(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 17/30 20060101AFI20240304BHJP
F16K 47/02 20060101ALI20240304BHJP
G05D 16/10 20060101ALI20240304BHJP
F16K 1/44 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
F16K17/30 A
F16K47/02 D
G05D16/10 Z
F16K1/44 B
(21)【出願番号】P 2020183868
(22)【出願日】2020-11-02
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板原 光克
(72)【発明者】
【氏名】福田 秀行
(72)【発明者】
【氏名】高崎 準
(72)【発明者】
【氏名】蔵田 恒之
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-76154(JP,A)
【文献】米国特許第7575020(US,B2)
【文献】特開昭50-150924(JP,A)
【文献】特開2015-201150(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106062651(CN,A)
【文献】特開2015-87925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 17/18-17/34
F16K 47/00-47/16
F16K 1/00- 1/54
G05D 16/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流出する第1流出口を備えている弁座と、
前記弁座に当接又は離間して前記第1流出口を開閉する弁体と、
前記弁座を挟んで前記弁体と反対側に配置されているピストンと、を備えており、
前記弁体は、流体が流出する第2流出口を備えている外弁体と、前記外弁体を挟んで前記弁座と反対側に配置されており前記外弁体に当接又は離間して前記第2流出口を開閉する内弁体と、を備えており、
前記外弁体は、前記第2流出口の周囲で前記ピストンに向けて突出して前記弁座の前記第1流出口に挿入される第1突出部を備えており、
前記内弁体は、前記ピストンに向けて突出して前記外弁体の前記第2流出口に挿入される第2突出部を備えており、
前記ピストンは、前記内弁体の前記第2突出部に向けて突出して前記第2突出部に当接又は離間する第3突出部を備えており、
前記第3突出部は、前記外弁体の前記第2流出口と向かい合う対向面を備えており、
前記対向面の面積が前記第2流出口の面積よりも大きいことを特徴とする、弁装置。
【請求項2】
請求項1に記載の弁装置であって、
前記第1突出部の先端は、前記第1流出口の前記ピストン側の端部よりも前記ピストン側へ突出している、弁装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の弁装置であって、
前記弁座は、前記第1流出口の前記ピストン側の端部から前記ピストン側に延びる傾斜面を備えている、弁装置。
【請求項4】
請求項3に記載の弁装置であって、
前記第3突出部の前記対向面の延長面が前記傾斜面と交差する、弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に弁装置が開示されている。特許文献1の弁装置は、流体が流出する第1流出口を備えている弁座と、弁座に当接又は離間して第1流出口を開閉する弁体と、弁座を挟んで弁体と反対側に配置されているピストンとを備えている。弁体は、流体が流出する第2流出口を備えている外弁体と、外弁体を挟んで弁座と反対側に配置されており外弁体に当接又は離間して第2流出口を開閉する内弁体とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の弁装置では、外弁体の第2流出口から流体が流出する際に、その流体の流れに起因して弁座よりもピストン側の領域において流体の流れに脈動が生じることがある。弁装置において脈動が生じると、例えば燃料供給先に燃料を効率的に供給することができない等の問題が生じることがある。