(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】放水試験測定システム
(51)【国際特許分類】
A62C 37/50 20060101AFI20240304BHJP
A62C 35/20 20060101ALI20240304BHJP
G08C 19/00 20060101ALI20240304BHJP
G08C 17/00 20060101ALI20240304BHJP
H02N 1/08 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
A62C37/50
A62C35/20
G08C19/00 G
G08C17/00 Z
H02N1/08
(21)【出願番号】P 2020036005
(22)【出願日】2020-03-03
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-355332(JP,A)
【文献】実開平04-060251(JP,U)
【文献】特開昭60-129060(JP,A)
【文献】特開平09-225060(JP,A)
【文献】特開2003-154886(JP,A)
【文献】特開2019-078310(JP,A)
【文献】特開2001-212256(JP,A)
【文献】特表2003-513237(JP,A)
【文献】実開平04-103165(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
G08C 19/00
G08C 17/00
H02N 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防護区域に設置された消火栓のノズルからの放水試験により放水圧力と放水量を測定する放水試験測定システムに於いて、
前記消火栓に収納されたホースの先端と前記ノズルと間に着脱自在に取り付けられ、前記消火栓の放水試験による放水圧力を測定し、前記放水圧力を含む測定信号を送信する放水試験測定装置と、
前記消火栓に設けられ、前記放水試験測定装置から送信された前記測定信号を受信し、当該測定信号から得られた前記放水圧力と
前記放水圧力に基づく前記放水量を表示
する放水試験受信装置と、
を備えたことを特徴とする放水試験測定システム
。
【請求項2】
請求項1記載の放水試験測定システムに於いて、
前記放水試験受信装置は、前記ホースが収納された筐体の内部に設けられたことを特徴とする放水試験測定システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の放水試験測定システムに於いて、
前記放水試験受信装置は、前記放水圧力と前記放水量を記憶することを特徴とする放水試験測定システム。
【請求項4】
請求項1
乃至3の何れかに記載の放水試験測定システムに於いて、
前記放水試験測定装置は、前記消火栓に収納された前記ホースの先端と前記ノズルと間に着脱自在に取り付けられる装置本体に、
前記ノズルの放水圧力を測定する測定制御部と、
前記測定制御部で測定された放水圧力を含む測定信号を前記放水試験受信装置へ送信する通信部と、
前記ノズルから放水した場合に加わる振動により発電して発電電力を前記測定制御部及び前記通信部に供給して動作させる振動発電装置と、
が設けられたことを特徴とする放水試験測定システム。
【請求項5】
請求項
4記載の放水試験測定システムに於いて、
前記測定制御部は、圧力センサにより前記装置本体を流れる水流の圧力を検出すると共に前記圧力センサにより検出された圧力を所定の圧力損失により補正して前記ノズルのノズル先端の放水圧力を求めることを特徴とする放水試験測定システム。
【請求項6】
請求項1
乃至3の何れかに記載の放水試験
測定システムに於いて、
前記放水試験測定装置は、測定された前記放水圧力に基づいて前
記放水量を算出し
、前記放水圧力及び前記放水量を含む測定信号を生成して前記放水試験受信装置へ送信することを特徴とする放水試験
測定システム。
【請求項7】
請求項1
乃至3の何れかに記載の放水試験
測定システムに於いて、
前記
放水試験受信装置は、受信
した前記測定信号から得られた前記放水圧力に基づいて前
記放水量を算出して表示
することを特徴とする放水試験
測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防護区域に設置された消火栓のノズルからの放水試験により放水圧力と放水量を測定する放水試験測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
