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特許7447007電圧誘起出力低下耐性が改善された太陽光発電モジュールおよび封止材組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】電圧誘起出力低下耐性が改善された太陽光発電モジュールおよび封止材組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/048 20140101AFI20240304BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20240304BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
H01L31/04 560
C09K3/10 Z
C08L23/08
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020544020
(86)(22)【出願日】2019-03-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 US2019020643
(87)【国際公開番号】W WO2019173262
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】62/640,073
(32)【優先日】2018-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、リチャード ティ.
(72)【発明者】
【氏名】カプール、ジェーン
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0325729(US,A1)
【文献】特開2017-188577(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105086097(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
H01L 31/18-31/20
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
封止材層と、太陽電池アセンブリと、を備える太陽光発電モジュールであって、
前記封止材層が、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマー(EVA)、および抗電圧誘起出力低下(PID)強化コポリマーAのブレンドを含む、封止材組成物を含み、
前記封止材組成物が、高温多湿(85℃/85%RH)および最大96時間1500Vの電位に曝露後、初期出力の>90%超の出力安定性を提供し、
(i)前記コポリマーAが、E/Xコポリマーであり、Eはエチレンであり、Xが無水マレイン酸のハーフエステルであり、前記E/Xコポリマーが、前記ポリマー重量の12~25重量%の範囲の、無水マレイン酸モノ-メチルエステル、無水マレイン酸モノ-エチルエステル(MAME)、無水マレイン酸モノ-プロピルエステル、無水マレイン酸モノ-ブチルエステル、またはそれらの組み合わせを含む、または、
(ii)前記コポリマーAが、E/X/Yコポリマーであり、Eはエチレンであり、Xが無水マレイン酸のハーフエステルであり、Xが、前記ポリマー重量の6~20重量%の範囲の、無水マレイン酸モノ-メチルエステル、無水マレイン酸モノ-エチルエステル(MAME)、無水マレイン酸モノ-プロピルエステル、無水マレイン酸モノ-ブチルエステル、またはそれらの組み合わせを含み、Yが、前記ポリマー重量の1~30重量%の範囲の、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、またはイソ-ブチルアクリレート、またはそれらの混合物である、
太陽光発電モジュール。
【請求項2】
コポリマーAが、EVAとコポリマーAとの総重量の1~30重量%の範囲である、請求項1に記載の太陽光発電モジュール。
【請求項3】
太陽光発電モジュールの電圧誘起出力低下(PID)を低減する方法であって、前記方法が、太陽電池アセンブリ、ガラス層、および請求項1に記載の封止材組成物を含む封止材層を提供するステップと、ガラス層/封止材層/太陽電池アセンブリ、の構造を備える太陽光発電モジュールを作製するステップと、前記太陽光発電モジュールを動作させるステップと、時間と相関して、前記太陽光発電モジュールによって生成される電流を観察するステップと、を含む、方法。
【請求項4】
前記封止材組成物が、IEC TS62804-1技術仕様に準拠するそのような条件で、1000Vの電位が印加される、請求項1に記載の太陽光発電モジュール。
【請求項5】
前記封止材組成物が、IEC TS62804-1技術仕様に準拠するそのような条件で、1500Vの電位が印加される、請求項1に記載の太陽光発電モジュール。
【請求項6】
前記封止材組成物の前記コポリマーが、共重合されたエチレンと酢酸ビニルとであり、酢酸ビニルが、前記ポリマー重量の15重量%~約35重量%の範囲である、請求項1に記載の太陽光発電モジュール。
【請求項7】
前記コポリマーAが、E/Xコポリマーである、請求項1に記載の太陽光発電モジュール。
【請求項8】
前記コポリマーAが、E/Xコポリマーであり、Xが、前記ポリマー重量の15~20重量%の範囲である、請求項1に記載の太陽光発電モジュール。
【請求項9】
コポリマーAが、E/X/Yコポリマーである、請求項1に記載の太陽光発電モジュール。
【請求項10】
コポリマーAが、E/X/Yコポリマーであり、Xが、前記ポリマー重量の8~15重量%の範囲であり、Yが、前記ポリマー重量の5~15重量%の範囲である、請求項1に記載の太陽光発電モジュール。
【請求項11】
前記封止材組成物が、1つ以上の他のポリマー、およびまたは他の添加剤を含むが、ただし、それらが前記太陽光発電モジュールの性能に悪影響を及ぼさないことを条件とする、請求項1に記載の太陽光発電モジュール。
【請求項12】
1つ以上のガラス層、1つ以上の可撓性バックシート層、または前記封止材層と同じであっても異なっていてもよい第2の封止材層をさらに備える、請求項1に記載の太陽光発電モジュール。
【請求項13】
ガラス/封止材/太陽電池アセンブリ/封止材層/ガラス、ガラス/封止材/太陽電池アセンブリ/封止材/可撓性バックシート、ガラス/封止材/太陽電池アセンブリ/ガラス、およびガラス/封止材/太陽電池アセンブリ/可撓性バックシートの群から選択される構造からなる、請求項1に記載の太陽光発電モジュール。
【請求項14】
前記太陽電池アセンブリが、薄膜太陽電池を含む、請求項1に記載の太陽光発電モジュール。
【請求項15】
前記封止材層が、多層形態である、請求項1に記載の太陽光発電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、太陽光発電モジュール用の封止材組成物が提供される。封止材組成物は、共重合されたエチレンと酢酸ビニルとのコポリマーと、Eがエチレンであり、Xが無水マレイン酸のハーフエステルである一般構造E/X、またはEがエチレンであり、Xが無水マレイン酸のハーフエステルであり、YがアルキルアクリレートであるE/X/Yを有する、強化耐PIDコポリマーと、を含む。さらに本明細書では、封止材組成物を含む太陽光発電モジュールが提供される。太陽光発電モジュールは、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマーである封止材を主に使用する太陽光発電モジュールよりも、電圧誘起出力低下の影響を受けにくい。
