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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/3233 20160101AFI20240304BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
G09G3/3233
G09G3/20 612U
G09G3/20 624B
G09G3/20 641P
G09G3/20 650M
G09G3/20 670J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020523840
(86)(22)【出願日】2019-05-27
(86)【国際出願番号】 IB2019054363
(87)【国際公開番号】W WO2019234548
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2018108990
(32)【優先日】2018-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】楠 紘慈
(72)【発明者】
【氏名】高橋 圭
(72)【発明者】
【氏名】伊佐 敏行
【審査官】橋本 直明
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-258302(JP,A)
【文献】特開2010-128315(JP,A)
【文献】特開2018-072822(JP,A)
【文献】特開2012-185328(JP,A)
【文献】特開2010-266494(JP,A)
【文献】特開2015-215169(JP,A)
【文献】特開2002-236912(JP,A)
【文献】特開2011-065048(JP,A)
【文献】特開2016-224429(JP,A)
【文献】特開2016-206659(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0140898(US,A1)
【文献】特開平11-219146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/3233
G09G 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素の劣化量を推定し、前記画素に与える第1画像信号を補正する表示装置であって、
表示パネル、フレームメモリ、及び演算部を有し、
前記表示パネルは、ソースドライバ及び複数の画素を有し、
前記画素は、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、第3のトランジスタと、第4のトランジスタと、第1の容量素子と、第2の容量素子と、発光素子と、第1のゲート配線と、第2のゲート配線と、第3のゲート配線と、ソース配線と、モニタ配線とを有し、
前記第1のトランジスタのゲートは、前記第1のゲート配線と電気的に接続され、
前記第1のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記ソース配線と電気的に接続され、
前記第1のトランジスタのソースまたはドレインの他方は、前記第2のトランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記第1のトランジスタのソースまたはドレインの他方は、前記第1の容量素子の一方の電極と電気的に接続され、
前記第1のトランジスタのソースまたはドレインの他方は、前記第2の容量素子の一方の電極と電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記発光素子の一方の電極と電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記第3のトランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記第1の容量素子の他方の電極と電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのゲートは、前記第2のゲート配線と電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのソースまたはドレインの他方は、前記モニタ配線と電気的に接続され、
前記第4のトランジスタのゲートは、前記第3のゲート配線と電気的に接続され、
前記第4のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記ソース配線と電気的に接続され、
前記第4のトランジスタのソースまたはドレインの他方は、前記第2の容量素子の他方の電極と電気的に接続され、
前記演算部は、回帰モデルに従って演算する機能を有し、
前記演算部には、第1観測信号と、第2観測信号とが与えられ、
前記第1観測信号は、前記フレームメモリから前記演算部に与えられる第3画像信号であり、
前記第2観測信号は、前記画素が有する前記発光素子、又は前記発光素子に電流を与える前記第2のトランジスタのいずれか一に流れる第1電流値、もしくは前記第1電流値が変換された第1電圧値であり、
前記第1電流値は、前記第3のトランジスタを介して前記モニタ配線から取り出され、
前記演算部には、予測誤差パラメータと、出力パラメータが設定され、
前記演算部が、前記回帰モデルに従い前記第1観測信号と前記第2観測信号から前記予測誤差パラメータを更新し、
前記演算部が、前記回帰モデルに従い前記予測誤差パラメータによって前記出力パラメータを更新し、
前記第2のトランジスタのゲートと、前記第1の容量素子の一方の電極と、前記第2の容量素子の一方の電極とが接続される第1配線に、前記演算部から前記第1画像信号が与えられ、
前記第4のトランジスタのソースまたはドレインの他方と、前記第2の容量素子の他方の電極とが接続される第2配線に、前記演算部から前記ソースドライバを介して前記出力パラメータが与えられ、
前記出力パラメータにより、前記第2の容量素子を介して、前記第1画像信号を補正して第2画像信号を生成し、
前記発光素子は、前記第2画像信号によって点灯する、表示装置。
【請求項2】
請求項1において、前記回帰モデルは状態方程式に基づくカルマンフィルタである表示装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
モニタ回路を有し、
前記モニタ回路は、モニタ用トランジスタを有し、
前記演算部には、前記モニタ用トランジスタに流れる第2電流値、もしくは前記第2電流値が変換された第2電圧値を第3観測信号として与え、
前記演算部が、前記第1観測信号、前記第2観測信号、前記第3観測信号を用いて前記予測誤差パラメータを更新する、表示装置。
【請求項4】
請求項1または2において、
モニタ回路を有し、
前記モニタ回路は、モニタ用発光素子を有し、
前記演算部には、前記モニタ用発光素子に流れる第3電流値、もしくは前記第3電流値が変換された第3電圧値を第4観測信号として与え、
前記演算部が、前記第1観測信号、前記第2観測信号、前記第4観測信号を用いて前記予測誤差パラメータを更新する、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、表示装置、表示装置の駆動方法に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の一態様の技術分野は、物、方法、又は、製造方法に関する。又は、本発明は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、又は、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。特に、本発明の一態様は、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、記憶装置、それらの駆動方法、又はそれらの製造方法に関する。
【0003】
なお、本明細書等において、半導体装置は、半導体特性を利用することで機能しうる素子、回路、又は装置等を指す。一例としては、トランジスタ、ダイオード等の半導体素子は半導体装置である。また別の一例としては、半導体素子を有する回路は、半導体装置である。また別の一例としては、半導体素子を有する回路を備えた装置は、半導体装置である。
【背景技術】
【0004】
近年、発光素子を用いた表示装置の開発が盛んに行われている。特に、LED(Light Emitting Diode)、OLED(Organic LED)、QLED(Quantum-dot LED)、半導体レーザ等の発光素子を用いる表示装置は、携帯電話、スマートフォン、タブレット、電子ブック、ゲーム装置、携帯音楽プレーヤ、デジタルカメラ、等のモバイル機器、モニタ、TV、デジタルサイネージ、医療機器等の電子機器、車載用電子機器等のヒューマンインターフェースとして現代の情報化社会に不可欠なものになっている。
【0005】
ヒューマンインターフェースとして機能する表示装置は、表示品質が安定していることが求められている。表示品質は、表示装置に用いられるトランジスタ、発光素子の劣化、ばらつきなどにより影響を受けることが知られている。トランジスタが劣化し発光素子に与える電流の大きさが変化すると発光素子の光出力特性が低下し表示品質が劣化する。
【0006】
例えば特許文献1では、発光素子に電流を与えるトランジスタの閾値電圧を補正する駆動方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-256032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発光素子を用いた表示装置では、発光素子に電流を与えるトランジスタの閾値電圧を補正し、発光素子に与える電流を安定させる駆動方法が提案されている。しかしながら、表示品質は、発光素子に電流を与えるトランジスタの特性だけでなく、発光素子の特性にも依存するため、トランジスタの閾値電圧を補正する方法だけでは、発光素子の劣化を補正できず、その結果、表示品質が劣化する課題がある。
【0009】
上記課題に鑑み、本発明の一態様は、新規な表示装置の駆動方法を提供することを課題の一とする。又は、本発明の一態様は、トランジスタの劣化を補正する駆動方法を提供することを課題の一とする。又は、本発明の一態様は、発光素子の劣化を補正する駆動方法を提供することを課題の一とする。
【0010】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【0011】
なお本発明の一態様の課題は、上記列挙した課題に限定されない。上記列挙した課題は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお他の課題は、以下の記載で述べる、本項目で言及していない課題である。本項目で言及していない課題は、当業者であれば明細書又は図面等の記載から導き出せるものであり、これらの記載から適宜抽出することができる。なお、本発明の一態様は、上記列挙した課題、及び/又は他の課題のうち、少なくとも一つの課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、表示装置が有する画素の劣化量を推定し、画素に与える第1画像信号を補正する表示装置の駆動方法である。表示装置は、表示パネル、フレームメモリ、及び演算部を有する。表示パネルは、複数の画素を有する。画素は、発光素子と、前記発光素子に電流を与えるトランジスタとを有する。演算部は、回帰モデルに従って演算する機能を有する。演算部には、第1観測信号と、第2観測信号とが与えられる。第1観測信号は、フレームメモリから演算部に与えられる第3画像信号であり、第2観測信号は、画素が有する発光素子、又は発光素子に電流を与えるトランジスタのいずれか一に流れる第1電流値、もしくは第1電流値が変換された第1電圧値である。演算部には、予測誤差パラメータと、出力パラメータが設定される。演算部が、回帰モデルに従い第1観測信号と第2観測信号から予測誤差パラメータを更新し、回帰モデルに従い予測誤差パラメータによって出力パラメータを更新し、フレームメモリから与えられる第1画像信号を出力パラメータによって補正して第2画像信号を生成し、発光素子が、画素が有するトランジスタに与えられる第2画像信号によって点灯する表示装置の駆動方法である。
【0013】
本発明の一態様は、表示装置が有する画素の劣化量を推定し、画素に与える第1画像信号を補正する表示装置の駆動方法である。表示装置は、表示パネル、フレームメモリ、及び演算部を有する。表示パネルは、複数の画素を有する。画素は、発光素子と、前記発光素子に電流を与えるトランジスタとを有する。演算部は、回帰モデルに従って演算する機能を有する。演算部には、不定期に更新される予測誤差パラメータと、出力パラメータが設定される。演算部が、回帰モデルに従いあらかじめ設定されている予測誤差パラメータによって出力パラメータを更新し、フレームメモリから与えられる第1画像信号を出力パラメータによって補正して第2画像信号を生成し、発光素子が、画素が有するトランジスタに与えられる第2画像信号によって点灯する表示装置の駆動方法である。
【0014】
本発明の一態様は、表示装置が有する画素の劣化量を推定し、画素に与える第1画像信号を補正する表示装置の駆動方法である。表示装置は、表示パネル、フレームメモリ、及び演算部を有する。表示パネルは、複数の画素を有する。画素は、発光素子と、発光素子に電流を与えるトランジスタとを有する。演算部は、回帰モデルに従って演算する機能を有する。演算部には、第1観測信号と、第2観測信号とが与えられる。第1観測信号は、フレームメモリから演算部に与えられる第3画像信号である。第2観測信号は、画素が有する発光素子、又は発光素子に電流を与えるトランジスタのいずれか一に流れる第1電流値、もしくは第1電流値が変換された第1電圧値である。演算部には、予測誤差パラメータと、出力パラメータが設定される。演算部が、回帰モデルに従い第1観測信号と第2観測信号から予測誤差パラメータを更新する。演算部が、回帰モデルに従い予測誤差パラメータによって出力パラメータを更新する。画素には、フレームメモリから与えられる第1画像信号と、出力パラメータとが与えられる。画素が、第1画像信号を出力パラメータによって補正して第2画像信号を生成する。発光素子が、画素が生成する第2画像信号によって点灯する表示装置の駆動方法である。
【0015】
上記各構成において、回帰モデルは状態方程式に基づくカルマンフィルタである表示装置の駆動方法が好ましい。
【0016】
上記各構成において、表示装置は、モニタ回路を有し、モニタ回路は、モニタ用トランジスタを有し、演算部には、モニタ用トランジスタに流れる第2電流値、もしくは第2電流値が変換された第2電圧値を第3観測信号として与え、演算部が、第1観測信号、第2観測信号、第3観測信号を用いて予測誤差パラメータを更新する表示装置の駆動方法が好ましい。
【0017】
上記各構成において、表示装置は、モニタ回路を有し、モニタ回路は、モニタ用発光素子を有し、演算部には、モニタ用発光素子に流れる第3電流値、もしくは第3電流値が変換された第3電圧値を第3観測信号として与え、演算部が、第1観測信号、第2観測信号、第3観測信号を用いて予測誤差パラメータを更新する表示装置の駆動方法が好ましい。
【0018】
上記各構成において、表示装置は、トランジスタを有し、トランジスタは、半導体層に金属酸化物を有する表示装置の駆動方法が好ましい。
【0019】
上記各構成において、半導体層に金属酸化物を有するトランジスタは、バックゲートを有する表示装置の駆動方法が好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様は、新規な表示装置の駆動方法を提供することができる。又は、本発明の一態様は、トランジスタの劣化を補正する駆動方法を提供することができる。又は、本発明の一態様は、発光素子の劣化を補正する駆動方法を提供することができる。
【0021】
