(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】酸化触媒の活性化のための方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/85 20060101AFI20240304BHJP
C07C 31/12 20060101ALI20240304BHJP
C07C 29/152 20060101ALI20240304BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240304BHJP
【FI】
B01J23/85 Z
C07C31/12
C07C29/152
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021512877
(86)(22)【出願日】2019-09-06
(86)【国際出願番号】 GB2019052485
(87)【国際公開番号】W WO2020053555
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-08-29
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518329767
【氏名又は名称】ジョンソン マッセイ デイヴィー テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ベインブリッジ、マイケル
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-064019(JP,A)
【文献】国際公開第2010/030037(WO,A1)
【文献】特開平07-163880(JP,A)
【文献】特開2001-062311(JP,A)
【文献】特開2018-158915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07C 31/12
C07C 29/152
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒の活性化のためのプロセスであって、
(a)還元により活性化する固体触媒を含む、リアクターを準備する工程と、
(b)液体原料流及び還元剤を前記リアクターに供給する工程と、
(c)前記還元剤が前記触媒の活性化を引き起こすように、前記リアクターを運転する工程と、
(d)前記リアクターから液体流及びガス流を回収する工程と、を含み、
工程(b)で供給した前記液体原料流の水濃度を制御することと、
工程(d)で回収した前記液体流の回収速度を制御することと、
前記リアクター内で生じた水を除去することと、の1つ以上によって
、工程(d)で回収した前記液体流中のピーク水濃度を、1.5重量%未満に実質的に維持
し、
工程(d)で回収した前記液体流の少なくとも一部分を再循環させ、工程(b)で前記リアクターに供給し、
前記再循環の液体流を、前記リアクターに直接供給する、又は前記液体原料流及び前記還元剤の一方若しくは両方と組み合わせ、その後、前記リアクターに供給する、プロセス。
【請求項2】
工程(d)で前記リアクターから回収した前記液体流を、処理し、次いで前記液体原料流とともに再使用し(再循環させ)、工程(b)で前記リアクターに送給することができる、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記処理が、乾燥プロセスを含む、請求項
2に記載のプロセス。
【請求項4】
工程(a)で準備した前記リアクターが、前記触媒活性化プロセスをin situで行うように、触媒による後続の反応を行うものである、請求項1~
3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
活性化する前記触媒が、銅含有触媒である、請求項1~
4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
工程(b)で前記リアクターに送給した前記液体原料流が、前記触媒を使用する後続の反応において生じる生成物である、請求項1~
5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記液体原料流が、アルコール又はアルカンである、請求項
6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記液体原料が、アルコールである、請求項
7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記液体原料が、ブタノールである、請求項
8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記液体原料流の水濃度が、0.1重量%以下である、請求項1~
9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記還元剤が、気体還元剤である、請求項1~
10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記還元剤が、水素である、請求項
11に記載のプロセス。前記還元剤を、継続的に又はパルスで前記リアクターに添加することができる。
【請求項13】
還元剤の初期濃度が、約2モル%~約100モル%であり得る、請求項1~
12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
還元剤の濃度が、前記活性化プロセス中に約100モル%の最終濃度に増加する、請求項1~
13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記液体原料流及び前記還元剤を、別個に供給する、又は組み合わせた後前記リアクターに送給することができる、請求項1~
14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
不活性ガスの存在下で行う、請求項1~
15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
初期の周囲温度から約200℃までの間の温度で行う、請求項1~
