IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 清水建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-摩擦ダンパー機構 図1
  • 特許-摩擦ダンパー機構 図2
  • 特許-摩擦ダンパー機構 図3
  • 特許-摩擦ダンパー機構 図4
  • 特許-摩擦ダンパー機構 図5
  • 特許-摩擦ダンパー機構 図6
  • 特許-摩擦ダンパー機構 図7
  • 特許-摩擦ダンパー機構 図8
  • 特許-摩擦ダンパー機構 図9
  • 特許-摩擦ダンパー機構 図10
  • 特許-摩擦ダンパー機構 図11
  • 特許-摩擦ダンパー機構 図12
  • 特許-摩擦ダンパー機構 図13
  • 特許-摩擦ダンパー機構 図14
  • 特許-摩擦ダンパー機構 図15
  • 特許-摩擦ダンパー機構 図16
  • 特許-摩擦ダンパー機構 図17
  • 特許-摩擦ダンパー機構 図18
  • 特許-摩擦ダンパー機構 図19
  • 特許-摩擦ダンパー機構 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】摩擦ダンパー機構
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20240304BHJP
   F16F 7/08 20060101ALI20240304BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
E04H9/02 351
E04H9/02 331B
F16F7/08
F16F15/02 E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020139813
(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公開番号】P2022035468
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】劉 銘崇
(72)【発明者】
【氏名】磯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】濱 智貴
(72)【発明者】
【氏名】北村 佳久
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-002621(JP,A)
【文献】特開2014-119033(JP,A)
【文献】特開2017-048581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
F16F 7/08
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造体と下部構造体との間に、互いに並列に配置された第一摩擦ダンパー装置と、第二摩擦ダンパー装置と、を備え、
前記第一摩擦ダンパー装置は、
前記上部構造体に接続された第一上部接続板材と、
前記第一上部接続板材と同軸上に軸方向に離間して配置され、前記下部構造体に接続され、前記第一上部接続板材に近接するにしたがって次第に上下方向の厚さが厚くなるように形成された第一下部接続板材と、
前記第一上部接続板材の上側に配置された第一上側板材と、
前記第一下部接続板材の下側に配置された第一下側板材と、
前記第一下部接続板材と前記第一上側板材及び前記第一下側板材との間に配置された第一摩擦板材と、
前記第一上側板材と前記第一下側板材との間隔を所定寸法以下にならないよう保持して、前記第一上側板材及び前記第一下側板材で前記第一下部接続板材に支圧を与える第一支圧部と、
前記第一上部接続板材、前記第一上側板材及び前記第一下側板材の軸方向の移動を拘束する第一移動拘束部と、を有し、
前記第二摩擦ダンパー装置は、
前記下部構造体に接続された第二下部接続板材と、
前記第二下部接続板材と同軸上に軸方向に離間して配置され、前記上部構造体に接続され、前記第二下部接続板材から離間するにしたがって次第に上下方向の厚さが厚くなるように形成された第二上部接続板材と、
前記第二上部接続板材の上側に配置された第二上側板材と、
前記第二下部接続板材の下側に配置された第二下側板材と、
前記第二上部接続板材と前記第二上側板材及び前記第二下側板材との間に配置された第二摩擦板材と、
前記第二上側板材と前記第二下側板材との間隔を所定寸法以下にならないよう保持して、前記第二上側板材及び前記第二下側板材で前記第二上部接続板材に支圧を与える第二支圧部と、
前記第二下部接続板材、前記第二上側板材及び前記第二下側板材の軸方向の移動を拘束する第二移動拘束部と、を有することを特徴とする摩擦ダンパー機構。
【請求項2】
上部構造体と下部構造体との間に設置される摩擦ダンパー機構であって、
前記上部構造体及び前記下部構造体の一方に接続されたピストンロッドと、
前記上部構造体及び前記下部構造体の他方に接続された筐体部と、
該筐体部の内部に配置された上側部材と、
前記筐体部の内部に前記上側部材の下方に配置された下側部材と、
前記ピストンロッドに設けられ、前記上側部材と前記下側部材との間に介装され、前記上側部材及び前記下側部材に対して水平一方向に摺動可能とされたた摺動子と、
前記上側部材を前記摺動子側に付勢する上側付勢部と、
前記下側部材を前記摺動子側に付勢する下側付勢部と、を備え、
前記摺動子と前記上側部材との摺動面には、いずれも前記水平一方向に沿いかつ水平面に対して互いに逆方向に傾斜している第一上部傾斜面と第二上部傾斜面とが水平方向のうち前記水平一方向に直交する水平他方向に並設配置され、
前記摺動子と前記下側部材との摺動面は、いずれも前記水平他方向に沿いかつ水平面に対して互いに逆方向に傾斜している第一下部傾斜面と第二下部傾斜面とが前記水平他方向に並設配置されていることを特徴とする摩擦ダンパー機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦ダンパー機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、摩擦ダンパーは、免制振構造物の層間に設置することで地震時の層間変位を抑制する装置である(下記の特許文献1参照)。摩擦ダンパーは、免震構造物の場合には免震層に、制振構造物の場合には制振装置を設置する層に設置される。
【0003】
図19に示すように、摩擦ダンパーの概略原理は、外筒101より内筒102に締付力を加え、外筒101と内筒102との間の相対変位と接触面の摩擦力とによる履歴吸収エネルギーで地震エネルギーを吸収するものである。
【0004】