なお本発明の一態様の効果は、上記列挙した効果に限定されない。上記列挙した効果は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお他の効果は、以下の記載で述べる、本項目で言及していない効果である。本項目で言及していない効果は、当業者であれば明細書又は図面等の記載から導き出せるものであり、これらの記載から適宜抽出することができる。なお、本発明の一態様は、上記列挙した効果、及び/又は他の効果のうち、少なくとも一つの効果を有するものである。したがって本発明の一態様は、場合によっては、上記列挙した効果を有さない場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】表示装置を説明する図。
図2】(A)画素を説明する図。(B)モニタ回路を説明する回路図。(C)表示装置を説明する図。
図3】表示装置の動作を説明するフローチャート。
図4】(A)(B)表示装置を説明する図。
図5】(A1)(A2)モニタ回路を説明する図。(B)表示装置を説明する図。
図6】表示装置を説明する図。
図7】(A)表示装置を説明する図。(B)画素を説明する図。
図8】表示装置を説明する図。
図9】タッチパネルを説明する図。
図10】表示装置を説明する図。
図11】表示装置を説明する図。
図12】表示装置を説明する図。
図13】表示装置を説明する図。
図14】表示装置を説明する図。
図15】トランジスタを説明する図。
図16】トランジスタを説明する図。
図17】トランジスタを説明する図。
図18】トランジスタを説明する図。
図19】電子機器を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。ただし、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0024】
また、図面において、大きさ、層の厚さ、又は領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお図面は、理想的な例を模式的に示したものであり、図面に示す形状又は値などに限定されない。
【0025】
また、本明細書にて用いる「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0026】
また、本明細書において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成同士の位置関係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。したがって、明細書で説明した語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0027】
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含む少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイン領域又はドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域又はソース電極)の間にチャネル形成領域を有しており、チャネル形成領域を介して、ソースとドレインとの間に電流を流すことができるものである。なお、本明細書等において、チャネル形成領域とは、電流が主として流れる領域をいう。
【0028】
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0029】
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【0030】
また、本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0031】
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。又は、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0032】
また、本明細書等において、特に断りがない場合、オフ電流とは、トランジスタがオフ状態(非導通状態、遮断状態、ともいう)にあるときのドレイン電流をいう。オフ状態とは、特に断りがない場合、nチャネル型トランジスタでは、ゲートとソースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも低い状態、pチャネル型トランジスタでは、ゲートとソースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも高い状態をいう。例えば、nチャネル型のトランジスタのオフ電流とは、ゲートとソースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも低いときのドレイン電流を言う場合がある。
【0033】
トランジスタのオフ電流は、Vgsに依存する場合がある。したがって、トランジスタのオフ電流がI以下である、とは、トランジスタのオフ電流がI以下となるVgsの値が存在することを言う場合がある。トランジスタのオフ電流は、所定のVgsにおけるオフ状態、所定の範囲内のVgsにおけるオフ状態、又は、十分に低減されたオフ電流が得られるVgsにおけるオフ状態、等におけるオフ電流を指す場合がある。
【0034】
一例として、しきい値電圧Vthが0.5Vであり、Vgsが0.5Vにおけるドレイン電流が1×10-9Aであり、Vgsが0.1Vにおけるドレイン電流が1×10-13Aであり、Vgsが-0.5Vにおけるドレイン電流が1×10-19Aであり、Vgsが-0.8Vにおけるドレイン電流が1×10-22Aであるようなnチャネル型トランジスタを想定する。当該トランジスタのドレイン電流は、Vgsが-0.5Vにおいて、又は、Vgsが-0.5V乃至-0.8Vの範囲において、1×10-19A以下であるから、当該トランジスタのオフ電流は1×10-19A以下である、と言う場合がある。当該トランジスタのドレイン電流が1×10-22A以下となるVgsが存在するため、当該トランジスタのオフ電流は1×10-22A以下である、と言う場合がある。
【0035】
また、本明細書等では、チャネル幅Wを有するトランジスタのオフ電流を、チャネル幅Wあたりを流れる電流値で表す場合がある。また、所定のチャネル幅(例えば1μm)あたりを流れる電流値で表す場合がある。後者の場合、オフ電流の単位は、電流/長さの次元を持つ単位(例えば、A/μm)で表される場合がある。
【0036】
トランジスタのオフ電流は、温度に依存する場合がある。本明細書において、オフ電流は、特に記載がない場合、室温、60℃、85℃、95℃、又は125℃におけるオフ電流を表す場合がある。又は、当該トランジスタが含まれる半導体装置等の信頼性が保証される温度、又は、当該トランジスタが含まれる半導体装置等が使用される温度(例えば、5℃乃至35℃のいずれか一の温度)におけるオフ電流、を表す場合がある。トランジスタのオフ電流がI以下である、とは、室温、60℃、85℃、95℃、125℃、当該トランジスタが含まれる半導体装置等の信頼性が保証される温度、又は、当該トランジスタが含まれる半導体装置等が使用される温度(例えば、5℃乃至35℃のいずれか一の温度)、におけるトランジスタのオフ電流がI以下となるVgsの値が存在することを指す場合がある。
【0037】
トランジスタのオフ電流は、ドレインとソースの間の電圧Vdsに依存する場合がある。本明細書において、オフ電流は、特に記載がない場合、Vdsが0.1V、0.8V、1V、1.2V、1.8V、2.5V、3V、3.3V、10V、12V、16V、又は20Vにおけるオフ電流を表す場合がある。又は、当該トランジスタが含まれる半導体装置等の信頼性が保証されるVds、又は、当該トランジスタが含まれる半導体装置等において使用されるVdsにおけるオフ電流、を表す場合がある。トランジスタのオフ電流がI以下である、とは、Vdsが0.1V、0.8V、1V、1.2V、1.8V、2.5V、3V、3.3V、10V、12V、16V、20V、当該トランジスタが含まれる半導体装置等の信頼性が保証されるVds、又は、当該トランジスタが含まれる半導体装置等において使用されるVds、におけるトランジスタのオフ電流がI以下となるVgsの値が存在することを指す場合がある。
【0038】
上記オフ電流の説明において、ドレインをソースと読み替えてもよい。つまり、オフ電流は、トランジスタがオフ状態にあるときのソースを流れる電流を言う場合もある。
【0039】
また、本明細書等では、オフ電流と同じ意味で、リーク電流と記載する場合がある。また、本明細書等において、オフ電流とは、例えば、トランジスタがオフ状態にあるときに、ソースとドレインとの間に流れる電流を指す場合がある。
【0040】
なお、電圧とは2点間における電位差のことをいい、電位とはある一点における静電場の中にある単位電荷が持つ静電エネルギー(電気的な位置エネルギー)のことをいう。ただし、一般的に、ある一点における電位と基準となる電位(例えば接地電位)との電位差のことを、単に電位もしくは電圧と呼び、電位と電圧が同義語として用いられることが多い。このため、本明細書では特に指定する場合を除き、電位を電圧と読み替えてもよいし、電圧を電位と読み替えてもよいこととする。
【0041】
(実施の形態1)
本実施の形態では、表示品質の劣化を抑制する表示装置の駆動方法について、図1乃至図7を用いて説明する。表示品質の劣化とは、画素が有するトランジスタ又は発光素子の電気特性が変化することで与えられた画像信号とは異なる階調で表示されることを示す。
【0042】
まず、表示装置の構成について説明する。表示装置は、表示パネル、演算部、フレームメモリ、及びタイミング制御部を有する。表示パネルは、ソースドライバ、ゲートドライバ、表示領域及びモニタ回路を有する。表示領域は、複数の画素を有し、画素は、発光素子と、前記発光素子に電流を与えるトランジスタとを有する。
【0043】
表示装置が有する演算部は、回帰モデルに従って予測誤差パラメータと、出力パラメータとを用いて画素の劣化量を推定し、画素に与える画像信号を補正することができる。言い換えると、演算部は、フレームメモリから与えられる画像信号を回帰モデルに従って補正し、補正後の画像信号を画素に与えることで表示品質の劣化を抑制することができる。
【0044】
回帰モデルは、カルマンフィルタなどを用いることが好ましい。但し、回帰モデルは、カルマンフィルタに限定されず、最小二乗法などによって推定してもよい。又はニューラルネットワークを用いて推定してもよい。例えば、再帰型ニューラルネットワーク(recurrent neural network:RNN)の一つとして、Long Short-Term Memory(LSTM:長・短期記憶)と呼ばれる構成を用いることができる。LSTMは、RNNにおいて隠れ層がメモリセルを有することにより状態を記憶し、より長い期間について解析、例えば推定などを行うことができるため、トランジスタ又は発光素子の劣化量を推定し補正をすることができる。
【0045】
続いて表示装置の駆動方法について演算部に着目して説明する。演算部には、第1観測信号と、第2観測信号とが与えられる。第1観測信号とは、フレームメモリから演算部に与えられる第3画像信号である。第3画像信号は、画素に与えられている画像信号である。
【0046】
第2観測信号とは、第3画像信号が与えられた画素の発光素子、又は発光素子に電流を与えるトランジスタのいずれか一に流れる第1電流値である。例えば、画素は、ある時刻にトランジスタに流れる電流を第1電流値として出力する。また、画素は異なる時刻において発光素子に流れる電流を第1電流値としてもよい。なお、演算部には、第2観測信号として第1電流値を電圧値に変換して与えてもよい。電流値から電圧値に変換する方法としては、抵抗素子、容量素子、ダイオード、又はトランジスタなどを用いて容易に変換する方法がある。
【0047】
演算部には、予測誤差パラメータと、出力パラメータとを有し、あらかじめ学習済の回帰モデルとして機能するための出力パラメータが設定されていることが好ましい。以降では、予測誤差パラメータ、又は出力パラメータについて説明をする。
【0048】
演算部が、回帰モデルに従い対象画素の第1観測信号と第2観測信号を用いて予測誤差パラメータを更新する。続いて演算部が、回帰モデルに従い予測誤差パラメータを用いて出力パラメータを更新する。続いて演算部が、前記フレームメモリから与えられる第1画像信号を出力パラメータを用いて補正し第2画像信号を生成する。発光素子は、第2画像信号が画素が有するトランジスタに与えられることで点灯する。予測誤差パラメータと出力パラメータとが常に更新されることで第1画像信号が好適に逐次補正され、第2画像信号を生成することができる。なお、演算部には、生成された第2画像信号が与えられ出力パラメータが更新される。
【0049】
また、異なる例として、出力パラメータが前記フレームメモリから与えられる第1画像信号を補正して第2画像信号を生成してもよい。この場合、出力パラメータは、不定期に与えられる第1観測信号、第2観測信号によってあらかじめに更新されている予測誤差パラメータを用いて第2画像信号を生成する。発光素子は、出力パラメータによって生成される第2画像信号が画素が有するトランジスタに与えられることで点灯する。
【0050】
つまり、演算部は、出力パラメータを用いて第1画像信号から第2画像信号を生成することができる。常に予測誤差パラメータと出力パラメータとが更新されなくても、当該予測誤差パラメータは、トランジスタ、又は発光素子の劣化特性に応じて適時更新されればよい。したがって予測誤差パラメータと出力パラメータとが異なるタイミングで更新されても第1画像信号を補正し第2画像信号を生成することができる。なお、当該予測誤差パラメータが不定期に更新されるため、逐次性は低下するが演算部の演算量を低減し消費電力を低減することができる。
【0051】
表示パネルが有するモニタ回路は、画素が有する発光素子に電流を与えるトランジスタと同じ大きさのチャネル形成領域及び電気特性を有するモニタ用トランジスタを有することができる。もしくは、チャネル幅の大きなモニタ用トランジスタを用いてもよい。チャネル幅の大きなモニタ用トランジスタを用いることで、トランジスタの電気特性の劣化量が検出しやすくなる。
【0052】
演算部には、モニタ用トランジスタに流れる第2電流値を第3観測信号として与えることができる。したがって、演算部は、第1観測信号、第2観測信号、及び第3観測信号を用いて予測誤差パラメータを更新することが好ましい。当該トランジスタとは異なるモニタ用トランジスタの劣化量と比較することで情報が多くなり、より正確に補正できるようになる。なお、第3観測信号は、第2電流値を第2電圧値に変換して与えてもよい。
【0053】
また、モニタ回路は、モニタ用発光素子を有することができる。モニタ回路は、画素が有する発光素子と同じ大きさ及び電気特性を有するモニタ用発光素子を有することが好ましい。演算部には、モニタ用発光素子に流れる第3電流値を第4観測信号として与えることができる。したがって、演算部が、第1観測信号、第2観測信号、第4観測信号を用いて予測誤差パラメータを更新する。当該発光素子とは異なるモニタ用発光素子の劣化量と比較することで誤差を予測するための情報が多くなり、より正確に補正できるようになる。なお、第4観測信号は、第3電流値を第3電圧値に変換して与えてもよい。
【0054】
なお、モニタ用トランジスタと、モニタ用発光素子とを同時に用いて予測誤差パラメータを更新してもよい。例えば、演算部が、第1観測信号、第2観測信号、第3観測信号、及び第4観測信号を用いて予測誤差パラメータを更新する。当該トランジスタとは異なるモニタ用トランジスタ、当該発光素子とは異なるモニタ用発光素子の劣化量と比較することで誤差を予測するための情報が多くなり、正確に補正できるようになる。
【0055】
