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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】複合成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/32 20060101AFI20240304BHJP
   B29C 65/04 20060101ALI20240304BHJP
   B29C 65/46 20060101ALI20240304BHJP
   B22D 19/04 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
B29C65/32
B29C65/04
B29C65/46
B22D19/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019232790
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2020124910
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】P 2019018457
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】595138155
【氏名又は名称】ダイセルミライズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(72)【発明者】
【氏名】板倉 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 潔
(72)【発明者】
【氏名】宇野 孝之
(72)【発明者】
【氏名】和田 法寿
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-174280(JP,A)
【文献】特開2017-177464(JP,A)
【文献】特開2011-046119(JP,A)
【文献】登録実用新案第3005099(JP,U)
【文献】特開2018-094777(JP,A)
【文献】特開昭54-058778(JP,A)
【文献】実開昭57-070815(JP,U)
【文献】特開昭56-155717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00 - 65/82
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属成形体と第1非金属成形体(セラミックス成形体は除く)からなる複合成形体の製造方法であって、
前記第1非金属成形体が、熱可塑性樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂(但し、第2工程ではプレポリマーを使用する)から選ばれるものであり、
前記第1金属成形体の平板部の表面を粗面化して凹凸を形成させる第1工程と、前記第1金属成形体の平板部と前記第1非金属成形体の平板部を接合させる第2工程を有しており、
前記第1工程により形成された凹凸が、前記第1金属成形体の非粗面化面(未処理面)を基準面として、前記基準面から突き出された凸部と前記基準面から凹まされた凹部からなるものであり、
前記第2工程が、
前記第1金属成形体の平板部の粗面化された凹凸を含む部分を電磁誘導加熱した後、前記第1金属成形体の平板部の粗面化された凹凸面を含む部分と前記第1非金属成形体の平板部を接触させることで、溶融された前記第1金属成形体の凸部を前記第1非金属成形体中に入り込ませ、溶融された前記第1金属成形体の凹部内に前記第1非金属成形体を入り込ませて前記第1金属成形体と前記第1非金属成形体を接合させる第2a工程であるか、または
前記第1金属成形体の平板部の粗面化された凹凸面と前記第1非金属成形体の平板部を接触させた状態で電磁誘導加熱することで、前記第1金属成形体の凸部を溶融された前記第1非金属成形体中に入り込ませ、前記第1金属成形体の凹部内に溶融された前記第1非金属成形体を入り込ませて前記第1金属成形体と前記第1非金属成形体を接合させる第2b工程であって、
前記第2工程において高周波出力500~5000W、周波数300~1500kHzで電磁誘導加熱を実施する、
複合成形体の製造方法。
【請求項2】
前記複合成形体が下記式(I)の関係を満たしているものである、請求項1記載の複合成形体の製造方法。
(T-t1)/t2)=0.8~1.05 (I)
(式(I)中、
t1は、前記第1金属成形体の接合対象となる部分の初期厚みを示し、
t2は、前記第1非金属成形体の接合対象となる部分の初期厚みを示し、
Tは、前記複合成形体の前記第1金属成形体と前記第1非金属成形体の接合部分の厚みを示しており、
式(I)は、t1、t2およびTが、(T-t1)/t2)=1.0またはそれに近似した関係になることを示している。)
【請求項3】
前記第1金属成形体の平板部の粗面化された凹凸の凸部が、前記基準面からの最大平均高さが30μm~300μmの範囲で、前記凹凸の凹部が、前記基準面からの最大平均深さが30μm~300μmの範囲のものであり、
前記複合成形体が下記式(I)の関係を満たしているものである、請求項1記載の複合成形体の製造方法。
(T-t1)/t2)=0.85~1.00 (I)
(式(I)中、
t1は、前記第1金属成形体の接合対象となる部分の初期厚みを示し、
t2は、前記第1非金属成形体の接合対象となる部分の初期厚みを示し、
Tは、前記複合成形体の前記第1金属成形体と前記第1非金属成形体の接合部分の厚みを示しており、
式(I)は、t1、t2およびTが、(T-t1)/t2)=1.0またはそれに近似した関係になることを示している。)
【請求項4】
前記第1金属成形体と前記第1非金属成形体が、いずれも厚さが5mm以下の平板部を有する成形体であり、
前記複合成形体が、前記第1金属成形体の厚さ5mm以下の平板部の凹凸が形成された面と前記第1非金属成形体の厚さ5mm以下の平板部が接触された状態で接合されているものである、請求項1または2記載の複合成形体の製造方法。
【請求項5】
第2金属成形体と第2非金属成形体(セラミックス成形体は除く)からなる複合成形体の製造方法であって、
前記第2非金属成形体が、熱可塑性樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂(但し、第2工程ではプレポリマーを使用する)から選ばれるものであり、
前記第2金属成形体の表面を粗面化して凹凸を形成させる第1工程と、前記第2金属成形体と前記第2非金属成形体を接合させる第2工程を有しており、
前記第2金属成形体が、筒状部を有している成形体または棒状部を有している成形体で、前記第2非金属成形体が、筒状部を有している成形体または棒状部を有している成形体であり、
前記複合成形体が、前記第2金属成形体と前記第2非金属成形体が、いずれか一方の筒状部内に他方の筒状部または棒状部が挿入された状態で接合されているものであり、
前記第1工程により形成された凹凸が、前記第2金属成形体の非粗面化面(未処理面)を基準面として、前記基準面から突き出された凸部と前記基準面から凹まされた凹部からなるものであり、
前記第2工程が、
前記第2金属成形体の筒状部または棒状部の粗面化された凹凸を含む部分を電磁誘導加熱した後、前記第2金属成形体の筒状部または棒状部の粗面化された凹凸面を含む部分と前記第2非金属成形体の棒状部または筒状部を接触または近接させることで、溶融された前記第2金属成形体の凸部を前記第2非金属成形体中に入り込ませ、溶融された前記第2金属成形体の凹部内に前記第2非金属成形体を入り込ませて前記第2金属成形体と前記第2非金属成形体を接合させる第2a工程であるか、または
前記第2金属成形体の筒状部または棒状部の粗面化された凹凸面と前記第2非金属成形体の棒状部または筒状部の面を接触または近接させた状態で電磁誘導加熱することで、前記第2金属成形体の凸部を溶融された前記第2非金属成形体中に入り込ませ、前記第2金属成形体の凹部内に溶融された前記第2非金属成形体を入り込ませて前記第2金属成形体と前記第2非金属成形体を接合させる第2b工程であり、
前記第2工程が第2a工程であるとき、前記第2金属成形体の筒状部または棒状部の凹凸が形成された面の外径がd1であり、前記第2非金属成形体の筒状部の内径がd2であるとき、または前記第2金属成形体の筒状部の凹凸が形成された内側面の内径がd1であり、前記第2非金属成形体の筒状部または棒状部の外径がd2であるとき、(d2-d1)/2から求められるクリアランスC1が-10~100μmの範囲であり、
