(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】点検管理方法および点検表示部材
(51)【国際特許分類】
B66C 1/12 20060101AFI20240304BHJP
【FI】
B66C1/12 Z
(21)【出願番号】P 2020104360
(22)【出願日】2020-06-17
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 智也
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3041839(JP,U)
【文献】登録実用新案第3046774(JP,U)
【文献】特開平11-093090(JP,A)
【文献】特開2004-219605(JP,A)
【文献】特開2008-014114(JP,A)
【文献】登録実用新案第3224437(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0117787(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象時期における玉掛けワイヤロープの点検がなされたか否かを表示する点検管理方法であって、
点検色が付された着色部を複数備える点検表示部材であって、各着色部が第1の方向に並び、かつ、各前記着色部の点検色が隣の前記着色部の点検色とは異なる点検表示部材を、各前記着色部の少なくとも一部が前記第1の方向とは反対の第2の方向の隣に位置する前記着色部により覆われるように、前記玉掛けワイヤロープに巻き付ける、第1の工程と、
各前記対象時期における前記点検がなされたときに、最も外側の前記着色部を除去する、第2の工程と、
を備える、
点検管理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の点検管理方法であって、
前記点検表示部材の各前記着色部の点検色は、他のいずれの前記着色部の点検色とも異なっている、
点検管理方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の点検管理方法であって、
各前記着色部は、
点検色が付された点検色部と、
前記点検色部に対し、前記第1の方向に直交する第3の方向の両端に位置する一対の白色部と、
を備える、
点検管理方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の点検管理方法であって、
前記点検表示部材は、前記第1の方向の一端に位置する前記着色部である一端着色部の前記第1の方向の寸法が他の前記着色部の前記第1の方向の寸法よりも長く、
前記第1の工程は、最初に前記一端着色部を前記玉掛けワイヤロープに巻き付ける工程である、
点検管理方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の点検管理方法であって、
前記点検表示部材は、
前記第1の方向に並んでいるn個(nは3以上)の前記着色部の組合せである第1の着色部群と、
前記着色部の組合せである第2の着色部群であって、前記第1の着色部群の前記第2の方向の隣に位置し、下記の条件(C1)を満たす第2の着色部群と、
を備える、
点検管理方法。
条件(C1):前記第1の着色部群に含まれるn個の前記着色部の色を識別する識別番号i(i=1,2,・・・,n)を、前記第1の方向に数えた順序数としたときに、
前記第2の着色部群は、数式:n/2+2≦i≦nを満たす全ての前記識別番号iにより構成される組合せから、nから降順に、かつ、一部または全体が選択されることにより構成される前記識別番号iの組合せにより識別される点検色の前記着色部が、前記識別番号iの昇順に並んでいる。
【請求項6】
対象時期における玉掛けワイヤロープの点検がなされたか否かを表示する点検表示部材であって、
点検色が付された着色部を複数備え、各着色部が第1の方向に並び、各前記着色部の点検色が隣の前記着色部の点検色とは異なっており、かつ、各前記着色部が前記第1の方向とは反対の第2の方向の隣に位置する前記着色部により覆われるように、前記玉掛けワイヤロープに巻き付けられる、
