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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】熱交換器およびそのインナーフィン
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/06 20060101AFI20240304BHJP
   H01L 23/473 20060101ALI20240304BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
F28F3/06 A
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020092488
(22)【出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2021188794
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・パッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】南谷 広治
(72)【発明者】
【氏名】田中 克美
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-003132(JP,A)
【文献】特開2011-243385(JP,A)
【文献】特開2016-171091(JP,A)
【文献】特開2012-024788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/00 - 99/00
F28D 1/00 - 15/06
H01L 23/34 - 23/46
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口および出口が設けられ、かつ一対の対向壁を有する外包体と、凹部および凸部が設けられるインナーフィンとを備え、前記インナーフィンがその凹部底面および凸部頂面を前記一対の対向壁に接合させつつ前記外包体に収容される一方、前記入口から流入した熱交換媒体が前記外包体内のインナーフィン設置部を通って前記出口から流出するようにした熱交換器であって、
前記外包体が、金属製の伝熱層の内面側に樹脂製の熱融着層が設けられた外包ラミネート材によって構成され、
前記インナーフィンが、金属製の伝熱層の両面側に熱融着層が設けられた内芯ラミネート材によって構成され、
前記内芯ラミネート材の伝熱層は、ビッカース硬さが40HV~200HV、伸びが5%~40%であり、
前記インナーフィンは、凹部および凸部が交互に連続して設けられる波状であって、その凹部底壁および凸部頂壁が前記一対の対向壁に対し平行に配置された角波形状に形成され、
前記インナーフィンの凹部底面および凸部頂面の熱融着層と、前記外包体における一対の対向壁の熱融着層とが熱接着されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記内芯ラミネート材の伝熱層がアルミニウム箔によって構成されている請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記内芯ラミネート材の伝熱層は、加工硬化させたH材によって構成されている請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記内芯ラミネート材の伝熱層は、厚さが30μm~200μmである請求項1~3のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項5】
入口および出口が設けられ、かつ一対の対向壁を有し、前記入口から流入した熱交換媒体が前記一対の対向壁間を通って前記出口から流出するようにした外包体に収容される熱交換器のインナーフィンであって、
凹部および凸部を有し、その凹部底面および凸部頂面を前記一対の対向壁に接合可能に構成され、
金属製の伝熱層の両面側に樹脂製の熱融着層が設けられた内芯ラミネート材によって構成され、
前記内芯ラミネート材の伝熱層は、ビッカース硬さが40HV~200HV、伸びが5%~40%であり、
凹部および凸部が交互に連続して設けられる波状であって、その凹部底壁および凸部頂壁が前記一対の対向壁に対し平行に配置された角波形状に形成され、
凹部底面および凸部頂面の熱融着層が、前記外包体における一対の対向壁の内面に設けられた樹脂製の熱融着層に熱接着可能に構成されていることを特徴とする熱交換器のインナーフィン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属製の伝熱層に樹脂製の熱融着層が積層されたラミネートシート等のラミネート材を用いて製作される熱交換器およびそのインナーフィンに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやパーソナルコンピュータ等の電子機器における小型高性能化に伴い、電子機器のCPU回りの発熱対策も重要となり、機種によっては水冷式冷却器やヒートパイプを組み込んで、CPU等の電子部品に対する熱負荷を軽減するとともに、筐体内に熱をこもらせないようにして、熱による悪影響を回避する技術が従来より提案されている。
【0003】
また電気自動車やハイブリッド車に搭載される電池モジュールは、充電と放電とを繰り返し行うために電池モジュールの発熱が大きくなる。このため電池モジュールにおいても上記の電子機器と同様に、水冷式冷却器やヒートパイプを組み込んで、熱による悪影響を回避する技術が提案されている。
【0004】
さらにシリコンカーバイト(SiC)製等のパワーモジュールも発熱対策として冷却板やヒートシンクを組み付ける等の対策が提案されている。
【0005】
従来、小型の電子機器に組み込まれるヒートパイプ等の薄型の冷却器は、複数の金属製の構成部品をろう付け等で接合する金属製のものが主流であった(特許文献1~3)。
【0006】
しかしながら、金属製の冷却器は、各構成部品が、鋳造や鍛造等の塑性加工や、切削等の除去加工等の面倒な金属加工(機械加工)によって製作されるため、現行以上の薄型化は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-59693号公報
【文献】特開2015-141002号公報
【文献】特開2016-189415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで近年において、ケーシングとしての外包体や、内芯材としてのインナーフィンをラミネート材によって製作した冷却器が提案されている。ラミネート材は、金属箔層に樹脂製の熱融着層が積層されて構成されており、外包体用のラミネート材の熱融着層が、インナーフィン用のラミネート材の熱融着層にヒートシール(熱融着)されて、冷却器が形成されている。
