(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】検知センサ及びこれを備えた検知装置
(51)【国際特許分類】
G01J 1/02 20060101AFI20240304BHJP
G01N 29/22 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
G01J1/02 Y
G01N29/22
(21)【出願番号】P 2020148018
(22)【出願日】2020-09-03
【審査請求日】2023-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000194918
【氏名又は名称】ホシデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104569
【氏名又は名称】大西 正夫
(72)【発明者】
【氏名】松下 勉
(72)【発明者】
【氏名】原野 博之
(72)【発明者】
【氏名】粟村 竜二
(72)【発明者】
【氏名】本永 秀典
(72)【発明者】
【氏名】中西 賢介
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-539254(JP,A)
【文献】実開昭56-48189(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-0705709(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0170108(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0120266(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00-G01J 1/60
G01J 11/00
G01N 29/00-G01N 29/52
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電フィルムで構成された振動膜であって、赤外線が照射されることによって、焦電効果によって第1電気信号を発生させる構成及び音波により振動させられることによって、圧電効果によって第2電気信号を発生させる構成を有する前記振動膜と、
前記振動膜を収容したケースと、
音波が入力される音孔を有する基板とを備えており、
前記ケースは、少なくとも赤外線が透過可能な透過部を有しており、前記透過部は、前記振動膜に対して第1方向の一方側に配置されており且つ前記振動膜に対向しており、前記第1方向は、前記振動膜の厚み方向であり、
前記基板は、前記ケースに固定されており且つ前記振動膜に対して前記第1方向の他方側に配置され
ており、
前記音孔の前記第1方向に略直交する第2方向の断面の寸法が、前記透過部の前記第2方向の断面の寸法よりも小さい検知センサ。
【請求項2】
圧電フィルムで構成された振動膜であって、赤外線が照射されることによって、焦電効果によって第1電気信号を発生させる構成及び音波により振動させられることによって、圧電効果によって第2電気信号を発生させる構成を有する前記振動膜と、
前記振動膜を収容したケースであって、前記振動膜に対して前記振動膜の厚み方向である第1方向の一方側に配置された天板及び前記天板に設けられた音波が入力される音孔を有する前記ケースと、
前記ケースに固定されており且つ前記振動膜に対して前記第1方向の他方側に配置された基板とを備えており、
前記音孔の前記第1方向に略直交する第2方向の断面の寸法が、前記透過部の前記第2方向の断面の寸法よりも小さく、
前記基板は、少なくとも赤外線が透過可能な透過部を有しており、前記透過部は、前記振動膜に対して前記第1方向の他方側に配置されており且つ前記振動膜に対向している検知センサ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の検知センサにおいて、
前記透過部は、所定の波長帯域の赤外線を透過させる光学フィルタで構成されている検知センサ。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載の検知センサにおいて、
前記振動膜は、前記第1方向の一方側の第1面及び前記第1方向の他方側の第2面を有するフィルム本体と、
前記フィルム本体の前記第1面上の第1電極と、
