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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20240304BHJP
【FI】
H01L21/31 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020016091
(22)【出願日】2020-02-03
(65)【公開番号】P2021125497
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 聡
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-291007(JP,A)
【文献】特開平7-283164(JP,A)
【文献】特開2008-300445(JP,A)
【文献】特開2018-195689(JP,A)
【文献】特開2017-045982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバーに収容された前記基板に光を照射するランプと、
第1ガス供給源から前記チャンバーに可燃性ガスを供給する第1ガス供給管と、
前記第1ガス供給管に介挿され、前記可燃性ガスの供給流量を調整する電気式の流量調整部と、
前記第1ガス供給管のうち少なくとも前記流量調整部を含む部分を囲む第1の筐体と、
前記第1の筐体の周囲をさらに囲む第2の筐体と、
第2ガス供給源から前記第1の筐体の内部の第1空間に不燃性ガスを供給する第2ガス供給管と、
前記第1の筐体に設けられ、前記第1空間に滞留している気体を前記第1の筐体と前記第2の筐体との間に形成される第2空間に放出するガス排出口と、
を備えることを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の熱処理装置において、
前記第2空間に滞留している気体を排気する排気部をさらに備えることを特徴とする熱処理装置。
【請求項3】
請求項2記載の熱処理装置において、
前記第2の筐体に設けられ、前記第2空間に大気を取り入れる吸入口をさらに備えることを特徴とする熱処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の熱処理装置において、
前記第1空間の圧力と前記第2空間の圧力との差圧を測定する第1差圧計をさらに備えることを特徴とする熱処理装置。
【請求項5】
請求項4記載の熱処理装置において、
前記第2空間の圧力と大気圧との差圧を測定する第2差圧計をさらに備えることを特徴とする熱処理装置。
【請求項6】
請求項5記載の熱処理装置において、
前記第2空間の圧力が前記第1空間の圧力以上である、または、前記第2空間の圧力が大気圧以上であるときに、前記第1ガス供給源から前記チャンバーへの前記可燃性ガスの供給を停止する制御部をさらに備えることを特徴とする熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハー等の薄板状精密電子基板(以下、単に「基板」と称する)に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスを製造する装置として、半導体ウェハーに光を照射して当該半導体ウェハーを加熱する熱処理装置が広く使用されている。例えば、特許文献1には、高誘電率膜(high-k膜)を成膜した半導体ウェハーにフラッシュランプからフラッシュ光を照射し、半導体ウェハーの表面を瞬間的に加熱して高誘電率膜の成膜後熱処理を行う熱処理装置が開示されている。
【0003】
このような熱処理装置においては、例えば水素(H)やアンモニア(NH)等の可燃性ガスを使用した熱処理がしばしば行われる。特許文献1に開示の熱処理装置においても、アンモニア雰囲気中にて半導体ウェハーの加熱処理を行うことにより、高誘電率膜の窒化処理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-045982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
可燃性ガスを使用する場合、可燃性ガスによる火災や爆発を防止する対策が強く求められる。使用する可燃性ガスの流量や圧力の制御は電気式のシステムによって行われることが多く、その電気式のシステムが発火源となるおそれが高いため、典型的には本質安全防爆構造のバリアリレーを使用した対策が求められる。しかし、本質安全防爆構造のバリアリレーには、制御できる電流容量が少ないことに加えて、構造が大きく、さらにはコストも大きいという問題があり、使用できる範囲が限られていた。