(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】複合機及びその制御方法、並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20240304BHJP
【FI】
H04N1/00 912
(21)【出願番号】P 2020039054
(22)【出願日】2020-03-06
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】丸山 直紀
【審査官】橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-010252(JP,A)
【文献】特開2017-046291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
H04N 1/04- 1/207
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿の画像を読み取り、画像データを生成する読取部と、
前記読取部を制御する読取制御部と、
画像データに画像処理を実行する画像処理部を有する制御部とを有し、
前記読取制御部は、画像データをデータバスを介して前記制御部に転送し、
前記制御部は、前記画像処理と他の所定の画像処理が並行して実行されるか否かを判定し、
前記制御部は、前記画像処理に関する設定が所定の設定であるか否かを判定し、
前記制御部は、前記他の所定の画像処理に関する設定が他の所定の設定であるか否かを判定し、
前記画像処理と前記他の所定の画像処理が並行して実行されないと判定された場合、前記制御部は、前記読取制御部によって転送される画像データの転送クロックの周波数を第1の周波数に設定し
、前記画像処理と前記他の所定の画像処理が並行して実行されると判定され
、且つ前記画像処理に関する設定が所定の設定であると判定され、且つ前記他の所定の画像処理に関する設定が他の所定の設定でないと判定された場合、前記制御部は、
前記読取制御部によって転送される前記画像データの転送クロックの周波数を前記第1の周波数より低い複数の異なる転送クロックの周波数の中の第2の周波数に設定し、前記画像処理と前記他の所定の画像処理が並行して実行されると判定され、且つ前記画像処理に関する設定が前記所定の設定であると判定され、且つ前記他の所定の画像処理に関する設定が前記他の所定の設定であると判定された場合、前記制御部は、前記読取制御部によって転送される前記画像データの転送クロックの周波数を前記複数の異なる転送クロックの周波数の中の第3の周波数であって、前記第2の周波数より低い第3の周波数に設定し、
前記読取制御部は、前記画像データの転送クロックの周波数を前記
設定された転送クロックの周波数に設定することを特徴とする複合機。
【請求項2】
前記画像処理に関する設定は、前記原稿の画像の読み取りに関連する設定であることを特徴とする請求項
1記載の複合機。
【請求項3】
前記画像処理に関する設定は、読取色の設定、読取面の設定、及びスキャン解像度の設定を含むことを特徴とする請求項
2記載の複合機。
【請求項4】
前記他の所定の画像処理に関する設定は、前記原稿の印刷に関連する設定であることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の複合機。
【請求項5】
前記他の所定の画像処理に関する設定は、印刷色の設定、印刷サイズの設定、印刷速度の設定、及び印刷解像度の設定を含むことを特徴とする請求項
4記載の複合機。
【請求項6】
前記他の所定の画像処理に関する設定は、RIP画像処理に関連する設定であることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の複合機。
【請求項7】
前記他の所定の画像処理に関する設定は、処理色の設定及びRIP解像度の設定を含むことを特徴とする請求項
6記載の複合機。
【請求項8】
前記他の所定の画像処理に関する設定は、Imaging画像処理に関連する設定であることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の複合機。
【請求項9】
前記他の所定の画像処理に関する設定は、処理色の設定及び処理解像度の設定を含むことを特徴とする請求項
8記載の複合機。
【請求項10】
前記所定の設定及び前記他の所定の設定は、前記画像処理と前記他の所定の画像処理が並行して実行された際に前記データバスにおける前記画像データの転送量が所定の量より大きくなる設定であることを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか1項に記載の複合機。
【請求項11】
原稿の画像を読み取り、画像データを生成する読取部と、前記読取部を制御する読取制御部と、画像データに画像処理を実行する画像処理部を有する制御部とを有する複合機の制御方法であって、
前記読取制御部が画像データをデータバスを介して前記制御部に転送する工程と、
前記画像処理と他の所定の画像処理が並行して実行されるか否かを判定する工程と、
前記画像処理に関する設定が所定の設定であるか否かを判定する工程と、
前記他の所定の画像処理に関する設定が他の所定の設定であるか否かを判定する工程と、
前記画像処理と前記他の所定の画像処理が並行して実行されないと判定された場合、前記読取制御部によって転送される画像データの転送クロックの周波数を第1の周波数に設定
し、前記画像処理と前記他の所定の画像処理が並行して実行されると判定され
、且つ前記画像処理に関する設定が所定の設定であると判定され、且つ前記他の所定の画像処理に関する設定が他の所定の設定でないと判定された場合、前記読取制御部によって転送される前記画像データの転送クロックの周波数を前記第1の周波数より低い複数の異なる転送クロックの周波数の中の第2の周波数に設定し、前記画像処理と前記他の所定の画像処理が並行して実行されると判定され、且つ前記画像処理に関する設定が前記所定の設定であると判定され、且つ前記他の所定の画像処理に関する設定が前記他の所定の設定であると判定された場合、前記読取制御部によって転送される前記画像データの転送クロックの周波数を前記複数の異なる転送クロックの周波数の中の第3の周波数であって、前記第2の周波数より低い第3の周波数に設定する工程とを有することを特徴とする複合機の制御方法。
【請求項12】
請求項
11に記載された複合機の制御方法を、コンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合機及びその制御方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
