(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】蓄電装置の充電状態推定方法及び蓄電装置の充電状態推定システム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/367 20190101AFI20240304BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20240304BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240304BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
G01R31/367
G01R31/382
H01M10/48 P
H02J7/00 Y
(21)【出願番号】P 2020512107
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(86)【国際出願番号】 IB2019052581
(87)【国際公開番号】W WO2019193471
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2018073724
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】伊佐 敏行
(72)【発明者】
【氏名】千田 章裕
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-522152(JP,A)
【文献】特許第7064940(JP,B2)
【文献】特許第7134981(JP,B2)
【文献】国際公開第2016/031191(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105974327(CN,A)
【文献】名取滉平;須田貴俊;滑川徹,「リチウムイオンバッテリ充電率推定のための周波数応答データを用いたパラメータ初期値推定」,計測自動制御学会論文集,2017年01月31日,Vol. 53, No. 1,pp. 112-120
【文献】CHARKHGARD, Mohammad; FARROKHI, Mohammad,“State-of-Charge Estimation for Lithium-Ion Batteries Using Neural Networks and EKF”,IEEE TRANSACTIONS ON INDUSTRIAL ELECTRONICS,2010年12月,Vol. 57, No. 12,pp. 4178-4187,DOI: 10.1109/TIE.2010.2043035
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置の電気回路モデルを決定し、
前記蓄電装置の電気回路モデルに対して入力を電流、出力を電圧とし、
前記蓄電装置の電圧の出力誤差が小さくなる最適化を行い、前記蓄電装置の電気回路モデルの第1の初期パラメータ値を算出し、
異なる電流の入力値に対応する初期パラメータ群を記憶し、
前記初期パラメータ群を教師データとしてニューラルネットワーク処理により第2の初期パラメータ値を決定し、前記蓄電装置の電流値または電圧値に対して、前記第2の初期パラメータ値をカルマンフィルタ処理により演算して充電率を推定する蓄電装置の充電状態推定方法。
【請求項2】
蓄電装置の電気回路モデルを決定し、
前記蓄電装置の電気回路モデルに対して入力を電流、出力を電圧とし、
前記蓄電装置の電圧の出力誤差が小さくなる最適化を行い、前記蓄電装置の電気回路モデルの第1の初期パラメータ値を算出し、
仮定した充放電特性を用いて算出した仮想の初期パラメータ群を作成し、
前記初期パラメータ群を教師データとしてニューラルネットワーク処理により第2の初期パラメータ値を決定し、前記蓄電装置の電流値または電圧値に対して、前記第2の初期パラメータ値をカルマンフィルタ処理により演算して充電率を推定する蓄電装置の充電状態推定方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記第1の初期パラメータ値は、FCC、R
S、R
d、C
dおよび初期SOC(0)である、蓄電装置の充電状態推定方法。
【請求項4】
測定部と、記憶部と、推定部と、演算部と、を有し、
前記測定部は、蓄電装置の電流または電圧を測定し、
前記記憶部は、前記測定部で測定されたデータを記憶し、
前記推定部は、前記データに基づいて最適化アルゴリズムで得られたデータ群を教師データとして用いるニューラルネットワークを含み、
前記推定部は、前記教師データを用いて初期パラメータ値を決定し、
前記演算部は、前記蓄電装置の電流値または電圧値に対して、前記初期パラメータ値を用いてカルマンフィルタ処理により充電率を推定する蓄電装置の充電状態推定装置。
【請求項5】
測定部と、記憶部と、推定部と、演算部と、を有し、
前記測定部は、蓄電装置の電流または電圧を測定し、
前記記憶部は、前記測定部で測定されたデータを記憶し、
前記推定部は、仮定した充放電特性を用いて算出した仮想の初期パラメータ群を教師データとして用いるニューラルネットワークを含み、
前記推定部は、前記教師データを用いて初期パラメータ値を決定し、
前記演算部は、前記蓄電装置の電流値または電圧値に対して、前記初期パラメータ値を用いてカルマンフィルタ処理により充電率を推定する蓄電装置の充電状態推定装置。
【請求項6】
請求項
