(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】オレフィン重合触媒
(51)【国際特許分類】
C08F 4/654 20060101AFI20240304BHJP
C08F 4/655 20060101ALI20240304BHJP
C08F 4/656 20060101ALI20240304BHJP
C08F 10/00 20060101ALI20240304BHJP
C08F 110/02 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
C08F4/654
C08F4/655
C08F4/656
C08F10/00 510
C08F110/02
(21)【出願番号】P 2020511963
(86)(22)【出願日】2018-08-23
(86)【国際出願番号】 US2018047657
(87)【国際公開番号】W WO2019046087
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-08-17
(32)【優先日】2017-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001706
【氏名又は名称】ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー-コーン
【氏名又は名称原語表記】W R GRACE & CO-CONN
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】マリン,ウラジーミル・ピー
(72)【発明者】
【氏名】ヒントレイ,アーメド
(72)【発明者】
【氏名】オライリー,ニール・ジェイ
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-215408(JP,A)
【文献】特開昭63-159408(JP,A)
【文献】特表2013-530275(JP,A)
【文献】特開2006-306949(JP,A)
【文献】特開昭59-138206(JP,A)
【文献】特開平02-069504(JP,A)
【文献】特開昭60-104102(JP,A)
【文献】特開平08-133723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/654
C08F 4/655
C08F 4/656
C08F 10/00
C08F 110/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン重合に使用する固体前触媒成分の調製方法であって、
無水塩化マグネシウムをアルコール中に溶解し、水を添加して、
無水塩化マグネシウム1モル当たり0.5mmol~100mmolの水の水含有量を有する第1の溶液を形成すること、
ここで前記無水塩化マグネシウムを80~150℃の温度で溶解する、
前記第1の溶液を、第1のチタン化合物と接触させて、前記固体前触媒成分を形成すること、
ならびに
前記固体前触媒成分を、任意に第2のチタン化合物を含有する炭化水素又はハロゲン化炭化水素溶媒で処理すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の溶液に、炭化水素、シロキサン、アルミニウムアルコキシド、又はこれらのうちの任意の2種以上の混合物を
添加することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の溶液に、炭化水素、シロキサン、及びアルミニウムアルコキシドを
添加することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記
無水塩化マグネシウムを前記アルコール中に溶解する間に、アルミニウムアルコキシドが存在しないことを条件とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記
無水塩化マグネシウムを、前記アルコールに溶解させることと同時に、又はそれに続いて、内部電子供与体
を添加することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記内部電子供与体
を添加することと、前記第1の溶液を、前記第1のチタン化合物と接触させて、前記固体前触媒成分を形成することが、同時に実行される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アルミニウムアルコキシドが、添加され、かつアルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、及びこれらのうちの任意の2種以上の混合物からなる群から選択される、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のチタン化合物が、チタンハロゲン化物、チタンアルコキシド、又はチタンアルコキシクロリドである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の溶液の前記水含有量が、
無水塩化マグネシウム1molあたり、水が5mmol~50mmolである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の溶液の前記水含有量が、
無水塩化マグネシウム1molあたり、水が25mmol~50mmolである、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法によって調製される、固体前触媒成分。
【請求項12】
オレフィンを重合又は共重合する方法であって、請求項11に記載の固体前触媒成分を、有機アルミニウム活性化剤及び前記オレフィンと接触させることを含む、方法。
【請求項13】
前記有機アルミニウム活性化剤が、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、又はこれらのうちのいずれかの2種以上の混合物である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記オレフィンが、エチレン、プロピレン、1-ブチレン、1-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンである、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
関連出願に対する相互参照
[0001]
本出願は、2017年8月29日に出願された米国特許出願第62/551,378号に対する優先権の利益を主張し、その内容が全体として本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
[0002]
本技術は、一般的に、ポリオレフィン触媒に関する。より具体的には、本技術は、MgCl2担持オレフィン重合触媒の調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]
ポリオレフィンは、単純オレフィン由来のポリマーの一分類である。ポリオレフィンを製造する既知の方法は、チーグラー-ナッタ型重合触媒の使用を伴う。これらの触媒は、遷移金属ハロゲン化物を用いてビニルモノマーを重合して、高度にアイソタクチックな立体化学的配置を有するポリマーを提供する。
【0004】
[0004]
触媒系の一種類は、上にチタン化合物及び内部電子供与体化合物が担持されている、二ハロゲン化マグネシウム(一般に、塩化マグネシウム)を有する固体前触媒成分を含む。アイソタクチックポリマー生成物に高い選択性を維持するためには、前触媒合成中に、多様な内部電子供与体化合物を添加しなければならない。重合反応の前に、チタン化合物の酸化状態が、アルミニウムアルキルの存在下で還元され、触媒を形成する。
【0005】
[0005]
チーグラー-ナッタ重合触媒は、少量の水に対しても極端に敏感であり、水は、触媒を「毒」し、ポリマー生産性を低減させ得ると、一般的に考えられている。したがって、固体前触媒成分を調製するためのほとんどの手順は、前触媒成分の調製中又は調製前に、水を排除するか、又は試薬を乾燥させるために、非常に長くなる。
【0006】
[0006]
理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、触媒調製中に水を含めることは、チーグラー-ナッタMgCl2系触媒のための助触媒として作用して、触媒活性及び触媒形態を改善することを見出した。
【発明の概要】
【0007】
[0007]
一態様では、オレフィン重合に使用する固体前触媒成分の調製方法が提供され、本方法は、塩化マグネシウムをアルコール中に溶解し、任意に水を添加して、MgCl2 1モル当たり約0.5mmolの水~MgCl2 1モル当たり約100mmolの水の水含有量を有する第1の溶液を形成することと、第1の溶液を第1のチタン化合物と接触させて、固体前触媒成分を形成することと、固体前触媒成分を、任意に第2のチタン化合物を含む炭化水素又はハロゲン化炭化水素溶媒で処理することと、を含む。
【0008】
[0008]
いくつかの実施形態では、本方法は、第1の溶液に、炭化水素、シロキサン、アルミニウムアルコキシド、又はこれらのうちの任意の2種以上の混合物を添加して、第2の溶液を形成することを更に含む。
【0009】
[0009]
いくつかの実施形態では、本方法は、第1の溶液に、炭化水素、シロキサン、及びアルミニウムアルコキシドを添加して、第2の溶液を形成することを更に含む。しかしながら、上記の実施形態のいずれも、場合によっては、塩化マグネシウムをアルコール中に溶解する間に、炭化水素が存在しないことを条件として限定され得る。いくつかの実施形態では、塩化マグネシウムをアルコール中に溶解する間に、アルキルアルミニウム化合物が存在しないことを条件とする。いくつかの実施形態では、本方法は、塩化マグネシウムを、アルコール中に溶解することと同時に、又はそれに続いて、第1の溶液を、内部電子供与体と接触させることを更に含む。いくつかの実施形態では、第1の溶液を、内部電子供与体と接触させ、第1の溶液を、第2の溶媒中の第1のチタン化合物と接触させて、固体前触媒成分を形成することが、同時に実行される。いくつかの実施形態では、本方法は、第1の溶液を、補助電子供与体と接触させることを含む。
【0010】
[0010]
いくつかの実施形態では、アルミニウムアルコキシド化合物は、添加され、アルミニウムアルコキシド化合物は、アルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、及びこれらのうちの任意の2種以上の混合物である。いくつかの実施形態では、第1のチタン化合物は、チタンハロゲン化物、チタンアルコキシド、又はチタンアルコキシクロリドである。いくつかの実施形態では、第2のチタン化合物は、チタンハロゲン化物である。いくつかの実施形態では、塩化マグネシウムは、塩化マグネシウム水和物である。本明細書における実施形態のうちのいずれかにおいて、溶解はまた、水を第1の溶液に添加することによって、第1の溶液の水分濃度を調整することも含み得る。
【0011】
[0011]
いくつかの実施形態では、塩化マグネシウム溶液の水分濃度は、約5mmol H2O/MgCl2 1モル~50mmol H2O/MgCl2 1モルであるか、又はトルエン、エチルベンゼン、ペンタン、ヘキサン、及びヘプタンからなる群から選択される。