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で可燃性ガスの火災および爆発を防止することができる熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置において、基板を収容するチャンバーと、前記チャンバーに収容された前記基板に光を照射するランプと、第1ガス供給源から前記チャンバーに可燃性ガスを供給する第1ガス供給管と、前記第1ガス供給管に介挿され、前記可燃性ガスの供給流量を調整する電気式の流量調整部と、前記第1ガス供給管のうち少なくとも前記流量調整部を含む部分を囲む第1の筐体と、前記第1の筐体の周囲をさらに囲む第2の筐体と、第2ガス供給源から前記第1の筐体の内部の第1空間に不燃性ガスを供給する第2ガス供給管と、前記第1の筐体に設けられ、前記第1空間に滞留している気体を前記第1の筐体と前記第2の筐体との間に形成される第2空間に放出するガス排出口と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る熱処理装置において、前記第2空間に滞留している気体を排気する排気部をさらに備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明に係る熱処理装置において、前記第2の筐体に設けられ、前記第2空間に大気を取り入れる吸入口をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかの発明に係る熱処理装置において、前記第1空間の圧力と前記第2空間の圧力との差圧を測定する第1差圧計をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5の発明は、請求項4の発明に係る熱処理装置において、前記第2空間の圧力と大気圧との差圧を測定する第2差圧計をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6の発明は、請求項5の発明に係る熱処理装置において、前記第2空間の圧力が前記第1空間の圧力以上である、または、前記第2空間の圧力が大気圧以上であるときに、前記第1ガス供給源から前記チャンバーへの前記可燃性ガスの供給を停止する制御部をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1から請求項6の発明によれば、第1ガス供給管のうち少なくとも電気式の流量調整部を含む部分を第1の筐体で囲み、第1の筐体の内部の第1空間に不燃性ガスを供給するとともに、第1空間に滞留している気体を放出するため、第1空間における酸素濃度が低下し、簡易な構成で可燃性ガスの火災および爆発を防止することができる。また、不燃性ガスは第2の筐体の内側の第2空間に放出されるため安全である。
【0014】
特に、請求項6の発明によれば、第2空間の圧力が第1空間の圧力以上である、または、第2空間の圧力が大気圧以上であるときに、第1ガス供給源からチャンバーへの可燃性ガスの供給を停止するため、可燃性ガスの火災および爆発を未然に確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る熱処理装置の要部構成を示す図である。
図2】防爆機構の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る熱処理装置1の要部構成を示す図である。図1の熱処理装置1は、基板として円板形状の半導体ウェハーWに対してフラッシュ光照射を行うことによってその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである。なお、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0018】
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー10と、チャンバー10内の半導体ウェハーWにフラッシュ光を照射するフラッシュ照射部60と、半導体ウェハーWにハロゲン光を照射するハロゲン照射部70と、チャンバー10内に処理ガスを供給するガス供給部20と、チャンバー10から排気を行う排気部80と、を備えている。また、熱処理装置1は、これらの各部を制御してフラッシュ光照射を実行させる制御部90を備える。
【0019】
チャンバー10は処理対象となる半導体ウェハーWを収容し、チャンバー10内にて半導体ウェハーWの熱処理が行われる。チャンバー10の上部開口には上側チャンバー窓11が装着されて閉塞されるとともに、チャンバー10の下部開口には下側チャンバー窓12が装着されて閉塞されている。チャンバー10の側壁、上側チャンバー窓11および下側チャンバー窓12によって囲まれる空間が熱処理空間15として規定される。チャンバー10の天井部を構成する上側チャンバー窓11は、石英により形成された板状部材であり、フラッシュ照射部60から出射されたフラッシュ光を熱処理空間15に透過する石英窓として機能する。また、チャンバー10の床部を構成する下側チャンバー窓12も、石英により形成された板状部材であり、ハロゲン照射部70からの光を熱処理空間15に透過する石英窓として機能する。
【0020】
チャンバー10の側壁には、半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部14が設けられている。搬送開口部14は、図示を省略するゲートバルブによって開閉可能とされている。搬送開口部14が開放されると、図外の搬送ロボットによってチャンバー10に対する半導体ウェハーWの搬入および搬出が可能となる。また、搬送開口部14が閉鎖されると、熱処理空間15が外部との通気が遮断された密閉空間となる。
【0021】
チャンバー10の内部には、半導体ウェハーWを保持するサセプタ18が設けられている。サセプタ18は、石英により形成された円板形状部材である。サセプタ18の径は、半導体ウェハーWの径よりも少し大きい。サセプタ18によって半導体ウェハーWはチャンバー10内にて水平姿勢(主面の法線方向が鉛直方向と一致する姿勢)で保持される。
