(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒
(51)【国際特許分類】
G02B 7/04 20210101AFI20240304BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20240304BHJP
【FI】
G02B7/04 D
G03B17/02
(21)【出願番号】P 2020069285
(22)【出願日】2020-04-07
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】小川 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】泉 光洋
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-109750(JP,A)
【文献】特開2010-204284(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1508588(CN,A)
【文献】特開2004-198742(JP,A)
【文献】特開2013-224973(JP,A)
【文献】特開2016-114799(JP,A)
【文献】特開2016-109859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
G03B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを保持するレンズ保持枠と、
前記レンズ保持枠と共に移動する移動筒と、
螺子部と頭部を備え、前記移動筒を前記レンズ保持枠に対して光軸に沿って締結する第1の締結手段と、
前記光軸に対して平行な直進溝を有する直進案内筒と、
前記直進案内筒の外側に配置され、内壁面に形成されたカム溝を有するカム筒と、
前記移動筒の外周面に固定され、前記直進溝および前記カム溝と係合し、前記カム筒の回動によって前記レンズ保持枠および前記移動筒を前記光軸に沿って移動させるコロ手段と、を備え、
前記光軸に垂直な断面図において、前記第1の締結手段を、少なくとも一部が前記直進案内筒に形成された直進溝と重なるように配置し、
前記光軸に沿った断面図において、前記コロ手段を前記第1の締結手段の頭部側に配置したことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
前記レンズ保持枠と前記移動筒との間に配置された、光量を調整する絞り群を備え、
前記第1の締結手段は、径方向において、前記絞り群よりも外側に配置されていることを特徴とする請求項1記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記直進溝の幅(W1)は、前記第1の締結手段の前記頭部の径よりも広いことを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記コロ手段は、前記移動筒の外周面に前記光軸と垂直な方向にねじ込まれる第2の締結手段によって締結されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記コロ手段は、前記直進溝および前記カム溝と嵌合する第1のコロと、前記直進溝および前記カム溝との間に所定の隙間が形成されるように係合する第2のコロとを備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記移動筒の外周面における前記第1のコロの締結部の周囲に凹部が形成されており、前記第1のコロを保持する前記締結部の剛性は、前記第2のコロを保持する締結部の剛性よりも小さいことを特徴とする請求項5記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
前記第1のコロと前記第1の締結手段の頭部との間に隙間(X2)が設けられており、前記隙間(X2)は、前記第2のコロと前記カム溝との間の隙間よりも大きいことを特徴とする請求項5又は6記載のレンズ鏡筒。
【請求項8】
前記第1のコロと前記第1の締結手段の頭部との隙間(X2)は、前記第1のコロの締結部が塑性変形に至る際の変形量よりも小さいことを特徴とする請求項7記載のレンズ鏡筒。
【請求項9】