【0012】
[0012]
いくつかの実施形態では、シロキサンが添加される。いくつかのこのような実施形態では、シロキサンは、ジメチルポリシロキサンであってもよい。いくつかの実施形態では、内部電子供与体は、カルボン酸、カルボン酸無水物、エステル、ケトン、又はこれらのうちの任意の2種以上の組み合わせである。しかしながら、多くの場合、内部電子供与体は、エーテルでなくてもよい。
【0013】
[0013]
別の態様では、固体前触媒成分は、本明細書に記載される方法のいずれかによって調製され得る。
【0014】
[0014]
別の態様では、オレフィンの重合方法又は共重合方法が提供され、本方法は、上述の固体前触媒成分のうちのいずれか1つを、有機アルミニウム活性化剤及びオレフィンと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、有機アルミニウム活性化剤は、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、又はこれらのうちの任意の2種以上の混合物である。他の実施形態では、オレフィンは、エチレン、プロピレン、1-ブチレン、1-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンである。
【0015】
[0015]
別の態様では、オレフィン重合に使用する触媒系が提供され、本系は、上記固体前触媒成分、電子供与体、及び有機アルミニウム化合物のいずれかを含む。
【0016】
[0016]
別の態様では、塩化マグネシウム、アルコール、及びチタンハロゲン化物を含む組成物が提供され、組成物は、MgCl21モル当たり約0.5mmolの水~MgCl2 1モル当たり約100mmolの水の水含有量を有する前触媒溶液である。
【0017】
[0017]
別の態様では、ポリオレフィン触媒組成物から調製されるポリオレフィン材料は、塩化マグネシウム、アルコール、及びチタンハロゲン化物を含む前触媒組成物を含み、前触媒組成物は、MgCl21モル当たり約0.5mmolの水~MgCl2 1モル当たり約100mmolの水の水含有量を有する前触媒溶液から得られ、ポリオレフィン材料は、ポリエチレンであり、ポリエチレンは、40未満のメルトフローインデックスを示す。
【0018】
[0018]
いくつかの実施形態では、第1の溶液は、塩化マグネシウムを溶解することに伴って、又はそれに続いて、内部電子供与体と接触する。いくつかの実施形態では、第1の溶液は、塩化マグネシウムを溶解することに続いて、内部電子供与体と接触する。更なる実施形態では、塩化マグネシウム溶液を、内部電子供与体と接触させ、塩化マグネシウム溶液を、第2の溶媒中の第1のチタン化合物と接触させて、固体前触媒成分を形成することが、同時に実行される。
【0019】
[0019]
いくつかの実施形態では、塩化マグネシウム溶液は、アルミニウムアルコキシド化合物を更に含む。特定の実施形態では、アルミニウムアルコキシド化合物は、アルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0020】
[0020]
いくつかの実施形態では、第1のチタン化合物は、チタンハロゲン化物、チタンアルコキシド、又はチタンアルコキシクロリドである。いくつかの実施形態では、第2のチタン化合物は、チタンハロゲン化物である。特定の実施形態では、第1及び第2のチタン化合物は、ハロゲン化チタンである。特定の実施形態では、チタンハロゲン化物は、TiCl4である。
【0021】
[0021]
固体前触媒成分の調整方法のいくつかの実施形態では、塩化マグネシウムは、塩化マグネシウムの水和物であり、塩化マグネシウム溶液の水分濃度は、塩化マグネシウム(MgCl2)の量に基づいて、約100~約20,000ppmのものである。いくつかの実施形態では、溶解は、塩化マグネシウム溶液の水分濃度を、約100~約20,000ppmの水に調整することを更に含む。特定の実施形態では、塩化マグネシウム溶液の水分濃度を調整することは、塩化マグネシウム溶液への水の添加によって影響される。特定の実施形態では、塩化マグネシウム溶液の水分濃度は、約1,000~約10,000ppmの水である。更なる実施形態では、塩化マグネシウム溶液の水分濃度は、約5,000~約10,000ppmの水である。
【0022】
[0022]
固体前触媒成分、第1の溶媒、第2の溶媒、及び第3の溶媒の調製方法のいくつかの実施形態では、独立して、炭化水素又はハロゲン化炭化水素溶媒を含む。いくつかの実施形態では、炭化水素溶媒は、芳香族又は脂肪族炭化水素である。更なる実施形態では、炭化水素溶媒は、トルエン、エチルベンゼン、ペンタン、ヘキサン、及びヘプタンからなる群から選択される。特定の実施形態では、第1の溶媒は、シロキサン溶媒を更に含む。更なる特定の実施形態では、シロキサン溶媒は、ジメチルポリシロキサンである。いくつかの実施形態では、第1の溶媒、第2の溶媒、及び第3の溶媒は、ヘキサンを含む。
【0023】
[0023]
固体前触媒成分の調製方法のいくつかの実施形態では、塩化マグネシウムを第1の溶媒に溶解して、塩化マグネシウム溶液を形成することは、約80℃~約150℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、塩化マグネシウム溶液を、第1のチタン化合物と、任意に第2の溶媒中で接触させることは、約-30℃~約50℃の温度で実施される。追加的又は代替的な実施形態では、固体前触媒成分を、第2のチタン化合物を有する又は有しない第3の溶媒で処理することは、約80℃~約150℃の温度で実施される。
【0024】
[0024]
固体前触媒成分の調製方法のいくつかの実施形態では、塩化マグネシウム溶液は、アルコールを更に含む。いくつかの実施形態では、塩化マグネシウムは、塩化マグネシウム溶液中のアルコールと錯体を形成する。
【0025】
[0025]
固体前触媒成分の調製方法のいくつかの実施形態では、内部電子供与体は、カルボン酸、カルボン酸無水物、エステル、ケトン、又はこれらのうちの任意の2種以上の組み合わせである。固体前触媒成分の調製方法のいくつかの実施形態では、内部電子供与体は、エーテルではない。
【0026】
[0026]
固体前触媒成分の調製方法のいくつかの実施形態では、本方法は、固体前触媒成分を炭化水素又はハロゲン化炭化水素を含む第4の溶媒で洗浄することを更に含む。
【0027】
[0027]
一態様では、塩化マグネシウムを第1の溶媒に溶解して、約100~約20,000ppmの水の水分濃度を有する塩化マグネシウム溶液を形成することと、塩化マグネシウム溶液を、第1のチタン化合物と、任意に第2の溶媒中で接触させて、固体前触媒成分を形成することと、固体前触媒成分を、第2のチタン化合物を有する又は有しない第3の溶媒で処理することと、を含む方法によって調製される、固体前触媒成分が本明細書で提供される。
【0028】
[0028]
一態様では、オレフィンの重合方法又は共重合方法が提供され、本方法は、上記方法による方法によって調製された洗浄済み固体前触媒成分を、有機アルミニウム活性化剤及びオレフィンと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、有機アルミニウム活性化剤は、トリエチルアルミニウムである。更なる実施形態では、オレフィンは、エチレン、プロピレン、1-ブチレン、1-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンである。
【0029】
[0029]
一態様では、オレフィン重合に使用する触媒系が提供され、本系は、上記方法による方法によって生成される固体前触媒成分、電子供与体、及び有機アルミニウム化合物を含む。いくつかの実施形態では、有機アルミニウム化合物は、アルキルアルミニウム化合物である。特定の実施形態では、アルキル-アルミニウム化合物は、トリアルキルアルミニウム化合物である。なお更なる実施形態では、トリアルキルアルミニウム化合物は、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、又はトリ-n-オクチルアルミニウムである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】[0030] 例示的な実施形態による、Mg/Ti比(重量%)に対する塩化マグネシウムの水分濃度のチャートを提供する。
【
図2A】[0031] 例示的な実施形態による、触媒活性の変化、メルトフローインデックス10の変化、メルトフローインデックス22の変化、及びメルトフローインデックス比の変化それぞれのチャートを提供する。
【
図2B】例示的な実施形態による、触媒活性の変化、メルトフローインデックス10の変化、メルトフローインデックス22の変化、及びメルトフローインデックス比の変化それぞれのチャートを提供する。
【
図2C】例示的な実施形態による、触媒活性の変化、メルトフローインデックス10の変化、メルトフローインデックス22の変化、及びメルトフローインデックス比の変化それぞれのチャートを提供する。
【
図2D】例示的な実施形態による、触媒活性の変化、メルトフローインデックス10の変化、メルトフローインデックス22の変化、及びメルトフローインデックス比の変化それぞれのチャートを提供する。
【
図3】[0032] 1,868ppmの水を含むMgCl
2溶液を使用して作製されたポリマー形態の図を提供する。
【
図4】[0033] 10,000ppmの水を含むMgCl
2溶液を使用して作製されたポリマー形態の図を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[0034]
様々な実施形態が以下に記載される。特定の実施形態が、網羅的な説明として又は本明細書で論じられる広範な態様に対する制限として意図されていないことに留意されたい。特定の実施形態と併せて記載された一態様は、その実施形態に必ずしも制限されず、任意の他の実施形態(複数可)により実践されてもよい。
【0032】
[0035]
本明細書で使用するとき、「約(about)」は、当業者によって理解され、使用される文脈に応じてある程度の幅で変化することとなる。当業者にとって明確ではない用語を使用する場合、その用語が使用される文脈が与えられると、「約」は、特定の用語のプラス又はマイナス10%までを意味することとなる。
【0033】
[0036]
用語「a」、「an」及び「the」並びに要素を記載する文脈において(特に下記請求項の文脈において)同様の言及は、本明細書に示されていない限り又は文脈によって明確に否定されない限り、単数及び複数の両方を表わすものと解釈される。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書に別途記載のない限り、その範囲内にあるそれぞれの個々の値について個別に言及する簡略な方法として機能することを単に意図し、それぞれの個々の値は、本明細書で個別に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載された全ての方法は、本明細書に別途記載のない限り又は文脈によって明確に否定されない限り、任意の好適な順番で行われてもよい。本明細書に提供されたいずれか及び全ての例、又は例示的な用語(例えば、「など」)の使用は、単に実施形態をより明らかにすることを意図し、特に明記しない限り、特許請求の範囲を限定するものではない。明細書中のいかなる用語も、いずれの特許請求の範囲にも記載されていない要素を必須として示しているとして解釈すべきではない。
