(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】型、平坦化装置、平坦化方法及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240304BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 B
(21)【出願番号】P 2020120080
(22)【出願日】2020-07-13
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】豊島 隆裕
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0164638(US,A1)
【文献】特開2006-245072(JP,A)
【文献】特開2020-009994(JP,A)
【文献】特開2020-089876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の組成物を平坦化する平坦化装置で用いられる型であって、
前記組成物に接触する側の第1面と、
型保持部によって保持される、前記第1面とは反対側の第2面と、を有し、
前記組成物に前記第1面を接触させた際に前記組成物と接しない部分が形成されるように、前記第1面の外周部の一部に前記第1面に垂直な方向において他の領域よりも厚みが薄い離型開始領域が設けられ
、
前記離型開始領域は、前記第1面の外周端部から内側に向かう方向に延伸して設けられていることを特徴とする型。
【請求項2】
前記離型開始領域は、前記第1面と垂直な方向から見たときに、前記型と前記組成物とが接触することで生じる円弧状の境界線の一部が連続しないように設けられていることを特徴とする請求項
1に記載の型。
【請求項3】
前記平坦化装置には、前記組成物から前記型を離型させる際に用いる離型用部材が設けられており、
前記離型開始領域は、前記組成物から前記型を離型させる際に前記離型用部材により面外方向に押圧されることを特徴とする請求項1
または2に記載の型。
【請求項4】
前記離型開始領域の位置および形状および大きさの少なくとも1つは、処理予定の基板のレイアウト情報に応じて定まることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の型。
【請求項5】
前記第1面の前記他の領域は、平坦に設けられていることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の型。
【請求項6】
基板上の組成物に接触する側の第1面と、前記第1面とは反対側の第2面と、を有し、前記組成物に前記第1面を接触させた際に前記組成物と接しない部分が形成されるように、前記第1面の外周部の一部に前記第1面に垂直な方向において他の領域よりも厚みが薄い離型開始領域が設けられている型を保持する型保持部と、
前記基板を保持する基板保持部と、
前記基板上の組成物と前記型とが接触するように駆動する駆動部と、
平坦化処理のために前記型保持部から前記型を前記組成物の上に載置した後に、前記型を離型させて前記型保持部へと保持させるように制御する制御部
と、をさらに有することを特徴とす
る平坦化装置。
【請求項7】
前記平坦化装置は、前記基板上に組成物を供給する供給部をさらに有し、
前記供給部は、前記型の前記離型開始領域が相対する基板上の領域には組成物を供給しないことを特徴とする請求項
6に記載の平坦化装置。
【請求項8】
前記駆動部は、前記基板のレイアウト情報に基づいて、前記型の前記離型開始領域の位置を調整することを特徴とする請求項
6または7に記載の平坦化装置。
【請求項9】
前記組成物から前記型を離型させる際に用いる離型用部材をさらに有し、
前記組成物から前記型を離型させる際に、前記離型用部材が前記型の前記離型開始領域を面外方向に押圧することを特徴とする請求項
6乃至
8のいずれか1項に記載の平坦化装置。
【請求項10】
型を用いて基板上の組成物を平坦化する平坦化方法であって、
前記基板上の組成物に前記型を接触させる接触工程と、
前記接触工程の後に、前記組成物を硬化する硬化工程と、
前記基板上の組成物から前記型を離型させる離型工程と、を有し、
前記型は、基板上の組成物に接触する側の第1面と、前記第1面とは反対側の第2面と、を有し、前記組成物に前記第1面を接触させた際に前記組成物と接しない部分が形成されるように、前記第1面の外周部の一部に前記第1面に垂直な方向において他の領域よりも厚みが薄い離型開始領域が設けられており、
