(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 5/16 20060101AFI20240304BHJP
E06B 1/16 20060101ALI20240304BHJP
E06B 3/16 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B1/16 A
E06B3/16
(21)【出願番号】P 2020148576
(22)【出願日】2020-09-03
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184066
【氏名又は名称】宮崎 恭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 政則
(72)【発明者】
【氏名】永田 孫史
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-1459(JP,A)
【文献】特開2014-77292(JP,A)
【文献】特開2012-136927(JP,A)
【文献】特開2019-65565(JP,A)
【文献】特開2017-66668(JP,A)
【文献】特開2008-261152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-3/99
E06B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、枠体の内周に開閉自在に設けられる障子を備え、
障子の框材は中空部を有しており、中空部を構成する屋内側面及び外周側面に屋内側開口部及び外周側開口部を有するとともに、中空部内には両開口部位置に合わせて膨張材設置部材が設けられており、
膨張材設置部材は、加熱膨張材が設けられた見付壁と、見付壁の長手方向の両端部に連続して屋内側に延設された両見込壁と、見付壁の内周側縁に連続する固定部を有し、
見付壁に設けられた加熱膨張材は、見付壁の上端部から下端部にわたって連続して設けられている建具。
【請求項2】
枠体と、枠体の内周に開閉自在に設けられる障子を備え、
枠体の枠材は中空部を有しており、中空部を構成する屋内側面及び内周側面に屋内側開口部及び内周側開口部を有するとともに、中空部内には両開口部位置に合わせて膨張材設置部材が設けられており、
膨張材設置部材は、加熱膨張材が設けられた見付壁と、見付壁の長手方向の両端部に連続して屋内側に延設された両見込壁と、見付壁の内周側縁に連続する固定部を有する建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠体と障子を備え、開閉することのできる建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、竪枠もしくは障子の竪框に設けられた操作部を操作して開閉する窓が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、上記特許文献1のような開口制限ストッパーを有する窓などでは、障子の竪框の屋内側に設けられた解除用つまみなどの操作部を操作することで、竪框の外周側に設けられた解除レバーを駆動して障子の開口制限ストッパーを解除している。
しかし、上記特許文献1のような、框体の屋内側に操作部を有し、框体の外周側面に駆動部を有する建具は、火災時に、操作部及び駆動部を動作させるための屋内側及び外周側の開口部が火炎や煙の通り道となり、火災が延焼する危険性があった。
【0005】
本発明は、竪枠もしくは障子の竪框に設けられた操作部を操作して開閉等する窓等に対して、防火性能を付与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態は、枠体と、枠体の内周に開閉自在に設けられる障子を備え、障子の框材は中空部を有しており、中空部を構成する屋内側面及び外周側面に屋内側開口部及び外周側開口部を有するとともに、中空部内には両開口部位置に合わせて膨張材設置部材が設けられており、膨張材設置部材は、加熱膨張材が設けられた見付壁と、見付壁の長手方向の両端部に連続して屋内側に延設された両見込壁と、見付壁の内周側縁に連続する固定部を有し、見付壁に設けられた加熱膨張材は、見付壁の上端部から下端部にわたって連続して設けられている建具である。
