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特許7446921移動体、距離計測方法および距離計測プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】移動体、距離計測方法および距離計測プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20240304BHJP
   G01S 17/931 20200101ALI20240304BHJP
【FI】
G05D1/43
G01S17/931
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020095052
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021189800
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】十倉 征司
(72)【発明者】
【氏名】山本 大介
(72)【発明者】
【氏名】園浦 隆史
(72)【発明者】
【氏名】田中 淳也
(72)【発明者】
【氏名】小川 秀樹
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-059150(JP,A)
【文献】特開2010-134742(JP,A)
【文献】特開2020-173744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/43
G01S 17/931
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
物体までの距離を計測する距離計測部と、
前記車体の姿勢角度を計測する姿勢計測部と、
前記距離計測部および前記姿勢計測部と接続された制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記距離計測部から検知範囲の計測値を取得し、
前記姿勢計測部から取得した前記姿勢角度に基づき前記検知範囲の有効範囲を算出し、
前記検知範囲のうち前記有効範囲に含まれない無効範囲の前記計測値をデータ不定に置き換えることにより無効化し、前記無効範囲の前記計測値の取得を後回しにする、
移動体。
【請求項2】
前記制御装置は、前記姿勢角度と前記距離計測部から床までの距離との関係に基づいて前記有効範囲を算出する、
請求項1に記載の移動体。
【請求項3】
前記制御装置は、前記姿勢角度と前記床までの距離とを関連付けたデータベースに基づいて前記有効範囲を算出する、
請求項2に記載の移動体。
【請求項4】
前記距離計測部から取得する前記計測値は、物体の有無を示すデータである、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の移動体。
【請求項5】
前記検知範囲において無効化された無効範囲の領域を計測して、前記物体の有無を検出する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の移動体。
【請求項6】
前記制御装置は、前記距離計測部から取得する前記計測値に基づいて、物体検出マップを生成する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の移動体。
【請求項7】
前記制御装置は、前記無効範囲を拡張した領域の前記計測値を無効化する、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の移動体。
【請求項8】
距離センサから検知範囲における計測値を取得する計測値取得工程と、
傾斜センサから車体の姿勢角度を取得する姿勢角度工程と、
前記姿勢角度に基づき検知範囲における有効範囲を算出する有効範囲算出工程と、
前記検知範囲のうち前記有効範囲に含まれない無効範囲の前記計測値をデータ不定に置き換えることにより無効化し、前記無効範囲の前記計測値の取得を後回しにする計測値無効化工程と、
を備える、
距離計測方法。
【請求項9】
前記有効範囲算出工程は、前記姿勢角度と床までの距離との関係に基づいて前記有効範囲を算出する、
請求項8に記載の距離計測方法。
【請求項10】
前記有効範囲算出工程は、前記姿勢角度と前記床までの距離とを関連付けたデータベースに基づいて前記有効範囲を算出する、
請求項9に記載の距離計測方法。
【請求項11】
前記計測値取得工程において取得する前記計測値は、物体の有無を示すデータである、
請求項8から請求項10のいずれか一項に記載の距離計測方法。
【請求項12】
前記検知範囲において無効化された無効範囲の領域を計測して、物体の有無を判定する、
請求項8から請求項11のいずれか一項に記載の距離計測方法。
【請求項13】
前記計測値に基づいて、物体検出マップを生成する物体検出マップ工程をさらに有する、
請求項8から請求項12のいずれか一項に記載の距離計測方法。
【請求項14】
前記計測値無効化工程において、前記無効範囲を拡張した領域の前記計測値を無効化する、
請求項8から請求項13のいずれか一項に記載の距離計測方法。