さらに、表示装置は、モニタ用光センサを有することができる。モニタ用光センサは、モニタ用発光素子と組み合わせて使用することが好ましい。モニタ用発光素子の劣化量を電流の変化だけで判断せず、モニタ用光センサが検出する第4電流値を第5観測信号として演算部に与えることができる。演算部は、第1観測信号乃至第5観測信号を用いて予測誤差パラメータを更新する。当該トランジスタ、当該発光素子とは異なるモニタ用トランジスタ、モニタ用発光素子の劣化量と比較することで誤差を予測するための情報が多くなり、より正確に補正できるようになる。なお、第5観測信号は、第4電流値を第4電圧値に変換して与えてもよい。
【0056】
演算部には、あらかじめ学習済の出力パラメータが設定されることが好ましい。さらに、第1観測信号乃至第5観測信号のいずれか2つ、若しくは2つ以上を組み合わせて予測誤差パラメータを更新することで、画素の劣化量に応じて正確に補正することができる。つまり、本発明の一態様は、新規な表示装置の表示品質に影響を及ぼす画素の劣化を補正する駆動方法を提供することができる。又は、本発明の一態様は、表示品質に影響を及ぼすトランジスタの劣化を補正する駆動方法を提供することができる。又は、本発明の一態様は、表示品質に影響を及ぼす発光素子の劣化を補正する駆動方法を提供することができる。
【0057】
続いて、表示装置の構成について図1で示す表示装置のブロック図を用いて詳細な説明をする。
【0058】
表示装置100は、表示パネル120、演算部130、フレームメモリ111、及びタイミング制御部112を有する。演算部は、第1演算部131、第2演算部132、及び補正演算部133を有する。表示パネル120は、ソースドライバ121、ゲートドライバ122、表示領域123、及びモニタ回路124を有する。表示領域123は画素10(1,1)乃至画素10(m、n)を有する。図1では、一例として画素10(i、j)を示している。m、nは2以上の正の整数であり、iは、1以上m以下の正の整数であり、jは、1以上n以下の正の整数である。
【0059】
演算部130には、フレームメモリ111、タイミング制御部112、及びモニタ回路124が電気的に接続される。演算部130は、ソースドライバ121と電気的に接続する。表示領域123には、ソースドライバ121、及びゲートドライバ122が電気的に接続される。表示領域123は、モニタ回路124を介して演算部130と電気的に接続する。
【0060】
演算部130は、複数のパラメータを有し、当該パラメータは、複数の観測信号によって演算、又は更新される。なお、パラメータの演算、又は更新を、パラメータを管理すると言い換える場合がある。観測信号とは、画素に流れる電流の劣化量であることが好ましい。画素に流れる電流の劣化量とは、例えば、画素が有する発光素子に流れる電流値の劣化量、発光素子に電流を与えるトランジスタが流す電流値の劣化量、もしくは発光素子の光出力特性の劣化量などである。画素10については、図2(A)で詳細な説明をする。
【0061】
また、当該パラメータは、予測誤差パラメータと、出力パラメータとに大別され管理される。予測誤差パラメータは、第1演算部131によって管理されるパラメータであり、出力パラメータは、第2演算部132によって管理されるパラメータである。第1演算部は、カルマンフィルタの演算をし、第2演算部は内部状態モデルの演算をする。第2演算部が出力するパラメータには、例えば、トランジスタの閾値電圧、移動度などが含まれることが好ましい。さらに、出力パラメータの内容は、第1演算部にフィードバックされる。また、補正演算部133は、出力パラメータを用いてフレームメモリ111から与えられる画像信号Data-Aから画像信号Data-Bを生成することができる。
【0062】
演算部130は、回帰モデルに従って予測誤差パラメータと、出力パラメータとを用いて画素10の劣化量を推定し、画素10に与える画像信号を補正することができる。言い換えると、演算部130は、フレームメモリ111から与えられる画像信号Data-Aを回帰モデルに従って補正し、画像信号Data-Aから生成される画像信号Data-Bを画素に与えることで表示品質の劣化を抑制することができる。回帰モデルは、カルマンフィルタなどを用いることが好ましい。
【0063】
さらに、補正演算部133は、画素10にソースドライバ121を介して画像信号Data-Bを与え、且つ第2演算部132にも画像信号Data-Bを与えることが好ましい。画像信号Data-Bが、第2演算部132に与えられることで、出力パラメータが更新され、次の画像信号Data-Bを生成する場合の学習データとすることができる。
【0064】
なお、タイミング制御部112は、演算部130、及びゲートドライバ122のタイミング制御を行う。ゲートドライバ122は、表示領域123に対して走査信号を与えることができ、ソースドライバ121は、演算部130が出力する画像信号Data-Bを走査信号に同期して画素10に与えることができる。また、タイミング制御部112は、ゲートドライバ122を用いて画素10がモニタ回路124に観測信号を出力するタイミングを制御することができる。
【0065】
続いて、表示装置の駆動方法について図2を用いて詳細な説明をする。図2(A)は、一例として表示パネル120が有する画素10の詳細な回路図を示す。図2(B)は、一例としてモニタ回路124の回路図を示す。図2(C)は、一例として演算部130の詳細なブロック図を示す。
【0066】
図2(A)に示す画素10には、配線G1、配線G2、配線S1、配線MN1、配線Ano、及び配線Cathが接続される。画素10は、トランジスタ11、トランジスタ12、トランジスタ13、容量素子14、発光素子15を有する。
【0067】
トランジスタ11のゲートは、配線G1と電気的に接続される。トランジスタ11のソース又はドレインの一方は、配線S1と電気的に接続される。トランジスタ11のソース又はドレインの他方は、トランジスタ12のゲート、及び容量素子14の電極の一方と電気的に接続される。トランジスタ12のソース又はドレインの一方は、発光素子15の電極の一方、トランジスタ13のソース又はドレインの一方、及び容量素子14の電極の他方と電気的に接続される。トランジスタ12のソース又はドレインの他方は、配線Anoと電気的に接続される。発光素子15の電極の他方は、配線Cathと電気的に接続される。トランジスタ13のソース又はドレインの他方は、配線MN1と電気的に接続される。
【0068】
画素10は、配線G1、及び配線G2を介してゲートドライバ122から異なる走査信号が与えられる。また、画素10は、配線S1を介して画像信号Data-Bが与えられる。また、画素10は、配線MN1を介して画素10に流れる電流をモニタ回路124を介して観測信号DA2として出力する。なお、観測信号は、トランジスタ12を流れる電流、又は、発光素子15に流れる電流のいずれかである。観測信号DA2については、図2(C)にて詳細に説明する。
【0069】
なお、トランジスタは、高純度化し、酸素欠損の形成を抑制した酸化物半導体膜を有すると好ましい。当該トランジスタは、オフ電流を低くできる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くできる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくできるため、消費電力を低減する効果を有する。酸化物半導体膜を有する当該トランジスタについては、実施の形態5で詳細な説明をする。
【0070】
続いて、モニタ回路124の詳細について図2(B)の回路図を用いて説明する。
【0071】
例えば、モニタ回路124には、配線MN1と同じ数の端子M1(1)乃至端子M1(m)、及び端子M2(1)乃至端子M2(m)を有している。それぞれの端子M1と端子M2は電気的に接続されている。なお、端子M1は、電流電圧変換素子16を介して端子M2と接続されてもよく、電流電圧変換素子16を介さずに端子M2と接続されてもよい。端子M2は、観測信号DA2を第1演算部131に与えることができる。
【0072】
さらに、モニタ回路124は、モニタ用のトランジスタ12Tを有してもよい。トランジスタ12Tのソース又はドレインの一方は、端子M3aと電気的に接続される。トランジスタ12Tのソース又はドレインの他方は、端子M3bと電気的に接続される。トランジスタ12Tのゲートは、端子M3cと電気的に接続される。端子M3bは、第1演算部131に観測信号DA3を与えることができる。端子M3aには、固定電位が与えられ、端子M3cには、モニタ用画像信号が与えられる。モニタ用画像信号には、異なる電位のモニタ用画像信号が与えられ、トランジスタ12Tの劣化量を検出することができる。
【0073】
なお、トランジスタ12Tは、トランジスタ12と同じ大きさのチャネル形成領域及び電気特性を有するトランジスタであることが好ましい。もしくは、チャネル幅の大きなトランジスタを用いてもよい。チャネル幅の大きなトランジスタを用いることで、トランジスタ12Tの電気特性の劣化量は、検出しやすくなる。
【0074】
続いて、演算部130の詳細について図2(C)のブロック図を用いて説明する。演算部130は、第1演算部131、第2演算部132、及び補正演算部133を有する。第1演算部131には、観測信号DA1、観測信号DA2、観測信号DA3が与えられる。
【0075】
観測信号DA1には、フレームメモリから画像信号が与えられる。演算部130によって画像信号Data-Aから生成する画像信号を画像信号Data-Bとした場合、既に対象の画素10に与えられている画像信号を画像信号Data-Cとすることができる。つまり、観測信号DA1には、画像信号Data-Cが与えられる。
【0076】
観測信号DA2には、画素10に与えられている画像信号Data-Cによってトランジスタ12に流れる電流が、順にトランジスタ13、配線MN1、モニタ回路124を介して与えられる。なお、観測信号DA2には、発光素子15に流れる電流が、順にトランジスタ13、配線MN1、モニタ回路124を介して与えられてもよい。ただし、観測信号DA2に発光素子15に流れる電流を与える場合は、トランジスタ12には電流が流れないようにすることが好ましい。例えば、配線Anoに与える電位と、配線MN1に与える電位を同じ電位にすることでトランジスタ12には電流が流れなくなる。さらに、配線Cathに与えられる電位を、配線Ano及び配線MN1に与えられる電位より小さくし、発光素子15だけに電流が流れるようにすることができる。
【0077】
発光素子15の劣化量は、発光素子15に流れる電流と発光素子15の光出力特性が線形の関係にある領域で劣化量を検出することが好ましい。又は、発光素子15の劣化量の検出は、電流と光出力特性が線形の関係でない領域で劣化量を検出してもよい。例えば、発光素子が非点灯の場合の電流、もしくは発光素子のカソード端子にアノード端子より大きな電圧を与えた場合に流れる逆バイアス電流を観測信号DA2としてもよい。なお、観測信号DA2は、電流電圧変換素子16によって電圧値に変換されてもよい。
【0078】
第1演算部131は、2つの異なる観測データが与えられれば、予測誤差パラメータを更新することができる。ただし、第1演算部131は、例えば観測信号DA3のようにさらに多くの観測信号が与えられればより正確な予測誤差パラメータに更新することができる。したがって、第1演算部131には、二つ以上の観測信号が与えられることが好ましく、より好ましくは、三つ以上の観測信号が与えられることが好ましい。
【0079】
第1演算部131が算出する予測誤差パラメータDP1は、第2演算部132に与えられる。第2演算部132は、予測誤差パラメータDP1によって出力パラメータDQ1を更新し、出力パラメータDQ1は補正演算部133に与えられる。なお、第2演算部132は、補正演算部133に新たに画像信号Data-Aが与えられる前の画像信号Data-Bによって出力パラメータDQ1が更新されていることが好ましい。
【0080】
補正演算部133は、フレームメモリ111から与えられる、新たな画像信号Data-Aを出力パラメータDQ1を用いて画像信号Data-Bを生成し、画素10に与えることができる。なお、生成された画像信号Data-Bは、第2演算部132に与えられ、出力パラメータDQ1を更新することができる。
【0081】
なお、信号EN1は、第1演算部131をスリープ状態にすることができる。第1演算部131をスリープ状態にすることで、消費電力を低減することができる。また、信号EN2は、スイッチSW1を制御し、画像信号Data-Bによって出力パラメータDQ1が更新されるのを停止させることができる。
【0082】
続いて、演算部130の動作を図3の処理フローを用いて説明する。
【0083】
ステップST21は、第2演算部132が出力パラメータDQ1を出力するように学習済の状態である。なお、第1演算部131には、出力パラメータDQ1が与えられている。なお、画素10には、画像信号Data-Cが補正されて生成された画像信号が与えられている。
【0084】
ステップST22は、新たな画像信号Data-Aが補正演算部133に与えられるステップである。
【0085】
ステップST23は、演算部130がパラメータ更新モードを選択する。パラメータ更新モードは、第1演算部131に与えられる信号EN1によってモードが選択される。例えば、信号EN1に“H”が与えられた場合を補正モードとし予測誤差パラメータDP1を更新するためにステップST2Aに移行する。信号EN1に“L”が与えられた場合を表示モードとし予測誤差パラメータDP1を更新せずに出力パラメータDQ1を更新するためにステップST24に移行する。まず最初に、パラメータ更新モードについて説明する。信号EN1に“H”が与えられステップST2Aに移行する。
【0086】
ステップST2Aは、観測信号DA1、観測信号DA2が第1演算部131に与えられる。第1演算部131は、観測信号DA1、観測信号DA2を用いて予測誤差パラメータDP1を更新し、第2演算部132に予測誤差パラメータDP1を与えるステップである。なお、第1演算部131には、観測信号DA3など、より多くの観測信号が与えられることが好ましい。
【0087】
ステップST2Bは、第2演算部132が予測誤差パラメータDP1を用いて出力パラメータDQ1を更新し、補正演算部133に与えるステップである。なお、出力パラメータDQ1は、第1演算部131にも与えられる。
【0088】
ステップST25は、補正演算部133が出力パラメータDQ1を用いて画像信号Data-Aから画像信号Data-Bを生成するステップである。
【0089】
ステップST26は、ソースドライバが画像信号Data-Bを画素10に与えるステップである。
【0090】
ステップST27は、第2演算部132に画像信号Data-Bが与えられ、出力パラメータDQ1を更新するステップである。再び、ST23に移行し、補正モードが継続されている場合には、次の画素に移行し、再び予測誤差パラメータDP1、及び出力パラメータDQ1を更新して画素の劣化量を学習する。なお、予測誤差パラメータDP1を更新する処理においては、画像信号Data-Aに補正用テスト信号が与えられることが好ましい。補正用テスト信号とは、トランジスタ12、発光素子15の劣化量を検出するのに好適な固定された画像信号Data-Aである。
【0091】
続いて、ST23において補正モードから表示モードに移行した場合について説明する。表示モードでは、様々な階調の画像信号が画像信号Data-A、又は画像信号Data-Cに与えられることが好ましい。
【0092】
ステップST24は、補正演算部133に新たな画像信号Data-Aが与えられるステップである。第2演算部132には、当該補正モードによって更新された予測誤差パラメータDP1が与えられ、さらに当該画像信号Data-Bによって出力パラメータDQ1が更新されている。
【0093】
ステップST25は、補正演算部133が出力パラメータDQ1を用いて画像信号Data-Aから画像信号Data-Bを生成するステップである。
【0094】
ステップST26は、ソースドライバが画像信号Data-Bを画素10に与えるステップである。画像データData-Bが与えられる画素10は、トランジスタ12、発光素子15の劣化が補正された表示をすることができる。
【0095】
ステップST27は、第2演算部132に画像信号Data-Bが与えられ、出力パラメータDQ1を更新するステップである。再び、ST23に移行し、表示モードが継続されている場合には、次の画素に移行し、表示モードの動作を継続する。
