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特許7447059ネットワーク装置およびネットワークシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】ネットワーク装置およびネットワークシステム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/073 20130101AFI20240304BHJP
   H04L 41/06 20220101ALI20240304BHJP
【FI】
H04B10/073
H04L41/06
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021121369
(22)【出願日】2021-07-26
(65)【公開番号】P2023017248
(43)【公開日】2023-02-07
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】517121630
【氏名又は名称】APRESIA Systems株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝淵 憲司
(72)【発明者】
【氏名】藤生 大佑
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-087291(JP,A)
【文献】特開2007-102637(JP,A)
【文献】特開2015-012346(JP,A)
【文献】国際公開第2012/114526(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0304823(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00-10/90
H04J 14/00-14/08
H04L 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光トランシーバが装着される複数のポートと、
第1のロードスイッチおよびコントローラを含む非常用回路と、
バックアップ電源を生成する電池と、
を有し、
前記第1のロードスイッチは、停電が発生した際に前記複数のポートと前記コントローラとに前記電池からの前記バックアップ電源を供給し、
前記コントローラは、前記停電が発生した後、前記複数のポートを、互いに重複しないように定めたアクティブ期間でそれぞれ活性化し、活性化されたポートから保守信号が送信されるように制御する、
ネットワーク装置。
【請求項2】
請求項1記載のネットワーク装置において、
前記コントローラは、前記活性化されたポートへ、前記保守信号として、前記光トランシーバへの変調信号を出力する、
ネットワーク装置。
【請求項3】
請求項1記載のネットワーク装置において、
前記コントローラは、隣り合う前記アクティブ期間の間に第1のウエイト期間を設ける、
ネットワーク装置。
【請求項4】
請求項1記載のネットワーク装置において、
前記コントローラは、前記停電が発生している期間で、前記複数のポートを前記アクティブ期間でそれぞれ活性化したのち、第2のウエイト期間を経て、再度、前記複数のポートを前記アクティブ期間でそれぞれ活性化するという処理を繰り返す、
ネットワーク装置。
【請求項5】
請求項1記載のネットワーク装置において、
前記非常用回路は、前記バックアップ電源と前記複数のポートとの間の電源経路上にそれぞれ設けられる複数の第2のロードスイッチを備え、
前記コントローラは、前記複数の第2のロードスイッチを制御することで、前記アクティブ期間を定める、
ネットワーク装置。
【請求項6】
請求項1記載のネットワーク装置において、
前記非常用回路は、前記電池の電圧値を、前記複数のポートで必要とされる電圧値に変換するDCDCコンバータを備える、
ネットワーク装置。
【請求項7】
請求項1記載のネットワーク装置において、
送信対象のMAC(Medium Access Control)フレームに対して、物理層で必要とされる各種処理を行う物理層処理回路を有し、
前記非常用回路は、前記物理層処理回路から前記複数のポートへの信号経路上に挿入され、前記コントローラの出力を前記活性化されたポートの信号経路に結合する結合回路を有する、
ネットワーク装置。
【請求項8】
下位ネットワークに収容されるネットワーク装置と、
上位ネットワークに収容される対向装置と、
前記ネットワーク装置と前記対向装置とを接続する複数本の光ファイバと、
を有するネットワークシステムであって、
前記ネットワーク装置は、