【背景技術】
【0002】
本発明が関係する最新技術をより完全に説明するために、この記載にはいくつかの特許および出版物が引用されている。これらの特許および出版物の各々の開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
太陽光発電モジュールは、再生可能エネルギーの重要な供給源である。具体的には、太陽光に曝露すると電子を放出する太陽電池が挙げられる。これらの太陽電池は、通常は、脆弱であり得る半導体材料であるが、典型的には、物理的な衝撃および引っかき傷から保護するポリマー材料で、覆われているか封止されている。覆われている太陽電池は一般に、ガラス、または耐候性、摩耗もしくは他の物理的損傷に耐性のある別の外層によってさらに保護されている。
【0004】
太陽光発電モジュールの封止材、ガラス層、および他の構成要素は、太陽電池を保護し、光の電気への変換効率を損なわないことが理想的である。しかしながら、電圧誘起出力低下現象(「PID」)は、太陽光発電モジュールを、モジュールの太陽電池とフレームなどの別の部分との間の電位が大きい状態で動作させると、太陽電池の発電の減少または停止を生じる既知の問題である。したがって、PIDの問題に対する1つのアプローチは、太陽電池がモジュールのフレームおよび他の部分から電気的に絶縁されているモジュールを設計し、それにより、これらの大きな内部電位または「分極」の発生を防止することである。例えば、Liによる米国特許出願公開第2012/0266943号を参照されたい。別のアプローチでは、Swansonらに発行された米国特許第7,554,031号は、太陽光発電モジュールの様々な部分間に導電性経路を提供し、それにより有害な分極を最小化または防止することについて記載している。
【0005】
いくつかの異なる要因がPIDに寄与すると考えられている。例えば、Buneaらによる米国特許出願公開第2011/0048505号は、太陽光UV照射の割合を増加した曝露下で太陽電池を動作させることによって、PIDを低減または排除することができると主張している。しかしながら、理論にとらわれることを望むものではないが、太陽電池の表面への水およびイオンの移動が、PIDの主要なメカニズムであると思われる。太陽光発電モジュールを動作させる電圧および電気回路の設計など、PIDに影響を与える他の要因は、それらが水およびイオンの移動の程度または方向に影響を与えるという点で二次的であると考えられている。
【0006】
具体的には、拡散した水およびイオンは、太陽電池のp-n接合を不活性化する有害な電気化学反応を引き起こすと仮定されている。これに関連して、Aitkenらによる国際特許出願公開第2013/020128号は、太陽光発電モジュールの標準的なソーダ石灰ガラスを、ナトリウムイオンなどのアルカリイオンを含まない、または実質的に含まないガラスに置き換えることにより、PIDを低減または排除することができると主張している。化学的に適切な反射防止コーティングを選択することの重要性は、例えば、S.Pingel et al.,“Potential Induced Degradation of Solar Cells and Panels,”35th IEEE PVSC,Honolulu,2010,2817-2822で論じられている。PIDの速度は、屈折率と相関し、したがって光学的特徴に対応するSi対Nの比を変動させることによって制御することができる。加えて、Xavierらに発行された米国特許第8,188,363号は、ガラスと太陽電池との間に電気絶縁フルオロカーボン層を挿入することによりPIDを排除することができると主張している。このフルオロカーボン層はまた、水またはイオンの移動の障壁にもなり得る。
【0007】
さらに、太陽光発電モジュールの他の重要な特性は、高温および湿度レベルによって悪影響を受けることが知られている。これらの特性としては、例えば、機械的完全性、体積抵抗率などの電気的特性、リーク電流、および全体的な電池効率が挙げられる。
【0008】
したがって、封止材への水分の進入およびイオン移動の速度および程度に影響を与える要因を理解し制御することが重要である。太陽光発電モジュール内の水およびイオンの移動を効果的に防止または低減する封止材により、モジュールの設計および動作条件における自由度を高めることが可能になるであろう。さらに、この封止材は、PIDを低減または防止することにより、モジュールの効率および有効寿命を増加させるであろう。
【0009】
前述のことから、太陽光発電モジュールの封止材として使用されると、太陽電池の電圧誘起出力低下を防止または低減するポリマー材料に対する需要が存在することは、明らかである。
【発明の概要】
【0010】
したがって、本明細書の第1の実施形態では、太陽光発電モジュール用の封止材組成物が提供される。共重合されたエチレンと酢酸ビニルとのコポリマー(EVA)と、強化耐PIDコポリマーAとを含む封止材組成物。強化耐PIDコポリマーAは、Eがエチレンであり、Xが無水マレイン酸のハーフエステルであるE/X、またはEがエチレンであり、Xが無水マレイン酸のハーフエステルであり、YがアルキルアクリレートであるE/X/Yである。
【0011】
さらに本明細書では、封止材組成物を含む太陽光発電モジュールが提供される。太陽光発電モジュールは、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマーである封止材を主に使用する太陽光発電モジュールよりも、電圧誘起出力低下の影響を受けにくい。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、太陽電池アセンブリ、ガラス層、および封止材層を提供するステップを含む、太陽光発電モジュールの電圧誘起出力低下を低減する方法を対象とする。共重合されたエチレンと酢酸ビニルとのコポリマーと、強化耐PIDコポリマーとを含む、封止材組成物を有する封止材層。強化耐PIDコポリマーAは、Eがエチレンであり、Xが無水マレイン酸のハーフエステルであるE/X、またはEがエチレンであり、Xが無水マレイン酸のハーフエステルであり、YがアルキルアクリレートであるE/X/Yである。ガラス層/封止材層/太陽電池/封止材層/バックシートアセンブリの構造を有する太陽光発電モジュールを作製し、太陽光発電モジュールを操作すること。その後、時間と相関して、太陽光発電モジュールによって生成される電流を観察すること。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書では、次の定義を使用して、本開示をさらに定義および説明する。これらの定義は、特定の場合に特に限定されない限り、本明細書全体を通じて使用される用語に適用される。
【0014】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書に記載の定義を含め、本明細書が優先されるであろう。
【0015】
