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特許7447050成形型、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】成形型、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/26 20060101AFI20240304BHJP
   B29C 45/02 20060101ALI20240304BHJP
   B29C 33/68 20060101ALI20240304BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20240304BHJP
   B29C 33/14 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C45/02
B29C33/68
B29C45/14
B29C33/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021071908
(22)【出願日】2021-04-21
(65)【公開番号】P2022166592
(43)【公開日】2022-11-02
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】宮景 孝之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 周平
(72)【発明者】
【氏名】市橋 秀男
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-017013(JP,A)
【文献】特開2000-043096(JP,A)
【文献】特開2019-209665(JP,A)
【文献】特開2020-029045(JP,A)
【文献】特開2020-64919(JP,A)
【文献】特開2019-34445(JP,A)
【文献】特開平8-142107(JP,A)
【文献】特開平6-244229(JP,A)
【文献】特開平3-244519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 45/00-45/84
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形対象物を保持し、樹脂材料が供給されるキャビティを有する成形型本体を備え、
前記成形型本体は、前記樹脂材料が供給されるポットを有するポットブロックと、前記ポットから前記キャビティに向けて前記樹脂材料を流動させる樹脂流路を前記ポットブロックとの間で形成するカルブロックと、を含んでおり、
前記ポットブロックは、前記成形対象物を押圧可能な状態で突出した突出部位を有しており、
前記突出部位には、前記成形対象物に形成された穴に挿入される挿入部材が形成されている成形型。
【請求項2】
前記挿入部材は、先細りの円錐台形状で構成されている請求項1に記載の成形型。
【請求項3】
前記挿入部材は、前記穴を貫通する寸法で形成されており、
前記成形型本体には、前記挿入部材が挿入される溝が形成されている請求項1又は2に記載の成形型。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の成形型と、
前記成形対象物が供給される前記成形型本体の型面に離型フィルムを供給する離型フィルム供給機構と、
前記成形型を型締めする型締め機構と、を備えた樹脂成形装置。
【請求項5】
請求項4に記載の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法であって、
前記成形型本体に前記離型フィルムを供給する離型フィルム供給工程と、
前記離型フィルム上に前記成形対象物を供給する成形対象物供給工程と、
前記ポットブロックと前記成形型本体とを相対的に近接移動させて、前記挿入部材を前記穴に挿入し、前記成形対象物の位置決めを行う位置決め工程と、
前記型締め機構により前記成形型を型締めした状態で、前記キャビティに前記樹脂材料を供給して前記成形対象物の樹脂成形を行う成形工程と、を含む樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
前記成形工程では、前記成形対象物の両面に前記樹脂材料を供給して両面成形を行う請求項5に記載の樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形型、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップ(以下、単に「チップ」ということもある)等の電子素子が接続された基板は、一般的に樹脂封止することにより電子部品として用いられる。従来、トランスファ成形用の樹脂成形装置として、上型と基板が供給される下型とを有する成形型と、上型の型面に離型フィルムを供給する離型フィルム供給機構と、成形型を型締めする型締め機構と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の樹脂成形装置(文献では樹脂モールド装置)は、下型に設けられたポット駒に架橋部が形成されており、型締め機構による型締め時に、基板の外周端が下型と架橋部との間で挟まれて保持される。