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特許7446821嫌気性消化システムおよび嫌気性消化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】嫌気性消化システムおよび嫌気性消化方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/04 20060101AFI20240304BHJP
【FI】
C02F11/04 Z ZAB
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020005969
(22)【出願日】2020-01-17
(65)【公開番号】P2021112699
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000176752
【氏名又は名称】三菱化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】正木 恵之
(72)【発明者】
【氏名】栗原 元
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-167258(JP,A)
【文献】特開2005-144280(JP,A)
【文献】特開2007-098228(JP,A)
【文献】特開2012-254426(JP,A)
【文献】特開2018-167170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F3/28-34、11/00-20
B09B1/00-5/00
B09C1/00-10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象の汚泥が加温される熱交換器と、
前記熱交換器で加温された前記汚泥が、嫌気性消化される嫌気性消化槽と、
前記嫌気性消化槽で嫌気性消化された消化汚泥を、前記熱交換器で加温される前の前記処理対象の汚泥と合流させる循環手段と
前記熱交換器の上流に設けられる前記処理対象の汚泥を破砕する破砕機と、を備え、
前記循環手段は、三方弁と、前記三方弁と前記熱交換器の上流との間を接続する第一管路と、
前記三方弁と前記破砕機の上流との間を接続する第二管路とを
備えていることを特徴とする嫌気性消化システム。
【請求項2】
請求項1に記載の嫌気性消化システムにおいて、
前記処理対象の汚泥が投入される場合には、
前記嫌気性消化槽の前記消化汚泥を、前記三方弁と前記第二管路を介して前記破砕機の上流の前記処理対象の汚泥に合流させて前記破砕機、前記熱交換器の順に流すことを特徴とする嫌気性消化システム。
【請求項3】
請求項に記載の嫌気性消化システムにおいて、
前記処理対象の汚泥が投入されず、かつ、前記嫌気性消化槽で固形物の塊りが発生しない場合には、
前記嫌気性消化槽の前記消化汚泥を、前記破砕機に流すことなく、前記三方弁から前記第一管路を介して前記熱交換器に流すことを特徴とする嫌気性消化システム。
【請求項4】
請求項に記載の嫌気性消化システムにおいて、
前記処理対象の汚泥が投入されず、かつ、前記嫌気性消化槽で固形物の塊りが発生する場合には、
前記嫌気性消化槽の前記消化汚泥を、前記三方弁と前記第二管路を介して前記破砕機、前記熱交換器の順に流すことを特徴とする嫌気性消化システム。
【請求項5】
処理対象の汚泥が加温される熱交換器と、
前記熱交換器で加温された前記汚泥が、嫌気性消化される嫌気性消化槽と、
前記嫌気性消化槽で嫌気性消化された消化汚泥を、前記熱交換器で加温される前の前記 処理対象の汚泥と合流させる循環手段と、
前記熱交換器の上流に設けられる前記処理対象の汚泥を破砕する破砕機と、を備え、
前記循環手段は、前記熱交換器の上流に接続される管路に設けられ、当該管路の開閉を行う第1切換え弁と、
