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  • 特許-ジャッキシリンダ 図1
  • 特許-ジャッキシリンダ 図2
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  • 特許-ジャッキシリンダ 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】ジャッキシリンダ
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/14 20060101AFI20240304BHJP
【FI】
F15B15/14 370
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020165138
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057071
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 愛斗
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-89593(JP,U)
【文献】特開2005-163917(JP,A)
【文献】特開平9-88909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械に設けられ、下端に備わる接地板を接地させて機体を支持するジャッキシリンダにおいて、
前記ジャッキシリンダは、シリンダチューブと、該シリンダチューブ内に摺動自在に挿入されたピストンロッドと、前記シリンダチューブのロッド側開口部に螺着されて前記ピストンロッドを摺動可能かつ液密に保持するロッドカバーと、前記ロッド側開口部に螺着されて前記ロッドカバーの緩み方向への移動を規制するキャップとを備えた油圧シリンダからなり、
前記ロッドカバー及び前記キャップは、ねじ締結力を与える鍔部をそれぞれ有し、ねじの向きが正逆異なるねじでそれぞれ螺着された状態で、互いの鍔部同士が係合する係合部を有していることを特徴とするジャッキシリンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャッキシリンダに関し、詳しくは、建設機械に設けられ、シリンダチューブに螺着されるロッドカバーの緩み止め構造を備えたジャッキシリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
杭打機やバックホーなどの建設機械に備わるジャッキシリンダは、一般的な構造を有する油圧シリンダ、すなわち、シリンダチューブと、該シリンダチューブ内に摺動自在に挿入されたピストンロッドと、前記シリンダチューブのロッド側開口部に螺着されてピストンロッドを摺動可能かつ液密に保持するロッドカバーとを備えた油圧シリンダが用いられている。こうした油圧シリンダには、ロッドカバーの外周部とシリンダチューブの端面外周部とにそれぞれ切欠溝を設けて、これらを螺着するときに組み込まれる座金(板材)の一部を屈折方向が相反するように切欠溝に対して折り曲げることにより、ロッドカバーとシリンダチューブとのねじの緩み止めが施されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平1-149003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、建設機械用のジャッキシリンダは、施工時の振動や掘削装置の回転トルクなどの影響を受けてロッドカバーが緩み方向に回される場合がある。この場合、緩み防止用の折り曲げ板がロッドカバーの緩み方向の回転トルクに耐えきれず、板曲げ部がロッドカバーにより押し戻されてしまい、緩み防止構造としての効果を発揮しなくなる。