(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】能動的安定化装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
B63B 39/06 20060101AFI20240304BHJP
【FI】
B63B39/06 C
B63B39/06 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020017966
(22)【出願日】2020-02-05
【審査請求日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10 2019 201 501.8
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517070958
【氏名又は名称】エス・ケイ・エフ マリーン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】SKF Marine GmbH
【住所又は居所原語表記】Hermann-Blohm-Str. 5, D-20457 Hamburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー・シュパルデル
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-516635(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106741704(CN,A)
【文献】特開2018-8627(JP,A)
【文献】特開2013-203205(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0247090(US,A1)
【文献】実開平3-81198(JP,U)
【文献】国際公開第2013/095097(WO,A1)
【文献】英国特許出願公開第2550123(GB,A)
【文献】特開昭61-94892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船殻(14)を含
む船(12)の横揺れ運動を主に減衰するための能動的安定化装置(10)であって、前記能動的安定化装置(10)が、少なくとも1つの位置決め装置(18)を含んでおり、前記位置決め装置(18)が、駆動ジャーナル(20)と、前記位置決め装置(18)の本体(22)の領域において前記駆動ジャーナル(20)に取り付けられている安定化面とを含んでおり、前記安定化面(16)が、前縁(40)と後縁(42)とを含んでおり、前記安定化面(16)が、水(26)下に配置されている、前記能動的安定化装置(10)において、
前記位置決め装置(18)によって設定される迎角(γ)を有している安定化面(16)が、前記位置決め装置(18)によって、第1の位置(80)と第2の位置(86)との間において旋回軸線(S)を中心として旋回可能とされ、且つ、前記位置決め装置(18)によって、回転軸線(D)を中心として回転可能とされ、
非共回転の流入本体(60)が、少なくとも非共回転の前記流入本体(60)が前記安定化面(16)の前記第1の位置(80)と前記第2の位置(86)との間に少なくとも部分的に配置されている流れ縁側において、前記駆動ジャーナル(20)の領域に配置されており、
接続領域(62)における前記流入本体(60)の断面形状が、前記船殻の近傍における前記安定化面(16)の断面形状に略一致する
ことを特徴とする能動的安定化装置(10)。
【請求項2】
前記安定化面(16)が、前記回転軸線(D)の中心として少なくとも半回転可能とされることを特徴とする請求項1に記載の能動的安定化装置(10)。
【請求項3】
前記前縁(40)の曲率半径(R1)が、流入ノーズ(44)を形成するように、前記後縁(42)の曲率半径(R2)より大きくなっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の能動的安定化装置(10)。
【請求項4】
前記流入本体(60)が、船殻長手方向軸線(32)に対して略平行に方向づけられていることを特徴とする請求項
1~3のいずれか一項に記載の能動的安定化装置(10)。
【請求項5】
前記船殻(14)が
、関連する前記安定化面(16)それぞれを完全に受容するための少なくとも1つの受容ポケットを含んでいることを特徴とする請求項1~
4のいずれか一項に記載の能動的安定化装置(10)。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の能動的安定化装置(10)を動作させるための方法であって、