16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
約130℃から約180℃までの間の温度で行う、請求項
17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記プロセス温度を、前記液体原料流を加熱することによって上昇させることができる、請求項1~
18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記プロセス温度を、存在する場合、前記再循環流を加熱することによって上昇させることができる、請求項1~
19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
正の総ガス圧力を、前記活性化プロセス中に提供する、請求項1~
20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記触媒上の前記液体流の流れが、約5~約150m
3/m
2hである、請求項1~
21のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
初期触媒湿潤プロセスを更に含む、請求項1~
22のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項24】
前記湿潤プロセスが、前記後続の活性化プロセスの工程(b)で供給する前記液体原料流と同じである湿潤液体を使用する、請求項
23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記湿潤プロセスに続いて、前記リアクターをパージすることによって、存在する水を除去し、それにより、含水量が約1.5重量%未満になる、請求項
22又は
23に記載のプロセス。
【請求項26】
前記活性化プロセスの開始時に初期加温があり、前記リアクターをパージすることによって、存在する水を除去し、前記水濃度を、約1.5重量%未満に維持する、請求項1~
25のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項27】
アルデヒドを水素添加するためのプロセスであって、請求項1~
26のいずれか一項に記載のプロセスで活性化した触媒の存在下、アルデヒドを水素と接触させる工程、を含む、プロセス。
【請求項28】
前記触媒反応を、前記活性化プロセスと同じリアクター容器にてin situで行う、請求項
27に記載の、アルデヒドを前記対応するアルコールにする水素添加のためのプロセス。
【請求項29】
請求項
27又は
28に記載の、アルデヒドを前記対応するアルコールにする水素添加のためのプロセスであって、請求項1~
26のいずれか一項に記載の活性化プロセスを行い、次いで前記触媒の活性化後に、前記リアクター温度及び/又は触媒床温度を、前記アルデヒドを前記対応するアルコールにする水素添加を行うのに好適な温度に調整し、前記活性化プロセスの工程(b)の前記液体原料流を、前記水素添加反応のための所望のアルデヒド原料流に切り替えることを含む、プロセス。
【請求項30】
前記アルデヒドが、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、2-エチルヘキセナール、2-プロピルヘプテナール、iso-ノニルアルデヒド、及び洗剤範囲のアルデヒドから選択される、請求項
27~
29のいずれか一項に記載の、アルデヒドを前記対応するアルコールにする水素添加のためのプロセス。
【請求項31】
水素添加反応における、請求項1~
26のいずれか一項に記載の活性化した触媒の使用。
【請求項32】
アルデヒドを前記対応するアルコールにする前記水素添加における、請求項
31に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒の活性化のための方法に関する。より具体的には、本発明は、アルデヒドをアルコールにする水素添加に使用するための触媒の活性化のための方法に関する。更なる態様では、本発明は、本発明の第1の態様によって活性化した触媒の存在下、アルデヒドをアルコールにする水素添加のための方法に関する。
【0002】
アルデヒドをアルコールにする水素添加は工業規模で実施されており、アルコールの工業的生成の重要部分である。このような方法の典型的な出発物質としては、n-ブチルアルデヒド、iso-ブチルアルデヒド、エチルプロピルアクロレイン、又はiso-ノニルアルデヒドが挙げられ、典型的な生成物としては、n-ブタノール、iso-ブタノール、2-エチルヘキサノール、2-プロピルヘプタノール、及びiso-ノニルアルコールが挙げられる。
【0003】
アルデヒドの水素添加によってアルコールを製造する反応は、非常に発熱性である。反応の熱を、概して、過剰のキャリアガス中でアルデヒドを循環させることによって除去する。この種類のプロセスの一例は、Hydrocarbon Processing,March 1993,pages67~74に記載され、その内容が参照により本明細書に組み込まれているものであり、又は過剰の液体中におけるものである。反応の熱を、概して、循環ガス又は液体から熱交換によって除去する。圧縮機などの特定の設備を必要とするガス流と比較して、液体流を循環させ、それから熱を除去することはより商用的に有効であるため、液相プロセスを改善することに焦点が当てられてきた。
【0004】
触媒を、アルデヒドをアルコールにする水素添加に使用し、これは概して不均一触媒である。不均一触媒は固体であってもよく、銅、ニッケル、及びコバルトを含有する触媒から選択されてもよい。好適な銅触媒は、(限定するものではないが)ニッケル、クロム、又は亜鉛などのプロモーターを含んでもよい。触媒は、マンガン又はバリウムを更に含んでもよい。これらはまた、アルミナ、シリカ、クロミア、ジルコニア、又は炭素などの担体上に存在してもよい。
【0005】
実際には、触媒を、部分的酸化形態又は完全酸化形態のいずれかで供給し、そのことにより、それらを安全にレクターに輸送し導入することができる。部分的酸化は、概して、表面酸化になる。触媒をリアクターに導入してから、触媒を使用して所望の反応の触媒とする前に、触媒を還元する必要がある。触媒を還元するこのプロセスは、全般的に活性化プロセスと呼ばれ、又はより全般的に「活性化」と呼ばれる。活性化は発熱プロセスであり、触媒を水素などの還元剤で処理することによって行われる。触媒を可能な限り迅速に活性化し、リアクターが休止している時間を最小限にすることが、望ましい。
