(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】給電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240304BHJP
【FI】
H02J7/00 B
(21)【出願番号】P 2021139513
(22)【出願日】2021-08-30
【審査請求日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2020191384
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】木庭 大輔
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 祐次
(72)【発明者】
【氏名】坂柳 佑治
(72)【発明者】
【氏名】松川 靖
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-098953(JP,A)
【文献】特開2015-015855(JP,A)
【文献】特開2014-131369(JP,A)
【文献】特開2006-005979(JP,A)
【文献】特開2016-111893(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0004580(US,A1)
【文献】特開2020-102916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電可能であり、蓄電池出力電圧で電力を出力する蓄電池と、
前記蓄電池への充放電電力を制御する充放電制御回路と、
少なくとも電力供給能力を有する電力源と、
前記充放電制御回路の動作を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記電力源により電力を供給する電力供給先の消費電力である供給先電力の大きさが、前記電力源の電力供給能力の上限値よりも低い場合には、前記電力源が出力する電力に基づき前記供給先電力を賄い、かつ、前記電力源の電力供給能力の上限値から前記供給先電力を引いた差分となる電力を前記蓄電池に充電するように前記充放電制御回路を制御し、
前記供給先電力の大きさが、前記電力源の電力供給能力の上限値以上である場合には、前記電力源と前記蓄電池との両方から前記供給先電力を賄うように前記充放電制御回路を制御
し、
前記制御部は、前記蓄電池の充電率と前記供給先電力の大きさとに基づき前記蓄電池の充電に割り当てる前記電力源の電力供給能力を変更するように前記充放電制御回路を制御する給電システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記蓄電池が設置された場所の環境温度に基づき前記蓄電池の充電に割り当てる前記電力源の電力供給能力をさらに変更するように前記充放電制御回路を制御する請求項
1に記載の給電システム。
【請求項3】
前記制御部は、
利用者から強制充電指示が与えられた場合、前記蓄電池が満充電となるまで充電を行うように前記充放電制御回路を制御するとともに前記蓄電池の充電が完了したことに応じて充電完了通知を前記利用者に通知する請求項1
又は2記載の給電システム。
【請求項4】
前記電力源は、太陽光パネル、発電に利用可能な燃料を追加可能なハイブリッド自動車、発電機、或いは、二次電池のいずれか1つを含む請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の給電システム。
【請求項5】
前記供給先電力を供給する太陽光発電パネルをさらに有する請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の給電システム。
【請求項6】
前記電力源は、前記蓄電池よりも蓄電容量性能を優先した二次電池であり、