前記フィルム本体の前記第2面上の第2電極とを有している検知センサ。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載の検知センサにおいて、
前記振動膜から入力される前記第1電気信号及び/又は前記第2電気信号をインピーダンス変換して出力信号として出力する電界効果トランジスタを更に備えている検知センサ。
【請求項6】
請求項5記載の検知センサと、
ローパスフィルタと、
ハイパスフィルタと、
制御部とを備えており、
前記ローパスフィルタは、前記電界効果トランジスタから入力される前記出力信号のうちの前記第1電気信号からインピーダンス変換された周波数帯域の信号を通過させる一方、当該通過する信号の周波数帯域よりも高い周波数帯域の信号を減衰させるようになっており、
前記ハイパスフィルタは、前記出力信号のうちの前記ローパスフィルタを通過する信号の周波数帯域よりも高い周波数帯域の信号を通過させる一方、当該通過する信号の周波数帯域よりも低い周波数帯域の信号を減衰させるようになっており、
前記制御部は、前記ローパスフィルタ及び前記ハイパスフィルタを通過した信号が入力されるようになっており、前記ローパスフィルタのみから信号が入力されているか否かについて判断を行う構成を有する検知装置。
【請求項7】
請求項6記載の検知装置において、
前記制御部は、前記ローパスフィルタのみから信号が入力されていると判断した場合、前記電界効果トランジスタの前記出力信号に対して信号処理を行う構成、又は、前記ローパスフィルタ及び前記ハイパスフィルタを通過した信号に対して信号処理を行う構成を更に有している検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知センサ及びこれを備えた検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の検知センサが、下記特許文献1に記載されている。この検知センサは、開口を有するケースと、焦電フィルムと、圧電フィルムと、第1電界効果トランジスタと、第2電界効果トランジスタとを備えている。焦電フィルムは、開口に対向するようにケース内に配置されている。圧電フィルムは、焦電フィルムに対して所定の間隔をあけて配置されており且つ焦電フィルムとの間の空間は気密性が確保されている。圧電フィルムは、焦電フィルムに対向する対向面と、対向面上に設けられた光反射性を有する電極とを有している。開口から入射した赤外線と、焦電フィルムを透過し且つ圧電フィルムの電極によって反射した赤外線とが焦電フィルムに当たることによって検知信号が発生し、第1電界効果トランジスタに入力される。第1電界効果トランジスタは、入力された検知信号をインピーダンス変換して出力信号として出力するようになっている。一方、開口から入射した音波によって焦電フィルムが振動し、この振動が圧電フィルムに伝わって、圧電フィルムが振動することによって検知信号が発生し、第2電界効果トランジスタに入力される。第2電界効果トランジスタは、入力された検知信号をインピーダンス変換して出力信号として出力するようになっている。このように従来の検知センサは、赤外線及び音波の双方を検知可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の検知センサは、赤外線及び音波が入射する開口が共用されている。この開口は、赤外線を取り込むため大きく開口している。そのため、開口から塵、埃及び/又は水が従来の検知センサ内に入り込みやすい。
【0005】
本発明は、塵、埃及び/又は水が入り込みにくい検知センサ及びこれを備えた検知装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の検知センサは、圧電フィルムで構成された振動膜と、振動膜を収容するケースと、基板とを備えている。振動膜は、赤外線が照射されることによって、焦電効果によって第1電気信号を発生させる構成及び音波により振動させられることによって、圧電効果によって第2電気信号を発生させる構成を有する。ケースは、少なくとも赤外線が透過可能な透過部を有している。この透過部は、振動膜に対して第1方向の一方側に配置されており且つ振動膜に対向している。第1方向は、振動膜の厚み方向である。基板は、ケースに固定されており且つ振動膜に対して第1方向の他方側に配置されている。基板は、音波が入力される音孔を有する。
【0007】