点検表示部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、対象時期における玉掛けワイヤロープの点検がなされたか否かを表示する点検管理方法および点検表示部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象時期(例えば、月の各週)における玉掛けワイヤロープの点検がなされたか否かを表示する点検管理方法として、各対象時期に対応する色(「点検色」と呼ばれている。)が付された点検表示部材(例えば、ビニールテープ)を玉掛けワイヤロープに設置する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の点検管理方法では、具体的には、複数の対象時期(例えば、第1週、第2週、第3週、第4週)のそれぞれに対応する点検色(例えば、緑色、黄色、赤色、白色)を設定し、各点検色が付された点検表示部材を準備する。そして、各対象時期における玉掛けワイヤロープの点検がなされたときに、該当する対象時期に対応する点検色が付された点検表示部材を玉掛けワイヤロープに設置する。この際、既に設置された点検表示部材を除去し(最初の点検時を除く)、さらに、新たな点検表示部材を設置する。そのため、この点検管理方法では、作業負担が大きかった。
【0005】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本明細書に開示される点検管理方法は、対象時期における玉掛けワイヤロープの点検がなされたか否かを表示する点検管理方法であり、下記の第1の工程と第2の工程とを備える。第1の工程は、点検色が付された着色部を複数備える点検表示部材であって、各着色部が第1の方向に並び、かつ、各前記着色部の点検色が隣の前記着色部の点検色とは異なる点検表示部材を、各前記着色部の少なくとも一部が前記第1の方向とは反対の第2の方向の隣に位置する前記着色部により覆われるように、前記玉掛けワイヤロープに巻き付ける工程である。第2の工程は、各前記対象時期における前記点検がなされたときに、最も外側の前記着色部を除去する工程である。本点検管理方法においては、点検表示部材を玉掛けワイヤロープに巻き付ける作業は最初の一度であり、各対象時期における点検がなされたときには、点検表示部材の一部(最も外側の着色部)を除去するだけでよい。従って、本点検管理方法によれば、従来の点検管理方法と比較して、点検管理(対象時期における点検がなされたか否かの表示)の作業負担を軽減することができる。
【0008】
(2)上記点検管理方法において、前記点検表示部材の各前記着色部の点検色は、他のいずれの前記着色部の点検色とも異なっている構成としてもよい。本点検管理方法においては、点検表示部材の各着色部の点検色が他のいずれの着色部の点検色とも異なっていることにより、各着色部の点検色として、対象時期ごとに唯一の色を設定することができる。従って、本点検管理方法によれば、複数の着色部に同一の点検色が付された構成よりも正確(または限定的)に、最も外側の着色部の点検色に対応する対象時期を把握することができる。
【0009】
(3)上記点検管理方法において、各前記着色部は、点検色が付された点検色部と、前記点検色部に対し、前記第1の方向に直交する第3の方向の両端に位置する一対の白色部と、を備える構成としてもよい。
【0010】
仮に点検表示部材の着色部の一対の白色部を含めた全体が単一色(点検色)である構成においては、玉掛けワイヤロープに巻き付けられた点検表示部材の最も外側に表れる着色部と、内側の1個または複数の着色部との第3の方向の位置がずれることにより、最も外側の着色部と共に内側の着色部が見えることがあり、これにより、点検表示部材を見たときに点検色(最も外側の着色部の点検色)を把握することが困難となることがある。
【0011】
これに対し、本点検管理方法においては、玉掛けワイヤロープに巻き付けられた点検表示部材の最も外側に表れる着色部について、点検色部に付されている点検色と共に、一対の白色部の全体が見える(つまり、2個の白色部が見える)。一方、玉掛けワイヤロープに巻き付けられた点検表示部材の最も外側の着色部と、内側の1個または複数の着色部との第3の方向の位置がずれたときに、内側の着色部については、一対の白色部の全体が見えることはない(通常、一対の白色部のうち一方の白色部のみが見える)。従って、最も外側の着色部と内側の着色部とを容易に区別することができる。そのため、本点検管理方法によれば、玉掛けワイヤロープに巻き付けられた点検表示部材の最も外側の着色部と、内側の1個または複数の着色部との位置がずれたとしても、最も外側の着色部の点検色を容易に把握することができる。
【0012】
(4)上記点検管理方法において、前記点検表示部材は、前記第1の方向の一端に位置する前記着色部である一端着色部の前記第1の方向の寸法が他の前記着色部の前記第1の方向の寸法よりも長く、前記第1の工程は、最初に前記一端着色部を前記玉掛けワイヤロープに巻き付ける工程である構成としてもよい。
【0013】
仮に一端着色部の第1の方向の寸法が他の着色部の寸法と同等である構成においては、第1の工程において、最初に玉掛けワイヤロープに巻き付けられる一端着色部が十分に固定されないことにより、点検表示部材が玉掛けワイヤロープに十分に固定されないことがある。
【0014】
