(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】部分硬化を含む付加製造の方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/336 20170101AFI20240304BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20240304BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20240304BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240304BHJP
B33Y 40/20 20200101ALI20240304BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240304BHJP
【FI】
B29C64/336
B29C64/112
B29C64/268
B33Y10/00
B33Y40/20
B33Y70/00
(21)【出願番号】P 2021516413
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 IL2019051069
(87)【国際公開番号】W WO2020065654
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-26
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513131464
【氏名又は名称】ストラタシス リミテッド
【住所又は居所原語表記】1 Holtzman Street, Science Park, P.O. Box 2496, 7612401 Rehovot, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ポクラス,マリアナ
(72)【発明者】
【氏名】クノ,レフ
(72)【発明者】
【氏名】ゴラン,エヴィアタール
(72)【発明者】
【氏名】ゾラン,オレン
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-112836(JP,A)
【文献】特開2002-292751(JP,A)
【文献】特開2015-168067(JP,A)
【文献】国際公開第2011/021403(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造(AM)によって三次元物体を製造する方法であって、
第1の造形材料配合物を分注して外部領域を形成し、第2の造形材料配合物を分注して内部領域を形成するステップであって、前記外部領域は前記内部領域を囲み、前記内部領域および前記外部領域は成形され前記物体の層を形成する、ステップと、
前記層を第1の硬化条件に曝露するステップであって、前記第1および前記第2の造形材料配合物ならびに前記第1の硬化条件は、前記曝露の際に、前記第1の造形材料配合物が前記第2の造形材料配合物より高度に強化されるように選択される、ステップと、
分注する前記ステップおよび前記第1の硬化条件に曝露する前記ステップを繰り返して、前記物体の複数の層を逐次形成するステップであって、前記外部領域が、前記内部領域を少なくとも部分的にカプセル化する強化コーティングを形成する、ステップと、
前記複数の層をまとめて第2の硬化条件に曝露するステップであって、前記第2の硬化条件が、前記第1の硬化条件とは異なり、前記第2の硬化条件が、前記内部領域が強化される度合いを高めるように選択される、ステップと、
を含み、
前記第1の造形材料配合物が、第1の硬化性材料と、前記第1の硬化性材料の強化を促進するための開始剤とを含み、前記開始剤が、前記第1の硬化条件への曝露の際に前記強化を促進することに対して活性であ
り、
前記第2の造形材料配合物は、第2の硬化性材料を含み、前記第2の硬化性材料は、強化されたときAMプロセス中の前記複数の層の定常温度より高い熱変形温度(HDT)、及び強化されたときAMプロセス中の前記複数の層の定常温度より高いガラス転移温度(Tg)を特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第1および第2の造形材料配合物ならびに前記第1の硬化条件は、前記第1の硬化条件への前記曝露の際に、前記第1の配合物の強化パラメータの変化が前記第2の配合物の強化パラメータの変化より少なくとも2倍高くなるように選択され、前記強化パラメータは粘度および/または損失正接である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1および第2の造形材料配合物ならびに前記第1の硬化条件は、前記第1の硬化条件への前記曝露の際に、前記第1の配合物の強化動態パラメータが前記第2の配合物の強化動態パラメータより少なくとも2倍高くなるように選択され、前記強化動態パラメータは粘度の変化率または損失正接の変化率である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1および前記第2の造形材料配合物ならびに前記第1の硬化条件は、前記第1の硬化条件への前記曝露の際に、前記第1の造形材料配合物の強化度が少なくとも70%であり、前記第2の造形材料配合物の強化度が50%以下であるように選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の造形材料配合物が、第2の硬化性材料を含み、前記第1および前記第2の造形材料配合物のうちの少なくとも1つが、前記第2の硬化性材料の強化を促進するための開始剤を含み、前記開始剤が、前記第1の硬化条件への曝露の際に前記強化に対して不活性であるか、または部分的に活性である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1および第2の造形材料配合物のうちの前記少なくとも1つの中の前記開始剤の総量が、前記第1の硬化条件への曝露の際に少なくとも70%の前記第2の硬化性材料の強化を促進するのに必要な前記開始剤の量の50重量%未満である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の造形材料配合物が、少なくとも2つの準配合物AおよびBを含み、それぞれが前記第2の硬化性材料を含み、準配合物A中の前記開始剤の量が、準配合物B中の前記開始剤の量より少なくとも2倍多く、前記内部領域中の準配合物Aの総量は、前記内部領域中の準配合物Bの総量の50重量%以下である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の造形材料配合物の分注が、前記準配合物Aを前記内部領域中でディザー処理するものである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の硬化条件が照射を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記照射が、紫外線照射である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の造形材料配合物が、紫外線硬化性材料である第1の硬化性材料と、前記第1の硬化条件への曝露の際に少なくとも70%の前記第1の造形材料配合物の強化を促進するのに十分な量の光開始剤とを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の造形材料配合物が、紫外線硬化性材料である第2の硬化性材料と、前記第1の硬化条件への曝露の際に50%以下の前記第2の造形材料配合物の強化を促進する量の光開始剤とを含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の造形材料配合物が、熱への曝露の際に強化する、請求項10または11に記載の方法。
【請求項14】
前記第1および第2の造形材料配合物のうちの少なくとも1つが、透明な強化材料を生成する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の造形材料配合物が、強化されたときAMプロセス中の前記複数の層の定常温度より高い熱変形温度(HDT)を特徴とする第2の硬化性材料を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の造形材料配合物が、強化されたときAMプロセス中の前記複数の層の定常温度より高いガラス転移温度(Tg)を特徴とする第2の硬化性材料を含む、請求項1~
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の造形材料配合物が、強化されたとき70℃より高い熱変形温度(HDT)を特徴とする第2の硬化性材料を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の造形材料配合物が、強化されたとき70℃より高いガラス転移温度(Tg)を特徴とする第2の硬化性材料を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の造形材料配合物が、強化されたときAMプロセス中の前記複数の層の定常温度より低い熱変形温度(HDT)を特徴とする第1の硬化性材料を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の造形材料配合物が、強化されたときAMプロセス中の前記複数の層の定常温度より低いガラス転移温度(Tg)を特徴とする第1の硬化性材料を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の造形材料配合物が、強化されたとき70℃より低い熱変形温度(HDT)を特徴とする第1の硬化性材料を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の造形材料配合物が、強化されたとき70℃より低いガラス転移温度(Tg)を特徴とする第1の硬化性材料を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記コーティングが、1mm未満の厚さを有するように構成される、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、全内容が参照により本明細書に組み込まれる、2018年9月28日出願の米国仮特許出願第62/738041号からの優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、付加製造(Additive Manufacturing;AM)、より具体的には、限定されないが、AMで使用可能な新規の配合システム、およびAMのメソッドパラメータに関する。
【背景技術】
【0003】
付加製造(AM)は、付加造形ステップを介して直接コンピュータデータから任意の造形構造の製造を可能にする技術である。いずれのAMシステムの基本操作は、三次元コンピュータモデルを薄い断面にスライスすることと、結果を二次元位置データに変えることと、データを供給して、層状に三次元構造を製造する装置を制御すること、からなる。
【0004】
付加製造は、3Dインクジェットプリンティングなどの三次元(3D)プリンティング、電子ビーム溶解、ステレオリソグラフィー、選択的レーザー焼結、薄膜積層法、熱溶解積層法などを含め、製造法に種々の多くの手法を必要とする。
【0005】
いくつかの3Dプリンティングプロセス、例えば、3Dインクジェットプリンティングは、層ごとに造形材料をインクジェット堆積させることによって実行される。したがって、造形材料は、ノズルのセットを有する分注ヘッドから分注され、支持構造体上に層が堆積される。造形材料に応じて、層を次いで硬化または固化してもよい。硬化は、好適な条件に曝露することによって、また、任意選択により好適な装置を使用することによって行われ得る。
【0006】
造形材料としては、所望の物体を製造するために選択的に分注される未硬化モデル材料(「未硬化モデリング材料」または「モデリング材料配合物」とも呼ばれる)が挙げられ、また、建築中に物体の特定領域に一時的な支持を与え、後続する物体層の適当な縦方向の配置を確実なものにする未硬化支持材料(「未硬化支持材」または「支持材料配合物」とも呼ばれる)も挙げることができる。支持構造体は、物体が完成した後に除去されるように構成される。
【0007】
一部の公知のインクジェットプリンティングシステムにおいて、未硬化モデル材料は、噴射された後に愛外線(UV)光に曝露されると硬化、強化または固化される光重合性または光硬化性材料である。未硬化モデル材料は、硬化後、三次元物体の構築および取り扱いを可能にする機械的性質を有する個体材料をもたらす組成を有する光重合性材料配合物であってもよい。材料配合物は、反応性(硬化性)成分および光開始剤を含んでもよい。光開始剤は、モデル材料を形成するために適用されるものと同じ紫外線光で硬化することによって、未硬化支持材料の少なくとも部分的な固化を可能にすることができる。固化材料は、剛性であっても、弾性特性を有してもよい。支持材料は、物体をその支持体から迅速かつ容易に洗浄できるように配合される。支持材料は、水溶性であり、ならびに/または液体溶液、例えば、水、アルカリ溶液または酸性水溶液に晒されると膨張および/もしくは分解することができるポリマーであってもよい。支持材料配合物はまた、モデル材料配合物に使用されたものと同様の反応性(硬化性)成分および光開始剤も含んでよい。
【0008】
3Dインクジェットプリンティングシステムにおいて利用されるほとんどの市販のプリントヘッドに適合させるために、未硬化造形材料は、以下の特性を特徴とすることが知られる:運転(例えば、噴射)温度で比較的低い粘度(例えば、最大50cpsまたは最大35cps、好ましくは8~25cpsのブルックフィールド粘度)、約25~約55ダイン/cm、好ましくは約25~約40ダイン/cmの表面張力、ならびに、1分以下、好ましくは20秒以下の、硬化条件に曝露した際に噴射された層を迅速に固化できるような、ニュートン液体挙動および選択された硬化条件に対して高い反応性。
【0009】
最終物体を形成する強化モデリング材料は、典型的には、その有用性を確実なものにするために、室温より高い熱たわみ温度(HDT)を示す。望ましくは、強化モデリング材料は、少なくとも35℃のHDTを示す。変動する条件で物体を安定させるには、高いHDTが望ましいことが知られる。ほとんどの場合、物体が、比較的高いアイゾット衝撃、例えば50J/m超または60J/m超を示すことも望ましい。
【0010】
さまざまな三次元プリンティング技術が存在し、例えば、米国特許第6259962号、同第6569373号、同第6658314号、同第6850334号、同第6863859号、同第7183335号、同第7209797号、同第7225045号、同第7300619号、同第7500846号、同第7991498号および同第9031680号ならびに米国特許出願公開第2016/0339643号に開示されており、これらはすべて、全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0011】
三次元インクジェットプリンティングを含めたいくつかの付加製造プロセスは、複数のモデリング材料を使用した物体の付加造形を可能にし、「マルチマテリアル」AMプロセスとも呼ばれる。例えば、本譲受人の米国特許出願公開第2010/0191360号は、複数のプリントヘッドを有する固体自由形状製造装置、複数の造形材料を製造装置へ供給するように構成された造形材料供給装置、および製造装置および供給装置を制御するように構成された制御装置を含むシステムを開示している。このシステムは、いくつかの操作モードを有する。一モードでは、製造装置の単一構築スキャンサイクル中にすべてのプリントヘッドが動作する。別のモードでは、構築スキャンサイクルまたはその一部の間に1つ以上のプリントヘッドが動作しない。
【0012】
Polyjet(商標)(Stratasys(登録商標)Ltd.(イスラエル))などの3Dインクジェットプリンティングプロセスにおいて、1つ以上のインクジェットプリントヘッドおよび/またはノズルから造形材料が選択的に噴射され、ソフトウェアファイルによって画定された通りに、予め決定された構成にしたがって連続層中の製造トレイ上に付着される。
【0013】
