(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】スマート冷却剤ポンプ
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/10 20060101AFI20240304BHJP
B23C 5/28 20060101ALN20240304BHJP
B23B 47/00 20060101ALN20240304BHJP
B23G 1/44 20060101ALN20240304BHJP
【FI】
B23Q11/10 E
B23C5/28
B23B47/00 B
B23G1/44 D
(21)【出願番号】P 2021513454
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(86)【国際出願番号】 US2019050460
(87)【国際公開番号】W WO2020055901
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-01
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514079114
【氏名又は名称】ファナック アメリカ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169856
【氏名又は名称】尾山 栄啓
(72)【発明者】
【氏名】ポール スクルーナ
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-306230(JP,A)
【文献】特開2013-013968(JP,A)
【文献】特開2004-036421(JP,A)
【文献】特開2006-142442(JP,A)
【文献】米国特許第05951216(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0178120(US,A1)
【文献】特開2002-257294(JP,A)
【文献】特開2016-209055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/10;
B23C 5/28;
B23B 47/00;
B23G 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ制御式機械用の冷却剤ポンプシステムであって、該システムは、
モータトルク及びモータ速度センサを具備するサーボモータと、
前記サーボモータに機械的に結合されたポンプ本体であって、前記サーボモータの回転により作動されるときに冷却剤を圧送するポンプ要素を備えるポンプ本体と、
前記ポンプ本体の出口にある冷却剤圧力センサと、
前記ポンプ本体の下流の流体回路内の冷却剤流量センサと、
前記モータトルク及びモータ速度センサと、前記冷却剤圧力センサと、前記冷却剤流量センサとから信号を受信する制御装置であって、該制御装置は、前記受信された信号に基づいて、前記サーボモータに制御信号を提供して、前記コンピュータ制御式機械の特定の機械加工操作のために規定された、所定の冷却剤圧力又は冷却剤流量を達成する、制御装置と、を具備
し、
前記制御装置は、前記冷却剤圧力センサ又は前記冷却剤流量センサからの信号により示される前記冷却剤の圧力又は流量が前記所定の冷却剤圧力又は前記冷却剤流量に達するように、前記モータトルク及びモータ速度センサからの信号に基づき前記サーボモータの速度を制御するための前記制御信号を生成する機能を有する、
冷却剤ポンプシステム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記モータトルク及びモータ速度センサからの前記信号が冷却剤供給の問題を示したときに、予防的な行動を行うように更に構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記冷却剤供給の問題は、所与のモータ速度のための閾値を下回るモータトルク信号により指示される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記冷却剤供給の問題は、冷却剤レベルの低下、冷却剤の欠乏又は冷却剤供給通路の閉塞である、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記予防的な行動は、警告警報を発することである、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記予防的な行動は、前記コンピュータ制御式機械の機械加工操作を停止することである