そこで本明細書は、流体の流れに脈動が生じることを抑制することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する弁装置は、流体が流出する第1流出口を備えている弁座と、前記弁座に当接又は離間して前記第1流出口を開閉する弁体と、前記弁座を挟んで前記弁体と反対側に配置されているピストンと、を備えている。前記弁体は、流体が流出する第2流出口を備えている外弁体と、前記外弁体を挟んで前記弁座と反対側に配置されており前記外弁体に当接又は離間して前記第2流出口を開閉する内弁体と、を備えている。前記外弁体は、前記第2流出口の周囲で前記ピストンに向けて突出して前記弁座の前記第1流出口に挿入される第1突出部を備えている。前記内弁体は、前記ピストンに向けて突出して前記外弁体の前記第2流出口に挿入される第2突出部を備えている。前記ピストンは、前記内弁体の前記第2突出部に向けて突出して前記第2突出部に当接又は離間する第3突出部を備えている。前記第3突出部は、前記外弁体の前記第2流出口と向かい合う対向面を備えている。前記対向面の面積が前記第2流出口の面積よりも大きいことを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、流体が外弁体の第2流出口から流出する際に、その流体がピストンの第3突出部の対向面に当たる。これにより第2流出口から流出する流体の流れが整流される。その結果、弁座よりもピストン側の領域において流体の流れに脈動が生じることを抑制することができる。
【0007】
前記第1突出部の先端は、前記第1流出口の前記ピストン側の端部よりも前記ピストン側へ突出していてもよい。
【0008】
この構成によれば、外弁体の第2流出口から流出する流体が第1突出部に沿って流れる距離が長くなる。これにより流体の流れが整流され、脈動が生じることを抑制することができる。
【0009】
前記弁座は、前記第1流出口の前記ピストン側の端部から前記ピストン側に延びる傾斜面を備えていてもよい。
【0010】
この構成によれば、第3突出部の対向面に当たった流体が、その後に傾斜面に沿って流れる。これにより流体の流れが整流され、脈動が生じることを抑制することができる。
【0011】
前記第3突出部の前記対向面の延長面が前記傾斜面と交差してもよい。
【0012】
この構成によれば、第3突出部の対向面に当たった流体が傾斜面に当たり易くなり、流体が傾斜面に沿って流れ易くなる。これにより脈動が生じることを更に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】弁装置の閉弁状態における
図1の部分IIの拡大図である。
【
図5】弁装置の開弁状態における
図1の部分IIの拡大図である。
【
図6】変形例に係る弁装置の
図2に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施例に係る弁装置1について図面を参照して説明する。
図1に示すように、実施例に係る弁装置1は、本体2と、弁体20と、ピストン100とを備えている。本体2の内部に弁体20とピストン100が配置されている。弁装置1は、弁体20が内弁体30と外弁体40を備える二段弁構造の弁装置である。弁装置1は、液体又は気体の燃料(流体の一例)の流れを制御する装置である。弁装置1は、例えば、燃料の圧力を減圧させるための減圧弁装置である。弁装置1における燃料は、例えば自動車の燃料(例えば、液体のガソリンや気体の水素等)である。
【0015】
弁装置1の本体2は、周壁12と、弁座10と、シリンダ120とを備えている。本体2は、金属(例えば合金)から構成されている。本体2の周壁12と弁座10とシリンダ120は一体的に構成されている。周壁12は、略円筒状に構成されている。周壁12の内部には第1弁室11が設けられており、第1弁室11には弁体20が配置されている。周壁12は、第1弁室11に収容されている弁体20を囲んでいる。本体2の上流側(
図1の下側)から第1弁室11に液体又は気体の燃料が流入する。
【0016】
本体2の弁座10は、周壁12よりも下流側(
図1の上側)に位置している。周壁12の下流側の端部に弁座10が固定されている。弁座10には燃料が通過可能な第1流出口14が設けられている。第1流出口14は、弁体20側からピストン100側へ延びている。弁体20側からピストン100側を視たときに、第1流出口14は略円形状に構成されている。本体2の上流側(
図1の下側)から第1弁室11に流入した燃料が第1流出口14から調圧室90に流出する。
【0017】