【0022】
フラッシュ照射部60は、チャンバー10の上方に設けられている。フラッシュ照射部60は、複数本のフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ62と、を備えて構成される。フラッシュ照射部60は、チャンバー10内にてサセプタ18に保持される半導体ウェハーWに石英の上側チャンバー窓11を介してフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射する。
【0023】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向がサセプタ18に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
【0024】
フラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された円筒形状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。なお、フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源のコイル定数によって調整することができる。
【0025】
リフレクタ62は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ62の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間15の側に反射するというものである。リフレクタ62はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
【0026】
ハロゲン照射部70は、チャンバー10の下方に設けられている。ハロゲン照射部70は、複数本のハロゲンランプHLを内蔵する。ハロゲン照射部70は、複数のハロゲンランプHLによってチャンバー10の下方から下側チャンバー窓12を介して熱処理空間15への光照射を行って半導体ウェハーWを加熱する。
【0027】
複数のハロゲンランプHLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向がサセプタ18に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、ハロゲンランプHLの配列によって形成される平面も水平面である。なお、複数のハロゲンランプHLを上下2段に格子状に配列するようにしても良い。
【0028】
各ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。
【0029】
排気部80は、排気装置81および排気バルブ82を備えており、排気バルブ82を開放することによってチャンバー10内の雰囲気を排気する。排気装置81としては、真空ポンプや熱処理装置1が設置される工場の排気ユーティリティを用いることができる。排気装置81として真空ポンプを採用し、ガス供給部20から何らのガス供給を行うことなく密閉空間である熱処理空間15の雰囲気を排気すると、チャンバー10内を真空雰囲気にまで減圧することができる。また、排気装置81として真空ポンプを用いていない場合であっても、ガス供給部20からガス供給を行うことなく排気を行うことにより、チャンバー10内を大気圧よりも低い気圧に減圧することができる。
【0030】
ガス供給部20は、可燃性ガス供給源(第1ガス供給源)21、不燃性ガス供給源(第2ガス供給源)22および防爆機構30を備える。図2は、防爆機構30の構成を示す図である。防爆機構30は、内側筐体(第1の筐体)41および外側筐体(第2の筐体)46を含む。
【0031】
可燃性ガス供給源21とチャンバー10とは可燃性ガス供給管(第1ガス供給管)31によって連通接続されている。すなわち、可燃性ガス供給管31の先端がチャンバー10に接続されるとともに、基端が可燃性ガス供給源21に接続されている。可燃性ガス供給源21から送り出された可燃性ガスは可燃性ガス供給管31によってチャンバー10に供給される。可燃性ガス供給源21から供給される可燃性ガスとしては、例えばアンモニア(NH)、水素(H)等が用いられる(本実施形態ではアンモニア)。
【0032】
可燃性ガス供給管31の経路途中には、チャンバー10から近い順に、電気式流量計33、エアバルブ34、電気式流量コントローラ35、電気式圧力センサー36、逆止弁37、手動バルブ38が介挿されている。電気式流量計33は、可燃性ガス供給管31を流れる可燃性ガスの流量を測定する。エアバルブ34は、制御部90の制御下にて可燃性ガス供給管31の流路を開閉する。電気式流量コントローラ35は、制御部90からの指示に従って可燃性ガス供給管31を流れる可燃性ガスの流量を制御する。すなわち、電気式流量コントローラ35は、可燃性ガスの供給流量を調整する流量調整部である。電気式圧力センサー36は、可燃性ガス供給管31内の圧力を測定する。逆止弁37は、可燃性ガス供給管31内における可燃性ガスの逆流を防止する弁である。手動バルブ38は、手動によって開閉される弁である。これら複数の要素が介挿される可燃性ガス供給管31の部位では継ぎ手によって各要素が組み込まれている。また、これらの要素うち、電気式流量計33、電気式流量コントローラ35および電気式圧力センサー36は電気によって作動する要素であり、回路の短絡等によって火花が発生することにより発火源となりうるものである。