、請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記制御装置及び前記サーボモータは、前記制御装置が前記サーボモータに信号を送って回転速度を低下させるときに、回生電気エネルギを回復するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記機械加工操作が完了したときに及び次の機械加工操作が開始する前に、前記サーボモータに回転速度を低下させるが、停止しないように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記制御装置はまた、前記コンピュータ制御式機械を制御し、そして前記制御装置は、前記サーボモータに制御信号を提供して、前記コンピュータ制御式機械の各異なる機械加工操作毎に異なる所定の冷却剤圧力又は冷却剤流量を達成するように構成可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記異なる機械加工操作は、削孔と、フライス加工と、ねじ付き穴開け加工と、を含み、前記所定の冷却剤圧力又は冷却剤流量は、工具直径と、回転速度及び送り速度と、被加工物材料と、に基づいて決定される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記サーボモータ及び前記ポンプ本体は、前記コンピュータ制御式機械の主冷却剤ポンプとして使用される、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記コンピュータ制御式機械において中央通過冷却剤ポンプとして使用される、第2のサーボモータと第2のポンプ本体とを更に具備しており、前記冷却剤は、前記コンピュータ制御式機械において使用される工具の中心を通って圧送される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
産業機械加工ステーションであって、
ハウジング内に配置された1つ以上の工作機械と、
前記1つ以上の工作機械と通信する機械加工ステーション制御装置であって、該機械加工ステーション制御装置は、部品を製造するために、被加工物に所定の一連の機械加工操作を実行するように、前記1つ以上の工作機械を制御するように構成される、機械加工ステーション制御装置と、
前記機械加工操作中に前記被加工物及び工具に冷却剤を適用するための冷却剤サブシステムであって、該冷却剤サブシステムが冷却剤管ネットワークに結合された冷却剤ポンプを具備する、冷却剤サブシステムと、を具備する、産業機械加工ステーションにおいて、
該冷却剤ポンプが、
モータトルク及びモータ速度センサを具備する、サーボモータと、
前記サーボモータに機械的に結合されていて且つ前記冷却剤管ネットワークに流体的に結合されたポンプ本体であって、前記サーボモータの回転により作動されるときに前記冷却剤管ネットワークを介して冷却剤を圧送するポンプ要素を具備する、ポンプ本体と、
前記ポンプ本体の出口にある冷却剤圧力センサと、
前記ポンプ本体の下流の流体回路内の冷却剤流量センサと、
前記モータトルク及びモータ速度センサと、前記冷却剤圧力センサと、前記冷却剤流量センサとから信号を受信する、ポンプ制御装置であって、該ポンプ制御装置は、前記サーボモータに制御信号を提供して、前記機械加工操作の各々に規定される所定の冷却剤圧力又は冷却剤流量を達成しており、前記所定の冷却剤圧力又は冷却剤流量が前記機械加工ステーション制御装置から伝達される、ポンプ制御装置と、を具備
し、
前記ポンプ制御装置は、前記冷却剤圧力センサ又は前記冷却剤流量センサからの信号により示される前記冷却剤の圧力又は流量が前記所定の冷却剤圧力又は前記冷却剤流量に達するように、前記モータトルク及びモータ速度センサからの信号に基づき前記サーボモータの速度を制御するための前記制御信号を生成する機能を有する、
産業機械加工ステーション。
【請求項14】
前記ポンプ制御装置及び前記サーボモータは、前記ポンプ制御装置が前記サーボモータに信号を送って回転速度を低下させるときに、回生電気エネルギを回復するように構成される、請求項13に記載の機械加工ステーション。
【請求項15】
前記ポンプ制御装置は、ある機械加工操作が完了したときに及び次の機械加工操作が開始する前に、前記サーボモータにより回転速度を低下させるが、停止しないように構成される、請求項13に記載の機械加工ステーション。
【請求項16】
機械加工操作が、削孔と、フライス加工と、ねじ付き穴開け加工と、を含み、前記所定の冷却剤圧力又は冷却剤流量は、工具直径と回転速度及び送り速度と被加工物材料とに基づいて決定される、請求項13に記載の機械加工ステーション。