【0009】
このようなラミネート材製の冷却器は、面倒な金属加工が不要で、製作の容易化、コストの削減、薄型化、軽量化等を図ることができる。
【0010】
しかしながら、ラミネート材を用いた冷却器等の熱交換器は、冷却対象部材としての電池モジュールと交互に重ね合わされた状態で、限られたスペース内に組み込まれるのが通例である。特に近年においては、大容量、高出力化や、省スペース化の要請等によって、多くの電池モジュールを効率良く搭載できるように、冷却器および電池モジュールを高い圧力で密着させるようにしている。このため冷却器には、圧縮方向に高い外圧が加わり、その外圧によってインナーフィンの一部に、座屈変形等の変形が生じることがあった。こうしてインナーフィンが変形すると、冷媒の流動特性が低下して、熱交換効率が低下するばかりか、冷却器外壁に凹み変形が生じて、電池モジュールと接触が不十分となり、この点においても、熱交換効率が低下するおそれがあるという課題があった。
【0011】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、インナーフィンの強度を十分に確保できて、外圧等に対するインナーフィンの変形を防止でき、熱交換効率を向上できる熱交換器およびそのインナーフィンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0013】
[1]入口および出口が設けられ、かつ一対の対向壁を有する外包体と、凹部および凸部が設けられるインナーフィンとを備え、前記インナーフィンがその凹部底面および凸部頂面を前記一対の対向壁に接合させつつ前記外包体に収容される一方、前記入口から流入した熱交換媒体が前記外包体内のインナーフィン設置部を通って前記出口から流出するようにした熱交換器であって、
前記外包体が、金属製の伝熱層の内面側に樹脂製の熱融着層が設けられた外包ラミネート材によって構成され、
前記インナーフィンが、金属製の伝熱層の両面側に熱融着層が設けられた内芯ラミネート材によって構成され、
前記内芯ラミネート材の伝熱層は、ビッカース硬さが40HV~200HV、伸びが5%~40%であることを特徴とする熱交換器。
【0014】
[2]前記内芯ラミネート材の伝熱層がアルミニウム箔によって構成されている前項1に記載の熱交換器。
【0015】
[3]前記内芯ラミネート材の伝熱層は、加工硬化させたH材によって構成されている前項2に記載の熱交換器。
【0016】
[4]前記内芯ラミネート材の伝熱層は、厚さが30μm~200μmである前項1~3のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0017】
[5]前記インナーフィンは、凹部および凸部が交互に連続して設けられる波状であって、その凹部底壁および凸部頂壁が前記一対の対向壁に対し平行に配置された角波形状に形成されている前項1~4のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0018】
[6]入口および出口が設けられ、かつ一対の対向壁を有し、前記入口から流入した熱交換媒体が前記一対の対向壁間を通って前記出口から流出するようにした外包体に収容される熱交換器のインナーフィンであって、
凹部および凸部を有し、その凹部底面および凸部頂面を前記一対の対向壁に接合可能に構成され、
金属製の伝熱層の両面側に樹脂製の熱融着層が設けられた内芯ラミネート材によって構成され、
前記内芯ラミネート材の伝熱層は、ビッカース硬さが40HV~200HV、伸びが5%~40%であることを特徴とする熱交換器のインナーフィン。
【発明の効果】
【0019】
発明[1]の熱交換器によれば、インナーフィンの伝熱層として、所定の伸びや硬度に調整された金属箔を用いているため、インナーフィンの強度を向上させることができる。このため本発明の熱交換器を熱交換対象部材に高い圧力で密着させたとしても、インナーフィンを含む冷却器等に、座屈変形等の部分的な変形が生じるのを防止でき、所望の流動特性を維持でき、熱交換効率を向上させることができる。さらにインナーフィンの変形に伴う外包体の凹み変形等も確実に防止でき、外包体における熱交換対象部材に対する接触状態を良好に維持でき、熱交換効率を一層向上させることができる。
【0020】
発明[2][3]の熱交換器によれば、伝熱層として十分な熱交換性をもち、上記の効果をより確実に得ることができる。
【0021】
発明[4]の熱交換器によれば、内芯ラミネート材の伝熱層が硬質であっても、良好な成形性を確保できるため、所望の形状のインナーフィンを確実に成形することができる。
【0022】
発明[5]の熱交換器によれば、外包体の一対の対向壁と、インナーフィンの凹部底面および凸部頂面とを面接触できるため、外包体とインナーフィンとの接触面積を十分に大きく確保できて、熱交換効率をなお一層向上できるとともに、その形状からインナーフィンの一部が外包体に対して支柱となるため、さらに座屈変形等に対する強度を向上できる。
【0023】
発明[6]の熱交換器のインナーフィンによれば、上記発明[1]と主要部が同一であるため、上記と同様の効果を奏する熱交換器を確実に製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1はこの発明の実施形態である熱交換器を示す斜視図である。
図2図2は実施形態の熱交換器を示す図であって、図(a)は平面図、図(b)は図(a)のB-B線断面に相当する側面断面図、図(c)は図(a)のC-C線断面に相当する正面断面図である。
図3図3は実施形態の熱交換器を分解して示す斜視図である。
図4図4は実施形態の熱交換器に適用された外包体およびインナーフィンを説明するための正面断面図である。
図5図5はこの発明の第1変形例である熱交換器を示す図であって、図(a)は平面図、図(b)は図(a)のB-B線断面に相当する側面断面図である。
図6図6はこの発明の第2変形例である熱交換器を分解して模式的に示す正面断面図である。
図7図7はこの発明の熱交換器に採用可能なインナーフィンの変形例を示す正面図である。
図8図8はこの発明の実施例に採用されたインナーフィンの一部を切り欠いて示す正面図である。
図9図9はこの発明の実施例に採用された圧縮試験用フィン材を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1図3はこの発明の実施形態である熱交換器を示す図である。以下の説明においては発明の理解を容易にするため、熱交換器において、図2(a)の左右方向を「前後方向」、上下方向を「左右方向」「幅方向」として説明し、さらに図2(b)の上下方向を「上下方向」「厚さ方向」「高さ方向」として説明する。