記破砕機の上流に接続される管路に設けられ、当該管路の開閉を行う第2切換え弁とを 備えていることを特徴とする嫌気性消化システム。
【請求項6】
請求項5に記載の嫌気性消化システムにおいて、
前記処理対象の汚泥が投入される場合には、
前記第1切換え弁は閉弁するとともに前記第2切換え弁は開弁し、前記嫌気性消化槽の前記消化汚泥を、前記破砕機の上流の前記処理対象の汚泥に合流させて前記破砕機、前記熱交換器の順に流すことを特徴とする嫌気性消化システム
【請求項7】
請求項5に記載の嫌気性消化システムにおいて、
前記処理対象の汚泥が投入されず、かつ、前記嫌気性消化槽で固形物の塊りが発生しない場合には、
前記第1切換え弁は開弁するとともに前記第2切換え弁は閉弁し、
前記嫌気性消化槽の前記消化汚泥を、前記破砕機に流すことなく前記熱交換器に流すことを特徴とする嫌気性消化システム。
【請求項8】
請求項5に記載の嫌気性消化システムにおいて、
前記処理対象の汚泥が投入されず、かつ、前記嫌気性消化槽で固形物の塊りが発生する場合には、
前記第1切換え弁は閉弁するとともに前記第2切換え弁は開弁し、
前記嫌気性消化槽の前記消化汚泥を、前記破砕機、前記熱交換器の順に流すことを特徴とする嫌気性消化システム。
【請求項9】
破砕機と熱交換器と嫌気性消化槽と循環手段と切替手段とを用いて、処理対象の汚泥を嫌気性消化処理する嫌気性消化方法であって、
汚泥が前記破砕機で破砕される過程と、
前記汚泥が前記熱交換器で加温される過程と、
加温された前記汚泥が前記嫌気性消化槽で嫌気性微生物により嫌気性消化される過程と、
前記処理対象の汚泥が投入される場合には、前記嫌気性消化槽の消化汚泥が前記循環手段と前記切替手段により、前記破砕機の上流の前記処理対象の汚泥に合流され前記破砕機、前記熱交換器の順に流れる過程と、
前記処理対象の汚泥が投入されず、かつ、前記嫌気性消化槽で固形物の塊りが発生しない場合には、前記嫌気性消化槽の消化汚泥は、前記循環手段と前記切替手段により、前記破砕機に流れることなく前記熱交換器に流れる過程と
を含む
ことを特徴とする嫌気性消化方法
【請求項10】
請求項9に記載の嫌気性消化方法において、
前記処理対象の汚泥が投入されず、かつ、前記嫌気性消化槽で固形物の塊りが発生する場合には、前記嫌気性消化槽の消化汚泥は、前記循環手段と前記切替手段により、前記破砕機と前記熱交換器の順に流れる過程とを含む
ことを特徴とする嫌気性消化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嫌気性消化システムおよび嫌気性消化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図6に、従来の下水汚泥の消化設備の模式図を示す。
従来、下水汚泥の消化設備の関連施設では、下水汚泥を含む流入水が最初沈殿池102、反応槽103、最終沈殿池104の順に送られる。
最初沈殿池102では、自然沈降が行われ、固形物濃度が1~2%に濃縮される。下水汚泥を含む流入水は、最初沈殿池102で、上澄み液と沈殿物の汚泥(以下、初沈汚泥と称す)とに分離される。
【0003】
上澄み液は反応槽102に送られ、反応槽102で好気性微生物により好気処理が行われる。
最終沈殿池104では、好気処理が行われた処理液が、上澄み液と、沈殿物の汚泥(以下、余剰汚泥と称す)とに分離され、余剰汚泥は機械濃縮により固形物濃度で3~6%に濃縮される。
最初沈殿池102の初沈汚泥が濃縮された濃縮初沈汚泥は、ポンプP11により、ラインk11を経由して、嫌気性消化槽101に送られる。
【0004】
また、最終沈殿池104の余剰汚泥が濃縮された濃縮余剰汚泥は、ポンプP12により、ラインk11を経由して、嫌気性消化槽101に送られる。
嫌気性消化槽101では、嫌気性消化処理が行われる。嫌気性消化処理は、35~38℃で消化日数(初沈汚泥、余剰汚泥の当該タンクの滞留日数)が20~30日の中温消化と、50~55℃で消化日数が10~20日の高温消化とがある。
【0005】