また、下型には位置決めピンが上方に突出形成されており、基板を下型に供給する際には、基板に設けられたVノッチを位置決めピンに対応させることにより、基板の位置決めが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-29045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂成形装置のように、下型に位置決めピンが設けられていると、下型の汚れを防止する等の理由で下型の型面に離型フィルムを供給したいときに、位置決めピンが邪魔となって対応できない。
【0006】
そこで、基板の位置決めを行うことができる自由度の高い成形型、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る成形型の特徴構成は、成形対象物を保持し、樹脂材料が供給されるキャビティを有する成形型本体を備え、前記成形型本体は、前記樹脂材料が供給されるポットを有するポットブロックと、前記ポットから前記キャビティに向けて前記樹脂材料を流動させる樹脂流路を前記ポットブロックとの間で形成するカルブロックと、を含んでおり、前記ポットブロックは、前記成形対象物を押圧可能な状態で突出した突出部位を有しており、前記突出部位には、前記成形対象物に形成された穴に挿入される挿入部材が形成されている点にある。
【0008】
本発明に係る樹脂成形装置の特徴構成は、前記成形型と、前記成形対象物が供給される前記成形型本体の型面に離型フィルムを供給する離型フィルム供給機構と、前記成形型を型締めする型締め機構と、を備えた点にある。
【0009】
本発明に係る樹脂成形品の製造方法の特徴は、前記成形型本体に前記離型フィルムを供給する離型フィルム供給工程と、前記離型フィルム上に前記成形対象物を供給する成形対象物供給工程と、前記ポットブロックと前記成形型本体とを相対的に近接移動させて、前記挿入部材を前記穴に挿入し、前記成形対象物の位置決めを行う位置決め工程と、前記型締め機構により前記成形型を型締めした状態で、前記キャビティに前記樹脂材料を供給して前記成形対象物の樹脂成形を行う成形工程と、を含む点にある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】樹脂成形装置を示す平面模式図である。
図2】成形型を示す正面模式図である。
図3】ポットブロック及びカルブロックを示す斜視図である。
図4】ポットブロック及び下型の斜視図である。
図5】ポットブロック及び基板が載置された下型を示す拡大斜視図である。
図6A】位置決め工程の第一段階を示す図である。
図6B】位置決め工程の第二段階を示す図である。
図6C】位置決め工程の第三段階を示す図である。
図6D】位置決め工程の第四段階を示す図である。
図6E】位置決め工程の第五段階を示す図である。
図7】別実施形態に係るパイロットピンを示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る成形型、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法の実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0012】
半導体チップ等が接続された基板(成形対象物)は樹脂封止することにより電子部品として用いられる。成形対象物を樹脂封止する技術としては、トランスファ方式等が挙げられる。トランスファ方式の1つとして、成形型の下型に吸着された離型フィルム上に成形対象物を載置し、成形型のポットに粉粒体状樹脂を固めた樹脂タブレット(樹脂材料)を供給して加熱,溶融し、溶融樹脂をキャビティに供給して成形対象物を樹脂成形する方式が挙げられる。
【0013】
粉粒体状樹脂は、粉粒体状の樹脂だけでなく、粉粒体状の樹脂を押し固めた固形樹脂で形成される樹脂タブレットを含んでおり、いずれも加熱により溶融して液状となる溶融樹脂となる。この粉粒体状樹脂は、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でも良い。熱硬化性樹脂は、加熱すると粘度が低下し、さらに加熱すると重合して硬化し、硬化樹脂となる。以下に説明するように、半導体チップが接続された成形前基板を樹脂成形して封止する場合には、熱硬化性樹脂を用いることが望ましい。
【0014】
[全体構成]
以下、トランスファ方式の樹脂成形装置30を一例として説明する。図1には、本実施形態における樹脂成形装置30の平面模式図が示されている。樹脂成形装置30は、成形モジュール3と供給モジュール4と制御部6と搬送機構とを備えている。成形モジュール3は、成形対象物を樹脂封止する部分であり、成形前基板Sa(成形対象物)を保持する成形型本体Mを含む成形型を有している。制御部6は、少なくとも樹脂成形装置30の作動を制御するソフトウェアとして、HDDやメモリ等のハードウェアに記憶されたプログラムで構成されており、コンピュータのCPUにより実行される。
【0015】