4において、前記最適化アルゴリズムは、Nelder-Mead法を用いる蓄電装置の充電状態推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一様態は、物、方法、又は、製造方法に関する。また、本発明の一様態は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、又は、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。本発明の一態様は、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、照明装置または電子機器に関する。また、本発明の一様態は、蓄電装置の充電状態推定方法、及び蓄電装置の充電制御方法に関する。特に、蓄電装置の充電状態推定システム、蓄電装置の充電システム、および蓄電装置の制御システム(BMS「バッテリーマネジメントシステム」とも呼ぶ)に関する。
【0002】
なお、本明細書中において、蓄電装置とは、蓄電機能を有する素子及び装置全般を指すものである。例えば、リチウムイオン二次電池などの蓄電池(二次電池ともいう)、リチウムイオンキャパシタ、ニッケル水素電池、全固体電池、及び電気二重層キャパシタなどを含む。
【0003】
また、本発明の一態様は、ニューラルネットワーク、及びそれを用いた蓄電装置の制御装置に関する。また、本発明の一態様は、ニューラルネットワークを用いたBMSを有する車両に関する。また、本発明の一態様は、ニューラルネットワークを用いた電子機器に関する。また、本発明の一態様は、車両に限定されず、構造体などに設置された太陽光発電パネルなどの発電設備から得られた電力を貯蔵するための蓄電装置にも適用できる。
【背景技術】
【0004】
二次電池の残量を推定する手法としてクーロンカウンタ法やOCV(Open Circuit Voltage)法がある。
【0005】
従来の手法では、長期間運用して充電や放電を繰り返すと誤差が蓄積されて充電率、即ちSOC(State of Charge)の推定精度が大きく低下する恐れがあった。また、電池の未使用状態での時間経過により、自己放電による初期SOC(0)の変化もあるため、SOCの推定精度を上げることが困難である。クーロンカウンタ法は初期SOC(0)の誤差を修正できないことや電流センサの誤差を蓄積してしまうなどの欠点がある。特許文献1には温度と関連付けたパラメータを含む情報に基づいて、状態推定手段によって低温時の二次電池の状態を高精度に推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
二次電池を搭載した車両は、ブレーキ時などで生じる回生電力を二次電池に充電することができ、過充電により二次電池が適切に使用できなくなる恐れがある。過充電や過放電の問題を事前に発生しないようにするため二次電池の残量、即ち二次電池のSOCを高い精度で推定することが求められている。本発明は、推定精度の高い二次電池の充電状態推定方法または蓄電装置制御方法を提供する。
【0008】
二次電池は製造の際に活物質の量、電極サイズなどの組み立て時のわずかな違いによって同じ製造ロットであってもわずかに個体差がでる場合がある。車両などにおいては複数個の二次電池が使用されるため、多くの電池を組み合わせるとそれぞれの個体差が影響し、劣化によって車両間の容量の差が大きくなってしまう場合もある。
【0009】
また、二次電池の劣化が進むとSOCの推定精度が大きく低下する場合がある。なお、SOCは二次電池の最大容量に対する残存容量の割合で定義する。二次電池の最大容量は、満充電後に放電させて電流の時間積分から求めると放電時間に長時間かかる恐れがある。
【0010】
本発明は、二次電池の劣化が進んだとしても推定精度の高い二次電池の充電状態推定方法を提供する。また、短時間、低コストでSOCを高精度に推定する二次電池の容量測定システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書で開示する二次電池の充電状態推定方法は、回帰モデル、例えばカルマンフィルタで計算処理して得られるSOCの推定精度をさらに高めるためにニューラルネットワークを利用する。ニューラルネットワークなどの人工知能(AI:Artificial Intelligence)を用いることによって充電率(SOC)を推定する。
【0012】
本明細書で開示する発明の構成は、蓄電装置の電気回路モデルを決定し、蓄電装置の電気回路モデル(フォスター型回路モデル)に対して入力に電流、出力に電圧を取り、蓄電装置の電圧の出力誤差が小さくなる最適化を行い、蓄電装置の電気回路モデルの初期パラメータ(第1の値)を算出し、異なる電流の入力値に対応する初期パラメータ群を記憶し、最適化で得られた初期パラメータ群を教師データとしてニューラルネットワーク処理により初期パラメータ(第2の値)を決定し、該初期パラメータ(第2の値)を用いてカルマンフィルタ処理により充電率(SOC)を推定する蓄電装置の充電状態推定方法である。
【0013】
また、異なる電流の入力値に対応する初期パラメータ群は、実測のサイクル特性を用いなくとも実施者が用いる蓄電装置の種類によって条件振りを行ってデータを作成すればよく、発明の他の構成は、蓄電装置の電気回路モデルを決定し、蓄電装置の電気回路モデルに対して入力に電流、出力に電圧を取り、蓄電装置の電圧の出力誤差が小さくなる最適化を行い、蓄電装置の電気回路モデルの初期パラメータ(第1の値)を算出し、該初期パラメータと異なる初期パラメータ群を作成し、初期パラメータ群を教師データとしてニューラルネットワーク処理により初期パラメータ(第2の値)を決定し、該初期パラメータをカルマンフィルタ処理により充電率(SOC)を推定する蓄電装置の充電状態推定方法である。