スキャン機能やプリント機能等の複数の機能を備える複合機としてのMFPが知られている。MFPでは、スキャナ部が、ユーザに設定された読み取り速度で原稿を読み取り、読み取った原稿の画像データを所定の周波数の画像転送クロックに従って画像処理部に転送する(特許文献1参照)。画像処理部は、受信した画像データに対して画像処理を施し、処理済みの画像データをMFPのメインメモリに一時的に記憶させ、さらに、処理済みの画像データに対して別の画像処理を施す際にメインメモリから処理済みの画像データを取得する。MFPでは、スキャナ部、画像処理部、及びメインメモリが1つの画像バスを介してデータ転送を行う。近年では、高速読み取りを実現可能なMFPが開発され、高速読み取りのスキャンジョブを実行した場合、通常読み取りのスキャンジョブを実行した場合と比べて、画像バスにおける単位時間当たりのデータ転送量が増える。また、MFPでは、プリント部が印刷を行うためのPDLデータに関する画像処理等も画像処理部で実行され、プリント部及び画像処理部が上記画像バスを介してデータ転送を行う。
【0003】
MFPでは、スキャンジョブを実行中に他のジョブ、例えば、プリントジョブの実行が指示され、スキャンジョブがプリントジョブと並列で実行される場合がある。この場合、MFPでは、画像バスを介してスキャナ部、プリント部、画像処理部、及びメインメモリが並列でデータ転送を行うこととなり、画像バスが混み合う。さらに、スキャンジョブにおいて高速読み取りが行われていると、画像バスにおける単位時間当たりのデータ転送量が膨大となり、画像バスにおける転送可能上限値を超えてしまう。画像バスのデータ転送量が転送可能上限値を超えると、画像バスを介したデータ転送が実施できなくなり、スキャンジョブ及びプリントジョブの実行が停止する。これに対し、スキャンジョブに関する画像処理が他の画像処理と並列で実行する場合、スキャンジョブに関する画像処理においてスキャナ部が画像バスを介して画像データを転送する転送速度を所定の転送速度より遅い転送速度に切り替えることが検討されている。これにより、スキャンジョブに関する画像処理が他の画像処理と並列で実行した際に画像バスにおける単位時間当たりのデータ転送量が転送可能上限値を超えないように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した制御方法では、スキャンジョブに関する画像処理や他の画像処理が、並列で実行されても画像バスにおける単位時間当たりのデータ転送量が転送可能上限値を超えないような処理内容であっても、上述した転送速度の切り替えが行われる。その結果、スキャンジョブに関する画像処理の実行時間が不要に長くなってしまう。すなわち、従来では、画像処理の実行時間が不要に長くなることなく、他の画像処理を並列で実行することができない。
【0006】
本発明の目的は、画像処理の実行時間が不要に長くなることなく、他の画像処理を並列で実行することができる仕組みを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の複合機は、原稿の画像を読み取り、画像データを生成する読取部と、前記読取部を制御する読取制御部と、画像データに画像処理を実行する画像処理部を有する制御部とを有し、前記読取制御部は、画像データをデータバスを介して前記制御部に転送し、前記制御部は、前記画像処理と他の所定の画像処理が並行して実行されるか否かを判定し、前記制御部は、前記画像処理に関する設定が所定の設定であるか否かを判定し、前記制御部は、前記他の所定の画像処理に関する設定が他の所定の設定であるか否かを判定し、前記画像処理と前記他の所定の画像処理が並行して実行されないと判定された場合、前記制御部は、前記読取制御部によって転送される画像データの転送クロックの周波数を第1の周波数に設定し、前記画像処理と前記他の所定の画像処理が並行して実行されると判定され、且つ前記画像処理に関する設定が所定の設定であると判定され、且つ前記他の所定の画像処理に関する設定が他の所定の設定でないと判定された場合、前記制御部は、前記読取制御部によって転送される前記画像データの転送クロックの周波数を前記第1の周波数より低い複数の異なる転送クロックの周波数の中の第2の周波数に設定し、前記画像処理と前記他の所定の画像処理が並行して実行されると判定され、且つ前記画像処理に関する設定が前記所定の設定であると判定され、且つ前記他の所定の画像処理に関する設定が前記他の所定の設定であると判定された場合、前記制御部は、前記読取制御部によって転送される前記画像データの転送クロックの周波数を前記複数の異なる転送クロックの周波数の中の第3の周波数であって、前記第2の周波数より低い第3の周波数に設定し、前記読取制御部は、前記画像データの転送クロックの周波数を前記設定された転送クロックの周波数に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、画像処理の実行時間が不要に長くなることなく、他の画像処理を並列で実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る複合機としてのMFPの構成を概略的に示すブロック図である。
【
図2】
図1のスキャナ部におけるDF部の内部構造を示す側面図である。
【
図3】
図1のスキャナ部におけるスキャナ制御ユニットの構成を概略的に示すブロック図である。
【
図4】
図2のCISによる画像の読み出し制御を行うためのクロックを説明するための図である。
【
図5】
図1のMFPによって実行される画像の読み取り動作に関するシーケンス図である。
【
図6】
図3のRAMから制御部への画像データの転送を説明するための図である。
【
図7】
図1の画像処理部の構成を説明するためのブロック図である。
【
図8】
図1のMFPによって実行されるスキャン制御処理の手順を示すフローチャートである。
【
図9】
図8におけるステップS808の切替要否判別処理を説明するための図である。
【
図10】実行中又は待機中の他の画像処理がプリント画像処理である場合の
図8のステップS811の転送クロックモード決定処理を説明するための図である。
【
図11】実行中又は待機中の他の画像処理がRIP画像処理である場合の
図8のステップS811の転送クロックモード決定処理を説明するための図である。
【
図12】実行中又は待機中の他の画像処理がImaging画像処理である場合の
図8のステップS811の転送クロックモード決定処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係る複合機としてのMFP100の構成を概略的に示すブロック図である。
【0012】