【0006】
気相及び液相活性化プロセスは、公知である。これらの活性化プロセスに関連する、様々な欠点がある。
【0007】
1つの問題点は、活性化プロセス中に発生する相当量の熱に関連している。熱の放出により、全般的又は局所的のいずれかで、過熱を引き起こすことがある。この過熱により、焼結又は結晶成長が生じることがあるため、触媒の性能を劣化させることになる恐れがある。この劣化により、触媒の活性が低下し、その最終的な寿命が短くなる。
【0008】
液相プロセスの更なる問題点は、活性化プロセス中に遊離する相当量の水に関連している。
【0009】
水の存在、及び/又は過熱による触媒の劣化は、アルコール生成物中のアルデヒドの存在によって観察されるアルデヒド出発物質の不完全な変換により、プロセスをあまり効率的ではないものにすることがある。これは、アルデヒドスリップと呼ばれる。
【0010】
液相活性化に関連する欠点を回避するために、気相活性化プロセスを使用することが可能である。気相活性化プロセスでは、その性質により、ガス中の水の濃度は低くなり、概して、触媒の活性を、液相活性化プロセスで得た活性よりも改善することにつながる。
【0011】
気相活性化プロセスは、概して、高活性触媒を提供するものであるが、このようなプロセスに関連する欠点がある。1つの問題点は、大量のガス流を得る必要性に関する。このガス流を、外部供給源から得てもよく、又はリアクターシステムで循環ガスを使用してもよい。循環ガスを使用する場合、液相活性化プロセスでは必要とされないシステムに、循環ガスに関連する圧縮機及び熱交換器を備える、装置を備えることが必要とされる。したがって、気相活性化プロセスでは、資本コスト及び操業コストが、液相活性化プロセスに必要とされるよりも高くなる。
【0012】
気相活性化プロセスに関連する更なる問題点は、正常運転温度で新たな反応原料の水素添加を開始する前に、アルデヒド水素添加リアクターの更なる停止時間が、触媒を冷却及び湿潤させるために、並びに液体循環を立ち上げるために必要とされることである。
【0013】
気相プロセスに関連する問題点を考慮すると、液相活性化プロセスは、工業プロセスにおいてより好都合であることが見出された。
【0014】
したがって、気相活性化プロセスに関連する不利を回避するよう、気相プロセスで得た触媒活性に匹敵する触媒活性をもたらす液相活性化プロセスが依然として必要とされている。ここで驚くべきことに、本発明の発明者らは、液相活性化中に存在するピーク水濃度を1.5重量%(液相の重量%)未満に制限する場合、従来の液相活性化により得た触媒活性よりも高い、好ましくは気相活性化により得た触媒活性と同等である、触媒活性を得ることができることを見出した。
【0015】
したがって、本発明の第1の態様によれば、触媒の活性化のための方法であって、
(a)還元により活性化する固体触媒を含む、リアクターを準備する工程と、
(b)液体原料流及び還元剤をリアクターに供給する工程と、
(c)還元剤が触媒の活性化を引き起こすように、リアクターを運転する工程と、
(d)リアクターから液体流及びガス流を回収する工程と、を含み、
工程(d)で回収した液体流中のピーク水濃度を、
工程(b)で供給した液体原料流の水濃度を制御することと、
工程(d)で回収した液体流の回収速度を制御することと、
リアクター内で生じた水を除去することと、の1つ以上によって1.5重量%未満に実質的に維持する方法が提供される。
【0016】
工程(d)で回収した液体流中のピーク水濃度は、リアクター内のピーク水濃度の尺度であることが理解される。したがって、方法は、工程(d)で回収した流れのピーク水濃度を測定することと、それが1.5重量%の濃度に近づいている場合、ピーク水濃度が1.5重量%未満に維持されるまで、原料の含水量及び/又は工程(d)で回収した液体流の流量を調整することと、を含む。
【0017】
ピーク水濃度を1.5重量%未満に制限することにより、液相活性化プロセスが提供され、これにより、触媒の活性は、これまで使用した液相活性化プロセスで達成可能な活性と比較して向上したものになる。好ましくは、触媒活性は、少なくとも、気相活性化プロセスの場合に達成可能なレベルの領域にまで増加させることができる。
【0018】
例えば、混合ブチルアルデヒドをブタノールにする水素添加のための市販の銅/クロム触媒の活性によると、気相活性化によって活性化したときに、正常運転開始時のアルデヒドスリップが標準的な試験条件下で約300ppmw/wになるように働く。対照的に、従来の液相活性化では、液相中に存在する水が相当量(典型的には、反応系の構成及び容積に応じて約2.5~8重量%の範囲)となり、正常運転開始時のアルデヒドスリップは、2300pppmw/w前後となる。しかし、本発明の活性化プロセスを使用する場合、アルデヒドスリップは、わずか360pppmw/w前後であり、したがって、気相活性化で得たものに匹敵する。
【0019】
本発明の方法では、工程(d)で回収した流れのピーク水濃度は、1.5重量%未満、1.4重量%未満、1.3重量%未満、1.2重量%未満、1.1重量%未満、又は1.0重量%未満である。好ましくは、工程(d)で回収した液体流のピーク水濃度は、1.2重量%未満、最も好ましくは1.0重量%未満である。
【0020】
任意選択的に、工程(d)で回収した液体流の少なくとも一部分を再循環させ、工程(b)でリアクターに供給することができる。概して、このような再循環は、リアクター内での発熱が小さい場合、例えば10℃未満の場合には必要とされないが、工程(d)で回収した液体流の再循環は、本発明の好ましい実施形態である。
【0021】
