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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20240304BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
A61B1/00 681
G02B23/24 A
G02B23/24 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019232418
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021100455
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 雅弘
【審査官】今浦 陽恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/117165(WO,A1)
【文献】特開2017-108932(JP,A)
【文献】特開2010-051503(JP,A)
【文献】特開2008-011504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00
G02B 23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡装置と、
前記内視鏡装置と接続されることにより信号の光通信が可能となるプロセッサと、を備え、
前記内視鏡装置及び前記プロセッサは、前記光通信を行う光通信デバイスを有し、
前記光通信デバイスは、
前記内視鏡装置を前記信号の送信側とし前記プロセッサを前記信号の受信側とする第1の光空間伝送路と、前記プロセッサを前記信号の送信側とし前記内視鏡装置を前記信号の受信側とする第2の光空間伝送路と、を少なくとも有し、
前記信号の送信側に、発光素子と、前記発光素子の発光量を制御する発光量調整部と、前記発光量調整部を制御する送信側制御部と、前記発光素子の発光量を前記発光量調整部にフィードバックするモニタ用受光素子と、を有し、
前記信号の受信側に、前記発光素子からの光を受光する受光素子と、前記受光素子の受光量に応じたモニタ電流と所定の閾値電流とを比較し、比較結果から、前記受光量の過不足を検知する受信側制御部と、を有し、
前記内視鏡装置の前記送信側制御部は、
前記第1の光空間伝送路を用いて、第1の発光量で前記発光素子を発光させ、前記受光素子に受光させる処理と、
前記受信側制御部から、前記受光量の過不足を示す検知情報を前記第2の光空間伝送路を介して受信し、前記検知情報に基づいて、前記モニタ電流が前記所定の閾値電流に近づくように、前記発光量調整部を制御して、第2の発光量で前記発光素子を発光させる処理と、
前記モニタ電流が前記所定の閾値電流となった場合に、前記モニタ用受光素子の受光量が一定となるように、前記発光量調整部を制御する処理と、を実行し、
前記プロセッサの前記送信側制御部は、
前記第2の光空間伝送路を用いて、第3の発光量で前記発光素子を発光させ、前記受光素子に受光させる処理と、
前記受信側制御部から、前記受光量の過不足を示す検知情報を前記第1の光空間伝送路を介して受信し、前記検知情報に基づいて、前記モニタ電流が前記所定の閾値電流に近づくように、前記発光量調整部を制御して、第4の発光量で前記発光素子を発光させる処理と、
前記モニタ電流が前記所定の閾値電流となった場合に、前記モニタ用受光素子の受光量が一定となるように、前記発光量調整部を制御する処理と、を実行する内視鏡システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記送信側制御部は、
前記発光素子に前記第1の発光量又は前記第3の発光量を発光させる際に、前記発光量調整部に前記発光素子の許容電流量の下限値を出力させる、内視鏡システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記受信側制御部は、
前記受光素子の許容電流量の下限値と上限値の平均値を前記所定の閾値電流として、前記検知情報を生成する、内視鏡システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記プロセッサに接続される表示部をさらに備え、
前記受信側制御部は、
前記モニタ電流が前記所定の閾値電流に満たない場合に、前記光通信デバイスの汚れの可能性を示す通知を前記表示部に表示させる、内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、内視鏡システムは、内視鏡装置(スコープ)と、内視鏡装置に接続されるプロセッサとによって構成されている。近年では、使用後の内視鏡装置の洗浄・消毒時の防水キャップ着脱の手間を考慮し、プロセッサから内視鏡装置に非接触で電力を供給するコネクタを用いた内視鏡システムが用いられている。
【0003】
このような内視鏡システムでは、内視鏡装置側コネクタとプロセッサ側コネクタとを接続することによって、内視鏡装置とプロセッサとの間に、相対向する発信素子と受信素子とからなる伝送路が形成される。内視鏡装置とプロセッサとの間では、この伝送路を介して制御信号や映像信号が伝送(通信)される。
【0004】
例えば、特許文献1は、内視鏡装置側コネクタとプロセッサ側コネクタとの接続面に、それぞれ電力伝送用コイル、光通信用の発光素子及び受光素子、並びに接触部を配置した内視鏡システムを開示している。
【0005】
一般に、内視鏡装置は使用するたびに洗浄が行われるが、コネクタ部までも毎回洗浄したり清掃したりすることは使用者にとって手間である。したがって、内視鏡装置側コネクタ及びプロセッサ側コネクタの接続面には、使用回数が増えるにつれて埃や水垢などの汚れが付着する。この汚れは、特に、凹部構造を有するプロセッサ側コネクタで顕著である。コネクタ部に汚れが付着していると、光通信デバイスによる光信号が減衰して通信が安定的に行われない可能性がある。
【0006】
特許文献2は、光コネクタに汚れが付着した場合や嵌合ずれが生じた場合にも光伝送を可能とする技術として、送信側の第1の光ファイバの径よりも、受信側の第2の光ファイバの径を大きくした内視鏡システムを開示している。
【0007】
特許文献3は、プロセッサから内視鏡装置に非接触で良好に電力を供給する技術として、給電部のコイルに流す電流の周波数を共鳴周波数に徐々に近づける内視鏡システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5978238号公報
【文献】特許第6177463号公報
【文献】特許第6348854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1においては、内視鏡装置側コネクタ及びプロセッサ側コネクタの接続面に汚れが付着した場合の光信号の減衰について何ら着目がなされていない。
【0010】
