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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】無線通信装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 19/10 20060101AFI20240304BHJP
   H01Q 9/04 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
H01Q19/10
H01Q9/04
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019196344
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021072472
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】青木 誠
(72)【発明者】
【氏名】大村 理
(72)【発明者】
【氏名】石成 裕
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第9748657(US,B1)
【文献】国際公開第2016/047541(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0300523(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0043197(US,A1)
【文献】国際公開第2006/038432(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 19/10
H01Q 1/24
H01Q 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ素子を含み構成されているアンテナと、
導電体から構成され、前記アンテナを固定するための固定部材と、
前記アンテナに電気的に接続され、前記アンテナに電力を供給する給電部と、
導電体から構成され、前記アンテナ、前記固定部材および前記給電部を内包する外装筐体であって、前記アンテナからの電磁波を当該外装筐体の外部に放射させるための開口を備える外装筐体と、
を有し、
前記アンテナは、前記固定部材よりも前記外装筐体の前記開口に近い位置に配置されており、
前記給電部および前記アンテナ素子の前記給電部の側に位置する第1領域は、前記アンテナ素子の前記給電部とは反対側に位置する開放端部を含む第2領域よりも、前記固定部材に近い位置に配置されていることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記開口における開口面に対して垂直方向から見た場合に、少なくとも前記アンテナの一部が前記開口と重なっていることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記アンテナ素子の前記第2領域は、前記給電部および前記アンテナ素子の前記第1領域よりも、前記外装筐体の前記開口に近い位置に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記アンテナ素子は、前記開放端部である一端部および前記給電部と電気的に接続される他端部を有し、
前記アンテナ素子の前記第1領域は、前記一端部と前記他端部を電気的につなぐ経路の中間点よりも前記他端部側に位置する領域であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記固定部材から前記アンテナ素子までの最長距離と最短距離との差分の半分未満の寸法を前記最短距離に近づけて、前記アンテナ素子を配置することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記アンテナは、前記アンテナ素子と前記固定部材との間に、導電体から構成されている凸形状の突起物を更に含み構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記アンテナは、
前記アンテナ素子として、第1のアンテナ素子および第2のアンテナ素子を含み構成されており、
前記第1のアンテナ素子および前記第2のアンテナ素子は、それぞれ、その一端部が前記開放端部を構成し、
前記第1のアンテナ素子の他端部と前記第2のアンテナ素子の他端部との間に前記給電部が設けられている、
ダイポールアンテナであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記アンテナを支持し、前記固定部材に固定される支持部材を更に有し、
前記支持部材は、前記第1のアンテナ素子および前記第2のアンテナ素子の前記一端部から前記他端部までを直線状に支持することを特徴とする請求項7に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記アンテナを支持し、前記固定部材に固定される支持部材を更に有し、
前記支持部材は、前記第1のアンテナ素子および前記第2のアンテナ素子の前記一端部から前記他端部までの間で、当該アンテナ素子を折れ曲がり状および曲面状のうちの少なくとも一方で支持することを特徴とする請求項7に記載の無線通信装置。
【請求項10】
前記アンテナは、
前記アンテナ素子のグラウンドとして用いられるグラウンド導体部を更に含み構成されており、
前記アンテナ素子は、その一端部が前記開放端部を構成し、その他端部が前記グラウンド導体部に短絡され、前記一端部と前記他端部との間の部分が前記給電部と電気的に接続される給電線となっている、
逆Fアンテナであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項11】
前記アンテナを支持し、前記固定部材に固定される支持部材を更に有し、
前記支持部材は、前記アンテナ素子および前記グラウンド導体部を平面状で支持することを特徴とする請求項10に記載の無線通信装置。
【請求項12】
前記アンテナを支持し、前記固定部材に固定される支持部材を更に有し、
前記支持部材は、前記アンテナ素子および前記グラウンド導体部を折れ曲がり状および曲面状のうちの少なくとも一方で支持することを特徴とする請求項10に記載の無線通信装置。
【請求項13】
前記アンテナは、
導電体からなる導電部を更に含み構成されており、
前記アンテナ素子は、その一端部が前記開放端部を構成し、その他端部が前記導電部に短絡され、前記一端部と前記他端部との間の部分が前記給電部と電気的に接続される給電線となっている、
逆Fアンテナであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項14】
前記アンテナは、
前記アンテナ素子のグラウンドとして用いられるグラウンド導体部を更に含み構成されており、