【0026】
図1図3に示すように、本実施形態の熱交換器は、伝熱パネルや伝熱チューブ等として用いられるものであり、ケーシング(容器)としての外包体1と、外包体1の内部に収容されるインナーフィン(内芯材)2と、外包体1の両端部内に収容される一対(両側)のヘッダー(ジョイント部材)3,3とを備えている。
【0027】
外包体1は、平面視矩形状のトレイ部材10と、平面視矩形状のカバー部材15とによって構成されている。
【0028】
トレイ部材10は、外包ラミネート材L1の成形品によって構成されており、深絞り成形、張り出し成形等によって、外周縁部を除く中間領域全域が下方に凹まされて、平面視矩形状の凹陥部11が形成されるとともに、凹陥部11の開口縁部外周に外方に突出するフランジ部12が一体に形成されている。
【0029】
またカバー部材15は、トレイ部材10における凹陥部11の前後両端部に対応して一対の出入口16,16が形成されている。言うまでもなく本実施形態においては、一対の出入口16のうち、一方の出入口16が入口として構成され、他方の出入口16が出口として構成されている。
【0030】
トレイ部材10およびカバー部材15は、柔軟性および可撓性を有するラミネートシートである外包ラミネート材L1によって構成されている。
【0031】
図4に示すように外包ラミネート材L1は、金属(金属箔)製の伝熱層51と、その伝熱層51の一面(内面)に接着剤を介して積層された熱融着性の樹脂フィルムないし熱融着性の樹脂シート製の熱融着層52と、伝熱層51の他面(外面)に接着剤を介して積層され、かつ熱融着層52の樹脂より融点が10℃以上高い耐熱性の樹脂フィルムないし耐熱性の樹脂シート製の保護層53とを備えている。なお本実施形態において、「箔」という用語は、フィルム、薄板、シートも含む意味で用いられている。
【0032】
外包ラミネート材L1における伝熱層51としては、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔、ニッケル箔、ニッケルメッキ加工した銅箔、ニッケルと銅箔からなるクラッドメタル等を用いることができるが、中でもアルミニウム箔、銅箔を用いるのが好ましい。なお本実施形態において、「銅」「アルミニウム」「ニッケル」「チタン」という用語は、それらの合金も含む意味で用いられている。
【0033】
伝熱層51の厚さは、30μm~200μmに設定するのが良い。なお本実施形態において30μm~200μmという場合の符号「~」は、30μm等の下限値および200μm等の上限値も含むものであり、30μm以上、200μm以下と同等である(以下同じ)。
【0034】
熱融着層52としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂またはそれらの変性樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル樹脂等によって構成されるフィルムないしシートを好適に用いることができる。中でも特に、無延伸ポリプロピレン(CPP)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)によって構成されるフィルムないしシートを用いるのが好ましい。
【0035】
熱融着層52としては、厚みが20μm~5000μmのものを用いるのが良い。
【0036】
また保護層53としては、耐熱性樹脂であるポリプロピレンテレフタレート樹脂(PET)、延伸ナイロン(ONY)等によって構成されるフィルムないしシートを好適に用いることができる。
【0037】
さらに保護層53としては、厚みが6μm~100μmのものを用いるのが良い。
【0038】
また外包ラミネート材L1を構成する伝熱層51、熱融着層52および保護層53の各間を接着するための接着剤としては、厚みが1μm~5μmのウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、オレフィン系接着剤等を好適に用いることができる。
【0039】
なお本実施形態においては、外包体1を構成するラミネート材L1として、3層構造のシートを用いるようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、4層以上の構造のシートを用いるようにしても良い。例えば保護層と伝熱層との間に他の層を介在させたり、伝熱層と熱融着層との間に他の層を介在したりして、4層以上の構造のシートを採用するようにしても良い。
【0040】
また本発明においては、トレイ部材10を構成するラミネート材L1と、カバー部材15を構成するラミネート材L1とは必ずしも同じ性状のものを用いる必要はなく、異なる性状のものを用いても良い。
【0041】
以上の構成の外包ラミネート材L1によって、外包体1のトレイ部材10およびカバー部材15が構成されている。そして後に詳述するようにカバー部材15がトレイ部材10にその凹陥部11の開口を閉塞するように取り付けられることによって、外包体1が形成されるものである。
【0042】
なお本実施形態においては、トレイ部材10における凹陥部11の底壁(下壁)111と、トレイ部材10に取り付けられたカバー部材15における凹陥部11に対応する部分の天壁(上壁)151とによって、一対の対向壁が構成されるものである。
【0043】
図2図4に示すように外包体1の中空部(凹陥部)11内に収容されるインナーフィン2は、柔軟性ないし可撓性を有するラミネートシートである内芯ラミネート材L2によって構成されている。
【0044】
図4に示すように内芯ラミネート材L2は、金属箔製の伝熱層61と、伝熱層61の両面に接着剤を介して積層された樹脂フィルムないし樹脂シート製の熱融着層62,62とを備えている。
【0045】
内芯ラミネート材L2における伝熱層61としては、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔、ニッケル箔、ニッケルメッキ加工した銅箔、ニッケルと銅箔からなるクラッドメタル等を用いることができるが、中でも特にJIS H0001で定義される、加工硬化させた質別「H」のアルミニウムのH材(硬質材)を用いるのが好ましい。
【0046】
さらに本実施形態において、伝熱層61は、JIS Z 2244に準拠したビッカース硬さが40HV~200HVのものを用いる必要がある。ビッカース硬さが200HVを超えて硬過ぎる場合には、ハンドリング性や、成形加工性が悪くなり、加工適性が低下するので好ましくない。逆にビッカース硬さが40HV未満で硬さが不十分な場合には、インナーフィン2に、座屈変形等の有害な変形が生じるのを確実に防止することが困難になるおそれがあり、好ましくない。
【0047】
