(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】トンネル防災システム
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20240304BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
G08B17/00 C
G08B25/00 520A
(21)【出願番号】P 2021183011
(22)【出願日】2021-11-10
(62)【分割の表示】P 2017133176の分割
【原出願日】2017-07-07
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】杉山 泰周
【審査官】綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-137100(JP,A)
【文献】特開平06-280500(JP,A)
【文献】特開2017-034489(JP,A)
【文献】特開2017-021562(JP,A)
【文献】特開昭54-083397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00
G08B 23/00 - G08B 31/00
H04M 3/00
H04M 3/16 - H04M 3/20
H04M 3/38 - H04M 3/58
H04M 7/00 - H04M 7/16
H04M 11/00 - H04M 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの長手方向に沿って順番に配置された複数の端末機器を、
所定数の信号回線を介して
当該所定数の区画基板
の何れかに接続し、当該
所定数の区画基板を制御部に接続したトンネル防災システムであって、
前記複数の端末機器の各々は、前記トンネルの長手方向の配置順の
所定数番毎に構成された
前記所定数のグループに対し、前記配列順に順次属し、
前記
所定数の信号回線は、前記
所定数のグループ毎に前記トンネルの長手方向に沿って配置され、
前記
所定数の区画基板
の各々は、配置された前記
所定数の信号回線毎に設けられ、
前記複数の端末機器の各々は、前記
所定数の信号回線毎に設けられた前記
所定数の区画基板のうち、自己が属するグループに対応した前記
信号回線に接続された前記区画基板に、当該グループ内における配置順に当該
信号回線を介してそれぞれ接続されたことを特徴とするトンネル防災システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内に設置した火災検知器等の端末機器を防災受信盤に接続してトンネル内の異常を監視するトンネル防災システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車専用道路等のトンネルには、トンネル内で発生する火災事故から人身及び車両を守るため、非常用施設が設置されている。
【0003】
このような非常用施設としては、火災の監視と通報のため火災検知器、手動通報装置、非常電話が設けられ、また火災の消火や延焼防止のために消火栓装置が設けられ、更にトンネル躯体を火災から防護するために水噴霧ヘッドから消火用水を散水させる水噴霧設備などが設置され、これらの非常用施設の端末機器を監視制御する防災受信盤を設けることで、トンネル防災システムを構築している。
【0004】
防災受信盤と端末機器で構成するトンネル防災システムは、R型伝送方式とP型直送方式に大別される。R型伝送方式は、伝送回線にアドレスを設定した火災検知器等の端末機器を接続し、伝送制御により端末機器単位に検知と制御を行う個別管理を可能とする。P型直送方式は、端末機器の種別に応じて所定の区画単位に分け、区画単位に引き出した信号回線に同一区画に属する複数の端末機器を接続し、信号回線単位に検知と制御を行う。
【0005】
図7は従来のP型直送方式による防災受信盤に対する端末機器の回線接続を示した説明図である。
図7に示すように、トンネル201には、火災検知器16がトンネル長手方向に沿って例えば25m間隔、或いは50m間隔に区分された監視エリアの境界に設置され、火災検知器16は左右の両方向に検知エリアを持ち、隣接して配置された火災検知器16により同じ監視エリアの火災を重複して監視している。
【0006】
また、トンネル201には、消火栓装置がトンネル長手方向に沿って例えば50m間隔で設置されており、消火栓装置には発信機として知られた手動通報装置20が設けられ、また消火栓弁開閉レバーによる消火栓弁の開放でオンする消火栓弁開閉スイッチと消防隊が操作するポンプ起動スイッチが並列接続された消火栓スイッチ22が設けられている。
【0007】