【0034】
[0037]
一般的に、「置換された(substituted)」は、以下で定義されるように(例えば、アルキル基)、内部に含まれた水素原子への1つ以上の結合が、非水素原子又は非炭素原子への結合により置換されたアルキル基、アルケニル基、アリール基又はエーテル基を指す。置換基はまた、炭素(複数可)又は水素(複数可)の原子に対する1つ以上の結合が、ヘテロ原子に対する二重結合又は三重結合を含む、1つ以上の結合で置換された基を含む。したがって、置換基は、別途記載のない限り、1つ以上の置換基で置換されることとなる。いくつかの実施形態では、置換基は、1、2、3、4、5又は6個の置換基により置換されている。置換基の例としては、ハロゲン(すなわち、F、Cl、Br及びI);ヒドロキシル;アルコキシ基、アルケノキシ基、アルキノキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ヘテロシクリルオキシ基及びヘテロシクリルアルコキシ基;カルボニル(オキソ);カルボキシル;エステル;ウレタン;オキシム;ヒドロキシルアミン;アルコキシアミン;アラルコキシアミン;チオール;スルフィド;スルホキシド;スルホン;スルホニル;スルホンアミド;アミン;N-オキシド;ヒドラジン;ヒドラジド;ヒドラゾン;アジド;アミド;尿素;アミジン;グアニジン;エナミン;イミド;イソシアネート;イソチオシアネート;シアネート;チオシアネート;イミン;ニトロ基;ニトリル(すなわち、CN)などが挙げられる。
【0035】
[0038]
本明細書で使用するとき、「アルキル」基は、1~約20個の炭素原子、一般的には、1~12個の炭素原子、又はいくつかの実施形態では、1~8個の炭素原子を有する直鎖及び分岐鎖アルキル基を含む。本明細書で使用するとき、「アルキル基」は、下記に定義されたようなシクロアルキル基を含む。アルキル基は、置換されても置換されてなくてもよい。直鎖アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基及びn-オクチル基が挙げられる。分岐鎖アルキル基の例としては、イソプロピル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ネオペンチル基、及びイソペンチル基が挙げられるが、これらに限定されない。代表的な置換アルキル基は、例えば、アミノ基、チオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基並びに/又はF基、Cl基、Br基及びI基などのハロ基により1回以上置換されてもよい。本明細書で使用するとき、用語ハロアルキルは、1つ以上のハロ基を有するアルキル基である。いくつかの実施形態では、ハロアルキルは、ペルハロアルキル基を指す。
【0036】
[0039]
本明細書で使用するとき、「アリール」基又は「芳香族」基は、ヘテロ原子を含まない環状芳香族炭化水素である。アリール基は、単環式、二環式及び多環式の環系を含む。したがって、アリール基としては、フェニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオレニル基、フェナントレニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、ナフタセニル基、クリセニル基、ビフェニル基、アントラセニル基、インデニル基、インダニル基、ペンタレニル基及びナフチル基が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、アリール基は、6~14個の炭素を含み、その他では基の環部分において、6~12個又は更には6~10個の炭素原子を含む。用語「アリール基」は、縮環芳香族脂肪族環系(例えば、インダニル、テトラヒドロナフチルなど)などの縮環を含む基を含む。アリール基は、置換されても置換されてなくてもよい。
【0037】
[0040]
一態様では、オレフィン重合に使用する固体前触媒成分の調製方法が提供される。本方法は、塩化マグネシウムを第1の溶媒に溶解して、MgCl2 1モル当たり約0.5mmolの水~約100mmolの水の水含有量を有する塩化マグネシウム溶液を形成することと、塩化マグネシウム溶液を、第1のチタン化合物と、任意に第2の溶媒中で接触させて、固体前触媒成分を形成することと、固体前触媒成分を、第2のチタン化合物を有する又は有しない第3の溶媒で処理することと、を含む。一般的に言えば、塩化マグネシウム溶液中に少量の水が存在することは、触媒性能にとって重要である。水分子は、チタンハロゲン化物との反応、及び固体塩化マグネシウム/チタン化合物前触媒の沈殿後の環境を提供するアルコール溶液中のマグネシウム原子に配位する。水の量は、MgCl2の表面上の活性中心の量に概ね相当する。したがって、規定量の水をMgCl2溶液に添加することによって、触媒の活性部位の種類及び数を制御することができ、それによって触媒の性能を制御することができる。
【0038】
[0041]
一態様では、塩化マグネシウム溶液は、塩化マグネシウムを溶解することに伴って、又はそれに続いて、内部電子供与体と接触する。内部電子供与体を塩化マグネシウム溶液と接触させることは、異なる順序で実行され得る。例えば、塩化マグネシウム溶液を、内部電子供与体と接触させること、塩化マグネシウム溶液を、第2の溶媒中の第1のチタン化合物と接触させて、固体前触媒成分を形成することは、同時に実行され得る。いくつかの実施形態では、塩化マグネシウム溶液を、内部電子供与体と接触させること、塩化マグネシウム溶液を、第2の溶媒中の第1のチタン化合物と接触させて、固体前触媒成分を形成することは、順次実行され得る。したがって、第1のチタン化合物は、内部供与体の前又は後に接触し得る。更に他の実施形態では、塩化マグネシウム溶液の内部電子供与体との接触は、固体を補助内部電子供与体と接触させる前に実行されるか、又はその逆である。
【0039】
[0042]
いくつかの実施形態では、塩化マグネシウム溶液又は固体前触媒成分は、補助電子供与体と更に接触し得る。
【0040】
[0043]
固体前触媒成分の調製に用いられるチタン化合物は、例えば、式(I):Ti(OR)nX4-n(I)で表される四価チタン化合物を含み得る。
【0041】
[0044]
式(I)中、Rは、1~約20個の炭素原子を有するアルキル基などの炭化水素基を表し、Xは、ハロゲン原子を表し、0≦g≦4である。チタン化合物の具体例としては、TiCl4、TiBr4、及びTiI4などのテトラハロゲン化チタン;Ti(OCH3)Cl3、Ti(OC2H5)Cl3、Ti(O-n-C4H9)Cl3、Ti(OC2H5)Br3、及びTi(O-i-C4H9)Br3などのトリハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH3)2Cl2、Ti(OC2H5)2Cl2、Ti(O-n-C4H9)2Cl2及びTi(OC2H5)2Br2などのジハロゲン化ジアルコキシチタン;Ti(OCH3)3Cl、Ti(OC2H5)3Cl、Ti(O-n-C4H9)3Cl及びTi(OC2H5)3Brなどのモノハロゲン化トリアルコキシチタン;並びにTi(OCH3)4、Ti(OC2H5)4及びTi(O-n-C4H9)4などのテトラアルコキシチタンが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、テトラハロゲン化チタンなどのハロゲン含有チタン化合物が使用される。特定の実施形態では、第1及び第2のチタン化合物は、TiCl4などのハロゲン化チタンである。
【0042】
[0045]
塩化マグネシウムは、無水塩化マグネシウム又は塩化マグネシウム水和物であってもよい。塩化マグネシウムは、異なる水和物、MgCl2・12H2O、MgCl2・8H2O、MgCl2・6H2O、MgCl2・4H2O、及びMgCl2・2H2Oを形成することで知られている。特定の実施形態では、MgCl2・6H2Oが使用される。
【0043】
[0046]
塩化マグネシウム溶液は、塩化マグネシウム水和物を、第1の溶媒に溶解することによって形成されてもよく、約100~約20,000ppmの水の第1の水分濃度を有する。他の実施形態では、塩化マグネシウム溶液の水分濃度は、塩化マグネシウム溶液に水を添加して、約100~約20,000ppmの水の水分濃度を有する塩化マグネシウム溶液を得ることによって調整される。いくつかの実施形態では、塩化マグネシウム溶液の水分濃度は、約1,000~約10,000ppmの水である。更に他の実施形態では、塩化マグネシウム溶液の水分濃度は、約5,000~約10,000ppmの水である。
【0044】
[0047]
塩化マグネシウム溶液は、アルミニウムアルコキシド化合物を更に含み得る。特定の実施形態では、アルミニウムアルコキシド化合物は、アルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、及びこれらの混合物からなる群から選択される。特定の実施形態では、アルミニウムアルコキシド化合物は、アルミニウムイソプロポキシドである。
【0045】
[0048]
アルコール化合物は、2~12個の炭素原子を有するアルコールを含み得る。例示的なアルコールとしては、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、2-エチルヘキサノール、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
[0049]
いくつかの実施形態では、第1の溶媒、第2の溶媒、及び第3の溶媒は、独立して、炭化水素又はハロゲン化炭化水素溶媒を含む。いくつかの実施形態では、炭化水素溶媒は、芳香族又は脂肪族炭化水素である。芳香族炭化水素の例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロトルエン、及びそれらの誘導体を含むが、これらに限定されない。脂肪族炭化水素の例としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンなどの約3~約30個の炭素を有する、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルカンが挙げられる。特定の実施形態では、第1の溶媒、第2の溶媒、及び第3の溶媒は、ヘキサンを含む。
【0047】
[0050]
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、第1及び/又は第2の溶媒はまた、シロキサン溶媒も含む。シロキサン溶媒の例は、ジメチルポリシロキサンである。
【0048】
[0051]
いくつかの実施形態では、固体前触媒成分は、内部電子供与体を含む。いくつかの実施形態では、内部電子供与体は、エステル若しくはケトン、又はこれらのうちの任意の2種以上の組み合わせである。いくつかの実施形態では、内部電子供与体は、塩化マグネシウム溶液を第1のチタン化合物と接触させる前、接触させると共に、又は接触させた後に、塩化マグネシウム溶液に添加される。他の追加的又は代替的な実施形態では、内部電子供与体は、固体前触媒成分を第3の溶媒で処理する前、処理すると共に、又は処理した後に、固体前触媒成分と接触する。