更に、又は代替的に、工程(d)でリアクターから回収した液体流を、処理し、次いで液体原料流とともに再使用し(再循環させ)、工程(b)でリアクターに送給することができる。概して、工程(d)で除去した液体流を、除去し、処理し、次いで工程(b)で液体原料流に再導入することができる。当該処理は乾燥プロセスを含んでもよく、例えば、蒸留、膜分離、又はモレキュラーシーブの使用によって行うことができる。このような乾燥プロセスでは、再循環した液体流から水を除去し、したがって、液体流の含水量を制御するのに役立つ。処理(好ましくは乾燥プロセス)については、例えば、活性化プロセスを行うリアクターに対して並列なループにおける処理システムで、本発明のリアクターに対して無関係に行うことが想定される。あるいは、あまり好ましくはないが、除去した液体流を、除去し、処理し、次いで、例えば後続の活性化プロセスで使用するために保管し、後続の反応で、生成物を製造するか、又はそうでなければ何らかの他の方法で再循環させることができる。
【0022】
概して、工程(a)で準備したリアクターは、触媒を活性化してから、触媒による反応を行うものになる。すなわち、触媒を、概して、in situで活性化する。リアクターは、不均一触媒を使用することができる任意の構成であってもよい。リアクターは、上向流リアクターであっても下向流リアクターであってもよい。可能なこととして、あまり好ましくはないが、触媒を第1のリアクターで活性化し、次いで、触媒による所望の反応を行う後続リアクターに提供することができる。
【0023】
触媒を、リアクターの反応ゾーンに充填し、リアクター内のトレイ上に位置させるか、又は触媒担体に位置させることができ、それは例えば、国際公開第2011/048361号及び同第2016/050520号に記載されているものであり、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0024】
触媒は、還元剤との反応によって液相中で活性化することができる任意の好適な触媒であってもよい。リアクターに入っている触媒は、触媒の混合物であってもよい。特に、触媒は銅含有触媒である。例えば、触媒は、ニッケル若しくはバリウムを含んでもよい銅/クロム触媒、銅/ニッケル触媒、銅/亜鉛触媒、又は銅/ジルコニウム触媒であってもよい。他の金属も、触媒中に存在してもよい。プロモーターが、更に又は代替的に存在してもよい。このような触媒は、当業者に公知である。銅含有触媒は、アルデヒドをアルコールにする水素添加に有用であることが見出されたことから、本発明における使用に特に好ましく、in situでの活性化が好都合であり、本発明による液相活性化プロセスを使用することにより、製造停止時間が有利に最小限になる。
【0025】
触媒は任意の好適な形態であってもよく、それが固体である場合、そのことにより、リアクターに送給した液体原料流と不均一混合物を形成する。例えば、触媒は、粉末、錠、円筒、押出物、三葉円筒、球体、又はこれらの混合の形態であってもよい。
【0026】
触媒を、担体上に提供することができる。任意の好適な担体を、使用することができる。例えば、触媒を、アルミナ、シリカ、クロミア、ジルコニア、炭素、又はこれらの混合物上に担持してもよい。
【0027】
工程(b)でリアクターに送給した液体原料流は、活性化反応が起こる任意の好適な液体であってもよい。好ましくは、液体は、触媒を使用する反応において生じる生成物である。触媒をアルデヒドからのアルコールの製造に使用する場合、液体は、好適にはアルコールである。したがって、例えば、触媒を使用する水素添加反応により、ブタノールを製造する場合、本発明の活性化プロセスでの液体原料流として、ブタノールを使用する。
【0028】
液体原料流は、概して、いくらかの水を含有する。しかし、工程(d)で回収した液体流のピーク水濃度が1.5重量%未満となるように、原料流中の水の濃度を制御することができることが、(とりわけ)本発明の特徴点である。この制御を、液体原料流中の水濃度が0.1重量%以下であるアルコール又はアルカンなどの「乾燥」液体原料を利用することによって、達成することができる。液体原料流の水濃度は、0.05重量%以下であってもよい。
【0029】
本活性化プロセスでは、任意の好適な還元剤を使用することができる。概して、還元剤は、気体還元剤である。還元剤は、好ましくは水素であってもよい。還元剤を、継続的に又はパルスでリアクターに添加することができる。
【0030】
任意の好適な濃度の還元剤を使用することができる。1つの構成では、還元剤の初期濃度は、約2モル%~約100モル%、約5モル%~約50モル%であってもよい。当業者であれば、還元剤の濃度を活性化速度制御機構として変更することができることを理解するであろう。
【0031】
還元剤の濃度は、活性化プロセスが進行するにつれて変化してもよい。例えば、活性化プロセスが進行するにつれて、濃度は増加してもよい。還元剤の濃度の任意の好適な増加速度を使用することができ、最終的な所望の濃度に達するまで、約10モル%分での漸増が好ましい。したがって、活性化反応が進行するにつれて、活性化プロセス中に、還元剤の濃度は、約5モル%の開始濃度から約100モル%の最終濃度まで増加してもよく、又は還元剤の濃度は、約5モル%の開始濃度から約50モル%の最終濃度まで、約100モル%まで増加してもよいことが理解される。
【0032】
好適には、液体原料流及び還元剤を、別個に供給してもよく、組み合わせた後リアクターに送給してもよい。工程(b)で再循環流を供給する場合、リアクターに直接供給してもよく、液体原料流及び還元剤の一方又は両方と組み合わせ、その後、リアクターに供給してもよい。
【0033】
活性化プロセスを、不活性ガスの存在下で行うことができる。任意の好適な不活性ガスを使用することができる。好適な不活性ガスは、アルゴン又は窒素であってもよい。窒素が不活性ガスである場合、コストや入手可能性などのいくつかの利点を挙げることができる。不活性ガスを、概して、還元剤と組み合わせてリアクターに提供する。
【0034】
活性化プロセスを、任意の好適な反応条件下で行う。活性化プロセスを、任意の好適な温度及び任意の好適な圧力で行う。リアクターで提供する温度及び圧力は、液体原料及び/又は使用する還元剤、並びに活性化する触媒に応じて変わる。開始温度及び最高温度については、選択された液体原料、還元剤及び触媒、リアクターの構造及び充填、並びに再循環が存在するかどうかに関する以前の経験から知ることができる。あるいは、開始温度及び最高温度については、示差走査熱量測定(DSC)などによって実験的に求めることができる。好ましくは、アルデヒドをアルコールにする水素添加のプロセスに使用するのに好適な触媒を活性化する場合、活性化温度は200℃を超えない。
