(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】被験者のスクリ-ニング方法及び鑑別方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240304BHJP
C07K 14/78 20060101ALN20240304BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20240304BHJP
C07K 17/14 20060101ALN20240304BHJP
【FI】
G01N33/68
C07K14/78
C07K16/18
C07K17/14
(21)【出願番号】P 2020055141
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】306008724
【氏名又は名称】富士レビオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡上 武
(72)【発明者】
【氏名】磯村 光男
(72)【発明者】
【氏名】青柳 克己
(72)【発明者】
【氏名】大高木 結媛
(72)【発明者】
【氏名】湯原 麻子
(72)【発明者】
【氏名】菊池 等
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-001553(JP,A)
【文献】国際公開第2016/163539(WO,A1)
【文献】特開2006-029919(JP,A)
【文献】特開平11-171898(JP,A)
【文献】特開2000-146973(JP,A)
【文献】国際公開第2014/049131(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0265241(US,A1)
【文献】OKANOUE, T. et al.,A simple scoring system using type IV collagen 7S and aspartate aminotransferase for diagnosing nonalcoholic steatohepatitis and related fibrosis.,JOURNAL OF GASTROENTEROLOGY,2017年06月06日,Vol.53,p.129-139,https://doi.org/10.1007/s00535-017-1355-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝線維化進展度がF0以上の段階にあると予測して選別するための情報を提供する方法であり、被験者由来の血液検体のIV型コラ-ゲン7S濃度に基づくスコアを、予め定められたカットオフ値と比較
し、前記スコア
の高低の情報を提供することを特徴とする
、方法。
【請求項2】
前記スコアが、血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度であり、かつ、前記カットオフ値が、4.3~4.5ng/mLの範囲から選択される値であることを特徴とする、請求項1に記載
の方法。
【請求項3】
前記スコアが、血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度、及び血清におけるAST活性値から、次式:
CA index-NASH値=0.994×IV型コラ-ゲン7S濃度(ng/mL)+0.0255×AST活性値(IU/L)
で求められるCA index-NASH値であり、かつ、前記カットオフ値が、4.6~5.2の範囲から選択される値であることを特徴とする、請求項1に記載
の方法。
【請求項4】
前記スコアが、血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度、及び血清におけるAST活性値から、次式:
CA index-Fibrosis値=1.50×IV型コラ-ゲン7S濃度(ng/mL)+0.0264×AST活性値(IU/L)
で求められるCA index-Fibrosis値であり、かつ、前記カットオフ値が、6.7~7.5の範囲から選択される値であることを特徴とする、請求項1に記載
の方法。
【請求項5】
前記肝線維化進展度がNASH重症度であることを特徴とする、請求項1~4のうちのいずれか一項に記載
の方法。
【請求項6】
肝線維化進展度がF0段階又はF0以上の段階にあると鑑別するための情報を提供する方法であり、被験者由来の血液検体のIV型コラ-ゲン7S濃度に基づく第一のスコアを、予め定められた第一のカットオフ値と比較
し、前記第一のスコア
の高低の情報を提供することを特徴とする
、方法。
【請求項7】
前記第一のスコアが、血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度であり、かつ、前記第一のカットオフ値が、3.35ng/mL以上3.75ng/mL未満の範囲から選択される値であることを特徴とする、請求項6に記載
の方法。
【請求項8】
前記第一のスコアが、血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度、及び血清におけるAST活性値から、次式:
CA index-NASH値=0.994×IV型コラ-ゲン7S濃度(ng/mL)+0.0255×AST活性値(IU/L)
で求められるCA index-NASH値であり、かつ、前記第一のカットオフ値が、3.82以上4.42未満の範囲から選択される値であることを特徴とする、請求項6に記載
の方法。
【請求項9】
前記第一のスコアが、血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度、及び血清におけるAST活性値から、次式:
CA index-Fibrosis値=1.50×IV型コラ-ゲン7S濃度(ng/mL)+0.0264×AST活性値(IU/L)
で求められるCA index-Fibrosis値であり、かつ、前記第一のカットオフ値が、5.53以上6.35未満の範囲から選択される値であることを特徴とする、請求項6に記載
の方法。
【請求項10】
肝線維化進展度がF1段階又はF1以上の段階にあると判定してさらに鑑別するための情報を提供する方法であり、被験者由来の血液検体のIV型コラ-ゲン7S濃度に基づく第二のスコアを、予め定められた第二のカットオフ値と比較
し、前記第二のスコア
の高低の情報を提供することを特徴とする、請求項6~9のうちのいずれか一項に記載
の方法。
【請求項11】
前記第二のスコアが、血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度であり、かつ、前記第二のカットオフ値が、3.75ng/mL以上3.85ng/mL未満の範囲から選択される値であることを特徴とする、請求項10に記載
の方法。
【請求項12】
前記第二のスコアが、血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度、及び血清におけるAST活性値から、次式:
CA index-NASH値=0.994×IV型コラ-ゲン7S濃度(ng/mL)+0.0255×AST活性値(IU/L)
で求められるCA index-NASH値であり、かつ、前記第二のカットオフ値が、4.42以上4.87未満の範囲から選択される値であることを特徴とする、請求項10に記載
の方法。
【請求項13】
前記第二のスコアが、血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度、及び血清におけるAST活性値から、次式:
CA index-Fibrosis値=1.50×IV型コラ-ゲン7S濃度(ng/mL)+0.0264×AST活性値(IU/L)
で求められるCA index-Fibrosis値であり、かつ、前記第二のカットオフ値が、6.35以上6.84未満の範囲から選択される値であることを特徴とする、請求項10に記載
の方法。
【請求項14】
肝線維化進展度がF2段階又はF2以上の段階にあると判定してさらに鑑別するための情報を提供する方法であり、被験者由来の血液検体のIV型コラ-ゲン7S濃度に基づく第三のスコアを、予め定められた第三のカットオフ値と比較
し、前記第三のスコア
の高低の情報を提供することを特徴とする、請求項6~13のうちのいずれか一項に記載
の方法。
【請求項15】
前記第三のスコアが、血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度であり、かつ、前記第三のカットオフ値が、3.85ng/mL以上4.85ng/mL未満の範囲から選択される値であることを特徴とする、請求項14に記載
の方法。
【請求項16】
前記第三のスコアが、血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度、及び血清におけるAST活性値から、次式:
CA index-NASH値=0.994×IV型コラ-ゲン7S濃度(ng/mL)+0.0255×AST活性値(IU/L)
で求められるCA index-NASH値であり、かつ、前記第三のカットオフ値が、4.87以上6.09未満の範囲から選択される値であることを特徴とする、請求項14に記載
の方法。
【請求項17】
前記第三のスコアが、血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度、及び血清におけるAST活性値から、次式:
CA index-Fibrosis値=1.50×IV型コラ-ゲン7S濃度(ng/mL)+0.0264×AST活性値(IU/L)
で求められるCA index-Fibrosis値であり、かつ、前記第三のカットオフ値が、6.84以上8.54未満の範囲から選択される値であることを特徴とする、請求項14に記載
の方法。
【請求項18】
前記肝線維化進展度がNASH重症度であることを特徴とする、請求項6~17のうちのいずれか一項に記載
の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者のスクリ-ニング方法及び鑑別方法に関し、より詳しくは、被験者由来の血液検体のIV型コラ-ゲン7S濃度に基づく被験者のスクリ-ニング方法及び鑑別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肝臓では、ウイルス性慢性肝炎(B型、C型等)やアルコ-ル性慢性肝炎の長期化、進行性の非アルコ-ル性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:NASH)等によって、徐々に肝線維化が進行して肝硬変へと進展する。NASHは、明らかな飲酒歴がないにも関わらず肝細胞に脂肪が沈着する非アルコ-ル性脂肪性肝疾患(NAFLD)のうち、予後が良好な単純性脂肪肝とは異なり、肝臓に炎症や線維化が惹起されやすく、最終的には肝硬変や肝癌に進行することが知られている。また、NASHは、線維化をほとんど認めない症例から肝硬変まで幅広く、その予後は肝線維化の進行度で決定されるが、NASHの初期段階では自覚症状がないことが多く、既に肝硬変まで進行した段階で診断されることも多い。
【0003】
また、肝線維化の進行度(すなわち肝線維化進展度)は、その程度に応じて、F0(線維化なし)、F1(慢性肝炎軽度)、F2(慢性肝炎中等度)、F3(肝硬変初期)、F4(肝硬変)、の4段階に分類される。肝線維化進展度の確定診断は、現在、肝生検による組織診断によって行われているが、肝生検は、その侵襲性から、重篤な合併症が生じうるといったリスクが高く、さらに、専門医が行う必要があるため、繰り返し行うことが困難であり、また、陰性の可能性のある患者には適さない。さらに、肝生検によって採取される組織量は肝臓全体の一部であるのに対して、肝線維化は肝臓全体に一様に進行するわけではないため、その診断の精度は必ずしも十分ではない。
【0004】
これに対する非侵襲的方法として、血液検体中のバイオマ-カ-を指標として肝線維化進展度を予測する方法が検討されている。このようなバイオマ-カ-としては、例えば、III型プロコラ-ゲンN末端ペプチド(PIIINP)、IV型コラ-ゲン、IV型コラ-ゲン7S、ヒアルロン酸等が知られている。
【0005】
このうち、IV型コラ-ゲンは、基底膜を構成する主要なタンパク質であるが、肝線維化が起こると、IV型コラ-ゲンを含む基底膜構成成分が分泌されて沈着し、一部が循環血中に漏出するため、肝線維化の進行に伴って血中のIV型コラ-ゲン分子に由来する成分の濃度が増加する。IV型コラ-ゲン7Sは、IV型コラ-ゲン分子のN末端の7Sドメインを含む断片であるが、7Sドメインはタンパク質分解酵素の影響を受けにくいため、前記バイオマ-カ-として血中でも安定であると考えられている。また、例えば、J Gastroenterol,2018,53,p.129-139(非特許文献1)には、IV型コラ-ゲン7Sが、肝線維化の比較的初期から血中濃度が上昇する他の線維化マ-カ-よりも優れていることが報告されている。
【0006】