【0049】
[0052]
モノエステルの具体例としては、ギ酸メチル、ギ酸ブチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸イソブチル、吉草酸エチル、ステアリン酸エチル、クロロ酢酸メチル、ジクロロ酢酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、クロトン酸エチル、シクロヘキサンカルボン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、安息香酸ベンジル、p-メトキシ安息香酸エチル、p-メチル安息香酸メチル、p-t-ブチル安息香酸エチル、ナフトエ酸エチル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、トルイル酸アミル、エチル安息香酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル、及びエトキシ安息香酸エチルなどの、2~約30個の炭素原子を有する有機酸エステルを含む。エステルの追加の例としては、エチルマロン酸ジエチル、プロピルマロン酸ジエチル、イソプロピルマロン酸ジエチル、ブチルマロン酸ジエチル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジエチル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジ-2-エチルヘキシル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジ-2-イソノニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、安息香酸ベンジル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、トルイル酸アミル、エチル安息香酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル、エトキシ安息香酸エチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジプロピル、コハク酸ジイソプロピル、コハク酸ジブチル、コハク酸ジイソブチル、コハク酸ジオクチル、及びコハク酸ジイソノニルを挙げることができるが、これらに限定されない。加えて、任意の2種以上のこのようなエステルの混合物が使用され得る。
【0050】
[0053]
いくつかの実施形態では、本方法は、エーテル内部電子供与体を含まない。
[0054]
固体前触媒成分の調製方法のいくつかの実施形態では、塩化マグネシウム溶液(本明細書では「第1の溶液」とも称される)は、アルキルシリケートと更に接触する。アルキルシリケートの例としては、テトラメチルオルトシリケート、テトラエチルオルトシリケート、テトラプロピルオルトシリケート、テトラブチルオルトシリケート、ジエチルジメチルオルトシリケートなど、並びにこれらのうちの任意の2種以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
[0055]
いくつかの実施形態では、塩化マグネシウムが第1の溶媒に溶解して、約80℃~約150℃の温度で塩化マグネシウム溶液を形成する。特定の実施形態では、塩化マグネシウムが第1の溶媒に溶解して、約110℃~約130℃の温度で塩化マグネシウム溶液を形成する。いくつかの実施形態では、塩化マグネシウムは、約-30℃~約50℃の温度で第1のチタン化合物と接触する。特定の実施形態では、塩化マグネシウムは、約20℃~約30℃の温度で第1のチタン化合物と接触する。いくつかの実施形態では、固体前触媒成分は、約80℃~約150℃の温度で、第2のチタン化合物を有する又は有しない第3の溶媒で処理される。特定の実施形態では、固体前触媒成分は、約80℃~約100℃の温度で、第2のチタン化合物を有する又は有しない第3の溶媒で処理される。
【0052】
[0056]
固体前触媒成分は、固体前触媒成分の特性を向上させるために、界面活性剤として追加の化合物を含み得る。
【0053】
[0057]
一実施形態では、固体前触媒成分は、約0.5~約6.0重量%のチタンと、約10~約25重量%のマグネシウムと、約40~約70重量%のハロゲンと、約1~約50重量%の式(I)の少なくとも1つの電子供与体化合物と、任意に、約0~約15重量%の不活性希釈剤と、を含む。別の実施形態では、固体前触媒成分は、約2~約25重量%の内部電子供与体を含む。固体前触媒成分は、いくつかの実施形態では、約2重量%~約25重量%のチタンアルコキシドを含み得る。
【0054】
[0058]
固体前触媒成分の調製に使用される成分の量は、調製の方法に応じて変化し得る。一実施形態では、固体前触媒成分の作製に使用される塩化マグネシウム1モル当たり、約0.01~約5モルの内部電子供与体及び約0.01~約500モルのチタン化合物が使用される。別の実施形態では、固体前触媒成分の作製に使用されるマグネシウム化合物1モル当たり、約0.05~約300モルのチタン化合物が使用される。
【0055】
[0059]
一実施形態では、固体前触媒成分において、ハロゲン/チタンの原子比は、約4~約200であり、電子供与体/チタンのモル比は、約0.01~約10であり、マグネシウム/チタンの原子比は、約1~約100である。別の実施形態では、固体前触媒成分において、ハロゲン/チタンの原子比は、約5~約100であり、電子供与体/チタンのモル比は、約0.2~約6であり、マグネシウム/チタンの原子比は、約2~約50である。
【0056】
[0060]
固体前触媒成分は、例えば、ケイ素化合物、アルミニウム化合物などの無機化合物又は有機化合物で希釈された後に用いられ得る。
【0057】
[0061]
触媒系は、固体前触媒成分に加えて、少なくとも1種の有機アルミニウム化合物を含み得る。分子内に少なくとも1つのアルミニウム-炭素結合を有する化合物は、有機アルミニウム化合物として用いてもよい。有機アルミニウム化合物の例としては、下記化学式(II):AlRnX3-n(II)の化合物が挙げられる。式(II)において、Rは、独立して、通常1~約20個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、Xは、ハロゲン原子を表し、nは、0より大きく、最大3で、3を含む。
【0058】
[0062]
式(II)によって表される有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム及びトリヘキシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;トリイソプレニルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウム;塩化ジエチルアルミニウム、塩化ジブチルアルミニウム及び臭化ジエチルアルミニウムなどのハロゲン化ジアルキルアルミニウム;セスキ塩化エチルアルミニウム、セスキ塩化ブチルアルミニウム及びセスキ臭化エチルアルミニウムなどのセスキハロゲン化アルキルアルミニウム;二塩化エチルアルミニウム、二塩化プロピルアルミニウム及び二臭化ブチルアルミニウムなどの二ハロゲン化アルキルアルミニウム;水素化ジエチルアルミニウム及び水素化ジブチルアルミニウムなどの水素化ジアルキルアルミニウム;並びに二水素化エチルアルミニウム及び二水素化プロピルアルミニウムなどの、その他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
[0063]
有機アルミニウム化合物は、触媒系において、(固体前触媒成分からの)アルミニウムの、チタンに対するモル比が約5~約1,000である量で使用される。別の実施形態では、触媒系内のアルミニウムのチタンに対するモル比は、約10~約700である。更に別の実施形態では、触媒系内のアルミニウムのチタンに対するモル比は、約25~約400である。
【0060】
[0064]
触媒系は、固体前触媒成分に加えて、少なくとも1種の有機ケイ素化合物を含み得る。この有機ケイ素化合物は、場合により追加の電子供与体と称する。追加の電子供与体としての有機ケイ素化合物は、内部又は外部電子供与体であってもよい。有機ケイ素化合物は、少なくとも1つの炭化水素基を有するケイ素を含む。炭化水素基の一般的な例としては、アルキル基、シクロアルキル基、(シクロアルキル)メチレン基、アルケン基及び芳香族基などが挙げられる。
【0061】
[0065]
有機ケイ素化合物は、オレフィン重合用のチーグラー-ナッタ型触媒系の一成分として機能する追加の電子供与体として用いられるとき、制御可能な分子量分布及び制御可能な結晶化度を有し、その一方で触媒活性に関して高性能を保持するポリマー(少なくともその一部がポリオレフィンである)を得る能力に寄与する。
【0062】
[0066]
有機ケイ素化合物は、触媒系において、有機アルミニウム化合物の、有機ケイ素化合物に対するモル比が約1~約200となる量で用いられる。いくつかの実施形態では、有機アルミニウム化合物の、有機ケイ素化合物に対するモル比は、約1~約100である。いくつかの実施形態では、有機アルミニウム化合物の、有機ケイ素化合物に対するモル比は、約2~約90である。いくつかの実施形態では、有機アルミニウム化合物の、有機ケイ素化合物に対するモル比は、約5~約70である。いくつかの実施形態では、有機アルミニウム化合物の、有機ケイ素化合物に対するモル比は、約1~約60である。更に別の実施形態では、有機アルミニウム化合物の、有機ケイ素化合物に対するモル比は、約7~約35である。
【0063】
[0067]
一実施形態では、有機ケイ素化合物は、化学式(III):RnSi(OR’)4-n(III)によって表され、式中、それぞれのR及びR’は、独立して、炭化水素基を表し、nは、0~4未満である。
【0064】
[0068]
式(III)の有機ケイ素化合物の具体例としては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジエトキシシラン、t-アミルメチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビス-o-トリジメトキシシラン(bis-o-tolydimethoxysilane)、ビス-m-トリジメトキシシラン(bis-m-tolydimethoxysilane)、ビス-p-トリジメトキシシラン(bis-p-tolydimethoxysilane)、ビス-p-トリジエトキシシラン(bis-p-tolydiethoxysilane)、ビスエチルフェニルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、t-ブチルトリエトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、iso-ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、2-ノルボルナントリメトキシシラン、2-ノルボルナントリエトキシシラン、2-ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ケイ酸エチル、ケイ酸ブチル、トリメチルフェノキシシラン及びメチルトリアリルオキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