【請求項15】
車体と、
物体までの距離を計測する距離計測部と、
前記車体の姿勢角度を計測する姿勢計測部と、
前記距離計測部および前記姿勢計測部と接続された制御装置と、
を備えた移動体を制御するプログラムであって、
前記制御装置に前記距離計測部から検知範囲の計測値を取得させ、
前記制御装置に前記姿勢計測部から取得した前記姿勢角度に基づき前記検知範囲の有効範囲を算出させ、
前記制御装置に前記検知範囲のうち前記有効範囲に含まれない無効範囲の前記計測値をデータ不定に置き換えることにより無効化させ、前記無効範囲の前記計測値の取得を後回しにさせる、
距離計測プログラム。
【請求項16】
前記制御装置に前記姿勢角度と床までの距離との関係に基づいて前記有効範囲を算出させる、
請求項15に記載の距離計測プログラム。
【請求項17】
前記制御装置に前記姿勢角度と前記床までの距離とを関連付けたデータベースに基づいて前記有効範囲を算出させる、
請求項16に記載の距離計測プログラム。
【請求項18】
前記距離計測部から取得させる前記計測値は、物体の有無を示すデータである、
請求項15から請求項17のいずれか一項に記載の距離計測プログラム。
【請求項19】
前記検知範囲において無効化された無効範囲の領域を計測して、前記物体の有無を判定する、
請求項15から請求項18のいずれか一項に記載の距離計測プログラム。
【請求項20】
前記制御装置に前記計測値に基づいて、物体検出マップを生成させる、
請求項15から請求項19のいずれか一項に記載の距離計測プログラム。
【請求項21】
前記制御装置に前記無効範囲を拡張した領域の前記計測値を無効化させる、
請求項15から請求項20のいずれか一項に記載の距離計測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、移動体、距離計測方法および距離計測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザレンジファインダ(LRF)などの距離センサを用いて周辺環境までの距離を計測しながら動作する移動体(ロボット車両や無人搬送車)が運搬などに使用されている。移動体が荷重などの影響により傾いた場合、傾いた距離センサによって計測した障害物等までの距離を補正する方法が考案されている。しかしながら、例えば距離センサの傾き角度が大きく距離センサが障害物等ではなく床までの距離までの距離を計測している場合、上記のような距離を補正する方法では誤検出を防止することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018―005709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、距離センサの傾きに起因する誤検出を防止できる移動体、距離計測方法および距離計測プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の移動体は、車体と、物体までの距離を計測する距離計測部と、前記車体の姿勢角度を計測する姿勢計測部と、前記距離計測部および前記姿勢計測部と接続された制御装置と、を持つ。前記制御装置は、前記距離計測部から検知範囲の計測値を取得し、前記姿勢計測部から取得した前記姿勢角度に基づき前記検知範囲の有効範囲を算出し、前記有効範囲に含まれない無効範囲の前記計測値をデータ不定に置き換えることにより無効化し、前記無効範囲の前記計測値の取得を後回しにする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態の無人搬送車の斜視図。
図2】同無人搬送車の距離計測部の検知範囲を示す図。
図3】同距離計測部の有効範囲を示す図。
図4】同無人搬送車の制御装置の機能ブロック図。
図5】計測値を可視化した物体検出マップの一例。
図6】同制御装置の制御フローチャート。
図7】同距離計測部が出力する計測値を可視化した物体検出マップの一例。
図8】生成された物体検出マップの一例。
図9】有効範囲データベースの生成フローチャート。
図10】同無人搬送車の変形例の斜視図。
図11】第2の実施形態の無人搬送車の斜視図。
図12】第3の実施形態の無人搬送車の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の移動体、距離計測方法および距離計測プログラムを、図面を参照して説明する。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。なお、本願でいう「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
【0008】
本願において、直交座標系のX方向、Y方向およびZ方向が以下のように定義される。Z方向は鉛直方向であって、+Z方向は上方向である。X方向は水平方向であって、移動体の前後方向であり、+X方向は移動体の前方向である。Y方向は水平方向であって、X方向に直交する方向であり、移動体の左右方向(幅方向)である。なお、本明細書でいう「前方」などの用語は、説明の便宜上、移動体の1つの移動方向を基準とした視点で表現されたものである。ただし、移動体の移動方向は、+X方向に限らない。移動体は、例えばY方向に移動可能であってもよい。