これに対し、本点検管理方法においては、一端着色部の第1の方向の寸法が他の着色部の寸法よりも長いことにより、一端着色部の第1の方向の寸法が他の着色部の寸法と同等である構成と比較して、一端着色部と玉掛けワイヤロープとの接触面積が大きくなる。また、他の着色部の寸法が玉掛けワイヤロープの外周の長さ程度であれば、第1の方向の寸法が当該外周の長さよりも長い一端着色部の一部は、一端着色部の他の部分に接触することとなる。一端着色部の当該一部は、玉掛けワイヤロープに接触する部分よりも強固に固定される(ことが多い)。これらのことから、本点検管理方法によれば、第1の工程において、最初に玉掛けワイヤロープに巻き付けられる一端着色部がより強固に固定され、これにより点検表示部材を玉掛けワイヤロープに、より強固に固定させることができる。
【0015】
(5)上記点検管理方法において、前記点検表示部材は、前記第1の方向に並んでいるn個(nは3以上)の前記着色部の組合せである第1の着色部群と、前記着色部の組合せである第2の着色部群であって、前記第1の着色部群の前記第2の方向の隣に位置し、下記の条件(C1)を満たす第2の着色部群と、を備える構成としてもよい。
【0016】
条件(C1):前記第1の着色部群に含まれるn個の前記着色部の色を識別する識別番号i(i=1,2,・・・,n)を、前記第1の方向に数えた順序数としたときに、前記第2の着色部群は、数式:n/2+2≦i≦nを満たす全ての前記識別番号iにより構成される組合せから、nから降順に、かつ、一部または全体が選択されることにより構成される前記識別番号iの組合せにより識別される点検色の前記着色部が、前記識別番号iの昇順に並んでいる。
【0017】
仮に点検表示部材が第2の着色部群を備えずに第1の着色部群のみを備える構成においては、第1の着色部群の着色部に対応する対象時期(例えば、第1週~第4週)が点検管理のスケジュールの単位サイクルである点検管理に適用したときに、単位サイクルの時系列の後半の対象時期(例えば、第4週)から本点検管理方法を開始(つまり、第1工程を行う)した際に、前半の対象時期に対応する着色部は使われずに無駄となるため、点検表示部材のロスが大きくなる。
【0018】
これに対し、本点検管理方法では、上述した第2の着色部群を備える。第1の着色部群の着色部に対応する対象時期(例えば、第1週~第4週)が点検管理のスケジュールの単位サイクルである点検管理に適用したときに、第2の着色部群の着色部の点検色は、単位サイクルの時系列の後半の対象時期(例えば、第4週)に対応する。本点検管理方法では、単位サイクルの時系列の後半の対象時期に本点検管理方法を開始(つまり、第1の工程を行う)した際には、第1の工程において、単位サイクルの時系列の後半の対象時期に対応する第2の着色部群に含まれる第1の着色部が見えるように玉掛けワイヤロープに巻き付け、第2の工程を行う。また、第2の工程において、第2の着色部群に含まれるすべての着色部を除去した後は、第1の着色部群の各着色部を除去することにより、単位サイクルの最初(第1週)から最後(第4週)までの通常通りの点検管理を行う。これにより、点検表示部材が第2の着色部群を備えずに第1の着色部群のみを備える構成と比較して点検表示部材のロスを軽減しつつ、点検管理を行うことができる。
【0019】
(6)本明細書に開示される点検表示部材は、対象時期における玉掛けワイヤロープの点検がなされたか否かを表示する点検表示部材であって、点検色が付された着色部を複数備え、各着色部が第1の方向に並び、各前記着色部の点検色が隣の前記着色部の点検色とは異なっており、かつ、各前記着色部が前記第1の方向とは反対の第2の方向の隣に位置する前記着色部により覆われるように、前記玉掛けワイヤロープに巻き付けられる。本点検表示部材によれば、上記(1)に記載の点検管理方法により得られる効果と同様の効果が得られる。すなわち、本点検表示部材によれば、上記従来の点検表示部材と比較して、点検管理の作業負担を軽減することができる。
【0020】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、点検管理方法、点検表示部材等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態の点検表示具100の全体構成を示す説明図
【
図2】本実施形態の点検管理方法を示すフローチャート
【
図3】本実施形態の点検管理方法の概要を示す説明図
【
図4】本実施形態の点検管理方法の概要を示す説明図
【
図5】本実施形態の点検管理方法の概要を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
A.実施形態:
A-1.本実施形態の点検表示具100の構成:
図1は、本実施形態の点検表示具100の全体構成を示す説明図である。
図1には、方向を特定するための互いに直交するXY軸が示されている(
図3~