【0035】
より具体的には、プロセスを、初期の周囲温度から約200℃までの間で行うことができる。しかし、他の温度範囲を使用することができ、それによってプロセスを約130℃の温度から約180℃までの間で行うことができる。
【0036】
初期の周囲温度から運転温度まで、温度をプロセス中に上昇させることができる(いくつかの場合では、触媒の活性化は、閾値活性化温度に達してからのみ始まるが、これは、活性化する触媒に応じて変わり、このことは、当業者には公知である)。液体原料流を加熱することによって、温度を上昇させることができる。更に、又は代替的に、存在する場合、再循環流を加熱することによって、温度を上昇させることができ、これは本発明の好ましい特徴点である。任意の好適な温度上昇速度を使用することができる。
【0037】
温度の各上昇分を、好適な期間にわたって維持することができる。好適な期間は、
リアクターから出る還元剤の濃度を、リアクターに導入している還元剤の濃度と同じにするのに必要とされる期間、
更なる発熱が観察されなくなる時、及び
水の発生が止まる時、のうちの1つ以上であってもよい。
【0038】
温度の各上昇分を、少なくとも約90分、少なくとも約120分、又は少なくとも約150分間維持することができる。
【0039】
好適には、正の総ガス圧力を、活性化プロセス中に提供する必要がある。好ましくは、活性化中の総ガス圧力は、運転温度における液体原料流の蒸気圧より少なくとも約0.1bar、好ましくは少なくとも約0.3bar、少なくとも約1bar、少なくとも約2bar、又は少なくとも約4bar高くてもよい。活性化プロセスの終了に向かって圧力の上限を、好ましくは、後続の触媒プロセス反応圧力(概して少なくとも20barg)に近づける必要があり、それによって、リアクターは、触媒反応プロセスの実施の準備が整った状態になり、時間の損失は最小限になる。
【0040】
リアクターでの触媒の温度を、好ましくは、活性化プロセス中に監視することができる。発熱が、活性化プロセス中に観察されることがある。観察された発熱の制御は、確かに触媒の過熱を回避することに好ましい。したがって、発熱が特定のレベル、例えば約20℃を超える(活性化する触媒に応じて変わる)場合、触媒床を冷却することが好ましい。したがって、活性化プロセスは、液体原料流を冷却した後、液体原料流をリアクターに供給する工程、を含んでもよい。更に、又は代替的に、再循環が存在する場合、発熱が特定のレベル、例えば約20℃を超える事象では、再循環物を冷却した後、それをリアクターに戻し、リアクター内の温度を低下させることが好ましい。
【0041】
しかし、適宜、存在する場合、液体原料流、還元剤、及び再循環流のうちの1つ以上を加熱した後、リアクターに添加することができる。加熱は、活性化プロセスの開始前などの任意の好適な時点で、又は活性化プロセスが漸減する(発熱の低下、又は水の生成速度の観察が示すように)ように見える場合、必要とされることがある。異なる流れを、異なる時点で必要に応じて加熱することができる。これはまた、活性化プロセス内の他の段階においても適切である場合がある。プロセスの運転中、再循環流は、存在する場合、加熱するのに好ましい流れである。再循環流を、任意の好適な速度で加熱することができる。例えば、再循環流を、約5℃/h(時間)、約10℃/h、又は約15℃/hの速度で加熱することができる。
【0042】
触媒上の液体流の流れは、約5~約150m3/m2hであってもよい。
【0043】
上記に示唆したように、1.5重量%未満のピーク水濃度の維持を、液体流を除去する速度の選択によって達成することができる。したがって、除去速度を、反応期間中に変更することができる。回収した液体流中の水濃度を、活性化速度(すなわち、工程(b)での還元剤供給速度)及び液体流除去(工程(d)での)によって制御する。活性化プロセスについては、全体的に固定した液体在庫で好適に運転するので、工程(d)での液体流の除去速度は、リアクターに供給した液体原料流の新たな流れの供給の関数となり、又は液体原料流の供給の送給速度は、リアクターからの液体流の回収速度の関数となる。
【0044】
ピーク水濃度を、更に、又は代替的に、リアクターで生じた水の除去によって制御することができる。これについては、液体及び/又はガスのパージによって達成することができる。しかし、ピーク水濃度を制御するためのこの手段は、いくつかの状況でより適切になる場合がある。例えば、この手段は、触媒が、高級アルコール、例えばiso-ノニルアルコール、2-プロピルヘプタノール、又は洗剤範囲のアルコールを製造するのに使用するものである場合、適切になる。当業者であれば、水の高級アルコールへの溶解度が低くなるので、気相での水の除去は、沸点の差が大きくなるため、高級アルコールの場合に可能であることを理解する。したがって、高級アルコールを液体原料流として使用する場合、水を蒸気として除去することが可能になるとともに高級アルコールは液体として残る圧力で、活性化プロセスを実行することができる。
【0045】
本発明の活性化プロセスの前に、触媒を湿潤させることができる。湿潤プロセスについては、概して、触媒を好適な湿潤液体中に浸漬させるよう、リアクターを戻し充填することによって行う。好ましくは、湿潤液体は、本発明の活性化プロセスの工程(b)で供給する液体であってもよく、あるいは異なる液体を使用してもよい。
【0046】
湿潤プロセスの一部として、触媒を、概して、触媒細孔の少なくともかなりの部分、好ましくは触媒細孔の実質的に全てを飽和させるのに十分な期間、浸漬させる。触媒の細孔への飽和を支援するために、リアクターを、好ましくは、湿潤中に加圧する。これについては、概して、窒素などの不活性ガス下、リアクターを適正圧力に維持することによって達成する。任意の好適な圧力を使用することができる。約0.2MPa(g)~約0.4MPa(g)、例えば約0.3MPa(g)の圧力を使用することができる。発熱は、湿潤プロセス中、顕著になることがある。
【0047】