前記アンテナ素子は、その一端部が前記開放端部を構成し、その他端部と前記グラウンド導体部との間に前記給電部が設けられている、
モノポールアンテナであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項15】
前記アンテナは、
導電体からなる導電部を更に含み構成されており、
前記アンテナ素子は、その一端部が前記開放端部を構成し、その他端部と前記導電部との間に前記給電部が設けられている、
モノポールアンテナであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項16】
前記アンテナは、
前記アンテナ素子のグラウンドとして用いられるグラウンド導体部を更に含み構成されており、
前記アンテナ素子は、その一端部が前記開放端部を構成し、前記一端部と他端部との間で折れ曲がった形状をしており、前記他端部と前記グラウンド導体部との間に前記給電部が設けられている、
逆Lアンテナであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項17】
前記アンテナは、
導電体からなる導電部を更に含み構成されており、
前記アンテナ素子は、その一端部が前記開放端部を構成し、前記一端部と他端部との間で折れ曲がった形状をしており、前記他端部と前記導電部との間に前記給電部が設けられている、
逆Lアンテナであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項18】
前記無線通信装置は、放射線を検出するセンサを更に有するデジタルラジオグラフィーであることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナからの電磁波を外部に放射させる無線通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器には、無線通信機能が標準搭載されている。例えば、放射線の照射によって人体(生体)の内部の臓器を可視化しうるデジタルラジオグラフィー(DR)では、無線LANやBluetooth(登録商標)等により、他のPCからの撮影動作等の遠隔操作や撮影画像をPCに伝送することが可能になっている。
【0003】
無線通信機能が搭載された電子機器である無線通信装置では、特に導電体から構成された部品(部材)が無線アンテナの近傍に配置されると、通信周波数での電波放射量が低下するという問題がある。無線通信装置に相当する上述したデジタルラジオグラフィーにおいては、小型・薄型化と落下衝撃に対する耐性を高めるため、一般的に、アンテナの近傍に開口を有する金属製の外装筐体によってアンテナが囲まれており、また、アンテナの近傍には、板状の導電部材が配置されている。この板状の導電部材は、アンテナを固定するための固定部材として用いられうるものである。ここで説明したデジタルラジオグラフィーでは、上述した構造によって、通信周波数での電波放射量が著しく減少する問題があった。
【0004】
従来の技術においては、このような電波放射量の減少を防ぐ手段の1つとして、例えば、非特許文献1に記載されているように、アンテナに供給する電力を上げることで放射電力の劣化分を補い、通信周波数での電波放射量を高める方法が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】羽鳥光俊 監修「EMC設計の実際」丸善出版事業部(平成12年6月30日発行、P.238)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、無線通信装置において、アンテナが発する高出力の電磁波が人体に侵入してそのエネルギーが人体に吸収されると、局所的に人体の温度が上昇することが懸念される。そして、この人体の局所的な温度上昇により、例えば白内障等の発症リスクが高まる可能性が指摘されている。そのため、各国では、電磁波の人体吸収量をSAR(Specific Absorption Ratio)値として、その規制値を定めている。従来の技術においては、通信周波数での電波放射量の減少を防ぐためにアンテナの給電電力を上げると、SAR値が規制値以上になるという問題が生じていた。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、通信周波数における電波放射量の減少を抑制しつつ、電磁波の人体吸収量に係るSAR値を低減できる無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の無線通信装置は、アンテナ素子を含み構成されているアンテナと、導電体から構成され、前記アンテナを固定するための固定部材と、前記アンテナに電気的に接続され、前記アンテナに電力を供給する給電部と、導電体から構成され、前記アンテナ、前記固定部材および前記給電部を内包する外装筐体であって、前記アンテナからの電磁波を当該外装筐体の外部に放射させるための開口を備える外装筐体と、を有し、前記アンテナは、前記固定部材よりも前記外装筐体の前記開口に近い位置に配置されており、前記給電部および前記アンテナ素子の前記給電部の側に位置する第1領域は、前記アンテナ素子の前記給電部とは反対側に位置する開放端部を含む第2領域よりも、前記固定部材に近い位置に配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通信周波数における電波放射量の減少を抑制しつつ、電磁波の人体吸収量に係るSAR値を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る無線通信装置の概略構成の一例を示す図である。
図2図1に示す同軸ケーブル、第1のアンテナ素子及び第2のアンテナ素子を含む領域の拡大図である。
図3図1のz方向から見たアンテナでのxy平面に係る断面図である。
図4図1に示すアンテナの近傍領域及び人体の電磁界分布を示すイメージ図である。
図5図1に示すアンテナによって形成される電界分布を示すイメージ図である。
図6図1のz方向から見たアンテナでのxy平面に係る断面図である。
図7】本発明の第2の実施形態を示し、アンテナとしてアンテナ支持部材で支持された逆Fアンテナを適用した場合の概略構成例を示す図である。
図8図7に示すアンテナ(逆Fアンテナ)の近傍における電磁界強度分布の一例を示す図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係る無線通信装置の概略構成の一例を示す図である。
図10】本発明の第2の実施形態に係る無線通信装置の概略構成の他の一例を示す図である。
図11】本発明の第2の実施形態に係る無線通信装置の概略構成のその他の一例を示す図である。
図12】本発明の第3の実施形態に係る無線通信装置の概略構成の一例を示す図である。
図13】本発明の第4の実施形態に係る無線通信装置の概略構成の一例を示す図である。
図14図13(a)に示すアンテナの導体パターンの一例を示す図である。