このようなIV型コラ-ゲン7Sの測定方法としては、例えば、特開平2-1553号公報(特許文献1)において、ペプシン可溶化ヒトIV型コラ-ゲン7Sドメインと交差反応するモノクロ-ナル抗体を酵素標識抗体とし、ヒトIV型コラ-ゲン7Sドメインのみに反応するモノクロ-ナル抗体を固相担体に結合させて抗体結合固相担体(捕捉抗体)として、ワンステップのサンドイッチイムノアッセイによってヒトIV型コラ-ゲン7Sドメインを定量する方法が記載されている。また、国際公開第2016/163539号(特許文献2)には、IV型コラ-ゲン7Sとその他のバイオマ-カ-とを組み合わせたスコアを用いてNAFLDからNASHを鑑別する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平2-1553号公報
【文献】国際公開第2016/163539号
【非特許文献】
【0008】
【文献】J Gastroenterol,2018,53,p.129-139
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のバイオマ-カ-を指標とした方法では、肝線維化進展度がF0やF1の早期段階では当該バイオマ-カ-となる成分の血中濃度が低いため、健常人とF0段階又はF0以上の段階にある患者との鑑別が困難であった。特にNASHをはじめとする肝疾患では、初期段階において自覚症状がないことが多いため、このような早期段階での鑑別は難しい。さらに、無症状の段階での健康診断等におけるスクリ-ニングには、被験者群から、肝線維化進展度がF0の段階にある可能性の高い被験者も選別する(スクリ-ニングする)ことが求められるが、これまで、被験者の肝線維化進展度がF0段階又はF0以上の段階にあると予測して正常群からスクリ-ニングできる方法は開発されていない。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、被験者の肝線維化進展度がF0以上の段階にあると予測して正常群からスクリ-ニングできる方法、並びに、被験者が正常であるかF0段階又はF0以上の段階にあるかの鑑別ができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく鋭意検討を行い、本発明者らは、先ず、健常人由来の血清(正常群)におけるIV型コラ-ゲン7S濃度(IV型コラ-ゲン7S値)の分布から、その95パ-センタイル値、及び平均値+2SD(SD:標準偏差)を算出した。また、前記正常群におけるIV型コラ-ゲン7S値と、肝生検の病理診断により肝線維化ステ-ジが確定し、肝線維化進展度がF0~F4のうちのいずれかの段階に分類される患者由来の血清(陽性群)におけるIV型コラ-ゲン7S値と、について、それぞれ、ROC(Receiver Operating Characteristic)解析を行い、前記正常群を陰性と判断できる前記IV型コラ-ゲン7S値(4.3~4.5ng/mL)を暫定カットオフ値とした。次いで、かかる暫定カットオフ値によって前記正常群から肝線維化進展度がF0以上の段階にある患者を拾い上げる(スクリ-ニングする)ことが可能かを検討したところ、肝線維化進展度がF0の段階にある患者の32~37%、F0以上の段階にある患者の59~64%、をいずれも拾い上げることが可能となることを見い出し、前記暫定カットオフ値の範囲内の値をカットオフ値として、肝線維化進展度がF0以上の段階にあると予測される肝生検対象者等の肝線維化リスク群を正常群からスクリ-ニングできることを見い出した。
【0012】
また、前記正常群におけるIV型コラ-ゲン7S値と、前記陽性群におけるIV型コラ-ゲン7S値と、についての各ROC解析から、前記IV型コラ-ゲン7S値が3.35ng/mL以上3.75ng/mL未満の範囲内にあるときに、正常群とF0以上の群との間における判定一致率が75%以上、かつ、正常群とF0群との間において判定一致率が65%以上となることを見い出し、前記範囲内の値を、肝線維化進展度がF0以上の段階にあると鑑別する(前記正常群と前記陽性群との間で群間切り分けをする)ためのカットオフ値とできることを見い出した。
【0013】
さらに、前記IV型コラ-ゲン7S値に、各血清におけるAST値を組み合わせて算出したCA index-NASH値及びCA index-Fibrosis値についても同様にして、特定の範囲内の値を、それぞれ、肝線維化リスク群を正常群からスクリ-ニングするためのカットオフ値、或いは、肝線維化進展度がF0以上の段階にあると鑑別するためのカットオフ値とできることを見い出した。
【0014】
さらにまた、鑑別においては、正常群及びF0群とF1以上の群との間、並びに、正常群、F0群、及びF1群とF2以上の群との間においても同様に、前記IV型コラ-ゲン7S値、前記CA index-NASH値、前記CA index-Fibrosis値について、それぞれ特定の範囲内の値を、各群間の鑑別をするためのカットオフ値とできることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
かかる知見により得られた本発明の態様は次のとおりである。
[1]
被験者由来の血液検体のIV型コラ-ゲン7S濃度に基づくスコアを、予め定められたカットオフ値と比較して、前記スコアが前記カットオフ値よりも高い被験者を、肝線維化進展度がF0以上の段階にあると予測して選別することを特徴とする、被験者のスクリ-ニング方法。
[2]
前記スコアが、血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度であり、かつ、前記カットオフ値が、4.3~4.5ng/mLの範囲から選択される値であることを特徴とする、[1]に記載の被験者のスクリ-ニング方法。
[3]
前記スコアが、血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度、及び血清におけるAST活性値から、次式:
CA index-NASH値=0.994×IV型コラ-ゲン7S濃度(ng/mL)+0.0255×AST活性値(IU/L)
で求められるCA index-NASH値であり、かつ、前記カットオフ値が、4.6~5.2の範囲から選択される値であることを特徴とする、[1]に記載の被験者のスクリ-ニング方法。
[4]
前記スコアが、血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度、及び血清におけるAST活性値から、次式:
CA index-Fibrosis値=1.50×IV型コラ-ゲン7S濃度(ng/mL)+0.0264×AST活性値(IU/L)
で求められるCA index-Fibrosis値であり、かつ、前記カットオフ値が、6.7~7.5の範囲から選択される値であることを特徴とする、[1]に記載の被験者のスクリ-ニング方法。
[5]
前記肝線維化進展度がNASH重症度であることを特徴とする、[1]~[4]のうちのいずれか一項に記載のスクリ-ニング方法。
[6]
被験者由来の血液検体のIV型コラ-ゲン7S濃度に基づく第一のスコアを、予め定められた第一のカットオフ値と比較して、前記第一のスコアが前記第一のカットオフ値よりも高い被験者を、肝線維化進展度がF0段階又はF0以上の段階にあると鑑別することを特徴とする、被験者の鑑別方法。
[7]
前記第一のスコアが、血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度であり、かつ、前記第一のカットオフ値が、3.35ng/mL以上3.75ng/mL未満の範囲から選択される値であることを特徴とする、[6]に記載の被験者の鑑別方法。
[8]
前記第一のスコアが、血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度、及び血清におけるAST活性値から、次式:
CA index-NASH値=0.994×IV型コラ-ゲン7S濃度(ng/mL)+0.0255×AST活性値(IU/L)
で求められるCA index-NASH値であり、かつ、前記第一のカットオフ値が、3.82以上4.42未満の範囲から選択される値であることを特徴とする、[6]に記載の被検者の鑑別方法。
[9]
前記第一のスコアが、血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度、及び血清におけるAST活性値から、次式:
CA index-Fibrosis値=1.50×IV型コラ-ゲン7S濃度(ng/mL)+0.0264×AST活性値(IU/L)
で求められるCA index-Fibrosis値であり、かつ、前記第一のカットオフ値が、5.53以上6.35未満の範囲から選択される値であることを特徴とする、[6]に記載の被験者の鑑別方法。
[10]
被験者由来の血液検体のIV型コラ-ゲン7S濃度に基づく第二のスコアを、予め定められた第二のカットオフ値と比較して、前記第二のスコアが前記第二のカットオフ値よりも高い被験者を、肝線維化進展度がF1段階又はF1以上の段階にあると判定してさらに鑑別することを特徴とする、[6]~[9]のうちのいずれか一項に記載の被検者の鑑別方法。
[11]
前記第二のスコアが、血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度であり、かつ、前記第二のカットオフ値が、3.75ng/mL以上3.85ng/mL未満の範囲から選択される値であることを特徴とする、[10]に記載の被験者の鑑別方法。
[12]
前記第二のスコアが、前記CA index-NASH値であり、かつ、前記第二のカットオフ値が、4.42以上4.87未満の範囲から選択される値であることを特徴とする、[10]に記載の被験者の鑑別方法。
[13]
前記第二のスコアが、前記CA index-Fibrosis値であり、かつ、前記第二のカットオフ値が、6.35以上6.84未満の範囲から選択される値であることを特徴とする、[10]に記載の被験者の鑑別方法。
[14]
被験者由来の血液検体のIV型コラ-ゲン7S濃度に基づく第三のスコアを、予め定められた第三のカットオフ値と比較して、前記第三のスコアが前記第三のカットオフ値よりも高い被験者を、肝線維化進展度がF2段階又はF2以上の段階にあると判定してさらに鑑別することを特徴とする、[6]~[13]のうちのいずれか一項に記載の被験者の鑑別方法。
[15]
前記第三のスコアが、血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度であり、かつ、前記第三のカットオフ値が、3.85ng/mL以上4.85ng/mL未満の範囲から選択される値であることを特徴とする、[14]に記載の被験者の鑑別方法。
[16]
前記第三のスコアが、前記CA index-NASH値であり、かつ、前記第三のカットオフ値が、4.87以上6.09未満の範囲から選択される値であることを特徴とする、[14]に記載の被験者の鑑別方法。
[17]
前記第三のスコアが、前記CA index-Fibrosis値であり、かつ、前記第三のカットオフ値が、6.84以上8.54未満の範囲から選択される値であることを特徴とする、[14]に記載の被験者の鑑別方法。
[18]
前記肝線維化進展度がNASH重症度であることを特徴とする、[6]~[17]のうちのいずれか一項に記載の被験者の鑑別方法。
[19]
被験者由来の血液検体のIV型コラ-ゲン7S濃度に基づく第二のスコアを、予め定められた第二のカットオフ値と比較して、前記第二のスコアが前記第二のカットオフ値よりも高い被験者を、肝線維化進展度がF1段階又はF1以上の段階にあると鑑別することを特徴とする、被験者の鑑別方法。
[20]
前記第二のスコアが、血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度であり、かつ、前記第二のカットオフ値が、3.75ng/mL以上3.85ng/mL未満の範囲から選択される値であることを特徴とする、[19]に記載の被験者の鑑別方法。
[21]
前記第二のスコアが、血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度、及び血清におけるAST活性値から、次式:
CA index-NASH値=0.994×IV型コラ-ゲン7S濃度(ng/mL)+0.0255×AST活性値(IU/L)
で求められるCA index-NASH値であり、かつ、前記第二のカットオフ値が、4.42以上4.87未満の範囲から選択される値であることを特徴とする、[19]に記載の被験者の鑑別方法。
[22]
前記第二のスコアが、血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度、及び血清におけるAST活性値から、次式:
CA index-Fibrosis値=1.50×IV型コラ-ゲン7S濃度(ng/mL)+0.0264×AST活性値(IU/L)
で求められるCA index-Fibrosis値であり、かつ、前記第二のカットオフ値が、6.35以上6.84未満の範囲から選択される値であることを特徴とする、[19]に記載の被験者の鑑別方法。
[23]
前記肝線維化進展度がNASH重症度であることを特徴とする、[19]~[22]のうちのいずれか一項に記載の被験者の鑑別方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被験者の肝線維化進展度がF0以上の段階にあると予測して正常群からスクリ-ニングできる方法、並びに、被験者が正常であるかF0段階又はF0以上の段階にあるかの鑑別ができる方法を提供することが可能となる。
【0017】
