(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】ディスク装置用サスペンションの製造方法と、製造装置
(51)【国際特許分類】
G11B 21/21 20060101AFI20240304BHJP
G11B 21/10 20060101ALI20240304BHJP
G11B 5/60 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
G11B21/21 C
G11B21/10 N
G11B5/60 C
(21)【出願番号】P 2020162865
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 健一郎
【審査官】松元 伸次
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-108589(JP,A)
【文献】特開2011-070740(JP,A)
【文献】特開2018-152148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B5/56-5/60
21/10
21/16-21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子が搭載されるアクチュエータ搭載部を備えたディスク装置用サスペンションの製造方法であって、
接着剤を前記アクチュエータ搭載部に塗布し、
前記アクチュエータ搭載部に塗布された前記接着剤に光を照射することにより前記接着剤の粘度を増加させ、
粘度が増加した前記接着剤の上に前記圧電素子を配置し、
前記アクチュエータ搭載部に配置された前記圧電素子の高さを検出し、
検出された前記圧電素子の高さに応じて前記光の照射条件を補正することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のディスク装置用サスペンションの製造方法において、
前記圧電素子が配置された前記アクチュエータ搭載部を加熱して前記接着剤を硬化させることにより、前記圧電素子を前記アクチュエータ搭載部に固定することを特徴とする製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のディスク装置用サスペンションの製造方法において、
前記照射条件の補正は、前記圧電素子の高さが第1のしきい値よりも小さい場合に前記光の照射時間、照度および光量の少なくとも1つを上げ、当該高さが第2のしきい値よりも大きい場合に前記光の照射時間、照度および光量の少なくとも1つを下げることを含む、ことを特徴とする製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載のディスク装置用サスペンションの製造方法において、
前記照射条件の補正に用いる高さは、前記圧電素子の中央部の高さであることを特徴とする製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のディスク装置用サスペンションの製造方法において、
前記照射条件の補正に用いる高さは、前記圧電素子における複数個所の高さの平均値であることを特徴とする製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載のディスク装置用サスペンションの製造方法において、
前記照射条件の補正に用いる高さは、複数の前記ディスク装置用サスペンションの前記アクチュエータ搭載部にそれぞれ配置された前記圧電素子の高さの平均値であることを特徴とする製造方法。
【請求項7】
圧電素子が搭載されるアクチュエータ搭載部を備えたディスク装置用サスペンションの製造装置であって、
接着剤を前記アクチュエータ搭載部に塗布する接着剤供給装置と、
塗布された前記接着剤に光を照射することにより前記接着剤の粘度を増加させる光照射装置と、
粘度が増加した前記接着剤の上に前記圧電素子を配置する素子供給装置と、
前記アクチュエータ搭載部に配置された前記圧電素子の高さを検出する高さ検出器と、
前記高さ検出器により検出された高さに応じて前記光照射装置による前記光の照射条件を補正するコントローラと、
を具備したことを特徴とする製造装置。
【請求項8】
請求項7に記載のディスク装置用サスペンションの製造装置において、
前記コントローラは、前記圧電素子の高さが第1のしきい値よりも小さい場合に前記光照射装置による前記光の照射時間、照度および光量の少なくとも1つを上げ、当該高さが第2のしきい値よりも大きい場合に前記光照射装置による前記光の照射時間、照度および光量の少なくとも1つを下げることを特徴とする製造装置。
【請求項9】
請求項8に記載のディスク装置用サスペンションの製造装置において、
前記コントローラは、前記光照射装置による前記光の照射時間、照度および光量の少なくとも1つを下げる補正を第1の規定回数にわたり連続して実行した場合、または、これら照射時間、照度および光量の少なくとも1つを上げる補正を第2の規定回数にわたり連続して実行した場合に、当該製造装置の動作を停止させることを特徴とする製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を備えたディスク装置サスペンションの製造方法と、製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ等の情報処理装置にディスク装置が使用されている。ディスク装置は、スピンドルを中心に回転する磁気ディスクと、ピボット軸を中心に旋回するキャリッジなどを含んでいる。キャリッジのアームにディスク装置用サスペンションが設けられている。
【0003】