湿潤後、湿潤プロセスの一部として生成している場合がある、又はリアクターに残留していることがある、存在する水を、リアクターを新たな液体でパージすることによって除去することができ、この新たな液体には、更なる湿潤液体を好適に使用することができ、又は活性化プロセスの液体原料流を使用することができる。パージ後の含水量は、好ましくは約1.5重量%未満、より好ましくは約1.0重量%であってもよい。
【0048】
更に、活性化プロセスの開始時の初期加温中に触媒からの水の放出が観察されることがあり、したがって、この初期昇温中にリアクターをパージすることによって、この水を除去し、水濃度を可能な限り低く、好ましくは約1.5重量%未満、より好ましくは約1.0重量%未満に維持することが必要とされる場合がある。
【0049】
本発明のプロセスによって活性化してから、触媒を使用して反応の触媒とすることができる。概して、触媒反応を、好ましくは、同じリアクターで、ただし触媒の活性化の後に行う。特に、本発明によって活性化した触媒を、アルデヒドを対応するアルコールにする水素添加に使用する。したがって、本発明の更なる態様によると、アルデヒドを水素添加するためのプロセスであって、上記のようなプロセスによって活性化した触媒の存在下、アルデヒドを水素と接触させること、を含む、プロセスが提供される。より具体的には、アルデヒドを対応するアルコールにする水素添加については、リアクターで、in situで活性化した触媒を使用して行い、すなわち、好ましくは、触媒反応を、活性化プロセスと同じリアクター容器にて行う。したがって、触媒の活性化後、リアクター及び/又は触媒床を、所望の触媒反応を行うのに好適な温度に調節することが、活性化プロセスの好ましい特徴点である。更にまた、工程(b)の液体原料流を、所望の反応について所望の原料流に切り替える。
【0050】
所望の反応がアルデヒドをアルコール反応物にする好ましい水素添加である場合、反応原料流をアルデヒドに切り替え、これは任意の好適なアルデヒドであってもよい。より具体的には、アルデヒドは、分枝状又は非分枝状、飽和又は不飽和であってもよい。アルデヒドは、4個~16個の炭素原子を有してもよい。好適なアルデヒドとしては、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、2-エチルヘキセナール、2-プロピルヘプテナール、iso-ノニルアルデヒド、又は洗剤範囲のアルデヒドが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
ここで、添付の図を例として参照して、本発明を説明する。
【
図2】本発明のプロセスの代替的な構成の概略図である。
【0052】
当業者であれば、図面は図式的であり、また、商用プラントにおいて、原材料ドラム、ポンプ、真空ポンプ、圧縮機、ガス再循環圧縮機、温度センサ、圧力センサ、圧力逃がし弁、制御弁、フローコントローラ、レベルコントローラ、保持タンク、貯蔵タンクなどの、機器の更なる品目が必要とされる場合があることについて、理解する。このような付属機器の準備は、本発明の一部を形成するものではなく、従来の化学工学的実施に従うものである。
【0053】
図1に図示するように、液体原料流を、ライン1で、触媒を入れたリアクター2に送給する。気体還元剤を、ライン3でリアクター2に送給する。図示するように、液体流及び気体還元剤を、別個に送給する。しかし、代替的に、これらを組み合わせた後、リアクター2に送給することができる。
【0054】
ガスパージ物をライン4で除去し、液体流をライン5で除去する。活性化プロセス中、ライン5で回収した蒸気中のピーク水濃度を、1.5重量%未満に実質的に維持する。流れのピーク含水量が1.5重量%以上であることが見出された場合、ライン1でリアクターに添加した流れの含水量、又は液体流5の除去速度を調整して、要求ピーク含水量にすることができる。更に、又は代替的に、水を、液体及び/又はガスパージにおいてリアクターから除去することができる。
【0055】
代替的な構成を、
図2に図示する。
図1でのように、液体原料流を、ライン1で、触媒を入れたリアクター2に送給する。気体還元剤を、ライン3でリアクター2に送給する。図示するように、液体原料流及び気体還元剤を、別個に送給する。しかし、代替的に、これらを組み合わせた後、リアクター2に送給することができる。ガスパージ物をライン4で除去し、液体流をライン5で除去する。
【0056】
この代替的な構成では、ライン5で回収した液体流を、ライン6で除去した回収流と分ける。処理のために液体流の残りを、ポンプ7を使用してライン8により熱交換器9にポンプ送りした後、ライン10でリアクター2に再循環させる。図示した構成では、ライン10で再循環した流れを液体原料流1と混合した後、リアクター2に添加する。しかし、再循環流10を、リアクターに直接送給することができ、又は気体還元剤と、若しくは気体還元剤と液体原料流との両方と組み合わせることができることが理解される。
【0057】
概して、再循環流を熱交換器9で冷却した後、ライン10でリアクター2に再循環させる。しかし、適宜、熱交換器を使用して、再循環流を加熱することができる。例えば、加熱は、活性化プロセスの始動中に必要とされる場合がある。
【0058】
上記のように、本発明のプロセスにおいて使用することができる、様々な選択肢が存在する。理解の助けとなるよう、本発明の活性化プロセスの一例を、以下に説明する。しかし、この例は単に理解を支援するためのものであり、限定するものではないことが理解される。
【0059】
アルデヒドをアルコールにする水素添加触媒に関する活性化プロセス
アルデヒド、エチルプロピルアクロレイン(EPA、2-エチルヘキセナール)の水素添加に好適であることが公知である、市販のクロムプロモーターを含む酸化銅含有触媒を、リアクターに充填する(リアクターはまた、アルデヒドを対応するアルコールにする水素添加の実施にも好適である)。触媒は、固体不均一触媒であり、リアクターに触媒床として提供する。
【0060】
触媒を、アルデヒド変換反応のための触媒として働くのに好適な形態にする前に、酸化触媒を還元によって活性化することが必要とされる。本発明によれば、不活性液体原料流を提供しながら、還元剤として水素ガスを利用して、活性化を有利に行うことができ、この場合、液体原料流は、含水量が0.1重量%未満の「乾燥」ブタノール(99+%)である。液体原料流は銅含有触媒の発熱的還元のためのヒートシンクとして働き、過熱に関連する問題点が回避される。しかし、2.5重量%という低い累積水濃度は、その意図する使用のための触媒の最終活性に悪影響を及ぼすことが見出されており、本発明によれば、回収した液体流中で観察されるように、活性化プロセスの水濃度の制御は有利である。