【0009】
(第1の実施形態)
[無人搬送車200]
図1は、第1の実施形態の無人搬送車200の斜視図である。
無人搬送車200は、例えば、オペレータによる操縦が不要であり、床面に描かれたラインなども不要なラインレスタイプの自律移動台車である。無人搬送車200は、例えば、低床型の自律移動台車であり、台車の下方に潜り込んで台車に結合され、台車を搬送する。ただし、無人搬送車200は、上記例に限定されず、別のタイプの無人搬送車でもよい。例えば、無人搬送車200は、オペレータにより操縦されるものでもよい。無人搬送車200は、移動体の一例である。
【0010】
無人搬送車200は、車体201と、車輪202と、車輪202を駆動する駆動モータと、距離計測部210と、姿勢計測部211と、制御装置220と、を備える。
【0011】
車体201は、略直方体の箱状に形成される。車体201は、平面視において無人搬送車200の中央部に配置される。
【0012】
車輪202は、平面視において車体201の四隅の外側に配置される。車輪202は、Y方向と平行な車軸を有する。駆動モータ(不図示)は、車体201の四隅の内側に配置される。駆動モータは、複数の車輪202を相互に独立して回転駆動する。駆動モータには、回転量を検知するエンコーダが付属している。
【0013】
車輪202は、例えばメカナムホイールを形成する。メカナムホイールは、車輪202の円周上に複数の樽を有する。樽は、車輪202の車軸に対して45度傾いた回転軸の周りを自由回転する。メカナムホイールは、4個の車輪202における回転方向の組み合わせや回転速度を変えることにより、車体201をあらゆる方向に移動させる。4個の車輪202は、通常の2輪独立駆動方式(2個の駆動輪および2個の従動輪)でもよく、アクティブキャスターと呼ばれる操舵輪方式でもよい。
【0014】
図2は、距離計測部210の検知範囲R1を示す図である。
距離計測部210は、物体までの距離を計測する距離センサであり、例えばレーザレンジファインダ(LRF)である。距離計測部210は、車体201の前方(+X方向)の端部に取り付けられている。距離計測部210のレーザ走査範囲は、例えば270°の範囲である。距離計測部210は、LRFが照射したレーザの反射の有無により、検知範囲R1における物体の有無が検知可能である。検知範囲R1は、例えば15m程度である。距離計測部210は、照射したレーザの反射の度合いにより、物体までの距離や方角が検出可能である。距離計測部210は、物体の有無を示すデータや物体までの距離や方角を出力する。以降の説明において、距離計測部210の出力を「計測値」という。なお、距離計測部210は、上記例に限定されず、別のタイプのセンサでもよい。例えば、距離計測部210は、PSD(Position sensitive detector)センサや超音波センサであってもよい。
【0015】
姿勢計測部211は、車体201の姿勢角度Aを計測する傾斜センサであり、例えばIMU(Inertial Measurement Unit)センサである。本実施形態において、姿勢角度Aは重力方向に対する車体201の傾き角度であって、前後方向(X方向)および左右方向(Y方向)における傾き角度である。姿勢計測部211は、例えば平面視において車体201の中心に取り付けられている。姿勢計測部211は、距離計測部210と隣接する位置に取り付けられていてもよい。
【0016】
図3は、距離計測部210の有効範囲R2を示す図である。
図3に示すように、車体201の姿勢角度Aが所定の角度より大きい場合、距離計測部210は床F上の物体ではなく床Fまでの距離を計測する。この場合、距離計測部210は、計測値が床F上の物体までの距離を計測した計測値であるか、床Fまでの距離を計測した計測値であるか、を判別できない。また、距離計測部210は、床Fを検知することで物体がないにも関わらず「物体あり」と検出する。これらの誤検出を防ぐために、距離計測部210のうち距離計測部210が取得する計測値が有効な範囲である「有効範囲R2」を定義する。有効範囲R2における計測値には、床Fを検知した計測値は含まれない。
【0017】
制御装置220は、距離計測部210や姿勢計測部211の出力を取得し、距離計測部210や姿勢計測部211の出力等に基づいて車輪202や駆動モータなどを制御する装置である。制御装置220は、CPU等のプロセッサやメモリや記憶媒体を有するコンピュータを備えており、ソフトウェアを実行可能である。制御装置220の制御機能は、ソフトウェアによって実現される。
【0018】
図4は、制御装置220の機能ブロック図である。
制御装置220は、有効範囲算出部103と、有効範囲データベース104と、物体検出マップ生成部105と、を有する。
【0019】
有効範囲算出部103は、姿勢計測部211が出力する姿勢角度Aを取得する。また、有効範囲算出部103は、姿勢角度Aに基づいて、検知範囲R1のうち距離計測部210が取得する計測値が有効な範囲である「有効範囲R2」を算出する。有効範囲算出部103は、有効範囲データベース104を用いて有効範囲R2を算出する。
