部1102は、前処理用一時蓄積部1101に蓄積される第1補給動作パターンの回数及び第2補給動作パターンの回数に基づいて、所定期間における第1補給動作パターンの回数及び第2補給動作パターンの回数の増加量(変化量)を算出する。前処理実行部1102は、前処理用一時蓄積部1101に蓄積されるドットカウント数の積算値に基づいて、所定期間におけるドットカウント数の増加量(変化量)を算出する。前処理実行部1102は、前処理用一時蓄積部1101に蓄積される所定期間内の目標濃度差分に基づいて、所定期間内の目標濃度差分の平均値を算出する。前処理実行部1102は、前処理用一時蓄積部1101に蓄積される所定期間の現像器105内の相対湿度に基づいて、所定期間内の相対湿度の平均値を算出する。前処理実行部1102は、前処理用一時蓄積部1101に蓄積される所定期間のパッチ濃度に基づいて、所定期間内のパッチ濃度の平均値を算出する。前処理実行部1102は、前処理用一時蓄積部1101に蓄積される所定期間内の感光体ドラム耐久値に基づいて、所定期間内の感光体ドラム耐久値の平均値を算出する。
【0049】
前処理実行部1102により、所定期間のデータの変化量として、基準推定値、第1補給動作パターンの回数、第2補給動作パターンの回数、及びドットカウント数の増加量が生成される。また、前処理実行部1102により、所定期間のデータの平均値として、目標濃度差分の平均値、現像器105内の相対湿度の平均値、パッチ濃度の平均値、及び感光体ドラム耐久値の平均値が生成される。前処理実行部1102は、これらの変化量及び平均値のそれぞれに所定の係数を乗算することで、トナー補給量の誤差補正値を算出する(
図7の式(d)参照)。トナー補給量推定部1118は、基準推定値の増加量にトナー補給量の誤差補正値を加算することで、所定期間におけるトナー補給量の推定値R1(トナー補給量推定値)を算出する(S20、
図5参照)。
【0050】
トナー補給量推定部1118は、算出した所定期間毎のトナー補給量推定値を積算することで、現在に至るまで消費されたトナーボトルT内のトナー量(トナー補給量)を推定する(S21、
図5参照)。トナー補給量推定部1118は、トナー補給量をトナーボトルTの初期充填量から減算することにより、トナーボトルT内のトナー残量推定値を算出する。以上のようにトナーボトルT内のトナー残量推定に関する処理が終了する(S22、
図5参照)。
【0051】
算出したトナー残量推定値が所定の閾値(例えば10[g])を下回ったタイミングで(S23:Y、
図5参照)、トナー補給量推定部1118は、トナーボトル交換フラグを出力する。コントローラ1100は、トナーボトル交換フラグにより、ユーザに対してトナーボトルTの交換が必要であることを通知する(S24、
図5参照)。通知は、例えば、操作部90にトナーボトルTの交換を促すための画面を表示することで行われる。なお、トナー残量推定値の閾値は任意に設定され、ユーザの使用状況や利用範囲に併せて複数設定されてもよい。
【0052】
コントローラ1100は、S22の処理で算出したトナー残量推定値を、トナーボトルTに搭載されたメモリであるボトルタグに記憶させる。これは実残量が充分に残っている状態でトナーボトルTが交換された後に、再び同じトナーボトルTを使用する場合であっても、トナー残量を推定可能にするためである。また、新品のトナーボトルが装着された場合は、トナーボトル内のトナー残量の初期値としてボトルタグに予め記憶された値が使用されてもよく、本体メモリに記憶させておいた初期値を使用してもよい。
【0053】
図5の処理は、各色のトナーボトルTa~Tdに対して行われる。つまり、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーボトルTa~Tdのそれぞれに対して、独立して
図5の処理が行われる。
【0054】
続いて、トナー残量推定の精度向上に使用するために取得されるデータのデータサイズの圧縮方法について説明する。コントローラ1100がデータサイズを圧縮することでトラフィックの増大が抑制される。