【0014】
カルマンフィルタは、無限インパルス応答フィルタの一種である。また、重回帰分析は多変量解析の一つであり、回帰分析の独立変数を複数にしたものである。重回帰分析としては、最小二乗法などがある。回帰分析では観測値の時系列が多く必要とされる一方、カルマンフィルタは、ある程度のデータの蓄積さえあれば、逐次的に最適な補正係数が得られるメリットを有する。また、カルマンフィルタは、非定常時系列に対しても適用できる。
【0015】
二次電池の内部抵抗及び充電率(SOC)を推定する方法として、非線形カルマンフィルタ(具体的には無香料カルマンフィルタ(UKFとも呼ぶ))を利用することができる。また、拡張カルマンフィルタ(EKFともよぶ)を用いることもできる。
【0016】
最適化アルゴリズムにより得られた初期パラメータをn(nは整数、例えば50)サイクル毎に集め、それらのデータ群を教師データに用いてニューラルネットワーク処理することで高精度のSOCの推定を行うことができる。
【0017】
学習システムは、教師作成装置及び学習装置を有する。教師データ作成装置は、学習装置が学習する際に利用する教師データを作成する。教師データとは処理対象データと認識対象が同一のデータと、そのデータに対応するラベルの評価とを含む。教師データ作成装置は、入力データ取得部、評価取得部、教師データ作成部とを有する。入力データ取得部は、記憶装置に記憶されたデータから取得してもよいし、インターネットを介して学習の入力データを取得してもよく、入力データとは学習に用いるデータであり、二次電池の電流値や電圧値を含む。また、教師データとしては、実測のデータでなくともよい。例えば、初期パラメータを条件振りすることで多様性を持たせ、実測に近いデータを作成し、それらの所定の特性データベースを教師データに用いてニューラルネットワーク処理することで充電率(SOC)を推定してもよい。ある一つの電池の充放電特性を基に、実測に近いデータを作成し、それらの所定の特性データベースを教師データに用いてニューラルネットワーク処理することで、同種の電池のSOC推定を効率よく行うこともできる。
【0018】
SOC推定に最適化アルゴリズムのみを用いる場合、最適化アルゴリズムは計算量が多く、無意味な値への収束や最適値が決まらない発散などの問題がある。電池の特性は、非線形であり、非線形関数の数値最適化の手法で5個の初期パラメータを求める。5個の初期パラメータは、総容量FCC(Full Charge Capacity)、直流抵抗RS(R0)、拡散過程による抵抗Rd、拡散容量Cd、初期SOC(0)である。なお、FCC(満充電容量、総容量とも呼ぶ)は、常温25℃の定格容量である。
【0019】
5個の初期パラメータを得るための最適化処理の実行にはPython(登録商標)やMatlab(登録商標)に実装されているツールを用いればよい。
【0020】
二次電池の劣化が進んだ場合、初期パラメータのFCCが大きく変化するとSOCの誤差が生じる恐れがあるため、SOCの推定のための演算に用いる初期パラメータを更新してもよい。更新する初期パラメータは、予め実測した充放電特性のデータを用いて最適化アルゴリズムにより算出する。更新された初期パラメータを用いた回帰モデル、例えばカルマンフィルタで計算処理することで、劣化後であっても高精度のSOCの推定を行うことができる。本明細書ではカルマンフィルタを用いて計算処理することをカルマンフィルタ処理するとも表現する。
【0021】
初期パラメータを更新するタイミングは任意でよいが、高い精度でSOCの推定を行うためには、更新頻度は多い方が好ましく、定期的、連続的に更新するほうが好ましい。
【0022】
SOCを推定する手順をより具体的に以下に説明する。
【0023】
第1段階では、二次電池の電圧値、または電流値を検出手段(電圧検出回路や電流検出回路)により実測する。これらのデータは、電圧測定器や、電流測定器(電流センサともよぶ)によって取得され、記憶装置に保存される。電圧測定器で得られた電圧値、具体的には充放電特性データに基づいて初期SOC(0)を算出する。初期SOC(0)とは、SOCの初期値である。また、初期Rsとは直流抵抗Rsの初期値(ROとも表記する。)であり、イオンの泳動過程による抵抗である。予め実測で求めた充放電特性から最適化アルゴリズム、具体的にはNelder-Mead法を用いて5個の初期パラメータ、具体的には初期SOC(0)、FCC、R0、Rd、Cdを得ることができる。なお、Nelder-Mead法は、導関数が不要なアルゴリズムである。
【0024】
また、他の初期SOC(0)の算出方法としては、電圧検出回路により使用開始前の電池の開放電圧を測定し、予め求めておいた開放端電圧OCVとSOCとの関係のマップまたは対応表により決定することもできる。OCVとは、電池が電気化学的に平衡状態にあるときの電圧であり、SOCと対応関係にある。
【0025】
第2段階では、全結合型のニューラルネットワークを構築する。ニューラルネットワークの入力に充電電圧特性を用い、教師データにNelder-Mead法で算出された電池モデルの初期パラメータ群を用いて5個の初期パラメータを算出でき、カルマンフィルタ処理を行うことでSOCの推定を高精度に行うことができる。
【0026】