特許文献2の内視鏡システムにおいても、汚れが付着した場合や、嵌合ずれが生じた場合、光ファイバの接続状態によっては、光信号の光量が大きく減衰し、光信号が正常に伝送できなくなる虞がある。
【0011】
特許文献3の内視鏡システムにおいては、そもそも、電流量の過不足を伝える光伝送部の光パワーの制御を行っていない。
【0012】
本開示はこのような状況に鑑みてなされたものであり、内視鏡装置及びプロセッサ間の光通信を安定化する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本開示の一実施形態に係る内視鏡システムは、
内視鏡装置と、
前記内視鏡装置と接続されることにより信号の光通信が可能となるプロセッサと、を備え、
前記内視鏡装置及び前記プロセッサは、前記光通信を行う光通信デバイスを有し、
前記光通信デバイスは、
前記信号の送信側に、発光素子と、前記発光素子の発光量を制御する発光量調整部と、前記発光量調整部を制御する送信側制御部と、を有し、
前記信号の受信側に、前記発光素子からの光を受光する受光素子と、前記受光素子の受光量に応じたモニタ電流と所定の閾値電流とを比較し、比較結果から、前記受光量の過不足を検知する受信側制御部と、を有し、
前記送信側制御部は、
第1の発光量で前記発光素子を発光させ、前記受光素子に受光させる処理と、
前記受信側制御部から、前記受光量の過不足を示す検知情報を受信し、前記検知情報に基づいて、前記モニタ電流が前記所定の閾値電流に近づくように、前記発光量調整部を制御して、第2の発光量で前記発光素子を発光させる処理と、を実行する。
【0014】
本開示に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、本開示は、要素及び多様な要素の組み合わせ及び以降の詳細な記述と添付される特許請求の範囲の様態により達成され実現される。
本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味に於いても限定するものではないことを理解する必要がある。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、内視鏡装置及びプロセッサ間の光通信を安定化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】内視鏡システムの全体外観構成例を示す図である。
図2】内視鏡システムの概略内部構成例を示す図である。
図3A】内視鏡装置側コネクタとプロセッサ側コネクタとを接続する前の状態をある方向から見た図である。
図3B】内視鏡装置側コネクタとプロセッサ側コネクタとを接続した状態を図3Aと同方向から見た図である。
図3C】各コネクタの光非接触送受信部の構成を示す図である。
図3D】内視鏡装置側コネクタとプロセッサ側コネクタとを接続する前の状態をX方向(図3B参照:図3Aの方向とは異なる方向)から見た図である。
図3E】内視鏡装置側コネクタとプロセッサ側コネクタとを接続した状態をX方向(図3Dと同方向)から見た図である。
図4】初期動作に関係する、内視鏡装置とプロセッサの内部構成例を示す図である。
図5】光通信方法に関係する、制御信号経路の一部の構成を抜粋した図である。
図6】光通信方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下においては、本開示の一実施形態として内視鏡システムを例に取り説明する。
【0018】
内視鏡システムにおける観察の対象部位は、例えば、呼吸器等、消化器等である。呼吸器等は、例えば、肺、気管支、耳鼻咽喉である。消化器等は、例えば、大腸、小腸、胃、食道、十二指腸、子宮、膀胱等である。上述のような対象部位を観察する場合、特定の生体構造を強調した画像の活用がより効果的である。
【0019】
<内視鏡システムの構成>
図1は、本実施形態の内視鏡システムの全体外観例を示す図である。内視鏡システム1は、内視鏡装置100と、プロセッサ200と、モニタ300(表示部)とを備えている。
【0020】
内視鏡装置100は、被検体の内部に挿入される細長い管状の挿入部11と、挿入部11の基端側に配置された操作部15と、一側が操作部15に接続された連結可撓管17と、連結可撓管17の他側が接続された内視鏡装置側コネクタ110と、を備えている。挿入部11の先端部12には撮像素子が設けられており、例えば患者の体内を撮像することができる。撮像された画像は、光信号に変換されてプロセッサ200に伝送され、プロセッサ200と接続されたモニタ300に表示される。
【0021】
操作部15は、挿入部11をはじめとする内視鏡装置100の装置各部の操作を行うものであり、例えば、挿入部11の先端部12の向きを調整する操作ノブなどが設けられている。
【0022】
連結可撓管17は、操作部15と内視鏡装置側コネクタ110との間を接続し、可撓性部材で形成された管壁部を備えた管状部材で構成されている。連結可撓管17の管内には、各種信号線、LCB(Light Carrying Bundle)等が挿通配置されている。各種信号線には、例えば、挿入部11の先端部12内部に配設された撮像素子の駆動信号ラインや画素信号ライン、並びに操作部15に設けられたスイッチからのスイッチ信号ラインなどが含まれる。
【0023】
内視鏡装置側コネクタ110は、プロセッサ200に設けられているプロセッサ側コネクタ210に対して着脱自在に構成されている。内視鏡装置100は、内視鏡装置側コネクタ110がプロセッサ側コネクタ210に接続された状態で、プロセッサ200との間で信号接続及び電源接続される。内視鏡装置100とプロセッサ200との間のデータ通信には、光無線通信方式が用いられる。電力の授受に関しては、無線給電方式であってもよいし、有線給電方式であってもよい。
【0024】
プロセッサ200は、内視鏡装置100からの信号を処理する信号処理装置と、自然光の届かない体腔内を内視鏡装置100を介して照射する光源装置とを一体に備えた装置である。別の実施形態では、信号処理装置と光源装置とを別体で構成してもよい。
【0025】
本実施形態による内視鏡システム1では、内視鏡装置100とプロセッサ200との間は、活線挿抜が可能に構成されている。つまり、プロセッサ200の主電源をONしたままで、内視鏡装置側コネクタ110をプロセッサ側コネクタ210に接続したり、また、内視鏡装置側コネクタ110をプロセッサ側コネクタ210から取り外したりすることができる。
【0026】
図2は、本実施形態の内視鏡システム1の概略内部構成例を示す図である。内視鏡装置100は、プロセッサ200の光源装置201(後述)からの照射光を導くためのLCB101(ライトガイド)と、LCB101の出射端に設けられた配光レンズ102と、対物レンズ103と、対物レンズ103を介して被照射部分(観察部位)からの戻り光を受光する撮像素子104と、撮像素子104を駆動するドライバ信号処理回路105と、第1メモリ106とを備えている。
【0027】