図1において、MFP100は、制御部101、蓄積メモリ105、操作部109、スキャナ部114(読取部)、及びプリンタ部115を備える。制御部101は、蓄積メモリ105、操作部109、スキャナ部114、及びプリンタ部115と接続されている。また、制御部101は、CPU102、ROM103、RAM104、LANI/F部106、回線I/F部107、操作部制御部108、IO制御部110、画像処理部113、及び送受信制御部116を備える。CPU102、ROM103、RAM104、LANI/F部106、回線I/F部107、操作部制御部108、IO制御部110、及び送受信制御部116は、システムバス111を介して互いに接続されている。画像処理部113は、画像バス112(データバス)を介してIO制御部110と接続されている。
【0013】
制御部101は、MFP100の全体を統括的に制御する。CPU102は、ROM103や蓄積メモリ105に格納されたプログラムを実行してMFP100のソフトウェアモジュール(不図示)に各処理を実行させる。ROM103は、システムのブートプログラム等を記憶する。RAM104は、CPU102がMFP100のソフトウェアモジュール(不図示)を実行するためのシステムワークメモリエリアである。また、RAM104は、画像データを処理する際に当該画像データを一時的に記憶するための画像メモリである。蓄積メモリ105は、HDD(ハードディスク)やSSD(SolidStateDrive)で構成され、内部ストレージとして使用される。蓄積メモリ105には、例えば、MFP100の各機能を実現するためのシステムソフトウェアモジュールや、RAM104から転送された画像データが記憶される。
【0014】
LANI/F部106は、MFP100をLANに接続するためのI/Fである。LANI/F部106は、LANに接続された外部装置とデータ通信を行う。回線I/F部107は、MFP100をWANに接続するためのI/Fである。回線I/F部107は、WANに接続された外部装置とデータ通信を行う。送受信制御部116は、蓄積メモリ105から読み出した画像データをLANI/F部106や回線I/F部107を介して外部装置へ送信する制御を行う。また、送受信制御部116は、LANI/F部106や回線I/F部107を介して受信したデータを蓄積メモリ105に保存する制御を行う。操作部制御部108は、制御部101及び操作部109のI/Fである。例えば、操作部制御部108は、VGA信号を操作部109に出力し、該VGA信号に対応する画像を操作部109に表示させる。また、操作部制御部108は、ユーザが操作部109に入力した情報をCPU102に出力する。操作部109は、LCDタッチパネル等で構成される。操作部109は、操作部制御部108から出力されるVGA信号を解釈して該VGA信号に対応する画像を表示する。
【0015】
IO制御部110は、システムバス111と画像バス112とを接続し、システムバス111のデータ構造を変換するバスブリッジである。画像バス112は、PCIバス、IEEE1394、及びPCIEx等の汎用バスで構成され、画像データを高速で転送する。画像バス112には、IO制御部110及び画像処理部113の他に、スキャナ部114及びプリンタ部115が接続されている。画像バス112は、画像データの同期系/非同期系の変換を行う。画像処理部113は、後述する
図7に示すように、複数のASIC(Application Specific Integrated Circuit)で構成される。なお、ASICとは、特定の用途向けに作られた集積回路の総称である。画像処理部113は、画像データに対し、解像度変換処理、圧縮処理、伸張処理、及び2値多値変換処理等を施す。スキャナ部114は、
図2のDF(DocumentFeeder)部200及び
図3のスキャナ制御ユニット300(読取制御部)を備える。スキャナ部114は、原稿を読み取って画像データを生成する。プリンタ部115は、スキャナ部114が生成した画像データを印刷する。
【0016】
図2は、
図1のスキャナ部114におけるDF部200の内部構造を示す側面図である。なお、
図2では、理解を容易にするために内部の構成が透過して示される。
【0017】
DF部200には、原稿を載置するための原稿トレイ201が設けられている。原稿トレイ201には、ドキュメントセンサ202、2つの原稿ガイド203、及び原稿サイズ検知センサ204が設けられている。ドキュメントセンサ202は、原稿が原稿トレイ201に載置されているか否かを検知する。2つの原稿ガイド203は、原稿の搬送方向に直交する方向において対向するように配置されている。原稿トレイ201に載置された原稿は、ピックアップローラ205、搬送ローラ207、及び排紙ローラ208によって搬送される。ピックアップローラ205は、原稿トレイ201に載置された原稿をDF部200の原稿搬送路(不図示)へ搬送する。ピックアップローラ205によって搬送された原稿は、原稿通過検知センサ206によって検出される。DF部200では、原稿通過検知センサ206が検出した時間に基づいて1枚目の原稿が通過したか否かが判別される。搬送ローラ207は、ピックアップローラ205によって原稿搬送路に搬送された原稿を排紙ローラ208へ搬送する。排紙ローラ208は、搬送ローラ207によって搬送された原稿を排紙トレイ209に搬送する。なお、ピックアップローラ205、搬送ローラ207、及び排紙ローラ208は、ステッピングモータ(不図示)によって駆動される。
【0018】
上記原稿搬送路に搬送された原稿は、当該原稿搬送路に設けられる透明なDF読み取り窓210を通過した際にセンサユニット211によって読み取られる。センサユニット211は、CIS212を備え、上記原稿搬送路に搬送された原稿をDF読み取り窓210を通して読み取り可能な位置に配置される。センサユニット211は、副走査方向に自由に移動可能である。例えば、センサユニット211は、搬送ローラ207から排紙ローラ208へ搬送された原稿の搬送方向と同じ方向に移動する。なお、DF読み取り窓210は、副走査方向に或る程度の長さを有する。CIS212は、その長さの範囲内で任意の位置に移動し、移動した位置で原稿を読み取ることができる。CIS212は、複数の光電変換素子、例えば、CCD素子で構成される。CIS212では、CCD素子が一列に配列されている。CIS212は、各CCD素子で読み取った画素データを蓄積するためのFIFO等を制御するための制御信号を生成する。
【0019】
図3は、
図1のスキャナ部114におけるスキャナ制御ユニット300の構成を概略的に示すブロック図である。
【0020】
図3において、スキャナ制御ユニット300は、CPU301、ROM302、CLK制御部303、モータコントローラ304、CCD制御部306、及びRAM307を備える。
【0021】