また、蓄電装置の充電状態推定装置の構成も本発明の一つであり、その構成は、測定部と、記憶部と、推定部と、演算部と、を有し、測定部は、蓄電装置の電流または電圧を測定し、記憶部は、測定部で測定されたデータを記憶し、推定部は、データに基づき、最適化アルゴリズムで得られたデータを教師データとして備え、初期パラメータを決定し、演算部は初期パラメータを用いてカルマンフィルタ処理によりSOCを推定する蓄電装置の充電状態推定装置である。
【0027】
上記構成において、推定部は、ニューラルネットワークを含んでいる。記憶部のデータを用いてニューラルネットワーク処理を行う。また、上記構成において、最適化アルゴリズムは、Nelder-Mead法を用いる。
【0028】
なお、本明細書においてニューラルネットワーク(人工ニューラルネットワークとも呼ぶ)とは、生物の神経回路網を模し、学習によってニューロン同士の結合強度を決定し、問題解決能力を持たせるモデル全般を指す。ニューラルネットワークは入力層、中間層(隠れ層ともいう)、出力層を有する。
【0029】
また、本明細書において、ニューラルネットワークについて述べる際に、既にある情報からニューロンとニューロンの結合強度(重み係数とも言う)を決定することを「学習」と呼ぶ場合がある。
【0030】
また、本明細書において、学習によって得られた結合強度を用いてニューラルネットワークを構成し、そこから新たな結論を導くことを「推論」と呼ぶ場合がある。
【0031】
リチウムイオン二次電池を例に説明を行ったが、これ以外の電池(例えば全固体電池など)についても本発明を適用することもできる。本発明は、電池の種類に応じて電池モデルを適宜変更することでSOCの推定を高精度に行うことができる。
【0032】
本明細書において充電率(SOC)は、二次電池の完全充電時の容量に対する残存容量と充電電気量との和の百分率として表される。充電率を算出するには充電電気量を求める必要があり、充電電気量は、短時間あたりのパルス数、充電電流の電流値、オンデューティを用いて算出できる。
【発明の効果】
【0033】
カルマンフィルタ処理を行い、SOCの推定を行う際、最適化アルゴリズムで得られたデータを教師データとするニューラルネットワークを用いる。そのニューラルネットワークを用いることで高精度にSOCを推定することができる。本発明の一態様により比較的小さい計算量で精度の高いSOCを推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の一態様を示すブロック図の一例である。
【
図2】本発明の一態様を示すフロー図の一例である。
【
図3】本発明の一態様を示すフロー図の一例である。
【
図4】本発明の一態様を示す電池モデルの一例である。
【
図6】総容量FCCとサイクル数の関係を示す図である。
【
図7】直流抵抗R
Sとサイクル数の関係を示す図である。
【
図8】拡散容量C
dとサイクル数の関係を示す図である。
【
図9】拡散過程による抵抗R
dとサイクル数の関係を示す図である。
【
図10】初期SOC(0)とサイクル数の関係を示す図である。
【
図11】(A)(B)は二次電池の一例を示す斜視図であり、(C)は二次電池の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0036】
(実施の形態1)
本実施の形態では、
図1(A)を用いて電池状態推定装置を電気自動車(EV)に用いる一例を示す。
【0037】
電気自動車には、メインの駆動用の二次電池として第1のバッテリ301と、モータ304を始動させるインバータ312に電力を供給する第2のバッテリ311が設置されている。本実施の形態では、第2のバッテリ311の電源で駆動する状態推定ユニット300が第1のバッテリ301を構成する複数の二次電池をまとめて監視する。状態推定ユニット300は、充電状態推定を行う。
【0038】
状態推定ユニット300は、CPU(Central Processing Unit)、記憶部としてのメモリなどを含むコンピュータを主要な構成要素としている。CPUは複数の二次電池に対応できる演算部を含む。演算部は二次電池の電池モデルを決定し、ニューラルネットワークを用いて値を推定する。メモリには教師データを記憶し、入力された電流値や電圧値からSOCを推定する。
【0039】
図2にSOC推定のフロー図の一例を示す。
図2に示す一連の処理は、二次電池の回路モデルを決定するステップ1(S1)と、記憶部に二次電池の実測電流値または実測電圧値を記憶するステップ2(S2)と、5個の初期パラメータ群を教師データとしたニューラルネットワークへ、実測電流値または実測電圧値を入力するステップ3(S3)と、5個の初期パラメータ(FCC、R
S(R
0)、R
d、C
d、初期SOC(0))を算出するステップ4(S4)と、を有する。なお、ステップ4の初期パラメータで異常値があれば、その異常値を示すパラメータを異常のない範囲の値(例えば、1つ前の算出結果など)に変更するステップ5(S5)を行った後に、UKFを用いてSOCを推定するステップ6(S6)を行う。例えば、二次電池の環境温度の変化によって異常値を検出する場合もあり、ステップ4の初期パラメータで異常値があるかどうかで異常検出を行うこともできる。
【0040】
教師データは予め二次電池の充放電特性をいくつか実測で取得しておき、最適化アルゴリズム(本実施の形態ではNelder Mead法)を用いて5個のパラメータを算出したデータ群とする。予め実測したデータを用いる場合、状態推定ユニット300の学習は初期学習と呼ぶ。また、二次電池の充放電を複数回繰り返し、ある程度劣化した後にデータを状態推定ユニット300で学習させる場合、即ち教師データを追加または更新する場合は再学習とも呼ぶ。