もしくは、一実施形態は、枠体と、枠体の内周に開閉自在に設けられる障子を備え、枠体の枠材は中空部を有しており、中空部を構成する屋内側面及び内周側面に屋内側開口部及び内周側開口部を有するとともに、中空部内には両開口部位置に合わせて膨張材設置部材が設けられており、膨張材設置部材は、加熱膨張材が設けられた見付壁と、見付壁の長手方向の両端部に連続して屋内側に延設された両見込壁と、見付壁の内周側縁に連続する固定部を有する建具である。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態によれば、竪枠もしくは障子の竪框に設けられた操作部を操作して開閉等する窓等に対して、防火性能を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】一実施形態に係る建具の右竪框の図であり、(a)は横断面図であり、(b)(c)は内周側から見た一部拡大図である。
【
図5】一実施形態に係る建具の開口制限ストッパーの操作部の図であり、(a)は一部品の拡大図であり、(b)は分解斜視図である。
【
図6】一実施形態に係る建具の開口制限ストッパーの操作部の説明図であり、(a)(d)は横断面図であり、(b)は正面図であり、(c)は側面図であり、(e)(f)は一部拡大図である。
【
図7】一実施形態に係る建具の右竪枠及び右竪框の図であり、(a)は障子を閉鎖した状態での横断面図であり、(b)は障子を開放した状態での横断面図である。
【
図8】一実施形態に係る建具の右竪框の図であり、(a)(c)は横断面図であり、(b)(d)は屋内側から見た図である。
【
図9】一実施形態に係る建具の右竪框の図であり、(b)(d)は外周側から見た図であり、(a)(c)は(b)(d)に示すz-z位置での横断面図であり、
【
図10】(a)は一実施形態に係る建具の右竪枠及び右竪框の横断面図であり、(b)は実施形態に係る建具の膨張材設置部材の平面図であり、(c)は実施形態に係る建具の膨張材設置部材の斜視図である。
【
図11】一実施形態に係る建具の右竪枠及び右竪框の図であり、(a)は障子を閉鎖した状態での横断面図であり、(b)は障子を閉鎖した状態での火災時の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一実施形態の建具について、枠体の内周に障子を縦辷り出し開閉自在に支持するとともに、障子の開口を制限する開口制限ストッパーを有する建具の例を用いて、図面を参考にして説明する。
【0010】
(全体の構成)
本実施形態の建具は、
図1に示すように、上枠11、下枠12及び左、右竪枠13,14を四周に組んでなる枠体1の内周に上框21、下框22及び左、右竪框23,24を四周に組んで内周に複層ガラス等のパネル体25を嵌め込んでなる障子2が外辷り出し自在に支持されている。
【0011】
障子2の戸先側の右竪框24には、障子2を開閉するためのハンドル6が設けられており、ハンドル6の上方位置には、障子2の開口を制限する開口制限ストッパー5が設けられている。また、枠体1の上枠11と障子2の上框21との間及び枠体1の下枠12と障子2の下框22との間には、障子2を辷り出し自在に支持するフリクションステー7が配置されている。
【0012】
(枠体)
枠体1を構成する上枠11は、アルミニウム合金等の金属材料よりなり、
図2に示すように、上枠11の内周面を形成する見込壁11aと、見込壁11aの屋内側内周面から内周方向に延びる屋内側見付壁11bと、見込壁11aの屋外側端から内周方向に延びる気密材保持壁11cと、見込壁11aの屋内側及び屋外側から外周方向(上方)に延びる屋内側取付壁11d及び屋外側取付壁11eを有している。
【0013】
上枠11は、屋内側取付壁11d及び屋外側取付壁11eが建物開口部の内周に固定されるアンカー部材81に対してビス等の固定手段によって固定され、建物開口部の内周に固定されている。
【0014】
上枠11の見込壁11aの内周面には、障子2を開閉するフリクションステー71の枠側部材711が配置されており、枠側部材711の屋外側部分が気密材保持壁11cに係止されるとともに屋内側部分がビス等の固定手段b11によって上枠11に固定されている。
【0015】
上枠11は、屋内側見付壁11bの屋外側面に、屋外側に向けて気密材s111が設けられるとともに、気密材保持壁11cの下端に下方に向けて気密材s112が設けられている。
【0016】
枠体1を構成する下枠12は、アルミニウム合金等の金属材料よりなり、
図2に示すように、下枠12の内周面を形成する見込壁12aと、見込壁12aの屋内側に連続し内周方向に立ち上がる中空形状の屋内側見付壁12bと、見込壁12aの屋外側の下方に連続する中空形状の水切り部12cと、屋内側見付壁12bの屋内側下端が外周方向に延びてなる屋内側取付壁12dと、水切り部12cの下面から外周方向に延びる屋外側取付壁12eを有している。
【0017】