さらに本実施形態において、伝熱層61は、JIS K 7127に準拠した伸びが、5%~40%のものを用いる必要がある。伸びが5%未満の場合には、硬くなり過ぎて、ハンドリング性や、成形加工性が悪くなり、加工適性が低下するので好ましくない。逆に伸びが40%を超える場合には、硬さが不十分となり、インナーフィン2に、座屈変形等の有害な変形が生じるのを確実に防止することが困難になるおそれがあり、好ましくない。
【0048】
伝熱層61の厚さは、30μm~200μmに設定するのが良く、より好ましくは40μm~180μmに設定するのが良い。
【0049】
熱融着層62としては、上記外包ラミネート材L1の熱融着層52と同様の構成のものを好適に用いることができるが、特に直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や無延伸ポリプロピレン(CPP)を用いるのが好ましい。
【0050】
熱融着層62の厚さは、20μm~5000μmに設定するのが良く、より好ましくは30μm~80μmに設定するのが良い。
【0051】
また内芯ラミネート材L2を構成する伝熱層61および熱融着層62の各間を接着するための接着剤としては、上記外包ラミネート材L1の接着剤と同様の構成のものを好適に用いることができる。
【0052】
また伝熱層61は、熱融着層62としての樹脂フィルムを、接着層としての2液硬化型接着剤でラミネート加工するときは予め、伝熱層61としてのアルミニウム箔等に対し、洗浄処理、脱脂処理を行い、化成処理を施すことによって、耐腐食性や良好な接着性を得ることができるので、これらの処理を行うのが好ましい。
【0053】
なお本実施形態においては、インナーフィン2を構成するラミネート材L2として、3層構造のシートを用いるようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、外包ラミネート材L1と同等に、4層以上の構造のシートを用いるようにしても良い。例えば熱融着層と伝熱層との間に他の層を介在させることによって、4層以上の構造のシートを採用するようにしても良い。
【0054】
本実施形態では、内芯ラミネート材L2を加工して、インナーフィン2を成形するものであるが、この加工方法は、特に限定されるものではない。例えば内芯ラミネート材L2を一対のエンボスロールまたは一対のコルゲートロールによって挟み込みつつ、その一対のロール間に通過させることにより、後述するように所定の凹凸部を形成する方法や、プレス機、プレス金型により内芯ラミネート材L2をプレス加工して、所定の凹凸部を形成する方法等を好適に用いることができる。
【0055】
図2図4に示すように本実施形態においてインナーフィン2は、凹部25および凸部26が交互に連続して形成された角波形状(矩形波形状)、いわゆるデジタル信号波形に形成されている。すなわち本実施形態のインナーフィン2における凹部底面(底壁)および凸部頂面(頂壁)は、平坦に形成され、かつ熱交換器組付状態において、トレイ部材10の底壁(下壁)111およびカバー部材15の天壁(上壁)151に対し平行に配置されている。さらにインナーフィン2は、隣り合う凹部底壁および凸部頂壁間を連結する立ち上がり壁が、凹部底壁および凸部頂壁に対し、または熱交換器組付状態における外包体1の上下壁111,151に対し垂直に配置されている。
【0056】
このインナーフィン2が、トレイ部材10の凹陥部11内に収容される。この場合、インナーフィン2は、トレイ部材10の凹陥部11における前後両端部を除いた中間部に収容される。さらにインナーフィン2は、その山筋方向および谷筋方向がトレイ部材10の前後方向(図1の左右方向)に一致するように配置される。これにより、インナーフィン2の山筋部および谷筋部によって形成されるトンネル部および溝部が、熱交換流路として構成されている。この熱交換流路は、トレイ部材10の前後方向(長さ方向)に沿うように配置され、かつ幅方向(左右方向)に並列に複数配置されており、熱交換媒体(熱媒体)が各熱交換流路を通って均等に分散しながら外包体1の前後方向一端側から他端側に向けてスムーズに流通できるように構成されている。
【0057】
一方図2および図3に示すように、外包体1の両端部に配置される一対のヘッダー3,3は、合成樹脂の成形品によって構成されている。
【0058】
ヘッダー3を構成する樹脂としては、上記外包体1およびインナーフィン2の熱融着層52,62を構成する樹脂と同種の樹脂を用いるのが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂またはそれらの変性樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)等を好適に用いることができる。
【0059】
ヘッダー3は、一側面に開口部32を有する箱状の取付箱部31と、取付箱部31の上壁に設けられたパイプ部33とを備えている。パイプ部33は取付箱部31内に連通しており、パイプ部33の内部と取付箱部31の内部との間で熱交換媒体が往来できるように構成されている。
【0060】
このヘッダー3の取付箱部31がトレイ部材10の凹陥部11におけるインナーフィン2の両側に配置される。さらにヘッダー3のパイプ部33が上向き配置されるとともに、取付箱部31の開口部32が内側に向けて、つまりインナーフィン2に対向して配置される。
【0061】
こうしてヘッダー3,3をトレイ部材10内に収容して、カバー部材15をトレイ部材10にその開口部を閉塞するように配置する。この場合、カバー部材15の出入口16内に、ヘッダー3,3の上向きのパイプ部33,33を挿通配置する。
【0062】
こうして仮組された熱交換器仮組品を加熱することによって、接触し合う部材同士を熱融着して接合一体化する。この場合本実施形態においては以下に示すように、外包体融着工程と、フィン融着工程との2段のシール工程で熱融着処理が行われる。
【0063】
まず、外包体1におけるトレイ部材10のフランジ部12と、カバー部材15の外周縁部との重ね合わせ部分を、上下一対の加熱シール型によって挟み込みながら加熱する(外包体融着工程)。これにより、トレイ部材10のフランジ部12と、カバー部材15の外周縁部との熱融着層52同士を熱融着(熱接着)して、外包体1の中空部を気密ないし液密状態に封止する。
【0064】
続いて、外周縁部を熱溶着した外包体1の中間領域(下壁111および上壁151)を上下一対の加熱板によって挟み込みながら加熱する。これにより、インナーフィン2の山頂部および谷底部の熱融着層62と、トレイ部材10の底壁111およびカバー部材15の中間領域(上壁)151の熱融着層52とを熱接着(熱融着)により接合一体化して、液密ないし気密状態に封止する(フィン融着工程)。さらにこのフィン融着工程においては、ヘッダー3,3の取付箱部31,31の外周面と、それに対応するトレイ部材10およびカバー部材15の熱融着層52とを熱融着(熱接着)により接合一体化して、液密ないし気密状態に封止する。