前記第2工程が第2b工程であるとき、前記第2金属成形体の筒状部または棒状部の凹凸が形成された面の外径がd1であり、前記第2非金属成形体の筒状部の内径がd2であるとき、または前記第2金属成形体の筒状部の凹凸が形成された内側面の内径がd1であり、前記第2非金属成形体の筒状部または棒状部の外径がd2であるとき、(d2-d1)/2から求められるクリアランスC2が0~100μmの範囲であって、
前記第2工程において高周波出力500~5000W、周波数300~1500kHzで電磁誘導加熱を実施する、
複合成形体の製造方法。
【請求項6】
前記第2金属成形体が、厚さが5mm以下の筒状部を有している成形体、または幅方向の断面形状の最大長さが5mm以下の棒状部を有している成形体であり、
前記第2非金属成形体が、厚さが5mm以下の筒状部を有している成形体、または幅方向の断面形状の最大長さが5mm以下の棒状部を有している成形体である、請求項5記載の複合成形体の製造方法。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項記載の第1金属成形体または請求項5若しくは6記載の第2金属成形体の表面を粗面化して凹凸を形成させる工程が、連続波レーザーを使用してエネルギー密度が1MW/cm2以上、照射速度が2000mm/sec以上で連続照射する工程である、請求項1~6のいずれか1項記載の複合成形体の製造方法。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか1項記載の第1金属成形体または請求項5若しくは6記載の第2金属成形体の表面を粗面化して凹凸を形成させる工程が、連続波レーザーを使用してエネルギー密度が1MW/cm2以上、照射速度が2000mm/sec以上で連続照射するとき、レーザー光の照射部分と非照射部分が交互に生じるように照射する工程であり、
前記工程が、
レーザーの駆動電流を直接変換する直接変調方式の変調装置をレーザー電源に接続したファイバーレーザー装置を使用し、レーザー光の出力のON時間とOFF時間から下記式により求められるデューティ比を調整して、レーザー光の照射部分と非照射部分が交互に生じるように照射する工程、
ガルバノミラーとガルバノコントローラーの組み合わせを使用し、レーザー発振器から連続的に発振させたレーザー光をガルバノコントローラーによりパルス化することで、レーザー光の出力のON時間とOFF時間から下記式により求められるデューティ比を調整して、ガルバノミラーを介してレーザー光の照射部分と非照射部分が交互に生じるように照射する工程、および
機械的にチョッピングしてパルス化する方法により下記式により求められるデューティ比を調整して、レーザー光の照射部分と非照射部分が交互に生じるように照射する工程から選ばれるいずれか一つの工程である、請求項1~のいずれか1項記載の複合成形体の製造方法。
デューティ比(%)=ON時間/(ON時間+OFF時間)×100
【請求項9】
前記第1工程の粗面化して凹凸を形成させる工程が、請求項1~4のいずれか1項記載の第1金属成形体または請求項5若しくは6記載の第2金属成形体の表面に対してレーザー光を照射するとき、下記の(a)~(d)の要件を満たすようにレーザー光を連続照射して凹凸を形成する工程であり、
前記凹凸が、最大高低差の平均が30~200μmの範囲であり、かつ平均最大高低差を算出する根拠となったそれぞれの最大高低差の範囲が、平均最大高低差を基準としたとき±40%の範囲内にあるものである、請求項8記載の複合成形体の製造方法。
(a)出力が4~500W
(b)スポット径が10~80μm
(c)エネルギー密度が1~100MW/cm2
(d)繰り返し回数が1~10回
(平均最大高低差の測定方法)
前記第1金属成形体または前記第2金属成形体の粗面化された凹凸面のうちの20mm×20mmの面積領域(20mm×20mm未満の場合は全面積領域)について、長さ500μm範囲を最大で10箇所ランダムに選択し、前記最大で10箇所の長さ500μmの範囲内の凹凸の最も高い凸部の高さと最も深い凹部の深さの差である最大高低差をSEMの断面写真から計測し、前記最大高低差の平均値を求める。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか1項記載の複合成形体の製造方法であって、
前記第1金属成形体が眼鏡フレームのテンプル(60)であり、前記第1非金属成形体が、熱可塑性樹脂からなる、眼鏡フレームのテンプル(60)の両側先端部に取り付ける耳に掛ける部分(62)を含んでいるものであり、前記眼鏡フレームのテンプル(60)の両側先端部の内
側面に形成された凹凸面(61)と熱可塑性樹脂からなる耳に掛ける部分(62)が接触された状態で接合されているものである、複合成形体の製造方法。
【請求項11】
請求項5または6記載の複合成形体の製造方法であって、
前記第2金属成形体が注射針(52)であり、前記第2非金属成形体が熱可塑性樹脂からなる注射器本体(注射器から注射針を除いた残部)(51)であり、前記注射器本体(51)の筒状の注射針取り付け部(51a)の内側に前記注射針(52)の凹凸面(52a)が挿入された状態で接合されているものである、複合成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属成形体と非金属成形体(セラミックス成形体は除く)からなる複合成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属成形体と樹脂などの非金属成形体からなる複合成形体の製造方法が知られている。
特許文献1は、連続波レーザー装置を使用して、2000mm/sec以上の照射速度でレーザー光を連続照射することで金属成形体の表面を粗面化する工程を含む複合成形体の製造方法の発明が記載されている。
この発明は、従来は溶接や切断に使用されていた連続波レーザー装置を粗面化処理に使用したものである。
【0003】
特許文献2は、金属材料の表面をレーザスキャニング加工することで、前記金属材料の表面に異種材料を接合するための接合部を形成する工程と、前記異種材料に設けられた熱可塑性の突起部を加熱し、且つ、該突起部を前記接合部に加圧することで、前記金属材料の表面に前記異種材料を溶着により接合する工程を含む金属表面と異種材料との接合方法の発明です。
レーザスキャニング加工については、実施例において「継続波/Qswich付きNd」と記載されていることから、パルス波レーザー装置を使用したものである。
接合工程では、超音波溶着、振動溶着、誘導加熱による溶着(誘導溶着)、高周波による溶着(高周波溶着)、レーザ溶着、熱溶着、スピン溶着等、公知の各種溶着方法を適用することができることが記載されており(段落番号0040)、実施例では超音波溶着を使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許5701414号公報
【文献】特開2015-116684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、金属成形体と樹脂などの非金属成形体からなる複合成形体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1金属成形体と第1非金属成形体(セラミックス成形体は除く)からなる複合成形体の製造方法であって、
前記第1金属成形体の平板部の表面を粗面化して凹凸を形成させる第1工程と、前記第1金属成形体の平板部と前記第1非金属成形体の平板部を接合させる第2工程を有しており、
前記第1工程により形成された凹凸が、前記第1金属成形体の非粗面化面(未処理面)を基準面として、前記基準面から突き出された凸部と前記基準面から凹まされた凹部からなるものであり、
前記第2工程が、
前記第1金属成形体の平板部の粗面化された凹凸を含む部分を電磁誘導加熱した後、前記第1金属成形体の平板部の粗面化された凹凸面を含む部分と前記第1非金属成形体の平板部を接触させることで、溶融された前記第1金属成形体の凸部を前記第1非金属成形体中に入り込ませ、溶融された前記第1金属成形体の凹部内に前記第1非金属成形体を入り込ませて前記第1金属成形体と前記第1非金属成形体を接合させる第2a工程であるか、または
前記第1金属成形体の平板部の粗面化された凹凸面と前記第1非金属成形体の平板部を接触させた状態で電磁誘導加熱することで、前記第1金属成形体の凸部を溶融された前記第1非金属成形体中に入り込ませ、前記第1金属成形体の凹部内に溶融された前記第1非金属成形体を入り込ませて前記第1金属成形体と前記第1非金属成形体を接合させる第2b工程である、複合成形体の製造方法を提供する。
【0007】
また本発明は、第2金属成形体と第2非金属成形体(セラミックス成形体は除く)からなる複合成形体の製造方法であって、
前記第2金属成形体の表面を粗面化して凹凸を形成させる第1工程と、前記第2金属成形体と前記第2非金属成形体を接合させる第2工程を有しており、