前記カム筒、前記第1のコロ及び前記第2のコロは、それぞれ金属材料で形成されており、前記移動筒は、樹脂材料で形成されていることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一眼レフカメラ等に用いられる交換レンズ等のレンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ、ビデオカメラ等に用いられるレンズ鏡筒には、レンズ保持枠や絞り群を保持する手段としてビスを適用したものがある。特許文献1に記載の先行技術では、絞り群に過大な応力が加わらないように、レンズ保持枠に固定部材を光軸方向に沿ってビスで固定する際、ビスと絞り群との間に所定のクリアランスを設けるように構成されたレンズ鏡筒が開示されている。また、特許文献1には、光軸方向からねじ込むビスに代えて、レンズ保持枠の外径から光軸と垂直な方向にビスをねじ込むことによって、絞り群の抜けを防止する構成も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、固定部材をレンズ保持枠にビスで固定する際、ビスをいずれの方向からねじ込んでも、ビスを固定するための固定スペースが必要となる。また、構成部材として直進案内筒などの他の筒体を備えるレンズ鏡筒としては、レンズ保持枠や絞り群の外側に、他の筒体が配置されるので構成部品の厚みはさらに増大する。従って、締結手段としてのビスで固定するための固定スペースを確保しつつレンズ鏡筒の小径化を図ることは困難であった。
【0005】
本発明は、締結手段による固定に必要なスペースを確保しつつ、製品全体としての小径化を図ることができるレンズ鏡筒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載のレンズ鏡筒は、レンズを保持するレンズ保持枠と、前記レンズ保持枠と共に移動する移動筒と、螺子部と頭部を備え、前記移動筒を前記レンズ保持枠に対して光軸に沿って締結する第1の締結手段と、前記光軸に対して平行な直進溝を有する直進案内筒と、前記直進案内筒の外側に配置され、内壁面に形成されたカム溝を有するカム筒と、前記移動筒の外周面に固定され、前記直進溝および前記カム溝と係合し、前記カム筒の回動によって前記レンズ保持枠および前記移動筒を前記光軸に沿って移動させるコロ手段と、を備え、前記光軸に垂直な断面図において、前記第1の締結手段を、少なくとも一部が前記直進案内筒に形成された直進溝と重なるように配置し、前記光軸に沿った断面図において、前記コロ手段を前記第1の締結手段の頭部側に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、レンズ保持枠と移動筒とを締結する締結手段の少なくとも一部が直進案内筒の直進溝と重なるように配置したので、締結手段による締結に必要なスペースを確保しつつ、レンズ鏡筒の小径化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係るレンズ鏡筒(交換レンズ)が着脱可能に装着されたデジタルカメラを示す斜視図である。
【
図2】交換レンズの絞り込み状態を示す光軸を含むXY平面上の断面図である。
【
図3】交換レンズの絞り出し状態を示す光軸を含むXY平面上の断面図である。
【
図4】交換レンズおよびカメラ本体の制御構成を示すブロック図である。
【
図5】交換レンズにおけるフォーカス群の分解斜視図である。
【
図6】
図5のフォーカス群の一部をさらに分解した分解斜視図である。
【
図7】フォーカス群と直進案内筒との位置関係を示す光軸と垂直な断面図である。
【
図8】
図7における符号VIII部分を拡大した部分拡大断面図である。
【
図9】
図7におけるS1-S1線で分割した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、各図面を通して同一又は対応する部材には、同一の符号を付与し、便宜上、重複する説明を省略した。
【0010】
図1は、実施の形態に係るレンズ鏡筒(以下、「交換レンズ101」という。)が着脱可能に装着されたデジタルカメラ100(以下、単に「カメラ本体100」という)を示す斜視図である。
図1において、
図1(a)は、正面側から見た斜視図、
図1(b)は、背面側から見た斜視図である。
【0011】
図1(a)において、交換レンズ101の撮像光学系の光軸が延びる光軸方向をX軸方向とし、X軸方向に直交する方向をZ軸方向(水平方向)およびY軸方向(垂直方向)とする。以下、Z軸方向とY軸方向をまとめてZ/Y軸方向という。また、Z軸回りの回転方向をピッチ(Pitch)方向とし、Y軸回りの回転方向をヨー(Yaw)方向とする。ピッチ方向とヨー方向は、互いに直交するZ軸とY軸である2軸回りでの回転方向である。ピッチ方向とヨー方向を以下、まとめてピッチ/ヨー方向ともいう。
【0012】
カメラ本体100の正面側(被写体側)から見て左側(背面から見て右側)には、ユーザがカメラ本体100を把持するためのグリップ部2が設けられている。また、カメラ本体100の上面部には、電源操作部3が配置されている。カメラ本体100の電源がオフ状態にあるときにユーザが電源操作部3をオン操作すると、カメラ本体100の電源がオン状態となり撮像が可能となる。また、カメラ本体100の電源がオン状態にあるときにユーザが電源操作部3をオフ操作すると、カメラ本体100の電源はオフ状態になる。