【0065】
こうして組み付けられた熱交換器は、外包体1における両端部の上壁(カバー部材15)からヘッダー3,3のパイプ部33,33が上方に突出するように配置されている。
【0066】
ここでインナーフィン2およびヘッダー3,3と、外包体1との熱融着部を同種の樹脂によって構成している場合には、両者を十分な取付強度で確実に固着することができる。
【0067】
なお本実施形態において、熱融着処理(加熱処理)を減圧下で行うことで、トレイ部材10とカバー部材15との間、トレイ部材10およびカバー部材15とそれらに接触しているインナーフィン2およびヘッダー3,3との間の密着性が高い状態で熱接着を強く行うことができ、接着面積を広くすることができる。従って熱融着処理を減圧下で行うのが好ましい。
【0068】
本実施形態において、熱融着処理時の加熱温度(溶着温度)は、140℃~250℃に設定するのが良く、より好ましくは160℃~200℃に設定するのが良い。さらに熱融着時の圧力(溶着圧力)は、0.1MPa~0.5MPaに設定するのが良く、より好ましくは0.15MPa~0.4MPaに設定するのが良い。さらに融着時間(溶着時間)は、2秒~10秒に設定するのが良く、より好ましくは3秒~7秒に設定するのが良い。
【0069】
また本実施形態においては、トレイ部材10のフランジ部12と、カバー部材15の外周縁部とを熱融着する外包体融着工程と、インナーフィン2およびヘッダー3,3と外包体1とを熱融着するフィン融着工程とを別々の熱処理(2段シール)で行うようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、外包体融着工程と、フィン融着工程とを同じ熱処理で同時に行うようにしても良い。
【0070】
また本実施形態では、融着工程特に、フィン融着工程においては、外包体1の下壁111および上壁151を挟み込む一対の加熱板における外包体1との接触面に、伝熱性ゴム層を配置しておくことによって、外包体1の下壁111および上壁151と、インナーフィン2の凹部底面および凸部頂面とを確実に接触させることができ、高精度で熱融着処理を行うことができる。
【0071】
以上の構成の熱交換器は、電池を構成する電池モジュール等を冷却対象部材(熱交換対象部材)として冷却する冷却器(冷却装置)として用いられる。すなわち熱交換器の一方のパイプ部33に、熱交換媒体(冷媒)としての冷却液(冷却水、不凍液等)を流入するための流入管が連結されるとともに、他方のパイプ部33に、冷却液を流出するための流出管が連結される。さらに熱交換器の外包体1における下壁111および/または上壁151に冷却対象部材としての電池モジュールを接触させた状態に配置する。そしてその状態で一方のパイプ部33から冷却液を一方のヘッダー3を介して外包体1の内部に流入し、その冷却液をインナーフィン2の部分を流通させて、他方のヘッダー3を介して他方のパイプ部33から流出させる。こうして冷却液を外包体1に循環させることにより、その冷却液と電池モジュールとの間でインナーフィン2および外包体1の上下壁を介して熱交換させて、電池モジュールを冷却するものである。
【0072】
本実施形態の熱交換器は、その使用形態は特に限定されるものではなく、1つだけで使用することもできるし、2つ以上で使用することもできる。1つでの使用は、既述した通り、熱交換器の上下面に熱交換対象部材を接触させて使用するものである。2つで使用する場合には、例えば2つの熱交換器によって熱交換対象部材を挟み込むように配置して使用することができる。さらに2つ以上で使用する場合、熱交換器と熱交換対象部材とを交互に重ね合わせるように配置して使用することもできる。
【0073】
以上のように本実施形態の熱交換器によれば、インナーフィン2の伝熱層61として、所定の伸びや硬度に調整されたアルミニウム箔を用いているため、強度特に、圧縮方向の強度を向上させることができる。このため例えば熱交換器と熱交換対象部材とを高い圧力で密着させたとしても、インナーフィン2に、座屈変形等の部分的な圧縮変形が生じるのを防止でき、インナーフィン2の部分(熱交換流路)を流通する熱交換媒体の流動特性が低下するのを防止でき、高い熱交換効率を確保することができる。さらにインナーフィン2の変形に伴う外包体2の凹み変形等も確実に防止でき、外包体1における熱交換対象部材に対する接触面積を十分に確保でき、熱交換効率を一層向上させることができる。特に熱交換器を熱交換対象部材と交互に複数重ね合わせて使用するような場合であっても、高強度であるため、安定した形態(形状)を確実に維持でき、高い熱交換効率を確実に得ることができる。その上さらに、十分な強度を確保できるため、補強部材を別途設ける必要がなく、その分、部品点数を省略できて、構造の簡素化およびコストの削減を図ることができる。
【0074】
さらにインナーフィン2は、形状安定性に優れているため、内圧が大きく上昇した場合であっても、外包体1が厚さ方向に膨出するのを防止でき、外包体1の熱交換対象部材に対する密着状態を良好に維持でき、熱交換効率を一段と向上させることができる。
【0075】
また本実施形態において、外包体1およびインナーフィン2の伝熱層51,61として、軽量かつ高熱伝導率のアルミニウム箔を用いる場合には、ラミネート材L1,L2の薄型化、ひいては熱交換器自体の薄型化、小型軽量化を図ることができるとともに、コスト的にも有利となる。
【0076】
さらにインナーフィン2の伝熱層61として、アルミニウム箔のH材(硬質箔)を用いる場合には、強度をより確実に向上できて、上記のインナーフィン2の変形防止効果をより確実に得ることができて、熱交換性能をより一層向上させることができる。
【0077】
また本実施形態において、内芯ラミネート材L2の伝熱層61が硬質であるものの、伝熱層61の厚さを30μm~200μmに調整する場合には、内芯ラミネート材L2を支障なく加工することができ、良好な成形性を維持でき、所望の形状のインナーフィン2を確実に形成することができる。
【0078】
また本実施形態においては、インナーフィン2として角波形状のものを用いているため、外包体1の底壁111および上壁151と、インナーフィン2の谷底部および山頂部とを面接触させて溶着することができる。このためヒートシール時におけるシール圧力の分散性を向上できて、上記のインナーフィン2の変形防止効果をより一層確実に得ることができて、この点からも、熱交換効率をより一層確実に向上させることができる。
【0079】
さらに角波形状のインナーフィン2を採用しているため、外包体1とインナーフィン2との接触面積を十分大きく確保できて、熱交換効率をなお一層向上できるとともに、インナーフィン2の外包体1に対する取付強度を向上でき、接触不良の発生等をより確実に防止することができる。