図15図14に示すアンテナを用いて計算した磁界H及び電界Eの強度分布を示す図である。
図16図14に示すアンテナの導体パターンの寸法の一例を示す図である。
図17図14に示すアンテナの導体パターンの一例を示す図である。
図18図13(a)に示すアンテナ及びアンテナ支持部材に相当する構成部の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る無線通信装置100の概略構成の一例を示す図である。ここで、本実施形態では、無線通信装置100の一例として、デジタルラジオグラフィー(DR)を適用する。
【0014】
無線通信装置100は、図1に示すように、センサ110、固定部材120、バッテリー130、プリント基板140、同軸ケーブル150、アンテナ160、アンテナ支持部材170、及び、外装筐体180を有して構成されている。
【0015】
バッテリー130は、電力を供給する機構であり、プリント基板140と電気的に接続されている。
【0016】
プリント基板140は、無線IC141、信号配線142及びコネクタ143を搭載している。無線IC141で生成された無線通信用のデータ信号は、信号配線142、コネクタ143及び同軸ケーブル150を介して、アンテナ160に伝送される。また、プリント基板140は、同軸ケーブル150を介して、バッテリー130からの電力をアンテナ160に供給する。
【0017】
同軸ケーブル150は、アンテナ160に電気的に接続され、アンテナ160に対して上述した無線通信用のデータ信号や電力を供給する。この電力をアンテナ160に供給する同軸ケーブル150は、「給電部」に相当する。
【0018】
アンテナ160は、第1のアンテナ素子161及び第2のアンテナ素子162を含み構成されており、ダイポールアンテナとして構成されている。ここで、第1のアンテナ素子161及び第2のアンテナ素子162は、例えば、棒状の金属で形成されている。このアンテナ160は、アンテナ支持部材170を介して固定部材120に固定されている。また、図1では、第1のアンテナ素子161の開放端部161A、及び、第2のアンテナ素子162の開放端部162Aも示している。ここで、第1のアンテナ素子161及び第2のアンテナ素子162は、それぞれ、その一端部が開放端部161A及び162Aを構成し、第1のアンテナ素子161の他端部と第2のアンテナ素子162の他端部との間に給電部である同軸ケーブル150が設けられている。
【0019】
アンテナ支持部材170は、アンテナ160を支持し、固定部材120に固定される。
【0020】
固定部材120は、導電体から構成され、バッテリー130、プリント基板140及びアンテナ支持部材170の位置を表面(上面)で固定している。
【0021】
センサ110は、入射した放射線を検出する構成部であり、固定部材120の裏面(下面)に配置(固定)されている。
【0022】
外装筐体180は、導電体から構成され、センサ110、固定部材120、バッテリー130、プリント基板140、同軸ケーブル150、アンテナ160及びアンテナ支持部材170を内包する筐体である。この外装筐体180は、1つの面180Aに、アンテナ160からの電磁波を外装筐体180の外部に放射させるための開口181を備えている。この際、アンテナ160は、固定部材120よりも外装筐体180の開口181に近い位置に配置されている。
【0023】
ここで、導電体から構成されている外装筐体180及び固定部材120は、ステンレス、アルミ、銅、鉄といった一般的な金属部材、または、例えば炭素繊維強化プラスチックからなる導電率を有する樹脂部材で形成されている。この外装筐体180において、アンテナ160の近傍には、上述したように、アンテナ160からの電磁波を外装筐体180の外部に放射させるための開口181が設けられている。この構成により、デジタルラジオグラフィーを適用しうる無線通信装置100は、他の無線通信装置との無線通信が可能である。この構造において、電磁波の人体吸収量に係るSAR値の測定面は、開口181が設けられた外装筐体180の1つの面180A、即ち電磁波が外装筐体180から放射され人体に到達しうる面である。外装筐体180のそれ以外の5つの面は、金属で遮蔽され、電磁波が外装筐体180の外部に放射しないので、SAR値の測定面とはならない。但し、面180A以外の面に開口がある場合、測定面は複数となり、複数の面で測定したSAR値の中の最大値が採用される。
【0024】
なお、図1では、例えば、固定部材の表面(上面)を、相互に直交するx方向及びz方向に係るxz平面とし、x方向及びz方向に直交する方向をy方向としたxyz座標系を図示している。
【0025】
図2は、図1に示す同軸ケーブル150、第1のアンテナ素子161及び第2のアンテナ素子162を含む領域の拡大図である。
図2に示すように、同軸ケーブル150は、芯線151、外皮導体152及び樹脂材153を含み構成されている。図2に示す例では、第2のアンテナ素子162と芯線151とが接続(電気的に接続)され、第1のアンテナ素子161と外皮導体152とが接続(電気的に接続)されている。第1のアンテナ素子161の長さに係る寸法161B及び第2のアンテナ素子162の長さに係る寸法162Bは、無線通信で利用する周波数帯域に合わせて電波(電磁波)が放射しやすい寸法となっている。なお、芯線151は、プリント基板140の信号配線142と接続(電気的に接続)されている。外皮導体152は、プリント基板140の不図示のグラウンドパターンに接続され、プリント基板140は、不図示の接続部材によって固定部材120に電気的に接続されている。
【0026】
図3は、図1のz方向から見たアンテナ160でのxy平面に係る断面図である。ここで、図3には、図1に示すxyz座標系に対応するxyz座標系を図示している。この図3において、図1及び図2に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。
【0027】
なお、図3に示す例では、アンテナ素子161及び162が開口181の寸法内に収まるように配置されているが、例えば、アンテナ支持部材170をx方向にずらし、アンテナ素子161及び162の一部が開口181の寸法内に収まるように配置してもよい。
【0028】
図3に示すように、アンテナ支持部材170は、段差形状をしている。図3では、給電部である同軸ケーブル150、並びに、アンテナ素子161及び162の同軸ケーブル150の側にそれぞれ位置する第1領域1611及び1612は、アンテナ素子161及び162の同軸ケーブル150とは反対側にそれぞれ位置する開放端部161A及び162Aを含む第2領域1612及び1622よりも、固定部材120に近い位置に配置されている。また、アンテナ素子161及び162のそれぞれの第2領域1612及び1622は、同軸ケーブル150、並びにアンテナ素子161及び162のそれぞれの第1領域1611及び1621よりも、外装筐体180の開口181に近い位置に配置されている。第1のアンテナ素子161及び第2のアンテナ素子162を含むアンテナ160がこの構造を採ることによって、通信周波数における電波放射量の減少を抑制しつつ、電磁波の人体吸収量に係るSAR値を低減することができる。以下にその説明を記載する。