下枠12は、屋内側取付壁12d及び屋外側取付壁12eが建物開口部の内周に固定されるアンカー部材82に対してビス等の固定手段によって固定され、建物開口部の内周に固定されている。
【0018】
下枠12の見込壁12aの内周面には、障子2を開閉するフリクションステー72の枠側部材712が配置され、ビス等の固定手段によって固定されている。
【0019】
下枠12は、屋内側見付壁12bの屋外側面に屋外側に向けて気密材s12が設けられている。
【0020】
枠体1を構成する左竪枠13と右竪枠14は、
図3に示すように同様の構成を有しているので、ここでは、本実施形態の建具の竪枠について、主に右竪枠14を用いて説明する。
なお、
図3には、左竪枠13に関して、主な符号を付与しておく。
【0021】
枠体1を構成する右竪枠14は、アルミニウム合金等の金属材料よりなり、右竪枠14の内周面を形成する見込壁14aと、見込壁14aの屋内側内周面から内周方向に延びる屋内側見付壁14bと、見込壁14aの屋内側及び屋外側から外周方向に延びる屋内側取付壁14d及び屋外側取付壁14eを有している。
【0022】
右竪枠14は、屋内側取付壁14d及び屋外側取付壁14eが建物開口部の内周に固定されるアンカー部材84に対してビス等の固定手段によって固定され、建物開口部の内周に固定されている。
【0023】
右竪枠14の見込壁14aの内周面には、障子2を閉鎖状態で拘束するためのロック受け614が固定されている。
一方、左竪枠13の見込壁13aの内周面には、障子2の閉鎖時に障子2を屋内側に引寄せる引寄手段9の枠側部材913が固定されている。
【0024】
右竪枠14は、屋内側見付壁14bの屋外側面に屋外側に向けて気密材s14が設けられている。
【0025】
(障子)
障子2を構成する上框21は、アルミニウム合金等の金属材料よりなり、
図2に示すように、中空部を有する上框本体部21aと、上框本体部21aの屋外側内周面から下方に垂設される屋外側ガラス間口壁21cと、上框本体部21aの屋外側外周面から上方に延設される屋外側見付壁21dと、上框本体部21aの屋内側内周に取付けられる押縁212を有している。
上框21は、屋外側ガラス間口壁21c及び押縁212によってガラス間口が形成されており、バックアップ材及びシール材を介して、複層ガラス等のパネル体25が保持されている。
【0026】
上框本体部21aの上面には、障子2を開閉するフリクションステー71の障子側部材721がビス等の固定手段によって固定されている。
【0027】
上框21は、上框本体部21aの屋内側面に上枠11の屋内側見付壁11bに設けられた気密材s111が当接し、屋外側見付壁21dの上端に上枠11の気密材保持壁11cに設けられた気密材s112が当接してそれぞれ気密ラインを形成している。
【0028】
障子2を構成する下框22は、アルミニウム合金等の金属材料よりなり、
図2に示すように、中空部を有する下框本体部22aと、下框本体部22aの屋内側内周面から上方に延設される屋内側ガラス間口壁22bと、下框本体部22aの屋外側内周面から上方に延設される屋外側ガラス間口壁22cと、下框本体部22aの屋外側外周面から下方に垂設される屋外側見付壁22dを有している。
【0029】
下框本体部22aの下面には、障子2を開閉するフリクションステー72の障子側部材722がビス等の固定手段によって固定されている。
【0030】
下框22は、下框本体部22aの屋内側面に下枠12の屋内側見付壁12bに設けられた気密材s12が当接し、気密ラインを形成している。
また、下枠12の屋内側見付壁12bと下框22との間には、調整器75(
図1は、図示を省略)が設けられており、障子2のスムーズな開放を補助している。
【0031】
障子2を構成する左竪框23は、アルミニウム合金等の金属材料よりなり、
図3に示すように、中空部を有する左竪框本体部23aと、左竪框本体部23aの屋外側内周面から内周方向に延設される屋外側ガラス間口壁23cと、左竪框本体部23aの屋外側外周面から外周方向に延設される屋外側見付壁23dと、左竪框本体部23aの屋内側内周面に取付けられる押縁232を有している。
左竪框23は、屋外側ガラス間口壁23c及び押縁232によってガラス間口が形成されており、バックアップ材及びシール材を介して、複層ガラス等のパネル体25が保持されている。
【0032】
左竪框本体部23aの外周面には、障子2が閉鎖したときに障子2を屋内側に引寄せる引寄手段9の框側部材92が固定されている。
【0033】
左竪框23は、屋外側見付壁23dに左竪枠13の内周面に当接する気密材s23が設けられており、また、左竪框本体部23aの屋内側面に左竪枠13の屋内側見付壁13bに設けられた気密材s13が当接し、それぞれ気密ラインを形成している。
【0034】