水(26)の中を実質的に移動しない船殻(14)を含
む船(12)の横揺れ運動を主に減衰するための方法において、
前記方法が、
a)位置決め装置(18)によって迎角(γ)を調整するために、少なくとも1つの安定化面(16)を第1の位置(80)又は第2の位置(86)に到達するまで旋回軸線(S)を中心として周期的に旋回させるステップと、
b
)水(26)の下方に配置されている前記安定化面の前縁(40)が前記安定化面(16)の流れ旋回方向(82,90)それぞれに方向づけられた状態を常に維持するように、前記安定化面(16)の旋回方向(82,90)の反転を伴って、位置決め装置(16)によって安定化面(16)を回転軸線(D)を中心として揺らすステップと、
を備えていることを特徴とする方法。
【請求項7】
少なくとも1つの前記安定化面(16)が、前記位置決め装置(18)によって、第1の位置(80)と第2の位置(86)との間において旋回軸線(S)を中心として+60°から-60°の旋回角度(β)で旋回されることを特徴とする請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの前記安定化面(16)
の迎角(γ)が、前記位置決め装置(18)を利用することによって、+60°から-60°の範囲で変化されることを特徴とする請求項
6又は
7に記載の方法。
【請求項9】
前記能動的安定化装置(10)の動作停止状態における静止位置を設定するために、少なくとも1つの前記安定化面(16)が
、前記安定化面(16)が前記船殻(14)の受容ポケット(50)に完全に受容されるように、位置決め装置によって旋回されることを特徴とする請求項
6~
8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船殻を有する船舶、特に船の横揺れ運動を主に減衰させるための能動的安定化装置であって、能動的安定化装置が、少なくとも1つの位置決め装置を含んでおり、位置決め装置が、駆動ジャーナルと自身の本体の領域において駆動ジャーナルに取り付けられている安定化面とを含んでおり、能動的安定化装置が、前縁と後縁とを含んでおり、安定化面が、水の下方に配置されている、能動的安定化装置に関する。さらに、本発明は、船殻を有する船舶、特に実質的に水中を移動していない船の横揺れ運動を主に減衰させるための能動的安定化装置を動作させるための方法に関する。
【0002】
船舶、特に大型モータ駆動船の特に望ましくない横揺れ運動を減衰させるために、水面下の船舶の船殻に取り付けられているフィン安定装置を含む能動的安定化装置を利用することが知られている。
【0003】
船舶が十分な速度で水中を移動する場合には、適切なアクチュエータを使用して、フィン安定化装置が増大させた流体力学的力が当該船舶の横揺れ運動を減衰させるために横揺れ運動を相殺するように一定の作業位置に旋回される安定化フィンの適切なアクチュエータを利用することによって、迎角を変更すれば十分である。
【0004】
能動的に水中を移動していない船舶の場合には、フィン安定化装置の迎角を変更するだけでは不十分である。十分に大きい流体力学的力を発生させることができないからである。むしろ、このような状況では、運動を弱めるために必要とされる流体力学的力を大きくするために、旋回運動の端位置において船舶の船殻の望ましくない横揺れ迎角を僅かに変化させた状態でさらなるアクチュエータを十分な速度で利用することによって、例えばフィン安定化装置を水中で往復運動させることが必要とされる。さらなる可能性としては、例えば横揺れ運動に対して船殻を安定させるために必要とされる機械的力をこのようなパドル運動によって発生させるために、旋回角度を変化させることが挙げられる。
【0005】
旋回方向では、水が安定化フィンの流れプロファイルの前縁に抗して流れるが、逆向きの旋回方向では、水によって後縁が流入に対して露呈されていることは欠点である。結果として、安定化フィンが周期的に両方向に旋回するので、流れ抵抗が著しく増大し、能動的安定化装置全体のエネルギ効率が低減される。
【0006】
本発明の目的は、船舶、特に船の特に横揺れ運動を減衰するための安定化装置のエネルギ効率を高めることである。さらに、本発明は、このような安定化装置を動作させるための最適な方法を含んでいる。
【0007】
上述の目的は、請求項1に特徴づけられる特徴を含む安定化装置であって、位置決め装置によって特定可能な迎角を有している安定化面が、位置決め装置によって、第1の位置と第2の位置との間において旋回軸線を中心として旋回可能とされ、且つ、位置決め装置によって、回転軸線を中心として回転可能とされる、安定化装置によって最初に達成される。結果として、能動的安定化装置及び船舶が水中を移動しない状態において、能動的安定化装置は、安定化面の現在の移動方向とは無関係に常に水が前縁に抗して流れるように、回転軸線を中心として回転可能とされる。このようにして、船舶が水中を移動しない場合に周期的に往復回動する安定化面の流れ抵抗が低減されるので、その結果として能動的安定化装置の効率が著しく高くなる。ここで、安定化面の自由端は、例えば当該自由端側で略矩形状の若しくは8の字状の軌道、又は無限大記号のような軌道を追従する。