本実施形態における樹脂成形装置30は、半導体チップ等が接続された成形前基板Saを樹脂成形する装置である。
【0016】
成形モジュール3は、成形型により、成形前基板Sa(成形対象物)を樹脂封止して成形済基板Sb(樹脂成形品)を成形する。この成形モジュール3は、複数(本実施形態では2つ)設けられており、夫々の成形モジュール3を独立して装着又は取り外しできる。樹脂成形装置30の詳細は後述する。なお、成形モジュール3は1つでも良いし、3つ以上であっても良い。
【0017】
供給モジュール4は、成形モジュール3に成形前基板Sa及び樹脂タブレットTを供給し、成形モジュール3から成形済基板Sbを収容するためのものであり、基板供給機構43と基板整列機構44と樹脂供給機構45と基板収容部46とを含む。搬送機構に含まれるローダ41とアンローダ42とは、供給モジュール4内で待機する。基板供給機構43は、ストックしている成形前基板Saを基板整列機構44に受け渡す。成形前基板Saには、複数個の半導体チップが縦方向及び/又は横方向に整列して、接続されている。基板整列機構44は、基板供給機構43から受け渡された成形前基板Saを搬送に適した状態にする。樹脂供給機構45は、樹脂タブレットTをストックしており、樹脂タブレットTを搬送に適した状態に配置する。なお、成形前基板Saは、1つの半導体チップが接続されているものでも良い。
【0018】
搬送機構は、樹脂封止前の半導体チップ等が接続された成形前基板Saや樹脂タブレットTを搬送するローダ41と、樹脂封止後の成形済基板Sbを搬送するアンローダ42とを含んでいる。ローダ41は、基板整列機構44から成形前基板Saを受け取り、また、樹脂供給機構45から樹脂タブレットTを受け取って、レール上を供給モジュール4から各成形モジュール3まで移動し、各成形モジュール3の成形型本体M(下型LM)に成形前基板Saと樹脂タブレットTを受け渡すことができる。アンローダ42は、成形済基板Sbを成形モジュール3から取り出して、レール上を各成形モジュール3から基板収容部46まで移動し、基板収容部46に成形済基板Sbを収容することができる。成形済基板Sbでは、半導体チップ等が、溶融樹脂が固化した硬化樹脂により封止されている。なお、基板収容部46は、成形モジュール3を挟んで供給モジュール4とは反対側に配置する等しても良く、供給モジュール4を構成する各機構の配置は特に限定されない。
【0019】
以下、成形モジュール3の樹脂成形装置30について詳述する。
【0020】
図2に示すように、樹脂成形装置30は、樹脂タブレットTが加熱されて溶融した溶融樹脂(以下、「溶融樹脂」と言う)が注入される上型キャビティMCaが形成された上型UM(カルブロックの一例)と、上型UMに対向して配置され、上型キャビティMCaに溶融樹脂を注入する樹脂注入機構7が設けられた下型LMと、上型UM及び下型LMを型締めする型締め機構5と、離型フィルムFを供給する離型フィルム供給機構8と、を有する。本実施形態における下型LMには、成形前基板Saに設けられた樹脂流通穴(不図示)を介して上型キャビティMCaから溶融樹脂が注入される下型キャビティMCbが形成されている。型締め機構5の作動は、制御部6により制御される。
【0021】
上型UMは、上型ホルダ31に保持されており、この上型ホルダ31は、上プラテン32に固定されている。また、上型UMは、上型ベースプレート33を介して上型ホルダ31に取り付けられている。下型LMは、下型ホルダ34に保持されており、この下型ホルダ34は、型締め機構5により昇降する可動プラテン35に固定されている。また、下型LMは、下型ベースプレート36を介して下型ホルダ34に取り付けられている。本実施形態における型締め機構5は、例えば、サーボモータとボールねじ機構とを組み合わせたものや、エアシリンダや油圧シリンダとロッドとを組み合わせたもの等を用いることができる。
【0022】
離型フィルム供給機構8は、上型UMと下型LMとの間に離型フィルムFを供給する。離型フィルムFの材料としては、耐熱性、離型性、柔軟性、伸展性等の特性を有する樹脂材料が用いられ、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン/四フッ化エチレン共重合体)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、FEP(四フッ化エチレン/六フッ化プロプレン共重合体)、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン等が用いられる。
【0023】
離型フィルム供給機構8は、離型フィルムFを送り出す送出機構(不図示)と、離型フィルムFを回収する回収機構(不図示)と、を含んでいる。送出機構は、使用前の離型フィルムFを上型UMと下型LMとの間に送り出し可能であり、回収機構は、樹脂成形に用いられた使用済みの離型フィルムFを回収可能である。また、下型LMには、離型フィルムFを真空ポンプ等により型面に吸着させる吸着機構(不図示)が設けられている。離型フィルム供給機構8の作動は、制御部6により制御される。
【0024】