図5においても同様)。なお、X軸正方向は、特許請求の範囲における第1の方向に相当し、X軸負方向は、特許請求の範囲における第2の方向に相当し、Y軸方向は、特許請求の範囲における第3の方向に相当する。
【0023】
点検表示具100は、台紙10と、台紙10上に貼り付けられた複数(本実施形態では、8個)の点検表示部材20と、を備えている。
【0024】
点検表示部材20は、対象時期(本実施形態では、後述する第1週Sn1、・・・、第4週Sn4)における玉掛けワイヤロープWrの点検がなされたか否かを表示するための部材である。点検表示部材20には、点検がなされた対象時期に対応する色(以下、「点検色」という。)が付されている。点検表示部材20は、使用時には、玉掛けワイヤロープWrに巻き付けられた状態とされる(
図3~
図5参照)。
【0025】
点検表示部材20は、X軸方向を長辺とし、Y軸方向を短辺とする略矩形状のシール(糊付きの紙片)である。各点検表示部材20の構成は、互いに同一である。8個の点検表示部材20は、互いに間隔を空けずに隣接しつつ、Y軸方向に並んでいる。なお、点検表示部材20の詳細構成については後述する。
【0026】
A-2.点検表示部材20の詳細構成:
図1に示すように、点検表示部材20は、複数(本実施形態では、5個)の着色部を備えている。具体的には、点検表示部材20は、第1の着色部21と、第2の着色部22と、第3の着色部23と、第4の着色部24と、第5の着色部25と、を備えている。この5個の着色部は、X軸正方向に、第1の着色部21、第2の着色部22、第3の着色部23、第4の着色部24、第5の着色部25の順に連続して並んでいる。なお、各着色部の境界線上に、後述する点検管理方法の第2の工程S12において着色部が除去され易くなるような断続的なスリット(網目)が施されていてもよい。
【0027】
各着色部(第1の着色部21、・・・、第5の着色部25)は、点検色が付された点検色部(211、221、231、241、251)と、点検色部に対し、Y軸方向の両端に位置する一対の白色部(212および213、222および223、232および233、242および243、252および253)と、を備えている。点検色部と白色部はいずれも、X軸方向を長辺とし、Y軸方向を短辺とする略矩形状である。
【0028】
具体的には、第1の着色部21の点検色部211に付されている点検色は、白色である(
図1中のW:White)。第2の着色部22の点検色部221に付されている点検色は、緑色である(
図1中のG:Green)。第3の着色部23の点検色部231に付されている点検色は、黄色である(
図1中のY:Yellow)。第4の着色部24の点検色部241に付されている点検色は、赤色である(
図1中のR:Red)。第5の着色部25の点検色部251に付されている点検色は、白色である(
図1中のW:White)。このように、第1の着色部21の点検色部211と、第5の着色部25の点検色部251とは、同色である。
【0029】
点検表示部材20は、本実施形態では、X軸正方向の一端に位置する第5の着色部25のX軸正方向の寸法が他の着色部のX軸正方向の寸法よりも長い。具体的には、本実施形態では、X軸正方向の一端に位置する第5の着色部25のX軸正方向の寸法は、他の着色部のX軸正方向の寸法の約2倍である。
【0030】
A-3.本実施形態の点検管理方法:
図2は、本実施形態の点検管理方法を示すフローチャートであり、
図3から
図5は、本実施形態の点検管理方法の概要を示す説明図である。
【0031】
本実施形態の点検管理方法では、一例として、点検色は、対象時期における玉掛けワイヤロープWrの点検がなされたことを示すものとし、各点検色を、点検管理の対象時期である第1週Sn1、第2週Sn2、第3週Sn3、第4週Sn4に対応させる態様とした。換言すれば、本実施形態の点検管理方法では、1個の点検表示部材20により、任意の対象月の第1週Sn1、第2週Sn2、第3週Sn3、および第4週Sn4(一ヶ月分)の点検管理を行う態様とした。具体的には、第2の着色部22の点検色部221に付されている点検色(緑色)は、第1週Sn1に対応し、第3の着色部23の点検色部231に付されている点検色(黄色)は、第2週Sn2に対応し、第4の着色部24の点検色部241に付されている点検色(赤色)は、第3週Sn3に対応するものとし、第5の着色部25の点検色部251に付されている点検色(白色)は、第4週Sn4に対応するものとした。また、第1の着色部21の点検色部211に付されている点検色(白色)は、上記対象月の前月の第4週Sn4から点検管理を開始したときに用いるために、上記対象月の前月の第4週Sn4に対応するものとした。なお、第1の着色部21の点検色部211に付されている点検色(白色)を、上記対象月の前月の第5週から点検管理を開始したときに用いるために、上記対象月の前月の第5週に対応するものとしてもよい。
【0032】