これにより、正常群から、肝線維化進展度がF0以上の段階にあると予測される肝線維化リスク群をスクリ-ニングし、肝生検対象者や各治療対象者として選別することが可能となる。また、肝線維化進展度がF0の早期段階における鑑別が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(a)RIAキット又は(b)サンドイッチイムノアッセイによる各検体中のIV型コラ-ゲン7Sの濃度とその変動計数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。本発明は、
被験者由来の血液検体のIV型コラ-ゲン7S濃度に基づくスコアを、予め定められたカットオフ値と比較して、前記スコアが前記カットオフ値よりも高い被験者を、肝線維化進展度がF0以上の段階にあると予測して選別する、被験者のスクリ-ニング方法、並びに、
被験者由来の血液検体のIV型コラ-ゲン7S濃度に基づく第一のスコアを、予め定められた第一のカットオフ値と比較して、前記第一のスコアが前記第一のカットオフ値よりも高い被験者を、肝線維化進展度がF0段階又はF0以上の段階にあると鑑別する、被験者の鑑別方法、
を提供する。
【0020】
(肝線維化進展度)
本発明において、「肝線維化進展度」とは、肝臓における線維化の程度を示す指標であり、慢性肝炎の肝組織診断基準-新犬山分類(1996)により、次の段階:
F0:線維化無し
F1:門脈域の線維性拡大、慢性肝炎軽度
F2:線維性架橋形成、慢性肝炎中等度
F3:小葉構造のひずみを伴った線維性架橋形成、肝硬変初期
F4:肝硬変(結節形性傾向が全体に認められる)
の5段階に分類される。被験者がこれらの段階のうちのいずれの段階に真に分類されるかは、肝生検によって決定される。なお、欧米で用いられているDesmetらによる新ヨ-ロッパ分類は前記新犬山分類に一致しており、Ishakらによる新しいHAI(hepatitis activity index)スコアではステ-ジが6段階に細分化されているが、基本的に大きな差はない。
【0021】
前記肝線維化が惹起されうる疾患としては、例えば、ウイルス性慢性肝炎(B型肝炎、C型肝炎等)、アルコ-ル性慢性肝炎、NASHが挙げられる。特にNASHの予後は肝線維化の進行度で決定されるため、前記肝線維化進展度としては、「NASH重症度」として、本発明のスクリ-ニング方法又は鑑別方法を、NASH患者を正常群からスクリ-ニングする方法又はNASH患者の肝線維化進展度の鑑別方法として用いることが好ましい。
【0022】
本発明においては、肝線維化進展度がF0段階にある患者からなる群を「F0群」、肝線維化進展度がF1段階にある患者からなる群を「F1群」、肝線維化進展度がF2段階にある患者からなる群を「F2群」、肝線維化進展度がF3段階にある患者からなる群を「F3群」、肝線維化進展度がF4段階にある患者からなる群を「F4群」、という。
【0023】
また、これらに対して、本発明では、臨床的に肝疾患を有さないと判断された被検者を、肝線維化進展度がF0未満にあるとして、これら被検者からなる群を「正常群」という。本発明では、例えば、基礎疾患歴が無く、BMI:25以下、AST<25、ALT<25、AST>ALTである健常人からなる群を「正常群」としてもよい。ASTは、血清におけるAST活性値(単位:IU/L)を示し、ALTは、血清におけるALT活性値(単位:IU/L)を示し、それぞれ、従来公知の方法又はそれに準じた方法によって測定することができる。
【0024】
(被験者)
本発明において、「被験者」とは、本発明のスクリ-ニング又は鑑別を行う対象を示し、自覚症状のない者であっても、予後の決定や治療効果の確認等を目的とした、既に前記疾患に罹患していることが既知の患者であってもよい。前記被験者は、本発明のスクリ-ニングにより、正常群とF0以上の群(F0群、F1群、F2群、F3群、及びF4群を含む群、以下同様)とのいずれに分別されるかが予測され、また、本発明の鑑別により、正常群、F0群若しくはF0以上の群、F1群若しくはF1以上の群、F2群若しくはF2以上の群、F3群若しくはF3以上の群、及びF4群、のいずれかに分別される。
【0025】
(スクリ-ニング)
「スクリ-ニング」とは、目標疾患に罹患している可能性、又は目標状態になっている可能性がある被検者を選別することを示し、本発明では具体的に、正常群(陰性群)と肝線維化進展度がF0以上の群(陽性群)との2群に切り分け、被験者を、肝線維化進展度がF0以上の段階にあると予測して、すなわち被験者が陽性群にある可能性があると判断して、正常群(陰性群)から選別することを示す。この場合の予測基準としては、少なくとも陰性一致率(当該スクリ-ニングによって正常群と予測された被験者が真に正常群にある割合)が100%であることが好ましい。
【0026】
(鑑別)
「鑑別」とは、目標疾患又は状態を、他の疾患又は状態と区別することを示し、本発明では具体的に、肝線維化進展度が陰性である群(陰性群)と陽性である群(陽性群)との2群に切り分け、被験者が、前記陰性群に含まれるのか陽性群に含まれるのかを判別することを示す。かかる鑑別は、医師等による肝線維化進展度の診断の補助に適用することができる。正常群とF0群若しくはF0以上の群との間の鑑別の場合には、正常群が陰性群、F0以上の群(F0群、F1群、F2群、F3群、F4群)が陽性群;正常群及びF0群とF1群若しくはF1以上にある群との間の鑑別の場合には、正常群及びF0群が陰性群、F1以上の群(F1群、F2群、F3群、F4群)が陽性群;正常群、F0群、及びF1群とF2群若しくはF2以上の群との間の鑑別の場合には、正常群、F0群、及びF1群が陰性群、F2以上の群(F2群、F3群、F4群)が陽性群;正常群、F0群、F1群、及びF2群とF3群若しくはF3以上の群との間の鑑別の場合には、正常群、F0群、F1群、及びF2群が陰性群、F3以上の群(F3群、F4群)が陽性群;正常群、F0群、F1群、F2群、及びF3群とF4群との間の鑑別の場合には、正常群、F0群、F1群、F2群、及びF3群が陰性群、F4群が陽性群;となる。
【0027】
この場合の判別基準としては、少なくとも、陰性群と陽性群の最も陰性群に近い群との間(例えば、正常群とF0群との間)において判定一致率(当該鑑別によって陽性と判定された被検者が真に陽性群にあり、かつ、陰性と判定された被験者が真に陰性群にある率)が65%以上、かつ、陰性群と陽性群との間(例えば、正常群とF0以上の群との間)において判定一致率が75%以上であることが好ましい。
【0028】
(血液検体)
本発明において、「血液検体」としては、前記被験者から採取されたものであって下記のIV型コラ-ゲン7Sが存在し得る限り特に制限はないが、一般的には、被験者(ヒト)から採取された血清、血漿、全血が挙げられ、好ましくは血清又は血漿が挙げられ、より好ましくは血清である。また、前記血液検体としては、必要に応じて希釈液で適宜希釈又は懸濁されたものであっても前処理を施されたものであってもよい。
【0029】
(IV型コラ-ゲン7S)
本発明において、「IV型コラ-ゲン7S」とは、ヒトIV型コラ-ゲン7Sドメインを含む断片を示し、7Sドメインを含むヒトIV型コラ-ゲンの断片であれば特に制限されない。このような断片としては、例えば、7Sドメインからなる断片;7SドメインとTHドメインの全部又は一部とからなる断片;7SドメインとTHドメインの全部又は一部とNC1ドメインとからなる断片;が挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の混合物であってもよい。なお、本発明において、「7Sドメイン」には、多量体を形成していない7Sドメイン及び2~4量体を形成している7Sドメインをいずれも含み、「THドメイン」は、Triple Helical collagenous domainであって、らせん構造を形成していないTHドメイン及び前記らせん構造を形成しているTHドメインをいずれも含み、「NC1ドメイン」は、Noncollagenous domainであって、多量体を形成していないNC1ドメイン及び2量体を形成しているNC1ドメインをいずれも含む。
【0030】
(IV型コラ-ゲン7S濃度及びその測定方法)
本発明において、「血液検体のIV型コラ-ゲン7S濃度」としては、当該血液検体の血清又は血漿あたりのIV型コラ-ゲン7S濃度であることが好ましい。
【0031】
本発明に係るIV型コラ-ゲン7S濃度の測定方法としては、従来公知の方法又はそれに準じた方法を適宜採用することができ、また、市販の測定試薬を適宜用いてもよいが、正常群(好ましくはnが30以上)について血清又は血漿あたりのIV型コラ-ゲン7S濃度を測定した場合に、その95パ-センタイル値及び平均値+2SDを十分に小さくできる方法であることが好ましく、例えば、正常群の95パ-センタイル値を4.3ng/mL以下、及び/又は、平均値+2SDを4.5ng/mL以下とできる方法であることが好ましく、正常群の95パ-センタイル値を4.3ng/mL以下、かつ、平均値+2SDを4.5ng/mL以下とできる方法であることがより好ましく、正常群の95パ-センタイル値を4.1ng/mL以下、かつ、平均値+2SDを4.3ng/mL以下とできる方法であることがさらに好ましい。
【0032】
前記IV型コラ-ゲン7S濃度の測定方法としては、例えば、免疫学的手法が挙げられ、前記免疫学的手法としては、例えば、サンドイッチイムノアッセイ法、競合法、凝集法、イムノクロマト法、ウエスタンブロット法が挙げられる。また、前記免疫学的手法としては、例えば、標識として酵素を用いる酵素免疫測定法(EIA)、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)、及び電気化学発光免疫測定法(ECLIA)、標識として化学発光性物質で標識した化学発光免疫測定法(CLIA)、標識として蛍光を用いる蛍光免疫測定法(FIA)、並びに標識として放射性同位元素を用いるラジオイムノアッセイ(RIA)が挙げられる。また、前記IV型コラ-ゲン7S濃度の測定は、他に、例えば、液体クロマトグラフィ-質量分析(LC-MS)、液体クロマトグラフィタンデム質量分析(LC-MS/MS)等の質量分析法で行われてもよい。
【0033】
このうち、例えば、前記免疫学的手法を利用する場合には、高感度な検出システムを構築することができる点で、サンドイッチイムノアッセイ法が好適である。前記サンドイッチイムノアッセイ法においては、担体に固定した捕捉用分子で前記IV型コラ-ゲン7Sを捕捉し、また、前記IV型コラ-ゲン7Sを標識物質が結合した検出用分子に認識させて、捕捉用分子-IV型コラ-ゲン7S-検出用分子の複合体を形成させ、それを、必要に応じて洗浄後、前記標識物質の種類に応じた検出を行う。
【0034】
前記サンドイッチイムノアッセイ法において、前記捕捉用分子及び前記検出用分子としては、前記IV型コラ-ゲン7Sに結合可能な分子である限り特に限定されないが、捕捉用分子及び検出用分子の少なくとも一方に、ヒトIV型コラ-ゲン7Sドメインに特異的に結合可能なモノクロ-ナル抗体を用いることが好ましく、両方に前記ヒトIV型コラ-ゲン7Sドメインに特異的に結合可能なモノクロ-ナル抗体を用いることが好ましい。
【0035】
前記「ヒトIV型コラ-ゲン7Sドメインに特異的に結合可能なモノクロ-ナル抗体(以下、場合により「抗7Sドメイン抗体」という)」は、ヒトIV型コラ-ゲン7Sドメインのみを特異的に認識し、結合することができるモノクロ-ナル抗体である。すなわち、前記抗7Sドメイン抗体は、ヒトIV型コラ-ゲンの7Sドメイン以外の部位には結合しない。
【0036】
なお、本発明における「抗体」には、完全な抗体の他、抗体断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、単鎖抗体、ダイアボディ-等)や抗体の可変領域を結合させた低分子化抗体も含まれる。
【0037】
抗体が前記抗7Sドメイン抗体であることは、例えば、IV型コラ-ゲン7S断片を特異的に認識して結合することで確認することができる。前記IV型コラ-ゲン7S断片とは、好ましくは7Sドメインの4量体からなり、ヒトIV型コラ-ゲン分子をペプシン消化したペプシン可溶化IV型コラ-ゲン断片をさらにコラゲナ-ゼ処理して得られる分解産物の、分子量が200kDa以上、かつ、400kDa付近のゲルろ過分画に含まれる断片、又はそれに相当する分子量を有する7Sドメインを含むヒトIV型コラ-ゲンの断片を示す。前記コラゲナ-ゼ処理の時間としては、添加するコラゲナーゼの濃度によって異なるが、例えば、30分~14時間であることが好ましく、処理温度としては、30~37℃であることが好ましい。
【0038】
前記抗7Sドメイン抗体は、従来公知の方法を適宜採用、改良することによって産生することができ、例えば、抗体産生細胞とミエロ-マ細胞とを融合した細胞(ハイブリド-マ)によるモノクロ-ナル抗体の産生方法(代表的には、ケ-ラ-及びミルスタインによる方法(Kohler&Milstein,Nature,256:495,1975))によって産生することができる。前記抗体産生細胞としては、従来公知の方法及びそれに準じた方法で適宜調製することが可能であり、また、前記ミエロ-マ細胞としては、公知の種々の細胞株を使用することができる。
【0039】
前記抗体産生細胞とミエロ-マ細胞とから得られた多くのハイブリド-マの中から、前記IV型コラ-ゲン7S断片に対して高い反応性を示すモノクロ-ナル抗体を産生するハイブリド-マをスクリ-ニングし、また、必要に応じてその中からさらに、選抜したハイブリド-マが産生するモノクロ-ナル抗体のエピト-プ解析を行って、前記IV型コラ-ゲン7S断片に結合するモノクロ-ナル抗体を産生するクロ-ンを同定することによって、ヒトIV型コラ-ゲン7Sドメインに特異的に結合可能なモノクロ-ナル抗体(抗7Sドメイン抗体)を産生するハイブリド-マを得ることができる。