前記第2金属成形体が、筒状部を有している成形体または棒状部を有している成形体で、前記第2非金属成形体が、筒状部を有している成形体または棒状部を有している成形体であり、
前記複合成形体が、前記第2金属成形体と前記第2非金属成形体が、いずれか一方の筒状部内に他方の筒状部または棒状部が挿入された状態で接合されているものであり、
前記第1工程により形成された凹凸が、前記第2金属成形体の非粗面化面(未処理面)を基準面として、前記基準面から突き出された凸部と前記基準面から凹まされた凹部からなるものであり、
前記第2工程が、
前記第2金属成形体の筒状部または棒状部の粗面化された凹凸を含む部分を電磁誘導加熱した後、前記第2金属成形体の筒状部または棒状部の粗面化された凹凸面を含む部分と前記第2非金属成形体の棒状部または筒状部を接触または近接させることで、溶融された前記第2金属成形体の凸部を前記第2非金属成形体中に入り込ませ、溶融された前記第2金属成形体の凹部内に前記第2非金属成形体を入り込ませて前記第2金属成形体と前記第2非金属成形体を接合させる第2a工程であるか、または
前記第2金属成形体の筒状部または棒状部の粗面化された凹凸面と前記第2非金属成形体の棒状部または筒状部の面を接触または近接させた状態で電磁誘導加熱することで、前記第2金属成形体の凸部を溶融された前記第2非金属成形体中に入り込ませ、前記第2金属成形体の凹部内に溶融された前記第2非金属成形体を入り込ませて前記第2金属成形体と前記第2非金属成形体を接合させる第2b工程であり、
前記第2工程が第2a工程であるとき、前記第2金属成形体の筒状部または棒状部の凹凸が形成された面の外径がd1であり、前記第2非金属成形体の筒状部の内径がd2であるとき、または前記第2金属成形体の筒状部の凹凸が形成された内側面の内径がd1であり、前記第2非金属成形体の筒状部または棒状部の外径がd2であるとき、(d2-d1)/2から求められるクリアランスC1が-10~100μmの範囲であり、
前記第2工程が第2b工程であるとき、前記第2金属成形体の筒状部または棒状部の凹凸が形成された面の外径がd1であり、前記第2非金属成形体の筒状部の内径がd2であるとき、または前記第2金属成形体の筒状部の凹凸が形成された内側面の内径がd1であり、前記第2非金属成形体の筒状部または棒状部の外径がd2であるとき、(d2-d1)/2から求められるクリアランスC2が0~100μmの範囲である、複合成形体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の複合成形体の製造方法によれば、寸法精度の良い複合成形体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の製造方法で得られる複合成形体の側面図。
図2】本発明の製造方法の第1工程後における金属成形体の粗面化構造(凹凸)を示す厚さ方向断面図。
図3】本発明の製造方法で得られる複合成形体の厚さ方向断面図。
図4】本発明の製造方法で得られる複合成形体(注射器)の軸方向の部分断面図。
図5】本発明の製造方法で得られる複合成形体(眼鏡フレーム)の部分平面図。
図6】(a)、(b)は本発明の製造方法の第2a工程の一態様を説明するための図であり、(a)が先の工程で(b)は(a)の後の工程を示す。
図7】(a)、(b)は本発明の製造方法の第2b工程の別態様を説明するための図であり、(a)が先の工程で(b)は(a)の後の工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の複合成形体の製造方法は、第1金属成形体と第1非金属成形体のそれぞれの平板部同士において接合する製造方法(第1実施形態の複合成形体の製造方法)と、第2金属成形体の筒状部または棒状部と第2非金属成形体の棒状部または筒状部において接合する製造方法(第2実施形態の複合成形体の製造方法)を含んでいる。
第1金属成形体と第2金属成形体は、形状が異なるほかは同じものを使用することができ、第1非金属成形体と第2非金属成形体は、形状が異なるほかは同じものを使用することができる。
【0011】
<第1の実施形態の製造方法>
本発明の第1の実施形態の複合成形体の製造方法により得られる複合成形体1は、図1に示すとおり、第1金属成形体10と第1非金属成形体20が接合されたものである。
本発明の複合成形体の製造方法は、第1金属成形体10の表面を粗面化して凹凸を形成させる第1工程と、第1金属成形体10と第1非金属成形体20を接合させる第2工程を有している。
【0012】
(第1工程)
本発明の第1工程で使用する第1金属成形体の金属としては、鉄、各種ステンレス、アルミニウム、亜鉛、チタン、銅、黄銅、クロムめっき鋼、マグネシウムおよびそれらを含む合金(前記各種ステンレスは除く)、タングステンカーバイド、クロミウムカーバイドなどのサーメットから選ばれるものを挙げることができ、これらの金属に対して、アルマイト処理、めっき処理などの表面処理を施したものを使用することができる。
第1金属成形体の形状や大きさは、複合成形体の用途に応じて選択することができるものであり、前記形状は、例えば、平面、平面同士の角部、曲面およびこれらが組み合わされたものでもよい。
また第1金属成形体の形状や大きさは、組み合わせ対象となる第1非金属成形体の形状や大きさと関連して選択することができる。
第1金属成形体は平板部を有しているものであればよく、第1金属成形体の全体が平板形状のものでもよいし、第1金属成形体の一部が平板形状のものでもよい。
金属成形体と組み合わせる第1非金属成形体は平板部を有しているものであればよく、第1非金属成形体の全体が平板形状のものでもよいし、第1非金属成形体の一部が平板形状のものでもよい。
第1金属成形体と第1非金属成形体の平板部の厚さは、本発明の好ましい一態様は5mm以下である。
また第1金属成形体の平板部は曲面状(凸曲面または凹曲面)のものもでもよく、対応する形状の非金属成形体の平板部(凹曲面または凸曲面)において接合されるようにすることもできる。
【0013】
第1工程において第1金属成形体10の表面を粗面化して凹凸(凹凸面12)を形成させるときは、図1および図2に示すとおり、第1金属成形体10の非粗面化面(未処理面)11を基準面として、基準面11から突き出された凸部13と基準面11から凹まされた凹部14からなる凹凸(凹凸面12)が形成されるように粗面化する。
なお、図2に示す基準面11は粗面化された部分であるが、図1に示す基準面(未処理面)11を凹凸面12まで延長した面として示している。
第1工程において第1金属成形体10の表面を粗面化して凹凸を形成させる方法としては、連続波レーザー光の連続照射、パルス波レーザー光の照射、各種ブラスト加工、エッチングなどの方法を適用することができる。
【0014】
第1工程において第1金属成形体10の表面を連続波レーザー光の連続照射により粗面化して凹凸を形成させるときは、連続波レーザーを使用して、エネルギー密度が1MW/cm2以上、照射速度が2000mm/sec以上で連続照射することが本発明の好ましい一態様である。
第1工程における上記の連続波レーザー光の連続照射方法は公知であり、特許第5774246号公報、特許第5701414号公報、特許第5860190号公報、特許第5890054号公報、特許第5959689号、特開2016-43413号公報、特許第6422701号公報、特許第6353320号公報に記載されたレーザー光の連続照射方法と同様にして実施することができる。
【0015】
第1工程において第1金属成形体10の表面をパルス波レーザー光の照射により粗面化して凹凸を形成させるときは、通常のパルス波レーザー光を照射する方法のほか、特許第5848104号公報、特許第5788836号公報、特許第5798534号公報、特許第5798535号公報、特開2016-203643号公報、特許第5889775号公報、特許第5932700号、特許第6055529号公報に記載のパルス波レーザー光の照射方法と同様にして実施することができる。
【0016】
第1工程により形成された凹凸の凸部13は、第1金属成形体10の基準面(未処理面)11からの最大平均高さ(図2のHmax)が30μm~300μmの範囲で、凹凸の凹部14は、第1金属成形体10の基準面(未処理面)11からの最大平均深さ(図2のDmax)が30μm~300μmの範囲のものであることが本発明の好ましい一態様である。
なお、第1工程で連続波レーザー光を連続照射して粗面化するときは、第1金属成形体10の表面は溶融して凹凸が形成されるが、パルス波レーザー光を照射したとき、エッチングやブラスト加工を実施したときのように金属が失われることが非常に少ないため、第1金属成形体10の表面の金属量の変化は殆どなく、基準面11を基準とする凸部13の体積と凹部14の容積はほぼ同じとなる。