ディスク装置用サスペンションは、ベースプレートと、ロードビーム(load beam)と、ロードビームに沿って配置されたフレキシャ(flexure)などを備えている。フレキシャの先端付近に形成されたジンバル部に、スライダが設けられている。スライダには、ディスクに記録されたデータの読取りや書込み等のアクセスを行なうための素子が設けられている。
【0004】
ディスクの高記録密度化に対応するためには、ディスクの記録面に対して磁気ヘッドをさらに高精度に位置決めできるようにすることが必要である。このため特許文献1や特許文献2に開示されているように、アクチュエータとして機能する圧電素子を備えたサスペンションが開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-50140号公報
【文献】特開2011-216160号公報
【文献】特開2017-191914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
圧電素子はサスペンションのアクチュエータ搭載部に配置される。この圧電素子を接着剤によってアクチュエータ搭載部に固定する場合、接着剤がアクチュエータ搭載部に塗布される。そして未硬化の接着剤の上に圧電素子が置かれる。その後、そのサスペンションが加熱装置に供給されることにより接着剤が加熱される。加熱された接着剤が硬化することにより、圧電素子がアクチュエータ搭載部に固定される。
【0007】
サスペンションの生産ラインにおいて、未硬化の接着剤の上に置かれた圧電素子が移動してしまうことがある。圧電素子が所定の位置からずれると、アクチュエータとしての圧電素子が所定の性能を発揮できなくなる。また圧電素子の高さがばらつくと、サスペンションの種類によっては、スウェイモード(sway mode)やヨーモード(yaw mode)の共振特性に悪影響が生じるという知見も得られた。
【0008】
特許文献3に開示された電子機器製造装置のように、アクチュエータ搭載部に塗布された接着剤の上に圧電素子を配置し、その後、ヒータによって高温のガスを吹付けることにより、接着剤を仮硬化させることも提案された。しかし接着剤が仮硬化する前に、接着剤の表面張力や振動などにより、圧電素子が移動してしまうことが問題となった。また、圧電素子を配置する際の接着剤の粘度が安定しない場合、接着剤を硬化させた後の圧電素子の高さもばらつく可能性がある。
【0009】
本発明の目的は、アクチュエータ搭載部に配置された圧電素子の位置や高さを安定させることが可能なディスク装置用サスペンションの製造方法と、製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの実施形態に係るディスク装置用サスペンションの製造方法は、接着剤をアクチュエータ搭載部に塗布し、前記アクチュエータ搭載部に塗布された前記接着剤に光を照射することにより前記接着剤の粘度を増加させ、粘度が増加した前記接着剤の上に圧電素子を配置し、前記アクチュエータ搭載部に配置された前記圧電素子の高さを検出し、検出された前記圧電素子の高さに応じて前記光の照射条件を補正することを含む。
【0011】
前記製造方法において、前記圧電素子が配置された前記アクチュエータ搭載部を加熱して前記接着剤を硬化させることにより、前記圧電素子を前記アクチュエータ搭載部に固定してもよい。
【0012】
前記製造方法において、前記照射条件の補正は、前記圧電素子の高さが第1のしきい値よりも小さい場合に前記光の照射時間、照度および光量の少なくとも1つを上げ、当該高さが第2のしきい値よりも大きい場合に前記光の照射時間、照度および光量の少なくとも1つを下げることを含んでもよい。
【0013】
前記製造方法において、前記照射条件の補正に用いる高さは、前記圧電素子の中央部の高さであってもよいし、前記圧電素子における複数個所の高さの平均値であってもよい。また、当該高さは、複数の前記ディスク装置用サスペンションの前記アクチュエータ搭載部にそれぞれ配置された前記圧電素子の高さの平均値であってもよい。
【0014】
1つの実施形態に係るディスク装置用サスペンションの製造装置は、接着剤をアクチュエータ搭載部に塗布する接着剤供給装置と、塗布された前記接着剤に光を照射することにより前記接着剤の粘度を増加させる光照射装置と、粘度が増加した前記接着剤の上に圧電素子を配置する素子供給装置と、前記アクチュエータ搭載部に配置された前記圧電素子の高さを検出する高さ検出器と、前記高さ検出器により検出された高さに応じて前記光照射装置による前記光の照射条件を補正するコントローラと、を具備している。
【0015】
前記製造装置において、前記コントローラは、前記圧電素子の高さが第1のしきい値よりも小さい場合に前記光照射装置による前記光の照射時間、照度および光量の少なくとも1つを上げ、当該高さが第2のしきい値よりも大きい場合に前記光照射装置による前記光の照射時間、照度および光量の少なくとも1つを下げてもよい。
【0016】
前記製造装置において、前記コントローラは、前記光照射装置による前記光の照射時間、照度および光量の少なくとも1つを下げる補正を第1の規定回数にわたり連続して実行した場合、または、これら照射時間、照度および光量の少なくとも1つを上げる補正を第2の規定回数にわたり連続して実行した場合に、当該製造装置の動作を停止させてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ディスク装置用サスペンションのアクチュエータ搭載部に配置された圧電素子の位置や高さを安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施形態に係るアクチュエータ搭載部を備えたディスク装置用サスペンションの平面図。
【
図3】
図1中のF3-F3線に沿うアクチュエータ搭載部の断面図。
【
図4】
図1に示されたディスク装置用サスペンションに圧電素子が配置される前のワークの平面図。
【
図5】
図1に示されたディスク装置用サスペンションの製造工程の一例を示したフローチャート。