こうして、ロッドカバーの締付力の低下が進むと、最悪の場合、作動油の油漏れが生じてしまうおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、ねじ部の緩みに起因した油漏れを効果的に防止することが可能なロッドカバーの緩み止め構造を備えたジャッキシリンダを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のジャッキシリンダは、建設機械に設けられ、下端に備わる接地板を接地させて機体を支持するジャッキシリンダにおいて、前記ジャッキシリンダは、シリンダチューブと、該シリンダチューブ内に摺動自在に挿入されたピストンロッドと、前記シリンダチューブのロッド側開口部に螺着されて前記ピストンロッドを摺動可能かつ液密に保持するロッドカバーと、前記ロッド側開口部に螺着されて前記ロッドカバーの緩み方向への移動を規制するキャップとを備えた油圧シリンダからなり、前記ロッドカバー及び前記キャップは、ねじ締結力を与える鍔部をそれぞれ有し、ねじの向きが正逆異なるねじでそれぞれ螺着された状態で、互いの鍔部同士が係合する係合部を有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明のジャッキシリンダによれば、ロッドカバー及びキャップが、互いに正逆異なる向きのねじ締結でシリンダチューブに組み付けられるので、建設機械の振動を受けてロッドカバーに緩み方向の回転が作用しても、ロッドカバーとキャップとの互いに重なる鍔部同士が当接した係合部の相互作用(摩擦)により、ロッドカバーがそれ以上回転して緩むのを防止することができる。しかも、たとえロッドカバーの緩み方向の回転が係合部を介してキャップに伝わったとしても、キャップ自体を締め付ける方向の回転が作用するので、キャップの緩みも防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一形態例を示すジャッキシリンダが装備される杭打機の側面図である。
図2】同じくジャッキシリンダの斜視図である。
図3】同じく正面図である。
図4】同じく要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1乃至図4は、本発明を建設機械の一例である杭打機に適用した一形態例を示すものである。杭打機11は、図1に示すように、自走可能な下部走行体12の上部に、上部旋回体13が旋回可能に設けられており、上部旋回体13の前部中央には、リーダ14や該リーダ14の前面に沿って昇降するオーガ(回転駆動装置)15などの杭打用の作業装置が設けられている。また、上部旋回体13のメインフレーム上には、右側部に運転室16が、左側部にエンジンや油圧ポンプを収納したエンジン室17がそれぞれ設けられている。さらに、上部旋回体13の前後左右の4箇所に安定用のジャッキシリンダ18が設けられるとともに、上部旋回体13の後端部には機体のバランスをとるためのカウンタウエイト19が搭載されている。
【0010】
杭打機11を鋼管杭の埋設を目的として使用する場合には、4本のジャッキシリンダ18を伸長させて全て接地するとともに、リーダ14を起立させた杭打ち作業姿勢で、オーガ15から駆動力を得て地中に鋼管杭を回転圧入させる。こうした杭打ち作業は、回転する杭の推進力を受けてリーダ14に軸方向(上下方向)の圧縮と捩りとの複合的な荷重が加わり、その荷重の一部はメインフレームを伝わって各ジャッキシリンダ18に対しても作用する。
【0011】
こうした杭打機11のジャッキシリンダ18は、耐圧性能を満たすシール構造を内部に備えた油圧シリンダからなり、製造時には専用工具を用いて、例えば、シリンダチューブにロッドカバーを組み付ける作業などの標準化が図られている。しかしながら、ジャッキシリンダ18は、その使用環境下において、施工中の振動などに起因したシール性能の問題だけでなく、保守のために分解・組立作業を定期的に行っていることからも、あらゆる状況で作動油の漏れに対する適切な品質管理が行われているとは言い切れない。そこで、ジャッキシリンダ18には、ねじ部の緩みに起因した油漏れを効果的に防止することが可能なロッドカバーの緩み止め構造が備わっている。
【0012】
以下では、ジャッキシリンダ18の具体的な構造について、図2乃至図4を参照しながら説明する。図2及び図3はジャッキシリンダの部品状態を示し、図4はロッドカバーの緩み止め構造を示している。
【0013】
ジャッキシリンダ18は、上端が封止された筒状のシリンダチューブ20と、該シリンダチューブ20内に摺動自在に挿入されたピストンロッド21と、前記シリンダチューブ20のロッド側開口部20aに螺着されて前記ピストンロッド21を摺動可能かつ液密に保持するロッドカバー22と、前記ロッド側開口部20aに螺着されてロッドカバー22の緩み方向への移動を規制するキャップ23とを備えており、ピストンロッド21の下端には球面座24を介して接地板25が設けられている。また、シリンダチューブ20の外周には、油圧を保持するための安全弁(図示せず)が取り付けられる取付部26と、ジャッキシリンダ18を前記メインフレームにボルト止めするためのフランジ27とが設けられている。