前記制御部は、前記供給先電力の変動速度と、前記電力源及び前記蓄電池の状態と、に応じて前記電力源から取り出す電力の大きさと前記蓄電池から取り出す電力の大きさの比率を変化させるように前記充放電制御回路を制御する請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、家庭等の電力供給先に電力を供給可能な蓄電池と発電機とを含む給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境意識の高まり、或いは、防災意識の高まりから、家庭用蓄電池の利用が広まっている。しかしながら、家庭に設置される家庭用蓄電池の容量は、災害時に数日間の停電が生じたときの電力需要をまかなうには小さいという問題がある。また、家庭への電力供給の別の方法として発電機を設置することが考えられる。発電機は、燃料を確保できれば永続的な電力供給を行うことができる。そこで、移動可能な蓄電池として電気自動車を利用して、電気自動車の走行用蓄電池と定置用蓄電池とを並列に接続する給電システムの例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の電力供給システムは、通信事業所に設けられ負荷に対して放電する定置用蓄電池と、移動するための走行用蓄電池を備えた電気自動車と、電気自動車が通信事業所に帰着した際に、走行用蓄電池を定置用蓄電池と並列に接続する直流連系の充放電器と、を備え、定置用蓄電池が負荷に対して放電する際に、充放電器を介して走行用蓄電池を放電させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、電気自動車を接続することで定置用蓄電池のみのときよりも利用時間は長くなるものの、電気自動車が離れた場合には定置用蓄電池のみの運用となる。そのため、特許文献1に記載の技術を利用しても、大幅な利用時間の延長を実現することができない問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、限られた大きさの蓄電池を備えながら長期間電力を供給可能な給電システムを実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の給電システムの一態様は、充放電可能であり、蓄電池出力電圧で電力を出力する蓄電池と、前記蓄電池への充放電電力を制御する充放電制御回路と、少なくとも電力供給能力を有する電力源と、前記充放電制御回路の動作を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記電力源により電力を供給する電力供給先の消費電力である供給先電力の大きさが、前記電力源の電力供給能力の上限値よりも低い場合には、前記電力源が出力する電力に基づき前記供給先電力を賄い、かつ、前記電力源の電力供給能力の上限値から前記供給先電力を引いた差分となる電力を前記蓄電池に充電するように前記充放電制御回路を制御し、前記供給先電力の大きさが、前記電力源の電力供給能力の上限値以上である場合には、前記電力源と前記蓄電池との両方から前記供給先電力を賄うように前記充放電制御回路を制御する。
【0008】
本発明の給電システムでは、発電装置の発電能力が供給先の電力需要を上回っていれば蓄電池に充電し、発電装置の発電能力が供給先の電力需要を下回っていれば蓄電池と発電装置の両方を用いて電力を供給する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の給電システムによれば、限られた大きさの蓄電池を備えながら長期間電力を供給可能な給電システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1にかかる給電システムのブロック図である。
【
図2】実施の形態1にかかる給電システムの動作を説明するフローチャートである。
【
図3】実施の形態2にかかる給電システムの動作の一例を説明する表である。
【
図4】実施の形態2にかかる給電システムの動作の別の例を説明する表である。
【
図5】実施の形態2にかかる給電システムの動作の別の例を説明する表である。
【
図6】実施の形態3にかかる給電システムの動作を説明するフローチャートである。
【
図7】実施の形態4にかかる給電システムのブロック図である。
【
図8】実施の形態5にかかる給電システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、様々な処理を行う機能ブロックとして図面に記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、その他の回路で構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0012】