図20に示すように、摩擦ダンパーの復元力特性は、ダンパーの軸変位の増減に関係なく摩擦力が一定の矩形となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-48581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の摩擦ダンパーでは、摩擦力が一定であるため、地震によってダンパーに加わる軸力が摩擦力を超えなければダンパーに変位が生じない。このため、大地震に対応するため摩擦力を大きくすると、より多く発生する中小地震ではダンパーに生じる軸力が摩擦力を超えず変位が生じないため履歴吸収エネルギーがなくなり、摩擦ダンパーとしての機能を果たせない。一方、中小地震に効果があるように摩擦力を小さくすると、大地震時に履歴吸収エネルギーが小さくなり応答低減効果がわずかなものとなってしまうという問題点がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ダンパーの軸変位が小さい中小地震時には小さな摩擦力が生じ、ダンパーの軸変位が大きい大地震時には大きな摩擦力を生じさせる摩擦ダンパー機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る摩擦ダンパー機構は、上部構造体と下部構造体との間に、互いに並列に配置された第一摩擦ダンパー装置と、第二摩擦ダンパー装置と、を備え、前記第一摩擦ダンパー装置は、前記上部構造体に接続された第一上部接続板材と、前記第一上部接続板材と同軸上に軸方向に離間して配置され、前記下部構造体に接続され、前記第一上部接続板材に近接するにしたがって次第に上下方向の厚さが厚くなるように形成された第一下部接続板材と、前記第一上部接続板材の上側に配置された第一上側板材と、前記第一下部接続板材の下側に配置された第一下側板材と、前記第一下部接続板材と前記第一上側板材及び前記第一下側板材との間に配置された第一摩擦板材と、前記第一上側板材と前記第一下側板材との間隔を所定寸法以下にならないよう保持して、前記第一上側板材及び前記第一下側板材で前記第一下部接続板材に支圧を与える第一支圧部と、前記第一上部接続板材、前記第一上側板材及び前記第一下側板材の軸方向の移動を拘束する第一移動拘束部と、を有し、前記第二摩擦ダンパー装置は、前記下部構造体に接続された第二下部接続板材と、前記第二下部接続板材と同軸上に軸方向に離間して配置され、前記上部構造体に接続され、前記第二下部接続板材から離間するにしたがって次第に上下方向の厚さが厚くなるように形成された第二上部接続板材と、前記第二上部接続板材の上側に配置された第二上側板材と、前記第二下部接続板材の下側に配置された第二下側板材と、前記第二上部接続板材と前記第二上側板材及び前記第二下側板材との間に配置された第二摩擦板材と、前記第二上側板材と前記第二下側板材との間隔を所定寸法以下にならないよう保持して、前記第二上側板材及び前記第二下側板材で前記第二上部接続板材に支圧を与える第二支圧部と、前記第二下部接続板材、前記第二上側板材及び前記第二下側板材の軸方向の移動を拘束する第二移動拘束部と、を有することを特徴とする。
【0009】
このように構成された摩擦ダンパー機構では、第一摩擦ダンパー装置に、引張力が作用すると第一上側摩擦板材及び第一下側摩擦板材に作用する摩擦力が増加し、圧縮力が作用すると第一上側摩擦板材及び第一下側摩擦板材に作用する摩擦力はほぼなくなる。第二摩擦ダンパー装置に、圧縮力が作用すると第二上側摩擦板材及び第二下側摩擦板材に作用する摩擦力が増加し、引張力が作用すると第二上側摩擦板材及び第二下側摩擦板材に作用する摩擦力はほぼなくなる。よって、このような第一摩擦ダンパー装置と第二摩擦ダンパー装置とが並列に配置されているため、荷重と変位との関係は両者を重ね合わせたものとなり、ダンパーの軸変位が小さい中小地震時には小さな摩擦力が生じ、ダンパーの軸変位が大きい大地震時には大きな摩擦力を生じさせることができる。
【0010】
また、本発明に係る摩擦ダンパー機構は、上部構造体と下部構造体との間に設置される摩擦ダンパー機構であって、前記上部構造体及び前記下部構造体の一方に接続されたピストンロッドと、前記上部構造体及び前記下部構造体の他方に接続された筐体部と、該筐体部の内部に配置された上側部材と、前記筐体部の内部に前記上側部材の下方に配置された下側部材と、前記ピストンロッドに設けられ、前記上側部材と前記下側部材との間に介装され、前記上側部材及び前記下側部材に対して水平一方向に摺動可能とされたた摺動子と、前記上側部材を前記摺動子側に付勢する上側付勢部と、前記下側部材を前記摺動子側に付勢する下側付勢部と、を備え、前記摺動子と前記上側部材との摺動面には、いずれも前記水平一方向に沿いかつ水平面に対して互いに逆方向に傾斜している第一上部傾斜面と第二上部傾斜面とが水平方向のうち前記水平一方向に直交する水平他方向に並設配置され、前記摺動子と前記下側部材との摺動面は、いずれも前記水平他方向に沿いかつ水平面に対して互いに逆方向に傾斜している第一下部傾斜面と第二下部傾斜面とが前記水平他方向に並設配置されていることを特徴とする。
【0011】
このように構成された摩擦ダンパー機構では、地震時に、引張力が作用した場合には、摺動子と上側部材との間で第一上部傾斜面及び第二上部傾斜面の一方で摺動が生じるとともに、摺動子と下側部材との間で第一下部傾斜面及び第二下部傾斜面の一方で摺動が生じる。地震時に、圧縮力が作用した場合には、摺動子と上側部材との間で第一上部傾斜面及び第二上部傾斜面の他方で摺動が生じるとともに、摺動子と下側部材との間で第一下部傾斜面及び第二下部傾斜面の他方で摺動が生じる。引張力及び圧縮力が生じたいずれの場合も、変位量が大きくなるにしたがって摩擦抵抗力も増加するため、ダンパーの軸変位が小さい中小地震時には小さな摩擦力が生じ、ダンパーの軸変位が大きい大地震時には大きな摩擦力を生じさせることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る摩擦ダンパー機構によれば、ダンパーの軸変位が小さい中小地震時には小さな摩擦力が生じ、ダンパーの軸変位が大きい大地震時には大きな摩擦力を生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一実施形態に係る摩擦ダンパー機構を示す模式的な図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る摩擦ダンパー機構の第一摩擦ダンパー装置を示す図であり、(a)は(b)のX1-X1線断面図(鉛直断面図)であり、(b)は平面図であり、(c)は(b)のX2-X2線断面図(鉛直断面図)であり、(d)は第一摩擦ダンパー装置の復元力を示す図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る摩擦ダンパー機構の第二摩擦ダンパー装置を示す図であり、(a)は(b)のX3-X3線断面図(鉛直断面図)であり、(b)は平面図であり、(c)は(b)のX4-X4線断面図(鉛直断面図)であり、(d)は第二摩擦ダンパー装置の復元力を示す図である。
図4】本発明の第一実施形態に係る摩擦ダンパー機構の履歴特性を示す図である。
図5】本発明の第二実施形態に係る摩擦ダンパー機構を示す模式的な図である。
図6】本発明の第二実施形態に係る摩擦ダンパー機構の鉛直断面図である。
図7】本発明の第二実施形態に係る摩擦ダンパー機構の上側部材を示す斜視図である。
図8】本発明の第二実施形態に係る摩擦ダンパー機構の下側部材及び摺動子を示す斜視図である。
図9】本発明の第二実施形態に係る摩擦ダンパー機構の作動図であり、(a)はピストンロッドが筐体部から飛び出る方向に力が作用した場合を示し、(b)はピストンロッドが筐体部の内部に入り込む方向に力が作用した場合を示す。
図10】解析モデルを示す図である。
図11】解析で用いる地震波を示す図である。
図12】ダンパーの復元力を示し、(a)は本実施形態(変位依存型摩擦ダンパー)であり、(b)は従来型の摩擦ダンパーである。
