IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユンジン ファーム.カンパニー、リミテッドの特許一覧

特許74470131,2-ナフトキノン誘導体化合物を含む固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物
<>
  • 特許-1,2-ナフトキノン誘導体化合物を含む固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物 図1
  • 特許-1,2-ナフトキノン誘導体化合物を含む固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物 図2
  • 特許-1,2-ナフトキノン誘導体化合物を含む固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物 図3
  • 特許-1,2-ナフトキノン誘導体化合物を含む固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物 図4
  • 特許-1,2-ナフトキノン誘導体化合物を含む固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物 図5
  • 特許-1,2-ナフトキノン誘導体化合物を含む固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】1,2-ナフトキノン誘導体化合物を含む固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4184 20060101AFI20240304BHJP
   A61K 31/4188 20060101ALI20240304BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20240304BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20240304BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20240304BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20240304BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240304BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
A61K31/4184
A61K31/4188
A61K31/437
A61K31/4439
A61K31/496
A61K31/5377
A61P35/00
A61P35/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020555342
(86)(22)【出願日】2019-04-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 KR2019004002
(87)【国際公開番号】W WO2019198977
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】10-2018-0040913
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0040884
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0040895
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515088902
【氏名又は名称】ユンジン ファーム.カンパニー、リミテッド
【住所又は居所原語表記】13,Olympic-ro 35da-gil,Songpa-gu,Seoul 05510 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】クォン,キリャン
(72)【発明者】
【氏名】ホ,ジュンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ション,ミンホ
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ジョンス
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ミンジョン
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-502976(JP,A)
【文献】特表2016-516775(JP,A)
【文献】国際公開第2018/005279(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される1,2-ナフトキノン誘導体化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物:
[化学式1]
前記化学式1で、
およびRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C-Cアルコキシ、C-Cアルキル、C-C10アリール、C-C10アリールオキシ、C-C10ヘテロアリール、-NO、-NR’R’、-NR’(CO(O)R’)、-NR’(C(O)NR’R’)、-CO(O)R’、-C(O)NR’R’、-CN、-SO(O)R’、-SO(O)NR’R’、-NR’(SO(O)R’)、-CSNR’R’、またはRおよびRは相互結合によりC-C10アリールの環状構造、またはC-C10ヘテロアリールの環状構造をなすことができ、この時、前記R’およびR’は、それぞれ独立して、水素、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、またはC-C10アリール、C-C10アリールオキシ、C-Cヘテロアリール、-(CR”R”-C-C10アリール、-(CR”R”-C-C10ヘテロアリールまたはNR”R”であり、前記R”およびR”は、それぞれ独立して、水素、C-Cアルキル、またはR”およびR”は相互結合によりC-C10アリールの環状構造をなすことができ;
は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cシクロアルキル、(CR’R’-C-C10アリール、-(CR’R’-OR’または-CO(O)R’ であり、Rは水素、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、-(CR’R’-C-C10アリール、-(CR’R’-C-C10アリールオキシ、-(CR’R’-C-C10ヘテロアリール、または-CO(O)R”であり、前記R’およびR’は、それぞれ独立して、水素またはC-Cアルキルであり、前記R”はC-Cアルキルであり;
は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C-Cアルキル、C-C10アルケン、C-Cアルコキシ、C-Cシクロアルキル、C-Cヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、C-C10アリールオキシ、C-Cヘテロアリール、-(CR’R’-C-C10アリール、-(CR’R’-C-C10アリールオキシ、-(CR’R’-C-Cヘテロアリール、-(CR’R’-NR’R’、-(CR’R’-C-Cヘテロシクロアルキル、-(CR’R’-OR’、-(CR’R’(O)COR’、-CO(O)R’、-CONR’R’、-NR’R’または-NR’(C(O)R’であり、RおよびR’は、それぞれ独立して、水素、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、-(CR’R’-C-C10アリール、-(CR’R’-C-C10アリールオキシ、-(CR’R’-C-C10ヘテロアリール、-CO(O)R”、またはR’およびR’は相互結合によりC-C10ヘテロシクロアルキルの環状構造、またはC-C10ヘテロアリールの環状構造をなすことができ、前記R’およびR’は、それぞれ独立して、水素またはC-Cアルキルであり、前記R”はC-Cアルキルであり;