【0013】
カメラ本体100の上面部には、また、モードダイアル4、レリーズボタン5およびアクセサリシュー6が設けられている。ユーザは、モードダイアル4を回転操作することによって撮像モードを切り替えることができる。撮像モードとしては、マニュアル静止画撮像モード、オート静止画撮像モードおよび動画撮像モードが挙げられる。マニュアル静止画撮像モードは、シャッタ速度や絞り値等の撮像条件をユーザが任意に設定できるモードである。オート静止画撮像モードは、自動で適正な露光量が得られるモードである。また、動画撮像モードは、動画の撮像を行うためのモードである。
【0014】
ユーザが、レリーズボタン5を半押し操作することによって、オートフォーカスや自動露出制御等の撮像準備動作を指示することができる。また、ユーザは、レリーズボタン5を全押し操作することによって撮像を指示することができる。アクセサリシュー6には、外部フラッシュ等のアクセサリが脱着可能に装着される。カメラ本体100内には、交換レンズ101の撮像光学系によって形成される被写体像を光電変換(撮像)する撮像素子(図示省略)が配置されている。
【0015】
交換レンズ101は、レンズマウント102を介してカメラ本体100に設けられたカメラマウント7に機械的および電気的に接続される。交換レンズ101内には、被写体からの光を結像させて被写体像を形成する撮像光学系が収容されている。フィルタ枠111は、交換レンズ101の正面側の先端に配置された円筒形状の外観部品である。フィルタ枠111の内周には雌ねじ部が形成されており、各種フィルタやレンズキャップなどのアクセサリが着脱できるように構成されている。
【0016】
図1(b)において、カメラ本体100の背面には、背面操作部8と表示部9が設けられている。背面操作部8には、様々な機能が割り当てられた複数のボタンやダイアルが配置されている。カメラ本体100の電源がオン状態であり、静止画または動画撮像モードが設定されているとき、表示部9には、撮像素子により撮像されている被写体像のスルー画像が表示される。また、表示部9には、シャッタ速度や絞り値等の撮像条件を示す撮像パラメータが表示され、ユーザはその表示を見ながら背面操作部8を操作することによって撮像パラメータの設定値を変更することができる。背面操作部8には、記録された撮像画像の再生を指示するための再生ボタンが含まれている。ユーザが再生ボタンを操作することによって、撮像画像が表示部9に再生、表示される。
【0017】
次に、交換レンズ101の構成について説明する。
【0018】
図2は、交換レンズ101の絞り込み状態を示す光軸を含むXY平面上の断面図である。また、
図3は、交換レンズ101の絞り出し状態を示す光軸を含むXY平面上の断面図である。
図2及び
図3における中心線(一点鎖線)は、撮像光学系の光軸と略一致する。従って、以下、中心線を、光軸と同義とする。
【0019】
図2及び
図3において、交換レンズ101は、第1のフォーカスレンズ211と第2のフォーカスレンズ(調整レンズ)212を含むフォーカス群201と、第1の固定レンズ611と第2の固定レンズ612を含む固定群601との二群構成を採用している。フォーカス群201は、被写体像の焦点ずれに応じて所定の光学位置へと移動し、被写体からの光を、固定群601、シャッタユニット14を介して撮像素子16の撮像面上に結像させる。
【0020】
絞り群401は、第1のフォーカスレンズ211や第2のフォーカスレンズ(調整レンズ)212と共にフォーカス群201に収容されており、フォーカス群201と一体的に移動する。絞り群401の外側に、直進案内筒107およびカム筒108が配置されている。防振群501は、固定筒106に固定された第1の固定レンズ611と第2の固定レンズ612との間に配置されており、固定群601の一部として機能する。防振駆動部502は、防振群501を駆動する。
【0021】
交換レンズ101がカメラ本体100に装着された状態において、レンズマウント102はカメラマウント7に当接している。このとき、レンズマウント102に設けられた電気接点105は、カメラ本体100の電源部10(後述する
図4参照)と電気的に接続され、電源部10からの電力は、電源端子としての電気接点105を介して交換レンズ101に供給される。
【0022】
カメラ本体100のカメラ制御部12(後述する
図4参照)は、レンズマウント102に設けられた電気接点105の通信端子を介して、交換レンズ101のレンズ制御部104と各種制御信号やデータ等の通信を行う。
【0023】