図13】地震波(エルセントロのL2レベル)の解析結果を示し、(a)は最大応答加速度とR50との関係を示し、(b)は最大応答変位とR50との関係を示す。
図14】地震波(エルセントロのL1レベル)の解析結果を示し、(a)は最大応答加速度とR50との関係を示し、(b)は最大応答変位とR50との関係を示す。
図15】地震波(タフトのL2レベル)の解析結果を示し、(a)は最大応答加速度とR50との関係を示し、(b)は最大応答変位とR50との関係を示す。
図16】地震波(タフトのL1レベル)の解析結果を示し、(a)は最大応答加速度とR50との関係を示し、(b)は最大応答変位とR50との関係を示す。
図17】地震波(八戸のL2レベル)の解析結果を示し、(a)は最大応答加速度とR50との関係を示し、(b)は最大応答変位とR50との関係を示す。
図18】地震波(八戸のL1レベル)の解析結果を示し、(a)は最大応答加速度とR50との関係を示し、(b)は最大応答変位とR50との関係を示す。
図19】従来の摩擦ダンパー構の原理を示す図である。
図20】従来の摩擦ダンパーの復元力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第一実施形態)
本発明の一実施形態に係る摩擦ダンパー機構について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係る摩擦ダンパー機構を示す模式的な図である。
図1に示すように、本実施形態に係る摩擦ダンパー機構100は、免震上部構造体(上部構造体)A1と免震下部構造体(下部構造体)A2との間に設置されている。
【0015】
免震上部構造体A1の下部には、上部固定部A11が設けられている。免震下部構造体A2の上部には、下部固定部A21,A22が設けられている。下部固定部A21と下部固定部A22とは、水平方向に離間して配置されている。下部固定部A21と下部固定部A22との間に、上部固定部A11が配置されている。
【0016】
摩擦ダンパー機構100は、第一摩擦ダンパー装置1と、第二摩擦ダンパー装置2と、を備えている。第一摩擦ダンパー装置1は、上部固定部A11と下部固定部A21との間に配置されている。第二摩擦ダンパー装置2は、上部固定部A11と下部固定部A22との間に配置されている。第一摩擦ダンパー装置1と第二摩擦ダンパー装置2とは、直線上に配置され、免震上部構造体A1と免震下部構造体A2との間に並列配置となる。
【0017】
第一摩擦ダンパー装置1、第二摩擦ダンパー装置2、上部固定部A11、下部固定部A21及び下部固定部A22は、軸線O1上に同軸上に配置されている。
【0018】
ここで、軸線O1方向(軸方向)のうち、下部固定部A21側を+O1側とし、下部固定部A22側を-O1側とする。
【0019】
図2は、第一摩擦ダンパー装置1を示す図であり、(a)は(b)のX1-X1線断面図(鉛直断面図)であり、(b)は平面図であり、(c)は(b)のX2-X2線断面図(鉛直断面図)であり、(d)は第一摩擦ダンパー装置1の復元力を示す図である。
図2に示すように、第一摩擦ダンパー装置1は、第一上部接続板材11と、第一下部接続板材12と、第一上側板材13と、第一下側板材14と、第一上側摩擦板材(第一摩擦板材)15と、第一下側摩擦板材(第一摩擦板材)16と、第一支圧部17と、第一せん断ボルト(第一移動拘束部)18と、を有している。
【0020】
第一上部接続板材11は、上部固定部A11に接続されている。換言すると、第一上部接続板材11は、上部固定部A11を介して免震上部構造体A1に接続されている。
【0021】
第一上部接続板材11は、板状に形成されている。第一上部接続板材11の板厚方向は、上下方向を向いている。第一上部接続板材11の厚さは、軸線O1方向にわたって一定とされている。
【0022】
第一下部接続板材12は、板状に形成されている。第一下部接続板材12は、第一上部接続板材11と同一の軸線O1上に、第一上部接続板材11よりも+O1側に離間して配置されている。
【0023】
第一下部接続板材12の板厚方向は、上下方向を向いている。第一下部接続板材12の厚さは、軸線O1方向に沿って変化している。第一下部接続板材12の厚さは、第一上部接続板材11に近接するにしたがって次第に厚くなるように形成されている。換言すると、第一下部接続板材12の厚さは、+O1側から-O1側に向かうにしたがって次第に厚くなるように形成されている。
【0024】
第一下部接続板材12の上面12uは、+O1側から-O1側に向かうにしたがって次第に上方に向かうように形成されている。第一下部接続板材12の下面12dは、+O1側から-O1側に向かうにしたがって次第に下方に向かうように形成されている。
【0025】
第一上側板材13は、第一上部接続板材11及び第一下部接続板材12とわずかに間隔を有して上側に配置されている。
【0026】
第一上側板材13の板厚方向は、上下方向を向いている。第一上側板材13の厚さは、軸線O1方向に沿って変化している。第一上側板材13の厚さは、第一上部接続板材11側から第一下部接続板材12側に向かうにしたがって次第に厚くなるように形成されている。換言すると、第一上側板材13の厚さは、-O1側から+O1側に向かうにしたがって次第に厚なるように形成されている。
【0027】
第一上側板材13の下面13dは、第一下部接続板材12の上面12uと略平行に形成されている。第一上側板材13の下面13dは、+O1側から-O1側に向かうにしたがって次第に上方に向かうように形成されている。
【0028】
第一下側板材14は、第一上部接続板材11及び第一下部接続板材12とわずかに間隔を有して下側に配置されている。
【0029】
第一下側板材14の板厚方向は、上下方向を向いている。第一下側板材14の厚さは、軸線O1方向に沿って変化している。第一下側板材14の厚さは、第一上部接続板材11側から第一下部接続板材12側に向かうにしたがって次第に厚くなるように形成されている。換言すると、第一下側板材14の厚さは、-O1側から+O1側に向かうにしたがって次第に厚くなるように形成されている。
【0030】
第一下側板材14の上面14uは、第一下部接続板材12の下面12dと略平行に形成されている。第一下側板材14の上面14uは、+O1側から-O1側に向かうにしたがって次第に下方に向かうように形成されている。第一下側板材14の上面14uと第一上側板材13の下面13dとの隙間は、-O1側から+O1側に向かうにしたがって次第に狭くなっている。
【0031】
平面視で、第一上側板材13及び第一下側板材14は、第一下部接続板材12よりも幅広に形成されている(図2(b)参照)。換言すると、第一上側板材13及び第一下側板材14における軸線O1と直交する幅方向T1の長さは、第一下部接続板材12の幅方向T1の長さよりも長い。第一上側板材13及び第一下側板材14の幅方向T1の両端部は、第一下部接続板材12よりも張り出している。第一上側板材13及び第一下側板材14の張り出している部分を、それぞれ張り出し部13a,14aとする。
【0032】
第一上側摩擦板材15は、第一上側板材13と第一下部接続板材12との間に配置されている。第一上側摩擦板材15は、板状に形成されている。第一上側摩擦板材15の板厚方向は、略上下方向を向いている。
【0033】
第一上側摩擦板材15は、第一上側板材13の下面13dに当接配置されている。第一上側摩擦板材15は、第一下部接続板材12の上面12uに当接配置されている。