【0040】
また、前記抗7Sドメイン抗体としては、例えば、当該抗体をコ-ドするDNAが取得できれば、従来公知の組換えDNA法及びそれに準じた方法で適宜作製することもできる。
【0041】
前記サンドイッチイムノアッセイ法において、前記捕捉用分子及び前記検出用分子としては、互いに同一であっても異なっていてもよい。血液検体中においては、通常、ヒトIV型コラ-ゲン7Sドメインは2~4量体(好ましくは4量体)を形成しているため、捕捉用分子と検出用分子とが同一の部位を認識・結合する同種の分子であっても、各々が多量体のうちのいずれかのヒトIV型コラ-ゲン7Sドメインに結合することが可能である。
【0042】
前記担体としては、例えば、磁性粒子やラテックス粒子などの粒子、プラスチックプレ-トなどのプレ-ト、ニトロセルロ-スなどの繊維状物質を用いることができる。前記捕捉用分子は前記担体に直接的に固定しても、間接的に固定してもよい。直接的に固定する場合には、例えば、前記担体にカルボキシ基等の活性基を付与し、或いは、前記担体としてこれらの活性基を有するものを用い、当該活性基による共有結合によって前記捕捉用分子を前記担体表面に結合させる方法が挙げられる。また、間接的に固定する方法としては、例えば、前記捕捉用分子に結合する物質を前記担体表面に固定し、当該物質に捕捉用分子を結合させることによって補足用分子を前記担体に間接的に固定する方法が挙げられる。前記捕捉用分子が抗体である場合、捕捉用分子に結合する物質としては、例えば、当該抗体に結合可能な二次抗体、プロテインG、プロテインA、活性基を有するリンカ-分子が挙げられるが、これらに制限されない。また、前記捕捉用抗体がビオチン化されている場合には、アビジン化した抗体を利用することができる。
【0043】
前記標識物質としては、特に制限されず、例えば、酵素;アクリジニウム誘導体等の発光物質;ユ-ロピウム等の蛍光物質;アロフィコシアニン(APC)及びフィコエリスリン(R-PE)等の蛍光タンパク質;125I等の放射性物質;フルオレセインイソチオシアネ-ト(FITC)及びロ-ダミンイソチオシアネ-ト(RITC)等の低分子量標識物質;金粒子;アビジン;ビオチン;ラテックス;ジニトロフェニル(DNP);ジゴキシゲニン(DIG)が挙げられる。これらの中でも、前記標識物質としては、簡便かつ安定性のある試験を可能とする傾向にある観点、及び簡便迅速かつ高感度の測定を行うことが可能である観点からは、酵素及び発光物質が好ましく、酵素がより好ましい。前記酵素としては、例えば、西洋ワサビペルオキシダ-ゼ(HRP)、アルカリホスファタ-ゼ(ALP)、β-ガラクトシダ-ゼ(β-gal)、グルコ-スオキシダ-ゼ、ルシフェラ-ゼを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。前記標識物質と前記検出用分子とを結合させる方法としては、前記担体と前記捕捉用分子との結合方法として挙げた方法と同様の方法が挙げられる。
【0044】
前記サンドイッチイムノアッセイ法において、前記IV型コラ-ゲン7S濃度の測定は、前記標識物質によって生じるシグナルを検出し、これを定量することによって行うことができる。例えば、前記標識物質として酵素を用いた場合には、発色基質、蛍光基質、化学発光基質等を基質として添加することにより、前記基質に応じてIV型コラ-ゲン7S濃度の定量を行うことができる。なお、前記「シグナル」には、呈色(発色)、反射光、発光、蛍光、放射性同位体による放射線等が含まれ、肉眼で確認できるものの他、シグナルの種類に応じた測定方法・装置によって確認できるものも含まれる。
【0045】
このようなサンドイッチイムノアッセイ法の一態様としては、上記の正常群の95パ-センタイル値及び平均値+2SDをより十分に小さくできる方法として、例えば、捕捉用分子及び検出用分子の両方に前記抗7Sドメイン抗体を用いた以下の測定方法:
ヒトIV型コラ-ゲン7Sドメインに特異的に結合可能な第一のモノクロ-ナル抗体が担体に固定されてなる捕捉抗体と、ヒトIV型コラ-ゲン7Sドメインに特異的に結合可能な第二のモノクロ-ナル抗体が標識物質に結合してなる標識抗体と、を用いて、サンドイッチイムノアッセイにより、血液検体中のIV型コラ-ゲン7Sを測定する方法
が挙げられる。
【0046】
前記第一のモノクロ-ナル抗体及び第二のモノクロ-ナル抗体は前記抗7Sドメイン抗体に述べたとおりであり、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。また、前記担体及び標識物質としては前記捕捉用分子及び前記検出用分子に述べたとおりである。
【0047】
前記サンドイッチイムノアッセイによる測定方法においては、前記IV型コラ-ゲン7Sを前記捕捉抗体で捕捉する反応系の塩濃度が0.35M(M:mol/L、以下同じ)以上であることが好ましい。前記塩濃度としては、0.35~1.3Mであることがより好ましく、0.42~1.0Mであることがより好ましく、0.43~0.99Mであることがさらに好ましい。前記測定方法においては、前記塩濃度が前記範囲内にあることによって特に、健常人由来の検体における非特異反応が軽減される。
【0048】
前記IV型コラ-ゲン7Sを前記捕捉抗体で捕捉する反応系としては、前記血液検体と前記捕捉抗体と前記塩とを含む反応系であれば特に限定されないが、水溶液であることが好ましく、他に、生理食塩水、精製水;MES、Tris、CFB、MOPS、PIPES、HEPES、トリシンバッファ-、ビシンバッファ-、グリシンバッファ-等の緩衝液;BSA等の安定化タンパク質;各種界面活性剤をさらに含んでいてもよく、また、リバ-スサンドイッチ法や1ステップ法を採用する場合には前記標識抗体をさらに含んでいてもよい。なお、これらの他の成分に塩が含まれる場合、前記反応系の塩濃度には、当該塩の濃度も含まれる。
【0049】
また、前記試料に塩が含まれる場合、前記反応系の塩濃度には、当該塩の濃度も含まれる。血液検体(全血、血清、血漿)には、一般的に合計で140mM~150mM相当の塩が含まれる。前記試料として、例えば、血液検体(全血、血清、血漿)を用いる場合、下記実施例のように、0.6Mの塩を含む粒子希釈液50μLに、試料として血清検体30μLを加えると、前記IV型コラ-ゲン7Sを前記捕捉抗体で捕捉する反応系の塩濃度は、0.43Mとなる。
【0050】
前記塩としては、特に限定されないが、アルカリ金属イオン、アルカリ金属イオンの無機塩、及びアルカリ金属イオンの有機塩からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、前記アルカリ金属イオンの無機塩としては、アルカリ金属の塩化物、アルカリ金属の酒石酸塩、アルカリ金属の硝酸塩、アルカリ金属の硫酸塩が挙げられる。前記アルカリ金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオンが好ましい。この場合、前記塩濃度とは、アルカリ金属イオンの濃度に相当する濃度を示す。
【0051】
前記サンドイッチイムノアッセイ法としては、測定精度の観点から、2ステップ法であることが好ましく、フォワ-ドサンドイッチ法であることがより好ましい。このようなフォワ-ドサンドイッチ法である前記サンドイッチイムノアッセイ法のさらなる態様としては、
前記血液検体と前記捕捉抗体とを接触させ、前記IV型コラ-ゲン7Sを前記捕捉抗体で捕捉する捕捉工程と、
前記捕捉工程の後に、前記標識抗体と、前記捕捉抗体に捕捉されたIV型コラ-ゲン7Sとを接触させ、前記捕捉抗体に捕捉されたIV型コラ-ゲン7Sを標識する標識工程と、
を含む測定方法が挙げられる。
【0052】
前記捕捉工程、及び前記標識工程の条件としては特に制限されず、適宜調整することができるが、前記捕捉抗体と前記試料とを接触させる際には、前記塩濃度の条件を満たすことが好ましい。また、前記サンドイッチイムノアッセイ法としては、必要に応じて、前記捕捉工程の後、かつ、前記標識工程の前、及び/又は、前記標識工程の後に、前記捕捉抗体に捕捉されたIV型コラ-ゲン7Sと、それ以外の捕捉されていない夾雑物とを分離し、前記夾雑物を除去する洗浄工程をさらに含むことが好ましい。前記夾雑物を除去する方法としては、特に制限されず、従来公知の方法又はそれに準じた方法を適宜採用することができ、必要に応じて、洗浄液の注入及び除去を繰り返してもよい。前記洗浄液としては、例えば、中性(好ましくは、pH6~9)の公知の緩衝液(ナトリウムリン酸バッファ-、MES、Tris、CFB、MOPS、PIPES、HEPES、トリシンバッファ-、ビシンバッファ-、グリシンバッファ-等)が挙げられ、また、BSA等の安定化タンパク質や界面活性剤等が添加されたものであってもよい。
【0053】
前記サンドイッチイムノアッセイにおいては、捕捉抗体-IV型コラ-ゲン7S-標識抗体の複合体が得られるため、当該測定方法においては、前記複合体の標識抗体の標識物質を、当該標識物質に応じた所定の方法で測定する。これにより、血液検体中(好ましくは血清又は血漿中)のIV型コラ-ゲン7Sの量をシグナルとして検出することができる。また、血液検体中のIV型コラ-ゲン7S濃度は、一般的に、各濃度のIV型コラ-ゲン7Sを含む標準溶液による測定値との比較により行うことができる。
【0054】
(AST活性値及びその測定方法)
本発明において、「AST活性値」とは、前記血液検体の血清あたりのAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラ-ゼ)の活性値を示す。このようなAST活性値は、従来公知の方法又はそれに準じた方法で適宜測定することができる。また、市販の測定試薬を適宜用いてもよい。
【0055】
前記AST活性値の測定方法としては、例えば、血清におけるα-ケトグルタル酸のα-ケト基とL-アスパラギン酸のアミノ基との転移反応の触媒能として測定することができ、その測定方法の一例としては、先ず、血清検体にL-アスパラギン酸、β-ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド還元型(β-NADH)、及びリンゴ酸脱水素酵素(MDH)を添加し、次いで、これにα-ケトグルタル酸を添加して、β-NADHの減少に伴う吸光度の減少速度を測定することにより求めることができる。前記血清検体中にASTが存在する場合には、ASTが、α-ケトグルタル酸のα-ケト基とL-アスパラギン酸のアミノ基との転移反応を触媒し、オキサロ酢酸及びL-グルタミン酸が生成される。すると、このオキサロ酢酸にβ-NADHの存在下でリンゴ酸脱水素酵素が作用するため、リンゴ酸及びβ-ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド酸化型(β-NAD+)が生成される。したがって、前記β-NADHの減少に伴う吸光度の減少速度を測定することによって、血清におけるAST活性値を求めることができる。
【0056】
(スコア)
本発明において、「スコア」とは、下記のカットオフ値と比較するための、被験者由来の数値を示し、具体的には、被験者由来の血液検体のIV型コラ-ゲン7S濃度に基づいて求められる値を示す。本発明において、前記「スコア」には、「血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度」、「CA index-NASH値」、及び「CA index-Fibrosis値」が含まれる。
【0057】
本発明に係る「血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度」は、前記IV型コラ-ゲン7S濃度の測定方法により、血清又は血漿あたりのIV型コラ-ゲン7S濃度(単位:ng/mL)として得ることができる。
【0058】
また、本発明に係る「CA index-NASH値」は、前記血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度(IV型コラ-ゲン7S濃度)と、前記AST活性値の測定方法によって血清あたりのAST活性値(単位:IU/L)として得られる、「血清におけるAST活性値(AST活性値)」と、から、次式:
CA index-NASH値=0.994×IV型コラ-ゲン7S濃度(ng/mL)+0.0255×AST活性値(IU/L)
で求められる値である。ここで、CA index-NASH値は、NASH予測スコアリングシステムの一つであり、係数0.994及び0.0255は、非特許文献1に記載のとおり、データマイニングによって設定された係数である。
【0059】
さらに、本発明に係る「CA index-Fibrosis値」は、前記血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度と、前記血清におけるAST活性値と、から、次式:
CA index-Fibrosis値=1.50×IV型コラ-ゲン7S濃度(ng/mL)+0.0264×AST活性値(IU/L)
で求められる値である。ここで、CA index-Fibrosis値は、肝線維化スコアリングシステムの一つであり、係数1.50及び0.0264は、非特許文献1に記載のとおり、データマイニングによって設定された係数である。
【0060】
