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  • 特許-靴、特に運動靴 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】靴、特に運動靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/04 20060101AFI20240304BHJP
【FI】
A43B13/04 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020546945
(86)(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 EP2018060995
(87)【国際公開番号】W WO2019206435
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-09-07
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】511264353
【氏名又は名称】プーマ エス イー
【氏名又は名称原語表記】PUMA SE
【住所又は居所原語表記】Puma Way 1,91074 Herzogenaurach Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ハートマン、マッティアス
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】西 秀隆
【審判官】長馬 望
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0131832(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01738889(EP,A1)
【文献】特開2015-77475(JP,A)
【文献】特表2002-535468(JP,A)
【文献】特開2004-161987(JP,A)
【文献】特開2011-177206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパー(2)、および前記アッパー(2)に連結されるソール(3)を有する靴(1)であって、
前記ソール(3)の少なくともいくつかのエリアはキャリア材(5)に埋め込まれるいくつかの中空体(4)から成り、前記キャリア材(5)は発泡プラスチック材料から成り、前記中空体(4)の前記材料は発泡熱可塑性ポリウレタン(E-TPU)であり、
前記いくつかの中空体(4)は、お互いに接することなく孤立した配置で前記キャリア材(5)に埋め込まれ、また、前記いくつかの中空体(4)は、前記ソール(3)の底面に対し異なる高さに配置され、
更に、前記中空体(4)の最大寸法(L)は、4mm~10mmであり、
前記キャリア材(5)として使用される前記プラスチック材料は、0.15~0.35g/cm3の密度を有し、前記キャリア材(5)として使用される前記プラスチック材料は、25~40アスカーC硬度を有する
ことを特徴とする靴(1)。
【請求項2】
キャリア材(5)として使用される前記プラスチック材料は粘弾性的挙動を有する
請求項1に記載の靴。
【請求項3】
前記キャリア材(5)として使用される前記プラスチック材料(5)は、ポリウレタンを含む、またはポリウレタンから成る
請求項1に記載の靴。
【請求項4】
前記中空体(4)は球形または楕円形である
請求項1ないし3のいずれかに記載の靴。
【請求項5】
前記中空体(4)は、長円形であり、末端領域では丸みを帯びている
請求項1ないし3のいずれかに記載の靴。
【請求項6】
中空体(4)の最大寸法(L)は、6~8mmである
請求項1ないし5のいずれかに記載の靴。
【請求項7】
中空体(4)の肉厚(t)は、0.3mm~1.2mmである
請求項1ないし6のいずれかに記載の靴。
【請求項8】
中空体(4)およびキャリア材(5)から成る前記ソールは、25%~75%の中空体(4)の体積分率を有する
請求項1ないし7のいずれかに記載の靴。
【請求項9】
中空体(4)およびキャリア材(5)から成る前記ソール(3)は、真下にアウトソール(6)が配置されるミッドソール(3’)として設計される
請求項1ないし8のいずれかに記載の靴。
【請求項10】
ジョギングシューズとして設計される