嫌気性消化槽101での嫌気性微生物による消化の温度を維持するために、外部から熱を、消化汚泥が嫌気性消化槽101に循環する循環ラインj11を通して、嫌気性消化槽101内に供給して加温している。循環ラインj11には、嫌気性消化槽101の消化汚泥を加温するための熱交換器105と、消化汚泥を熱交換器105に送る循環ポンプP13とが、設けられている。
【0006】
投入汚泥の嫌気性消化槽101への投入は、通常、加温のための消化汚泥の循環ラインj11とは別途にラインk11から投入される。
前記したように、投入汚泥は、通常、固形物濃度が2~6%に濃縮された状態である。
【0007】
一方、図6の構成と異なり、嫌気性消化槽101への汚泥の投入に際して、予め熱交換器を経由して、加温してからの濃縮初沈汚泥と濃縮余剰汚泥の嫌気性消化槽101への投入は、次の問題が生じる。すなわち、熱交換器における投入汚泥中のし渣による閉塞や、熱交換器の伝熱面に投入汚泥中のワックス状の油分が付着する。また、投入汚泥が約20~30℃(冬季は約10~20℃)であり、投入汚泥が約50℃の伝熱面にへばり付く。
したがって、熱交換器での熱交換量の不足が生じるため、予め熱交換器を経由して、加温してからの投入汚泥(濃縮初沈汚泥、濃縮余剰汚泥)の嫌気性消化槽101への投入は近年、実施されていない。
【0008】
ところで、嫌気性消化槽101における消化を効率的に行うため、嫌気性消化槽101に貯留される消化汚泥の撹拌が行われる。
嫌気性消化槽101における消化汚泥の撹拌については、古くから採用されてきたガス撹拌に代わって、低動力なインペラー型機械撹拌装置の採用が増えている。
【0009】
嫌気性消化槽101の加温については、気性消化槽101内に直接蒸気を吹き込む方式と、図6に示す消化汚泥を循環ラインj11に循環させて、循環ラインj11に設置した熱交換器105で、温水と消化汚泥とが熱交換を行う間接加温式がある。
嫌気性消化槽101における消化汚泥中のし渣の塊りが大きくなるのを抑制するための破砕については、間接加温のための循環ラインj11において、熱交換器105を経由する前にカッター(図示せず)が設置されることがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】下水道施設計画・設計指針と解説-2009年版_後編P350((社)日本下水道協会)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
昨今、余剰汚泥を固形化する高分子凝集剤のコストが以前に比べて大きく低下している。そのため、嫌気性消化槽101に投入前の汚泥の水分を、遠心濃縮機のように動力をかけて除去して濃縮するより、高分子凝集剤を加えた投入汚泥をベルトや浮上分離で高濃度に汚泥を濃縮する方法が広まりつつある。つまり、下水汚泥の嫌気性消化設備において、高分子凝集剤を用いて(消化槽への)投入汚泥を濃縮することにより高濃度化し、嫌気性消化槽101内の固形物濃度を高くするいわゆる「高濃度消化プロセス」が採用されつつある。
【0012】
一方、前記したように、消化槽の撹拌設備は、古くからガス撹拌に代わって、低動力なインペラー型機械撹拌装置の採用が増えている。
ところが、高分子凝集剤を含んだ濃縮汚泥は、高粘度でスライム化した汚泥で分散性が悪い。
これにより、嫌気性消化槽101内での撹拌が難しく、槽(101)内に既にある消化汚泥と新たに投入される投入汚泥がうまく混合できずに温度むらが生じる場合がある。その結果、汚泥の消化に支障をきたし、汚泥の発泡現象が生じ、消化率が低下する。つまり、投入汚泥が消化されることで回収できる消化ガスの量が低下する問題がある。
【0013】
さらに、インペラー型機械撹拌装置の採用により、投入汚泥に含まれるし渣がインペラーに絡みついて、経年と共に成長し撹拌状態が著しく低下するケースもある。