光源装置201からの照射光は、LCB101内に入射し、LCB101内で全反射を繰り返すことによって伝播する。LCB101内を伝播した照射光は、挿入部11の先端部12内に配置されたLCB101の出射端から出射され、配光レンズ102を介して観察部位を照射する。被照射部分からの戻り光は、対物レンズ103を介して撮像素子104の受光面上の各画素で光学像を結ぶ。
【0028】
撮像素子104は、挿入部11の先端部12内に配置されており、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである。撮像素子104は、受光面上の各画素で結像した光学像(生体組織からの戻り光)を光量に応じた電荷として蓄積して、R、G、Bの画像信号を生成して出力する。なお、撮像素子104は、CCDイメージセンサに限らず、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサやその他の種類の撮像装置に置き換えられてもよい。撮像素子104は、ドライバ信号処理回路105によって駆動され、1フィールドもしくは1フレーム分の画素信号が撮像素子104から所定の時間間隔(例えば1/60秒もしくは1/30秒間隔)で読み出される。
【0029】
プロセッサ200は、光源装置201と、システムコントローラ202と、光学フィルタ203と、光学フィルタドライバ204と、前段信号処理回路205と、色変換回路206と、後段信号処理回路207と、第2メモリ208とを備えている。
【0030】
プロセッサ200は、図示しない操作パネルを備えてもよい。操作パネルの構成には種々の形態がある。操作パネルの具体的構成としては、例えば、プロセッサ200のフロント面に実装された機能毎のハードウェアキーやタッチパネル式GUI(Graphical User Interface)、ハードウェアキーとGUIとの組み合わせ等が考えられる。施術者は、操作パネルによって、例えばモード切り替え操作などの指示の入力が可能となる。
【0031】
システムコントローラ202は、不図示のメモリに格納された各種プログラムを実行し、内視鏡システム1全体を統合的に制御する。システムコントローラ202は、制御信号を用いて、プロセッサ200に接続されている内視鏡装置100に適した処理がなされるようにプロセッサ200内の各種回路の動作やタイミングを制御する。また、システムコントローラ202は、上述の操作パネルに接続されてもよい。この場合、システムコントローラ202は、操作パネルより入力される施術者からの指示に応じて、内視鏡システム1の各動作及び各動作のためのパラメータを変更する。
【0032】
光源装置201としては、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀ランプ、メタルハライドランプ等の高輝度ランプやLED(Light Emitting Diode)を用いることができる。光源装置201からの照射光は、主に可視光領域から不可視である赤外光領域に広がるスペクトルを持つ光(又は少なくとも可視光領域を含む光)である。光源装置201からの照射光は、光学フィルタ203に入射する。
【0033】
色変換回路206は、マトリクス回路211、ゲイン212、WB213及び色補正回路214を有する。
【0034】
<コネクタ部の外観構成>
図3A図3Eを参照して、内視鏡装置側コネクタ110と、プロセッサ側コネクタ210との接続関係を説明する。図3Aは、内視鏡装置側コネクタ110とプロセッサ側コネクタ210とを接続する前の状態をある方向(内視鏡装置側コネクタ110の挿入方向と垂直な方向)から見た図である。
【0035】
図3Aの左図に示されるように、内視鏡装置側コネクタ110は、非接触受電基板上に設けられた無線給電用受信側コイル1101と、光非接触送受信部1102(光通信デバイス)と、を備えている。内視鏡装置100のLCB101は、内視鏡装置側コネクタ110から突出している。
【0036】
図3Aの右図に示されるように、プロセッサ側コネクタ210は、内視鏡装置側コネクタ110を挿入するための凹部構成となっており、無線給電用送信側コイル2101と、光非接触送受信部2102と、非接触給電基板部2103と、内視鏡ロックレバー2104と、を備えている。
【0037】
図3Bは、内視鏡装置側コネクタ110とプロセッサ側コネクタ210とを接続した状態を図3Aと同方向から見た図である。内視鏡装置側コネクタ110がプロセッサ側コネクタ210の凹部に挿入されると、図3Bに示されるように、無線給電用受信側コイル1101とプロセッサ200側の無線給電用送信側コイル2101とが対向するように位置する。また、内視鏡装置側コネクタ110の光非接触送受信部1102とプロセッサ側コネクタ210の光非接触送受信部2102とが対向し、これにより内視鏡装置100とプロセッサ200との間の光データ通信が可能となる。
【0038】
図3Cは、内視鏡装置側コネクタ110とプロセッサ側コネクタ210の対向面(光非接触送受信部)の構成を示す図である。図3Cの左図に示すように、内視鏡装置側コネクタ110の光非接触送受信部1102は、フォトダイオード123-1及びレーザダイオード125-1~125-3を備えている。レーザダイオード125-1及び125-2は映像信号を送信するためのものであり、これらは映像信号経路を構成する。レーザダイオード125-3は制御信号を送信するためのものであり、フォトダイオード123-1は制御信号を受信するためのものであり、これらは制御信号経路を構成する。
【0039】
図3Cの右図に示すように、プロセッサ側コネクタ210の光非接触送受信部2102は、レーザダイオード223-1及びフォトダイオード225-1~225-3を備えている。フォトダイオード225-1及び225-2は映像信号を受信するためのものであり、これらは映像信号経路を構成する。フォトダイオード225-3は制御信号を受信するためのものであり、レーザダイオード223-1は制御信号を送信するためのものであり、これらは制御信号経路を構成する。また、光非接触送受信部2102は、LCB101を受け取るための挿入部2105を有している。
【0040】
内視鏡装置側コネクタ110をプロセッサ側コネクタ210に接続することによって、レーザダイオード125-1がフォトダイオード225-1に対向し、レーザダイオード125-2がフォトダイオード225-2に対向する。これにより、内視鏡装置側からプロセッサ側への2つの映像信号伝送路が形成される。同様に、レーザダイオード125-3がフォトダイオード225-3に対向し、フォトダイオード123-1がレーザダイオード223-1に対向する。これにより、内視鏡装置側からプロセッサ側への制御信号伝送路と、プロセッサ側から内視鏡装置側への制御信号伝送路が形成される。
【0041】
このように、内視鏡装置100とプロセッサ200との間には、対向する1対のレーザダイオードとフォトダイオードとを有して構成された伝送路が4組(複数組)形成されており、映像信号経路と制御信号経路とが分離されている。なお、伝送路の数は4つ以上であってもよい。