定義された状況において特に明記されない限り、本明細書で使用されるすべてのパーセンテージ、部、比、および同様の量は、重量によって定義される。
【0016】
材料、方法、または機械が、用語「当業者に既知の」、「従来の」、または同義の語もしくは句と共に本明細書に記載されているとき、この用語は、本出願の出願時期に従来のものである材料、方法、および機械を意味し、それらはこの記載に包含される。現在は従来的ではないが、当技術分野で同様の目的に好適であると認識されるようになるであろう材料、方法、および機械も包含される。
【0017】
本明細書で使用される「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「含む(containing)」、「を特徴とする」、「有する(has)」、「有する(having)」、または他の任意の変形は、非排他的包含を網羅することを目的としている。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの要素だけに限定されず、明示的にリストされていないか、またはそのようなプロセス、方法、物品、もしくは装置に固有の他の要素を含んでもよい。
【0018】
移行句「からなる(consisting of)」は、特許請求の範囲で特定されていない任意の要素、ステップ、または成分を除外し、通常付随する不純物を除いて、列挙されたもの以外の材料を含めないように特許請求の範囲を限定する。語句「からなる」がプリアンブルの直後ではなく、特許請求の範囲の本文の文節に出現すると、その文節に記載されている要素のみに限定され、他の要素は、全体としての特許請求の範囲から除外されない。
【0019】
移行句「から本質的になる」は、特許請求の範囲を特定の材料またはステップ、および特許請求された発明の基本的で新規の特性(複数可)に実質的に影響しないものに限定する。「から本質的になる(consisting essentially of)」特許請求の範囲は、「からなる」形式で記述されている制限された特許請求の範囲と、「含む」形式で作成された完全に制限のない特許請求の範囲との間の中間点を占める。付随する要素に適切なレベルでの、本明細書で定義される任意選択的なそのような付随する要素、および微量の不純物は、用語「から本質的になる」によって、組成から除外されない。
【0020】
組成物、プロセス、構造、または組成物、プロセス、もしくは構造の一部分が、「含む」などの制限のない用語を使用して本明細書に記載される場合、特に記述されない限り、記載には、組成物、プロセス、構造の要素、または組成物、プロセス、もしくは構造の一部分「から本質的になる」かまたはそれら「からなる」実施形態も含む。
【0021】
さらにこれに関連して、明確にするために、本明細書で別個の実施形態の文脈に記載されている本発明のある特定の特色は、単一の実施形態に組み合わせて提供することもできる。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈に記載されている本発明の様々な特色は、別個にまたは任意の小さい組み合わせでも提供することができる。
【0022】
冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、本明細書に記載の組成物、プロセス、または構造の様々な要素および構成要素と関連して用いることができる。これは、単に便宜上のものであり、組成物、プロセス、または構造についての一般的な意味を与えるものである。そのような記載は、要素または構成要素のうちの「1つまたは少なくとも1つ」を含む。さらに、本明細書で使用される場合、複数形が除外されることが特定の文脈から明らかでない限り、単数形の物品には、複数の要素または構成要素に関する記載も含まれる。
【0023】
さらに、特に対照的なことが明記されない限り、接続詞「または(or)」は、包括的なまたはを指し、排他的なまたはを指さない。例えば、条件「AまたはB」は、次のうちの任意の1つ:Aが真であり(または存在する)かつBが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在しない)かつBが真である(または存在する)、およびAとBとの両方が真である(または存在する)、を満たす。排他的な「または」は、例えば、「AまたはBのいずれか」および「AまたはBのうちの1つ」などの用語によって本明細書では指定される。
【0024】
用語「約」は、量、サイズ、配合、パラメータ、ならびに他の数量および特徴が正確でなく、正確である必要がないことを意味するが、概算、ならびに/または必要に応じて公差、変換係数、四捨五入、測定誤差など、および当業者に既知の他の要因を反映するそれ以上またはそれ以下であり得る。一般に、量、サイズ、配合、パラメータ、または他の数量もしくは特徴は、そのように明記されているかどうかにかかわらず、「約」または「およそ」である。
【0025】
加えて、本明細書に記載の範囲は、特に明記されない限り、それらの終点を含む。さらに、量、濃度、または他の値もしくはパラメータが、1つの範囲、1つ以上の好ましい範囲、またはより高い好ましい値およびより低い好ましい値の列挙として与えられるとき、範囲は、任意の範囲上限または好ましい値と、任意の範囲下限または好ましい値との任意の対から形成され、そのような対が別個に開示されているかどうかに関わらず、すべての範囲を具体的に開示するものと理解されるべきである。本発明の範囲は、範囲を定義するときに列挙された特定の値に限定されない。
【0026】
用語「アルキル」は、本明細書で単独で、または例えば「アルキル基」もしくは「アルコキシ基」などの組み合わせた形態で使用される場合、1つの置換基を有する、1~8個の炭素原子を有する飽和炭化水素基を指し、それは分岐または非分岐であってもよい。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「コポリマー」は、2つ以上のコモノマーの共重合から生じる共重合単位を含むポリマーを指す。これに関連して、コポリマーは、その構成コモノマーまたはその構成コモノマーの量、例えば「エチレンと18重量%の酢酸ビニルを含むコポリマー」、または同様の記載と関連して本明細書に記載され得る。そのような記載は、コモノマーを共重合単位と称さない点で、コポリマーの従来の命名法、例えば国際純正応用化学連合(IUPAC)命名法を含まないという点で、プロダクトバイプロセスの専門用語を使用しないという点で、または別の理由で、非公式であるとみなされ得る。しかしながら、本明細書で使用される場合、その構成コモノマーまたはその構成コモノマーの量に関するコポリマーについての記載は、コポリマーが特定のコモノマーの共重合単位(特定のときに特定の量)を含有することを意味する。当然の結果として、限定された状況でそのように特に明記されない限り、コポリマーは、所与のコモノマーを所与の量で含有する反応混合物の生成物ではない。用語「コポリマー」は、2つの異なるモノマーの共重合単位から本質的になるポリマー(ジポリマー)、または3つ以上の異なるモノマーから本質的になるポリマー(3つの異なるコモノマーから本質的になるターポリマー、4つの異なるコモノマーから本質的になるテトラポリマーなど)を指す場合がある。
【0028】