【0017】
第1工程において第1金属成形体10の表面を連続波レーザー光の連続照射により粗面化して凹凸を形成させるときは、下記の(a)~(d)の要件を満たすようにレーザー光を連続照射して凹凸を形成することができる。
(a)出力が4~500W
(b)スポット径が10~80μm
(c)エネルギー密度が1~100MW/cm2
(d)繰り返し回数が1~10回
【0018】
要件(a)
レーザーの出力は、本発明の好ましい一態様は50~250Wであり、本発明の別の好ましい一態様は100~250Wであり、本発明のさらに別の好ましい一態様は150~220Wである。
【0019】
要件(b)
レーザー光のスポット径は、本発明の好ましい一態様は20~50μmであり、本発明の別の好ましい一態様は20~35μmである。
【0020】
要件(c)
レーザー光照射時のエネルギー密度は、本発明の好ましい一態様は10~80MW/cm2であり、本発明の別の好ましい一態様は20~50MW/cm2である。
レーザー光照射時のエネルギー密度は、レーザー光の出力(W)と、レーザー光(スポット面積(cm2)(π・〔スポット径/2〕2)から次式:レーザー光の出力/スポット面積により求められる。
要件(c)は要件(a)と要件(b)から算出されるものであり、第1金属成形体の粗面化状態を制御する上で要件(c)が重要になるため、要件(a)の数値範囲と要件(b)の数値範囲から計算される要件(c)の数値が上記範囲から外れる部分があるときは、上記要件(c)の数値範囲が優先するものである。
【0021】
要件(d)
レーザー光照射時の繰り返し回数は1回~10回、本発明の好ましい一態様は1回~8回、本発明の別の好ましい一態様は2回~8回である。レーザー光照射時の繰り返し回数は、レーザー光を線状に照射するとき、1本のライン(溝)を形成するために照射する合計回数である。
1本のラインに繰り返し照射するときは、双方向照射と一方向照射を選択することができる。
双方向放射は、1本のライン(溝)を形成するとき、ライン(溝)の第1端部から第2端部に連続波レーザーを照射した後、第2端部から第1端部に連続波レーザーを照射して、その後は、第1端部から第2端部、第2端部から第1端部というように繰り返し連続波レーザーを照射する方法である。
一方向照射は、第1端部から第2端部への一方向の連続波レーザー照射を繰り返す方法である。
【0022】
要件(a)~(d)を除いたレーザー光の照射条件は、以下のとおりであり、上記した公知技術と同様である。
連続波レーザーの照射速度は、本発明の好ましい一態様は2,000~20,000mm/secであり、本発明の別の好ましい一態様は5,000~20,000mm/secであり、本発明のさらに別の好ましい一態様は8,000~20,000mm/secである。
連続波レーザー光を直線状に照射するとき、隣接する照射ライン(隣接する照射により形成された溝)同士の間隔(ライン間隔)は、本発明の好ましい一態様は0.01~0.6mmであり、本発明の別の好ましい一態様は0.03~0.4mmであり、本発明のさらに別の好ましい一態様は0.03~0.15mmである。
波長は、本発明の好ましい一態様は300~1200nmであり、本発明の別の好ましい一態様は500~1200nmである。
焦点はずし距離は、本発明の好ましい一態様は-5~+5mmであり、本発明の別の好ましい一態様は-1~+1mmであり、本発明のさらに別の好ましい一態様は-0.5~+0.1mmがさらに好ましい。焦点はずし距離は、設定値を一定にしてレーザー照射しても良いし、焦点はずし距離を変化させながらレーザー照射しても良い。例えば、レーザー照射時に、焦点はずし距離を徐々に小さくしたり、周期的に大きくしたり小さくしたりしてもよい。
【0023】
要件(a)~(d)を満たすように連続波レーザー光を連続照射して形成された凹凸は、最大高低差の平均(平均最大高低差)が30~200μmの範囲であり、かつ前記平均最大高低差を算出する根拠となったそれぞれの最大高低差の範囲が、前記平均最大高低差を基準としたとき±40%の範囲内にあるものである。
(平均最大高低差の測定方法)
前記第1金属成形体の粗面化された凹凸面のうちの20mm×20mmの面積領域(20mm×20mm未満の場合は全面積領域)について、長さ500μm範囲を最大で10箇所ランダムに選択し、前記最大で10箇所の長さ500μmの範囲内の凹凸の最大高低差(図2の最も高い凸部13の高さである最大高さHmaxと最も深い凹部14の深さである最大深さDmaxの合計)をSEMの断面写真から計測し、前記最大高低差の平均値を求める。
【0024】
粗面化された面積が20mm×20mm未満の場合には、粗面化された全面積について測定する。
また粗面化された面積が20mm×20mm未満で、かつ非常に狭く10箇所の測定が困難である場合には、1~9箇所の範囲で測定する。
さらに粗面化された面積が非常に大きな場合であっても、粗面化条件が同一であれば凹凸部の構造には差がないと考えられるため、任意の1箇所の20mm×20mmの面積領域(測定面積領域)について測定すればよいが、必要に応じて2~5箇所の20mm×20mmの面積領域(測定面積領域)を任意に選択して測定することもできる。
【0025】
第1金属成形体の凹凸の平均最大高低差は、本発明の好ましい一態様は30μm~200μmの範囲であり、本発明の別の好ましい一態様は40μm~150μm、本発明のさらに別の好ましい一態様は60μm~125μm、本発明のさらに別の好ましい一態様は70μm~100μmの範囲である。
平均最大高低差を算出する根拠となった最大高低差の範囲が、前記平均最大高低差を基準としたとき±40%の範囲内(例えば、平均最大高低差が100μmのとき、±40%の範囲内の最大高低差の範囲は60μm~140μmである)にあるものであり、本発明の好ましい一態様は±35%の範囲内にあるものである。
【0026】
また第1工程において第1金属成形体の表面を連続波レーザー光の連続照射により粗面化して凹凸を形成させるときは、レーザー光を照射するとき、レーザー光の照射部分と非照射部分が交互に生じるように照射することができる。
第1工程における上記の連続波レーザー光の連続照射は公知であり、特開2018-144104号公報に記載されたレーザー光の連続照射方法と同様にして実施することができる。
第1工程が特開2018-144104号公報に記載されたレーザー光の連続照射方法と同様にレーザー光の照射部分と非照射部分が交互に生じるように照射する工程であるときは、
レーザーの駆動電流を直接変換する直接変調方式の変調装置をレーザー電源に接続したファイバーレーザー装置を使用し、レーザー光の出力のON時間とOFF時間から下記式により求められるデューティ比を調整して、レーザー光の照射部分と非照射部分が交互に生じるように照射する工程、
ガルバノミラーとガルバノコントローラーの組み合わせを使用し、レーザー発振器から連続的に発振させたレーザー光をガルバノコントローラーによりパルス化することで、レーザー光の出力のON時間とOFF時間から下記式により求められるデューティ比を調整して、ガルバノミラーを介してレーザー光の照射部分と非照射部分が交互に生じるように照射する工程、および
機械的にチョッピングしてパルス化する方法により下記式により求められるデューティ比を調整して、レーザー光の照射部分と非照射部分が交互に生じるように照射する工程から選ばれるいずれか一つの工程を実施することができる。
デューティ比(%)=ON時間/(ON時間+OFF時間)×100
【0027】
(第2工程)
第2工程において、第1金属成形体の平板部と第1非金属成形体の平板部を接合させるときは、次の第2a工程と第2b工程の二つの方法を適用することができる。
【0028】
第2a工程は、第1金属成形体の平板部の粗面化された凹凸を含む部分を電磁誘導加熱して高温状態にした後、金属成形体10の平板部の粗面化された凹凸面を含む部分と第1非金属成形体20の平板部(図1の面21)を接触させることで、図3に示すとおり、第1金属成形体の凸部13を第1非金属成形体20中に入り込ませ、第1金属成形体の凹部14内に第1非金属成形体20を入り込ませて第1金属成形体10と第1非金属成形体020を接合させる工程である。
第2b工程は、第1金属成形体10の平板部の粗面化された凹凸面と第1非金属成形体20の平板部(図1の面21)を接触させた状態で電磁誘導加熱することで、図3に示すとおり、第1金属成形体の凸部13を溶融された第1非金属成形体14中に入り込ませ、第1金属成形体の凹部14内に溶融された第1非金属成形体20を入り込ませて第1金属成形体10と第1非金属成形体20を接合させる工程である。
第2工程(第2a工程と第2b工程)では、図1に示す第1金属成形体10の平板部の粗面化された凹凸面12と第1非金属成形体20の平板部(図1の面21)を接触させるとき、密着状態で接触させることが好ましく、密着状態で接触されるように圧力を加えることができる。