【0029】
図4は、図1に示すアンテナ160の近傍領域及び人体hbの電磁界分布を示すイメージ図である。ここで、図4(a)及び図4(b)には、図1及び図3に示すxyz座標系に対応するxyz座標系を図示している。また、図4(a)において、三日月状の実線枠で電界Eを示し、三日月状の点線枠で磁界Hを示している。
【0030】
図4(a)は、比較例に係るアンテナ160の構造を示しており、アンテナ160の近傍において、アンテナ素子161及び162のそれぞれの開放端部161A及び162Aの付近では、インピーダンスが高いので主に電界Eが形成される。また、アンテナ素子161及び162と給電部である同軸ケーブル150との接続部付近では、インピーダンスが低いので主に磁界Hが形成される。アンテナ160と人体hbとが近づくと、図4(a)に示すように、アンテナ160の近傍の電界Eは、人体hbの内部へ伝搬せず、磁界Hのみが人体hbの内部へ伝搬する。これは、人体hbの比誘電率が約50程度と高く、電束Dが連続となる人体hbと空気との境界面において、D=εEの式で考えると、電界Eが約1/50と急激に減衰するからである。また、人体hbの比透磁率は1と空気中と同じであり、磁束Bが連続となる人体hbと空気との境界面において、B=μHの式で考えると、磁界Hは減衰しないからである。また、人体hbの内部へ伝搬した磁界Hは、波長λ=c/(f×√ε)の式で求められる波長短縮によって、電磁波として電界E・磁界Hと人体hbの内部を伝搬していく。波長短縮の例として、周波数f=5[GHz]の場合の波長は、光速c=3×108[m/s]として計算すると、空気中では60[mm]であるのに対して、人体hbの内部では8.3[mm]と波長が短くなる。以上のことから、電磁波の人体吸収量に係るSAR値の強度と相関があるのは、アンテナ160の近傍の磁界Hの強度である。
【0031】
図4(b)は、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ160の構造を示している。即ち、図3と同様に、第1領域1611及び第2領域1612を有する第1のアンテナ素子161、並びに、第1領域1621及び第2領域1622を有する第2のアンテナ素子162を含み構成されたアンテナ160の構造となっている。具体的に、図4(b)では、特に磁界Hの強度の強い領域となる同軸ケーブル150、並びに第1のアンテナ素子161の第1領域1611及び第2のアンテナ素子162の第1領域1621が、人体hbまでの距離を遠ざけるように配置されている。なお、図4(b)では、図4に示す外装筐体180の面180Aの側に人体hbが存在する場合を想定している。ここで、アンテナ160の近傍の磁界Hは、距離が遠ざかる程強度が減衰するので、人体hbに到達する磁界Hの強度は減少する。また、アンテナ素子161及び162において直角に折り曲げられた領域では、図4(b)に示すように、人体hbの境界面と水平方向に磁界Hが伝搬するため、人体hbに到達しない。これらの作用により、人体hbの境界面に到達する磁界Hが大幅に減少することから、電磁波の人体吸収量に係るSAR値を低減することができる。
【0032】
図5は、図1に示すアンテナ160によって形成される電界分布を示すイメージ図である。ここで、図5(a)及び図5(b)に示すアンテナ160は、図4(a)に示すアンテナ160に相当し、図5(c)に示すアンテナ160は、図4(b)に相当するアンテナ160に相当する。
【0033】
図5(a)に示すように、例えば、第1のアンテナ素子161がマイナス電荷の場合、第2のアンテナ素子162はプラス電荷となり、電界Eは、第1のアンテナ素子161と第2のアンテナ素子162との間で点線の矢印のように形成される。第1のアンテナ素子161の開放端部161A及び第2のアンテナ素子162の開放端部162Aの付近の電界Eの強度が最も強く、第1のアンテナ素子161及び第2のアンテナ素子162の長手方向に沿って給電部である同軸ケーブル150に近づく程、電界Eの強度が弱くなる。
【0034】
また、図5(b)に示すように、アンテナ160よりも大きいサイズの導電体からなる固定部材120がある場合、第1のアンテナ素子161と第2のアンテナ素子162との間で形成される電界Eが固定部材120と結合する。このため、固定部材120が電位変動を起こす。この結合によって、アンテナ160から電波が空間に放射されなくなるため、放射効率が低下する。
【0035】
図5(c)に示すように、本実施形態のアンテナ160の構造では、アンテナ支持部材170で固定されたアンテナ160から発せられる電界Eの強度の強い領域となるアンテナ素子161及び161の開放端部161A及び162Aが、導電体からなる固定部材120から遠ざけられた構造となっている。これにより、図5(b)を用いて説明した電界Eの固定部材120との結合を極力抑えることができ、その結果、通信周波数における電波放射量の減少を抑制することができる(図5(b)の場合と比較して、通信周波数における電波放射量を高めることができる)。
【0036】
図4及び図5を用いて説明したように、本実施形態では、図4(b)及び図5(c)に示すアンテナ160の構造を採ることにより、通信周波数における電波放射量の減少を抑制しつつ、電磁波の人体吸収量に係るSAR値を低減することができる。ここで、本実施形態におけるアンテナ160の構造とは、磁界Hの強い領域である同軸ケーブル150とアンテナ素子161及び162のそれぞれの第1領域1611及び1621を導電体からなる固定部材120に近づけて配置する構造である。
【0037】
図6は、図1のz方向から見たアンテナ160でのxy平面に係る断面図である。ここで、図6には、図1及び図3に示すxyz座標系に対応するxyz座標系を図示している。この図6において、図1図5に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。
【0038】
本実施形態においては、図6(a)及び図6(b)に示す、第1のアンテナ素子161及び第2のアンテナ素子162を含み構成されているアンテナ160、並びに、アンテナ支持部材170の形状も採りうる。
【0039】
図6(a)は、アンテナ支持部材170において、第1のアンテナ素子161及び第2のアンテナ素子162(更には、同軸ケーブル150)を載置する部分をVの字形状とした形態である。この図6(a)に示す形態では、アンテナ支持部材170は、第1のアンテナ素子161及び第2のアンテナ素子162の一端部(開放端部161A及び162A)から他端部(給電部である同軸ケーブル150の側の端部)までを直線状に支持する。
【0040】