【0096】
図2(C)と異なる表示装置の詳細について、図4(A)を用いて説明をする。図4(A)は、回路134を有する。補正演算部133は、回路134を介してスイッチSW1と接続される。
【0097】
続いて回路134の詳細について、図4(B)のブロック図を用いて説明する。回路134は、回路134A、回路134B、及び回路134Cを有している。回路134Aは、レジスタ134A(1)乃至レジスタ134A(k)を有するシフトレジスタである。kは、正の整数、且つ2の累乗であることが好ましい。
【0098】
例えば、第1の時刻においてレジスタ134A(1)には、画素10(i,j)に与える画像信号Data-B(i,j)が与えられる。
【0099】
第2の時刻においてレジスタ134A(2)には、レジスタ134A(1)に保持されている画像信号Data-B(i,j)が、画像信号Data-B((i,j)+1)として与えられ、レジスタ134A(1)には、画素10(i,j)に与える画像信号Data-B(i,j)が新たに与えられる。
【0100】
第3の時刻においてレジスタ134A(3)には、レジスタ134A(2)に保持されている画像信号Data-B((i,j)+1)が、画像信号Data-B((i,j)+2)として与えられ、レジスタ134A(2)には、レジスタ134A(1)に保持されている画像信号Data-B(i,j)が、画像信号Data-B((i,j)+1)として与えられ、レジスタ134A(1)には、画素10(i,j)に与える画像信号Data-B(i,j)が新たに与えられる。
【0101】
よって、回路134Aは、レジスタ134A1に与えられる画像信号Data-B(i,j)を時刻と共に次のレジスタに保存していくシフトレジスタとして動作する。よって回路134Aは、k段のシフトレジスタである。ただし、第k+1の時刻においては、最初に与えられたレジスタ134A(k)に保持されている画像信号Data-B((i,j)+k)は廃棄される。
【0102】
回路134Bは、加算平均回路で構成される。回路134Bは、レジスタ134A(1)乃至レジスタ134A(k)に保持される画像信号を全て加算する。kが2の累乗の数であるため、シフト演算を行うことでレジスタ134A(1)乃至レジスタ134A(k)に保持される画像信号の加算結果を容易に平均化することができる。例えば、k=8の場合、右へ3ビットシフトさせることで画像信号の加算結果の平均値を得ることができる。
【0103】
回路134Cはレジスタであり、回路134Bで加算平均される結果を画像信号Data-Aveとして保持する。なお、信号EN1は、回路134Cが更新される時刻に合わせてスイッチSW1を導通させ、第2演算部132に画像信号Data-AveをパラメータDP2として与える。又は、回路134Aが有する全てのレジスタに画像信号が保持されるまでスイッチSW1を非導通とし、画像信号Data-Aveが算出された後は、スイッチSW1を導通とすることで、時刻毎に加算平均された結果が与えられ、よって、より多くの観測信号を反映させた効果を得ることができる。
【0104】
なお、回路134Aのレジスタ134A(1)乃至レジスタ134A(k)に保持される画像信号Data-Bは、上述したように同じ画素に与えられる画像信号Data-Bでもよいし、異なる画素に与えられる画像信号Data-Bでもよい。同じ画素に与えられる画像信号Data-Bの場合、同じ画素の劣化量を補正することができる。また、異なる画素に与えられる画像信号Data-Bの場合、隣接する画素の劣化量を反映して補正することができる。
【0105】
図5(A1)は、図2(B)と異なるモニタ回路124Aである。モニタ回路124Aは、画素10と同じ電気的に接続を有するトランジスタ12T1、及び発光素子15T1を有する。
【0106】
トランジスタ12T1のソース又はドレインの一方は、発光素子15T1の電極の一方と電気的に接続される。発光素子15T1の電極の他方は、端子M3a1と電気的に接続される。トランジスタ12T1のソース又はドレインの他方は、端子M3b1と電気的に接続される。トランジスタ12T1のゲートは、端子M3c1と電気的に接続される。
【0107】
端子M3a1には、固定電位が与えられ、端子M3c1には、モニタ用画像信号が与えられる。よって端子M3b1には、トランジスタ12T1、発光素子15T1に流れる電流値が与えられる。モニタ用画像信号によってトランジスタ12T1、発光素子15T1の劣化量を検出することができる。
【0108】
なお、トランジスタ12T1は、トランジスタ12と同じ大きさのチャネル形成領域及び電気特性を有するトランジスタであることが好ましい。もしくは、チャネル幅の大きなトランジスタを用いてもよい。チャネル幅の大きなトランジスタを用いることで、トランジスタ12T1の電気特性の劣化量が検出しやすくなる。
【0109】
モニタ回路124Aは、さらに、発光素子15T2を有することができる。発光素子15T2の電極の一方は端子M2(0)と電気的に接続され、発光素子15T2の電極の他方は端子M1(0)と電気的に接続される。端子M1(0)には、固定電位が与えられる。したがって、端子M2(0)は、発光素子15T2に流れる電流値が与えられる。なお、発光素子15T2は、発光素子15と同じ電気特性、及び光出力特性特性を有する発光素子であることが好ましい。
【0110】
端子M2(0)、又は端子M3b1に与えられる電流値のいずれか一、もしくは両方が、図5(B)で説明する観測信号DB1に与えられる。
【0111】
図5(A2)は、図5(A1)と異なるモニタ回路124Bである。図5(A2)では、モニタ回路124Bが、さらにトランジスタ12T2、及びトランジスタ12T3を有する点が異なっている。以下、図5(A1)と異なる点について説明する。
【0112】
トランジスタ12T2のソース又はドレインの一方は、端子M3a2と電気的に接続される。トランジスタ12T2のソース又はドレインの他方は、端子M3b2と電気的に接続される。トランジスタ12T2のゲートは、端子M3c2と電気的に接続される。
【0113】
トランジスタ12T3のソース又はドレインの一方は、端子M3a3と電気的に接続される。トランジスタ12T3のソース又はドレインの他方は、端子M3b3と電気的に接続される。トランジスタ12T3のゲートは、端子M3c3と電気的に接続される。
【0114】
また、トランジスタ12T1乃至トランジスタ12T3は、トランジスタ12と同じ大きさのチャネル形成領域及び電気特性を有するトランジスタであることが好ましい。端子M3c1乃至端子M3c3に異なるモニタ用画像信号を与えることができる。つまり、トランジスタ12T1乃至トランジスタ12T3が異なる電流値を流すことで異なる動作条件の劣化量を検出することができる。
【0115】
さらに、図5(A2)では、表示装置100がモニタ回路124B2を有し、モニタ回路124B2が光センサP1を有する。光センサP1の電極の一方は、端子MP1と電気的に接続され、光センサP1の電極の他方は、端子MP2と電気的に接続される。光センサP1は、発光素子15T1、又は発光素子15T2のいずれか一の光出力特性を検出し電流として端子MP2に与えることができる。したがって、光センサP1に流れる電流から発光素子15T1、又は発光素子15T2の光出力特性の劣化量を検出することができる。なお、モニタ回路124B2は、表示パネルに含まれていてもよい。
【0116】
なお、端子M3b1乃至端子M3b3に与えられる電流値のいずれか一、もしくは複数は、図5(B)で説明する観測信号DB1に与えられる。端子MP2に与えられる電流値は、図5(B)で説明する観測信号DB2に与えられる。
【0117】
図5(B)は、図2(C)と異なる表示装置である。図5(B)は、演算部130Bを有する。演算部130Bは、第3演算部131aと第4演算部132aとを有する。第3演算部131aは、予測誤差パラメータDP3を有し、第4演算部132aは、出力パラメータDQ2を有する。
【0118】
第3演算部131aには、観測信号DA1、観測信号DB1、又は観測信号DB2が与えられる。第3演算部131aは、予測誤差パラメータDP3を更新し、第4演算部132aに与える。第4演算部132aは、出力パラメータDQ2を更新し、補正演算部133は、出力パラメータDQ1、及び出力パラメータDQ2を用いて画像信号Data-Aから画像信号Data-Bを生成する。画像信号Data-Bは、画素10に与えられ、画素を点灯させる。
【0119】
つまり、第1演算部131は、画素10のトランジスタ12、又は発光素子15の劣化量に着目し、第3演算部131aは、モニタ回路124のトランジスタ12T、又は発光素子15Tの劣化量に着目して予測誤差パラメータDPを管理することができる。画素10では、様々な階調を有する画像信号が与えられることで画素のトランジスタ12、発光素子15の劣化量を検出することができる。対して、モニタ回路124では、任意の条件で固定されたストレスでのモニタ用のトランジスタ12T、又は発光素子15Tの劣化量を検出することができる。
【0120】
したがって、図5(B)で示す表示装置では、複数の観測信号を用いることで画素10のトランジスタ12、又は発光素子15の劣化量を補正し、画素10の表示品質の劣化を抑制することができる。
【0121】
図6は、図5(B)と異なる表示装置である。図6は、図5(B)の演算部130A構成に回路134を組み合わせた構成である。回路134については、図4で示した回路134の説明を参酌することができるため説明を省略する。
【0122】
図7(A)は、図1とは異なる表示装置100Aである。表示装置100Aは、補正演算部133を有さない点が表示装置100と異なっている。さらに、表示パネル120が複数の画素10Aを有する点が異なっている。
【0123】
最初に、画素10Aについて図7(B)の回路図を用いて説明する。ここでは、図2(A)で説明した画素10と異なる点について説明する。表示パネル120は、配線G3を有し、画素10Aは、配線G3と接続される。画素10Aは、さらに、トランジスタ18と、容量素子19とを有する。
【0124】
トランジスタ18のゲートは、配線G3と電気的に接続される。トランジスタ18のソース又はドレインの一方は、配線S1と電気的に接続される。トランジスタ18のソース又はドレインの他方は、容量素子19の電極の一方と電気的に接続される。容量素子19の電極の他方は、トランジスタ12のゲートと電気的に接続される。
【0125】
ノードFN1は、トランジスタ12のゲート、容量素子14の電極の一方、及び容量素子19の電極の他方が接続される配線を示す。ノードFN2は、トランジスタ18のソース又はドレインの他方、容量素子19の電極の一方が接続される配線を示す。
【0126】
再び、図7(A)に説明を戻す。フレームメモリ111は、ソースドライバ121を介して、画素10AのノードFN1に画像信号Data-Aを与えることができる。第2演算部132は、ソースドライバ121を介して画素10AのノードFN2に出力パラメータDQ1を与えることができる。ノードFN2に与えられた出力パラメータDQ1は、容量素子19を介してノードFN1で画像データData-Aと演算され画像信号Data-Bに変化する。したがって、画素10Aは、補正演算部133と同様の演算をすることができる。補正演算部133を有さないことで、回路規模を小さくすることができ、回路規模を小さくすることで消費電力を小さくすることができる。
【0127】
なお、トランジスタ18は、高純度化し、酸素欠損の形成を抑制した酸化物半導体膜を有すると好ましい。当該トランジスタは、オフ電流を低くできる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くできる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくできるため、消費電力を低減する効果を有する。酸化物半導体膜を有する当該トランジスタについては、実施の形態5で詳細な説明をする。
【0128】
なお、本実施の形態は、液晶素子を用いた表示パネルに対しても適用することができる。液晶素子を用いた画素は、トランジスタと、容量素子とによって構成される。半導体層に酸化物半導体膜を有するトランジスタは、バックゲートを有する。当該トランジスタが有するバックゲートを制御することで、当該トランジスタの閾値電圧を制御できることが知られている。したがって当該トランジスタが劣化すると、当該トランジスタの閾値電圧が変化し、表示の階調が変化することが知られている。当該トランジスタのバックゲートに誤差予測パラメータを与えることで閾値電圧を制御し、表示パネルの表示品質が劣化することを抑制することができる。
【0129】
以上、本実施の形態で示す構成、方法は、他の実施の形態で示す構成、方法と適宜組み合わせて用いることができる。
【0130】
(実施の形態2)
本実施の形態では、液晶素子を用いた表示装置の構成例と、発光素子を用いた表示装置の構成例について説明する。なお、本実施の形態においては、実施の形態1で説明した表示装置の要素、動作及び機能の説明は省略する。
【0131】
本実施の形態で説明する表示装置には、実施の形態1で説明した加算回路及び画素を用いることができる。なお、以下に説明する走査線駆動回路はゲートドライバ、信号線駆動回路はソースドライバに相当する。
【0132】
図8(A)において、第1の基板4001上に設けられた表示部215を囲むようにして、シール材4005が設けられ、表示部215がシール材4005及び第2の基板4006によって封止されている。
【0133】
図8(A)では、走査線駆動回路221a、信号線駆動回路231a、信号線駆動回路232a、及び共通線駆動回路241aは、それぞれがプリント基板4041上に設けられた集積回路4042を複数有する。集積回路4042は、単結晶半導体又は多結晶半導体で形成されている。共通線駆動回路241aは、実施の形態1に示した配線Ano、Cathなどに規定の電位を供給する機能を有する。
【0134】
走査線駆動回路221a、共通線駆動回路241a、信号線駆動回路231a、及び信号線駆動回路232aに与えられる各種信号及び電位は、FPC(FPC:Flexible printed circuit)4018を介して供給される。
【0135】
走査線駆動回路221a及び共通線駆動回路241aが有する集積回路4042は、表示部215に選択信号を供給する機能を有する。信号線駆動回路231a及び信号線駆動回路232aが有する集積回路4042は、表示部215に画像データを供給する機能を有する。集積回路4042は、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に実装されている。
【0136】
なお、集積回路4042の接続方法は、特に限定されるものではなく、ワイヤボンディング法、COG(Chip On Glass)法、TCP(Tape Carrier Package)法、COF(Chip On Film)法などを用いることができる。
【0137】
図8(B)は、信号線駆動回路231a及び信号線駆動回路232aに含まれる集積回路4042をCOG法により実装する例を示している。また、駆動回路の一部又は全体を表示部215と同じ基板上に一体形成して、システムオンパネルを形成することができる。
【0138】
図8(B)では、走査線駆動回路221a及び共通線駆動回路241aを、表示部215と同じ基板上に形成する例を示している。駆動回路を表示部215内の画素回路と同時に形成することで、部品点数を削減することができる。よって、生産性を高めることができる。
【0139】
また、図8(B)では、第1の基板4001上に設けられた表示部215と、走査線駆動回路221a及び共通線駆動回路241aと、を囲むようにして、シール材4005が設けられている。また表示部215、走査線駆動回路221a、及び共通線駆動回路241aの上に第2の基板4006が設けられている。よって、表示部215、走査線駆動回路221a、及び共通線駆動回路241aは、第1の基板4001とシール材4005と第2の基板4006とによって、表示素子と共に封止されている。
【0140】
