(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】ビスフェノールリン酸エステルヒドロキシアルミニウム塩造核剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 19/00 20060101AFI20240304BHJP
C07F 9/6574 20060101ALI20240304BHJP
C07F 5/06 20060101ALN20240304BHJP
【FI】
C07F19/00
C07F9/6574 Z
C07F5/06 F
(21)【出願番号】P 2021507841
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 CN2020087929
(87)【国際公開番号】W WO2021073070
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】201910983521.6
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521061852
【氏名又は名称】山西省化工研究所(有限公司)
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】王克智
(72)【発明者】
【氏名】張建軍
(72)【発明者】
【氏名】毛晨曦
(72)【発明者】
【氏名】李向陽
(72)【発明者】
【氏名】林福華
(72)【発明者】
【氏名】李訓剛
(72)【発明者】
【氏名】王晶
(72)【発明者】
【氏名】王冉
(72)【発明者】
【氏名】劉鳳玉
(72)【発明者】
【氏名】王晨
(72)【発明者】
【氏名】王凱
(72)【発明者】
【氏名】李少陽
(72)【発明者】
【氏名】張鴻宇
(72)【発明者】
【氏名】鐘艶文
(72)【発明者】
【氏名】張惠芳
(72)【発明者】
【氏名】代燕琴
(72)【発明者】
【氏名】崔凱
(72)【発明者】
【氏名】張▲みい▼
(72)【発明者】
【氏名】鞏翼龍
(72)【発明者】
【氏名】陸朝陽
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-323763(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102850578(CN,A)
【文献】特開平06-340786(JP,A)
【文献】特開平08-134260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C08K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスフェノールリン酸エステルヒドロキシアルミニウム塩造核剤の製造方法であって、
ビスフェノールリン酸エステルと、
アルミニウムアルコキサイドとを、有機溶媒において反応させて中間体を得るステップ(1)と、
前記ステップ(1)で得られた前記中間体を加水分解し、蒸留することによって、副生成物としてのアルコール及び有機溶媒を除去し、さらに濾過、乾燥することによって、ビスフェノールリン酸エステルヒドロキシアルミニウム塩造核剤を得るステップ(2)とを含
み、
前記アルミニウムアルコキサイド[AL(OR)
3
]は、低級アルミニウムアルコキサイドであり、Rが炭素数1~4のアルキル基であり、
前記ビスフェノールリン酸エステル、前記アルミニウムアルコキサイド及び前記有機溶媒の重量比は、13~31:1.3~7.6:50~84である、ビスフェノールリン酸エステルヒドロキシアルミニウム塩造核剤の製造方法。
【請求項2】
前記ビスフェノールリン酸エステルヒドロキシアルミニウム塩造核剤は、化1で示される構造を有するジ[2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ)リン酸エステル]ヒドロキシアルミニウム塩である請求項1に記載の方法。
【化1】
【請求項3】
前記ビスフェノールリン酸エステルは、化2で示される構造を有する2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ)リン酸エステルである、請求項1に記載の方法。
【化2】
【請求項4】
前記中間体は、化3で示される構造を有するジ[2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ)リン酸]ヒドロキシアルミニウム塩である請求項
1に記載の方法。
【化3】
【請求項5】
前記ヒドロキシアルミニウム塩におけるヒドロキシ基は、前記
アルミニウムアルコキサイド[AL(OR)
3]に対応す
る低級アルコールであ
り、Rが炭素数1~4のアルキル基である、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記有機溶媒は、アルカン、シクロアルカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロアルカンである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップ(2)における反応温度は、25℃~140℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記反応温度は、70℃~110℃である、請求項
7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー造核剤の技術分野に関し、具体的には、ビスフェノールリン酸エステルヒドロキシアルミニウム塩造核剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アリールリン酸エステル塩類としてのポリプロピレンα結晶型造核剤は、従来のα結晶型造核剤に比べて、比較的に低い濃度でも、ポリプロピレン樹脂に対して良好な剛性、透明性、表面光沢、耐熱変形性を付与することができる。
【0003】