樹脂注入機構7は、樹脂タブレットTを収容するポット71aが形成されたポットブロック71と、ポット71a内に設けられたプランジャ72aを有するトランスファ機構72とを備えている。なお、ポット71aは、例えば円筒状をなす筒状部材73により形成されている。この筒状部材73は、ポットブロック71に形成された貫通孔に嵌め入れられている。
【0025】
ポットブロック71は、下型LMに対して昇降可能となるように弾性部材74により弾性支持されている。つまり、ポットブロック71は、弾性部材74を介して下型LMに対して昇降可能に設けられている。この弾性部材74は、ポットブロック71の下側に設けられており、下型LMから離れる方向にポットブロック71を押圧している。
【0026】
また、ポットブロック71の上端部には、下型LMの上面である型面上に張り出した張り出し部71A(突出部位の一例)が形成されている。この張り出し部71Aは、対向する成形前基板Saのポット側端部を押圧可能な状態で突出しており、後述するパイロットピン71Aa(挿入部材の一例)が下面に形成されている。さらに、ポットブロック71の上面には、ポット71aから注入された溶融樹脂を上型キャビティMCaに導入する樹脂流路となるカル部71b、ランナ71c及びゲート71dが形成されている。また、張り出し部71Aは、上型UM及び下型LMを型締めした状態で、その上面が上型UM(カルブロック)に接触すると共に、その下面が下型LMの型面との間で成形前基板Saを挟むことになる。
【0027】
トランスファ機構72は、上型UM及び下型LMが型締めされた状態でプランジャ72aを移動させてポット71aから上型キャビティMCaに溶融樹脂を注入するものである。このトランスファ機構72は、ポット71aの内部に設けられ、溶融樹脂を圧送するためのプランジャ72aと、プランジャ72aが固定される固定ブロック72bと、固定ブロック72bを介してプランジャ72aを移動させるプランジャ駆動機構72cとを含む。プランジャ駆動機構72cの作動は、制御部6により制御される。
【0028】
固定ブロック72bは、概略直方体形状をなすものであり、その長方形状をなす一面(上面)に複数のプランジャ72aが直線状に一列に固定されている。複数のプランジャ72aの配置態様は、後述する複数のポット71aの配置態様に対応している。なお、複数のプランジャ72aは、例えば固定ねじ等により固定ブロック72bに固定されている。また、固定ブロック72bには、各プランジャ72aが溶融樹脂を注入する圧力を均一にするための弾性部材等を用いた等圧機構が設けられていても良い。
【0029】
プランジャ駆動機構72cは、固定ブロック72bを下型LMに対して昇降移動させることにより、複数のプランジャ72aを複数のポット71aに対して一括して同じ移動量で昇降移動させるものである。本実施形態のプランジャ駆動機構72cは、固定ブロック72bの下側に設けられている。このプランジャ駆動機構72cとしては、例えば、サーボモータとボールねじ機構とを組み合わせたものや、エアシリンダや油圧シリンダとロッドとを組み合わせたもの等を用いることができる。
【0030】
上型UMには、成形前基板Saのチップ13を収容すると共に溶融樹脂が注入される上型キャビティMCaが形成されている。また、上型UMには、ポットブロック71のカル部71b、ランナ71c及びゲート71dと上型キャビティMCaとを接続する凹状空間81及びゲート82が形成されている。つまり、上型UMとポットブロック71との間には、ポット71aから上型キャビティMCaに向けて溶融樹脂を流動させる樹脂流路となるカル部71b、ランナ71c、ゲート71d、凹状空間81及びゲート82が形成されている。また、上型UMには、ポットブロック71とは反対側にエアベント(不図示)が形成されている。なお、ランナ71cを省略し、カル部71bと上型キャビティMCaとをゲート71d,82を介して直接的に接続することもできる。また、本実施形態における凹状空間81は、ゲート71dから上型キャビティMCaに連通する前に、樹脂溜まりのための空間を形成しており、この樹脂溜まり空間からゲート82を介して上型キャビティMCaに接続されているが、この樹脂溜まり空間を省略しても良い。
【0031】
また、上型UMには、成形済基板Sbを上型UMから離型させるための複数のエジェクタピン83が設けられている。これらエジェクタピン83は、上型UMの所要箇所に貫通して上型UMに対して昇降可能に設けられており、上型UMの上側に設けられたエジェクタプレート84に固定されている。エジェクタプレート84は、弾性部材85を介して上プラテン32等に設けられており、リターンピン86を有している。型締め時にリターンピン86が下型LMにおける成形前基板Saの載置領域外に接触することにより、エジェクタプレート84が上型UMに対して上昇する。これにより、型締め時においてエジェクタピン83は上型UMの型面に引っ込んだ状態となる。一方、型開き時においては下型LMが下降するに伴って、エジェクタプレート84は弾性部材85の弾性力によって上型UMに対して下降し、エジェクタピン83が成形済基板Sbを上型UMから離型する。
【0032】