【請求項17】
前記産業機械加工ステーションにおいて中央通過冷却剤ポンプとして使用される、第2のサーボモータと第2のポンプ本体とを更に具備しており、前記冷却剤は、前記機械加工ステーションにおいて使用される工具の中心を通って圧送される、請求項13に記載の機械加工ステーション。
【請求項18】
コンピュータ制御式機械用の冷却剤ポンプであって、該ポンプは、
モータトルク及びモータ速度センサを備えるサーボモータと、
前記サーボモータに機械的に結合されたポンプ本体であって、前記サーボモータの回転により作動されるときに冷却剤を圧送するポンプ要素を備える、ポンプ本体と、
前記モータトルク及びモータ速度センサから信号を受信する制御装置であって、該制御装置は、前記モータトルク及びモータ速度センサからの前記信号に基づいて前記サーボモータに制御信号を提供して、前記コンピュータ制御式機械の特定の機械加工操作のために規定された所定の冷却剤圧力又は冷却剤流量を達成する、制御装置と、を具備
し、
前記制御装置は、前記所定の冷却剤圧力又は冷却剤流量が達成されるように、前記モータトルク及びモータ速度センサからの前記信号に基づいて前記サーボモータの速度を制御するための前記制御信号を生成する機能を有する、
冷却剤ポンプ。
【請求項19】
前記ポンプは、前記コンピュータ制御式機械の主冷却剤ポンプとして使用される、請求項18に記載のポンプ。
【請求項20】
前記ポンプは、前記コンピュータ制御式機械において中央通過冷却剤ポンプとして使用されており、前記冷却剤は、前記コンピュータ制御式機械において使用される工具の中心を通って圧送される、請求項18に記載のポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年9月10日に出願された「スマート冷却剤ポンプ」の題名の米国仮特許出願第62/728,910号の優先期日権を主張する。
【0002】
本開示は、冷却剤ポンプの分野、そしてより具体的には、削孔/機械加工操作中に、制御装置と冷却剤の圧力及び流量を測定するためのセンサとを備えたサーボモータを使用する、ロボット又はコンピュータ制御式機械用の冷却剤ポンプに係り、その冷却剤ポンプは、冷却剤レベルの低下又は冷却剤の流れの遮断を含む、任意の問題の早期の検出を可能にし、そして更に、実行中の削孔/機械加工操作により指定された即時的な冷却剤要件に基づいてポンプ速度の自動調整を可能にする。
【背景技術】
【0003】
制御画面ボタンに触れて複雑な多軸多刃工具機械加工操作を実行する、自動ロボット削孔/機械加工ステーション及びコンピュータ数値制御(CNC)機械が当技術分野において知られている。例えば、その様なコンピュータ制御式機械は、幾つかの異なる設計変更を有する部品を機械加工可能であり、この場合、部品は金属の固いブロックから機械加工されて、完成した部品は、多数の貫通穴、非貫通穴、傾斜面、削孔され且つねじ切られた穴等を具備しており、そして穴と機械加工された形態とは、部品に対して幾つかの異なる方向の軸線に沿って整列する。
【0004】
上記のタイプのCNC及び同様の機械は、切削操作に供給された、機械加工油等の冷却剤の流れを必要とする。冷却剤は、部品と工具との両方を冷却し、そして切削された金属の「削り屑」を工具から、そして機械加工されている穴から外へ洗い流すように作用する。既存のCNC機械は、操作がステーションにより特定の時間にどのように実行されているかに応じて、オン又はオフを実施する、単純な冷却剤ポンプを使用する。例えば、機械が部品内に穴を削孔している時に、冷却剤ポンプはオンであり、そして冷却剤の流れは、穴内の削孔刃に向けられる。逆に、削孔作業後、次の機械加工段階のための準備において機械が工具を交換している場合に、冷却剤ポンプは一般的に、オフされる。
【0005】
上記の単純な冷却剤ポンプは、適切に機能可能であるが、それらはしばしば、所与の操作に必要とされるものに比べて、より多くの冷却剤を圧送し、不必要なエネルギを使用する結果となる。更に、これらのポンプのスイッチを頻繁にオフ/オンすると、ポンプの摩耗及び破損が増加し、それにより、必要な保守及び修理の量が増加する。更に、単純な冷却剤ポンプでは、冷却剤レベルの低下又は冷却剤流量の低下に関連する問題を検出できず、そしてこれらの問題により、CNCマシン内の部品及び工具が直ぐに損傷するとの結果に導き得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、機械制御装置に統合されていて且つ任意の削孔/機械加工操作に適切な冷却剤流量を提供する、スマート冷却剤ポンプを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の教示によれば、コンピュータ制御式機械加工ステーション用のスマート冷却剤ポンプが記載される。