は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C-Cアルキル、C-C10アルケン、C-Cアルコキシ、C-Cシクロアルキル、C-Cヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、C-C10アリールオキシ、C-Cヘテロアリール、-(CR’R’-C-C10アリール、-(CR’R’-C-C10アリールオキシ、-(CR’R’-C-Cヘテロアリール、-(CR’R’-NR’R’、-(CR’R’-C-Cヘテロシクロアルキル、-(CR’R’-OR’、-(CR’R’(O)COR’、-CO(O)R’、-CONR’R’、-NR’R’または-NR’(C(O)R’であり、RおよびR’は、それぞれ独立して、水素、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、-(CR’R’-C-C10アリール、-(CR’R’-C-C10アリールオキシ、-(CR’R’-C-C10ヘテロアリール、-CO(O)R”、またはR’およびR’は相互結合によりC-C10ヘテロシクロアルキルの環状構造、またはC-C10ヘテロアリールの環状構造をなすことができ、前記R’およびR’は、それぞれ独立して、水素またはC-Cアルキルであり、前記R”はC-Cアルキルである、
とQは、それぞれ独立して、CO、またはCORであり、
がCOであり、QがCOである時、QとQは単一結合をなし、
がCORであり、QがCORである時、QとQは二重結合をなし、
前記Rは、水素、C-C10アルコキシ、C-Cアルキル、C-C10アリール、C-C10アリールオキシ、C-C10ヘテロアリール、-CO(O)R’、-C(O)NR’R’、-SO(O)R’、-SO(O)NR’R’、-SOR’、-POR’、-CSNR’R’、前記R’およびR’は、それぞれ独立して、水素、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、C-C10アリールオキシ、C-Cヘテロアリール、-(CR”R”’-C-C10アリールであり、前記R”およびR”は、それぞれ独立して、水素、C-Cアルキルであり;
が置換または非置換のC-Cヘテロシクロアルキルの環状構造であり、QがCOであるか、または、QがCOであり、Qが置換または非置換のC-Cヘテロシクロアルキルの環状構造である時、QとQは単一結合をなし;
mとm’は、それぞれ独立して、1乃至4の整数であり;
ヘテロ原子はN、OおよびSから選択された一つ以上であり;
乃至Xは、それぞれ独立して、CHまたはNであり、
はNであり、XはCであり、XはNであり;
前記化学式で
は単一結合または二重結合を意味し、
は単一結合または結合が形成されなくてもよいことを意味し、
はこれを含む環状構造が芳香族(aromatic)であってもよく、芳香族ではなくてもよいことを意味し;
前記置換は、ヒドロキシ、ハロゲン元素、C-C10アルキル、C-C10アルケニル、C-C10アルキニル、C-C10アルコキシ、C-C10アルコキシカルボニル、C-Cシクロアルキル、C-Cヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、およびC-C10ヘテロアリールからなる群より選択された1種以上の置換基で置換されることを意味する。
【請求項2】
記で表された化合物のうちの一つであることを特徴とする、1,2-ナフトキノン誘導体化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物
























【請求項3】
前記化合物は、下記で表された化合物98であることを特徴とする、請求項2に記載の1,2-ナフトキノン誘導体化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物
【請求項4】
前記血液癌は、急性白血病、慢性白血病および薬剤耐性慢性白血病または難治性急性白血病からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項5】
前記慢性白血病は、慢性骨髄性白血病または慢性リンパ性白血病のうちから選択されることを特徴とする、請求項4に記載の固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項6】
前記急性白血病は、急性骨髄性白血病または急性リンパ性白血病のうちから選択されることを特徴とする、請求項4に記載の固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項7】
前記固形癌は、肺癌、子宮癌、肝癌および乳癌からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項8】
前記薬学組成物は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾル、外用剤、座剤および滅菌注射溶液からなる群より選択される1種の剤形を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願(ら)との相互引用
本出願は、2018年4月9日付韓国特許出願第10-2018-0040913号、第10-2018-0040884号および第10-2018-0040895号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み含まれる。
【0002】
本発明は、1,2-ナフトキノン誘導体化合物を含む急性白血病、慢性白血病のような血液癌、および固形癌のような癌の予防または治療用薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
身体を構成する最も小さい単位である細胞(cell)は、正常条件の場合、細胞自体の調節機能により分裂および成長し、寿命が尽きたり損傷すれば自ら死滅して全般的な数の均衡を維持する。しかし、多様な原因により細胞自体の調節機能に問題が生じると、正常に死滅しなければならない非正常細胞が過多増殖するようになり、場合によって周囲組織および臓器に侵入して種塊(塊り)を形成し、既存の構造を破壊したり変形させるが、このような状態を癌(cancer)と定義することができる。
【0004】
癌は人類が解決しなければならない難病の一つであって、全世界的に癌を治癒するための開発に莫大な資本が投資されており、医学技術も革新的に発展しているが、それにも拘らず、癌による死亡は持続的に増加する傾向にある。韓国統計庁の発表によれば、韓国の癌患者の場合には2012年基準に約22万余名の新規癌患者が発生したと報告しており、このような数値は2002年に発生した新規癌患者数に比べて約2倍さらに増加したものであって、毎年急速に癌患者数が増加していることが分かる。しかし、22万余名の癌患者のうち、7万余名が癌により死亡しているため、癌治療に対する治療剤の開発が至急な実情である。
【0005】
現在、癌患者の治療法は、外科的手術、放射線治療、化学療法(40余種の強い細胞毒性を示す抗癌物質投与)に依存している状態であるが、これら治療法も大部分は早期癌患者や特定癌のみに限定しているため、癌による死亡は依然として増加している傾向にある。
【0006】
一方、白血病は、細胞の分化程度、つまり、悪化速度により急性と慢性に分かれ、細胞の起源により骨髄性とリンパ球性に分かれて、急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia)、急性リンパ球性白血病(acute lymphoblastic leukemia)、慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia)、慢性リンパ球性白血病(chronic lymphocytic leukemia)形態に分類する。
【0007】