【0033】
可燃性ガス供給管31のうち、少なくとも電気によって作動する電気式流量計33、電気式流量コントローラ35および電気式圧力センサー36を含む部分を囲むように内側筐体41が設けられている。図2に示すように、本実施形態では、電気式流量計33、電気式流量コントローラ35、電気式圧力センサー36およびエアバルブ34が内側筐体41内に配置される。なお、可燃性ガス供給管31は内側筐体41を貫通するように設けられることとなる。
【0034】
内側筐体41の周囲が外側筐体46によってさらに囲まれる。逆止弁37および手動バルブ38は、内側筐体41と外側筐体46との間に配置されることとなる。
【0035】
また、不燃性ガス供給源22と内側筐体41とが不燃性ガス供給管(第2ガス供給管)32によって連通接続されている。不燃性ガス供給管32の経路途中にはバルブ39が介挿されている。不燃性ガス供給管32におけるバルブ39の設置位置は適宜のものとすることができる。バルブ39は、制御部90の制御下にて不燃性ガス供給管32の流路を開閉する。バルブ39が開放されると、不燃性ガス供給源22から不燃性ガス供給管32を通って内側筐体41の内部の内側空間(第1空間)43に不燃性ガスが供給される。不燃性ガス供給源22から供給される不燃性ガスとしては、例えば窒素(N)、アルゴン(Ar)等が用いられる(本実施形態では窒素)。
【0036】
内側筐体41にはガス排出口44が設けられている。ガス排出口44は、内側筐体41と外側筐体46との間に形成される排気空間(第2空間)48と内側筐体41の内部の内側空間43とを連通する。不燃性ガス供給源22から内側空間43に不燃性ガスが供給されて内側空間43の圧力が高まると、ガス排出口44は内側空間43に滞留している気体を排気空間48に放出する。
【0037】
外側筐体46には排気口55が設けられている。排気口55は排気装置56と連通接続されている。また、排気口55には排気ダンパー57が設けられている。排気ダンパー57は、制御部90の制御によって適宜の開度に設定される。排気ダンパー57が適宜の開度に設定されつつ排気装置56が作動することによって、排気空間48の雰囲気が排気口55から排気される。排気口55からの排気流量は排気ダンパー57の開度によって調整される。すなわち、排気口55、排気装置56および排気ダンパー57によって、排気空間48に滞留している気体を排気する排気部が構成されることとなる。なお、排気装置56はチャンバー10の排気装置81と同じものであっても良い。
【0038】
外側筐体46には吸入口49が設けられている。吸入口49は、外側筐体46よりも外側の大気雰囲気から排気空間48に大気を取り入れるための開口である。
【0039】
また、防爆機構30には、微差圧計(第1差圧計)51および微差圧計(第2差圧計)52が設けられている。微差圧計51は、内側空間43の圧力と排気空間48の圧力との差圧を測定する。一方、微差圧計52は、排気空間48の圧力と大気圧との差圧を測定する。微差圧計51および微差圧計52による測定結果は制御部90に伝達される。
【0040】
制御部90は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部90のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部90は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用アプリケーションやデータなどを記憶しておく磁気ディスク等を備えて構成される。制御部90のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。
【0041】
次に、熱処理装置1における処理動作について説明する。まず、熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理について簡単に説明した後、可燃性ガスを供給するに際しての防爆について説明する。
【0042】
処理対象となる半導体ウェハーWは搬送開口部14からチャンバー10内に搬入されてサセプタ18に保持される。搬送開口部14が閉じられた後、ガス供給部20からチャンバー10内に可燃性ガスであるアンモニアが供給され、熱処理空間15にアンモニアを含む雰囲気が形成される。
【0043】
半導体ウェハーWがサセプタ18に保持され、熱処理空間15にアンモニアを含む雰囲気が形成された後、ハロゲン照射部70のハロゲンランプHLが点灯して半導体ウェハーWの予備加熱(アシスト加熱)が開始される。ハロゲンランプHLから出射された光は石英にて形成された下側チャンバー窓12およびサセプタ18を透過して半導体ウェハーWの下面に照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。半導体ウェハーWの温度が上昇して所定の予備加熱温度に到達した後、半導体ウェハーWの温度は数秒程度その予備加熱温度に維持される。