【0055】
上記の通り本実施形態では、前処理用一時蓄積部1101に蓄積されるデータに対する前処理が行われる。前処理により、基準推定値、第1補給動作パターンの回数、第2補給動作パターンの回数、及びドットカウント数のそれぞれの変化量や、目標濃度差分、現像器105内の相対湿度、パッチ濃度、及び感光体ドラム耐久値のそれぞれの平均値が算出される。これらの変化量や平均値は、トナー補給量の高精度な推定に用いられる「変数」である。各変数と所定の係数とに基づいて、所定期間のトナー補給量の推定量R1が算出される。
【0056】
所定期間は、適宜設定可能である。本実施形態では、常にトナーの補給動作間隔を所定期間として、1回の補給動作毎にトナー補給量の推定値R1を算出している。以降、トナー補給量の推定値R1の算出のタイミングを「演算タイミング」と称する。トナーの補給動作間隔は、ユーザの使用状況によるが、正常動作中であれば少なくとも数分に1回の頻度で行われる。また、連続でトナーの補給動作が行われる場合、最短で1秒に1回の頻度となる。
【0057】
コントローラ1100は、サーバ通信部1108を介して外部へデータを送信することができる。サーバ通信部1108は、画像形成装置100とは異なる外部装置であるサーバ装置との通信インタフェースである。通信頻度は、任意に設定可能であり、例えば16時間に1回の頻度である。また、16時間に1回のタイミング(レギュラータイミング)に加え、トナーボトルTの推定残量が0になったタイミングや、トナーボトルTが交換されたタイミング等のイベント毎のイレギュラーなタイミングで外部との通信が行われてもよい。
【0058】
上記の通り、本実施形態では、トナー残量の推定に基準推定値R0、第1補給動作パターンの回数、第2補給動作パターンの回数、ドットカウント数、目標濃度差分、現像器105内の相対湿度、パッチ濃度、及び感光体ドラム耐久値が用いられる。これらのデータはサンプリングタイム毎に逐次更新される。サンプリングタイムは、例えば1秒である。逐次更新されるこれらのデータを「逐次データ」と称する。従来、逐次データは、例えば16時間に1回の頻度でサーバ通信部1108からサーバ装置へ送信される。そのために、コントローラ1100内に蓄積されるデータの量が膨大になる。また、送信されるデータの量が膨大になるために、通信時のトラフィックが増大する。
【0059】
所定期間におけるトナー補給量の推定に用いられる変数は、所定期間における逐次データの変化量或いは平均値の算出という前処理により算出される。つまり、トナー補給量の推定には、前処理前の逐次データは不要である。そのためにコントローラ1100は、所定期間毎に逐次データに対して前処理を行い、前処理後の変数だけを外部送信用データ蓄積部1105に蓄積する。変数は、外部送信用データ蓄積部1105のデータ蓄積部1106に蓄積される。前処理用一時蓄積部1101は、所定期間内における逐次データの一時保存を行い、前処理後に、不要になった逐次データを削除する。サーバ通信部1108は、変数及びトナー残量推定値を外部送信用データ蓄積部1105からサーバ装置へ送信することになる。サーバ装置へ送信されるこれらのデータは、例えば商品開発のために解析される。これらのデータは、開発途中の実験で得られるデータよりもはるかに膨大で、データ取得時の条件も多岐にわたる。そのために、これらのデータを収集することが、よりよい商品の開発につながる。
【0060】
本実施形態のトナー補給量の推定値R1は、
図7の式(d)に例示する式によって算出される。所定期間におけるトナー補給量の推定値R1の算出には、所定期間における変数が必要である。しかしながら、本実施形態においては、トナー補給量の推定値R1の累積から算出されるトナー残量推定値の算出が目的である。つまりは、最終的なトナー残量推定値の決定には、所定期間毎のトナー補給量推定値R1の蓄積値のみが用いられる。