血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度のみならず、これをAST活性値と組み合わせた、前記CA index-NASH値、及びCA index-Fibrosis値によっても、これらを下記のカットオフ値と比較することによって、被験者の肝線維化進展度がF0段階又はF0以上の段階にあると予測して正常群からスクリ-ニングすることができ、また、被験者が正常であるかF0段階又はF0以上の段階にあるかの鑑別ができる。
【0061】
本発明の鑑別方法に係るスコアとしては、下記の第一のカットオフ値、第二のカットオフ値、第三のカットオフ値、第四のカットオフ値、及び第五のカットオフ値と比較するスコアを、それぞれ便宜上、「第一のスコア」、「第二のスコア」、「第三のスコア」、「第四のスコア」、及び「第五のスコア」とするが、これらスコアとしては、1種を単独であっても(例えば、全てのスコアが血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度であるなど)、第一~第五のカットオフ値の組み合わせに応じて2種以上の組み合わせ(例えば、第一のスコアが血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度、第二のスコアがCA index-Fibrosis値であるなど)であってもよい。
【0062】
(カットオフ値)
「カットオフ値」とは、前記スコアによって判定するための基準となる予め定められた値であり、分類結果の陽性又は陰性を判定するための境界値のことを示す。本発明のスクリ-ニング方法におけるカットオフ値は、前記スコアが当該カットオフ値よりも高い被験者を、肝線維化進展度がF0以上の段階にあると予測して選別するための値である。また、本発明の鑑別方法におけるカットオフ値は、前記スコアが当該カットオフ値よりも高い被験者を、前記陽性群にあると鑑別するための値である。
【0063】
本発明において、範囲で定められるカットオフ値は、被験者の種類、スクリ-ニング又は鑑別の目的に応じて、その範囲内からいずれか1点を選択して適用する。また、本発明の鑑別方法において、各カットオフ値の有効数字は、小数点以下2桁とする。
【0064】
また、本発明の鑑別方法に係るカットオフ値は、便宜上、正常群とF0群若しくはF0以上の群との間の鑑別の場合に「第一のカットオフ値」、正常群及びF0群とF1群若しくはF1以上にある群との間の鑑別の場合に「第二のカットオフ値」;正常群、F0群、及びF1群とF2群若しくはF2以上の群との間の鑑別の場合に「第三のカットオフ値」;正常群、F0群、F1群、及びF2群とF3群若しくはF3以上の群との間の鑑別の場合に「第四のカットオフ値」;正常群、F0群、F1群、F2群、及びF3群とF4群との間の鑑別の場合に「第五のカットオフ値」;とする。
【0065】
〔スクリ-ニング方法におけるカットオフ値〕
・IV型コラ-ゲン7S値をスコアとする場合
本発明のスクリ-ニング方法におけるカットオフ値は、血清又は血漿におけるIV型コラ-ゲン7S濃度(IV型コラ-ゲン7S値)を前記スコアとする場合には、4.3~4.5ng/mLの範囲から選択される値である。前記カットオフ値を前記範囲内から選択することにより、例えば、陰性一致率=100%で、肝線維化進展度がF0の段階にある患者の30%以上、F0以上の段階にある患者の50%以上、をいずれも拾い上げることが可能となる。
【0066】
本発明のスクリ-ニング方法におけるカットオフ値として、前記IV型コラ-ゲン7S値を前記スコアとする場合、当該カットオフ値は、正常群におけるIV型コラ-ゲン7S値の分布から求められる、95パ-センタイル値、及び平均値+2SDの値よりも高値であり、かつ、正常群におけるIV型コラ-ゲン7S値と、陽性群(肝線維化進展度がF0~F4のうちのいずれかの段階に分類される患者)におけるIV型コラ-ゲン7S値と、についてROC解析から決定された値である。ROC解析において用いる「ROC曲線」は、縦軸を真陽性率(TPF:True Position Fraction)すなわち感度、横軸を偽陽性率(FPF:False Position Fraction)すなわち(1-特異度)とし、検査結果のどの値を所見ありと判断するかの閾値、つまりカットオフポイント(cutoff point)を媒介変数として変化させてプロットしていくことで作成される。特異度とは、健常人を正確に陰性と判断する率である。本発明のスクリ-ニング方法におけるカットオフ値は、特異度を1とし、感度を高める(1に近づくようする)ように設定し、さらに正常群におけるIV型コラ-ゲン7S値の分布から求められる、95パ-センタイル値、及び平均値+2SDよりも高値とすることで決定することができる。
【0067】
・CA index-NASH値をスコアとする場合
本発明のスクリ-ニング方法におけるカットオフ値は、前記CA index-NASH値を前記スコアとする場合には、4.6~5.2の範囲から選択される値である。前記カットオフ値を前記範囲内から選択することにより、例えば、陰性一致率=100%で、肝線維化進展度がF0の段階にある患者の45%以上、F0以上の段階にある患者の70%以上、をいずれも拾い上げることが可能となる。
【0068】
本発明のスクリ-ニング方法におけるカットオフ値として、前記CA index-NASH値を前記スコアとする場合、当該カットオフ値は、正常群におけるCA index-NASH値の分布から求められる、95パ-センタイル値、及び平均値+2SDの値よりも高値であり、かつ、正常群におけるCA index-NASH値と、陽性群(肝線維化進展度がF0~F4のうちのいずれかの段階に分類される患者)におけるCA index-NASH値と、についてROC解析から求められた値である。このようなカットオフ値は、上記のIV型コラ-ゲン7S値を前記スコアとする場合のカットオフ値と同様に決定される。
【0069】
・CA index-Fibrosis値をスコアとする場合
本発明のスクリ-ニング方法におけるカットオフ値は、前記CA index-Fibrosis値を前記スコアとする場合には、6.7~7.5の範囲から選択される値である。前記カットオフ値を前記範囲内から選択することにより、例えば、陰性一致率=100%で、肝線維化進展度がF0の段階にある患者の35%以上、F0以上の段階にある患者の60%以上、をいずれも拾い上げることが可能となる。
【0070】
本発明のスクリ-ニング方法におけるカットオフ値として、前記CA index-Fibrosis値を前記スコアとする場合、当該カットオフ値は、正常群におけるCA index-Fibrosis値の分布から求められる、95パ-センタイル値、及び平均値+2SDの値よりも高値であり、かつ、正常群におけるCA index-Fibrosis値と、陽性群(肝線維化進展度がF0~F4のうちのいずれかの段階に分類される患者)におけるCA index-Fibrosis値と、についてROC解析から求められた値である。このようなカットオフ値は、上記のIV型コラ-ゲン7S値を前記スコアとする場合のカットオフ値と同様に決定される。
【0071】
〔鑑別方法におけるカットオフ値〕
・IV型コラ-ゲン7S値をスコアとする場合
本発明の鑑別方法におけるカットオフ値は、前記IV型コラ-ゲン7S値を前記スコアとする場合には、正常群とF0群若しくはF0以上の群との間のカットオフ値(第一のカットオフ値)、正常群及びF0群とF1群若しくはF1以上の群との間のカットオフ値(第二のカットオフ値)、並びに、正常群、F0群、及びF1群とF2群若しくはF2以上の群との間のカットオフ値(第三のカットオフ値)は、それぞれ、3.35ng/mL以上3.75ng/mL未満の範囲から選択される値、3.75ng/mL以上3.85ng/mL未満の範囲から選択される値、並びに、3.85ng/mL以上4.85ng/mL未満の範囲から選択される値、好ましくは、それぞれ、3.35ng/mL以上3.74ng/mL以下の範囲から選択される値、3.75ng/mL以上3.84ng/mL以下の範囲から選択される値、並びに、3.85ng/mL以上4.84ng/mL以下の範囲から選択される値である。
【0072】
本発明の鑑別方法におけるカットオフ値として、前記IV型コラ-ゲン7S値を前記スコアとする場合、当該カットオフ値は、陰性群におけるIV型コラ-ゲン7S値と、陽性群におけるIV型コラ-ゲン7S値と、についてのROC解析から、陰性群と陽性群の最も陰性群に近い群との間において判定一致率が65%以上、かつ、陰性群と陽性群との間における判定一致率が75%以上となり、かつ、他のカットオフ値の範囲と重ならないように設定された値である。例えば、正常群とF0群若しくはF0以上の群との鑑別の場合(第一のカットオフ値の場合)には、正常群とF0群との間において判定一致率が65%以上、かつ、正常群とF0以上の群との間における判定一致率が75%以上となり、かつ、第二~第三のカットオフ値の範囲と重ならないように設定された値である。
【0073】
・CA index-NASH値をスコアとする場合
本発明の鑑別方法におけるカットオフ値は、前記CA index-NASH値を前記スコアとする場合には、正常群とF0群若しくはF0以上の群との間のカットオフ値(第一のカットオフ値)、正常群及びF0群とF1群若しくはF1以上の群との間のカットオフ値(第二のカットオフ値)、並びに、正常群、F0群、及びF1群とF2群若しくはF2以上の群との間のカットオフ値(第三のカットオフ値)は、それぞれ、3.82以上4.42未満の範囲から選択される値、4.42以上4.87未満の範囲から選択される値、並びに、4.87以上6.09未満の範囲から選択される値、好ましくは、それぞれ、3.82以上4.41以下の範囲から選択される値、4.42以上4.86以下の範囲から選択される値、並びに、4.87以上6.08以下の範囲から選択される値である。
【0074】
本発明の鑑別方法におけるカットオフ値として、前記CA index-NASH値を前記スコアとする場合、当該カットオフ値は、陰性群におけるCA index-NASH値と、陽性群におけるCA index-NASH値と、についてのROC解析から、本発明の鑑別方法において前記IV型コラ-ゲン7S値をスコアとする場合と同様にして設定される。
【0075】
・CA index-Fibrosis値をスコアとする場合
本発明の鑑別方法におけるカットオフ値は、前記CA index-Fibrosis値を前記スコアとする場合には、正常群とF0群若しくはF0以上の群との間のカットオフ値(第一のカットオフ値)、正常群及びF0群とF1群若しくはF1以上の群との間のカットオフ値(第二のカットオフ値)、並びに、正常群、F0群、及びF1群とF2群若しくはF2以上の群との間のカットオフ値(第三のカットオフ値)は、それぞれ、5.53以上6.35未満の範囲から選択される値、6.35以上6.84未満の範囲から選択される値、並びに、6.84以上8.54未満の範囲から選択される値、好ましくは、それぞれ、5.53以上6.34以下の範囲から選択される値、6.35以上6.83以下の範囲から選択される値、並びに、6.84以上8.53以下の範囲から選択される値である。
【0076】
本発明の鑑別方法におけるカットオフ値として、前記CA index-Fibrosis値を前記スコアとする場合、当該カットオフ値は、陰性群におけるCA index-Fibrosis値と、陽性群におけるCA index-Fibrosis値と、についてのROC解析から、本発明の鑑別方法において前記IV型コラ-ゲン7S値をスコアとする場合と同様にして設定される。
【0077】
本発明の鑑別方法におけるカットオフ値を、それぞれ、前記範囲内から選択することにより、例えば、陰性群と陽性群の最も陰性群に近い群との間(例えば、正常群とF0以上の群との鑑別の場合には、正常群とF0群との間)において判定一致率が60%以上(好ましくは65%以上)、陰性群と陽性群との間(例えば、前記の場合には、正常群とF0以上の群との間)における判定一致率が70%以上(好ましくは75%以上)で、被験者が陰性群に含まれるのか陽性群に含まれるのかを判別することが可能となる。
【0078】
(スクリ-ニング方法)
本発明のスクリ-ニング方法では、被験者由来の血液検体のIV型コラ-ゲン7S濃度に基づくスコアを、前記カットオフ値と比較して、前記スコアが前記カットオフ値よりも高い被験者を、肝線維化進展度がF0以上の段階にあると予測して選別する。
【0079】
例えば、IV型コラ-ゲン7S値をスコアとする場合、被験者由来の血液検体の血清又は血漿あたりIV型コラ-ゲン7S濃度が4.3~4.5ng/mLの範囲から選択される値よりも高い場合には、その被験者は肝線維化進展度がF0段階又はF0以上の段階にあると予測して選別する。前記CA index-NASH値をスコアとする場合及び前記CA index-Fibrosis値をスコアとする場合も、各対応するカットオフ値を用いること以外は同様である。
【0080】
また、本発明のスクリーニング方法としては、前記IV型コラ-ゲン7S値、前記CA index-NASH値、及び前記CA index-Fibrosis値、をそれぞれスコアとするスクリーニング方法を2以上組み合わせ、例えば、いずれの方法でもスクリーニングされた被検者を最終的に選別してもよい。
【0081】