更に、トンネル201には、水噴霧ヘッドから霧状の水を噴霧して火災による熱からトンネル躯体を防護する水噴霧設備の自動弁装置がトンネル長手方向に沿って例えば50m間隔で設置されており、自動弁装置には自動弁の遠隔作動による水噴霧の開始を検出する水噴霧スイッチ24が設けられている。
【0008】
防災受信盤200には、トンネル内の所定長さ、例えば800メートルを1区間とした区画基板202-1,202-2が設けられている。トンネル入口から0~800メートルの区間に設置されている火災検知器16、手動通報装置20、消火栓スイッチ22及び水噴霧スイッチ24は、区画基板202-1から種別単位に束ねて引き出された信号回線群204-1,206-1,208-1,210-1の各信号回線に機器単位に接続される。
【0009】
また、トンネル入口から800~1600メートルの区間に設置されている火災検知器16、手動通報装置20、消火栓スイッチ22及び水噴霧スイッチ24は、区画基板202-2から種別単位に束ねて引き出された信号回線群204-2,206-2,208-2,210-2の各信号回線に機器単位に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2002-246962号公報
【文献】特開平11-128381号公報
【文献】特開平6-137100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような従来のトンネル内の所定長さを1区間として複数の区画基板が設けられたトンネル防災システムにあっては、長期間にわたり運用している間に、劣化等により区画基板が故障した場合、故障した区画基板に対応したトンネル内の区間に設置している全ての端末機器の監視が行えなくなってしまう問題がある。
【0012】
また、区画基板の故障に対しては、故障した区画基板を予備の区画基板に交換する必要があるが、故障対応のために準備していた予備の区画基板が経年変化等により正常に動作しない場合もあり、故障した区画基板の交換に手間と時間がかかり、そのあいだ故障した
区画基板に対応したトンネル内の区間に設置している全ての端末機器の監視が行えなくなってしまう問題がある。
【0013】
このような問題を解決するためには、区画基板を二重化し、運用中に区画基板が故障したら予備の区画基板に切り替えるように構成すればよいが、トンネルが長大化すると区画基板の数が増加し、区画基板を二重化した場合には設置スペースやコストが大幅に増加し、現実的な解決とはならない。
【0014】
本発明は、複数の区画基板の何れかが故障しても、正常な区画基板からの回線に接続している端末機器により必要最小限の監視機能を維持可能とするトンネル防災システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(トンネル防災システム)
本発明は、トンネルの長手方向に沿って順番に配置された複数の端末機器を、所定数の信号回線を介して当該所定数の区画基板の何れかに接続し、当該所定数の区画基板を制御部に接続したトンネル防災システムであって、
複数の端末機器の各々は、トンネルの長手方向の配置順の所定数番毎に構成された所定数のグループに対し、配列順に順次属し、
所定数の回線は、所定数のグループ毎にトンネルの長手方向に沿って配置され、
所定数の区画基板の各々は、配置された所定数の信号回線毎に設けられ、
複数の端末機器の各々は、所定数の信号回線毎に設けられた所定数の区画基板のうち、自己が属するグループに対応した信号回線に接続された区画基板に、当該グループ内における配置順に当該信号回線を介してそれぞれ接続されたことを特徴とする。
【0016】
(端末機器の奇数と偶数のグループ分けと回線接続)
複数の端末機器は、前記種類毎に一列状に配置されると共に配置順に連続する数値番号が付与され、数値番号が奇数となる奇数グループと数値番号が偶数となる偶数グループを形成して、複数の回線に前記グループ単位で接続され、
防災受信盤は、奇数グループの回線及び偶数グループの回線の各々に接続された2枚の区画基板を備える。
【0017】
(端末番号を区画基板枚数で除した余りによるグループ分けと回線接続)
防災受信盤は、接続対象とする複数の回線の各々に対応して区画基板を複数枚備え、
複数の端末機器は、一列状に配置されると共に配置順に連続する数値番号が付与され、区画基板の枚数で数値番号を除算した剰余が同一となる端末機器毎に複数のグループを形成して、回線毎にグループ単位で接続される。
【0018】
(端末機器の種類)
端末機器は、トンネル長手方向に所定間隔で設置された火災検知器、手動通報装置、消火栓スイッチ又は水噴霧スイッチの少なくとも何れかである。
【0019】
(消火栓スイッチ)
消火栓スイッチは、消火栓弁の開放操作を検出してポンプ起動信号を出力する消火栓弁開閉スイッチと、押し釦操作を検出してポンプ起動信号を出力するポンプ起動スイッチが並列接続される。