図7の式(e)に例示する式の左辺と右辺との関係性により、所定期間毎のトナー補給量推定値R1の累積結果と、所定期間毎の変数の累積結果に所定の係数を後から乗算したものとは同等であることがわかる。そのため、最終的なトナー残量推定値は、変数の累積結果があれば算出可能となるのである。よって、逐次データをすべて蓄積して外部に送信する従来手法に比べて、所定期間毎の変数の累積を外部に送信する本実施形態の方が、大幅にデータサイズを縮小でき、通信トラフィックを低下させることができる。
【0061】
しかしながら、出荷後の画像形成装置100が常に正常動作しているとは限らない。そのために、トナー補給量推定が適応不可能な範囲のデータが取得されている場合も考えられる。本実施形態では、適応可否判定部1103により、逐次データ或いはトナー補給量推定値を用いた適応可否判定を行う。適応可否判定の結果は、適応可否判定部1103から不可判定カウンタ1104に通知される。不可判定カウンタ1104は、適応不可の判定回数を累積する。不可判定カウンタ1104は、外部送信用データ蓄積部1105の適応不可データ蓄積部1107に適応不可の判定回数の累積値(不可判定カウント値)を蓄積する。このとき、適応不可と判定された場合の変数も外部送信用データ蓄積部1105の適応不可データ蓄積部1107に蓄積される。また、適応不可と判定されなかった場合の変数は外部送信用データ蓄積部1105のデータ蓄積部1106に蓄積される。
【0062】
サーバ通信部1108は、外部送信のタイミングになると、適応不可データ蓄積部1107に蓄積された不可判定カウント値及び適応不可と判定された逐次データを外部のサーバ装置へ送信する。また、データ蓄積部1106に蓄積される変数及びトナー残量推定値もサーバ装置に送信される。なお、画像形成装置100がネットワークに接続されていない場合、外部送信用データ蓄積部1105のデータは、可搬性の記録媒体等によりサーバ装置へ送られてもよい。
【0063】
サーバ装置は、画像形成装置100から取得したデータの解析が可能となる。例えば、サーバ装置は、不可判定カウント値が「0」の場合にのみ、変数やトナー残量推定値を解析に利用する等の判断が可能になる。なお、変数やトナー残量推定値を解析に利用する判断の基準となる不可判定カウント値は、「0」以外の値であってもよく、任意に設定可能である。
【0064】
また、適応可と判定されるデータは、適応不可と判定されるデータよりも圧倒的に多く、適応不可と判定されるデータは、例外的である。しかし、出荷後の画像形成装置100では、この前提が崩れる可能性がある。適応不可と判定されるデータが多い場合には、その原因を探るために、不可判定カウント値及び適応不可と判定された逐次データが用いられる。
【0065】
上記の通り、予兆予測装置の適応可否判定は、適応可否判定部1103により行われる。本実施形態の逐次データは、基準推定値R0、第1補給動作パターンの回数、第2補給動作パターンの回数、ドットカウント数積算値、目標濃度差分、現像器105内の相対湿度、パッチ濃度、及び感光体ドラム耐久値である。適応可否判定部1103は、各逐次データに対してそれぞれ上下限値を設定し、各逐次データと上下限値とを比較することで適応可否判定を行う。逐次データが上下限値と一致もしくは上下限値を上回った/下回った場合、適応可否判定部1103は、画像形成装置100の動作が予兆予測装置の適応範囲外に逸脱したとみなし、該逐次データを適応不可と判定する。
【0066】
適応可否判定部1103は、トナー補給量の推定値R1に対しても同様に上下限値を設け、推定値R1と上下限値とを比較することで適応可否判定を行う。推定結果が上下限値と一致もしくは上下限値を上回った/下回った場合、適応可否判定部1103は、画像形成装置100の動作が予兆予測装置の適応範囲外に逸脱したとみなし、該推定結果を適応不可と判定する。
【0067】
つまり適応可否判定部1103は、逐次データ及びトナー補給量が予兆予測に適応可能な所定の適応範囲内の値であるか否かにより、適応可否を判定する。上下限値は、任意に設定されてよく、本実施形態においては、製品開発検討時の実験条件に基づいて設定されている。なお、適応可否判定は別の方法で行ってもよく、適応可否判定のために逐次データとは別の情報を利用していてもよい。また、上下限値に基づいた判定基準だけではなく、数サンプリング前からの変化量等の別の判定基準を使用していてもよい。
