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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/00 20060101AFI20240304BHJP
   H02K 11/02 20160101ALI20240304BHJP
【FI】
H02K5/00 B
H02K11/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021079187
(22)【出願日】2021-05-07
(65)【公開番号】P2022172871
(43)【公開日】2022-11-17
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000103792
【氏名又は名称】オリエンタルモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】淺野 知奈美
(72)【発明者】
【氏名】武田 悠太
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-039164(JP,U)
【文献】特開2019-009885(JP,A)
【文献】国際公開第2019/207794(WO,A1)
【文献】特開2020-118591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/00
H02K 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と、
出力軸及び前記出力軸に取り付けられた回転子と、
前記固定子と前記回転子とを収容する筐体と、
前記出力軸の回転を検出する検出器と
を備える電動機であって、
前記筐体の軸方向端面に前記検出器が取り付けられ、
前記検出器を収容するように前記軸方向端面にシールドキャップが設けられ、
前記検出器及び前記シールドキャップを収容するように前記軸方向端面に検出器カバーが設けられ、
前記検出器カバーに形成された開口部にコネクタが取り付けられ、
前記出力軸を回転させるための電力を供給する動力線が、前記軸方向端面の外周縁部に形成された開口部と、前記検出器カバーに形成された開口部とを経て、前記コネクタに接続され、
前記検出器から出力された電気信号が伝搬する信号線が、前記シールドキャップに形成された開口部と、前記検出器カバーに形成された開口部とを経て、前記コネクタに接続され、
前記検出器カバーの裏面から突起した突起部が、前記検出器カバーに形成された開口部の端部から径方向に延びるとともに、前記突起部の少なくとも一部が前記シールドキャップと軸方向に対向するように形成され、
前記検出器カバーの内部において、前記信号線と前記動力線とは、前記突起部を挟んで形成された2つの空間部にそれぞれ収容されている、
電動機。
【請求項2】
前記検出器カバーが、軸方向一端が塞がれた略筒状体であり、
前記コネクタが前記検出器カバーの外周部に設けられている、
請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
前記検出器カバー及び前記シールドキャップが導電性の材料により形成されている、請求項1又は2に記載の電動機。
【請求項4】
前記突起部と前記シールドキャップとが、導電性弾性材を介して接触し
前記電動機がグラウンドに接続されることで、前記筐体と前記検出器カバーと前記シールドキャップとが前記グラウンドに接続される、
請求項に記載の電動機。
【請求項5】
前記突起部が、前記導電性弾性材が取り付けられる凹状の取付部を備えている、請求項4に記載の電動機。
【請求項6】
前記導電性弾性材が導電性バネである、請求項4又は5に記載の電動機。
【請求項7】
前記導電性弾性材が導電性スポンジである、請求項4又は5に記載の電動機。
【請求項8】
前記動力線の線径が、前記信号線の線径よりも大きく、
前記突起部と前記シールドキャップとの隙間が、前記信号線の線径よりも大きく、前記動力線の線径よりも小さい、請求項1~7のいずれか一項に記載の電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
検出器を備えた電動機においては、検出器による検出結果を基に回転駆動のフィードバック制御が行われる。斯かる電動機の内部には、検出器による検出結果を示す電気信号を電動機の制御装置へ送るための信号線と、制御装置から供給される電力を伝達するための動力線とが設けられている。