【0041】
図3(A)に学習のフローの一例を示す。
図3(A)に示す一連の処理は、二次電池の回路モデルを決定するステップ1(S1)と、二次電池の充放電特性を実測するステップ2(S2)と、二次電池の充放電特性を用いてNelder-Mead法により最適化して5個の初期パラメータを算出するステップ3(S3)と、5個の初期パラメータ群を教師データとして学習させたニューラルネットワークを構築するステップ4(S4)とを有する。
【0042】
上記各処理のうち、全部または一部を自動的に行われるステップとすることもできる。また、一部のステップを使用者のタイミングで手動的に行うこともでき、定期的なタイミングで行ってもよい。図中で示したステップ手順、各種のデータやパラメータを含む情報については、任意に変更することができる。即ち、図面に示した情報は図示した順序に限られないことは言うまでもない。
【0043】
また、教師データは予め得られているnサイクル目(nは2以上の整数)の充放電特性であってもよい。
【0044】
図3(B)に学習のフローの一例を示す。
図3(B)に示す一連の処理は、二次電池の回路モデルを決定するステップ1(S1)と、二次電池の充放電特性を実測するステップ2(S2)と、二次電池の充放電特性を用いてNelder-Mead法により最適化して5個の初期パラメータを算出するステップ3(S3)と、予め実測でのサイクルデータ取得できるのであれば、nサイクル毎の二次電池の実測データを最適化し、nサイクル毎の5個の初期パラメータ群を算出するステップ15(S15)と、5個の初期パラメータ群を教師データとして学習させたニューラルネットワークを構築するステップ17(S17)とを有する。
【0045】
また、教師データの一部は、実測ではなく、実施者が仮定した充放電特性を用いてもよい。その場合、ステップ3の後に予め実測でのサイクルデータ取得できないのであれば、5個の初期パラメータを条件振りした仮想の初期パラメータ群を作成するステップ16(S16)をステップ17の前に行ってもよい。このステップ16は追加学習ステップと言える。この仮想の初期パラメータ群は仮想教師データとも言える。また、初期パラメータ群を変更する場合は教師データを追加または更新することになるため、再学習とも言える。
【0046】
第1のバッテリ301は、主に42V系(高電圧系)の車載機器に電力を供給し、第2のバッテリ311は14V系(低電圧系)の車載機器に電力を供給する。第2のバッテリ311としては鉛蓄電池がコスト上有利のため採用されることが多い。鉛蓄電池はリチウムイオン二次電池と比べて自己放電が大きく、サルフェーションとよばれる現象により劣化しやすい欠点がある。第2のバッテリ311をリチウムイオン二次電池とすることでメンテナンスフリーとするメリットがあるが、長期間の使用、例えば3年以上となると、製造時には判別できない異常が生じる恐れがある。特にインバータを起動する第2のバッテリ311が動作不能となると、第1のバッテリ301に残容量があってもモータを起動させることができなくなる。これを防ぐため、第2のバッテリ311が鉛蓄電池の場合は、第1のバッテリから第2のバッテリに電力を供給し、常に満充電状態を維持するように充電されている。
【0047】
本実施の形態では、第1のバッテリ301と第2のバッテリ311の両方にリチウムイオン二次電池を用いる一例を示す。第2のバッテリ311は鉛蓄電池や全固体電池を用いてもよい。
【0048】
タイヤ316の回転による回生エネルギーは、ギア305を介してモータ304に送られ、モータコントローラ303やバッテリーコントローラ302を介して第2のバッテリ311に供給、または第1のバッテリ301に供給される。
【0049】
第1のバッテリ301は主にモータ304を回転させることに使用されるが、DCDC回路306を介して42V系の車載部品(電動パワステ307、ヒーター308、デフォッガ309など)に電力を供給する。後輪にリアモータを有している場合にも、第1のバッテリ301がリアモータを回転させることに使用される。
【0050】
第2のバッテリ311は、DCDC回路310を介して14V系の車載部品(オーディオ313、パワーウィンドウ314、ランプ類315など)に電力を供給する。
【0051】
第1のバッテリ301は、複数の二次電池で構成される。例えば、円筒形の二次電池600を用いる。
図1(B)に示すように、円筒形の二次電池600を、導電板613および導電板614の間に挟んでモジュール615を構成してもよい。
図1(B)には二次電池間にスイッチを図示していない。複数の二次電池600は、並列接続されていてもよいし、直列接続されていてもよいし、並列に接続された後、さらに直列に接続されていてもよい。複数の二次電池600を有するモジュール615を構成することで、大きな電力を取り出すことができる。
【0052】
図1(A)においては、バッテリーコントローラ302と状態推定ユニット300は、別々の構成で図示しているが、特に限定されず、同一基板上に1つのICチップで構成してもよいし、まとめて一つのユニットとしてもよい。また、状態推定ユニット300は、1つのチップ上に集積して製造されたLSI(Large Scale Integration)から構成されているとしてもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。また、LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、或いはLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブルプロセッサを用いてもよい。また、AIシステムを組み込んだIC(推論チップとも呼ぶ)を用いてもよい。AIシステムを組み込んだICは、ニューラルネット演算を行う回路(マイクロコンピュータ)と呼ぶ場合もある。また、バッテリーコントローラ302は、BMU(バッテリーマネジメントユニット)と呼ぶ場合もある。5個の初期パラメータは例えば二次電池の状態推定ユニット300のメモリ、具体的にはROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)に記憶させる。状態推定ユニット300は、より正確に二次電池のSOCを算出することができる。