【0068】
以上の説明では、トナー補給量に基づいてトナー残量が予測される。通常の予測精度の検証方法としては、1本のトナーボトル当たりの総トナー補給量の推定値R1と実補給量との比較を行う場合が多い。そのため、なんらかのタイミングにおいて所定期間の本体動作がトナー補給量推定部1118の適応範囲外であっても、1本のトナーボトル当たりの推定値に対する影響度としては許容できる場合もある。サーバ装置へ送信された適応不可の判定回数が10回までであれば、精度向上に使用できるデータとみなすこともできる。その場合、更なるデータサイズ/トラフィックを低下させる方法として、適応不可データ蓄積部1107とデータ蓄積部1106とを統合してもよい。当然、許容範囲とする適応不可判定回数は、10回でなくてもよく任意に設定してよい。
【0069】
(感光体ドラムの寿命推定)
上記の通り、感光体ドラム101の表面の感光層は、回転に伴うドラムクリーナ106との機械的な摺擦と、帯電器102による帯電と、によって耐久が進行して、徐々に摩耗する。摩耗が進行すると感光体ドラム101の交換が必要になる。そこで、感光体ドラム101の感光層の摩耗量(削れ量)を事前に予測して、画質が低下する前に感光体ドラム101を交換する仕組みが必要となる。
【0070】
感光体ドラム101の清掃は、回転駆動時にドラムクリーナ106等の清掃部材を感光層に直接接触させることで行われている。また、感光層は、帯電器102により帯電されることでも耐久が進行する。所定期間の感光体ドラム101の感光層の削れ量は、所定期間内の感光体ドラム101の回転による駆動距離の増加量と帯電器102による帯電時間の増加量とのそれぞれに所定の係数を乗算することで予測可能である。
図8は、感光体ドラム101の感光層の削れ量の説明図である。
図8に例示する式を、「削れ量予測式」と称する。
【0071】
感光体ドラム101の帯電範囲は、感光体ドラム101のドラム軸方向に対するシートSのサイズ毎に異なる。そのために、シートSのサイズによって感光体ドラム101の感光層のドラム軸方向の削れ量も異なり、削れ量予測式における所定の係数もそれぞれ異なる。本実施形態では、シートSのサイズ毎に異なる所定の係数が設定された削れ量予測式を用いることで、シートSのサイズによる感光体ドラム101の感光層のドラム軸方向の削れ量の違いに対応している。本実施形態においては、特に使用頻度の高いA3、A4サイズのシート毎に削れ量予測式を用意する(
図8の式(a)-1、(a)-2参照)。なお削れ量予測式は、画像形成装置100で対応するシートSのサイズ数に応じて複数用意されていてよいし、単一サイズしか扱わない場合は削れ量予測式は一つである。
【0072】
上記の通り本実施形態では、所定期間内の感光体ドラム101の回転による駆動距離の増加量と帯電器102による帯電時間の増加量とのそれぞれに所定の係数を乗算することで感光体ドラム101の削れ量推定値の算出が行われる。これら増加量も変数であり、所定期間内の感光体ドラム101の回転による駆動距離と帯電器102による帯電時間それぞれに対して増加量を算出し変数を作成するという作業も前処理である。
図8の式(a)に示すように、所定期間における変数と所定の係数の乗算によって削れ量推定値は算出されている。シートSのサイズ毎に所定の係数の値は異なり、それぞれのシートSのサイズ毎に削れ量予測式は存在している(
図8の式(a)-1、式(a)-2参照。)
【0073】
削れ量の予測を行う所定期間は、任意に設定可能である。本実施形態では、単位印刷ジョブ期間を所定期間とする。感光体ドラム101の感光層の削れは、比較的ゆるやかに進行する現象であり、シートSのサイズの影響を強く受ける。すなわち複数のシートサイズを使用する場合、シートSのサイズに応じて削れ量の予測を行う方が、より高精度に削れ量の予測を行うことができる。なお、要求される精度によっては、所定期間は長くてもよい。単一のサイズのシートSしか扱わない画像形成装置では、所定期間はさらに長くてもよい。また、印刷ジョブとは別の基準に基づいて、所定期間が設定されてもよい。