障子2を構成する右竪框24は、アルミニウム合金等の金属材料よりなり、
図3に示すように、中空部を有する右竪框本体部24aと、右竪框本体部24aの屋外側内周面から内周方向に延設される屋外側ガラス間口壁24cと、右竪框本体部24aの屋外側外周面から外周方向に延設される屋外側見付壁24dと、右竪框本体部24aの屋内側内周面に取付けられる押縁242を有している。
右竪框24は、屋外側ガラス間口壁24c及び押縁242によってガラス間口が形成されており、バックアップ材及びシール材を介して、複層ガラス等のパネル体25が保持されている。
【0035】
右竪框24は、右竪框本体部24aの屋内側面に障子2を開閉するためのハンドル6が設けられており、右竪框本体部241の外周側面にハンドル6の操作によって右竪枠14のロック受け614に対して係脱して障子2のロック状態を制御するピン部材624が設けられている。
【0036】
右竪框24は、屋外側見付壁24dに右竪枠14の内周面に当接する気密材s24が設けられているとともに、右竪框本体部24aの屋内側面に右竪枠14の屋内側見付壁14bに設けられた気密材s14が当接し、それぞれ気密ラインを形成している。
【0037】
(障子の開口制限ストッパー)
本実施形態の建具は、障子の開口を制限する開口制限ストッパーが設けられている。
開口制限ストッパーは、例えばホテルなどにおいて、障子が必要以上に開口しないように開口角度を制限するための装置であり、本実施形態の開口制限ストッパー5は、
図1に示すように、枠体1の右竪枠(戸先側竪枠)14に回動自在に支持されるアーム51と、障子2の右竪框(戸先側竪框)24に設けられる操作部52を有している。
【0038】
開口制限ストッパー5のアーム51は、スチール等の金属材料からなり、
図4に示すように、例えば、長さ約20cm、幅約4~5cm程度の長尺板状の部材である。そして、アーム51は、右竪枠14に軸支される軸支部512と、後述するストッパーピン525を案内する嵌合溝51aが形成された長尺板状の本体部511を有している。
【0039】
アーム51は、軸支部512に形成された軸孔が右竪枠14の見込壁14aに固定された台座513の支持軸513aに軸支され、
図4(a)(b)に示すような支持軸513aを中心に本体部511が下方に下がる状態、及び、
図4(c)に示す支持軸513aを中心に本体部511が屋外側に向かって略水平となる状態をとりえるように回動自在に支持されている。
【0040】
アーム51の本体部511に形成された嵌合溝51aは、アーム51の長手方向略中央に位置し後述するストッパーピン525の頭部525aが嵌入可能な大きさを有する嵌入部511aと、嵌入部511aから反軸孔側に延び、アーム51が略水平となる状態において嵌入部511aから先端(反軸穴側)に行くにしたがって下方に湾曲する案内部511bと、案内部511bの先端(反軸孔側)から上方に湾曲して延びる係合部511cを有している。
【0041】
一方、開口制限ストッパー5の操作部52は、
図5(b)に示すように、右竪框24の屋内側面に固定される台座521と、台座521の屋内側面に左右方向に移動自在に配置される切替つまみ522と、台座521の屋内側面に上下方向に移動自在に配置される解除つまみ523と、台座521の屋外側面に回動自在に配置され解除つまみ523に連動して動作する解除プレート524と、右竪框24の中空部内に配置され切替つまみ522に連動して右竪框24の外周側面から外周方向に出没するストッパーピン525を有している。
なお、操作部52を構成するストッパーピン525は、アルミ合金等の金属材料によって形成されており、台座521、切替つまみ522、解除つまみ523、解除プレート524等の部品は、ASA樹脂等の樹脂材料で形成されている。
【0042】
操作部52が設けられる右竪框24は、屋内側面に屋内側開口部24xが形成されており、台座521は、右竪框24の屋内側開口部24xを覆うように屋内側開口部24xの上下位置においてビスによって固定されている。また、右竪框24の外周側面に解除プレート524を突出させるための外周側開口部24y及びストッパーピン525が貫通する外周側開口部24z(
図9参照)が形成されている。
なお、右竪框24の外周側面には、カバー部材24eが取付けられており、カバー部材24eにも、ストッパーピン525及び解除プレート524を貫通させる開口部24fが形成されている。
【0043】
切替つまみ522は、開口制限ストッパー5を機能させるための部材であり、
図5(a)に示すように、台座521の屋内側面に配置されるつまみ部522aと、つまみ部522aの屋外側面から突出して二股に分かれてなる係止部522bを有しており、係止部522bが屋内側開口部24xを通って右竪框24の中空部内に進入している。
