(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】多重給水管の止水構造および配管設置構造
(51)【国際特許分類】
E03C 1/02 20060101AFI20240304BHJP
【FI】
E03C1/02
(21)【出願番号】P 2020056330
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】武 一幸
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-060244(JP,A)
【文献】特開平05-141590(JP,A)
【文献】特開2004-036679(JP,A)
【文献】特開2006-225989(JP,A)
【文献】特開2001-159167(JP,A)
【文献】特開2002-140942(JP,A)
【文献】米国特許第5601893(US,A)
【文献】特開平09-137154(JP,A)
【文献】特開2001-208262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C1/00-1/10
A47K3/02-4/00
F16L9/00-11/26
F16L29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水管および当該給水管を覆う外側管を有する多重給水管に対する止水構造であって、上記給水管の外周面から上記外側管の外周面に渡って、上記給水管と上記外側管との境目箇所を覆う収縮状態の熱収縮チューブを備え
ており、
上記熱収縮チューブは、上記給水管の外周面に密着された収縮状態の第1の熱収縮チューブと、当該第1の熱収縮チューブの外周面から上記外側管の外周面に渡って当該第1の熱収縮チューブと上記外側管との境目箇所を覆う収縮状態の第2の熱収縮チューブとからなることを特徴とする多重給水管の止水構造。
【請求項2】
請求項
1に記載の多重給水管の止水構造において、上記収縮状態の熱収縮チューブが保温材で覆われることを特徴とする
多重給水管の止水構造。
【請求項3】
請求項
1または請求項2に記載の多重給水管の止水構造を備える配管設置構造であって、建物の屋外に設置された給水装置の出水部に上記多重給水管の一端側が接続されており、上記給水管と上記外側管との境目箇所が上記収縮状態の熱収縮チューブで覆われており、上記給水管の他端側は、建物の屋内に引き込まれて上下階の天井と床との間に位置することを特徴とする配管設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、給水管および当該給水管を覆う外側管を有する多重給水管の止水構造、および配管設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、樹脂製の枝給水管や主給湯管を、床下側から基礎の天端角部を切り欠いた切欠部を介して外壁に設けた配管スペース内へ立ち上げ、壁掛式又は壁埋め込み式の屋外給湯器に接続するヘッダー式給水・給湯配管が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、屋外給湯器の給水部を屋内引込配管に接続する接続箇所の止水が不十分であると、この接続箇所から漏水が生じるおそれがある。そして、配管として給水管の周りに外側管を有する多重給水管を用いると、上記給水管と外側管との間の隙間に上記漏水が入り込み、屋内側に引き込まれた多重給水管の終端側で、上記隙間に入り込んだ水が漏出し、下階に滴下するおそれがある。
【0005】
この発明は、給水管および当該給水管を覆う外側管を有する多重給水管において漏水を防止できる多重給水管の止水構造および配管設置構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の多重給水管の止水構造は、上記の課題を解決するために、給水管および当該給水管を覆う外側管を有する多重給水管に対する止水構造であって、上記給水管の外周面から上記外側管の外周面に渡って、上記給水管と上記外側管との境目箇所を覆う収縮状態の熱収縮チューブを備えることを特徴とする。
【0007】
上記の構成であれば、上記収縮状態の熱収縮チューブによって上記給水管と上記外側管との境目箇所が覆われるので、上記給水管と外側管との間の隙間に漏水が入り込むのを防止することができる。