調圧室90は、本体2の内部において弁座10とシリンダ120の間に設けられている。調圧室90は、弁座10よりも下流側に位置しており、第1流出口14を介して第1弁室11と連通している。調圧室90は、例えば、燃料供給路91を介して燃料供給先(不図示)に接続されている。燃料供給先は、例えば、自動車のエンジンや燃料電池スタック等である。調圧室90から流出する燃料が燃料供給路91を通じて燃料供給先に供給される。
【0018】
図2及び
図3に示すように、弁座10は、内側凸部15と、内側凸部15の上流側に設けられている第1当接面13と、内側凸部15の下流側に設けられている傾斜面17とを備えている。内側凸部15は、弁座10の径方向の内側に突出している。内側凸部15の内側に第1流出口14が形成されている。第1当接面13は、第1流出口14の周囲に位置している。第1当接面13は、略円錐面状に構成されている。第1当接面13は、第1弁室11側を向いており、第1弁室11に配置されている弁体20と向かい合っている。第1当接面13に弁体20が当接する。第1当接面13は、弁体20の軸方向に対して傾斜している。第1当接面13は、第1流出口14の第1弁室11側(弁体20側)の端部142から第1弁室11側に延びている。
【0019】
傾斜面17は、第1流出口14の周囲に位置している。傾斜面17は、略円錐面状に構成されている。傾斜面17は、調圧室90側を向いており、調圧室90に配置されているピストン100と向かい合っている。傾斜面17は、弁体20の軸方向(Z方向)に対して傾斜している。傾斜面17は、第1流出口14の調圧室90側(ピストン100側)の端部144から調圧室90側(ピストン100側)に延びている。
【0020】
次に、弁体20について説明する。弁体20は、弁座10よりも上流側に配置されている。弁体20は、軸方向(Z方向)に移動する(前進する又は後退する)ことにより弁座10の第1当接面13に対して当接又は離間する。弁体20は、弁座10に当接又は離間することによって、弁座10に設けられている第1流出口14を閉開する。弁体20が前進して弁座10に当接すると第1流出口14が閉塞される。弁体20が後退して弁座10から離間すると第1流出口14が開放される。
【0021】
弁体20は、内弁体30と、内弁体30を覆う外弁体40とを備えている。内弁体30は、弁体20の径方向において外弁体40よりも内側に配置されている。内弁体30は、外弁体40を挟んで弁座10と反対側に配置されている。内弁体30は、金属(例えば合金)から構成されている。内弁体30は、周壁32と弁部31を備えている(
図1参照)。周壁32と弁部31は一体的に構成されている。周壁32は、略円筒状に構成されており、弁体20の軸方向(Z方向)に延びている。周壁32の内部には小バネ室35が設けられており、小バネ室35には小コイルバネ50が配置されている。周壁32は、小バネ室35に収容されている小コイルバネ50を囲んでいる。小コイルバネ50は、弁体20の軸方向に沿って伸縮する。小コイルバネ50は、弁体20(内弁体30及び外弁体40)を上流側から下流側(
図1の下側から上側)に向けて押圧する。
【0022】
内弁体30の弁部31は、周壁32よりも下流側に位置している。弁部31は、外周面に設けられている第2当接面34を備えている。第2当接面34は、略円錐面状に構成されている。第2当接面34は、内弁体30の周囲に配置されている外弁体40と向かい合っている。第2当接面34が外弁体40に当接する。第2当接面34は、弁体20の軸方向(Z方向)に対して傾斜している。第2当接面34は、外弁体40を挟んで弁座10の第1当接面13と向かい合っている。
【0023】
弁部31は、ピストン100に向けて突出する突出部33を備えている。突出部33は、弁部31の先端部に設けられており、調圧室90側に突出している。突出部33は、外弁体40に設けられている第2流出口44に挿入されている。突出部33の先端37はピストン100と向かい合っている(
図2及び
図3参照)。突出部33の先端37は湾曲している。突出部33の先端37、弁座10の第1流出口14のピストン100側の端部144よりもピストン100側に突出している。突出部33の先端37は外弁体40の突出部47の先端49よりもピストン100側に突出している。
【0024】
次に、外弁体40について説明する。外弁体40は、弁体20の径方向において内弁体30よりも外側に配置されている。外弁体40は、内弁体30を囲んでいる。外弁体40は、内弁体30と弁座10との間に配置されている。外弁体40は、弁装置1の閉弁状態では、内弁体30と弁座10によって挟まれている。外弁体40は、樹脂(例えばシリコーンゴムや合成ゴム等)から構成されている。