スマートポンプは、誘導電気モータ等の従来の産業用モータではなく、むしろサーボモータを使用する。スマートポンプは、固有のトルク及び速度の検知部と、機械加工ステーション制御装置に統合された制御装置と、を有する。モータのトルク/速度検知部と冷却剤圧力/流量検知部とにより、冷却剤レベルの低下又は冷却剤口の閉塞等の任意の異常な状態の即座の検出を可能にする。スマートポンプは、特定の速度で作動して、更にステーションで実行される各機械加工操作に特定の冷却剤圧力及び流量を提供して、機械加工操作間において非常に低速で作動するように構成可能である。この速度設定能力により、エネルギが節約され、そして従来の定速冷却剤ポンプと比較して、ポンプと冷却剤とをより低い温度において作動させることを可能にする。
【0008】
現在開示される技術の追加的な特徴は、添付の図面と共に採用される、以下の説明及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の一実施の形態による、コンピュータ制御式機械と統合されたスマート冷却剤ポンプの図である。
【
図2】
図2は、冷却剤マニホールドに結合されていて且つ本開示に従っていて且つ
図1のコンピュータ制御式機械における冷却剤サブシステムの部分的な実施例を表す、スマート冷却剤ポンプの1つの図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施の形態による、
図1~2のスマート冷却剤ポンプを構成し及び監視するための複数のユーザインターフェース画面の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ロボット又はコンピュータ制御式機械に統合されたスマート冷却剤ポンプに向けられた本開示の実施の形態の以下の説明は、本質的に単なる例示であり、開示された装置あるいはそれらの用途又は使用を制限することを決して意図するものではない。
【0011】
図1は、2つのコンピュータ制御式機械100を具備する、柔軟な製造施設の図である。コンピュータ制御式機械100は、任意のタイプのCNC又はコンピュータ制御式機械又はロボット削孔/機械加工ステーションであってもよく、そして多くの異なる事前プログラムされた設計の機械加工部品を、驚異的な速度と品質で自動的に製造できる。コンピュータ制御式機械100は、被加工物を所定の位置に保持するための固定具と、被加工物に対して任意の向きに設定された軸線に沿って削孔、フライス加工及びねじ切り加工等、の作業を実施するための工作機械と、を具備する。
図1の機械100は、本開示の実施の形態によれば、新しいスマート冷却剤ポンプ10を備える。
【0012】
スマート冷却剤ポンプ10は、視覚的効果だけのために、
図1のコンピュータ制御式機械100の外側に示される。実際には、以下で詳細に説明するように、スマート冷却剤ポンプ10の内の1つが、コンピュータ制御式機械100の各々の内部に設けられる。各コンピュータ制御式機械100のスマート冷却剤ポンプ10は、機械加工操作に冷却剤の流れを提供して、1つ以上のノズルを介して冷却剤を被加工物及び工具に送り、そこでは、冷却剤は、タンクへ再循環し、スマート冷却剤ポンプ10に戻る。
【0013】
各コンピュータ制御式機械100は、制御装置110と表示ユニット120とを具備する。各コンピュータ制御式機械100は、供給貯蔵部から被加工物を選択して且つ機械加工操作中に被加工物を固定位置に保持するために構成される、把持工具と、制御装置110において作動する所定のプログラムに従って被加工物に対して機械加工操作を実行するための、フライス、削孔、穿孔、ねじ切り等の交換可能な工作機械と、を具備するロボット装置(図示せず)を更に具備する。
【0014】
従来の冷却剤ポンプモータを使用する、既存のコンピュータ制御式機械加工ステーションは、幾つかの制限に悩まされている。例えば、従来の冷却剤ポンプは、モータのトルク及び速度をフィードバックしない。モータのトルク又は速度のフィードバックがないと、ポンプが正常に動作して、予想される量の冷却剤を圧送しているかどうか等は、直ちには明確ではない。従来の冷却剤ポンプはまた、冷却剤温度をフィードバックしない。冷却剤温度は、重要であり、より多くの又はより少ない冷却剤流れの必要性を指示してもよい。更に、従来の冷却剤ポンプは、冷却剤の速度を変更できず、更に冷却剤の圧力及び流量を調整できない。更に、従来の冷却剤ポンプは、それら(従来の冷却剤ポンプ)が、頻繁に停止及び再起動されて、特定の機械加工作業に必要な流量よりもしばしば高いことがある冷却剤流量を提供する、固定速度で作動するので、必要なものに比べてより多くの電気エネルギを消費する。