光トランシーバが装着され、前記光トランシーバを介して前記複数本の光ファイバに接続される複数のポートと、
第1のロードスイッチおよびコントローラを含む非常用回路と、
バックアップ電源を生成する電池と、
を有し、
前記第1のロードスイッチは、停電が発生した際に前記複数のポートと前記コントローラとに前記電池からの前記バックアップ電源を供給し、
前記コントローラは、前記停電が発生した後、前記複数のポートを、互いに重複しないように定めたアクティブ期間でそれぞれ活性化し、活性化されたポートから保守信号が送信されるように制御する、
ネットワークシステム。
【請求項9】
請求項8記載のネットワークシステムにおいて、
前記コントローラは、前記活性化されたポートへ、前記保守信号として、前記光トランシーバへの変調信号を出力する、
ネットワークシステム。
【請求項10】
請求項8記載のネットワークシステムにおいて、
前記コントローラは、隣り合う前記アクティブ期間の間に第1のウエイト期間を設ける、
ネットワークシステム。
【請求項11】
請求項8記載のネットワークシステムにおいて、
前記コントローラは、前記停電が発生している期間で、前記複数のポートを前記アクティブ期間でそれぞれ活性化したのち、第2のウエイト期間を経て、再度、前記複数のポートを前記アクティブ期間でそれぞれ活性化するという処理を繰り返す、
ネットワークシステム。
【請求項12】
請求項8記載のネットワークシステムにおいて、
前記非常用回路は、前記バックアップ電源と前記複数のポートとの間の電源経路上にそれぞれ設けられる複数の第2のロードスイッチを備え、
前記コントローラは、前記複数の第2のロードスイッチを制御することで、前記アクティブ期間を定める、
ネットワークシステム。
【請求項13】
請求項8記載のネットワークシステムにおいて、
前記非常用回路は、前記電池の電圧値を、前記複数のポートで必要とされる電圧値に変換するDCDCコンバータを備える、
ネットワークシステム。
【請求項14】
請求項8記載のネットワークシステムにおいて、
前記ネットワーク装置は、送信対象のMAC(Medium Access Control)フレームに対して、物理層で必要とされる各種処理を行う物理層処理回路を有し、
前記非常用回路は、前記物理層処理回路から前記複数のポートへの信号経路上に挿入され、前記コントローラの出力を前記活性化されたポートの信号経路に結合する結合回路を有する、
ネットワークシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク装置およびネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フレームを用いずにメディアコンバータの電源断を通知する方法が示される。具体的には、メディアコンバータは、電源断の発生時に、相手側装置へ予め定められたビット列を繰り返し送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-298609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、基地局および収容局を含むデータ通信網のネットワークシステムでは、台風等の自然災害により、基地局内のネットワーク装置等に甚大な被害が発生することがある。特に、停電や回線障害等の被害が発生することが多く、停電が数日以上続く場合もある。ここで、例えば、基地局内のネットワーク装置に停電が発生した場合、当該ネットワーク装置は、様々な方式を用いて、収容局内のネットワーク装置へ停電が発生したことを通知することができる。そして、収容局内のネットワーク装置は、当該通知に基づいて、基地局内のネットワーク装置に停電が発生したことを把握することができる。
【0005】
ただし、例えば、停電の通知が行われた後に、風害や倒木等の自然災害によって、回線、具体的には光ファイバに断線が発生することがある。このような状況で光ファイバの断線が発生すると、収容局内のネットワーク装置は、基地局内のネットワーク装置が停電状態であるため、光ファイバの断線有無を含めて光ファイバの状況を把握することが困難となり得る。その結果、障害復旧に時間を要するおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明の目的の一つは、停電状態で回線の状況を把握することが可能なネットワーク装置およびネットワークシステムを提供することにある。
【0007】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的な実施の形態の概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0009】