第2工程(第2a工程と第2b工程)において電磁誘導加熱を適用することよって、第1金属成形体10の平板部の粗面化された凹凸の凹部内に第1非金属成形体20が入り込み易くなるため、非金属成形材料が凹部14の入口付近のみを塞ぎ、凹部14内に密閉空間が残留し難くなるので好ましい。
さらに第2工程(第2a工程と第2b工程)において電磁誘導加熱を適用することよって、第1金属成形体10と第1非金属成形体20の接合部の周囲にバリが発生し難くなるので好ましい。
【0029】
第1実施形態の製造方法により得られた複合成形体1は、本発明の好ましい一態様は第1金属成形体10と第1非金属成形体20が下記式(I)の関係を満たしている。
(T-t1)/t2)=0.8~1.05 (I)
(式(I)中、
t1は、前記第1金属成形体の接合対象となる部分の初期厚みを示し、
t2は、前記第1非金属成形体の接合対象となる部分の初期厚みを示し、
Tは、前記複合成形体の前記第1金属成形体と前記第1非金属成形体の接合部分の厚みを示す。)
【0030】
式(I)は、第2工程において、第1金属成形体10の粗面化された面の凹凸部の凸部13が溶融状態の第1非金属成形体20中に入り込み、凹凸部の凹部14に溶融状態の非金属成形体20が隙間なく入り込むため、t1、t2およびTが、(T-t1)/t2)=1.0またはそれに近似した関係になることを示している。
式(I)は、本発明の別の好ましい一態様は(T-t1)/t2)=0.85~1.00の関係を満たしていることである。
上記のとおり、第1工程の処理による第1金属成形体10の処理面における金属損失が非常に少なく、上記した式(I)の関係を満たすことができるため、第1の実施形態の製造方法は、特に薄肉の複合成形体を製造する方法として適している。
第1金属成形体と第1非金属成形体の接合部分の厚さの下限値は、本発明の好ましい一態様は0.5mmであり、本発明の別の好ましい一態様は1.0mmである。
【0031】
本発明の第1の実施形態の製造方法により得られた複合成形体1は、図1図3に示すとおり、第1金属成形体10の粗面化された凹凸面12(凸部13と凹部14からなる凹凸面12)と第1非金属成形体20の面21を接触させた状態(好ましくは密着させた状態)で電磁誘導加熱して、第1金属成形体10の凸部13を溶融された第1非金属成形体20中に入り込ませ、第1金属成形体10の凹部14内に溶融された第1非金属成形体20を入り込ませることで第1金属成形体10と第1非金属成形体20が接合されている。
【0032】
本発明の第1の実施形態の製造方法は、眼鏡フレームの製造方法として適している。
眼鏡フレームは、2枚のレンズを支持する金属製のリムと、2つの金属製のリムを接続する金属製のブリッジ、2枚のレンズを支持する金属製のリムから丁番を介して伸ばされた2本の金属製のテンプル、金属製のテンプルの先端部に被せられた先セル(合成樹脂製またはゴム製)などを有しているものである。
本発明の第1の実施形態の製造方法は、眼鏡フレームの一部に対して非金属成形体(セラミックスを除く)を接合させる方法として適用することができる。
【0033】
本発明の第1の実施形態の製造方法を眼鏡フレームの製造方法として適用するときの好適な例は、第1金属成形体がテンプル60であり、第1非金属成形体が先セル部分(人が耳に掛ける部分)62となる。但し、この場合の先セル部分62は、テンプル60に被せる先セルではなく、テンプル60に対して直に接合するものである。
この実施形態では、一対のテンプル60の先セル部分62と接合させる部分に対して、第1工程の連続波レーザー光の連続照射をして粗面化処理により凹凸面61を形成した後、一対のテンプルの凹凸面61と一対の先セル部分(第1非金属成形体)62を接触させた状態(好ましくは密着させた状態)で第2工程の処理をして、眼鏡フレームを製造する。
本発明の第1の実施形態の製造方法を適用して眼鏡フレームを製造したとき、テンプル60の厚さt1と先セル部分62の厚さt2の接合部分の合計厚みTが上記した式(I)の関係を満たしているため、一対のテンプル60同士と一対の先セル部分62同士の対向する間隔と向きが同じであり、人が使用しているときの違和感がない。
また従来の眼鏡フレームでは、先セル部分を耳に引っ掛けて使用することになるため、先セルは金属そのままではなく、上記のとおり、軟らかい合成樹脂やゴムからなる先セルが被せられている。
しかし、長期間継続使用する過程において、先セルが破損したり、ずれたりするという問題があるが、本願発明の第1の実施形態の製造方法で得られた眼鏡フレームであれば、そのような問題が生じることはない。
また眼鏡フレームは、リム、テンプルなどが合成樹脂からなるものであるとき、2枚のレンズを支持する合成樹脂製のリムの一部に対して、補強用や装飾用の目的で本発明を適用して金属部材を接合させることができる。
【0034】
また本発明の第1の実施形態の製造方法は、例えば自動車のマニュアルトランスミッション(MT)の部品として使用されている金属製のシフトフォークの一部を合成樹脂にするための接合方法として使用することができる。例えば、金属製のシフトフォークが別の金属部材と接触する部分に合成樹脂を接合する方法として使用することができる。
【0035】
<第2の実施形態の製造方法>
次に、第2金属成形体が筒状部または棒状部を有し、第2非金属成形体が棒状部または筒状部を有しているものであるとき、一方の筒状部内に他方の筒状部または棒状部を挿入した状態で接合する第2の実施形態の製造方法を説明する。
使用できる金属の種類は、第1の実施形態の製造方法の第1金属成形体と同じである。
第2金属成形体は、筒状部また棒状部を有しているものであればよく、第2金属成形体の全体が筒状部または棒状部であるもののほか、一部が筒状部または棒状部であるものでもよい。
第2金属成形体と組み合わせる第2非金属成形体は、筒状部また棒状部を有しているものであればよく、第2非金属成形体の全体が筒状部または棒状部であるもののほか、一部が筒状部または棒状部であるものでもよい。
筒状部を有する成形体は、前記筒状部を有していれば他の部分の形状は制限されるものではなく、パイプのほか、パイプの一端側開口部が閉塞されたもの、パイプの一端側開口部が閉塞されたものが、前記閉塞面において他の成形体と一体になっているものなどである。
棒状部を有する成形体は、筒状体の両端が閉塞された中空構造のものも含まれる。
第2金属成形体は、厚さが5mm以下の筒状部を有する成形体を使用することができる。筒状部を有する成形体の筒状部は、両端が開口したもののほか、一端側開口部が閉塞されたものも含む。第2金属成形体の外径は、第2工程の電磁誘導加熱が実施できる範囲で、用途に応じて選択することができる。
第2金属成形体として棒状体を使用するときは、幅方向の断面形状における最大長さが5mm以下のもの(例えば、断面が円形のときは直径が5mm以下のもの)を使用することができる。
第2金属成形体が筒状部または棒状部を有するものであるときの筒状部の幅(または直径)方向の断面形状と、金属成形体が棒状体であるときの幅(または直径)方向の断面形状は、いずれも特に制限されるものではなく、円形、楕円形、三角形、四角形、五角形、六角形などの多角形のほか、星形などの特定形状、不定形のものでもよい。
【0036】
図6により第1工程と第2a工程を組み合わせた製造方法を説明し、図7により第1工程と第2b工程を組み合わせた製造方法を説明する。
但し、図6および図7は、金属棒10A(第2金属成形体)の第1端部10aを含む部分に対して第1工程の粗面化処理(第1実施形態の製造方法と同じ粗面化処理)をして凹凸面12を形成させたものを使用している。
このとき、凹凸面12の凸部分は、粗面化処理をしていない面を基準(基準面)とすると外側方向に突き出されており、金属棒10Aの幅方向の断面形状が円形であるときは、凹凸面12の直径(d1)と基準面の直径(d0)は、d1>d0の関係になる。
金属棒10Aは、内部が空洞のものでもよい。また金属棒10Aに代えて、金属筒を使用することもできる。
【0037】
図6により第2a工程を説明する。
図6(a)は、作業台90の上に金属棒10Aの接合相手となるボス(第2非金属成形体)20Aが置かれ、その上方に金属棒10Aが配置されている状態が示されている。ボス20Aは、熱可塑性樹脂からなるものである。
ボス20Aは、円形の台座部21、台座部21から突き出された環状傾斜壁部22を有しており、環状傾斜壁部22の中心部には金属棒10Aの挿入孔23が形成されている。挿入孔23の内径は均一であるが、一部に内径が異なる部分を有しているものでもよい。