図2に示すように、本実施形態の点検管理方法では、はじめに、点検表示部材20を、各着色部の少なくとも一部(例えば、全体)がX軸負方向の隣に位置する着色部により覆われるように、玉掛けワイヤロープWrに巻き付ける(S11)。以下、S11の工程を「第1の工程S11」という。本実施形態の第1の工程S11では、最初に、X軸正方向の一端に位置する第5の着色部25を玉掛けワイヤロープWrに巻き付ける。
【0033】
図3には、第1の工程S11を経た後の玉掛けワイヤロープWrおよび点検表示部材20の側面構成が示されている。なお、玉掛けワイヤロープWrの先端部以外の部分の図示は省略されている。
図4には、
図3のIV-IVの位置における玉掛けワイヤロープWrおよび点検表示部材20の断面構成が示されている。
【0034】
図3および
図4に示すように、第1の工程S11を経た後においては、第1の着色部21が最も外側に位置することにより露出している。また、
図4に示すように、第2の着色部22は、X軸負方向の隣に位置(
図1参照)する第1の着色部21により覆われている。第3の着色部23は、X軸負方向の隣に位置(
図1参照)する第2の着色部22により覆われている。第4の着色部24は、X軸負方向の隣に位置(
図1参照)する第3の着色部23により覆われている。第5の着色部25は、X軸負方向の隣に位置(
図1参照)する第4の着色部24により覆われている。そのため、第2の着色部22、・・・、第5の着色部25は見えず、第1の着色部21のみが見える状態となっている。
【0035】
次に、各対象時期における点検がなされたときに、最も外側の着色部を除去する(S12)。以下、S12の工程を「第2の工程S12」という。
【0036】
すなわち、第1週Sn1における玉掛けワイヤロープWrの点検がなされたときに、最も外側に位置することにより露出している第1の着色部21を除去する。
図5は、
図4に示す玉掛けワイヤロープWrおよび点検表示部材20から第1の着色部21が除去されたときの断面構成を示す図である。
図5に示すように、上述したように第1の着色部21を除去することにより、第2の着色部22が最も外側に位置することにより露出する。これにより、本点検管理を実施する者は、第2の着色部22の点検色部221に付されている点検色(緑色)を見ることができる。
【0037】
同様に、第2週Sn2における玉掛けワイヤロープWrの点検がなされたときに、最も外側に位置することにより露出している第2の着色部22を除去する。これにより、第3の着色部23が最も外側に位置することにより露出する。これにより、本点検管理を実施する者は、第3の着色部23の点検色部231に付されている点検色(黄色)を見ることができる。
【0038】
同様に、第3週Sn3においては、第3の着色部23を除去することにより、第4の着色部24が最も外側に位置し、第4週Sn4においては、第4の着色部24を除去することにより、第5の着色部25が最も外側に位置する。これにより、本点検管理を実施する者は、第4の着色部24の点検色部241に付されている点検色(赤色)や、第5の着色部25の点検色部251に付されている点検色(白色)を見ることができる。なお、上記対象月の次の月も継続して同様の点検管理を行う際は、例えば第1週Sn1の点検がなされたときに第1の工程S11を行い、次に第2の工程S12を行うようにすればよい。
【0039】
以上のように、本実施形態の点検管理方法では、対象時期(第1週Sn1、第2週Sn2、第3週Sn3、第4週Sn4)における玉掛けワイヤロープWrの点検がなされたか否かが表示される。
【0040】
なお、本実施形態の点検表示部材20においては、上記対象月の前月の第4週Sn4(または、当該前月の第5週)から点検管理を開始し(つまり、第1の工程S11を行い)、さらに上記対象月の第1週Sn1から第4週Sn4の点検管理を行うこともできる。この際、例えば、上記前月の第4週Sn4における点検がなされたときに第1の工程S11を行い、上記対象月の各対象時期(第1週Sn1、・・・、第4週Sn4)において上述したように第2の工程S12を行えばよい。
【0041】
以下において、第2の着色部22と、第3の着色部23と、第4の着色部24と、第5の着色部25と、からなる着色部の組合せを「第1の着色部群Cg1」とし、第1の着色部21からなる着色部の組合せ(つまり、第1の着色部21)を「第2の着色部群Cg2」という。なお、第1の着色部群Cg1は、点検管理のスケジュールの単位サイクルに対応する対象時期(本実施形態では、第1週Sn1~第4週Sn4)を示す点検色が付された着色部(本実施形態では、第2の着色部22、・・・、第5の着色部25)の組合せである。第2の着色部群Cg2の着色部の点検色は、単位サイクルの時系列の後半の対象時期(本実施形態では、第4週Sn4)を示す点検色が付された着色部(本実施形態では、第1の着色部21)の組合せである。