本譲受人による米国特許第9227365号は、複数の層と、コア領域を構成する層状コアと、エンベロープ領域を構成する層状シェルとから構築された、シェルで覆われた物体の固体自由形状製造のための方法およびシステムを開示している。これは、デジタルABS(商標)またはD-ABS(商標)とも呼ばれる。
【0014】
Polyjet(商標)技術は、並外れた設計の多様性およびマルチマテリアル構造のデジタルプログラミングをもたらす、各ボクセル(体積ピクセル)の位置および組成の管理を可能にする。Polyjet(商標)技術のその他の利点は、単一の物体における、非常に高いプリンティング解像度、最大14μmの1層ごとの高さ、およびマルチマテリアルを同時にプリントする能力である。このマルチマテリアル3Dプリンティングプロセスは、種々の剛性、性能、色または透明度を有する要素からなる複雑なパーツおよび構造の製造に役立つことが多い。ボクセルレベルでプログラミングされた新規の範囲の材料を、少量の出発物質のみを使用したPolyjet(商標)プリンティングプロセスによって作製することができる。
【0015】
本譲受人による国際公開特許出願第2013/128452号は、インクジェットヘッドノズルプレート上での早期の重合を防止しながら、噴射前の二成分の予混合と同様の重合反応をもたらす、プリンティングトレイ上で混ぜるカチオン性重合系および/またはラジカル重合系の二成分の別々の噴射を要するマルチマテリアル手法を開示している。
【0016】
現在のPolyJet(商標)技術は、例えば、堅い硬質の材料(例えば、Vero(商標)ファミリー材料として市販されている硬化性配合物)から軟質の可撓性材料(例えば、Tango(商標)およびAgilusファミリーとして市販されている硬化性配合物)までさまざまな特性を特徴とし、2つの出発物質(例えば、RGD515(商標)およびRGD535/531(商標))から作られたマルチマテリアルを含有するデジタルABSを使用して作製される物体も含む高分子材料を生成し、エンジニアリングプラスチックの特性を模倣するさまざまな硬化性(例えば、重合性)材料を使用する能力を与える。現在実践されるPolyJet(商標)材料のほとんどは、照射、主に紫外線および/または熱に曝露されると強化または固化する硬化性材料であり、主に実践される材料はアクリル系材料である。
【0017】
アクリル系材料は、典型的には、非最適熱安定性(熱変形に対する耐性)を特徴とする。例えば、強化したときに200℃を超えるTgを特徴とする多機能アクリル材料などのアクリル系材料は、高い体積収縮を示し、プリントされた物体の反りおよび/または変形をもたらすことが多い。
【0018】
強化したときの低い体積収縮を特徴とする硬化性材料としては、例えば、エポキシド、ポリウレタン、ポリアミド、ベンゾオキサジンおよびシアン酸エステル(CE)が挙げられる。しかしながら、これらの材料のほとんどは、インクジェットプリンティングヘッドの運転温度における該材料を含有するモデリング配合物の高い粘性、不安定性、および毒性などの技術的制約により、PolyJet(商標)方式と適合しない。
【0019】
追加の背景技術は、国際公開第2009/013751号、国際公開第2016/063282号、国際公開第2016/125170号、国際公開第2017/134672号、国際公開第2017/134673号、国際公開第2017/134674号、国際公開第2017/134676号、国際公開第2017/068590号、国際公開第2017/187434号、国際公開第2018/055521号、および国際公開第2018/055522号を含み、これらはすべて本譲受人によるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、付加製造プロセス全体を通して部分的に固化された状態または固化されない状態で維持される少なくとも1種のモデル材料を用いて物体を製造するシステムおよび方法を提供する。いくつかの実施形態例において、システムおよび方法は、部分的に固化されたまたは固化されていない材料をさらに固化することができる後処理プロセスを追加で含む。いくつかの実施形態例では、システムは、二段強化プロセスにおいて物体を固化させるように構成される。二段強化プロセスは、AMプロセス中に物体を部分的に固化させて未硬化物体を生成し、その後、AMプロセスの終わりに後処理(例えば、熱処理)して固化プロセスを完了させることを含んでもよい。AMプロセス中、物体の少なくとも一部を完全に固化させることによって部分的に固化させたプリントピクセルの潜在的な不鮮明化を回避することができる。任意選択により、完全に固化させた物体の一部は、部分的に硬化させた材料が含まれる物体の外面を形成する比較的硬いシェルまたは比較的硬いコーティング(固化シェルまたはコーティング)を画定することができる。いくつかの実施形態例において、部分的に硬化された材料は、液体からゼリー状の粘稠性を有する。
【0021】
いくつかの実施形態例によれば、システムおよび方法は、硬化中に材料の体積収縮をもたらす物体の反りまたは変形を低減させるように構成される。任意選択により、システムおよび方法は、大幅な収縮を経る、かつ/または比較的高い熱変形温度(HDT)を有する、例えば、50℃超または70℃超のHDTを有する材料でプリントすることを可能にできる。
【0022】
いくつかの実施形態例によれば、システムおよび方法は、物体を形成する材料の透明度を改善するように構成される。いくつかの追加の実施形態例において、システムおよび方法は、ハイスループットで物体を製造するように適用される。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、付加製造(AM)によって三次元物体を製造する方法であって、
第1の造形材料配合物を分注して外部領域を形成し、第2の造形材料配合物を分注して内部領域を形成するステップであって、外部領域は内部領域を囲み、内部領域および外部領域が成形されて、物体の層を形成する、ステップと、
層を第1の硬化条件に曝露するステップであって、第1および第2の造形材料配合物ならびに第1の硬化条件が、曝露の際に、第1の造形材料配合物が第2の造形材料配合物より高度に強化されるように選択される、ステップと、
分注するステップおよび第1の硬化条件に曝露するステップを繰り返して、物体の複数の層を逐次形成するステップであって、外部領域が、内部領域を少なくとも部分的にカプセル化する強化コーティングを形成する、ステップと、
複数の層を第2の硬化条件にひとまとめに曝露するステップであって、第2の硬化条件が第1の硬化条件とは異なり、第2の硬化条件が、内部領域が強化される度合いを高めるように選択される、ステップと、
を含む、方法を提供する。
【0024】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、第1および第2の造形材料配合物ならびに第1の硬化条件は、第1の硬化条件への曝露の際に、第1の配合物の強化パラメータの変化が、第2の配合物の強化パラメータの変化より少なくとも2倍高くなるように選択される。
【0025】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、強化パラメータは、粘度および/または損失正接である。
【0026】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、第1および第2の造形材料配合物ならびに第1の硬化条件は、第1の硬化条件への曝露の際に、第1の配合物の強化動態パラメータが、第2の配合物の強化動態パラメータより少なくとも2倍高くなるように選択される。
【0027】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、強化動態パラメータは、粘度の変化率または損失正接の変化率である。
【0028】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、第1および第2の造形材料配合物ならびに第1の硬化条件は、第1の硬化条件への曝露の際に、第1の造形材料配合物の強化度が少なくとも70%であり、第2の造形材料配合物の強化度が50%以下になるように選択される。
【0029】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の造形材料配合物は、第2の硬化性材料を含み、第1および第2の造形材料配合物のうちの少なくとも1つは、第2の硬化性材料の強化を促進させる開始剤を含み、開始剤は、第1の硬化条件への曝露の際に強化に対して不活性であるか、または部分的に活性である。
【0030】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、第1および第2の造形材料配合物のうちの少なくとも1つの中の開始剤の総量は、第1の硬化条件に曝露すると少なくとも70%の第2の硬化性材料の強化を促進するのに必要な開始剤の量の50重量%未満または30重量%未満である。
【0031】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の造形材料配合物は、少なくとも2つの準配合物AおよびBを含み、それぞれが第2の硬化性材料を含み、準配合物A中の開始剤の量は、準配合物B中の開始剤の量より少なくとも100%多く、準配合物AおよびBの重量比は0.5未満である。
【0032】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の造形材料配合物の分注は、準配合物Aが内部領域内でディザー処理されるように行われる。
【0033】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、第1の造形材料配合物は、第1の硬化性材料と、第1の硬化性材料の強化を促進するための開始剤とを含み、開始剤は、第1の硬化条件への曝露の際に強化を促進させることに対して活性である。
【0034】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、第1の硬化条件は照射を含む。
【0035】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、照射は紫外線照射である。
【0036】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、第1の造形材料配合物は、紫外線硬化性材料である第1の硬化性材料と、第1の硬化条件に曝露すると、少なくとも70%の第1の造形材料配合物の強化を促進させるのに十分な量の光開始剤とを含む。
【0037】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の造形材料配合物は、紫外線硬化性材料である第2の硬化性材料と、第1の硬化条件に曝露すると、50%以下の第2の造形材料配合物の強化を促進させる量の光開始剤とを含む。
【0038】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の造形材料配合物は、熱エネルギーに曝露すると(例えば、熱エネルギーを適用すると)、強化する。
【0039】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、第1および第2の造形材料配合物のうちの少なくとも1つは、透明な強化材料を提供する。
【0040】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の造形材料配合物は、強化したとき、AMプロセス中に複数の層の定常温度より高い熱変形温度(HDT)を有することを特徴とする第2の硬化性材料を含む。
【0041】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の造形材料配合物は、強化したとき、AMプロセス中に複数の層の定常温度より高いガラス転移温度(Tg)を有することを特徴とする第2の硬化性材料を含む。
【0042】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の造形材料配合物は、強化したとき、70℃超の熱変形温度(HDT)を有することを特徴とする第2の硬化性材料を含む。
【0043】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の造形材料配合物は、強化したとき、70℃超のガラス転移温度(Tg)を有することを特徴とする第2の硬化性材料を含む。
【0044】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、第1の造形材料配合物は、強化したとき、AMプロセス中に複数の層の定常温度より低い熱変形温度(HDT)を有することを特徴とする第1の硬化性材料を含む。
【0045】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、第1の造形材料配合物は、強化したとき、AMプロセス中に複数の層の定常温度より低いガラス転移温度(Tg)を有することを特徴とする第1の硬化性材料を含む。
【0046】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、第1の造形材料配合物は、強化したとき、70℃未満の熱変形温度(HDT)を有することを特徴とする第1の硬化性材料を含む。
【0047】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、第1の造形材料配合物は、強化したとき、70℃未満のガラス転移温度(Tg)を有することを特徴とする第1の硬化性材料を含む。
【0048】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、コーティングは、1mm未満の厚さを有するように構成される。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、各実施形態およびそれらの任意の組み合わせのいずれかで本明細書に記載の方法によって得ることができる三次元物体を提供する。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、層を第2の硬化条件に曝露する前に、各実施形態およびそれらの任意の組み合わせのいずれかで本明細書に記載の方法によって得ることができる未硬化物体を提供する。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、各実施形態のいずれかで本明細書に記載の第1および第2の配合物を含むキットを提供する。
【0052】
別段に規定されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および/または科学用語は、本発明が関与する当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様または同等の方法および材料を本発明の実施形態の実践または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料を以下に記載する。矛盾があった場合、定義を含む特許明細書が支配する。加えて、材料、方法、および例は、例示のみを目的とするものであり、必ずしも制限されることを意図しない。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態を、添付の図面(画像を含む)を参照して、例のみとして説明する。ここで図面の詳細を特定的に参照するが、図示の詳細は、例として挙げたものに過ぎず、本発明の実施形態を例示的に考察することを目的とすることを強調したい。この関連で、図面と共に記載される説明は、当業者にとって、本発明の実施形態の実践の仕方を明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】いくつかの実施形態例と共に使用するための三次元プリンティングのインクジェットプリンティングシステム例の簡略化されたブロック図である。
【
図2-1】本発明のいくつかの実施形態による別の付加製造システムの概略図である。
【
図2-2】本発明のいくつかの実施形態による別の付加製造システムの概略図である。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態によるプリンティングヘッドの概略図である。
【
図4】本発明のいくつかの実施形態による座標変換を実証する概略図である。
【