金属棒10Aは、第2端部10側が治具100で固定され、反対側の第1端部10aがボス20Aの環状傾斜壁部22の環状端面22a側に近接して位置している。治具100は、図6(a)に示す状態から上下動が可能なものである。
環状傾斜壁部22の挿入孔23の内径と金属棒10Aの第1端部10a側の凹凸面12部分の内径は、予め調整されている。
金属棒10Aの第1端部10aを含む部分の周囲には、誘導加熱をするための電磁誘導加熱装置70が配置されている。なお、電磁誘導加熱装置70は簡略化して図示している。
【0038】
図6(a)に示す状態で電磁誘導加熱装置70により誘導加熱を実施することで、金属棒10Aの粗面化処理部分(凹凸面12)を加熱する。
このときの加熱は、例えば金属棒(または金属筒でもよい)10Aの凹凸面12を含む部分の表面温度がボス20Aを構成する熱可塑性樹脂の融点よりも50℃以上高くなる程度に加熱することができる。
次に、図6(b)に示すとおり、金属棒10Aを第1端部10a側からボス20Aの挿入孔23内に挿入することで、高温状態の粗面化処理部分(凹凸面12)がボス20Aの環状傾斜壁部22で包囲された状態にすることができる。
その後、高温状態の粗面化処理部分(凹凸面12)により環状傾斜壁部22を構成する熱可塑性樹脂が溶融状態になるため、図2図3に示すとおり、金属棒10Aの凹凸面12の凸部13がボス20内に入り込み、金属棒10Aの凹凸面12の凹部14内にボス20Aを構成する熱可塑性樹脂が入り込む。
このようにして金属棒10Aとボス20Aが接合された複合成形体を得ることができる。
図6(b)の挿入工程では、金属棒10Aの第1端部10b側の凹凸面12部分の外径(d1)とボス20Aの挿入孔23の内径(d2)のクリアランスC1は、(d2-d1)/2で表すことができる。
このとき、金属棒10Aの凹凸面12部分の外径(凸部の外径)(d1)と金属棒10Aの粗面化処理をしていない面(基準面)の外径(d0)は、d1>d0の関係になっており、本発明の好ましい一態様は(d1-d0)/2=0.01~0.30mmであり、本発明の別の好ましい一態様は(d1-d0)/2=0.03~0.20mmである。
クリアランスC1は、本発明の好ましい一態様は-0.1~0.01mmであり、本発明の別の好ましい一態様は-0.1~0.00mmであり、本発明のさらに別の好ましい一態様は-0.05~0.00mmである。
クリアランスC1が+であるときは、金属棒10Aをボス20Aの挿入孔23内に挿入したとき、金属棒10Aと挿入孔23が接触せず、僅かな間隔をおいて近接している状態であり、クリアランスC1が-であるときは、金属棒10Aをボス20Aの挿入孔23内に挿入したとき、金属棒10Aと挿入孔23が接触している状態である。
クリアランスC1が「0.00」であるときは、実質的にd1=d2であることを示している。
なお、クリアランスC1は、金属棒10Aとボス20Aが接触し易くなり、接合され易くなるための要件であるから、金属棒10Aとボス20Aの挿入孔23の少なくとも一部がクリアランスC1の範囲を満たしていればよい。
【0039】
図6に示す第2a実施形態を実施するときは、金属棒10Aの第1端部10a側の凹凸面12が予め加熱された状態(ボス20Aを構成する熱可塑性樹脂の融点よりも十分高い温度に加熱された状態)であるため、d1>d2であっても金属棒10Aの挿入孔23への挿入が容易になる。
このため、金属棒10Aの寸法とボス20Aの寸法精度は余り高くする必要がなく、加工作業が容易になるという利点があるが、金属棒10Aを加熱した状態でボス20Aと接触させることになるため、それぞれの位置決めが難しくなるということもある。
図6に示す第2a工程では、金属成形体と樹脂成形体を入れ替え、金属製のボスと樹脂棒を使用して、同様に実施することもできる。
金属成形体を図6(b)に示すボス20Aと同形状にするときは、挿入孔23内を粗面化処理することになるため、粗面化処理が容易にできるように挿入孔23の開口部が拡径された形状のものにすることもできる。
【0040】
図7により第2b工程を説明する。
金属棒(第2金属成形体)10A、ボス(第1非金属成形体)20A、電磁誘導加熱装置70、治具100は、図6で示す実施形態で使用したものと同じものであり、金属棒に代えて金属筒を使用することもできる。
図7(a)では、作業台90の上に金属棒10Aの接合相手となるボス(熱可塑性樹脂成形体)20Aが置かれ、ボス20の挿入孔23内に金属棒10Aの第1端部10a側の粗面化処理部分(凹凸面12)が挿入された状態が示されている。
図7(a)では、さらに金属棒10Aの第1端部10a側とボス20Aを包囲する位置に電磁誘導加熱装置70が配置されている。
【0041】
図7(a)に示す状態で電磁誘導加熱装置70により誘導加熱を実施することで、金属棒10Aの第1端部10a側の粗面化処理部分(凹凸面12)とボス20Aの両方を加熱する。
このときの加熱は、例えば金属棒10Aの凹凸面12を含む部分の表面温度がボス20Aを構成する熱可塑性樹脂の融点よりも50℃以上高くなる程度に加熱することができる。
この誘導加熱により図2図3に示すとおり、金属棒10Aの凹凸面12の凸部13がボス20A内に入り込み、金属棒10Aの凹部14内にボス20Aを構成する熱可塑性樹脂が入り込む。
このようにして金属棒10Aとボス20Aが接合された複合成形体を得ることができる。
図7(a)において金属棒10Aをボス20Aに挿入する挿入工程では、金属棒10Aの第1端部10b側の凹凸面12部分の外径(d1)とボス20Aの挿入孔23の内径(d2)のクリアランスC2は、(d2-d1)/2で表すことができる。
このとき、金属棒10Aの凹凸面12部分の外径(凸部の外径)(d1)と金属棒10Aの粗面化処理をしていない面(基準面)の外径(d0)は、d1>d0の関係になっており、本発明の好ましい一態様は(d1-d0)/2=0.01~0.30mmであり、本発明の別の好ましい一態様は(d1-d0)/2=0.03~0.02mmである。
前記クリアランスC2は、本発明の好ましい一態様は-0.01~0.40mmであり、本発明の別の好ましい一態様は0.00~0.20mmであり、本発明のさらに別の好ましい一態様は0.00~0.10mmである。
クリアランスC1が+であるときは、金属棒10Aをボス20Aの挿入孔23内に挿入したとき、金属棒10Aと挿入孔23が接触せず、僅かな間隔をおいて近接している状態であり、クリアランスC1が-であるときは、金属棒10Aをボス20Aの挿入孔23内に挿入したとき、金属棒10Aと挿入孔23が接触している状態である。
クリアランスC1が「0.00」であるときは、実質的にd1=d2であることを示している。
なお、クリアランスC2は、金属棒10Aとボス20Aが接触し易くなり、接合され易くなるための要件であるから、金属棒10Aとボス20Aの挿入孔23の少なくとも一部がクリアランスC2の範囲を満たしていればよい。
【0042】
図7に示す第2b実施形態を実施するときは、金属棒10Aをボス20Aの挿入孔23に差し込んだ状態で誘導加熱するため、金属棒10Aとボス20Aの位置決めが不要になるが、金属棒10Aの寸法とボス20Aの加工精度を高めることが必要になる。
図7に示す第2b工程では、第2金属成形体と樹脂成形体を(第2非金属成形体)入れ替え、金属製のボスと樹脂棒を使用して、同様に実施することもできる。
第2金属成形体を図7(b)に示すボス20Aと同形状にするときは、挿入孔23内を粗面化処理することになるため、粗面化処理が容易にできるように挿入孔23の開口部が拡径された形状のものにすることもできる。
【0043】
本発明の製造方法により得られた複合成形体の他の実施形態は、金属の筒状部と樹脂の筒状部が接合されたものも含まれ、さらに別実施形態としては、樹脂パイプ内に金属パイプが挿入された状態で接合された複合成形体、金属パイプ内に樹脂パイプが挿入された状態で接合された複合成形体も含まれる。
【0044】
本発明の第2実施形態の製造方法は、図4に示すような注射器50の製造方法として適している。
本発明の第2実施形態の製造方法を注射器の製造方法として適用するときは、第2金属成形体が注射針であり、第2非金属成形体が熱可塑性樹脂からなる注射器本体(注射器から注射針を除いた残部)である。
この実施形態では、注射針52の注射器本体51と接合させる部分に対して、第1工程の連続波レーザー光の連続照射をして粗面化処理により凹凸(凹凸面52a)を形成する。
その後、注射針52の凹凸面52aを注射針本体51の筒状の注射針取り付け部51aの内側に差し込んで、注射針52の凹凸面52aと筒状の注射針取り付け部51aを接触させた状態(好ましくは密着させた状態)で第2工程の処理をして、注射器50を製造する。
本発明の第2実施形態の製造方法を適用して注射器50を製造したとき、注射針52の厚みt1と注射器本体51の厚みt2の接合部分の合計厚みTが上記した式(I)の関係を満たしているため、注射針52の軸中心と注射器本体51の軸中心がずれることがなく、さらに注射器本体51から注射針52が外れることもないため、注射器50としての信頼性を高めることができる。