また、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0013】
実施の形態1
図1に実施の形態1にかかる給電システム1のブロック図を示す。
図1に示すように、給電システム1は、蓄電池10、充放電制御回路11、第1の変換回路(例えば、AC/DC変換回路12)、第2の変換回路(例えば、電力変換回路13)、制御部14、電力測定部15を有する。
【0014】
また、給電システム1では、少なくとも電力供給能力を有する電力源を接続する。実施の形態1にかかる給電システム1では、電力源として電力の発電及び出力のみを行う発電装置20を接続する。発電装置20は、例えば、太陽光パネル、発電に利用可能な燃料を追加可能なハイブリッド自動車、発電機、或いは、電気エネルギーを化学的に貯留/放出する蓄電池(例えば燃料電池)のいずれか1つを含む。なお、電力源としては、充放電可能な蓄電池を利用することも出来るが、蓄電池を利用した例については別の実施の形態において説明する。実施の形態1では、発電装置20として、例えば、1500W程度の最大発電能力を有し、100Vの交流電力を出力する発電機を用いた例について説明する。自動車を発電装置20として利用する場合、自動車の100V交流電源コンセントを用いることができる。また、自動車の電源や家庭用発電機では、一般的な仕様として、1500W程度の最大発電能力で、100Vの交流電力を出力することが可能である。
【0015】
ここで、自動車としては、「ガソリンや水素等を用いる内燃機関」と「蓄電池」を駆動源とする、いわゆるハイブリッド自動車や燃料電池車が好ましい。「蓄電池」を駆動源とする自動車としては、ガソリン等を使わない電気自動車も考えられるが、電気自動車に搭載された蓄電池のみでは、最大発電能力(蓄電池の容量)がどうしても小さくなる。一方、ハイブリッド自動車等では、ガソリンや水素により電気を生み出せるため、最大発電能力を大きくすることができ、停電時に電力復旧まで時間がかかったとしても、電力供給を継続することができる。また、ガソリンを給油することができれば、より長く電力供給することが可能になる。
【0016】
また、実施の形態1にかかる給電システム1は、供給先として例えば一般的な家屋、或いは、電力系統線が想定される。家屋を電力供給先とした場合、供給先に200Vで交流の高圧側供給先電力と100Vで交流の低圧側供給先電力とを供給する。また、電力系統線を電力供給先とした場合、電力系統線の使用に応じて200Vで交流の高圧側供給先電力と100Vで交流の低圧側供給先電力とを供給する。なお、実施の形態1にかかる給電システム1は、電力系統に接続される電力系統用の蓄電システムとしても利用可能である。
【0017】
蓄電池10は、充放電可能であり、蓄電池出力電圧で直流の電力を出力する。蓄電池出力電圧は、
図1に示す例では、48Vとしたが、蓄電池出力電圧は48Vである必要はない。蓄電池としては、例えば、ハイブリッド自動車用ニッケル水素電池で、1モジュール(6セル)で、常温域では1000W出力が可能な電池などを利用することができる。また、蓄電池として、リチウムイオン二次電池を利用する事も出来る。高出力型電池を使用することで、容量の最小単位が小さくなるため、システム容量を小刻みに調整することが出来るため、システムの出力可能電力を必要最低限に設定することが容易になる。
【0018】
また、蓄電池10は、複数の電池を組み合わせる構成することが好ましい。複数の電池を組み合わせる構成することで、一部の電池が故障した場合であってもシステムを稼動することが可能になる。特に、電力会社からの電力供給が停止した場合には、システムが故障して使用できない状態に至ることは避ける必要があり、電池の並列化が好ましいが、直列のシステムであっても使用することは可能である。さらに、少量の電池数単位での並列回路にすることで、電池故障時の交換も容易になることから、市場で使用されたリビルド電池などを活用し、修理交換などを容易かつ安価に実施することが可能になる。また、並列回路とすることで、並列回路の一部の電池を取り出してモバイルバッテリーとして使用することも可能となる。その場合、携帯には向かない大きいニッケル水素電池を定置蓄電池専用としながら、持ち運びが可能な一部の電池群として携帯に向いている軽くて小さいリチウムイオン二次電池を用いる等、ニッケル水素電池とリチウムイオン二次電池をシステム内に混在させることも可能である。