[0069]
別の実施形態では、有機ケイ素化合物は、化学式(IV):SiRR’m(OR’’)3-m(IV)によって表される。式(IV)において、mは、0~約2などの0~3未満であり、Rは、独立して、環状炭化水素基又は置換環状炭化水素基を表す。Rの具体例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、2-メチルシクロペンチル、3-メチルシクロペンチル、2-エチルシクロペンチル、3-プロピルシクロペンチル、3-イソプロピルシクロペンチル、3-ブチルシクロペンチル、3-第三級ブチルシクロペンチル、2,2-ジメチルシクロペンチル、2,3-ジメチルシクロペンチル、2,5-ジメチルシクロペンチル、2,2,5-トリメチルシクロペンチル、2,3,4,5-テトラメチルシクロペンチル、2,2,5,5-テトラメチルシクロペンチル、1-シクロペンチルプロピル、1-メチル-1-シクロペンチルエチル、シクロペンテニル、2-シクロペンテニル、3-シクロペンテニル、2-メチル-1-シクロペンテニル、2-メチル-3-シクロペンテニル、3-メチル-3-シクロペンテニル、2-エチル-3-シクロペンテニル、2,2-ジメチル-3-シクロペンテニル、2,5-ジメチル-3-シクロペンテニル、2,3,4,5-テトラメチル-3-シクロペンテニル、2,2,5,5-テトラメチル-3-シクロペンテニル、1,3-シクロペンタジエニル、2,4-シクロペンタジエニル、1,4-シクロペンタジエニル、2-メチル-1,3-シクロペンタジエニル、2-メチル-2,4-シクロペンタジエニル、3-メチル-2,4-シクロペンタジエニル、2-エチル-2,4-シクロペンタジエニル、2,2-ジメチル-2,4-シクロペンタジエニル、2,3-ジメチル-2,4-シクロペンタジエニル、2,5-ジメチル-2,4-シクロペンタジエニル、2,3,4,5-テトラメチル-2,4-シクロペンタジエニル、インデニル、2-メチルインデニル、2-エチルインデニル、2-インデニル、1-メチル-2-インデニル、1,3-ジメチル-2-インデニル、インダニル、2-メチルインダニル、2-インダニル、1,3-ジメチル-2-インダニル、4,5,6,7-テトラヒドロインデニル、4,5,6,7-テトラヒドロ-2-インデニル、4,5,6,7-テトラヒドロ-1-メチル-2-インデニル、4,5,6,7-テトラヒドロ-1,3-ジメチル-2-インデニル、フルオレニル基、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、エチルシクロヘキシル、プロピルシクロヘキシル、イソプロピルシクロヘキシル、n-ブチルシクロヘキシル、第三級ブチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘキシル及びトリメチルシクロヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
[0070]
式(IV)において、R′及びR″は、同一であるか異なっており、それぞれが、炭化水素を表す。R’及びR’’の例は、3個以上の炭素原子を有する、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基である。更に、R及びR’は、アルキル基などによって架橋されてもよい。有機ケイ素化合物の一般的な例としては、Rがシクロペンチル基であり、R’がメチル基又はシクロペンチル基などのアルキル基であり、R’’がアルキル基、特にメチル基又はエチル基である、式(IV)の有機ケイ素化合物が挙げられる。
【0067】
[0071]
式(IV)の有機ケイ素化合物の具体的な例としては、シクロプロピルトリメトキシシラン、シクロブチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、2-メチルシクロペンチルトリメトキシシラン、2,3-ジメチルシクロペンチルトリメトキシシラン、2,5-ジメチルシクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロペンテニルトリメトキシシラン、3-シクロペンテニルトリメトキシシラン、2,4-シクロペンタジエニルトリメトキシシラン、インデニルトリメトキシシラン、及びフルオレニルトリメトキシシランなどのトリアルコキシシラン;ジシクロペンチルジメトキシシラン、ビス(2-メチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ビス(3-第三級ブチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ビス(2,3-ジメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ビス(2,5-ジメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、ジシクロブチルジエトキシシラン、シクロプロピルシクロブチルジエトキシシラン、ジシクロペンテニルジメトキシシラン、ジ(3-シクロペンテニル)ジメトキシシラン、ビス(2,5-ジメチル-3-シクロペンテニル)ジメトキシシラン、ジ-2,4-シクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、ビス(2,5-ジメチル-2,4-シクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、ビス(1-メチル-1-シクロペンチルエチル)ジメトキシシラン、シクロペンチルシクロペンテニルジメトキシシラン、シクロペンチルシクロペンタジエニルジメトキシシラン、ジインデニルジメトキシシラン、ビス(1,3-ジメチル-2-インデニル)ジメトキシシラン、シクロペンタジエニルインデニルジメトキシシラン、ジフルオレニルジメトキシシラン、シクロペンチルフルオレニルジメトキシシラン及びインデニルフルオレニルジメトキシシランなどのジアルコキシシラン;トリシクロペンチルメトキシシラン、トリシクロペンテニルメトキシシラン、トリシクロペンタジエニルメトキシシラン、トリシクロペンチルエトキシシラン、ジシクロペンチルメチルメトキシシラン、ジシクロペンチルエチルメトキシシラン、ジシクロペンチルメチルエトキシシラン、シクロペンチルジメチルメトキシシラン、シクロペンチルジエチルメトキシシラン、シクロペンチルジメチルエトキシシラン、ビス(2,5-ジメチルシクロペンチル)シクロペンチルメトキシシラン、ジシクロペンチルシクロペンテニルメトキシシラン、ジシクロペンチルシクロペンテナジエニルメトキシシラン(dicyclopentylcyclopentenadienylmethoxysilane)及びジインデニルシクロペンチルメトキシシランなどのモノアルコキシシラン;並びにエチレンビス-シクロペンチルジメトキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
[0072]
オレフィンの重合は、上述した触媒系の存在下で実行してもよい。一般的に、オレフィンは、所望のポリマー生成物を形成するために、好適な条件下で上述の触媒系に接触させられる。一実施形態では、本重合の前に、後述する予備重合が実施される。別の実施形態では、重合は、予備重合なしで実施される。更に別の実施形態では、コポリマーの形成は、少なくとも2つの重合ゾーンを用いて実施される。
【0069】
[0073]
予備重合では、固体前触媒成分は、有機アルミニウム化合物の少なくとも一部分と組み合わせて通常用いられる。これは、追加の電子供与体化合物の一部又は全体の存在下で実施されてもよい。予備重合で用いられる触媒系の濃度は、本重合の反応系における濃度よりもはるかに高くてもよい。
【0070】
[0074]
予備重合では、予備重合における固体前触媒成分の濃度は、後述する不活性炭化水素媒体1リットル当たりのチタン原子の数として計算され、通常、約0.01~約200ミリモル、好ましくは、約0.05~約100ミリモルである。一実施形態では、予備重合は、オレフィン及び上記触媒系成分を不活性炭化水素媒体に添加し、穏和な条件下でオレフィンを重合することにより実施される。
【0071】
[0075]
不活性炭化水素媒体の具体例としては、鉱油、石油ゼリー、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン及びケロシンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン及びメチルシクロペンタンなどの脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素、並びにそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。液体オレフィンは、不活性炭化水素媒体の一部又は全部の代わりに用いられてもよい。
【0072】
[0076]
予備重合に用いられるオレフィンは、本重合に用いられるオレフィンと同一であってもよいか又は異なっていてもよい。
【0073】
[0077]
予備重合の反応温度は、生じた予備ポリマーを不活性炭化水素媒体に実質的に溶解させないために十分な温度である。一実施形態では、温度は、約-20℃~約100℃である。別の実施形態では、温度は、約-10℃~約80℃である。更に別の実施形態では、温度は、約0℃~約40℃である。
【0074】
[0078]
任意に、水素などの分子量制御剤は、予備重合において用いられてもよい。分子量制御剤は、予備重合により得られるポリマーが、デカリン中135℃で測定した固有粘度が少なくとも約0.2dl/g、好ましくは、約0.5~10dl/gとなるような量で用いられる。
【0075】
[0079]
一実施形態では、予備重合は、望ましくは、触媒系の固体触媒成分1g当たり、約0.1g~約1,000gのポリマーが形成されるように実行される。別の実施形態では、予備重合は、望ましくは、固体触媒成分1g当たり、約0.3g~約500gのポリマーが形成されるように実行される。予備重合によって形成されるポリマーの量が多すぎると、本重合におけるオレフィンポリマーの生成効率が下がる場合があり、得られたオレフィンポリマーをフィルム又は他の物品に成形したとき、成形品にフィッシュアイが発生しやすくなる。予備重合は、バッチ式で又は連続的に実施されてもよい。
【0076】
[0080]
予備重合が上述のように実施された後、又は予備重合をせずに、固体前触媒成分、有機アルミニウム化合物、及び有機ケイ素化合物(外部の電子供与体化合物)から形成された、上述したオレフィン重合触媒系の存在下で、オレフィンの主重合が実施される。
【0077】
[0081]