【0044】
ストッパーピン525は、アーム51に係合して障子2の開口角度を制限する部材であり、右竪框本体部24aの外周側面に固定されるガイド525cに摺動自在に支持されて、右竪框24の外周側開口部24zから出没自在に配置されている。
ストッパーピン525は、外周側端部に直径の大きい頭部525aを有するとともに、内周側端部に切替つまみ522の係止部522bが係止される被係止部525bを有している。
【0045】
そして、
図6(a)(b)に示すように、切替つまみ522をON状態(切替つまみ522の移動範囲における右側位置)に位置させることで、切替つまみ522の係止部522bに係止されたストッパーピン525を右竪框24の外周側から突出させることができる。
障子2の閉鎖状態において、右竪框24の外周側から突出したストッパーピン525の頭部525aは、
図4(a),
図7(a)に示すように、アーム51に形成される嵌入部511aに嵌入して、開口制限ストッパー5を機能させた状態となる。
【0046】
この状態で障子2を開放すると、アーム51の嵌入部511aに嵌入したストッパーピン525が案内部511bに沿って移動して、その後、係合部511cに係合することで、
図4(c),
図7(b)に示すように、障子2を開放した状態で拘束することができる。
【0047】
一方、障子2の閉鎖状態において、
図6(d)(e)に示すように、切替つまみ522をOFF状態(切替つまみ522の移動範囲における左側位置)に位置させることで、切替つまみ522の係止部522bに係止するストッパーピン525の頭部525aはアーム51に形成される嵌入部511aから離脱して、開口制限ストッパー5の機能が解除した状態となる。
開口制限ストッパー5の機能が解除した状態で障子2を開閉しても、障子2はアーム51による開口制限を受けることなく、自由に開放することができる。
【0048】
解除つまみ523は、開口制限ストッパー5によって開口位置で拘束されている障子2の拘束を解除するためのつまみであり、台座521に対して上下方向に操作自在に設けられている。
図6(b)(c)に示すように、解除つまみ523を上方に位置させることで、台座521の屋外側面に配置された解除プレート524は、右竪框24の右竪框本体部24aの中空部内に収納されている。
【0049】
一方、
図4(c)に示すように、障子2が開放した状態で拘束された状態で、
図6(f)に示すように、解除つまみ523を下方に移動させると、解除プレート524は右竪框24の外周側開口部24y(
図9参照)から突出してアーム51の下面に当接してアーム51を持ち上げてストッパーピン525を係合部511cから離脱させる。ストッパーピン525が係合部511cから離脱した状態で障子2のハンドル6を屋内側に引くことで障子2の拘束を解除することができ、障子を閉鎖することができる。
【0050】
以上のように、本実施形態の辷り出し窓は、開口制限ストッパー5が設けられていることで、障子2の開放を制限するとともに、障子2の開口状態で開閉を拘束して、風等によって障子2があおられて突然閉鎖することを防ぐことができる。
【0051】
ここで、本実施形態の建具の開口制限ストッパー5のように、障子2の屋内側面に操作部52を有し、障子の外周側面にストッパーピン525や解除プレート524等の操作用部材が突出する等建具においては、竪框の屋内側面と外周側面にそれぞれ開口部が形成されることなる。
【0052】
具体的には、右竪框24の右竪框本体部24aの中空部の屋内側面には、
図8(a)(b)に示すように、屋内側開口部24xが形成されており、右竪框24の右竪框本体部24aの中空部の外周側面には、
図9(a)(b)に示すように、解除プレート524が出没する外周側開口部24y及びストッパーピン525が貫通する外周側開口部24zが形成されている。
【0053】
そのため、火災時に、ASA樹脂等の樹脂材料で形成されている操作つまみ等の操作部52の樹脂製の部品が溶融することで、樹脂製の部品によって覆われていた屋内側開口部24x及び樹脂製の部品が出没する外周側開口部24yを塞ぐものがなくなり、
図10(a)に示すように、屋内側開口部24x及び外周側開口部24y介して右竪框24の右竪框本体部24aの中空部が火炎や煙の通り道となり、屋内外に亘る連通路Aが形成され、火災の延焼の原因になることがある。
【0054】
そこで、本実施形態の建具は、右竪框24の右竪框本体部24aの中空部内に、両開口部位置に合わせて加熱膨張材fを備えた膨張材設置部材4を効果的に配置することで、火災発生時に樹脂製の部品が溶融することで生じる屋内側開口部24x及び外周側開口部24yを通る連通路Aの発生を抑制して、防火性能を向上させている。