【0008】
安定化面は、位置決め装置を利用することによって、略半回転/実質的に半回転することができる。安定化面は、水中に位置する安定化面の前縁が好ましくは安定化面の流れ旋回方向それぞれに実質的に方向づけられた状態を常に維持するように、特に位置決め装置を利用することによって回転可能とされる。
【0009】
好ましくは、安定化面が、回転軸線の中心として少なくとも半回転可能とされる。
【0010】
その結果として、安定化面は、水が前縁に抗して流れるように回転され、能動的安定化装置の流れ抵抗及び関連するエネルギ需要が低減される。
【0011】
一の発展形態の場合には、前縁の曲率半径が、流入ノーズを形成するように、後縁の曲率半径より大きい寸法とされる。
【0012】
これにより、安定化面に最適な流体力学プロファイルを付与することができる。
【0013】
好ましくは、非共回転の流入本体が、少なくとも非共回転の流入本体が安定化面の第1の位置と第2の位置)との間に少なくとも部分的に配置されている流れ縁側において、駆動ジャーナルの領域に配置されている。流入本体がスポイラーとして機能するので、駆動ジャーナルの領域における流れパラメータが最適化される。駆動ジャーナルの領域における流体力学的特性が安定化面の流体力学的特性に一致するからである。
【0014】
技術的に有利な構成では、流入本体が、船殻長手方向軸線に対して略平行に方向づけられている。
【0015】
その結果として、安定化面が旋回する際の抵抗の増加を可能な限り最大限に回避することができる。さらに、動的な揚力の発生が流入本体によって相殺される。
【0016】
さらなる構成の場合には、接続領域における流入本体の断面形状が、船殻の近傍における安定化面の断面形状に略一致する。
【0017】
これにより、乱流及び渦が、流入本体と回転軸線を中心として好ましくは同時に回転可能とされる安定化面との間の接続領域において減少する。
【0018】
一の公的な発展形態では、船殻が、好ましくは関連する安定化面それぞれを完全に受容するための少なくとも1つの受容ポケットを含んでいる。結果として、能動的安定化装置が利用されていない場合には、理想的には、少なくとも1つの安定化面を関連する受容ポケットに完全に受容することによって、船殻の流れ抵抗を最小限に抑えることができる。
【0019】
さらに、上述の目的は、
a)位置決め装置によって迎角を調整するために、少なくとも1つの安定化面を第1の位置又は第2の位置に到達するまで旋回軸線を中心として周期的に旋回させるステップと、
b)好ましくは水の下方に配置されている安定化面の前縁が安定化面の流れ旋回方向それぞれに方向づけられた状態を常に維持するように、安定化面の旋回方向の反転を伴って、位置決め装置によって安定化面を回転軸線を中心として揺らすステップと、
を備えている方法によって達成される。
その結果として、水の中を移動しない船舶の場合には、能動的安定化装置の効率が大幅に向上する。前縁が常に旋回方向に方向づけられていることに起因して、安定化面の流れ抵抗が低減されるからである。
【0020】
当該方法の位置の発展的形態では、位置決め装置を利用することによって、少なくとも1つの安定化面が、第1の位置と第2の位置との間において、旋回軸線を中心として最大+60度の旋回角度で旋回される。
【0021】
安定化面の中央位置に対する旋回角度が+60°、-60°、+120°、又はー120°である場合には、安定化面は、船舶又は船の船殻から略直角に投影しているので、船舶の望ましくない横揺れ運動を最適に且つ確実に減衰させることができる。旋回軸線を中心とする安定化面の最大旋回角度は、船殻の受容ポケットの内側の安定化面の静止位置と安定化面の第1の最大旋回後方位置とに対して最大160°とされる。
【0022】
当該方法の一の優位な発展形態では、少なくとも1つの安定化面の迎角が、位置決め装置を利用することによって、+60°~-60°の範囲で変化する。
安定化面の迎角が+60°、-60°、+120°、又はー120°で変化するので、安定化効果の効率をさらに向上させることができる。
【0023】
当該方法の好ましいさらなる発展形態の場合には、能動的安定化装置の動作停止状態における静止位置を設定するために、少なくとも1つの安定化面が、好ましくは安定化面が船殻の受容ポケットに完全に受容されるように、位置決め装置によって旋回される。
【0024】