【0042】
図3Dは、内視鏡装置側コネクタ110とプロセッサ側コネクタ210とを接続する前の状態をX方向(図3B参照:図3Aの方向とは異なる方向)から見た図である。図3Dに示されるように、内視鏡装置側コネクタ110のX方向の側面には無線給電用受信側コイル1101(受電部)が設けられ、プロセッサ側コネクタ210の凹部のX方向の側面には無線給電用送信側コイル2101(送電部)が設けられている。
【0043】
図3Eは、内視鏡装置側コネクタ110とプロセッサ側コネクタ210とを接続した状態をX方向(図3Dと同方向)から見た図である。図3Eに示すように、内視鏡装置側コネクタ110をプロセッサ側コネクタ210の凹部に挿入すると、無線給電用受信側コイル1101が無線給電用送信側コイル2101に対向する状態となる。このように無線給電用受信側コイル1101と無線給電用送信側コイル2101とを対向させることによって、プロセッサ200から内視鏡装置100への非接触での電力の授受が可能となる。なお、電力の授受については、以上説明した無線給電方式に限定されず、互いに接触する接触部を各コネクタに設けた有線給電方式を採用してもよい。
【0044】
<光通信ための構成例>
(1)内視鏡装置100とプロセッサ200の内部構成例
図4は、光通信デバイスの通信に関連する、内視鏡装置100とプロセッサ200の内部構成例を示す図である。図4では、信号(情報)の光通信に関係する構成部のみが示され、図1及び図2に示される他の必要な構成部の図示は省略している。
【0045】
内視鏡装置100は、内視鏡装置100の全体動作を制御する第1コントローラ120と、画像処理に関する動作を制御する第2コントローラ121と、プロセッサ200から供給される電源を無線で受電する受電部122(無線給電用受信側コイル)と、プロセッサ200から光通信で送信されてきた制御情報等を受信(受光)する少なくとも1つのフォトダイオード123-1と、フォトダイオード123-1によって受信した制御情報等の信号レベルを増幅する少なくとも1つのトランスインピーダンス増幅器124-1と、増幅された信号の振幅を一定振幅の電圧信号に変換するリミッティングアンプ129-1と、受信した制御情報等をプロセッサ200側に返送する少なくとも1つのレーザダイオード125-3と、レーザダイオード125-3を駆動するレーザドライバ126-3と、撮像素子104で取得した映像信号等をプロセッサ200に対して光通信で送信する2つの(複数の)レーザダイオード125-1及び125-2と、レーザダイオード125-1及び125-2を駆動する2つの(複数の)レーザドライバ126-1及び126-2と、を備えている。なお、第1コントローラ120は、例えば、CPU(Central Processor Unit)で構成することができ、第2コントローラ121は、例えば、FPGAで構成することができる。
【0046】
一方、プロセッサ200は、プロセッサ200の全体動作を制御する第1コントローラ220と、電源供給及び停止を制御するための各Enable信号(例えば、Enable-0からEnable-2)を出力すると共に、画像処理に関する動作を制御する第2コントローラ221と、後段信号処理回路207と、第2コントローラ221からのEnable信号に応答して、内視鏡装置100に対して無線による電源供給の開始及び停止をする送電部222(無線給電用送信側コイル)と、制御情報を内視鏡装置100に対して光通信で送信する少なくとも1つのレーザダイオード223-1と、レーザダイオード223-1を駆動するレーザドライバ224-1と、内視鏡装置100から返送されてきた制御情報等を受信する少なくとも1つのフォトダイオード225-3と、フォトダイオード225-3によって受信した制御情報等の信号レベルを増幅するトランスインピーダンス増幅器226-3と、増幅された信号の振幅を一定振幅の電圧信号に変換する少なくとも1つのリミッティングアンプ227-3と、内視鏡装置100から光通信で送信されてきた映像信号等を受信(受光)する2つの(複数の)フォトダイオード225-1及び225-2と、フォトダイオード225-1及び225-2によって受信した映像信号等の信号レベルを増幅する2つの(複数の)トランスインピーダンス増幅器226-1及び226-2と、増幅された信号の振幅を一定振幅の電圧信号に変換するリミッティングアンプ227-1及び227-2と、第2コントローラ221からのEnable信号に応答して、レーザダイオード223-1、レーザドライバ224-1、トランスインピーダンス増幅器226-3及びリミッティングアンプ227-3に対する電源供給の開始及び停止をする第1パワーIC228と、第2コントローラ221からのEnable信号に応答して、フォトダイオード225-1及び225-2、トランスインピーダンス増幅器226-1及び226-2、並びにリミッティングアンプ227-1及び227-2に対する電源供給の開始及び停止をする第2パワーIC229と、を備えている。なお、第1コントローラ220は、例えば、CPU(Central Processor Unit)で構成することができ、第2コントローラ221は、例えば、FPGAで構成することができる。
【0047】
図4に点線で示すように、内視鏡装置100のレーザダイオード125-1及び125-2、レーザドライバ126-1及び126-2、並びにプロセッサ200のフォトダイオード225-1及び225-2、トランスインピーダンス増幅器226-1及び226-2、リミッティングアンプ227-1及び227-2は、映像信号経路を構成する。
【0048】
また、内視鏡装置100のフォトダイオード123-1、トランスインピーダンス増幅器124-1、レーザダイオード125-3、レーザドライバ126-3及びリミッティングアンプ129-1、並びにプロセッサ200のレーザダイオード223-1、レーザドライバ224-1、フォトダイオード225-3、トランスインピーダンス増幅器226-3、リミッティングアンプ227-3は、制御信号経路を構成する。
【0049】
プロセッサ200において、第1コントローラ220及び第2コントローラ221と後段信号処理回路207とによって、電源ON状態保持側回路が構成される。また、第1コントローラ220及び第2コントローラ221並びに後段信号処理回路207以外の構成要素によって、電源供給ON/OFF切替側回路が構成される。電源ON状態保持側回路の構成要素(第1コントローラ220、第2コントローラ221、後段信号処理回路207)は、内視鏡システム使用時及び内視鏡装置100の挿抜に関係なく、電源ON状態にしておくことができる。一方、電源供給ON/OFF切替側回路の構成要素は、内視鏡装置100の取り外し状態では電源供給がOFF状態となるように第2コントローラ221によって制御される。ただし、送電部222、第1パワーIC228及び第2パワーIC229には、内視鏡装置100の取り外し状態であっても電源には接続されているが、それぞれからの電源供給は無効(disenable)となっている。