本発明のスクリ-ニング方法によれば、正常群から、肝線維化進展度がF0以上の段階にある可能性がある被験者を選別することができ、被験者の肝線維化進展度がF0の早期段階にあっても、正常群から選別することが可能となる。選別された被験者は、下記の鑑別方法によって肝線維化進展度がいずれの段階にあるかの鑑別に付す対象、肝生検の対象等にすることができる。
【0082】
(鑑別方法)
本発明の鑑別方法では、被験者由来の血液検体のIV型コラ-ゲン7S濃度に基づく第一のスコアを、前記第一のカットオフ値と比較して、前記第一のスコアが前記第一のカットオフ値よりも高い被験者を、肝線維化進展度がF0段階又はF0以上の段階にあると鑑別する。
【0083】
また、本発明の鑑別方法は、医師等による診断を補助する方法、又は医師等による診断のための情報を提供する方法と表現することもできる。前記診断のための情報を提供する方法としては、例えば、「肝線維化進展度を診断するための情報を提供する方法であり、被験者由来の血液検体のIV型コラ-ゲン7S濃度に基づく第一のスコアを、前記第一のカットオフ値と比較して、前記第一のスコアが前記第一のカットオフ値よりも高い被験者を、肝線維化進展度がF0以上の段階にあると判定する工程を含む方法」と表現することもできる。第二のスコア及び第二のカットオフ値、並びに、第三のスコア及び第三のカットオフ値を用いた各鑑別方法もそれぞれ同様である。
【0084】
本発明の鑑別方法は、例えば、前記IV型コラ-ゲン7S値を第一のスコアとする場合、被験者由来の血液検体の血清又は血漿あたりIV型コラ-ゲン7S濃度が3.35ng/mL以上3.75ng/mL未満の範囲から選択される値よりも高い場合には、その被験者は肝線維化進展度がF0段階又はF0以上の段階にあると鑑別する。前記CA index-NASH値を第一のスコアとする場合及び前記CA index-Fibrosis値を第一のスコアとする場合も、各対応するカットオフ値を用いること以外は同様である。
【0085】
また、本発明の鑑別方法では、被験者由来の血液検体のIV型コラ-ゲン7S濃度に基づく第二のスコア(例えば、IV型コラ-ゲン7S値)を、前記第二のカットオフ値と比較して、前記第二のスコアが前記第二のカットオフ値よりも高い被験者を、肝線維化進展度がF1段階又はF1以上の段階にあると鑑別する。さらに、本発明の鑑別方法では、被験者由来の血液検体のIV型コラ-ゲン7S濃度に基づく第三のスコア(例えば、IV型コラ-ゲン7S値)を、前記第三のカットオフ値と比較して、前記第三のスコアが前記第三のカットオフ値よりも高い被験者を、肝線維化進展度がF2段階又はF2以上の段階にあると鑑別する。前記CA index-NASH値を第二、第三のスコアとする場合、及び前記CA index-Fibrosis値を第二、第三のスコアとする場合も、各対応するカットオフ値を用いること以外はそれぞれ同様である。
【0086】
また、本発明の鑑別方法としては、前記IV型コラ-ゲン7S値、前記CA index-NASH値、及び前記CA index-Fibrosis値、をそれぞれ独立に、第一~第三のスコアとする鑑別方法を2以上組み合わせてもよく、例えば、第一のスコアとして前記IV型コラ-ゲン7S値、前記CA index-NASH値、及び前記CA index-Fibrosis値、のうちのいずれかを用いる鑑別方法を2以上組み合わせ、いずれの方法でも鑑別された被検者を最終的に鑑別してもよく、また例えば、第一~第三のスコアとして、前記IV型コラ-ゲン7S値、前記CA index-NASH値、及び前記CA index-Fibrosis値、をそれぞれ独立に用いて各段階の鑑別をしてもよい。
【0087】
本発明の鑑別方法によれば、被験者が、肝線維化進展度が陰性である群(陰性群)と陽性である群(陽性群)とのいずれに含まれるのかを判別することができ、被験者の肝線維化進展度がF0の早期段階にあっても、健常者と高精度で鑑別することが可能となる。鑑別された被験者は、第二、第三のスコアのカットオフ値による鑑別方法によって肝線維化進展度がさらに上位のいずれの段階にあるかのさらなる鑑別に付す対象、肝生検の対象等にすることができる。本発明の鑑別方法は、例えば、肝線維化進展度の予後の決定又はその補助や前記疾患の治療効果の確認等に用いることができる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。下記の実施例において、IV型コラ-ゲン7Sの測定、及びAST活性値の測定は、それぞれ、下記の方法で行った。なお、以下において、「%」の表示は、特に記載のない場合、重量/容量パ-セント(w/v%:g/100mL)を示す。
【0089】
<IV型コラ-ゲン7Sの測定>
〔IV型コラ-ゲン7S測定試薬〕
(1)コラゲナ-ゼ処理
先ず、ペプシン消化によって調製されたペプシン可溶化IV型コラ-ゲン断片(Sigma社、C-7521)を、0.5M酢酸に溶解し、0.2M NaCl、2mM CaCl2を含む50mM Tris(pH 7.2)に対して透析した。次いで、これにコラゲナ-ゼ(Collagenase”Amano”、Wako社、607-19021)を加えて、37℃で1時間インキュベ-トし、ペプシン可溶化IV型コラ-ゲン断片をさらに消化(コラゲナ-ゼ処理)した。コラゲナ-ゼ処理後の処理液を遠心分離した上清を、ゲルろ過によってさらに分離した。ゲルろ過カラムとしてSuperdex200pg 16/60を、ゲルろ過バッファ-として1mM EDTA 3Na、PBSを、それぞれ用いた。ヒトIV型コラーゲン7Sドメインの4量体の分子量に相当する、分子量が250kDa以上、かつ、400kDa付近に分布する分画を集めて、以下のIV型コラ-ゲン7S断片として使用した。
【0090】
「IV型コラ-ゲン7S断片」は、THドメインを含まない、7SドメインからなるIV型コラ-ゲン断片であり、このようにコラゲナ-ゼにより処理し、かつ、ゲルろ過分画を選択することにより得ることができる。また、下記の免疫原としては、コラゲナーゼ部分消化IV型コラ-ゲン断片を使用した。「コラゲナーゼ部分消化IV型コラ-ゲン断片」は、分子量が500kDa以上を主成分とする、ペプシン可溶化IV型コラーゲン断片をコラゲナーゼによる処理温度を25℃にして、1時間消化することによって調製される断片であり、主に、前記IV型コラ-ゲン7S断片と、7Sドメイン及びTHドメインの一部からなるIV型コラ-ゲン断片とからなる混合物である。なお、上記の「ペプシン可溶化IV型コラ-ゲン断片」は、ペプシン消化によって可溶化することにより調製される断片であり、7Sドメイン、THドメイン、又はNC1ドメインからなるIV型コラ-ゲン断片、及びこれらのうちの2以上を含むIV型コラ-ゲン断片の混合物である。
【0091】
(2)モノクロ-ナル抗体の作製
上記の(1)で調製した「コラゲナーゼ部分消化IV型コラ-ゲン断片」を免疫原として、モノクロ-ナル抗体を作製した。具体的には、BALB/cマウスに、10μg(1mg/mL)のコラゲナーゼ部分消化IV型コラ-ゲン断片を等量の完全フロイントアジュバントと混合したものを、2週間の間を空けて2回、腹腔内免疫した。さらに、不完全フロイントアジュバントで2週間の間を空けて2回、腹腔免疫した。さらに、PBSに溶解したコラゲナーゼ部分消化IV型コラ-ゲン断片10μgを最終免疫として尾静脈内に投与した。最終免疫後3日目にこのマウスより脾臓を摘出して個々の細胞にほぐし、RPMI-1640培地で3回洗浄した。対数増殖期のマウス骨髄腫細胞株Sp2/OAg14をRPMI-1640培地で3回洗浄後、前記脾臓細胞と混合し、細胞融合させた。得られた融合細胞は、遠心分離(200×g、5分間)によってPEGを除いた後、10%ウシ胎児血清、並びに、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジン(HAT)を含むRPMI-1640培地に懸濁し、96ウェル細胞培養プレ-トに播種した。約10日間培養してハイブリド-マのみを増殖させた。
【0092】
ペプシン可溶化IV型コラ-ゲン断片及び上記の(1)で調製したIV型コラ-ゲン7S断片を抗原として、それぞれ、PBSで1μg/mLに希釈し、96ウェルプレ-ト(Nunc Maxisorp社、469914)に100μL/ウェルで分注した。4℃で一晩、各抗原を吸着させた後、プレ-トをブロッキングバッファ-(1% BSA、3% スクロ-ス、0.1% ProClin300、PBS中)で2時間ブロックした。次いで、上記で調製したハイブリド-マの培養上清を加えて1時間インキュベ-トした。洗浄バッファ-(0.05% Tween 20 in PBS)で4回洗浄した後、5000倍希釈のPOD-Goat抗マウスIgGFcγ(Jackson Immuno Research社、115-036-071)を各ウェルに100μL/ウェル添加した。30分間インキュベ-トした後、各ウェルを洗浄バッファ-で4回洗浄し、TMB溶液(Nacalai社、05298)で発色させた。発色反応をH2SO4で停止させ、各ウェルの吸光度をプレ-トリ-ダ-で測定した。
【0093】
これにより、前記IV型コラ-ゲン7S断片を固相化したプレ-トに結合する、抗IV型コラ-ゲン7Sドメインモノクロ-ナル抗体を産生するハイブリド-マ株(CIV09株、CIV13株)を選択した。このようにして選択したCIV09株及びCIV13株は、前記ペプシン可溶化IV型コラ-ゲン断片及び前記IV型コラ-ゲン7S断片のいずれにも結合する。それぞれのハイブリド-マ株は無血清培地(Hybridoma SFM、Gibco社)で培養し、得られた培養上清からプロテインAカラムを用いて精製し、各抗IV型コラ-ゲン7Sドメインモノクロ-ナル抗体をそれぞれ含む抗体溶液を得た。各抗体溶液のタンパク質濃度は、波長280nmにおける吸光度によって決定した。
【0094】
(3)抗体結合粒子の作製
カルボキシル-アミン架橋剤(カルボジイミド、Thermo-Fisher Scientific社)を用い、製品マニュアルに従って、抗IV型コラ-ゲン7Sドメインモノクロ-ナル抗体CIV09(以下、場合により「CIV09抗体」という)を磁性粒子(富士レビオ社製)に化学結合させ、CIV09抗体固相化磁性粒子を得た。
【0095】
(4)標識抗体の作製
抗IV型コラ-ゲン7Sドメインモノクロ-ナル抗体CIV13(以下、場合により「CIV13抗体」という)とウシ小腸由来アルカリホスファタ-ゼ(オリエンタル酵母社製)とをヨシタケらの方法(Yoshitake et al.,J.Biochem.1982,92(5),p.1413-1424)により結合させ、アルカリホスファタ-ゼ標識CIV13抗体を調製した。すなわち、先ず、通例行われるとおり、脱塩処理したCIV13抗体とペプシンとを0.1Mクエン酸緩衝液(pH3.5)中で混合し、37℃で1時間静置してペプシン消化を行った。反応を停止させた後にゲルろ過精製を行い、Fc領域を除去したCIV13抗体を得た。次いで、2-メルカプトエチルアミン塩酸塩を添加して、チオ-ル化を行った。さらに、これを脱塩処理し、CIV13抗体のFab’断片を得た。
【0096】
N-(4-マレイミドブチリロキシ)-スクシンイミド(GMBS)処理をしたアルカリホスファタ-ゼと、前記CIV13抗体のFab’断片とを混合し、カップリングを行った。カップリング液に2-メルカプトエチルアミン塩酸塩及びヨ-ドアセトアミドを加え、反応を停止させることによって、アルカリホスファタ-ゼ標識CIV13抗体(ALP標識CIV13抗体)を得た。
【0097】
〔IV型コラ-ゲン7S測定(サンドイッチイムノアッセイ)〕
上記の(3)で調製したCIV09抗体固相化磁性粒子を0.03%含む懸濁液(50mM Tris、1% BSA、600mM NaCl)50μLに、検体30μLを加え攪拌後、37℃で8分間反応させた。反応後に、磁石にてB/F分離し、ルミパルス(登録商標)洗浄液(富士レビオ社製)で洗浄後、上記の(4)で調製したALP標識CIV13抗体を1μg/mL含む標識体液(50mM Bis-Tris、600mM NaCl、2% BSA、1mM MgCl2、0.3mM ZnCl2)50μLを加え、37℃で8分間反応させた。磁石にてB/F分離し、ルミパルス洗浄液にて洗浄後、化学発光基質(AMPPD:3-(2’-スピロアダマンタン)-4-メトキシ-4-(3’’-ホスホリルオキシ)フェニル-1,2-ジオキセタン・2ナトリウム塩)を含むルミパルス(登録商標)基質液(富士レビオ社製)を200μL加えて、37℃で4分間酵素反応を行い、生じた発光量(波長463nm)を測定し、カウント値を得た。また、既知濃度の前記IV型コラ-ゲン7S断片を含む標準溶液(50mM Tris、0.15M NaCl、2% BSA、pH7.2)も同様に測定し、検量線を作成した。作成した検量線を用いて、各検体の発光量(カウント値)から算出した濃度を、下記の各検体中のIV型コラ-ゲン7Sの濃度とした。
【0098】
<AST活性値の測定>
検体中のAST活性値の測定は、それぞれ、JSCC標準化対応法(日本臨床化学会、1996年)に準拠した測定方法にて、株式会社エスア-ルエルにより行われた。当該AST活性値測定方法においては、検体中にAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラ-ゼ)が存在すると、ASTが、α-ケトグルタル酸のα-ケト基とL-アスパラギン酸のアミノ基との転移反応を触媒し、オキサロ酢酸及びL-グルタミン酸が生成される。このオキサロ酢酸にβ-ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド還元型(β-NADH)の存在下でリンゴ酸脱水素酵素(MDH)を作用させると、リンゴ酸及びβ-ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド酸化型(β-NAD+)が生成される。したがって、β-NADHの減少に伴う吸光度の減少速度を測定することにより、AST活性値を求めることができる。