交換レンズ101の先端部のフィルタ枠111は、フォーカス群201にビス(図示省略)で固定されており、フォーカス群201と一体的に移動する。フィルタ枠111の内周に形成された雌ねじ部は、フィルタ枠111に装着されるフィルタに形成された雄ねじ部と噛み合うことによって当該フィルタを保持する。フィルタとしては、第1のフォーカスレンズ211を水滴や汚れから保護する保護フィルタや減光フィルタ、偏光フィルタなどが挙げられる。
【0024】
フィルタ枠111は、繰り込み状態においても繰り出し状態においても、交換レンズ101の正面側の最も先端に位置している。このため、交換レンズ101をカメラ本体100に装着した状態で、例えば、ユーザが、カメラを壁などの障害物に振り当ててぶつけた場合、フィルタ枠111が最初に障害物と衝突する。
【0025】
交換レンズ101は、撮像光学系全体としての光学性能を維持することを目的として、第2のフォーカスレンズ(調整レンズ)212の位置を意図的にずらして配置させる調整機構を備えている。これによって、組立工程において作業者は、全体の光学性能の状態を確認しながら、各構成部品に生じる製造誤差や組立ばらつきなどの影響をキャンセルさせることが可能となる。
【0026】
図4は、交換レンズ101およびカメラ本体100の制御構成を示すブロック図である。
【0027】
カメラ本体100は、制御構成としてカメラ制御部12を備えている。一方、交換レンズ101は、制御構成としてレンズ制御部104を備えている。
【0028】
カメラ本体100および交換レンズ101全体のシステムとしての制御は、カメラ本体100に設けられたカメラ制御部12と、交換レンズ101に設けられたレンズ制御部104が互いに連係することによって行われる。
【0029】
図4において、交換レンズ101の撮像光学系は、フォーカス群201、絞り群401、防振群501、固定群601、フォーカス駆動部301、絞り駆動部402、防振駆動部502を備えている。フォーカス群201は、光軸方向に移動して焦点調節を行うフォーカスレンズを含んでいる。絞り群401は、光量調節動作を行う。防振群501は、像振れを低減する防振素子としてのシフトレンズを含んでいる。防振群501は、シフトレンズを光軸に対して直交するZ/Y軸方向に移動(シフト)させて、像振れを低減するための防振動作を行う。
【0030】
絞り駆動部402は、絞り群401を駆動する。防振駆動部502は、防振群501を駆動する。フォーカス駆動部301は、カム筒と、フォーカスモータと、カム筒とフォーカスモータとを連結する減速ギアと、フォーカス群201の原点位置を検出するフォトインタラプタとを備えている。
【0031】
一般的に、フォーカスモータとして、アクチュエータの一種であるステッピングモータが採用されることが多い。しかしながら、ステッピングモータは、相対的な駆動量しか制御することができないので、電源オフ状態においては、フォーカス群201の現在位置が不定となる。そこで、ユーザが電源操作部3をオン操作した際、フォーカス群201を原点位置まで移動させて原点検出処理を実行する制御が必要となる。このような原点検出処理は、多くの光学機器に採用されている公知技術である。従って、その説明を省略する。なお、ステッピングモータに代えて、アクチュエータとしてエンコーダを備えるDCモータや超音波モータを採用することもできる。また、フォトインタラプタは発光部から発せられた光を受光部で直接受光するものであるが、これに代えて、反射面からの反射光を受光するフォトリフレクタや、導電パターンに接触するブラシを用いることもできる。
【0032】
フォーカス駆動部301は、フォーカス群201を駆動する。すなわち、フォーカス駆動部301は、フォーカス群201の現在位置を検出し、レンズ制御部104を介してその信号をカメラ制御部12に送信する。カメラ制御部12は、被写体像の焦点状態とフォーカス群201の現在位置とを比較し、そのずれ量からフォーカス駆動量を算出してレンズ制御部104に送信する。そして、レンズ制御部104は、フォーカス駆動部301を制御してフォーカス群201を目標位置まで駆動し、被写体像の焦点ずれを補正する。
【0033】
一方、カメラ本体100は、カメラ制御部12の他、シャッタユニット14、シャッタ駆動部15、撮像素子16、画像処理部17、焦点検出部18および表示部9を備えている。また、カメラ本体100は、操作部11、アクセサリシュー6、電源部10、ピッチ振れ検出部19、ヨー振れ検出部20および記憶部13を備えている。
【0034】
カメラ制御部12は、シャッタ駆動部15を介してシャッタユニット14と接続されており、焦点検出部18を介して画像処理部17と接続されている。また、カメラ制御部12は、撮像素子16、表示部9、操作部11、アクセサリシュー6、電源部10、ピッチ振れ検出部19、ヨー振れ検出部20、及び記憶部13とそれぞれ接続されている。