【0050】
なお、内視鏡装置100とプロセッサ200との間を非接触化することにより、内視鏡装置100側の回路を患者側回路とし、プロセッサ200側の回路を2次側回路とすることができる。
【0051】
内視鏡装置100の挿抜時の動作を簡単に説明する。例えば、プロセッサ側コネクタ210に設けられた機構スイッチあるいはセンサ(例えば、光センサなど)によって内視鏡装置100のプロセッサ200に対する挿抜が検知されると、トリガー信号が生成され、それが第1コントローラ220に送信される。第1コントローラ220は、トリガー信号を受信すると、内視鏡装置100の挿抜動作が行われたと判断し、第2コントローラ221にトリガー信号を受信したこと(内視鏡装置100の挿抜動作検知)を通知する。第2コントローラ221は、内視鏡装置挿入時に通知を受けると、電源供給を有効にするためのEnable-0信号、Enable-1信号及びEnable-2信号を送電部222、第1パワーIC228及び第2パワーIC229にそれぞれ送信する。また、第2コントローラ221は、内視鏡装置の抜去時に通知を受けると、電源供給を無効にする場合には、Enable-0信号、Enable-1信号及びEnable-2信号を、送電部222、第1パワーIC228及び第2パワーIC229にそれぞれ送信することを停止する。
【0052】
内視鏡装置100がプロセッサ200に挿入され、電源供給を有効にするためのEnable-0信号を受け取ると(受け取っている間は)、送電部222への電源供給が有効となり、送電部222は、内視鏡装置100へ電源供給を開始する。すると、内視鏡装置100の受電部122は、送電部222から電源を受け取り、内視鏡装置100の第1コントローラ120及び第2コントローラ121に電源が供給され、第1コントローラ120及び第2コントローラ121は動作を開始する。また、受電部122は、フォトダイオード123-1、トランスインピーダンス増幅器124-1、レーザダイオード125-1~125-3、レーザドライバ126-1~126-3に電源を供給する。
【0053】
また、第1パワーIC228は、第2コントローラ221から電源供給を有効にするためのEnable-1信号を受け取ると(受け取っている間は)、レーザダイオード223-1、レーザドライバ224-1、フォトダイオード225-3、トランスインピーダンス増幅器226-3及びリミッティングアンプ227-3に電源を供給し、それらを起動する。さらに、第2パワーIC229は、第2コントローラ221から電源供給を有効にするためのEnable-2信号を受け取ると(受け取っている間は)、フォトダイオード225-1及び225-2、トランスインピーダンス増幅器226-1及び226-2並びにリミッティングアンプ227-1及び227-2に電源を供給し、それらを起動する。
【0054】
一方、内視鏡装置100がプロセッサ200から抜去され、Enable-0信号の送信が停止されると、送電部222への電源供給が無効となり、内視鏡装置100への電源供給も停止される。また、Enable-1信号の送信が停止されると、第1パワーIC228への電源供給が無効となり、レーザダイオード223-1、レーザドライバ224-1、フォトダイオード225-3、トランスインピーダンス増幅器226-3及びリミッティングアンプ227-3に電源が供給されなくなり、それらの動作が停止する。さらに、Enable-2信号の送信が停止されると、第2パワーIC229への電源供給が無効となり、フォトダイオード225-1及び225-2、トランスインピーダンス増幅器226-1及び226-2並びにリミッティングアンプ227-1及び227-2に電源が供給されなくなり、それらの動作が停止する。
【0055】
(2)光通信を安定化させる方法の詳細
図5は、本実施形態に係る光通信方法に関係する、制御信号経路の一部の構成を抜粋した図である。図4と同様の構成については説明を省略する。図5に示すように、内視鏡装置側の制御信号経路には、レーザダイオード125-3と対向するモニタ用フォトダイオード130と、レーザドライバ126-3(発光量調整部)の出力ドライブ電流を調整するためのデジタルポテンショメータ131(発光量調整部)とが設けられている。デジタルポテンショメータ131(ドライブ電流調整回路)の抵抗値は、第2コントローラ121により制御される。より具体的には、第2コントローラ121は、まずは所定の初期ドライブ電流でレーザダイオード125-3を発光させるように、デジタルポテンショメータ131の抵抗値を調整する。その後、プロセッサ側の第2コントローラ221から送信されたモニタ電流情報(プロセッサ側の受光量を調整するための情報)に応じて、デジタルポテンショメータ131の抵抗値を調整する。第2コントローラ121による処理の詳細については後述する。
【0056】
なお、レーザドライバ126-3の出力ドライブ電流を調整することができる回路であれば、デジタルポテンショメータ131以外の回路を用いてもよい。モニタ用フォトダイオード130は、レーザダイオード125-3からの発光を受光して、受光量に応じた電流をレーザドライバ126-3に出力する。
【0057】
プロセッサ側の制御信号経路には、レーザダイオード223-1と対向するモニタ用フォトダイオード230と、レーザドライバ224-1(発光量調整部)の出力ドライブ電流を調整するためのデジタルポテンショメータ231(発光量調整部)とが設けられている。デジタルポテンショメータ231(ドライブ電流調整回路)の抵抗値は、第2コントローラ221により制御される。より具体的には、第2コントローラ221は、まずは所定の初期ドライブ電流でレーザダイオード223-1を発光させるように、デジタルポテンショメータ231の抵抗値を調整する。その後、内視鏡装置側の第2コントローラ121から送信されたモニタ電流情報(内視鏡装置側の受光量を調整するための情報)に応じて、デジタルポテンショメータ231の抵抗値を調整する。
【0058】
なお、レーザドライバ224-1の出力ドライブ電流を調整することができる回路であれば、デジタルポテンショメータ231以外の回路を用いてもよい。モニタ用フォトダイオード230は、レーザダイオード223-1からの発光を受光して、受光量に応じた電流をレーザドライバ224-1に出力する。
【0059】
図6は、本実施形態に係る内視鏡システムの光通信方法を詳細に説明するためのフローチャートである。本実施形態の光通信方法は、例えば内視鏡装置100の使用時に実行される。以下において、内視鏡装置側の第2コントローラ121、プロセッサ側の第2コントローラ221を動作の主体として説明する場合があるが、内視鏡装置側の第1コントローラ120、プロセッサ側の第1コントローラ220がそれぞれ第2コントローラ121、第2コントローラ221に命令して動作させるようにしてもよい。
【0060】
(i)ステップS1