【
図6】
図5の製造工程を実現するための製造装置の概略的な構成を示すブロック図。
【
図7】アクチュエータ搭載部の一部と導電材供給装置の一部とを模式的に示した断面図。
【
図8】搬送シャトルと接着剤供給装置とを模式的に示した斜視図。
【
図9】搬送シャトルと光照射装置とを模式的に示した斜視図。
【
図10】搬送シャトルと素子供給装置と高さ検出器を模式的に示した斜視図。
【
図12】圧電素子の高さとスウェイ周波数との関係を示した図。
【
図13】照射条件補正処理の一例を示したフローチャート。
【
図15】圧電素子の高さの検出位置の一例を模式的に示した図。
【
図16】圧電素子の高さの検出位置の他の一例を模式的に示した図。
【
図17】圧電素子の高さの検出位置のさらに他の一例を模式的に示した図。
【
図18】接着剤に照射される紫外線の光量と圧電素子の高さの関係の一例を示したグラフ。
【
図19】第2の実施形態に係るディスク装置用サスペンションの一部の斜視図。
【
図21】
図19に示されたディスク装置用サスペンションの製造工程の一例を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、第1の実施形態に係るディスク装置用サスペンションと、その製造方法および製造装置について、
図1から
図18を参照して説明する。
図1は、1つの実施形態に係るディスク装置用サスペンション10(この明細書では単にサスペンション10と称すこともある)を示した平面図である。
【0020】
図2は、サスペンション10を有するディスク装置1の一例を示す斜視図である。ディスク装置1は、ケース2と、スピンドル3を中心に回転するディスク4と、ピボット軸5を中心に旋回するキャリッジ6と、キャリッジ6を旋回させるポジショニング用モータ7などを有している。ケース2は、図示しない蓋によって密閉される。キャリッジ6のアーム8にサスペンション10が取付けられている。
【0021】
図1に示されたサスペンション10は、ベースプレート11を含むベース部12と、ステンレス鋼の板からなるロードビーム13と、フレキシャ14と、一対のアクチュエータ搭載部15,16とを備えている。ベース部12には、キャリッジ6のアーム8に固定するためのボス部12aが形成されている。
【0022】
ロードビーム13の基部13a(
図3に一部を示す)がベースプレート11に重なっている。ロードビーム13の基部13a付近には、厚さ方向に弾性的に撓むことができるヒンジ部13bが形成されている。
図1に矢印X1で示された方向がサスペンション10の長さ方向である。
図1に矢印Y1で示された方向がサスペンション10の幅方向である。
【0023】
フレキシャ14は、ロードビーム13に沿ってサスペンション10の長さ方向に延びている。フレキシャ14は、ロードビーム13よりも薄いステンレス鋼の板からなるメタルベース20と、メタルベース20に沿って形成された配線部21(
図1に一部を示す)とを含んでいる。
【0024】
フレキシャ14の先端付近にジンバル部として機能するタング22が形成されている。タング22には、磁気ヘッドをなすスライダ23が配置されている。スライダ23には、ディスク4(
図2に示す)にデータを磁気的に記録するための素子と、ディスク4に記録されたデータを読取るための素子などが設けられている。フレキシャ14の後部(フレキシャテール14a)は、ベース部12の後方に延びている。
【0025】
サスペンション10のベース部12に、一対のアクチュエータ搭載部15,16が設けられている。
図1においてベース部12の右側に第1のアクチュエータ搭載部15が配置されている。
図1においてベース部12の左側に第2のアクチュエータ搭載部16が配置されている。
【0026】
これらアクチュエータ搭載部15,16に、それぞれ、アクチュエータとして機能する圧電素子31,32が配置されている。圧電素子31,32はPZT(ジルコン酸チタン酸鉛)等の圧電体からなり、サスペンション10の先端側を微小量移動させる機能を有している。圧電素子31,32に印加された電圧に応じて、圧電素子31,32が伸縮する。これによりサスペンション10の先端側をスウェイ方向(
図1に両方向矢印Sで示す)に移動させることができる。
【0027】
図3は第1のアクチュエータ搭載部15を示した断面図である。第2のアクチュエータ搭載部16は第1のアクチュエータ搭載部15と同様に構成されている。
図4は、圧電素子31,32を配置する前のサスペンション(ワーク10´と称す)を示した平面図である。ワーク10´のベース部12に、第1の圧電素子31が配置される第1の開口部41と、第2の圧電素子32が配置される第2の開口部42とが形成されている。
【0028】
図4に示されたように、第1の開口部41の内側にロードビーム13の一部(基部13a)からなる支持部43が形成されている。第2の開口部42の内側にも、ロードビーム13の一部(基部13a)からなる支持部44が形成されている。第1の圧電素子31は、接着剤50(
図1と
図3に示す)によって、第1の開口部41の内面41aと支持部43とに固定されている。
【0029】
第2の圧電素子32は、接着剤50によって、第2の開口部42の内面42aと支持部44とに固定されている。接着剤50は電気絶縁性である。接着剤50の一例は紫外線に反応する光硬化型のエポキシ系樹脂からなる。この接着剤50は、照射した紫外線のエネルギーが比較的少ないと粘度が増加し、紫外線のエネルギーが多いと硬化する性質と、加熱により硬化する性質とを有している。接着剤50に温風を吹付けた場合には、接着剤50の表面が内部よりも先に乾いて硬化する。
【0030】
第1のアクチュエータ搭載部15と第2のアクチュエータ搭載部16とは、互いに実質的に同様に構成されている。このためこれ以降は、
図3に示された第1のアクチュエータ搭載部15を代表して説明する。
【0031】