図5】非反応性造形材料配合物で充填されたコアが、反応性造形材料配合物で形成されたシェルによって包含されて製造された物体の横断面図と、物体のそれぞれの単層の上面図と、の簡略化された概略図であり、両図ともいくつかの実施形態例によるものである。
【
図6】コアが、非反応性造形材料配合物で充填され、反応性造形材料配合物でディザー処理され、別の反応性造形材料配合物によって包含されて製造された物体の横断面図と、物体のそれぞれの単層の上面図と、の簡略化された概略図であり、両図ともいくつかの実施形態例によるものである。
【
図7】いくつかの実施形態例による支持材料中にカプセル化された物体の横断面図の簡略化された概略図である。
【
図8】いくつかの実施形態例による非対称収縮が低減された物体を製造する方法例の簡略化された流れ図である。
【
図9】いくつかの実施形態例による三次元プリンティングのためのインクジェットプリントシステム例の簡略化されたブロック図である。
【
図10】いくつかの実施形態例に基づいてプリントされる反り棒モデルのピクセルマップ例である。
【
図11-1】いくつかの実施形態例によるシアン酸エステル含有配合物系でプリントされる物体例の画像である。
【
図11-2】
図11Bは、いくつかの実施形態例によるシアン酸エステル含有配合物系でプリントされる物体例の画像である。
図11C~Dは、いくつかの実施形態例による、未硬化物体およびそれぞれの熱後処理で強化された未硬化物体としてAMによって製造された反り棒の画像である。
【
図12】いくつかの実施形態例による高HDT材料を生成するアクリル系配合物でプリントされた反り棒モデル例のペアである。
【
図13】いくつかの実施形態例によるBMI含有配合物でプリントされた反り棒モデル例である。
【
図14】いくつかの実施形態例によるアクリル系配合物でプリントされた透明な物体例の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、付加製造(AM)、より具体的には、限定されないが、AMで使用可能な新規の配合システム、およびAMのメソッドパラメータに関する。
【0056】
本発明者らは、以下でさらに詳細に考察するように、さまざまなモデル材料に関連する制限を克服しながら、改善された特性を特徴とする三次元物体を積層造形する方法を設計し、成功裏に実践した。本明細書全体にわたって、「造形材料配合物」、「未硬化造形材料」、「未硬化造形材料配合物」、「造形材料」という語句およびその他の変形は、本明細書に記載するように、層を逐次形成するように分注される材料をまとめて説明する。この語句は、物体、すなわち1種以上の未硬化モデリング材料配合物を形成するように分注される未硬化材料、および支持体、すなわち未硬化支持材料配合物を形成するように分注された未硬化材料を包含する。
【0057】
本明細書全体にわたって、用語「物体」は、付加製造の最終生成物を説明する。この用語は、支持材料の除去後(もし未硬化造形材料の一部として使用した場合)、また、後処置(例えば、本明細書に記載の第2の硬化条件への曝露)の後、本明細書に記載の方法によって得られる生成物を指す。したがって物体は、典型的には、硬化(強化、固化)モデリング材料または2つ以上のモデリング材料の組み合わせからなる(少なくとも95重量パーセント)。いくつかの用途において、物体は、少なくともその一部に、硬化および/または未硬化モデリング材料を含む。
【0058】
用語「物体」は、本明細書全体にわたって用いられる場合、物体の全体またはその一部を指す。
【0059】
本明細書全体にわたって、語句「硬化モデリング材料」は、本明細書において「強化」または「固化」モデリング材料とも呼ばれ、分注された造形材料を硬化条件に曝露した(また、任意選択により後処理した)際に本明細書に規定の物体を形成し、かつ、任意選択により、支持材料が分注された場合、本明細書に記載の硬化支持材料が除去される、造形材料の一部を表す。強化モデリング材料は、本明細書に記載の方法で使用されるモデリング材料配合物に応じて、単一の強化材料であっても、2つ以上の強化材料の混合物であってもよい。
【0060】
語句「硬化モデリング材料」、「強化モデリング材料」、「固化モデリング材料」または「硬化/強化/固化モデリング材料配合物」は、硬化造形材料と見なすことができ、造形材料はモデリング材料配合物のみからなる(支持材料配合物からならない)。すなわち、この語句は、最終物体を生成するために使用される造形材料の部分を指す。
【0061】
本明細書全体にわたって、語句「モデリング材料配合物」は、本明細書において「モデリング配合物」、「モデリング材料」、「モデル材料」または簡単に「配合物」とも区別なく呼ばれ、本明細書に記載の物体を形成するために分注される未硬化造形材料の一部または全部を表す。モデリング材料配合物は、硬化を生じさせる条件への曝露の際に物体またはその一部を形成することができる未硬化モデリング配合物(別段に特に指定されない限り)である。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態において、モデリング材料配合物は、三次元インクジェットプリンティングにおいて使用するために配合され、そのままで、すなわち、他の任意の物質と混合するまたは組み合わせる必要なしに、三次元物体を形成することができる。
【0063】
未硬化造形材料は、1種以上のモデリング材料配合物を含んでもよく、物体の種々の部分が、強化させると、種々の硬化モデリング配合物から作製されるように、したがって、種々の強化(例えば、硬化)モデリング材料または強化(例えば、硬化)モデリング材料の種々の混合物から作製されるように分注することができる。
【0064】
最終三次元物体は、モデリング材料または複数のモデリング材料の組み合わせまたはモデリング材料(1種もしくは複数)と支持材料(1種もしくは複数)との組み合わせまたはそれらの変形体(例えば、硬化後)から作製される。これらの操作はすべて、固体自由形状製造の当業者に周知である。
【0065】
本発明のいくつかの例示的な実施形態において、2種以上の異なるモデリング材料配合物を含む造形材料を分注することによって物体を製造するが、各モデリング材料配合物は、インクジェットプリンティング装置の別々の分注ヘッドおよび/またはノズルから分注される。モデリング材料配合物は、任意選択により、好ましくは同時に、プリンティングヘッドと同じ通過の間に堆積される。層の中のモデリング材料配合物および/または配合物の組み合わせは、物体の所望の特性および本明細書に記載のメソッドパラメータにしたがって選択される。
【0066】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、各モデリング材料配合物は、1種以上の硬化性材料を含む。
【0067】
本明細書全体にわたって、「硬化性材料」または「固化性材料」は、本明細書に記載の硬化条件(例えば、硬化エネルギー)に曝露されると、固化または強化して本明細書に規定の硬化モデリング材料を形成する化合物(例えば、単量体またはオリゴマーまたは高分子化合物)である。硬化性材料は、典型的には、好適なエネルギー源に曝露されると重合および/または架橋を経る重合性材料である。硬化性または固化性材料は、典型的には、硬化条件への曝露の際に少なくとも一桁粘度が増加するものである。
【0068】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、硬化性材料は、モノマー、オリゴマーまたは短鎖ポリマーであってもよく、それぞれ、本明細書に記載の通りに重合性である。
【0069】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、硬化性材料が硬化エネルギー(例えば、照射)に曝露されると、鎖延長および架橋のいずれか1つまたは組み合わせによって重合する。
【0070】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、硬化性材料は、重合反応が起こる硬化条件への曝露の際に、重合反応で高分子モデリング材料を形成することができるモノマーまたはモノマーの混合物である。このような硬化性材料は、本明細書において、単量体硬化性材料とも呼ばれる。
【0071】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、硬化性材料は、重合反応が起こる硬化条件への曝露の際に、重合反応で高分子モデリング材料を形成することができるオリゴマーまたはオリゴマーの混合物である。このような硬化性材料は、本明細書において、オリゴマー硬化性材料とも呼ばれる。
【0072】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、硬化性材料は、単量体であろうとオリゴマーであろうと、単官能硬化性材料または多官能硬化剤材料であり得る。
【0073】
本明細書において、単官能硬化性材料は、硬化条件(例えば、硬化エネルギー)に曝露されると重合を経ることができる一官能基を含む。
【0074】
多官能硬化性材料は、硬化条件への曝露の際に重合を経ることができる2つ以上、例えば2、3、4またはそれ以上の官能基を含む。多官能硬化性材料は、例えば、それぞれ、重合を経ることができる2、3または4つの基を含む二官能、三官能または四官能硬化性材料であってもよい。多官能硬化性材料中の2つ以上の官能基は、典型的には、本明細書に規定の結合部分によって互いに結合されている。結合部分がオリゴマー部分であるとき、多官能基はオリゴマー多官能硬化性材料である。
【0075】
付加製造においておよび本実施形態のいくつかにおいて一般的に使用される例示的な硬化性材料は、アクリル材料である。
【0076】
本明細書全体にわたって、アクリル材料という用語は、1つ以上のアクリレート、メタクリレート、アクリルアミドおよび/またはメタクリルアミド基を有する材料をまとめて包含する。
【0077】
本明細書に記載の第1および第2の配合物中に含まれる硬化性材料は、強化されたときに各材料によってもたらされる特性によって規定することができる。すなわち、材料は、硬化条件への曝露の際に、例えば、重合の際に形成される材料の特性によって規定され得る。これらの特性(例えば、Tg、HDT)は、記載する硬化性材料のいずれかを単独で硬化する際に形成される高分子材料の特性である。
【0078】
本明細書で用いられる場合、各用語「硬化性」および「強化性」は、配合物が強化されるプロセスを表す。これらの用語は、モノマーおよび/もしくはオリゴマーの重合ならびに/またはポリマー鎖の架橋を包含する(硬化前に存在していたポリマーまたはモノマーもしくはオリゴマーの重合で形成された高分子材料のいずれか)。したがって硬化反応または強化の生成物は、典型的には、高分子材料であり、一部の例では、架橋高分子材料である。
【0079】
部分硬化または強化は、本明細書で用いられる場合、完了に達しない硬化または強化プロセス、すなわち、例えば以下に規定するような強化度、すなわち100%未満、90%未満、または80%未満まで達成されるプロセスを包含する。部分的に硬化された材料は、液体からゼリー状を維持し得る。完全硬化または強化は、本明細書で用いられる場合、少なくとも80%、または少なくとも90%、または約100%の硬化または強化の度合い、例えば、固化材料をもたらす硬化または強化プロセスである。
【0080】
「強化度」は、本明細書で用いられる場合、硬化が達成される程度、すなわち、硬化性材料が重合および/または架橋を経た程度を表す。硬化性材料が重合性材料である場合、この語句は、硬化条件に曝露された際に重合および/もしくは架橋を経た配合物中の硬化性材料のモル%、ならびに/または重合および/もしくは架橋が達成した程度、例えば、鎖延長および/もしくは架橋の程度の両方を包含する。重合度の決定は、当業者に公知の方法によって実行することができる。
【0081】
「未硬化物体」は、本明細書で用いられる場合、部分的に強化または固化されただけの少なくとも一部分を有し、完全に固化された物体を得るために追加の強化を要するAMプロセスによって形成される物体である。
【0082】
本明細書において、語句「硬化を達成する条件」または「硬化を誘発する条件」は、本明細書で区別なく「硬化条件」または「硬化誘発性条件」とも呼ばれ、硬化性材料を含有する配合物に適用したときにモノマーおよび/もしくはオリゴマーの重合ならびに/またはポリマー鎖の架橋を誘発する条件を表す。そのような条件は、例えば、以下に記載の硬化エネルギーを硬化性材料に適用すること、および/または硬化性材料を、触媒、共触媒、および活性剤などの化学反応性成分と接触させることを含むことができる。
【0083】
硬化を誘発する条件が、硬化エネルギーの適用を含むとき、語句「硬化条件への曝露」は、分注された層が硬化エネルギーに曝露され、その曝露は、典型的には、硬化エネルギーを分注された層へ適用することによって実行されることを意味する。
【0084】
「硬化エネルギー」は、典型的には、放射線の適用または熱の適用を含む。
【0085】
放射線は、硬化する材料に応じて、電磁放射線(例えば、紫外線もしくは可視光)、または電子線放射線、または超音波照射またはマイクロ波放射線であってもよい。放射線(または照射)の適用は、好適な放射線源によって達成される。例えば、紫外線または可視光または赤外線またはキセノンランプを、本明細書に記載の通りに用いてもよい。
【0086】
放射線への曝露の際に硬化を経る硬化性材料または系は、本明細書において区別なく「光重合性」または「光活性化可能な」または「光硬化性」と呼ばれる。
【0087】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、硬化性材料は、本明細書に記載の通り、放射線への曝露の際に重合するまたは架橋を経る光重合性材料であり、いくつかの実施形態では、硬化性材料は、本明細書に記載の通り、紫外線-可視光照射への曝露の際に重合するまたは架橋を経る紫外線硬化性材料である。
【0088】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の硬化性材料は、光誘起ラジカル重合を介して重合する重合性材料を含む。
【0089】
硬化エネルギーが熱を含むとき、本明細書および当該技術分野において、「熱硬化」とも呼ばれ、熱エネルギーの適用を含む。熱エネルギーの適用は、例えば、本明細書に記載の通り、層を分注した受取媒体または受取媒体を務めるチャンバを加熱することによって達成することができる。いくつかの実施形態では、加熱は抵抗加熱器を使用して達成される。
【0090】
いくつかの実施形態では、加熱は、熱誘導性照射によって分注された層を照射することによって影響を受ける。そのような照射は、例えば、堆積層上に放射線を放射するように操作されるIRランプまたはキセノンランプによって達成することができる。
【0091】
熱への曝露の際に硬化を経る硬化性材料または系は、本明細書において、「熱硬化性」または「熱活性化可能な」または「熱重合性」と呼ばれる。
【0092】
いくつかの硬化性材料は、熱および/または光誘起硬化を介して強化することができる。
【0093】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、本実施形態の方法は、2種以上の造形材料配合物(例えば、2種以上のモデリング材料配合物)を含む配合物系を使用し、該2種以上の造形材料配合物を分注し、硬化条件に曝露して、その結果、AMプロセス中に造形材料配合物の少なくとも1種が部分的にしか硬化されないか、または全く硬化されない。任意選択により、物体の硬化は、例えば熱硬化による、または所定の時間の間、環状条件で物体を維持すること(例えば、所定の時間の間(所定の数時間の間)、室温に物体を曝露すること)による後処理プロセスで完了させてもよい。いくつかの実施形態例によれば、系は、1種以上の硬化性材料、および硬化条件(第1の硬化条件)に曝露したときに配合物中の硬化性材料の強化を促進する開始剤を含む第1の造形材料配合物(本明細書において区別なく第1のモデリング材料配合物または反応性配合物とも呼ばれる)と、硬化性材料を含むが、他に、硬化条件(例えば、第1の硬化条件)に曝露したときに硬化性材料の強化を促進する上で不活性または部分的に活性の開始剤を含まないまたは含む第2の造形材料配合物(本明細書において区別なく第2のモデリング材料配合物または非反応性配合物とも呼ばれる)と、を含んでもよい。
【0094】