屋内消火栓設備は、人が操作することによって火災を消火する設備であり、水源、加圧送水装置(消火ポンプ)、起動装置、屋内消火栓(開閉弁、ホース、ノズル等)、配管・弁類及び非常電源等から構成されている。
【0003】
また、屋内消火栓の種類には、放水圧力、放水量及び操作性によって、1号消火栓、易操作性1号消火栓及び2号消火栓に区分され、設置する防火対象物及び水平距離が定められている。
【0004】
このような屋内消火栓設備にあっては、設備の設置時及び定期点検の際に、総合試験として知られた放水試験を行わなければならない。
【0005】
この放水試験は、放水圧力が最も低くなると予想される箇所で、規定個数の屋内消火栓を同時に使用した場合及び放水圧力が最も高くなると予想される箇所の屋内消火栓1個を使用した場合のそれぞれのノズルの先端における放水圧力と放水量を測定し、所定の判定基準と比較することで、合否を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-036073号公報
【文献】特開2016-027841号公報
【文献】特開2014-023302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の屋内消火栓設備の放水試験にあっては、ノズルからの放水を、圧力計を備えた試験装置の受け穴に直接当てて人為的に放水圧力を読み取って確認し、また、測定された放水圧力から所定の算出式に基づき放水量を手計算して確認しており、放水試験に手間と時間がかかり、また人為的な測定となることから、担当者によって測定結果にばらつきがあり、測定精度が低くなる恐れもある。
【0008】
このような問題を解決するためには、屋内消火栓のホースとノズルの間に、圧力センサ等を用いて放水圧力を電気的に検出して他のユニットに送信して放水圧力を表示させるような放水圧力測定装置を用いることが考えられる。
【0009】
しかしながら、このような放水圧力測定装置は、電池電源により動作させる必要があることから、常に、電池電源の消耗状態を管理していなければならず、その管理を怠ると、定期点検等で使用する場合に電池切れにより使えず、役に立たなくなる問題がある。
【0010】
本発明は、消火栓のノズルからの放水試験による放水圧力と放水量をノズル側で測定して試験結果を簡単且つ容易に確認可能とする放水試験測定システムを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、電池電源を必要とすることなく、放水試験による放水を利用した発電電力の供給により動作して、放水圧力と放水量を測定して試験結果を簡単且つ容易に確認可能とする放水試験測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(放水試験測定システム)
本発明は、防護区域に設置された消火栓のノズルからの放水試験により放水圧力と放水量を測定する放水試験測定システムに於いて、
消火栓に収納されたホースの先端とノズルと間に着脱自在に取り付けられ、消火栓の放水試験による放水圧力を測定し、放水圧力を含む測定信号を送信する放水試験測定装置と、
消火栓に設けられ、放水試験測定装置から送信された測定信号を受信し、当該測定信号から得られた放水圧力と放水圧力に基づく放水量を表示する放水試験受信装置と、
を備えたことを特徴とする。
また、放水試験受信装置は、ホースが収納された筐体の内部に設けられる。
また、放水試験受信装置は、放水圧力と放水量を記憶する。
【0013】
(振動発電装置を備えた放水試験測定装置)
放水試験測定装置は、消火栓に収納されたホースの先端とノズルと間に着脱自在に取り付けられる装置本体に、
ノズルの放水圧力を測定する測定制御部と、
測定制御部で測定された放水圧力を含む測定信号を放水試験受信装置へ送信する通信部と、
ノズルから放水した場合に加わる振動により発電して発電電力を測定制御部及び通信部に供給して動作させる振動発電装置と、
が設けられる。
【0014】
(ノズル先端の放水圧力への補正)
測定制御部は、圧力センサにより装置本体を流れる水流の圧力を検出すると共に圧力センサにより検出された圧力を所定の圧力損失により補正してノズルのノズル先端の放水圧力を求める。
【0015】
(放水試験測定装置による放水量の算出)
放水試験測定装置は、測定された放水圧力に基づいて放水量を算出し、放水圧力及び放水量を含む測定信号を生成して放水試験受信装置へ送信する。
【0016】
(放水試験受信装置による放水量の算出)
放水試験受信装置は、受信した測定信号から得られた放水圧力に基づいて放水量を算出して表示する。