【0045】
本発明の第2工程(第1実施形態と第2実施形態)で使用する第1非金属成形体または第2非金属成形体は、セラミックスを除いたものであり、熱可塑性樹脂、ゴム(硬化ゴム)、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂(但し、第2工程ではプレポリマーを使用する)から選ばれるものが好ましい。
第1非金属成形体または第2非金属成形体の形状や大きさは、複合成形体の用途に応じて組み合わせ対象となる金属成形体の形状や大きさと関連して選択することができるものである。
第1金属成形体または第2金属成形体として厚さが5mm以下の平板部を有する成形体を使用するときは、第1非金属成形体または第2非金属成形体も厚さが5mm以下の平板部を有する成形体を使用することができる。
第1金属成形体または第2金属成形体として厚さが5mm以下の筒状部または幅方向の断面形状の最大長さが5mm以下の棒状部を有する成形体を使用するときは、第1非金属成形体または第2非金属成形体も厚さが5mm以下の筒状部を有する成形体を使用することができる。
【0046】
熱可塑性樹脂は、用途に応じて公知の熱可塑性樹脂から適宜選択することができる。
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系樹脂(PA6、PA66等の脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド)、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂等のスチレン単位を含む共重合体、ポリエチレン、エチレン単位を含む共重合体、ポリプロピレン、プロピレン単位を含む共重合体、その他のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂などを挙げることができる。
【0047】
ゴムは、熱、放射線などにより硬化することができるものである。
ゴムとしては、エチレン‐プロピレンコポリマー(EPM)、エチレン‐プロピレン‐ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン‐オクテンコポリマー(EOM)、エチレン‐ブテンコポリマー(EBM)、エチレン‐オクテンターポリマー(EODM)、エチレン‐ブテンターポリマー(EBDM)などのエチレン‐α‐オレフィンゴム;
エチレン/アクリル酸ゴム(EAM)、ポリクロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル‐ブタジエンゴム(NBR)、水添NBR (HNBR)、スチレン‐ブタジエンゴム(SBR)、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレン(ACSM)、エピクロルヒドリン(ECO)、ポリブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(合成ポリイソプレンを含む) (NR)、塩素化ポリエチレン(CPE)、ブロム化ポリメチルスチレン‐ブテンコポリマー、スチレン‐ブタジエン‐スチレンおよびスチレン‐エチレン‐ブタジエン‐スチレンブロックコポリマー、アクリルゴム(ACM)、エチレン‐酢酸ビニルエラストマー(EVM)、およびシリコーンゴムなどを使用することができる。
【0048】
ゴムには、必要によりゴムの種類に応じた硬化剤を含有させるが、その他、公知の各種ゴム用添加剤を配合することができる。ゴム用添加剤としては、硬化促進剤、老化防止剤、シランカップリング剤、補強剤、難燃剤、オゾン劣化防止剤、充填剤、プロセスオイル、可塑剤、粘着付与剤、加工助剤などを使用することができる。
【0049】
熱可塑性エラストマーは、用途に応じて公知の熱可塑性エラストマーから適宜選択することができる。
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーなどを挙げることができる。
【0050】
熱硬化性樹脂は、用途に応じて公知の熱硬化性樹脂から適宜選択することができる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レソルシノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ビニルウレタンなどを挙げることができる。
【0051】
これらの非金属成形体に使用する非金属材料には、公知の繊維状充填材を配合することができる。
公知の繊維状充填材としては、炭素繊維、無機繊維、金属繊維、有機繊維等を挙げることができる。
炭素繊維は周知のものであり、PAN系、ピッチ系、レーヨン系、リグニン系等のものを用いることができる。
無機繊維としては、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維等を挙げることができる。
金属繊維としては、ステンレス、アルミニウム、銅等からなる繊維を挙げることができる。
有機繊維としては、ポリアミド繊維(全芳香族ポリアミド繊維、ジアミンとジカルボン酸のいずれか一方が芳香族化合物である半芳香族ポリアミド繊維、脂肪族ポリアミド繊維)、ポリビニルアルコール繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリオキシメチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリエステル繊維(全芳香族ポリエステル繊維を含む)、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリイミド繊維、液晶ポリエステル繊維などの合成繊維や天然繊維(セルロース系繊維など)や再生セルロース(レーヨン)繊維などを用いることができる。
【0052】
これらの繊維状充填材は、繊維径が3~60μmの範囲のものを使用することができるが、これらの中でも、例えば金属成形体10の接合面12が粗面化されて形成される開放孔30などの開口径より小さな繊維径のものを使用することが好ましい。繊維径は、より望ましくは5~30μm、さらに望ましくは7~20μmである。
【0053】
第2工程(第1実施形態と第2実施形態)では、高周波出力500~5000W、周波数300~1500kHzで電磁誘導加熱を実施することが好ましい。
高周波出力は、1000~4000Wがより好ましく、1200~3000Wがさらに好ましい。
周波数は、300~1200kHzがより好ましく、400~1000kHzがさらに好ましい。
発振時間は、1~10secが好ましい。なお、発振時間とは、磁界を与えている時間であり、加熱時間と一致している。
圧力は、0.05~0.5MPaが好ましく、0.1~0.3MPaがより好ましい。なお、圧力とは、接合させようとする金属成形体と非金属成形体に加えられる圧力である。
荷重は、30~280Nが好ましく、50~170Nがより好ましい。なお、荷重とは、金属成形体と非金属成形体に圧力を加えたときに接合面に発生する力である。
保持時間は、1~30secが好ましく、3~20secがより好ましい。なお、保持時間とは、加熱終了後に金属成形体と非金属成形体に圧力を加えた状態で保持する時間であり、冷却時間である。
第2工程(第1実施形態と第2実施形態)では、金属成形体の金属の種類、非金属成形体の種類、出力(Wまたは装置の最大出力に対する%)、発振時間、圧力、荷重を調整することが好ましい。
【0054】
各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせなどは一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲で、適宜構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。本発明は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例
【0055】
(最大平均高さと最大平均深さ)
第1金属成形体または第2金属成形体の粗面化された凹凸面のうちの20mm×20mmの面積領域(20mm×20mm未満の場合は全面積領域)について、長さ500μm範囲を最大で10箇所ランダムに選択し、前記最大で10箇所の長さ500μmの範囲内の凹凸の最大高さ(図2のHmax)と最大深さ(図2のDmax)をSEMの断面写真から計測し、最大高さと最大深さの平均値を求めた。
【0056】
第1金属成形体の厚み(t1)と第1非金属成形体(樹脂成形体)の厚み(t2)は、デジタルマイクロメータ((株)ミツトヨ製)により測定した。