いくつかの実施形態例において、部分硬化されるか、または硬化されないように構成される部分の物体は、第2の造形材料配合物で形成され、AMプロセスを経て完全硬化されるように構成される部分の物体は、第1の造形材料配合物で形成される。いくつかの実施形態例において、その部分の硬化度は、第1の造形材料配合物でまたは別の反応性配合物で部分硬化するまたは硬化しないように構成された物体の一部の制御可能なドーピングに基づいて制御することができる。ドーピング度は、硬化度を規定することができる。
【0095】
いくつかの実施形態例によれば、AM法は、第2の造形(例えば、モデリング)材料配合物を有する物体のコアおよび第1の造形(例えば、モデリング)材料配合物を有する物体のシェルまたは表面を形成することを含む。任意選択により、第2の硬化条件(例えば、熱硬化)へ曝露することによってまたは物体を所定の時間の間、室温に曝露することによって、後処理プロセスにおいて、コアをさらに硬化してもよい。
【0096】
いくつかの実施形態例において、AM中に物体の反りまたは変形を防止するためにシステムおよび方法を適用する。いくつかの実施形態例において、透明なモデル材料の透明度を改善するためにシステムおよび方法を適用する。光開始剤は、透明性モデル材料に不要な着色を加え得る。任意選択により、光開始剤の濃度を低減することによって、着色を大幅に減らすことができる、または回避することができる。いくつかの実施形態例において、システムおよび方法を適用してスループットを改善する。第2の造形(例えば、モデリング)材料配合物を用いたAMは、AMプロセスにわたっての温度の増加を低減し得る。典型的には、物体を所定の温度範囲で構築されるように維持して変形を招く内部応力を低減させることが一般的に望ましいため、温度の上昇に起因してAMプロセスにおける走査速度は限定される。達成された温度低下に基づいて、走査速度およびスループットを向上させることができる。
【0097】
AMプロセス中に材料を部分硬化のみする欠点は、プリントピクセルの不鮮明化をもたらし得ることであり、したがってプリントの品質が低くなり得る。いくつかの実施形態例によれば、この欠点は、AMプロセス中に物体の一部を完全に硬化し、別の部分を部分硬化するか、または硬化しないことによって回避される。
【0098】
いくつかの実施形態例において、完全硬化される部分は、物体の外部、例えば、物体の層の縁であり、部分硬化される部分は、物体の内部、例えば、層の縁によって包含される物体の層の内部である。任意選択により、外部は、プリントされる物体のシェルを形成し、部分硬化されるか、または硬化されない内部は、プリントされる物体のコアを形成する。いくつかの実施形態において、コアは、少なくとも部分的にシェルに包まれている。任意選択により、シェルは、一プリントボクセル厚さの薄いコーティングであってもよく、または0.1mm~2mmの厚さ、例えば0.15mm~0.3mm厚さまたは0.3mmのコーティングであってもよい。厚さは、プリントされる物体のサイズおよび形状によって変動し得、場合によっては2mmより厚いことがある。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態をよりよく理解するために、図面の
図5A~14に例示するように、先ずは、
図1~4Bに例示する三次元プリンティングのためのインクジェットプリンティングシステムの構造および操作を参照されたい。
【0100】
本発明のいくつかの実施形態による物体112のAMに適したインクジェットプリンティングシステム100の代表的な非限定例を
図1に示す。インクジェットプリンティングシステム100は、複数の分注ヘッド116を有するインクジェットプリンター114を含んでもよい。各ヘッドは、好ましくは、配列されたノズル122を含み、これらを通して、液体造形材料がインクジェット技術によって分注される。任意選択により、造形材料供給システムまたは装置130は、造形材料容器またはカートリッジを含有し、プリンティング中に複数の造形材料配合物を分注ヘッド116に供給することが好ましい。各分注ヘッド116は、物体112を形成するための1つ以上のタイプのモデル材料を分注するように指定され得、また、物体112の支持構造体115を形成するための1つ以上のタイプの支持材料を分注するように指定され得る。任意選択により、一分注ヘッド116は、配列された第1のノズルセット122を介して第1の造形材料配合物を分注することができ、配列された第2のノズルセット122を介して第2の造形材料配合物を分注することができる。
図1の代表例において、4つの分注ヘッド116を例示するが、インクジェットプリンター114は、任意選択により、より少ないまたはより多い分注ヘッド116を含んでもよいことが企図される。
【0101】
インクジェットプリンター114は、光または熱などを放出し、任意選択により好ましくはモデリング材料および支持材料のうちの1つ以上を強化するように構成された任意の装置を含むことができる、固化システム124、例えば強化装置も含み得る。例えば、固化システム124は、モデリング材料および任意選択により支持材料を硬化またはそうでなければ固化することができる紫外線(UV)ランプを含んでもよい。いくつかの例示的な実施形態において、インクジェットプリンター114は、レベリング装置132、例えばローラーをさらに含む。レベリング装置132は、現存の層の上への連続層の形成に先立って、現存の層の規定の層厚さを矯正、平坦化および/または定着化させるように構成され得る。
【0102】
分注ヘッド116、固化システム124およびレベリング装置132は、好ましくは作業面として機能するトレイ180上で相互移動する動作をするインクジェットプリンター114のフレームまたはブロック128上に搭載され得る。いくつかの実施形態において、固化システム124およびレベリング装置132は、分注ヘッド116の流れを組むようにブロック128中に取り付けられ、分注ヘッドによって分注されたばかりの材料を少なくとも部分的に固化(例えば、硬化)する。任意選択により、トレイ180は、ブロック128が動かない1つ以上の方向で移動するように構成される。
【0103】
コンピュータ制御のコントローラ152は、インクジェットプリンター114を用いた製造を管理し、任意選択により好ましくは供給システム330も管理する。コントローラ152は、典型的には、制御操作を実行するように構成された1つ以上の電子回路を含む。コントローラ152は、好ましくは、上記のフォーマット(例えば、STL)のいずれかのコンピュータ可読媒体上で表されるコンピュータオブジェクトデータ、例えばCADコンフィギュレーションをベースとする製造指示に関するデジタルデータを伝達するデータ処理装置154と通じている。典型的には、コントローラ152は、各分注ヘッドまたはノズルアレイに印加される電圧ならびに各プリンティングヘッド中の造形材料の温度を制御する。
【0104】
製造データがコントローラ152に導入されると、ユーザーによる操作なしに操作することができる。いくつかの実施形態において、コントローラ152は、例えば、コントローラ152と通じているデータ処理装置154またはユーザーインターフェース106(例えばキーボード付きディスプレイおよびタッチスクリーンなど)を使用して、オペレーターから追加の入力を受信する。例えば、コントローラ152は、追加の入力として、1つ以上の造形材料のタイプおよび/または属性(これらに限定されないが、色、特性歪みおよび/または遷移温度、粘度、電気的性質、磁気的性質など)を受信することができる。他の属性または属性グループも企図される。
【0105】
本発明のいくつかの実施形態による物体のAMに適したシステム101の別の代表的な非限定例を
図2A~2Cに例示する。
図2A~2Cは、システム101の上面図(
図2A)、側面図(
図2B)および等角図(
図2C)を例示する。
【0106】
本実施形態において、システム101は、トレイ180および各々が複数の別々のノズルを有する複数のインクジェットプリンティングヘッド116を含む。トレイ180は、ディスクの形状を有していてもよい、または環状であってもよい。非球形も企図されるが、縦軸の周りを回転できるものとする。
【0107】
トレイ180およびヘッド116は、任意選択により好ましくは、トレイ180およびヘッド116間の相対的回転運動を可能にするように取り付けられる。これは、(i)ヘッド116に対して縦軸14の周りを回転するようにトレイ180を配置すること、(ii)トレイ180に対して縦軸14の周りを回転するようにヘッド116を配置すること、または(iii)縦軸14の周りを回転するが、異なる回転速度で回転する(例えば、反対方向での回転)ようにトレイ180およびヘッド116の両方を配置することによって達成することができる。以下の実施形態は、トレイが、ヘッド116に対して縦軸14の周りを回転するように配置される回転トレイである(i)の配置を特に強調して説明しているが、本出願は(ii)および(iii)の配置も企図されることを理解されたい。本明細書に記載の実施形態のいずれか1つを、(ii)および(iii)の配置のいずれかに適用可能になるように調整することができ、当業者は、そのような調整を行う方法を知っていると考えられる(本明細書に記載の詳細を含む)。
【0108】
以下の説明において、トレイ180に平行で、軸14から外側に向かう方向は半径方向γと呼ばれ、トレイ180に平行で、半径方向γに垂直の方向は、本明細書中で方位角方向Φと呼ばれ、トレイ180に垂直の方向は、本明細書中で縦方向zと呼ばれる。
【0109】
用語「半径位置」は、本明細書中で用いられる場合、軸14から所定距離でトレイ180の位置またはその上の位置を指す。用語をプリンティングヘッドと関連付けて用いる場合、用語は、軸14から所定距離におけるヘッドの位置を指す。用語をトレイ180の一点に関連付けて用いる場合、用語は、半径が軸14からの所定距離であり、中心が軸14にある円である点の軌跡に属する任意の点に相当する。
【0110】
用語「方位角位置」は、本明細書中で用いられる場合、所定の基準点に対して特定の方位角におけるトレイ180の位置またはその上の位置を指す。したがって、半径位置は、基準点に対して特定の方位角を形成する直線である点の軌跡に属する任意の点を指す。
【0111】
用語「垂直位置」は、本明細書中で用いられる場合、特定の位置で縦軸14と交差する面の位置を指す。
【0112】
トレイ180は、三次元プリンティングのための支持構造体として機能する。1つ以上の物体がプリントされる作業領域は、典型的には、トレイ180の総面積より小さいが、必ずしもそうとは限らない。本発明のいくつかの実施形態において、作業領域は環状である。作業領域を26に示す。本発明のいくつかの実施形態において、トレイ180は、物体の形成を通して同じ方向に連続的に回転し、本発明のいくつかの実施形態では、トレイは、物体が形成される間、少なくとも1回、(例えば、振動させて)回転方向を逆転させる。トレイ180は、任意選択により好ましくは取り外し可能である。トレイ180の取り外しは、システム101のメンテナンスのためであってもよく、または所望に応じて、新しい物体をプリントする前にトレイを取り換えるためであってもよい。本発明のいくつかの実施形態において、システム101は、1つ以上の異なる代替トレイ(例えば、代替トレイのキット)を備え、2つ以上のトレイは、異なるタイプの物体(例えば、異なる重さ)、異なる動作モード(例えば、異なる回転速度)などのために指定される。トレイ180の取り換えは、所望に応じて手動で行っても機械で行ってもよい。機械式取り換えを利用するとき、システム101は、トレイ180をヘッド116下の位置から取り外し、代替トレイ(図示せず)で置き換えるように構成されたトレイ取り換え装置36を含む。
図2Aの代表図中、トレイ180を引き寄せるように構成された可動アームを有する駆動装置38としてトレイ取り換え装置36を例示するが、他のタイプのトレイ取り換え装置も企図される。
【0113】
プリンティングヘッド116に例示された実施形態を
図3A~3Cに例示する。これらの実施形態は、非限定的にシステム100およびシステム101を含めた上記のAMシステムのいずれかのために用いることができる。
【0114】
図3A~Bは、1つ(
図3A)および2つ(
図3B)のノズルアレイ122を有するプリンティングヘッド116を例示している。アレイ中のノズルは、好ましくは、直線に沿って直線状に並ぶ。特定のプリンティングヘッドが2つ以上の直線状のノズルアレイを有する実施形態において、ノズルアレイは、任意選択により好ましくは互いに平行であってもよい。
【0115】
システム100と同様のシステムが用いられる場合、すべてのプリンティングヘッド116は、任意選択により好ましくは、割出し方向に沿って配向され、走査方向に沿ったそれらの位置は互いにオフセットされる。
【0116】
システム101と同様のシステムが用いられる場合、すべてのプリンティングヘッド116は、任意選択により好ましくは、半径方向に配向され(半径方向に平行)、それらの方位角位置は互いにオフセットされる。したがって、これらの実施形態では、異なるプリンティングヘッドのノズルアレイは互いに平行でなく、互いに対して角度があり、その角度は、各ヘッド間の方位角オフセットにほぼ等しい。例えば、一ヘッドは半径方向に配向されて、方位角位置Φ1に位置し得、別のヘッドは半径方向に配向されて、方位角位置Φ2に位置し得る。この例では、2つのヘッド間の方位角オフセットはΦ1-Φ2であり、2つのヘッドの直線状ノズルアレイ間の角度もΦ1-Φ2である。
【0117】
いくつかの実施形態において、2つ以上のプリンティングヘッドを、プリンティングヘッドのブロックに組み立てることができ、その場合、ブロックのプリンティングヘッドは典型的には互いに平行である。いくつかのインクジェットプリンティングヘッド116a、116b、116cを含むブロックを
図3Cに例示する。
【0118】
いくつかの実施形態において、システム101は、トレイ180が支持構造体30とヘッド116との間にあるように、ヘッド116下に位置する安定化構造30を含む。安定化構造30は、インクジェットプリンティングヘッド116が動作する間に生じ得るトレイ180の振動の防止または低減に役立つことがある。また、プリンティングヘッド116が軸14の周りを回転する構成において、安定化構造30は、好ましくは、安定化構造30が常にヘッド116の下に直接あるように回転する(トレイ180は、ヘッド116と安定化構造30との間にある)。
【0119】
トレイ180および/またはプリンティングヘッド116は、任意選択により好ましくは、垂直方向zに沿って、縦軸14に対して平行に移動するように構成され、したがってトレイ180およびプリンティングヘッド116間の垂直距離が変動する。トレイ180を垂直方向に沿って移動させることによって垂直距離が変動する構成において、好ましくは、安定化構造30もトレイ180と共に垂直に移動する。トレイ180の垂直位置を固定したまま、ヘッド116を垂直方向に沿って移動させることによって垂直距離が変動する構成において、安定化構造30も固定された垂直位置で維持される。
【0120】
垂直駆動装置28によって垂直運動が確立され得る。層が完成したら、トレイ180とヘッド116との間の垂直距離は、後続してプリントされる層の所望の厚さに応じて、所定の垂直方向に段階的に増加し得る(例えば、トレイ180は、ヘッド116に対して低くなる)。この手順を繰り返して、層ごとに三次元物体が形成される。
【0121】
本発明のいくつかの実施形態において、システム101は、ローラーまたはブレードとして製造され得る1つ以上のレベリング装置32をさらに含む。レベリング装置32は、連続して次の層を形成する前に新たに形成された層を伸ばす働きをする。いくつかの実施形態において、レベリング装置32は、その対称軸34がトレイ180の表面に対して傾斜し、その表面がトレイの表面に平行になるように位置された円錐ローラーの形状を有する。この実施形態を、システム101の側面図中で例示する(
図2B)。
【0122】
円錐ローラーは、円錐または円錐台の形状を有してもよい。
【0123】
円錐ローラーの開口角度は、好ましくは、軸34に沿った任意の位置の円錐の半径と、その位置および軸14間の距離との間の一定の比率になるように選択される。ローラーが回転する間、ローラーの表面上の点pは、点pの垂直に真下の点でのトレイの線速度に対して垂直の(例えば、同じ)線速度を有するため、この実施形態は、ローラー32が層を効果的に平らにすることを可能にする。いくつかの実施形態において、ローラーは、高さh、軸14から最も近い距離での半径R1、および軸14から最も遠い距離での半径R2を有する円錐台の形状を有し、ここで、パラメータh、R1およびR2は、関係式R1/R2=(R-h)/hを満たし、式中、Rは、軸14から最も遠いローラーの距離である(例えば、Rは、トレイ180の半径であってもよい)。