スキャナ制御ユニット300は、ROM302に記憶されたスキャナ部制御アプリケーションプログラム(不図示)をCPU301に実行させることによってスキャナ部114の動作を制御する。スキャナ部制御アプリケーションプログラムは、スキャナ制御ユニット300を制御するスキャナ部制御アプリケーション(不図示)を起動するためのプログラムである。なお、本実施の形態では、CPU301がスキャナ部制御アプリケーションプログラムを実行する場合について説明するが、スキャナ部制御アプリケーションプログラムを実行するデバイスはCPU301に限られない。例えば、制御部101のCPU102がスキャナ部制御アプリケーションプログラムを実行することによってスキャナ部114の動作を制御しても良い。
【0022】
CLK制御部303は、スキャナ制御ユニット300を構成する各デバイスにクロックを提供する。クロックは、後述する画像転送クロックを含む。CLK制御部303は、クロックを生成する水晶振動子(不図示)及びPLL(不図示)で構成される。PLLは、水晶振動子が生成したクロックを逓倍又は分周する。ユーザからスキャンの実行指示を受け付けると、スキャナ部114では、CLK制御部303が、モータコントローラ304、CCD制御部306、及びRAM307にクロックを出力する。例えば、モータコントローラ304は、CLK制御部303から受けたクロックに基づいてローラ305を回転させるモータ(不図示)の制御クロックを生成する。スキャンの実行指示には、カラー/モノクロ区別や解像度等の情報が含まれ、スキャナ部制御アプリケーションは、指示の内容に基づいてCLK制御部303のPLLの設定を変更する。CLK制御部303は、出力するクロックの周波数をPLLの設定に基づいて制御する。これにより、スキャナ部114の読み取り速度が変更される。RAM307は、CIS212が読み取った原稿の画像データを蓄積する。
【0023】
スキャナ制御ユニット300は、
図4(a)の読み出しクロック401及び
図4(b)の転送イネーブルクロック402に基づいてCIS212による画像の読み出し制御を行う。読み出しクロック401は、画像データを構成する画素データを各CCD素子から読み出すためのクロック信号である。転送イネーブルクロック402は、画像転送クロックである。画像転送クロックは、読み出した画素データを制御部101へ転送するか否かを制御するためのクロック信号である。スキャナ制御ユニット300は、読み出しクロック401の立ち上がり時に、各CCD素子から画素データを読み出す。各CCD素子から読み出された画素データは、RAM307に蓄積される。また、スキャナ制御ユニット300は、
図4(a)の水平同期信号403に基づいて制御された転送イネーブルクロック402の立ち上がりに同期して、RAM307に蓄積された画素データを制御部101に転送する。水平同期信号403は、CCD1ラインの取り込み開始を制御するクロック信号である。
【0024】
また、スキャナ制御ユニット300は、水平同期信号403に同期して、スキャナ部114に設けられるピックアップローラ205を駆動するPWM信号を生成する。MFP100では、高速読み取りを行う場合、水平同期信号403の周期を短くする。これにより、ピックアップローラ205の回転速度が相対的に上がり、原稿搬送が早くなり、原稿1枚当たりの読み取り速度が上がる。また、原稿の読み取り速度に合わせて、CCD素子からの読み出しを短時間で行うために、スキャナ制御ユニット300は、読み出しクロック401の周波数を上げる。スキャナ制御ユニット300は、読み出しクロック401の周期に合わせてRAM307へ画素データを蓄積する。また、スキャナ制御ユニット300は、読み出しクロック401の周波数の制御に対応して転送イネーブルクロック402の周波数を上げ、RAM307から制御部101への画素データの転送を短時間で行う。
【0025】
図5は、
図1のMFP100によって実行される画像の読み取り動作に関するシーケンス図である。
図5の読み取り動作は、スキャナ部114を制御する上記スキャナ部制御アプリケーション及び制御部101を制御するジョブ制御アプリケーション(不図示)によって実行される。
【0026】
図5において、スキャナ部114は、制御部101から読み取り開始要求を受け付けると(ステップS501)、読み出しクロック401に基づいてNページ目の原稿を読み取る(ステップS502)。各CCD素子によって読み取られた複数の画素データで構成されるNページ目の画像データは、RAM307に記憶される。Nページ目の原稿の読み取りを完了すると、スキャナ部114は、次のページ(N+1ページ目)の原稿を読み取る(ステップS503)。
【0027】
一方、スキャナ部114は、制御部101からNページ目の画像データの転送要求を受け付けると(ステップS504)、転送イネーブルクロック402に基づいてNページ目の画像データを制御部101へ転送する(ステップS505)。制御部101への転送が完了した画像データは、RAM307から削除される。なお、MFP100では、RAM307の記憶領域を使い切る前に、
図6に示すように、RAM307に記憶された画像データが制御部101へ転送されるように制御される。
【0028】
図7は、
図1の画像処理部113の構成を説明するためのブロック図である。
図7において、画像処理部113は、画像データに対し、解像度変換、圧縮伸張、画像合成、2値多値変換、多値2値変換、画像フォーマット変換、レンダリング等の変換処理を施す複数のASIC701~705を備える。各ASIC701~705は、RAM104を共有し、画像バス112を介してデータの入出力を行う。なお、本実施の形態におけるスキャン画像処理、プリント画像処理、Rip画像処理、及びImaging画像処理では、上述した変換処理の少なくとも1つが実行される。例えば、スキャン画像処理では、画像データに対して、解像度変換、圧縮、画像フォーマット変換が行われ、画像データが所望のサイズ且つ所望のファイル形式の画像データに変換される。プリント画像処理では、画像データに対して、印刷処理を実施するための変換、具体的に、画像の伸張や画像合成が行われる。Rip画像処理では、画像データを用いてレンダリングや画像フォーマット変換が行われ、印刷用の画像データが生成される。Imaging画像処理では、画像データに対して、画像の伸張、2値多値変換、画像フォーマット変換、画像の圧縮が行われ、印刷用の画像データだけでなくEmailへの添付やFTPへの送信に適した画像データが生成される。
【0029】