型締め機構5により上型UM及び下型LMを型締めすると、カル部71b、ランナ71c、ゲート71d、凹状空間81及びゲート82からなる樹脂流路が、複数のポット71aと上型キャビティMCaとを連通させ、上型キャビティMCaが、成形前基板Saに設けられた樹脂流通穴を介して下型キャビティMCbと連通する。また、上型UM及び下型LMを型締めすると、ポットブロック71の張り出し部71Aの下面と下型LMの型面との間に成形前基板Saのポット側端部が挟まれることになる。この状態でプランジャ駆動機構72cによりプランジャ72aを上昇させて、溶融樹脂を上型キャビティMCa及び下型キャビティMCbに注入すると、成形前基板Saのチップ13等が樹脂封止される。
【0033】
引き続き、図3図5を用いて成形型を詳述する。図3には、上方から見た成形型に含まれるポットブロック71及び上型UM(カルブロック)の斜視図が示されている。図4は、側方から見たポットブロック71及び下型LMの斜視図であり、図5は、ポットブロック71及び成形前基板Saが載置された下型LMの拡大斜視図である。成形型は、成形型本体Mを備えており、成形型本体Mは、ポットブロック71と、ポットブロック71が昇降自在に設けられた下型LMと、カルブロックを備えた上型UMとを含んでいる。
【0034】
本実施形態のポットブロック71は、図3(b)に示すように、複数のポット71aが直線状に1列に形成されている。なお、図3(b)では、1つのポットブロック71に8つのポット71aを形成した例を示しているが、これに限られず、適宜変更しても良い。また、ポットブロック71の上面には、複数のポット71aそれぞれに対応して複数のカル部71bが形成されており、複数のカル部71bそれぞれに対応して複数のランナ71c及びゲート71dが形成されている。
【0035】
ポットブロック71は、樹脂タブレットTが供給される複数のポット71aを有している。夫々のポット71aは、平面視において、ポット71aを囲む部位を含むカル部71bと、カル部71bから延びた複数(図では4つ)の分岐路であるランナ71cと、このランナ71cの先端となるゲート71dとが連通している。成形前基板Saの樹脂成形後、ポットブロック71のカル部71b、ランナ71c及びゲート71dには、不要樹脂が残留する。この不要樹脂は、樹脂成形後において上型UM及び樹脂注入機構7の間に残留して硬化した樹脂であり、本実施形態では、ポットブロック71上に残留して硬化した樹脂である。
【0036】
図3(a)に示すように、上型UMは、ポットブロック71のカル部71b及びランナ71cと対向する部分に凹状空間81の一部が形成されると共に、上述した凹状空間81の樹脂溜まり空間の先端にゲート82が形成されている。上述したように、カル部71b、ランナ71c、ゲート71d、凹状空間81及びゲート82が、ポット71aから上型キャビティMCaに向けて溶融樹脂を流動させる樹脂流路を構成している。
【0037】
図4に示すように、ポットブロック71は、成形前基板Saのポット側端部を押圧可能な状態で突出した張り出し部71Aを有している。本実施形態における張り出し部71Aは、成形前基板Saの存在領域に亘って連続して存在している。この張り出し部71Aの下面には、型締め時において、成形前基板Saのポット側端部に形成された複数(図では3つ)の穴Hに夫々挿入される複数のパイロットピン71Aaが形成されている。なお、張り出し部71Aは、パイロットピン71Aaが設けられる箇所にのみ分割して形成されても良い。
【0038】
本実施形態における複数のパイロットピン71Aaは、成形前基板Saのポット側端部に形成された中央の穴Hと、両端にそれぞれ設けられた穴Hと、に対応する位置に設けられた合計3つの柱体で形成されている。これらパイロットピン71Aaは、先細りの円錐台形状で構成されており、全て同一形状となっている。なお、パイロットピン71Aaは、成形前基板Saの穴Hの数及び位置に対応して設ければ良く、数量及び配置は特に限定されない。また、全てのパイロットピン71Aaを同一形状にせずに、異なる形状を混合させても良い。
【0039】
図5に示すように、パイロットピン71Aaは、成形前基板Saの穴Hを貫通する寸法で形成されており、下型LMには、パイロットピン71Aaが挿入される溝9が形成されている。このパイロットピン71Aaは、断面視において、基端側側面が直線状部位75となっており、先端面が平坦面76となっており、直線状部位75と平坦面76とは、平坦面76に向かって狭まるテーパー部位77で接続されている。直線状部位75と平坦面76の角は、穴Hに挿入されやすいように、R面取り又はC面取りがされていることが好ましい。パイロットピン71Aaが穴Hに挿入されると、テーパー部位77により成形前基板Saを前後左右などの水平方向の何れの方向にも移動させることができ、穴Hと直径が同等且つ厚みが同等に構成されている直線状部位75が穴Hに嵌まることにより成形前基板Saが固定される。このとき、平坦面76により、成形前基板Saを傷つけることが無い。本実施形態における溝9は、パイロットピン71Aa及び成形前基板Saの穴Hの数及び位置に対応して設けられた、3つの底有り孔となっている。この溝9は、底壁に行くほど直径が減少するテーパーが側壁に設けられている。なお、下型LMに設けられた複数の溝9は、テーパーを無くした円柱形状で構成しても良いし、全て連結した1つの長孔状に形成しても良いし、幾つか連結した長孔状に形成しても良い。