【0099】
<IV型コラ-ゲン7S感度の比較>
IV型コラ-ゲン7Sが低濃度に含まれる、濃度既知の検体(血清、検体数:5)について、上記のIV型コラ-ゲン7S測定試薬及び測定方法を行い(測定回数n=6)、各検体中のIV型コラ-ゲン7Sの濃度を算出し、その変動計数(測定値CV(%))を算出した。また、対象試薬として、抗体結合競合阻害を原理とし、抗ヒトIV型コラ-ゲンウサギポリクロ-ナル抗体を用いたラジオイムノアッセイであるIV型コラ-ゲン・7Sキット(DENISファ-マ社製、以下、場合により「RIAキット」という)を用い、添付文書に従って測定を行い、各検体中のIV型コラ-ゲン7Sの濃度を算出した。結果を
図1((a)RIAキット、(b)サンドイッチイムノアッセイ)にそれぞれ示す。
【0100】
図1においては、それぞれ、横軸に予め既知としていたIV型コラ-ゲン7Sの濃度、縦軸に測定値CVをプロットし、近似曲線から測定値CVが10%となるIV型コラ-ゲン7S濃度を算出した。測定値CVが10%以下となる濃度を定量限界とした場合、RIAキットの定量感度は3.6ng/mLであったのに対して、上記のIV型コラ-ゲン7S測定法(サンドイッチイムノアッセイ)の定量感度は0.09ng/mLであった。このように、上記のIV型コラ-ゲン7S測定法においては測定感度及び再現性が良好であったため、低値域の測定が可能となった。
【0101】
(実施例1)
検体として、健常人由来の血清(健常人検体)37例(正常群)を用い、各検体中のIV型コラ-ゲン7Sの濃度(IV型コラ-ゲン7S値)を、上記のサンドイッチイムノアッセイによるIV型コラ-ゲン7S測定試薬及び測定方法(以下、場合により単に「サンドイッチイムノアッセイ」とする)と、前記RIAキットと、によりそれぞれ測定した。得られた測定値から、95パ-センタイル値、平均値、及び平均値+2SD(SD:標準偏差、以下同じ)を算出した。なお、健常人は、基礎疾患歴が無く、BMI:25以下、AST<25、ALT<25、AST>ALTの者である。下記の表1に、各IV型コラ-ゲン7S濃度(ng/mL)が測定された頻度(検体数)、及びその分布より得られた各値を示す。
【0102】
【0103】
他方、検体として、肝生検の病理診断により肝線維化進展度が確定し、肝線維化進展度F0~F4群に分類される患者由来の血清(患者検体)165例(陽性群、うち、F0群:41例)を用い、同様に、IV型コラ-ゲン7S値を測定した。
【0104】
上記サンドイッチイムノアッセイの測定結果から、正常群(健常人からなる群)をほぼ100%陰性と判断できる値を算出した。具体的には、正常群の95パ-センタイル値及び平均値+2SDの値よりも高値であり、かつ、正常群及び陽性群のROC(Receiver Operating Characteristic)解析から、感度が高く、正常群の陰性一致率が100%であるIV型コラ-ゲン7Sの濃度を4.3~4.5ng/mLと算出した。
【0105】
次いで、このように算出された濃度を暫定カットオフ値として、かかる値によって、被験者群から肝線維化進展度がF0以上の段階にある患者を拾い上げる(スクリ-ニングする)ことが可能かを検討するため、各陽性率を評価した。すなわち、先ず、カットオフ値を4.3ng/mLとした場合、陰性一致率=100%、肝生検により確定した肝線維化進展度がF0段階にある患者の陽性率=37%、前記肝線維化進展度がF0以上の段階にある患者(F0~F4のうちのいずれかの段階にある患者、以下同様)の陽性率=64%であった。よって、F0段階にある患者の37%、F0以上の段階にある患者の64%、を拾い上げることができた。なお、「陰性一致率」は、カットオフ値により陰性と判定された検体が真の陰性検体(本試験では正常群)である割合を示す。また、「陽性率」は、陽性検体(本試験では患者検体)がカットオフ値により陽性であると判定される割合を示す。次いで、カットオフ値を4.5ng/mLとした場合、陰性一致率=100%、前記肝線維化進展度がF0段階にある患者の陽性率=32%、前記肝線維化進展度がF0以上の段階にある患者の陽性率=59%であった。よって、F0段階にある患者の32%、F0以上の段階にある患者の59%、をそれぞれ拾い上げることができた。
【0106】
これらの結果から、IV型コラ-ゲン7Sの検体中濃度4.3ng/mL以上、かつ、4.5ng/mL以下の範囲内の値を、被験者の肝線維化進展度がF0以上の段階にあると予測して、肝線維化リスク群(肝生検対象者等)を正常群からスクリ-ニングするためのカットオフ値とできることが示された。一方、従来使用されているRIAキットの測定結果からは、95パ-センタイル値及び平均値+2SDの値が高く、被験者群から肝線維化進展度がF0以上の段階にある可能性のある肝線維化リスク群をスクリ-ニング可能なカットオフ値を設定できなかった。
【0107】
(実施例2)
〔検体〕
実施例1において各検体(正常群37例、肝生検により確定した肝線維化進展度がF0~F4のうちのいずれかの段階にある患者からなる陽性群165例)について測定したIV型コラ-ゲン7Sの濃度を下記の表2に示す。表2において、各IV型コラ-ゲン7Sの濃度は、肝線維化進展度の段階ごとの平均値で示し、そのSD値も併せて示す。表2に示したように、肝線維化進展度の段階が高くなるにつれてIV型コラ-ゲン7S値も増加した。
【0108】
【0109】
〔正常群対F0以上の群又はF0群〕
次いで、検体中のIV型コラ-ゲン7S濃度に関し、上記の表2に示す検体を用いて、正常群と、肝線維化進展度がF0以上の群(肝線維化進展度がF0以上の段階にある群、以下同様)又はF0群と、について、それぞれROC解析を行って各カットオフ値候補を設定した。これらの値をカットオフ値としたときの判定一致率(患者検体が陽性と判断され、健常人検体が陰性と判断される率)を、次式:
判定一致率(%)=(正常群の陰性数+F0以上の群(又はF0群)の陽性数)/(正常群の検体数+F0以上の群(又はF0群)の検体数)
により算出した。前記式において、「陰性数」とは、各カットオフ値候補によって陰性群(正常群)にあると判定された数を示し、「陽性数」とは、各カットオフ値候補によって陽性群(F0以上の群又はF0群)にあると判定された数を示す。下記の表3に、正常群とF0以上の群との間において各カットオフ値としたときの判定一致率を示す。また、下記の表4に、正常群とF0群との間において各カットオフ値としたときの判定一致率を示す。
【0110】
【0111】
【0112】
表3に示したように、正常群とF0以上の群との間において、判定一致率が75%以上となるカットオフ値は3.35ng/mL以上であった。また、表4に示したように、正常群とF0群との間において判定一致率が65%以上となるカットオフ値は、3.05ng/mL以上、かつ、4.65ng/mL以下であった。これより、正常群とF0以上の群との間において判定一致率が75%以上となり、かつ、正常群とF0群との間において判定一致率が65%以上となるカットオフ値は、3.35ng/mL以上、かつ、4.65ng/mL以下の範囲内にあることが見い出された。
【0113】
〔正常群及びF0群対F1以上の群又はF1群〕
また、同様に、正常群及びF0群、並びに、F1以上の群又はF1群について、それぞれROC解析を行って各カットオフ値候補を設定した。これらの値をカットオフ値としたときの判定一致率を、次式:
判定一致率(%)=(正常群の陰性数+F0群の陰性数+F1以上の群(又はF1群)の陽性数)/(正常群の検体数+F0群の検体数+F1以上の群(又はF1群)の検体数)
により算出した。前記式において、「陰性数」とは、各カットオフ値候補によって陰性群(正常群、F0群)にあると判定された数を示し、「陽性数」とは、各カットオフ値候補によって陽性群(F1以上の群又はF1群)にあると判定された数を示す。下記の表5に、正常群及びF0群とF1以上の群との間において各カットオフ値としたときの判定一致率を示す。また、下記の表6に、正常群及びF0群とF1群との間において各カットオフ値としたときの判定一致率を示す。
【0114】
【0115】
【0116】
表5に示したように、正常群及びF0群とF1以上の群との間において、判定一致率が75%以上となるカットオフ値は、3.75ng/mL以上、かつ、5.85ng/mL以下であった。また、表6に示したように、正常群及びF0群とF1群との間において判定一致率が65%以上となるカットオフ値は、3.85ng/mL以下であった。これより、正常群及びF0群とF1以上の群との間において判定一致率が75%以上となり、かつ、正常群及びF0群とF1群との間において判定一致率が65%以上となるカットオフ値は、3.75ng/mL以上、かつ、3.85ng/mL以下の範囲内にあることが見い出された。
【0117】
〔正常群及びF0~F1群対F2以上の群又はF2群〕
さらに、同様に、正常群及びF0~F1群、並びに、F2以上の群又はF2群について、それぞれROC解析を行って各カットオフ値候補を設定した。これらの値をカットオフ値としたときの判定一致率を、次式:
判定一致率(%)=(正常群の陰性数+F0~F1群の陰性数+F2以上の群(又はF2群)の陽性数)/(正常群の検体数+F0~F1群の検体数+F2以上の群(又はF2群)の検体数)
により算出した。前記式において、「陰性数」とは、各カットオフ値候補によって陰性群(正常群、F0群、F1群)にあると判定された数を示し、「陽性数」とは、各カットオフ値候補によって陽性群(F2以上の群又はF2群)にあると判定された数を示す。下記の表7に、正常群及びF0~F1群とF2以上の群との間において各カットオフ値としたときの判定一致率を示す。また、下記の表8に、正常群及びF0~F1群とF2群との間において各カットオフ値としたときの判定一致率を示す。
【0118】
【0119】
【0120】
表7に示したように、正常群及びF0~F1群とF2以上の群との間において、判定一致率が75%以上となるカットオフ値は、3.55ng/mL以上、かつ、5.05ng/mL以下であった。また、表8に示したように、正常群及びF0~F1群とF2群との間において判定一致率が65%以上となるカットオフ値は、4.85ng/mL以下であった。これより、正常群及びF0~F1群とF2以上の群との間において判定一致率が75%以上となり、かつ、正常群及びF0~F1群とF2群との間において判定一致率が65%以上となるカットオフ値は、3.55ng/mL以上、かつ、4.85ng/mL以下の範囲内にあることが見い出された。
【0121】
以上の結果から、正常群とF0群若しくはF0以上の群との間、正常群及びF0群とF1群若しくはF1以上の群との間、正常群、F0群、及びF1群とF2群若しくはF2以上の群との間の各カットオフ値に重なりが生じないようにすると、各群間のカットオフ値は、それぞれ、3.35ng/mL以上3.75ng/mL未満、3.75ng/mL以上3.85ng/mL未満、3.85ng/mL以上4.85ng/mL未満、の範囲内にあることが見い出された。これらのカットオフ値によって、正常群とF0群若しくはF0以上の群との鑑別、正常群及びF0群とF1群若しくはF1以上の群との鑑別、正常群、F0群、及びF1群とF2群若しくはF2以上の群との鑑別ができる。
【0122】
(実施例3)
実施例1と同じ検体(正常群37例、肝生検により確定した肝線維化進展度がF0~F4のうちのいずれかの段階にある患者からなる陽性群165例)について、上記の方法で、各検体中のAST活性値を測定した。得られたAST活性値と、実施例1で測定した各検体中のIV型コラ-ゲン7S濃度とから、次式:
CA index-NASH値=0.994×IV型コラ-ゲン7S濃度(ng/mL)+0.0255×AST活性値(IU/L)
により、CA index-NASH値を算出した。得られたCA index-NASH値を肝線維化進展度ごとの平均値で、そのSDと合わせて下記の表9に示す。表9に示したように、肝線維化進展度が高くなるにつれてCA index-NASH値も上昇した。
【0123】
【0124】
得られたCA index-NASH値から、95パ-センタイル値、平均値+2SD値を算出した。正常群の95パ-センタイル値及び平均値+2SDの値、並びに、正常群及び陽性群のROC解析から、実施例1と同様にして、陰性一致率が100%であるCA index-NASH値を4.6~5.2と算出した。
【0125】
次いで、このように算出された値を暫定カットオフ値として、かかる値によって正常群から肝線維化進展度がF0以上の段階にある患者を拾い上げる(スクリ-ニングする)ことが可能かを検討するため、各陽性率を評価した。先ず、カットオフ値を4.6とした場合、陰性一致率=100%、肝生検により確定した肝線維化進展度がF0段階にある患者の陽性率=56%、前記肝線維化進展度がF0以上の段階にある患者の陽性率=93%であった。次いで、カットオフ値を5.2とした場合、陰性一致率=100%、前記肝線維化進展度がF0段階にある患者の陽性率=50%、前記肝線維化進展度がF0以上の段階にある患者の陽性率=73%であった。これらの結果から、CA Index-NASH値のカットオフ値を4.6以上、かつ、5.2以下の範囲内の値とすることで、被験者が肝線維化進展度がF0以上の段階にあると予測して、肝線維化リスク者(肝生検対象者等)を正常群からスクリ-ニングできることが示された。