透過部は、ケースではなく、基板に設けられ且つ振動膜に対して第1方向の他方側に配置された構成とすることが可能である。この場合、音孔は、基板ではなく、ケースの天板に設けられた構成とすることが可能である。
【0008】
上記何れかの態様の検知センサは、その内部に塵、埃及び/又は水が入り込みにくい。その理由は以下の通りである。赤外線は透過部を透過して透過部に対向する振動膜に照射される構成であるため、赤外線を検知センサ内に取り込むための開口が検知センサに設けられていない。基板又はケースに音孔が設けられているものの、音孔は小さい。よって、音孔からも塵、埃及び/又は水が検知センサ内に入り込みにくい。
【0009】
音孔の第2方向の断面の寸法が、透過部の第2方向の断面の寸法よりも小さく
することが可能である。第2方向は第1方向に略直交していると良い。
【0010】
透過部は、所定の波長帯域の赤外線を透過させる光学フィルタで構成されていても良い。
【0011】
振動膜は、第1方向の一方側の第1面及び第1方向の他方側の第2面を有するフィルム本体と、フィルム本体の第1面上の第1電極と、フィルム本体の第2面上の第2電極とを有する構成とすることが可能である。
【0012】
上記何れかの態様の検知センサは、電界効果トランジスタを更に備えた構成とすることが可能である。電界効果トランジスタは、振動膜から入力される第1電気信号及び/又は第2電気信号をインピーダンス変換して出力信号として出力する構成とすることが可能である。
【0013】
本発明の一態様の検知装置は、上記何れかの態様の検知センサと、ローパスフィルタと、ハイパスフィルタとを備えた構成とすることが可能である。ローパスフィルタは、電界効果トランジスタから入力される出力信号のうちの第1電気信号からインピーダンス変換された周波数帯域の信号を通過させる一方、当該通過する信号の周波数帯域よりも高い周波数帯域の信号を減衰させる構成とすることが可能である。ハイパスフィルタは、出力信号のうちのローパスフィルタを通過する信号の周波数帯域よりも高い周波数帯域の信号を通過させる一方、当該通過する信号の周波数帯域よりも低い周波数帯域の信号を減衰させる構成とすることが可能である。
【0014】
検知装置は、制御部を更に備えた構成とすることが可能である。制御部は、ローパスフィルタ及びハイパスフィルタを通過した信号が入力される構成とすることが可能である。制御部は、ローパスフィルタのみから信号が入力されているか否かについて判断を行う構成を有することが可能である。
【0015】
制御部は、ローパスフィルタのみから信号が入力されていると判断した場合、電界効果トランジスタの出力信号に対して信号処理を行う構成、又は、ローパスフィルタ及びハイパスフィルタを通過した信号に対して信号処理を行う構成を更に有することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例1に係る検知センサの概略的断面図である。
【
図2】本発明の実施例1に係る検知装置のブロック図である。
【
図3】前記検知センサの設計変型例の概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例1及びその設計変形例について説明する。なお、後述する実施例及び設計変更例の各構成要素は、互いに矛盾しない限り、相互に組み合わせることが可能であることに留意されたい。また、後述する実施例の各態様及び設計変形例における各構成要素を構成する素材、形状、寸法、数及び配置等はその一例を説明したものであって、同様の機能を実現し得る限り任意に設計変更することが可能であることにも留意されたい。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明の実施例1を含む複数の実施例に係る検知センサSについて
図1を参照しつつ説明する。
図1には、実施例1に係る検知センサSが示されている。
図1には、Z-Z’方向(第1方向)及びX-X’方向(第2方向)が示されている。Z-Z’方向は、Z方向(第1方向の一方)及びZ’方向(第1方向の他方)を含む。X-X’方向はZ-Z’方向に略直交しており且つX方向及びX’方向を含む。
【0019】