【0019】
充放電制御回路11は、蓄電池10への充放電電力を制御する。より具体的には、充放電制御回路11は、AC/DC変換回路12と連携して、蓄電池10に充電する電力の大きさと、蓄電池10から放電させる電力の大きさを制御部14の指示に基づき制御する。なお、
図1に示す例では、充放電制御回路11は、電圧の変換を行わないこととしたが、充放電制御回路11が電圧変換機能を有していても良い。
【0020】
AC/DC変換回路12は、発電装置20が接続され、発電装置20が出力する交流の発電機出力電圧を直流の蓄電池出力電圧に変換する。
図1に示す例では、AC/DC変換回路12は、発電装置20が出力する100Vの交流電圧を蓄電池出力電圧となる48Vの直流電圧に変換する。また、AC/DC変換回路12は、制御部14からの指示に基づき発電装置20から取り出す電力量を調整する。
【0021】
電力変換回路13は、蓄電池出力電圧(例えば、48Vの直流電圧)を交流の供給先電力に変換する。
図1に示す例では、電力変換回路13は、変換後の電圧として200Vの交流電圧を電力供給先に出力する。なお、電力供給先において100Vの交流電力を利用する場合、電力供給先では、分電盤において200Vの交流電圧を100Vの交流電圧に変換する。
【0022】
電力変換回路13は、第3の変換回路(例えば、DC/AC変換回路13a)と第4の変換回路(例えば、変圧器13b)とを有する。DC/AC変換回路13aは、発電機出力電圧(48Vの直流電圧)を交流の低圧側供給先電力(100Vの交流電圧)に変換する。また、変圧器13bは、低圧側供給先電力(100Vの交流電圧)を交流の高圧側供給先電力(200Vの交流電圧)に変換する。そして、実施の形態1にかかる給電システム1では、電力測定部15により電力供給先の電力需要を計測する。
【0023】
制御部14は、例えば、MCU(マイクロコントローラユニット)等のプログラムを実行可能な演算装置、或いは、専用ハードウェアにより実現出来る。この制御部14としてプログラムを実行可能な演算装置を用いる場合、制御部14で実行されるプログラムにより以下で説明する動作を実現する給電制御プログラムが制御部14に組み込まれるものとする。
【0024】
制御部14は、充放電制御回路11、AC/DC変換回路12及び電力変換回路13の動作を制御する。ここで、制御部14は、蓄電池10の充電率及び発電装置20の発電能力に応じて充放電制御回路11、AC/DC変換回路12及び電力変換回路13の動作を制御する。より具体的には、制御部14は、供給先電力の大きさが、発電装置20の発電能力の上限値よりも低い場合には、発電装置20が出力する電力に基づき供給先電力を賄うように充放電制御回路11、AC/DC変換回路12及び電力変換回路13を制御する。このとき、制御部14は、さらに、発電装置20の発電能力の上限値から供給先電力を引いた差分となる電力を蓄電池10に充電するように充放電制御回路11、AC/DC変換回路12及び電力変換回路13を制御する。また、制御部14は、供給先電力の大きさが、発電装置20の発電能力の上限値以上である場合には、発電装置20と蓄電池10との両方から供給先電力を賄うように充放電制御回路11、AC/DC変換回路12及び電力変換回路13を制御する。なお、本実施の形態では、発電装置20の上限値を、発電装置20の能力の上限値としているが、制御上の上限値でもよい。
【0025】
ここで、実施の形態1にかかる給電システム1の動作を説明する。実施の形態1にかかる給電システム1では、蓄電池10のみでも供給先への電力供給が可能であるが、給電システム1において特徴の1つとなる発電装置20を接続したときの動作を以下で説明する。そこで、
図2に実施の形態1にかかる給電システム1の動作を説明するフローチャートを示す。
図2は、給電システム1に発電装置20を接続したときの給電システム1の動作を説明するものである。
【0026】
図2に示すように、給電システム1では、発電装置20をAC/DC変換回路12に接続すると発電装置20からの電力供給が開始される(ステップS1)。続いて、給電システム1では、制御部14が蓄電池10の充電率を確認して蓄電池10が出力可能であるか否かを判断する(ステップS2)。このステップS2では、制御部14は、蓄電池10の充電率(SOC:State Of Charge)が予め設定した蓄電池出力可能閾値(例えば40%)以下であれば蓄電池出力が出来ないと判断する。一方、制御部14は、蓄電池10の充電率が40%より高ければ、蓄電池10からの電力供給が可能と判断する。