【0035】
シャッタユニット14は、交換レンズ101内の撮像光学系で集光され、撮像素子16で露光される光の量を制御する。撮像素子16は、撮像光学系により形成された被写体像を光電変換して撮像信号を出力する。画像処理部17は、撮像信号に対して各種画像処理を施した後、画像信号を生成する。表示部9は、画像処理部17から出力された画像信号(スルー画像)を表示し、撮像パラメータを表示し、記憶部13や図示省略した記録媒体に記録された撮像画像を再生表示する。電源部10は、カメラ本体100と交換レンズ101に電力を供給する。
【0036】
また、カメラ制御部12は、記憶部13に格納されてたコンピュータプログラムを読み出して実行する。すなわち、カメラ制御部12は、操作部11における撮像準備操作(レリーズボタン5の半押し操作)に応じて、フォーカス群201の駆動を制御する。例えば、オートフォーカスの動作が指示された場合、カメラ制御部12は、焦点検出部18を制御して、画像処理部17で生成された画像信号をもとに、撮像素子16で結像される被写体像の焦点状態を判定する。
【0037】
また、カメラ制御部12は、操作部11から受けた絞り値やシャッタ速度の設定値に応じて、絞り駆動部402およびシャッタ駆動部15を介して、絞り群401およびシャッタユニット14の駆動を制御する。例えば、自動露出制御の動作が指示された場合、カメラ制御部12は、画像処理部17で生成された輝度信号を受信して測光演算を行う。この測光演算結果をもとに、カメラ制御部12は、操作部11における撮像指示操作(レリーズボタン5の全押し操作)に応じて、絞り群401の駆動を制御する。それと共に、カメラ制御部12は、シャッタ駆動部15を介してシャッタユニット14の駆動を制御し、撮像素子16による露光処理を行う。
【0038】
ピッチ振れ検出部19およびヨー振れ検出部20は、ユーザによる手振れ等の像振れを検出する振れ検出手段である。ピッチ振れ検出部19とヨー振れ検出部20は、それぞれ、角速度センサ(振動ジャイロ)や角加速度センサを用いて、ピッチ方向(Z軸回りの回転方向)およびヨー方向(Y軸回りの回転方向)の像振れを検出して振れ信号を出力する。カメラ制御部12は、ピッチ振れ検出部19からの振れ信号を用いて防振群501(シフトレンズ)のY軸方向でのシフト位置を算出する。同様に、カメラ制御部12は、ヨー振れ検出部20からの振れ信号を用いて防振群501のZ軸方向でのシフト位置を算出する。そして、カメラ制御部12は、算出したピッチ/ヨー方向のシフト位置に応じて、防振群501を目標位置まで駆動制御し、露光中やスルー画像表示中の像振れを低減する防振動作を行う。
【0039】
以下、交換レンズ101におけるフォーカス群201について詳細に説明する。
【0040】
図5は、交換レンズ101におけるフォーカス群201の分解斜視図である。
図5において、
図5(a)は、フォーカス駆動部と分解された正面方向の斜視図であり、
図5(b)は、フォーカス駆動部と分解された背面方向の斜視図である。また、
図6は、
図5(a)のフォーカス群201の一部をさらに分解した分解斜視図である。
【0041】
図5において、フォーカス群201は、直進案内筒107とカム筒108によって固定筒106に対して移動可能に構成されている。固定筒106は、正面側の面で直進案内筒107を保持する固定部材である。固定筒106は、第1の固定レンズ611の外周部を保持している。直進案内筒107は、内周側にフォーカス群201を収容し、外周側にカム筒108を回動可能に保持する固定部材である。カム筒108は、弾性部材によって光軸方向に付勢されており、背面側(カメラ本体100側)の面が固定筒106と摺動可能に当接している。
【0042】
フォーカス群201は、直進案内筒107の内周側に、正面側から挿入されて組み込まれる。直進案内筒107には、直進溝107aが形成されている。直進溝107aは、フォーカス群201の回転方向への移動を規制して、光軸方向への直進を案内する。直進溝107aは、後述するメインコロ231(第1のコロ)の位相に対応する3個と、サブコロ232(第2のコロ)の位相に対応する3個を合計した6個の貫通溝で構成されている。これら6個の貫通溝はいずれも同じ溝幅となっている。
【0043】
一方、カム筒108には、その内壁面に、フォーカス群201のストロークに対応して回転方向に線形の軌跡を形成するカム溝108aが設けられている。カム溝108aは、メインコロ231の位相に対応する3個と、サブコロ232の位相に対応する3個を合計した6個の非貫通の有底溝として構成されている。6個の有底溝は、いずれも同じカム軌跡であり、同じ溝幅で、同じ溝深さとなっている。
【0044】