【0015】
本開示の実施の形態によれば、コンピュータ制御式機械100は、上記で論じられた従来の冷却剤ポンプの制限を克服する、スマート冷却剤ポンプ10を具備する。スマート冷却剤ポンプ10は、ポンプの回転速度と徐々の上昇及び徐々の降下速度のプロファイルとの観点において、完全に制御可能なサーボモータ12(
図2)により駆動される。以下で説明するセンサ及び制御論理により、スマート冷却剤ポンプ10の挙動を、工具と操作とコンピュータ制御式機械100が経験してもよい条件との任意の組み合わせに合致させることを可能にする。
【0016】
以下の検討の目的のために、コンピュータ制御式機械100の制御装置110は、機械自体の動作(被加工物を配置し、被加工物に対して全ての機械加工操作を実行して、所望の部品を製造する)を制御し、そして更にスマート冷却剤ポンプ10の動作も制御することを考慮されたい。スマートポンプ10用の別個の制御装置を提供することも可能であり、その場合において、ポンプ制御装置は、コンピュータ制御式機械100の制御装置110と通信するであろう。
【0017】
上述のように、スマート冷却剤ポンプ10は、サーボモータ12により駆動される。サーボモータ12は、速度及びトルク信号をポンプ制御装置(この場合、機械制御装置110)に本来的に提供する、センサを備える。例えば、サーボモータ12は、位置エンコーダと、回転速度センサと、トルクセンサとを具備してもよい。トルクセンサと速度センサと位置センサとからの信号は、制御装置110又は別のポンプ制御装置に提供されており、そのことは、速度とトルクの測定との即時的フィードバック制御を可能にする。
【0018】
モータトルク信号は、冷却剤がポンプ10の入口に適切に供給されているかどうかを決定するように、制御装置110により使用可能である。不適切な冷却剤供給は、冷却剤レベルの低下、冷却剤フィルタ又は入り口の詰まり、又は冷却剤の完全な欠乏により引き起こされ得るであろう。もしこれらの条件の1つが低トルク値を介して検出された場合には、制御装置110は、コンピュータ制御式機械100が切削又は別の任意の機械加工作業を実行することを防止可能であり、このような状況において、警報信号がまた、オペレータに提供されることが好ましい。コンピュータ制御式機械100による不注意な乾いた状態の切削の防止は、工具の修理及び交換の費用を低減させ、そして拒絶される部品の数を減少させる。
【0019】
モータ速度信号は、ポンプ速度の関数である、冷却剤流量に対して即時的フィードバックを可能にする。これにより、モータ速度が、任意の特定の工具と操作と条件とに対してオペレータにより選択された冷却剤流量に対応することを、機械制御装置110が保証することを可能にする。例えば、アルミニウムに小径の穴を削孔するために必要な冷却剤は、鋼に大径の穴を削孔することより大幅により少なくて済む。スマート冷却剤ポンプ10は、オペレータにより選択された各操作のために所望の量の冷却剤を提供するように構成可能であり(
図3を参照)、そしてこの冷却剤制御はその場合、モータ速度信号によるコンピュータ制御式機械100の操作に含まれる。ポンプ速度を制御するために、追加のハードウェアは必要なく、サーボモータ12は、センサと制御能力特徴とを既に具備する。制御装置110は、以下で更に検討されるように、コンピュータ制御式機械100により実行される各個々の操作毎のための、冷却剤の特定の体積流量(及び対応する速度)を選択することを可能にする。
【0020】
スマート冷却剤ポンプ10の別の利点は、冷却剤サブシステムがより低い温度で作動できることである。ポンプ速度を変更する能力は、冷却剤の最大流量がスマート冷却剤ポンプ10により必要とされない状況において、モータ12を減速することにより、モータ12と冷却剤との温度を下げることができることを意味する。モータ12をより低い速度で作動させることは、冷却剤サブシステムの温度を下げ、更にエネルギを節約する。
【0021】
スマート冷却剤ポンプ10のサーボモータ12はまた、冷却剤の流れが必要とされない時間(例えば、機械加工操作の間に工具が交換されている時間)の間、モータ12を減速させることを可能にする。従来の冷却剤ポンプにおいて行われるようにモータを停止する代わりに、モータ12及びポンプ10を「アイドリング」速度に減速することは、モータ12の停止/始動サイクルの数を減らすだけでなく、モータ12及び制御装置110が、回生動力を提供するように減速中にエネルギを得ることを可能にし、従ってエネルギ費用を更に低減させる。
【0022】