図6(b)は、アンテナ支持部材170において、第1のアンテナ素子161及び第2のアンテナ素子162(更には、同軸ケーブル150)を載置する部分をVの字形状と段差形状を組み合わせた形状とした形態である。この図6(b)に示す形態では、アンテナ支持部材170は、第1のアンテナ素子161及び第2のアンテナ素子162の一端部(開放端部161A及び162A)から他端部(給電部である同軸ケーブル150の側の端部)までの間で、アンテナ素子161及び162を折れ曲がり状で支持する。なお、本実施形態においては、アンテナ支持部材170が、アンテナ素子161及び162を折れ曲がり状で支持する形態を説明したが、例えば、曲面状で支持する形態であってもよい。即ち、本実施形態においては、アンテナ支持部材170は、アンテナ素子161及び162を折れ曲がり状及び曲面状のうちの少なくとも一方で支持する形態であればよい。また、折れ曲がりは、1か所または2か所以上でもよい。
【0041】
また、図6(b)(図6(a)も含みうる)に示す例では、アンテナ素子161及び162のそれぞれの第1領域1611及び1621は、それぞれのアンテナ素子161及び162の長さにおける中間点未満の領域となっている。
【0042】
以上説明したように、第1の実施形態に係る無線通信装置100では、給電部である同軸ケーブル150及びアンテナ素子161及び162のそれぞれの第1領域1611及び1621を、アンテナ素子161及び162のそれぞれの開放端部161A及び162Aを含む第2領域1612及び1622よりも、導電体から構成されている固定部材120に近い位置に配置するようにしている。また、アンテナ素子161及び162のそれぞれの第2領域1612及び1622を、給電部である同軸ケーブル150及びアンテナ素子161及び162のそれぞれの第1領域1611及び1621よりも、アンテナ160からの電磁波を外装筐体180の外部に放射させるための開口181に近い位置に配置するようにしている。
かかる構成によれば、図4及び図5を用いて説明したように、通信周波数における電波放射量の減少を抑制しつつ、電磁波の人体吸収量に係るSAR値を低減することができる。
【0043】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、以下に記載する第2の実施形態の説明では、上述した第1の実施形態と共通する事項については説明を省略し、上述した第1の実施形態と異なる事項について説明を行う。
【0044】
上述した第1の実施形態では、アンテナ160をダイポールアンテナで構成する例について説明をしたが、第2の実施形態では、逆Fアンテナを適用する形態について説明する。
【0045】
第2の実施形態に係る無線通信装置の概略構成は、アンテナ160(アンテナ160を支持するアンテナ支持部材170も含む)の構成以外については、基本的には、図1に示す第1の実施形態に係る無線通信装置100の概略構成と同様である。本実施形態においては、第2の実施形態に係る無線通信装置を、無線通信装置200として説明する。
【0046】
図7は、本発明の第2の実施形態を示し、アンテナ260としてアンテナ支持部材170で支持された逆Fアンテナを適用した場合の概略構成例を示す図である。ここで、図7には、図1に示すxyz座標系に対応するxyz座標系を図示している。図7に示す例では、フレキシブルプリント配線板からなるアンテナ支持部材170で支持されたアンテナ260を示している。
【0047】
図7に示すように、アンテナ(逆Fアンテナ)260は、アンテナ素子261、グラウンドパターンを構成するグラウンド導体部262、及び、給電線263を含み構成されている。図7では、同軸ケーブル150の芯線151が給電線263に電気的に接続され、外皮導体152がグラウンド導体部262に電気的に接続されている。アンテナ素子261は、その一端部が開放端部261Aを構成し、その他端部がグラウンド導体部262に電気的に接続されて短絡され、当該一端部と当該他端部との間の部分が給電部である同軸ケーブル150と電気的に接続される給電線263となっている。また、図7では、グラウンド導体部262の側端部262A及び262Bも図示している。
【0048】
図8は、図7に示すアンテナ(逆Fアンテナ)260の近傍における電磁界強度分布の一例を示す図である。この図8において、図7に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。
【0049】
図8において、点線の領域801及び802は、電界Eが最も強い領域であり、一点鎖線の領域803は、電界Eが2番目に強い領域である。また、二点鎖線の領域804は、磁界Hの強い領域である。
【0050】
図9は、本発明の第2の実施形態に係る無線通信装置200の概略構成の一例を示す図である。この図9において、図1図8に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。また、図9では、第2の実施形態に係る無線通信装置200の構成部のうち、一部の構成のみ図示している。また、図9には、図1に示すxyz座標系に対応するxyz座標系を図示している。
【0051】
図4を用いて上述したように、電磁波の人体吸収量に係るSAR値の強度と相関があるのは磁界Hの強度であるため、本実施形態では、図9に示すように、磁界Hの強い領域804に含まれる給電線263の近傍領域を固定部材120に近づけて配置する。即ち、給電部である同軸ケーブル150及びアンテナ素子261の第1領域2611を、アンテナ素子261の開放端部261Aを含む第2領域2612よりも、固定部材120に近い位置に配置する。また、通信周波数における電波放射量の劣化要因は、導電体からなる固定部材120とアンテナ260とが結合するためであるため、本実施形態では、図9に示すように、電界Eの強い領域801~803に含まれるアンテナ素子の開放端部261A並びにグラウンド導体部262の側端部262A及び262Bの近傍領域を開口181に近づけて配置する。即ち、アンテナ素子261の第2領域2612を、同軸ケーブル150及びアンテナ素子261の第1領域2611よりも、外装筐体180の開口181に近い位置に配置する。この構造によって、アンテナ(逆Fアンテナ)260に対して通信周波数における電波放射量の減少を抑制しつつ、電磁波の人体吸収量に係るSAR値を低減することができる。なお、グラウンド導体部262の側端部262Bは、2番目に電界Eが強い領域なので、開口181に近づけなくてもよい。
【0052】
図10は、本発明の第2の実施形態に係る無線通信装置200の概略構成の他の一例を示す図である。この図10において、図1図9に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。また、図10では、第2の実施形態に係る無線通信装置200の構成部のうち、一部の構成のみ図示している。また、図10には、図1及び図9に示すxyz座標系に対応するxyz座標系を図示している。
【0053】