フォーカス群201には、3個のメインコロ231が周方向に沿って120°等分に固定されている。メインコロ231は、直進溝107aとカム溝108aとにそれぞれ嵌合して常に接触状態となっている。カム筒108が回転すると、メインコロ231は、直進溝107aおよびカム溝108aとの嵌合により、カム溝108aのカム軌跡に沿って、フォーカス群201を光軸方向へ進退させる。
【0045】
サブコロ232は、メインコロ231を補助するものであり、3個のメインコロと1つおきに配置された合計3個で構成されている。サブコロ232は、フォーカス群201のストロークの全域にわたって、カム溝108aおよび直進溝107aとの間にわずかな隙間が形成されるように係合されている。すなわち、3個のサブコロ232は、いずれも他の構成部材と非接触状態に形成されており、通常のフォーカス駆動部301の制御時には、摩擦抵抗による負荷が発生しないようになっている。
【0046】
メインコロ231は、直進溝107aおよびカム溝108aと常に接触状態であることから、光学性能に応じた寸法精度の高さと表面仕上げの滑らかさが必要であり、比較的高価なものになりやすい。これに対して、サブコロ232は、非接触状態であることから、光学性能に関わらず寸法精度や表面仕上げに緩和の余地があり、比較的安価に製造することができる。
【0047】
カム筒108、メインコロ231及びサブコロ232は、いずれもアルミニウムや真鍮などの歪みにくい金属材料で構成されている。カム筒108、メインコロ231及びサブコロ232は、金属材料で構成したことにより、切削加工によって高精度に仕上げることが可能であり、また、環境温度や撮影姿勢の変化などに対して変形を抑制することができる。
【0048】
金属材料は、例えば、ポリカーボネート等の樹脂材料と比較すると、強い衝撃が加わった際、じん性が低く衝撃を吸収しづらいために、局所的な折損や打痕などの塑性変形を生じやすい。画像撮影中に、ユーザが壁などの障害物に対して交換レンズ101を振り当ててしまうと、フィルタ枠111が正面側の先端となって最初に障害物と衝突する。このとき、フィルタ枠111を介して、フォーカス群201に正面側から背面側へと向かう衝撃力が伝達され、フォーカス群201は、光軸方向の正面側から背面側へ相対的に移動しようとする。一方で、カム筒108は、背面側の面で固定筒106と密着しており、光軸方向の移動が規制されている。このため、常に接触状態にあるメインコロ231とカム溝108aとが振り当てによって負荷を受けることがある。しかしながら、後述するように、メインコロ231及びサブコロ232を支持する移動筒221は、樹脂材料で構成されている。従って、メインコロ231への負荷は軽減される。メインコロ231の負荷が軽減されることに関する詳細な説明については、後述する。
【0049】
図6において、フォーカス群201は、第1のフォーカスレンズ211を保持するフォーカス群保持枠222、絞り群401、絞り駆動部402、フレキシブルプリント配線板403及び移動筒221とで主として構成されている。
【0050】
移動筒221は、ポリカーボネート等の樹脂材料で構成されている。移動筒221を樹脂材料で構成したことによって、当該移動筒221は、射出成形により安価に製造できるとともに、金属材料と比べると弾性的に変形し易くなる。そのため、上述したような振り当て時には、フォーカス群201の相対的な移動に伴って、移動筒221におけるメインコロ231の保持部が弾性的に変形し、非接触状態であったサブコロ232とカム溝108aとの隙間が減少する。そして、メインコロ231の保持部の変形量がサブコロ232とカム溝108aとの間の隙間の量を超えた瞬間に、サブコロ232とカム溝108aとが衝突し、カム筒108に対するフォーカス群201の相対的な移動が抑制される。それと同時に、フォーカス群201に作用した衝撃力がサブコロ232とカム溝108aとの接触面へと分散され、メインコロ231とカム溝108aとの接触面に加わる負荷が軽減する。このように、本実施の形態は、撮影中に交換レンズ101の先端を振り当ててぶつけてしまった場合でも、金属材料からなるカム筒108、メインコロ231、サブコロ232に、局所的な塑性変形を生じさせにくい構成となっている。
【0051】
図6において、絞り群401は、レンズ保持枠としてのフォーカス群保持枠222と移動筒221とで挟持されており、絞り群401の外径D1がフォーカス群保持枠222の内径と嵌合することによって保持されている。移動筒221をフォーカス群保持枠222に締結する締結手段としての第1のビス261は、周方向において、メインコロ231とサブコロ232の位相にそれぞれ対応して合計6個が配置されている。
【0052】