【発明の効果】
【0020】
(基本的な効果)
本発明は、防災受信盤から引き出された回線に、トンネル内に設置された端末機器を接続し、回線単位に端末機器からの信号を受信して制御するトンネル防災システムに於いて、防災受信盤に、端末機器からの信号を受信して所定の制御を指示する複数の区画基板が設けられ、複数の区画基板の何れかが故障した場合に、故障した区画基板から引き出された回線に接続されている端末機器に隣接して正常な区画基板から引き出された回線に接続されている端末機器が位置するように、複数の区画基板の各々から引き出された回線に複数の端末機器が接続されたため、防災受信盤に設けられた複数の区画基板の何れかが故障した場合、故障した区画基板からの回線に接続している端末機器による監視機能は失われるが、残りの正常な区画基板からの回線に接続している端末機器が故障により監視機能が失われた端末機器に隣接して監視しており、複数の端末機器により監視しているトンネル内の一定区間の監視が全て行えなくなってしまうことを防止可能とする。
【0021】
また、端末機器が隣接する他の端末機器と重複した監視エリアを持つ場合には、複数の区画基板の何れかが故障しても、全ての区間の監視を継続することができる。
【0022】
(端末機器の奇数と偶数のグループ分けと回線接続の効果)
また、区画基板を2枚とした場合、複数の端末機器を、トンネル長手方向の配置順に付与した連続する数値番号が奇数となる奇数グループと数値番号が偶数となる偶数グループに分け、区画基板の一方から引き出された回線に奇数グループに属する複数の端末機器が接続され、区画基板の他方から引き出された回線に偶数グループに属する複数の端末機器が接続されるようにしたため、何れか一方の区画基板が故障した場合、正常な端末機器と故障により監視機能を失った端末機器の配置がトンネル長手方向に交互に繰り返すこととなり、複数の端末機器で監視している一定区画の監視が全て行われなくなってしまうことを防止し、必要最小限の監視機能の維持を可能とし、故障した区画基板の修理交換に時間的な余裕をとることができる。
【0023】
(端末番号を区画基板枚数で除した余りによるグループ分けと回線接続の効果)
また、複数の端末機器にトンネル長手方向の配置順に連続する数値番号を付与した場合に、区画基板の枚数で端末機器の数値番号を除した場合の余りが同一となる端末機器毎にグループ分けし、複数の区画基板の各々から引き出された回線に各グループに属する複数の端末機器がグループ単位に接続されるようにしたため、複数の区画基板の何れかが故障した場合に、故障した区画基板から引き出された回線に接続されている端末機器に隣接して正常な区画基板から引き出された回線に接続されている端末機器が位置するように、複数の区画基板から引き出された回線に接続するための複数の端末機器のグループ分けを簡単に行うことができる。
【0024】
(端末機器の種類による効果)
また、端末機器は、トンネル長手方向に所定間隔で設置された火災検知器、手動通報装置、消火栓スイッチ又は水噴霧スイッチの少なくとも何れかであり、火災検知器は、両側に隣接する他の火災検知器と重複する検知エリアが設定され、火災検知器は両側に隣接する他の火災検知器と重複する検知エリアが設定されていることから、複数の区画基板の何れかが故障しても、監視が行えなくなる検知エリアは発生することはない。
【0025】
また、手動通報装置は、トンネル長手方向に所定間隔で設置された消火栓装置に設けられて火災通報信号を出力するが、複数の区画基板の何れかが故障しても、故障により機能が失われた手動通報装置に隣接した他の手動通報装置は正常に機能し、手動通報装置が設けられた消火栓装置の設置間隔は50メートルであり、区画基板の故障により機能が失われた手動通報装置の部分で設置間隔が100メートルに拡大するが、従来のように800メートルといった一定区画の機能が全て失われるようなことはなく、必要最小限の監視機能は維持できる。
【0026】
この点は消火栓装置に設けられた消火栓弁開閉スイッチとポンプ起動スイッチが並列接続された消火栓スイッチも同様である。
【0027】
更に、水噴霧設備の自動弁装置に設けられた水噴霧スイッチの場合は、水噴霧が火災発生場所を含む複数区画の自動弁装置の開制御により行われることから、複数の区画基板の何れかが故障しても、故障により機能が失われた水噴霧スイッチに隣接した他の水噴霧スイッチは正常に機能することから、水噴霧設備による水噴霧開始の監視機能が失われることはない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】防災受信盤の基板構成を端末回線接続と共に示したブロック図
【
図3】トンネル防災システムの機能構成の概略を示したブロック図
【
図4】区画基板を2枚とした場合の端末機器の回線接続の実施形態を示したブロック図
【
図5】