本発明は上記実状に鑑み創案されたものであり、嫌気性消化槽の撹拌状態を良好に保ち、消化汚泥の温度むらを小さくして、良好な嫌気性消化を行える嫌気性消化システムおよび嫌気性消化方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するため、第1の本発明の嫌気性消化システムは、処理対象の汚泥が加温される熱交換器と、前記熱交換器で加温された前記汚泥が、嫌気性消化される嫌気性消化槽と、前記嫌気性消化槽で嫌気性消化された消化汚泥を、前記熱交換器で加温される前の前記処理対象の汚泥と合流させる循環手段と、前記熱交換器の上流に設けられる前記処理対象の汚泥を破砕する破砕機と、を備え、前記循環手段は、三方弁と、前記三方弁と前記熱交換器の上流との間を接続する第一管路と、前記三方弁と前記破砕機の上流との間を接続する第二管路とを備えている。
【0015】
第2の本発明の嫌気性消化方法は、破砕機と熱交換器と嫌気性消化槽と循環手段と切替手段とを用いて、処理対象の汚泥を嫌気性消化処理する嫌気性消化方法であって、汚泥が前記破砕機で破砕される過程と、前記汚泥が前記熱交換器で加温される過程と、加温された前記汚泥が前記嫌気性消化槽で嫌気性微生物により嫌気性消化される過程と、前記処理対象の汚泥が投入される場合には、前記嫌気性消化槽の消化汚泥が前記循環手段と前記切替手段により、前記破砕機の上流の前記処理対象の汚泥に合流させ前記破砕機、前記熱交換器の順に流れる過程と、前記処理対象の汚泥が投入されず、かつ、前記嫌気性消化槽で固形物の塊りが発生しない場合には、前記嫌気性消化槽の消化汚泥は、前記循環手段と前記切替手段により、前記破砕機に流れることなく前記熱交換器に流れる過程とを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、嫌気性消化槽の撹拌状態を良好に保ち、消化汚泥の温度むらを小さくして、良好な嫌気性消化を行える嫌気性消化システムおよび嫌気性消化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る嫌気性消化システムの構成の模式図。
図2】嫌気性消化システムにおいて投入汚泥が投入されるモードの構成を示す図。
図3】嫌気性消化システムにおいて投入汚泥が投入されないモードの構成を示す図。
図4】嫌気性消化システムにおける嫌気性消化槽の内部で消化汚泥にし渣が多く混入する場合の管路を示す図。
図5】変形例の嫌気性消化システムの構成の模式図。
図6】従来の下水汚泥の消化設備の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に、本発明の実施形態に係る嫌気性消化システムSの構成の模式図を示す。
実施形態の嫌気性消化システムSは、図6に示す初沈汚泥と余剰汚泥とである投入汚泥(処理対象の汚泥)を処理するシステムである。
初沈汚泥は、流入水が最初沈殿池102で沈降した汚泥である。
余剰汚泥は、流入水が最初沈殿池102、反応槽103を通過して最終沈殿池104で自然沈降した汚泥である。
【0019】
なお、投入汚泥(処理対象の汚泥)は、初沈汚泥、余剰汚泥またはそれぞれの濃縮された汚泥の何れかでもよい。
実施形態の嫌気性消化システムSは、投入汚泥が処理される順に、破砕機1、熱交換器2、および嫌気性消化槽3が管路k1、k2、k3で接続されている。
破砕機1のカッターは、投入汚泥に含まれるし渣等を破砕する。カッターの型式としては、一つのモータで刃を駆動する一軸式と、二つのモータで刃が互いに噛み合う二軸式とがある。投入汚泥のし渣を破砕することで、熱交換器2の詰まりや、後記する嫌気性消化槽3のインペラー4i1、4i2へのし渣の絡み付きが抑制される。
【0020】
熱交換器2は、破砕機1で破砕された投入汚泥を下流の嫌気性消化槽3での消化に適した温度に加温する。破砕機1で破砕された投入汚泥は、熱交換器2で温水と熱交換され加温される。
嫌気性消化槽3では、破砕されかつ加温された汚泥を嫌気性微生物で消化して減容する。嫌気性消化槽3で、投入汚泥の有機固形物のうち約50%(範囲で示す場合は30~70%)が減容される。