【0008】
上記熱収縮チューブは、上記給水管の外周面に密着された収縮状態の第1の熱収縮チューブと、当該第1の熱収縮チューブの外周面から上記外側管の外周面に渡って当該第1の熱収縮チューブと上記外側管との境目箇所を覆う収縮状態の第2の熱収縮チューブとからなってもよい。これによれば、上記給水管の直径が小さい場合や上記熱収縮チューブの収縮率が小さい場合でも、当該熱収縮チューブによって上記給水管と上記外側管との境目箇所を密着状態に覆うことができる。
【0009】
上記収縮状態の熱収縮チューブが保温材で覆われてもよい。これによれば、上記多重給水管の先端側を保温することができる。また、仮に、上記保温材の先端側で内側に水が入っても、この水を上記保温材の後端側から出すことができる。
【0010】
また、この発明の配管設置構造は、上記多重給水管の止水構造を備える配管設置構造であって、建物の屋外に設置された給水装置の出水部に上記多重給水管の一端側が接続されており、上記給水管と上記外側管との境目箇所が上記収縮状態の熱収縮チューブで覆われており、上記給水管の他端側は、建物の屋内に引き込まれて上下階の天井と床との間に位置することを特徴とする。これによれば、水が、上記給水管と上記外側管の隙間に入り込み、建物の屋内側に移動して、多重給水管の他端側から下階に滴下するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明であれば、給水管および当該給水管を覆う外側管を有する多重給水管における漏水を防止できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態の多重給水管の止水構造およびその作製過程の概略を示した説明図である。
【
図2】
図1の止水構造で保温材を設けた例を示した説明図である。
【
図3】
図1の止水構造を用いた実施形態の配管設置構造を示した説明図である。
【
図4】多重給水管の止水構造の変形例およびその作製過程の概略を示した説明図である。
【
図5】
図4の作製過程の続きおよび完成された止水構造を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の一態様に係る実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1では、この実施形態の多重給水管の止水構造1を示すとともに、この止水構造1を作製する工程の一部を簡略化して示している。なお、この発明において、「水」には温水(湯)が含まれる。ただし、給水系統と給温水系統の2系統が設けられる構成において、これら両系統が必ず多重給水管の止水構造1とされることを意味するものではない。
【0014】
この多重給水管の止水構造1は、給水管21および当該給水管21を覆う外側管22を有する多重給水管2に対する止水を行う。給水管21は、例えば、架橋ポリエチレン管からなる。外側管22は、例えば、保温性を有する発泡ポリエチレン等からなる。
【0015】
そして、上記止水構造1においては、上記給水管21の外周面から上記外側管22の外周面に渡って、上記給水管21と上記外側管22との境目箇所を覆う収縮状態の熱収縮チューブ3を備えている。この熱収縮チューブ3は、例えば、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等からなる。
【0016】
上記止水構造1を作製するには、上記給水管21の外周面から上記外側管22の外周面に渡って、未収縮状態の熱収縮チューブ3A(
図1の仮想線参照)を被せる。未収縮状態の熱収縮チューブ3Aとしては、その内径が上記外側管22の外径よりも大きいものを用いる。また、熱収縮チューブ3Aの収縮率は、例えば、50%である。なお、一例として、熱収縮チューブ3Aにおいて、「30-15-2」の表記があれば、加熱前径が30mm、加熱後径が15mm、加熱後厚が2mmとなる。
【0017】
次に、作業者は、工業用ドライヤー8等によって、上記未収縮状態の熱収縮チューブ3Aを加熱する。この加熱によって、熱収縮チューブ3Aは、熱収縮し、収縮状態の熱収縮チューブ3となる。また、作業者は、上記給水管21の先端部を、給水装置4の出水部41に接続する。
【0018】
この多重給水管の止水構造1であれば、上記収縮状態の熱収縮チューブ3によって上記境目箇所が覆われるので、上記多重給水管2の給水管21と出水部41との接続箇所から漏水が生じても、この漏水が給水管21と外側管22の隙間に入り込むのを防止することができる。すなわち、出水部41から漏れた水は、給水管21の外周面から収縮状態の熱収縮チューブ3の外周面に伝って流れていく。
