(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】内窓
(51)【国際特許分類】
E06B 7/10 20060101AFI20240304BHJP
【FI】
E06B7/10
(21)【出願番号】P 2020076864
(22)【出願日】2020-04-23
【審査請求日】2022-10-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184066
【氏名又は名称】宮崎 恭
(72)【発明者】
【氏名】大浦 豊
(72)【発明者】
【氏名】谷口 則良
(72)【発明者】
【氏名】木下 知也
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-007750(JP,A)
【文献】特開2005-188115(JP,A)
【文献】実開昭50-078041(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B7/00-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物開口部
の内周側に固定される開口部側部材と、内窓
の枠の外周側に固定される内窓側部材を有し、
開口部側部材と内窓側部材とで換気部を形成するものであり、
開口部側部材と内窓側部材の少なくともいずれか一
方のみは、見込壁と、見込壁の見込方向で中間位置から他方側に向かって延設される複数の連結脚を有するとともに、他方
は、見込壁と、見込壁の見込方向で中間位置に設けられて連結脚をスライド係合可能な複数の係合部を有しており、
複数の連結脚は、
端部が切りかかれて空気の流通を可能にする連通部が形成されている内窓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物開口部に配置される内窓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物開口部に配置される内窓が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献1の建具は、開口部の屋内側に樹脂製の内窓を配置することで、断熱性を向上させることができる。
【0005】
本発明は、開口部の屋内側に配置される内窓において、空気の流れを制御し、内圧及び外圧による内窓にかかる力を抑制して破損を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態は、建物開口部の内周側に固定される開口部側部材と、内窓の枠の外周側に固定される内窓側部材を有し、開口部側部材と内窓側部材とで換気部を形成するものであり、開口部側部材と内窓側部材の少なくともいずれか一方のみは、見込壁と、見込壁の見込方向で中間位置から他方側に向かって延設される複数の連結脚を有するとともに、他方は、見込壁と、見込壁の見込方向で中間位置に設けられて連結脚をスライド係合可能な複数の係合部を有しており、複数の連結脚は、端部が切りかかれて空気の流通を可能にする連通部が形成されている内窓である。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態によれば、開口部の屋内側に配置される内窓において、空気の流れを制御し、内圧及び外圧による内窓にかかる力を抑制して破損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る内窓を備える二重窓の竪断面図である。
【
図2】一実施形態に係る内窓の上方部位の竪断面図である。
【
図3】一実施形態に係る内窓の換気枠の図であり、(a)は室内側から見た正面図であり、(b)は(a)のA-A断面図であり、(c)は(a)のB-B断面図である。
【
図4】一実施形態に係る内窓の換気枠の図であり、(a)は内換気枠の開口部側部材と内窓側部材のスライド係合を示す図であり、(b)はスライド係合が完了して、一端に端部キャップが装着された図であり、(c)は端部キャップの図である。
【
図5】防火仕様にした実施形態の内窓の上方部位の竪断面図である。
【
図6】他の実施形態に係る内窓を備える二重窓の竪断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態の内窓として、外窓と内窓を備え、外窓と内窓との間の空間を利用して高い冷暖房効率が期待できる二重窓に好適の内窓の例を挙げ、図面を参考に説明する。
【0010】
本実施形態に係る二重窓は、