【発明の効果】
【0020】
(基本的な効果)
本発明は、防護区域に設置された消火栓のノズルからの放水試験により放水圧力と放水量を測定する放水試験測定システムに於いて、消火栓に収納されたホースの先端とノズルと間に着脱自在に取り付けられ、消火栓の放水試験による放水圧力を測定し、放水圧力を含む測定信号を送信する放水試験測定装置と、消火栓に設けられ、放水試験測定装置から送信された測定信号を受信し、当該測定信号から得られた放水圧力と放水圧力に基づく放水量を表示する放水試験受信装置と、を備えたため、例えば屋内消火栓の放水試験を行う場合には、屋内消火栓からノズル付きホースを引き出し、ノズルを外してホースとノズルの間に放水試験測定装置を取り付けて放水試験を行うと、放水圧力が自動的に測定され、屋内消火栓に設置している放水試験受信装置に測定結果が送信されて放水圧力と放出量が表示され、従来のように圧力計を備えた試験装置にノズルからの放水を当てて放水圧力を測定するような人為的な操作が不要となり、放水試験による放水圧力と放水量の測定を簡単且つ効率良く行うことが可能となる。
【0021】
(振動発電装置を備えた放水試験測定装置による効果)
また、放水試験測定装置は、消火栓に収納されたホースの先端とノズルと間に着脱自在に取り付けられる装置本体に、ノズルの放水圧力を測定する測定制御部と、測定制御部で測定された放水圧力を含む測定信号を放水試験受信装置へ送信する通信部と、ノズルから放水した場合に加わる振動により発電して発電電力を測定制御部及び通信部に供給して動作させる振動発電装置とが設けられため、ノズルから放水した場合には、ノズル側に10~200Hzの振動が加わることが確認されており、装置本体に振動発電装置を設けることで、放水による振動により発電して発電電力により測定制御部及び通信部を動作させる電池レスの装置を実現することができ、電池電源を使用した場合の維持管理が不要となり、放水試験を行うことで確実動作して放水圧力と放水量を自動的に測定して確認可能とする。
【0022】
(ノズル先端の放水圧力への補正による効果)
また、測定制御部は、圧力センサにより装置本体を流れる水流の圧力を検出すると共に圧力センサにより検出された圧力を所定の圧力損失により補正してノズルのノズル先端の放水圧力を求めるようにしたため、放水試験による放水圧力は、ノズル先端の圧力を測定する必要があり、放水試験測定装置はホースとノズルの間に取り付けていることから、ノズル後端の高めとなる放水圧力を測定しており、そこで、放水試験測定装置からノズル先端までの圧力損失を予め測定して補正値として設定しておき、測定された放水圧力から設定された圧力損失を補正値として差し引くことで、ノズル先端の放水圧力を正確に測定することができる。
【0023】
(放水試験測定装置による放水量算出の効果)
また、放水試験測定装置は、測定された放水圧力に基づいて放水量を算出し、放水圧力及び放水量を含む測定信号を生成して放水試験受信装置へ送信するようにしたため、従来は放水圧力を測定し、所定の計算式から放水量を手計算していたが、放水試験測定装置は測定された放水圧力に基づき自動的に放水量を計算して放水試験受信装置に送信して表示させることで、人為的に計算する手間を必要とすることなく、簡単且つ正確に、放水圧力に加えて放水量を確認することができ、放水試験結果の合否を正確に判定可能とする。
【0024】
(放水試験受信装置による放水量算出の効果)
また、放水試験受信装置は、受信した測定信号から得られた放水圧力に基づいて放水量を算出して表示するようにしていたため、人為的に計算する手間を必要とすることなく、簡単且つ正確に、放水圧力に加えて放水量を求めて確認でき、これに加えて、ノズル側に取り付けた放水試験測定装置で放水量を算出する必要がないため消費電力が低減され、振動発電装置による発電電力が小さくても、測定された放水圧力含む測定信号を放水試験測定装置から放水試験受信装置に確実に送信して表示させることができる。
【0025】
(放水試験測定装置による効果)
本発明の別の形態にあっては、消火栓のノズルからの放水試験による放水圧力と放水量を測定する放水試験測定装置に於いて、消火栓に収納されたホースの先端とノズルと間に着脱自在に取り付けられる装置本体に、ノズルの放水圧力を測定する測定制御部と、測定制御部で測定された放水圧力を含む測定信号を外部に送信する通信部と、ノズルから放水した場合に加わる振動により発電して発電電力を測定制御部及び通信部に供給して動作させる振動発電装置が設けられたため、前述した放水試験測定システムに設けられた放水試験測定装置の場合と同様に、屋内消火栓のノズルからの放水試験による放水圧力と放水量をノズル側で測定して試験結果を簡単且つ容易に確認可能とし、更に、放水による振動により発電した発電電力により測定制御部及び通信部を動作させる電池レスの装置を実現することができ、電池電源を使用した場合の維持管理が不要となり、放水試験を行うことで確実動作して放水圧力と放水量を自動的に測定して確認可能とする。