【0014】
ロッドカバー22は、シリンダチューブ20の内部に挿入される筒状のカバー本体28と、ロッド側開口部20aの開口端面に当接する外鍔部29とを備えており、カバー本体28の内周面には、ピストンロッド21の外周面が摺接するダストシール30と、該ダストシール30よりも奥側に配置されてピストンロッド21との間を液密に保持するためのロッドパッキン31とが設けられている。
【0015】
また、カバー本体28の外周面には、前記ロッド側開口部20aの内周面に設けられた雌ねじ20bに螺合する雄ねじ28aと、該雄ねじ28aの奥側に配置されてシリンダチューブ20との間を液密に保持するためのOリング32とが設けられている。さらに、カバー本体28の開口端部(下端部)外周面には、ロッドカバー螺合用の工具を係合させるための切欠溝(図示せず)が複数設けられている。ここで、カバー本体28のねじ部は挿入側から見て左に回すと締まる逆ねじに形成されており、シリンダチューブ20内に挿入したロッドカバー22を該工具を用いて締め込んでいくと、ロッド側開口部20aの開口端面に外鍔部29が当接してロッドカバー22にねじ締結力(軸力)が与えられる。
【0016】
キャップ23は、前記ロッド側開口部20aが挿入される円環状のキャップ本体33と、ロッドカバー22の外鍔部29の形状に対応した段差を有し、該外鍔部29の径方向外側に位置した段部34aがロッド側開口部20aの開口端面に当接する内鍔部34とを備えている。また、キャップ本体33の内周面には、ロッド側開口部20aの外周面に設けられた雄ねじ20cに螺合する雌ねじ33aが設けられている。
【0017】
さらに、キャップ本体33の外周面には、キャップ螺合用の工具を係合させるための切欠溝(図示せず)が複数設けられている。ここで、キャップ本体33のねじ部は装着側から見て右に回すと締まる正ねじに形成されており、ロッド側開口部20aに装着したキャップ23を該工具を用いて締め込んでいくと、ロッド側開口部20aの開口端面に前記段部34aが当接してキャップ23にねじ締結力(軸力)が与えられる。このねじ締結状態では、先に締め込んでおいたロッドカバー22と、キャップ23との開口端(下端)が面一になるとともに、両鍔部29,34同士の径差、すなわち、外鍔部29の外径と内鍔部34の内径との差により設けられた領域面が略密着状態に重なり合う係合部35が形成される。
【0018】
このように、ロッドカバー22及びキャップ23が、互いに正逆異なる向きのねじ締結でシリンダチューブ20に組み付けられるので、建設機械の振動を受けてロッドカバー22に緩み方向の回転が作用しても、ロッドカバー22とキャップ23との互いに重なる鍔部29,34同士が当接した係合部35の相互作用(摩擦)により、ロッドカバー22がそれ以上回転して緩むのを防止することができる。しかも、たとえロッドカバー22の緩み方向の回転が係合部35を介してキャップ23に伝わったとしても、キャップ23自体を締め付ける方向の回転が作用するので、キャップ23の緩みも防止することができる。
【0019】
また、信頼性の高い逆ねじによる緩み止め構造と相俟って、従来構造よりも低い締付トルクでロッドカバー22を締めることができ、板曲げ加工による緩み止め措置を講じる必要もなくなることから、ジャッキシリンダ18の製造や保守に携わる者の負担低減にも資するものである。
【0020】
なお、本発明は、建設機械の一例として杭打機を例に説明したが、これに限定するものではなく、バックホーや穴掘建柱車など安定用のジャッキを備えた各種建設機械に適用することができる。また、ロッドカバーの緩み止め構造における係合部は、鍔部を油圧シリンダの軸方向に対面させる以外にも、所定の傾斜角度をもって対面させたテーパ状の係合部とするなど種々の態様が考えられる。
【符号の説明】
【0021】
11…杭打機、12…下部走行体、13…上部旋回体、14…リーダ、15…オーガ、16…運転室、17…エンジン室、18…ジャッキシリンダ、19…カウンタウエイト、20…シリンダチューブ、20a…ロッド側開口部、20b…雌ねじ、20c…雄ねじ、21…ピストンロッド、22…ロッドカバー、23…キャップ、24…球面座、25…接地板、26…取付部、27…フランジ、28…カバー本体、28a…雄ねじ、29…外鍔部、30…ダストシール、31…ロッドパッキン、32…Oリング、33…キャップ本体、33a…雌ねじ、34…内鍔部、34a…段部、35…係合部
図1
図2
図3
図4