本明細書で単独でまたは「積層された」または「積層」などの組み合わせの形態で使用される場合、用語「積層」は、例えば、任意選択的に熱および/または真空および/または正圧を使用して、互いにしっかりと接着または結合されている少なくとも2つの層を有する構造を指す。層は、互いに直接または間接的に接着され得る。この文脈では、用語「直接」は、2つの層間に中間層、封止材層、または接着層などの追加の材料がないことを意味し、用語「間接的に」は、2つの層間に追加の材料があることを意味する。
【0029】
第1の実施形態では、本発明は、太陽光発電モジュール用の封止材組成物を対象とする。封止材組成物は、共重合されたエチレンと酢酸ビニルとのコポリマーと、強化耐PIDコポリマーAとを含み、強化耐PIDコポリマーは、Eがエチレンであり、Xが無水マレイン酸のハーフエステルであるE/X、またはEがエチレンであり、Xが無水マレイン酸のハーフエステルであり、YがアルキルアクリレートであるE/X/Yである。さらに本明細書では、封止材組成物を含む太陽光発電モジュールが提供される。太陽光発電モジュールは、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマーである封止材を主に使用する太陽光発電モジュールよりも、電圧誘起出力低下の影響を受けにくい。
【0030】
本明細書に記載の耐PID強化コポリマーAを含む封止材組成物の層を備える太陽光発電モジュールは、電圧誘起出力低下(PID)に耐性がある。理論にとらわれることを望むものではないが、封止材組成物は、アルカリ金属カチオン、具体的にはナトリウムカチオンなどのイオンの透過性が低いと考えられている。したがって、イオンが太陽電池の表面に到達し、それによりPIDの発生が引き起こされることを防止する。
【0031】
耐PID強化コポリマーAは、EVAとコポリマーAとの総重量の1~30重量%の範囲、好ましくは2~20重量%の範囲、最も好ましくは4~15重量%の範囲である。
【0032】
封止材組成物のEVAは、共重合されたエチレンと酢酸ビニルとであり、酢酸ビニルが、ポリマー重量の15重量%~約35重量%の範囲、最も好ましくは25~32重量%であり、メルトフローレートが、ASTM D1238に従って190℃、2.16kgで測定して0.5~100g/10分である。
【0033】
耐PID性能を強化するための変更因子として機能する耐PIDコポリマーAは、Xが無水マレイン酸のハーフエステルであるE/Xコポリマーである。E/Xコポリマーとしては、ポリマー重量の12~25重量%、最も好ましくは15~20重量%の範囲の、無水マレイン酸モノ-メチルエステル、無水マレイン酸モノ-エチルエステル(MAME)、無水マレイン酸モノ-プロピルエステル、無水マレイン酸モノ-ブチルエステル、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0034】
現在の実施形態の変形では、コポリマーAは、Xが、ポリマー重量の6~20重量%、最も好ましくは8~15重量%の範囲の無水マレイン酸モノ-メチルエステル、無水マレイン酸モノ-エチルエステル(MAME)、無水マレイン酸モノ-プロピルエステルプロピル、無水マレイン酸モノ-ブチルエステル、またはそれらの組み合わせであり、Yが、ポリマー重量の1~30重量%、最も好ましくは5~15重量%の範囲のメチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレートまたはイソ-ブチルアクリレートである、E/X/Yコポリマーである。
【0035】
本実施形態の封止材組成物を含有する太陽光発電モジュールは、国際電気標準会議方法:IEC TS62804-1技術仕様に準拠するそのような条件で1000~1500電圧を通す。
【0036】
好適な耐PIDコポリマーAは、封止材組成物での使用に適した物理的特性を有するべきである。具体的には、封止材組成物は、望ましくは、物理的衝撃から太陽光発電モジュールの太陽電池および他の電気部品を緩衝するのに適した靭性および弾性を有する。また、望ましくは、封止材組成物は、容易に加工可能であり、例えば、標準的な条件下でシートに形成可能であり、積層可能である。さらに望ましくは、封止材組成物は、太陽光発電モジュールの光入射側で使用されると、日射に対する透明性などの好適な光学特性を有する。
【0037】
封止材組成物は、EVAおよびコポリマーAとは異なるポリマーB以上の別のポリマーをEVAおよびコポリマーAの組み合わせの0~20重量%の範囲で添加してもよいが、ただし、ポリマーBは、耐PID性能を損なわず、PV性能を低減しないことを条件とする。ポリマーBは、ポリオレフィン、または封止材組成物に用いられるEVAおよびコポリマーA以外のエチレンコポリマーであってもよい。当業者は、これらの追加のポリマーの添加が、本発明の範囲内であることを認識するであろう。
【0038】
封止材組成物はまた、有機過酸化物、阻害剤、および開始剤などの架橋に効果的であり架橋を制御するための添加剤を含有してもよい。架橋添加剤の好適な例およびこれらの添加剤のレベルは、F.-J.Pernに発行された米国特許第6,093,757号、J.W.Choらによる米国特許公開第2012/0168982号、およびS.Devismeらによる同第2012/0301991号、ならびにHolley,W.W.,and Agro,S.C.“Advanced EVA-Based Encapsulants-Final Report January1993-June1997”,NREL/SR-520-25296,Sept.1998,Appendix Dに詳述されている。
【0039】
加えて、封止材組成物での使用に特に有用な4種の添加剤は、熱安定剤、UV吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、およびシランカップリング剤である。4種の添加剤の好適な例およびこれらの添加剤のレベルは、Hausmannらに発行された米国特許第8,399,096号に詳述されている。
【0040】
封止材組成物はまた、1種以上の他の添加剤を含んでもよく、好適な他の添加剤としては、限定されないが、可塑剤、加工助剤、流動性向上添加剤、潤滑剤、顔料、染料、難燃剤、耐衝撃性改良剤、核剤、抗ブロッキング剤(例えばシリカ)、分散剤、界面活性剤、キレート剤、カップリング剤、接着剤、プライマー、強化添加剤(例えばガラス繊維)、他の充填剤などを挙げることができる。好適な他の添加剤、添加剤レベル、および添加剤をコポリマー組成物に組み込む方法は、Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,5th Edition,John Wiley&Sons(New Jersey,2004)に見ることができる。一般に、これらの他の添加剤の総量は、存在する場合、封止材組成物の総重量に基づいて、5重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、または1重量%未満である。
【0041】
封止材組成物は、押出機での溶融混合などの任意の好適なプロセスによって作製されてもよく、高剪断溶融混合を用いることが好ましい。好適な高剪断混合装置としては、静止混合機、ラバーミル、Brabender混合機、Buss混練機、単軸押出機、二軸押出機、加熱または非加熱2本ロールミルなどが挙げられる。好適な配合プロセスおよび条件の追加の例はまた、Kirk-Othmer Encyclopedia and the Modern Plastics Encyclopedia,McGraw-Hill(New York,1995)にも見ることができる。