【0042】
上述したように第1の着色部群Cg1および第2の着色部群Cg2としたとき、本実施形態の点検表示部材20は、以下の構成であるといえる。すなわち、本実施形態の点検表示部材20は、X軸正方向に並んでいるn個(nは3以上)の着色部の組合せである第1の着色部群Cg1と、着色部の組合せである第2の着色部群Cg2であって、第1の着色部群Cg1のX軸負方向の隣に位置し、下記の条件(C1)を満たす第2の着色部群Cg2と、を備えている。
条件(C1):第1の着色部群Cg1に含まれるn個の着色部の点検色を識別する識別番号(i=1,2,・・・,n)を、X軸正方向に数えた順序数としたときに、
第2の着色部群Cg2は、数式:n/2+2≦i≦nを満たす全ての識別番号iにより構成される組合せから、nから降順に、かつ、一部または全体が選択されることにより構成される識別番号iの組合せにより識別される点検色の着色部が、識別番号iの昇順に並んでいる。
【0043】
本実施形態では、nは4であり、第1の着色部群Cg1に含まれる4個の着色部の点検色を識別する識別番号(i=1,2,・・・,4)を、X軸正方向に数えた順序数としたときに、第2の着色部群Cg2は、上記数式を満たす識別番号i(4)により識別される点検色(白色)が付された第5の着色部25(により構成される組合せ)を備えるため、上記条件(C1)を満たしている。
【0044】
また、本実施形態では、第1の着色部群Cg1に含まれる複数(本実施形態では、4個)の各着色部に付されている点検色は、隣の着色部の点検色とは異なっている。
【0045】
A-4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の点検管理方法は、対象時期(本実施形態では、第1週Sn1、第2週Sn2、第3週Sn3、第4週Sn4)における玉掛けワイヤロープWrの点検がなされたか否かを表示する点検管理方法であって、下記の第1の工程S11と第2の工程S12とを備える。第1の工程S11は、点検色が付された着色部を複数備え、各着色部(第1の着色部21、・・・、第5の着色部25)の点検色が隣の着色部の点検色とは異なる点検表示部材20を、各着色部の少なくとも一部がX軸負方向(X軸正方向とは反対の方向)の隣に位置する着色部により覆われるように、玉掛けワイヤロープWrに巻き付ける工程である。第2の工程S12は、各対象時期における点検がなされたときに、最も外側の着色部を除去する工程である。本実施形態の点検管理方法においては、点検表示部材20を玉掛けワイヤロープWrに巻き付ける作業は最初の一度であり、各対象時期における点検がなされたときには、点検表示部材20の一部(最も外側の着色部)を除去するだけでよい。従って、本実施形態の点検管理方法によれば、従来の点検管理方法と比較して、点検管理(対象時期における点検がなされたか否かの表示)の作業負担を軽減することができる。
【0046】
また、本実施形態の点検管理方法では、各着色部は、点検色が付された点検色部(211、・・・、251)と、点検色部に対し、Y軸方向(X軸正方向に直交する方向)の両端に位置する一対の白色部(212および213、・・・、252および253)と、を備える。
【0047】
仮に点検表示部材20の着色部の一対の白色部を含めた全体が単一色(点検色)である構成においては、玉掛けワイヤロープWrに巻き付けられた点検表示部材20の最も外側に表れる着色部と、内側の1個または複数の着色部との位置がずれることにより、最も外側の着色部と共に内側の着色部が見えることがあり、これにより、点検表示部材20を見たときに点検色(最も外側の着色部の点検色)を把握することが困難となることがある。
【0048】
これに対し、本実施形態の点検管理方法においては、玉掛けワイヤロープWrに巻き付けられた点検表示部材20の最も外側に表れる着色部について、点検色部に付されている点検色と共に、一対の白色部の全体が見える(つまり、2個の白色部が見える)。一方、玉掛けワイヤロープWrに巻き付けられた点検表示部材20の最も外側の着色部と、内側の1個または複数の着色部との位置がずれたときに、内側の着色部については、一対の白色部の全体が見えることはない(通常、一対の白色部のうち一方の白色部のみが見える)。従って、最も外側の着色部と内側の着色部とを容易に区別することができる。そのため、本実施形態の点検管理方法によれば、玉掛けワイヤロープWrに巻き付けられた点検表示部材20の最も外側の着色部と、内側の1個または複数の着色部との位置がずれたとしても、最も外側の着色部の点検色を容易に把握することができる。
【0049】
また、本実施形態の点検管理方法では、点検表示部材20は、X軸正方向の一端に位置する着色部(以下、「一端着色部」という。)である第5の着色部25のX軸正方向の寸法が他の着色部のX軸正方向の寸法よりも長く、第1の工程S11は、最初に一端着色部を玉掛けワイヤロープWrに巻き付ける工程である。