検知センサSは、振動膜100を備えている。振動膜100は、焦電性を有する圧電フィルムで構成されている。振動膜100は、フィルム本体110と、第1電極120と、第2電極130とを有する。フィルム本体110は、例えば、Z-Z’方向の寸法(厚さ寸法)が0.015mm~0.030mm程度の樹脂フィルムであって、Z方向側の第1面と、Z’方向側の第2面とを有する。第1電極120は、フィルム本体110の第1面上に設けられている。第2電極130は、フィルム本体110の第2面上に設けられている。なお、Z-Z’方向は振動膜100の厚み方向である。
【0020】
この振動膜100は、赤外線が照射されることによって、焦電効果によって第1電気信号を発生させる構成を有している。具体的には、振動膜100は、赤外線が照射されていない状態において、自発分極している。この振動膜100に対して赤外線が照射され、これに起因する振動膜100の温度変化に応じて振動膜100の自発分極状態が変化することによって、振動膜100の電圧が変化する(すなわち、第1電気信号が発生する)構成となっている。
【0021】
振動膜100は、音波により振動させられることによって、圧電効果によって第2電気信号を発生させる構成を更に有している。具体的には、振動膜100は、振動することによって生じる歪みに応じて、電圧が変化する(すなわち、第2電気信号が発生する)構成となっている。
【0022】
検知センサSは、ケース200を更に備えている。ケース200は振動膜100を収容している。ケース200は、ケース本体210と、透過部220とを有する。ケース本体210は、天板211と、筒部212とを有する。天板211は、振動膜100に対してZ方向側に配置されている。天板211は、天板211をZ-Z’方向に貫通した開口211aを有している。筒部212は、天板211の周縁部からZ’方向に延びている。筒部212は、Z’方向側の端部212aを有する。端部212aは、略L字状に折り曲げられていても良いし、Z-Z’方向に延びていても良い。
【0023】
透過部220は開口211aに嵌合している。そのため、透過部220のX-X’方向の断面の外形は開口211aのX-X’方向の断面の形と略同じであり、且つ透過部220のX-X’方向の断面の外形寸法が開口211aのX-X’方向の断面の寸法と略同じ又は若干大きい。透過部220は、振動膜100に対してZ方向側に配置されており且つ振動膜100に対向している。透過部220は、少なくとも赤外線が透過可能な構成となっている。例えば、透過部220は、所定の波長帯域(例えば、1.2μm~1.4μm(1200nm~1400nm))の赤外線のみを透過させる光学フィルタで構成されていても良いし、波長帯域が780nm~1mmの赤外線を透過させる光学フィルタで構成されていても良いし、赤外線及びその近傍の波長帯域の光(例えば、波長帯域が約400nm~780nmの可視光線及び/又は波長帯域が1mm~1mのマイクロ波)を透過させる光学フィルタで構成されていても良い。光学フィルタは、例えば、シリコン製の光学レンズなどで構成されていても良いが、これに限定されるものではない。なお、透過部220は、光学フィルタではなく、少なくとも赤外線が透過可能な透明又は透光性を有する樹脂やガラス等で構成されていても良い。上記何れかの態様の透過部220を透過した赤外線が、振動膜100に照射される。
【0024】
検知センサSは、基板300を更に備えている。基板300はケース200に固定されている。例えば、基板300は、ケース200の筒部212の略L字状に折り曲げられた端部212aに固定されていても良いし(
図1参照)、ケース200の筒部212のZ-Z’方向に延びた端部212aが基板300の係合孔に挿入保持されることによって固定されていても良い
し(図示なし)、ケース200の筒部212のZ-Z’方向に延びた端部212aが基板300上に導電接着剤等で接着されることによって固定されていても良い(図示なし)。基板300は、振動膜100に対してZ’方向側に間隔をあけて配置されている。
【0025】
基板300は、音孔310を有している。音孔310は、基板300をZ-Z’方向に貫通している。音孔310のX-X’方向の断面の形は、透過部220のX-X’方向の断面の外形と同じであっても良いし、相違していても良い。音孔310のX-X’方向の断面の寸法は、透過部220のX-X’方向の断面の寸法よりも小さくすることが可能であるが、これに限定されるものではない。例えば、音孔310のX-X’方向の断面の寸法(直径)は、0.6mm~0.8mmとすることが可能である。音孔310は、振動膜100に対向していても良いが、他の部材が音孔310と振動膜100との間に配置されていても構わない。音孔310から入力される音波が振動膜100を振動させる。なお、基板300に対して図示しない防水性及び/又は防塵性を有するシートがZ’方向側から固定され且つ音孔310をZ’方向側から閉塞していても良い。このシートは省略可能である。