図4の火災検知器の回線接続を例にとって区画基板の正常時と故障時の監視機能を示したブロック図
【
図6】区画基板を3枚とした場合の端末機器の回線接続の実施形態を示したブロック図
【
図7】従来のP型直送方式による防災受信盤に対する端末機器の回線接続を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0029】
[トンネル防災システムの概要]
図1はトンネル防災システムの概要を示した説明図である。
図1に示すように、自動車専用道路のトンネルとして、上り線トンネル1aと下り線トンネル1bが構築され、上り線トンネル1aと下り線トンネル1bは避難連絡坑2でつながっている。
【0030】
上り線トンネル1aと下り線トンネル1bの内部には、トンネル長手方向の壁面に沿って例えば50メートル間隔で端末機器として機能する火災検知器16が設置されている。火災検知器16は左右50メートルとなる両側に監視エリアを設定し、火災による炎を検知して火災発報する。
【0031】
また、上り線トンネル1aと下り線トンネル1bの内部には、トンネル長手方向の監視員通路の壁面に沿って例えば50メートル間隔で消火栓装置18と自動弁装置23が設置されている。消火栓装置18には端末機器として機能する手動通報装置20と消火栓スイッチ22が設けられている。
【0032】
消火栓装置18は消火栓扉内にノズル付きホースが収納されており、火災時には消火栓扉を開いてノズル付きホースを引き出し、消火栓弁開閉レバーを開操作すると消火用水が放水され、また、消火栓弁開閉スイッチがオンしてポンプ起動信号を出力して消火ポンプを起動させる。また、消火栓装置18には消火器扉が設けられ、その中に消火器を収納している。
【0033】
また、消火栓装置18には消防隊が使用する給水栓が設けられ、これに合わせて消防隊員が操作するとポンプ起動信号を出力するポンプ起動スイッチが設けられている。消火栓弁開閉スイッチとポンプ起動スイッチは並列接続されており、これが図示の消火栓スイッチ22として機能する。
【0034】
更に、消火栓装置18には通報装置扉が設けられており、通報装置扉には発信機として機能する手動通報装置20が設けられている。手動通報装置20が操作されると火災通報信号が防災受信盤10に出力され、防災受信盤10からの応答信号により応答ランプが点灯される。
【0035】
また、上り線トンネル1aと下り線トンネル1bの内部には、トンネル長手方向の監視員通路の壁面に沿って例えば50メートル間隔で水噴霧設備の自動弁装置23が設置されており、自動弁装置23は作動用電動弁の遠隔開制御により主弁を開駆動し、トンネル壁面の上部の長手方向に設置した複数の水噴霧ヘッドから消火用水を放水してトンネル躯体を火災から防護する。水噴霧設備の自動弁装置23には端末機器として水噴霧ヘッドからの水噴霧開始を検出する水噴霧スイッチ24が設けられている。水噴霧スイッチ24は自動弁の開作動による放水圧力を検出してオンする圧力スイッチが用いられる。
【0036】
トンネル内に設置している火災検知器16、手動通報装置20、消火栓スイッチ22及び水噴霧スイッチ24などの端末機器を接続してトンネル内の異常を監視するため、監視センター等に防災受信盤10が設置されている。
【0037】
防災受信盤10からは上り線トンネル1aと下り線トンネル1b内に、P型の信号回線群11,12が引き出され、トンネル内に設置している火災検知器16、手動通報装置20、消火栓スイッチ22及び水噴霧スイッチ24が接続されている。本実施形態における火災検知器16、手動通報装置20、消火栓スイッチ22及び水噴霧スイッチ24に対する回線接続の詳細は後の説明で明らかにされる。
【0038】
ここで、P型の信号回線は信号線とコモン線で構成され、火災検知器16、手動通報装置20、消火栓スイッチ22及び水噴霧スイッチ24は、それぞれの作動に基づき回線電流を流すことで、火災検知信号、火災通報信号、ポンプ起動信号、水噴霧開始信号を防災受信盤10に送るようにしている。
【0039】
またトンネルの非常用施設としては、これ以外に、消火ポンプ設備25、換気設備28、警報表示板設備30、ラジオ再放送設備32、TV監視設備34及び照明設備36、IG子局設備38等が設けられており、IG子局設備38がデータ伝送回線で接続する点を除き、それ以外の設備は信号回線群14により防災受信盤10に個別に接続している。
【0040】
ここで、IG子局設備38は、防災受信盤10と遠方管理設備42を、ネットワーク40を経由して結ぶ通信設備である。換気設備28は、トンネル内の天井側に設置しているジェットファンの運転による高い吹き出し風速によってトンネル内の空気にエネルギーを与えて、トンネル長手方向に換気の流れを起こす設備である。
【0041】