また、図8(B)では、信号線駆動回路231a及び信号線駆動回路232aを別途形成し、第1の基板4001に実装している例を示しているが、この構成に限定されない。走査線駆動回路を別途形成して実装しても良いし、信号線駆動回路の一部又は走査線駆動回路の一部を別途形成して実装しても良い。また、図8(C)に示すように、信号線駆動回路231a及び信号線駆動回路232aを表示部215と同じ基板上に形成してもよい。
【0141】
また、表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む場合がある。
【0142】
また第1の基板上に設けられた表示部及び走査線駆動回路は、トランジスタを複数有している。当該トランジスタとして、上記実施の形態で示したトランジスタを適用することができる。
【0143】
周辺駆動回路が有するトランジスタと、表示部の画素回路が有するトランジスタの構造は同じであってもよく、異なっていてもよい。周辺駆動回路が有するトランジスタは、全て同じ構造であってもよく、2種類以上の構造を組み合わせて用いられていてもよい。同様に、画素回路が有するトランジスタは、全て同じ構造であってもよく、2種類以上の構造を組み合わせて用いられていてもよい。
【0144】
また、第2の基板4006上には入力装置4200を設けることができる。図8(A)乃至(C)に示す表示装置に入力装置4200を設けた構成はタッチパネルとして機能させることができる。
【0145】
本発明の一態様のタッチパネルが有する検知素子(センサ素子ともいう)に限定は無い。指やスタイラスなどの被検知体の近接又は接触を検知することのできる様々なセンサを、検知素子として適用することができる。
【0146】
センサの方式としては、例えば、静電容量方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、光学方式、感圧方式など様々な方式を用いることができる。
【0147】
本実施の形態では、静電容量方式の検知素子を有するタッチパネルを例に挙げて説明する。
【0148】
静電容量方式としては、表面型静電容量方式、投影型静電容量方式等がある。また、投影型静電容量方式としては、自己容量方式、相互容量方式等がある。相互容量方式を用いると、同時多点検知が可能となるため好ましい。
【0149】
本発明の一態様のタッチパネルは、別々に作製された表示装置と検知素子とを貼り合わせる構成、表示素子を支持する基板及び対向基板の一方又は双方に検知素子を構成する電極等を設ける構成等、様々な構成を適用することができる。
【0150】
図9(A)、(B)に、タッチパネルの一例を示す。図9(A)は、タッチパネル4210の斜視図である。図9(B)は、入力装置4200の斜視概略図である。なお、明瞭化のため、代表的な構成要素のみを示している。
【0151】
タッチパネル4210は、別々に作製された表示装置と検知素子とを貼り合わせた構成である。
【0152】
タッチパネル4210は、入力装置4200と、表示装置とを有し、これらを重ねて設けられている。
【0153】
入力装置4200は、基板4263、電極4227、電極4228、複数の配線4237、複数の配線4238及び複数の配線4239を有する。例えば、電極4227は配線4237又は配線4239と電気的に接続することができる。また、電極4228は配線4239と電気的に接続することができる。FPC4272bは、複数の配線4237及び複数の配線4238の各々と電気的に接続する。FPC4272bにはIC4273bを設けることができる。
【0154】
又は、表示装置の第1の基板4001と第2の基板4006との間にタッチセンサを設けてもよい。第1の基板4001と第2の基板4006との間にタッチセンサを設ける場合は、静電容量方式のタッチセンサのほか、光電変換素子を用いた光学式のタッチセンサを適用してもよい。
【0155】
図10(A)、(B)は、図8(B)中でN1-N2の一点鎖線で示した部位の断面図である。図10(A)、(B)に示す表示装置は電極4015を有しており、電極4015はFPC4018が有する端子と異方性導電層4019を介して、電気的に接続されている。また、図10(A)、(B)では、電極4015は、絶縁層4112、絶縁層4111、及び絶縁層4110に形成された開口において配線4014と電気的に接続されている。
【0156】
電極4015は、第1の電極層4030と同じ導電層から形成され、配線4014は、トランジスタ4010、及びトランジスタ4011のソース電極及びドレイン電極と同じ導電層で形成されている。
【0157】
また、第1の基板4001上に設けられた表示部215と走査線駆動回路221aは、トランジスタを複数有しており、図10(A)、(B)では、表示部215に含まれるトランジスタ4010、及び走査線駆動回路221aに含まれるトランジスタ4011を例示している。なお、図10(A)、(B)では、トランジスタ4010及びトランジスタ4011としてボトムゲート型のトランジスタを例示しているが、トップゲート型のトランジスタであってもよい。
【0158】
図10(A)、(B)では、トランジスタ4010及びトランジスタ4011上に絶縁層4112が設けられている。また、図10(B)では、絶縁層4112上に隔壁4510が形成されている。
【0159】
また、トランジスタ4010及びトランジスタ4011は、絶縁層4102上に設けられている。また、トランジスタ4010及びトランジスタ4011は、絶縁層4111上に形成された電極4017を有する。電極4017はバックゲート電極として機能することができる。
【0160】
また、図10(A)、(B)に示す表示装置は、容量素子4020を有する。容量素子4020は、トランジスタ4010のゲート電極と同じ工程で形成された電極4021と、ソース電極及びドレイン電極と同じ工程で形成された電極と、を有する。それぞれの電極は、絶縁層4103を介して重なっている。
【0161】
一般に、表示装置の画素部に設けられる容量素子の容量は、画素部に配置されるトランジスタのリーク電流等を考慮して、所定の期間、電荷を保持できるように設定される。容量素子の容量は、トランジスタのオフ電流等を考慮して設定すればよい。
【0162】
表示部215に設けられたトランジスタ4010は表示素子と電気的に接続する。図10(A)は、表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置の一例である。図10(A)において、表示素子である液晶素子4013は、第1の電極層4030、第2の電極層4031、及び液晶層4008を含む。なお、液晶層4008を挟持するように配向膜として機能する絶縁層4032、絶縁層4033が設けられている。第2の電極層4031は第2の基板4006側に設けられ、第1の電極層4030と第2の電極層4031は液晶層4008を介して重畳する。
【0163】
液晶素子4013として、様々なモードが適用された液晶素子を用いることができる。例えば、VA(Vertical Alignment)モード、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro-cell)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モード、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード、VA-IPSモード、ゲストホストモード等が適用された液晶素子を用いることができる。
【0164】
また、本実施の形態に示す液晶表示装置にノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した透過型の液晶表示装置を適用してもよい。垂直配向モードとしては、MVA(Multi-Domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、ASV(Advanced Super View)モードなどを用いることができる。
【0165】
なお、液晶素子は、液晶の光学変調作用によって光の透過又は非透過を制御する素子である。液晶の光学的変調作用は、液晶にかかる電界(横方向の電界、縦方向の電界又は斜め方向の電界を含む)によって制御される。液晶素子に用いる液晶としては、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0166】
図10では、縦電界方式の液晶素子を有する液晶表示装置の例を示したが、本発明の一態様には、横電界方式の液晶素子を有する液晶表示装置を適用することができる。横電界方式を採用する場合、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善するために5重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組成物を液晶層4008に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が短く、光学的等方性を示す。また、ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良又は破損を軽減することができる。
【0167】
また、スペーサ4035は絶縁層を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、第1の電極層4030と第2の電極層4031との間隔(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお球状のスペーサを用いていても良い。
【0168】
また、必要に応じて、ブラックマトリクス(遮光層)、着色層(カラーフィルタ)、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などを適宜設けてもよい。例えば、偏光基板及び位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。また、上記バックライト、及びサイドライトとして、マイクロLEDなどを用いても良い。
【0169】
図10(A)に示す表示装置では、基板4006と第2の電極層4031の間に、遮光層4132、着色層4131、絶縁層4133が設けられている。
【0170】
遮光層として用いることのできる材料としては、カーボンブラック、チタンブラック、金属、金属酸化物、複数の金属酸化物の固溶体を含む複合酸化物等が挙げられる。遮光層は、樹脂材料を含む膜であってもよいし、金属などの無機材料の薄膜であってもよい。また、遮光層に、着色層の材料を含む膜の積層膜を用いることもできる。例えば、ある色の光を透過する着色層に用いる材料を含む膜と、他の色の光を透過する着色層に用いる材料を含む膜との積層構造を用いることができる。着色層と遮光層の材料を共通化することで、装置を共通化できるほか工程を簡略化できるため好ましい。
【0171】
着色層に用いることのできる材料としては、金属材料、樹脂材料、顔料又は染料が含まれた樹脂材料などが挙げられる。遮光層及び着色層の形成は、前述した各層の形成方法と同様に行なえばよい。例えば、インクジェット法などで行なってもよい。
【0172】
また、図10(A)、(B)に示す表示装置は、絶縁層4111と絶縁層4104を有する。絶縁層4111と絶縁層4104として、不純物元素を透過しにくい絶縁層を用いる。絶縁層4111と絶縁層4104でトランジスタの半導体層を挟むことで、外部からの不純物の浸入を防ぐことができる。
【0173】
また、表示装置に含まれる表示素子として発光素子を用いることができる。発光素子としては、例えば、エレクトロルミネッセンスを利用するEL素子を適用することができる。EL素子は、一対の電極の間に発光性の化合物を含む層(「EL層」ともいう。)を有する。一対の電極間に、EL素子の閾値電圧よりも大きい電位差を生じさせると、EL層に陽極側から正孔が注入され、陰極側から電子が注入される。注入された電子と正孔はEL層において再結合し、EL層に含まれる発光物質が発光する。
【0174】
また、EL素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0175】
有機EL素子は、電圧を印加することにより、一方の電極から電子、他方の電極から正孔がそれぞれEL層に注入される。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0176】
なお、EL層は、発光性の化合物以外に、正孔注入性の高い物質、正孔輸送性の高い物質、正孔ブロック材料、電子輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、又はバイポーラ性の物質(電子輸送性および正孔輸送性が高い物質)などを有していてもよい。
【0177】
EL層は、蒸着法(真空蒸着法を含む)、転写法、印刷法、インクジェット法、塗布法などの方法で形成することができる。
【0178】
無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分類される。分散型無機EL素子は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有するものであり、発光メカニズムはドナー準位とアクセプター準位を利用するドナー-アクセプター再結合型発光である。薄膜型無機EL素子は、発光層を誘電体層で挟み込み、さらにそれを電極で挟んだ構造であり、発光メカニズムは金属イオンの内殻電子遷移を利用する局在型発光である。なお、ここでは、発光素子として有機EL素子を用いて説明する。
【0179】
発光素子は発光を取り出すために少なくとも一対の電極の一方が透明であればよい。そして、基板上にトランジスタ及び発光素子を形成し、当該基板とは逆側の面から発光を取り出す上面射出(トップエミッション)構造や、基板側の面から発光を取り出す下面射出(ボトムエミッション)構造や、両面から発光を取り出す両面射出(デュアルエミッション)構造の発光素子があり、どの射出構造の発光素子も適用することができる。
【0180】
図10(B)は、表示素子として発光素子を用いた発光表示装置(「EL表示装置」ともいう。)の一例である。表示素子である発光素子4513は、表示部215に設けられたトランジスタ4010と電気的に接続している。なお発光素子4513の構成は、第1の電極層4030、発光層4511、第2の電極層4031の積層構造であるが、この構成に限定されない。発光素子4513から取り出す光の方向などに合わせて、発光素子4513の構成は適宜変えることができる。
【0181】
隔壁4510は、有機絶縁材料、又は無機絶縁材料を用いて形成する。特に感光性の樹脂材料を用い、第1の電極層4030上に開口部を形成し、その開口部の側面が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
【0182】
発光層4511は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成されていてもどちらでも良い。
【0183】
発光素子4513の発光色は、発光層4511を構成する材料によって、白、赤、緑、青、シアン、マゼンタ、又は黄などとすることができる。
【0184】
カラー表示を実現する方法としては、発光色が白色の発光素子4513と着色層を組み合わせて行う方法と、画素毎に発光色の異なる発光素子4513を設ける方法がある。前者の方法は後者の方法よりも生産性が高い。一方、後者の方法では画素毎に発光層4511を作り分ける必要があるため、前者の方法よりも生産性が劣る。ただし、後者の方法では、前者の方法よりも色純度の高い発光色を得ることができる。後者の方法に加えて、発光素子4513にマイクロキャビティ構造を付与することにより色純度をさらに高めることができる。
【0185】
なお、発光層4511は、量子ドットなどの無機化合物を有していてもよい。例えば、量子ドットを発光層に用いることで、発光材料として機能させることもできる。
【0186】