前記離型工程では、前記離型開始領域を起点として離型が開始され
、
前記離型開始領域は、前記第1面の外周端部から内側に向かう方向に延伸して設けられていることを特徴とする平坦化方法。
【請求項11】
前記離型工程では、前記離型開始領域を前記型の面外方向に押圧することを特徴とする請求項1
0に記載の平坦化方法。
【請求項12】
請求項
6乃至
9のいずれか1項に記載の平坦化装置を用いて、前記基板を平坦にする工程と、前記工程で平坦にされた前記基板を加工する工程と、を含み、
前記加工された前記基板から物品を製造することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型、平坦化装置、平坦化方法及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の要求が進み、従来のフォトリソグラフィー技術に加えて、基板上の未硬化の組成物を型で成形して硬化させ、基板上に組成物のパターンを形成する微細加工技術が注目されている。かかる技術は、インプリント技術と呼ばれ、基板上に数ナノメートルオーダーの微細なパターンを形成することができる。
【0003】
インプリント技術の1つとして、例えば、光硬化法がある。光硬化法を採用したインプリント装置は、基板上のショット領域に供給された光硬化性の組成物を型で成形し、光を照射して組成物を硬化させ、硬化した組成物から型を引き離すことで、基板上にパターンを形成する。
【0004】
また、近年では、基板上の組成物を平坦化する技術が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に開示された技術は、基板の段差に基づいて組成物を滴下し、滴下した組成物に平面状の型を接触させた状態で組成物を硬化することで平坦化の精度向上を図るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような平坦化装置では、基板全面を一括して平坦化することが検討されている。平坦化装置では、ショット領域ごとに処理を行うインプリント装置に比べて大きな面積の型を用い、組成物と型の全面とを接触させた状態で組成物を硬化させた後、離型させる必要があるため組成物から型を離型させにくいということが分かっている。例えば、半導体製造にはΦ300mmのウェハ(基板)が用いられることが多いが、一括して平坦化処理を行おうとすると、型のサイズもΦ300mmと同程度の大きさとなる。
【0007】
そのため本発明者によって検討されている型を吸着して離型させる方法では、離型動作を正常に行えなかったり、無理やり引きはがそうとすることで基板上に形成されているパターンの破損が発生したり、基板上の組成物を正常に平坦化できない可能性が生じていた。
【0008】
そこで、本発明は、硬化後の組成物から良好に離型させることができる平坦化処理に用いる型を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の基板上の組成物を平坦化する平坦化装置で用いられる型は、前記組成物に接触する側の第1面と、型保持部によって保持される、前記第1面とは反対側の第2面と、を有し、前記組成物に前記第1面を接触させた際に前記組成物と接しない部分が形成されるように、前記第1面の外周部の一部に前記第1面に垂直な方向において他の領域よりも厚みが薄い離型開始領域が設けられ、前記離型開始領域は、前記第1面の外周端部から内側に向かう方向に延伸して設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このように設けることで、硬化後の組成物から良好に離型させることができる型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】硬化した組成物から型を離型させるときの断面模式図である。
【
図4】比較例における硬化した組成物から型を離型させるときの断面模式図である。
【
図7】(a)他の平坦化装置の構成を示す概略図である。(b)型の離型を補助するリフトプレート40を示す図である。
【
図8】平坦化処理の概要を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1は、平坦化装置100の構成を示す概略図である。平坦化装置100は、平坦面を有する型15(モールド、テンプレート、スーパーストレート)を用いて基板11上の組成物を成形する成形装置で具現化され、本実施形態では、基板上の組成物を平坦化する。平坦化装置100は、基板上の組成物と型とを接触させた状態で組成物を硬化させ、硬化した組成物と型を引き離すことで基板上に組成物の大局的又は局所的な平坦面を形成する。