画像処理部113は、各ASIC701~705により複数の画像処理を並列で実行可能である。例えば、ASIC701によるスキャン画像処理が、ASIC702によるプリント画像処理と並列で実行される。このとき、各画像処理において画像バス112を介してデータ転送が行われるので、画像バス112が混み合う。ここで、例えば、スキャン画像処理において、スキャナ部114が高速読み取りを行った場合、画像バス112における単位時間当たりのデータ転送量が膨大となり、画像バス112の転送可能上限値を超えてしまう。画像バスのデータ転送量が転送可能上限値を超えると、画像バス112を介したデータ転送が実施できなくなり、各画像処理の実行が停止してしまう。これに対し、スキャン画像処理が他の画像処理と並列で実行する場合、スキャン画像処理においてスキャナ部114が画像バス112を介して画像データを転送する転送速度を所定の転送速度より遅い転送速度に切り替えることが検討されている。これにより、スキャン画像処理が他の画像処理と並列で実行した際に画像バス112における単位時間当たりのデータ転送量が転送可能上限値を超えないように制御される。しかし、上述した制御方法では、スキャン画像処理や他の画像処理が、並列で実行されても画像バス112における単位時間当たりのデータ転送量が転送可能上限値を超えないような処理内容であっても、上述した転送速度の切り替えが行われる。その結果、スキャン画像処理の実行時間が不要に長くなってしまう。すなわち、従来では、スキャン画像処理の実行時間が不要に長くなることなく、他の画像処理を並列で実行することができない。
【0030】
これに対し、本実施の形態では、スキャン画像処理と他の画像処理が並行して実行されない場合、画像データの転送速度が後述する第1の転送速度に設定される。スキャン画像処理と他の画像処理が並行して実行される場合、スキャン画像処理の後述するスキャン読取設定及び他の画像処理の後述する画像処理設定に基づいて第1の転送速度より遅い複数の異なる転送速度の中から1つの転送速度が選択される。当該選択された転送速度が画像データの転送速度に設定される。
【0031】
図8は、
図1のMFP100によって実行されるスキャン制御処理の手順を示すフローチャートである。スキャン制御処理は、CPU102がROM103等に記憶されたプログラムを実行することによって行われる。スキャン制御処理は、スキャナ部114によって原稿を読み取る指示をCPU102が受け付けた際に実行される。なお、DF部200に複数ページの原稿が載置された場合には、1ページ毎にスキャン制御処理が実行される。スキャン制御処理では、画像データの転送速度が異なる複数の転送クロックモードの何れかが設定される。本実施の形態では、一例として、高速転送クロックモード、中速転送クロックモード、低速転送クロックモードの何れかが設定される構成について説明する。高速転送クロックモードは、第1の転送速度を実現可能である。中速転送クロックモードは、第1の転送速度より遅い第2の転送速度を実現可能である。低速転送クロックモードは、第1の転送速度及び第2の転送速度より遅い第3の転送速度を実現可能である。
【0032】
図8において、CPU102は、操作部109にて設定されたスキャン読取設定を取得する(ステップS801)。スキャン読取設定は、原稿の画像の読み取りに関連する設定であり、例えば、スキャン読取色の設定、スキャン読取面の設定、スキャン解像度の設定を含む。スキャン読取色の設定は、読取色がカラー及び白黒の何れであるかを示す値を含む。スキャン読取面の設定は、読み取り面が両面及び片面の何れであるかを示す値を含む。スキャン解像度の設定は、300×300dpi等の読み取り解像度を示す値を含む。次いで、CPU102は、画像処理部113のASIC701~705の中から、取得したスキャン読取設定に従ったスキャン画像処理を実行するためのASICを決定し、当該ASICにスキャン読取設定を設定する(ステップS802)。次いで、CPU102は、決定したASIC以外のASICによる他の画像処理が実行中又は待機中であるか否かを判別する(ステップS803)。他の画像処理は、例えば、プリント画像処理、Imaging画像処理、Rip画像処理である。
【0033】
ステップS803の判別の結果、他の画像処理が実行中及び待機中の何れでもないとき、CPU102は、第1の転送速度を設定する。CPU102は、設定した第1の転送速度を実現可能な高速転送クロックモードで動作するようにスキャナ部114に通知する(ステップS804)。高速転送クロックモードでは、CLK制御部303が転送イネーブルクロック402の周波数を第1の周波数に設定する。第1の周波数は、1分間に150枚分の画像データの転送を実現可能な周波数である。スキャナ部114は、当該転送イネーブルクロック402で画像データを制御部101に転送する。次いで、CPU102は、スキャナ部114から画像データを受信し(ステップS805)、受信した画像データに対して、スキャン読取設定が設定されたASICによるスキャン画像処理を施す(ステップS806)。次いで、CPU102は、スキャン画像処理を施した画像データを蓄積メモリ105に保存し(ステップS807)、本処理を終了する。
【0034】
ステップS803の判別の結果、他の画像処理が実行中又は待機中であるとき、CPU102は、後述する
図9の切替要否判別処理を実行する(ステップS808)。次いで、ステップS808にて判別した結果に基づいて転送速度の切り替えの要否を判別する(ステップS809)。
【0035】
ステップS809の判別の結果、転送速度の切り替えが不要であるとき、CPU102は、ステップS805の処理を行う。これにより、CLK制御部303は、画像データの転送速度を切り替えることなく、既に設定された転送速度のまま維持し、スキャナ部114は、当該転送速度に対応する周波数の転送イネーブルクロック402で画像データを制御部101に転送する。既に設定された転送速度は、例えば、直前に実行されたスキャン制御処理にて設定された転送速度や、スキャナ部114のデフォルトの転送速度である。
【0036】
ステップS809の判別の結果、転送速度の切り替えが必要であるとき、CPU102は、実行中又は待機中の他の画像処理の画像処理設定を取得する(ステップS810)。次いで、CPU102は、後述する
図10(a)の転送クロックモード決定処理を実行する(ステップS811)。ステップS811では、第1の転送速度より遅い第2の転送速度及び第3の転送速度の何れかが選択され、選択された転送速度を実現可能な転送クロックモードの使用が決定される。CPU102は、使用が決定された転送クロックモードで動作するようにスキャナ部114に通知する(ステップS812)。例えば、ステップS812において、CPU102がスキャナ部114に第2の転送速度を実現可能な中速転送クロックモードで動作するように通知した場合、CLK制御部303が転送イネーブルクロック402の周波数を第2の周波数に設定する。第2の周波数は、第1の周波数より低い周波数であり、1分間に100枚分の画像データの転送を実現可能な周波数である。一方、CPU102がスキャナ部114に第3の転送速度を実現可能な低速転送クロックモードで動作するように通知した場合、CLK制御部303が転送イネーブルクロック402の周波数を第3の周波数に設定する。第3の周波数は、第1の周波数及び第2の周波数より低い周波数であり、1分間に50枚分の画像データの転送を実現可能な周波数である。次いで、CPU102は、ステップS805の処理を行う。