プロセッサ側の第1コントローラ220(受信側制御部)は、内視鏡装置100がプロセッサ200に接続されたか否か、すなわち、内視鏡装置側コネクタ110がプロセッサ側コネクタ210に接続されたか否かを判断する。内視鏡装置側コネクタ110とプロセッサ側コネクタ210との接続は、例えば、機械的スイッチがONとなることにより検知したり、センサ(図示せず)により検知したりすることができ、検知した際には検知信号が出力されるように構成される。機械的スイッチの場合には、スイッチがONとなったときに検知信号を出力する回路を設けてもよい。そして、第1コントローラ220は、当該検知信号をスイッチ又はセンサから受信することにより、内視鏡装置100が接続(挿入)されたと判断する。
【0061】
内視鏡装置100のプロセッサ200への接続が検知されていない場合(ステップS1でNOの場合)、プロセッサ側の第1コントローラ220は、非トリガー信号を生成し、プロセッサ側の第2コントローラ221にそれを送信する(図6には不図示のステップ)。第2コントローラ221は、非トリガー信号に応答した場合、電源供給を有効にするEnable-0信号、Enable-1信号及びEnable-2信号を、送電部222、第1パワーIC228及び第2パワーIC229に送信開始することはない(Enable信号の送信待機)。これによって、送電部222、レーザダイオード223-1、レーザドライバ224-1、フォトダイオード225-1~225-3、トランスインピーダンス増幅器226-1~226-3、リミッティングアンプ227-1~227-3、モニタ用フォトダイオード230、デジタルポテンショメータ231には、電源が供給されず、動作しないままに制御されることになる。そして、処理は再度、ステップS1に移行する。
【0062】
内視鏡装置100のプロセッサ200への接続が検知された場合(ステップS1でYESの場合)、処理はステップS2に移行する。
【0063】
(ii)ステップS2
プロセッサ側の第1コントローラ220は、内視鏡装置100への電源投入を開始する。具体的には、第1コントローラ220は、内視鏡装置側コネクタ110とプロセッサ側コネクタ210とが接続されたことを示す検知信号を受信すると、トリガー信号を生成し、第2コントローラ221にそれを送信する。第2コントローラ221は、トリガー信号に応答して、送電部222に、電源供給を有効にするためのEnable-0信号を送信し、電源を供給する状態に制御する。電源供給を有効にするためのEnable-0信号に応答して、送電部222への電源供給が有効となり、送電部222は、内視鏡装置100の受電部122へ送電(電源供給)を開始する。
【0064】
また、第2コントローラ221は、トリガー信号に応答して、第1パワーIC228に、電源供給を有効にするためのEnable-1信号を送信し、電源を供給する状態に制御する。そして、電源供給を有効にするためのEnable-1信号に応答して、第1パワーIC228への電源供給が有効となり、第1パワーIC228が起動し、動作可能になる。
【0065】
第1パワーIC228は、レーザダイオード223-1、レーザドライバ224-1、フォトダイオード225-3、トランスインピーダンス増幅器226-3、リミッティングアンプ227-3、モニタ用フォトダイオード230、デジタルポテンショメータ131への電源供給を開始することにより、これらを起動する。
【0066】
また、第2コントローラ221は、トリガー信号に応答して、第2パワーIC229に、電源供給を有効にするためのEnable-2信号を送信し、電源を供給する状態に制御する。そして、電源供給を有効にするためのEnable-2信号に応答して、第2パワーIC229への電源供給が有効となり、第2パワーIC229が起動し、動作可能になる。
【0067】
第2パワーIC229は、フォトダイオード225-1及び225-2、トランスインピーダンス増幅器226-1及び226-2、並びにリミッティングアンプ227-1及び227-2への電源供給を開始する(電源ON)。
【0068】
(iii)ステップS3
内視鏡装置100の受電部122は、送電部222から電源が供給されると、内視鏡装置側の第1コントローラ120及び第2コントローラ121(送信側制御部)へ電源を供給することにより、第1コントローラ120及び第2コントローラ121を起動し、動作可能な状態とする。また、受電部122は、フォトダイオード123-1、トランスインピーダンス増幅器124-1、レーザダイオード125-1~125-3、レーザドライバ126-1~126-3、モニタ用フォトダイオード130、デジタルポテンショメータ131に電源を供給することによりこれらを起動し、動作可能な状態とする。これにより、プロセッサ200と内視鏡装置100との間の、光通信による相互情報通信が可能となる。さらに、第2コントローラ121によって撮像素子104が起動され、観察の対象部位の映像(静止画を含む)の撮像が可能となる。
【0069】
(iv)ステップS4
内視鏡装置側の第2コントローラ121は、内視鏡装置100及び撮像素子104のイニシャルデータ(例えば、スコープID、機種、内視鏡装置100の使用回数や接続時間、伝送帯域の情報、プロトコルの情報、テストパターン、センサ情報(撮像(映像)レートや撮像方式など)を、例えば第1メモリ106(図2参照、図4には不図示)から取得し、イニシャルデータ伝送用の帯域を用いて(どのような機種の内視鏡装置100が接続されてもプロセッサ200がイニシャルデータを取得できるように)、制御信号経路に送信する。具体的には、第2コントローラ121は、レーザドライバ126-3を介してレーザダイオード125-3にイニシャルデータを送信する。このとき、例えばレーザダイオード125-3の許容範囲の下限の電流量(初期電流量)でレーザダイオード125-3を発光させる(第1の発光量)ように、第2コントローラ121は、デジタルポテンショメータ131の抵抗値を制御し、レーザドライバ126-3は、デジタルポテンショメータ131の抵抗値に従った電流量のドライブ電流をレーザダイオード125-3に出力する。
【0070】
その後、レーザダイオード125-3は、当該イニシャルデータをプロセッサ側の制御信号経路に送信(光伝送)する。このとき、プロセッサ側のフォトダイオード225-3は、レーザダイオード125-3からイニシャルデータを受信(受光)し、トランスインピーダンス増幅器226-3及びリミッティングアンプ227-3を介して、第2コントローラ221に送信する。
【0071】
また、トランスインピーダンス増幅器226-3は、フォトダイオード225-3の受光量に応じたモニタ電流を電圧(モニタ電圧)に変換し、比較基準電圧回路232を経由して第2コントローラ221に出力する。比較基準電圧回路232は、モニタ電圧と、予め設定された基準電圧との差分に相当する差分電圧を第2コントローラ221に出力する。
【0072】
(v)ステップS5
プロセッサ側の第2コントローラ221は、制御信号経路により伝送されてきたイニシャルデータを受信し、受信したイニシャルデータの内容を確認(解析)する。
【0073】