【0020】
有効範囲データベース104は、姿勢角度Aと有効範囲R2とを関連付けたデータベースである。有効範囲データベース104は、有効範囲算出部103から入力される姿勢角度Aに対応する有効範囲R2を有効範囲算出部103に出力する。
【0021】
図5は、計測値を可視化した物体検出マップMの一例である。
物体検出マップ生成部105は、距離計測部210が出力する計測値から、物体の有無を示す物体検出マップMを生成する。物体検出マップMにおいて、P0は距離計測部210の位置を示す。物体検出マップMにおいて、物体が存在しない領域は、「物体なしP1」と記録される。物体検出マップMにおいて、物体が存在する領域は、「物体ありP2」と記録される。物体検出マップMにおいて、物体が存在するかどうか不明な領域は、「データ不定P3」と記録される。
【0022】
[無人搬送車200の動作]
次に、無人搬送車200の動作を説明する。図6に示す制御装置220の制御フローチャートに沿って説明を行う。
【0023】
制御装置220が起動されると、制御装置220は距離計測部210や姿勢計測部211の初期化を実施した後に無人搬送車200の制御を開始する(ステップS0)。次に、制御装置220はステップS1を実行する。
【0024】
ステップS1において、制御装置220は、距離計測部210が出力する計測値を取得する(計測値取得工程)。図7は、距離計測部210が出力する計測値を可視化した物体検出マップMの一例である。図7に示す物体検出マップMにおいて、距離計測部210の前方(+X)にP2がライン上に存在するライン領域Lが検知されている。制御装置220は、ライン領域Lが壁などの大きな物体であるか床Fであるかを、距離計測部210が出力する計測値のみから判別できない。次に、制御装置220はステップS2を実行する。
【0025】
ステップS2において、制御装置220は、姿勢計測部211が出力する姿勢角度Aを取得する(姿勢角度工程)。次に、制御装置220はステップS3を実行する。
【0026】
ステップS3において、制御装置220は、姿勢角度Aに基づき、検知範囲R1における有効範囲R2を算出する(有効範囲算出工程)。制御装置220は、有効範囲データベース104を用いて姿勢角度Aに対応する有効範囲R2を算出する。次に、制御装置220はステップS4を実行する。
【0027】
ステップS4において、制御装置220は、検知範囲R1のうち有効範囲R2に含まれない範囲(無効範囲R3)に計測値が含まれるかを判定する。無効範囲R3に計測値が含まれる場合、制御装置220はステップS5を実行する。無効範囲R3に計測値が含まれない場合、制御装置220はステップS6を実行する。
【0028】
ステップS5において、制御装置220は、有効範囲R2に基づいて、有効範囲R2に含まれない範囲(無効範囲R3)の計測値を無効化する(計測値無効化工程)。具体的には、制御装置220は、無効範囲R3に含まれる「物体なしP1」もしくは「物体ありP2」の計測値を、「データ不定P3」に置き換える。なお、「データ不定P3」に置き換える領域は、距離計測部210等の誤差を考慮して無効範囲R3より少し拡張した領域R4とすることが望ましい。次に、制御装置220はステップS6を実行する。
【0029】
ステップS6において、制御装置220は、最終的な物体検出マップMを生成する(物体検出マップ工程)。図8は、生成された物体検出マップMの一例である。図8においてライン領域Lが無効範囲R3に含まれているため、制御装置220はライン領域Lが物体ではなく床Fであることを判別できる。ライン領域Lを含む無効範囲R3の計測値は、「データ不定P3」として記録される。すなわち、距離計測部210が物体ではなく床Fまでの距離までの距離を計測している場合、制御装置220は床F近辺および床Fより前方の計測値を補正するのではなく、「データ不定P3」に置き換える。次に、制御装置220はステップS7を実行する。
【0030】
ステップS7において、制御装置220は、無人搬送車200の制御を終了するかを判定する。終了する場合は、制御装置220はステップS8を実行して制御を終了する。終了しない場合は、制御装置220は再度ステップS1を実行する。
【0031】
[有効範囲データベース104]
次に、有効範囲データベース104の生成方法について説明する。無人搬送車200の使用者は以下の方法により有効範囲データベース104を事前に生成する。
【0032】
図9は、有効範囲データベース104の生成フローチャートである。
使用者は、無人搬送車200を床F上に物体が存在しない環境に設置する。この状態において無人搬送車200の制御装置220が物体を検出した場合、距離計測部210は物体ではなく床Fを検出していることになる。
【0033】
ステップS11において、制御装置220は、図6に示す制御装置220の制御フローを開始する。使用者は、無人搬送車200の車体201を手で傾けるなどの方法により、車体201を傾斜させて徐々に姿勢角度Aを大きくする。次に、制御装置220はステップS12とステップS13を実行する。
【0034】