【0040】
[樹脂成形品の製造方法]
主に図1及び図6を用いて、樹脂成形品(成形済基板Sb)の製造方法を説明する。樹脂成形品(成形済基板Sb)の製造方法は、下型LMに離型フィルムFを供給する離型フィルム供給工程と、離型フィルムF上に成形前基板Saを供給する成形対象物供給工程と、ポットブロック71と下型LMとを相対的に近接移動させて、パイロットピン71Aaを成形前基板Saの穴Hに挿入し、成形前基板Saの位置決めを行う位置決め工程と、型締め機構5により成形型を型締めした状態で、上型キャビティMCaに溶融樹脂を供給して成形前基板Saの樹脂成形を行う成形工程と、を含んでいる。この成形工程は、成形前基板Saの成形モジュール3への搬入から成形済基板Sbの成形モジュール3からの搬出までの間において、樹脂成形装置30が成形前基板Saを樹脂成形する工程である。本実施形態における成形工程では、上型キャビティMCa及び下型キャビティMCbに溶融樹脂を供給することにより、成形前基板Saの両面に溶融樹脂を供給して両面成形を行う。
【0041】
図1に示すように、予め、ローダ41を、樹脂タブレットTの収容空間を断熱した状態で加熱しておき、成形型本体Mも加熱しておく。そして、基板供給機構43から取り出した成形前基板Saをローダ41に載置する。また、樹脂供給機構45により整列された樹脂タブレットTを、ローダ41の樹脂タブレットTの収容空間に収容する。そして、ローダ41は、成形前基板Sa及び樹脂タブレットTを成形モジュール3まで搬送し、樹脂タブレットTを下型LMのポット71a内に収容する。樹脂タブレットTをポット71a内に収容することにより、下型LMに内蔵されたヒータが樹脂タブレットTを加熱して、溶融樹脂となる。
【0042】
また、離型フィルム供給機構8は、上型UMと下型LMとの間に使用前の離型フィルムFを供給する(図2参照)。次いで、制御部6により駆動力が制御された型締め機構5により、下型LMを上型UMの方向に移動させ、使用前の離型フィルムFを下型LMに密着させる。そして、吸着機構により離型フィルムFを下型LMの型面に吸着させ、離型フィルムF上に成形前基板Saを供給する。この離型フィルムF上に成形前基板Saを供給する機構は、例えば、特許6655148号公報に記載されたローダ(不図示)を用いることができる。離型フィルムF上に成形前基板Saを供給する際、成形前基板Saの端面をポットブロック71の側面に押し当てることにより、成形前基板Saはある程度位置決めされるが、成形前基板Saの端面の表面粗さ等の理由により、精度よく位置決めすることが難しい。
【0043】
次いで、制御部6により駆動力が制御された型締め機構5により、上型UMと下型LMとを近接移動させて上型UM及び下型LMを型締めする。このとき、型締め機構5により下型LM及びポットブロック71が上昇し(図6A参照)、ポットブロック71の上面が上型UMに接触したときポットブロック71の上昇が停止する(図6B参照)。そして、型締め機構5により下型LMが更に上昇することにより、弾性部材74(図2参照)が縮小してポットブロック71が下型LMに対して相対的に下降し(図6C図6D参照)、張り出し部71Aの下面が成形前基板Saのポット側端部に接触する(図6E参照)。また、ポット側端部が接触しない成形前基板Saの端部に、上型UMの下面が接触する。
【0044】
ポットブロック71が下型LMに対して相対的に下降することにより張り出し部71Aの下面が成形前基板Saのポット側端部に接触する際、パイロットピン71Aaが成形前基板Saの穴Hを貫通して、下型LMの溝9に挿入される(図6D図6E参照)。このとき、離型フィルムFは、パイロットピン71Aaの平坦面76に接触することにより、局所的に撓んだ状態に変形する。本実施形態では、パイロットピン71Aaを先細りの円錐台形状で構成しているため、パイロットピン71Aaが成形前基板Saの穴Hに挿入されたとき、円錐台形状のテーパー部位77が穴Hの側面に接触して、成形前基板Saを適正な位置に移動させ、円錐台形状の直線状部位75が成形前基板Saの穴Hに嵌まることにより位置固定できる。また、パイロットピン71Aaが穴Hを貫通する寸法で形成されているので、成形前基板Saの厚みが薄い場合でも位置決めすることができる。しかも、パイロットピン71Aaが挿入される溝9の側壁は、底壁に行くほど直径が減少するテーパーを有しているため、パイロットピン71Aaが溝9と干渉することがない。
【0045】
次いで、下型LMに収容された樹脂タブレットTが溶融した溶融樹脂を、制御部6により駆動力が制御されたトランスファ機構72により、キャビティMCa,MCbに注入する。これにより成形前基板Saは両面成形される(図2参照)。樹脂成形後、下型LMを下方に移動させて成形型の型開きを行う。この型開き動作中に、ポットブロック71のカル部71b、ランナ71c及びゲート71dなどに形成される不要樹脂を、両面成形された成形前基板Saから分離する動作(ゲートブレイク動作)が行われ、成形済基板Sbと不要樹脂とが分離される。そして、成形済基板Sbを下型LM及び上型UMから離型させてアンローダ42により基板収容部46に収容する(図1参照)。この樹脂成形装置30にてパッケージ基板(成形済基板Sb)を製造した後、切断装置によって、このパッケージ基板が穴Hを含む不要な部分を取り除くように切断され(個片化され)、形成された切断品が品質検査を経た上で電子部品として用いられる。