【0124】
本発明のいくつかの実施形態において、プリンティングヘッド116は、半径方向rに沿ってトレイに対して相互に移動するように構成される。これらの実施形態は、ヘッド116のノズルアレイ122の長さが、トレイ180上の作業領域26の半径方向に沿った幅より短いときに有用である。半径方向に沿ったヘッド116の動きは、任意選択により好ましくは、コントローラ152によって制御される。
【0125】
システム100および101のいずれも、任意選択により好ましくは、堆積した材料配合物を強化させることができる光または熱などを放出するように構成された任意の装置を含むことができる固化装置124を含んでもよい。例えば、固化装置124は、使用する造形材料配合物に応じて、例えば、紫外線もしくは可視光もしくは赤外線ランプ、または他の電磁放射線源、または電子線源であってもよい、1つ以上の放射線源を含んでもよい。放射線源は、非限定的に、発光ダイオード(LED)、デジタル光処理(DLP)システム、抵抗ランプなどを含めた任意のタイプの発光デバイスを含むことができる。本発明のいくつかの実施形態において、固化装置124は、造形材料配合物、例えばモデル材料および支持材料を硬化または固化する働きをする。
【0126】
システム100および101のいずれかにおいて、インクジェットプリンティングヘッドおよび好ましくは任意選択のシステムの1つ以上の他の部品の操作、例えば、トレイの運動、供給システムの操作、活性化、不活性化、印加電圧、ならびにレベリング装置および/または固化装置の垂直および/または水平方向に沿った位置などは、コントローラ152によって制御される。コントローラは、電子回路および回路によって可読の不揮発性記憶媒体を有してもよく、記憶媒体は、回路によって読み込まれたときに、回路に以下でさらに詳述するような制御操作を実行させるプログラム命令を記憶する。
【0127】
コントローラは、好ましくは、コンピュータオブジェクトデータ、例えば標準テッセレーション言語(STL)もしくはステレオリソグラフィコンター(SLC)フォーマット、仮想現実モデリング言語(VRML)、付加製造ファイル(AMF)フォーマット、図面交換フォーマット(DXF)、ポリゴンファイルフォーマット(PLY)またはCADに適した他の任意のフォーマットのコンピュータ可読媒体上で表されるコンピュータエイデッドデザイン(CAD)コンフィギュレーションに基づく製造指示に関するデジタルデータを伝達するデータ処理装置またはホストコンピュータ154に通じている。典型的には、コントローラは、各分注ヘッドまたはノズルアレイに印加された電圧および各プリンティングヘッド中の造形材料配合物の温度を制御する。一般的には、コントローラ152は、プリンティングヘッドを制御して層内の造形材料配合物の液滴を分注させ、例えば三次元物体をプリントする。システム101において、コントローラ152は、任意選択により好ましくは、プリンティングヘッドを制御して、トレイを回転させながら液滴を分注する。
【0128】
いくつかの実施形態において、コントローラは、例えば、コントローラと通じているデータ処理装置154またはユーザーインターフェース116を使用して、オペレーターから追加の入力を受信する。ユーザーインターフェース116は、これらに限定されないがキーボードおよびタッチスクリーンなどの当該技術分野において知られている任意のタイプのものであってもよい。例えば、コントローラ152は、追加の入力として、1つ以上の造形材料配合物のタイプならびに/または属性(これらに限定されないが、色、特性歪みおよび/もしくは遷移温度、粘度、電気的性質、磁気的性質など)を受信することができる。他の属性または属性グループも企図される。
【0129】
オブジェクトデータフォーマットは、典型的には、デカルト座標系にしたがって体系化されている。こうした場合、システム101を用いる場合、コンピュータ154は好ましくは、コンピュータオブジェクトデータ中の各スライスの座標をデカルト座標系から極座標系へ変換する手順を実行する。コンピュータ154は、任意選択により好ましくは、変換された座標系に関する製造指示を伝達する。あるいは、コンピュータ154は、コンピュータオブジェクトデータで規定されている原座標系に関する製造指示を伝達し、この場合、座標変換は、コントローラ152の回路によって実行される。
【0130】
座標変換は、回転するトレイ上での三次元プリンティングを可能にする。システム101において、ヘッド点のすべてのノズルが、トレイ180上で同じ距離を同時にカバーするわけではない。座標変換は、任意選択により好ましくは、異なる半径位置で同じ分量の過剰造形材料配合物を確保するように実行される。本発明のいくつかの実施形態による座標変換の代表例を
図4A~Bに記載するが、これらの図面は3つのスライスの物体(各スライスは、物体の異なる相の製造指示に対応する)を示し、
図4Aはデカルト座標系におけるスライスを例示し、
図4Bは、各スライスへの座標変換の手順を適用した後の同じスライスを例示している。
【0131】
いくつかの実施形態は、異なる分注ヘッドから異なる造形材料配合物を分注することによる物体の製造を企図する。これらの実施形態は、特に、所与の数の造形材料配合物から材料配合物を選択し、選択した材料配合物とそれらの特性との所望の組み合わせを規定する能力を提供する。本実施形態によれば、各材料配合物が層に堆積する空間的位置を画定し、異なる造形材料配合物による異なる三次元空間的位置の占有をもたらすか、または2種以上の異なる造形材料配合物による実質的に同じ三次元位置もしくは隣接する三次元位置の占有をもたらし、したがって層内の造形材料配合物の堆積後の空間的結合を可能にし、それによって各位置における複合材料配合物が形成される。
【0132】
モデリング材料配合物の任意の堆積後結合または混合が企図される。例えば、特定の材料配合物が分注されたら、その元の特性は保たれる。しかしながら、これを別のモデリング材料配合物と同時に分注する場合または同じ場所もしくは近くの場所に分注される他の材料配合物を分注する場合、分注された材料配合物とは異なる特性を有する複合材料配合物が形成される。
【0133】
したがって本実施形態は、広範囲の材料配合物の組み合わせの堆積を可能にし、複数の異なる組み合わせの材料配合物からなり得る物体の製造を可能にし、物体の種々の部分は、物体の各部分を特徴づけるのに望ましい特性による。
【0134】
本実施形態に適したAMシステムの原理および操作についてのさらなる詳細は、米国特許公開出願第20100191360号および同第20170173886号に記載されており、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0135】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明が必ずしも以下の説明に記載され、かつ/または図面に例示される構成要素および/または方法の構成および機構を詳述する出願に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、またはさまざまな方法で実践もしくは実施することが可能である。
【0136】
ここで、非反応性配合物で充填されたコアが、反応性配合物によって形成されたシェルに包含されて製造された物体の横断面図の簡略化された概略図と、それぞれの物体の単層の上面図と、を示す
図5Aおよび5Bを参照する(両図ともいくつかの実施形態例によるものである)。いくつかの実施形態例によれば、物体112は、AMプロセス中に部分硬化される第2の造形(例えば、モデリング)材料配合物または非反応性配合物で形成されるコア210と、AMプロセス中に完全硬化される第1の造形(例えば、モデリング)材料配合物または反応性配合物で形成されるシェル220と、を含んでもよい。任意選択により、1つ以上の支持構造体115を形成して、物体112を支持することができる。支持構造体は、AMプロセス中に硬化することによって固化してもよい。いくつかの実施形態例によれば、シェル220をAMプロセス中に固化しながら、コア210は、AMプロセス中に、半固化状態、例えば液体-ゼリー状態で維持される。
【0137】
ここで
図5Bを参照して、いくつかの実施形態例によれば、AMプロセス中、層113を、層113の周囲を画定し得る第1の造形(例えば、モデリング)材料配合物で形成される外部領域221と、外部領域221によって少なくとも部分的に包含される第2の造形(例えば、モデリング)材料配合物で形成される内部領域211と、でプリントすることができる。いくつかの実施形態例によれば、物体112を形成する複数の層は、外部領域221および内部領域211の両方を含む層113と同様の方法で形成される。複数の層は、任意選択により、シェル220およびコア210を形成することができる。シェル220は、コア210をカプセル化するように画定され得る。他の実施形態例において、物体112は、シェル220によって完全にカプセル化することができない。外部領域221の厚さは、プリントされた一ボクセルの厚さまたは0.1~2mm、例えば0.3~1mmもしくは0.3mmの厚さを有するように画定され得る。
【0138】
任意選択により、外部領域221を形成するために適用される第1の造形(例えば、モデリング)材料配合物は反応性であり、光開始剤を含む。そういうものとして、第1の造形材料配合物は、硬化プロセス、例えばAMプロセス中に放射される紫外線照射に基づいて固化する。いくつかの実施形態例において、第2の造形(例えば、モデリング)材料配合物で形成された内部領域211は、比較的低い濃度の光開始剤しか含まなくてもよく、または光開始剤を一切含まなくてもよく、放射線、例えばAMプロセス中に放射される紫外線によって固化され得ない、または完全に固化され得ない。代わりに、複数の内部領域211で形成されたコア210を、後処理プロセス、例えば熱硬化プロセスにおいて固化することができる。いくつかの実施形態例において、内部領域211の配合物中の光開始剤の濃度は0.02重量%~0.1重量%であってもよく、一方で外部領域221の配合物中の光開始剤の濃度は2重量%~5重量%であってもよい。
【0139】
いくつかの実施形態例において、内部領域211を形成するために使用される第2の造形(例えば、モデリング)材料配合物は、硬化すると収縮する傾向がある。第2の造形(例えば、モデリング)材料配合物は、強化されると、例えば、プリンティング中の定常温度の物体112のプリンティング温度より高いTgおよび/またはHDT、例えば50℃~90℃または70℃超を有し得る。
【0140】
図6Aおよび6Bは、コアが、非反応性配合物(本明細書に記載の第2の配合物の準配合物または本明細書に記載の第2の配合物)で充填され、反応性配合物(例えば、それぞれ、本明細書に記載の第2の配合物の別の準配合物または本明細書に記載の第1の配合物)でディザー処理され、別の反応性配合物(本明細書に記載の第1の配合物)によって包含されるように製造された物体の横断面図と、物体の単層の上面図と、のそれぞれの簡略化された概略図を示し、両図とも、いくつかの実施形態例によるものである。いくつかの実施形態例において、コア210の固化度は、第1の造形材料配合物または他の反応性配合物(例えば、本明細書に記載の第2の配合物の準配合物)の液滴215で選択的にディザー処理する内部領域211によって制御することができる。いくつかの実施形態例において、ディザー処理の濃度は、物体112または層113の一部が他の部分より高度に固化できるように、物体112または層113の幾何形状に適合される。
【0141】
図7は、いくつかの実施形態例による支持材料中にカプセル化された物体の横断面図の簡略化された概略図である。いくつかの実施形態例によれば、支持材料115を加えて、非反応性配合物で形成された物体112をカプセル化するシェル218を形成する。支持材料で形成されたシェル218は、物体112の外側にあり、犠牲となり得る、例えば、支持材料115と共に物体112を後処理した後に除去できる。支持材料115は、AMプロセス中に完全硬化することができる。
【0142】
図8は、いくつかの実施形態例による非対称収縮が低減された物体の製造方法例の簡略化された流れ図である。いくつかの実施形態例によれば、インクジェットプリンティングシステムに関連するデータ処理装置は、オブジェクトデータを受信し、物体の周囲のシェルの幾何形状を画定するように構成される(ブロック310)。シェルの形状の画定は、シェルの厚さの画定を含み得る。任意選択により、物体の形状に基づいて変動するように厚さを選択的に画定してもよい。シェルは、物体の体積の一部であってもよく、または物体の外側であってもよく、AMプロセスの終わりに除去されるように構成される。いくつかの実施形態例において、コアの所望の固化度も画定できる(ブロック320)。コアは、非反応性配合物(本明細書に記載の第2の配合物)または反応性および非反応性配合物の組み合わせ(例えば、本明細書に記載の第1および第2の配合物または本明細書に記載の第2の準配合物のいずれか)によって形成されていてもよい。コアの固化度は、コア中の反応性配合物の体積%追加に基づいて選択的に画定することができる。
【0143】
いくつかの実施形態例において、画定されたシェルおよびコアを含む物体のモデルをプリント可能な層に分ける(ブロック330)。プリンティング中、プリンターは、反応性配合物、非反応性配合物および支持材料を層ごとに選択的に堆積させる(ブロック340)。任意選択により、層を平坦化し(ブロック350)、次いで硬化する(ブロック360)。このプロセスは、すべての層が構築されるまで継続してもよい(ブロック370)。層の構築プロセスの終わりに、第2の硬化条件(例えば、熱後処理)への曝露(ブロック380)を実行して、物体、例えばコアの固化を完了させてもよい。熱後処理は、例えば、物体を1~10時間、100℃~250℃または150℃~250℃の温度で加熱することを含んでもよい。熱後処理は、第1の時間(例えば、1~4時間)の間、上に示した範囲の第1の温度まで加熱し、次いで第2の時間(例えば、1~4時間)の間、第1の温度より高い第2の温度まで加熱し、任意選択により、追加の時間の間、第3および第4の温度などまで加熱することによって漸進的に実行することができる。支持材料は、存在する場合、第2の硬化条件に曝露する前後に除去することができる(ブロック390)。あるいは、第2の硬化条件は、所定の時間、例えば1~48時間の間、物体を室温、例えば15℃~30℃に曝露することによるものでよい。
【0144】
図9は、いくつかの実施形態例による三次元プリンティング用のインクジェットプリンティングシステム例の簡略化されたブロック図である。いくつかの実施形態例によれば、インクジェットプリンティングシステム200は、インクジェットシステム100と同様であってもよいが、本実施形態による材料(例えば、比較的高いHDTを有する材料またはそうでなければ固化システム124による固化によって収縮する傾向がある材料、透明性物体を形成する材料、ならびに本明細書に記載の、本実施形態が有利である他の任意の材料および/または方法)を用いてプリントするためのシステムを構成するように複数の適合が行われる。いくつかの実施形態例によれば、好ましくは、造形材料供給システムまたは装置130’は、非反応性配合物(例えば、本明細書に記載の第2の配合物)の造形(例えば、モデリング)材料配合物を有する少なくとも1つの容器またはカートリッジおよび反応性配合物(本明細書に記載の第1の配合物)の造形(例えば、モデリング)材料を有する容器またはカートリッジを含む。いくつかの実施形態例によれば、データ処理装置154’は、コンピュータオブジェクトデータを入手し、物体112のシェルおよびコアを画定するデジタルデータを計算するように構成される。シェルの厚さは、物体112の形状、物体112のサイズおよび物体112を製造するために選択される材料に基づいてデータ処理装置154’で画定することができる。いくつかの実施形態例において、コア中の本明細書に記載の反応性配合物をディザー処理するためのパラメータも、同様に物体112の形状、物体112のサイズおよび物体112を製造するために選択される材料に基づいてデータ処理装置154’によって画定される。ディザー処理のためのパラメータは、ディザー処理した材料の体積%を含み、また、ディザー処理のパターンも含んでよい。任意選択により、ディザー処理した材料の体積%は、層によって異なってもよく、物体112の形状に適合させてもよい。任意選択により、ディザー処理した材料のパターンは、層によって異なってもよい。いくつかの実施形態例において、データ処理装置154’はまた、反応性配合物から形成される物体112のコア中のメッシュ構造または柱のアレイを画定するように構成され得る。いくつかの実施形態例によれば、インクジェットプリンティングシステム200は、インクジェットプリンター114でプリントした物体112を受け取り、AMプロセスの終わりに物体を後処理するように構成された加熱室190をさらに含む。