第1のビス261は、それぞれ移動筒221を貫通し、フォーカス群保持枠222に対して光軸と平行な方向に締結されている。第2のフォーカスレンズ(調整レンズ)212は、調整機構である調整コロを介して、移動筒221の内周側に収容されている。メインコロ231とサブコロ232は、移動筒221の外周面に対して、それぞれ光軸と垂直な方向にねじ込まれる合計6個の第2のビス262で固定されている。第1のビス261と第2のビス262は、螺子部と頭部とで構成されており、それぞれの頭部には、ドライバー等の工具と嵌合するための十字孔形状が設けられている。
【0053】
絞り群401には、フレキシブルプリント配線板403を介して、絞り駆動部(絞りモータ)402が電気的に接続されている。フレキシブルプリント配線板403には、直進案内筒107の内周面と移動筒221の外周面との間に、可動屈曲部が形成されている。絞り群401は、フォーカス群201と一体的に移動する。
【0054】
次に、
図7~
図9を用いて交換レンズ101の特徴部分について説明する。
【0055】
図7は、フォーカス群201と直進案内筒107との位置関係を示す光軸と垂直な断面図である。なお、
図7において、構成部品の一部は省略されている。また、
図8は、
図7における符号VIII部分を拡大した部分拡大断面図、
図9は、
図7におけるS1-S1線で分割した断面図である。
【0056】
図7において、移動筒221をフォーカス群201のフォーカス群保持枠222(
図6参照)に締結する6個の第1のビス261が示されている。第1のビス261は、それぞれ直進案内筒107の直進溝107a(
図8参照)と少なくとも一部が重なるように配置されている。これによって、従来技術に比べて直進案内筒107の径を小さくできるので、交換レンズ101全体として小径化を図ることができる。
【0057】
図9において、移動筒221にそれぞれ固定されたメインコロ231とサブコロ232は、光軸方向において、第1のビス261の頭部側に配置されている。従って、移動筒221は、第1のビス261を光軸と平行な方向に挿入し、ドライバー等の工具によって第1のビス261をねじ込む第1の組立工程によってフォーカス群保持枠222に固定される。また、移動筒221を固定した後、メインコロ231とサブコロ232は、第2のビス262を光軸と垂直な方向に挿入し、ドライバー等の工具によって当該第2のビス262をねじ込む第2の組立工程によって移動筒221に固定される。このように、第1の組立工程と第2の組立工程とを順番に行うことで、それぞれの組立工程において構成部品や工具がお互いに邪魔しあうことなく、レイアウトや作業性を効率化することができる。
【0058】
また、
図9において、第1のビス261は、径方向において、絞り群401の外径D1よりも外周側に配置されており、第1のビス261の固定に要するスペースは、絞り群401の外径D1の外側に位置している。このため、絞り群401に対して、羽根の走行スペースに余裕を持たせることができ、設計的な自由度を確保することができる。また、例えば、絞り群401の開放径をより大きくすることができ、最小絞りの径をより小さくすることもできる。
【0059】
図8において、貫通溝である直進溝107aの幅W1は、第1のビス261の頭部の径よりも広く、第1のビス261の固定に要するスペースが、直進溝107aの中に収容されている。
【0060】
従来技術では、第1のビス261の固定に要するスペースが絞り群401の外側に設けられ、さらに、その外側に直進案内筒107が組み込まれていた。従って、第1のビス261の固定スペースの外側に直進案内筒107の厚みが加わることになり、交換レンズ101の小径化を図ることはできなかった。
【0061】
これに対して、本実施の形態に係る交換レンズ101では、第1のビス261の固定に要するスペースを、径方向では、直進案内筒107の直進溝107aの厚みの範囲に収め、また周方向では、直進溝107aの幅W1の範囲内に収める構成とした。これによって、直進案内筒107をより小径にできるので、従来技術に比べて交換レンズ101の小径化を図ることができる。
【0062】
また、
図9において、メインコロ231と第1のビス261の頭部との間には、隙間X2が設けられている。そして、隙間X2は、サブコロ232とカム溝108aとの間の隙間よりも大きくなるように設定されている。これは、衝撃を受けた際、メインコロ231と第1のビス261の頭部とが衝突するよりも前に、サブコロ232とカム溝108aとを積極的に衝突させて、メインコロ231に加わる負荷を軽減させるものである。
【0063】
また、
図9に示したように、移動筒221におけるメインコロ231の保持部には、第2のビス262の周囲を掘り込むようにして凹部221aが形成されている。これによって、メインコロ231が締結された締結部としてのメインコロ保持部は、サブコロ232の保持部よりも弾性変形しやすく、剛性が低くなる。従って、サブコロ232の作用によってメインコロ231の変形を抑制することができる。