図3に示されたように圧電素子31の厚さ方向の一方の面に、第1の電極61が設けられている。圧電素子31の他方の面に、第2の電極62が設けられている。第1の電極61は、導電材70aを介して配線部21の端子21aに接続されている。配線部21は、絶縁層21bと、導体21cと、カバー層21dとを含んでいる。
【0032】
圧電素子31の第2の電極62は、導電材70bを介して、ベースプレート11と電気的に導通している。ベースプレート11は、アース側の導体としても機能する。導電材70a,70bは互いに同一の導電性接着剤からなり、例えば熱硬化型の有機系樹脂からなるバインダと、バインダに混入された導電粒子とを含んでいる。
【0033】
続いて、圧電素子31,32をアクチュエータ搭載部15,16に実装する工程の一例を開示する。
図5は、1つのサスペンション10の製造工程の一例を示すフローチャートである。
図5に示された一連のステップST1-ST10を経ることにより、圧電素子31,32がアクチュエータ搭載部15,16に実装される。
【0034】
図6は、
図5の製造工程を実現するための製造装置MSの概略的な構成を示すブロック図である。製造装置MSは、制御の中枢を成すコントローラCTと、導電材供給装置80と、搬送装置90と、接着剤供給装置100と、光照射装置110と、素子供給装置120と、加熱装置130と、高さ検出器140とを備えている。これら導電材供給装置80、搬送装置90、接着剤供給装置100、光照射装置110、素子供給装置120、加熱装置130および高さ検出器140を用いた製造工程の一例を
図7、
図8、
図9、
図10および
図11に示している。
【0035】
以下、
図5のフローチャートにおけるステップST1-ST10の詳細につき説明する。
(1)ステップST1(導電材70aを塗布する工程)
図7は、ワーク10´の一部と、導電材供給装置80の一部を模式的に示した断面図である。例えばステップST1においては、
図7に示されるように、未硬化のペースト状の導電材70aが導電材供給装置80のノズル81によって、端子21aの導体21cに塗布される。導電材70aとしては、紫外線が照射されても硬化しないように、紫外線には反応しない熱硬化型の接着剤が使用される。
【0036】
導電材70aの塗布は、例えば搬送装置90によって搬送されるワーク10´に対して実施される。
図8は、搬送装置90と接着剤供給装置100とを模式的に示した斜視図である。搬送装置90は、複数のワーク10´を所定間隔で保持する搬送シャトル91と、搬送シャトル91を搬送方向M1に所定ピッチで移動させる駆動機構92とを有している。駆動機構92は、搬送シャトル91を矢印M2で示す方向に後退させることもできる。搬送シャトル91と駆動機構92とは、複数のワーク10´を所定ピッチで一定の方向に移動させるための移送手段をなしている。
【0037】
(2)ステップST2(接着剤を塗布する工程)
ステップST2においては、接着剤供給装置100によりアクチュエータ搭載部15,16に接着剤50が塗布される。
図8に示された接着剤供給装置100は、ノズル101を有するディスペンサ102と、ディスペンサ102を三次元方向(矢印X,Y,Zで示す)に移動させてノズル101の位置を制御する移動機構103と、接着剤の供給源104とを含んでいる。ノズル101から吐出された液状の接着剤50が、アクチュエータ搭載部15,16の支持部43,44などに塗布される。
【0038】
(3)ステップST3(紫外線を照射する工程)
図9は、搬送シャトル91と光照射装置110とを模式的に示した斜視図である。ステップST3においては、ステップST2にて塗布された未硬化の接着剤50に、光照射装置110によって紫外線が照射される。紫外線の照射は、例えば接着剤50が塗布されたのち3-10秒程度が経過し、接着剤50が濡れ広がってから行われる。
【0039】
図9に示された光照射装置110は、アクチュエータ搭載部15,16に向けて紫外線UVを照射する照射ヘッド111と、照射ヘッド111を支持するホルダ112とを含んでいる。未硬化の接着剤50に紫外線が照射されることにより、接着剤50の粘度が増加する。照射ヘッド111による紫外線の照射タイミングや紫外線の照度は、コントローラCTによって制御される。
【0040】
(4)ステップST4(圧電素子を載置する工程)
図10は、素子供給装置120と、検出器121とを模式的に示す斜視図である。ステップST4においては、素子供給装置120によって圧電素子31,32がアクチュエータ搭載部15,16の接着剤50の上に載置される。このとき接着剤50は、予めステップST3において粘度が増加した状態となっている。このため接着剤50の上に置かれた圧電素子31,32が、接着剤50の表面張力や搬送シャトル91の振動などによって、所定位置から移動してしまうことが抑制される。また圧電素子31,32が自重により下方に移動しすぎることが抑制される。
【0041】
ステップST4において第1の圧電素子31がアクチュエータ搭載部15に配置されると、第1の圧電素子31の下面の電極61と端子21aの導体21cとが、未硬化の導電材70aを介して互いに接する。また第2の圧電素子32がアクチュエータ搭載部16に配置されると、第2の圧電素子32の下面の電極と端子21eの導体とが、未硬化の導電材70aを介して互いに接する。
【0042】
(5)ステップST5(照射条件補正処理)
ステップST5においては、照射条件補正処理が実行される。当該処理においては、ステップST4でアクチュエータ搭載部15,16に配置された圧電素子31,32の高さが高さ検出器140によって検出され、その結果に基づき次回以降のステップST3における紫外線の照射条件が補正される。なお、この明細書で言う圧電素子31,32の「高さ」とは、圧電素子31,32自体の厚さではなく、例えばベースプレート11やロードビーム13の表面に対する、圧電素子31,32の第2の電極62側の表面の位置を意味する。このような高さは、例えば