ステップS12において、制御装置220は、姿勢計測部211が出力する姿勢角度Aを取得する。次に、ステップS13において、制御装置220は、距離計測部210が出力する計測値を取得する。次に、制御装置220はステップS14を実行する。
【0035】
ステップS14において、制御装置220は、距離計測部210が床Fを検出したかを判定する。上述したように、無人搬送車200は物体が存在しない環境に設置されているため、距離計測部210が検出した物体は床Fであることが判定できる。次に、制御装置220はステップS15を実行する。
【0036】
ステップS15において、制御装置220は、姿勢角度Aと検出した床Fまでの距離を対応付けて、有効範囲データベース104に記録する。次に、制御装置220はステップS16を実行する。
【0037】
ステップS16において、制御装置220は、車体201が最大まで傾斜したかを判定する。車体201が最大まで傾斜していない場合、制御装置220は再度ステップS11を行う。車体201が最大まで傾斜している場合、制御装置220はステップS17を実行して処理を終了する。
【0038】
制御装置220は、前後方向(X方向)および左右方向(Y方向)に車体201を傾斜させて、様々な姿勢における姿勢角度Aと検出した床Fまでの距離との関係を有効範囲データベース104に記録する。その結果、入力である姿勢角度Aに対応する有効範囲R2を出力する有効範囲データベース104が生成される。
【0039】
[第1の実施形態のまとめ]
本実施形態の無人搬送車200によれば、距離計測部210の傾きに起因する誤検出を防止できる。車体201の姿勢角度Aに対応する有効範囲R2に基づいて、有効範囲R2に含まれない範囲(無効範囲R3)の計測値を無効化する。その結果、無人搬送車200の制御装置220が、床Fを床Fではない物体と誤検出することを防止できる。
【0040】
本実施形態の無人搬送車200によれば、無効範囲R3における計測値を補正するのではなく、「データ不定P3」に置き換える。そのため、無人搬送車200は、制御装置220の制御フローを簡略化できる。物体検出マップMにおいて「データ不定P3」に置き換えられた領域は、無人搬送車200がその領域に接近した際に再度計測されて、「物体なしP1」と「物体ありP2」のいずれかに判定される。すなわち、無人搬送車200は、無効範囲R3の計測値を「データ不定P3」に置き換えることにより、誤検出が発生し得る無効範囲R3における物体の有無の判断を行わず後回しにする。無人搬送車200は移動することを主な目的としているため、上記のような後回し処置を行っても実質的な不利益はない。
【0041】
本実施形態の無人搬送車200によれば、例えば距離計測部210が無人搬送車200の低い位置に取り付けられている場合において、より顕著に距離計測部210の傾きに起因する誤検出を防止できる。距離計測部210が無人搬送車200の低い位置に取り付けられている場合、少しの車体201の傾きによっても距離計測部210が床Fの方向を向いてしまうからである。
【0042】
本実施形態の無人搬送車200によれば、例えば距離計測部210の検知範囲R1が広い場合において、より顕著に距離計測部210の傾きに起因する誤検出を防止できる。距離計測部210の検知範囲R1が広い場合、少しの車体201の傾きによっても距離計測部210が床Fの方向を向いてしまうからである。
【0043】
(変形例1)
上記各実施形態において、無人搬送車200は、前方(+X方向)の端部に距離計測部210を備えていた。しかしながら、無人搬送車200が備える距離計測部210の態様はこれに限定されない。図10は、無人搬送車200の変形例である無人搬送車200Dの斜視図である。無人搬送車200Dは、前後左右の端部に距離計測部210を備える。無人搬送車200Dは、前後左右方向において物体までの距離を計測できる。無人搬送車200Dは、より広範囲な領域における物体の有無を短期間で検出できる。いずれの距離計測部210が計測した計測値も有効範囲R2に含まれない範囲(無効範囲R3)の計測値は無効化される。
【0044】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の無人搬送車200Bについて説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。第2の実施形態の無人搬送車200Bは、第1の実施形態の無人搬送車200と比較して、姿勢計測部211が異なっている。
【0045】
図11は、第2の実施形態の無人搬送車200Bの斜視図である。
無人搬送車200Bは、車体201と、車輪202と、車輪202を駆動する駆動モータと、距離計測部210と、姿勢計測部211Bと、制御装置220と、を備える。
【0046】
姿勢計測部211Bは、平面視において車体201の四隅に設けられたセンサであり、床Fとの距離を測定する。制御装置220は、姿勢計測部211Bが計測する床Fとの距離から車体201の姿勢角度Aを取得できる。
【0047】
制御装置220は、第1の実施形態と同様、取得した姿勢角度Aに基づき検知範囲R1における有効範囲R2を算出する。
【0048】
制御装置220は、第1の実施形態と同様、有効範囲R2に基づいて、有効範囲R2に含まれない範囲(無効範囲R3)の計測値を無効化する。