その結果として、安定装置による船舶又は船の船殻の流れ抵抗の増加を可能な限り最大限に回避することができる。安定化面の静止位置では、安定化面の回転軸線と船殻長手方向軸線とが成す角度は約0°である。すなわち、安定化面の回転軸線と船殻長手方向軸線とは互いに対して略平行に延在している。安定化面は、位置決め装置を利用することによって、受容ポケットの内側の安定化面の静止位置から第1の最大後方位置に到達するまで、最大約160°で旋回可能とされる。
【0025】
本発明の好ましい例示的な実施例について、概略図を参照しつつ、以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】3つの異なる位置それぞれにおける第1の旋回方向の能動的安定化装置の安定化面の概略的な斜視図である。
【
図2】3つの異なる位置それぞれにおける第1の旋回方向の能動的安定化装置の安定化面の概略的な斜視図である。
【
図3】3つの異なる位置それぞれにおける第1の旋回方向の能動的安定化装置の安定化面の概略的な斜視図である。
【
図4】3つの異なる位置それぞれにおける、
図1~
図3に表わす第1の旋回方向の逆向きである第2の旋回方向の、
図1に表わす能動的安定化装置の安定化面の概略的な斜視図である。
【
図5】3つの異なる位置それぞれにおける、
図1~
図3に表わす第1の旋回方向の逆向きである第2の旋回方向の、
図1に表わす能動的安定化装置の安定化面の概略的な斜視図である。
【
図6】3つの異なる位置それぞれにおける、
図1~
図3に表わす第1の旋回方向の逆向きである第2の旋回方向の、
図1に表わす能動的安定化装置の安定化面の概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1~
図3-発明の詳細な説明のさらなる過程において共に参照される-は、第1の旋回方向における3つの異なる位置それぞれでの能動的安定化装置の安定化面の概略図である。
【0028】
船舶又は船12は、従来技術に基づく船殻14を含んでいる。好ましくない横揺れ運動を顕著に弱めるために、能動的安定化装置10が、能動的安定化装置10の内部で一体化されている。本発明では、能動的安定化装置10は、例えば略矩形状のフィン等のような安定化面16を含んでいる。必要に応じて、安定化面16は、4つより多い多角形の周囲輪郭を呈している。安定化面16は、旋回軸線Sを中心として旋回可能とされ、駆動ジャーナル20を含む適切な好ましくは強力な液圧式位置決め装置18を利用することによって、回転軸線Dを中心として回転可能とされる。
安定化面16の根元領域22において、安定化面16は、好ましくは直線上に整列された態様で駆動ジャーナル20に接続されている。安定化面16を駆動ジャーナル20に対して例えば15°以上の角度で斜めに取り付けることができる。
【0029】
例示にすぎないが、当該実施例では、好ましくは矢印24の方向において船12は水26の中を移動する。能動的安定化装置10は、水26の中を進行する船12の速度vが実質的に零、又は最大4ノットの速度と同義である船12の通常の移動速度すなわち巡航速度に対して比較的低い場合に作動する。水26の中を進行する好ましい方向に従って、船12の船殻14は、優位には流体の流れの観点から形成されている船首28及び船尾30を含んでいる。
【0030】
船12の船殻14は、一般に船殻長手方向軸線32に関して鏡面対称とされるように構成されている。すなわち、本出願では概略的に示すのみの能動的安定化装置10に加えて、船12の船殻14は、好ましくは能動的安定化装置10に関して鏡面対称に形成されている図示しないさらなる右舷側能動的安定化装置を含んでいる。船12の通常運転状態において、能動的安定化装置10の少なくとも安定化面16は、常に水26の下方に配置されている。
【0031】
本発明では、例示にすぎないが、旋回軸線Sは、船殻14の直交座標系32の垂直軸線H(いわゆるヨー軸)と一致している。垂直軸線Hは、船殻14が横傾斜していない場合、すなわち船殻14が水26の水位に位置している場合に重力FGに対して略平行に方向づけられている。これとは異なり、安定化面16の旋回軸線Sは、直交座標系32の垂直軸線Hに対して最大45°の角度で傾斜している所定の角度で延在している場合がある。位置決め装置18によって、鑑定下面16は、旋回角度+βで旋回軸線Sを中心として旋回運動するが、必要に応じて、安定化面16の回転運動又は迎角γの変化が、回転軸線Dを中心として実施される。
【0032】
本発明では、回転軸線Dは、例えば安定化面16の前縁40及び後縁42に対して平行に延在している。これとは異なり、回転軸線Dを安定化面16の前縁40及び/又は後縁42に対して非平行とすることもできる。適切に流体的に最適化された形状を具備する流入ノーズ44を実現するために、前縁40の第1の曲率半径R1は、後縁42の曲率半径R2より著しく大きい寸法とされる。