【0074】
図9は、感光体ドラム101の寿命推定(削れ量推定)機能を有するコントローラ2100の構成図である。コントローラ2100の機能は、CPUがROMに格納されるコンピュータプログラムを実行することで実現される。コントローラ2100は駆動モータ267、268が接続される他に、紙種情報保存部270が接続される。紙種情報保存部270は、画像形成に用いられるシートSの種類の情報、ここではシートSのサイズの情報を保存する。
【0075】
コントローラ2100は、サーバ通信部2108を介して外部へデータを送信することができる。サーバ通信部2108は、画像形成装置100とは異なる外部装置であるサーバ装置との間の通信インタフェースである。通信頻度は、任意に設定可能であり、例えば16時間に1回の頻度である。また、16時間に1回のレギュラーなタイミングに加え、感光体ドラム101の寿命推定が0になったタイミングや、感光体ドラム101が交換されたタイミング等のイベント毎のイレギュラーなタイミングで外部との通信が行われてもよい。
【0076】
上記の通り本実施形態では、感光体ドラム101の削れ量の推定に、感光体ドラム101の回転による駆動距離と帯電器102による帯電時間とが用いられる。これらのデータはサンプリングタイム毎に逐次更新される。サンプリングタイムは、例えば1秒である。逐次更新されるこれらのデータも逐次データである。従来、逐次データは、例えば16時間に1回の頻度でサーバ通信部2108からサーバ装置へ送信される。そのために、コントローラ2100内に蓄積されるデータの量が膨大になる。また、送信されるデータの量が膨大になるために、通信時のトラフィック量が膨大になる。
【0077】
本実施形態の所定期間における感光体ドラム101の削れ量推定に用いられる変数は、所定期間における逐次データの増加量の算出という前処理により算出される。つまり、削れ量推定には、前処理前の逐次データは不要である。そのためにコントローラ2100は、所定期間毎に逐次データに対して前処理を行い、前処理後の変数だけを外部送信用データ蓄積部2105に蓄積し、逐次データを削除する。変数は、外部送信用データ蓄積部2105のデータ蓄積部2106に蓄積される。前処理用一時蓄積部2101は、所定期間内における逐次データの一時保存を行い、前処理後に、不要になった逐次データを削除する。サーバ通信部2108は、変数及び削れ量推定値を外部送信用データ蓄積部2105からサーバ装置へ送信することになる。サーバ装置へ送信されるこれらのデータは、例えば商品開発へのフィードバックとして解析される。これらのデータは、開発途中の実験で得られるデータよりもはるかに膨大で、データ取得時の条件も多岐にわたる。そのために、これらのデータを収集することが、よりよい商品の開発につながる。
【0078】
本実施形態の感光体ドラム101の削れ量推定値は、
図8の式(a)に例示する式によって算出される。所定期間における感光体ドラム101の削れ量推定値の算出には、所定期間における変数が必要である。本実施形態においては、感光体ドラム101の削れ量推定値の累積から算出される最終的な総削れ量の算出が目的である。つまりは、最終的な感光体ドラム101の削れ量推定値の決定には、所定期間毎の削れ量推定値の蓄積値のみが用いられる。
図8の式(b)に例示する式の左辺と右辺との関係性により、所定期間毎の削れ量推定値の累積結果と、所定期間毎の変数の累積結果に所定の係数を後から乗算したものとは同等であることがわかる。そのため、最終的な感光体ドラム101の総削れ量推定値は、変数の累積結果があれば算出可能となるのである。よって、逐次データをすべて蓄積して外部に送信する従来手法に比べて、所定期間毎の変数の累積を外部に送信する本実施形態の方が、大幅にデータサイズや通信トラフィックを削減することができる。