【0050】
仮に一端着色部(第5の着色部25)のX軸正方向の寸法が他の着色部の寸法と同等である構成においては、第1の工程S11において、最初に玉掛けワイヤロープWrに巻き付けられる一端着色部が十分に固定されないことにより、点検表示部材20が玉掛けワイヤロープWrに十分に固定されないことがある。
【0051】
これに対し、本実施形態の点検管理方法においては、一端着色部(第5の着色部25)のX軸正方向の寸法が他の着色部の寸法よりも長いことにより、一端着色部のX軸正方向の寸法が他の着色部の寸法と同等である構成と比較して、一端着色部と玉掛けワイヤロープWrとの接触面積が大きくなる。また、他の着色部の寸法が玉掛けワイヤロープWrの外周の長さ程度であれば、X軸正方向の寸法が当該外周の長さよりも長い一端着色部の一部は、一端着色部の他の部分に接触することとなる。一端着色部の当該一部は、玉掛けワイヤロープWrに接触する部分よりも強固に固定される(ことが多い)。これらのことから、本実施形態の点検管理方法によれば、第1の工程S11において、最初に玉掛けワイヤロープWrに巻き付けられる一端着色部がより強固に固定され、これにより点検表示部材20を玉掛けワイヤロープWrに、より強固に固定させることができる。
【0052】
また、本実施形態の点検表示部材20は、X軸正方向に並んでいるn個(nは3以上)の着色部の組合せである第1の着色部群Cg1と、着色部の組合せである第2の着色部群Cg2であって、第1の着色部群Cg1のX軸負方向の隣に位置し、下記の条件(C1)を満たす第2の着色部群Cg2と、を備える。
条件(C1):第1の着色部群Cg1に含まれるn個の着色部の点検色を識別する識別番号(i=1,2,・・・,n)を、X軸正方向に数えた順序数としたときに、
第2の着色部群Cg2は、数式:n/2+2≦i≦nを満たす全ての識別番号iにより構成される組合せから、nから降順に、かつ、一部または全体が選択されることにより構成される識別番号iの組合せにより識別される点検色の着色部が、識別番号iの昇順に並んでいる。
【0053】
仮に点検表示部材20が第2の着色部群Cg2を備えずに第1の着色部群Cg1のみを備える構成においては、第1の着色部群Cg1の着色部に対応する対象時期(例えば、第1週~第4週)が点検管理のスケジュールの単位サイクルである点検管理に適用したときに、単位サイクルの時系列の後半の対象時期(例えば、第4週)から本実施形態の点検管理方法を開始(つまり、第1工程を行う)した際に、前半の対象時期に対応する着色部は使われずに無駄となるため、点検表示部材20のロスが大きくなる。
【0054】
これに対し、本実施形態の点検管理方法では、上述した第2の着色部群Cg2を備える。第1の着色部群Cg1の着色部に対応する対象時期(例えば、第1週~第4週)が点検管理のスケジュールの単位サイクルである点検管理に適用したときに、第2の着色部群Cg2の着色部の点検色は、単位サイクルの時系列の後半の対象時期(例えば、第4週)に対応する。本実施形態の点検管理方法では、単位サイクルの時系列の後半の対象時期に本実施形態の点検管理方法を開始(つまり、第1の工程S11を行う)した際には、第1の工程S11において、単位サイクルの時系列の後半の対象時期に対応する第2の着色部群Cg2に含まれる第1の着色部が見えるように玉掛けワイヤロープWrに巻き付け、第2の工程S12を行う。また、第2の工程において、第2の着色部群Cg2に含まれるすべての着色部を除去した後は、第1の着色部群Cg1の各着色部を除去することにより、単位サイクルの最初(第1週)から最後(第4週)までの通常通りの点検管理を行う。これにより、点検表示部材20が第2の着色部群Cg2を備えずに第1の着色部群Cg1のみを備える構成と比較して点検表示部材20のロスを軽減しつつ、点検管理を行うことができる。
【0055】
なお、本実施形態では、第1の着色部群Cg1に含まれる複数(本実施形態では、4個)の各着色部に付されている点検色は、隣の着色部の点検色とは異なっている(隣の着色部が第2の着色部群Cg2に含まれる着色部である場合を除く)。この構成においては、第1の着色部群Cg1に含まれる各着色部の点検色として、対象時期ごとに唯一の色を設定することができる。従って、本実施形態の点検管理方法によれば、第1の着色部群Cg1に含まれる複数の着色部に同一の点検色が付された構成よりも正確(または限定的)に、最も外側の着色部の点検色に対応する対象時期を把握することができる。
【0056】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0057】