【0026】
なお、放水試験測定装置におけるノズル先端の放水圧力への補正及び放水量の算出による効果は、前述した放水試験測定システムに設けられた放水試験測定装置の場合と同様になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の放水
試験測定システムが設けられた屋内消火栓設備を示した説明図
【
図3】放水試験測定装置の実施形態を外観および内部構造により示した説明図
【
図4】屋内消火栓のホースとノズルの間に対する放水試験測定装置の取付けを示した説 明図
【
図5】放水試験測定装置と放水試験受信装置の機能構成の実施形態を示したブロック図
【発明を実施するための形態】
【0028】
[放水試験測定システムの実施形態]
以下に、本発明に係る放水試験測定システム及び放水試験測定装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0029】
[実施の形態の基本的概念]
まず、実施の形態の基本的な概念について説明する。実施の形態は、概略的に、放水試験測定システムに関するものである。「放水試験測定システム」とは、防護区域に設置された消火栓のノズルからの放水試験により放水圧力と放水量を測定し、基準と比較して合否を判定するシステムである。
【0030】
ここで、「防護区域」とは、消火栓が設置されており、火災発生時に消火用水を放水して防護の対象とする区画であり、一定の広がりをもった屋外或いは屋内の空間区画であり、例えば、建物の部屋、廊下、階段等の区画を含む概念である。
【0031】
また、「消火栓」とは防護区域の例えば廊下等に設置され、先端にノズルを装着したホースを収納しており、火災発生時に消火栓扉を開いてノズル付きのホースを引出し、開閉弁を開いて消火用水を放水するものである。
【0032】
実施の形態による放水試験測定システムは、放水試験測定装置と放水試験受信装置を含むものである。
【0033】
ここで、「放水試験測定装置」とは、放水試験時に、消火栓に収納されたホースの先端とノズルと間に着脱自在に取り付けられ、消火栓の放水試験による放水圧力を測定し、放水圧力を含む測定信号を送信する装置である。
【0034】
また、放水試験測定装置は、装置本体、測定制御部、通信部及び振動発電装置を含むものである。ここで「装置本体」とは、消火栓に収納されたホースの先端とノズルと間に着脱自在に取り付けられる部材である。「測定制御部」とは、ノズルの放水圧力を測定する手段であり、圧力を電気信号に変換する圧力センサを含む概念である。「通信部」とは、測定制御部で測定された放水圧力を含む測定信号を放水試験受信装置へ送信する手段であり、無線通信、有線通信等の適宜の通信を含む概念である。「振動発電装置」とは、ノズルから放水した場合に装置本体に加わる振動により発電して発電電力を測定制御部及び通信部に供給して動作させる手段であり、ノズルから放水時に装置本体に加わる振動エネルギーを電気エネルギーに変換する概念を含む。また測定制御部は、圧力センサにより装置本体を流れる水流の圧力を検出すると共に圧力センサにより検出された圧力を所定の圧力損失により補正してノズルのノズル先端の放水圧力を求める手段である。
【0035】
また「放水試験受信装置」とは、放水試験測定装置から送信された測定信号を受信し、当該測定信号から得られた放水圧力と放水量を表示させる装置であり、消火栓に固定設置された装置、試験員が携帯する装置を含む概念である。
【0036】
また「放水試験による放水量」は、放水試験による放水圧力から算出されるものであるが、この放水量の算出は、放水試験測定装置或いは放水試験受信装置の何れか一方で行うものである。
【0037】
[実施の形態の具体的内容]
本実施の形態による放水試験測定システムの具体的内容について詳細に説明する。
【0038】
[消火栓設備の概要]
図1は本発明の放水
試験測定システムが設けられた例えば屋内消火栓設備を示した説明図である。
【0039】
図1に示すように、建物の地下階などのポンプ室には消火ポンプ20が設置され、モータ22により駆動される。ポンプ制御盤24はモータ22を起動、停止させる運転制御を行う。消火ポンプ20は呼水層28により充水されており、モータ22により駆動された消火ポンプ20は水源水槽26から消火用水を吸入し、建物の高さ方向に配置した給水本管30に加圧した消火用水を供給する。