検出器を備える電動機が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6641533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
信号線には、動力線を流れる電流に比べて微小な電流が流れる。このことから、動力線を流れる電流に含まれるノイズが信号線を流れる電流に混入した場合、電動機の制御装置へ正確な電気信号を伝搬することが困難となる。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑み、電動機の組付け作業の簡素化を図りつつ、動力線から信号線へのノイズ混入を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電動機は、固定子と、出力軸及び前記出力軸に取り付けられた回転子と、前記固定子と前記回転子とを収容する筐体と、前記出力軸の回転を検出する検出器とを備える。前記筐体の軸方向端面に前記検出器が取り付けられ、前記検出器を収容するように前記軸方向端面にシールドキャップが設けられ、前記検出器及び前記シールドキャップを収容するように前記軸方向端面に検出器カバーが設けられ、前記検出器カバーに形成された開口部にコネクタが取り付けられる。前記出力軸を回転させるための電力を供給する動力線が、前記軸方向端面の外周縁部に形成された開口部と、前記検出器カバーに形成された開口部とを経て、前記コネクタに接続され、前記検出器から出力された電気信号が伝搬する信号線が、前記シールドキャップに形成された開口部と、前記検出器カバーに形成された開口部とを経て、前記コネクタに接続される。前記検出器カバーの裏面から突起した突起部が、前記検出器カバーに形成された開口部の端部から径方向に延びるとともに、前記突起部の少なくとも一部が前記シールドキャップと軸方向に対向するように形成される。前記検出器カバーの内部において、前記信号線と前記動力線とは、前記突起部を挟んで形成された2つの空間部にそれぞれ収容されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電動機の組付け作業の簡素化を図りつつ、動力線から信号線へのノイズ混入を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】検出器付きの電動機を示す断面図である。
図2】検出器カバー内の動力線及び信号線の配線状態を示す斜視図である。
図3】検出器カバーが外された状態の電動機を反負荷側から見た側面図である。
図4】検出器カバーの裏面を示す斜視図である。
図5】(a)は、検出器カバーが取り付けられた状態の電動機を反負荷側から見た側面図である。(b)は、図5(a)のA-A線断面図である。
図6】検出器カバーとシールドキャップとの隙間を示す説明図である。
図7】検出器及びブレーキ付きの電動機を示す断面図である。
図8】検出器カバー内の動力線、信号線及びブレーキ線の配線状態を示す斜視図である。
図9】検出器カバー内の動力線、信号線及びブレーキ線の配線状態に関する別の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態によって限定されるものではない。なお、図において、矢印A1の側が、電動機100に対して負荷が接続される側である負荷側であり、矢印A2の側が反負荷側である。
本明細書において、「略筒状」とは、内周面が円いか又は角張っており、外周面が内周面の形状にかかわらず円いか又は角張っている形状を指す。「略筒状」は、「略円筒状」と「略角筒状」とをもちろん含む。
【0010】
図1に付加部品付き電動機100を示す。付加部品付き電動機100は、一例としてステッピングモータであり、出力軸1が取り付けられた回転子2と、回転子2の周囲に設けられた固定子3とを備えている。
固定子3の負荷側及び反負荷側にはそれぞれ第1ブラケット4及び第2ブラケット5が取り付けられている。第1ブラケット4には第1ベアリング6が配置され、第2ブラケット5には第2ベアリング7が配置されている。第1ベアリング6及び第2ベアリング7はいずれも、出力軸1が回転自在となるよう出力軸1を支持している。
【0011】
付加部品付き電動機100においては、固定子3に電力が供給されることによって磁界が発生し、固定子3から発生する磁界と回転子2から発生する磁界との相互作用によって、回転子2及び出力軸1が回転する。出力軸1の回転力は、電動機100に接続された負荷へと伝達される。
【0012】
第2ブラケット5の反負荷側の端面には、付加部品として、電動機100の出力軸1の回転を検出する検出器8が取り付けられている。第2ブラケット5の反負荷側に取り付けられた検出器8は、導電性材料によるシールドキャップ10によって覆われている。