【0019】
図2に示すように、上記収縮状態の熱収縮チューブ3が保温材5で覆われてもよい。この保温材は、例えば、アルミ箔付きグラスウールからなる。これによれば、上記多重給水管2の先端側を保温材5によって保温することができる。また、保温材5の下端側を開放しておけば(テープ巻なし)、仮に、上記保温材5の上端側で内側に水が入っても、この水を上記保温材5の下端側から出すことができる。すなわち、保温材5の下端側にテープを巻く作業を不要にできる。
【0020】
図3に示すように、実施形態の管部材配置構造100では、上記止水構造1が給水装置4に備えられる。例えば、建物6の屋外(ベランダ等)に設置された給水装置4の出水部41に上記多重給水管2の一端側が接続されており、上述したように、給水管21と外側管22との境目箇所を覆う箇所に収縮状態の熱収縮チューブ3が設けられている。そして、上記多重給水管2の他端側は、建物6の屋内に引き込まれており、上下階の天井61と床62との間に位置する給水ヘッダー42に接続される。
【0021】
上記の管部材配置構造100によれば、給水装置4の出水部41と給水管21との接続箇所から漏れた水が給水管21と上記外側管22との間に入り込むのを防止できるので、建物6の屋内側で多重給水管2の他端側2aから下階に水が滴下するのを防止することができる。
【0022】
図4および
図5に基づいて、止水構造1の変形例を説明する。この変形例は、上記給水管21の直径が小さい場合や上記熱収縮チューブの収縮率が小さい場合に用いると好適である。この変形例の止水構造1においては、収縮状態の熱収縮チューブ3は、収縮状態の第1の熱収縮チューブ31と、収縮状態の第2の熱収縮チューブ32とからなる。
【0023】
収縮状態の第1の熱収縮チューブ31は、上記給水管21の外周面に密着されている。また、収縮状態の第2の熱収縮チューブ32は、上記第1の熱収縮チューブ31の外周面から上記外側管22の外周面に渡って位置し、当該第1の熱収縮チューブ31と上記外側管22との境目箇所を覆う。
【0024】
この変形例によれば、上記給水管21の外周面に位置する第1の熱収縮チューブ31が給水管21側の外径増しの役割を担うので、上記給水管21の直径が小さい場合や上記熱収縮チューブ31,32の収縮率が小さい場合でも、上記給水管21と上記外側管22との境目箇所を覆うことができる。すなわち、出水部41から漏れた水は、給水管21の外周面から、収縮状態の第1の熱収縮チューブ31の外周面を伝い、さらに収縮状態の第2の熱収縮チューブ32の外周面に伝って流れていくことになる。
【0025】
上記変形例の止水構造1を作製するには、上記給水管21の外周面に未収縮状態の熱収縮チューブ31A(
図4の仮想線参照)を被せる。未収縮状態の熱収縮チューブ3Aは、その内径が上記外側管22の外径よりも小さくてよい。また、熱収縮チューブ3Aの収縮率は、例えば、50%である。次に、作業者は、工業用ドライヤー8等によって、上記未収縮状態の第1の熱収縮チューブ31Aを加熱する。この加熱によって、未収縮状態の第1の熱収縮チューブ31Aが、収縮状態の熱収縮チューブ31に変化する。
【0026】
さらに、作業者は、上記収縮状態の第1の熱収縮チューブ31の外周面から上記外側管22の外周面に渡って、未収縮状態の第2の熱収縮チューブ32A(
図5の仮想線参照)を被せる。また、作業者は、工業用ドライヤー8等によって、上記未収縮状態の熱収縮チューブ32Aを加熱する。この加熱によって、未収縮状態の熱収縮チューブ32Aが、収縮状態の第2の熱収縮チューブ32に変化する。
【0027】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 :止水構造
2 :多重給水管
2a :他端側
3 :収縮状態の熱収縮チューブ
3A :未収縮状態の熱収縮チューブ
4 :給水装置
5 :保温材
6 :建物
8 :工業用ドライヤー
21 :給水管
22 :外側管
31 :収縮状態の第1の熱収縮チューブ
31A :未収縮状態の第1の熱収縮チューブ
32 :収縮状態の第2の熱収縮チューブ
32A :未収縮状態の第2の熱収縮チューブ
41 :出水部
42 :給水ヘッダー
61 :天井
62 :床
100 :管部材配置構造