嫌気性消化槽3での消化には、約35~40℃が適温の中温消化と、約50~55℃が適温の高温消化とがある。
【0021】
中温消化を行う場合は、熱交換器2で破砕された投入汚泥を約35~45℃に加温する。
高温消化を行う場合は、熱交換器2で破砕された投入汚泥を約50~60℃に加温する。
嫌気性消化槽3には、インペラー型機械撹拌装置4が設けられている。
インペラー型機械撹拌装置4は、インペラー4i1、4i2が軸4jに固定されている。軸4jは、モータ4mで回転駆動される。なお、インペラーの枚数については、型式により異なるが、図1では例として2枚の図としている。
インペラー型機械撹拌装置4は、嫌気性消化槽3内の破砕され加温された投入汚泥を、2枚のインペラー4i1、4i2で撹拌し、温度を均一にする。
【0022】
投入汚泥が熱交換器2で加温されることで、嫌気性消化槽3での汚泥の温度が均一化し、嫌気性消化槽3での消化効率が向上する。また、投入汚泥が加温されることで粘性が低下し、嫌気性消化槽3での撹拌が円滑に行える。
嫌気性消化槽3の下部には管路k4が接続されている。嫌気性消化槽3は、管路k4を介して、循環ポンプ5に接続されている。管路k4には、嫌気性消化槽3で消化された消化汚泥を抜き取るための管路k41が接続されている。嫌気性消化槽3で消化された消化汚泥は、一部がオーバーフローで、嫌気性消化槽3から抜き取られる。
【0023】
嫌気性消化システムSでは、投入汚泥が投入される場合(投入モード)と、投入汚泥が投入されない場合の何れの場合(非投入モード)にも対応するため、三方弁6等のバルブが設けられている。バルブは、投入汚泥が投入される場合と、投入汚泥が投入されない場合とでの切り替えを可能とする。
【0024】
図1では、バルブとして三方弁6が設けられた場合を示している。以下、バルブとして三方弁6が設けられているとして説明を行う。
そのため、循環ポンプ5は、管路k5を介して三方弁6に接続されている。
三方弁6は、嫌気性消化槽3で嫌気性消化された消化汚泥を破砕機1または熱交換器2に送り、循環させる役割をもつ。
【0025】
そこで、三方弁6は、管路k6を介して、破砕機1の上流の管路k1に接続されている。また、三方弁6は、管路k7を介して、熱交換器2の上流の管路k2に接続されている。投入汚泥が投入されない場合には、三方弁6を用いて、嫌気性消化槽3で消化されつつある消化汚泥が熱交換器2に送られ、循環が行われる。これによって、投入汚泥と消化汚泥中の菌体が嫌気性消化槽3への投入前に混合される。また、温度が高い消化汚泥と高粘度の投入汚泥を混合することで低粘性化し、その混合汚泥を、破砕機1を介して嫌気性消化槽3へ投入することが可能となる。
【0026】
<嫌気性消化システムSの動作モード>
次に、嫌気性消化システムSの動作モードについて説明する。
嫌気性消化システムSは、投入汚泥が投入される場合(投入モード)(図1の一点鎖線で示す)と、投入汚泥が投入されない場合(非投入モード)(図1の破線で示す)との2つのモードを有している。
【0027】
図2に嫌気性消化システムSにおいて投入汚泥が投入されるモードの構成を示し、図3に嫌気性消化システムSにおいて投入汚泥が投入されないモードの構成を示す。
<投入汚泥が投入される投入モード>
【0028】
図1の一点鎖線、図2で示す投入汚泥が投入される場合(投入モード)について、説明する。
投入汚泥が投入される投入モードでは、三方弁6は管路k5と管路k6とを接続する。
投入汚泥は、濃縮のため高分子凝集剤が加えられていて粘性が高くなっている。
投入汚泥は、常温で、管路k1を通って、破砕機1に送られる。破砕機1により、投入汚泥のし渣がカッティングされる。カッティングされた投入汚泥は、管路k2を通って、熱交換器2に送られる。カッティングされた投入汚泥は、熱交換器2で温水と熱交換され、嫌気性消化槽3での消化に適した温度になるように加温される。
【0029】