図3に示すように圧電素子31,32とロードビーム13の間に介在する接着剤50の厚さ等に応じて変化し得る。
【0043】
(6)ステップST6(接着剤を仮硬化させる工程)
ステップST6においては、接着剤50を仮硬化させる。この明細書で言う「仮硬化」とは、ステップST10の加熱装置130によって接着剤50を完全に硬化(本硬化)させる前に、接着剤50の表面付近をある程度硬化させておくことを意味する。
【0044】
例えばアクチュエータ搭載部15,16に高温ガス(エアあるいは不活性ガス)を吹付けることにより、接着剤50の表面付近をある程度硬化させる。これにより圧電素子31,32の動き止めがなされる。ここで言う高温ガスとは、接着剤50を短時間で硬化させるに足る温度に加熱されたガス(例えば不活性ガス)である。ただし接着剤50の性質等の諸条件によっては、ステップST6を省略してもよい。
【0045】
(7)ステップST7(追加の接着剤を塗布する工程)
ステップST7においては、アクチュエータ搭載部15,16に追加の接着剤を供給する。例えば、圧電素子31,32の外周と開口部41,42の内面41a,42aとの間に、必要に応じて接着剤50を塗布する。接着剤50を塗布する装置は、
図8に示された接着剤供給装置100と同様でよい。ただし接着剤50の性質や工程上の諸条件によっては、ステップST7を省略することが可能である。
【0046】
(8)ステップST8(追加の紫外線を照射する工程)
ステップST8においては、ステップST7にて追加された接着剤に紫外線が照射される。このとき使用される装置は、
図9に示された光照射装置110と同様でよい。追加された接着剤に紫外線を照射することにより、接着剤の粘度が増加する。追加の接着剤により、圧電素子31,32をさらに確実に固定することができる。ただしステップST8は、工程上の諸条件によっては省略してもよい。
【0047】
(9)ステップST9(導電材70bを塗布する工程)
ステップST9においては、第1の圧電素子31の上面の電極62とベースプレート11との間に、未硬化の導電材70bが塗布される。第2の圧電素子32の上面の電極とベースプレート11との間にも、未硬化の導電材70bが塗布される。導電材70bを塗布する装置は、
図7に示された導電材供給装置80と同様でよい。
【0048】
(10)ステップST10(接着剤を本硬化させる工程)
図11は、加熱装置130を模式的に示した断面図である。ステップST10においては、複数のサスペンション10が加熱装置130に搬入される。加熱装置130は、装置本体131の内部にヒータ132等の加熱源を有し、支持体133に載置された複数のサスペンション10をバッチ処理によって同時に加熱する。ヒータ132は、接着剤50と導電材70a,70bとの双方が硬化するのに適した温度にサスペンション10を加熱する。加熱する温度は、圧電素子31,32のキュリー点以下とし、好ましくはキュリー点の2分の1以下とするとよい。
【0049】
ステップST10において、接着剤50と導電材70a,70bとが同時に加熱されることにより、接着剤50が本硬化するとともに、導電材70a,70bも硬化する。ここで言う「本硬化」とは、接着剤50の表面付近だけでなく接着剤50の内部も硬化することにより、実用上の固定強度が得られた状態を意味する。
【0050】
以上の一連の製造工程を経ることにより、接着剤50が硬化し、圧電素子31,32がアクチュエータ搭載部15,16に固定される。導電材70aが硬化することにより、圧電素子31,32と端子21a,21eとの接続状態が固定される。また導電材70bが硬化することにより、圧電素子31,32とベースプレート11との接続状態が固定される。
【0051】
未硬化の接着剤50は、ステップST3を経て粘度が増加したとしても、ある程度の流動性を有している。このためステップST4にて接着剤50の上に圧電素子31,32が置かれると、圧電素子31,32が自重により下方に移動しようとする。これにより、接着剤50の粘度が小さいほど、圧電素子31,32の高さが小さくなる。
【0052】
図12は、アクチュエータ搭載部15,16に配置された圧電素子31,32の高さとスウェイ周波数との関係を示している。
図12の横軸は圧電素子31,32の高さ[mm]を示しており、ゼロが圧電素子31,32の基準高さ(目標値)である。
図12の縦軸はスウェイ方向の共振振動数[Hz]を示している。圧電素子31,32の高さが大きすぎても、小さすぎても、スウェイ方向のピーク周波数が変動するため、サスペンション10の特性としては好ましくない。
【0053】
圧電素子31,32の高さを基準高さに近づけるには、ステップST4にて圧電素子31,32を配置する際の接着剤50の粘度を好適な値に制御することが有効である。本実施形態においては、ステップST5の照射条件補正処理にて紫外線の照射条件を補正することにより、接着剤50の粘度が制御される。
【0054】
図13は、照射条件補正処理の一例を示したフローチャートである。また、
図14は、照射条件補正処理の一例を示した模式図である。
図14においては、上述の搬送装置90によって搬送方向M1に搬送される複数のワーク10´(10A´,10B´,10C´,10D´)と、光照射装置110と、高さ検出器140と、コントローラCTとが示されている。
【0055】
ワーク10B´は高さ検出器140による検出位置にあり、ワーク10D´は光照射装置110による紫外線の照射位置にある。ワーク10A´は検出位置の下流側にあり、ワーク10C´は検出位置と照射位置の間にある。ワーク10C´とワーク10D´の間にさらに他のワーク10´が介在してもよい。
【0056】
照射条件補正処理は、高さ検出器140による検出位置に到達したワーク10´に対し、コントローラCTによって実行される。