【0040】
給水本管30からは建物の例えば階別の地区毎(防護区域毎)に分岐管32が引き出されている。分岐管32には屋内消火栓10が接続されている。屋内消火栓10にはノズル付きホースが収納されており、火災の際には、消火栓扉を開いてノズル付きホースを引き出し、開閉弁を開くことで放水することができる。
【0041】
また、屋内消火栓10には通報装置扉が設けられ、通報装置扉には赤色表示灯、発信機及び地区音響装置が設けられている。
【0042】
屋内消火栓10に対しては防災センター等に防災盤34が設置されており、防災盤34から引き出された信号回線に屋内消火栓10に設けられた発信機や赤色表示灯が接続されている。
【0043】
防災盤34は、屋内消火栓10に設けられた発信機の操作による火災通報信号(発信信号)を受信した場合に、火災通報を報知すると共に、ポンプ制御盤24にポンプ起動信号を送信して消火ポンプ20を起動させる。消火ポンプ20の起動は、ポンプ制御盤24に設けられたポンプ起動スイッチの操作によっても行うことができる。消火ポンプ20の停止はポンプ制御盤24に設けられたポンプ停止スイッチの操作で行われる。
【0044】
このような屋内消火栓設備に対し、本実施形態の放水試験測定システムにあっては、例えば1Fの右端の屋内消火栓10について示すように、屋内消火栓10の消火栓扉11を開き、筐体内に収納されているノズル14付きのホース12を引き出し、ノズル14を外して、ホース12の先端とノズル14との間に放水試験測定装置16を取付け、この状態で消火ポンプ20を起動して消火用水を加圧供給させた状態で、屋内消火栓10に設けられた開閉弁を開いてノズル14から試験放水させる。
【0045】
ノズル14からの試験放水が行われると、放水試験測定装置16が放水圧力と放水量を測定し、この測定結果を含む測定信号を一例として無線送信する。放水試験を行う屋内消火栓10には放水試験受信装置18が設けられており、放水試験測定装置16から送信された測定信号を受信し、受信した測定信号に含まれている放水圧力と放水量を表示部に表示すると共に記憶部に記憶する。
【0046】
試験員は放水試験受信装置18に表示された放水圧力と放水量を確認し、所定の基準と比較して合否を判定することになる。また、放水試験受信装置18は、必要に応じて防災盤34へ測定信号を送信し、防災盤34側でも放水試験により測定された放水圧力と放水量の表示や記憶を可能としている。
【0047】
なお、放水試験受信装置18は屋内消火栓10に設けず、試験員が携帯可能な装置として放水圧力と放水量の確認に使用するようにしても良い。
【0048】
[屋内消火栓の概要]
図2は屋内消火栓を取り出して示した説明図である。
図2に示すように、屋内消火栓10は前方に開口した箱形の筐体10a内に、先端にノズル14が装着されたホース12が内巻き状態で収納されている。消火作業を行う場合には、消火栓扉11を図示のように開き、ノズル14を取り出してホース12を引き出し、開閉弁15を開いてノズル14から放水させる。なお、本実施形態の屋内消火栓10はホース12として保形ホースを使用している。
【0049】
屋内消火栓10の筐体10aの上側には通報装置パネル36が設けられている。通報装置パネル36には、発信機38、赤色表示灯40、及び内側にスピーカが配置された音響穴42が設けられている。赤色表示灯40は常時点灯し、屋内消火栓10の設置場所が遠方から分かるようにしている。火災時には、発信機38を押して押し釦スイッチをオンすると、火災通報信号が
図1に示した監視センターの防災盤34に送信されて火災通報が報知され、防災盤34からの応答信号により赤色表示灯40が点滅され、更に、防災盤34からの制御信号により地区音響警報が出力される。
【0050】
本実施形態の屋内消火栓10の筐体10a内には、放水試験受信装置18が配置されており、
図1に示したように、放水試験測定装置16を使用して放水試験を行った場合に送信された測定信号を受信し、表示部に測定された放水圧力と放水量を表示させるようにしている。また、放水試験受信装置18は
図1に示した防災盤34に伝送路を介して接続されており、受信した測定信号を、伝送路を介して防災盤34に送信して放水圧力と放水量の表示や記憶を可能としている。なお前述したように、放水試験受信装置18は屋内消火栓10に設けず、試験員が携帯可能な装置として放水圧力と放水量の確認に使用するようにしても良い。
【0051】