【0079】
しかしながら、出荷後の画像形成装置100が常に正常動作しているとは限らない。そのために、削れ量予測式が適応不可能な範囲のデータが取得されている場合も考えられる。本実施形態では、適応可否判定部2103a、2103bにより、削れ量予測式(
図8の式(a)-1)と(
図8の式(a)-2)とのそれぞれに対して適応可否判定が行われる。適応可否判定基準は、シートSのサイズであり、同時に両方の削れ量予測式を満たすことはない。適応可否判定の結果は、第1予測式適応可否判定部2103aもしくは第2予測式適応可否判定部2103bから第1可判定カウンタ2104aもしくは第2可判定カウンタ2104bにそれぞれ通知される。それぞれの可判定カウンタ2104a、2104bは、適応可だったときの判定回数をそれぞれ累積カウントする。第1可判定カウンタ2104aもしくは第2可判定カウンタ2104bは、外部送信用データ蓄積部2105内の第1予測式データ蓄積部2106aもしくは第2予測式データ蓄積部2106bに累積カウント値を蓄積する。同時に、それぞれ適応可判定が出ている場合のみ、第1予測式データ蓄積部2106aもしくは第2予測式データ蓄積部2106bそれぞれへ変数を蓄積する。このとき、いずれの削れ量予測式に対しても適応不可と判定された場合は、変数は適応不可データ蓄積部2107に蓄積される。
【0080】
サーバ通信部2108は、外部送信のタイミングになると、適応不可蓄積部2107に蓄積された適応不可時の変数データをサーバ装置へ送信する。また、第1予測式データ蓄積部2106a、第2予測式データ蓄積部2106bに蓄積される変数及び適応可判定カウントもサーバ装置に送信される。なお、画像形成装置100がネットワークに接続されていない場合、外部送信用データ蓄積部2105のデータは、可搬性の記録媒体等によりサーバ装置へ送られてもよい。変数は最終的に、サーバ装置において感光体ドラム101の寿命推定に用いられる。
【0081】
(色ずれ量の推定)
予兆予測装置は、色ずれ量の推定を行う。光走査装置103は、温度上昇により、内部に設けられるレンズやミラー等の光学部材の変形や、光学箱401の変形が生じる。これにより、光走査装置103と感光体ドラム101との相対的な位置関係が変化する。この位置の変化は、各色の画像を重ね合わせたときに色毎の画像の位置が一致しない原因となる。色毎の画像の位置が一致しない場合、画像の色味が変化してしまう。これが色ずれである。
【0082】
画像形成装置100は、中間転写ベルト107上に色ずれ検出用のパターン画像を形成する。パターン検出センサ120によるパターン画像の検出結果により、色ずれ量が実測される。画像形成装置100は、色ずれ量に応じて色ずれ補正を実行する。しかしパターン画像を形成することでダウンタイムが生じ、生産性が低下する。そこで、光走査装置103内と周辺の温度変化を検出し、温度変化量から色ずれ量を推定することで、パターン画像を形成せずに色ずれ補正を行う技術が用いられる。本実施形態では、高精度な色ずれ量の予測を行うことを目的に、動作中の画像形成装置100から、色ずれ量と色ずれ量の推定に必要な温度変化量との関係を表すデータを収集する。
【0083】
光走査装置103は、回転多面鏡402を駆動するモータ403が熱源となって熱変形が生じる。
図3に示すように、光走査装置103に配置された温度センサ450によって、光走査装置103内の温度が測定される。また、画像形成装置100における大きな熱源として、定着器113内に設けられるヒータがある。
図2に示すように、画像形成部Pに配置された温度センサ451によって、現像器105の周辺の雰囲気温度が測定される。
【0084】
図10は、色ずれ量の説明図である。
図10の式(a)に示されるように、色ずれ量は、温度センサ450によって測定された光走査装置103内の温度と、温度センサ451によって測定された現像器105周辺の雰囲気温度とのそれぞれの変化量により推定される。光走査装置103内の温度と現像器105周辺の雰囲気温度のそれぞれの変化量も変数であり、変化量を算出するという作業も前処理である。色ずれ量は変数に対してそれぞれ所定の係数を乗算することで推定される。