【0044】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度に到達して所定時間が経過した時点でフラッシュ照射部60のフラッシュランプFLがサセプタ18に保持された半導体ウェハーWの表面にフラッシュ光照射を行う。フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された強い閃光である。フラッシュ光の照射時間は0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度である。このような極めて照射時間が短く、かつ、強度の強いフラッシュ光が半導体ウェハーWに照射されることにより、半導体ウェハーWの表面温度は瞬間的に処理温度にまで上昇した後、急速に下降する。アンモニアを含む雰囲気中にて半導体ウェハーWの表面が処理温度にまで瞬間的に加熱されることにより、半導体ウェハーWの表面に成膜されていた膜(例えば、高誘電率膜)が窒化される。
【0045】
フラッシュ加熱処理が終了した後、所定時間経過後にハロゲンランプHLが消灯する。これにより、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度からも降温する。また、チャンバー10内のアンモニアを含む雰囲気は排気部80によってチャンバー10から排出される。半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、搬送開口部14から熱処理後の半導体ウェハーWが搬出されて加熱処理が完了する。
【0046】
ガス供給部20からチャンバー10内に可燃性ガスであるアンモニアが供給される際には、手動バルブ38が開放されるとともに、制御部90の制御下にてエアバルブ34が開放される。これにより、可燃性ガス供給源21から可燃性ガス供給管31を通ってチャンバー10にアンモニアが供給される。可燃性ガス供給管31を通ってチャンバー10に供給されるアンモニアの供給流量は電気式流量コントローラ35によって調整される。可燃性ガス供給管31を通過するアンモニアの流量は電気式流量計33によって測定され、可燃性ガス供給管31内の圧力は電気式圧力センサー36によって測定される。
【0047】
ところで、アンモニア等の可燃性ガスが火災または爆発に至るためには、以下の三要素、すなわち燃焼物である可燃性ガス自体の存在、発火源、および、支燃性ガスである酸素等の存在が必要とされている。電気式流量コントローラ35等が介挿されている部位には配管の継ぎ手も存在しており、その継ぎ手から可燃性ガスが漏出するおそれがある。また、電気によって作動する電気式流量コントローラ35等は発火源ともなりうる。よって、特に電気式流量計33、電気式流量コントローラ35および電気式圧力センサー36が酸素を含む大気雰囲気に曝されていると、火災または爆発に必要な三要素が揃うこととなり、火災または爆発が発生するおそれがある。
【0048】
このため、本実施形態においては、以下のようにして火災および爆発の発生を防止している。まず、可燃性ガス供給管31のうち発火源となりうる電気式流量計33、電気式流量コントローラ35および電気式圧力センサー36を含む部分は内側筐体41によって囲まれている。そして、内側筐体41の内部の内側空間43には不燃性ガス供給源22から不燃性ガス供給管32を経て不燃性ガスである窒素が供給される。内部空間43に不燃性ガスが供給されるのにともなって、内部空間43に滞留していた気体はガス排出口44から排気空間48に排出されることとなる。これにより、内部空間43の雰囲気は不燃性ガスに置換され、内部空間43における酸素濃度は低下することとなる。
【0049】
また、内側空間43の圧力と排気空間48の圧力との差圧が微差圧計51によって測定されている。内部空間43に不燃性ガスが供給されるとともに内部空間43内の気体がガス排出口44から排出されている状況において、内側空間43の圧力が排気空間48の圧力よりも高ければ、つまり内部空間43が排気空間48に対して陽圧であれば、内側空間43内の酸素濃度は3%以下にまで低下しているとみなすことができる。内側空間43内の酸素濃度が3%以下であれば、万一内側空間43内にて可燃性ガスの漏出が生じていたとしても、火災または爆発に必要な三要素のうちの支燃性ガスが欠けることとなるため、可燃性ガスの火災および爆発を防止することができる。
【0050】
内部空間43に供給された不燃性ガスである窒素はガス排出口44から排出されることとなる。ガス排出口44からそのまま大気雰囲気中に窒素が放出されると、熱処理装置1の作業者の作業空間に高濃度の窒素雰囲気エリア(つまり酸欠となるエリア)が形成されるため危険である。このため、本実施形態においては、内側筐体41の周囲を外側筐体46によってさらに囲み、内側筐体41と外側筐体46との間に排気空間48を形成している。ガス排出口44から排出された窒素は排気空間48に放出される。そして、排気空間48に流入した窒素は排気口55から排気装置56によって排出されることとなる。なお、排気空間48には発火源となりうる要素が存在しないため、排気空間48における火災または爆発の懸念は無い。
【0051】
また、排気空間48の圧力と大気圧との差圧が微差圧計52によって測定されている。大気圧が排気空間48の圧力よりも高ければ、つまり大気雰囲気が排気空間48に対して陽圧であれば、排気空間48内の窒素が吸入口49から大気雰囲気に逆流することは防がれる。その結果、熱処理装置1の作業者の作業空間に高濃度の窒素雰囲気エリアが形成されることはなく、安全が確保される。