シールドキャップ10は、略筒状体であり、第2ブラケット5の反負荷側の端面に対して同シールドキャップの軸方向が出力軸1と略平行になるように取り付けられる。シールドキャップ10の反負荷側の端部は、閉塞部10bにより塞がれている。シールドキャップ10の負荷側に形成されている凹部に検出器8が収容される。
検出器8及びシールドキャップ10は、検出器カバー9により覆われている。検出器カバー9は、略筒状体であり、第2ブラケット5の反負荷側の端面に対して同検出器カバーの軸方向が出力軸1と略平行になるように取り付けられる。検出器カバー9の反負荷側の端部は、閉塞部91により塞がれている。検出器カバー9の負荷側に形成されている凹部に検出器8及びシールドキャップ10が収容される。
【0013】
検出器8は、ロータリー式のエンコーダであり、多回転の回転数が検出可能な多回転アブソリュートエンコーダであっても良い。また、電動機100は、検出器8の角度検出結果が入力される制御装置により脱調を検出した際に修正を試みるようになっている。
【0014】
検出器8は、回転による機械的な変位量を電気信号に変換して、電気信号の処理によって回転位置を検出するロータリー式のエンコーダである。検出器8は、出力軸1に取り付けられた永久磁石の回転による磁界の変化を磁気センサで検出し、得られた電気信号を基に出力軸1の回転位置を検出する磁気式のエンコーダである。さらには、出力軸1に取り付けられた歯車による歯車減速機構による各歯車に取り付けられた各磁石と各磁気センサで検出して得られた各々の電気信号を演算することで多回転の回転量を検出できる磁気式の多回転アブソリュートエンコーダである。検出器8は、出力軸1に取り付けられたディスクを透過またはディスクにて反射した光を検出して、検出された光のパターンを基に出力軸1の回転位置を検出する光学式のエンコーダであっても良い。
【0015】
第1ブラケット4と、固定子3と、第2ブラケット5と、検出器カバー9とは、付加部品付き電動機100の外殻を構成している。
【0016】
図2に、検出器カバー9内の動力線13と信号線14の配線状態を示す。検出器カバー9内の配線状態を示すため、検出器カバー9を半透明状部材として示す。また、図3に、検出器カバー9が外された状態で、付加部品付き電動機100を反負荷側から見た様子を示す。電動機100は、回転子2の回転駆動のための電力を固定子3に供給する動力線13と、検出器8から出力された電気信号が伝搬する信号線14とを有する。
【0017】
検出器カバー9の外周面にはコネクタ12が設けられている。一端が固定子3に接続された動力線13は、第2ブラケット5の反負荷側端面の外周縁部に形成された開口部5aを通り、他端がコネクタ12に接続されている。一端が検出器8に接続された信号線14は、シールドキャップ10の外周部に形成された開口部10cを通り、他端がコネクタ12に接続される。第2ブラケット5の開口部5aと、シールドキャップ10の開口部10cとは、出力軸1の中心線1aを挟んで向かい合うように位置している。
詳細は後述するが、検出器カバー9の閉塞部91の裏面に形成された突起部により、動力線13は、信号線14側の方に入り込まないようになっている。
【0018】
検出器カバー9に収容される検出器8は、前述のとおり、シールドキャップ10により覆われている。検出器カバー9及びシールドキャップ10はいずれも導電性材料で形成されている。検出器カバー9は金属材料の一つであるアルミニウムが使用され、シールドキャップ10は冷間圧延鋼板にニッケルメッキを施したものが使用される。
【0019】
図示は省略するが、コネクタ12の内部には、電動機の径方向に延びる端子列が2列設けられ、一方が負荷側、他方が反負荷側に位置している。
詳細は後述するが、動力線13が反負荷側の端子列に接続され、信号線14が負荷側の端子列に接続されて、動力線13と信号線14とが離れて位置するようになっている。動力線13を流れる電流に含まれるノイズの一つは、電動機100の制御装置(不図示)に設けられているインバータの駆動に起因するスイッチングノイズである。
【0020】
一端が固定子3に接続された動力線13の他端は、コネクタ12内の端子を介して付加部品付き電動機100の外部にあるケーブル16内の外部動力線の一端に接続される。外部動力線の他端は、付加部品付き電動機100の制御装置に接続される。これにより、固定子3は付加部品付き電動機100の制御装置から電力の供給を受けることができる。