【0080】
またインナーフィン2を角波形状に形成しているため、凹部底壁と凸部頂壁との間を連結する立ち上がり壁が、外包体1の上下壁111,151に対し直交した状態で多数配置される。このためインナーフィン2が支柱となり補強部材としての機能を十分に発揮でき、例えば外圧による圧縮方向の応力に対しては突っ張るように作用するとともに、内圧による膨張方向の応力に対しては圧縮するように作用するため、外圧および内圧に対する強度をより一層向上でき、安定した形状をより一層確実に維持することができる。
【0081】
また本実施形態の熱交換器においては、インナーフィン2の位置をヘッダー3,3によって規制することができるため、熱交換媒体の流通によってインナーフィン2が揺れ動いたり、ばたついたりすることがなく、熱交換媒体の滞留を防止することができる。このため熱交換媒体の流動性をさらに向上させることができ、熱交換性能を一層向上させることができる。
【0082】
また本実施形態の熱交換器によれば、構成部材としてのトレイ部材10、カバー部材15、インナーフィン2およびヘッダー3が合成樹脂を基に製作されているため、各構成部材を適宜熱融着するだけで簡単に製作することができる。このため本実施形態の熱交換器は、ろう付け接合等の難易度が高くて面倒な接合加工によって製作する従来の金属製の熱交換器に比べて、コストの削減および生産性の向上を図ることができる。
【0083】
さらに本実施形態の熱交換器は、金属の塑性加工や切削加工等の面倒かつ制約のある金属加工を用いる場合と異なり、より一層生産効率の向上およびコストの削減を図ることができる。
【0084】
また本実施形態の熱交換器は、薄型のラミネートシート(ラミネート材)L1からなるトレイ部材10およびカバー部材15を貼り合わせて形成するものであるため、十分な薄肉化および軽量化を確実に図ることができる。
【0085】
さらに本実施形態の熱交換器は、外包体1がラミネート材L1であるため、熱交換器自体の形状や大きさを簡単に変更できるとともに、既述した通り、厚みや強度、熱交換性能等も簡単に変更できるので、熱交換器取付位置等に合わせて適切な構成に簡単に仕上げることができ、設計の自由度が増し、汎用性も向上させることができる。
【0086】
図5はこの発明の第1変形例の熱交換器を示す図であって、同図(a)は平面図、同図(b)は側面断面図である。
【0087】
図5に示すようにこの第1変形例の熱交換器は、袋状の外包体1と、その外包体1の内部に配置されるインナーフィン2とを備え、外包体1の前端および後端に、出入口16,16が設けられている。
【0088】
外包体1は、矩形状に形成された一対(2枚)のシート状の外包体基材である外包ラミネート材L1によって構成されている。この2枚の外包ラミネート材L1が、インナーフィン2を介して上下に重ね合わされて、外包ラミネート材L1の外周縁部の熱融着層52同士が熱融着(ヒートシール)によって接合一体化されることにより、この第1変形例の熱交換器が形成されている。
【0089】
またこの第1変形例において、外包体1における出入口16,16にはジョイントパイプ33が設けられる。このジョイントパイプ33は、外包体1を構成する2枚の外包ラミネート材1aの前端部間および後端部間に挟み込まれるように配置されて、各ジョイントパイプ33,33の外周面(熱融着層)が、それに対応する外包ラミネート材L1の熱融着層52に熱融着によって接合一体化されている。これによりジョイントパイプ33,33が外包体1の出入口16,16の位置において外包体1の前端部および後端部を貫通した状態で外包体1に固定されている。
【0090】
この第1変形例の熱交換器において、外包体1を構成するラミネート材L1、インナーフィン2を構成する内芯ラミネート材L2は、上記図1図4に示す実施形態のラミネート材L1,L2と実質的に同様の素材によって構成されており、第1変形例のインナーフィン2は上記実施形態と同様、角波形状に形成されている。さらに第1変形例のジョイントパイプ33は、上記実施形態のヘッダー3と同様な素材によって構成されている。
【0091】
この第1変形例の熱交換器において、一対の外包ラミネート材L1における対向し合う一対の中間領域、換言するとインナーフィン2の設置領域によって一対の対向壁1a,1aが形成されている。
【0092】
この熱交換器においては、一方のジョイントパイプ33から冷却液等の熱交換媒体を外包体1内に流入させて、他方のジョイントパイプ33から流出させることにより、冷却液を外包体1内に循環させるとともに、循環する冷却液と、外包体1の外表面に接触させた熱交換対象部材との間で熱交換させて、熱交換対象部材を冷却するものである。
【0093】
この変形例の熱交換器においても、上記実施形態の熱交換器と同様の効果を得ることができる。
【0094】
図6はこの発明の第2変形例である熱交換器を分解して模式的に示す正面断面図である。同図に示すようにこの第2変形例の熱交換器において、カバー部材15は、トレイ部材10の凹陥部11に対応する中間領域全域が上方に膨出成形されて、平面視矩形状の膨出部18が形成されるとともに、膨出部18の開口縁部外周に外側に突出するフランジ部17が形成されている。なおこの第2変形例において、カバー部材15は、トレイ部材10を反転させた形状となり、トレイ部材10およびカバー部材15は実質的に同じ形状となっている。さらにトレイ部材10の凹陥部11の深さ寸法およびカバー部材15の膨出部18の高さ寸法(内部高さ寸法)は、インナーフィン2の高さ寸法Hfの半分に設定されている。
【0095】
この熱交換器においては、トレイ部材10およびカバー部材15の互いのフランジ部12,17同士が熱融着されて接合一体化され、さらにトレイ部材10の底壁111およびインナーフィン2の凹部底壁間が熱融着されて接合一体化されるとともに、カバー部材15の膨出部上壁151およびインナーフィン2の凸部頂壁間が熱融着されて接合一体化される。
【0096】
この第2変形例の熱交換器においては、トレイ部材10の底壁111およびカバー部材15の膨出部上壁151が一対の対向壁を構成するものである。
【0097】
この第2変形例において他の構成は、上記実施形態と実質的に同様である。例えば図示は省略するが、トレイ部材10の凹陥部11およびカバー部材15の膨出部18間にヘッダーが収容されており、そのヘッダーのパイプ部がカバー部材10の出入口を介して外部に配置されている。
【0098】
この第2変形例の熱交換器においても上記実施形態と同様にして同様の効果を得ることができる。
【0099】
その上さらにこの第2変形例の熱交換器においては、トレイ部材10とカバー部材15とを実質的に同じ構成であるため、構成部品の共通化によって部品点数を削減できて、部品作製の容易化およびコストの削減等を図ることができる。
【0100】