また、警報表示板設備30は、トンネル内の利用者に対して、トンネル内の火災発生や水噴霧開始等を電光表示板に表示して知らせる設備である。ラジオ再放送設備32は、トンネル内で運転者等が道路管理者からの情報を受信できるようにするための設備である。TV監視設備34は、火災の規模や位置を確認したり、水噴霧設備の作動、避難誘導を行う場合のトンネル内の状況を把握するための設備である。照明設備36はトンネル内の照明機器を駆動して管理する設備である。
【0042】
[防災受信機の基板構成]
図2は防災受信盤の基板構成を端末回線接続と共に示したブロック図である。
図2に示すように、防災受信盤10には、制御ラック46と区画ラック52が設けられている。制御ラック46には制御CPU基板48と制御CPU予備基板50が設けられ、基板が二重化されている。
【0043】
区画ラック52には区画CPU基板54と区画CPU予備基板56が設けられ、基板が二重化されている。また、区画ラック52には、上り線トンネル1aの端末機器に対応して2枚の区画基板60-1,60-2が設けられ、また、下り線トンネル1bの端末機器
に対応して2枚の区画基板60-3,60-4が設けられている。また、区画ラック52にはP型出力基板62が設けられている。
【0044】
二重化された区画CPU基板54と区画CPU予備基板56は、二重化されたRS-485などのシリアル伝送路76,78を介して二重化された制御CPU基板48と制御CPU予備基板50に接続されている。また、二重化された区画CPU基板54と区画CPU予備基板56は信号回線を介して区画基板60-1~60-4及びP型出力基板62に接続されている。P型出力基板62は
図1に示した外部の消火ポンプ設備25、換気設備28、警報表示板設備30、ラジオ再放送設備32、TV監視設備34及び照明設備36に接続される。
【0045】
区画基板60-1からは上り線トンネル1aに対し16回線単位まとめられたP型の信号回線群80-1,82-1,84-1,86-1(合計128回線)が引き出されており、火災検知器16、手動通報装置20、消火栓スイッチ22及び水噴霧スイッチ24が回線単位に接続されている。
【0046】
ここで、1600メートルのトンネル区間には50メートル間隔で火災検知器16が32台設置されており、信号回線群80-1,80-2はそれぞれ16回線であり、信号回線群80-1,80-2の信号回線の各々に火災検知器16が交互に接続されている。この点は、信号回線群82-1,84-1,86-1による手動通報装置20、消火栓スイッチ22及び水噴霧スイッチ24の接続も同様である。
【0047】
なお、手動通報装置20、消火栓スイッチ22及び水噴霧スイッチ24については、トンネル区間を例えば200メートルのブロック区間に分け、1ブロックに含まれる例えば4台の端末機器を同じ信号回線に接続してブロック単位に監視する場合もあるが、以下の説明は、端末機器単位に信号回線を接続して端末機器単位に監視する場合を例にとっている。
【0048】
区画基板60-2からは上り線トンネル1aに対し16回線単位まとめられたP型の信号回線群80-2,82-2,84-2,86-2(合計128回線)が引き出されており、残りの火災検知器16、手動通報装置20、消火栓スイッチ22及び水噴霧スイッチ24が回線単位に接続されている。
【0049】
区画基板60-3からは下り線トンネル1bに対し16回線単位まとめられたP型の信号回線群80-3,82-3,84-3,86-3(合計128回線)が引き出されており、火災感知器16、手動通報装置20、消火栓スイッチ22及び水噴霧スイッチ24が回線単位に接続されている。
【0050】
区画基板60-4からは下り線トンネル1bに対し16回線単位まとめられたP型の信号回線80-4,82-4,84-4,86-4(合計128回線)が引き出されており、残りの火災検知器16、手動通報装置20、消火栓スイッチ22及び水噴霧スイッチ24が回線単位に接続されている。
【0051】
なお、区画ラック52には、火災検知器16に対して渡り配線となる試験信号回線により試験信号を送る検知器試験基板が設けられるが、図示を省略している。
【0052】
また、防災受信盤10には操作表示CPU基板64が設けられ、タッチパネルや各種の操作スイッチを備えた操作部66及びスピーカを備えた音響部68が接続されると共に、表示制御基板70を介して液晶ディスプレイや各種表示灯を備えた表示部72が接続される。更に、防災受信盤10にはシリアルCPU基板74が設けられ、
図1に示したIG子局設備
38が接続される。
【0053】
[防災受信盤の機能構成]
図3はトンネル防災システムの機能構成の概略を示したブロック図である。
図3に示すように、防災受信盤10には主制御部90が設けられ、主制御部90は例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしては
図2の制御CPU基板48に設けられたCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等が使用される。
【0054】
主制御部90は、火災検知器16からの火災検知信号又は手動通報装置20からの火災通報信号を受信した場合は所定の火災警報制御を行い、消火栓スイッチ22からのポンプ起動信号を受信した場合は消火ポンプ設備25の起動制御を行い、更に、水噴霧スイッチ24からの水噴霧開始信号を受信した場合は警報表示板設備30に水噴霧開始に伴うトンネル侵入禁止の警告表示等の制御を行わせる。
【0055】
主制御部90に対しては区画制御部96が設けられ、区画制御部96は例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしては
図2の区画CPU基板54に設けられたCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等が使用される。
【0056】
区画制御部96は、トンネル内に設置した端末機器からの回線信号を受信した場合、回線信号の種別と受信した信号回線を特定する回線番号を主制御部90に送って所定の制御を行わせる。
【0057】
区画制御部96に対しては上り線トンネル1aの火災検知器16、手動通報装置20、消火栓スイッチ22及び水噴霧スイッチ24の各々に対応して2組のP型受信部98-1,98-2,100-1,100-2,102-1,102-2,104-1,104-2が設けられる。ここで、P型受信部98-1,100-1,102-1,104-1は
図2の区画基板60-1が使用され、P型受信部98-2,100-2,102-2,104-2は
図2の区画基板60-2が使用される。
【0058】
また、区画制御部96に対しては下り線トンネル1bの火災検知器16、手動通報装置20、消火栓スイッチ22及び水噴霧スイッチ24の各々に対応して2組のP型受信部98-3,98-4,100-3,100-4,102-3,102-4,104-3,104-4が設けられる。ここで、P型受信部98-3,100-3,102-3,104-3は
図2の区画基板60-3が使用され、P型受信部98-4,100-4,102-4,104-4は
図2の区画基板60-4が使用される。
【0059】
P型受信部98-1~104-4は、端末機器として設けられた火災検知器16、手動通報装置20、消火栓スイッチ22及び水噴霧スイッチ24から出力される信号を回線単位に受信して受信信号を区画制御部96に出力し、この受信信号は区画制御部96から主制御部90に送られ、火災警報制御、ポンプ起動制御、水噴霧警報表示制御等が行われる。
【0060】
主制御部90に対しては、音響部68、操作部66、表示部72、シリアル伝送部92及びP型出力部94が設けられている。この内、シリアル伝送部92は
図2のシリアルCPU基板74が使用され、P型出力部94は
図2のP型出力基板62が使用される。なお、シリアルCPU基板74に代えてパラレルCPU基板を設け、これに対応して
図3のシリアル伝送部92をパラレル伝送部としても良い。
【0061】
[区画基板の故障対策]
図4は区画基板を2枚とした場合の端末機器の回線接続の実施形態を示したブロック図である。なお、
図4は上り線トンネル1a側の端末機器を示しており、下り線トンネル1b側は図示を省略している。
【0062】
本実施形態のトンネル防災システムにあっては、
図4に示すように端末機器として火災検知器16を例にとって説明すると、防災受信盤10に火災検知器16からの信号を受信して所定の制御を指示する複数の区画基板60-1,60-2が設けられ、区画基板60-1,60-2の何れかが故障した場合、例えば区画基板60-2が故障した場合、故障した区画基板60-2から引き出された信号回線群80-2に接続されている火災検知器16に隣接して正常な区画基板60-1から引き出された信号回線群80-1に接続されている火災検知器16が位置するように、複数の区画基板60-1,60-2の各々から引き出された信号回線群80-1,80-2に複数の火災検知器16が接続されている。
【0063】
本実施形態は、トンネル長を1600メートルとした場合を例にとっており、火災検知器16は50メートル間隔に設置されることから、1600メートルでは32台が設置され、これに対応して火災検知器16のトンネル長手方向の配置順を示す端末配置番号(数値番号)Aとして1~32の番号数字を示している。
【0064】
(端末機器の奇数と偶数のグループ分けによる回線接続)
図4に示すように、防災受信盤10に区画基板60-1,60-2の2枚が設けられた場合、32台の火災検知器16のトンネル長手方向の配置順に付与した連続する端末配置番号Aが奇数(A=1,3,5,・・・・,29,31)となる奇数グループと端末配置番号Aが偶数(A=2,4,6,・・・,30,32)となる偶数グループに分け、区画基板60-1から引き出された信号回線群80-1の信号回線単位に奇数グループに属する16台の火災検知器16が接続され、区画基板60-2から引き出された信号回線群80-2の信号回線単位に偶数グループに属する残り16台の火災検知器16が接続される。