一実施の形態によるネットワーク装置は、光トランシーバが装着される複数のポートと、第1のロードスイッチおよびコントローラを含む非常用回路と、バックアップ電源を生成する電池と、を有する。第1のロードスイッチは、停電が発生した際に複数のポートとコントローラとに電池からのバックアップ電源を供給する。コントローラは、停電が発生した後、複数のポートを、互いに重複しないように定めたアクティブ期間でそれぞれ活性化し、活性化されたポートから保守信号が送信されるように制御する。
【発明の効果】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的な実施の形態によって得られる効果を簡単に説明すると、停電状態で回線の状況を把握することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施の形態によるネットワークシステムの構成例を示す概略図である。
図2図1における光トランシーバの構成例を示す概略図である。
図3図1において、下位ネットワーク内のネットワーク装置の本発明に関する主要部の構成例を示す概略図である。
図4図3におけるコントローラの概略的な動作例を示すタイミングチャートである。
図5図1のネットワークシステムにおける本発明に関する主要部の動作例を示すシーケンス図である。
図6図3におけるDCDCコンバータ周りの詳細な構成例を示す図である。
図7図3におけるDCDCコンバータ周りの、図6とは異なる詳細な構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0013】
<ネットワークシステムの概略>
図1は、一実施の形態によるネットワークシステムの構成例を示す概略図である。図1に示すネットワークシステムは、例えば、データ通信網の収容局等である上位ネットワーク10と、基地局等である下位ネットワーク20とを有する。上位ネットワーク10には、ネットワーク装置11が収容される。下位ネットワーク20には、ネットワーク装置21が収容される。
【0014】
上位ネットワーク10内のネットワーク装置11、および下位ネットワーク20内のネットワーク装置21は、例えば、レイヤ2(L2)スイッチ装置、レイヤ3(L3)スイッチ装置等である。ネットワーク装置11とネットワーク装置21とは、複数本の回線、具体的には光ファイバ15[1]~15[n]を介して接続される。明細書では、複数本の光ファイバ15[1]~15[n]を総称して、光ファイバ15と呼ぶ。
【0015】
下位ネットワーク20内のネットワーク装置21は、例えば、SFP(Small Form factor Pluggable)ポートや、SFP+ポート等を代表とする光通信用の複数のポートPを備える。複数のポートPには、適宜、光トランシーバTRが装着される。光トランシーバTRは、光ファイバ15に接続される光コネクタCNoと、ポートPに接続される図示しない電気コネクタとを備える。光コネクタCNoは、例えば、LCコネクタ等である。
【0016】
上位ネットワーク10内のネットワーク装置11も、例えば、下位ネットワーク20内のネットワーク装置21と同様の構成を備える。これにより、ネットワーク装置11の複数のポートPとネットワーク装置21の複数のポートPとは、光トランシーバTRおよび光ファイバ15[1]~15[n]を介して光通信を行うことができる。なお、上位ネットワーク10は、複数台のネットワーク装置11を有してもよく、下位ネットワーク20も、複数台のネットワーク装置21を有してもよい。
【0017】
ここで、図1において、例えば、下位ネットワーク20内のネットワーク装置21に、自然災害等によって停電が発生し、その後、光ファイバ15[1]~15[n]のいずれかに、断線が発生した場合を想定する。この場合、ネットワーク装置21は、例えば、停電直後の残存電力を用いて、停電通知を表す保守フレーム等を単数または複数のポートPから送信することができる。そして、上位ネットワーク10内のネットワーク装置11は、この保守フレーム等に基づいて、ネットワーク装置21における停電の発生を把握することができる。
【0018】
しかしながら、上位ネットワーク10内のネットワーク装置11は、通常、下位ネットワーク20内のネットワーク装置21が停電している状態では、その後に発生した光ファイバ15[1]~15[n]の断線を把握することは困難となり得る。この場合、例えば、停電状態が解消した後に、光ファイバ15[1]~15[n]の断線が判明することになり得るため、障害復旧に時間を要するおそれがある。そこで、後述する実施の形態の方式を用いることが有益となる。
【0019】
<光トランシーバの詳細>