【0049】
本実施形態の無人搬送車200Bによれば、第1の実施形態と同様、距離計測部210の傾きに起因する誤検出を防止できる。
【0050】
本実施形態の無人搬送車200Bによれば、第1の実施形態と同様、無効範囲R3における計測値を補正するのではなく、「データ不定P3」に置き換える。そのため、無人搬送車200は、制御装置220の制御フローを簡略化できる。
【0051】
本実施形態の無人搬送車200Bによれば、制御装置220は無人搬送車200Bが移動する床Fに対する姿勢角度Aを取得できる。そのため、例えば床Fが水平面から傾いている場合であっても、適切に有効範囲R2を算出できる。
【0052】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の無人搬送車200Cについて説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。第3の実施形態の無人搬送車200Cは、第1の実施形態の無人搬送車200と比較して、姿勢計測部211が異なっている。
【0053】
図12は、第3の実施形態の無人搬送車200Cの斜視図である。
無人搬送車200Cは、車体201と、車輪202と、車輪202を駆動する駆動モータと、距離計測部210と、姿勢計測部211Cと、制御装置220と、を備える。
【0054】
姿勢計測部211Cは、4個の車輪202が有するサスペンションに設けられたセンサであり、サスペンションの水平方向(Z方向)の変位(沈み込み量)を測定する。制御装置220は、姿勢計測部211Cが計測するサスペンションの水平方向の変位から車体201の姿勢角度Aを取得できる。
【0055】
制御装置220は、第1の実施形態と同様、取得した姿勢角度Aに基づき検知範囲R1における有効範囲R2を算出する。
【0056】
制御装置220は、第1の実施形態と同様、有効範囲R2に基づいて、有効範囲R2に含まれない範囲(無効範囲R3)の計測値を無効化する。
【0057】
本実施形態の無人搬送車200Cによれば、第1の実施形態と同様、距離計測部210の傾きに起因する誤検出を防止できる。
【0058】
本実施形態の無人搬送車200Cによれば、第1の実施形態と同様、無効範囲R3における計測値を補正するのではなく、「データ不定P3」に置き換える。そのため、無人搬送車200Cは、制御装置220の制御フローを簡略化できる。
【0059】
本実施形態の無人搬送車200Cによれば、制御装置220は無人搬送車200Cが異動する床Fに対する姿勢角度Aを取得できる。そのため、例えば床Fが水平面から傾いている場合であっても、適切に有効範囲R2を算出できる。サスペンションの水平方向の変位は車体201の相対的な傾きを直接的に表すパラメータであるため、より正確な姿勢角度Aを取得でき、より適切に有効範囲R2を算出できる。
【0060】
(変形例2)
上記各実施形態において、制御装置220は、姿勢角度Aと距離計測部210から床までの距離とを関連付けた有効範囲データベース104を用いて有効範囲R2を算出している。しかしながら、有効範囲R2を算出方法はこれに限定されない。制御装置220は、有効範囲データベース104を用いず、例えば無人搬送車200と床Fの物理モデルから有効範囲R2を算出してもよい。
【0061】
(変形例3)
上記各実施形態において移動体の一例として無人搬送車200等を用いて説明を行ったが、移動体はこれに限定されない。移動体は、例えば有人搬送車であってもよい。また、移動体は、車輪で走行する車両に限定されず、例えば歩行ロボットやホバークラフトであってもよい。
【0062】
(変形例4)
上記各実施形態において移動体の一例として四輪の無人搬送車200等を用いて説明を行ったが、移動体はこれに限定されない。移動体は、例えば二輪の移動体や3輪台車であってもよい。二輪の移動体の場合、移動体の姿勢角度Aは変動しやすいため、より顕著に距離計測部210の傾きに起因する誤検出を防止できる。
【0063】
なお、上述した実施形態における情報処理装置の機能をコンピュータで実現するようにしても良い。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、DVD-ROM、USBメモリ等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバーやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0064】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、無効範囲R3の計測値を無効化することにより、距離計測部の傾きに起因する誤検出を防止できる。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0066】
200,200B,200C,200D…無人搬送車、201…車体、202…車輪、210…距離計測部、211,211B,211C…姿勢計測部、220…制御装置
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図12