図7に示すように、アンテナ(逆Fアンテナ)260がプリント配線板からなるアンテナ支持部材170で支持される場合、図9に示すように折り曲げることができない。その場合は、図10に示すように、給電線263が、アンテナ素子261の開放端部261A及び開放端部261Aに近いグラウンド導体部262の側端部262Aよりも、導電体からなる固定部材120に近づくように、アンテナ支持部材170を傾けて配置する。即ち、図10に示す、xz面と平行で且つ給電線263の一部を通る点線が、アンテナ素子261の開放端部261Aの一部または開放端部261Aに近いグラウンド導体部262の側端部262Aの一部を通る一点鎖線よりも、導電体からなる固定部材120に近づくように配置すればよい。
【0054】
図11は、本発明の第2の実施形態に係る無線通信装置200の概略構成のその他の一例を示す図である。この図11において、図1図10に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。また、図11では、第2の実施形態に係る無線通信装置200の構成部のうち、一部の構成のみ図示している。また、図11には、図1図9及び図10に示すxyz座標系に対応するxyz座標系を図示している。
【0055】
上述した図9では、y方向に順に、固定部材120、アンテナ260、開口181を配置し、図7のxz面と図9のxz面とが同一面を向くようにアンテナ260が配置した場合を示しているが、本実施形態においてはこれに限定されるものではない。例えば、図11(a)に示すように、図7のxz面と図11のxy面が同一面を向く形態、即ち固定部材120の表面と垂直方向にアンテナ素子261を配置する形態も、考えられる。図11(b)に示すように、固定部材120の表面に対してアンテナ素子261を傾けて配置する形態は、本実施形態に適用可能である。
【0056】
図10及び図11に示す例では、アンテナ支持部材170は、アンテナ素子261及びグラウンド導体部262を平面状で支持する形態となっている。また、図9に示す例では、アンテナ支持部材170は、アンテナ素子261及びグラウンド導体部262を折れ曲がり状で支持する形態となっている。なお、図9に示す例では、アンテナ支持部材170が、アンテナ素子261及びグラウンド導体部262を折れ曲がり状で支持する形態を説明したが、例えば、曲面状で支持する形態であってもよい。即ち、本実施形態においては、アンテナ支持部材170は、アンテナ素子261及びグラウンド導体部262を折れ曲がり状及び曲面状のうちの少なくとも一方で支持する形態であればよい。また、折れ曲がりは、1か所または2か所以上でもよい。
【0057】
第2の実施形態に係る無線通信装置200においても、第1の実施形態における無線通信装置100と同様の構成を採るようにしている。即ち、給電部である同軸ケーブル150及びアンテナ素子261の第1領域2611を、アンテナ素子261の開放端部261Aを含む第2領域2612よりも、導電体から構成されている固定部材120に近い位置に配置するようにしている。また、アンテナ素子261の第2領域2612を、給電部である同軸ケーブル150及びアンテナ素子261の第1領域2611よりも、アンテナ260からの電磁波を外装筐体180の外部に放射させるための開口181に近い位置に配置するようにしている。
かかる構成によれば、上述した第1の実施形態と同様に、通信周波数における電波放射量の減少を抑制しつつ、電磁波の人体吸収量に係るSAR値を低減することができる。
【0058】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。なお、以下に記載する第3の実施形態の説明では、上述した第1及び第2の実施形態と共通する事項については説明を省略し、上述した第1及び第2の実施形態と異なる事項について説明を行う。
【0059】
上述した第1の実施形態では、アンテナ160をダイポールアンテナで構成する例について説明をしたが、第3の実施形態では、上述した第2の実施形態と同様に、逆Fアンテナを適用する形態について説明する。
【0060】
第3の実施形態に係る無線通信装置の概略構成は、アンテナ160及びアンテナ支持部材170の構成以外については、基本的には、図1に示す第1の実施形態に係る無線通信装置100の概略構成と同様である。本実施形態においては、第3の実施形態に係る無線通信装置を、無線通信装置300として説明する。
【0061】
図12は、本発明の第3の実施形態に係る無線通信装置300の概略構成の一例を示す図である。この図12において、図1図11に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。また、図12では、第3の実施形態に係る無線通信装置300の構成部のうち、一部の構成のみ図示している。また、図12には、図1及び図3に示すxyz座標系に対応するxyz座標系を図示している。
【0062】
図12に示すアンテナ360は、導電体からなる固定部材120をグラウンドとした逆Fアンテナである。アンテナ(逆Fアンテナ)360は、図12に示すように、アンテナ素子361、導電体からなる給電線(導電部)362、及び、導電体から構成されている凸形状の突起物363を含み構成されている。突起物363は、図12に示すように、アンテナ素子361と固定部材120との間に設けられている。なお、このような突起物363は、ダイポールアンテナやモノポールアンテナ、逆Lアンテナに適用されてもよい。
【0063】
アンテナ素子361の一端部が開放端部361Aを構成し、アンテナ素子361の他端部がグラウンドとなる導電体からなる固定部材120に電気的に接続され、アンテナ素子361の一端部と他端部との間に給電線362が設けられている。この場合には、導電体からなる固定部材120上に導電体からなる突起物363を設けて、給電線362の一部を通る点線が、グラウンドとなる突起物363を通る一点鎖線よりも、導電体からなる固定部材120に近づけて配置する。
【0064】
即ち、第3の実施形態では、給電部である同軸ケーブル150及びアンテナ素子361の第1領域3611を、アンテナ素子361の開放端部361Aを含む第2領域3612よりも、固定部材120に近い位置に配置する。また、アンテナ素子361の第2領域3612を、同軸ケーブル150及びアンテナ素子361の第1領域3611よりも、外装筐体180の開口181に近い位置に配置する。
かかる構成によれば、上述した第1及び第2の実施形態と同様に、通信周波数における電波放射量の減少を抑制しつつ、電磁波の人体吸収量に係るSAR値を低減することができる。
【0065】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。なお、以下に記載する第4の実施形態の説明では、上述した第1~第3の実施形態と共通する事項については説明を省略し、上述した第1~第3の実施形態と異なる事項について説明を行う。
【0066】
図13は、本発明の第4の実施形態に係る無線通信装置400の概略構成の一例を示す図である。図13では、第4の実施形態に係る無線通信装置400の構成部のうち、一部の構成のみ図示している。また、図13には、図1に示すxyz座標系に対応するxyz座標系を図示している。