【0025】
外弁体40は、周壁42と基部45と弁部41とを備えている(
図1参照)。周壁42と基部45と弁部41は一体的に構成されている。周壁42は、略円筒状に形成されており、弁体20の軸方向(Z方向)に延びている。周壁42の内部には第2弁室43が設けられており、第2弁室43には内弁体30が配置されている。周壁42は、第2弁室43に収容されている内弁体30を囲んでいる。本体2の上流側(
図1の下側)から第2弁室43に燃料が流入する。基部45は、周壁42の軸方向の上流側の端部に固定されている。基部45は、略円環状に形成されている。基部45は、周壁42の径方向の内側に向けて突出している。
【0026】
外弁体40の弁部41は、周壁42よりも下流側に位置している。弁部41には燃料が通過可能な第2流出口44が設けられている。第2流出口44は、弁体20の軸方向(Z方向)に延びている。弁体20側からピストン100側を視たときに、第2流出口44は略円形状に構成されている。第2流出口44は、第2弁室43から調圧室90に向けて延びている。第2流出口44を介して第2弁室43と調圧室90が連通している。第2流出口44を通じて第2弁室43から調圧室90に燃料が流出する。
【0027】
第2流出口44は、弁座10に設けられている第1流出口14よりも内側に配置されている。第2流出口44には内弁体30の突出部33が挿入される。内弁体30が外弁体40に対して軸方向(Z方向)に移動する(前進する又は後退する)と第2流出口44が開閉される。内弁体30が前進して外弁体40に当接すると第2流出口44が閉塞される。内弁体30が後退して外弁体40から離間すると第2流出口44が開放される。
【0028】
弁部41は、外周面に設けられている外当接面61と、内周面に設けられている内当接面62とを備えている。外当接面61は、第2流出口44の周囲に位置している。外当接面61は、略円錐面状に構成されている。外当接面61は、弁体20の軸方向(Z方向)に対して傾斜している。外当接面61は、外弁体40の周囲に配置されている弁座10の第1当接面13と向かい合っている。外当接面61は、外弁体40が弁座10に対して前進すると第1当接面13に当接する。
【0029】
内当接面62は、第2流出口44の周囲に位置している。内当接面62は、略円錐面状に構成されている。内当接面62は、弁体20の軸方向(Z方向)に対して傾斜している。内当接面62は、外弁体40の内側に配置されている内弁体30の第2当接面34と向かい合っている。内当接面62は、内弁体30が外弁体40に対して前進すると第2当接面34に当接する。
【0030】
弁部41は、ピストン100に向けて突出する突出部47を備えている。突出部47は、弁部41の先端部に設けられており、調圧室90側に突出している。突出部47は内弁体30の突出部33を囲んでいる。突出部47は、弁座10に設けられている第1流出口14に挿入されている。突出部47の先端49がピストン100と向かい合っている(
図2及び
図3参照)。
【0031】
次に、シリンダ120及びピストン100について説明する。
図1に示すように、弁装置1の本体2のシリンダ120は、略円筒状に構成されている。シリンダ120の内部には大バネ室106が設けられており、大バネ室106には大コイルバネ200とピストン100が配置されている。シリンダ120は、大バネ室106に収容されている大コイルバネ200とピストン100を囲んでいる。大コイルバネ200は、シリンダ120の軸方向(Z方向)に沿って伸縮する。大コイルバネ200は、大バネ室106に配置されているピストン100を弁体20側へ押圧する。
【0032】
ピストン100は、金属(例えば合金)から構成されている。ピストン100は、本体部102と、突出部103と、受圧面104とを備えている。本体部102と突出部103は一体的に構成されている。本体部102は大コイルバネ200によって弁体20側に押圧される。
【0033】
突出部103は、本体部102から弁体20に向けて突出している。突出部103は、内弁体30の突出部33に向けて突出している。
図2及び
図3に示すように、突出部103は、弁体20側の端面に設けられている対向面105を備えている。対向面105は、内弁体30の突出部33の先端37と向かい合っている。内弁体30の突出部33が対向面105に向けて延びている。また、外弁体40の第2流出口44が対向面105に向けて延びている。