以下、膨張材設置部材4について、さらに詳細に説明する。
【0055】
本実施形態の建具の膨張材設置部材4は、スチール等の金属材料からなり、
図10(b)(c)に示すように、膨張材取付壁(見付壁)4aと、膨張材取付壁(見付壁)4aの長手方向の両端部に連続して屋内側に屈曲して延設された見込壁4c,4dと、膨張材取付壁(見付壁)の内周側縁(見込壁側の縁)に連続する固定部4bを有しており、膨張材取付壁4aの見込壁4c,4d側の面には、加熱膨張材fが配置されている。
【0056】
膨張材設置部材4の長さ寸法yは、
図8(c)(d),
図9(c)(d)に示すように、右竪框24に形成される屋内側開口部24x及び外周側開口部24yが形成される領域の長さ寸法y1,y2よりも大きく設定されている。
また、
図10(a)(b)に示すように、膨張材取付壁(見付壁)4aの見付幅寸法xを、右竪框24の屋内側開口部24xの見付幅寸法x0よりも小さく形成することで、膨張材設置部材4を屋内側開口部24xから挿入することができ、該挿入後に右竪框24の中空部の内周側(ガラス間口側)壁に固定部4bをビス等の固定手段bによってネジ止めして、右竪框24の右竪框本体部24aの中空部内に膨張材設置部材4を固定することができる。
【0057】
右竪框24の右竪框本体部24aの中空部内に固定された膨張材設置部材4は、
図8(c)(d),
図9(c)(d)及び
図11(a)に示すように、屋内側開口部24x及び外周側開口部24yの位置に合わせ、両開口部を含む範囲に配置されており、膨張材取付壁4aが屋内側開口部24xに対向するように配置されている。
【0058】
-本実施形態の建具の効果-
以上のように、右竪框24の中空部内に、屋内側開口部24xに対向するように加熱膨張材fが設けられた膨張材設置部材4を配置しているので、火災発生時には、
図11(b)に示すように、屋内側開口部24xに対向する加熱膨張材fが膨張して屋内側開口部24xを確実に閉塞することができる。
【0059】
また、膨張材設置部材4は、右竪框本体部24aの中空部内の内周側壁に固定されているので、中空部の外周側壁に形成された外周側開口部24yと加熱膨張材fとの間に膨張を妨げる部材が存在せず、膨張した加熱膨張材fは、確実に外周側開口部24yに達することができる。
【0060】
さらに、膨張材設置部材4は、膨張材取付壁4aの上下に見込壁4c,4dを有しているので、加熱膨張材fが上下方向へ逃げることがなく、膨張材設置部材4によって形成される空間に充満して、屋内側開口部24x及び外周側開口部24yを通る連通路Aの発生を防止することができる。
【0061】
また、右竪框24の屋内側面に形成する屋内側開口部24xの見付幅寸法x0を膨張材設置部材4の見付幅寸法xよりも大きく形成することで、膨張材設置部材4を右竪框24の屋内側から中空部内に挿入して固定することができるので、施工が容易である。
【0062】
なお、加熱膨張材fの膨張(発泡)温度を、操作部52を構成する樹脂製の部品の融点よりも高く設定することで、樹脂製の部品が溶融した後に加熱膨張材fが発泡するようにして、加熱膨張材fが発泡した後に部品が溶融することによる隙間の発生を抑制することができる。
【0063】
-他の実施形態-
以上、本実施形態の説明では、膨張材設置部材4を開口制限ストッパーを有する建具に採用した例をあげて説明したが、膨張材設置部材4が設けられる建具としては、開口制限ストッパーを有する建具に限定されるものではなく、例えば、ロック装置等を有する建具など、框材の複数の壁に開口部が形成される建具であれば、どのような建具であってもよい。
【0064】
また、膨張材設置部材4は、建具の枠体の枠材に設けられるものでもよい。すなわち、枠体の枠材の屋内側面と内周側面にそれぞれ屋内側開口部と内周側開口部を有し、枠材の屋内側面に配置された操作部を操作することで、枠材の内周側面から突出する操作部材を操作して障子の開閉操作を行う建具の枠体の枠材の中空部内に膨張材設置部材を配置したものでもよい。
【0065】
その他、以上の実施形態は,請求項に記載された発明を限定するものではなく,例示として取り扱われることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0066】
1 :枠体
2 :障子
4 :膨張材設置部材
4a :膨張材取付壁(見付壁)
4b :固定部
4c :見込壁
4d :見込壁
14 :右竪枠
24 :右竪框(框材)
24a :右竪框本体部
24c :屋外側ガラス間口壁
24d :屋外側見付壁
24x :屋内側開口部
24y :外周側開口部
24z :外周側開口部
A :連通路
f :加熱膨張材