急性白血病(acute leukemia)は、骨髄異常で非正常な白血球前駆細胞または血小板前駆細胞を過多に生産する疾病であって、骨髄系の細胞が増殖すれば急性骨髄性白血病(AML、acute myeloid leukemia)、リンパ系の細胞が増殖すれば急性リンパ性白血病(ALL、acute lymphocytic leukemia)という。異常白血球が増加して造血する場所を占拠するため、正常白血球、赤血球、血小板などが形成できなくなって感染症や出血などが簡単に起こり、治療しない場合には数ヶ月以内に死亡するようになる。最近、化学療法の発達により乳児の急性白血病生存率は顕著に向上したが、成人の場合には依然として生存率が低い。
【0008】
急性骨髄性白血病は、非リンパ球性または骨髄で作られる骨髄性白血球の幹細胞で発生した悪性腫瘍であって、造血幹細胞に遺伝子変異が生じて骨髄系前駆細胞が多くの段階で分化を中止し、未成熟な骨髄毛球が単細胞群(monoclonal)に増殖する造血期腫瘍である。貧血、発熱、感染性増加、出血傾向などの骨髄機能障害症状を示し、脾臓肥大、リンパ節腫脹など腫瘍細胞の長期浸潤症状が現れる場合もある。
【0009】
急性リンパ性白血病は、血液および骨髄内リンパ球系統細胞で発生する血液癌であって、リンパ球系統細胞の増殖、分化、成熟および破壊過程に関与する多様な遺伝子の変異により発病すると知られている。遺伝子変異の原因は、現在明確に知られていないが、他の癌のように遺伝的素因、ウイルス、多数の発癌物質、電離放射線などが関与すると推定している。急性リンパ球性白血病で観察される症状は、他の白血病と類似に非正常白血病細胞により正常血液細胞が形成される過程が障害を受けるか、または非正常白血病細胞がリンパ節、脾臓、肝臓、脳、脊髄などの臓器に侵犯して症状が発生する。
【0010】
一方、慢性骨髄性白血病は、ヒトの9番染色体と22番染色体の一定部門が切断された後、二つの切れが互いに位置を変えて移動した現像である転位(transition)により生じたフィラデルフィア染色体(philadelphia chromosome)により発病するものであって、フィラデルフィア染色体を有する造血幹細胞のクローンが非正常的に拡張しながら骨髄内に非正常な細胞が過度に増殖して生じる疾患である。成人白血病全体の約25%を占め、30~50歳および老年層でよく発生するため、成人型白血病ともいうが、全ての年齢層で発病可能であり、小児や青少年でも発生する。
【0011】
フィラデルフィア染色体は、染色体転位により9番染色体のABL遺伝子と22番染色体のBCR遺伝子の融合が起こるようになり、BCR-ABL融合遺伝子により非正常なチロシンキナーゼ(tyrosine kinase)の活性を有するBCR-ABL融合蛋白質を生産するようになる。非正常なチロシンキナーゼ酵素の活性化は悪性細胞の非正常な増幅をもたらすようになって血液癌が発生する。
【0012】
グリーベック(Gleevec(登録商標)、imatinib)は、BCR-ABL融合蛋白質にあるアデノシン三リン酸結合部位(ATP(adenosine triphosphate)-binding site)に競争的に結合して蛋白質の酵素活性を阻害する薬剤である。しかし、一部の患者でBCR-ABL遺伝子変異により、グリーベックに耐性が生じるようになり、病気が悪化する。グリーベックの限界点と抵抗性を有する患者群が発生することに伴い、第2世代(nilotinib)、第3世代(dasatinib)チロシンキナーゼ抑制剤の開発が行われているが、この薬物も完全な治療はなさらず、急性期患者での治療成功率が30%程度増加した水準という短所がある。そのため、慢性骨髄性白血病治療のための研究が持続的に必要であるのが実情である。
【0013】
慢性リンパ球性白血病は、白血球の一種であるリンパ球が成長しながら腫瘍に変わり、それに基づいて骨髄内に過度に増殖して正常な血液細胞の生産を妨害する疾患である。正常白血球が減ると、感染が発生する危険が高くなり、赤血球が減少しながら貧血が生じ、止血作用をする血小板が減るため、止血にかかる時間も長くなる。慢性リンパ球性白血病は韓国では非常に稀であるが、米国で最もありふれて発生し、大低50歳以後の男性に多く現れる。慢性リンパ球性白血病の発病原因はまだ明らかになっておらず、環境、職業だけでなく、ウイルスや放射線照射とも関連性がない。しかし、慢性リンパ球性白血病がある直系家族の場合、一般人に比べて慢性リンパ球性白血病や他のリンパ増殖疾患が発生する可能性が3倍以上増加し、家族歴がある場合にはそうではない場合に比べて約10年ほど若い年齢で発生する。
【0014】
白血病を治療する標準方法として、化学療法、造血幹細胞移植、放射線療法などが含まれ、化学療法の場合、通常的に2またはそれ以上の抗癌剤を併用する方法が含まれる。理想的な化学療法は、抗白血病剤が正常造血を抑制せず、また他の有害な副作用を起こさない、かつ白血病細胞だけで選択的な効果を示さなければならない。しかし、大部分の抗白血病剤は、理想的な状態にある程度近接して白血病細胞を殺すことはできるが、正常造血も抑制し、他の有害な副作用も起こすため、白血病治療に限界がある。また、薬剤耐性がある白血病細胞では抗腫瘍効果が弱く、副作用問題が発生し得るため、十分な化学療法を実施できない場合もある。
【0015】
造血幹細胞移植(HSCT、hematopoietic stem cell transplantation)とは、過去の骨髄を活用した骨髓移植(BMT、bone marrow transplantation)の領域を越えて、現在は末梢血液(PB、peripheral blood)と臍帯血(CB、cord blood)内に存在する全ての形態の造血幹細胞を移植源として活用して移植することを意味する。造血幹細胞移植は、血液腫瘍患者から抗癌化学療法および放射線療法を利用して癌細胞と患者自身の造血幹細胞を除去した後、新たな造血幹細胞を移植する治療法として、初期の骨髄移植の局限された概念から抜け出して白血病に代表される白血病、再生不良性貧血、悪性リンパ腫はもちろん、不応性自己免疫疾患、固形癌など多様な領域で効果的であり、希望的な治療手段として位置付けられている。しかし、現在までは高容量化学療法治療と同種移植後に発生する移植片対宿主病などのため、合併症発生が高い治療方法である。
【0016】
したがって、効果的な癌の治療のためには、放射線療法、手術療法、化学療法などの多様な方法を利用してそれぞれの癌患者に適した治療計画を樹立して適用することが重要である。また、多様な形態の癌、例えば固形癌および血液癌の治療のための新たな療法の薬物を開発することは当業界に与えられた重要な課題である。
【0017】
一方、1,2-ナフトキノン誘導体化合物と関連した先行文献として、韓国公開特許第10-2015-0080423号、第10-2015-0080425号および第10-2015-0080426号には、1,2-ナフトキノン誘導体およびその製造方法が開示されているが、代謝性疾患の治療用組成物に関するものであり、本発明の構造を有する1,2-ナフトキノン誘導体化合物が固形癌と急性白血病および慢性白血病のような血液癌腫に治療効果があることに対しては開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0080423号(1,2-ナフトキノン誘導体およびその製造方法、2015年07月09日公開)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0080425号(1,2-ナフトキノン誘導体およびその製造方法、2015年07月09日公開)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0080426号(1,2-ナフトキノン誘導体およびその製造方法、2015年07月09日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、1,2-ナフトキノン誘導体化合物を含む固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、下記化学式1で表される1,2-ナフトキノン誘導体化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効性分として含む固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物に関するものである。好ましい様態において、前記血液癌は、急性白血病、慢性白血病、薬剤耐性慢性白血病または難治性急性白血病である。