先ず、ステップST51において、高さ検出器140による検出位置に到達したワーク10´に対する高さ検出が必要であるか否かが判定される。ここでは、当該ワーク10´に対する紫外線の照射(ステップST3)が、直前の照射条件の補正後に実行されている場合には、高さ検出が必要であると判定される(ステップST51のYes)。一方、当該ワーク10´に対する紫外線の照射(ステップST3)が、直前の照射条件の補正前に実行されている場合には、高さ検出が必要でないと判定される(ステップST51のNo)。
【0057】
図14の例に当てはめると、ワーク10A´に対する照射条件補正処理にて照射条件が補正され、かつこの補正時にワーク10B´が照射位置を通過している場合、ワーク10B´の接着剤50には当該補正前の照射条件にて光照射装置110により紫外線が照射されている。そこで、ワーク10B´は現在の照射条件を反映したものではないから、ワーク10B´に対する高さ検出は不要であると判定される。一方、ワーク10A´や、ワーク10A´より下流側のワーク10´に対する直前の照射条件補正処理にて照射条件が補正された後にワーク10B´の接着剤50に光照射装置110により紫外線が照射されている場合には、ワーク10B´に対する高さ検出が必要であると判定される。
【0058】
高さ検出が必要であると判定されると、ステップST52が実行される。ステップST52においては、検出位置にあるワーク10´(
図14の例におけるワーク10B´)の圧電素子31,32の少なくとも一方の高さhが高さ検出器140により検出される。高さ検出器140は、例えば
図10に示すようにレーザ光LBを圧電素子31,32の少なくとも一方の表面に向けて照射し、その反射光を受光することにより高さhを検出する。この方式に限られず、高さ検出器140は、圧電素子31,32の少なくとも一方の画像を撮像し、これを解析することにより高さhを検出してもよい。
【0059】
続くステップST53において、高さHとしきい値TH1,TH2とが比較される。詳しくは
図15、
図16および
図17を参照して後述するが、高さHはステップST52で検出された高さhに基づき決定される。第1のしきい値TH1は高さHの下限値を示し、第2のしきい値TH2は高さHの上限値を示す。これらしきい値TH1,TH2は、サスペンション10が所与の性能を発揮するにあたり許容できる範囲内で定められる。一例として、しきい値TH1,TH2の中間値が上述の基準高さ(目標値)である。
【0060】
高さHが第1のしきい値TH1よりも小さい場合(H<TH1)、光照射装置110の紫外線照射による接着剤50の粘度の増加が不十分である。そこで、ステップST54にて接着剤50の粘度を上げる方向へ照射条件が補正される。
【0061】
一方、高さHが第2のしきい値TH2よりも大きい場合(TH2<H)、光照射装置110の紫外線照射により接着剤50の粘度が増加し過ぎている。そこで、ステップST55にて接着剤50の粘度を下げる方向へ照射条件が補正される。
【0062】
高さHが第1のしきい値TH1以上かつ第2のしきい値TH2以下である場合(TH1≦H≦TH2)、紫外線照射後の接着剤50の粘度が好適な範囲にある。このとき、照射条件は補正されない。
【0063】
照射条件の一例としては、紫外線の照射時間[sec]、照度[mW/cm2]、および、これら照射時間と照度を掛け合わせた値である光量[mJ]が挙げられる。すなわち、ステップST54においては照射時間、照度および光量の少なくとも1つを上げ、ステップST55においては照射時間、照度および光量の少なくとも1つを下げる。ステップST54においては、高さHと基準高さとの差分が大きいほど照射時間、照度および光量の少なくとも1つの上昇幅を大きくしてもよい。また、ステップST55においては、高さHと基準高さとの差分が大きいほど照射時間、照度および光量の少なくとも1つの減少幅を大きくしてもよい。
【0064】
照射時間を変更すると、複数のワーク10´の搬送速度も調整する必要がある。そこで、ステップST54,ST55においては照度のみが補正されてもよい。この場合には、光照射装置110の照射ヘッド111に入力される電流または電圧を変更すればよいため、搬送速度の調整が不要となる。
【0065】
ステップST54,ST55の補正後にステップST3の処理対象となるワーク10´に対しては、当該補正後の照射条件にて光照射装置110が紫外線を照射する。
【0066】
ステップST53-ST55の後、ステップST56において製造装置MSを停止すべきか否かが判定される。製造装置MSを停止すべき場合の例としては、複数のワーク10´に対する直近の照射条件補正処理においてステップST54の補正が第1の規定回数にわたり連続して実行された場合、および、ステップST55の補正が第2の規定回数にわたり連続して実行された場合が挙げられる。
【0067】
図14を用いて例示すると、例えば第1の規定回数が3回であり、ワーク10A´,10B´,10C´のそれぞれに対する照射条件調整処理においていずれもステップST54の補正が実行された場合には、製造装置MSを停止すべきと判定される。また、例えば第2の規定回数が3回であり、ワーク10A´,10B´,10C´のそれぞれに対する照射条件調整処理においていずれもステップST55の補正が実行された場合にも、製造装置MSを停止すべきと判定される。第1の規定回数と第2の規定回数は必ずしも同じである必要はなく、異なる値であってもよい。
【0068】
製造装置MSを停止すべきと判定された場合(ステップST56のYes)、ステップST57において導電材供給装置80、搬送装置90、接着剤供給装置100、光照射装置110および素子供給装置120等の動作が停止される。このとき、スピーカによる音声出力、表示装置への表示、製造装置MSに通信接続された外部機器への情報出力などにより警告が発せられてもよい。
【0069】