【0027】
このステップS2において、蓄電池10からの電力供給ができないと判断した場合(ステップS2のNOの枝)、発電装置20から取り出した電力により蓄電池10を充電するように、充放電制御回路11、AC/DC変換回路12及び電力変換回路13を制御する(ステップS3)。このステップS3では、例えば、蓄電池10の充電率が50%に達する程度まで蓄電池10への充電を行う。これにより、ステップS2における判断は蓄電池10から電力供給先への電力供給が可能と判断される状態となる。
【0028】
一方、ステップS2において、蓄電池10からの電力供給が可能と判断された場合(ステップS2のYESの枝)、制御部14は、電力供給先の電力需要が発電装置20の出力能力の上限値よりも小さいか否かを判断する(ステップS4)。このステップS4において、電力供給先の電力需要が発電装置20の発電能力の上限値以下であると判断される状況である場合(ステップS4のNOの枝)、給電システム1では、制御部14が、発電装置20の発電能力の上限値から電力需要の差分を用いて蓄電池10が上限電圧(例えば満充電)に達するまで充電を行ように、充放電制御回路11、AC/DC変換回路12及び電力変換回路13を制御する(ステップS4、S5、S7)。そして、蓄電池10が満充電に達した後には、制御部14は、蓄電池10への充電を停止して、電力供給先の電力需要をまかなえる程度まで発電装置20の発電能力を低下させる(ステップS4、S5、S6)。
【0029】
続いて、ステップS4において、電力供給先の電力需要が発電装置20の発電能力の上限値よりも大きいと判断される状況である場合(ステップS4のYESの枝)、給電システム1では、制御部14が、充放電制御回路11、AC/DC変換回路12及び電力変換回路13を制御して、発電装置20に加えて、蓄電池10からも電力供給先に電力を供給する(ステップS8)。このとき、制御部14は、蓄電池10の充電率をモニタして蓄電池10の出力許容時間を算出する(ステップS9)。
【0030】
そして、蓄電池10の出力許容時間が予め設定した閾値Aを下回った場合(ステップS10のYESの枝)、制御部14は、ユーザーに電力需要を低下させることを依頼する通知を行う(ステップS11)。また、給電システム1は、ステップS11の通知後にステップS2の処理を行う。一方、蓄電池10の出力許容時間が予め設定した閾値A以上であった場合(ステップS10のNOの枝)、制御部14は、ステップS4の処理から再度処理を行う。
【0031】
ここで閾値Aは、ユーザーが電力需要の変更を行う行動をするのに十分な時間が設定される。例えば、15分程度の時間が考えられる。また、閾値A及び判断基準の値として、時間ではなく蓄電池10の充電率を用いることもできる。
【0032】
上記説明より、実施の形態1にかかる給電システム1は、発電装置20を接続した際には、発電装置20が出力する電力により電力供給先の電力を賄いながら、発電装置20の発電能力に余剰があれば、その余剰分で蓄電池10への充電を行う。これにより、実施の形態1にかかる給電システム1は、発電装置20が外されている期間において蓄電池10による電力供給が可能な時間を延ばすことができる。
【0033】
また、実施の形態1にかかる給電システム1では、電力供給先の電力需要が発電装置20の発電能力の上限を超える不足分が出た場合、蓄電池10から出力する電力により不足分を補うことが出来る。一般的に、家庭で消費される電力は、3000W~6000W程度が必要となり、発電機の一般的な仕様である1500Wでは足りなくなることがある。しかしながら、実施の形態1にかかる給電システム1では、発電装置20の発電能力を超える電力需要を蓄電池10から出力する電力で賄うことで、供給先の電力需要を制限する必要がない。
【0034】
実施の形態2
実施の形態2では、給電システム1における充電処理の詳細について説明する。そこで、
図3に実施の形態2にかかる給電システムの動作の一例を説明する表を示す。給電システム1では、制御部14が、蓄電池10の充電率と供給先電力の大きさとに基づき蓄電池10の充電に割り当てる交流発電機の発電能力を変更するように充放電制御回路11及びAC/DC変換回路12を制御する。