図2は、図1における光トランシーバの構成例を示す概略図である。図2に示す光トランシーバTRは、電気信号の処理を電気コネクタCNeと、アナログフロントエンド(AFE)回路42と、光信号の処理を行う光サブアセンブリ(OSA)43と、光コネクタCNoと、コントローラ44と、を備える。図1で述べたように、光コネクタCNoは、光ファイバ15に接続されるLCコネクタ等である。
【0020】
また、図1で述べたように、電気コネクタCNeは、ネットワーク装置11,21のポートP、例えばSFP+ポート等に接続される。電気コネクタCNeには、電源Vccの給電端子が含まれている。電源Vccの電圧値は、例えば、3.3V等である。光トランシーバTRは、この電気コネクタCNeから供給される電源Vccを用いて動作する。
【0021】
コントローラ44は、光トランシーバTR全体の制御を担う。光サブアセンブリ(OSA)43は、レーザダイオードLDと、フォトダイオードPDとを備える。レーザダイオードLDは、電気コネクタCNe側からの電気信号を光信号に変換し、光コネクタCNoを介して外部へ送信する。フォトダイオードPDは、光コネクタCNoを介して外部から受信した光信号を電気信号に変換し、電気コネクタCNe側へ送信する。
【0022】
アナログフロントエンド(AFE)回路42は、ドライバ50と、プリアンプ/ポストアンプ51とを備える。ドライバ50は、電気コネクタCNeからの電気信号、言い換えれば変調信号を、レーザダイオードLDが駆動できる変調電流に変換する。プリアンプ/ポストアンプ51は、フォトダイオードPDからの電気信号を増幅して電気コネクタCNeへ送信する。
【0023】
図2において、アナログフロントエンド(AFE)回路42のドライバ50とプリアンプ/ポストアンプ51は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等で構成される。コントローラ44は、プロセッサを含むマイクロコントローラや、または、ASICまたはFPGA等で構成される。
【0024】
<ネットワーク装置の詳細>
図3は、図1において、下位ネットワーク内のネットワーク装置の本発明に関する主要部の構成例を示す概略図である。図4は、図3におけるコントローラの概略的な動作例を示すタイミングチャートである。図3に示すネットワーク装置21は、例えばSFP+ポート等の複数のポートP[1]~P[n]と、物理層(PHY層)処理回路25と、停電検出回路26とに加えて、非常用回路27を備える。複数のポートP[1]~P[n]には、図2に示したような光トランシーバTRが装着される。
【0025】
物理層処理回路25は、この例では、送信用の処理回路となっている。物理層処理回路25は、送信対象のMAC(Medium Access Control)フレームに対して、物理層(PHY層)で必要とされる各種処理を行う。物理層で必要とされる処理として、例えば、符号化や、SerDes、すなわちパラレル/シリアル変換等が挙げられる。物理層処理回路25は、例えば、FPGAやASIC等によって構成される。
【0026】
物理層処理回路25は、物理層で必要とされる処理を行った後、ポートP[1]からMACフレームを送信する際には、ポートP[1]に向けて当該MACフレームの電気信号ES[1]を送信する。同様に、物理層処理回路25は、ポートP[n]からMACフレームを送信する際には、ポートP[n]に向けて当該MACフレームの電気信号ES[n]を送信する。電気信号ES[1]~ES[n]は、図2に示した光トランシーバTRによって光信号に変換され、光ファイバ15を介して対向装置、すなわち、図1における上位ネットワーク10内のネットワーク装置11へ送信される。
【0027】
なお、図示は省略されるが、ネットワーク装置21は、詳細には、ポートPで受信したMACフレームの電気信号に対して、復号化やシリアル/パラレル変換といった物理層で必要とされる処理を行う受信用の物理層処理回路も備える。さらに、ネットワーク装置21は、その種類に応じて、物理層よりも上位層での処理を担う各種処理回路も備える。例えば、ネットワーク装置21がL2スイッチ装置である場合、物理層処理回路25の前段に、MACフレームの中継処理や生成処理等を担うMAC層処理回路等が設けられる。
【0028】
停電検出回路26は、主電源Vddを監視し、主電源Vddの異常な遮断、すなわち停電を検出した場合に停電検出信号PWDを出力する。主電源Vddは、装置の外部から供給される電源である。ネットワーク装置21は、通常の状態では、主電源Vddを用いて動作する。
【0029】