【0085】
画像形成装置100は、所定のタイミングで色ずれ量を実測する。本実施形態では、色ずれ量が実測されたタイミングから次に色ずれ量が実測されるまでのタイミングを所定期間とする。
【0086】
図11は、色ずれ量の推定機能を有するコントローラの構成図である。コントローラ3100の機能は、CPUがROMに格納されるコンピュータプログラムを実行することで実現される。コントローラ3100は、予兆予測装置としては機能しない。予兆予測装置は、画像形成装置100とは別の不図示の装置に設けられる。コントローラ3100は、色ずれ量の推定に必要な変数を蓄積して外部送信することが機能である。
【0087】
コントローラ3100は、色ずれ量測定部3109、前処理用一時蓄積部3101、前処理実行部3102、適応可否判定部3103、不可判定カウンタ3104、及び外部送信用データ蓄積部3105を備える。外部送信用データ蓄積部3105は、適応不可データ蓄積部3107、データ蓄積部3106、及び色ずれデータ蓄積部3110を備える。コントローラ3100は、サーバ通信部3108を介して外部へデータを送信することができる。サーバ通信部3108は、画像形成装置100とは異なる外部装置であるサーバ装置との通信インタフェースである。通信頻度は、任意に設定可能であり、例えば16時間に1回の頻度である。また、16時間に1回のレギュラーなタイミングに加え、光走査装置103や現像機105等の各種ユニットが交換されたイレギュラーなタイミングで外部との通信が行われてもよい。
【0088】
上記の通り本実施形態では、色ずれ量の推定に、光走査装置103内の温度と現像器105周辺の雰囲気温度が用いられる。これらの温度データはサンプリングタイム毎に逐次更新される。サンプリングタイムは、例えば1秒である。逐次更新されるこれらのデータも逐次データである。従来、逐次データは、例えば16時間に1回の頻度でサーバ通信部3108からサーバ装置へ送信される。そのために、コントローラ3100内に蓄積されるデータの量が膨大になる。また、送信されるデータの量が膨大になるために、通信時のトラフィック量が膨大になる。
【0089】
本実施形態の所定期間における色ずれ量の推定に用いられる変数は、所定期間における逐次データの変化量の算出という前処理により算出される。つまり、色ずれ量推定には、前処理前の逐次データは不要である。そのためにコントローラ3100は、所定期間毎に逐次データに対して前処理を行い、前処理後の変数だけを外部送信用データ蓄積部3105に蓄積し、逐次データを削除する。変数は、外部送信用データ蓄積部3105のデータ蓄積部3106に蓄積される。前処理用一時蓄積部3101は、所定期間内における逐次データの一時保存を行い、前処理後に、不要になった逐次データを削除する。色ずれ量測定部3109は、パターン検出センサ120によるパターン画像の検出結果に基づいて色ずれ量を実測し、色ずれデータ蓄積部3110に蓄積する。サーバ通信部3108は、データ蓄積部3106に蓄積された変数と色ずれデータ蓄積部3110に蓄積された実測色ずれデータをサーバ通信部3108からサーバ装置へ送信することになる。サーバ装置へ送信されるこれらのデータは、例えば商品開発へのフィードバックとして解析される。これらのデータは、開発途中の実験で得られるデータよりもはるかに膨大で、データ取得時の条件も多岐にわたる。そのために、これらのデータを収集することが、よりよい商品の開発につながる。
【0090】
本実施形態の色ずれ量推定値は、
図10に例示する式(a)によって算出される。所定期間における色ずれ量推定値の算出には、所定期間における変数が必要である。本実施形態においては、色ずれ実測時点における色ずれ量推定値の算出が目的である。つまりは、最終的な色ずれ量推定値の決定には、所定期間毎(色ずれ実測毎)の色ずれ量推定値のみが所望される。