請求項1ないし9のいずれかに記載の靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アッパー、および上記のアッパーに連結されるソールを有する靴、特に運動靴であって、ソールの少なくともいくつかのエリアはキャリア材に埋め込まれるいくつかの中空体から成り、上記のキャリア材は発泡プラスチック材料から成る靴に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なタイプの靴は、特許文献1および特許文献2に開示されている。他の解決策は、特許文献3、特許文献4、および特許文献5に示されている。
【0003】
このタイプの靴は、普通は、着用が快適であり、さりながら、さらに良好なばね特性およびクッション性を有するような靴を設計することが必要とされる。特に、ソールの良好な復元性がここで所望されている(「反動」効果としても既知である)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2011/131832号
【文献】欧州特許出願公開第1738889号
【文献】米国特許第6127010号
【文献】国際公開第2007/139832号パンフレット
【文献】米国特許第6258421号
【文献】国際公開第2010/010010号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多数の以前から既知の解決策に基づいて、本発明は、この点においてさらに改善される、すなわち、特に、良好なスプリングバックまたは復元性を有する一般的な靴を提供する目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるこの目的の解決策は、中空体の材料が発泡熱可塑性ポリウレタン(E-TPU)であることを特徴とする。
【0007】
キャリア材として使用されるプラスチック材料は、好ましくは、粘弾性的挙動を示し、好ましくは、ポリウレタンから成る、または少なくともこの材料を有する。粘弾性は、機械的応力下で、部分的な弾性および粘性の材料挙動が発生することである。この挙動が非常に高くなった温度でのみ観察され得る金属材料と対照的に、プラスチックの粘弾性的挙動は、既に室温で生じるため、これらの材料の、剛性、強度、変形、および靱性挙動に対して強力で実際的な影響を与える。
【0008】
キャリア材として使用されるプラスチック材料は、好ましくは、0.15~0.35g/cm3の密度を有する。
【0009】
キャリア材として使用されるプラスチック材料は、好ましくは、25~40アスカーC硬度を有する。
【0010】
中空体は好ましくは、球形または楕円形であり、また、長円形であり、末端領域では丸みを帯びている、特に半球形とすることができる。そのために、中空体の最大寸法は、好ましくは、4mm~10mmであり、具体的には、6~8mmが好ましい。中空体の肉厚は好ましくは、0.3mm~1.2mmであり、具体的には、0.5mm~1.0mmが好ましい
【0011】
中空体およびキャリア材から成るソールは、好ましくは、25%~75%、具体的には30%~50%が好ましい中空体の体積分率を有する(それぞれ、ソールに対する外部負荷なく測定される)。
【0012】
そのために、中空体およびキャリア材から成るソールは、真下にアウトソールが配置されるミッドソールとして設計可能である。
【0013】
靴は具体的には、ジョギングシューズとして設計されるのが好ましい。
【0014】
靴のアッパーは、一般的に、要望通りに設計可能である。典型的な織物、革、または模造皮革材料が使用可能である。編物材料も可能である。アッパーが編物材料から作られる場合、このアッパーを靴下のように設計し、このアッパーをソールに連結することも可能である。この場合、アッパーは、一体型の、好ましくは無縫製の編成部として設計される。丸編み機はこの目的で使用可能であり、これによって、周囲全体が閉じられた布地が製作され得る。
【0015】
当然ながら、アッパーが製作可能である他の可能性もある。上で説明したように、靴のアッパーは典型的なやり方で製作されることが想定可能であり、着用者の足裏の下に及ぶ下部は例えば、アッパーに縫製可能であるストロベルソールがある。これは、特に、アッパーの編成された上部と組み合わせてなされ得る。
【0016】
アッパーは、例えば、縫製および/または接着によってソール部に取り付け可能である。
【0017】
上述されるウレタン系熱可塑性エラストマーに関して、特許文献1に明確に言及されている。特許文献1では、熱可塑性ポリウレタンおよびスチレン重合体を含有する、発泡性の発泡剤を含有する熱可塑性ポリマーブレンドが開示されている。
【0018】
靴、とりわけ運動靴が上で指定されるように設計される時、(着用者の脚による圧縮力の除去後)靴の圧縮挙動およびこの回復性に関して、靴の非常に有利で快適な着用性が実現可能であることが示されている。
【0019】