非常用回路27は、電池30と、電源切替回路31と、第1のロードスイッチSWaと、DCDCコンバータ32と、コントローラ33と、複数の結合回路34[1]~34[n]と、複数の第2のロードスイッチSWb[1]~SWb[n]と、を備える。電池30は、バックアップ電源Vbatを生成する。電池30は、例えば、リチウム金属電池等の一次電池や、リチウムイオン電池等の二次電池であってよい。電池30が二次電池の場合には、主電源Vddから電池30に充電を行う図示しない充電制御回路等が設けられる。
【0030】
第1のロードスイッチSWaは、停電が発生した際に、複数のポートP[1]~P[n]とコントローラ33とに電池30からのバックアップ電源Vbatを供給する。第1のロードスイッチSWaは、バックアップ電源Vbatを、この例では、DCDCコンバータ32を介して、複数のポートP[1]~P[n]、ひいては光トランシーバTRと、コントローラ33とに供給する。
【0031】
電源切替回路31は、停電検出回路26からの停電検出信号PWDに基づいて、第1のロードスイッチSWaを、スイッチ制御信号SONaで制御する。具体的には、電源切替回路31は、停電が発生していない期間では、第1のロードスイッチSWaをオフに制御し、停電が発生している期間では、第1のロードスイッチSWaをオンに制御する。
【0032】
DCDCコンバータ32は、電池30からのバックアップ電源Vbatの電圧値を、複数のポートP[1]~P[n]、ひいては光トランシーバTRで必要とされる3.3V等の電圧値に変換する。そして、DCDCコンバータ32は、当該電圧変換したバックアップ電源Vbatを複数のポートP[1]~P[n]に供給し、さらに、コントローラ33にも供給する。これにより、光トランシーバTRおよびコントローラ33は、安定した電源電圧で動作することが可能になる。
【0033】
複数の第2のロードスイッチSWb[1]~SWb[n]は、バックアップ電源Vbat、詳細にはDCDCコンバータ32からのバックアップ電源Vbatと、複数のポートP[1]~P[n]との間の電源経路上にそれぞれ設けられる。複数の結合回路34[1]~34[n]は、物理層処理回路25から複数のポートP[1]~P[n]への信号経路上にそれぞれ挿入される。明細書では、複数の結合回路34[1]~34[n]を総称して結合回路34と呼ぶ。
【0034】
コントローラ33は、例えば、プロセッサやタイマ等を含むマイクロコントローラや、FPGAや、ASIC等によって構成される。コントローラ33は、概略的には、停電が発生した後、複数のポートP[1]~P[n]を、互いに重複しないように定めたアクティブ期間(Taと呼ぶ)でそれぞれ活性化する。そして、コントローラ33は、活性化されたポートPから保守信号(SDと呼ぶ)が送信されるように制御する。具体的には、コントローラ33は、例えば、プロセッサを用いたプログラム処理等によって、図4に示されるようなシーケンス制御を行う。
【0035】
図4の例では、コントローラ33は、複数のポートP[1]~P[n]のアクティブ期間Ta[1]~Ta[n]を、隣り合うアクティブ期間Taの間に第1のウエイト期間TwAを設けながら、順次定める。詳細には、コントローラ33は、複数の第2のロードスイッチSWb[1]~SWb[n]を、互いに重複しないオン期間を有するスイッチ制御信号SONb[1]~SONb[n]でそれぞれ制御する。これにより、コントローラ33は、互いに重複しないアクティブ期間Ta[1]~Ta[n]を定める。
【0036】
また、コントローラ33は、複数のポートP[1]~P[n]における送信動作の有効/無効を、送信イネーブル信号TXEN[1]~TXEN[n]でそれぞれ制御する。詳細には、コントローラ33は、例えば、スイッチ制御信号SONb[1]のオン期間で、送信イネーブル信号TXEN[1]を有効状態に制御し、同様に、スイッチ制御信号SONb[n]のオン期間で、送信イネーブル信号TXEN[n]を有効状態に制御する。なお、コントローラ33は、各期間の長さを、タイマによって任意に設定できる。
【0037】
さらに、コントローラ33は、活性化されたポートP、すなわちアクティブ期間TaのポートPから対向装置へ保守信号を送信させるため、活性化されたポートPへ、当該保守信号SDを出力する。図3および図4の例では、コントローラ33は、ポートP[1]へ保守信号SD[1]を出力し、同様に、ポートP[n]へ保守信号SD[n]を出力する。なお、保守信号SDは、より詳細には、結合回路34を介してポートPへ送信される。
【0038】