【0034】
弁体20側からピストン100側を視たときに、対向面105は略円形状に構成されている。対向面105の径D105は、第1流出口14の径D14よりも小さい。対向面105の径D105は、第2流出口44の径D44よりも大きい。
図4に示すように、対向面105の面積は、第1流出口14の面積よりも小さい。対向面105の面積は、X-Y平面の面積である。第1流出口14の面積は、第1流出口14のX-Y断面の断面積である。弁体20側からピストン100側を視たときに、第1流出口14と対向面105とは重なっている。また、対向面105の面積は、第2流出口44の面積よりも大きい。第2流出口44の面積は、第2流出口44のX-Y断面の断面積である。弁体20側からピストン100側を視たときに、第2流出口44と対向面105とは重なっている。弁装置1は、第2流出口44から流出する流体が対向面105に当たるように構成されている。
【0035】
図1に示すように、ピストン100の受圧面104は、調圧室90側を向いている。受圧面104は調圧室90の燃料の圧力を受圧する。これによりピストン100が弁体20と反対側に押圧される。
【0036】
次に、上記の弁装置1の動作について説明する。最初は弁装置1が閉弁状態であるとする。即ち、弁体20が弁座10に当接しており、弁座10の第1流出口14が閉状態であるとする。また、内弁体30が外弁体40に当接しており、外弁体40の第2流出口44が閉状態であるとする。弁装置1の閉弁状態では、調圧室90における燃料の圧力が比較的高い状態に維持されている。
【0037】
(開弁動作)
弁装置1では、燃料供給先に燃料が供給されることによって調圧室90から燃料が流出すると、調圧室90の燃料の圧力が低下する。そうすると、調圧室90の燃料の圧力を受圧しているピストン100が大コイルバネ200によって弁体20側に押圧され、ピストン100が弁体20側に移動する。調圧室90の燃料の圧力が大きく低下すると、それに伴ってピストン100が弁体20側に大きく移動する。一方、調圧室90の燃料の圧力の低下量が小さい場合は、それに伴ってピストン100の弁体20側への移動量も小さくなる。
【0038】
ピストン100が弁体20側に移動していくと、ピストン100の突出部103が内弁体30の突出部33に当接して内弁体30を上流側に押圧する。これによって、内弁体30が上流側に移動する。ピストン100が弁体20側に大きく移動すると、内弁体30が上流側に大きく移動する。一方、ピストン100の弁体20側への移動量が小さい場合は、内弁体30の上流側への移動量も小さくなる。
【0039】
内弁体30が上流側へ移動していくと、
図5に示すように、内弁体30の第2当接面34が外弁体40の内当接面62から離間して第2流出口44が開状態になる。第2流出口44が開状態になると、第2弁室43から第2流出口44を介して調圧室90へ燃料が流出する。この状態が第1開弁状態である。調圧室90の燃料の圧力が比較的高い場合は第1開弁状態になる。弁装置1の第1開弁状態では、ピストン100の突出部103の対向面105が、第1流出口14のピストン100側の端部144と傾斜面17の上端部との間の高さ位置に配置される。即ち、突出部103の対向面105の延長面109が傾斜面17と交差する。弁装置1の第1開弁状態では、外弁体40の第2流出口44から流出する燃料がピストン100の突出部103の対向面105に当たり、対向面105に沿って流れる。対向面105に沿って流れる燃料は、その後に弁座10の傾斜面17に当たり、傾斜面17に沿って流れる。燃料が傾斜面17に沿って調圧室90に向かって流れる。これにより燃料の流れが整流される。
【0040】
第1開弁状態から内弁体30が更に上流側へ移動していくと、内弁体30の周壁32(
図1参照)が外弁体40の基部45に当接して基部45を上流側へ押圧する。そうすると、外弁体40が上流側へ移動する。外弁体40が上流側へ移動していくと、外弁体40の外当接面61が弁座10の第1当接面13から離間して第1流出口14が開状態になる。第1流出口14が開状態になると、第1弁室11から第1流出口14を介して調圧室90へ燃料が流出する。この状態が第2開弁状態である。調圧室90の燃料の圧力が比較的低い場合は第2開弁状態になる。
【0041】
(閉弁動作)