【0037】
図9(a)は、
図8におけるステップS808の切替要否判別処理の手順を示すフローチャートである。
【0038】
図9(a)において、CPU102は、ステップS801にて取得したスキャン読取設定に基づいてスキャン読取色の設定がカラーであるか否かを判別する(ステップS901)。
【0039】
ステップS901の判別の結果、スキャン読取色の設定がカラーであるとき、CPU102は、スキャン読取面の設定が両面であるか否かを判別する(ステップS902)。
【0040】
ステップS902の判別の結果、スキャン読取面の設定が両面であるとき、CPU102は、スキャン解像度の設定が300×300dpiであるか否かを判別する(ステップS903)。
【0041】
ステップS903の判別の結果、スキャン解像度の設定が300×300dpiであるとき、CPU102は、
図9(b)に示すように、転送速度の切り替えが必要であると判別する(ステップS904)。ここで、スキャン読取設定が所定の設定である場合、画像バス112においてデータ量が比較的大きい高解像度且つカラーの画像データを両面分高速で転送することになる。所定の設定とは、具体的に、スキャン読取色の設定がカラー且つスキャン読取面の設定が両面且つスキャン解像度の設定が300×300dpiである。このような設定のスキャン画像処理が他の画像処理と並列で実行されると、画像バス112における単位時間当たりのデータ転送量が転送可能上限値を超える懸念がある。これに対し、本実施の形態では、他の画像処理と並列で実行されるスキャン画像処理のスキャン読取設定が上述した所定の設定である場合に、画像バス112の単位時間当たりのデータ転送量が転送可能上限値を超えないように転送速度が制御される。次いで、CPU102は、本処理を終了する。
【0042】
ステップS901の判別の結果、スキャン読取色の設定がカラーでないとき、CPU102は、
図9(b)に示すように、転送速度の切り替えが不要であると判別する(ステップS905)。又は、ステップS902の判別の結果、スキャン読取面の設定が両面でないとき、CPU102は、
図9(b)に示すように、転送速度の切り替えが不要であると判別する(ステップS905)。又は、ステップS903の判別の結果、スキャン解像度の設定が300×300dpiでないとき、CPU102は、
図9(b)に示すように、転送速度の切り替えが不要であると判別する(ステップS905)。次いで、CPU102は、本処理を終了する。
【0043】
次に、
図8のステップS811の転送クロックモード決定処理について説明する。なお、本実施の形態では、実行中又は待機中の他の画像処理がプリント画像処理、Rip画像処理、Imaging画像処理の何れであるかに応じて異なる転送クロックモード決定処理が実行される。CPU102は、実行中又は待機中の他の画像処理がプリント画像処理、Rip画像処理、Imaging画像処理の何れであるかを、ステップS810の処理にて取得した画像処理設定等に基づいて特定する。CPU102は、特定した種別に対応する転送クロックモード決定処理を実行する。
【0044】
図10(a)は、実行中又は待機中の他の画像処理がプリント画像処理である場合の
図8のステップS811の転送クロックモード決定処理の手順を示すフローチャートである。
図10(a)の処理では、CPU102が、ステップS810の処理において画像処理設定として、原稿の印刷に関連する設定、例えば、印刷色の設定、印刷サイズの設定、印刷速度の設定、及び印刷解像度の設定を取得していることとする。印刷色の設定は、印刷色がカラー及び白黒の何れであるかを示す値を含む。印刷サイズの設定は、A3等の印刷用紙サイズを示す値を含む。印刷速度の設定は、所定の速度で印刷を行う「等速」や当該所定の速度より遅い速度で印刷を行う「半速」といった印刷速度を示す値を含む。印刷解像度の設定は、600dpiや1200dpi等の印刷解像度を示す値を含む。
【0045】
図10(a)において、CPU102は、印刷色の設定がカラーであるか否かを判別する(ステップS1001)。
【0046】
ステップS1001の判別の結果、印刷色の設定がカラーであるとき、CPU102は、印刷サイズの設定がA3の用紙サイズ以上であるか否かを判別する(ステップS1002)。
【0047】
ステップS1002の判別の結果、印刷サイズの設定がA3の用紙サイズ以上であるとき、CPU102は、印刷解像度の設定が1200dpiであるか否かを判別する(ステップS1003)。
【0048】
ステップS1003の判別の結果、印刷解像度の設定が1200dpiであるとき、CPU102は、第1の転送速度より遅い第2の転送速度及び第3の転送速度の中から第3の転送速度を選択する。CPU102は、選択した第3の転送速度を実現可能な低速転送クロックモードの使用を決定し(ステップS1004)、本処理を終了する。
【0049】
ステップS1001の判別の結果、印刷色の設定がカラーでないとき、又はステップS1002の判別の結果、印刷サイズの設定がA3の用紙サイズ未満であるとき、CPU102は、印刷速度の設定が等速であるか否かを判別する(ステップS1005)。
【0050】
ステップS1005の判別の結果、印刷速度の設定が等速であるとき、CPU102は、ステップS1003の処理を行う。
【0051】
ステップS1005の判別の結果、印刷速度の設定が等速でないとき、CPU102は、第1の転送速度より遅い第2の転送速度及び第3の転送速度の中から第2の転送速度を選択する。CPU102は、選択した第2の転送速度を実現可能な中速転送クロックモードの使用を決定する(ステップS1006)。このように、本実施の形態では、スキャン読取設定及びプリント画像処理に関連する設定に基づいて第1の転送速度より遅い複数の異なる転送速度の中から1つの転送速度が決定される。次いで、CPU102は、本処理を終了する。
【0052】
図10(b)は、プリント画像処理に関連する設定に対応する転送クロックモードをまとめた表である。ここで、プリント画像処理に関連する設定が他の所定の設定である場合、画像バス112においてデータ量が比較的大きい高精細な画像データを高速で転送することになる。他の所定の設定は、具体的に、印刷色の設定がカラーであり且つ印刷サイズの設定がA3の用紙サイズ以上であり且つ印刷解像度の設定が1200dpiである。また、他の所定の設定は、印刷色の設定がカラーであり且つ印刷サイズの設定がA3の用紙サイズ未満であり且つ印刷速度の設定が等速であり且つ印刷解像度の設定が1200dpiである。さらに、他の所定の設定は、印刷色の設定が白黒であり且つ印刷速度の設定が等速であり且つ印刷解像度の設定が1200dpiである。このような設定のプリント画像処理が上記スキャン画像処理と並列で実行されると、画像バス112における単位時間当たりのデータ転送量が転送可能上限値を超える懸念がある。このため、本実施の形態では、スキャン画像処理と並列で実行されるプリント画像処理に関連する設定が他の所定の設定である場合、第1の転送速度及び第2の転送速度より遅い第3の転送速度を実現可能な低速転送クロックモードが用いられる。