保守信号SDは、対向装置、すなわち図1のネットワーク装置11およびその光トランシーバTRにおける信号検出、例えば光トランシーバTRの“SD(Signal Detect)”仕様、“LOS(Loss of Signal)”仕様に基づいて定められる。つまり、これらが断線検出の仕様となる。保守信号SDは、通常、所定の周波数を持った信号、若しくは所定のビットレートで“1”/“0”が変化するパルス信号である場合が多い。この場合、保守信号SDは、このパルス信号に対応する光トランシーバTRへの変調信号となる。ただし、保守信号SDは、対向装置の仕様によっては、光トランシーバTRに、変調信号の無い、一定の強度の光信号を送信させる信号であっても良い。
【0039】
図3において、結合回路34は、前述したように、物理層処理回路25から複数のポートP[1]~P[n]への信号経路上に挿入される。そして、結合回路34は、コントローラ33の出力を、活性化されたポートPの信号経路に結合する。これにより、結合回路34[1]は、物理層処理回路25からの電気信号ES[1]またはコントローラ33からの保守信号SD[1]を、電気信号ED[1]としてポートP[1]へ出力する。同様に、結合回路34[n]は、物理層処理回路25からの電気信号ES[n]またはコントローラ33からの保守信号SD[n]を、電気信号ED[n]としてポートP[n]へ出力する。
【0040】
結合回路34[1]は、例えば、通常時に電気信号ED[1]を劣化させないように、保守信号SD[1]の信号経路に、低容量ダイオードを付けること等で構成され得る。具体的には、結合回路34[1]は、例えば、保守信号SD[1]の信号経路上に、コントローラ33の出力側をアノードとして挿入されるPINダイオード等によって構成され得る。結合回路34[n]に関しても同様である。
【0041】
このような構成において、仮に、複数のポートP[1]~P[n]から対向装置へ同時に保守信号SDを送信するような場合を想定する。この場合、電池30によるバックアップ電源Vbatでは、特に、光トランシーバTRで必要とされる消費電力、すなわち、電圧値および電流値を十分に確保できないおそれがある。そこで、図4に示したように、互いに重複しないアクティブ期間Ta[1]~Ta[n]を設けることで、消費電力を分散することが有益となる。その結果、特に光トランシーバTRの動作を保証することができ、光信号の品質を十分に確保することが可能になる。
【0042】
なお、図3の例では、アクティブ期間Ta[1]~Ta[n]は、スイッチ制御信号SONb[1]~SONb[n]によって定められたが、その代わりに、送信イネーブル信号TXEN[1]~TXEN[n]によって定められてもよい。すなわち、第2のロードスイッチSWb[1]~SWb[n]を削除することも可能である。ただし、この場合、非アクティブ期間の光トランシーバTRにおいて待機電流が発生するため、前述した消費電力の分散効果が弱まり、さらに、バックアップ電源Vbatによる動作の継続期間が短くなるおそれがある。この観点からは、第2のロードスイッチSWb[1]~SWb[n]を設けることが有益となる。
【0043】
また、図1における上位ネットワーク10内のネットワーク装置11は、図3に示した下位ネットワーク20内のネットワーク装置21と同様の構成を備えてもよい。ただし、ネットワーク装置11は、通常、無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)等を用いる場合が多い。この場合、ネットワーク装置11は、非常用回路27を備える必要はない。
【0044】
<ネットワークシステムの動作>
図5は、図1のネットワークシステムにおける本発明に関する主要部の動作例を示すシーケンス図である。図5において、下位ネットワーク20内のネットワーク装置21、詳細には、停電検出回路26は、停電、すなわち主電源Vddの異常な遮断を検出する(ステップS101a)。これに応じて、停電検出回路26は、停電検出信号PWDを出力する(ステップS101b)。
【0045】
また、ネットワーク装置21は、ステップS101aでの停電検出に応じて、例えば、コンデンサに蓄えられた主電源Vddの残存電力を用いて、上位ネットワーク10内のネットワーク装置(対向装置)11に、停電通知フレーム等を送信する(ステップS101c)。これに応じて、ネットワーク装置(対向装置)11は、ネットワーク装置21に停電が発生したことを認識する(ステップS301)。停電通知フレームとしては、例えば、IEEE 802.3ah規格に基づく“Dying Gasp”イベントの保守フレーム等が挙げられる。
【0046】
また、ネットワーク装置21内の非常用回路27は、ステップS101bでの停電検出信号PWDに応じて第1のロードスイッチSWaを制御することで、バックアップ電源Vbatへの電源切り替えを行う(ステップS102)。すなわち、非常用回路27は、複数のポートP[1]~P[n]やコントローラ33の電源をバックアップ電源Vbatに切り替える。
【0047】