【0014】
基板11は、シリコンウエハが代表的な基材であるが、これに限定されるものではない。基板11は、アルミニウム、チタン-タングステン合金、アルミニウム-ケイ素合金、アルミニウム-銅-ケイ素合金、酸化ケイ素、チッ化ケイ素等の半導体デバイス用基板として知られているものの中からも任意に選択することができる。なお、基板11には、シランカップリング処理、シラザン処理、有機薄膜の成膜、等の表面処理により密着層を形成し、硬化性組成物との密着性を向上させた基板を用いてもよい。なお、基板11は、典型的には、直径300mmの円形であるが、これに限定されるものではない。
【0015】
型15としては、光照射工程を考慮して光透過性の材料で構成された型を用いるとよい。型15を構成する材料の材質としては、具体的には、ガラス、石英、PMMA(Polymethyl methacrylate)、ポリカーボネート樹脂等の光透過性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサン等の柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が好ましい。なお、型15は、300mmよりも大きく、500mmよりも小さい直径の円形が好ましいが、これに限られない。また、型15の厚さは、好適には、0.25mm以上2mm未満であるが、これに限られない。
【0016】
組成物としては、光硬化方式を用いる場合にはUV硬化性液体を用いるとよい。典型的にはアクリレートやメタクリレートのようなモノマーを用いてもよい。
【0017】
平坦化装置100は、基板チャック12、基板ステージ13、ベース定盤4、支柱5、天板6、ガイドバープレート7、ガイドバー8、型駆動部9、支柱10、型チャック16、ヘッド17と、アライメント棚18を有する。また、平坦化装置100は、液滴供給部20、オフアクシスアライメント(OA)スコープ21、基板搬送部22、アライメントスコープ23、光源24、ステージ駆動部31、型搬送部32、制御部200を有する。基板チャック12及び基板ステージ13は、基板11を保持する基板保持部を構成し、型チャック16及びヘッド17は、型15を保持する型保持部を構成する。ここでは、水平面をXY平面とし、鉛直方向をZ軸方向とするようにXYZ座標系が定義されている。
【0018】
平坦化処理対象の基板11は、搬送ハンドなどを含む基板搬送部22によって、平坦化装置100の外部やウェハが格納された格納箱から搬入され、基板チャック12に保持される。基板ステージ13は、ベース定盤4に支持され、基板チャック12に保持された基板11を所定の位置に位置決めするために、X軸方向及びY軸方向に駆動される。ステージ駆動部31は、例えば、リニアモータやエアシリンダなどを含み、基板ステージ13を少なくともX軸方向及びY軸方向に駆動する(移動させる)が、基板ステージ13を2軸以上の方向(例えば、6軸方向)に駆動する機能を有していてもよい。また、ステージ駆動部31は、回転機構を含み、基板チャック12および基板ステージ13をZ軸方向に平行な軸周りに回転駆動する(回転させる)。さらに基板ステージ13には、組成物を硬化させた後に離型に用いる離型用部材として機能するリフトピン30が設けられている。
【0019】
型15は、搬送ハンドなどを含む型搬送部32によって、平坦化装置100の外部や型が格納された格納箱から搬入され、型チャック16に保持される。型15は、例えば、円形又は四角形の外形を有し、下面に平坦部を含む。平坦部は、基板上の組成物に接触して基板11の表面形状に倣うような剛性を有する。平坦部は、基板11と同じ大きさ、又は、基板11よりも大きい大きさを有する。型チャック16は、ヘッド17に支持され、型15のZ軸周りの傾きを補正する機能を有する。型チャック16及びヘッド17のそれぞれは、光源24からコリメータレンズを介して照射される光(紫外線)を通過させる開口を含む。また、型チャック16又はヘッド17には、基板上の組成物に対する型15の押し付け力(押印力)を計測するためのロードセルが配置されている。
【0020】
このような型チャック16は、型15を吸着保持することができ、具体的には、静電引力によって型15の吸着保持を行う静電チャック機構や、真空吸引力によって型15の真空チャック機構などを用いることができる。本実施形態においては、真空チャック機構の例を用いて説明を行う。
【0021】