【0065】
この関係を明確にするため、区画基板60-2とこれに接続された火災検知器16にハッチングを入れて表している。
【0066】
図5は
図4の火災検知器の回線接続を例にとって区画基板の正常時と故障時の監視機能を示したブロック図であり、
図5(A)が正常時を示し、
図5(B)が故障時を示す。
【0067】
図5(A)に示す区画基板60-1,60-2が正常な場合には、トンネル長手方向に配置された複数の火災検知器16は区画基板60-1,60-2に対し信号回線群80-1,80-2により交互に接続された状態にある。
【0068】
ここで、
図5(B)に示すように、例えば区画基板60-2が故障した場合には、信号回線群80-2により接続している
図5(A)にハッチングを付して示した火災検知器16による監視機能が失われ、この機能が失われた状態を
図5(B)では点線で表している。
【0069】
このように区画基板60-2の故障により端末配置番号Aが偶数となる火災検知器16の監視機能が失われても、機能が失われた火災検知器16に隣接して、正常な区画基板60-1に接続されて正常に動作している端末配置番号Aが奇数となる火災検知器16が位置し、
図7の従来例に示したように、片方の区画基板の故障により複数の火災検知器16による800メートルの区間の全てが監視できなくなる事態を防止することができる。
【0070】
また、火災検知器16は、50メートル間隔で設置された場合に左右の両方向の50メートルの範囲を検知エリアとしており、正常時は隣接した火災検知器16は同じ検知エリアを重複監視している。このため、区画基板60-2の故障により一つ置きに火災検知器16の監視機能が失われても、正常な区画基板60-1に接続されている隣接した火災検知器16との重複監視が解消されるが単独の監視機能は維持され、区画基板60-2が故障してもトンネル内の火災監視機能が失われることはなく、監視機能を維持したまま、故障した区画基板60-2の修理交換に時間的な余裕をとることができる。この点は、区画基板60-1が故障した場合にも、同様にトンネル内の火災監視機能が失われることはない。
【0071】
このような2枚の区画基板60-1,60-2に対する火災検知器16の奇数グループと偶数グループに分けて行う信号回線群の接続は、
図4に示した手動通報装置20、消火栓スイッチ22及び水噴霧スイッチ24についても同様となる。
【0072】
この場合、手動通報装置20は、トンネル長手方向に50メートルで設置された消火栓装置18に設けられて火災通報信号を出力するが、区画基板60-1,60-2の何れかが故障しても、故障により機能が失われた手動通報装置20に隣接した他の手動通報装置20は正常に機能し、手動通報装置20が設けられた消火栓装置18の設置間隔は50メートルであり、区画基板60-1,60-2の何れかが故障により機能が失われた手動通報装置20の部分で設置間隔が100メートルに拡大するが、
図7の従来例のように800メートルといった一定区画の機能が全て失われるようなことはなく、必要最小限の監視機能は維持できる。この点は、消火栓スイッチ22の場合も同様となる。
【0073】
また、水噴霧スイッチ24による水噴霧開始信号を防災受信盤10で受信した場合、
図1に示した警報表示板設備30に水噴霧開始によるトンネル侵入禁止等の警報表示を行うことになるが、水噴霧設備の動作は火災発生場所を中心に複数区画の自動弁装置23を作動させることから、区画基板60-1,60-2の何れかが故障して一つ置きに水噴霧スイッチ24の機能が失われても、隣接した水噴霧スイッチ24による監視が有効に行われることで、
図7の従来例のように800メートルといった一定区画の水噴霧スイッチ24の機能が全て失われるようなことはなく、必要最小限の監視機能は維持できる。
【0074】
[端末番号を区画基板枚数で除した余りによるグループ分けと回線接続]
(区画基板の枚数をNとした一般系)
本実施形態により防災受信盤10に複数枚の区画基板を設けて端末機器を信号回線群により接続するためのグループ分けは、次のように一般化することができる。
【0075】
いま、
図4に示したと同様に、複数の端末機器にトンネル長手方向の配置順に連続する端末配置番号Aを付与した場合に、区画基板の枚数Nで端末機器の端末配置番号Aを除した場合の余りCが同一となる端末機器毎にグループ分けし、複数の区画基板の各々から引き出された信号回線に各グループに属する複数の端末機器がグループ単位に接続されるようにすれば良い。
【0076】
ここで、端末機器の端末配置番号をA、区画基板の枚数をN、端末機器のグループ番号をGとすると、