[放水試験測定装置]
図3は放水試験測定装置の実施形態を外観および内部構造により示した説明図であり、
図3(A)に外観を示し、
図3(B)に内部構造を示している。また、
図4は屋内消火栓のホースとノズルの間に対する放水試験測定装置の取付けを示した説明図である。
【0052】
図3に示すように、放水試験測定装置16は、円筒配管を用いた装置本体44の一端にホース側を連結するための雌ジョイント46が設けられると共に装置本体44の他端にノズルを連結するための雄ジョイント48が設けられている。
【0053】
放水試験測定装置16は、屋内消火栓の放水試験を行う場合には、
図4に示すように、屋内消火栓から引き出してノズル14を取り外したホース12の先端の雄ジョイント12aを放水試験
測定装置16の雌ジョイント46に嵌め入れて連結し、また、放水試験
測定装置16の雄ジョイント48をノズル14の雌ジョイント14aに嵌め入れて連結することで、放水試験測定装置16を、放水試験を行うホース12とノズル14の間に取り付ける。
【0054】
図3に示すように、装置本体44の外側には装置カバー50が設けられ、装置カバー50の内部に、振動発電装置
60、圧力センサ64及び回路ユニット54が収納されている。回路ユニット54には、放水ノズルの放水圧力と放水量を測定する測定制御部と、測定された放水圧力と放水量を含む測定信号を放水試験受信装置へ送信する通信部の機能が設けられる。
【0055】
振動発電装置60は、ノズル14から放水した場合に加わる振動エネルギーを電気エネルギーに変換することで発電し、発電電力を回路ユニット54に供給して動作させる。振動発電装置60は、エレクトレット電極基板にメタル電極基板が相対移動可能に対向配置された構造であり、静止状態ではエレクトレット電極基板とメタル電極基板の間に静電誘導により電気が蓄えられた状態となり、振動により片側の電極基板が移動することで電気を取り出すことができる。ここで、エレクトレットとは、半永久的な電荷をもつ絶縁体を意味する。
【0056】
図4に示すように、ホース12とノズル14の間に放水試験測定装置16を取り付けてノズル14から放水させた場合、約10~200Hzの低周波の振動が加わることが確認されており、このノズル14からの放水により発生する低周波の振動が振動発電装置
60に加わることで、振動に略比例した交流電圧が発生し、約10マイクロワット程度の発電電力を得ることができ、発電された交流電力を整流平滑して回路ユニット54に直流電力を供給して動作させることができる。
【0057】
圧力センサ64は装置本体44の内部流路52に連通した通し穴56から流水の圧力を導入し、圧力を電気信号に変換して回路ユニット54に出力している。
【0058】
[放水試験測定装置と放水試験受信装置の機能構成]
図5は放水試験測定装置と放水試験受信装置の機能構成の実施形態を示したブロック図である。
【0059】
(放水試験測定装置の機能構成)
図5に示すように、放水試験測定装置16は、振動発電装置60、測定制御部62、圧力センサ64及びアンテナ68が接続された通信部66で構成される。
【0060】
振動発電装置60は、前述したように、ノズル14からの放水により発生する低周波の振動を交流電力に変換し、交流電力を整流平滑して測定制御部62及び通信部66に直流電力を供給して動作させる。
【0061】
測定制御部62は、例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、AD変換ポートを含む各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用し、圧力センサ64の検出信号から放水圧力を測定し、また測定した放水圧力から所定の計算式に基づいて放水量を算出し、測定された放水圧力と放水量を含む測定信号を生成し、通信部66に指示して放水試験受信装置18に送信する制御を行う。
【0062】
通信部66は、例えば400MHz帯の特定小電力無線局の標準規格に従った無線通信を行っており、426.2500MHz~426.8375MHzの12.5KHzの帯域を持つ48チャンネルの何れかを使用する。なお、400MHz帯の特定小電力無線局に限定されず、他の周波数帯の特定小電力無線局による通信としても良い。
【0063】
(ノズル先端の放水圧力への補正)
測定制御部62により測定する放水圧力は、
図4に示したノズル14の先端の放水圧力であるが、
図3に示したように、圧力センサ64は装置本体44を流れる水流の圧力Psを検出しており、これはノズル入口の圧力であり、厳密にはノズル先端の放水圧力Pとはいえない。