【0021】
本発明は、下記化学式1で表される1,2-ナフトキノン誘導体化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効性分として含む固形癌の予防または治療用薬学組成物に関するものである。
[化学式1]
前記化学式1で、
およびRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C-Cアルコキシ、C-Cアルキル、C-C10アリール、C-C10アリールオキシ、C-C10ヘテロアリール、-NO、-NR’R’、-NR’(CO(O)R’)、-NR’(C(O)NR’R’)、-CO(O)R’、-C(O)NR’R’、-CN、-SO(O)R’、-SO(O)NR’R’、-NR’(SO(O)R’)、-CSNR’R’、またはRおよびRは相互結合によりC-C10アリールの環状構造、またはC-C10ヘテロアリールの環状構造をなすことができ、この時、前記R’およびR’は、それぞれ独立して、水素、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、またはC-C10アリール、C-C10アリールオキシ、C-Cヘテロアリール、-(CR”R”-C-C10アリール、-(CR”R”-C-C10ヘテロアリールまたはNR”R”であり、前記R”およびR”は、それぞれ独立して、水素、C-Cアルキル、またはR”およびR”は相互結合によりC-C10アリールの環状構造をなすことができ;
、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C-Cアルキル、C-C10アルケン、C-Cアルコキシ、C-Cシクロアルキル、C-Cヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、C-C10アリールオキシ、C-Cヘテロアリール、-(CR’R’-C-C10アリール、-(CR’R’-C-C10アリールオキシ、-(CR’R’-C-Cヘテロアリール、-(CR’R’-NR’R’、-(CR’R’-C-Cヘテロシクロアルキル、-(CR’R’-OR’、-(CR’R’(O)COR’、-CO(O)R’、-CONR’R’、-NR’R’、-NR’(C(O)R’)、-SO(O)R’、-SO(O)NR’R’、-NR’(SO(O)R’)、-CSNR’R’、化学式(1)の化合物が「A」である時、-CHA、または化学式(1)の化合物が「A」である時、-Aであり、この時、前記R’およびR’は、それぞれ独立して、水素、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、-(CR’R’-C-C10アリール、-(CR’5-C-C10アリールオキシ、-(CR’R’-C-C10ヘテロアリール、-CO(O)R”、または、R’およびR’は相互結合によりC-C10ヘテロシクロアルキルの環状構造、またはC-C10ヘテロアリールの環状構造をなすことができ、前記R’およびR’は、それぞれ独立して、水素またはC-Cアルキルであり、前記R”はC-Cアルキルであり;
とQは、それぞれ独立して、CO、COR、CORであり、
がCOであり、QがCOである時、QとQは単一結合をなし、
がCORであり、QがCORである時、QとQは二重結合をなし、
前記RおよびRは、それぞれ独立して、水素、C-C10アルコキシ、C-Cアルキル、C-C10アリール、C-C10アリールオキシ、C-C10ヘテロアリール、-CO(O)R’、-C(O)NR’R’、-SO(O)R’、-SO(O)NR’R’、-SOR’、-POR’、-CSNR’R’、またはRおよびRは相互結合によりC-C10ヘテロシクロアルキルの環状構造、またはC-C10ヘテロアリールの環状構造をなすことができ、前記R’およびR’は、それぞれ独立して、水素、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、C-C10アリールオキシ、C-Cヘテロアリール、-(CR”R”’-C-C10アリールであり、前記R”およびR”は、それぞれ独立して、水素、C-Cアルキルであり;
が置換または非置換のC-Cヘテロシクロアルキルの環状構造であり、QがCOであるか、または、QがCOであり、Qが置換または非置換のC-Cヘテロシクロアルキルの環状構造である時、QとQは単一結合をなし;
mとm’は、それぞれ独立して、1乃至4の整数であり;
ヘテロ原子はN、OおよびSから選択された一つ以上であり;
乃至Xは、それぞれ独立して、CHまたはN(R”)であり、XはNであり、XはCであり、XはNであり、この時、R”は水素またはC-Cアルキルであり;
前記化学式で
は単一結合または二重結合を意味し、
は単一結合または結合が形成されなくてもよいことを意味し、
はこれを含む環状構造が芳香族(aromatic)であってもよく、芳香族ではなくてもよいことを意味し;
前記置換は、ヒドロキシ、ハロゲン元素、C-C10アルキル、C-C10アルケニル、C-C10アルキニル、C-C10アルコキシ、C-C10アルコキシカルボニル、C-Cシクロアルキル、C-Cヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、およびC-C10ヘテロアリールからなる群より選択された1種以上の置換基で置換されることを意味する。
【0022】
前記用語「アルキル」は、単一結合の直鎖または分枝鎖の炭化水素基をいい、例えばC1-10アルキル、具体的にC1-6アルキル、より具体的にメチル、エチル、プロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、1-メチルプロピルなどが挙げられる。
【0023】
前記用語「アルコキシ」は、単一結合の直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素が結合された酸素基をいい、例えばC1-10アルコキシ、具体的にC1-6アルコキシ、より具体的にメトキシ、エトキシ、プロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシ、1-メチルプロポキシなどが挙げられる。
【0024】
前記用語「シクロアルキル」は、環状の単一結合の飽和炭化水素基をいい、例えば炭素数によりC3-10シクロアルキル、具体的にC3-C8シクロアルキル、より具体的にはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどがある。
【0025】
前記用語「ヘテロシクロアルキル」は、環構成原子として炭素原子以外にN、O、またはSのようなヘテロ原子を一つ以上含む環状の単一結合の飽和炭化水素基をいい、環に含まれているヘテロ原子の数および種類、および炭素数により例えば、環に含まれているヘテロ原子の数および種類、および炭素数によりN、OおよびSからなる群より選択される1種以上、具体的には1種乃至3種のヘテロ原子を含むC2-C8ヘテロシクロアルキル、C2-C10ヘテロシクロアルキル、またはC2-C5ヘテロシクロアルキル、さらに具体的にはアジリジン、ピロリジン、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニルまたはテトラヒドロピラニルなどがある。
【0026】
前記用語「アリール(aryl)」は、共有パイ電磁界を有している少なくとも一つの環を有している芳香族置換体を意味し、モノシクリックまたは融合環ポリシクリック(つまり、炭素原子の隣接した対を共有する環)グループを含む。例えば、このようなアリールは、環に含まれている炭素数により、具体的にC4-C10アリール、より具体的にはC6-C10アリール、さらに具体的にはフェニル、ナフチルなどがある。
【0027】