【0046】
このように、ポットブロック71の張り出し部71Aに、成形前基板Saに形成された穴Hに挿入されるパイロットピン71Aaを設けているため、成形前基板Saが成形型本体Mに対して適正な位置に案内され、位置決めされる。その結果、成形前基板Saを樹脂成形する際に、溶融樹脂の充填位置が正確なものとなり、成形精度が向上する。また、正確に位置決めされた成形前基板Saが張り出し部71Aにより押圧されると共にパイロットピン71Aaが成形前基板Saの穴Hに挿入されていることにより、樹脂圧を受けて成形前基板Saが移動するといった不都合がない。
【0047】
また、成形工程により成形前基板Saの両面に溶融樹脂を供給して両面成形を行う。この両面成形では、樹脂圧を受けて成形前基板Saが移動しやすいが、正確に位置決めされた成形前基板Saが張り出し部71Aにより押圧されると共にパイロットピン71Aaが成形前基板Saの穴Hに挿入されていることにより、樹脂圧を受けて成形前基板Saが移動するといった不都合がない。
【0048】
[その他の実施形態]
以下、上述した実施形態と同様の部材については、理解を容易にするため、同一の用語、符号を用いて説明する。
【0049】
<1>上述した実施形態では、下型LMに離型フィルムFを吸着させたが、上型UMに離型フィルムFを吸着させても良いし、上型UM及び下型LMに離型フィルムFを吸着させても良い。上型UMに離型フィルムを吸着させる場合、上述した実施形態のエジェクタピン83は不要となり、また、上型UMに離型フィルムFを供給する機構は別途設けることが好ましい。
【0050】
<2>上述した実施形態では、下型LMに下型キャビティMCbを形成したが、成形前基板Saの下面を樹脂封止する必要の無い場合は、下型キャビティMCbを省略しても良い。この場合、上型UMに対向する片面(成形前基板Saの上面)のみが樹脂成形されるが、下型LMの汚れを防止するために、下型LMに離型フィルムFを供給することが好ましい。
【0051】
<3>上述した実施形態では、下型LMに成形前基板Saを供給する例を示したが、上型UMに成形前基板Saを供給し、ポットブロック71の張り出し部71Aの上面と上型UMの型面との間に成形前基板Saを挟み込んでも良い。この場合、パイロットピン71Aaを張り出し部71Aの上面に設け、上型UMに溝9を設けることとなる。
【0052】
<4>図7に示すように、パイロットピン71Aa(挿入部材の他の例)は、基端側を円柱形状とし、先端側を円錐形状としても良い。この場合でも、円錐形状のテーパー部位が成形前基板Saの穴Hの側面に接触して、成形前基板Saを適正な位置に移動させ、円柱形状の基端部位にて位置固定できる。なお、パイロットピン71Aaは、角柱状に形成するなど、成形前基板Saの穴Hに挿入可能な形状であれば、どのような形状であっても良い。
【0053】
<5>上述した実施形態では、パイロットピン71Aaを成形前基板Saの穴Hを貫通する高さ寸法としたが、パイロットピン71Aaの高さ寸法を成形前基板Saの厚み未満で構成しても良い。
【0054】
<6>上述した実施形態では、カルブロックを上型UMに一体形成したが、上型UMとは別個にカルブロックを設けても良い。
【0055】
<7>上述した実施形態では、ポットブロック71を、下型LMに対して昇降可能となるように弾性部材74により弾性支持したが、ポットブロック71を固定して、下型LMに成形前基板Saを支持する可動プレートを設けても良い。この場合、上型UM及び下型LMを相対的に移動させて型締めするとき、可動ブロックを独立して上昇移動させることにより、ポットブロック71と下型LMとを相対的に近接移動させて、パイロットピン71Aaを成形前基板Saの穴Hに挿入することとなる。
【0056】
<8>上述した実施形態における樹脂成形装置30にて樹脂成形される成形前基板Saは、たとえば、半導体製基板(シリコンウェハ等)、金属製基板(リードフレーム等)、ガラス製基板、セラミック製基板、樹脂製基板又は配線基板である。
【0057】
[上記実施形態の概要]
以下、上述の実施形態において説明した樹脂成形装置30及び樹脂成形品の製造方法の概要について説明する。
(1)成形型の特徴構成は、成形対象物(成形前基板Sa)を保持し、樹脂材料(樹脂タブレットTが溶融した溶融樹脂)が供給されるキャビティ(上型キャビティMCa)を有する成形型本体Mを備え、成形型本体Mは、樹脂材料(樹脂タブレットT)が供給されるポット71aを有するポットブロック71と、ポット71aからキャビティ(上型キャビティMCa)に向けて樹脂材料(溶融樹脂)を流動させる樹脂流路(カル部71b、ランナ71c、ゲート71d、凹状空間81及びゲート82)をポットブロック71との間で形成するカルブロック(上型UM)と、を含んでおり、ポットブロック71は、成形対象物(成形前基板Sa)を押圧可能な状態で突出した突出部位(張り出し部71A)を有しており、突出部位(張り出し部71A)には、成形対象物(成形前基板Sa)に形成された穴Hに挿入される挿入部材(パイロットピン71Aa)が形成されている点にある。