一端が検出器8に接続された信号線14の他端は、コネクタ12内の端子を介して付加部品付き電動機100の外部にあるケーブル16内の外部信号線の一端に接続される。外部信号線の他端は、付加部品付き電動機100の制御装置に接続される。これにより、検出器8から出力された電気信号は、電動機100の制御装置に送られる。
このように、外部動力線と外部信号線とは、1本のケーブル16内にまとめられている。
【0021】
図4に示すように、検出器カバー9の外周部には開口部9aが形成されている。
付加部品付き電動機100の組付けにおいては、まず、開口部9aを通して検出器カバー9の内側から外側へと動力線13及び信号線14が引き出された状態で、コネクタ12内の端子に動力線13及び信号線14の端部が接続される。その後、コネクタ12が開口部9aに取り付けられる。
作業性を考慮すると、動力線13及び信号線14には、開口部9aを通して検出器カバー9の内側から外側へと引き出すための余剰の長さが必要になる。コネクタ12が開口部9aに取り付けられる際に、動力線13及び信号線14の余剰長さ分は、検出器カバー9内に収められる。
【0022】
図4及び図5に示すように、検出器カバー9の閉塞部91の裏面から突起した突起部11が、開口部9aの端部9bから閉塞部91の略中央部へと略径方向に延びるように設けられている。
突起部11は、開口部9aの端部9bに接続された第1段部11aと、第1段部11aに接続された段差部11a1と、段差部11a1に接続された第2段部11bと、第2段部11bに接続された凹状の取付部11cとを備えている。
第2段部11bは、第1段部11aに比べて、閉塞部91の裏面からの突出量が小さい。
第1段部11aと第2段部11bと段差部11a1とは、検出器カバー9に収容されるシールドキャップ10の外周部10a及び閉塞部10bと干渉しないように形成されている。
【0023】
取付部11cには、検出器カバー9とシールドキャップ10との導通を確保するための導電性弾性材として、円錐状の導電性コイルバネ15が取り付けられる。検出器カバー9を第2ブラケット5に組み付ける際に、シールドキャップ10の閉塞部10bと導電性コイルバネ15とを接触させることで、検出器カバー9とシールドキャップ10との導通が確保される。
【0024】
導電性弾性材として、導電性コイルバネ15に代えて、導電性スポンジを用いても良い。導電性スポンジを用いる場合は、シールドキャップ10の閉塞部10bと検出器カバー9とに対して接触させるほか、シールドキャップ10の外周部10aと検出器カバー9と第2ブラケット5とに対しても接触させることができる。
【0025】
付加部品付き電動機100の外殻を構成する第1ブラケット(フランジ)4と、固定子3と、第2ブラケット5と、検出器カバー9とは、インロー嵌め合いと導電性のネジの締結により導通が確保されている。
付加部品付き電動機100を、外部機器(不図示)に取り付ける際にグラウンドに接続することにより、検出器カバー9及びシールドキャップ10もグラウンドに接続されることになる。
【0026】
第2ブラケット5に取り付けられた検出器8がシールドキャップ10により覆われることで、検出器8はシールドキャップ10の外部から電気的及び磁気的に遮断される。
また、検出器カバー9内に検出器8及びシールドキャップ10が収容された状態において、検出器カバー9とシールドキャップ10及び第2ブラケット5との間には、突起部11を挟んで2つの空間部9A及び9Bが作られている。両空間部は互いに離れて位置している。空間部9Aに開口部5aが位置し、空間部9Bに開口部10cが位置している。
【0027】
図6に示すように、検出器カバー9における突起部11の段差部11a1及び第2段部11bはそれぞれ、シールドキャップ10の外周部10a及び閉塞部10bに隣接している。符号gは、第2段部11bと閉塞部10bとの隙間を示す。動力線13の線径は、信号線14の線径よりも大きい。隙間gは、信号線14の線径よりも大きく、動力線13の線径よりも小さい。一例として、動力線がAWG22(線径1.37mm)であり、信号線がAWG26(線径1.06mm)である場合、隙間gは1.1mmである。
【0028】
シールドキャップ10の開口部10cから引き出された信号線14は、検出器カバー9の突起部11とシールドキャップ10との隙間gを通り、コネクタ12の負荷側の端子列に接続される。また、一端が固定子3に接続された動力線13は、シールドキャップ10の開口部10cと出力軸1の中心線1aを挟んで径方向に向かい合うように位置する第2ブラケット5の開口部5aから引き出され、コネクタ12の反負荷側の端子列に接続される。
【0029】