【0145】
図10は、いくつかの実施形態例に基づいてプリントされた反り棒モデルのピクセルマップ例である。図示のピクセルマップ中、コアは、92体積%の非反応性配合物(赤で示す)、例えば本明細書に記載の第2の配合物の準配合物を含み、これは8体積%の反応性配合物(青で示す)、例えば本明細書に記載の第2の配合物の別の準配合物でディザー処理される。いくつかの実施形態例において、非反応性配合物はTangoBlack(商標)の改変配合物であってもよく、反応性配合物はVeroWhite(商標)であってもよく、両方ともStratasys(登録商標)Ltd.(イスラエル)から入手できる。シェル(緑で示す)は、強化されると比較的高いHDT材料をもたらす配合物から形成することができる。示す例において、シェルは、第1の配合物例としての、同様にStratasys(登録商標)Ltd.(イスラエル)から入手可能なRGD515(商標)から形成される。任意選択により、RGD515(商標)は、改善された耐衝撃性をもたらす。
【0146】
例示的な構成およびモデリング材料配合物
本実施形態の付加製造は、第1の硬化条件に対して反応性の第1の造形(例えば、モデリング)材料配合物(本明細書中、第1の配合物とも呼ばれる)と、第1の硬化条件に対して非反応性であるか、または部分的に反応性である第2の造形(例えば、モデリング)材料配合物(本明細書中、第2の配合物とも呼ばれる)とを含む配合系を用い、第1の硬化条件に曝露させた際に第1の配合物が強化するように強化パラメータを制御しながら、一方で第2の配合物が未硬化のままであり、または部分的に強化されて、上記の構成にしたがって達成される。
【0147】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第1および第2の造形材料配合物はそれぞれ、最終物体を形成するモデリング材料配合物である。
【0148】
本発明のいくつかの実施形態によれば、分注された層の少なくとも一部において、第1および第2の配合物は本明細書に記載の通りに分注され、第1の硬化条件に曝露される。第1および第2の造形材料配合物ならびに第1の硬化条件は、第1の硬化条件への曝露の際に、第1の造形材料配合物が、第2の造形材料配合物より高度に強化されるように選択される。第1および第2の造形材料配合物ならびに第1の硬化条件は、第1の硬化条件への曝露の際に第1の造形材料配合物が高い強化度を有する強化材料をもたらし、それによって第2の造形材料配合物が強化を経ないか、または第1の配合物によってもたらされるよりも低い強化度の材料をもたらすように選択される。
【0149】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第1および第2の造形材料配合物ならびに第1の硬化条件は、第1の硬化条件への曝露の際に、第1の配合物の強化動態パラメータが、第2の配合物の強化動態パラメータより高くなるように選択される。いくつかの実施形態において、強化動態パラメータは、配合物の粘度の変化率および/または配合物のtanδの変化率などのレオロジー動態パラメータである。これらの動態パラメータは、当業者に公知の方法によって測定することができる。
【0150】
いくつかの実施形態において、第1の配合物の強化動態パラメータは、第2の配合物の強化動態パラメータより少なくとも2倍、または少なくとも5倍、または少なくとも10倍高い。
【0151】
粘度の変化率は、一定温度で、かつ、異なる時点で第1の硬化条件に曝露した際に、配合物の粘度を測定することによって測定することができる。粘度は、例えば、Brookfield粘度計で測定することができる。
【0152】
「Tanδ」は、「tanデルタ」、「タンジェント・デルタ」、「損失正接」としても当該技術分野において知られ、用いられており、損失弾性率と貯蔵弾性率との比、または応力と歪みとの間の位相遅れの正接を意味する。
【0153】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第1の硬化条件への曝露の際に、第1の配合物は、本明細書に規定の強化度、すなわち、第2の配合物を第1の硬化条件に曝露した際に形成される材料の強化度より少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%
、またはそれ以上高い強化度を特徴とする材料を生成する。
【0154】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第1の配合物は、第1の硬化条件への曝露の際に、少なくとも50%、または少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、またはさらに100%の本明細書に規定の強化度をもたらすものである。例えば、いくつかの実施形態において、第1の配合物は、重合性材料である1種以上の硬化性材料を含み、強化度は、少なくとも50モル%、または少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも70モル%、または少なくとも80モル%、または少なくとも90モル%、またはすべての重合性材料が重合を経て、それによって強化された第1の配合物を生成するような、硬化条件への曝露の際に重合する硬化性材料のモル%を表す。第1の配合物は、第1の硬化条件に曝露されたときに、高い強化度を経るため、本明細書において反応性配合物と呼ばれ、すなわち、第1の配合物は、第1の硬化条件に曝露されたときに強化に対して反応性である。
【0155】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第2の配合物は、第1の硬化条件への曝露の際に、50%以下、または40%以下、好ましくは30%以下、または20%以下、または10%以下、または5%以下、またはさらにはゼロの本明細書規定の強化度をもたらすものである。例えば、いくつかの実施形態において、第2の配合物は、重合性材料である1種以上の硬化性材料を含み、強化度は、50モル%以下、または40モル%以下、好ましくは30モル%以下、または20モル%以下、または10モル%以下、または5モル%以下、またはゼロの重合性材料が重合を経るような、硬化条件への曝露の際に重合する硬化性材料のモル%を表す。第2の配合物は、第1の硬化条件に曝露されたときに、低い強化度またはゼロの強化度の硬化を経るため、本明細書において非反応性または部分的に反応性の配合物と呼ばれ、すなわち、第2の配合物は、第1の硬化条件に曝露されたときに強化に対して非反応性であるか、または部分的に反応性である。
【0156】
本明細書に記載の強化度は、例えば、第1の硬化条件に曝露されたときに第1および第2の配合物の強化パラメータを決定することによって決定または測定することができる。
【0157】
強化パラメータは、例えば、第1の硬化条件への曝露の際の配合物の粘度および/または第1の硬化条件への曝露の際の配合物の損失正接(tanδ)などのレオロジーパラメータであってもよい。
【0158】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第1および第2の造形材料配合物ならびに第1の硬化条件は、第1の硬化条件への曝露の際に、第1の配合物の強化パラメータの変化が、第2の配合物の強化パラメータの変化より高くなるように選択される。
【0159】
「第1の硬化条件への曝露の際」の文脈における「強化パラメータの変化」は、時間Tの間の本明細書に記載の強化パラメータの変化を意味し、ここで、Tは、第1の硬化条件が分注された層に適用されたときから、後続の層が分注されるまでの時間帯を表す。
【0160】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第1および第2の造形材料配合物ならびに第1の硬化条件は、第1の硬化条件への曝露の際に、第1の配合物の粘度の変化が、第2の配合物の粘度の変化より高くなるように選択される。
【0161】
これらの実施形態のいくつかによれば、第1の配合物の粘度の変化は、第2の配合物の粘度の変化より少なくとも2倍、または少なくとも5倍、または少なくとも10倍高い。
【0162】
これらの実施形態のいくつかによれば、本明細書に規定の時間Tの間の第1の配合物の粘度の変化は、第1の配合物の粘度が少なくとも2倍または少なくとも5倍または少なくとも10倍増加するように、少なくとも2倍である。これらの実施形態のいくつかによれば、本明細書に規定の時間Tの間の第2の配合物の粘度の変化はゼロ、すなわち1倍であり、または2倍より低く、例えば、1.1、1.2、1.3、1.4または1.5倍であってもよい。
【0163】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第1および第2の造形材料配合物ならびに第1の硬化条件は、第1の硬化条件への曝露の際に、第1の配合物の損失正接の変化が第2の配合物の損失正接の変化より高くなるように選択される。
【0164】
これらの実施形態のいくつかによれば、第1の配合物の損失正接の変化は、第2の配合物の損失正接の変化より少なくとも2倍、または少なくとも5倍、または少なくとも10倍高い。
【0165】
これらの実施形態のいくつかによれば、本明細書に規定の時間Tの間の第1の配合物の損失正接の変化は、第1の配合物の損失正接が少なくとも1単位、または少なくとも2単位、またはそれ以上増加するように、少なくとも1単位である。これらの実施形態のいくつかによれば、本明細書に規定の時間Tの間の第2の配合物の損失正接の変化はゼロであり、または1単位より低く、または0.5単位より低く、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4または0.5単位であってもよい。
【0166】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第1および第2の配合物は硬化性配合物であり、それぞれ、好適な硬化条件に曝露されたときに強化材料を形成することができる。
【0167】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第1の配合物は、第1の硬化条件に曝露されたときに強化し、第2の配合物は、第1の条件に曝露されたときに強化されず、または低い度合いでしか強化されず、第1の硬化条件とは異なる第2の硬化条件に曝露されたときに強化する、またはさらに強化する。いくつかの実施形態において、第1の配合物は、第2の硬化条件に曝露されたときにさらに強化することができることに留意されたい。
【0168】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第1の硬化条件は、本明細書に記載の光学的放射、例えば、紫外線照射であり、第2の硬化条件は、本明細書に記載の加熱である。あるいは、第1および第2の硬化条件は両方とも光学的放射であり、第1および第2の硬化条件は、光学的放射のタイプおよび/または波長において異なる。さらに別法として、第1および第2の硬化条件は両方とも加熱であり、第1および第2の硬化条件は、適用される温度において異なる。さらに別法として、第1の硬化条件は、本明細書に記載の加熱であり、第2の硬化条件は、本明細書に記載の光学的放射、例えば紫外線照射である。
【0169】
第1の硬化条件が光学的放射を含み、第2の硬化条件が加熱を含む実施形態のいくつかにおいて、第1の硬化条件が適用される温度は、第2の硬化条件において適用される温度より少なくとも50℃または少なくとも100℃低い。
【0170】
第1の硬化条件が加熱を含み、第2の硬化条件が光学的放射を含む実施形態のいくつかにおいて、第1の硬化条件は、光学的放射に欠き、すなわち光学的放射は適用されず、第2の硬化条件が可視光を含む場合、それぞれのマスキングが影響される。
【0171】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第1の配合物は、本明細書において、まとめて第1の硬化性材料と呼ばれる、1種以上の硬化性材料を含む。
【0172】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第2の配合物は、本明細書において、まとめて第2の硬化性材料と呼ばれる、1種以上の硬化性材料を含む。
【0173】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第1の硬化性材料は、第1の硬化条件への曝露の際に重合を経て、第2の配合物は、第1の条件に曝露されたとき、重合を経ず、または完全な重合を経ず、または第1の配合物の重合度より低い重合度で重合を経て、第1の硬化条件とは異なる第2の硬化条件に曝露されたとき、硬度の重合(例えば、完全な重合)を経る。いくつかの実施形態において、第1の硬化性材料はまた、第2の硬化条件に曝露されたとき、さらなる重合(高度の)および/または架橋を経ることに留意されたい。
【0174】
第1および第2の配合物はそれぞれ、独立に、少なくとも一部の硬化性材料の強化を促進する1種以上の助剤(本明細書中、まとめて開始剤と呼ばれる)をさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、開始剤は、硬化性(例えば、重合性および/または架橋性)材料の重合および/または架橋を開始させる。
【0175】
一般的なAMおよび本実施形態のAMとの関係において、開始剤は、重合性材料の重合および/または架橋を開始および/または促進させる(重合および/もしくは架橋の速度を高める、かつ/または、重合および/もしくは架橋に必要とされるエネルギーを低減する)化学物質である。典型的には、開始剤は、反応を開始および/または促進させる(反応速度を高める、および/または反応に必要とされるエネルギーを低減する)反応種を発生する。例えば、フリーラジカル重合の開始剤は、フリーラジカルを発し、フリーラジカルの存在は、フリーラジカル重合を開始および/または促進させる。同様に、カチオン重合の開始剤はカチオンを発し、アニオン重合の開始剤はアニオンを発し、他の開始剤は、重合を開始または促進させる他の種を形成する。
【0176】
開始剤は、各硬化性材料と接触したときに重合に対して活性となり得、または硬化性材料の強化に対して化学的に不活性であり得、例えば、硬化条件に曝露されない場合、重合性材料の重合および/または架橋を開始または促進しない。硬化条件は、典型的には、すぐ近くの各重合性材料の重合を開始および/または促進させる反応種を発生するように、開始剤を活性化させる。
【0177】
照射によって活性化される開始剤は、光開始剤である。加熱によって活性化される開始剤は、熱開始剤である。開始剤は、別法として、活性化剤としても知られる別の化学物質と接触させることによって化学的に活性化させることもできる。さらに別法として、開始剤は、硬化条件によって活性化させることができ、活性化剤と接触させることによって反応種を発生する。
【0178】
硬化性材料を含む配合物の強化に対する開始剤(任意選択により活性化剤との組み合わせ)の活量(例えば、重合および/または架橋に対する活量)は、反応種を発生させる条件への曝露、ならびに/または開始剤および硬化性材料の相対量もしくは濃度によって決まる。開始剤の濃度が低すぎる場合、(i)発生される反応種が少量なため(硬化性材料の大部分が硬化条件をマスキングして、発生する反応種の量を低減し得るためにさらに少なくなり得る)、および/または(ii)硬化性材料の大部分における反応種が低濃度で発生することで、重合プロセスの開始および/または促進のために反応種と接触させる各硬化性材料(または活性化剤)の分子量が低くなるため、活量は低い。