次に、弁装置1の閉弁動作について説明する。閉弁動作は、上記の開弁動作とは反対の動作である。上記の弁装置1では、調圧室90に燃料が流入すると、調圧室90の燃料の圧力が上昇する。そうすると、調圧室90の燃料の圧力によってピストン100が弁体20と反対側に押圧され、ピストン100が弁体20と反対側(即ち、下流側)に移動する。ピストン100が下流側に移動していくと、それに伴って内弁体30が下流側に移動する。
【0042】
内弁体30が下流側へ移動していくと、内弁体30の第2当接面34が外弁体40の内当接面62に当接して第2流出口44が閉状態になる。内弁体30が更に下流側へ移動していくと、内弁体30によって外弁体40が下流側に押圧され、内弁体30と外弁体40が下流側に移動する。内弁体30と外弁体40が下流側に移動していくと、外弁体40の外当接面61が弁座10の第1当接面13に当接して第1流出口14が閉状態になる。
【0043】
以上、実施例に係る弁装置1について説明した。上記の説明から明らかなように、弁装置1では、外弁体40が、第2流出口44の周囲でピストン100に向けて突出して弁座10の第1流出口14に挿入される突出部47を備えている。また、内弁体30が、ピストン100に向けて突出して外弁体40の第2流出口44に挿入される突出部33を備えている。また、ピストン100が、内弁体30の突出部33に向けて突出して突出部33に当接又は離間する突出部103を備えている。ピストン100の突出部103は、外弁体40の第2流出口44と向かい合う対向面105を備えている。対向面105の面積は第2流出口44の面積よりも大きい。
【0044】
この構成によれば、外弁体40の第2流出口44から流体が流出する際に、その流体がピストン100の突出部103の対向面105に当たる。これにより第2流出口44から流出する流体の流れが整流される。その結果、弁座10よりもピストン100側の領域において流体の流れに脈動が生じることを抑制することができる。
【0045】
上記の弁装置1では、外弁体40の突出部47の先端49が、第1流出口14のピストン100側の端部144よりもピストン100側へ突出している。この構成によれば、第2流出口44から流出する流体が外弁体40の突出部47に沿って流れる距離が長くなる。これにより流体の流れが整流され、脈動が生じることを抑制することができる。
【0046】
弁座10は、第1流出口14のピストン100側の端部144からピストン100側に延びる傾斜面17を備えている。この構成によれば、ピストン100の突出部103の対向面105に当たった流体が、その後に傾斜面17に沿って流れる。これにより流体の流れが整流され、脈動が生じることを抑制することができる。
【0047】
上記の弁装置1では、ピストン100の突出部103の対向面105の延長面109が弁座10の傾斜面17と交差する。この構成によれば、突出部103の対向面105に当たった流体が弁座10の傾斜面17に当たり易くなり、流体が傾斜面17に沿って流れ易くなる。これにより脈動が生じることを更に抑制することができる。
【0048】
(対応関係)
外弁体40の突出部47が第1突出部の一例である。内弁体30の突出部33が第2突出部の一例である。ピストン100の突出部103が第3突出部の一例である。
【0049】
以上、一実施例について説明したが、具体的な態様は上記実施例に限定されるものではない。以下の説明において、上記の説明における構成と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
(変形例1)
外弁体40の突出部47の形状は特に限定されない。
図6に示すように、外弁体40の突出部47は略四角形状に構成されていてもよい。また、内弁体30の突出部33の突出長さは特に限定されない。
【0051】
(変形例2)
上記の実施例では、ピストン100の突出部103の対向面105が略円形状に構成されていたが、対向面105の形状は特に限定されない。例えば、対向面105が略四角形状に構成されていてもよい(図示省略)。
【0052】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0053】
1:弁装置、10:弁座、11:第1弁室、13:第1当接面、14:第1流出口、17:傾斜面、20:弁体、30:内弁体、33:突出部、34:第2当接面、40:外弁体、43:第2弁室、44:第2流出口、47:突出部、61:外当接面、62:内当接面、90:調圧室、91:燃料供給路、100:ピストン、103:突出部、105:対向面、120:シリンダ