【0053】
二次電池の状態推定ユニット300を備える蓄電制御装置または管理装置を実現することができる。また、ニューラルネットワーク処理を含む複数の処理を順序立てて行い、複数のステップを構成する蓄電制御方法を実現することができる。また、蓄電制御方法に含まれる各ステップをコンピュータに実行させるコンピュータプログラムとして実現することもできる。また、そのようなコンピュータプログラムを記録媒体、或いはインターネットの通信ネットワークを介したクラウドに保存し、実行することもできる。
【0054】
コンピュータプログラムを実行するソフトウェアのプログラムは、Python、Go、Perl、Ruby、Prolog、Visual Basic、C、C++、Swift、Java(登録商標)、.NETなどの各種プログラミング言語で記述できる。また、アプリケーションをChainer(Pythonで利用できる)、Caffe(PythonおよびC++で利用できる)、TensorFlow(C、C++、およびPythonで利用できる)等のフレームワークを使用して作成してもよい。
【0055】
(実施の形態2)
図4(B)は、電池モデルの一例を示している。
【0056】
本実施の形態において
図4(B)に示す電池モデルは、
図4(A)に示すモデルを簡略化したモデルである。ワールブルグインピーダンス部分は無限段あるが、
図4(A)では簡略して50段として示している。
図4(A)に示したワールブルグインピーダンス部分である50段のうち、4段目から50段目を抵抗とし、時定数の小さいユニットを
図4(B)では直流抵抗Rsとしてまとめている。
図4(B)は、直流抵抗モデルと拡散抵抗モデルの直列接続体として表されている。
【0057】
拡散過程による抵抗Rdは抵抗成分を示し、拡散容量Cdは容量成分項を示す。拡散抵抗は、抵抗成分及び容量成分の並列接続体が複数個直列(図では3段)に接続された構成とする。抵抗成分と容量線分の並列接続による等価回路は、フォスター型の電気回路モデルと呼ばれる。フォスター型の電気回路モデルは、カウエル型の電気回路モデルよりも計算量が小さくできるため好ましい。
【0058】
簡略された
図4のモデルでは、3個のパラメータ(R
S,R
d、C
d)で表すことができている。
【0059】
また、OCVは、以下の数式で表すことができる。
【0060】
【0061】
また、SOC(t)は、以下の数式で表すことができる。
【0062】
【0063】
また、状態変数x(t)は以下の数式で表すことができる。
【0064】
【0065】
また、出力方程式は以下の数式で表すことができる。
【0066】
【0067】
従って、これらの数式は、以下に示す5個の初期パラメータが求められれば、状態空間表現による計算が可能となる。
【0068】
【0069】
本実施の形態ではこの5個の初期パラメータを電圧と電流の実測データから最適化により算出する。最適化のアルゴリズムとしては最小二乗法があるが、二次電池は非線形の特性であるため、最適化のアルゴリズムとしてNelder-Mead法を用いる。ここでは一例として
図5(A)に示した電流のデータと
図5(B)に示した電圧のデータを用いて最適化を行い5個の初期パラメータを算出する。
【0070】
5個の初期パラメータの値を教師データの一つとして学習させたニューラルネットワークを構築する。
【0071】
検証のため、サイクル試験データを用いる。用いるサイクル試験データは、環境温度45℃、充電カットオフ電圧4.2V、放電カットオフ電流2.5V、充電方式はCC-CVとし、CCにおける充電レートは0.5C(1.625A)とし、放電レートは1C(3.25V)とする。
【0072】
比較として1サイクル毎のデータを最適化して得られた5個の初期パラメータを黒線で示す。算出した値をそれぞれ
図6、
図7、
図8、
図9、
図10に示す。
【0073】
全結合型のニューラルネットワークとし、入力層700点、1つ目の隠れ層500層、2つ目の隠れ層500層、出力層を5点(FCC、RS、Rd、Cd、初期SOC(0))とする。ニューラルネットワークの隠れ層が何層も重なるとディープラーニングとも呼ばれる。本実施の形態では、全結合型のニューラルネットワークを用いる例を示すがニューラルネットワークの構造や学習方法については特に限定されない。
【0074】
50サイクル目、150サイクル目、250サイクル目、350サイクル目、450サイクル目、550サイクル目、650サイクル目においてもそれぞれニューラルネットワーク処理を行い5個のパラメータを算出し、それぞれのデータを
図6、
図7、
図8、
図9、
図10の図中の丸印で示す。
【0075】