前述のとおり、組付けの際、動力線13と信号線14とが検出器カバー9の開口部9aから外部へと余剰長さ分が引き出された状態でコネクタ12の端子に接続されたのち、コネクタ12が検出器カバー9に取り付けられる。
コネクタ12が検出器カバー9に取り付けられると、動力線13及び信号線14の余剰長さ分がそれぞれ、検出器カバー9の内部の、2つの空間部9A及び9Bに配設される。隙間gにより、動力線13が空間部9Bに入り込まないようになっている。これにより、検出器の基盤に触れないように離している動力線13から信号線14内の電気信号に対するノイズの混入が抑制される。さらに、検出器8が磁気式エンコーダである場合の、永久磁石による磁界への磁気的影響や磁気センサの電気信号へのノイズ混入が抑制される。
【0030】
このように、動力線13から検出器8に対するノイズの影響を抑制することができる。
また、動力線13と外部動力線との接続と、信号線14と外部信号線との接続とを、1つのコネクタ12にてまとめて行うことができる。そのため、付加部品付き電動機100と外部の制御装置との接続作業を簡易化することができる。
さらに、外部動力線と外部信号線とを一本のケーブルにまとめることができる。
【0031】
[他の実施形態]
図7に、本実施形態に係る付加部品付き電動機101を示す。付加部品付き電動機101は、第1の付加部品として検出器8が付加された電動機100に、第2の付加部品として、出力軸1の回転を制動するブレーキ20が付加されたものである。付加部品付き電動機100と同じ要素には同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0032】
ブレーキ20は、第2ブラケット5の反負荷側端面に設けられている。第2ブラケット5の反負荷側端面には、ブレーキ20を覆うようにブレーキカバー23が取り付けられる。
ブレーキカバー23は、略筒状体であり、第2ブラケット5の反負荷側の端面に対して同ブレーキカバーの軸方向が出力軸1と略平行になるように取り付けられる。ブレーキカバー23の反負荷側の端部は、閉塞部23aにより塞がれている。ブレーキカバー23の負荷側に形成されている凹部にブレーキ20が収容される。ブレーキカバー23の閉塞部23aの反負荷側に、検出器8とシールドキャップ10と検出器カバー9とが設けられる。
【0033】
第1ブラケット4と、固定子3と、第2ブラケット5と、ブレーキカバー23と、検出器カバー9とが、付加部品付き電動機101の外殻を構成する。インロー嵌め合いと導電性のネジの締結により、外殻の導電性が確保されている。
【0034】
図8に、検出器カバー9内の、動力線13と信号線14とブレーキ線21との配線状態を示す。図2と同様、検出器カバー9内の配線状態を示すため、検出器カバー9を半透明状部材として示す。
【0035】
ブレーキ20は、図示しない制御装置からの電気信号を基に、出力軸1の制動及び制動解除を行う。ブレーキ線21は、ブレーキ20の制動と制動解除の電気信号を伝搬する。
【0036】
ブレーキ線21は、一端がブレーキ20に接続され、他端はコネクタ12内の端子に接続されている。ブレーキ線21は、動力線13及び信号線14と同様に、余剰長さ分を有している。図8に示しているように、ブレーキカバー23の閉塞部23aに形成された開口部23bは、空間部9Aに位置している。また、シールドキャップ10の開口部10cは空間部9Bに位置している。開口部10cと開口部23bは、出力軸1の中心線を挟んで向かい合うように位置している。
動力線13及びブレーキ線21は、開口部23bと空間部9Aとを経て、コネクタ12に接続されている。動力線13及びブレーキ線21はそれぞれ、コネクタ12を介して、ケーブル22内の外部動力線及び外部ブレーキ線に接続されている。
一端が検出器8に接続された信号線14は、開口部10c及び空間部9Bを経てコネクタ12に接続されている。信号線14はコネクタ12を介して、ケーブル22内の外部信号線に接続されている。
【0037】
ブレーキ線21には、制動を指示する電気信号及び制動解除を指示する電気信号のみが流れる。動力線13からブレーキ線21へのノイズ混入による悪影響は、動力線13から信号線14へのノイズ混入による悪影響に比べて小さい。この点を踏まえ、図8に示した実施形態においては、動力線13及びブレーキ線21はいずれも、開口部23bと空間部9Aとを経て、コネクタ12に接続されている。
【0038】