【0042】
封止材組成物は、任意の好適なプロセスによってフィルムまたはシートに形成することができる。これらのプロセスについての情報は、例えば、Kirk Othmer Encyclopedia,the Modern Plastics Encyclopedia、またはWiley Encyclopedia of Packaging Technology,2d edition,A.L.Brody and K.S.Marsh,Eds.,Wiley-Interscience(Hoboken,1997)などの参考文献に見ることができる。例えば、シートは、ディップコーティング、溶液キャスティング、圧縮成形、射出成形、積層、溶融押出、ブローフィルム、押出コーティング、タンデム押出コーティング、または任意の他の好適な手順を通じて形成することができる。好ましくは、シートは、溶融押出、溶融共押出し、溶融押出コーティング、またはタンデム溶融押出コーティングプロセスによって形成される。
【0043】
これに関連して、本明細書で使用される場合、用語「フィルム」および「シート」は、実質的に平面の連続した物品を指す。この文脈で使用される場合、用語「連続した」は、フィルムまたはシートが、少なくとも約3m、少なくとも約10m、少なくとも約50m、少なくとも約100m、または少なくとも250mの長さを有することを意味する。さらに、シートは、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも75、または少なくとも100のアスペクト比、すなわち、長さ対幅の比を有する。
【0044】
さらに、フィルムとシートとの違いは厚さであるが、しかしながらフィルムとシートとを区別する正確な厚さの業界基準はない。しかしながら、本明細書で使用される場合、フィルムは、一般に、約10ミル(0.254mm)以下の厚さを有する。シートは一般に、約10ミル(0.254mm)超の厚さを有する。本明細書の記載は、特定の場合に特に限定されない限り、フィルムおよびシートに等しく関係する。しかしながら、便宜上、これらの用語のうちの1つのみを所与の文脈で使用する場合がある。
【0045】
加えて、封止材組成物を含むシートは、片側または両側に滑らかなまたは粗い表面を有し得る。好ましくは、シートは、積層プロセス中の脱気を容易にするために、両側に粗い表面を有する。粗い表面は、機械的エンボス加工などの従来のプロセスによって生成することができる。例えば、押出されたままのシートは、ダイの出口に近接して位置するダイロールの特別に準備した表面上を通される場合がある。このダイロールは、溶融ポリマーの片側に望ましい表面特徴を付与する。したがって、そのようなテクスチャ加工されたロールの表面が微細な山と谷を有すると、テクスチャ加工されたロール上にキャストされた、まだ圧痕可能なポリマーシートは、ロールと接触する側に粗い表面を有するであろう。粗い表面は、一般に、それぞれロール表面の谷と山に一致する。テクスチャ加工されたロールは、例えば、米国特許第4,035,549号、および米国特許出願公開第2003/0124296号に記載されている。
【0046】
本明細書に記載の封止材組成物の層を備える太陽光発電モジュールは、電圧誘起出力低下(PID)に耐性がある。理論にとらわれることを望むものではないが、封止材組成物は、アルカリ金属カチオン、具体的にはナトリウムカチオンなどのイオンの透過性が低いと考えられている。したがって、イオンが太陽電池の表面に到達し、それにより太陽電池の損傷が引き起こされ得ることを防止する。
【0047】
したがって、本明細書では、さらに封止材組成物を含む太陽光発電モジュールが提供される。封止材組成物を好適に含み得る太陽光発電モジュールの構造としては、限定されないが、Hayesらに発行された米国特許第8,399,081号に詳述されている構造が挙げられる。Hayesらが記載の任意のポリマー層を封止材組成物の層に置き換えてもよい。好ましくは、前面または太陽に面する封止材層および背面または太陽に面さない封止材層を含むHayesらが記載の任意の封止材層を、本明細書に記載の封止材組成物の層に置き換える。太陽電池と、ナトリウムイオンを含有するガラスシートとの間に配設される封止材層を、本明細書に記載の封止材組成物の層に置き換えることがより好ましい。太陽電池と、ナトリウムイオンを含有するガラスシートとの間に配設される、太陽光発電モジュールの前面または太陽に面する側の封止材層を、本明細書に記載の封止材組成物の層に置き換えることがさらにより好ましい。
【0048】
また、本明細書に記載の封止材組成物の層は、Hayesらが記載の任意の封止材層と併せて使用される。より具体的には、好ましい太陽光発電モジュールは、第1または第2の封止材層のうちの一方が、EVAおよび本明細書に記載のE/XコポリマーAを含み、第1または第2の封止材層のうちの他方が、Hayesらが記載の任意の封止材層であり得る、ガラス/第1の封止材層層/太陽電池アセンブリ/第2の封止材層/可撓性バックシートまたはガラスの構造を有する。この好ましい太陽光発電モジュールでは、第1および第2の封止材層は、前面または背面封止材層であってもよい。さらに、太陽電池アセンブリとナトリウムイオンを含有するガラスシートとの間に配設されている封止材層を備える任意の太陽光発電モジュールは、そのように配設された封止材層を、第1または第2の封止材層のうちの一方がEVAおよび本明細書に記載のE/XコポリマーAを含み、第1または第2の封止材層のうちの他方が、Hayesらが記載の任意の封止材層であってもよい、第1および第2の封止材層と置き換えると、好ましい太陽光発電モジュールである。
【0049】
太陽光発電モジュールはまた、太陽電池アセンブリも備える。これらのアセンブリは、1つ以上の太陽電池で構成されている。最も一般的な2つのタイプの太陽光発電モジュールとしては、ウェハベースの太陽電池または薄膜太陽電池が挙げられる。ウェハベースの太陽電池を含む太陽光発電モジュールは、一般に次の層を含む構造:ガラス/封止材/太陽電池(複数可)/封止材/ガラス、またはガラス/封止材/太陽電池(複数可)/封止材/可撓性バックシート、を有する。
【0050】
薄膜太陽電池は、ウェハベースの太陽電池の代替品である。そのような電池に通常使用される材料としては、アモルファスシリコン(a-Si)、微結晶シリコン(μc-Si)、テルル化カドミウム(CdTe)、セレン化銅インジウム(CuInSeまたはCIS)、銅インジウム/二セレン化ガリウム(CuInGa(1-x)SeまたはCIGS)、光吸収染料、有機半導体などが挙げられる。例として、薄膜太陽電池は、例えば、米国特許第5,507,881号、同第5,512,107号、同第5,948,176号、同第5,994,163号、同第6,040,521号、同第6,123,824号、同第6,137,048号、同第6,288,325号、同第6,258,620号、同第6,613,603号、および同第6,784,301号、ならびに米国特許公開第2007/0298590号、同第2007/0281090号、同第2007/0240759号、同第2007/0232057号、同第2007/0238285号、同第2007/0227578号、同第2007/0209699号、同第2007/0079866号、同第2008/0223436号、および同第2008/0271675号に記載されている。