【0034】
第一下側摩擦板材16は、第一下部接続板材12と第一下側板材14の間に配置されている。第一下側摩擦板材16は、板状に形成されている。第一下側摩擦板材16の板厚方向は、略上下方向を向いている。
【0035】
第一下側摩擦板材16は、第一下部接続板材12の下面12dに当接配置されている。第一下側摩擦板材16は、第一下側板材14の上面14uに当接配置されている。
【0036】
第一支圧部17は、カラン(鞘管)17aと、支圧ボルト17bと、ナット17cと、ワッシャー17dと、皿ばね17eと、座板17fと、を有している。第一支圧部17は、第一上側板材13と第一下側板材14とを皿ばね17eを介してボルト締結して、第一上側板材13と第一下側板材14との間隔を所定寸法以下にならないように保持して、第一上側板材13及び第一下側板材14で第一下部接続板材12に支圧を与えるものである。
【0037】
第一上側板材13の張り出し部13a及び第一下側板材14の張り出し部14aには、それぞれ上下方向に貫通する取付孔13h,14hが形成されている。第一上側板材13の取付孔13hから第一下側板材14の取付孔14hにわたって、カラン17aが配置されている。
【0038】
カラン17aには、上方から支圧ボルト17bが挿通されている。支圧ボルト17bの下端部には、ナット17cが締結されている。第一上側板材13の上面及び第一下側板材14の下面に沿って、座板17fが設けられている。支圧ボルト17bの上部と座板17fとの間及びナット17cと座板17fとの間には、ワッシャー17dが取り付けられている。ワッシャー17dと座板17fとの間には、皿ばね17eが設けられている。カラン17aは両端の座板17fに当接し、座板17fは皿ばね17eで第一上側板材13及び第一下側板材14に押し付けられている。
【0039】
第一せん断ボルト18は、第一上側板材13、第一上部接続板材11及び第一下側板材14に挿通され、不図示のナットが締結されている。これによって、第一上側板材13、第一上部接続板材11及び第一下側板材14の軸線O1方向及び幅方向T1の移動が拘束される。
【0040】
図2(d)に示すように、地震時に、第一摩擦ダンパー装置1に引張力が作用し、第一上部接続板材11と第一下部接続板材12との相対変位が大きくなる(離間する)と、第一下部接続板材12の厚みの厚い部分が第一下側板材14の上面14uと第一上側板材13の下面13dとの隙間の小さい部分に入っていこうとする。よって、第一上側板材13及び第一下側板材14と第一下部接続板材12との間、つまり第一上側摩擦板材15及び第一下側摩擦板材16に作用する摩擦力が増加する。
【0041】
一方、第一摩擦ダンパー装置1に圧縮力が作用し、第一上部接続板材11と第一下部接続板材12との相対変位が小さくなる(近接する)と、カラン17aで第一上側板材13と第一下側板材14との離間距離が保持されているため、第一下部接続板材12の厚みの薄い部分が第一下側板材14の上面14uと第一上側板材13の下面13dとの隙間の大きい部分に入っていこうとする。よって、第一上側板材13及び第一下側板材14と第一下部接続板材12との間、つまり第一上側摩擦板材15及び第一下側摩擦板材16の摩擦面の面圧が0となり、第一上側摩擦板材15及び第一下側摩擦板材16に作用する摩擦力はほぼなくなる。
【0042】
図3は、第二摩擦ダンパー装置2を示す図であり、(a)は(b)のX3-X3線断面図(鉛直断面図)であり、(b)は平面図であり、(c)は(b)のX4-X4線断面図(鉛直断面図)であり、(d)は第二摩擦ダンパー装置2の復元力を示す図である。
図3に示すように、第二摩擦ダンパー装置2は、第二上部接続板材21と、第二下部接続板材22と、第二上側板材23と、第二下側板材24と、第二上側摩擦板材(第二摩擦板材)25と、第二下側摩擦板材(第二摩擦板材)26と、第二支圧部27と、第二せん断ボルト(第二移動拘束部)28と、を有している。
【0043】
第二上部接続板材21は、上部固定部A11に接続されている。換言すると、第二上部接続板材21は、上部固定部A11を介して免震上部構造体A1に接続されている。
【0044】
第二上部接続板材21は、板状に形成されている。第二上部接続板材21の板厚方向は、上下方向を向いている。第二下部接続板材22の厚さは、軸線O1方向に沿って変化している。第二下部接続板材22の厚さは、第二下部接続板材22から離間するにしたがって次第に厚くなるように形成されている。換言すると、第二上部接続板材21の厚さは、-O1側から+O1側に向かうにしたがって次第に厚なるように形成されている。
【0045】
第二上部接続板材21の上面21uは、-O1側から+O1側に向かうにしたがって次第に上方に向かうように形成されている。第二上部接続板材21の下面21dは、-O1側から+O1側に向かうにしたがって次第に下方に向かうように形成されている。
【0046】
第二下部接続板材22は、板状に形成されている。第二下部接続板材22は、第二上部接続板材21と同一の軸線O1上に、第二上部接続板材21よりも-O1側に離間して配置されている。第二下部接続板材22の板厚方向は、上下方向を向いている。第二上部接続板材21の厚さは、軸線O1方向にわたって一定とされている。
【0047】
第二上側板材23は、第二上部接続板材21及び第二下部接続板材22とわずかに間隔を有して上側に配置されている。
【0048】
第二上側板材23の板厚方向は、上下方向を向いている。第二上側板材23の厚さは、軸線O1方向に沿って変化している。第二上側板材23の厚さは、第二上部接続板材21側から第二下部接続板材22側に向かうにしたがって次第に厚くなるように形成されている。換言すると、第二上側板材23の厚さは、+O1側から-O1側に向かうにしたがって次第に厚くなるように形成されている。
【0049】
第二上側板材23の下面23dは、第二上部接続板材21の上面21uと略平行に形成されている。第二上側板材23の下面23dは、-O1側から+O1側に向かうにしたがって次第に上方に向かうように形成されている。
【0050】
第二下側板材24は、第二上部接続板材21及び第二下部接続板材22とわずかに間隔を有して下側に配置されている。
【0051】
第二下側板材24の板厚方向は、上下方向を向いている。第二下側板材24の厚さは、軸線O1方向に沿って変化している。第二下側板材24の厚さは、第二上部接続板材21側から第二下部接続板材22側に向かうにしたがって次第に厚くなるように形成されている。換言すると、第二下側板材24の厚さは、+O1側から-O1側に向かうにしたがって次第に厚くなるように形成されている。
【0052】
第二下側板材24の上面24uは、第二上部接続板材21の下面21dと略平行に形成されている。第二下側板材24の上面24uは、-O1側から+O1側に向かうにしたがって次第に下方に向かうように形成されている。第二下側板材24の上面24uと第二上側板材23の下面23dとの隙間は、+O1側から-O1側に向かうにしたがって次第に狭くなっている。
【0053】
平面視で、第二上側板材23及び第二下側板材24は、第二上部接続板材21よりも幅広に形成されている(図3(b)参照)。換言すると、第二上側板材23及び第二下側板材24における軸線O1と直交する幅方向T1の長さは、第二上部接続板材21の幅方向T1の長さよりも長い。第二上側板材23及び第二下側板材24の幅方向T1の両端部は、第二上部接続板材21よりも張り出している。第二上側板材23及び第二下側板材24の張り出している部分を、それぞれ張り出し部23a,24aとする。