図2は、冷却剤マニホールド130に結合されたスマート冷却剤ポンプ10の1つの図であり、コンピュータ制御式機械100における冷却剤サブシステムの部分的な実施例を表す。サーボモータ12とポンプ本体14とを具備する、スマート冷却剤ポンプ10が、左上の小さな挿入図に示される。サーボモータ12の全てとポンプ本体14の上部分とを具備する、スマート冷却剤ポンプ10の上部分は、
図2のより拡大された主画像において見ることができる。
【0023】
冷却剤マニホールド130は、サーボ又はソレノイドにより制御される、複数の弁本体を具備しており、そこでは、各弁は電気信号線132により制御される。各弁は、冷却剤回路の1つの分岐を通る流れを制御しており、そこでは、各分岐は、冷却剤をコンピュータ制御式機械100内の特定の場所に供給するように管とノズル(図示せず)とを具備する。例えば、1つの弁は、被加工物の上部に配置されるフライス加工ステーションに向けられたノズルへの冷却剤の流れを制御するように構成可能であり、別の弁は、被加工物等の端に配置された削孔ステーションに向けられたノズルへの冷却剤の流れを制御するように構成可能であろう。マニホールド130は、
図2の下部中央近くに見ることができる、流体結合器134によりポンプ本体14に接続(流体結合)する。
【0024】
前述のように、サーボモータ12の固有の速度及びトルクセンサを単純に使用することにより、スマート冷却剤ポンプ10は、不適切な冷却剤の流れ、冷却剤レベルの低下又は冷却剤の不足等の状況を検出し且つそれに対応可能であり、それにより、工具の摩耗/破損を防止し、部品の寸法精度を確保する。更に、スマート冷却剤ポンプ10は、冷却剤圧力及び流量センサを備えることができ、そして圧力及び流量信号は、制御装置110又は別のポンプ制御装置に提供される。制御装置110は、直接的測定を介して冷却剤の圧力及び流量を知ることにより、コンピュータ制御式機械100の特定の工具又は操作のために規定されてもよい、必要な冷却剤の圧力及び/又は流量を実現するように、スマートポンプ10の速度をより正確に制御できる。冷却剤の圧力及び流量信号はまた、所定の範囲外の値-即ち、圧力が高過ぎる又は低過ぎる、あるいは流量が低過ぎる等-について監視することができ、そして制御装置110は、必要に応じて、コンピュータ制御式機械100における操作を停止できる。
【0025】
冷却剤の圧力及び流量の値、並びにそれらの間の関係もまた、コンピュータ制御式機械100の保守に関する別の決定を行うように使用されてもよい。例えば、特定の総体積流量の後に、冷却剤を変更又は処理することが望ましくてもよく、そのことは、特定の稼働時間後に単純にそうするのではなくむしろ、実際の冷却剤使用を考慮に入れる。体積流量信号は、予め定義された閾値と比較できる、累積体積流量を得るように積分可能であり、その場合、累積体積流量が閾値を超えた時に、冷却剤及びフィルタの交換の必要性をオペレータに通知できる。
【0026】
スマート冷却剤ポンプ10の別の利点は、標準的なポンプによる場合よりも小さい冷却剤タンクを使用できることである。これは、スマート冷却剤ポンプ10が全速力未満で動作することが多いのに対し、従来の冷却剤ポンプは、例え必要な冷却剤流れが少ない場合でさえも常に全速力で動作するためである。
【0027】
減速された速度プロファイルが全てのポンプ構成要素への応力を低下させるので、ポンプの保守もまた、スマート冷却剤ポンプ10の場合では減少する。スマート冷却剤ポンプ10では、従来のポンプと比較して平均ポンプ速度の低下及びスマート冷却剤ポンプ10において使用されるサーボモータ12の回生電力獲得能力の両方により、電気エネルギ消費も低減される。
【0028】
図3は、スマート冷却剤ポンプ10を構成及び監視するための複数のユーザインターフェース画面122~128の図である。ユーザインターフェース画面122~128は、コンピュータ制御式機械100の表示ユニット120(
図1に示される)に表示される。
【0029】
インターフェース画面122~128は、使用者が、コンピュータ制御式機械100において各工具と操作と条件とのための冷却剤流れを完全に構成するための能力を提供する。例えば、500RPMで回転する30mmドリルを使用して1mm/秒のドリル送り速度で鋳造アルミニウムに穴を削孔する、削孔操作は、工具と操作と条件との特定の組み合わせを提示する。その様な各組み合わせ(工具と操作と条件)は、「中央通過冷却剤」(CTC―以下で説明)とカット(工具先端への冷却剤の流れ)と壁洗浄とベッド洗浄と流量/体積とを具備する、冷却剤設定により構成できる。これらの異なる冷却剤の流れの各々は、
図2に示される冷却剤マニホールド130の個別の弁/ノズルにより制御される。
【0030】