【0051】
薄膜太陽電池アセンブリは、典型的には、基材を備える。基材上に、光吸収材料および半導体材料の複数の層が堆積されている。基材は、ガラスまたは可撓性フィルムであり得る。基材はまた、入射太陽光に面しているこれらのモジュールでは、スーパーストレートとも称され得る。薄膜太陽電池アセンブリは、一般に半導体材料上に堆積される透明導電性酸化物(TCO)などの導電性コーティングまたは電気配線をさらに含み得る。ウェハベースの太陽電池アセンブリと同様に、薄膜太陽電池アセンブリは、ポリマー封止材層間に挟まれても積層されてもよく、ひいてはこの構造は、外側保護層間に挟まれても積層されてもよい。
【0052】
薄膜太陽電池アセンブリは、1つの表面のみ、具体的には基材またはスーパーストレートの反対側の表面が、ポリマー封止材層に積層されていてもよい。これらの太陽光発電モジュールでは、封止材層は、ほとんどの場合、外側保護層と接触し、かつ外側保護層に積層されている。例えば、薄膜太陽光発電モジュールは、前面または太陽に面する側から背面または太陽に面さない側への位置の順に、(1)前面の太陽に面する側にスーパーストレートを有する薄膜太陽電池アセンブリ、(2)背面ポリマー封止材層、および(3)背面保護層または「バックシート」、を備える積層構造を有し得る。この構造では、スーパーストレートは、前面保護層の機能を実施する。
【0053】
あるいは、薄膜太陽光発電モジュールは、前面または太陽に面する側から背面または太陽に面さない側への位置の順に、(1)前面保護層または「フロントシート」、(2)前面ポリマー封止材シート、および(3)背面または太陽に面さない側に基材を有する薄膜太陽電池アセンブリ、を備える積層構造を有してもよい。この構造では、基材は、背面保護層の機能も実施する。
【0054】
バックシートに使用される好適なプラスチックフィルム層としては、限定されないが、ポリエステル(例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(エチレンナフタレート))、ポリカーボネート、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、および環状ポリオレフィン)、ノルボルネンポリマー、ポリスチレン(例えばシンジオタクチックポリスチレン)、スチレン-アクリレートコポリマー、アクリロニトリル-スチレンコポリマー、ポリスルホン(例えば、ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ナイロン、ポリ(ウレタン)、アクリル、酢酸セルロース(例えば、酢酸セルロース、三酢酸セルロースなど)、セロファン、ポリ(塩化ビニル)(例えばポリ(塩化ビニリデン))、フルオロポリマー(例えば、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマーなど)、およびそれらの2つ以上の組み合わせなどのポリマーが挙げられる。プラスチックフィルムはまた、二軸配向ポリエステルフィルム(好ましくはポリ(エチレンテレフタレート)フィルム)、またはフルオロポリマーフィルム(例えば、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)(DuPont)のTedlar(登録商標)、Tefzel(登録商標)、およびTeflon(登録商標))であってもよい。さらに、本明細書で使用されるフィルムは、フルオロポリマー/ポリエステル/フルオロポリマー多層フィルム(例えば、Isovolta AG.(AustriaまたはMadico,Woburn,MA)から入手可能なTedlar(登録商標)/PET/Tedlar(登録商標)またはTPT積層フィルム)などの多層フィルムの形態であってもよい。これらの同じ材料は、透明な場合、可撓性フロントシートでの使用にも好適である。
【0055】
本明細書で使用する場合、用語「ガラス」としては、窓ガラス、板ガラス、ケイ酸塩ガラス、板ガラス、低鉄ガラス、強化ガラス、強化低鉄ガラス、強化CeOフリーガラス、フロートガラス、着色ガラス、特殊ガラス(太陽熱を制御するための成分を含有するものなど)、コーティングガラス(太陽光を制御する目的のために金属化合物(例えば、銀または酸化インジウムスズ)でスパッタリングされたものなど)、低E-ガラス、Toroglas(商標)ガラス(Saint-Gobain NA Inc(Trumbauersville,PA))、Solexia(商標)ガラス(PPG Industries(Pittsburgh,PA))およびStarphire(商標)ガラス(PPG Industries)が挙げられる。これらおよび他の特殊ガラスは、例えば、米国特許第4,615,989号、同第5,173,212号、同第5,264,286号、同第6,150,028号、同第6,340,646号、同第6,461,736号、および同第6,468,934号に記載されている。
【0056】
両方のタイプの太陽光発電モジュールのガラス層のうちの1つ以上を、ポリマーフィルムなどの他の材料に置き換えてもよい。しかしながら、本発明の太陽光発電モジュールは、好ましくは、少なくとも1つのガラス層を含む。本明細書に記載の封止材組成物が封止材層で使用されると、これらの太陽光発電モジュールは、従来のEVA封止材を含む太陽光発電モジュールと比較すると、PIDに関して著しく高い安定性を提供する。安定性の改善は、太陽光発電モジュールがガラスを含む太陽光発電モジュールでより高い。好ましくは、ガラスは、国際特許出願公開第WO2013/020128号に記載のガラスなどの、低ナトリウムガラスまたは低アルカリガラスではない。
【0057】
太陽光発電モジュールが2つ以上の封止材層を備えるとき、追加の封止材層(複数可)は、本明細書に記載の封止材組成物を含んでもよい。あるいは、追加の封止材層(複数可)は、酸コポリマー、酸コポリマーのアイオノマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリ(ビニルアセタール)(音響等級のポリ(ビニルアセタール)を含む)、ポリウレタン、ポリ(塩化ビニル)、ポリエチレン(例えば、線状低密度ポリエチレン)、ポリオレフィンブロックコポリマーエラストマー、α-オレフィンとα,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステルとのコポリマー)(例えば、エチレンメチルアクリレートコポリマーおよびエチレンブチルアクリレートコポリマー)、シリコーンエラストマー、エポキシ樹脂、Hayesらが記載の任意の封止材層、およびこれらの材料のうちの2つ以上の組み合わせなどの他のポリマー材料を含み得る。
【0058】
太陽光発電モジュールの各封止材層は、独立して、約5~約40ミル(約0.125~約1mm)、または約2~約30ミル(約0.250~約0.625mm)、または約15~約20ミル(約0.381~約0.505mm)の範囲であり得る厚さを有する。封止材層が多層形態であると、多層封止材の総厚は、上記の範囲内にある。加えて、本明細書に記載の太陽光発電モジュールは、2つ以上の封止材層、例えば、(太陽電池の前方に)前面封止材層、および(太陽電池の後方に)背面封止材層を有し得る。これらの封止材層の各々は、上記の総厚を有する。