例えば、上記実施形態の点検表示部材20は、台紙10上に貼り付けられた略矩形状のシールであるが、本発明の点検表示部材の形状や材質等は、このような態様に限られるものではない。すなわち、本発明の点検表示部材は、上述した着色部を有し、玉掛けワイヤロープWrに巻き付け可能なものである限り、他の態様のもの(例えば、各点検色が付されたビニールテープを連結したもの)であってもよい。
【0058】
また、上記実施形態(または変形例、以下同様)の点検表示具100は、8個の点検表示部材20を備えているが、点検表示部材20の個数は特に限定されるものではない。例えば、点検表示具100は、10個の点検表示部材20を備えるとしてもよい。
【0059】
また、上記実施形態の点検表示部材20は、5個の着色部(第1の着色部21、・・・、第5の着色部25)を備えているが、着色部の個数は特に限定されるものではない。
【0060】
また、上記実施形態では、点検色は、点検がなされた対象時期に対応する色であるとしていたが、対象時期における玉掛けワイヤロープWrの点検がなされたか否かを表示するものであれば、このような定義に限定されるものでは無い。例えば、上記実施形態において、点検色は、次に点検がなされるべき対象時期に対応する色であるとしてもよい。
【0061】
また、上記実施形態は、X軸正方向に並んでいるn個(nは3以上)の着色部の組合せである第1の着色部群Cg1と、着色部の組合せである第2の着色部群Cg2であって、第1の着色部群Cg1のX軸負方向の隣に位置し、上記の条件(C1)を満たす第2の着色部群Cg2と、を備える。具体的には、第1の着色部群Cg1は、4個の着色部(第1の着色部21、・・・、第4の着色部4)により構成され、第2の着色部群Cg2は、1つの着色部(第5の着色部25)により構成されている。しかしながら、上記実施形態において、第1の着色部群Cg1と、上記の条件(C1)を満たす第2の着色部群Cg2とを備える限り、第1の着色部群Cg1や第2の着色部群Cg2を構成する着色部の個数は限定されない。例えば、第1の着色部群Cg1が6個の着色部により構成され、かつ、第2の着色部群Cg2が2個の着色部により構成されていてもよい。また、上記実施形態において、第2の着色部群Cg2を備えず、第1の着色部群Cg1のみを備える構成であってもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、点検色が白色である第1の着色部21および第5の着色部25を備えており、換言すると、複数の着色部における点検色が同一である。このような構成に換えて、上記実施形態において、各着色部(第1の着色部21、・・・、第5の着色部25)に付されている点検色は、隣の着色部の点検色とは異なっている構成としてもよい。この構成においては、点検表示部材20の各着色部の点検色が他のいずれの着色部の点検色とも異なっていることにより、各着色部の点検色として、対象時期ごとに唯一の色を設定することができる。従って、本実施形態の点検管理方法によれば、複数の着色部に同一の点検色が付された構成よりも正確(または限定的)に、最も外側の着色部の点検色に対応する対象時期を把握することができる。
【0063】
また、上記実施形態では、X軸正方向の一端に位置する一端着色部(上記実施形態では、第5の着色部25)のX軸正方向の寸法は、のX軸正方向の寸法が他の着色部のX軸正方向の寸法よりも長い構成としていた。さらに、X軸正方向の一端に位置する一端着色部のX軸正方向の寸法は、他の着色部のX軸正方向の寸法の約2倍である構成としていた。このような構成に換えて、上記実施形態において、X軸正方向の一端に位置する一端着色部のX軸正方向の寸法は、他の着色部のX軸正方向の寸法よりも長い他(約2倍以外)の寸法である構成としてもよい。この構成においても、上記実施形態と同様の効果(点検表示部材20を玉掛けワイヤロープWrに、より強固に固定させることができる。)が得られる。また、上記実施形態において、X軸正方向の一端に位置する一端着色部のX軸正方向の寸法は、他の着色部のX軸正方向の寸法以下である構成としてもよい。
【0064】
また、上記実施形態の点検表示部材20の着色部(第1の着色部21、・・・、第5の着色部25)は、点検色が付された点検色部(211、・・・、251)と、一対の白色部(212および213、・・・、252および253)と、を備えている。上記実施形態において、点検表示部材20は、一対の白色部を備えず、点検色が付された点検色部のみを備えるとしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10:台紙 20:点検表示部材 21:第1の着色部 22:第2の着色部 23:第3の着色部 24:第4の着色部 25:第5の着色部 100:点検表示具 211:点検色部 221:点検色部 231:点検色部 241:点検色部 251:点検色部 Cg1:第1の着色部群 Cg2:第2の着色部群 S11:第1の工程 S12:第2の工程 Wr:玉掛けワイヤロープ