発光素子4513に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、第2の電極層4031及び隔壁4510上に保護層を形成してもよい。保護層としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、DLC(Diamond Like Carbon)などを形成することができる。また、第1の基板4001、第2の基板4006、及びシール材4005によって封止された空間には充填材4514が設けられ密封されている。このように、外気に曝されないように気密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルム(貼り合わせフィルム、紫外線硬化樹脂フィルム等)やカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。
【0187】
充填材4514としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹脂又は熱硬化樹脂を用いることができ、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル系樹脂、ポリイミド、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)又はEVA(エチレンビニルアセテート)などを用いることができる。また、充填材4514に乾燥剤が含まれていてもよい。
【0188】
シール材4005には、ガラスフリットなどのガラス材料や、二液混合型の樹脂などの常温で硬化する硬化樹脂、光硬化性の樹脂、熱硬化性の樹脂などの樹脂材料を用いることができる。また、シール材4005に乾燥剤が含まれていてもよい。
【0189】
また、必要であれば、発光素子の射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0190】
また、発光素子をマイクロキャビティ構造とすることで、色純度の高い光を取り出すことができる。また、マイクロキャビティ構造とカラーフィルタを組み合わせることで、映り込みが低減し、表示画像の視認性を高めることができる。
【0191】
表示素子に電圧を印加する第1の電極層及び第2の電極層(画素電極層、共通電極層、対向電極層などともいう)においては、取り出す光の方向、電極層が設けられる場所、及び電極層のパターン構造によって透光性、反射性を選択すればよい。
【0192】
第1の電極層4030、第2の電極層4031は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、インジウム錫酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を用いることができる。
【0193】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)などの金属、又はその合金、もしくはその金属窒化物から一種以上を用いて形成することができる。
【0194】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031として、導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子を用いることができる。例えば、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、又は、アニリン、ピロール及びチオフェンの2種以上からなる共重合体若しくはその誘導体などがあげられる。
【0195】
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、駆動回路保護用の保護回路を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0196】
なお、図11に示すように、トランジスタや容量素子が高さ方向に重なる領域を有するようなスタック構造としてもよい。例えば、駆動回路を構成するトランジスタ4011及びトランジスタ4022を重ねて配置すれば、狭額縁の表示装置とすることができる。また、画素回路を構成するトランジスタ4010、トランジスタ4023、容量素子4020などが一部でも重なる領域を有するように配置すれば開口率や解像度を向上させることができる。なお、図11では図10(A)に示す液晶表示装置にスタック構造を応用した例を示しているが、図10(B)に示すEL表示装置に応用してもよい。
【0197】
また、画素回路において、可視光に対して透光性の高い透光性導電膜を電極や配線に用いることで、画素内の光の透過率を高めることができ、実質的に開口率を向上させることができる。なお、OSトランジスタを用いる場合は半導体層も透光性を有するため、さらに開口率を高めることができる。これらは、トランジスタ等をスタック構造としない場合においても有効である。
【0198】
また、液晶表示装置と発光装置を組み合わせて表示装置を構成してもよい。
【0199】
発光装置は表示面の逆側、又は表示面の端部に配置される。発光装置は表示素子に光を供給する機能を有する。発光装置は、バックライトとも呼ぶことができる。
【0200】
ここで、発光装置は、板状又はシート状の導光部(導光板ともいう)と、異なる色の光を呈する複数の発光素子を有することができる。当該発光素子を導光部の側面近傍に配置すると、導光部側面から内部へ光を発することができる。導光部は光路を変更する機構(光取り出し機構ともいう)を有しており、これにより、発光装置は表示パネルの画素部に光を均一に照射することができる。又は、導光部を設けず、画素の直下に発光装置を配置する構成としてもよい。
【0201】
発光装置は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色の発光素子を有することが好ましい。さらに白色(W)の発光素子を有していてもよい。これら発光素子として発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を用いることが好ましい。
【0202】
さらに、発光素子は、その発光スペクトルの半値全幅(FWHM:Full Width at Half Maximum)が、50nm以下、好ましくは40nm以下、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは20nm以下であり、極めて色純度の高い発光素子であることが好ましい。なお、発光スペクトルの半値全幅は、小さければ小さいほどよいが、例えば1nm以上とすることができる。これにより、カラー表示を行う際に、色再現性が高い鮮やかな表示を行うことができる。
【0203】
また、赤色の発光素子には、発光スペクトルのピーク波長が、625nm以上650nm以下の範囲内に位置する素子を用いることが好ましい。また、緑色の発光素子には、発光スペクトルのピーク波長が、515nm以上540nm以下の範囲内に位置する素子を用いることが好ましい。青色の発光素子には、発光スペクトルのピーク波長が、445nm以上470nm以下の範囲内に位置する素子を用いることが好ましい。
【0204】
表示装置は、3色の発光素子を順次点滅させるとともに、これと同期させて画素を駆動し、継時加法混色法に基づいてカラー表示を行うことができる。当該駆動方法は、フィールドシーケンシャル駆動とも呼ぶことができる。
【0205】
フィールドシーケンシャル駆動では、鮮やかなカラー画像を表示することができる。また、滑らかな動画像を表示することができる。また上記駆動方法を用いることで、1つの画素を複数の異なる色の副画素で構成する必要がなく、1つの画素の有効反射面積(有効表示面積、開口率ともいう)を大きくできるため、明るい表示を行うことができる。さらに、画素にカラーフィルタを設ける必要がないため、画素の透過率も向上させることもでき、さらに明るい表示を行うことができる。また、作製工程を簡略化でき、作製コストを低減することができる。
【0206】
図12(A)、(B)は、フィールドシーケンシャル駆動が可能な表示装置の断面概略図の一例である。当該表示装置の基板4001側にはRGB各色の発光が可能なバックライトユニットが設けられる。なお、フィールドシーケンシャル駆動では、RGB各色の時分割発光で色を表現するため、カラーフィルタは不要となる。
【0207】
図12(A)に示すバックライトユニット4340aは、画素の直下に拡散板4352を介して発光素子4342が複数設けられた構成である。拡散板4352は、発光素子4342から基板4001側に射出された光を拡散し、表示部面内の輝度を均一化する機能を有する。発光素子4342と拡散板4352との間には、必要に応じて偏光板を設けてもよい。また、拡散板4352は不要であれば設けなくてもよい。また、遮光層4132を省いた構成としてもよい。
【0208】
バックライトユニット4340aは、発光素子4342を多く搭載することができるため、明るい表示が可能となる。また、導光板は不要であり、発光素子4342の光の効率を損ないにくい利点がある。なお、必要に応じて発光素子4342に光拡散用のレンズ4344を設けてもよい。
【0209】
図12(B)に示すバックライトユニット4340bは、画素の直下に拡散板4352を介して導光板4341が設けられた構成である。導光板4341の端部には発光素子4342が複数設けられる。導光板4341は、拡散板4352とは逆側に凹凸形状を有し、導波した光を当該凹凸形状で散乱して拡散板4352の方向に射出することができる。
【0210】
発光素子4342は、プリント基板4347に固定することができる。なお、図12(B)では、RGB各色の発光素子4342が重なるように図示しているが、奥行方向にRGB各色の発光素子4342が並ぶように配置することもできる。また、導光板4341において、発光素子4342とは反対側の側面には、可視光を反射する反射層4348を設けてもよい。
【0211】
バックライトユニット4340bは、発光素子4342を少なくすることができるため、低コストかつ薄型とすることができる。
【0212】
また、液晶素子には、光散乱型液晶素子を用いてもよい。光散乱型液晶素子としては、液晶と高分子の複合材料を有する素子を用いることが好ましい。例えば、高分子分散型液晶素子を用いることができる。又は、高分子ネットワーク型液晶(PNLC(Polymer Network Liquid Crystal))素子を用いてもよい。
【0213】
光散乱型液晶素子は、一対の電極で挟まれる樹脂部の3次元ネットワーク構造中に液晶部が設けられた構造である。液晶部に用いる材料としては、例えばネマティック液晶を用いることができる。また、樹脂部としては光硬化樹脂を用いることができる。光硬化樹脂としては、例えば、アクリレート、メタクリレートなどの単官能モノマー、ジアクリレート、トリアクリレート、ジメタクリレート、トリメタクリレートなどの多官能モノマー、又は、これらを混合させた重合性化合物を用いることができる。
【0214】
光散乱型液晶素子は液晶材料の屈折率の異方性を利用し、光を透過又は散乱させることにより表示を行う。また、樹脂部も屈折率の異方性を有していてもよい。光散乱型液晶素子に印加される電圧に従って液晶分子が一定方向に配列するとき、液晶部と樹脂部の屈折率の差が小さくなり、当該方向に沿って入射する光は液晶部で散乱されることなく透過する。したがって、光散乱型液晶素子は当該方向からは透明な状態に視認される。一方で、印加される電圧に従って液晶分子の配列がランダムとなるとき、液晶部と樹脂部の屈折率の差に大きな変化が生じないため、入射する光は液晶部で散乱される。したがって、光散乱型液晶素子は視認の方向を問わず不透明の状態となる。
【0215】
図13(A)は、図12(A)の表示装置の液晶素子4013を光散乱型液晶素子4016に置き換えた構成である。光散乱型液晶素子4016は、液晶部及び樹脂部を有する複合層4009、ならびに電極層4030、4031を有する。フィールドシーケンシャル駆動に関する要素は、図12(A)と同じであるが、光散乱型液晶素子4016を用いる場合は、配向膜及び偏光板が不要となる。なお、スペーサ4035は球状の形態で図示しているが、柱状であってもよい。
【0216】
図13(B)は、図12(B)の表示装置の液晶素子4013を光散乱型液晶素子4016に置き換えた構成である。図12(B)の構成では、光散乱型液晶素子4016に電圧を印加しないときに光を透過し、電圧を印加したときに光を散乱させるモードで動作する構成とすることが好ましい。当該構成とすることで、ノーマル状態(表示をさせない状態)で透明な表示装置とすることができる。この場合は、光を散乱させる動作を行ったときにカラー表示を行うことができる。
【0217】
図13(B)に示す表示装置の変形例を図14(A)乃至(E)に示す。なお、図14(A)乃至(E)においては、明瞭化のため、図13(B)の一部要素を用い、他の要素を省いて図示している。
【0218】
図14(A)は、基板4001が導光板としての機能を有する構成である。基板4001の外側の面には、凹凸形状を設けてもよい。当該構成では、導光板を別途設ける必要がなくなるため、製造コストを低減することができる。また、当該導光板による光の減衰もなくなるため、発光素子4342が射出する光を効率良く利用することができる。
【0219】
図14(B)は、複合層4009の端部近傍から光を入射する構成である。複合層4009と基板4006との界面、及び複合層4009と基板4001との界面での全反射を利用し、光散乱型液晶素子から外部に光を射出することができる。複合層4009の樹脂部には、基板4001及び基板4006よりも屈折率が大きい材料を用いる。
【0220】
なお、発光素子4342は表示装置の一辺に設けるだけでなく、図14(C)に示すように対向する二辺に設けてもよい。さらに、三辺又は四辺に設けてもよい。発光素子4342を複数の辺に設けることで、光の減衰を補うことができ、大面積の表示素子にも対応することができる。
【0221】
図14(D)は、発光素子4342から射出される光がミラー4345を介して表示装置に導光される構成である。当該構成により表示装置に一定の角度からの導光を行いやすくなるため、効率良く全反射光を得ることができる。
【0222】
図14(E)は、複合層4009上に層4003及び層4004の積層を有する構成である。層4003及び層4004の一方はガラス基板などの支持体であり、他方は無機膜、有機樹脂のコーティング膜又はフィルムなどで形成することができる。複合層4009の樹脂部には、層4004よりも屈折率が大きい材料を用いる。また、層4004には層4003よりも屈折率が大きい材料を用いる。
【0223】
複合層4009と層4004との間には一つ目の界面が形成され、層4004と層4003との間には二つ目の界面が形成される。当該構成により、一つ目の界面で全反射されず通り抜けた光を二つ目の界面で全反射させ、複合層4009に戻すことができる。したがって、発光素子4342が射出する光を効率良く利用することができる。
【0224】
なお、図13(B)及び図14(A)乃至(E)における構成は、互いに組み合すことができる。
【0225】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0226】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態に示した各トランジスタに置き換えて用いることのできるトランジスタの一例について、図面を用いて説明する。
【0227】
本発明の一態様の表示装置は、ボトムゲート型のトランジスタや、トップゲート型トランジスタなどの様々な形態のトランジスタを用いて作製することができる。よって、既存の製造ラインに合わせて、使用する半導体層の材料やトランジスタ構造を容易に置き換えることができる。
【0228】
〔ボトムゲート型トランジスタ〕
図15(A1)は、ボトムゲート型のトランジスタの一種であるチャネル保護型のトランジスタ810のチャネル長方向の断面図である。図15(A1)において、トランジスタ810は基板771上に形成されている。また、トランジスタ810は、基板771上に絶縁層772を介して電極746を有する。また、電極746上に絶縁層726を介して半導体層742を有する。電極746はゲート電極として機能できる。絶縁層726はゲート絶縁層として機能できる。