【0126】
(実施例4)
〔正常群対F0以上の群又はF0群〕
CA Index-NASH値に関し、上記の表9に示す検体を用いて、正常群と、前記肝線維化進展度がF0以上の群又はF0群と、について、それぞれROC解析を行って各カットオフ値候補を設定した。これらの値をカットオフ値としたときの判定一致率を、実施例2の〔正常群対F0以上の群又はF0群〕に記載の式により算出した。下記の表10に、正常群とF0以上の群との間において各カットオフ値としたときの判定一致率を示す。また、下記の表11に、正常群とF0群との間において各カットオフ値としたときの判定一致率を示す。
【0127】
【0128】
【0129】
表10に示したように、正常群とF0以上の群との間において、判定一致率が75%以上となるカットオフ値は3.82以上であった。また、表11に示したように、正常群とF0群との間において判定一致率が65%以上となるカットオフ値は3.35以上、かつ、5.76以下であった。これより、正常群とF0以上の群との間において判定一致率が75%以上となり、かつ、正常群とF0群との間において判定一致率が65%以上となるカットオフ値は、3.82以上、かつ、5.76以下の範囲内にあることが見い出された。
【0130】
〔正常群及びF0群対F1以上の群又はF1群〕
また、同様に、正常群及びF0群、並びに、F1以上の群又はF1群について、それぞれROC解析を行って各カットオフ値候補を設定した。これらの値をカットオフ値としたときの判定一致率を、実施例2の〔正常群及びF0群対F1以上の群又はF1群〕に記載の式により算出した。下記の表12に、正常群及びF0群とF1以上の群との間において各カットオフ値としたときの判定一致率を示す。また、下記の表13に、正常群及びF0群とF1群との間において各カットオフ値としたときの判定一致率を示す。
【0131】
【0132】
【0133】
表12に示したように、正常群及びF0群とF1以上の群との間において、判定一致率が75%以上となるカットオフ値は、4.42以上、かつ、7.39以下であった。また、表13に示したように、正常群及びF0群とF1群との間において判定一致率が65%以上となるカットオフ値は4.87以下であった。これより、正常群及びF0群とF1以上の群との間において判定一致率が75%以上となり、かつ、正常群及びF0群とF1群との間において判定一致率が65%以上となるカットオフ値は、4.42以上、かつ、4.87以下の範囲内にあることが見い出された。
【0134】
〔正常群及びF0~F1群対F2以上の群又はF2群〕
さらに、同様に、正常群及びF0~F1群、並びに、F2以上の群又はF2群について、それぞれROC解析を行って各カットオフ値候補を設定した。これらの値をカットオフ値としたときの判定一致率を、実施例2の〔正常群及びF0~F1群対F2以上の群又はF2群〕に記載の式により算出した。下記の表14に、正常群及びF0~F1群とF2以上の群との間において各カットオフ値としたときの判定一致率を示す。また、下記の表15に、正常群及びF0~F1群とF2群との間において各カットオフ値としたときの判定一致率を示す。
【0135】
【0136】
【0137】
表14に示したように、正常群及びF0~F1群とF2以上の群との間において、判定一致率が75%以上となるカットオフ値は、4.04以上、かつ、6.36以下であった。また、表15に示したように、正常群及びF0~F1群とF2群との間において判定一致率が65%以上となるカットオフ値は6.09以下であった。これより、正常群及びF0~F1群とF2以上の群との間において判定一致率が75%以上となり、かつ、正常群及びF0~F1群とF2群との間において判定一致率が65%以上となるカットオフ値は、4.04以上、かつ、6.09以下の範囲内にあることが見い出された。
【0138】
以上の結果から、正常群とF0群若しくはF0以上の群との間、正常群及びF0群とF1群若しくはF1以上の群との間、正常群、F0群、及びF1群とF2群若しくはF2以上の群との間の各カットオフ値に重なりが生じないようにすると、各群間のカットオフ値は、それぞれ、3.82以上4.42未満、4.42以上4.87未満、4.87以上6.09未満、の範囲内にあることが見い出された。これらのカットオフ値によって、正常群とF0群若しくはF0以上の群との鑑別、正常群及びF0群とF1群若しくはF1以上の群との鑑別、正常群、F0群、及びF1群とF2群若しくはF2以上の群との鑑別ができる。
【0139】
(実施例5)
実施例3で得られた各検体のAST活性値と、実施例1で測定した各検体中のIV型コラ-ゲン7S濃度とから、次式:
CA index-Fibrosis値=1.50×IV型コラ-ゲン7S濃度(ng/mL)+0.0264×AST活性値(IU/L)
により、CA index-Fibrosis値を算出した。得られたCA index-Fibrosis値を肝線維化進展度ごとの平均値で、そのSDと合わせて下記の表16に示す。表16に示したように、肝線維化進展度が高くなるにつれてCA index-Fibrosis値も上昇した。
【0140】
【0141】
得られたCA index-Fibrosis値から、95パ-センタイル値、平均値+2SD値を算出した。正常群の95パ-センタイル値及び平均値+2SD、並びに、正常群及び陽性群のROC解析から、実施例1と同様にして、陰性一致率が100%であるCA index-Fibrosis値を6.7~7.5と算出した。
【0142】
次いで、このように算出された値を暫定カットオフ値として、かかる値によって正常群から肝線維化進展度がF0以上の段階にある患者を拾い上げる(スクリ-ニングする)ことが可能かを検討するため、各陽性率を評価した。先ず、カットオフ値を6.7とした場合、陰性一致率=100%、肝生検により確定した肝線維化進展度がF0段階にある患者の陽性率=54%、前記肝線維化進展度がF0以上の段階にある患者の陽性率=81%であった。次いで、カットオフ値を7.5とした場合、陰性一致率=100%、前記肝線維化進展度がF0段階にある患者の陽性率=36%、前記肝線維化進展度がF0以上の段階にある患者の陽性率=65%であった。これらの結果から、CA Index-Fibrosis値のカットオフ値を6.7以上、かつ、7.5以下の範囲内の値とすることで、被験者が肝線維化進展度がF0以上の段階にあると予測し、肝線維化リスク者(肝生検対象者等)を正常群からスクリ-ニングできることが示された。
【0143】
(実施例6)
〔正常群対F0以上の群又はF0群〕
CA Index- Fibrosis値に関し、上記の表16に示す検体を用いて、正常群と、前記肝線維化進展度がF0以上の群又はF0群と、について、それぞれROC解析を行って各カットオフ値候補を設定した。これらの値をカットオフ値としたときの判定一致率を、実施例2の〔正常群対F0以上の群又はF0群〕に記載の式により算出した。下記の表17に、正常群とF0以上の群との間において各カットオフ値としたときの判定一致率を示す。また、下記の表18に、正常群とF0群との間において各カットオフ値としたときの判定一致率を示す。
【0144】
【0145】
【0146】
表17に示したように、正常群とF0以上の群との間において、判定一致率が75%以上となるカットオフ値は5.53以上であった。また、表18に示したように、正常群とF0群との間において判定一致率が65%以上となるカットオフ値は4.75以上、かつ、8.15以下であった。これより、正常群とF0以上の群との間において判定一致率が75%以上となり、かつ、正常群とF0群との間において判定一致率が65%以上となるカットオフ値は、5.53以上、かつ、8.15以下の範囲内にあることが見い出された。
【0147】
〔正常群及びF0群対F1以上の群又はF1群〕
また、同様に、正常群及びF0群、並びに、F1以上の群又はF1群について、それぞれROC解析を行って各カットオフ値候補を設定した。これらの値をカットオフ値としたときの判定一致率を、実施例2の〔正常群及びF0群対F1以上の群又はF1群〕に記載の式により算出した。下記の表19に、正常群及びF0群とF1以上の群との間において各カットオフ値としたときの判定一致率を示す。また、下記の表20に、正常群及びF0群とF1群との間において各カットオフ値としたときの判定一致率を示す。
【0148】
【0149】
【0150】
表19に示したように、正常群及びF0群とF1以上の群との間において、判定一致率が75%以上となるカットオフ値は、6.35以上、かつ、10.55以下であった。また、表20に示したように、正常群及びF0群とF1群との間において判定一致率が65%以上となるカットオフ値は6.84以下であった。これより、正常群及びF0群とF1以上の群との間において判定一致率が75%以上となり、かつ、正常群及びF0群とF1群との間において判定一致率が65%以上となるカットオフ値は、6.35以上、かつ、6.84以下の範囲内にあることが見い出された。
【0151】
〔正常群及びF0~F1群対F2以上の群又はF2群〕
さらに、同様に、正常群及びF0~F1群、並びに、F2以上の群又はF2群について、それぞれROC解析を行って各カットオフ値候補を設定した。これらの値をカットオフ値としたときの判定一致率を、実施例2の〔正常群及びF0~F1群対F2以上の群又はF2群〕に記載の式により算出した。下記の表21に、正常群及びF0~F1群とF2以上の群との間において各カットオフ値としたときの判定一致率を示す。また、下記の表22に、正常群及びF0~F1群とF2群との間において各カットオフ値としたときの判定一致率を示す。
【0152】
【0153】
【0154】
表21に示したように、正常群及びF0~F1群とF2以上の群との間において、判定一致率が75%以上となるカットオフ値は、5.85以上、かつ、8.94以下であった。また、表22に示したように、正常群及びF0~F1群とF2群との間において判定一致率が65%以上となるカットオフ値は8.54以下であった。これより、正常群及びF0~F1群とF2以上の群との間において判定一致率が75%以上となり、かつ、正常群及びF0~F1群とF2群との間において判定一致率が65%以上となるカットオフ値は、5.85以上、かつ、8.54以下の範囲内にあることが見い出された。
【0155】
以上の結果から、正常群とF0群若しくはF0以上の群との間、正常群及びF0群とF1群若しくはF1以上の群との間、正常群、F0群、及びF1群とF2群若しくはF2以上の群との間の各カットオフ値に重なりが生じないようにすると、各群間のカットオフ値は、それぞれ、5.53以上6.35未満、6.35以上6.84未満、6.84以上8.54未満、の範囲内にあることが見い出された。これらのカットオフ値によって、正常群とF0群若しくはF0以上の群との鑑別、正常群及びF0群とF1群若しくはF1以上の群との鑑別、正常群、F0群、及びF1群とF2群若しくはF2以上の群との鑑別ができる。
【0156】
(実施例7)
実施例1~実施例6で得られた、各検体におけるIV型コラ-ゲン7S濃度、CA Index-NASH値、CA Index-Fibrosis値、並びに、これらの各カットオフ値を用いて、正常群、肝線維化進展度がF0~F4である各群における各2群間を鑑別した際における陽性一致率、陰性一致率、判定一致率を算出した。結果を下記の表23~表28に示す。
【0157】
〔正常群対F0以上の群又はF0群〕
【0158】
【0159】
【0160】
表23~表24に示したように、IV型コラ-ゲン7S濃度、CA Index-NASH値、CA Index-Fibrosis値についていずれも、各カットオフ値によって、正常群とF0以上の群とでは75%以上の判定一致率で、正常群とF0群とでは65%以上の判定一致率で、それぞれ鑑別ができた。
【0161】
〔正常群及びF0群対F1以上の群又はF1群〕
【0162】
【0163】
【0164】
表25~表26に示したように、前記IV型コラ-ゲン7S値、前記CA Index-NASH値、前記CA Index-Fibrosis値についていずれも、各カットオフ値によって、正常群及びF0群とF1以上の群とでは75%以上の判定一致率で、正常群及びF0群とF1群とでは65%以上の判定一致率で、それぞれ鑑別ができた。
【0165】
〔正常群及びF0~F1群対F2以上の群又はF2群〕
【0166】
【0167】
【0168】
表27~表28に示したように、前記IV型コラ-ゲン7S値、前記CA Index-NASH値、前記CA Index-Fibrosis値についていずれも、各カットオフ値によって、正常群及びF0~F1群とF2以上の群とでは75%以上の判定一致率で、正常群及びF0~F1群とF2群とでは65%以上の判定一致率で、それぞれ鑑別ができた。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明によれば、被験者の肝線維化進展度がF0段階又はF0以上の段階にあると予測して正常群からスクリ-ニングできる方法、並びに、被験者が正常であるかF0段階又はF0以上の段階にあるかの鑑別ができる方法を提供することが可能となる。そのため本発明は、肝線維化が惹起される疾患(例えば、ウイルス性慢性肝炎(B型肝炎、C型肝炎等)、アルコ-ル性慢性肝炎、NASH)の早期発見、肝線維化進展度の段階の鑑別、肝線維化進展度判定、及び予後予測の診断の補助に有用である。