【0054】
第二上側摩擦板材25は、第二上側板材23と第二上部接続板材21との間に配置されている。第二上側摩擦板材25は、板状に形成されている。第二上側摩擦板材25の板厚方向は、略上下方向を向いている。
【0055】
第二上側摩擦板材25は、第二上側板材23の下面23dに当接配置されている。第二上側摩擦板材25は、第二上部接続板材21の上面21uに当接配置されている。
【0056】
第二下側摩擦板材26は、第二上部接続板材21と第二下側板材24の間に配置されている。第二下側摩擦板材26は、板状に形成されている。第二下側摩擦板材26の板厚方向は、略上下方向を向いている。
【0057】
第二下側摩擦板材26は、第二上部接続板材21の下面21dに当接配置されている。第二下側摩擦板材26は、第二下側板材24の上面24uに当接配置されている。
【0058】
第二支圧部27は、カラン(鞘管)27aと、支圧ボルト27bと、ナット27cと、ワッシャー27dと、皿ばね27eと、座板27fと、を有している。第二支圧部27は、第二上側板材23と第二下側板材24とを皿ばね27eを介してボルト締結して、第二上側板材23と第二下側板材24との間隔を所定寸法以下にならないように保持して、第二上側板材23及び第二下側板材24で第二上部接続板材21に支圧を与えるものである。
【0059】
第二上側板材23の張り出し部23a及び第二下側板材24の張り出し部24aには、それぞれ上下方向に貫通する取付孔23h,24hが形成されている。第二上側板材23の取付孔23hから第二下側板材24の取付孔24hにわたって、カラン27aが配置されている。
【0060】
カラン27aには、上方から支圧ボルト27bが挿通されている。支圧ボルト27bの下端部には、ナット27cが締結されている。第二上側板材23の上面及び第二下側板材24の下面に沿って、座板27fが設けられている。支圧ボルト27bの上部と座板27fとの間及びナット27cと座板27fとの間には、ワッシャー27dが取り付けられている。ワッシャー27dと座板27fとの間には、皿ばね27eが設けられている。カラン27aは両端の座板27fに当接し、座板27fは皿ばね27eで第二上側板材23及び第二下側板材24に押し付けられている。
【0061】
第二せん断ボルト28は、第二上側板材23、第二下部接続板材22及び第二下側板材24に挿通され、不図示のナットが締結されている。これによって、第二上側板材23、第二下部接続板材22及び第二下側板材24の軸線O1方向の移動が拘束される。
【0062】
図3(d)に示すように、地震時に、第二摩擦ダンパー装置2に圧縮力が作用し、第二上部接続板材21と第二下部接続板材22との相対変位が小さくなる(近接する)と、第二上部接続板材21の厚みの厚い部分が第二下側板材24の上面24uと第二上側板材23の下面23dとの隙間の小さい部分に入っていこうとする。よって、第二上側板材23及び第二下側板材24と第二下部接続板材22との間、つまり第二上側摩擦板材25及び第二下側摩擦板材26に作用する摩擦力が増加する。
【0063】
一方、第二摩擦ダンパー装置2に引張力が作用し、第二上部接続板材21と第二下部接続板材22との相対変位が大きくなる(離間する)と、カラン27aで第二上側板材23と第二下側板材24との離間距離が保持されているため、第二上部接続板材21の厚みの薄い部分第二下側板材24の上面24uと第二上側板材23の下面23dとの隙間の大きい部分に入っていこうとする。よって、第二上側板材23及び第二下側板材24と第二下部接続板材22との間、つまり第二上側摩擦板材25及び第二下側摩擦板材26の摩擦面の面圧が0となり、第二上側摩擦板材25及び第二下側摩擦板材26に作用する摩擦力はほぼなくなる。
【0064】
図4は、摩擦ダンパー機構100の履歴特性を示す図である。
図4に示すように、第一摩擦ダンパー装置1と第二摩擦ダンパー装置2とを備える摩擦ダンパー機構100では、第一摩擦ダンパー装置1及び第二摩擦ダンパー装置2の変位が増加すると摩擦力が増大する。第一摩擦ダンパー装置1及び第二摩擦ダンパー装置2の変位が小さい中小地震時には、小さな摩擦力が生じる。第一摩擦ダンパー装置1及び第二摩擦ダンパー装置2の変位が大きい大地震時には、大きな摩擦力を生じる。これによって、中小地震から大地震まで摩擦ダンパーの効果を発揮することができる。
【0065】
このように構成された摩擦ダンパー機構100では、第一摩擦ダンパー装置1に、地震時に、引張力が作用すると第一上側摩擦板材15及び第一下側摩擦板材16に作用する摩擦力が増加し、圧縮力が作用すると第一上側摩擦板材15及び第一下側摩擦板材16に作用する摩擦力はほぼなくなる。第二摩擦ダンパー装置2に、地震時に、圧縮力が作用すると第二上側摩擦板材25及び第二下側摩擦板材26に作用する摩擦力が増加し、引張力が作用すると第二上側摩擦板材25及び第二下側摩擦板材26に作用する摩擦力はほぼなくなる。よって、このような第一摩擦ダンパー装置1と第二摩擦ダンパー装置2とが並列に配置されているため、ダンパーの軸変位が小さい中小地震時には小さな摩擦力が生じ、ダンパーの軸変位が大きい大地震時には大きな摩擦力を生じさせることができる。
【0066】
また、摩擦ダンパー機構100を免震層に設置することで、変位が小さい中小地震時には摩擦抵抗力が小さいため免震建物の加速度増加を抑制でき、変位が大きい大地震時には摩擦抵抗力が増して免震層変位を抑制することができる。
【0067】
また、摩擦ダンパー機構100を制振構造物の層間に設置することで、中小地震時には摩擦抵抗力が小さいため制振建物の加速度増加を抑制でき、大地震時には摩擦抵抗力が大きいため少ない台数で層間変位を低減できる。
【0068】
また、摩擦ダンパー機構100は軸抵抗型のダンパーのため、滑り支承と異なり自重により摩擦抵抗力が変化しない。
【0069】
また、摩擦ダンパー機構100を設置する向きを調整することが、水平方向に任意の方向に対応して摩擦抵抗力を任意に設定することができる。
【0070】
また、摩擦ダンパー機構100は、巨大地震が生じた際には、大きな抵抗力を発揮するためフェイルセーフとして機能することができる
【0071】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態に係る摩擦ダンパー機構について、主に図5図9を用いて説明する。
以下の実機形態において、前述した実施形態で用いた部材と同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0072】
図5は、本発明の第二実施形態に係る摩擦ダンパー機構を示す模式的な図である。
図5に示す摩擦ダンパー機構100Aは、一端部が上部固定部A11(図1参照。以下同じ)に接続され、他端部が下部固定部A21(図1参照。以下同じ)に接続されている。本実施形態では、下部固定部A22は設けられておらず、免震下部構造体A2に設けられた下部固定部はA21の1箇所に設けられている。
【0073】
軸線O1方向のうち、下部固定部A21側を+O1側とし、上部固定部A11側を-O1側とする。また、軸線O1に沿う方向をX方向とし、水平方向のうちX方向と直交する方向をY方向とする。X方向のうち+O1側に対応する方向を+X側として、X方向のうち-O1側に対応する方向を-X側とする。