図10の式(b)に例示する式の左辺と右辺との関係性により、所定期間毎の色ずれ量推定値の累積結果と、所定期間毎の変数の累積結果に所定の係数を後から乗算したものとは同等であることがわかる。そのため、最終的な色ずれ量推定値は、変数の累積結果があれば算出可能となるのである。よって、逐次データをすべて蓄積して外部に送信する従来手法に比べて、所定期間毎の変数の累積を外部に送信する本実施形態の方が、大幅にデータサイズや通信トラフィックを削減することができる。
【0091】
しかしながら、出荷後の画像形成装置100が常に正常動作しているとは限らない。そのために、色ずれ量予測式が適応不可能な範囲のデータが取得されている場合も考えられる。本実施形態では、適応可否判定部3103により、色ずれ量予測式(
図10の式(a))に対して適応可否判定が行われる。適応可否判定の結果は、適応可否判定部3103から不可判定カウンタ3104に通知される。不可判定カウンタ3104は、不可判定回数を累積カウントする。不可判定カウンタ3104は、外部送信用データ蓄積部3105の適応不可データ蓄積部3107に累積カウント値(不可判定カウント値)を蓄積する。このとき、適応不可と判定された場合の変数も外部送信用データ蓄積部3105の適応不可データ蓄積部3107に蓄積される。また、適応不可と判定されなかった場合の変数は外部送信用データ蓄積部3105のデータ蓄積部3106に蓄積される。
【0092】
適応可否判定部3103は、逐次データ(光走査装置103内の温度及び現像器105周辺の雰囲気温度)が色ずれ量の推定の適応範囲内であるか否かを判定する。適応可否判定部3103は、例えば光走査装置103内の温度及び現像器105周辺の雰囲気温度の少なくとも一方の変化量が所定の上下限値と一致もしくは上回った/下回った場合に、逐次データが適応範囲外であると判定する。逐次データは、温度であるために急激に変化することはなく、実利用上あり得る範囲の変化量が上下限値として設定可能である。また、所定期間の経過時間情報や装置設置場所の環境温度等、逐次データとは別の情報により、適応不可判定が行われてもよい。
【0093】
適応可否判定部3103が適応不可であると判定した場合、不可判定カウンタ3104は、不可判定回数を累積カウントする。不可判定カウンタ3104は、外部送信用データ蓄積部3105の適応不可データ蓄積部3107に累積カウント値(不可判定カウント値)を蓄積する。このとき、適応不可と判定された逐次データの変数も外部送信用データ蓄積部3105の適応不可データ蓄積部3107に蓄積される。
【0094】
サーバ通信部3108は、外部送信のタイミングになると、適応不可データ蓄積部3107に蓄積された不可判定カウント値及び適応不可と判定された逐次データの変数を外部のサーバ装置へ送信する。また、データ蓄積部3106に蓄積される適応可能範囲の変数もサーバ装置に送信される。なお、画像形成装置100がネットワークに接続されていない場合、外部送信用データ蓄積部3105のデータは、可搬性の記録媒体等によりサーバ装置へ送られてもよい。
【0095】
コントローラ1100、コントローラ2100、及びコントローラ3100は、同一のCPUによって実現されてもよいが、それぞれ異なるCPUにより実現されてもよい。例えば、現像器105の動作を制御する制御基板によりコントローラ1100が実現され、感光体ドラム101の動作を制御する制御基板によりコントローラ2100が実現され、色ずれ補正を行う制御基板によりコントローラ3100が実現されてもよい。また、ひとつの画像形成装置100においてこれら3つの処理(トナー残量推定、感光体ドラムの寿命推定、色ずれ量推定)を実現する機能が同時に搭載されていてもよいし、必ずしもすべて搭載されていなくてもよい。以上のように本実施形態の画像形成装置100は、画像の形成に用いる部品の状態予測(トナー残量推定、感光体ドラムの寿命推定、色ずれ量推定)を、情報の損失を抑制しつつ、ビッグデータによる処理負荷を軽減すながら実現することができる。