なおこの第2変形例においては、トレイ部材10の凹陥部11の深さと、カバー部材15の膨出部18の高さとを同じ寸法に設定しているが、それだけに限られず、本発明においては、トレイ部材10の凹陥部深さと、カバー部材15の膨出部高さとを異なる寸法に設定するようにしても良い。
【0101】
ところで上記実施形態等においては、角波形状のインナーフィン2を用いる場合を例に挙げて説明したが、図7に示すようにインナーフィン2として、円弧状の凹部25および凸部26が交互に連続して形成された一般的な波形状(正弦波形状)、いわゆるアナログ信号波形に形成されたものを用いても良い。もっとも本発明において、インナーフィンは、外包体の内周面に接合される凹部および凸部が設けられていれば、どのようなものでも使用することができる。
【実施例
【0102】
【表1】
【0103】
<実施例1>
(1)構成部材の準備
実施例1の熱交換器として、図1図4に示す実施形態と同様な熱交換器を作製した。すなわち表1に示すようにトレイ(トレイ部材10)およびカバー(カバー部材15)用の外包ラミネート材L1における伝熱層51用の金属箔として、JIS H4160の合金番号A8021のアルミニウム合金からなり、質別「O」のO材(軟質箔)である厚さ120μmのアルミニウム箔を準備した。
【0104】
このアルミニウム箔製の伝熱層51の一面(内面)にウレタン系接着剤を介して、厚さ40μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムを貼り合わせるとともに、伝熱層(アルミニウム箔)の他面(外面)にウレタン系接着剤を介して、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)を貼り合わせて、トレイ部材10およびカバー部材15用の外包ラミネート材(ラミネートシート)L1を作製した。
【0105】
この外包ラミネート材L1を深絞り成形して裁断することによって、深さ(成形高さ)4mm×幅65mm×長さ180mmの凹陥部11を有し、かつ凹陥部11の開口縁部外周に幅10mmのフランジ部(外周縁部)12を有する成形品(トレイ部材10)を作製した。
【0106】
また同様の外包ラミネート材L1を裁断することによって、幅85mm×長さ200mmの矩形シート状のカバー部材15を作製した。なおこのカバー部材15の長さ方向両端部には、直径φ12mmの円形の出入口16,16を形成した。
【0107】
また表1に示すように内芯ラミネート材L2における伝熱層61用の金属箔として、JIS H4160の合金番号A3003のアルミニウム合金からなり、質別「H18」のH材(硬質箔)である厚さ120μmのアルミニウム箔を準備した。このアルミニウム箔は、JIS K 7127に準拠した伸びが10%、JIS Z 2244に準拠したビッカース硬さが55HVである。なお参考までに、表1の「伸び」および「ビッカース硬さ」の項目名の欄には、本発明の内芯ラミネート材L2における伝熱層61の「伸び」および「ビッカース硬さ」の必須範囲を記載している。
【0108】
このアルミニウム箔製の伝熱層61の両面にウレタン系接着剤を介して、厚さ40μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムを貼り合わせた内芯ラミネート材L2を作製した。
【0109】
この内芯ラミネート材L2をコルゲート加工して裁断することによって、図8に示すようにフィン高さがHf4mm、凹部間隙間Sまたは凸部間隙間Sが3mm、フィンピッチPfが4mm、外側コーナー半径R1が0.5mmの角波形状を有し、かつ図3に示すように幅Wfが65mm、長さLfが120mmのコルゲートフィン(インナーフィン2)を作製した。
【0110】
一方、LLDPE製の樹脂材を射出成型することによって、高さ4mm×長さ65mm×幅30mmの取付箱部31に、内径φ10mm、外径φ12mm、長さ3mmのパイプ部33が一体に形成されたヘッダー3(図2および図3参照)を作製した。
【0111】
(2)熱交換器の組立
トレイ部材10の凹陥部11における両端部にヘッダー3,3を、各パイプ部33が上方に向くように収容した。さらに凹陥部11内におけるヘッダー3,3間に上記のインナーフィン2を収容した。
【0112】
次にトレイ部材10の全域を上から覆うようにカバー部材15を配置した。この際、カバー部材15の上記出入口16,16にヘッダー3,3のパイプ部33,33を挿通してカバー部材15の上壁151の上方に突出させた。さらにトレイ部材10のフランジ部12およびカバー部材15の外周縁部が互いに重なり合うように配置した。
【0113】
こうして非接合状態の熱交換器仮組品を作製し、その仮組品に対し上記実施形態と同様に2段シール方式で熱融着した。
【0114】
すなわち仮組品の形状に適合する上下の金属製シール金型(伝熱性ゴム無し)を用いて、1段目のシールにおいて、180℃×0.3MPa×7秒間のヒートシール(溶着処理)を行って、トレイ部材10のフランジ部12およびカバー部材15の外周縁部を熱融着した。さらに2段目のシールにおいて、190℃×0.3MPa×7秒間のヒートシール(溶着処理)を行って、インナーフィン2およびヘッダー3,3と、トレイ部材10およびカバー部材15との接触部同士を熱融着した。これにより実施例1の熱交換器を作製した。
【0115】
(3)圧縮試験用のフィン片(試験片)の準備
熱交換器に組み込まれたインナーフィン2とは別に、上記と同様の内芯ラミネート材L2を用いて、図9に示すように幅Wfが20mm、長さLfが120mmで、それ以外の構成(図8等参照)は同様のインナーフィン2を実施例1の圧縮試験用フィン片(試験片)として準備した。なおこの圧縮試験用フィン片は、幅WfがフィンピッチPfの5倍である5ピッチ分の寸法であり、5つの山部(凸部)26と、4つの谷部(凹部)25とを有している。
【0116】
<実施例2>
表1に示すように内芯ラミネート材L2における伝熱層61用の金属箔として、JIS H4000の合金番号A3004のアルミニウム合金からなり、質別「H38」のH材(硬質箔)である厚さ120μmのアルミニウム箔を準備した。このアルミニウム箔は、伸びが6%、ビッカース硬さが75HVである。
【0117】
このアルミニウム箔を用いて、上記実施例1と同様に内芯ラミネート材L2を作製した。そしてその内芯ラミネート材L2を用いた以外は、上記実施例1と同様に、実施例2の熱交換器を作製するとともに、実施例2の圧縮試験用フィン片を作製した。
【0118】
<実施例3>
表1に示すように内芯ラミネート材L2における伝熱層61用の金属箔として、JIS H4160の合金番号A1100のアルミニウム合金からなり、質別「H18」のH材(硬質箔)である厚さ120μmのアルミニウム箔を準備した。このアルミニウム箔は、伸びが15%、ビッカース硬さが44HVである。
【0119】