【0053】
一方、プリント画像処理に関連する設定が他の所定の設定でない場合、画像バス112におけるデータ転送量は、他の所定の設定である場合程大きくなることはない。他の所定の設定でないプリント画像処理が上記スキャン画像処理と並列で実行された場合、第3の転送速度で動作しなくても、画像バス112における単位時間当たりのデータ転送量が転送可能上限値を超えることはない。このため、本実施の形態では、上記スキャン画像処理と並列で実行されるプリント画像処理に関連する設定が他の所定の設定でない場合、第3の転送速度より速い第2の転送速度を実現可能な中速転送クロックモードが用いられる。
【0054】
図11(a)は、実行中又は待機中の他の画像処理がRIP画像処理である場合の
図8のステップS811の転送クロックモード決定処理の手順を示すフローチャートである。
図11(a)の処理では、CPU102が、ステップS810の処理において画像処理設定として、RIP画像処理に関連する設定、例えば、処理色の設定及びRIP解像度の設定を取得していることとする。処理色の設定は、RIP画像処理における処理色がカラー及び白黒の何れであるかを示す値を含む。RIP解像度の設定は、600dpiや1200dpi等の解像度を示す値を含む。
【0055】
図11(a)において、CPU102は、処理色の設定がカラーであるか否かを判別する(ステップS1101)。
【0056】
ステップS1101の判別の結果、処理色の設定がカラーであるとき、CPU102は、RIP解像度の設定が1200dpiであるか否かを判別する(ステップS1102)。
【0057】
ステップS1102の判別の結果、RIP解像度の設定が1200dpiであるとき、CPU102は、第1の転送速度より遅い第2の転送速度及び第3の転送速度の中から第3の転送速度を選択する。CPU102は、選択した第3の転送速度を実現可能な低速転送クロックモードの使用を決定し(ステップS1103)、本処理を終了する。
【0058】
ステップS1101の判別の結果、処理色の設定がカラーでないとき、又はステップS1102の判別の結果、RIP解像度の設定が1200dpiでないとき、CPU102は、第2の転送速度及び第3の転送速度の中から第2の転送速度を選択する。CPU102は、選択した第2の転送速度を実現可能な中速転送クロックモードの使用を決定し(ステップS1104)、本処理を終了する。
【0059】
図11(b)は、RIP画像処理に関連する設定に対応する転送クロックモードをまとめた表である。ここで、RIP画像処理に関連する設定が他の所定の設定である場合、画像バス112においてデータ量が比較的大きい高精細な画像データを高速で転送することになる。他の所定の設定は、具体的に、処理色の設定がカラーであり且つRIP解像度の設定が1200dpiである。このような設定のRIP画像処理が上記スキャン画像処理と並列で実行されると、画像バス112における単位時間当たりのデータ転送量が転送可能上限値を超える懸念がある。このため、本実施の形態では、上記スキャン画像処理と並列で実行されるRIP画像処理に関連する設定が上記他の所定の設定である場合、第1の転送速度及び第2の転送速度より遅い第3の転送速度を実現可能な低速転送クロックモードが用いられる。
【0060】
一方、RIP画像処理に関連する設定が上記他の所定の設定でない場合、画像バス112におけるデータ転送量は、上記他の所定の設定である場合程大きくなることはない。上記他の所定の設定でないRIP画像処理が上記スキャン画像処理と並列で実行された場合、第3の転送速度で動作しなくても、画像バス112における単位時間当たりのデータ転送量が転送可能上限値を超えることはない。このため、本実施の形態では、上記スキャン画像処理と並列で実行されるRIP画像処理に関連する設定が上記他の所定の設定でない場合、第3の転送速度より速い第2の転送速度を実現可能な中速転送クロックモードが用いられる。
【0061】
図12(a)は、実行中又は待機中の他の画像処理がImaging画像処理である場合の
図8のステップS811の転送クロックモード決定処理の手順を示すフローチャートである。
図12(a)の処理では、CPU102が、ステップS810の処理において画像処理設定として、Imaging画像処理に関連する設定、例えば、処理色の設定及び処理解像度の設定を取得していることとする。処理色の設定は、Imaging画像処理における処理色がカラー及び白黒の何れであるかを示す値を含む。処理解像度の設定は、600dpiや1200dpi等の解像度を示す値を含む。
【0062】
図12(a)において、CPU102は、処理色の設定がカラーであるか否かを判別する(ステップS1201)。
【0063】
ステップS1201の判別の結果、処理色の設定がカラーであるとき、CPU102は、処理解像度の設定が1200dpiであるか否かを判別する(ステップS1202)。
【0064】
ステップS1202の判別の結果、処理解像度の設定が1200dpiであるとき、CPU102は、第1の転送速度より遅い第2の転送速度及び第3の転送速度の中から第3の転送速度を選択する。CPU102は、選択した第3の転送速度を実現可能な低速転送クロックモードの使用を決定し(ステップS1203)、本処理を終了する。
【0065】
ステップS1201の判別の結果、処理色の設定がカラーでないとき、又はステップS1202の判別の結果、処理解像度の設定が1200dpiでないとき、CPU102は、第2の転送速度及び第3の転送速度の中から第2の転送速度を選択する。CPU102は、選択した第2の転送速度を実現可能な中速転送クロックモードの使用を決定し(ステップS1204)、本処理を終了する。
【0066】
図12(b)は、Imaging画像処理に関連する設定に対応する転送クロックモードをまとめた表である。ここで、Imaging画像処理に関連する設定が他の所定の設定である場合、画像バス112においてデータ量が比較的大きい高精細な画像データを高速で転送することになる。他の所定の設定は、具体的に、処理色の設定がカラーであり且つ処理解像度の設定が1200dpiである。このような設定のImaging画像処理が上記スキャン画像処理と並列で実行されると、画像バス112における単位時間当たりのデータ転送量が転送可能上限値を超える懸念がある。このため、本実施の形態では、上記スキャン画像処理と並列で実行されるImaging画像処理に関連する設定が上記他の所定の設定である場合、第1の転送速度及び第2の転送速度より遅い第3の転送速度を実現可能な低速転送クロックモードが用いられる。