ステップST57の後、あるいはステップST56にて製造装置MSを停止する必要がないと判定された場合(ステップST56のNo)、照射条件補正処理が終了する。
【0070】
図15は、高さHの導出に用いられる高さhの検出位置の一例を模式的に示した図である。
図15(a)に示すように、高さ検出器140は、ステップST52において圧電素子31,32のいずれか一方の中央部の高さhを検出してもよい。この場合において、高さH=高さhであってもよい。
【0071】
また、
図15(b)に示すように、高さ検出器140は、ステップST52において圧電素子31,32のいずれか一方の4隅の高さh(ha,hb,hc,hd)を検出してもよい。この場合において、高さHはこれら4隅の高さha,hb,hc,hdの平均値であってもよい。
【0072】
図16は、高さHの導出に用いられる高さhの検出位置の他の一例を模式的に示した図である。
図16(a)に示すように、高さ検出器140は、ステップST52において圧電素子31,32の双方の中央部の高さh(h1,h2)を検出してもよい。この場合において、高さHは、高さh1,h2の平均値であってもよい。
【0073】
また、
図16(b)に示すように、高さ検出器140は、ステップST52において圧電素子31,32の双方の4隅の高さh(h1a,h1b,h1c,h1d,h2a,h2b,h2c,h2d)を検出してもよい。この場合において、高さHはこれら高さh1a-h2dの平均値であってもよい。
【0074】
図17は、高さHの導出に用いられる高さhの検出位置のさらに他の一例を模式的に示した図である。高さHは、複数のワーク10´の圧電素子31,32から検出された高さhに基づき決定することもできる。
【0075】
例えば高さHは、
図17(a)のようにワーク10A´,10B´,10C´(ワーク10B´は図示を省略している)のそれぞれについて検出された圧電素子31,32の中央部の高さh1,h2の平均値であってもよい。また、高さHは、
図17(b)のようにワーク10A´,10B´,10C´のそれぞれについて検出された圧電素子31,32の4隅の高さh1a,h1b,h1c,h1d,h2a,h2b,h2c,h2dの平均値であってもよい。
【0076】
図18は、ステップST3において接着剤50に照射される紫外線の光量[mJ]と圧電素子31,32の高さ[mm]の関係の一例を示したグラフである。このグラフの元となるデータは、ステップST3において接着剤50に照射される紫外線の光量を変えて複数のサスペンション10を製造し、圧電素子31,32の異なる位置(4隅のいずれか)の高さを測定することで得た。各線種のラインは、圧電素子31,32における高さの測定位置に対応する。
【0077】
このグラフから、紫外線の光量の増加に伴い圧電素子31,32の高さも増加する傾向にあることがわかる。したがって、ステップST54において照射時間および照度の変更等により光量を上げると、圧電素子31,32の高さを増加方向に補正することができる。また、ステップST55において照射時間および照度の変更等により光量を下げると、圧電素子31,32の高さを減少方向に補正することができる。
【0078】
以上説明した本実施形態の製造方法によれば、ステップST3(紫外線の照射)によって接着剤50の粘度が大きくなる。これにより、圧電素子31,32の位置がずれてしまうことが抑制される。例えばワーク10´が搬送シャトル91によって搬送される際の振動により、圧電素子31,32が移動することが回避される。こうして圧電素子31,32が所定位置に保持された状態のもとで、ワーク10´が加熱装置130に導入される。そして加熱装置130によって接着剤50が加熱され本硬化する。このため圧電素子31,32をアクチュエータ搭載部15,16の所定位置に正確に固定することができる。
【0079】
接着剤供給装置100により塗布される接着剤50の粘度は、多数のサスペンション10を順次製造する過程で経時的に変化し得る。一般的には、当該粘度は製造開始からの時間経過とともに高まる傾向にある。そのため、製造開始当初はステップST3における紫外線照射後の接着剤50の粘度が適正な値であったとしても、時間とともに当該粘度が高まり、圧電素子31,32の高さが基準値から大きくずれる可能性がある。
【0080】
この点に関し、本実施形態ではステップST5の照射条件補正処理において圧電素子31,32の高さに基づき紫外線の照射条件を補正することで、接着剤50の粘度が適切な値に調整される。これにより、経時的な接着剤50の粘度変化が生じる場合であっても、圧電素子31,32の高さを基準値に近付けることができるとともに、スウェイ振動モードのばらつきを回避できる。
【0081】
図15(a)を用いて説明したように圧電素子31,32のいずれか一方の1点を高さ検出の対象とすれば、高さ検出に要する処理を短くすることができる。
図15(b)を用いて説明したように圧電素子31,32の複数個所(例えば4隅)を高さ検出の対象とし、これらの箇所の高さの平均値を算出すれば、圧電素子31,32の反りや異常検出による影響を抑制して照射条件補正の要否判定の精度を高めることができる。また、
図16および
図17を用いて説明したように複数の圧電素子31,32の高さの平均値を算出すれば、照射条件補正の要否判定の精度をより高めることができる。
【0082】
ステップST51のように、接着剤50に対する紫外線の照射(ステップST3)が直前の照射条件の補正前に実行されているワーク10´、換言すれば現在の照射条件とは異なる条件で紫外線が照射されたワーク10´を高さ検出の対象から除外すれば、無駄なフィードバックを抑制してより好適な照射条件を設定することができる。
【0083】