続いて、非常用回路27は、第2のロードスイッチSWb[1]をオンに制御することで、ポートP[1]への電源供給を開始する(ステップS103)。次いで、非常用回路27は、ポートP[1]への保守信号SD[1]を生成し(ステップS104a)、当該保守信号SD[1]を結合回路34[1]を介してポートP[1]へ出力する(ステップS104b)。これに応じて、ポートP[1]に装着された光トランシーバTRは、当該保守信号SD[1]で変調された光信号を生成し(ステップS105a)、当該光信号をネットワーク装置(対向装置)11へ送信する(ステップS105b)
【0048】
続いて、ネットワーク装置(対向装置)11は、ステップS105bでの光信号を受信したか否かによって、対応する光ファイバ15の断線有無を判定する(ステップS302)。ネットワーク装置(対向装置)11は、光信号を受信した場合には、対応する光ファイバ15を断線無しと判定し、光信号を受信しない場合には、対応する光ファイバ15を断線有りと判定する。
【0049】
一方、非常用回路27は、ステップS105bでの光信号の送信が完了した後、第2のロードスイッチSWb[1]をオフに制御することで、ポートP[1]への電源供給を停止する(ステップS106)。このステップS103からステップS106までの期間は、図4に示したアクティブ期間Ta[1]に該当する。アクティブ期間Ta[1]の長さは、ステップS104a,S104bおよびステップS105a,S105bの処理を行うための必要最小限の大きさに定められる。具体例として、アクティブ期間Ta[1]は、数秒程度であってよい。
【0050】
ステップS106の後、非常用回路27は、予め定めた所定の期間、待機する(ステップS107)。その後は、次のポート(図示しないP[2])を対象に、ポートP[1]を対象としたステップS103~S107,S302の処理と同様の処理が行われる。そして、最後に、ポートP[n]を対象に、ポートP[1]を対象としたステップS103~S107,S302の処理と同様の処理が行われる(ステップS203~S207,S303)。
【0051】
ステップS107における所定の期間は、図4に示した第1のウエイト期間TwAに該当する。特に、電池30がリチウム金属電池等のような電流容量が小さい電池である場合、電池30の電圧値は、光トランシーバTRの動作に伴い一時的に降下する。ただし、当該電池30の電圧値は、第1のウエイト期間TwAの中で徐々に電圧値が戻り得る。電池30の電圧値が戻ることで、DCDCコンバータ32への入力電流を低く保つことができ、電池寿命を長く保つことができる。第1のウエイト期間TwAの長さは、例えば、このような電池30の特性を考慮して定められる。具体例として、第1のウエイト期間TwAは、数秒~数十秒程度であってよい。
【0052】
ステップS207でポートP[n]を対象とする第1のウエイト期間TwAを経たのち、非常用回路27は、さらに、予め定めた所定の期間、待機した後、ステップS103の処理に戻る(ステップS208)。すなわち、コントローラ33は、停電が発生している期間で、複数のポートP[1]~P[n]をアクティブ期間Ta[1]~Ta[n]でそれぞれ活性化したのち、ステップS208での第2のウエイト期間(TwBとする)を経て、再度、複数のポートをアクティブ期間でそれぞれ活性化する、という処理を繰り返す。ステップS208での第2のウエイト期間TwBは、例えば、年間に起こり得る災害の頻度等を考慮して、バックアップ電源Vbatの持続期間を決めた上で設定されるとよい。
【0053】
なお、停電から復旧した場合、ネットワーク装置21は、主電源Vddを用いて、ネットワーク装置(対向装置)11との間で、例えば、所定のイニシャライズ処理等を行う。ネットワーク装置(対向装置)11は、このイニシャライズ処理の中でも、断線検出を行うことができる。
【0054】
<DCDCコンバータ周りの詳細>
図6は、図3におけるDCDCコンバータ周りの詳細な構成例を示す図である。図6には、電池30と、図3のDCDCコンバータ32に該当する昇圧型のDCDCコンバータ55とが示される。電池30は、電圧値V1を出力する。昇圧型のDCDCコンバータ55は、当該電圧値V1を昇圧することで電圧値V2を出力する。
【0055】
電池30は、例えば、リチウム金属電池等のような電流容量が小さい電池を、並列に複数個接続することで構成される。電圧値V1は、例えば、3.0V以下等である。一方、電圧値V2は、3.3V等である。光トランシーバTRには、この電圧値V2が印加される。このような構成を用いることで、電流容量が小さい電池を用いる場合であっても、光トランシーバTRに、安定した電圧値V2を印加することが可能になる。
【0056】