最適化アルゴリズムで得られた教師データを用い、学習させたニューラルネットワークを用いた初期パラメータは、実際に最適化を行ったデータとほぼ同じ値を得ることができている。最適化アルゴリズムを用いる場合は、無駄な反復処理や、物理的に無意味な値への収束や発散の問題の生じる可能性があり、最適化アルゴリズムのみを推定に用いるのが困難であったが、最適化を行った教師データを用いたニューラルネットワーク処理で算出が可能となる。
【0076】
従って、最適化を行った教師データを用いたニューラルネットワーク処理で算出された初期パラメータは、カルマンフィルタで用いられる初期パラメータとして適正な値といえるため、カルマンフィルタ処理で得られるSOCの精度が向上する。
【0077】
(実施の形態3)
円筒型の二次電池の例について
図11(A)及び
図11(B)を参照して説明する。円筒型の二次電池600は、
図11(A)に示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面および底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップ601と電池缶(外装缶)602とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
【0078】
図11(B)は、円筒型の二次電池の断面を模式的に示した図である。中空円柱状の電池缶602の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲回されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。電池缶602の内側において、正極、負極およびセパレータが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板608、609により挟まれている。また、電池素子が設けられた電池缶602の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。二次電池は、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)やリン酸鉄リチウム(LiFePO
4)などの活物質を含む正極と、リチウムイオンの吸蔵・放出が可能な黒鉛等の炭素材料からなる負極と、エチレンカーボネートやジエチルカーボネートなどの有機溶媒に、LiBF
4やLiPF
6等のリチウム塩からなる電解質を溶解させた非水電解液などにより構成される。
【0079】
円筒型の蓄電池に用いる正極および負極は捲回するため、集電体の両面に活物質を形成することが好ましい。正極604には正極端子(正極集電リード)603が接続され、負極606には負極端子(負極集電リード)607が接続される。正極端子603および負極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子603は安全弁機構612に、負極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構612は、PTC(Positive Temperature Coefficient)素子611を介して正極キャップ601と電気的に接続されている。安全弁機構612は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ601と正極604との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子611は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO3)系半導体セラミックス等を用いることができる。
【0080】
電解液を用いるリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、セパレータと、電解液と、外装体とを有する。なお、リチウムイオン二次電池では、充電と放電でアノード(陽極)とカソード(陰極)が入れ替わり、酸化反応と還元反応とが入れ替わることになるため、反応電位が高い電極を正極と呼び、反応電位が低い電極を負極と呼ぶ。したがって、本明細書においては、充電中であっても、放電中であっても、逆パルス電流を流す場合であっても、充電電流を流す場合であっても、正極は「正極」または「+極(プラス極)」と呼び、負極は「負極」または「-極(マイナス極)」と呼ぶこととする。酸化反応や還元反応に関連したアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いると、充電時と放電時とでは、逆になってしまい、混乱を招く可能性がある。したがって、アノード(陽極)やカソード(陰極)という用語は、本明細書においては用いないこととする。仮にアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いる場合には、充電時か放電時かを明記し、正極(プラス極)と負極(マイナス極)のどちらに対応するものかも併記することとする。
【0081】
図11(C)に示す2つの端子には充電器が接続され、蓄電池1400が充電される。蓄電池1400の充電が進めば、電極間の電位差は大きくなる。
図11(C)では、蓄電池1400の外部の端子から、正極1402の方へ流れ、蓄電池1400の中において、正極1402から負極1404の方へ流れ、負極から蓄電池1400の外部の端子の方へ流れる電流の向きを正の向きとしている。つまり、充電電流の流れる向きを電流の向きとしている。
【0082】