【0026】
検知センサSは、電界効果トランジスタ400(以下、FET(Field effect transistor)400とも称する。)を更に備えた構成とすることが可能である。FET400は、振動膜100に電気的に接続されている。FET400は、基板300上に実装されていても良いし、基板300に電気的に接続される図示しない別の基板に実装されていても良い。FET400は、振動膜100から入力される第1電気信号及び/又は第2電気信号をインピーダンス変換して出力信号として出力する構成を有している。
【0027】
検知センサSは、導電リング500及び筒状のゲートリング600を更に備えた構成とすることが可能である。導電リング500は、振動膜100の周縁部とケース200の天板211との間に介在し且つ振動膜100の第1電極120に接触している。この場合、ケース200のケース本体210は、導電性を有する素材で構成されている。ゲートリング600は、導電性を有しており且つ振動膜100の周縁部と基板300との間に介在し且つ振動膜100の第2電極130に接触している。振動膜100の第1電極120が、導電リング500、ケース本体210及び基板300を介してFET400に電気的に接続され且つ振動膜100の第2電極130が、ゲートリング600及び基板300を介してFET400に電気的に接続されている。このようにしてFET400が、振動膜100に電気的に接続されている。
【0028】
検知センサSは、筒状のホルダ700を更に備えた構成とすることが可能である。ホルダ700は、電気絶縁性を有している。ホルダ700は、ゲートリング600とケース本体210の筒部212との間に配置されている。そのため、ホルダ700のX-X’方向の断面の内形は、ゲートリング600のX-X’方向の断面の外形と同じであり且つホルダ700のX-X’方向の断面の内形寸法は、ゲートリング600のX-X’方向の断面の外形寸法と略同じ又は若干大きい。ホルダ700のX-X’方向の断面の外形は、ケース本体210の筒部212のX-X’方向の断面の内形と同じであり且つホルダ700のX-X’方向の断面の外形寸法は、ケース本体210の筒部212のX-X’方向の断面の内形寸法と略同じ又は若干小さい。ホルダ700は、振動膜100のゲートリング600が接触する部分よりも外側の部分に接触していても良いが、非接触であっても良い。また、ホルダ700は、基板300に接触していても良いが、非接触であっても構わない。
【0029】
以下、本発明の実施例1を含む複数の実施例に係る検知装置Dについて
図2を参照しつつ説明する。
図2には、実施例1に係る検知装置Dが示されている。
【0030】
検知装置Dは、上記何れかの態様の検知センサSと、ローパスフィルタ810と、ハイパスフィルタ820とを備えた構成とすることが可能である。
【0031】
ローパスフィルタ810は、基板300に電気的に接続される図示しない基板上に設けられていても良いし、基板300上に設けていても良い。ローパスフィルタ810は、基板300を介してFET400に電気的に接続されており且つFET400からの出力信号が入力されるようになっている。ローパスフィルタ810は、入力される出力信号のうちの第1電気信号からインピーダンス変換された周波数帯域の信号を通過させる一方、ローパスフィルタ810を通過する信号の周波数帯域よりも高い周波数帯域の信号を減衰させる構成となっている。具体的には、第1電気信号からインピーダンス変換された信号は、0.35Hz~5.0Hzの周波数帯域を有するため、ローパスフィルタ810は、入力される出力信号のうち5.0Hz及びこれよりも低い周波数帯域の信号を通過させる一方、5.0Hzよりも高い(5.0Hzを含まない。)周波数帯域の信号を減衰させる構成となっている。
【0032】
ハイパスフィルタ820は、基板300に電気的に接続される図示しない基板上に設けられていても良いし、基板300上に設けていても良い。ハイパスフィルタ820は、基板300を介してFET400に電気的に接続されており且つFET400からの出力信号が入力されるようになっている。ハイパスフィルタ820は、入力される出力信号のうちのローパスフィルタ810を通過する信号の周波数帯域よりも高い周波数帯域の信号を通過させる一方、ハイパスフィルタ820を通過する信号の周波数帯域よりも低い周波数帯域の信号を減衰させる構成となっている。具体的には、10.0Hzよりも高い(10.0Hzを含まない。)周波数帯域の信号を通過させる一方、10.0Hz及びこれよりも低い周波数帯域の信号を減衰させる構成となっている。