本重合で用いられてもよいオレフィンの例は、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ペンテン、1-オクテン、1-ヘキセン、1-オクテン、3-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-デセン、1-テトラデセン、1-エイコセン及びビニルシクロヘキサンなどの、2~20個の炭素原子を有するα-オレフィンである。このプロセスでは、これらのα-オレフィンは、単独で又は任意の組み合わせで用いられてもよい。いくつかの実施形態では、オレフィンは、エチレン、プロピレン又はこれらの混合物であってもよい。いくつかの実施形態では、オレフィンは、エチレンであってもよい。いくつかの実施形態では、オレフィンは、プロピレンであってもよい。いくつかの実施形態では、オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ペンテン、1-オクテン、1-ヘキセン、1-オクテン、3-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-デセン、1-テトラデセン、1-エイコセン、及びビニルシクロヘキサンのうちの1種以上とエチレンとの混合物であってもよい。
【0078】
[0082]
一実施形態では、プロピレン若しくは1-ブテンは、単独重合されるか、又は、主成分としてプロピレン若しくは1-ブテンを含む混合オレフィンが共重合される。混合オレフィンを用いるとき、主成分としてのプロピレン又は1-ブテンの割合は、通常、少なくとも約50モル%、好ましくは、少なくとも約70モル%である。
【0079】
[0083]
予備重合を実施することにより、本重合における触媒系は、活性度について調整されてもよい。この調整により、高いかさ密度を有する粉末状ポリマーが生じやすくなる。更に、予備重合が実施されたとき、生じるポリマーの粒子形状は、前触媒粒子形状の複製であり、スラリー重合の場合には、スラリーは、優れた特性を得るが、気相重合の場合には、ポリマーシード床が、優れた特性を得る。更に、これらの実施形態では、少なくとも3個の炭素原子を有するα-オレフィンを重合することにより、高い立体規則性指数を有するポリマーは、高い触媒効率で生成してもよい。そのため、プロピレンコポリマーを生成するとき、生じるコポリマー粉末又はコポリマーの扱いが容易になる。
【0080】
[0084]
これらのオレフィンの単独重合では、共役ジエン又は非共役ジエンなどの多価不飽和化合物は、コモノマーとして用いてもよい。コモノマーの例としては、スチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、アクリルアミド、α-メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、フタル酸ジアリル、アルキルメタクリレート及びアルキルアクリレートが挙げられる。一実施形態では、コモノマーは、熱可塑性モノマー及びエラストマー性モノマーを含む。
【0081】
[0085]
オレフィンの本重合は、通常、気相又は液相で実施される。一実施形態では、重合(主重合)は、重合ゾーンの体積1リットル当たりのTi原子として計算される約0.001~約0.75ミリモルの量で固体前触媒成分を含み、固体前触媒成分中のチタン原子1モル当たり約1~約2,000モルの量で有機アルミニウム化合物を含み、有機アルミニウム化合物中の金属原子1モル当たりの有機ケイ素化合物中のSi原子として計算される、約0.001~約10モルの量で有機ケイ素化合物を含む触媒系を用いる。別の実施形態では、重合は、重合ゾーンの体積1リットル当たりのTi原子として計算される0.005~約0.5ミリモルの量で固体前触媒成分を含み、固体前触媒成分中のチタン原子1モル当たり約5~約500モルの量で有機アルミニウム化合物を含み、有機アルミニウム化合物中の金属原子1モル当たりの有機ケイ素化合物中のSi原子として計算される約0.01~約2モルの量で有機ケイ素化合物を含む触媒系を用いる。更に別の実施形態では、重合は、有機アルミニウム化合物中の金属原子1モル当たりの有機ケイ素化合物中のSi原子として計算される約0.005~約1モルの量の安息香酸アルキル誘導体を含む触媒系を用いる。
【0082】
[0086]
有機アルミニウム化合物及び追加の電子供与体化合物が予備重合で部分的に用いられるとき、予備重合に供される触媒系は、触媒系成分の残りと共に用いられる。予備重合に供される触媒系は、予備重合生成物を含んでもよい。
【0083】
[0087]
重合時に水素を使用すると、生じるポリマーの分子量の制御を促進かつ寄与し、得られたポリマーは、高いメルトフローレートを有してもよい。この場合には、結果得られるポリマーの立体規則性指数及び触媒系の活性度は、一般的に増加する。
【0084】
[0088]
一実施形態では、重合温度は、約20℃~約200℃である。別の実施形態では、重合温度は、約50℃~約180℃である。一実施形態では、重合圧力は、一般的には、大気圧~約100kg/cm2である。別の実施形態では、重合圧力は、一般的には、約2kg/cm2~約50kg/cm2である。本重合は、バッチ式で、半連続的に又は連続的に実施されてもよい。また、重合は、異なる反応条件下で2つ以上の段階で実施してもよい。
【0085】
[0089]
このようにして得られたオレフィンポリマーは、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー又はインパクトコポリマーであってもよい。インパクトコポリマーは、ポリオレフィンホモポリマー及びポリオレフィンゴムの均質混合物を含む。ポリオレフィンゴムの例としては、エチレンプロピレンメチレンコポリマーゴム(ethylene propylene methylene copolymer rubber、EPM)及びエチレンプロピレンジエンメチレンターポリマーゴム(ethylene propylene diene methylene terpolymer rubber、EPDM)などの、エチレンプロピレンゴム(ethylene propylene rubber、EPR)が挙げられる。
【0086】
[0090]
触媒系を用いて得られたオレフィンポリマーは、非常に少量の非晶質ポリマー成分を有し、そのため、非常に少量の炭化水素可溶性成分を有する。したがって、得られたポリマーから成形されたフィルムは、低い表面粘着性を有する。
【0087】
[0091]
重合プロセスによって得られたポリオレフィンは、粒径分布、粒径及びかさ密度において優れており、得られたコポリオレフィンは、狭い組成分布を有する。インパクトコポリマーでは、優れた流動性、耐低温性及び剛性と弾性との間の所望のバランスが得られてもよい。
【0088】
[0092]
一実施形態では、プロピレンと、2個又は約4個~約20個の炭素原子を有するα-オレフィンとが、上述の触媒系の存在下で共重合される。触媒系は、上述の予備重合に供される触媒系であってもよい。別の実施形態では、プロピレン及びエチレンゴムは、直列に連結された2つ以上の反応器内で形成されて、インパクトポリマーを形成する。
【0089】
[0093]
2個の炭素原子を有するα-オレフィンは、エチレンであり、約4~約20個の炭素原子を有するα-オレフィンの例は、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-デセン、ビニルシクロヘキサン、1-テトラデセンなどである。
【0090】
[0094]
本重合では、プロピレンは、このようなα-オレフィンのうちの2種類以上と共重合されてもよい。例えば、プロピレンを、エチレン及び1-ブテンと共重合させることが可能である。一実施形態では、プロピレンは、エチレン、1-ブテン又はエチレン及び1-ブテンと共重合される。
【0091】
[0095]
プロピレンと別のα-オレフィンとのブロック共重合は、2段階で実施されてもよい。第1の段階の重合は、プロピレンの単独重合又はプロピレンの他のα-オレフィンとの共重合であってもよい。一実施形態では、第1の段階で重合されるモノマーの量は、約50~約95重量%である。別の実施形態では、第1の段階で重合されるモノマーの量は、約60~約90重量%である。この第1の段階の重合は、必要に応じて、同一であるか又は異なる重合条件下で2つ以上の段階で実行されてもよい。
【0092】
[0096]
一実施形態では、第2の段階の重合は、望ましくは、プロピレンの他のα-オレフィン(複数可)に対するモル比が約10/90~約90/10となるように、実施される。別の実施形態では、第2の段階の重合は、望ましくは、プロピレンの他のα-オレフィン(複数可)に対するモル比が約20/80~約80/20となるように実施される。更に別の実施形態では、第2の段階の重合は、望ましくは、プロピレンの他のα-オレフィン(複数可)に対するモル比が約30/70~約70/30となるように実施される。別のα-オレフィンの結晶性ポリマー又はコポリマーを生成することを、第2の段階の重合において提供してもよい。
【0093】
[0097]
このようにして得られるプロピレンコポリマーは、ランダムコポリマー又は上述のブロックコポリマーであってもよい。このプロピレンコポリマーは、一般的には、2個又は約4~約20個の炭素原子を有するα-オレフィンに由来する約7~約50モル%の単位を含む。一実施形態では、プロピレンランダムコポリマーは、2個又は約4~約20個の炭素原子を有するα-オレフィンに由来する約7~約20モル%の単位を含む。別の実施形態では、プロピレンブロックコポリマーは、2個又は4~20個の炭素原子を有するα-オレフィンに由来する約10~約50モル%のユニットを含む。
【0094】
[0098]
別の実施形態では、触媒系で作製されたコポリマーは、約50~約99重量%のポリ-α-オレフィン及び約1~約50重量%のコモノマー(例えば、熱可塑性モノマー又はエラストマー性モノマー)を含む。別の実施形態では、触媒系で作製されたコポリマーは、約75%~約98重量%のポリ-α-オレフィン及び約2%~約25重量%のコモノマーを含む。
【0095】
[0099]
使用できる多価不飽和化合物について言及がない場合、重合の方法、触媒系の量及び重合条件は、上述の実施形態と同じ説明を適用できることが理解されるべきである。
【0096】
[0100]
この触媒/方法によれば、いくつかの場合では、約0.5%~約10%のキシレン可溶性(xylene soluble、XS)を有するポリ-α-オレフィンの生成をもたらすことができる。別の実施形態では、約1.5%~約8%のキシレン可溶性(XS)を有するポリ-α-オレフィンが生成される。別の実施形態では、約2.5%~約5%のキシレン可溶性(XS)を有するポリ-α-オレフィンが生成される。XSは、キシレンに溶解する固体ポリマーのパーセントを指す。低XS%値は、概して、高アイソタクチックポリマー(すなわち、結晶性がより高い)に対応するが、高XS%値は、概して、低アイソタクチックポリマーに対応する。
【0097】
[0101]
本発明は、これまで大略的に説明されているが、図示によって提供され、本発明の限定を意図していない、以下の実施例を参照することにより、より容易に理解されるであろう。
【実施例】
【0098】
[0102]
実施例1:MgCl2(12.0g、メッシュ80、5667ppmのH2O)、0.432gのAl(i-プロポキシド)3、ヘキサン(100g)、ジメチルポリシロキサン(1.95g)、及び2-エチルヘキサノール(50g)を、120℃で6.0時間、加熱撹拌した。溶液を-25℃に冷却し、TiCl4(347g)を溶液に添加した。混合物を20℃に加熱し、更にジメチルポリシロキサン(1.76g)を添加した。混合物を90℃に更に加熱し、90℃で1時間保持した。液体を濾過し、残りの固体を、95℃で1時間、TiCl4/ヘキサン(152gのTiCl4及び60gのヘキサン)で処理し、続いてヘキサンで洗浄した。