【0035】
図3に示す例は、蓄電池10が常温と判断される温度(例えば、25℃程度)に置かれたときに制御部14が蓄電池10の充電に割り当てる電力を説明するものである。制御部14は、発電装置20の発電能力の上限値から電力需要量を引いた余剰電力を蓄電池10の充電に割り当てるが、この割り当てる電力を蓄電池10の充電率に応じて変化させる。この割り当てる割合の変更は、制御部14が充放電制御回路11を制御することで実現させる。
【0036】
図3に示す例では、制御部14は、電力需要量が発電上限値より高くかつ発電装置20による電力供給だけでは電力供給が不足する状態(本実施の形態では1500W以上、3000W以下)である場合、蓄電池10の充電は行わない。
【0037】
制御部14は、電力需要量が発電上限値より低く且つ電力供給に余裕のある状態(本実施の形態では1000W以上、1500W未満)である場合、発電装置20の発電電力の余剰分を以下のように蓄電池10の充電に割り当てる。蓄電池10の充電率が40%未満では余剰分の全量を蓄電池10に充電に割り当てる。また、蓄電池10の充電率が50%未満では余剰分のうちの80%、充電率が60%未満では余剰分のうちの60%、充電率が70%未満では余剰分のうちの40%、充電率が80%未満では余剰分のうちの20%を蓄電池10の充電に割り当てる。また、充電率が80%以上である場合は、余剰分を用いた充電は行わない。
【0038】
制御部14は、電力需要量が発電上限値より低く且つ電力供給に大きな余裕のある状態(本実施の形態では1000W未満)である場合、発電装置20の発電電力の余剰分を以下のように蓄電池10の充電に割り当てる。蓄電池10の充電率が50%未満では余剰分の全量を蓄電池10に充電に割り当てる。また、蓄電池10の充電率が60%未満では余剰分のうちの80%、充電率が70%未満では余剰分のうちの60%、充電率が70%未満では余剰分のうちの20%、充電率が90%未満では余剰分のうちの20%を蓄電池10の充電に割り当てる。また、充電率が90%以上である場合は、余剰分を用いた充電は行わない。
【0039】
また、制御部14は、蓄電池10が置かれる地点の環境温度に応じて、
図3に示す割り当てマップとはことなるマップに基づき蓄電池10に余剰分の電力の充電を行う。そこで、
図4に実施の形態2にかかる給電システムの動作の別の例を説明する表を示す。
図4に示す割り当てマップは、蓄電池10が高温と判断される温度(例えば、40℃以上程度)に置かれたときに制御部14が蓄電池10の充電に割り当てる電力を説明するものである。
【0040】
図4に示す例では、制御部14は、電力需要量が発電上限値より高くかつ発電装置20による電力供給だけでは電力供給が不足する状態(本実施の形態では1500W以上、3000W以下)である場合、蓄電池10の充電は行わない。
【0041】
制御部14は、電力需要量が発電上限値より低く且つ電力供給に余裕のある状態(本実施の形態では1000W以上、1500W未満)である場合、発電装置20の発電電力の余剰分を以下のように蓄電池10の充電に割り当てる。蓄電池10の充電率が20%未満では余剰分の全量を蓄電池10の充電に割り当てる。また、蓄電池10の充電率が30%未満では余剰分のうちの80%、充電率が40%未満では余剰分のうちの60%、充電率が50%未満では余剰分のうちの40%、充電率が60%未満では余剰分のうちの20%を蓄電池10の充電に割り当てる。また、充電率が60%以上である場合は、余剰分を用いた充電は行わない。
【0042】
制御部14は、電力需要量が発電上限値より低く且つ電力供給に大きな余裕のある状態(本実施の形態では1000W未満)である場合、発電装置20の発電電力の余剰分を以下のように蓄電池10の充電に割り当てる。蓄電池10の充電率が30%未満では余剰分の全量を蓄電池10に充電に割り当てる。また、蓄電池10の充電率が40%未満では余剰分のうちの80%、充電率が50%未満では余剰分のうちの60%、充電率が60%未満では余剰分のうちの40%、充電率が70%未満では余剰分のうちの20%、を蓄電池10の充電に割り当てる。また、充電率が70%以上である場合は、余剰分を用いた充電は行わない。
【0043】