加温された投入汚泥は、管路k3を通って、嫌気性消化槽3に送られる。
嫌気性消化槽3の投入汚泥は、嫌気性消化槽3において、インペラー型機械撹拌装置4の2枚のインペラー4i1、4i2で撹拌されつつ、嫌気性微生物(メタン菌)で消化される。これにより、メタンガスと二酸化炭素とが発生し、投入汚泥が減容される。
嫌気性消化槽3で消化されつつある消化汚泥は、管路k4を通って、循環ポンプ5に圧送される。消化汚泥は、循環ポンプ5により、圧力を加えられ、管路k5、三方弁6、管路k6を通って、投入汚泥が投入される管路k1に送られる。
【0030】
そして、新たに投入される投入汚泥は、管路k1で、消化汚泥と混合され、破砕機1、熱交換器2、および嫌気性消化槽3の順に送られる。
以後、上述と同様な動作が繰り返される。
【0031】
上述の投入汚泥が投入される投入モードの構成によれば、濃縮のために高分子凝集剤が加えられ粘性が高くなっている投入汚泥を、投入前に循環汚泥(消化汚泥)と混合し (消化汚泥とプレ混合し)、嫌気性消化槽3への投入前に熱交換器2で加温する。これにより、早期にメタン菌と投入汚泥が接触する。また、加温により、投入汚泥が低粘性化され、嫌気性消化槽3の内部での撹拌状態が改善される。また、投入汚泥が消化に適した温度に加温されるので、消化効率が向上する。
【0032】
破砕機1により、投入汚泥のし渣を破砕してからの嫌気性消化槽3への投入となるため、し渣のインペラー4i1、4i2への絡みつきが減り、インペラー4i1、4i2の撹拌能力を維持することができる。また、熱交換器2に入る前に、投入汚泥のし渣が破砕機1により破砕されるので、熱交換器2でのし渣による閉塞も軽減できる。
前記したように、従来、投入汚泥をそのまま、熱交換器を通して加温すると熱交換器の伝熱面にワックス状の油分が付着し、熱交換器の閉塞や、熱交換量の不足の起因となっていた。
【0033】
これに対して、本実施形態の嫌気性消化システムSでは、図1の一点鎖線、図2に示すように、投入汚泥が熱交換器2の伝熱面を通過する前に、管路k4、循環ポンプ5、管路k5、三方弁6、管路k6を循環する消化汚泥と混合されて、投入汚泥由来の油分が希釈されている。
また、嫌気性消化槽3の内部で成長したボール状のし渣を、破砕機1に還流させてボール状のし渣を微細化し、嫌気性消化槽3へ返流する。これにより、インペラー4i1、4i2へのし渣の絡みつきによる撹拌機能低下を抑制できる。
【0034】
<投入汚泥が投入されない非投入モード>
図1の破線、図3に示す投入汚泥が投入されない場合(非投入モード)について、説明する。
投入汚泥が投入されない非投入モードでは、三方弁6は管路k5と管路k7とを接続する。
これにより、熱交換器2、嫌気性消化槽3、循環ポンプ5が接続される閉管路が形成される。
【0035】
非投入モードでは、嫌気性消化槽3で消化されつつある消化汚泥が、嫌気性消化槽3から、管路k4、循環ポンプ5、管路k5、三方弁6、管路k7、管路k2、熱交換器2、管路k3、嫌気性消化槽3を循環する。
消化汚泥は、熱交換器2を通ることで、嫌気性消化槽3での消化に適した温度に加温される。そのため、嫌気性消化槽3での消化汚泥の消化が促進される。
非投入モードでは、熱交換器2の伝熱面を消化汚泥が通ることで、伝熱面に油分が付着することを抑制できる。
【0036】
また、消化汚泥が管路k2、熱交換器2、管路k3、嫌気性消化槽3を循環するので、管路k2、熱交換器2、管路k3、嫌気性消化槽3の洗浄頻度、メンテナンス頻度を低減することができる。
【0037】
<嫌気性消化槽3に固形物の塊りが発生した場合>
次に、嫌気性消化槽3の内部でし渣等による固形物の塊りが発生した場合について、説明する。
【0038】
図4に、嫌気性消化システムSの嫌気性消化槽3の内部で消化液へのし渣の混入が多い場合の管路を示す。
嫌気性消化槽3の内部で消化液へのし渣の混入が多い場合には、三方弁6は管路k5と管路k6とを接続して、嫌気性消化槽3の消化汚泥を破砕機1に循環させる。