【0033】
船殻14の受容ポケット50は、好ましくは能動的安定化装置10が動作していない場合に安定化面16の受容を完了させるように機能する。この場合には、安定化面16は、回転軸線Dが船殻長手方向軸線32に対して略平行に延在している、いわゆる静止位置に配置されている。
【0034】
回転軸線Dに関して共回転しない流れ縁側流入本体60すなわち充填本体は、駆動ジャーナル20の領域に配置されており、流入本体60すなわち充填本体は、船殻長手方向軸線32に対して略平行に方向づけられている。図面の見通しを良くするために図示しない流入本体60の断面形状は、迎角が少なくとも約0°の状態で、接続領域62において図示しない安定化面16の断面形状に対応している。
【0035】
安定化面16の中心プレート72は、前縁40及び後縁42によって形成されている。本発明では、例示的には、中心プレート72と水平線70との間の迎角が+γとされる。
【0036】
図1に表わすように、安定化面16は、第1の位置80に配置されている。すなわち、本発明では、安定化面16は、例えば可能な限り船殻14の船尾30に戻るように、旋回軸線Sを中心として旋回される。
安定化面16は、当該実施例では船首28に面している位置決め装置18によって、第1の位置80から始まって、安定化面16が
図2に表わす中央位置84に位置するとみなされ且つ船殻14から略直角に突出するまで、第1の旋回方向82において旋回される。当該実施例では、例えば安定化面16の迎角+γが一定を維持しているが、必要に応じて位置決め装置18を利用することによって変化することができる。正の迎角+γに起因して、重力F
Gの逆向きに方向づけられている流体力学的揚力F
H1は、旋回している安定化面16に作用する。流体力学的揚力に起因して、船12の船殻長手方向軸線32を中心とする(傾斜)モーメントが発生し、(傾斜)モーメントは、主に船殻長手方向軸線32を中心として発生する船12の横揺れ運動を最大限に補償するために、能動的安定化装置10によって利用される。
【0037】
当該目的を達成するために、能動的安定化装置10は、横揺れ運動、縦揺れ運動、及び船首揺れ運動を、水中26における速度及びさらなる船に関連するパラメータと同様にリアルタイムで検出するための複雑なセンサシステムを含んでいる。当該検出結果に基づいて、能動的安定化装置10の図示しない効率的なデジタル制御及び/又は調整装置は、特に船殻長手方向軸線32を中心とする船の望ましくない横揺れ運動が可能な限り効果的に低減されるように、位置決め装置16を制御する。ここで、流体力学的揚力FH1の大きさは、安定化面16の旋回速度又は安定化面16と水26との相対速度、及び迎角γによって変化する。
【0038】
図3は、旋回装置18によって安定化面16が旋回軸線Sを中心として船首28又は第1の旋回方向82に向かってさらに角度+βで旋回された後の、第2の位置86における安定化面16を表わす。
【0039】
本発明では、安定化面16の前縁40は、常に流れ旋回それぞれ及び入射角βから独立して、好ましくは常に実質的に流入水26に向かって配向されているので、位置決め装置10は特にエネルギ効率が良い。
図3に表わす第2の位置から開始して、第1の旋回方向82にさらに移動させることよって、安定化面16は安定化面16の静止位置に到達し、理想的な場合には、安定化面16は受容空間に完全に受容されるので、安定化面16が船殻14と最終的には同一平面上に配置される。従って、静止位置では、船殻14の流体力学的特性の有意な変化、特に関連する流れ抵抗の増加が存在しない。
【0040】
第2の位置86に達すると、位置決め装置18を利用することによって、第1の旋回方向82から第1の旋回方向82と逆向きに方向づけられている第2の旋回方向90に反転される。好ましくは同時に、安定化面16が、安定化面16が
図4~
図6に表わすさらなる位置に位置すると仮定されるように、回転軸線Dを中心として約半回転すなわち180°の回転角度で回転される。これとは異なり、安定化面16は、回転軸線Dを中心として、より大きい回転角度又はより小さい回転角度で回転しても良い。
【0041】
ここで、安定化面16の自由端面96は、例えば中心面72に対して平行に方向づけられているリブ構造体を備えているが、図面の明確性を確保するために図示しない。リブ構造体は、乱流及び渦を最小限度に抑えるための、特に低減するための複数の並列リ船首含んでいる。
【0042】
図4~
図6-発明の詳細な説明のさらなる過程において共に参照される-は、
図1~
図3に表わす第1の旋回方向の逆向きに方向づけられている第2の旋回方向における能動的安定化装置の安定化面の、3つの異なる位置における斜視図それぞれを表わす。