【0229】
また、半導体層742のチャネル形成領域上に絶縁層741を有する。また、半導体層742の一部と接して、絶縁層726上に電極744a及び電極744bを有する。電極744aは、ソース電極又はドレイン電極の一方として機能できる。電極744bは、ソース電極又はドレイン電極の他方として機能できる。電極744aの一部、及び電極744bの一部は、絶縁層741上に形成される。
【0230】
絶縁層741は、チャネル保護層として機能できる。チャネル形成領域上に絶縁層741を設けることで、電極744a及び電極744bの形成時に生じる半導体層742の露出を防ぐことができる。よって、電極744a及び電極744bの形成時に、半導体層742のチャネル形成領域がエッチングされることを防ぐことができる。本発明の一態様によれば、電気特性の良好なトランジスタを実現することができる。
【0231】
また、トランジスタ810は、電極744a、電極744b及び絶縁層741上に絶縁層728を有し、絶縁層728の上に絶縁層729を有する。
【0232】
半導体層742に酸化物半導体を用いる場合、電極724a及び電極724bの、少なくとも半導体層742と接する部分に、半導体層742の一部から酸素を奪い、酸素欠損を生じさせることが可能な材料を用いることが好ましい。半導体層742中の酸素欠損が生じた領域はキャリア濃度が増加し、当該領域はn型化し、n型領域(n層)となる。したがって、当該領域はソース領域又はドレイン領域として機能することができる。半導体層742に酸化物半導体を用いる場合、半導体層742から酸素を奪い、酸素欠損を生じさせることが可能な材料の一例として、タングステン、チタン等を挙げることができる。
【0233】
半導体層742にソース領域及びドレイン領域が形成されることにより、電極724a及び電極724bと半導体層742の接触抵抗を低減することができる。よって、電界効果移動度や、しきい値電圧などの、トランジスタの電気特性を良好なものとすることができる。
【0234】
半導体層742にシリコンなどの半導体を用いる場合は、半導体層742と電極724aの間、及び半導体層742と電極724bの間に、n型半導体又はp型半導体として機能する層を設けることが好ましい。n型半導体又はp型半導体として機能する層は、トランジスタのソース領域又はドレイン領域として機能することができる。
【0235】
絶縁層729は、外部からのトランジスタへの不純物の拡散を防ぐ、又は低減する機能を有する材料を用いて形成することが好ましい。なお、必要に応じて絶縁層729を省略することもできる。
【0236】
図15(A2)に示すトランジスタ811は、絶縁層729上にバックゲート電極として機能できる電極723を有する点が、トランジスタ810と異なる。電極723は、電極746と同様の材料及び方法で形成することができる。
【0237】
一般に、バックゲート電極は導電層で形成され、ゲート電極とバックゲート電極で半導体層のチャネル形成領域を挟むように配置される。よって、バックゲート電極は、ゲート電極と同様に機能させることができる。バックゲート電極の電位は、ゲート電極と同電位としてもよいし、接地電位(GND電位)や、任意の電位としてもよい。また、バックゲート電極の電位をゲート電極と連動させず独立して変化させることで、トランジスタのしきい値電圧を変化させることができる。
【0238】
また、電極746及び電極723は、どちらもゲート電極として機能することができる。よって、絶縁層726、絶縁層728、及び絶縁層729は、それぞれがゲート絶縁層として機能することができる。なお、電極723は、絶縁層728と絶縁層729の間に設けてもよい。
【0239】
なお、電極746又は電極723の一方を、「ゲート電極」という場合、他方を「バックゲート電極」という。例えば、トランジスタ811において、電極723を「ゲート電極」と言う場合、電極746を「バックゲート電極」と言う。また、電極723を「ゲート電極」として用いる場合は、トランジスタ811をトップゲート型のトランジスタの一種と考えることができる。また、電極746及び電極723のどちらか一方を、「第1のゲート電極」といい、他方を「第2のゲート電極」という場合がある。
【0240】
半導体層742を挟んで電極746及び電極723を設けることで、更には、電極746及び電極723を同電位とすることで、半導体層742においてキャリアの流れる領域が膜厚方向においてより大きくなるため、キャリアの移動量が増加する。この結果、トランジスタ811のオン電流が大きくなると共に、電界効果移動度が高くなる。
【0241】
したがって、トランジスタ811は、占有面積に対して大きいオン電流を有するトランジスタである。すなわち、求められるオン電流に対して、トランジスタ811の占有面積を小さくすることができる。本発明の一態様によれば、トランジスタの占有面積を小さくすることができる。よって、本発明の一態様によれば、集積度の高い半導体装置を実現することができる。
【0242】
また、ゲート電極とバックゲート電極は導電層で形成されるため、トランジスタの外部で生じる電界が、チャネルが形成される半導体層に作用しないようにする機能(特に静電気などに対する電界遮蔽機能)を有する。なお、バックゲート電極を半導体層よりも大きく形成し、バックゲート電極で半導体層を覆うことで、電界遮蔽機能を高めることができる。
【0243】
また、バックゲート電極を、遮光性を有する導電膜で形成することで、バックゲート電極側から半導体層に光が入射することを防ぐことができる。よって、半導体層の光劣化を防ぎ、トランジスタのしきい値電圧がシフトするなどの電気特性の劣化を防ぐことができる。
【0244】
本発明の一態様によれば、信頼性の良好なトランジスタを実現することができる。また、信頼性の良好な半導体装置を実現することができる。
【0245】
図15(B1)は、図15(A1)とは異なる構成のチャネル保護型のトランジスタ820のチャネル長方向の断面図である。トランジスタ820は、トランジスタ810とほぼ同様の構造を有しているが、絶縁層741が半導体層742の端部を覆っている点が異なる。また、半導体層742と重なる絶縁層741の一部を選択的に除去して形成した開口部において、半導体層742と電極744aが電気的に接続している。また、半導体層742と重なる絶縁層741の一部を選択的に除去して形成した他の開口部において、半導体層742と電極744bが電気的に接続している。絶縁層729の、チャネル形成領域と重なる領域は、チャネル保護層として機能できる。
【0246】
図15(B2)に示すトランジスタ821は、絶縁層729上にバックゲート電極として機能できる電極723を有する点が、トランジスタ820と異なる。
【0247】
絶縁層741を設けることで、電極744a及び電極744bの形成時に生じる半導体層742の露出を防ぐことができる。よって、電極744a及び電極744bの形成時に半導体層742の薄膜化を防ぐことができる。
【0248】
また、トランジスタ820及びトランジスタ821は、トランジスタ810及びトランジスタ811よりも、電極744aと電極746の間の距離と、電極744bと電極746の間の距離が長くなる。よって、電極744aと電極746の間に生じる寄生容量を小さくすることができる。また、電極744bと電極746の間に生じる寄生容量を小さくすることができる。本発明の一態様によれば、電気特性の良好なトランジスタを実現できる。
【0249】
図15(C1)に示すトランジスタ825は、ボトムゲート型のトランジスタの1つであるチャネルエッチング型のトランジスタ825のチャネル長方向の断面図である。トランジスタ825は、絶縁層741を用いずに電極744a及び電極744bを形成する。このため、電極744a及び電極744bの形成時に露出する半導体層742の一部がエッチングされる場合がある。一方、絶縁層741を設けないため、トランジスタの生産性を高めることができる。
【0250】
図15(C2)に示すトランジスタ826は、絶縁層729上にバックゲート電極として機能できる電極723を有する点が、トランジスタ825と異なる。
【0251】
図16(A1)乃至(C2)にトランジスタ810、811、820、821、825、826のチャネル幅方向の断面図をそれぞれ示す。
【0252】
図16(B2)、(C2)に示す構造では、ゲート電極とバックゲート電極とが接続され、ゲート電極とバックゲート電極との電位が同電位となる。また、半導体層742は、ゲート電極とバックゲート電極と挟まれている。
【0253】
ゲート電極及びバックゲート電極のそれぞれのチャネル幅方向の長さは、半導体層742のチャネル幅方向の長さよりも長く、半導体層742のチャネル幅方向全体は、絶縁層726、741、728、729を間に挟んでゲート電極又はバックゲート電極に覆われた構成である。
【0254】
当該構成とすることで、トランジスタに含まれる半導体層742を、ゲート電極及びバックゲート電極の電界によって電気的に取り囲むことができる。
【0255】
トランジスタ821又はトランジスタ826のように、ゲート電極及びバックゲート電極の電界によって、チャネル形成領域が形成される半導体層742を電気的に取り囲むトランジスタのデバイス構造をSurrounded channel(S-channel)構造と呼ぶことができる。
【0256】
S-channel構造とすることで、ゲート電極及びバックゲート電極の一方又は双方によってチャネルを誘起させるための電界を効果的に半導体層742に印加することができるため、トランジスタの電流駆動能力が向上し、高いオン電流特性を得ることが可能となる。また、オン電流を高くすることが可能であるため、トランジスタを微細化することが可能となる。また、S-channel構造とすることで、トランジスタの機械的強度を高めることができる。
【0257】
〔トップゲート型トランジスタ〕
図17(A1)に例示するトランジスタ842は、トップゲート型のトランジスタの1つである。トランジスタ842は、絶縁層729を形成した後に電極744a及び電極744bを形成する点がトランジスタ810やトランジスタ820と異なる。電極744a及び電極744bは、絶縁層728及び絶縁層729に形成した開口部において半導体層742と電気的に接続する。
【0258】
また、電極746と重ならない絶縁層726の一部を除去し、電極746と残りの絶縁層726をマスクとして用いて不純物755を半導体層742に導入することで、半導体層742中に自己整合(セルフアライメント)的に不純物領域を形成することができる。トランジスタ842は、絶縁層726が電極746の端部を越えて延伸する領域を有する。半導体層742の絶縁層726を介して不純物755が導入された領域の不純物濃度は、絶縁層726を介さずに不純物755が導入された領域よりも小さくなる。半導体層742は、電極746と重ならない領域にLDD(Lightly Doped Drain)領域が形成される。
【0259】
図17(A2)に示すトランジスタ843は、電極723を有する点がトランジスタ842と異なる。トランジスタ843は、基板771の上に形成された電極723を有する。電極723は、絶縁層772を介して半導体層742と重なる領域を有する。電極723は、バックゲート電極として機能することができる。
【0260】
また、図17(B1)に示すトランジスタ844及び図17(B2)に示すトランジスタ845のように、電極746と重ならない領域の絶縁層726を全て除去してもよい。また、図17(C1)に示すトランジスタ846及び図17(C2)に示すトランジスタ847のように、絶縁層726を残してもよい。
【0261】
トランジスタ842乃至トランジスタ847も、電極746を形成した後に、電極746をマスクとして用いて不純物755を半導体層742に導入することで、半導体層742中に自己整合的に不純物領域を形成することができる。本発明の一態様によれば、電気特性の良好なトランジスタを実現することができる。また、本発明の一態様によれば、集積度の高い半導体装置を実現することができる。
【0262】
図18(A1)乃至(C2)にトランジスタ842、843、844、845、846、847のチャネル幅方向の断面図をそれぞれ示す。
【0263】
トランジスタ843、トランジスタ845、及びトランジスタ847は、それぞれ先に説明したS-channel構造である。ただし、これに限定されず、トランジスタ843、トランジスタ845、及びトランジスタ847をS-channel構造としなくてもよい。
【0264】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0265】
(実施の形態4)
本発明の一態様に係る表示装置を用いることができる電子機器として、表示機器、パーソナルコンピュータ、記録媒体を備えた画像記憶装置又は画像再生装置、携帯電話、携帯型を含むゲーム機、携帯データ端末、電子書籍端末、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー等)、複写機、ファクシミリ、プリンタ、プリンタ複合機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機などが挙げられる。これら電子機器の具体例を図19に示す。
【0266】
図19(A)はデジタルカメラであり、筐体961、シャッターボタン962、マイク963、スピーカ967、表示部965、操作キー966、ズームレバー968、レンズ969等を有する。表示部965に本発明の一態様の表示装置を用いることで、様々な画像の表示を行うことができる。
【0267】
図19(B)はデジタルサイネージであり、柱921の側面に大型の表示部922が取り付けられた構成を有する。表示部922に本発明の一態様の表示装置を用いることで、表示品位の高い表示を行うことができる。
【0268】
図19(C)は携帯電話機の一例であり、筐体951、表示部952、操作ボタン953、外部接続ポート954、スピーカ955、マイク956、カメラ957等を有する。当該携帯電話機は、表示部952にタッチセンサを備える。電話を掛ける、或いは文字を入力するなどのあらゆる操作は、指やスタイラスなどで表示部952に触れることで行うことができる。また、筐体951及び表示部952は可撓性を有し、図示するように折り曲げて使用することができる。表示部952に本発明の一態様の表示装置を用いることで、様々な画像の表示を行うことができる。
【0269】
図19(D)はビデオカメラであり、第1筐体901、第2筐体902、表示部903、操作キー904、レンズ905、接続部906、スピーカ907等を有する。操作キー904及びレンズ905は第1筐体901に設けられており、表示部903は第2筐体902に設けられている。表示部903に本発明の一態様の表示装置を用いることで、様々な画像の表示を行うことができる。
【0270】
図19(E)はテレビであり、筐体971、表示部973、操作キー974、スピーカ975、通信用接続端子976、光センサ977等を有する。表示部973にはタッチセンサが設けられ、入力操作を行うこともできる。表示部973に本発明の一態様の表示装置を用いることで、様々な画像の表示を行うことができる。
【0271】
図19(F)は携帯データ端末であり、筐体911、表示部912、スピーカ913、カメラ919等を有する。表示部912が有するタッチパネル機能により情報の入出力を行うことができる。表示部912に本発明の一態様の表示装置を用いることで、様々な画像の表示を行うことができる。
【0272】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0273】
(実施の形態5)
本実施の形態では、トランジスタのチャネル形成領域に好適に用いることができる金属酸化物について説明する。
【0274】
トランジスタに用いる半導体材料としては、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である金属酸化物を用いることができる。代表的には、インジウムを含む金属酸化物などであり、例えば、後述するCAC-OSなどを用いることができる。