【0179】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、開始剤は、好ましくは好適な硬化条件への曝露の際に少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%の重合性材料の重合を誘発するのに十分な濃度の反応種を発生させることができるとき、重合性材料の重合に対して(また、それによる該重合性材料を含む配合物または配合物系の強化に対して)活性である。
【0180】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、開始剤は、好ましくは好適な硬化条件への曝露の際に少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%の各重合性材料の重合を誘発するのに十分な濃度の反応種を発生させることができないとき、重合性材料の重合に対して(また、それによる該重合性材料を含む配合物の強化に対して)不活性である。
【0181】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、開始剤は、好ましくは硬化条件への曝露の際に50%以下、または40%以下、または30%以下、好ましくは20%以下、または10%以下、または5%以下、またはゼロの各重合性材料の重合を誘発する濃度の反応種を発生させるとき、重合性材料の重合に対して(また、それによる該重合性材料を含む配合物の強化に対して)不活性または部分的に活性と見なされる。
【0182】
開始剤は、十分な量の反応種を発生させる硬化条件に曝露しないとき、および/または本明細書に記載するように低濃度で存在するとき、重合に対して不活性であり得る。
【0183】
いくつかの実施形態において、開始剤は、その量が、第1の硬化条件への曝露の際に少なくとも70%の第2の硬化性材料の強化を促進させるのに必要な開始剤の量の50重量%未満、または30重量%未満、または10重量%未満、または5重量%未満、または1重量%未満のときに不活性である。
【0184】
第1の硬化条件への曝露の際に少なくとも70%の第2の硬化性材料の強化を促進させるのに必要な開始剤の絶対量は、第2の硬化性材料のタイプおよびその結果としての反応性に少なくとも部分的に依存する。
【0185】
典型的には、限定されないが、開始剤は、各硬化性材料の総重量に対して0.5~5重量%の濃度、好ましくは約1~約3重量%、例えば2.5重量%の濃度で存在するとき、および好適な硬化条件に曝露されたとき、本明細書で定義されるように重合に対して活性である。
【0186】
典型的には、限定されないが、開始剤は、各硬化性材料の重量に対して0.1重量%未満、または0.05重量%未満、例えば0.025重量%の濃度で存在するとき、さらには好適な硬化条件に曝露されたとき、本明細書で定義されるように重合に対して不活性であるか、または部分的に活性である。
【0187】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、開始剤は、第1の硬化条件に曝露されたときに十分な量の反応種を発生できないことによって、第2の配合物の強化に対して不活性である。
【0188】
これらの実施形態のいくつかにおいて、開始剤は、第1の硬化条件とは別の硬化条件に曝露されたとき、第2の配合物の強化を促進するのに十分な量で存在する。あるいは、開始剤は、第1の硬化条件とは別の硬化条件に曝露されたときでも、第2の配合物の強化を促進するには不十分な量で存在する。
【0189】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第1の配合物は、光硬化性材料(例えば、紫外線硬化性材料および/または強化を促進する光開始剤)を含む光硬化性配合物(例えば、紫外線硬化性配合物)であり、第2の硬化性配合物は、熱に曝露されると強化を促進する熱硬化性材料および/または助剤を含む熱硬化性配合物である。あるいは、第1および第2の配合物は両方とも、紫外線硬化性である。さらに別法として、第1および第2の配合物は両方とも、熱硬化性である。さらに別法として、第1の配合物は熱硬化性であり、第2の配合物は光硬化性配合物(例えば、紫外線硬化性配合物)である。
【0190】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第1の配合物は第1の硬化性材料を含み、第1および第2の配合物のうちの1つは、好ましくは第1の硬化条件への曝露の際に、第1の配合物の強化に対して活性である開始剤を含む。
【0191】
これらの実施形態のいくつかにおいて、開始剤は、第1の配合物に含まれ、第1の硬化条件への曝露の際に、第1の配合物の強化を促進する。
【0192】
これらの実施形態のいくつかにおいて、開始剤は、第2の配合物に含まれ、第1および第2の配合物が分注され、互いに接触し、好ましくはさらに第1の硬化条件に曝露されたとき、第1の配合物の強化を促進する。これらの実施形態のいくつかにおいて、分注は、第2の配合物中の開始剤の量ならびに所望の位置にある第1および第2の配合物の比率が、開始剤が、本明細書に定義されるように第1の配合物の強化に対して活性であるように行われ、例えば、開始剤が、第1の硬化条件への曝露の際に、所望の位置で、第1の硬化性材料の量に対して十分な量の反応種を発生でき、したがって所望の位置における第1の配合物の強化度が本明細書で規定する通りである(例えば、少なくとも70%)ように行われる。そのような実施形態は、微量の反応種の存在下でも強化が生じ得るほど硬化性材料の反応性が高く、したがって配合物の分注の前および分注中に各第1の硬化性材料から開始剤を分離することが望ましいときに望ましい。
【0193】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第2の配合物は第2の硬化性材料を含み、第1および第2の配合物のうちの1つは、第1の硬化条件への曝露の際に第2の配合物の強化に対して不活性であるか、または部分的に活性である開始剤を含む。
【0194】
これらの実施形態のいくつかにおいて、開始剤は、第2の配合物に含まれ、第1の硬化条件に曝露されたとき、第2の配合物の強化の促進に対して不活性である(例えば、第2の硬化性材料の重合を開始または促進するのに十分な量の反応種を発生しない)。
【0195】
図6Aおよび6Bに示す構成に対応するいくつかの実施形態において、内部領域を形成する第2の材料配合物は、本明細書において準配合物AおよびBと呼ばれる2つの準配合物を含み、これらはそれぞれ、同じ第2の硬化性材料(または2種以上の第2の硬化性材料の混合物)を含み、それによって準配合物Aは、第1の硬化条件に曝露されたとき、準配合物Bより高度に強化する。
【0196】
これらの実施形態のいくつかにおいて、準配合物Aは、第2の硬化性材料と、本明細書に記載されるように第2の硬化性材料の重合を促進する開始剤とを含み、開始剤は、本明細書中、各実施形態およびそれらの任意の組み合わせのいずれかに記載されるように、第1の硬化条件に曝露されたとき、第2の硬化性材料の重合を促進することに対して活性である。これらの実施形態において、準配合物Bは、第2の硬化性材料を含み、開始剤を含まないか、または、本明細書中、各実施形態およびそれらの任意の組み合わせのいずれかに記載されるように、硬化条件に曝露されたとき、第2の硬化性材料の重合に対して不活性である開始剤を含むかのいずれかである。これらの実施形態のいくつかにおいて、準配合物Bは、第2の材料の重合に対して活性であるが、硬化条件への曝露の際に、50%以下、または40%以下、または30%以下、好ましくは20%以下、または10%以下、または5%以下、またはゼロの第2の硬化性材料の重合を誘発する濃度の反応種を発生させる量である開始剤を含む。
【0197】
これらの実施形態のいくつかにおいて、準配合物AおよびBはそれぞれ、同じ硬化性材料および同じ開始剤を含み、開始剤は、第1の硬化条件に曝露されたときに活性である。これらの実施形態において、準配合物A中の開始剤の量は、準配合物B中の開始剤の量の少なくとも100%多く、準配合物B中の開始剤の量に対して2倍、3倍、4倍、さらにそれ以上多くてもよい。これらの実施形態のいくつかにおいて、準配合物AおよびBの重量比は0.5未満であり、すなわち、内部領域中の準配合物Aの総量は、内部領域中の準配合物Bの総量の50重量%以下であり、好ましくは内部領域中の準配合物Bの総量の40重量%以下、または30重量%以下、または20重量%以下、または10重量%以下、または5重量%以下、または1重量%以下、さらにそれ以下である。
【0198】
以下に、本実施形態の付加製造において使用可能な例示的配合物系を記載する。
【0199】
第1の例示的配合物系は、本明細書において配合物系Iとも呼ばれ、第1の硬化性材料(または1種以上の第1の硬化性材料の混合物)を含む第1の配合物と、第2の硬化性材料(または1種以上の第2の硬化性材料の混合物)とを含み、第2の硬化性材料は、第1の硬化性材料とは異なる。
【0200】
例示的配合物系Iのいくつかの実施形態において、第1の配合物は、第1の硬化条件に曝露されたときに少なくとも70%の強化を経て、第2の配合物は、第1の硬化条件に曝露されたときに30%以下の強化を経る。
【0201】
本明細書において配合物系Iaとも呼ばれる例示的配合物系Iのいくつかの実施形態において、第1の配合物は、第1の硬化条件に曝露されたときに第1の配合物の強化に対して活性である第1の開始剤を含み、第2の配合物は、第1の硬化条件に曝露されたときに第2の配合物の強化に対して不活性である第2の開始剤を含む。第2の開始剤は、第1の開始剤とは異なる。
【0202】
配合物系Iaの例示的な実施形態において、第1の硬化条件は照射(例えば、紫外線照射)であり、第1の配合物は、光硬化性材料(例えば、紫外線硬化性材料)である第1の硬化性材料と、少なくとも70%の第1の硬化性材料の強化を誘発する量の、放射線に曝露されたときに第1の配合物の強化を促進するのに好適な光開始剤とを含む。第2の配合物は、第2の硬化性材料と、放射線に曝露されたときに本明細書に記載されるように不活性である開始剤とを含む。いくつかの実施形態において、開始剤は熱開始剤であり、硬化性材料は熱硬化性材料である。これらの実施形態において、第2の硬化条件は、熱エネルギーの適用を含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、第1の硬化条件は、熱エネルギーの適用を含まない。例えば、第1の硬化条件は室温で適用される。いくつかの実施形態において、第1の硬化条件は、第2の硬化条件に適用される温度より少なくとも50℃低い温度で達成される。
【0203】
例示的配合物系Iaの実施形態のいくつかにおいて、第2の配合物は、2つの硬化性系を含む2つの準配合物を含み、一硬化性系は、第1の配合物中の第1の硬化性材料と同じであっても異なっていてもよい光硬化性材料と、各硬化性材料の重合を促進することに対して活性である光開始剤とを含み、別の硬化性系は、熱硬化性材料と、熱硬化性材料の重合を促進するための熱活性化剤とを含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、準配合物Aは、光硬化性材料と、第2の熱硬化性材料の重合を促進する助剤とを含み、準配合物Bは、熱硬化性材料および光開始剤を含む。準配合物Aと準配合物Bとの間の比率は、第1の硬化条件への曝露の際、本明細書に記載されるように、50%以下または30%以下の第2の配合物の強化度をもたらす比率である。
【0204】
本明細書において配合物系Ibと呼ばれる例示的配合物系Iのいくつかの実施形態において、第1の配合物は、第1の硬化条件に曝露されたときに第1の配合物を強化することに対して活性である第1の開始剤をさらに含み、第2の配合物は、第1の硬化条件に曝露されたときに第2の配合物を強化することに対して不活性である第2の開始剤を含む。第2の開始剤は、少なくとも第1の硬化条件に曝露されたときに活性化されることで、第1の開始剤と同じである。
【0205】
配合物系Ibの例示的な実施形態において、第1の硬化条件は照射(例えば、紫外線照射)であり、第1の配合物は、光硬化性材料(例えば、紫外線硬化性材料)である第1の硬化性材料と、少なくとも70%の第1の硬化性材料の強化を誘発する量の、放射線に曝露されたときに第1の配合物の強化を促進するのに適した光開始剤とを含む。第2の配合物は、光硬化性材料(例えば、紫外線硬化性材料)でもある第2の硬化性材料と、光開始剤でもあり、また、第1の硬化条件によって活性化され、第1の開始剤と同じであっても異なっていてもよい第2の開始剤とを含む。第2の配合物中の第2の開始剤の量は、本明細書に記載されるように、第2の配合物の強化を促進することに対して不活性であるが、または部分的に活性であるような量である。これらの実施形態のいくつかでは、第2の硬化条件は、少量の第2の開始剤の存在下で第2の配当物の強化を促進するような条件であり、例えば、熱の適用であってもよい。これらの実施形態のいくつかでは、第1の硬化条件は、熱エネルギーの適用を含まない。例えば、第1の硬化条件は室温で適用される。いくつかの実施形態において、第1の硬化条件は、第2の硬化条件に適用される温度より少なくとも50℃低い温度で達成される。
【0206】
配合物系Ibの追加の例示的な実施形態において、第1の硬化条件は、第1の温度での熱エネルギーであり、第1の配合物は、熱硬化性材料である第1の硬化性材料と、少なくとも70%の第1の硬化性材料の強化を誘発する量の、放射線に曝露されたときに第1の配合物の強化を促進するのに適した、熱によって活性化できる開始剤とを含む。第2の配合物は、熱硬化性材料でもある第2の硬化性材料と、熱によって活性化可能な開始剤でもあり、さらに第1の硬化条件によって活性化でき、第1の開始剤と同じであっても異なっていてもよい第2の開始剤とを含む。第2の配合物中の第2の開始剤の量は、本明細書に記載されるように、第2の配合物の強化を促進することに対して不活性であるか、または部分的に活性であるような量である。これらの実施形態のいくつかにおいて、第2の硬化条件は、少量の第2の開始剤の存在下で第2の配合物の強化を促進するものであり、例えば、第1の温度より高い第2の温度での熱の適用であり得る。いくつかの実施形態において、第1の硬化条件は、第2の硬化条件に適用される温度より少なくとも50℃低い温度で達成される。
【0207】
配合物系Ibの実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第1および第2の硬化性材料は、それらによって形成される強化材料の少なくとも1つの特性において、例えばHDT、衝撃、弾性などで異なる。
【0208】
本明細書において配合物系IIとも呼ばれる第2の例示的配合物系は、第1の硬化性材料(または1種以上の第1の硬化性材料の混合物)を含む第1の配合物と、第2の硬化性材料(または1種以上の第2の硬化性材料の混合物)を含む第2の配合物とを含み、第1および第2の硬化性材料は同じである。
【0209】
例示的配合物系IIのいくつかの実施形態において、第1の配合物は、第1の硬化条件に曝露されたときに少なくとも70%の強化を経て、第2の配合物は、第1の硬化条件に曝露されたときに30%以下の強化を経る。
【0210】
例示的配合物系IIのいくつかの実施形態において、第1の配合物は、第1の硬化条件に曝露されたときに第1の配合物を強化することに対して活性である第1の開始剤をさらに含み、第2の配合物は、第1の硬化条件に曝露されたときに第2の配合物を強化することに対して不活性である第2の開始剤を含む。第2の開始剤は、少なくとも第1の硬化条件に曝露されたときに活性化されることで、第1の開始剤と同じである。
【0211】
本明細書において配合物系IIaと呼ばれる配合物IIの例示的な実施形態において、第1および第2の硬化性材料は、強化されたときに同じまたは類似の特性を特徴とする紫外線硬化性材料であり、第1および第2の開始剤は両方とも光開始剤である。これらの実施形態のいくつかにおいて、第1の硬化条件は、光開始剤を活性化する波長での照射である。これらの実施形態において、第2の配合物中の第2の開始剤の量は、本明細書に記載されるように、第1の硬化条件に曝露されたとき、第2の配合物の強化に対して不活性になるような量である。
【0212】
本明細書において配合物系IIbと呼ばれる配合物IIの例示的な実施形態において、第1および第2の硬化性材料は、紫外線硬化性材料および/または熱硬化性材料であり、強化されたときに同じまたは類似の特性を特徴とし、第1および第2の開始剤は両方とも、熱に活性化開始剤である。これらの実施形態において、第1の硬化条件は、熱活性化開始剤を活性化する温度での加熱を含む。これらの実施形態において、第2の配合物中の第2の開始剤の量は、本明細書に記載されるように、第1の硬化条件に曝露されたとき、第2の配合物の強化に対して不活性にするような量である。