【0099】
[0103]
エチレン重合を1ガロンの反応器で行った。反応器を、窒素下、100℃で1時間にてパージした。室温で、ヘプタン中25重量%のトリエチルアルミニウム(TEAL)0.6mlを、反応器内に添加した。次いで、1500mlのヘキサンを添加し、上記で調製した触媒10mgを反応器内に添加した。反応器をH2を用いて60.0psigで加圧し、次いで、エチレンを116psigまで充填した。反応器を加熱して、80℃で2時間保持した。この保持の終わりに、反応器内を大気圧にし、ポリマーを回収した。
【0100】
[0104]
実施例2:触媒を、1868ppmのH2Oを含むMgCl2を前触媒合成に添加した以外は、実施例1と同じ条件下で合成した。エチレン重合を、実施例1と同じ条件下で実施した。
【0101】
[0105]
実施例3:触媒を、TiCl4を触媒合成に添加する前に、H2O(50mg)を溶液に添加した以外は、実施例1と同じ条件下で合成した。エチレン重合を、実施例1と同じ条件下で実施した。
【0102】
[0106]
実施例4:触媒を、触媒合成にヘキサンを使用した以外は、実施例3と同じ条件下で合成した。エチレン重合を、実施例1と同じ条件下で実施した。
【0103】
[0107]
実施例5:触媒を、触媒合成にTiCl4を添加する前に、H2O(30mg)を溶液に添加した以外は、実施例4と同じ条件下で合成した。エチレン重合を、実施例1と同じ条件下で実施した。
【0104】
[0108]
実施例1~5の触媒の特性評価データを表1に示す。実施例1~5のポリマーの特性評価データを表2に示す。D
10、D
50、及びD
90は、所与の試料の粒径の範囲を示す。
図1、2A、2B、2C、及び2Dは、Mg/Ti比(重量%)に対する調製された触媒のチャートを示す。
【0105】
[0109]
【0106】
【0107】
[0110]
【0108】
【0109】
[0111]
表1及び2のデータは、本技術で提供される固体前触媒成分が、高い触媒効率、良好なポリマー特性を達成し得ることを示す。
【0110】
[0112]
図1及び2は、触媒組成物が、MgCl
2溶液中の水の量によって変化することを示す。Mg/Ti比は、水分濃度の増加と共に増加し、触媒の重合挙動に影響を与え、特に、触媒活性を増加させ、MFIを変化させる。また、第2のモノマー(例えばブテン-1)の組み込みにも影響を及ぼす。
【0111】
[0113]
図3及び
図4に見られるように、本発明の触媒によって調製されたポリマーのポリマー形態は、MgCl
2溶液中の水分濃度の増加によって改善される。
図3は、MgCl
2 1モル当たり10.2mmolの水で調製された触媒で生成されたポリマー形態を表す。図は、可視の副粒子構造を有しない凝集ポリマー粒子を示す。
図4は、MgCl
2 1モル当たり54.4mmolの水を使用した触媒で生成されたポリマー粒子を示す。非常に組織化された副粒子構造を有する単一粒子が示される。ポリマー形態は、触媒形態の複製であるため、触媒形態における同じ傾向が予期される。触媒及びポリマー形態は、任意の市販のポリマーの製造プロセスにおいて考慮するための主要な要因である。いくつかの重合プロセスは、ポリマーの良好な流動性、又は1つの反応器ユニットから別の反応器ユニットへのポリマーの移動を必要とすることが知られている。このような特性は、
図4のようなポリマー形態でより良好に達成され得る。明確に定義された副粒子構造を呈する触媒は、重合プロセス中に単一粒子に容易に分解してもよく、それによって、高コモノマー組み込みなどの、高い触媒活性及び他の特定の重合特徴及び利益を提供する。
【0112】
[0114]
段落1.オレフィン重合に使用する固体前触媒成分の調製方法であって、塩化マグネシウムをアルコール中に溶解し、任意に水を添加して、MgCl2 1モル当たり約0.5mmolの水~MgCl2 1モル当たり約100mmolの水の水含有量を有する第1の溶液を形成することと、第1の溶液を第1のチタン化合物と接触させて、固体前触媒成分を形成することと、固体前触媒成分を、任意に第2のチタン化合物を含む炭化水素又はハロゲン化炭化水素溶媒で処理することと、を含む、方法。
【0113】
[0115]
段落2.第1の溶液に、炭化水素、シロキサン、アルミニウムアルコキシド、又はこれらのうちの任意の2種以上の混合物を添加して、第2の溶液を形成することを更に含む、段落1に記載の方法。
【0114】
[0116]
段落3.第1の溶液に、炭化水素、シロキサン、及びアルミニウムアルコキシドを添加して、第2の溶液を形成することを更に含む、段落1又は2に記載の方法。
【0115】
[0117]
段落4.塩化マグネシウムをアルコール中に溶解する間に、アルミニウムアルコキシド化合物が存在しないことを条件とする、段落1に記載の方法。
【0116】
[0118]
段落5.塩化マグネシウムを、アルコール中に溶解することと同時に、又はそれに続いて、第1の溶液を、内部電子供与体と接触させることを更に含む、段落1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0117】
[0119]
段落6.第1の溶液を、内部電子供与体と接触させ、第1の溶液を、第2の溶媒中の第1のチタン化合物と接触させて、固体前触媒成分を形成することが、同時に実行される、段落5に記載の方法。
【0118】
[0120]
段落7.内部供与体が、2~約30個の炭素原子を有する有機モノエステルである、段落5又は6に記載の方法。
【0119】
[0121]
段落8.第1の溶液を、補助電子供与体と接触させることを更に含む、段落2~7のいずれか一項に記載の方法。
【0120】
[0122]
段落9.アルミニウムアルコキシド化合物が、添加され、アルミニウムアルコキシド化合物が、アルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、及びこれらのうちの任意の2種以上の混合物からなる群から選択される、段落2~8のいずれか一項に記載の方法。
【0121】
[0123]
段落10.第1のチタン化合物が、チタンハロゲン化物、チタンアルコキシド、又はチタンアルコキシクロリドである、段落1~9のいずれか一項に記載の方法。
【0122】
[0124]
段落11.第2のチタン化合物が、チタンハロゲン化物である、段落1~10のいずれか一項に記載の方法。
【0123】
[0125]
段落12.塩化マグネシウムが、塩化マグネシウム水和物である、段落1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0124】
[0126]
段落13.溶解が、水を第1の溶液に添加することによって、第1の溶液の水分濃度を調整することを更に含む、段落1~12のいずれか一項に記載の方法。
【0125】
[0127]
段落14.塩化マグネシウム溶液の水分濃度が、約5mmol H2O/MgCl2 1モル~50mmol H2O/MgCl2 1モルである、段落1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0126】
[0128]
段落15.塩化マグネシウム溶液の水分濃度が、約25mmol H2O/MgCl2 1モル~50mmol H2O/MgCl2 1モルである、段落13に記載の方法。
【0127】
[0129]
段落16.炭化水素溶媒が、添加され、炭化水素溶媒が、芳香族又は脂肪族炭化水素である、段落2又は3に記載の方法。
【0128】
[0130]
段落17.炭化水素溶媒が、トルエン、エチルベンゼン、ペンタン、ヘキサン、及びヘプタンからなる群から選択される、段落16に記載の方法。
【0129】
[0131]
段落18.シロキサンが添加される、段落2に記載の方法。
[0132]
段落19.シロキサンが、ジメチルポリシロキサンである、段落3又は17に記載の方法。
【0130】
[0133]
段落20.内部電子供与体が、カルボン酸、カルボン酸無水物、エステル、ケトン、又はこれらのうちの任意の2種以上の組み合わせである、段落5~19のいずれか一項に記載の方法。
【0131】
[0134]
段落21.内部電子供与体が、エーテルではないことを条件とする、段落1~20のいずれか一項に記載の方法。
【0132】
[0135]
段落22.段落1~21のいずれか一項に記載の方法によって調製される、固体前触媒成分。
【0133】
[0136]
段落23.オレフィンの重合方法又は共重合方法であって、段落22に記載の固体前触媒成分を、有機アルミニウム活性化剤及びオレフィンと接触させることを含む、方法。
【0134】
[0137]
段落24.有機アルミニウム活性化剤が、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、又はこれらのうちの任意の2種以上の混合物である、段落23に記載の方法。
【0135】
[0138]
段落25.オレフィンが、エチレン、プロピレン、1-ブチレン、1-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンである、段落23又は24に記載の方法。
【0136】
[0139]
段落26.オレフィン重合に使用する触媒系であって、段落22に記載の固体前触媒成分、電子供与体、及び有機アルミニウム化合物を含む、触媒系。
【0137】
[0140]
段落27.塩化マグネシウム、アルコール、及びチタンハロゲン化物を含む組成物であって、組成物が、MgCl2 1モル当たり約0.5mmolの水~MgCl2 1モル当たり約100mmolの水の水含有量を有する前触媒溶液である、組成物。
【0138】
[0141]
段落28.炭化水素、シロキサン、アルミニウムアルコキシド、又はこれらのうちの任意の2種以上の混合物を更に含む、段落27に記載の組成物。
【0139】
[0142]
段落29.塩化マグネシウムをアルコール中に溶解する間に、アルキルアルミニウム化合物が存在しないことを条件とする、段落27又は28に記載の組成物。
【0140】
[0143]
段落30.内部電子供与体及びチタン化合物を更に含む、段落27、28、又は29に記載の組成物。
【0141】
[0144]
段落31.水含有量が、約5mmol H2O/MgCl2 1モル~50mmol H2O/MgCl2 1モルである、段落27、28、29、又は30に記載の組成物。
【0142】
[0145]
段落32.水含有量が、約25mmol H2O/MgCl2 1モル~50mmol H2O/MgCl2 1モルである、段落31に記載の組成物。
【0143】
[0146]
段落33.内部電子供与体が、エーテルではないことを条件とする、段落30に記載の組成物。
【0144】
[0147]
段落34.ポリオレフィン触媒組成物から調製されたポリオレフィン材料であって、ポリオレフィン触媒組成物が、塩化マグネシウム、アルコール、及びチタンハロゲン化物を含む前触媒組成物を含み、前触媒組成物が、MgCl2 1モル当たり約0.5mmolの水~MgCl2 1モル当たり約100mmolの水の水含有量を有する前触媒溶液から得られ、ポリオレフィン材料が、ポリエチレンであり、ポリエチレンが、40未満のメルトフローインデックスを示す、ポリオレフィン材料。
【0145】
[0148]