【0061】
触媒床を所望のリアクターに充填してから、触媒湿潤手順を初期工程として使用した後、触媒活性化プロセスを開始する。「乾燥」ブタノールを、触媒湿潤液体としてリアクターに送給する。このように、この例では、ブタノールを湿潤液体、及び後で活性化液体原料流の両方として利用する。代替的な構成では、湿潤液体及び活性化液体原料流は、変化してもよい。正の圧力をリアクターで維持し、確かに液体が液体状態に留まるようにする。好適には、0.1~0.4MPaの圧力を、窒素を不活性ガス流として供給することによって得る。湿潤液体再循環ループを立ち上げ、十分なブタノールをリアクターに送給し、触媒を湿潤させ、湿潤液体再循環ループのパイプ、容器、及びポンプに充填し、十分な湿潤液体を提供してから、更なる湿潤液体の導入を停止する。湿潤液体を、湿潤プロセス中にリアクターを通して再循環させることは必要とされないが、本例では、これを行い、確かに、湿潤液体が触媒床を通って流れるようにし、及び良好な時間内に適切な湿潤になるようにした。
【0062】
湿潤手順中、再循環する湿潤液体の試料を除去し、液体中に存在する水の濃度について分析する。存在する水の濃度が許容できないほど高い場合、水の除去が必要とされる。水濃度を1.5重量%未満に(必要に応じて)低減した後、活性化プロセスを開始することが好適であり、本事例では、1.5重量%未満への低減を、リアクターへの新たなブタノール原料の導入によって達成し、他方、湿潤手順に使用するブタノールの再循環は、再循環ループを介して継続する。
【0063】
触媒を完全に湿潤し、再循環する湿潤液体中の水の濃度を、1.5重量%未満に低減してから、活性化プロセスを開始することができる。
【0064】
湿潤プロセス全体にわたって、不活性窒素ガスをリアクターに送給し、正の圧力を確保し、この正の圧力を、後の活性化プロセスのために維持する。水素は還元剤として働き、これをここで窒素ガス流に、総窒素ガス流の最大30モル%の濃度まで導入する。還元剤をリアクターに導入してから、リアクターでの触媒床の温度を監視する必要がある。初めに、リアクターに再導入した、再循環ループを通るブタノールを、リアクターに導入することができる任意の更なるブタノール液体原料流とともに加熱することによって、触媒床の温度は上昇する。触媒床の加熱を、1時間当たり5℃の最大温度上昇をもたらすように制御する。このようにして、触媒床中の触媒の局所的過熱を回避することができる。約130℃の温度に達するまで加熱を継続し、この温度は、銅含有触媒の場合、活性化を確保する初期温度である。活性化が進行してから、還元反応の発熱性によって、並びに必要に応じてブタノール再循環流を加熱及び/又は冷却することによって、触媒床の温度を約130℃に維持するものとする。より具体的には、20℃を超える温度上昇が観察される場合、再循環したブタノール流を冷却する必要がある。この活性化手順全体にわたって、再循環のためにリアクターから除去したブタノール流をサンプリングし、水濃度について監視する。リアクターから除去した流れの水濃度が1.5重量%に近づいた場合、液体原料流中での新たなブタノールの導入速度及びリアクターからのブタノールの除去速度を、水濃度が1.5重量%未満に維持されるまで調整する。また、水素の導入を低減又は停止して、任意の水がリアクターでより多く生じるのを防止することもでき、これにより、リアクターからのいくらかのブタノールを除去しながら、新たな液体原料を送給する場合、水濃度を低減することが可能になる。
【0065】
活性化プロセスが進行し、リアクターから出る不活性窒素ガス流中の水素の濃度が30モル%に等しく、触媒床の温度が安定したことによって温度上昇が観察されなくなり、水の発生が止まってから後、水素濃度を10モル%分ずつ100モル%に上昇させることができる。
【0066】
加えて、この段階では、リアクターでの圧力を上昇させ、最大1.5MPa以下にすることができ、触媒床で観察される温度をここで厳密に監視し、確かに、150℃を超えないように、及び130℃に実質的に維持するようにする。触媒床温度の制御を、上記のように達成する。触媒床の温度上昇が高すぎると考えられる場合、触媒床の温度が安定するまで、圧力上昇を止める必要がある。この手順全体にわたって、除去したブタノール液体流の水濃度をサンプリングし、水の濃度を、上記のように1.5重量%未満の濃度に制御する。
【0067】
温度上昇が観察されず、更なる水の発生が観察されない場合、触媒床の温度を、1時間当たり5℃分ずつ150℃に上昇させる。各温度上昇分を2時間維持して、触媒床にわたる温度を安定化させ、局所的過熱を回避する。この昇温中、ブタノール再循環流及び原料流を維持し、サンプリングして、確かに更なる還元が起こらないようにする。
【0068】
リアクターの圧力が上昇し、温度上昇が150℃で安定し、再循環のために除去したブタノール中の水濃度の上昇が停止し、水素が消費されていない場合、触媒活性化は完了しているとみなされる。
【0069】
触媒の活性化が完了しているとみなされてから、in situで活性化した触媒を有するリアクターについて、アルデヒド原料の水素添加の後続のプロセスにおいて使用するために、準備を整えることができる。より具体的には、触媒床の温度を、リアクターに再導入し続けているブタノール流の再循環物を冷却することによって低下させることができる。更に、水素ガス流を、代替のガス流で置き換えること又は希釈することができる。好適な水素添加反応条件は、当業者に公知である。
【0070】
上記の例は、アルデヒドの水素添加に使用するための銅含有触媒に関するものであるが、同様の活性化プロセスを使用して、他の酸化触媒を活性化することができる。
【実施例】
【0071】
ここで、以下の実施例及び比較例を例として参照して、本発明を説明する。
【0072】
実施例1~4では、全ての実施例において、リアクターに250mLの触媒(1/8インチの錠、50%のCuO、50%のCr2O3)を充填した。
【0073】
比較例1.