【0059】
封止材組成物を含む太陽光発電モジュールは、任意の好適なプロセスによって作製することができる。太陽光発電モジュールは、ほとんどの場合、米国特許第5,593,532号に記載のものなど、真空積層プロセスによって作製されている。あるいは、太陽光発電モジュールは、米国特許第7,763,360号および米国特許公開第2007/0228341号でガラス積層体に関して記載のものなどの、オートクレーブ積層プロセスによって作製されてもよい。しかしながら、非オートクレーブ積層プロセスを使用してもよい。好適な非オートクレーブ積層プロセスのいくつかの例は、米国特許第7,763,360号および同第8,637,150号にも記載されている。
【0060】
当業者であれば、必要とされ得る積層プロセスに対して任意の調整を行うことが可能であると考えられる。例えば、本明細書に記載の封止材組成物のメルトインデックスを、従来の封止材層のものと比較して増加させる場合、プロセスへの合理的な調整は、積層温度またはサイクル時間を減少させることを含む。
【0061】
次の実施例は、本発明をさらに詳細に説明するために提供される。本発明を実行するために現在企図されている特定の実施形態および好ましいモードについて記載するこれらの実施例は、本発明を例示することを意図しており、本発明を限定することを意図していない。
【実施例
【0062】
材料および方法
次の材料は、特に指定されない限り、表1、2、および3に列挙されている実施例全体を通じて使用した。
・アニールフロートガラス-AGC Solite145×155×3.2mm(AGC Flat Glass North America(Alpharetta,GA))
・バックシート-Dun-Solar 1200TPT(Dunmore Corp.(Bristol,PA))
・太陽電池-Motech単結晶XS125-165R(Motech Industries(Tainan City,Taiwan))
・ワイヤー、タブリボン、バスバー-Wuxi Sveck Technology(Wuxi,China)
○組成-スズ62%、鉛36%、銀2%
○タブリボン-0.16×2mm
○バスバー-0.2×5mm
・ジャンクションボックス-Renhe Solar、モデル番号PV-RH06-60(Renhe Solar(Zhejiang,China)
・封止材(表1、表2に示されるとおりに使用)
○STR15420P、STR Holdings(Enfield,CT)から市販のEVA封止材
○HZ406P、Hangzhou First Applied Materials(Hangzhou,China)から市販のEVA封止材
○EVAおよびE/MAMEを含有するEN1~EN4は次のとおりである:
EVA-コポリマーの総重量に基づいて、酢酸ビニルの共重合単位を28重量%含み、ASTM D1238に従って190℃および2.16kgで決定して3.0g/10分のメルトフローレートを有する、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、
E/MAME-コポリマーの総重量に基づいて、無水マレイン酸のモノエチルエステルの共重合単位を15重量%含み、ASTM D1238に従って190℃および2.16kgで決定して400g/10分のメルトフローレートを有する、エチレン/マレイン酸モノエチルコポリマー。
【0063】
E/MAMEを含有する封止材EN1~EN4の具体的な配合を、表1に提供する。架橋剤は、tert-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート(TBEC)(Luperox(登録商標)TBEC、Arkema)である。架橋助剤、トリアリルイソシアヌレート(TAIC、Ciba)。光安定剤は、ビス(2,2,6,6,-テトラメチル-4-ピペリジル)セバセテート(sebaceate)(Tinuvin770、Ciba)である。シランカップリング剤は、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-503、Shin-Etsu Chemical)である。UV吸収剤は、[2-ヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)フェニル]フェニルメタノン(Chimassorb 81、Ciba)である。すべての添加剤は、さらに精製することなく使用し、添加剤の配合は、EVAとEMAMEとのコポリマーブレンド100部に基づく。
【0064】
表2および表3で封止材として使用したEN1~EN4キャストシートは、次のように調製した。EVAをシランカップリング剤に一晩、最低8時間浸漬した。残りの添加剤、すなわち、架橋剤、架橋助剤、光安定剤、およびUV吸収剤を含有する濃縮物は、EVA樹脂を用いて作製して、最終的に配合された化合物の均一性を増加させる。シランに浸漬したEVA、濃縮物、EMAME樹脂を均一に混合し、110℃未満の設定温度で二軸押出機のホッパーに供給して、樹脂マトリックスの早期架橋を防止する。
【表1】
【0065】
表2および表3の太陽光発電モジュールは、次の方法にしたがった積層によって形成した。アニールフロートガラス(AGC Solite145×155×3.2mm、AGC Flat Glass North America(Alpharetta,GA))を脱イオン水ですすぎ、乾燥させた。次のモジュール構造:ガラス/前面封止材/1つの太陽電池/背面封止材/バックシートを作製した。使用した前面封止材および背面封止材は、表2および表3の実施例に記載する。太陽電池(XS125-165R(Motech Industries,Inc.(Tainan City,Taiwan))は、単結晶であり、0.16×2mmのリボン(Wuxi Sveck Technology(Wuxi,China))でタブ付けした。0.2×5mmのバスバー(Wuxi Sveck Technology(Wuxi,China))は、Dunsolar1200TPTバックシート(Dunmore Corporation(Bristol,PA))で電気的に絶縁した。
【0066】
真空積層サイクルは、150℃の設定温度で、18分の処理時間であり、真空時間は4分であり、プレス時間は1000mbarの一定圧力で13分であった。真空積層機は、Meier Icolamモデル2515(NPC-Meier GMBH(Bocholt,Germany))であった。ミニモジュールを真空積層機から取り外し、周囲温度まで冷却した。バスバーは、シーリング剤でモジュールに取り付けたジャンクションボックスにはんだ付けした。
【0067】
太陽光発電モジュールを、次の方法に従ってPIDについて試験した。モジュールを、3Mの1インチのアルミニウム系テープ(3M Company(Saint Paul,MN))でカバーガラスの4つの端すべてにテープで留めた。モジュールの前面は、未処理のアルミホイルで完全に覆った。アルミホイルで覆ったモジュールを、人工気候室(モデルSE-3000-4、Thermotron Industries(Holland,MI))内で60Cおよび相対湿度85%に96時間保持しながら、IEC TS62804-1技術仕様に準拠して、アルミホイルと太陽電池との間に-1kVの電位を96時間印加した。