このアルミニウム箔を用いて、上記実施例1と同様に内芯ラミネート材L2を作製した。そしてその内芯ラミネート材L2を用いた以外は、上記実施例1と同様に、実施例3の熱交換器を作製するとともに、実施例3の圧縮試験用フィン片を作製した。
【0120】
<実施例4>
表1に示すように内芯ラミネート材L2における伝熱層61用の金属箔として、JIS H4000の合金番号A5052のアルミニウム合金からなり、質別「H38」のH材(硬質箔)である厚さ120μmのアルミニウム箔を準備した。このアルミニウム箔は、伸びが7%、ビッカース硬さが108HVである。
【0121】
このアルミニウム箔を用いて、上記実施例1と同様に内芯ラミネート材L2を作製した。そしてその内芯ラミネート材L2を用いた以外は、上記実施例1と同様に、実施例4の熱交換器を作製するとともに、実施例4の圧縮試験用フィン片を作製した。
【0122】
<実施例5>
表1に示すように内芯ラミネート材L2における伝熱層61用の金属箔として、JIS H4000の合金番号A5052のアルミニウム合金からなり、質別「O」のO材(軟質箔)である厚さ120μmのアルミニウム箔を準備した。このアルミニウム箔は、伸びが25%、ビッカース硬さが53HVである。
【0123】
このアルミニウム箔を用いて、上記実施例1と同様に内芯ラミネート材L2を作製した。そしてその内芯ラミネート材L2を用いた以外は、上記実施例1と同様に、実施例5の熱交換器を作製するとともに、実施例5の圧縮試験用フィン片を作製した。
【0124】
<比較例1>
表1に示すように内芯ラミネート材L2における伝熱層61用の金属箔として、JIS H4160の合金番号A8021のアルミニウム合金からなり、質別「O」のO材(軟質箔)である厚さ120μmのアルミニウム箔を準備した。このアルミニウム箔は、伸びが25%、ビッカース硬さが27HVである。
【0125】
このアルミニウム箔を用いて、上記実施例1と同様に内芯ラミネート材L2を作製した。そしてその内芯ラミネート材L2を用いた以外は、上記実施例1と同様に、比較例1の熱交換器を作製するとともに、比較例1の圧縮試験用フィン片を作製した。
【0126】
<比較例2>
表1に示すように内芯ラミネート材L2における伝熱層61用の金属箔として、JIS H4160の合金番号A1100のアルミニウム合金からなり、質別「O」のO材(軟質箔)である厚さ120μmのアルミニウム箔を準備した。このアルミニウム箔は、伸びが40%、ビッカース硬さが27HVである。
【0127】
このアルミニウム箔を用いて、上記実施例1と同様に内芯ラミネート材L2を作製した。そしてその内芯ラミネート材L2を用いた以外は、上記実施例1と同様に、比較例2の熱交換器を作製するとともに、比較例2の圧縮試験用フィン片を作製した。
【0128】
<耐圧試験>
実施例1~5および比較例1,2の各熱交換器において、一方のパイプ部33から冷却水を導入し、外包体1内に流通させて他方のパイプ部33から流出させるように、冷却水を内圧1MPaで5分間を循環させた。そして各熱交換器において、外包体とインナーフィンとの剥がれ(接着破壊箇所)の有無を目視により観察した。さらに参考として、内圧が1.5MPaまで過剰に上昇させた場合の試験も行った。
【0129】
そして内圧1.5MPaまで、剥がれ、膨れ等の接着破壊箇所の発生がないものを「◎(優)」と評価し、内圧1MPaまでは、剥がれ、膨れ等の接着破壊箇所の発生がないものの、内圧1MPaを超えると、内圧1.5MPa未満で剥がれ、膨れ等の接着破壊箇所の発生が認められたものを「○(良)」と評価し、内圧1MPa未満で剥がれ、膨れ等の接着破壊箇所の発生が認められたものを「×(不良)」と評価した。その結果を表1に併せて示す。
【0130】
なおこの耐圧試験は、各実施例1~5および各比較例1,2毎に3つの熱交換器(N=3)を準備し、各実施例1~5および各比較例1,2毎に3回ずつ実施した。
【0131】
<フィン片圧縮試験>
「ヒートシール軟包装袋及び半剛性容器の試験方法」であるJIS Z 0238(1998)に準拠して、上記実施例1~5および比較例1,2の上記各圧縮試験用フィン片(試験片)に対し圧縮試験を行った。すなわちJIS Z 0238の中の圧縮試験方法を、上記の各圧縮試験用フィン片に適用することにより、座屈試験の代用とした。
【0132】
試験装置としては、城南オートマチック株式会社製の耐圧試験器である「JY-1507型シールテスター」を用いた。
【0133】
試験条件としては、各圧縮試験用フィン片に対し90kgfの荷重を1分間負荷した場合と、95kgfの荷重を1分間負荷した場合とでそれぞれ座屈の有無を確認した。さらに参考値として、圧縮試験後のフィン片の高さ(フィン高さ)Hfを測定して、次式から圧縮試験後のフィン高さの減少率を算出した。
【0134】
フィン高さ減少率=(4mm-試験後フィン高さ)/4mm×100%
そしてフィン高さ減量率が10%未満で座屈がないものを「○(良)」と評価し、フィン高さ減少率10%以上で変形があったものを「△(並)」と評価し、座屈があったものを「×(不良)」と評価した。
【0135】
なおこのフィン片圧縮試験は、各実施例1~5および各比較例1,2毎に5つのフィン片(N=5)に対し実施し、その平均値を基に評価した。その結果を表1に併せて示す。
【0136】
<評価結果>
表1から明らかなように、耐圧性に関しては、実施例および比較例の熱交換器は全て良好であり、遜色はなかった。
【0137】
一方、フィン片圧縮試験において、荷重が90kgfと低い場合には、比較例のフィン材は実施例のフィン材に比べて、少しフィン高さ減少率が大きくなっていたが、実施例および比較例のフィン片共に座屈はなかった。
【0138】
また荷重が95kgfと高い場合、実施例のフィン材は、座屈がないのに対し、比較例のフィン材は座屈があった。従って本発明の要旨を含む実施例のフィン材は、耐圧縮性に優れており、外力に対する十分な強度を備えていると判断できる。
【産業上の利用可能性】
【0139】
この発明の熱交換器は、スマートフォンやパーソナルコンピュータのCPU回り、電池回りの発熱対策、液晶テレビ、有機ELテレビ、プラズマテレビのディスプレイ回りの発熱対策、自動車のパワーモジュール回り、電池回りの発熱対策に用いられる冷却器(冷却装置)の他、床暖房、除雪に用いられる加熱器(加熱装置)として利用することができる。
【符号の説明】
【0140】
1:外包体
1a:一対の対向壁
10:トレイ部材
111:底壁(対向壁)
15:カバー部材
151:上壁(対向壁)
16:出入口
2:インナーフィン
25:凹部
26:凸部
51:伝熱層
52:熱融着層
61:伝熱層
62:熱融着層
L1:外包ラミネート材
L2:内芯ラミネート材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9