キャリア材として使用される材料の粘弾性的挙動に関して、これが、圧点を回避して、靴の着用者の脚に対する圧力の好適な分布を実現可能であることは留意されるべきである。この材料は、むしろ徐々に脚に適応し、これによって、材料の即時のスプリングバックは生じない。粘弾性材料の例には、エチレン酢酸ビニル(EVA)およびポリウレタン(PU)などの粘弾性発泡体がある。EVAおよびPUは、粘性および弾性を有する軽量で安定した発泡材料である。軟質で弾性の材料により、この材料は脚に最適に適応する。これらの粘弾性発泡体の別の有利な性質は、これらが応力なく元の形状に戻ることである。
【0020】
アスカーCによる上述した硬度は、当業者には十分既知であり、これについては、SRIS 0101およびABNT NBR 14455の規格を参照する。
【0021】
図面には、本発明の実施形態が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】靴の概略的な側面図である。
図2図1に示される靴のミッドソールの一部による断面、すなわち、細部「X」を概略的に示す図である。
図3】ソールの一部であり、球体の形態の中空体を示す図である。
図4図3に対する中空体の代替的な設計を楕円体として示す図である。
図5図3に示されるような中空体の別の代替策を長円要素として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、アッパー2およびソール3を含むランニングシューズ(ジョギングシューズ)の形態の靴1を示す。ソール3は、例えば、接着剤によってアッパー2に連結される。示される実施形態では、ソール3はミッドソール3’から成り、この真下にアウトソール6が配置され、このアウトソール6は、例えば、接着部によってミッドソール3’に接着させる。
【0024】
ミッドソール3’は図2に示されるような材料組成で作られる。それ故に、ミッドソール3’がキャリア材5に埋め込まれるいくつかの中空体4から成ることを目的とする。それによって、キャリア材5は発泡プラスチックから成る。
【0025】
中空体は、中空の球体として図2に示されている。このような中空体4が中空球体の形態で示される図3をこの範囲で参照する。そのために、ここで、球体の直径の形態での最大寸法はLで示される。中空体4は肉厚tを有する。
【0026】
中空体の代替的な設計が図4および図5に示されている。図4において、中空体4は楕円体として設計され、図5において、端部エリアでは半球形として設計される長円体として設計される。
【0027】
中空体4は、例えば、射出成形、ブロー成形、またはレーザ焼結によって製作可能である。
【0028】
中空体の表面は、部分的に開放され得る、または完全に閉じられ得る。中空体は、閉じられる場合、好ましくは空気を含有する。中空体4は、とりわけ、圧縮中の変形による変形力の顕著な直線状ではない推移を示す事実によって特徴付けられる。それ故に、中空体4は、ある程度まで比較的容易に変形または圧縮可能であるが、ある特定のレベルの変形を上回ると、さらなる変形に対する抵抗が急激に増大し、すなわち、ここで、中空体をさらに変形させることはより困難になる。
【0029】
この挙動は、運動の分野における緩衝システムにとって、ここではとりわけ靴底(ミッドソールおよびインソールも)にとって非常に有利であり得る。
【0030】
外力の除去後、中空体4はこの元の形状を完全に取り戻す。
【0031】
中空体4は、溶接によってまたはマイクロ波の使用によって、2つの半球体またはハーフシェルを共に接合することによって製作可能である。円形ウェブは接合部で形成可能であり、これは、所望のやり方で剛性に対するプラス効果を与えることができる。
【0032】
提案された中空体4と、上述される各材料から作られるキャリア材5との組み合わせは、この材料の組み合わせから作られるソール、とりわけ好ましくはミッドソールが、(中空体4の使用によって)良好な回復特性またはスプリングバック特性を有するが、それにもかかわらず、(キャリア材5の使用によって)靴の着用時の高い快適さを可能にするという非常に有利な結果をもたらす。
【0033】
キャリア材5向けの(ポリウレタンフォームの形態の)比較的軟質の材料によって、靴の着用時の高い快適さが保証される。一方では、とりわけ、ミッドソールの形態のソールが良好な復元効果を有するように、中空体4によって所望の「反動効果」がもたらされる。
【0034】
材料の上述した硬度は、所望の効果がこの材料の最良の長所として示されるように選択される。
【0035】
よって、とりわけ、ランニングシューズ(ジョギングシューズ)として設計される提案された靴は、上述した目的に関して最適な使用性を有する。
【符号の説明】
【0036】
1 靴
2 アッパー
3 ソール
3’ ミッドソール
4 中空体
5 キャリア材
6 アウトソール
L 中空体の最大寸法
t 中空体の肉厚
図1
図2
図3
図4
図5