窒素中1.7モル%の水素の流れを使用して、これを100NL/hで触媒に通し、床温度を約175℃に上昇させ、気相活性化を行った。発熱後、これが下がるにつれ、触媒床及び温度は30時間後に安定化した。次いで、水素濃度を100モル%に漸増した後、約0.1MPaから2MPaまで圧力を上昇させた。床温度を100℃に低下させた後、触媒をブタノールで湿潤させ、再循環流を立ち上げ、その後、アルデヒド原料を導入し、触媒活性を評価した。
【0074】
以下の実施例の各々では、使用する液相活性化手順は上記のとおりであり、ただし以下に提示する実施例の詳細にて記載される任意の修正を伴う。
【0075】
比較例2.
この例では、活性化液体原料は、0.4重量%の水を含有する粗ブタノールであった。液相活性化プロセス中、ブタノール回収を適用せず、リアクターから水を除去しなかった。達したピーク水濃度レベルは、2.55重量%であった。したがって、この比較例は、水濃度を制御しない、典型的な公知の液相活性化法を代表するものである。
【0076】
実施例3.
この例では、活性化液体原料は純n-ブタノール(0.1重量%未満の水を含有する)であり、継続的ブタノール回収速度を使用して、液体流中の水の濃度を制御する。達したピーク水濃度レベルは、1.27重量%であった。
【0077】
比較例4.
比較例4を、水濃度を増加させることの効果を確認するために行った。この例では、活性化液体原料は、粗ブタノールであった。循環するブタノール中に更なる水を添加した後で活性化して、3.4重量%の初期水濃度とした。ブタノールの回収を行うことなく、水濃度を限定した。ピーク水濃度は、6.29重量%であった。当業者であれば、触媒/液体在庫の相対体積は、市販のユニットと比較して、実験リグで、例えば本実施例に使用するリグで著しく減少していること、及びそれにより、本実施例における更なる水の投入では、市販のユニットで見られるピーク水濃度レベルに近い実験的ピーク水濃度とする必要があったことについて、理解する。
【0078】
上記の活性化手順の各々の完了後、還元した触媒の活性を、95重量%超のアルデヒドを含有する混合ブチルアルデヒド原材料を使用して水素添加プロセス試験において測定した(n:i比は6~12:1の範囲)。活性試験の条件を以下の表1に示す。
【0079】
【0080】
活性化プロセス中に観察されたピーク水濃度の、市販の銅クロム触媒を使用する混合ブチルアルデヒドの水素添加に関する、後続触媒活性に対する効果を示す、これらの標準的な条件下で行った実験のまとめを表2に示す。触媒活性を、上記の標準的な条件における初期運転期間中のアルデヒドスリップとして測定する。
【0081】
【0082】
したがって、本発明のプロセスによって活性化した触媒は、気相活性化で活性化した触媒と性能が同様の活性化をもたらしたことについて知ることができる。
【0083】
温度プログラムによる反応研究は、活性化プロセスで存在している水の、表面積の減少に対する影響の観察を裏付けるものであり、表面積の減少は、後続のアルデヒドの水素添加プロセスにおける活性の低下につながると考えられる。この実験では、還元雰囲気中の水の存在(「湿潤」雰囲気と呼ばれる)の、2つの触媒の銅金属面積に対する効果を調査した。
【0084】
1.銅クロマイト触媒の試料を、2.5モル%の水及び5モル%の水素を含む水/水素/ヘリウム流中で、周囲温度から220℃までの温度で還元した。同様に、試料を、5モル%の水素を含む水素/ヘリウム流中で、周囲温度から220℃までの温度で還元した。試料の銅金属面積を、60℃でのN2O分解によって測定した。乾燥雰囲気中又は湿潤雰囲気中での還元後の試料に対する、N2O分解のリアクティブフロンタルクロマトグラムから得た相対的銅表面積を、以下の表3に示す。「湿潤」雰囲気中での還元は、測定銅表面積の減少につながる。
【0085】
表3は、H2/He流又はH2/H2O/He流のいずれかにおける試料の温度プログラムによる還元(TPR)後の、銅クロマイト触媒に対する、N2O分解のリアクティブフロンタルクロマトグラムからの測定相対的銅表面積を示している。
【0086】
【0087】
2.銅アルミナ触媒の試料を、2.8モル%の水及び5モル%の水素を含む水/水素/ヘリウム流中で、周囲温度から220℃までの温度で還元した。同様に、試料を、5モル%の水素を含む水素/ヘリウム流中で、周囲温度から220℃までの温度で還元した。試料の銅金属面積を、60℃でのN2O分解によって測定した。乾燥雰囲気中又は湿潤雰囲気中での還元後の試料に対する、N2O分解のリアクティブフロンタルクロマトグラムから得た相対的銅表面積を、以下の表4に示す。「湿潤」雰囲気中での還元は、測定銅表面積の減少につながる。
【0088】
表4は、H2/He流又はH2/H2O/He流のいずれかにおける試料の温度プログラムによる還元(TPR)後の、銅アルミナ触媒に対する、N2O分解のリアクティブフロンタルクロマトグラムからの測定相対的銅表面積を示している。
【0089】