【0064】
すなわち、上述した振り当ての瞬間に、メインコロ231の保持部が、
図9中、X1方向へ変形する量は、サブコロ232の作用によって、FEMを用いた解析によると最大でも0.5%以下に抑えられる。これに対して、移動筒221に用いられる一般的な樹脂材料が塑性変形に至る変形量は数%であることから、メインコロ231の保持部の変形量は弾性変形の範囲内に抑えられる。この結果、振り当て時には、一時的にメインコロ231の保持部が弾性変形するものの、その後は初期の形状を回復するので、交換レンズ101の光学性能が著しく低下することはない。
【0065】
一方、メインコロ231と第1のビス261の頭部との隙間X2は、メインコロ231の保持部が塑性変形に至る変形量よりも小さくなるように設定されている。これによって、衝撃が大きい場合、メインコロ231の保持部が塑性変形にまで至る前に、メインコロ231と第1のビス261の頭部とを積極的に衝突させて、想定以上の変形を抑制することができる。
【0066】
すなわち、例えば、壁などへの振り当てではなく、カメラを高い位置から地面へ落下させて想定以上の衝撃力が加わった場合であっても、メインコロ231の保持部が数%を超えて塑性変形することを防止できる。
【0067】
具体的には、例えば、サブコロ232とカム溝108aとの間の隙間が0.2mm程度、メインコロ231と第1のビス261の頭部との間の隙間X2は0.4mm程度、メインコロ231の保持部が塑性変形に至る変形量は0.4mm以上に設定される。これによって、高い位置からの落下時には、各金属部品に発生する局所的な塑性変形などは防げないものの、交換レンズ101の動作が不能となるような移動筒221の大きな塑性変形を抑制することができる。
【0068】
本実施の形態によれば、移動筒221をフォーカス群保持枠222に締結する第1のビス261を、直進案内筒107の直進溝107aと少なくとも一部が重なるように配置した。また、メインコロ231とサブコロ232を、光軸方向において、第1のビス261の頭部側に配置した。これによって、直進案内筒107の径をより小さくできるので、交換レンズ101全体として小径化を図ることができる。また、第1のビス261の固定スペースを確保して組み立て作業性を向上させることができる。
【0069】
本実施の形態において、貫通溝である直進溝107aの幅W1は、第1のビス261の頭部の径よりも広く、第1のビス261の固定に要するスペースが、直進溝107aの中に収容されることが好ましい。これによって、従来技術に比べて、交換レンズ101の小径化を図ることができる。
【0070】
本実施の形態において、メインコロ231と第1のビス261の頭部との間に隙間X2を設け、当該隙間X2を、サブコロ232とカム溝108aとの間の隙間よりも大きくすることが好ましい。これによって、衝撃を受けた際、サブコロ232とカム溝108aが先に当接するので、メインコロ231に加わる負荷を軽減させることができる。
【0071】
本実施の形態において、移動筒221におけるメインコロ231を締結する保持部には、第2のビス262の周囲を掘り込むようにして凹部221aを形成することが好ましい。これにより、メインコロ231の保持部は、サブコロ232の保持部よりも弾性変形しやすく剛性が低くなるので、サブコロ232の作用によってメインコロ231に加わる負荷を軽減させることができる。
【0072】
本実施の形態において、メインコロ231と第1のビス261の頭部との隙間X2は、メインコロ231の保持部が塑性変形に至る場合の変形量よりも小さくなるように設定することが好ましい。これによって、メインコロ231の保持部が塑性変形に至る前に、メインコロ231と第1のビス261の頭部とが衝突して、想定以上の変形を抑制することができる。
【0073】
本実施の形態において、カム筒108、メインコロ231及びサブコロ232は、金属材料で構成し、移動筒221は、樹脂材料で構成することが好ましい。これによって、カム筒108、メインコロ231及びサブコロ232を高精度に仕上げることが可能となり、歪み等の変形を抑制することができる。また、移動筒221が弾性変形しやすくなり、結果としてメインコロ231に加わる負荷を軽減することができる。
【0074】
以上説明した実施の形態は一例にすぎず、本発明においては、上記実施の形態に対して種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
100 カメラ本体(デジタルカメラ)
101 交換レンズ
107 直進案内筒
107a 直進溝
108 カム筒
108a カム溝
201 フォーカス群
221 移動筒
222 フォーカス群保持枠
231 メインコロ
232 サブコロ
261 第1のビス
262 第2のビス
401 絞り群
601 固定群