ブレーキ線21を流れる電気信号の電流が動力線13を流れる電流に比べて小さく、信号線14に対してブレーキ線21が近接していても、ブレーキ線21から信号線14を伝搬する電気信号への悪影響が少ない場合もある。この場合は、図9に示すように、ブレーキ線21はブレーキカバー23の閉塞部23aに形成された開口部23c及び空間部9Bを経てコネクタ12に接続され、信号線14は開口部10c及び空間部9Bを経てコネクタ12に接続されていてもよい。開口部23cは、コネクタ12を通って出力軸1の軸方向と直交する線を基準として、開口部23bと略対称となるように形成されている。
【0039】
ブレーキ線21を流れる電気信号に対する動力線13からの影響の度合いと、ブレーキ線21を流れる電気信号からの信号線14への影響の度合いは、ブレーキ20の電源によって変わる。つまり、様々な条件に応じて、ブレーキ線21を空間部9A及び9Bのいずれかに収めることができる。
【0040】
これにより、付加部品付き電動機101においては、動力線13と外部動力線との接続と、信号線14と外部信号線との接続と、ブレーキ線21と外部ブレーキ線との接続とを、単一のコネクタ12にてまとめて行うことができる。また、外部動力線と外部信号線と外部ブレーキ線とは、1本のケーブル22に一体化されている。そのため、付加部品付き電動機101と外部の制御装置との接続作業を簡易にすることができる。
【0041】
このように、動力線13から検出器8及び信号線14に対するノイズの影響を抑制することができる。
また、動力線13と外部動力線の接続と、信号線14と外部信号線との接続と、ブレーキ線21と外部ブレーキ線の接続とを、1つのコネクタ12にてまとめて行うことができる。そのため、付加部品付き電動機101の外部の制御装置との接続のための作業を簡易化することができる。
さらに、外部動力線と外部信号線と外部ブレーキ線とを一本のケーブルにまとめることができる。
【0042】
第1ブラケット及び第2ブラケットを、固定子及び回転子を収容する筐体に置き換えることもできる。
【0043】
これまでに説明した実施形態に関し、以下の付記を開示する。
[付記1]
固定子と、
出力軸及び前記出力軸に取り付けられた回転子と、
前記固定子と前記回転子とを収容する筐体と、
前記出力軸の回転を検出する検出器と
を備える電動機であって、
前記筐体の軸方向端面に前記検出器が取り付けられ、
前記検出器を収容するように前記軸方向端面にシールドキャップが設けられ、
前記検出器及び前記シールドキャップを収容するように前記軸方向端面に検出器カバーが設けられ、
前記検出器カバーに形成された開口部にコネクタが取り付けられ、
前記出力軸を回転させるための電力を供給する動力線が、前記軸方向端面の外周縁部に形成された開口部と、前記検出器カバーに形成された開口部とを経て、前記コネクタに接続され、
前記検出器から出力された電気信号が伝搬する信号線が、前記シールドキャップに形成された開口部と、前記検出器カバーに形成された開口部とを経て、前記コネクタに接続され、
前記検出器カバーの裏面から突起した突起部が径方向に延びるように形成され、
前記検出器カバーの内部において、前記信号線と前記動力線とは、前記突起部を挟んで形成された2つの空間部にそれぞれ収容されている、
電動機。
[付記2]
前記検出器カバーが、軸方向一端が塞がれた略筒状体であり、
前記コネクタが前記検出器カバーの外周部に設けられている、
付記1に記載の電動機。
[付記3]
前記突起部が、前記検出器カバーに形成された開口部の端部から径方向に延びるように設けられている、付記1又は2に記載の電動機。
[付記4]
前記検出器カバー及び前記シールドキャップが導電性の材料により形成されている、付記1~3のいずれか一項に記載の電動機。
[付記5]
前記突起部と前記シールドキャップとが、導電性弾性材を介して接触している、付記1~4のいずれか一項に記載の電動機。
[付記6]
前記導電性弾性材が導電性バネである、付記5に記載の電動機。
[付記7]
前記導電性弾性材が導電性スポンジである、付記5に記載の電動機。
[付記8]
前記動力線の線径が、前記信号線の線径よりも大きく、
前記突起部と前記シールドキャップとの隙間が、前記信号線の線径よりも大きく、前記動力線の線径よりも小さい、付記1~7のいずれか一項に記載の電動機。
【0044】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
100,101 付加部品付き電動機
1 出力軸
2 回転子
3 固定子
4,5 ブラケット
6,7 ベアリング
8 検出器
9 検出器カバー
9A,9B 空間部
10 シールドキャップ
11 突起部
12 コネクタ
13 動力線
14 信号線
15 導電性コイルバネ
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図9