【0043】
今度は、船12の船殻14は、再び白抜き矢印24の方向において水の中を移動する。
図4では、能動的安定化装置10の安定化面16は、第2の位置86に依然として位置している。しかしながら、
図3に表わす位置とは対照的に、安定化面16は回転軸線Dを中心として約半回転すなわち180°で回転するので、その後に安定化面16がさらに旋回する際に、周囲の水26が前縁40に対して最適に流れる。これにより、能動的安定化装置10のエネルギ需要を大幅に低減させることができる。
【0044】
さらに、
図1~
図3とは対照的に、単なる例示であるが、安定化面16の水平線70と中央面72とが成す略一定の迎角-γが存在するので、それにより、重力F
Gの方向に方向づけられている流体力学的な押付力F
H2が安定化面16によって発生し、船殻長手方向軸線32を中心とする船12の船殻14の横揺れ運動を減衰させるように機能する。同様に、流体力学的な押付力F
H2の大きさは、安定化面16の旋回速度に依存するか、又は安定化面16の旋回速度の結果として生じる安定化面16と水26との相対速度に依存する。さらに、船12の船殻14の零ではない速度vは、特定の状況下においての押付力F
H2に影響を及ぼす。安定化面16の旋回運動の反転点において、すなわち好ましくは180°の回転角度αすなわち半回転の回転が付与される安定化面16の第1の位置及び第2の位置において、結果として押付力F
H2が小さくなる。
【0045】
図5は、安定化面16の中央位置84を表わす。
図5では、安定化面16は、船12の船殻14に対して略直角に方向づけられている。能動的安定化装置10の安定化面16は、安定化面16の位置決め装置18によって第2の旋回方向90に向かってさらに旋回されるので、最終的に
図6に表わす第1の位置80に再び到達する。
【0046】
発明の詳細な説明のさらなる過程において、本発明における方法について、再び
図1~
図6を参照しつつ簡単に説明する。
【0047】
第1の方法ステップa)では、船殻14が横傾斜していない状態で、位置決め装置18によって特定された迎角に設定されている少なくとも1つの安定化面16は、第1の位置80又は第2の位置86に至るまで、重力FGに対して略平行とされる旋回軸線Sを中心として又は重力の方向において+β又は-βの旋回角度で周期的に旋回される。ここで、中央位置84は周期的に横断される。旋回角度βは、安定化面16の中央位置84に対して+60°~-60°とされる。平面図で見ると、正の旋回角度+βは、旋回軸線Sを中心とする時計回りの旋回運動を定義しており、負の旋回角度-βは、旋回軸線Sを中心とする反時計回りの旋回運動を定義している。
【0048】
当該方法では、安定化面16の迎角γの角度は、2つの旋回方向82,90における旋回軸線Sを中心とする周期的な旋回運動の際に、水平線70に対して+60°~-60°の範囲で変化可能とされる。
【0049】
第2の方法ステップb)では、第1の旋回方向82から第2の旋回方向90に又はその逆に変化する際に、すなわち、旋回運動の反転点それぞれにおいて、又は安定化面16の第1の位置80若しくは第2の位置86に到達した場合に、安定化面16は、位置決め装置18によって、安定化装置16の回転軸線Dを中心として少なくとも約半回転すなわち180°の回転角度で回転される。
【0050】
その結果として、前縁40の流入ノーズ44は、常に周囲の水26の影響を受けるので、能動的安定化装置10のエネルギ効率が、能動的横揺れ減衰動作に関して著しく増加する。
【0051】
当該方法に係る
図1~
図6では、能動的横揺れ減衰動作において、安定化面16の、位置決め装置18の駆動ジャーナル20から離隔するように方向づけられている自由端側96は、例えば当該自由端側で略矩形状の若しくは8の字状の軌道、又は無限大記号のような軌道を追従するようになっている。
【符号の説明】
【0052】
10 能動的安定化装置
12 船
14 船殻
16 安定化面
18 位置決め装置
20 駆動ジャーナル
22 本体(安定化面)
24 白抜き矢印
26 水
28 船首
30 船尾
32 船殻長手方向軸線
40 流入側縁部
42 流出側縁部
44 流入ノーズ
50 受容ポケット
60 流入本体
62 接続領域
70 水平線
72 中央面(安定化面)
80 第1の位置(安定化面)
82 第1の旋回方向
84 中央位置(安定化面)
86 第2の位置(安定化面)
90 第2の旋回方向
96 自由端側(安定化面)
FH1 流体力学的な揚力
FH2 流体力学的な押付力
FG 重力
H 垂直軸線
D 回転軸線
S 旋回軸線
α 回転角度(安定化面)
β 旋回角度(安定化面)
γ 迎角(安定化面)
R1 第1の曲率半径
R2 第2の曲率半径
v 速度(船舶、船)