【0057】
(引張試験)
図1に示す複合成形体1を用い、引張試験を行ってせん断接合強度(S1)を評価した。
引張試験は、ISO19095に準拠し、金属板(第1金属成形体)10側の端部を固定した状態で、金属板10と樹脂板(第1非金属成形体)20が破断するまで図1における金属板10と樹脂板20の長さ方向に引っ張った場合の接合面が破壊されるまでの最大荷重を測定した。結果を表3、表4に示す。
<引張試験条件>
試験機:島津製作所製AUTOGRAPH AG-X plus (50kN)
引張速度:10mm/min
つかみ具(チャック)間距離:50mm
【0058】
製造例1~3(本発明の第1実施形態の製造方法の第1工程に相当する製造例)
下記レーザー装置を使用して、各例の金属板(第1金属成形体)の粗面化領域に対して表1に示す条件で連続波レーザー光を連続照射して粗面化して凹凸を形成した。
金属板の表面には、図2に示すような複雑な構造の凹凸が形成されていた。
(レーザー装置)
発振器:IPG-Ybファイバー;YLR-300-AC,fb径:13μm,1069nm
ガルバノミラー:OPTICEL D30L-CL+SQUIREEL16(ARGES社製)
集光系1:fc=80mm/fθ=163mm
測定器:キーエンス ワンショット3D形状測定器VR-3200
【0059】
【表1】
【0060】
製造例4~6(本発明の第1実施形態の製造方法の第1工程に相当する製造例)
各例2枚ずつのアルミニウム板(A5025)(第1金属成形体)(縦100mm、横25mm、厚み3mm)に対して、製造例1~3と同じレーザー装置を使用して、粗面化領域(25mm×12.5mm)に対して表2に示す条件でレーザー光を連続照射して粗面化して凹凸を形成した。
アルミニウム板の表面には、図2に示すような複雑な構造の凹凸が形成されていた。
【0061】
【表2】
【0062】
製造例7(比較製造例)
製造例1の連続波レーザー光の連続照射に代えて、下記の装置を使用してパルス波レーザー光を照射して第1金属成形体(A5052)を粗面化した。
(パルス波レーザー装置)
発振器:IPG-Ybファイバー:YLP-1-50-30-30-RA
出力:100%
周波数:30kHz
ガルバノミラー:LXD30+SCANLAB社のHurrySCAN10
ビームエクスパンダ2倍/fθ=100mm
【0063】
照射方法と照射条件は、次のとおりである。
パルス波レーザー光を直線状に150μm照射して溝を形成したのち、0.028mmの間隔(隣接する溝の中心間距離)で反対方向に同様にして照射し、これを5回繰り返す照射を1回として、さらに同様の照射を5回繰り返して、最大深さ340μmの四角穴を形成した。さらに同様の照射を繰り返して、隣接する四角穴同士の間隔が150μmである複数の四角穴を形成した。
最大平均高さは10μm、最大平均深さは340μmであった。
このようにパルス波レーザー光を照射した場合は、連続波レーザー光を連続照射した製造例1~6と比べると、凹部深さと比べると凸部高さが非常に小さくなっており、凹凸ではなく、実質的には多数の穴が形成された状態であった。これはパルス波レーザー光の照射により金属成形体(A5052)表面のアルミニウムが揮発して失われたため、凸部が形成されず、主として穴が形成されたためである。
【0064】
(照射条件)
照射速度:250mm/sec
エネルギー密度:1258MW/cm2
出力:30W
スポット径:45μm
繰り返し回数(1本の溝を形成するために繰り返して照射回数):5回
波長:1069nm
パルス幅:50nsec
周波数:30kHz
【0065】
実施例1~4、比較例1~7
表3、表4に示す第1工程と、電磁誘導加熱装置(精電舎電子工業(株)製)を使用した第2工程により図1に示す複合成形体を製造した。
金属板10は、表3、4に示す厚み(t1)で、幅10mm、長さ45mmであり、非金属板(樹脂板)20は、表3、4に示す厚み(t2)を除いて金属板10と同形状で同寸法のものである(LGFはガラス長繊維の略)。
金属板10と樹脂板20は、互いに接触させた状態で、表3、4に示す圧力(荷重)を表3、表4に示す保持時間の間加えた状態で電磁誘導加熱を実施した。出力はダイヤル1~4の4段階で調整できるようになっており、ダイヤル4が最大出力である。
(電磁誘導加熱装置)
型式:UH-2.5K
出力(W):2500(最大値)
発振周波数(kHz):900(最大値)
発振器構成:真空管
【0066】
【表3】
【0067】
実施例1、2は、金属板と樹脂板が接合しており、接合部分のバリも殆どなかった(評価〇)。
比較例1は、金属板と樹脂板が接合しなかった。
比較例2は、金属板と樹脂板が接合していたが、接合部分には実施例1、2と比べると大量のバリが発生した(評価×)。
比較例3は、樹脂板が溶解した。
引張試験の結果、実施例1は樹脂板が破壊され、実施例2は樹脂板側のチャック部で破壊され、比較例2は接合面で破壊された。
【0068】
比較例4は、パルス波レーザー光を照射する工程(製造例7)を適用することで実質的に凸部が形成されず凹部のみが形成されたため、(T-t1)/t2)=1.00となったが、樹脂板の樹脂が凹部内に侵入せず、荷重を加えたときにかなりの量が接合面から外にはみ出したため、接合できなかった。
比較例5は、パルス波レーザー光を照射する工程(製造例7)を適用することで主として凹部が形成されたため(凸部高さが凹部深さに比べて非常に小さいため)、(T-t1)/t2)=0.95であったが、樹脂板の樹脂の凹部への侵入が充分にされず、バリの発生量も多かったため(評価×)、接合強度も小さくなった。
比較例6は、比較例4、5と比べると凸部の高さが高くなっていたため、比較例6と比べると接合強度が大きかったが、(T-t1)/t2)=0.78であることから複合体の接合部分の厚みにむらがあり、バリの発生量もかなり多かった(評価×)。
【0069】
【表4】
【0070】
実施例3は、金属板と樹脂板が接合しており、接合部分のバリも少なかったが、接合部分の樹脂板にボイドが発生した(評価〇)。
実施例4は、金属板と樹脂板が接合しており、接合部分のバリも少なかった(評価〇)。
比較例7は、樹脂板が溶解した(評価×)。
引張試験の結果は、実施例3、4は、接合面で破壊された。
【0071】
製造例8~11(本発明の第2実施形態の製造方法の第1工程に相当する製造例)
下記レーザー装置を使用して、各例の金属棒(第2金属成形体)の粗面化領域に対して表5に示す条件で連続波レーザー光を連続照射して粗面化して凹凸を形成した。レーザー装置は、次のものを使用した。金属棒の表面には、図2に示すような複雑な構造の凹凸が形成されていた。
(レーザー装置)
発振器 YLR-1000-SM,fb径:14μ\ochm,1069nm
光学系 ARGES社Rino(fc=110mm/fθ=163mm)
【0072】
【表5】
【0073】
実施例5~8(本発明の第2実施形態の製造方法の第2a工程(図6)を含む実施例)
図6(a)、(b)に示す工程を実施して、金属棒(第2金属成形体)とボス(第2非金属成形体)が接合された複合成形体を得た。
第2a工程における実施例1と同じ電磁誘導加熱装置による誘導加熱条件は、表6に示すとおりであった。
【0074】
引張試験は、ボス20A側の端部を固定した状態で、金属棒10Aとボス20Aが破断するまで、金属棒10Aの長さ方向に引っ張った場合の接合面が破壊されるまでの最大荷重を測定した。結果を表6、表7に示す。
<引張試験条件>
試験機:島津製作所製AUTOGRAPH AG-X plus (50kN)
引張速度:10mm/min
つかみ具(チャック)間距離:50mm
【0075】
【表6】
【0076】
実施例9、10(本発明の第2実施形態の製造方法の第2b工程(図7)を含む実施例)、比較例8
図7(a)、(b)に示す工程を実施して、金属棒(第2金属成形体)とボス(第2非金属成形体)が接合された複合成形体を得た。
第2b工程における実施例1と同じ電磁誘導加熱装置による誘導加熱条件は、表7に示すとおりであった。
引張試験は、実施例5~8と同様に実施した。
【0077】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の複合成形体の製造方法は、軽量化などの目的で金属製品の代替品として使用できる複合成形体を製造することができ、特に注射器、眼鏡フレームなどの薄肉部分同士を接合する製造方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 複合成形体
10 第1金属成形体
11 基準面(未処理面)
13 凸部
14 凹部
20 第1非金属成形体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7