【0067】
無線通信装置400は、図13(a)に示すように、図1の固定部材120に相当する固定部材420、図1の同軸ケーブル150に相当する同軸ケーブル450、図1のアンテナ160に相当するアンテナ460、図1のアンテナ支持部材170に相当するアンテナ支持部材470、及び、図1の外装筐体180に相当する外装筐体480を有して構成されている。第4の実施形態に係る無線通信装置400においても、図1に示すセンサ110、バッテリー130及びプリント基板140に相当する構成部を更に有して構成されているものとする。また、外装筐体180には、面480Aに開口481、482及び483が設けられており、また、面480Bに開口484が設けられている。
【0068】
図13(b)は、図13(a)におけるxz断面図を示し、図13(c)は、図13(a)におけるxy断面図を示し、図13(d)は、図13(a)におけるyz断面図を示している。図13(a)に示すように、開口483における開口面に対して垂直方向(y方向)から見た場合に、図13(b)に示すように、少なくともアンテナ460の一部が開口483と重なっている。
【0069】
ここで、第4の実施形態の一例として、無線通信装置400としてデジタルラジオグラフィー(DR)を適用した場合の効果を示すため、AET社製電磁界シミュレータのMW-STUDIOを用いて数値実験を実施した。
【0070】
この場合、図13(a)に示すアンテナ460は、ダイポールアンテナであり、第1のアンテナ素子461及び第2のアンテナ素子462を含み構成されている。このアンテナ460は、段差状のアンテナ支持部材470に接着固定されている。アンテナ支持部材470は、導電体からなる固定部材420に接着固定されている。導電体からなる外装筐体480は、導電体からなる固定部材420に固定されており、導電体からなる外装筐体480の面480Aには、一点鎖線で示す開口481、482及び483が設けられている。導電体からなる外装筐体480の面480Bには、一点鎖線で示す開口484が設けられ、各開口は樹脂部材で埋められている。なお、アンテナ460の近傍に設けられた開口483及び484は、アンテナ460が発する電磁波を外装筐体480の外部に放射するために設けられたものであり、開口483は、アンテナ460から最も近い位置に設けられた開口である。また、放射線を検出するセンサ110は、導電体からなる固定部材120に対してアンテナ460の裏面の側に配置されているために影響が低いことから、図示を省略している。
【0071】
以下の表1に、図13(b)、図13(c)及び図13(d)に図示された各寸法を示す。
【表1】
【0072】
図14は、図13(a)に示すアンテナ460の導体パターンの一例を示す図である。ここで、アンテナ460は、Molex社製の2.4/5GHzデュアルバンドのフレキシブルアンテナ(146153シリーズ)を用いた。このアンテナ460は、小型化のために第1のアンテナ素子461及び第2のアンテナ素子462を折り曲げて形成しているので、アンテナ素子461及び462のそれぞれの開放端部1401A及び1402Aは、アンテナ460の中央側を向いている。また、アンテナ460は、Wifiの通信周波数帯域に対応するため、2GHz帯域と5GHz帯域で電波が効率よく放射するような形状となっている。第1のアンテナ素子461の側端部1401Bと第2のアンテナ素子462の側端部1402Bとの間に、給電部である同軸ケーブル450が接続されている。
【0073】
この図14に示すアンテナ460において、電界E及び磁界Hの強い領域を把握するため、アンテナ460の導体パターン寸法を測定し、AET社製の電磁界シミュレータのMW-STUDIOを用いて計算を実施した。
【0074】
図15は、図14に示すアンテナ460を用いて計算した磁界H及び電界Eの強度分布を示す図である。この図15において、図14に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。
【0075】
図15(a)は、アンテナ460の磁界Hの強い領域を示し、図15(b)は、電界Eの強い領域を示す。なお、観測周波数は2.4GHzと5.3GHzとした。図15(a)に示す磁界の強い領域は、2.4GHz及び5.3GHzでほぼ同等となり、一番強い領域1501は、図15(a)において点線で示すように、同軸ケーブル450が接続された給電点、即ち側端部1401B及び1402Bを含む領域である。また、一番強い領域1502及び1503は、図15(a)において一点鎖線で示すように、給電点に隣接する領域であり、三番目に強い領域1504及び1505は、図15(a)において二点鎖線で示すように、アンテナ素子461及び462において開放端部1401A及び1402Aと給電点との間の領域である。なお、これらの領域で磁界Hの強度は一様ではなく、アンテナの開放端部1401A及び1402Aに近づくほど強度は弱くなる。
【0076】
図15(b)に示す電界Eの強い領域1511~1513及び1521~1523は、周波数2.4GHzにおいて、図15(b)の点線で示すように、アンテナ素子461及び462の開放端部1401A及び1402Aと、アンテナ460の外形で長手方向の側端部1401C及び1402Cと、それらの間の側端部1401F及び1402Fの領域である。また、5.3GHzにおける電界の強い領域1514及び1524は、図15(b)の一点鎖線で示すように、アンテナ素子461及び462の開放端部1401A及び1402Aの領域と、アンテナ素子461の側端部1401D、1401E及びアンテナ素子462の側端部1402D、1402Eの領域である。なお、これらの領域で電界E強度は一様ではなく、アンテナ素子461及び462の開放端部1401A及び1402Aに近づくほど強度は強くなる。
【0077】
本実施形態においては、上述した磁界Hの強い領域を導電体からなる固定部材420に近づけ、上述した電界Eの強い領域を開口483に近づけて配置するため、アンテナ支持部材470を誘電体からなる段差形状の部材とした。
【0078】
図16は、図14に示すアンテナ460の導体パターンの寸法の一例を示す図である。この図16において、図14及び図15に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。
【0079】
図16に示すw1×fの面積を有する領域では、固定部材420からアンテナ460までの最短距離は、2.8mmとした。w2×fの面積を有する領域では、固定部材420からアンテナ460までの最短距離は、寸法4.8mmとなるような形状とした。本実施形態の優位性を示すため、導電体からなる固定部材420からアンテナ素子461までの最短距離が、段差をつけずに2.8mm、3.8mm、4.8mmで一定となるアンテナ支持部材470を計算し、本実施形態の結果と比較した。
【0080】