前記用語「ヘテロアリール」は、環構成原子として炭素原子以外にN、O、またはSのようなヘテロ原子を一つ以上含む芳香族環化合物をいい、例えば、環に含まれているヘテロ原子の数および種類、および炭素数によりN、OおよびSからなる群より選択される1種以上、具体的には1種乃至3種のヘテロ原子を含むC1-C10ヘテロアリール、より具体的にはC1-C8ヘテロアリール、C2-C10ヘテロアリール、またはC2-C5ヘテロアリールがある。
【0028】
前記アリールまたはヘテロアリールの例としては、フェニル、ナフチル、フラニル、ピラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、イミダゾール、ピリジル、ピラジニル、ピリミジル、ピリダジニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、トリアジニル、トリアジルなどが挙げられるが、これらだけに限定されるのではない。
【0029】
前記用語「アリールオキシ」は、芳香族置換体をなすいずれか一つの炭素と酸素と結合されたグループを意味し、例えば、フェニル基に酸素が結合されている場合、-O-C、-C-O-で表され得る。
【0030】
本明細書中、「置換基」は、ハロ、ヒドロキシ、シアノ基、ニトロ基、非置換または置換のアルキル基、非置換または置換のアルケニル基、非置換または置換のアルキニル基、非置換または置換のアルコキシ基、非置換または置換のアルコキシカルボニル基、非置換または置換のシクロアルキル基、非置換または置換のヘテロシクロアルキル基、非置換または置換のアリール基、非置換および置換されたヘテロアリール基からなる群より選択される1種以上、好ましくは1種乃至3種であってもよい。具体的に前記置換基は、ヒドロキシ、ハロ、C-C10アルキル、C-C10アルケニル、C-C10アルキニル、C-C10アルコキシ、C-C10アルコキシカルボニル、C-Cシクロアルキル、C-Cヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、およびC-C10ヘテロアリールからなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0031】
また、本発明の1,2-ナフトキノン誘導体化合物を含むプロドラッグは、前記化学式1でQがCOであり、QがCOである場合を除いた化合物の一種類とみる。前記プロドラッグに含まれる例として、下記化合物などがこれに該当する。
前記化学式1において、好ましくは、
は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cシクロアルキル、(CR’R’-C-C10アリール、-(CR’R’-OR’、-CO(O)R’、化学式(1)の化合物が「A」である時、-CHA、または化学式(1)の化合物が「A」である時、-Aであり、この時、R’は水素、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、-(CR’R’-C-C10アリール、-(CR’R’-C-C10アリールオキシ、-(CR’R’-C-C10ヘテロアリール、-CO(O)R”であり、前記R’およびR’は、それぞれ独立して、水素またはC-Cアルキルであり、前記R”はC-Cアルキルであり;
は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C-Cアルキル、C-C10アルケン、C-Cアルコキシ、C-Cシクロアルキル、C-Cヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、C-C10アリールオキシ、C-Cヘテロアリール、-(CR’R’-C-C10アリール、-(CR’R’-C-C10アリールオキシ、-(CR’R’-C-Cヘテロアリール、-(CR’R’-NR’R’、-(CR’R’-C-Cヘテロシクロアルキル、-(CR’R’-OR’、-(CR’R’(O)COR’、-CO(O)R’、-CONR’R’、-NR’R’、-NR’(C(O)R’)、化学式(1)の化合物が「A」である時、-Aであり、この時、R’およびR’は、それぞれ独立して、水素、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、-(CR’R’-C-C10アリール、-(CR’R’-C-C10アリールオキシ、-(CR’R’-C-C10ヘテロアリール、-CO(O)R”、またはR’およびR’は相互結合によりC-C10ヘテロシクロアルキルの環状構造、またはC-C10ヘテロアリールの環状構造をなすことができ、前記R’およびR’は、それぞれ独立して、水素またはC-Cアルキルであり、前記R”はC-Cアルキルであり;
は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C-Cアルキル、C-C10アルケン、C-Cアルコキシ、C-Cシクロアルキル、C-Cヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、C-C10アリールオキシ、C-Cヘテロアリール、-(CR’R’-C-C10アリール、-(CR’R’-C-C10アリールオキシ、-(CR’R’-C-Cヘテロアリール、-(CR’R’-NR’R’、-(CR’R’-C-Cヘテロシクロアルキル、-(CR’R’-OR’、-(CR’R’(O)COR’、-CO(O)R’、-CONR’R’、-NR’R’、-NR’(C(O)R’)、化学式(1)の化合物が「A」である時、-CHAであり、この時、R’および’は、それぞれ独立して、水素、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、-(CR’R’-C-C10アリール、-(CR’R’-C-C10アリールオキシ、-(CR’R’-C-C10ヘテロアリール、-CO(O)R”、またはR’およびR’は相互結合によりC-C10ヘテロシクロアルキルの環状構造、またはC-C10ヘテロアリールの環状構造をなすことができ、前記R’およびR’は、それぞれ独立して、水素またはC-Cアルキルであり、前記R”はC-Cアルキルである化学式1で表される1,2-ナフトキノン誘導体化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効性分として含む固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物であってもよい。
【0032】
また、前記化学式1の化合物をより具体的に例示すれば、下記のとおりである。
【0033】
また、前記化合物は、下記で表された化合物のうちの一つであることを特徴とする1,2-ナフトキノン誘導体化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効性分として含む固形癌または血液癌予防または治療用薬学組成物に関するものである。
【0034】
本発明において、前記固形癌は、胃癌、肝癌、結腸癌、乳癌、肺癌、非小細胞性肺癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、子宮癌、卵巣癌、大腸癌、小腸癌、直膓癌、前立腺癌、食道癌、リンパ線癌、膀胱癌、胆嚢癌、腎臓癌および脳腫瘍などからなる群から選択される1種以上を含むことができ、好ましくは、前記癌は、肺癌、子宮癌、肝癌および乳癌からなる群より選択される1種以上の癌であってもよい。
【0035】
前記血液癌のうち急性白血病は、急性骨髄性白血病および急性リンパ性白血病からなる群より選択される1種以上の癌であってもよい。
【0036】
前記血液癌のうち慢性白血病は、慢性骨髄性白血病および慢性リンパ性白血病からなる群より選択される1種以上の癌であってもよい。
【0037】
また前記血液癌は、既存の抗癌剤に対する抵抗性を有する薬剤耐性または難治性白血病であってもよい。具体的に、このような薬剤耐性または難治性白血病は、急性白血病に対する治療剤であるイダルビシンまたはシタラビンに抵抗性を有する薬剤耐性難治性急性白血病であるか、または慢性白血病に対する治療剤であるイマチニブに抵抗性を有する薬剤耐性慢性白血病であってもよい。
【0038】