ステップST54の補正が何度も連続して実行される場合や、ステップST55の補正が何度も連続して実行される場合には、何らかの障害により照射条件の補正による粘度調整が正常に機能していない可能性がある。この点に関し、ステップST56,ST57のように同一方向への照射条件の補正が規定回数にわたり連続して実行された場合に製造装置MSを停止すれば、不良品の製造を抑制できるし、異常を作業者に知らせることもできる。
【0084】
図19は、第2の実施形態に係るサスペンション10Aの一部を示す斜視図である。このサスペンション10Aについて、第1の実施形態のサスペンション10と共通の箇所には、両者に共通の部位に共通の符号が付されている。
【0085】
第2の実施形態に係るサスペンション10Aは、第1の実施形態のサスペンション10と同様に、ロードビーム13と、フレキシャ14とを有している。フレキシャ14に形成されたタング22にスライダ23が搭載されている。
【0086】
スライダ23の両側に、それぞれアクチュエータ搭載部15A,16Aが設けられている。第1のアクチュエータ搭載部15Aに第1の圧電素子31が配置されている。
【0087】
図20は、第1のアクチュエータ搭載部15Aを示す断面図である。第2のアクチュエータ搭載部16Aは、第1のアクチュエータ搭載部15Aと実質的に同様の構成である。このため第1のアクチュエータ搭載部15Aについて以下に説明し、第2のアクチュエータ搭載部16Aの説明は省略する。
【0088】
図20に示されたように、圧電素子31の一方の端部31aは、接着剤50によってメタルベース20の第1の支持部20aに固定されている。圧電素子31の他方の端部31bは、接着剤50によってメタルベース20の第2の支持部20bに固定されている。接着剤50は電気絶縁性である。圧電素子31の第1の電極61は、導電材70aを介してアクチュエータ搭載部15Aの第1の導体21fと導通している。圧電素子31の第2の電極62は、導電材70bを介してアクチュエータ搭載部15Aの第2の導体21gと導通している。
【0089】
図21は、サスペンション10Aの製造工程の一例を示すフローチャートである。
ステップST11(接着剤を塗布する工程)において、アクチュエータ搭載部15A,16Aの支持部20a,20bに未硬化の接着剤50が塗布される。
【0090】
ステップST12(紫外線を照射する工程)において、接着剤50に紫外線を照射することにより、接着剤50の粘度を増加させる。
【0091】
ステップST13(圧電素子を載置する工程)において、アクチュエータ搭載部15A,16Aに塗布された接着剤50の上に圧電素子31,32が載置される。接着剤50の粘度がステップST12によって増加しているため、圧電素子31,32が所定の位置から移動してしまうことが抑制される。
【0092】
ステップST14(照射条件補正処理)において、
図13と同様の処理が実行される。これにより、圧電素子31,32の高さが検出され、当該高さに基づき後続するワークの接着剤に照射する紫外線の照射条件が補正される。
【0093】
ステップST15(接着剤の仮硬化)において、接着剤50を仮硬化させる。例えばアクチュエータ搭載部15A,16Aに高温ガスを吹付けることにより、接着剤50の表面付近をある程度硬化させる。これにより、圧電素子31,32の動き止めがなされる。ただし接着剤50の性質等の諸条件によっては、ステップST15を省略してもよい。
【0094】
ステップST16(導電材を塗布する工程)において、第1のアクチュエータ搭載部15Aに未硬化の導電材70a,70bが塗布される。また第2のアクチュエータ搭載部16Aに未硬化の導電材70a,70bが塗布される。
【0095】
ステップST17(本硬化工程)では、複数のサスペンション10Aが加熱装置130(
図11に示す)に収容される。これらサスペンション10Aが加熱装置130内で加熱されることにより、接着剤50と導電材70a,70bとが硬化する。この実施形態のサスペンション10Aは、圧電素子31,32を所定位置に固定できたことにより、特にヨーモードの共振特性を改善する上で効果を奏することができた。
【0096】
なお、本発明を実施するに当たって、サスペンションの具体的な形態をはじめとして、圧電素子や、接着剤、導電材などアクチュエータ搭載部を構成する各要素の具体的な態様を種々に変更して実施できることは言うまでもない。また、搬送装置、接着剤供給装置、光照射装置、素子供給装置および加熱装置なども種々の形態で実施することが可能である。
【0097】
各実施形態においては、接着剤50が紫外線に反応する光硬化型の樹脂である場合を例示した。しかしながら、接着剤50は、紫外線以外の波長域の光により硬化するものであってもよい。この場合においては、光照射装置110が当該波長域の光を放つように構成される。
【0098】
各実施形態においては、アクチュエータ搭載部15,16に配置された圧電素子31,32の高さに応じて接着剤50の粘度を調整する製造方法を例示した。他の例として、圧電素子31,32の高さに応じて、後続のワークのアクチュエータ搭載部15,16に圧電素子31,32を配置する際の圧力を調整してもよい。この場合においては、圧電素子31,32の高さが許容範囲の下限値より小さい場合に圧力を下げ、当該高さが許容範囲の上限値より大きい場合に圧力を上げるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1…ディスク装置、10,10A…ディスク装置用サスペンション、11…ベースプレート、13…ロードビーム、14…フレキシャ、15,15A…第1のアクチュエータ搭載部、16,16A…第2のアクチュエータ搭載部、21c,21f,21g…導体、31…第1の圧電素子、32…第2の圧電素子、50…接着剤、61,62…電極、70a,70b…導電材、80…導電材供給装置、90…搬送装置、91…搬送シャトル、100…接着剤供給装置、110…光照射装置、113…制御部、120…素子供給装置、130…加熱装置、140…高さ検出器、MS…製造装置、CT…コントローラ。