図1に示すように、アルミ等の金属材料からなる上枠11、下枠12及び左、右竪枠を四周に組んでなる枠体1と、枠体1の内周に引き違い自在に支持される内、外障子2,3を有する外窓と、樹脂材料からなる上枠61、下枠62及び左、右竪枠からなる枠体6と、枠体6の内周に引き違い開閉自在に支持される内、外障子7,8を有する内窓を備えている。
【0011】
外窓は、建物開口部と上枠11との間に外換気枠4が配置されており、内窓は、建物開口部と上枠61との間に内換気枠9が配置されており、二重窓には、全体として通気経路A1~A5が形成されている。
【0012】
外窓の外換気枠4は、アルミ等の金属材料からなり建物開口部に固定され下方に上枠11が固定される外換気枠本体41と、外換気枠本体41の室内側に固定される室内側カバー材42と、外換気枠本体41の室外側に固定される室外側カバー材43を有しており、上枠11の上方に室内外に連通する通気経路A1を形成している。
【0013】
外換気枠4の通気経路A1は、外窓の室外側に下方に開口する室外側通気口43aと、外窓の室内側に下方に開口する室内側通気口42aを有し、室外側通気口43aと室内側通気口42aを連絡する迷路構造の通気経路となっている。
通気経路A1の適宜箇所には、防虫網aが配置され、室外からの虫の侵入を防止している。
【0014】
内窓の内換気枠9は、アルミ等の金属材料からなり建物開口部にビス等により固定される開口部側部材91と、上枠61に固定される内窓側部材92を有しており、通気経路A5を形成している。
【0015】
開口部側部材91は、
図4に示すように、長尺状の部材であり、建物開口部に固定される外周側壁911と、外周側壁911の内周面から下方に延設される連結脚912,912と、外周側壁911の室外側端から下方に垂下する垂下片913を有している。
【0016】
開口部側部材91の連結脚912は、
図2,
図3に示すように、見付け方向(左右方向)で広い範囲x(
図3)に亘って下方部位が切りかかれて連通部912aが形成されており、連通部912aが形成されない部位の下端には係合脚912bが形成されている。
【0017】
内窓側部材92は、
図4に示すように、長尺状の部材であり、内窓の上枠61が固定される内周側壁921と、内周側壁921の内周面に形成された係合部922,922と、内周側壁921の室内側端から上方に延設される室内側壁923と、内周側壁921の室外側端から上方に延設される室外側壁924を有している。
【0018】
内窓側部材92の係合部922,922は、
図2,
図3に示すように、内周側壁921の内周面から立ち上がる両側壁の上端が互いに近づいて開口が形成される溝形状をなしており、内窓側部材92の見付け方向の端面から開口部側部材91の連結脚912,912の係合脚912bを係合部922に挿入して、スライドすることができる。
【0019】
そして、内窓側部材92の係合部922,922に対して、開口部側部材91の係合脚912bを挿入してスライド係合させた開口部側部材91及び内窓側部材92の端面に、
図4(c)に示す端部キャップ93を装着することで、
図4(b)に示すように、内換気枠9を形成することができる。なお、説明のために、
図4(b)は、内換気枠9の手前側(左側)端面には端部キャップ93が装着されていない図となっている。
【0020】
建物開口部と内窓の上枠61との間に配置された内換気枠9は、内窓の室外側に下方に開口する室外側通気口9aと内窓の室内側に開口する室内側通気口9bを有しており、室外側通気口9aと室内側通気口9bとの間は、外換気枠4の通気経路A1に比較して抵抗なくスムーズに空気が流れる通気経路A5が形成されている。
【0021】
以上の外窓及び内窓によって形成される二重窓においては、
図1に示すように、例えば、冬季には、換気扇等によって室内を負圧に調節することで、外窓の外換気枠4の室外側通気口43aから外気を室内に流入させて、換気を行うことができる。
【0022】
外換気枠4の室外側通気口43aから流入した冷たい外気は、室内側通気口42aから外窓の内、外障子2,3の室内側面に沿って下方に向けて流出し、コールドドラフトによって外窓と内窓の間の空間の下まで流れてから折り返し、内窓の内、外障子7,8の室外側面に沿って上昇する。その時、内窓の内、外障子7,8のガラスを通って室内から室外側に逃げる熱を空気の流れによって回収し、内換気枠9の室外側通気口9aから内換気枠9の通気経路A5を通って室内に流入する。
【0023】
このように、冬季においては、換気時に取り込んだ外気によって、内窓を通って逃げる熱を外窓と内窓との間の空間において回収させて室内に取り込むことができ、暖房効率を向上させることができる。
【0024】
また、夏季には、換気扇等によって室内を正圧に調節することで、内窓の内換気枠9の室内側通気口9bから空気を室外に流出させて、換気を行うことができる。
【0025】