この場合、嫌気性消化槽3で消化されつつある消化汚泥が、嫌気性消化槽3から、管路k4、循環ポンプ5、管路k5、三方弁6、管路k6、管路k1を通り、破砕機1、熱交換器2、嫌気性消化槽3を循環する。
【0039】
消化汚泥が破砕機1を通ることで、し渣等が破砕機1で破砕される。そのため、嫌気性消化槽3の内部の固形物の塊りが無くなり、嫌気性消化槽3でのインペラー型機械撹拌装置4のインペラー4i1、4i2による撹拌が滞りなく円滑に行われる。
消化汚泥は、熱交換器2を通ることで、嫌気性消化槽3での消化に適した温度に加温される。そのため、嫌気性消化槽3での消化汚泥の消化が促進される。
また、熱交換器2の伝熱面を破砕された消化汚泥が通ることで、伝熱面に油分が付着することを抑制できる。さらに、熱交換器2の詰まりを抑制できる。
【0040】
以上説明した構成によれば、嫌気性消化槽3の撹拌状態を良好に保ち、嫌気性消化槽3内の温度むらを小さくして、良好な嫌気性消化を維持できる嫌気性消化システムSを得られる。
【0041】
<変形例>
図5に、変形例の嫌気性消化システムS1の構成の模式図を示す。
変形例の嫌気性消化システムS1は、図1に示す実施形態の嫌気性消化システムSにおける三方弁6を、管路k6の開閉を行う切換え弁7aと、管路k7の開閉を行う切換え弁7bとに置き換えたものである。
その他の構成は、実施形態の構成要素と同じであるから、同一の構成要素には同一の符号を付して示し、詳細な説明は省略する。
【0042】
変形例の嫌気性消化システムS1は、循環ポンプ5の下流に接続される管路k5が、管路k6と管路k7とに分岐されている。
管路k6には、開閉を行う切換え弁7aが設けられている。管路k7には、開閉を行う切換え弁7bが設けられている。
変形例の嫌気性消化システムS1において、投入汚泥が投入される場合(投入モード)では、切換え弁7aが開弁され管路k6が解放されるとともに、切換え弁7bが閉弁され管路k7が閉塞される。
【0043】
これにより、嫌気性消化槽3の消化汚泥は、嫌気性消化槽3の下流の循環ポンプ5に接続される管路k5、管路k6を通って、管路k1に流れ、投入汚泥と合流する。
上記変形例の構成によれば、実施形態の投入モードと同様な作用効果を奏する。
一方、変形例の嫌気性消化システムS1において、投入汚泥が投入されない場合(非投入モード)では、切換え弁7aが閉弁され管路k6が閉塞されるとともに、切換え弁7bが開弁され管路k7が解放される。
【0044】
これにより、嫌気性消化槽3の消化汚泥は、嫌気性消化槽3の下流の循環ポンプ5に接続される管路k5、管路k7を通って、管路k2に流れ、熱交換器2に送られ、加温される。
この構成によれば、実施形態の非投入モードと同様な作用効果を奏する。
また、嫌気性消化槽3に固形物の塊りが発生した場合には、切換え弁7aが開弁され管路k6が解放されるとともに、切換え弁7bが閉弁され管路k7が閉塞される。これにより、嫌気性消化槽3の消化汚泥が破砕機1に循環され、破砕機1で破砕される。
【0045】
<<その他の実施形態>>
1.前記実施形態、変形例では、三方弁6または切換え弁7a、7bを用いて、嫌気性消化槽3の消化汚泥を管路k1または管路k2に切り替えて流す例を説明したが、その他の機械要素を用いて切り替えてもよい。
【0046】
2.本発明は前記の実施形態、変形例に限られるものではなく、特許請求の範囲で様々な形態が含まれる。前記の実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0047】
1 破砕機
2 熱交換器
3 嫌気性消化槽
5 循環ポンプ(循環手段)
6 三方弁(循環手段、切り替え手段)
7a、7b 切換え弁(循環手段、切り替え手段)
104 最終沈殿池
k4、k5、k6、k7 管路(循環手段)
S、S1 嫌気性消化システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6