【0033】
検知装置Dは、制御部830を更に備えた構成とすることが可能である。制御部830は、基板300に電気的に接続される図示しない基板上に設けられていても良いし、基板300上に設けていても良い。制御部830は、ローパスフィルタ810及びハイパスフィルタ820に電気的に接続されており且つローパスフィルタ810及びハイパスフィルタ820を通過した信号が入力されるようになっている。制御部830は、FET400に電気的に接続されており且つFET400から出力信号が入力されるようになっていても良いが、これに限定されるものではない。
【0034】
制御部830は、ローパスフィルタ810のみから信号が入力されているか否かを判断する構成を有していても良い。以下、制御部830の非限定の一例の構成について説明する。制御部830は、ローパスフィルタ810から信号の入力があるか否かを判断(第1判断)する。制御部830がローパスフィルタ810から信号の入力があったと判断した場合、制御部830は、制御部830の内部のタイマー回路又は内部メモリ上のソフトウエアタイマーによって所定期間をカウントし、当該所定期間以内にハイパスフィルタ820から信号の入力があるか否かを判断(第2判断)する。制御部830が所定期間以内にハイパスフィルタ820から信号の入力があったと判断した場合(すなわち、ローパスフィルタ810のみから信号が入力されていないと判断した場合)、制御部830は、第1判断の処理に戻る。一方、制御部830が所定期間以内にハイパスフィルタ820から信号の入力がなかったと判断した場合、ローパスフィルタ810のみから信号が入力されていると判断する。なお、制御部830は、第1判断を行った後に、前記所定期間以内に第2判断を行うのではなく、第2判断を行った後に、前記所定期間以内に第1判断を行う構成としても良い。
【0035】
制御部830は、ローパスフィルタ810のみから信号が入力されていると判断した場合、赤外線が照射されることによって、振動膜100から発生する第1電気信号からインピーダンス変換された信号のみが入力されていることになるので、振動膜100に赤外線が当たっていると判断する。これにより、制御部830は、赤外線を検知できる。制御部830は、ローパスフィルタ810のみから信号が入力されていないと判断した場合、音波によって振動する振動膜100から発生する第2電気信号からインピーダンス変換された信号が入力されていることになるので、制御部830は、振動膜100が音波によって振動していると判断する。このようにして制御部830は、音波を検知できる。
【0036】
制御部830は、ローパスフィルタ810のみから信号が入力されていると判断した場合、FET400から入力される信号に対して音声認識処理等の信号処理を行う構成、又は、ローパスフィルタ810及びハイパスフィルタ820から入力される信号に対して音声認識処理等の信号処理を行う構成を更に有していても良い。制御部830は、FET400から入力される信号、又は、ローパスフィルタ810及びハイパスフィルタ820から入力される信号に対して増幅し、増幅した信号に対して前述の信号処理を行う構成とすることも可能である。
【0037】
なお、制御部830は、外部からの指示情報に基づいて、第1判断に戻るようになっていても良い。又は、制御部830は、ローパスフィルタ810のみから信号が入力されていると判断した場合、制御部830の内部のタイマー回路又は内部メモリ上のソフトウエアタイマーによって所定期間をカウントし、当該所定期間以内に前述の何れかの通りに信号処理を行う構成としても良い。制御部830は、前記所定期間経過後、第1判断の処理に戻るようになっていても良い。制御部830は、上記信号処理を行う構成を省略し、上記第1判断及び第2判断の処理をこの順又は逆順で繰り返す構成とすることも可能である。
【0038】
以上のような検知センサS及び検知装置Dによる場合、以下の技術的特徴及び効果を奏する。
技術的特徴及び効果(1)