ある特定の実施形態が例示され説明されてきたが、当該技術分野において通常の手法に従って、以下の請求項において定義される、最も広い態様における技術から逸脱することなく、そこに変更及び修正を加えることが可能であるということを理解すべきである。
【0146】
[0149]
本明細書において例示的に説明された実施形態は、本明細書において具体的に開示されない任意の要素(複数可)、限定(複数可)なしで、好適に実行し得る。したがって、例えば、「備える(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」などは、広い意味で、制限なく読み取るべきものである。また、本明細書において使用される用語及び表現は、説明のための用語として用いられており、制限のための用語として用いられてはおらず、そのような用語及び表現の使用において、図示され説明された特徴又はその部分のいかなる等価物も排除しようという何らの意図もなく、請求された技術の範囲内で、様々な修正が可能であるということが認識される。また、「~から本質的になる(consisting essentially of)」という句は、具体的に言及された要素と、請求された技術の基本的及び新しい特徴に実質的に影響しない追加的な要素とを含むものとして理解される。「~からなる(consisting of)」という句は、具体的に言及されていないいかなる要素をも排除する。
【0147】
[0150]
本開示は、この出願書において説明された具体的な実施形態により限定されることはない。その趣旨及び範囲から逸脱することなく、また当業者には明らかなように、多くの修正及び変更が実現可能である。本開示に挙げられた方法に加えて、本開示の範囲内で機能的に等価な方法及び組成が、これまでの説明から、当業者には明らかであろう。そのような修正及び変更は、付属の請求項の範囲に収まるものとして意図されている。本開示は、付属の請求項が権利を主張する等価物の全範囲と共に、そのような請求項の用語によってのみ、制限されるべきである。本開示は、特定の、方法、試薬、化合物組成又は生物学的システム(これらは当然のことながら変化し得るものである)に制限されないということも理解されるべきである。また、本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態を説明する目的のみで用いられており、限定的なものとしては意図されていないということも理解されるべきである。
【0148】
[0151]
また、本開示の機能特徴又は態様が、マーカッシュ群の用語により記述される場合には、当業者は、開示はまた、それによって、任意の個々の成員要素又はマーカッシュ群の下位群によっても記載されるということを認識するであろう。
【0149】
[0152]
当業者には理解できるように、任意の及び全ての目的に対して、特に、書面による説明を提供することにより、本明細書において開示された全ての範囲はまた、任意の及び全ての可能な下位範囲と、その下位範囲の組み合わせを包含する。任意の列挙された範囲は、少なくとも等しく半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分割されている同一の範囲を十分に説明し、かつ可能にするとして、容易に理解され得る。非限定的例として、本明細書で論じられたそれぞれの範囲は、下側の3分の1、中間の3分の1及び上側の3分の1に容易に分割することができる。当業者によってまた理解されるように、「まで(up to)」、「少なくとも(at least)」、「よりも大きい(greater than)」、「未満(less than)」などの全ての用語は、列挙された数字を含み、上述したように下位範囲にその後に分割され得る範囲について言及する。最後に、当業者によって理解されるであろうように、範囲にはそれぞれの個別の構成員が含まれる。
【0150】
[0153]
公開出版物、特許出願書、交付済み特許及び本明細書において言及されるその他の文書は全て、それぞれ個別の公開出版物、特許出願書、交付済み特許又はその他の文書がまるで、その全体が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に指摘されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれるテキストに含まれる定義は、本開示内の定義に矛盾する場合には、排除される。
【0151】
[0154]
以下の請求項に、その他の実施形態が記載される。
[発明の態様]
[1]
オレフィン重合に使用する固体前触媒成分の調製方法であって、
塩化マグネシウムをアルコール中に溶解し、任意に水を添加して、MgCl2 1モル当たり0.5mmolの水~MgCl2 1モル当たり100mmolの水の水含有量を有する第1の溶液を形成することと、
前記第1の溶液を、第1のチタン化合物と接触させて、前記固体前触媒成分を形成することと、
前記固体前触媒成分を、任意に第2のチタン化合物を含む炭化水素又はハロゲン化炭化
水素溶媒で処理することと、を含む、方法。
[2]
前記第1の溶液に、炭化水素、シロキサン、アルミニウムアルコキシド、又はこれらのうちの任意の2種以上の混合物を添加して、第2の溶液を形成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
[3]
前記第1の溶液に、炭化水素、シロキサン、及びアルミニウムアルコキシドを添加して、第2の溶液を形成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
[4]
前記塩化マグネシウムを前記アルコール中に溶解する間に、アルミニウムアルコキシド化合物が存在しないことを条件とする、請求項1に記載の方法。
[5]
前記塩化マグネシウムを、前記アルコール中に溶解することと同時に、又はそれに続いて、前記第1の溶液を、内部電子供与体と接触させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
[6]
前記第1の溶液を、前記内部電子供与体と接触させ、前記第1の溶液を、前記第2の溶
媒中の前記第1のチタン化合物と接触させて、前記固体前触媒成分を形成することが、同時に実行される、請求項5に記載の方法。
[7]
前記内部供与体が、2~30個の炭素原子を有する有機モノエステルである、請求項5に記載の方法。
[8]
前記第1の溶液を、補助電子供与体と接触させることを更に含む、請求項2~7のいずれか一項に記載の方法。
[9]
前記アルミニウムアルコキシド化合物が、添加され、かつアルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、及びこれらのうちの任意の2種
以上の混合物からなる群から選択される、請求項2~8のいずれか一項に記載の方法。
[10]
前記第1のチタン化合物が、チタンハロゲン化物、チタンアルコキシド、又はチタンアルコキシクロリドである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
[11]
前記第2のチタン化合物が、チタンハロゲン化物である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
[12]
前記塩化マグネシウムが、塩化マグネシウム水和物である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
[13]
前記溶解が、水を前記第1の溶液に添加することによって、前記第1の溶液の前記水分濃度を調整することを更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
[14]
前記塩化マグネシウム溶液の前記水分濃度が、5mmol H2O/MgCl2 1モル~50mmol H2O/MgCl2 1モルである、請求項1~13のいずれか一
項に記載の方法。
[15]
前記塩化マグネシウム溶液の前記水分濃度が、25mmol H2O/MgCl2 1モル~50mmol H2O/MgCl2 1モルである、請求項13に記載の方法。
[16]
前記炭化水素溶媒が、添加され、かつ芳香族又は脂肪族炭化水素である、請求項2又は3に記載の方法。
[17]
前記炭化水素溶媒が、トルエン、エチルベンゼン、ペンタン、ヘキサン、及びヘプタンからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
[18]
前記シロキサンが添加される、請求項2に記載の方法。
[19]
前記シロキサンが、ジメチルポリシロキサンである、請求項3又は17に記載の方法。
[20]
前記内部電子供与体が、カルボン酸、カルボン酸無水物、エステル、ケトン、又はこれらのうちの任意の2種以上の組み合わせである、請求項5に記載の方法。
[21]
前記内部電子供与体が、エーテルではないことを条件とする、請求項2に記載の方法。
[22]
請求項1~21のいずれか一項に記載の方法によって調製される、固体前触媒成分。
[23]
オレフィンを重合又は共重合する方法であって、請求項22に記載の固体前触媒成分を、有機アルミニウム活性化剤及び前記オレフィンと接触させることを含む、方法。
[24]
前記有機アルミニウム活性化剤が、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、又はこれらのうちの任意の2種以上の混合物である、請求項23に記載の方法。
[25]
前記オレフィンが、エチレン、プロピレン、1-ブチレン、1-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンである、請求項24に記載の方法。
[26]
オレフィン重合に使用する触媒系であって、請求項22に記載の固体前触媒成分、電子供与体、及び有機アルミニウム化合物を含む、触媒系。
[27]
塩化マグネシウム、アルコール、及びチタンハロゲン化物を含む組成物であって、前記組成物が、MgCl2 1モル当たり0.5mmolの水~MgCl2 1モル当たり100mmolの水の水含有量を有する前触媒溶液である、組成物。
[28]
炭化水素、シロキサン、アルミニウムアルコキシド、又はこれらのうちの任意の2種以上の混合物を更に含む、請求項27に記載の組成物。
[29]
前記塩化マグネシウムを前記アルコール中に溶解する間に、アルキルアルミニウム化合物が存在しないことを条件とする、請求項27又は28に記載の組成物。
[30]
内部電子供与体及びチタン化合物を更に含む、請求項27、28、又は29に記載の組成物。
[31]
前記水含有量が、5mmol H2O/MgCl2 1モル~50mmol H2O/MgCl2 1モルである、請求項27、28、29、又は30に記載の組成物。
[32]
前記水含有量が、25mmol H2O/MgCl2 1モル~50mmol H2O/MgCl2 1モルである、請求項31に記載の組成物。
[33]
前記内部電子供与体が、エーテルではないことを条件とする、請求項30に記載の組成物。
[34]
ポリオレフィン触媒組成物から調製されたポリオレフィン材料であって、前記組成物が、
塩化マグネシウム、
アルコール、及び
チタンハロゲン化物、を含む、前触媒組成物を含み、
式中、
前記前触媒組成物が、MgCl2 1モル当たり0.5mmolの水~MgCl2 1モル当たり100mmolの水の水含有量を有する前触媒溶液から得られ、
前記ポリオレフィン材料が、ポリエチレンであり、
前記ポリエチレンが、40未満のメルトフローインデックスを示す、ポリオレフィン材料。