また、第2コントローラ221は、比較基準電圧回路232から、差分電圧の入力を受け付ける。第2コントローラ221は、図示しないメモリに、予め設定された所定の閾値電流(例えば、フォトダイオード225-3の受光量が減衰していない場合のフォトダイオード225-3の出力電流量)を記憶しており、例えば、比較基準電圧回路232が出力した差分電圧から、モニタ電流が閾値電流に満たないと判断した場合には、内視鏡装置側のレーザダイオード125-3の発光量を上げることを指示するための通知(モニタ電流情報)を生成する。すなわち、プロセッサ側の第2コントローラ221は、モニタ電流の過不足を検知し、モニタ電流情報(検知情報)を生成する。
【0074】
本ステップS5において、モニタ電流が閾値電流に対し不足している場合は光伝送が安定しておらず、内視鏡装置側コネクタ110及びプロセッサ側コネクタ210の接続面に汚れが付着している可能性がある。したがって、第2コントローラ221は、汚れの付着の可能性を示す通知をモニタ300に表示させることにより、使用者にメンテナンスを促してもよい。
【0075】
(vi)ステップS6
第2コントローラ221は、イニシャルデータを制御信号経路に送信(返送)する。具体的には、第2コントローラ221は、レーザドライバ224-1に対して、イニシャルデータに含まれる伝送帯域の情報を通知する。
【0076】
また、第2コントローラ221は、モニタ電流情報を制御信号経路(レーザドライバ224-1)に送信する。
【0077】
そして、イニシャルデータ及びモニタ電流情報は、レーザドライバ224-1を介してレーザダイオード223-1に送信される。レーザダイオード223-1は、当該イニシャルデータ及びモニタ電流情報を内視鏡装置側の制御信号経路に送信(光伝送)する。このとき、内視鏡装置側のフォトダイオード123-1は、プロセッサ側のレーザダイオード223-1からイニシャルデータ及びモニタ電流情報を受信(受光)し、トランスインピーダンス増幅器124-1及びリミッティングアンプ129-1を介して、第2コントローラ121に送信する。
【0078】
(vii)ステップS7
内視鏡装置側の第2コントローラ121は、制御信号経路により伝送されてきたイニシャルデータ及びモニタ電流情報を受信する。
【0079】
(viii)ステップS8
第2コントローラ121は、受信したモニタ電流情報に応じて、デジタルポテンショメータ131の抵抗値を制御することにより、レーザドライバ126-3の出力ドライブ電流を調整し、レーザダイオード125-3の発光量を変更(第2の発光量)する。例えば、モニタ電流が閾値電流よりも低く、レーザダイオード125-3の発光量を上げることを指示するための情報をモニタ電流情報が有している場合は、第2コントローラ121は、レーザダイオード125-3の発光量を上げるように、デジタルポテンショメータ131の抵抗値を下げる。また、モニタ電流が閾値電流よりも高く、レーザダイオード125-3の発光量を下げることを指示するための情報をモニタ電流情報が有している場合は、第2コントローラ121は、レーザダイオード125-3の発光量を下げるように、デジタルポテンショメータ131の抵抗値を上げる。なお、デジタルポテンショメータ131の抵抗値の調整の度合い(変更量)は、用いるデジタルポテンショメータの仕様により決定できる。
【0080】
ここで、フォトダイオード225-3の受光量に過不足がないことを示すモニタ電流情報を受信するまで(すなわち、モニタ電流が閾値電流となり、安定した値となるまで)、ステップS4~S8を実行する。すなわち、モニタ電流が閾値電流と同等(閾値電流±所定の誤差)であることを示す情報をモニタ電流情報が有している場合は、第2コントローラ121は、レーザダイオード125-3の発光量を変更しないように、デジタルポテンショメータ131の抵抗値及びレーザドライバ126-3の出力ドライブ電流を変更しない。この場合、フォトダイオード225-3の受光量が安定した値であるため、第2コントローラ121は、制御信号経路の送受信が開通したことを確認する。
【0081】
また、レーザダイオード125-3の発光量を一定とするために、モニタ用フォトダイオード130の出力電流が一定となるようにレーザドライバ126-3の出力ドライブ電流が調整される。
【0082】
なお、図5及び6では、説明及び図示の簡略化のために、1つのレーザドライバ126-3の出力ドライブ電流を調整することを説明したが、図4に示したすべてのレーザダイオードについて同様の制御が行われる。すなわち、プロセッサ200が光通信の送信側となり、内視鏡装置100が光通信の受信側となる場合にも、上記と同様の制御が行われる。
【0083】
<変形例>
以上説明した例では、まずレーザダイオード125-3(発光素子)を、その許容電流量の下限(第1の発光量)で発光させ、プロセッサ側の第2コントローラ221が、プロセッサ側のフォトダイオード225-3(受光素子)の受光量に応じたモニタ電流と所定の閾値電流とを比較し、受光量の過不足を検知してモニタ電流情報(検知情報)として、内視鏡装置側の第2コントローラ121に返送し、第2コントローラ121が、モニタ電流情報に基づいて、モニタ電流が所定の閾値電流に近づくように、レーザドライバ126-3の出力ドライブ電流を制御して、レーザダイオード125-3の発光量を調整(第2の発光量)した。以上を1サイクルとして、モニタ電流が閾値電流となるまでサイクルを繰り返す手法を説明した。
【0084】
フォトダイオード225-3の安定した受光量を達成するためには、上記のように、徐々にレーザドライバ126-3の出力ドライブ電流を上げていく手法に限定されない。例えば、プロセッサ側の第2コントローラ221が、フォトダイオード225-3が受光できる許容範囲の下限の電流量と上限の電流量の平均値を所定の閾値電流として算出する。次に、フォトダイオード225-3が当該平均値の電流を出力するように、内視鏡装置側の第2コントローラ121にモニタ電流情報を送信し、第2コントローラ121は、当該モニタ電流情報に基づいて、デジタルポテンショメータ131及びレーザドライバ126-3を制御し、レーザダイオード125-3の発光量を調整する。
【0085】
このような手法によれば、レーザダイオード125-3の発光量を何度も変更することなく、フォトダイオード225-3の受光量を安定化することができる。
【0086】
<本実施形態の効果>
本実施形態の内視鏡システムによれば、光通信送信側に、レーザドライバが出力するドライブ電流を調整するための電流調整回路を有し、光通信受信側に、フォトダイオードの受光量(受光量に応じた電流量)をモニタするモニタ回路を有している。レーザダイオードを発光させるためのドライブ電流を初期電流量として、受光したフォトダイオードの受光量に応じた電流量と、安定した受光量かどうかを判断するための所定の閾値電流とを比較し、受光量の過不足を検知する。また、受光量の過不足の検知結果を送信側にフィードバックし、検知結果に基づいて、電流調整回路によりレーザドライバのドライブ電流を変更する。このような構成を有することにより、コネクタ部に汚れ等が生じた場合にも、安定して内視鏡装置及びプロセッサ間の光通信が可能となる。また、レーザダイオードやフォトダイオードの仕様に合わせてドライブ電流を調整することもできる。