検知センサS内に塵、埃及び/又は水が音孔からに入り込みにくい。その理由は以下の通りである。赤外線はケース200の透過部220を透過してケース200内に入る構成であるため、赤外線を検知センサS内に取り込むための開口がケース200に開口が設けられていない。基板300に音孔310が設けられているものの、音孔310は小さい。このため、塵、埃及び/又は水が音孔310から検知センサS内に入り込みにくい。音孔310が防水性及び/又は防塵性を有するシートで閉塞されている場合には、塵、埃及び/又は水が音孔310から検知センサS内に更に入り込みにくくなる。
【0039】
技術的特徴及び効果(2)
検知センサS及び検知装置Dの汎用性が向上する。その理由は以下の通りである。検知センサSは上記の通り防塵性及び/又は防水性を有しているので、塵や埃が多い場所及び/又は水が付着する可能性がある場所に検知センサSを設置することが可能になる。また、人体から10μm(1000nm)付近をピーク波長とする赤外線が放射されているため、この赤外線が検知装置Dの検知センサSの透過部220を透過し振動膜100に照射されることによって、上記の通り、人体の接近(検知装置Dに手をかざす行為等も含む。)が検知装置Dに検知される。検知装置Dが自動販売機又は切符やチケットの券売機に内蔵される場合、例えば、検知装置Dは、上記の通り、人体の接近を赤外線が振動膜100に照射されることによって検知した後、音声認識処理をする構成とすることが可能である。この場合、自動販売機又は券売機は、人の接近を検知した後、人体が自動販売機又は券売機に触れることなく、声で商品の購入が可能になる。検知装置Dが火災検知器に内蔵される場合、例えば、検知装置Dは、上記の通り、火災等の温度変化を赤外線が振動膜100に照射されることによって検知した後、音声認識処理を行う構成とすることが可能である。この場合、火災検知器は、火災等の温度変化を検知した後に、処理された音声データをインターネット等の回線を通じて送信することができる。検知装置Dが防犯カメラ等の警報装置に内蔵される場合、例えば、検知装置Dは、上記の通り、人体の接近を赤外線が振動膜100に照射されることによって検知した後、音声認識処理を行う構成とすることが可能である。この場合、警報装置は、人の接近を検知した後、処理された音声データ(声及び物音等)を記録したりインターネット等の回線を通じて送信したりすることができる。
【0040】
技術的特徴及び効果(3)
検知センサSの部品点数の低減を図ることができる。その理由は以下の通りである。振動膜100としては、焦電性を有する圧電フィルムを用いているため、従来例の検知センサのように圧電フィルム及び焦電フィルムを必要としない。しかも、一つのFET400で振動膜100からの第1電気信号及び第2電気信号をインピーダンス変換する構成であるため、従来例の検知センサのように二つのFETを必要としない。
【0041】
なお、上記した検知センサ及び検知装置は、上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載範囲において任意に設計変更することが可能である。
【0042】
検知センサSは、ケース200に透過部220が設けられ、基板300に音孔310が設けられていた。しかし、
図3に示す検知センサS’のように、基板300’に透過部320が設けられ、ケース200’の天板211に音孔230が設けられた構成とすることが可能である。この検知センサS’は、以下の点で検知センサSと相違する以外、略同じ構成である。透過部320は、振動膜100に対してZ’方向側に間隔をあけて配置されており且つ振動膜100に対して対向している。検知装置Dは、検知センサSの代わりに、検知センサS’を備えた構成とすることが可能である。上記した何れかの態様の検知センサS及びS’は、検知装置Dに備えられるものに限定されることなく、その他の検出装置や電子機器に備えられて使用することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
D:検知装置
S、S’:検知センサ
100:振動膜
110:フィルム本体 120:第1電極 130:第2電極
200、200’:ケース
210:ケース本体 211:天板 211a:開口 212:筒部 212a:端部
220:透過部
230:音孔
300:基板
310:音孔
320:透過部
400:電界効果トランジスタ(FET)
500:導電リング
600:ゲートリング
700:ホルダ
810:ローパスフィルタ
820:ハイパスフィルタ
830:制御部