【0275】
シリコンよりもバンドギャップが広く、且つキャリア密度の小さい金属酸化物を用いたトランジスタは、その低いオフ電流により、トランジスタと直列に接続された容量素子に蓄積した電荷を長期間に亘って保持することが可能である。
【0276】
半導体層は、例えばインジウム、亜鉛及びM(アルミニウム、チタン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、セリウム、スズ、ネオジム又はハフニウム等の金属)を含むIn-M-Zn系酸化物で表記される膜とすることができる。
【0277】
半導体層を構成する金属酸化物がIn-M-Zn系酸化物の場合、In-M-Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、In≧M、Zn≧Mを満たすことが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:3、In:M:Zn=4:2:4.1、In:M:Zn=5:1:6、In:M:Zn=5:1:7、In:M:Zn=5:1:8等が好ましい。なお、成膜される半導体層の原子数比はそれぞれ、上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。
【0278】
半導体層としては、キャリア密度の低い金属酸化物を用いる。例えば、半導体層は、キャリア密度が1×1017/cm以下、好ましくは1×1015/cm以下、さらに好ましくは1×1013/cm以下、より好ましくは1×1011/cm以下、さらに好ましくは1×1010/cm未満であり、1×10-9/cm以上のキャリア密度の金属酸化物を用いることができる。そのような金属酸化物を、高純度真性又は実質的に高純度真性な金属酸化物と呼ぶ。当該酸化物半導体は欠陥準位密度が低く、安定な特性を有する金属酸化物であるといえる。
【0279】
なお、これらに限られず、必要とするトランジスタの半導体特性及び電気特性(電界効果移動度、しきい値電圧等)に応じて適切な組成の酸化物半導体を用いればよい。また、必要とするトランジスタの半導体特性を得るために、半導体層のキャリア密度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0280】
半導体層を構成する金属酸化物において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、半導体層において酸素欠損が増加し、n型化してしまう。このため、半導体層におけるシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1017atoms/cm以下とする。
【0281】
また、アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、金属酸化物と結合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタのオフ電流が増大してしまうことがある。このため半導体層における二次イオン質量分析法により得られるアルカリ金属又はアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1016atoms/cm以下とする。
【0282】
また、半導体層を構成する金属酸化物に窒素が含まれていると、キャリアである電子が生じ、キャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている金属酸化物を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため半導体層における二次イオン質量分析法により得られる窒素濃度は、5×1018atoms/cm以下とすることが好ましい。
【0283】
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、CAAC-OS(c-axis-aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)、及び非晶質酸化物半導体などがある。
【0284】
また、本発明の一態様で開示されるトランジスタの半導体層には、CAC-OS(Cloud-Aligned Composite oxide semiconductor)を用いてもよい。
【0285】
なお、本発明の一態様で開示されるトランジスタの半導体層は、上述した非単結晶酸化物半導体又はCAC-OSを好適に用いることができる。また、非単結晶酸化物半導体としては、nc-OS又はCAAC-OSを好適に用いることができる。
【0286】
なお、本発明の一態様では、トランジスタの半導体層として、CAC-OSを用いると好ましい。CAC-OSを用いることで、トランジスタに高い電気特性又は高い信頼性を付与することができる。
【0287】
なお、半導体層がCAAC-OSの領域、多結晶酸化物半導体の領域、nc-OSの領域、擬似非晶質酸化物半導体の領域、及び非晶質酸化物半導体の領域のうち、二種以上を有する混合膜であってもよい。混合膜は、例えば上述した領域のうち、いずれか二種以上の領域を含む単層構造、又は積層構造を有する場合がある。
【0288】
以下では、本発明の一態様で開示されるトランジスタに用いることができるCAC(Cloud-Aligned Composite)-OSの構成について説明する。
【0289】
CAC-OSとは、例えば、金属酸化物を構成する元素が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上2nm以下、又はその近傍のサイズで偏在した材料の一構成である。なお、以下では、金属酸化物において、一つあるいはそれ以上の金属元素が偏在し、該金属元素を有する領域が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上2nm以下、又はその近傍のサイズで混合した状態をモザイク状、又はパッチ状ともいう。
【0290】
なお、金属酸化物は、少なくともインジウムを含むことが好ましい。特にインジウム及び亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、又はマグネシウムなどから選ばれた一種、又は複数種が含まれていてもよい。
【0291】
例えば、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OS(CAC-OSの中でもIn-Ga-Zn酸化物を、特にCAC-IGZOと呼称してもよい。)とは、インジウム酸化物(以下、InOX1(X1は0よりも大きい実数)とする。)、又はインジウム亜鉛酸化物(以下、InX2ZnY2Z2(X2、Y2、及びZ2は0よりも大きい実数)とする。)と、ガリウム酸化物(以下、GaOX3(X3は0よりも大きい実数)とする。)、又はガリウム亜鉛酸化物(以下、GaX4ZnY4Z4(X4、Y4、及びZ4は0よりも大きい実数)とする。)などと、に材料が分離することでモザイク状となり、モザイク状のInOX1、又はInX2ZnY2Z2が、膜中に均一に分布した構成(以下、クラウド状ともいう。)である。
【0292】
つまり、CAC-OSは、GaOX3が主成分である領域と、InX2ZnY2Z2、又はInOX1が主成分である領域とが、混合している構成を有する複合金属酸化物である。なお、本明細書において、例えば、第1の領域の元素Mに対するInの原子数比が、第2の領域の元素Mに対するInの原子数比よりも大きいことを、第1の領域は、第2の領域と比較して、Inの濃度が高いとする。
【0293】
なお、IGZOは通称であり、In、Ga、Zn、及びOによる1つの化合物をいう場合がある。代表例として、InGaO(ZnO)m1(m1は自然数)、又はIn(1+x0)Ga(1-x0)(ZnO)m0(-1≦x0≦1、m0は任意数)で表される結晶性の化合物が挙げられる。
【0294】
上記結晶性の化合物は、単結晶構造、多結晶構造、又はCAAC構造を有する。なお、CAAC構造とは、複数のIGZOのナノ結晶がc軸配向を有し、かつa-b面においては配向せずに連結した結晶構造である。
【0295】
一方、CAC-OSは、金属酸化物の材料構成に関する。CAC-OSとは、In、Ga、Zn、及びOを含む材料構成において、一部にGaを主成分とするナノ粒子状に観察される領域と、一部にInを主成分とするナノ粒子状に観察される領域とが、それぞれモザイク状にランダムに分散している構成をいう。従って、CAC-OSにおいて、結晶構造は副次的な要素である。
【0296】
なお、CAC-OSは、組成の異なる二種類以上の膜の積層構造は含まないものとする。例えば、Inを主成分とする膜と、Gaを主成分とする膜との2層からなる構造は、含まない。
【0297】
なお、GaOX3が主成分である領域と、InX2ZnY2Z2、又はInOX1が主成分である領域とは、明確な境界が観察できない場合がある。
【0298】
なお、ガリウムの代わりに、アルミニウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、又はマグネシウムなどから選ばれた一種、又は複数種が含まれている場合、CAC-OSは、一部に該金属元素を主成分とするナノ粒子状に観察される領域と、一部にInを主成分とするナノ粒子状に観察される領域とが、それぞれモザイク状にランダムに分散している構成をいう。
【0299】
CAC-OSは、例えば基板を加熱しない条件で、スパッタリング法により形成することができる。また、CAC-OSをスパッタリング法で形成する場合、成膜ガスとして、不活性ガス(代表的にはアルゴン)、酸素ガス、及び窒素ガスの中から選ばれたいずれか一つ又は複数を用いればよい。また、成膜時の成膜ガスの総流量に対する酸素ガスの流量比は低いほど好ましく、例えば酸素ガスの流量比を0%以上30%未満、好ましくは0%以上10%以下とすることが好ましい。
【0300】
CAC-OSは、X線回折(XRD:X-ray diffraction)測定法のひとつであるOut-of-plane法によるθ/2θスキャンを用いて測定したときに、明確なピークが観察されないという特徴を有する。すなわち、X線回折測定から、測定領域のa-b面方向、及びc軸方向の配向は見られないことが分かる。
【0301】
またCAC-OSは、プローブ径が1nmの電子線(ナノビーム電子線ともいう。)を照射することで得られる電子線回折パターンにおいて、リング状に輝度の高い領域(リング領域)と、該リング領域に複数の輝点が観測される。従って、電子線回折パターンから、CAC-OSの結晶構造が、平面方向、及び断面方向において、配向性を有さないnc(nano-crystal)構造を有することがわかる。
【0302】
また例えば、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSでは、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)を用いて取得したEDXマッピングにより、GaOX3が主成分である領域と、InX2ZnY2Z2、又はInOX1が主成分である領域とが、偏在し、混合している構造を有することが確認できる。
【0303】
CAC-OSは、金属元素が均一に分布したIGZO化合物とは異なる構造であり、IGZO化合物と異なる性質を有する。つまり、CAC-OSは、GaOX3などが主成分である領域と、InX2ZnY2Z2、又はInOX1が主成分である領域と、に互いに相分離し、各元素を主成分とする領域がモザイク状である構造を有する。
【0304】
ここで、InX2ZnY2Z2、又はInOX1が主成分である領域は、GaOX3などが主成分である領域と比較して、導電性が高い領域である。つまり、InX2ZnY2Z2、又はInOX1が主成分である領域を、キャリアが流れることにより、金属酸化物としての導電性が発現する。従って、InX2ZnY2Z2、又はInOX1が主成分である領域が、金属酸化物中にクラウド状に分布することで、高い電界効果移動度(μ)が実現できる。
【0305】
一方、GaOX3などが主成分である領域は、InX2ZnY2Z2、又はInOX1が主成分である領域と比較して、絶縁性が高い領域である。つまり、GaOX3などが主成分である領域が、金属酸化物中に分布することで、リーク電流を抑制し、良好なスイッチング動作を実現できる。
【0306】
従って、CAC-OSを半導体素子に用いた場合、GaOX3などに起因する絶縁性と、InX2ZnY2Z2、又はInOX1に起因する導電性とが、相補的に作用することにより、高いオン電流(Ion)、及び高い電界効果移動度(μ)を実現することができる。
【0307】
また、CAC-OSを用いた半導体素子は、信頼性が高い。従って、CAC-OSは、ディスプレイをはじめとするさまざまな半導体装置に最適である。
【0308】
また、半導体層にCAC-OSを有するトランジスタは電界効果移動度が高く、且つ駆動能力が高いので、該トランジスタを、駆動回路、代表的にはゲート信号を生成する走査線駆動回路に用いることで、額縁幅の狭い表示装置を提供することができる。また、該トランジスタを、表示装置が有する信号線駆動回路(とくに、信号線駆動回路が有するシフトレジスタの出力端子に接続されるデマルチプレクサ)に用いることで、表示装置に接続される配線数が少ない表示装置を提供することができる。
【0309】
また、半導体層にCAC-OSを有するトランジスタは低温ポリシリコンを用いたトランジスタのように、レーザ結晶化工程が不要である。これのため、大面積基板を用いた表示装置であっても、製造コストを低減することが可能である。さらに、ウルトラハイビジョン(「4K解像度」、「4K2K」、「4K」)、スーパーハイビジョン(「8K解像度」、「8K4K」、「8K」)のように高解像度であり、且つ大型の表示装置において、半導体層にCAC-OSを有するトランジスタを駆動回路及び表示部に用いることで、短時間での書き込みが可能であり、表示不良を低減することが可能であり好ましい。
【0310】
又は、トランジスタのチャネルが形成される半導体にシリコンを用いてもよい。シリコンとしてアモルファスシリコンを用いてもよいが、特に結晶性を有するシリコンを用いることが好ましい。例えば、微結晶シリコン、多結晶シリコン、単結晶シリコンなどを用いることが好ましい。特に、多結晶シリコンは、単結晶シリコンに比べて低温で形成でき、且つアモルファスシリコンに比べて高い電界効果移動度と高い信頼性を備える。
【0311】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0312】
FN1:ノード、FN2:ノード、G1:配線、G2:配線、G3:配線、M1:端子、M2:端子、M3a:端子、M3a1:端子、M3a2:端子、M3a3:端子、M3b:端子、M3b1:端子、M3b2:端子、M3b3:端子、M3c:端子、M3c1:端子、M3c2:端子、M3c3:端子、MN1:配線、MP1:端子、MP2:端子、P1:光センサ、S1:配線、SW1:スイッチ、10:画素、10A:画素、11:トランジスタ、12:トランジスタ、12T:トランジスタ、12T1:トランジスタ、12T2:トランジスタ、12T3:トランジスタ、13:トランジスタ、14:容量素子、15:発光素子、15T:発光素子、15T1:発光素子、15T2:発光素子、16:電流電圧変換素子、18:トランジスタ、19:容量素子、100:表示装置、100A:表示装置、111:フレームメモリ、112:タイミング制御部、120:表示パネル、121:ソースドライバ、122:ゲートドライバ、123:表示領域、124:モニタ回路、124A:モニタ回路、124B:モニタ回路、124B2:モニタ回路、130:演算部、130A:演算部、130B:演算部、131:第1演算部、131a:第3演算部、132:第2演算部、132a:第4演算部、133:補正演算部、134:回路、134A:回路、134B:回路、134C:回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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