実施の形態2にかかる説明より、制御部14は蓄電池10の充電量が十分である場合、余剰電力の一部のみを蓄電池10の充電に割り当てる。このように、発電装置20の発電能力の余剰分を用いて蓄電池10を充電することで、発電装置20の燃料消費を抑えることができる。また、余剰電力の一部のみを用いて蓄電池10の充電を行うことで急激な電量需要の変化に対応することが容易になる。また、蓄電池10の充電率が低い場合には、余剰分の全量を蓄電池10の充電に割り当てることで、早期に蓄電池10の充電率を、蓄電池10からの電力供給が可能な状態に回復させることができる。
【0044】
また、制御部14は、蓄電池10が置かれる地点の温度に基づき充電率と充電に割り当てる余剰電力の割合の関係を変更する。蓄電池10は、高温になるほど蓄電池の充電効率が低下するため、充電率が高い領域において、充電電力を抑制する。一方、上記説明では説明を省略したが、常温時は、余剰電力の全量を充電に割り当てる必要が生じる充電率を高くすることもできる。このように、蓄電池10の出力可能電力の温度特性に基づき充電を制御することで、畜電池の劣化を抑制しつつ、出力可能時間の合計を最大化することができる。
【0045】
ここで、蓄電池10の充放電特性を考えると、充電率が高い領域では、充電電流が小さくなるという特徴がある。
図3及び
図4に示した割り当てマップでは、充電に割り当て可能な余剰電力が少ないほど高い充電率となっている蓄電池10への充電を減らす例としたが、上記蓄電池10の特徴を踏まえると別の割り当てマップを考えることができる。そこで、
図5に実施の形態2にかかる給電システムの動作の別の例を説明する表である。
【0046】
図5に示す例は発電装置20の設置場所の温度が常温とされるときの割り当てマップである。この
図5に示す例では、余剰電力が少ないときほど、高い充電率となっている蓄電池10を充電する。このような割り当てマップを用いることで、充電効率を高めながら蓄電池10の燃料消費の抑制を両立させることができる。なお、
図5に示す例についても、
図3、4に示す例と同様に、温度によって2つのマップを使い分けてもよい。
【0047】
実施の形態3
実施の形態3では、発電装置20を動作させる燃料が少なくなってきたときの給電システム1の動作について説明する。そこで、
図6に実施の形態3にかかる給電システムの動作を説明するフローチャートを示す。
図6は、発電装置20の燃料量が低下した際に発電機を給電システムから切り離す場合の給電システム1の動作を説明するものである。なお、
図6に示す例は、発電装置20が燃料の低下した際に利用者が強制充電指示を給電システム1に与える操作をして実行する強制充電処理を行うものとした。
【0048】
図6に示す例では、まず、制御部14が、蓄電池10が満充電となるまで、発電装置20による蓄電池10の充電を継続する(ステップS21、S22)。そして、制御部14は、蓄電池10が満充電になったことに応じて発電装置20を停止させる(ステップS23)。その後、制御部14は、蓄電池10の充電が完了したことに応じて充電完了通知を利用者に通知する(ステップS24)。
【0049】
上記説明より、実施の形態3にかかる給電システム1は、発電装置20への燃料補充に起因して発電装置20を給電システム1から切り離す場合にも蓄電池10が最大限供給を継続することを可能にする。特に、発電装置20として自動車を利用する場合、このような事前の蓄電池10の充電は、電力供給を途絶えさせないために重要である。
【0050】
実施の形態4
実施の形態4では、実施の形態1で説明した給電システム1の別の形態について説明する。
図7に実施の形態4にかかる給電システム2のブロック図を示す。
図7に示すように、実施の形態4にかかる給電システム2は、実施の形態1にかかる給電システム1に太陽光発電パネル30及びパワーコンディショナ31を追加したものである。
【0051】
太陽光発電パネル30は、太陽光により発電を行う発電装置である。パワーコンディショナ31は、太陽光発電パネル30が発電した電力の電圧を高圧電力供給先に供給する高圧側供給電圧に変換する。
【0052】
このように、給電システム2に太陽光発電パネル30及びパワーコンディショナ31を設けることで、発電装置20のみならず別の形態の発電電力を生じさせることができるため、給電システムの給電能力をより高めることができる。なお、太陽光発電パネル30で発電した電力を発電装置20で発電した電力と同様に蓄電池10に充電することも可能である。