【0052】
微差圧計51および微差圧計52による測定結果は制御部90によって監視されている。微差圧計51による測定の結果、排気空間48の圧力が内側空間43の圧力以上となっていることを検知した制御部90はエアバルブ34を閉止して可燃性ガス供給源21からチャンバー10への可燃性ガスの供給を停止する。排気空間48の圧力が内側空間43の圧力以上となっている場合には、内側空間43内の酸素濃度が爆発限界を超えて高くなっている可能性があり、可燃性ガスの火災または爆発の可能性を完全には否定できないからである。
【0053】
また、微差圧計52による測定の結果、排気空間48の圧力が大気圧以上となっていることを検知した制御部90はエアバルブ34を閉止して可燃性ガス供給源21からチャンバー10への可燃性ガスの供給を停止する。このときには制御部90はバルブ39も閉止して内側空間43への窒素の供給も停止する。排気空間48の圧力が大気圧以上となっている場合には、排気空間48内の窒素が吸入口49から大気雰囲気に逆流するおそれがあり、熱処理装置1の作業者の作業空間に高濃度の窒素雰囲気エリアが形成される懸念があるためである。
【0054】
本実施形態においては、可燃性ガス供給管31のうち発火源となりうる電気式流量計33、電気式流量コントローラ35および電気式圧力センサー36を含む部分を内側筐体41によって囲んでいる。そして、内側筐体41の内部の内側空間43には不燃性ガスである窒素を供給している。内部空間43に不燃性ガスが供給されるとともに、内部空間43に滞留していた気体がガス排出口44から排出されることにより、内部空間43における酸素濃度が爆発限界未満に低下する。その結果、可燃性ガス供給管31の継ぎ手等から可燃性ガスが漏出していたとしても、可燃性ガスの火災および爆発を防止することができる。すなわち、筐体に不燃性ガスを供給するという簡易な構成で可燃性ガスの火災および爆発を防止することができる。
【0055】
また、内側筐体41の周囲をさらに外側筐体46によって囲み、内部空間43から排気空間48に放出された不燃性ガスを排気口55から排出するようにしている。これにより、不燃性ガスが大気雰囲気に放出されることはなくなり、熱処理装置1の作業者の作業空間の安全を確保することができる。
【0056】
さらに、内側空間43の圧力と排気空間48の圧力との差圧を微差圧計51によって測定するとともに、排気空間48の圧力と大気圧との差圧を微差圧計52によって測定している。微差圧計51および微差圧計52による測定結果は制御部90によって監視され、排気空間48の圧力が内側空間43の圧力以上である、または、排気空間48の圧力が大気圧以上であるときには、可燃性ガス供給源21からチャンバー10への可燃性ガスの供給を停止している。これにより、可燃性ガスの火災および爆発を未然に確実に防止することができる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、電気式流量計33、電気式流量コントローラ35および電気式圧力センサー36が発火源となりうる要素であったが、これに限定されるものではなく、他の発火源となりうる要素が可燃性ガス供給管31に設けられていても良い。この場合、発火源となりうる全ての要素が内側筐体41によって囲まれる。
【0058】
また、上記実施形態においては、1秒以上連続して発光する連続点灯ランプとしてフィラメント方式のハロゲンランプHLを用いて半導体ウェハーWの予備加熱を行っていたが、これに限定されるものではなく、ハロゲンランプHLに代えて放電型のアークランプ(例えば、キセノンアークランプ)を連続点灯ランプとして用いて予備加熱を行うようにしても良い。
【0059】
また、熱処理装置1によって処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではなく、液晶表示装置などのフラットパネルディスプレイに用いるガラス基板や太陽電池用の基板であっても良い。
【0060】
また、上記実施形態においては、チャンバー10内にて半導体ウェハーWにフラッシュ光を照射して加熱処理を行っていたが、これに限定されるものではなく、チャンバー10内に収容した半導体ウェハーWにハロゲンランプHLのみから光を照射して加熱処理を行うようにしても良い。さらには、チャンバー10内にて半導体ウェハーWに行われる処理は光照射による熱処理に限定されるものではなく、可燃性ガスを用いた基板処理であれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る技術は、アンモニア等の可燃性ガスを用いて基板に所定の処理を行う基板処理技術に好適である。
【符号の説明】
【0062】
1 熱処理装置
10 チャンバー
20 ガス供給部
21 可燃性ガス供給源
22 不燃性ガス供給源
30 防爆構造
31 可燃性ガス供給管
32 不燃性ガス供給管
33 電気式流量計
35 電気式流量コントローラ
36 電気式圧力センサー
41 内側筐体
43 内側空間
46 外側筐体
48 排気空間
49 吸入口
51,52 微差圧計
55 排気口
56 排気装置
57 排気ダンパー
60 フラッシュ照射部
70 ハロゲン照射部
90 制御部
FL フラッシュランプ
HL ハロゲンランプ
図1
図2