【0074】
図6は、摩擦ダンパー機構100Aの鉛直断面図であり、ピストンロッドに圧縮力及び引張力が作用せずに、摺動子が中立位置にある場合を示している。
図6に示すように、摩擦ダンパー機構100Aは、外筒(筐体部)3と、ハウジング4と、上部バネ(上側付勢部)46と、下部バネ(下側付勢部)47と、上沓(上側部材)5と、下沓(下側部材)6と、ピストンロッド7と、摺動子8と、を備えている。
【0075】
図5に示すように、外筒3は、角筒状をなしている。角筒状をなす外筒3の軸線方向は、軸線O1と一致している。外筒3の-X側の端部には開口部31が形成されている。
【0076】
外筒3の+X側の端部には、取付部32が設けられている。取付部32には、鉛直方向に貫通する取付孔32hが形成されている。取付部32の取付孔32hに取り付けられた連結部材(不図示)を介して、外筒3は下部固定部A21に接続されている。換言すると、外筒3は、下部固定部A21を介して免震下部構造体(上部構造体及び下部構造体の他方)A2に接続されている。
【0077】
図6に示すように、外筒3の上面3uを形成する上板部33には、下方に突出する上部ストッパー33aが設けられている。上部ストッパー33aは、X方向に離間して2箇所に設けられている。
【0078】
外筒3の下面3dを形成する下板部34には、上方に突出する下部ストッパー34aが設けられている。下部ストッパー34aは、X方向に離間して2箇所に設けられている。下部ストッパー34aは、上部ストッパー33aの鉛直下方に配置されている。
【0079】
ハウジング4は、外筒3の内部に配置されている。ハウジング4は、筒状をなしている。角筒状をなすハウジング4の軸線方向は、軸線O1と一致している。ハウジング4のX方向の両端部は開口している。
【0080】
ハウジング4の上部に配置された上板部41は、外筒3の上板部33の下方に配置されている。ハウジング4の下部に配置された下板部42は、外筒3の下板部34の上方に配置されている。換言すると、ハウジング4と外筒3との間には、上部及び下部にそれぞれ隙間が形成されている。
【0081】
ハウジング4の上板部41には、上方に突出する上部被係止部41aが設けられている。上部被係止部41aは、X方向に離間して2箇所に設けられている。
【0082】
上部被係止部41aは、外筒3の上部ストッパー33aと当接可能とされている。2箇所の上部被係止部41aは、2箇所の上部ストッパー33aの内側に配置されている。これによって、ハウジング4は、外筒3の2箇所の上部ストッパー33aの間で移動が規制されている。
【0083】
ハウジング4の下板部42には、下方に突出する下部被係止部42aが設けられている。下部被係止部42aは、軸線O1方向に離間して2箇所に設けられている。
【0084】
下部被係止部42aは、外筒3の下部ストッパー34aと当接可能とされている。2箇所の下部被係止部42aは、2箇所の下部ストッパー34aの内側に配置されている。これによって、ハウジング4は、外筒3の2箇所の下部ストッパー34aの間で移動が規制されている。
【0085】
上部バネ46は、外筒3の上板部33とハウジング4の上板部41との間に設けられている。上部バネ46は、上板部33と上板部41とを上下方向に離間する方向に付勢している。
【0086】
下部バネ47は、外筒3の下板部34とハウジング4の下板部42との間に設けられている。下部バネ47は、下板部34と下板部42とを上下方向に離間する方向に付勢している。
【0087】
上沓5は、ハウジング4の上板部41の下面41dに設けられている。下沓6は、ハウジング4の下板部42の上面42uに設けられている。下沓6は、上沓5の下方に配置されている。下沓6は、上沓5を上下反転させた構成である。
【0088】
上沓5及び下沓6は、X方向に長い形状をなしている。ここで、上沓5及び下沓6の説明において、X方向(水平一方向)を長さ方向と称し、Y方向(水平他方向)を幅方向と称することがある。
【0089】
図7は、上沓5を斜め下方から見た斜視図である。
図7に示すように、上沓5の下部には、第一帯状部材51a及び第二帯状部材51bが設けられている。
【0090】
第一帯状部材51aは、上沓5の幅方向(Y方向)の中央に配置されている。第一帯状部材51aは、X方向の+X側に配置されている。
【0091】
第二帯状部材51bは、第一帯状部材51aの幅方向(Y方向)の両側に配置されている。第二帯状部材51bは、X方向の-X側に配置されている。
【0092】
第一帯状部材51aと第二帯状部材51bとの間には、上部ガイド溝53としての僅かな隙間が形成されている。
【0093】
上沓5の下面には、上部傾斜面52が形成されている。上部傾斜面52は、Y方向から見て逆V字状をなしている。上部傾斜面52は、後述する摺動子8と摺動する摺動面とされている。
【0094】
上部傾斜面52は、第一上部傾斜面52aと、第二上部傾斜面52bと、を有している。
【0095】
第一上部傾斜面52aは、第一帯状部材51aの下面に形成されている。第一上部傾斜面52aは、水平面に対して傾斜している。第一上部傾斜面52aは、+X側に向かうにしたがって次第に下方に向かうように傾斜している。
【0096】
第二上部傾斜面52bは、第二帯状部材51bの下面に形成されている。第二上部傾斜面52bは、水平面に対して傾斜している。第二上部傾斜面52bは、-X側に向かうにしたがって次第に下方に向かうように傾斜している。
【0097】
第一上部傾斜面52aの水平面に対する傾斜方向と第二上部傾斜面52bの水平面に対する傾斜方向とは、逆方向とされている。本実施形態では、第一上部傾斜面52aの水平面に対する傾斜角度と第二上部傾斜面52bの水平面に対する傾斜角度とは、略同一とされている。
【0098】
図8は、下沓6及び摺動子8を斜め上方から見た斜視図であり、説明のため下沓6と摺動子8とを離している。
図8に示すように、下沓6の上部には、第一帯状部材61a及び第二帯状部材61bが設けられている。
【0099】
第一帯状部材61aは、下沓6の幅方向(Y方向)の中央に配置されている。第一帯状部材61aは、X方向の+X側に配置されている。
【0100】
第二帯状部材61bは、第一帯状部材61aの幅方向(Y方向)の両側に配置されている。第二帯状部材61bは、X方向の-X側に配置されている。
【0101】
第一帯状部材61aと第二帯状部材61bとの間には、下部ガイド溝63としての僅かな隙間が形成されている。
【0102】
下沓6の上面には、下部傾斜面62が形成されている。下部傾斜面62は、Y方向から見てV字状をなしている。下部傾斜面62は、後述する摺動子8と摺動する摺動面とされている。
【0103】
下部傾斜面62は、第一下部傾斜面62aと、第二下部傾斜面62bと、を有している。
【0104】
第一下部傾斜面62aは、第一帯状部材61aの上面に形成されている。第一下部傾斜面62aは、水平面に対して傾斜している。第一下部傾斜面62aは、+X側に向かうにしたがって次第に上方に向かうように傾斜している。
【0105】
第二下部傾斜面62bは、第二帯状部材61bの上面に形成されている。第二下部傾斜面62bは、水平面に対して傾斜している。第二下部傾斜面62bは、-X側に向かうにしたがって次第に上方に向かうように傾斜している。