【0068】
96時間の試験期間後、電力測定によってモジュールを監視した。モジュールの電力出力は、IEC16215方法に従って、AMI1.5光源を備えたSpire SPI-SUN Simulator4600SLP(Spire Group LLC(Ridgefield,CT)で測定した。
【0069】
比較例CE1およびCE2の、市販のEVA系封止材を用いて作製した太陽光モジュールは、モジュールの電力のうちのそれぞれ90%および78%を損失した。したがって、1キロボルトまたは1000Vの電位では電力が大幅に低下し、CE1およびCE2のこれら2つのモジュールではPIDが生じている。実施例EX1(5重量%のEMAMEを含有する封止材)、EX2(10重量%のEMAMEを含有する封止材)、EX3(15重量%のEMAMEを含有する封止材)、およびEX4(20重量%のEMAMEを含有する封止材)の、EMAMEおよびEVAコポリマーで構成される封止材で作製した太陽光モジュールはすべて、それらの初期電力のうちの5%未満を損失した、すなわち初期電力のうちの95%超を保持した。したがって、実施例EX1では5重量%であってもEMAMEが存在すると、電力保持を大幅に改善し、PIDの影響を大幅に低減する。
【表2】
【0070】
表3は、別の太陽光発電モジュールセットを列挙し、-1500Vおよび85℃/85%相対湿度(RH)にモジュールを曝露した後の保持電力について要約している。これらのモジュールは、アルミフレームが取り付けられており、このより高い電位ではアルミホイルは使用しなかった。このようにモジュールのガラスを、85%RHに曝露した。比較例CE3~CE4は、それぞれ市販のEVA封止材、STR Solar15420PおよびHangzhou First 406Pを有した。実施例EX5~EX8は、EVAおよびE/MAME系封止材剤、EN1~EN4を有した。48および96時間での1500Vおよび85℃/85%RH試験で得られた電力保持結果は、5~20%のEMAMEを含有する封止材EN1~EN4を有する太陽光発電モジュールがすべて、試験期間全体で、5%未満のPIDによる低減、すなわち95%超の保持電力を呈したことを実証している。対照的に、比較例CE3およびCE4の、それぞれの従来のEVA封止材を有する太陽光発電モジュールは、試験条件下で96時間以内に、PIDによってモジュールの初期電力のうちの30%および65%を損失した。
【表3】
【0071】
本発明のある特定の好ましい実施形態について上で記載し、具体的に例示しているが、本発明がそのような実施形態に限定されることは意図していない。次の特許請求の範囲に記載のように、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、様々な変更を行うことができる。
本願は以下の態様にも関する。
(1)
封止材層と、太陽電池アセンブリと、を備える太陽光発電モジュールであって、前記封止材層が、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマー(EVA)、および抗電圧誘起出力低下(PID)強化コポリマーAのブレンドを含む、封止材組成物を含み、前記封止材組成物が、高温多湿(85℃/85%RH)および最大96時間1500Vの電位に曝露後、初期出力の>90%超の出力安定性を提供する、太陽光発電モジュール。
(2)
コポリマーAが、EVAとコポリマーAとの総重量の1~30重量%の範囲、好ましくは2~20重量%の範囲、最も好ましくは4~15重量%の範囲である、上記(1)に記載の太陽光発電モジュール。
(3)
太陽光発電モジュールの電圧誘起出力低下(PID)を低減する方法であって、前記方法が、太陽電池アセンブリ、ガラス層、および上記(1)に記載の封止材組成物を含む封止材層を提供するステップと、ガラス層/封止材層/太陽電池アセンブリ、の構造を備える太陽光発電モジュールを作製するステップと、前記太陽光発電モジュールを動作させるステップと、時間と相関して、前記太陽光発電モジュールによって生成される電流を観察するステップと、を含む、方法。
(4)
前記封止材組成物が、IEC TS62804-1技術仕様に準拠するそのような条件で、1000電位を通す、上記(1)に記載の太陽光発電モジュール。
(5)
前記封止材組成物が、IEC TS62804-1技術仕様に準拠するそのような条件で、1500電位を通す、上記(1)に記載の太陽光発電モジュール。
(6)
前記封止材組成物の前記コポリマーが、共重合されたエチレンと酢酸ビニルとであり、酢酸ビニルが、前記ポリマー重量の15重量%~約35重量%、最も好ましくは25~32重量%の範囲である、上記(1)に記載の太陽光発電モジュール。
(7)
前記コポリマーAが、Xが無水マレイン酸のハーフエステルである、E/Xコポリマーである、上記(6)に記載の太陽光発電モジュール。
(8)
前記コポリマーAが、E/Xコポリマーであり、Xが、前記ポリマー重量の12~25重量%、最も好ましくは15~20重量%の範囲の、無水マレイン酸モノ-メチルエステル、無水マレイン酸モノ-エチルエステル(MAME)、無水マレイン酸モノ-プロピルエステル、無水マレイン酸モノ-ブチルエステル、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記(7)に記載の太陽光発電モジュール。
(9)
コポリマーAが、E/X/Yコポリマーであり、Xが無水マレイン酸のハーフエステルであり、Yがアルキルアクリレートである、上記(6)に記載の太陽光発電モジュール。
(10)
Xが、前記ポリマー重量の6~20重量%、最も好ましくは8~15重量%の範囲の無水マレイン酸モノ-メチルエステル、無水マレイン酸モノ-エチルエステル(MAME)、無水マレイン酸モノ-プロピルエステルプロピル、無水マレイン酸モノ-ブチルエステル、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、Yが、前記ポリマー重量の1~30重量%、最も好ましくは5~15重量%の範囲のメチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、またはイソ-ブチルアクリレート、またはそれらの混合物である、上記(9)に記載の太陽光発電モジュール。
(11)
前記封止材組成物が、1つ以上の他のポリマー、およびまたは他の添加剤を含むが、ただし、それらが前記太陽光発電モジュールの性能に悪影響を及ぼさないことを条件とする、上記(1)に記載の太陽光発電モジュール。
(12)
1つ以上のガラス層、1つ以上の可撓性バックシート層、または前記封止材層と同じであっても異なっていてもよい第2の封止材層をさらに備える、上記(1)に記載の太陽光発電モジュール。
(13)
ガラス/封止材/太陽電池アセンブリ/封止材層/ガラス、ガラス/封止材/太陽電池アセンブリ/封止材/可撓性バックシート、ガラス/封止材/太陽電池アセンブリ/ガラス、およびガラス/封止材/太陽電池アセンブリ/可撓性バックシートの群から選択される構造からなる、上記(1)に記載の太陽光発電モジュール。
(14)
前記太陽電池アセンブリが、薄膜太陽電池を含む、上記(1)に記載の太陽光発電モジュール。
(15)
前記封止材層が、多層形態である、上記(1)に記載の太陽光発電モジュール。