本発明の1,2-ナフトキノン誘導体化合物の薬学的に許容可能な塩としては、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩、ヨード化水素酸塩、硝酸塩、ピロ硫酸塩、メタリン酸塩などの無機酸により形成された付加塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、安息香酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、グルタル酸塩、スルホン酸塩などの有機酸により形成された付加塩またはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などの金属塩が挙げられるが、これに制限されるのではない。
【0039】
本発明による薬学組成物は、一般に使用される薬学的に許容可能な担体と共に適した形態に剤形化され得る。「薬学的に許容可能」とは、生理学的に許容され、ヒトに投与される時、通常的に胃腸障害、めまいなどのようなアレルギー反応またはこれと類似の反応を起こさない組成物をいう。また、前記組成物は、それぞれ通常の方法により散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤型、外用剤、坐剤、および滅菌注射溶液の形態に剤型化して使用され得る。
【0040】
前記組成物に含まれ得る担体、賦形剤、および希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アラビアゴム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ポリビニールピロリドン、水、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、および鉱物油を含むことができるが、これに限定されるのではない。製剤化する場合には普通使用する充填剤、安定化剤、結合剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調剤される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれて、このような固形製剤は本発明の化合物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、微結晶セルロース、スクロースまたはラクトース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロースなどを混ぜて調剤される。また、単純な賦形剤の以外に、ステアリン酸マグネシウム、タルクのような滑沢剤も使用される。経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、よく使用される単純希釈剤である水、流動パラフィン以外に多様な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれてもよい。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用され得る。坐剤の基剤としては、ウィテプソル(witepsol)、マクロゴール、ツイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロール、ゼラチンなどが使用され得る。非経口投与用剤型に製剤化するために前記化学式1の1,2-ナフトキノン誘導体化合物またはその薬学的に許容される塩を滅菌され/されるか、または防腐剤、安定化剤、水和剤または乳化促進剤、浸透圧調節のための塩および/または緩衝剤などの補助剤、およびその他の治療的に有用な物質と共に水に混合して溶液または懸濁液に製造し、これをアンプルまたはバイアル単位投与型に製造することができる。
【0041】
本発明に開示された化学式1の化合物を有効性分として含む薬学組成物は、固形癌または血液癌の予防または治療のためにネズミ、家畜、ヒトなどの哺乳動物に多様な経路で投与され得る。投与の全ての方式は予想され得るが、例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内注射により投与され得る。投与量は、治療を受ける対象の年齢、性別、体重、治療する特定疾患または病理状態、疾患または病理状態の深刻度、投与時間、投与経路、薬物の吸収、分布および排泄率、使用される他の薬物の種類および処方者の判断などにより変わり得る。このような因子に基づいた投与量の決定は、当業者の水準内にあり、一般に投与量は0.01mg/kg/日乃至ほぼ2000mg/kg/日の範囲である。より好ましい投与量は、1mg/kg/日乃至500mg/kg/日である。投与は、一日に1回投与することもでき、数回に分けて投与することができる。前記投与量は如何なる面でも本発明の範囲を限定するのではない。
【発明の効果】
【0042】
本発明は、1,2-ナフトキノン誘導体化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効性分として含む固形癌、または急性白血病または慢性白血病のような血液癌の予防または治療用薬学組成物に関し、前記1,2-ナフトキノン誘導体化合物を固形癌、急性白血病および慢性白血病、そして薬剤耐性/難治性白血病細胞株に処理する場合、細胞を死滅する効果に優れて前記癌腫に対する予防または治療用薬学組成物に有用に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の化合物1を処理する場合、HL60(図1A)またはU937(図1B)細胞に対する細胞生存率を示すグラフである。
図2】本発明の化合物1を処理する場合、KG1a細胞に対する細胞死滅または細胞壊死をFACSで確認した結果(図2A)とウェスタンブロットで確認した結果(図2B)である。
図3】本発明の化合物1を処理する場合、HL60細胞に対する細胞死滅または細胞壊死をFACSで確認した結果(図3A)とウェスタンブロットで確認した結果(図3B)である。
図4】本発明の化合物1をFLT3-ITDが過発現された急性白血病マウスモデルに処理する場合、末梢血液(図4A)または脾臓(図4Bおよび4C)での単核球細胞の増殖抑制効果を確認した結果である。
図5】K562細胞に本発明の化合物1を濃度別に処理して、BCR-ABL融合遺伝子の発現量をウェスタンブロットで確認した結果である。
図6】A549(肺癌種)およびHela(子宮癌種)に本発明の化合物1、10および72を処理して、A549(肺癌種)およびHela(子宮癌種)細胞に対する細胞生存率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。しかし、本発明はここで説明される実施例に限定されず、他の形態に具体化することもできる。むしろ、ここで紹介される内容が徹底かつ完全になり、当業者に本発明の思想を十分に伝達するために提供するものである。
【0045】
<実施例1.1,2-ナフトキノン誘導体化合物の合成>
急性白血病の治療効果を確認するために使用された本発明の1,2-ナフトキノン誘導体化合物は、韓国特許出願第10-2014-0193184号、第10-2014-0193306号、第10-2014-0193370号、第10-2015-0043050号および第10-2015-0043068号に開示された化合物の合成方法を参考にして化合物1乃至98および175乃至190を合成した。また、前記過程を通じて製造した化合物のうち、化合物98に対する物理化学的特性は下記表1のとおりである。
【表1】
【0046】
<実施例2.急性白血病細胞株の製造、その細胞生存率、細胞死滅または細胞壊死の測定/確認>
実施例2-1.急性白血病細胞株の製造
急性白血病は、原因因子が非常に多様に明らかになっており、構築された細胞株も多様であり、特定のタイプの急性白血病の治療剤でなく広範囲な治療剤としての使用の可能性を確認するために、本発明では急性骨髄性白血病(acute myelogenous leukemia)の59歳男性から得た細胞株であるKG1細胞で幹細胞の表現型を有する細胞だけを選んで構築したKG1α細胞を利用した。急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukemia)の36歳女性から得た細胞株であるHL60細胞および組織球性リンパ腫(histiocytic lymphoma)の37歳男性から得た細胞株であるU937細胞を使用した。