G=(A)mod(N) (式1)
によりグループ番号Gを求める。この(式1)の右辺は、端末配置番号Aを区画基板の枚数Nで割った余りの算出を意味する剰余計算を示している。
【0077】
例えば
図4の火災検知器16の場合、A=1,2,3,・・・・31,32、N=2であることから、(式1)からグループ番号G=1,0,1,・・・・1,0となり、G=1の第1グループとG=0の第2グループに分け、G=1の第1グループの火災検知器16は区画基板60-1からの信号回線群80-1の信号回線単位に接続し、G=0の第2グループの火災検知器16は区画基板60-2からの信号回線80-2の信号回線単位に接続する。
【0078】
ここで、G=1の第1グループは前述した奇数グループに対応し、G=0の第2グループは前述した偶数グループに対応しており、端末配置番号Aから奇数グループと偶数グループの端末機器に分けて信号回線に接続した場合と同じ結果となる。
【0079】
(区画基板3枚とした場合のグループ分けと回線接続)
前述した(式1)による端末機器のグループ分けに基づく信号回線の接続は、区画基板の枚数NをN=3枚以上とした場合に、グループ分けによる信号回線の接続を簡単に決めることができる。
【0080】
図6は区画基板を3枚とした場合の端末機器の回線接続の実施形態を示したブロック図である。
【0081】
図6に示すように、本実施形態にあっては、防災受信盤10に3枚の区画基板60-1,60-2,60-3が設けられている。この場合、区画基板の枚数NはN=3であることから、例えば火災検知器16の端末配置番号A=1,2,3,4,5,6,・・・,30,31,32について、前記(式1)からグループ番号Gを求めると、
G=1,2,0,1,2,0,・・・,1,2,0
が求められ、G=1の第1グループ、G=2の第2グループ、G=0の第3グループに分けられる。
【0082】
そこで、区画基板60-1から引き出された信号回線群80-1の信号回線単位にG=1の第1グループに属する11台の端末機器が接続され、区画基板60-2から引き出された信号回線群80-2の信号回線単位にG=2の第2グループに属する11台の火災検知器16が接続され、区画基板60-3から引き出された信号回線群80-3の信号回線単位にG=0の第3グループに属する10台の火災検知器16が接続される。
【0083】
この点は、手動通報装置20、消火栓スイッチ22及び水噴霧スイッチ24についても同様となる。
【0084】
この場合にも、区画基板60-1~60-3の何れかが故障した場合、正常な2台の端末機器と故障により監視機能を失った1台の端末機器の配置がトンネル長手方向に繰り返すこととなり、故障により機能を失った端末機器に隣接して正常な端末機器が位置することで、複数の端末機器で監視している一定区画の監視が全て行われなくなってしまうことを防止し、必要最小限の監視機能の維持を可能とし、故障した区画基板の修理交換に時間的な余裕をとることができる。なお、必要応じて区画基板の枚数NをN=4以上としても良い。
【0085】
[本発明の変形例]
(端末機器)
上記の実施形態は、区画基板に信号回線により接続される端末機器として、火災検知器、手動通報装置、消火栓スイッチ、水噴霧スイッチを例にとっているが、これに限定されず、火災に関連して操作する適宜の端末機器の操作、例えば非常電話の通報操作、消火器の取出等を端末機器として区画基板に接続する場合にも適用できる。
【0086】
(CPU間の伝送)
上記の実施形態は、制御CPU基板、制御CPU予備基板、区画CPU基板、及び区画CPU予備基板の間をシリアル伝送路により接続しているが、これに限定されず、パラレル伝送路により接続しても良い。
【0087】
(その他)
また、本発明は、その目的と利点を損なわない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0088】
1a:上り線トンネル
1b:下り線トンネル
10:防災受信盤
11,12,14:信号回線群
16:火災検知器
18:消火栓装置
20:手動通報装置
22:消火栓スイッチ
23:自動弁装置
24:水噴霧スイッチ
25:消火ポンプ設備
28:換気設備
30:警報表示板設備
32:ラジオ再放送設備
34:TV監視設備
36:照明設備
38:IG子局設備
40:ネットワーク
42:遠方管理設備
46:制御ラック
48:制御CPU基板
50:制御CPU予備基板
52:区画ラック
54:区画CPU基板
56:区画CPU予備基板
60-1~60-4:区画基板
62:P型出力基板
64:操作表示CPU基板
66:操作部
68:音響部
70:表示制御基板
72:表示部
74:シリアルCPU基板
76,78:シリアル伝送路
80-1~86-4:信号回線群
90:主制御部
92:シリアル伝送部
94:P型出力部
96:区画制御部
98-1~104-4:P型受信部