【0106】
第一下部傾斜面62aの水平面に対する傾斜方向と第二下部傾斜面62bの水平面に対する傾斜方向とは、逆方向とされている。本実施形態では、第一下部傾斜面62aの水平面に対する傾斜角度と第二下部傾斜面62bの水平面に対する傾斜角度とは、略同一とされている。
【0107】
第一上部傾斜面52aの水平面に対する傾斜角度と、第一下部傾斜面62aの水平面に対する傾斜角度とは、略同一とされている。第二上部傾斜面52bの水平面に対する傾斜角度と第二下部傾斜面62bの水平面に対する傾斜角度とは、略同一とされている。
【0108】
図6に示すように、ピストンロッド7は、X方向に延びる棒状部材である。ピストンロッド7の-X方向の端部には、取付部71が設けられている。取付部71には、鉛直方向に貫通する取付孔71hが形成されている。取付部71の取付孔71hに取り付けられた連結部材(不図示)を介して、ピストンロッド7は上部固定部A11に接続されている。換言すると、ピストンロッド7は、上部固定部A11を介して免震上部構造体(上部構造体及び下部構造体の一方)A1に接続されている。
【0109】
摺動子8は、ピストンロッド7の+X方向の端部に設けられている。摺動子8は、上沓5と下沓6との間に介装されている。摺動子8は、上沓5及び下沓6に対してX方向に摺動可能とされている。摺動子8は、略直方体状をなしている。
【0110】
図8に示すように、摺動子8の上面には、上部傾斜面81が形成されている。上部傾斜面81には、不図示の摩擦材が設けられている。上部傾斜面81は、上沓5と摺動する摺動面とされている。
【0111】
上部傾斜面81は、第一上部傾斜面81aと、第二上部傾斜面81bと、を有している。
【0112】
第一上部傾斜面81aは、摺動子8の幅方向(Y方向)の中央に形成されている。第一上部傾斜面81aは、水平面に対して傾斜している。第一上部傾斜面81aは、+X側に向かうにしたがって次第に下方に向かうように傾斜している。
【0113】
第二上部傾斜面81bは、第一上部傾斜面81aの幅方向(Y方向)の両側に形成されている。第二上部傾斜面81bは、水平面に対して傾斜している。第二上部傾斜面81bは、-X側に向かうにしたがって次第に下方に向かうように傾斜している。
【0114】
第一上部傾斜面81aの水平面に対する傾斜方向と第二上部傾斜面81bの水平面に対する傾斜方向とは、逆方向とされている。本実施形態では、第一上部傾斜面81aの水平面に対する傾斜角度と第二上部傾斜面81bの水平面に対する傾斜角度とは、略同一とされている。
【0115】
第一上部傾斜面81aの水平面に対する傾斜方向及び傾斜角度と上沓5の第一上部傾斜面52aの水平面に対する傾斜方向及び傾斜角度とは、略同一とされている。第一上部傾斜面81aは、第一上部傾斜面52aと密着可能とされている。
【0116】
第二上部傾斜面81bの水平面に対する傾斜方向及び傾斜角度と上沓5の第二上部傾斜面52bの水平面に対する傾斜方向及び傾斜角度とは、略同一とされている。第二上部傾斜面81bは、第二上部傾斜面52bと密着可能とされている。
【0117】
第一上部傾斜面81aと第二上部傾斜面81bとの間には、上方に突出する上部ガイド部82が設けられている。上部ガイド部82は、上沓5の上部ガイド溝53に係合されている。これによって、摺動子8は上沓5に対してX方向への摺動が案内され、他の方向への変位が拘束されている。
【0118】
摺動子8の下面には、下部傾斜面86が形成されている。下部傾斜面86には、不図示の摩擦材が設けられている。下部傾斜面86は、下沓6と摺動する摺動面とされている。
【0119】
下部傾斜面86は、第一下部傾斜面86aと、第二下部傾斜面86bと、を有している。
【0120】
第一下部傾斜面86aは、摺動子8の幅方向(Y方向)の中央に形成されている。第一下部傾斜面86aは、水平面に対して傾斜している。第一下部傾斜面86aは、+X側に向かうにしたがって次第に上方に向かうように傾斜している。
【0121】
第二下部傾斜面86bは、第一下部傾斜面86aの幅方向(Y方向)の両側に形成されている。第二下部傾斜面86bは、水平面に対して傾斜している。第二下部傾斜面86bは、-X側に向かうにしたがって次第に上方に向かうように傾斜している。
【0122】
第一下部傾斜面86aの水平面に対する傾斜方向と第二下部傾斜面86bの水平面に対する傾斜方向とは、逆方向とされている。本実施形態では、第一下部傾斜面86aの水平面に対する傾斜角度と第二下部傾斜面86bの水平面に対する傾斜角度とは、略同一とされている。
【0123】
第一下部傾斜面86aの水平面に対する傾斜方向及び傾斜角度と下沓6の第一下部傾斜面62aの水平面に対する傾斜方向及び傾斜角度とは、略同一とされている。第一下部傾斜面86aは、第一下部傾斜面62aと密着している。
【0124】
第二下部傾斜面86bの水平面に対する傾斜方向及び傾斜角度と下沓6の第二下部傾斜面62bの水平面に対する傾斜方向及び傾斜角度とは、略同一とされている。第二下部傾斜面86bは、第二下部傾斜面62bと密着している。
【0125】
第一下部傾斜面86aと第二下部傾斜面86bとの間には、下方に突出する下部ガイド部87が設けられている。下部ガイド部87は、下沓6の下部ガイド溝63に係合されている。これによって、摺動子8は下沓6に対してX方向への摺動が案内され、他の方向への変位が拘束されている。
【0126】
次に、摩擦ダンパー機構100Aの動作を説明する。
図9は、摩擦ダンパー機構100Aの作動図であり、(a)はピストンロッド7が外筒3から飛び出る方向に力が作用した場合を示し、(b)はピストンロッド7が外筒3の内部に入り込む方向に力が作用した場合を示す。なお、図9(a),(b)は、摺動子8が上沓5及び下沓6と摺動する箇所の断面となっている。
常時は、図6に示すように、摺動子8は、上沓5及び下沓6に対してX方向の中心位置に配置されている。摺動子8の上部傾斜面81全体(第一上部傾斜面81a及び第二上部傾斜面81b)が、上沓5の上部傾斜面52全体(第一上部傾斜面52a及び第二上部傾斜面52b)に密着している。摺動子8の下部傾斜面86全体(第一下部傾斜面86a及び第二下部傾斜面86b)が、下沓6の下部傾斜面62全体(第一下部傾斜面62a及び第二下部傾斜面62b)に密着している。上部バネ46は上沓5を摺動子8側に付勢し、下部バネ47は下沓6を摺動子8側に付勢している。
【0127】
この状態から、地震時に、図9(a)に示すように、摩擦ダンパー機構100Aに、上部固定部A11と下部固定部A21との間に引張力が作用した場合には、ピストンロッドに7に-X方向の力(外筒3から離間する方向の力)が作用する。これによって、ピストンロッド7に設けられた摺動子8が-X方向に引っ張られて、摺動子8の第二上部傾斜面81bと上沓5の第二上部傾斜面52bとの間で摺動が生じるとともに、摺動子8の第二下部傾斜面86bと下沓6の第二下部傾斜面62bとの間で摺動が生じる。その一方で、摺動子8の第一上部傾斜面81aと上沓5の第一上部傾斜面52aとの間にはわずかに隙間が生じるとともに、摺動子8の第一下部傾斜面86aと下沓6の第一下部傾斜面62aとの間にはわずかに隙間が生じる。
【0128】
ピストンロッド7の-X方向の変位量が大きくなるにしたがって、上部バネ46及び下部バネ47はより大きく押し込まれ、上部バネ46及び下部バネ47からの反発力が大きくなり、摩擦抵抗力も増加する。