図7は、図3におけるDCDCコンバータ周りの、図6とは異なる詳細な構成例を示す図である。図6には、電池30と、図3のDCDCコンバータ32に該当する昇圧型のDCDCコンバータ56、コンデンサ57および降圧型のDCDCコンバータ58と、が示される。電池30は、電圧値V3を出力する。昇圧型のDCDCコンバータ56は、当該電圧値V3を昇圧することで光トランシーバTRを動作させる電圧よりも高い電圧値V4を出力する。コンデンサ57は、ある程度大きい容量値を有し、当該電圧値V4を保持する。降圧型のDCDCコンバータ58は、コンデンサ57で保持される電圧値V4を降圧することで電圧値V5を出力する。
【0057】
電圧値V3は、例えば、1.8V程度である。電圧値V4は、例えば、6V以上といった十分に高い電圧に定められる。電圧値V5は、3.3V等である。光トランシーバTRには、この電圧値V5が印加される。このような構成を用いると、電池30からの電圧供給を止めたとしても、コンデンサ57によってある程度高い電圧値V4が保持されるため、光トランシーバTRが動作した場合でも、3.3V等の電圧値V5を維持し易くなる。すなわち、電圧値V4をより大きく設定し、かつコンデンサ57の容量を大きくすることで、電池30の寿命を長く保つことができる。図7の方式は、特に、電池30の並列化が困難な場合に有効な方式である。
【0058】
<比較例の断線検出方式>
例えば、前述した実施の形態の方式とは異なる停電状態での断線検出方式として、ネットワーク装置21の電源に、無停電電源装置(UPS)を用いる方式や、ネットワーク装置(対向装置)11に、OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)を内蔵する方式等が考えられる。UPSを用いると、実質的に停電自体が発生しないため、ネットワーク装置21は、主電源Vddを用いて所定の保守フレーム等をネットワーク装置(対向装置)11に送信することができ、これによって断線検出を行うことが可能になる。しかしながら、UPSを設けることで、コストの増加を招き得る。
【0059】
また、OTDRは、光ファイバ15に光パルス信号を入射し、その散乱光や反射光等を受光することで、光ファイバ15の断線有無や、断線箇所等を検出する計測器である。例えば、ネットワーク装置(対向装置)11がOTDRを内蔵していれば、ネットワーク装置21が停電状態であっても、光ファイバ15の断線を検出することができる。しかしながら、この場合も、OTDRを内蔵することで、コストの増加を招き得る。
【0060】
<実施の形態の主要な効果>
以上、実施の形態の方式を用いることで、代表的には、停電状態で回線、詳細には光ファイバの状況を把握することが可能になる。その結果、障害復旧に要する時間を短縮することが可能になる。さらに、前述した比較例の断線検出方式と比較して、容易に、または低コストで断線を検出することができる。すなわち、実施の形態の方式では、ネットワーク装置21に、図3に示したような、低コストで実現できる非常用回路27を追加すればよい。また、OTDRのように、特殊な光信号を送受信する仕組みを設ける必要はなく、通常の光トランシーバTRをそのまま利用して、断線検出を行うことができる。
【0061】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、前述した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 上位ネットワーク
11 ネットワーク装置(対向装置)
15 光ファイバ
20 下位ネットワーク
21 ネットワーク装置
25 物理層処理回路
26 停電検出回路
27 非常用回路
30 電池
31 電源切替回路
32 DCDCコンバータ
33 コントローラ
34 結合回路
42 アナログフロントエンド(AFE)回路
43 光サブアセンブリ(OSA)
44 コントローラ
50 ドライバ
51 プリアンプ/ポストアンプ
55,56 昇圧型のDCDCコンバータ
58 降圧型のDCDCコンバータ
57 コンデンサ
CNe 電気コネクタ
CNo 光コネクタ
ED 電気信号
ES 電気信号
LD レーザダイオード
P ポート
PD フォトダイオード
PWD 停電検出信号
SD 保守信号
SON スイッチ制御信号
SWa 第1のロードスイッチ
SWb 第2のロードスイッチ
TR 光トランシーバ
TXEN 送信イネーブル信号
Ta アクティブ期間
TwA 第1のウエイト期間
TwB 第2のウエイト期間
V1~V5 電圧値
Vbat バックアップ電源
Vcc 電源
Vdd 主電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7