【0058】
本構成では、ポットブロック71の張り出し部71Aに、成形前基板Saに形成された穴Hに挿入されるパイロットピン71Aaを設けている。これにより、成形前基板Saが成形型本体M(下型LM)に対して適正な位置に案内され、位置決めされる。その結果、成形前基板Saを樹脂成形する際に、溶融樹脂の充填位置が正確なものとなり、成形精度が向上する。また、正確に位置決めされた成形前基板Saが張り出し部71Aにより押圧されると共にパイロットピン71Aaが成形前基板Saの穴Hに挿入されていることにより、樹脂圧を受けて成形前基板Saが移動するといった不都合がない。
【0059】
(2)挿入部材(パイロットピン71Aa)は、先細りの円錐台形状で構成されていても良い。
【0060】
本構成のようにパイロットピン71Aaを先細りの円錐台形状で構成すれば、パイロットピン71Aaが成形前基板Saの穴Hに挿入されたとき、円錐台形状のテーパー部位77が穴Hの側面に接触して、成形前基板Saを適正な位置に移動させることができる。
【0061】
(3)挿入部材(パイロットピン71Aa)は、穴Hを貫通する寸法で形成されており、成形型本体M(下型LM)は、挿入部材(パイロットピン71Aa)が挿入される溝9が形成されていても良い。
【0062】
本構成のように、パイロットピン71Aaが穴Hを貫通する寸法で形成されていれば、成形前基板Saの厚みが薄い場合でも位置決めすることができる。しかも、下型LMにパイロットピン71Aaが挿入される溝9を設けていれば、パイロットピン71Aaを進退可能な可動部材にする必要がなく、製造コストを低減できる。
【0063】
(4)樹脂成形装置30の特徴構成は、上記(1)~(3)の何れかの成形型と、成形対象物(成形前基板Sa)が供給される成形型本体M(下型LM)の型面に離型フィルムFを供給する離型フィルム供給機構8と、成形型を型締めする型締め機構5と、を備えている。
【0064】
上述したように、下型LMに位置決めピンを設ける構成ではなく、ポットブロック71の張り出し部71Aにパイロットピン71Aaを設ける構成であるため、成形前基板Saが供給される下型LMの型面に離型フィルムFを供給することができる。その結果、樹脂成形に伴う成形型本体Mの汚れを防止することができる。
【0065】
(5)上記(4)の樹脂成形装置30を用いた樹脂成形品(成形済基板Sb)の製造方法の特徴は、成形型本体M(下型LM)に離型フィルムFを供給する離型フィルム供給工程と、離型フィルムF上に成形対象物(成形前基板Sa)を供給する成形対象物供給工程と、ポットブロック71と成形型本体M(下型LM)とを相対的に近接移動させて、挿入部材(パイロットピン71Aa)を成形前基板Saの穴Hに挿入し、成形対象物(成形前基板Sa)の位置決めを行う位置決め工程と、型締め機構5により成形型を型締めした状態で、キャビティ(上型キャビティMCa)に樹脂材料(樹脂タブレットTが溶融した溶融樹脂)を供給して成形対象物(成形前基板Sa)の樹脂成形を行う成形工程と、を含む点にある。
【0066】
本方法では、ポットブロック71と下型LMとを相対的に近接移動させて、パイロットピン71Aaを成形前基板Saの穴Hに挿入し、成形前基板Saの位置決めを行う位置決め工程を含んでいるため、成形工程により成形前基板Saを樹脂成形する際に、溶融樹脂の充填位置が正確なものとなり、成形精度が向上する。
【0067】
(6)また、成形工程では、成形対象物(成形前基板Sa)の両面に樹脂材料(溶融樹脂)を供給して両面成形を行っても良い。
【0068】
本方法では、成形工程により成形前基板Saの両面に樹脂材料を供給して両面成形を行う。この両面成形では、樹脂圧を受けて成形前基板Saが移動しやすいが、正確に位置決めされた成形前基板Saが張り出し部71Aにより押圧されると共にパイロットピン71Aaが成形前基板Saの穴Hに挿入されていることにより、樹脂圧を受けて成形前基板Saが移動するといった不都合がない。
【0069】
なお、上述した実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、成形型、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0071】
5 :型締め機構
8 :離型フィルム供給機構
9 :溝
30 :樹脂成形装置
71 :ポットブロック
71A :張り出し部(突出部位)
71Aa :パイロットピン(挿入部材)
71a :ポット
71b :カル部(樹脂流路)
71c :ランナ(樹脂流路)
71d :ゲート(樹脂流路)
81 :凹状空間(樹脂流路)
82 :ゲート(樹脂流路)
F :離型フィルム
H :穴
M :成形型本体
MCa :上型キャビティ(キャビティ)
MCb :下型キャビティ(キャビティ)
Sa :成形前基板(成形対象物)
Sb :成形済基板(樹脂成形品)
T :樹脂タブレット(樹脂材料)
UM :上型(カルブロック)
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7