【0064】
このため測定制御部62には、
図4に示すように、ホース12とノズル14の間に放水試験測定装置16を取り付けて放水した場合に、
図3(B)に示した装置本体44の圧力センサ64に
流水圧力Psを導入する通し穴56の位置からノズル14の先端までの間に発生する圧力損失ΔPを予め求めてメモリに記憶しており、この圧力損失ΔPにより補正されたノズル先端の放水圧力Pを、
P=Ps-ΔP (1)
として求め、正しいノズル先端の圧力に補正された放水圧力を測定値としている。
【0065】
なお、圧力損失ΔPが所定の測定誤差の範囲に収まる程度に小さい場合は、式(1)による補正は必要ない。
【0066】
また、測定制御部62は、圧力センサ64の放水圧力Pの検出は、所定時間にわたる検出値の移動平均を求めることで、ノイズ等による変動を抑制している。
【0067】
(放水量の算出)
また、測定制御部62は、式(1)により求められた放水圧力Pに基づいてノズルの放水量Qを、
Q=KD2√(10P) (2)
D:ノズル口径
K:屋内消火栓の型式により指定された定数(1号消火栓K=0.653)
により算出する。
【0068】
このような測定制御部62による放水圧力Pと放水量Qの測定は、所定の測定周期で実行されて最新の値に更新され、測定周期毎に測定された放水圧力と放水量を含む測定信号が通信部66から放水試験受信装置18に送信され、放水圧力と放水量の表示が更新される。
【0069】
(放水試験受信装置の機能構成)
図5に示すように、放水試験受信装置18は、受信制御部70、アンテナ74が接続された通信部72、タッチパネル等の操作機能を備えたディスプレイ等を用いた表示部76、記憶部78及び伝送部80で構成される。
【0070】
受信制御部70は、例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、AD変換ポートを含む各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用し、通信部72を介して受信された放水試験測定装置16からの測定信号に含まれる放水圧力と放水量を取り出し、表示部76に表示させると共に記憶部78に記憶させ、更に、伝送部80に指示して
図1に示した防災盤34に伝送する制御を行う。
【0071】
通信部72は、放水試験測定装置16の通信部66と同様であり、例えば400MHz帯の特定小電力無線局の標準規格に従った無線通信を行う。
【0072】
なお、本実施形態は、放水試験測定装置16側で式(1)による放水圧力の補正計算と式(2)による放水量の計算を行っているが、放水試験測定装置16は圧力センサ64による流水圧力Psを検出して放水試験受信装置18に測定信号を送信し、放水試験受信装置18側で式(1)(2)からノズル先端の放水圧力Pと放水流Qを算出するようにしても良い。これにより振動発電装置60による発電電力の消費を低減し、電力不足による動作異常が起きないようにすることができる。
【0073】
また、放水試験受信装置18は、試験員が形態する装置としても良い。携帯型の放水試験受信装置18とした場合には、伝送部80は取り除き、電池電源により動作するように構成すれば良い。
【0074】
[本発明の変形例]
上記の実施形態は、屋内消火栓の放水試験による放水圧力と放水量の測定を例にとっているが、防護領域に屋内消火栓に加え送水口が設けられている場合には、送水口に、先端に放水試験測定装置16を介してノズルが取りつけられたホースを連結して放水試験行い、ノズル先端の放水圧力と放水量を測定表示して確認させるようにしても良い。
【0075】
また、上記の実施形態は、屋内消火栓を例にとっているが、消火栓の設置場所は任意であり、例えば屋外等の適宜の場所に設置される消火栓を含むものである。
【0076】
また、本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0077】
10:屋内消火栓
10a:筐体
11:消火栓扉
12:ホース
14:ノズル
15:開閉弁
16:放水試験測定装置
18:放水試験受信装置
20:消火ポンプ
22:モータ
24:ポンプ制御盤
26:水源水槽
28:呼水槽
30:給水本管
32:分岐管
34:防災盤
36:通報装置パネル
38:発信機
40:赤色表示灯
42:音響穴
44:装置本体
46:雌ジョイント
48:雄ジョイント
50:装置カバー
52:内部流路
54:回路ユニット
56:通し穴
60:振動発電装置
62:測定制御部
64;圧力センサ
66,72:通信部
70:受信制御部
76:表示部
78:記憶部
80:伝送部