【0067】
一方、Imaging画像処理に関連する設定が上記他の所定の設定でない場合、画像バス112におけるデータ転送量は、他の所定の設定である場合程大きくなることはない。他の所定の設定でないImaging画像処理が上記スキャン画像処理と並列で実行された場合、第3の転送速度で動作しなくても、画像バス112における単位時間当たりのデータ転送量が転送可能上限値を超えることはない。このため、本実施の形態では、上記スキャン画像処理と並列で実行されるImaging画像処理に関連する設定が上記他の所定の設定でない場合、第3の転送速度より速い第2の転送速度を実現可能な中速転送クロックモードが用いられる。
【0068】
上述した実施の形態によれば、スキャン画像処理と他の画像処理が並行して実行されない場合、画像データの転送速度が第1の転送速度に設定される。スキャン画像処理と他の画像処理が並行して実行される場合、スキャン画像処理のスキャン読取設定及び他の画像処理の画像処理設定に基づいて第1の転送速度より遅い複数の異なる転送速度の中から1つの転送速度が選択される。当該選択された転送速度が画像データの転送速度に設定される。すなわち、画像データの転送速度の設定に、スキャン画像処理及び他の画像処理の処理内容が反映される。これにより、画像データの転送速度をスキャン画像処理及び他の画像処理の処理内容を考慮した転送速度に制御することができ、もって、スキャン画像処理の実行時間が不要に長くなることなく、他の画像処理を並列で実行することができる。
【0069】
また、上述した実施の形態では、スキャン画像処理と他の画像処理が並行して実行され且つスキャン読取設定が所定の設定であり且つ画像処理設定が他の所定の設定でない場合、画像データの転送速度が第1の転送速度より遅い第2の転送速度に設定される。スキャン画像処理と他の画像処理が並行して実行され且つスキャン読取設定が所定の設定であり且つ画像処理設定が他の所定の設定である場合、画像データの転送速度が第1の転送速度及び第2の転送速度より遅い第3の転送速度に設定される。これにより、画像データの転送速度の設定に、スキャン画像処理及び他の画像処理の処理内容を確実に反映させることができる。
【0070】
上述した実施の形態では、スキャン画像処理のスキャン読取設定は、原稿の画像の読み取りに関連する設定である。これにより、画像データの転送速度の設定に、スキャン画像処理における原稿の画像の読み取りに関連する処理内容を反映させることができる。
【0071】
また、上述した実施の形態では、スキャン画像処理のスキャン読取設定は、読取色の設定、読取面の設定、及びスキャン解像度の設定を含む。これにより、転送速度の制御に必要となる、他の画像処理と並列で実行されるスキャン画像処理のスキャン読取設定が、画像バス112における単位時間当たりのデータ転送量が転送可能上限値を超える懸念がある設定であるか否かの判別を行うことができる。
【0072】
上述した実施の形態では、他の画像処理の画像処理設定は、原稿の印刷に関連する設定である。これにより、画像データの転送速度の設定に、原稿の印刷に関連する処理内容を反映させることができる。
【0073】
また、上述した実施の形態では、他の画像処理の画像処理設定は、印刷色の設定、印刷サイズの設定、印刷速度の設定、及び印刷解像度の設定を含む。これにより、転送速度の制御に必要となる、スキャン画像処理と並列で実行されるプリント画像処理の画像処理設定が、画像バス112における単位時間当たりのデータ転送量が転送可能上限値を超える懸念がある設定であるか否かの判別を行うことができる。
【0074】
上述した実施の形態では、他の画像処理の画像処理設定は、RIP画像処理に関連する設定である。これにより、画像データの転送速度の設定に、RIP画像処理に関連する内容を反映させることができる。
【0075】
また、上述した実施の形態では、処理色の設定及びRIP解像度の設定を含む。これにより、転送速度の制御に必要となる、スキャン画像処理と並列で実行されるRIP画像処理の画像処理設定が、画像バス112における単位時間当たりのデータ転送量が転送可能上限値を超える懸念がある設定であるか否かの判別を行うことができる。
【0076】
上述した実施の形態では、他の画像処理の画像処理設定は、Imaging画像処理に関連する設定である。これにより、画像データの転送速度の設定に、Imaging画像処理に関連する内容を反映させることができる。
【0077】
また、上述した実施の形態では、処理色の設定及び処理解像度の設定を含む。これにより、転送速度の制御に必要となる、スキャン画像処理と並列で実行されるImaging画像処理の画像処理設定が、画像バス112における単位時間当たりのデータ転送量が転送可能上限値を超える懸念がある設定であるか否かの判別を実施できる。
【0078】
上述した実施の形態では、所定の設定及び他の所定の設定は、スキャン画像処理と他の画像処理が並行して実行された際に画像バス112における画像データのデータ転送量が転送可能上限値(所定の量)を超える設定である。これにより、スキャン画像処理と他の画像処理が並行して実行された際に画像バス112における画像データのデータ転送量が転送可能上限値を超えるか否かに基づいて転送速度を制御することができる。
【0079】
以上、本発明について、上述した実施の形態を用いて説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、ステップS811において、第1の転送速度より遅い3つ以上の異なる転送速度の中から、設定する転送速度を選択する構成であっても良い。なお、第1の転送速度より遅い3つ以上の異なる転送速度は、第2の転送速度及び第3の転送速度を含む。このような構成において、高速転送クロックモード、中速転送クロックモード、低速転送クロックモードの他に、各転送速度に対応する複数の転送クロックモードが設けられる。
【0080】
本発明は、上述の実施の形態の1以上の機能を実現するプログラムをネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、該システム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行する処理でも実現可能である。また、本発明は、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0081】
100 MFP
102,301 CPU
113 画像処理部
114 スキャナ部
115 プリンタ部
300 スキャナ制御ユニット
303 CLK制御部