アリールリン酸エステル塩は、ベース樹脂との相溶性が良く、分散しやすく、抽出に強いため、高剛性PP専用材、透明射出成形品、自動車用PP部材及び使い捨て注射器などの加工品に広く使用できる。また、PET、PBT、PAなどのエンジニアリングプラスチックに対しても良好な造核効果を発揮できる。特許文献1、特許文献2及び特許文献3には、アリールリン酸エステル塩を合成するプロセスが開示されている。
【0004】
上記の先行技術は、いずれも、まずビスフェノールリン酸エステルとアルカリとを中和してビスフェノールリン酸エステルナトリウム塩を調製した後、無機アルミニウム塩と複分解反応させることにより、ビスフェノールリン酸エステルヒドロキシアルミニウム塩を調製する。このような製造方法における2ステップ反応は、いずれも不均一反応であり、反応速度が遅く、反応時間が長く、生成物純度が低く、アルミニウムの一置換体である副生成物が多量に存在し、塩を含む排水が発生する。
【0005】
上記先行技術により調製されるビスフェノールリン酸エステルヒドロキシアルミニウム塩造核剤の合成原理は、以下のとおりである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】中国特許出願公開第201610873241.6号明細書
【文献】中国特許出願公開第201110151387.7号明細書
【文献】中国特許出願公開第20111051413.6号明細書
【発明の概要】
【0007】
本願発明は、従来技術の欠点を克服するためになされたものであり、ビスフェノールリン酸エステルとアルミニウムアルコキサイドとによって置換ビスフェノールリン酸エステルヒドロキシアルミニウム塩を調製した後、加水分解させることによってビスフェノールリン酸エステルヒドロキシアルミニウム塩を調製する、ワンポット法によるビスフェノールリン酸エステルヒドロキシアルミニウム塩造核剤の製造方法を提供する。
【0008】
ビスフェノールリン酸エステルヒドロキシアルミニウム塩造核剤の製造方法は、
ビスフェノールリン酸エステル13~31重量部と、アルミニウムアルコキサイド1.3~7.6重量部とを、有機溶媒50~84重量部に混合し、所定温度にて反応させることによって、中間体を得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた中間体を加水分解し、蒸留することによって、副生成物であるアルコール及び有機溶媒を除去し、最後に濾過、乾燥することによって、ビスフェノールリン酸エステルヒドロキシアルミニウム塩造核剤を得るステップ(2)とを含む。
【0009】
ステップ(2)における所定温度は、25℃~140℃であることが好ましく、70℃~110℃であることがより好ましい。
前記ビスフェノールリン酸エステルヒドロキシアルミニウム塩造核剤は、化1で示される構造を有するジ[2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ)リン酸エステル]ヒドロキシアルミニウム塩である。
【0010】
【化1】
前記ビスフェノールリン酸エステルは、化2で示される構造を有する2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ)リン酸エステルである。
【0011】
【化2】
前記
アルミニウムアルコキサイド[AL(OR)
3]は、炭素数1~4の低級
アルミニウムアルコキサイドである。
【0012】
前記中間体は、化3で示される構造を有するジ[2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ)リン酸エステル]ヒドロキシアルミニウム塩である。
【0013】
【化3】
前記ヒドロキシアルミニウム塩における前記ヒドロキシ基は、前記
アルミニウムアルコキサイド[AL(OR)
3]に対応する炭素数1~4の低級アルコールである。
【0014】
前記有機溶媒は、アルカン、シクロアルカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、塩化メチレン、クロロホルムなどのクロロアルカン類である。
本発明の合成原理は、以下のようである。
【発明の効果】
【0015】
本発明において、有機アルミニウムアルコキサイドを原料としてビスフェノールリン酸エステルヒドロキシアルミニウム塩を調製し、従来技術における2ステップ反応を、リン酸エステルと有機アルミニウムアルコキサイドとの1ステップ反応に合併してビスフェノールリン酸エステルヒドロキシアルミニウム塩を合成する。本発明の製造方法によれば、製造プロセスの簡略化、生産効率の向上、反応時間の短縮、生成物の品質向上を実現できる。また、本発明の製造方法によれば、塩を含む排水が発生しないため、製造プロセスがエコである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
比較例:
フラスコに水酸化ナトリウム3.34g、水100mlを加え、撹拌しながら、36gのビスフェノールリン酸エステルを添加し、80℃に加熱して2時間反応させた後、濾過、乾燥することで、ビスフェノールリン酸エステルナトリウム塩を得た。当該ナトリウム塩をアルコールの水混合液170mlに加え、60℃まで加熱し、ナトリウム塩が完全に溶解されたら、反応器に三塩化アルミニウム8.4gと水10mlとの混合液を滴下して、2時間反応させた。
【0017】
反応器に苛性ソーダ1.56gを加えて、30分間反応させた後、濾過、乾燥させることで、ビスフェノールリン酸エステルヒドロキシアルミニウム塩を得た。
実施例:
フラスコにビスフェノールリン酸エステル12g、トリイソプロポキシアルミニウム2.65g、溶媒60mlを加え、撹拌しながらゆっくりと加熱して副生成物を蒸留し、反応終了後に水を入れて蒸留することにより、溶媒を回収した。
【0018】
蒸留終了後、冷却、濾過、乾燥を経て、生成物であるビスフェノールリン酸エステルヒドロキシアルミニウム塩を得た。
生成物に対する測定:
1 元素分析
【0019】
【表1】
元素分析の結果:比較例において従来技術の方法で調製し、実施例においては本発明の方法で調製した。実施例における元素分析の結果のほうが、より理論値に近かった。
2 赤外線による分析
【0020】
【表2】
赤外線分析の結果:両方法によって調製した生成物に対する赤外線分析スペクトルを比較すると、本発明の方法によって調製した生成物は、アルミニウム塩の二置換体がより完全であった。