なお、SAR値は、面480A及び480Bに、デジタルラジオグラフィー(DR)の外形よりも大きい寸法の594×520×46[mm]の人体ファントムを密着させて配置した。SAR値の算出に関しては、国際規格測定で用いられる人体ファントムの溶剤の材料定数を使用し、導電率σは2[S/m]、比誘電率は52.21、Tanδは0.28、物質密度ρは1000とした。固定部材420等の導電体はステンレスとし、その導電率σは1100000[S/m]とした。SAR値は、人体ファントム内の電界Eを観測し、SAR[W/Kg]=E×E×ρ/σとして計算した。通信特性に関しては、人体ファントムを取り去った状態で計算し、放射効率を算出した。放射効率は、通信周波数における信号線に給電する電力と、アンテナ460を中心に1[m]の離れた地点を通過する放射電磁波の総電力との比を算出した。表2に、SAR値と放射効率を算出した結果を示す。
【0081】
【表2】
【0082】
2.8mm一定と3.8mm一定と4.8mm一定の結果を比較すると、固定部材420からアンテナ460までの距離が近づく程、SAR値の値が低下し、2.8mm一定のSARの値が最も低くなっている。一方、放射効率の値は、開口に近づく程放射効率の値は高くなり、4.8mm一定の放射効率が最良となる。上記3水準の中では、3.8mm一定にすることで、電波放射量とSAR値のバランスを取ることができる。本実施形態の段差形状と3.8mm一定を比較すると、放射効率の値は段差形状が3.8mm一定よりも2.4GHzは改善したが、5.5GHzは若干劣化した。一方、SAR値については、2.4GHz及び5.5GHzにおいて低減していることがわかる。即ち、本実施形態の構造によって、通信周波数における電波放射量の減少を抑制しつつ、電磁波の人体吸収量に係るSAR値を低減することができる。
【0083】
また、この段差形状において、導電体からなる固定部材420に近づける領域は、アンテナ素子461及び462の長さの何%程度になるかを算出した。
【0084】
図17は、図14に示すアンテナ460の導体パターンの一例を示す図である。
図17に示すように、アンテナ素子461及び462の幅の中点を当該アンテナ素子に沿って描いたものが、点線1701及び1702である。第1のアンテナ素子461のアンテナ素子長は、側端部1401Bから開放端部1401Aまでの寸法32.6[mm]である。第2のアンテナ素子462のアンテナ素子長は、側端部1402Bから開放端部1402Aまでの寸法36.95[mm]である。また、図17中の地点P1及びP2は、表1の寸法W1の端部であり、側端部1401Bから地点P1までの距離は、14.015[mm]である。また、側端部1402Bから地点P2までの距離は、18.315[mm]である。即ち、第1のアンテナ素子461は、給電部から当該アンテナ素子の全長1701の43.0%が導電体に近づけて配置している。また、第2のアンテナ素子462は、給電部から当該アンテナ素子の全長1702の49.6%が導電体に近づけて配置している。
【0085】
以上のことから、給電部からアンテナ素子461及び462の全長の概ね50%の地点、即ちアンテナ素子長の中間点までの領域を導電体からなる固定部材420に近づけることで、本実施形態の効果が得られる。
【0086】
図18は、図13(a)に示すアンテナ460及びアンテナ支持部材470に相当する構成部の一例を示す図である。上述した図13(a)に示す段差状のアンテナ支持部材470に変えて、図18(a)に示すように、Vの字形状のアンテナ支持部材470を適用した場合も同程度の効果が得られた。図18(b)に示す寸法W3は4mmであり、導電体からなる固定部材420からの距離はs=2.8mm、r=4.8mmである。この形状において、導電体からなる固定部材420に近づける領域を、何%程度の距離で導電体からなる固定部材420に近づけて配置するかを算出した。地点P1及び地点P2において、導電体からなる固定部材420からの距離は、3.789mmである。即ち、導電体からなる固定部材420からアンテナ素子461及び462の最長距離rとアンテナ素子の最短距離sの差分の49.5%の寸法を最短距離sに近づけて配置している。
【0087】
以上のことから、導電体に近づける領域は、固定部材420からアンテナ素子461及び462までの最長距離と最短距離との差分の半分未満の寸法を最短距離に近づけて、アンテナ素子461及び462を配置することで本実施形態の効果が得られる。
【0088】
第4の実施形態に係る無線通信装置400においても、第1の実施形態における無線通信装置100と同様の構成を採るようにしている。即ち、図18に示すように、給電部である同軸ケーブル150及びアンテナ素子461及び462のそれぞれの第1領域4611及び4621を、アンテナ素子461及び462のそれぞれの第2領域4612及び4622よりも、導電体から構成されている固定部材120に近い位置に配置するようにしている。
かかる構成によれば、上述した第1の実施形態と同様に、通信周波数における電波放射量の減少を抑制しつつ、電磁波の人体吸収量に係るSAR値を低減することができる。
【0089】
(その他の実施形態)
上述した本発明の実施形態では、アンテナとして、ダイポールアンテナや逆Fアンテナを適用したが、本発明においてはこれに限定されるものではなく、いわゆる逆Lアンテナやモノポールアンテナを適用することも可能である。モノポールアンテナを適用する場合、当該アンテナは、アンテナ素子に加えて、アンテナ素子のグラウンドとして用いられるグラウンド導体部(或いは、導電体からなる導電部)を更に含み構成されており、アンテナ素子は、その一端部が開放端部を構成し、その他端部とグラウンド導体部(或いは、上述した導電部)との間に給電部が設けられている形態を採る。また、逆Lアンテナを適用する場合、当該アンテナは、アンテナ素子に加えて、アンテナ素子のグラウンドとして用いられるグラウンド導体部(或いは、導電体からなる導電部)を更に含み構成されており、アンテナ素子は、その一端部が開放端部を構成し、一端部と他端部との間で折れ曲がった形状をしており、他端部とグラウンド導体部(或いは、上述した導電部)との間に給電部が設けられている形態を採る。
【0090】
また、上述した本発明の実施形態では、無線通信装置として本発明をデジタルラジオグラフィー(DR)に適用した場合を示したが、無線通信機能を有するカメラのような他の無線通信装置を適用してもよい。
【0091】
なお、上述した本発明の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0092】
100:無線通信装置、110:センサ、120:固定部材、130:バッテリー、140:プリント基板、141:無線IC、142:信号配線、143:コネクタ、150:同軸ケーブル、160:アンテナ、161:第1のアンテナ素子、162:第2のアンテナ素子、170:アンテナ支持部材、180:外装筐体、181:開口
図1
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