ベース定盤4には、天板6を支持する支柱5が配置されている。ガイドバー8は、天板6を貫通し、一端がガイドバープレート7に固定され、他端がヘッド17に固定される。型駆動部9は、ガイドバー8を介して、ヘッド17をZ軸方向に駆動して、型チャック16に保持された型15を基板上の組成物に接触させたり、基板上の組成物から引き離したりする機構である。また、型駆動部9は、ヘッド17をX軸方向及びY軸方向に駆動する(移動させる)機能、及び、型チャック16又はヘッド17をZ軸方向に平行な軸周りに回転駆動する機能、さらに型チャック16及びヘッド17をY軸方向に回動可能な機能を有する。
【0022】
すなわちステージ駆動部31と型駆動部9とによって、平坦化処理の際に型チャック16によって保持される型15と基板チャック12によって保持される基板11との相対位置が調整されるように、制御部200によって制御される。
【0023】
アライメント棚18は、支柱10を介して天板6に懸架される。アライメント棚18には、ガイドバー8が貫通している。また、アライメント棚18には、例えば、斜入射像ずれ方式を用いて、基板チャック12に保持された基板11の高さ(平坦度)を計測するための高さ計測系(不図示)が配置されている。
【0024】
OAスコープ21は、アライメント棚18に支持される。OAスコープ21は、基板11の複数のショット領域に設けられたアライメントマークを検出し、複数のショット領域のそれぞれの位置を決定するグローバルアライメント処理に用いられる。
【0025】
アライメントスコープ23は、基板ステージ13に設けられた基準マークと、型15に設けられたアライメントマークとを観察するための光学系及び撮像系を含む。但し、型15にアライメントマークが設けられていない場合には、アライメントスコープ23がなくてもよい。アライメントスコープ23は、基板ステージ13に設けられた基準マークと、型15に設けられたアライメントマークとの相対的な位置を計測し、その位置ずれを補正するアライメントに用いられる。アライメントスコープ23によって型15と基板ステージ13との位置関係を求め、OAスコープ21によって基板ステージ13と基板11との位置関係を求めることで、型15と基板11との相対的なアライメントを行うことができる。
【0026】
液滴供給部20は、基板11に未硬化(液状)の組成物を吐出する吐出口(ノズル)を含むディスペンサで構成され、基板上に組成物の液滴を滴下して配置(供給)する。液滴供給部20は、例えば、ピエゾジェット方式やマイクロソレノイド方式などを採用し、基板上に微小な容積の液滴状の組成物を供給することができる。また、液滴供給部20における吐出口の数は、限定されるものではなく、1つ(シングルノズル)であってもよいし、100を超えてもよい。即ち、リニアノズルアレイでもよいし、複数のリニアノズルアレイを組み合わせてもよい。なお、ここでは平坦化装置100内で組成物を供給する構成を示したが、あらかじめ外部装置や専用ユニットで組成物を基板11上に供給した後に、基板11を基板ステージ13に搬送する方法を用いてもよい。
【0027】
制御部200は、CPUや他のプロセッサ、FPGAなどの処理部や、メモリなどの記憶部を含み、平坦化装置100の全体を制御する。制御部200は、平坦化装置100の各部を統括的に制御して平坦化処理を行う処理部として機能する。ここで、平坦化処理とは、型15の平坦面を基板上の組成物に接触させて平坦面を基板11の表面形状に倣わせることで組成物を平坦化する処理である。なお、平坦化処理は、一般的には、ロット単位で、即ち、同一のロットに含まれる複数の基板のそれぞれに対して行われる。
【0028】
次に、
図8(a)乃至
図8(c)を参照して、平坦化処理について概要を説明する。
【0029】
まず、
図8(a)に示すように、下地パターン11aが形成されている基板11に対して、液滴供給部20から組成物IMの複数の液滴を滴下する。
図8(a)は、基板上に組成物IMを供給し、型15を接触させる前の状態を示している。次いで、
図8(b)に示すように、基板上の組成物IMと型15の平坦部15aとを接触させる。この際に、型15は型チャック16から開放され、組成物IMの上に載置される。
図8(b)は、型15の平坦部15aが基板上の組成物IMにすべて接触し、型15の平坦部15aが基板11の下地パターン11aの表面形状に倣った状態を示している。そして、
図8(b)に示す状態で、光源から、型15を介して、基板上の組成物IMに光を照射して組成物IMを硬化させる。次に、
図8(c)に示すように、型チャック16で再度型15を吸着保持させた状態でZ軸方向に移動させることで基板上の硬化した組成物IMから型15を引き離す。これにより、基板11の全面で均一な厚みの組成物IMの平坦化層を形成することができる。