【0047】
KG1αおよびHL60細胞は、20%FBS(fetal bovine serum)が含まれているIMDM培地で培養され、U937細胞は10%FBSが含まれているRPMI1640培地で培養された。全ての細胞は37℃、5%CO条件のインキュベータで培養し、2日または3日に一回ずつ継代培養して実験に使用した。
【0048】
実施例2-2.KG1α細胞での細胞生存率の測定-WST assay.
KG1α細胞は急性骨髄性白血病治療剤であるイダルビシンとシタラビンに抵抗性を有する細胞であって、難治性急性白血病(refractory AML)細胞である。前記実施例2-1で培養したKG1α細胞を96-ウェルプレートに1×10細胞/ウェルで接種した後、細胞の安定化のために37℃、5%CO条件のインキュベータで16時間以上培養した。以降、前記実施例1で合成した化合物のうち、下記表2のように化合物1、10および72をそれぞれ0.1~3μM濃度に処理した後、24時間培養し、この時、対照群としてはDMSOを使用した。24時間後、各細胞にWST溶液を10μlずつ処理し、2時間反応した後、multi-scan機械で450nmで吸光度を測定して下記表4のようにKG1α細胞の細胞生存率を確認した。
【0049】
【表2】
【0050】
前記表2は、KG1α細胞において、対照群に比べて本発明の化合物1、10および72を処理する場合の細胞生存率を示したものであり、IC50値が0.5~1μMと示されて急性骨髄性細胞の死滅効果に優れていることを確認することができた。
【0051】
実施例2-3.HL60細胞またはU937細胞での細胞生存率の測定
前記実施例2-1で培養したHL60細胞またはU937細胞を96-ウェルプレートに1×10細胞/ウェルで接種した後、細胞の安定化のために37℃、5%CO条件のインキュベータで16時間以上培養した。以降、前記実施例1で合成した化合物1を0.1、0.5および1μM濃度にそれぞれ処理して24時間反応させ、この時、対照群としてはDMSOおよび0.1または1μM濃度のデシタビン(decitabine)を使用した。24時間後、各細胞にWST-1溶液を10μlずつ処理し、2時間反応した後、multi-scan機械で450nmで吸光度を測定して、HL60細胞に対する細胞生存率は図1Aに示し、U937細胞に対する細胞生存率結果は図1Bに示した。
【0052】
図1の結果を参照すると、本発明の化合物1をHL-60細胞またはU937細胞に処理する場合、HL-60細胞またはU937細胞において全て濃度依存的に細胞を死滅する効果があることを確認した。しかし、陽性対照群であるデシタビンをHL-60細胞またはU937細胞に処理する場合、HL60細胞では濃度依存的に細胞を死滅したが、U937細胞では細胞死滅効果が顕著に低かった。したがって、本発明の1,2-ナフトキノン誘導体化合物が、特定のタイプの急性白血病の治療剤でなく広範囲な急性白血病の治療用組成物として有用に使用可能であることを確認することができた。
【0053】
実施例2-4.急性白血病細胞で細胞死滅または細胞壊死の確認
細胞死は代表的に、細胞死滅(apoptosis)または細胞壊死(necrosis)が知られているため、本発明の化合物1により誘導される急性白血病細胞の死が細胞死滅であるか、または細胞壊死によるものであるか確認するために、FACS(fluorescence activated cell sorting)およびウェスタンブロット(western blot)を実施した。
【0054】
まず、FACSを実施するために、前記実施例1-2で培養したKG1α細胞またはHL60細胞を6-ウェルプレートに1×10細胞/ウェルで接種した後、細胞の安定化のために37℃、5%CO条件のインキュベータで16時間以上培養した。以降、化合物1を0、0.1、0.5、1および2μM濃度にそれぞれ処理して24時間培養した後、細胞を回収して冷たいPBSで洗浄した。1×10細胞だけを取ってPBSで再浮遊した後、細胞死滅時に増加するAnnexin-V(緑色蛍光)と細胞壊死時に反応するPi(propidium iodide、赤色蛍光)で染色し、FACSで2種類の指標の程度を数値化して、KG1α細胞に対するFACS結果は図2Aに示し、HL60細胞に対するFACS結果は図3Aに示した。
【0055】
次に、ウェスタンブロットを実施するために、前記実施例2-1で培養したKG1α細胞またはHL60細胞を6-ウェルプレートに1×10細胞/ウェルで接種した後、細胞の安定化のために37℃、5%CO条件のインキュベータで16時間以上培養した。以降、化合物1を0、0.1、0.5、1および2μM濃度にそれぞれ処理して24時間培養した後、細胞だけを回収した。前記過程で得られた細胞に蛋白質抽出バッファーを入れた後、30分間アイスで反応させて細胞膜を破って遠心分離して上澄液だけを取った後、蛋白質を抽出した。抽出した蛋白質を利用してSDS-PAGEを実施した後、Nitrocellular membraneに移転した。以降、細胞死滅と関連した特定抗体を反応させた後、ECLバッファーを利用して当該蛋白質の量を確認し、KG1a細胞に対するウェスタンブロット結果は図2Bに示し、HL60細胞に対するウェスタンブロット結果は図3Bに示した。
【0056】
図2および図3の結果を参照すると、本発明の化合物1をU937細胞またはA549細胞に処理する場合、KG1α細胞では細胞壊死により急性白血病細胞が死滅したが、HL60細胞では細胞死滅と細胞壊死が全て発生することから、急性白血病細胞が死滅したことを確認することができた。
【0057】
<実施例3.急性白血病モデルで単核球細胞の変化確認>
本発明の化合物1によるFLT3-ITD遺伝子の発現変化を確認するために、全身でFLT3-ITDを過発現したマウス(jackson lab)を利用して、本発明の化合物1を120mg/kgの濃度に食餌に混合して投与した実験群および溶媒だけを投与した対照群(無処理群)の動物から8週後に末梢血液と脾臓を採取した。
【0058】
末梢血液の場合、少量の血液に冷たい1X PBSを入れて遠心分離した後、洗浄してRBC lysisバッファーを入れて常温で5分間反応して赤血球を除去した。再び冷たい1X PBSを加えた後、遠心分離して上澄液を除去したペレットに1% FBSが含有されている1X PBSで再浮遊した。1×10細胞だけを取って、顆粒球(granulocyte)に特異的に発現するGr-1およびMac-1と単核球(monocyte)に特異的に発現するCD3抗体を同時免疫染色し、抗体はアイスで1:200の比率で20分間反応させた後、1X PBSで洗浄した後、1%FBSが含有されている1X PBSで再浮遊し、FACSで定量化して図4Aに示した。
【0059】
脾臓の場合、40μm孔を有するmeshにこねて単一細胞に分離した後、冷たい1X PBSで洗浄してRBC lysisバッファーを入れて常温で5分間反応して赤血球を除去した。再び冷たい1X PBSで洗浄した後、ペレットに1%FBSが含有されている1X PBSで再浮遊し、1×10細胞だけを取って顆粒球に特異的に発現するGr-1およびMac-1と単核球に特異的に発現するCD3抗体を同時免疫染色し、抗体はアイスで1:200の比率で20分間反応させた後、1X PBSで洗浄した後、1%FBSが含有されている1X PBSで再浮遊し、FACSで定量化して図4Bおよび4Cに示した。
【0060】
図4の結果を参照すると、本発明の化合物1をFLT3-ITDが過発現された急性骨髄性白血病マウスモデルで処理する場合、対照群(無処理群)に比べて末梢血液または脾臓で全て単核球細胞(急性白血病)の増殖を抑制する効果に優れて急性骨髄性白血病を改善させる効果があることを確認することができる。
【0061】
<実施例4.慢性白血病細胞株の製造およびその細胞生存率の測定>
実施例4-1.慢性白血病細胞株の製造
慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia)の53歳女性から得たK562細胞は、10%FBS(fetal bovine serum)が含まれているRPMI培地を使用し、37℃、5%CO条件のインキュベータで培養し、2日に一回ずつ継代培養して実験に使用した。
【0062】
実施例4-2.慢性白血病細胞で細胞生存率の測定-WST assay
前記実施例4-1で培養したK562細胞を96-ウェルプレートに1×10細胞/ウェルで接種した後、細胞の安定化のために37℃、5%CO条件のインキュベータで16時間以上培養した。以降、前記実施例1で合成した化合物のうち、化合物1、10、および72および192を0.1~5μM濃度に処理した後、4時間培養し、この時、対照群としてはDMSOを使用した。培養4時間後、各細胞に10μlのWST溶液を加えて2時間反応を実施した後、multi-scan機械で450nmで吸光度を測定してK562細胞の細胞生存率を下記表3に示した。
【0063】
【表3】
【0064】
前記表3を参照すると、K562細胞で、対照群に比べて本発明の化合物1、10、および72を処理する場合、IC50値が1~2μMに示されて慢性骨髄性白血病細胞の死滅効果が優れていることを確認した。
【0065】
<実施例5.慢性骨髄性白血病細胞でのBCR-ABL融合遺伝子に対する発現量確認>
慢性骨髄性白血病にだけ存在するBCR-ABL融合遺伝子は、持続的な細胞成長信号を生成および伝達して癌細胞の成長を誘導する。そこで、慢性骨髄性白血病細胞に、本発明の化合物を処理した後、ウェスタンブロット(western blot)でBCR-ABL融合遺伝子の発現量減少有無を確認した。
【0066】
まず、前記実施例4-1で培養したK562細胞を60mmプレートに5×10細胞/ウェルで接種した後、細胞の安定化のために37℃、5%CO条件のインキュベータで16時間以上培養した。以降、化合物1を0.5、1、1.5、2および2.5μM濃度にそれぞれ処理して6時間培養した後、細胞を回収した。前記過程で得られた細胞に蛋白質抽出バッファー(RIPA buffer)を加えて、30分間アイスで反応させて細胞膜を破って遠心分離して上澄液を取った後、蛋白質を抽出した。抽出した蛋白質は、SDS-PAGEを利用して電気泳動を実施して展開した後、PVDFメンブレインに移転した。以降、BCR-ABL融合遺伝子関連抗体を反応させた後、ECLバッファーを利用して当該蛋白質の量を確認し、K562細胞株に対するウェスタンブロット結果は図5に示した。
【0067】
図5の結果を参照すると、本発明の化合物1をK562細胞に処理する場合、慢性骨髄性白血病の発病に最も重要な役割を果たすBCR-ABL融合遺伝子の発現量が濃度依存的に減少したことを確認することができた。また、BCR-ABL融合遺伝子の発現減少によって、BCR-ABL融合遺伝子の活性(細胞成長を誘導する信号)を意味するphospho-bcr-abl、phospho-stat5の発現も減少したことが分かった。
【0068】
しかし、癌誘発遺伝子であるBCR-ABL融合遺伝子の発現量は減少した反面、正常血球細胞に存在するc-abl蛋白質の場合、発現量には影響を受けなかった。そこで、本発明の化合物が正常細胞で発現するc-abl蛋白質には影響を与えず、慢性骨髄性白血病にだけ存在する癌誘発遺伝子であるBCR-ABL融合蛋白質だけを選択的に減少させる組成物であることを確認することができた。
【0069】
<実施例6.固形癌細胞株の製造およびこの細胞生存率の測定>
実施例6-1.固形癌細胞株の製造
固形癌の治療剤としての使用の可能性を確認するために、肺癌種(lung carcinoma)の58歳男性から得たA549細胞株、子宮癌種(cervix adenocarcinoma)の31歳女性から得たHela細胞株、肝細胞癌腫(hepatocellular carcinoma)の15歳男児から得たHepG2細胞株、乳癌種(breast adenocarcinoma)の69歳女性から得たMCF7細胞株、そして固形癌細胞株と比較のために定常状態の肺から得たBeas-2B細胞株を使用した。
【0070】
前記A549(肺癌種)、Hela(子宮癌種)、HepG2(肝細胞癌腫)、MCF7(乳癌種)、およびBeas-2B(正常肺)細胞株は、10%FBSが含まれているDMEM培地を使用し、37℃、5%CO条件のインキュベータで2日に一回ずつ継代培養して実験に使用した。
【0071】
実施例6-2.固形癌細胞で細胞生存率の測定-WST assay
前記実施例6-1で培養したA549(肺癌種)、Hela(子宮癌種)、HepG2(肝細胞癌腫)、MCF7(乳癌種)およびBeas-2B(正常肺)細胞を96-ウェルプレートに1×10細胞/ウェルで接種した後、細胞の安定化のために37℃、5%CO条件のインキュベータで16時間以上培養した。以降、前記実施例1で合成した化合物のうち、化合物1、10および72を1~30μM濃度に処理した後、6時間培養し、この時、対照群としてはDMSOおよびβ-ラパコン(β-lapachone)を使用した。培養4時間後、各細胞に10μlのWST溶液を加えて2時間反応を実施した後、multi-scan機械で450nmで吸光度を測定してA549(肺癌種)、Hela(子宮癌種)、HepG2(肝細胞癌腫)およびMCF7(乳癌種)細胞の細胞生存率を下記表4および図6に示した。
【0072】
【表4】
【0073】
前記表4および図6を参照すると、A549(肺癌種)、Hela(子宮癌種)、HepG2(肝細胞癌腫)、MCF7(乳癌種)およびBeas-2B(正常肺)細胞において、対照群に比べて本発明の化合物1、10および72を6時間処理する場合、β-lapachoneと類似の死滅効果を示して、本発明の化合物が固形癌に治療効果があることを確認することができた。
【0074】
また、前記表4には示されていないが、本発明の化合物を正常肺細胞株であるBeas-2Bに処理する場合、平均的に80%以上の細胞生存率を示したが、肺癌種であるA549に処理する場合には50%程度の細胞生存率を示した。そこで、本発明の1,2-ナフトキノン誘導体化合物は、正常細胞には細胞毒性を示さないが、癌細胞に特異的に細胞死滅効果を示すため、多様な固形癌の治療用組成物として有用に使用可能であることを確認することができる。
【0075】
<実施例7.毒性実験>
本発明の化合物1を短期間に過量を摂取した時、急性的(24時間以内)に動物体内に及ぼす毒性を調査し、致死率を決定するために本実験を行った。一般的なマウスであるC57BL/6マウスを20匹を準備し、各群別に10匹ずつ配分した。対照群には0.1%SLS(Sodium Lauryl Sulfate)だけを投与し、実験群は前記化合物1を120mg/kgの濃度にそれぞれ経口投与した。投与24時間後に、それぞれの致死率を調査した結果、対照群と前記化合物1を投与した実験群で全て生存した。
【0076】
<製剤例1.本発明の化合物を含む薬学的製剤の製造>
製剤例1-1.散剤の製造
本発明の化合物1を2g、乳糖1gを混合して気密布に充填して散剤を製造した。
【0077】
製剤例1-2.錠剤の製造
本発明の化合物1を100mg、未結晶セルロース100mg、乳糖水和物60mg、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース20mgおよびステアリン酸マグネシウム2mgを混合した後、通常の錠剤の製造方法により打錠して錠剤を製造した。
【0078】
製剤例1-3.カプセル剤の製造
本発明の化合物1を100mg、未結晶セルロース100mg、乳糖水和物60mg、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース20mgおよびステアリン酸マグネシウム2mgを混合した後、通常のカプセル剤の製造方法により前記の成分を混合し、ゼラチンカプセルに充電してカプセル剤を製造した。
【0079】
製剤例1-4.注射剤の製造
本発明の化合物1を10mg、注射用滅菌蒸溜水適量およびpH調節剤適量を混合した後、通常の注射剤の製造方法により1アンプル当たり(2ml)前記の成分含有量で製造した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6