【0129】
一方、地震時に、図9(b)に示すように、摩擦ダンパー機構100Aに、上部固定部A11と下部固定部A21との間に圧縮力が作用した場合には、ピストンロッド7に+X方向の力(外筒3に近接する方向の力)が作用する。これによって、ピストンロッド7に設けられた摺動子8が+X方向に押し込まれ、摺動子8の第一上部傾斜面81aと上沓5の第一上部傾斜面52aとの間で摺動が生じるとともに、摺動子8の第一下部傾斜面86aと下沓6の第一下部傾斜面62aとの間で摺動が生じる。その一方で、摺動子8の第二上部傾斜面81bと上沓5の第二上部傾斜面52bとの間にはわずかに隙間が生じるとともに、摺動子8の第二下部傾斜面86bと下沓6の第二下部傾斜面62bとの間にはわずかに隙間が生じる。
【0130】
ピストンロッド7の+X方向の変位量が大きくなるにしたがって、上部バネ46及び下部バネ47はより大きく押し込まれ、上部バネ46及び下部バネ47からの反発力が大きくなり、摩擦抵抗力も増加する。
【0131】
このように構成された摩擦ダンパー機構100Aでは、地震時に、引張力が作用した場合には、摺動子8の第二上部傾斜面81bと上沓5の第二上部傾斜面52bとの間で摺動が生じるとともに、摺動子8の第二下部傾斜面86bと下沓6の第二下部傾斜面62bとの間で摺動が生じる。地震時に、圧縮力が作用した場合には、摺動子8の第一上部傾斜面81aと上沓5の第一上部傾斜面52aとの間で摺動が生じるとともに、摺動子8の第一下部傾斜面86aと下沓6の第一下部傾斜面62aとの間で摺動が生じる。引張力及び圧縮力が生じたいずれの場合も、変位量が大きくなるにしたがって摩擦抵抗力も増加するため、ダンパーの軸変位が小さい中小地震時には小さな摩擦力が生じ、ダンパーの軸変位が大きい大地震時には大きな摩擦力を生じさせることができる。
【0132】
次に、上記に示す実施形態に係る摩擦ダンパー機構の効果について、解析する。
図10は、解析モデルを示す図である。
図10に示すように、解析モデルは、上部構造体(質量W)と下部構造体との間に、ダンパー及び天然ゴム支承(水平剛性k、減衰定数h)を設置したものである。ダンパーは、上記に示す実施形態に係る摩擦ダンパー機構(変位依存型摩擦ダンパー)と、従来の履歴ダンパー(従来型の摩擦ダンパー)とで比較検証した。
なお、上部構造体の質量Wを、4240×10kgとする。天然ゴム支承の水平剛性kを5.8×10kN/mとし、減衰定数hを2%とする。
【0133】
計算用の地震波は、表1に示す。
【0134】
【表1】
【0135】
表1に示すL2(レベル2地震)は、極めて稀に発生する地震動を指す。L1(レベル1地震)は、中規模の地震で、その構造物の耐用年数中に一度以上は受ける可能性が高い地震動を指す。地震波は、図11に示す通りである。
【0136】
変位依存型摩擦ダンパーの復元力は、図12(a)に示す通りである。変位が大きくなるにともなって、摩擦力も大きくなる。ここでは、50cmにおける摩擦力F50=R50×W×gとし、R50=3%,4%,5%,6%,7%とする。また、初期摩擦力Fi=F50の25%,50%,75%とする。
【0137】
比較対象の従来型の摩擦ダンパーの復元力は、図12(b)に示す通りである。摩擦力は変位に関係なく一定である。ここでは、変位依存型摩擦ダンパーと比較するために、最大摩擦力Fmaxを変位依存型摩擦ダンパーの摩擦力F50とする。F50=R50×W×gとし、R50=3%,4%,5%,6%,7%とする。
【0138】
各地震波における最大応答加速度とR50との関係及び最大応答変位とR50との関係を、図13図18に示す。図13図18の凡例では、変25%,変50%,変70%は、それぞれ変位依存型摩擦ダンパーで、初期摩擦力F=F50の25%,50%,70%である。従来は、従来型の摩擦ダンパーの結果を示す。
【0139】
図13図18より、以下のことが分かる。
・いずれの地震波においても、L1,L2レベルに関わらず、従来型の摩擦ダンパー及び変位依存型摩擦ダンパーともに、R50(=摩擦力F50/重力Wg)が大きくなるほど、最大応答加速度が大きくなる。R50が大きくなるほど、最大応答変位が小さくなる。
・最大応答加速度は、L2レベルよりもL1レベルの方が、従来型の摩擦ダンパーと変位依存型摩擦ダンパーとの差が大きい。初期摩擦力が小さい方が、最大応答加速度が低減される。L1レベルの中小地震では、最大応答加速度は、変位依存型摩擦ダンパーの方が従来型の摩擦ダンパーより小さく、初期摩擦力が小さいほど低減率が増す。
・最大応答変位は、L2レベルよりもL1レベルの方が、従来型の摩擦ダンパーと変位依存型摩擦ダンパーとの差が小さい。
【0140】
よって、変位依存型摩擦ダンパーは、従来型摩擦ダンパーよりも、最大応答加速度を低減できることが分かる。また、変位依存型摩擦ダンパーは、従来型摩擦ダンパーよりも、L2レベルの大地震よりもL1レベルの中小地震の方が、加速度低減効果が高いことが分かる。また、変位依存型摩擦ダンパーは、従来型摩擦ダンパーよりも、初期摩擦力が小さいほど、最大応答加速度の低減率が多いことが分かる。
【0141】
なお、上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0142】
例えば、上記に示す第二実施形態では、摩擦ダンパー機構100Aのピストンロッド7が上部固定部A11に接続され、外筒3の取付部32が下部固定部A21に接続されているが、本発明はこれに限られない。ピストンロッドが下部構造体に接続され、筐体部が上部構造体に接続されていてもよい。
【0143】
また、第二実施形態の変形例として、上沓の第一上部傾斜面が+X側に向かうにしたがって次第に上方に向かうように傾斜し、上沓の第二上部傾斜面が-X側に向かうにしたがって次第に上方に向かうように傾斜し、下沓の第一下部傾斜面が+X側に向かうにしたがって次第に下方に向かうように傾斜し、下沓の第二下部傾斜面が-X側に向かうにしたがって次第に下方に向かうように傾斜していて、摺動子の摺動面が上沓及び下沓の摺動面と対応するように傾斜していてもよい。
【符号の説明】
【0144】
1 第一摩擦ダンパー装置
2 第二摩擦ダンパー装置
3 外筒(筐体部)
4 ハウジング
5 上沓(上側部材)
6 下沓(下側部材)
7 ピストンロッド
8 摺動子
11 第一上部接続板材
12 第一下部接続板材
13 第一上側板材
14 第一下側板材
15 第一上側摩擦板材(第一摩擦板材)
16 第一下側摩擦板材(第一摩擦板材)
17 第一支圧部
18 第一せん断ボルト(第一移動拘束部)
21 第二上部接続板材
22 第二下部接続板材
23 第二上側板材
24 第二下側板材
25 第二上側摩擦板材(第二摩擦板材)
26 第二下側摩擦板材(第二摩擦板材)
27 第二支圧部
28 第二せん断ボルト(第二移動拘束部)
46 上部バネ(上側付勢部)
47 下部バネ(下側付勢部)
52 上部傾斜面
52a 第一上部傾斜面
52b 第二上部傾斜面
62 下部傾斜面
62a 第一下部傾斜面
62b 第二下部傾斜面
81 上部傾斜面
81a 第一上部傾斜面
81b 第二上部傾斜面
86 下部傾斜面
86a 第一下部傾斜面
86b 第二下部傾斜面
100 摩擦ダンパー機構
100A 摩擦ダンパー機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20