図8(c)は、基板上に組成物IMの平坦化層が形成された状態を示している。
【0030】
なお、組成物IMに型15の平坦部15aを接触する工程、基板11の上に成形した未硬化の組成物IMに照射する工程、及び、型15を組成物IMから分離する工程を共通の装置内で行っている。しかし、夫々の工程は夫々の専用装置で行っても良いし、適宜共通の装置で行っても良い。
【0031】
このような平坦化処理の離型処理において、大面積の型15と基板11全面の組成物とを接触させて一括処理を行おうとすると、接触面積が大きいため組成物から型を引きはがすのに要する力(離型力)大きくなる。そのため、離型動作自体を正常に行えなかったり、無理やり引きはがそうとすることで基板上に形成されている下地パターンの破損が発生したり、基板上の組成物が正常に平坦化できない可能性が生じる。
【0032】
このような課題に対して本発明では、以下に示すような形状の型15を用いることで硬化後の組成物から平坦化処理に用いる型を良好に離型させることができる。
【0033】
図2は、基板と型が接触した状態を示す図であり、本発明の特徴を有する型15を組成物と接触する面である平坦部15aの面に垂直な方向(Z軸方向)から見た図で、組成物14と接触する領域を示している。以下、型の組成物と接触する側の平坦部15aの面を第1面とし、当該第1面とは反対側の型チャック16で保持される面を第2面として呼ぶこととする。型15の第1面側の外周端部の一部には、外周端部から内側に向かう方向に(平坦部15aの面内方向に)延伸するように離型開始領域15b(凹部)が設けられている。離型開始領域15bの領域は、基板11の下地パターン11aの上に配置された組成物と型15の平坦部15aとが接触した状態(平坦化工程)においても、組成物とは接しないように平坦部15aの面に対して凹んで設けられている。すなわち型の厚みは、組成物と接する面に垂直な方向(面外方向)において、平坦部15aの領域(他の領域)よりも離型開始領域15bの領域の方が薄く設けられ、平坦化工程時に離型開始領域15bの領域と基板上の組成物との間が空間となる。言い換えると、平坦部15aの面を垂直な方向から見たときに、記型と組成物とが接触することで生じる円弧状の境界線の一部が連続しないように設けられている。これにより平坦部15aを硬化した組成物から離型させる際に、平坦部15aの反対側の第2面を型チャック16が吸着して基板11から離れる方向に駆動されると、組成物と接していない離型開始領域15bが離型の起点となり、容易に離型させることができる。なお、平坦部15aは全面にわたって平面(平坦)である必要はなく、部分的にパターン領域を有していてもよい。さらに、離型開始領域15bは底面が平らである必要はなく、テーパー状に設けられていてもよい。
【0034】
図3は、
図2の基板と型とが接している状態を側面から見た本実施形態に係る断面図であり、破線で示す型15の状態(離型工程開始前の状態)から、リフトピン30で押し上げられ、組成物14からの離型が開始した状態を示している。すなわち実線で示す型15は、リフトピン30によって離型開始領域15bに面外方向に押圧する力がかかっている状態を示している。なお、リフトピン30で押圧されている際には、型15は型チャック16で吸着保持され、型チャック16が基板11から離れる方向へと駆動されている。一方
図4は、型15の外周端部に組成物に接しない領域を設けていない場合を示す比較例である。
【0035】
図3に示すように型15の外周端部に組成物と接しない離型開始領域15bが設けられていると、組成物と離型開始領域との間に離型開始領域15bの形状に応じた空間が形成され、当該離型開始領域15bは組成物と接しないことになる。このように円形の接触領域の外周の一部に組成物と接しない領域が形成されることにより、組成物14が型15と接触する領域が減り離型力が多少弱まることになる。さらに型15の外周端部が撓みやすくなるので、組成物14と接触していない離型開始領域15bが分離の起点となって、容易に分離することができる。
【0036】
また組成物と接する側とは反対側である型15の保持面には、型15を撓みやすくするとともに撓んだ状態で型チャック16が保持しやすいように、段差領域15cを外周に設けることもできる。離型開始領域15bに加え、このような段差領域15cも型15に設けておくことで、離型をより容易に進めることができる。なお、このような段差領域15cやリフトピン30は、離型を補助する機能に過ぎず、必須に設けなければならないものではない。