本実施の形態では、リチウムイオン二次電池の例を示すが、リチウムイオン二次電池に限定されず、二次電池の正極材料として例えば、元素A、元素X、及び酸素を有する材料を用いることができる。元素Aは第1族の元素および第2族の元素から選ばれる一以上であることが好ましい。第1族の元素として例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を用いることができる。また、第2族の元素として例えば、カルシウム、ベリリウム、マグネシウム等を用いることができる。元素Xとして例えば金属元素、シリコン及びリンから選ばれる一以上を用いることができる。また、元素Xはコバルト、ニッケル、マンガン、鉄、及びバナジウムから選ばれる一以上であることが好ましい。代表的には、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)や、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)が挙げられる。
【0083】
負極は、負極活物質層および負極集電体を有する。また、負極活物質層は、導電助剤およびバインダを有していてもよい。
【0084】
負極活物質として、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な元素を用いることができる。例えば、シリコン、スズ、ガリウム、アルミニウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、銀、亜鉛、カドミウム、インジウム等のうち少なくとも一つを含む材料を用いることができる。このような元素は炭素と比べて容量が大きく、特にシリコンは理論容量が4200mAh/gと大きい。
【0085】
また、二次電池は、セパレータを有することが好ましい。セパレータとしては、例えば、紙をはじめとするセルロースを有する繊維、不織布、ガラス繊維、セラミックス、或いはナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタンを用いた合成繊維等で形成されたものを用いることができる。
【0086】
図12において、本発明の一態様である二次電池の充電状態推定装置を用いた車両を例示する。
図12(A)に示す自動車8400の二次電池8024は、電気モータ8406を駆動するだけでなく、ヘッドライト8401やルームライト(図示せず)などの発光装置に電力を供給することができる。自動車8400の二次電池8024としては、
図11(B)に示した円筒形の二次電池600を、
図1(B)に示した導電板613および導電板614の間に挟んでモジュール615としたものを用いてもよい。
【0087】
図12(B)に示す自動車8500は、自動車8500が有する二次電池にプラグイン方式や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。
図12(B)に、地上設置型の充電装置8021から、自動車8500に搭載された二次電池8024に、ケーブル8022を介して充電を行っている状態を示す。充電に際しては、充電方法やコネクターの規格等はCHAdeMO(登録商標)やコンボ等の所定の方式で適宜行えばよい。充電装置8021は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給により自動車8500に搭載された二次電池8024を充電することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
【0088】
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、車両同士で電力の送受信を行ってもよい。さらに、車両の外装部に太陽電池を設け、停車時や走行時に二次電池の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
【0089】
また、
図12(C)は、本発明の一態様の二次電池を用いた二輪車の一例である。
図12(C)に示すスクータ8600は、二次電池8602、サイドミラー8601、方向指示灯8603を備える。二次電池8602は、方向指示灯8603に電気を供給することができる。
【0090】
また、
図12(C)に示すスクータ8600は、座席下収納8604に、二次電池8602を収納することができる。二次電池8602は、座席下収納8604が小型であっても、座席下収納8604に収納することができる。
【0091】
本実施の形態は、他の実施の形態の記載と適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0092】
300:状態推定ユニット、301:バッテリ、302:バッテリーコントローラ、303:モータコントローラ、304:モータ、305:ギア、306:DCDC回路、307:電動パワステ、308:ヒーター、309:デフォッガ、310:DCDC回路、311:バッテリ、312:インバータ、313:オーディオ、314:パワーウィンドウ、315:ランプ類、316:タイヤ、600:二次電池、601:正極キャップ、602:電池缶、603:正極端子、604:正極、605:セパレータ、606:負極、607:負極端子、608:絶縁板、609:絶縁板、611:PTC素子、612:安全弁機構、613:導電板、614:導電板、615:モジュール、1400:蓄電池、1402:正極、1404:負極、8021:充電装置、8022:ケーブル、8024:二次電池、8400:自動車、8401:ヘッドライト、8406:電気モータ、8500:自動車、8600:スクータ、8601:サイドミラー、8602:二次電池、8603:方向指示灯、8604:座席下収納