【0053】
実施の形態5
給電システムにおいて用いられる蓄電池10は容量の大きさを重視すると出力変動への追従性を高めるために電池の並列数を増加させる等の対応を取らなければならず、装置サイズやコストの上昇を招く。そこで、電力源である発電装置20を容量重視型の蓄電池40に置き換え、蓄電池10として出力重視型の蓄電池を組み合わせるなど、特性の異なる蓄電池を組み合わせることで、出力変動への追従性を高めながら装置サイズやコストの上昇を抑制する。そこで、実施の形態5では、電力源として蓄電池40を用いる例について説明する。
【0054】
図8に実施の形態5にかかる給電システム3のブロック図を示す。
図8に示すように、実施の形態5にかかる給電システム3では、発電装置20に代えて蓄電池40、AC/DC変換回路12に代えて充放電制御回路42、制御部14に代えて制御部44を有する。また、実施の形態5にかかる給電システム3では、蓄電池10として出力電力の急激な変動に対して高い追従性を有する出力重視型の蓄電池を用いる。
【0055】
蓄電池40は、例えば、体積に対する容量が大きな容量重視型の蓄電池である。蓄電池40は、蓄電池10との性能比較において、容量は大きいが出力の急激な変動に対する追従性は低いという特徴を有する。蓄電池10、40、としては、リチウムイオン電池(三元系-液系)、リチウムイオン電池(リン酸鉄系-液系)、リチウムイオン電池(LTO系-液系)、ニッケル水素蓄電池、鉛蓄電池、RF(Redox Flow)電池、NAS電池などを用いることができる。NAS電池は、負極(マイナス極)にナトリウム(Na)、正極(プラス極)に硫黄(S)、両電極を隔てる電解質にファインセラミックスを用いて、硫黄とナトリウムイオンの化学反応で充放電を繰り返す蓄電池である。そして、いずれの電池を蓄電池10及び蓄電池40とするかは、組み合わせる電池の相対的な性能を考慮して決定する。
【0056】
充放電制御回路42は、蓄電池40に対応して設けられる充放電制御回路であり、制御部44からの指示に従って蓄電池40への充放電を制御する。制御部44は、供給先電力の変動速度と、蓄電池10及び蓄電池40の状態と、に応じて蓄電池10から取り出す電力の大きさと蓄電池40から取り出す電力の大きさの比率を変化させる。具体的には、制御部44は、蓄電池10及び蓄電池40の充電率、劣化度(出力抵抗等)等の電池の状態とから蓄電池40が出力可能な電力を判断し、供給先電力の大きさ及び変動量と蓄電池40から出力可能な電力との差を蓄電池10から出力する電力により補うよう充放電制御回路11及び充放電制御回路42を制御する。これにより、実施の形態5にかかる給電システム3では、蓄電池40の出力変動能力を超える供給先電力の変動に対応する。
より具体的には、制御部44は、供給先に対して蓄電池40を主体とした電力供給を行うように充放電制御回路11及び充放電制御回路42を制御する。そして、供給先の電力の変動速度が蓄電池40の出力変動能力を上回ると推定される場合には蓄電池10からの電力供給を積極的に行うように充放電制御回路11に放電指示を与える。また、蓄電池40を取り外す場合、或いは、蓄電池40に対して積極的に系統電源や太陽光パネルから充電を行う場合には蓄電池10からの放電を促す指示を充放電制御回路11及び充放電制御回路42に与える。
【0057】
実施の形態5にかかる給電システム3では、異なる特性の蓄電池を組み合わせることで、出力変動への追従性を高めながら装置サイズやコストの上昇を抑制することができる。また、制御部44において各蓄電池の状態を考慮して電力需要に対応することで、蓄電池を長期的に安全に使用することが可能になる。
【0058】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、本発明は、家庭用だけでなく、事業用、電力系統用など大規模な給電システムにも好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1~3 給電システム
10 蓄電池
11 充放電制御回路
12 AC/DC変換回路
13 電力変換回路
13a DC/AC変換回路
13b 変圧器
14 制御部
15 電力測定部
20 発電装置
30 太陽光発電パネル
31 パワーコンディショナ
40 蓄電池
42 充放電制御回路
44 制御部