【0037】
図5は本発明の特徴を有する型15の平坦部15aと基板11上の組成物14とが接触した状態を示す図である。理解を容易にするために、型15の平坦部15aと組成物14が接触しているショット領域ではない領域をドットとして表示し、平坦化処理より前に形成されたパターンのショット領域など、半導体チップ等が取得される領域を斜線で表示している。
【0038】
型15の離型開始領域15bと相対する基板11の領域では、平坦化処理が行えないので、この領域にあるチップは不良となる可能性が高い。そこで、基板11のレイアウト情報から、基板11の元々チップとはならないショット領域ではない領域を特定し、当該領域に離型開始領域15bが相対するように型15で平坦化処理が行われるようにすることが好ましい。また、部分的に離型開始領域15bがショット領域と相対するとしても、離型開始領域15bが重なるチップ数がなるべく少なくなるように、型15を任意の向きに回転し離型開始領域15bの位置を調整することが好ましい。すなわち、平坦化処理予定の基板のレイアウト情報に応じて、離型開始領域15bの位置、形状および大きさ等は適宜調整されることが好ましい。これにより、型15の平坦部15aを組成物14から分離することが容易となると共に、不良となるチップを減らすことができる。なお、離型開始領域15bの位置がショット領域の範囲内に収まるような場合には、離型開始領域15bと相対する位置の基板11上に組成物14を設けなくてもよい。
【0039】
図6は、本発明の特徴を有する型15の離型開始領域15bを、平坦部15aの側から見た斜視図である。型15の外周端部の一部に設けた離型開始領域15bの大きさや形状は、任意の大きさや形状とすることができるが、上述の通り、不良となるチップを極力減らすことができる大きさと形状であり、かつ、離型時に型15が撓みやすいように決定することが好ましい。例えば、基板11のレイアウト情報からショット領域ではない領域を特定し、当該領域と略等しい大きさに離型開始領域15bを設けることで、不良チップをなくし、かつ、離型開始領域15bの面積を最大限広くとることができる。
【0040】
図1に示す平坦化装置では、離型を補助する部材(離型用部材)として基板ステージ13に設けられたリフトピン30が設けられていたが、これ以外に
図7(a)に示すように型チャック16側にリフトプレート40を設けてもよい。リフトプレート40以外の構成は
図1の平坦化装置100と同様であるため説明を省略する。
【0041】
図7(b)は、
図6の離型開始領域15bを平坦部15aの側から見た斜視図に、分離を補助するリフトプレート40を合わせて図示したものである。リフトプレート40を用いて型15の分離を補助する場合には、型15の離型開始領域15bにリフトプレート40をひっかけて、型15を基板11の組成物14から離れる方向(平坦部15aの面に対して垂直な方向)に引き上げることになる。そのため、リフトプレート40には、上下方向(Z軸方向)に駆動する機構に加え、型15の外周部の接線と垂直な方向(XY平面における方向)にも駆動する機構が必要である。またヘッド17に、ヘッド17を中心としてリフトプレート40をXY平面上で回動させる機構を設けることで、型15の離型開始領域15bの位置をショット領域ではない領域となるように位置調整させたとしても分離を補助することができる。
【0042】
なお、本実施形態では平坦化装置を用いて説明したが、部分的にパターンが形成された型を用いて基板全面を一括してインプリントする一括インプリントにも適用しうる。また、組成物を硬化させる方法として光硬化方式を用いて説明したが、熱硬化方式にも適用しうる。
【0043】
(物品製造方法)
次に、前述の平坦化装置又は平坦化方法を利用した物品(半導体IC素子、液晶表示素子、カラーフィルタ、MEMS等)の製造方法を説明する。当該製造方法は、前述の平坦化装置を使用して、基板(ウェハ、ガラス基板等)に配置された組成物と型を接触させて平坦化させ、組成物を硬化させて組成物と型を離す工程とを含む。そして、平坦化された組成物を有する基板に対して、リソグラフィ装置を用いてパターンを形成するなどの処理を行う工程と、処理された基板を他の周知の加工工程で処理することにより、物品が製造される。他の周知の工程には、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等が含まれる。本製造方法によれば、従来よりも高品位の物品を製造することができる。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。