内換気枠9の室内側通気口9bから流入した室内の空気は、室外側の室外側通気口9aから内窓の内、外障子7,8の室外側面に沿って下方に向けて流出し、クーラーなどによって冷やされた冷たい空気は外窓と内窓の間の空間の下まで流れてから折り返し、外窓の内、外障子2,3の室内側面に沿って上昇する。その時、外窓の内、外障子2,3のガラス面を通って室内側に浸入する熱を空気の流れによって回収し、外換気枠4の室内側通気口42aから外換気枠4の通気経路A1を通って室外に流出することができる。
【0026】
このように、夏季においては、換気時に排出する空気によって、外窓を通って侵入する熱を外窓と内窓との間の空間において回収させて室外に放出することができ、冷房効率を向上させることができる。
【0027】
-防火性能を付与した内窓-
本実施形態の内窓に対して、加熱膨張材を適宜配置すること等によって、防火仕様に対応させることができる。
防火仕様に対応した内窓を
図5に示す。
【0028】
なお、防火仕様の内窓については、内障子7及び外障子8を支持する内、外上レールは、アルミ等の金属材料からなるレール部材61aによって形成し、樹脂製の上枠61に対して内周側からビス等の固定手段によって固定されている。
また、内、外障子7.8の各框には、金属製の補強部材pが適宜配置されており、適宜部位に加熱膨張材fが配置されている。
【0029】
そして、開口部側部材91の外周側壁911の外周側面の両端部に、加熱膨張材f1,f2を設けることができる。
火災時には、加熱膨張材f1、f2が膨張することで、内換気枠9と建物開口部との間に生じる隙間を塞ぐことができる。
【0030】
また、内窓側部材92の内周側壁921の外周側面の両側部に、加熱膨張材f3,f4を配置することができる。
火災時には、加熱膨張材f3、f4が膨張することで、内換気枠9の通気経路A5を塞ぐことができ、通気経路A5を介して火炎やガス等が浸入することを防ぎ、延焼を抑制することができる。
【0031】
また、内窓の上枠61の上面と内換気枠9の内窓側部材92との間に加熱膨張材f5,f6を配置するとともに、レール部材61aと上枠61との間に加熱膨張材f7,f8を配置することができる。
火災時には、加熱膨張材f5ないし加熱膨張材f8が膨張することで、樹脂製の上枠61が溶融して形成される隙間を塞ぐことができ、火炎やガス等が浸入することを防ぎ、延焼を抑制することができる。
【0032】
以上のように、本実施形態の内窓によれば、換気部(内換気枠9)を、アルミの押出形材によって形成した開口部側部材と内窓側部材をスライド係合することで作成することができるので、部品点数が少なく、作成及び施工が容易である。
【0033】
そして、内窓に設けられる換気部の通気孔(連結脚の通気部等)の大きさを適切に設定することで、空気の流れを制御し、内圧及び外圧による内窓にかかる力を抑制することができ、内窓の破損を防止することができる。
また、内換気枠9の内窓側部材92の室内側端部に上方に延設される室内側壁923を形成することにより、室内側に通気口が露出することがなく、意匠性に優れたものとなる。
【0034】
なお、本実施形態の内窓は、内換気枠9の室外側端に下方に垂下する垂下片913を設けて通気経路を形成しているが、内換気枠9の開口部側部材91に垂下片913を設けずに、例えば
図6に示すように、外換気枠4の室内側カバー材42の室内側面に整流体44をノブボルト44aで取り付けることで空気の流れを制御するようにしてもよい。
【0035】
また、開口部側部材91と内窓側部材92をスライド連結する連結脚は、開口部側部材91に設けずに内窓側部材92に設けてもよく、その際には、係合部を開口部側部材に設けるように形成してもよい。
さらに、連結脚は、ひとつでも複数でもよく、また、開口部側部材91と内窓側部材92のそれぞれに連結脚を形成し、それぞれの対向する部位に係合部を形成するようにしてもよい。
すなわち、連結脚は、開口部側部材と内窓側部材の少なくともいずれか一方に設けていればよく、連結脚と対向する他方の部位に係合部を設けていればよい。
【0036】
また、内換気枠9は、樹脂によって形成してもよく、樹脂とアルミの複合によって形成してもよい。
その他、以上の実施形態は,請求項に記載された発明を限定するものではなく,例示として取り扱われることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0037】
61 :上枠
9 :内換気枠(換気部)
9a :室外側通気口
9b :室内側通気口
91 :開口部側部材
92 :内窓側部材
911 :外周側壁
912 :連結脚
912a :連通部
912b :係合脚
913 :垂下片
921 :内周側壁
922 :係合部
923 :室内側壁
924 :室外側壁
A5 :通気経路