【0087】
<本開示の特定事項>
(1)特定事項1
内視鏡装置と、
前記内視鏡装置と接続されることにより信号の光通信が可能となるプロセッサと、を備え、
前記内視鏡装置及び前記プロセッサは、前記光通信を行う光通信デバイスを有し、
前記光通信デバイスは、
前記信号の送信側に、発光素子と、前記発光素子の発光量を制御する発光量調整部と、前記発光量調整部を制御する送信側制御部と、を有し、
前記信号の受信側に、前記発光素子からの光を受光する受光素子と、前記受光素子の受光量に応じたモニタ電流と所定の閾値電流とを比較し、比較結果から、前記受光量の過不足を検知する受信側制御部と、を有し、
前記送信側制御部は、
第1の発光量で前記発光素子を発光させ、前記受光素子に受光させる処理と、
前記受信側制御部から、前記受光量の過不足を示す検知情報を受信し、前記検知情報に基づいて、前記モニタ電流が前記所定の閾値電流に近づくように、前記発光量調整部を制御して、第2の発光量で前記発光素子を発光させる処理と、を実行する内視鏡システム。
【0088】
(2)特定事項2
特定事項1において、
前記光通信デバイスは、
前記信号の送信側に、前記発光素子の発光量を前記発光量調整部にフィードバックするモニタ用発光素子をさらに備え、
前記モニタ電流が前記所定の閾値電流となった場合に、前記モニタ用発光素子の受光量が一定となるように、前記発光量調整部を制御する、内視鏡システム。
【0089】
(3)特定事項3
特定事項1又は2において、
前記送信側制御部は、
前記発光素子に前記第1の発光量を発光させる際に、前記発光量調整部に前記発光素子の許容電流量の下限値を出力させる、内視鏡システム。
【0090】
(4)特定事項4
特定事項1乃至3のいずれか1項において、
前記受信側制御部は、
前記受光素子の許容電流量の下限値と上限値の平均値を前記所定の閾値電流として、前記検知情報を生成する、内視鏡システム。
【0091】
(5)特定事項5
特定事項1乃至4のいずれか1項において、
前記プロセッサに接続される表示部をさらに備え、
前記受信側制御部は、
前記モニタ電流が前記所定の閾値電流に満たない場合に、前記光通信デバイスの汚れの可能性を示す通知を前記表示部に表示させる、内視鏡システム。
【0092】
<その他の形態>
上述した本実施形態の機能は、ソフトウェアのプログラムコードによっても実現できる。この場合、プログラムコードを記録した記憶媒体をシステム或は装置に提供し、そのシステム或は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、及びそれを記憶した記憶媒体は本開示を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどが用いられる。
【0093】
また、プログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータ上のメモリに書きこまれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータのCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。
【0094】
さらに、実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを、ネットワークを介して配信することにより、それをシステム又は装置のハードディスクやメモリ等の記憶手段又はCD-RW、CD-R等の記憶媒体に格納し、使用時にそのシステム又は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が当該記憶手段や当該記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行するようにしても良い。
【0095】
最後に、ここで述べたプロセス及び技術は本質的に如何なる特定の装置に関連することはなく、コンポーネントの如何なる相応しい組み合わせによってでも実装できることを理解する必要がある。更に、汎用目的の多様なタイプのデバイスがここで記述した教授に従って使用可能である。ここで述べた方法のステップを実行するのに、専用の装置を構築するのが有益であることが判るかもしれない。また、実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。本開示は、具体例に関連して記述したが、これらは、すべての観点に於いて限定の為ではなく説明の為である。本分野にスキルのある者には、本開示を実施するのに相応しいハードウェア、ソフトウェア及びファームウエアの多数の組み合わせがあることが解るであろう。例えば、記述したソフトウェアは、アセンブラ、C/C++、perl、Shell、PHP、Java(登録商標)等の広範囲のプログラム又はスクリプト言語で実装できる。
【0096】
さらに、上述の実施形態において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていても良い。
【0097】
加えて、本技術分野の通常の知識を有する者には、本開示のその他の実装がここに開示された本開示の明細書及び実施形態の考察から明らかになる。記述された実施形態の多様な態様及び/又はコンポーネントは、単独又は如何なる組み合わせでも使用することが出来る。明細書と具体例は典型的なものに過ぎず、本開示の範囲と精神は後続する特許請求範囲で示される。
【符号の説明】
【0098】
1 内視鏡システム
100 内視鏡装置
104 撮像素子
120 内視鏡装置側の第1コントローラ
121 内視鏡装置側の第2コントローラ
122 受電部
123-1 内視鏡装置側のフォトダイオード
124-1 内視鏡装置側のトランスインピーダンス増幅器
125-1、125-2 内視鏡装置側のレーザダイオード
126-1、126-2 内視鏡装置側のレーザドライバ
110 内視鏡装置側コネクタ
130 モニタ用フォトダイオード
131 デジタルポテンショメータ
132 比較基準電圧回路
200 プロセッサ
207 後段信号処理回路
210 プロセッサ側コネクタ
220 プロセッサ側の第1コントローラ
221 プロセッサ側の第2コントローラ
222 送電部
223-1 プロセッサ側のレーザダイオード
224-1、224-2 プロセッサ側のレーザドライバ
225-1、225-2、225-3 プロセッサ側のフォトダイオード
226-1、226-2、226-3 プロセッサ側のトランスインピーダンス増幅器
228 第1パワーIC
229 第2パワーIC
230 モニタ用フォトダイオード
231 デジタルポテンショメータ
232 比較基準電圧回路
300 モニタ
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5
図6