インターフェース画面122及び124は、被加工物固定具の制御と、削孔/機械加工操作と、空気送風機及び削り屑搬送機等の別の特徴の制御とを具備する、コンピュータ制御式機械100のための一般的な設定画面である。インターフェース画面122及び124はまた、冷却剤システムパラメータが設定される、インターフェース画面126及び128へのアクセスを提供する。
【0031】
インターフェース画面126は、工具と操作と条件との特定の組み合わせのための冷却剤構成制御を具備する。構成選択肢は、冷却剤の流れを送る場所(カット操作、壁、ベッド、及び/又はCTC)と、対応する流量と、を具備する。選択された冷却剤の流れの場所と流量とから、冷却剤ポンプの全体の流量を決定できる。別の構成選択肢は、動作後にポンプ10の速度を停止又は減速するための遅延タイマーを具備する。
【0032】
インターフェース画面128は、冷却剤システム内の個々のノズルのための構成制御画面である。インターフェース画面128は、切削操作の適切な冷却と潤滑とに必要な冷却剤の流れの場所及び量を提供するように、個々の管及びノズルを特定の角度で向けることができるので、スパイダー冷却設定画面として知られる。使用者は、特定の工作機械及び場所のための流量を視覚的に確認するように、構成工程中に冷却剤をオンにすることができる。
【0033】
インターフェース画面126及び128は、冷却剤システムの構成能力を説明するためにここに示されており、その構成能力は、特定の工具と操作と条件とに対して冷却剤の最適化された流れ及び配置をもたらす。この様に定義された総流量により、スマート冷却剤ポンプ10は、必要な冷却剤流量を供給するために必要な速度で作動し、そしてサーボモータフィードバック及びセンサ測定を介して適切な冷却剤流量を確認する能力を提示する。
【0034】
幾つかの機械加工操作は、冷却剤が工具(フライス頭部等)の中心を通って直接供給される、「中央通過冷却剤」(CTC)を必要とする。CTCは、比較的低い流量の冷却剤を必要とするが、しかし通常の切削操作及び壁の洗浄等(それは、例えば、100psiで作動してもよい)へのノズルの流れに使用されるものに比べて、はるかにより高い圧力(例えば、1000psi)を必要とする。この理由により、CTCは一般的に、主冷却剤システムとは別の冷却剤ポンプと別の冷却剤回路とを介して提供される。CTC冷却剤システムは、別のスマート冷却剤ポンプにより動力を供給可能であり、CTC冷却剤システムでは、CTCポンプは、スマート冷却剤ポンプ10と同じ特性(サーボモータ駆動、固有のトルクと速度との検知及び制御)を有するが、しかしCTCポンプは、スマート冷却剤ポンプ10よりも小さい。
【0035】
前述の議論を通して、コンピュータ制御式機械100、スマートポンプ10等の動き及び働きを制御するための様々な制御装置が、説明及び暗示される。これらの制御装置のモジュール及びソフトウェアアプリケーションは、プロセッサとメモリモジュールとを有する、1つ以上の計算装置において実行されることが理解されるべきである。1つの非限定的な実施の形態において、各コンピュータ制御式機械100は、機械制御装置(110)を有しており、そしてスマートポンプ10は、機械制御装置110又はそれ自体の専用ポンプ制御装置により制御されてもよい。機械制御装置110とポンプ制御装置と工場主要制御装置と間の通信は、配線通信網を介して行ってもよく、あるいは携帯電話/データネットワーク、Wi-Fi、広周波数帯域インターネット、Bluetooth(登録商標)等の任意の適切な無線技術を使用してもよい。
【0036】
上記で概説したように、ロボット又はコンピュータ制御式機械に統合されたサーボモータ駆動部及び制御部を備える、開示されたスマート冷却剤ポンプは、従来技術に勝る幾つかの利点を提供する。各特定の機械加工工具/操作/条件毎にポンプ速度と冷却剤流量とを制御する能力、及び部品又は工具の損傷が発生する前に冷却剤流れの問題を特定する能力は、一般的な「オン又はオフ」冷却剤ポンプよりもはるかに優れている。スマート冷却剤ポンプの形態は、より低い保守費用と、より低いエネルギ消費と、冷却剤レベルの低下又は流れの遮断等の問題のより良好な検出と、をもたらす。
【0037】
ロボット又はコンピュータ制御式機械に統合されたスマート冷却剤ポンプの多数の例示的な側面及び実施の形態が上記で論じられてきたが、しかし当業者は、それら(例示的な側面及び実施の形態)の修正、並び替え、追加、及び副次的組み合わせを認識するであろう。従って、以下の添付の特許請求の範囲及び以下に導入される請求項は、それらの真の精神及び範囲内にあるような全てのその様な修正、並び替え、追加及び副次的組み合わせを含むと解釈されることが意図される。