【0213】
本明細書において配合物系IIIとも呼ばれる第3の例示的な配合物系は、第1の硬化性材料(または1種以上の第1の硬化性材料の混合物)を含む第1の配合物と、第2の硬化性材料(または1種以上の第2の硬化性材料の混合物)を含む第2の配合物とを含み、第1および第2の硬化性材料は、互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0214】
例示的配合物系IIIのいくつかの実施形態において、第1の配合物は、第1の硬化条件に曝露されたときに少なくとも70%の強化を経て、第2の配合物は、第1の硬化条件に曝露されたときに30%以下の強化を経る。
【0215】
例示的配合物系IIIのいくつかの実施形態において、第1の配合物は、第1の硬化条件に曝露されたときに第1の配合物を強化することに対して活性である第1の開始剤をさらに含み、第2の配合物は、第1の硬化条件に曝露されたときに第2の配合物を強化することに対して不活性である第2の開始剤を含む。
【0216】
本明細書において配合物系IIIaと呼ばれる配合物IIIの例示的な実施形態において、第1および第2の硬化性材料は、強化されたときに同じまたは類似の特性を特徴とする紫外線硬化性材料であり、第1および第2の開始剤は両方とも光開始剤である。これらの実施形態のいくつかにおいて、第1の硬化条件は、第1の光開始剤を活性化させるが第2の光開始剤は活性化させない波長での照射である。これらの実施形態のいくつかにおいて、第2の配合物中の第2の開始剤の量は、好適な波長での放射線に曝露されたときに第2の配合物を強化することに対して活性であるが、本明細書に記載されるように、第1の硬化条件に曝露されたとき、第2の配合物の強化に対して不活性であるような量であってもよい。
【0217】
本明細書において配合物系IIIbと呼ばれる配合物IIIの例示的な実施形態において、第1および第2の硬化性材料は、紫外線硬化性材料および/または熱硬化性材料であり、強化されると同じまたは類似の特性を特徴とし、第1および第2の開始剤は両方とも熱活性化開始剤である。これらの実施形態において、第1の硬化条件は、第1の開始剤のみを活性化させる温度での加熱を含む。これらの実施形態において、第2の配合物中の第2の開始剤の量は、第1の硬化条件とは別の好適な硬化条件に曝露したときに第2の配合物の強化に対して活性であるが、本明細書に記載されるように、第1の硬化条件に曝露されたときに第2の配合物の強化に対して不活性であるような量であってもよい。これらの実施形態のいくつかにおいて、第2の開始剤は、第1の開始剤が活性化される温度より少なくとも50℃または少なくとも100℃高い温度に曝露されたときに活性化される。
【0218】
本実施形態によれば、上記の配合物系が分注され、第1の硬化条件に曝露されたら、複数の層が、第1の硬化条件とは別であり、内部領域を硬化する硬化度を強化するように選択された第2の硬化条件に曝露される。
【0219】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第1の硬化条件は照射であり、第2の硬化条件は加熱であり、第1および第2の配合物は、これに応じて、例えば、本明細書に記載の例示的な実施形態にしたがって選択される。
【0220】
配合物が、例えば、光硬化性材料および/または光開始剤を含むことで、照射に曝露されたときに反応性であると説明されるときはいつでも、配合物は、低温、例えば、100℃未満、または80℃未満、または70℃未満、または60℃未満、または50℃未満、または40℃未満の温度、さらには室温で放射線に曝露されたときに強化するようなものとして見なされることに留意されたい。しかしながら、そのような配合物は、高温、例えば100℃超、またはそれ以上の高温で照射を受けずに、熱に曝露されたときにも反応性であり得る。したがって、照射である第1の硬化条件に曝露されたときに強化に向かって反応性である、そのような配合物は、加熱である第2の条件に曝露されたとき、さらなる強化を経ることができる。
【0221】
配合物が、例えば、光硬化性材料および/または第2の配合物の強化を促進することに対して不活性である光開始剤を含むことで、照射に曝露されたときに非反応性または部分的に反応性であると説明されるときはいつでも、第2の配合物は、低温、例えば、100℃未満、または80℃未満、または70℃未満、または60℃未満、または50℃未満、または40℃未満の温度、さらには室温で放射線に曝露されたとき、強化しないか、または本明細書に規定の低い強化度までしか強化しないようなものとして見なされることに留意されたい。しかしながら、そのような配合物は、高温、例えば100℃超、またはそれ以上の高温で照射を受けずに、熱に曝露されたときにも反応性であり得る。したがって、照射である第1の硬化条件に曝露されたときに強化に向かって非反応性または部分的に反応性である、そのような配合物は、加熱である第2の条件に曝露されたとき、強化を経ることができる。
【0222】
以下に、本発明の実施形態において使用するのに適した、例示的な硬化性材料および該硬化性材料を含む配合物系を記載する。
【0223】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第1および第2の配合物のうちの少なくとも1つは、強化されると透明な材料を生成する。例示的な該配合物は調製され、商標名VeroClear(商標)で譲受人によって市販されている。
【0224】
これらの実施形態のいくつかにおいて、配合物系は、本明細書に記載の第1および第2の配合物を含み、両方とも、強化されると透明な材料を生成する。そのような配合物系は、本明細書に記載の例示的配合物系IIaであり、いくつかの実施形態では、第1の配合物としての公知の透明性配合物と、第2の配合物としての、同じ硬化性材料を含むが、本明細書に記載の光開始剤は少量のみしか含まない配合物と、を含むことができる。
【0225】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第2の造形材料配合物は、付加製造プロセス中に体積収縮を示す硬化性材料を含む。
【0226】
AM中に体積収縮を示す硬化性材料を、AMプロセスのためのモデリング材料配合物中に使用し、収縮が大きい場合、プリンティングプロセス中に物体が変形しやすく、また丸まりやすくなる。これは、物体の幾何形状の歪みおよびプリントされた表面からの物体の分離を招き得、モデル材料を堆積させるプリントヘッドの経路の障害を起こし得る。物体の反り部分でプリントヘッドが打たれると、プリントヘッドを損傷することがある。収縮度は、重合材料の体積に対する未重合材料の体積の比の閾値によって画定され得る。いくつかの例では、体積収縮は最大20%まで達し得る(例えば、一部のアクリル材料の場合)。
【0227】
反りは、Z軸に沿って重合度に勾配をもたらす温度勾配に起因し得る。AMプロセス中に堆積された各層は別々に硬化または強化されるが、所与の層の硬化または強化は、所与の層の上に1つ以上の後続する層が加えられる限り、継続し得る。継続される硬化または強化は、層を通過する硬化放射線の浸透によって可能であり、また、繰り返される層の硬化または強化に基づいて、発熱硬化または強化プロセスに基づいて、および材料が堆積される温度に基づいて物体中に蓄積し得る熱エネルギーによっても可能である。積層の上面の温度は、定常温度に達するまで、追加の層が加えられるごとに上がり得る。そのような温度勾配は、戦闘番号の堆積された層に見られる傾向がある。いくつかのシステム例において、定常状態は70℃またはその近く、例えば60℃~75℃で達し得る。この温度は、物体のプリント部分の幾何形状、強化材料のパラメータおよび硬化のパラメータに応じて7~10mmの高さで達し得る。上層が、下層と比べてより高温で、硬度の硬化または強化を経ている場合、上層は、下層に比べてより収縮する傾向がある。反り度は、Z軸に沿った収縮勾配によって決まり得る。
【0228】
ガラス転移温度(Tg)を、AMプロセス中に予測される反りを画定するパラメータとして使用してもよい。任意選択により、HDTを、AMプロセス中に予測される反りを画定するパラメータとして追加的にまたは代替的に使用してもよい。反りは、硬化プロセスによって強化される材料が、プリントされた物体の定常温度より高いガラス転移温度(Tg)、例えば70℃超を有する場合に生じ得る。そのような場合、ポリマーは、定常温度でその内部応力を緩和することができないことがある。これが反りを招き得る。応力を軽減するために、加熱トレイの形態での追加の熱エネルギー、冷却ファンを切ること、および/またはIRランプによる加熱を必要とし得る。しかしながら、昇温は、分注された配合物の熱安定性に悪影響を及ぼし得、時として、硬化または強化が起こる前に硬化性材料の蒸発を招くことがある。少なくともこの理由のために、AMプロセス中の昇温は、現実的な解決策になり得ない。
【0229】
強化されたときに、プリントされた物体の定常温度より低いTgを有する材料を形成する硬化性材料は、内部応力のクローリングおよび緩和を可能にし、したがって収縮する傾向にない。
【0230】
いくつかの実施形態例によれば、比較的高いTgおよび/またはHDTを有する材料の反りおよび/または変形は、プリンティング中に材料の少なくとも一部を部分硬化または強化のみ行って未硬化物体を得、次いで熱後処理によって物体の製造を完了することによって低減または回避される。
【0231】
本明細書で用いられる場合、HDTは、各配合物または配合物の組み合わせが、所定の負荷下、一部の特定の温度で変形する温度を指す。配合物または配合物の組み合わせのHDTを決定するための好適な試験手順は、ASTM D-648シリーズ、特にASTM D-648-06およびASTM D-648-07法である。本発明のさまざまな例示的実施形態において、構造のコアおよびシェルは、ASTM D-648-06法によって測定されるHDTおよびASTM D-648-07法によって測定されるHDTにおいて異なる。本発明のいくつかの実施形態において、構造のコアおよびシェルは、ASTM D-648シリーズのいずれかの方法によって測定されたHDTが異なる。本明細書中のほとんどの例において、圧力0.45MPaでのHDTを使用した。
【0232】
本明細書中、材料の「Tg」は、E”曲線の局所極大の位置として規定されるガラス転移温度を指し、ここで、E”は、温度の関数としての材料の損失弾性率である。
【0233】
大まかに言って、Tg温度を含む温度範囲内で温度が上がると、材料、特にポリマー材料の状態は、ガラス状態からゴム状態へ徐々に変化する。
【0234】
本明細書中、「Tg範囲」は、E”値が、上記のTg温度でその値の少なくとも半分である(例えば、その値まで可能)温度範囲である。
【0235】
いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、上記のTg範囲内で、ポリマー材料の状態が、ガラス状態からゴムへ徐々に変化することを仮定する。Tg範囲の最低温度を、本明細書においてTg(低)と呼び、Tg範囲の最高温度を、本明細書においてTg(高)と呼ぶ。
【0236】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の造形材料配合物は、強化されたときAMプロセス中の複数の層の定常温度より高い熱変形温度(HDT)および/またはTgを特徴とする第2の硬化性材料を含む。
【0237】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の造形材料配合物は、強化されたとき70℃より高い熱変形温度(HDT)および/またはTgを特徴とする第2の硬化性材料を含む。
【0238】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、第1の造形材料配合物は、強化されたときAMプロセス中の複数の層の定常温度より低い熱変形温度(HDT)および/またはTgを特徴とする第1の硬化性材料を含む。
【0239】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、第1の造形材料配合物は、強化されたとき70℃より低い熱変形温度(HDT)および/またはTgを特徴とする第1の硬化性材料を含む。
【0240】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の造形材料配合物は、強化されたときAMプロセス中の複数の層の定常温度より高い熱変形温度(HDT)および/またはTg(例えば、70℃超)を特徴とする第2の硬化性材料を含み、第1の造形材料配合物は、強化されたときAMプロセス中の複数の層の定常温度より低い熱変形温度(HDT)および/またはTg(例えば、70℃未満)を特徴とする第1の硬化性材料を含む。
【0241】
体積収縮を示す強化材料を生成する例示的な硬化性材料としては、これらに限定されないが、シアン酸エステル、ポリイミド前駆体(例えば、ビスマレイミド)、多官能性アクリル材料、または重合中にC=C二重結合開裂を含む他の重合可能な系が挙げられる。
【0242】
体積収縮を示す材料の本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、本明細書に記載の配合物系Iが使用可能である。実施形態例において、第1の配合物はアクリル系紫外線硬化性材料を含み、第1の硬化条件は紫外線照射を含み、第2の配合物は、アクリル系硬化性材料、好ましくは多官能性アクリル系紫外線硬化性材料を含む準配合物Aと、熱硬化性材料、例えばシアン酸エステルを含む準配合物Bとを含む。これらの実施形態のいくつかでは、本明細書に記載の例示的配合物系Iaが使用される。
【0243】
体積収縮を示す材料の本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、例示的配合物系Icの本明細書に記載の配合物系が使用される。これらの実施形態のいくつかにおいて、第1および第2の配合物は両方とも、紫外線硬化性アクリル系材料を含み、一方で、第2の配合物は、強化されたとき、本明細書に記載の高いHDTおよび/またはTgを示す材料を生成するアクリル系材料を含む。
【0244】
体積収縮を示す材料の本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、例示的配合物系IIaの本明細書に記載の配合物系が使用可能である。
【0245】
これらの実施形態のいくつかにおいて、第1および第2の配合物は両方とも、ポリイミド前駆体(例えば、ビスマレイミド)を、反応性希釈液と組み合わせて含み、それによって第2の配合物は、本明細書に記載されるように、少量の開始剤を含む。
【0246】
ポリイミド前駆体は、典型的には、1つ以上のイミド部分および1つ以上の重合性部分を含む。
【0247】
イミド部分は、窒素原子に結合された2つのアシル基からなる基C(=O)-NRa-C(=O)-であり、式中、Raは、例えば、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリル、および他の化学基のための本明細書に規定の他の任意の置換基であってもよい。
【0248】
本実施形態との関係において使用可能な例示的ポリイミド前駆体としては、限定されないが、α,ω-ビスマレイミド(BMI)が挙げられる。
【0249】
α,ω-ビスマレイミドは、連結部分を介して互いに連結された2つのイミド部分を特徴とし、紫外線照射、熱エネルギーおよび/または化学触媒作用に曝露されたとき、単独重合および/または共重合を経て、それによって架橋ポリイミドを生成する重合性部分をさらに特徴とする。
【0250】
本実施形態との関係において使用可能なα,ω-ビスマレイミドをまとめて式Iによって表すことができる。
【0251】
【化1】
式中:
Lは、アルキル、アリール、シクロアルキル、炭化水素(これらの用語は本明細書に定義する通りである)、あるいはヘテロ非環式、ヘテロアリール、ポリ(アルキレン鎖)および前述の任意の組み合わせであってもよい、またはこれらを含む連結部分であり、
R
1~R
4は、それぞれ独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、および本明細書に記載の任意選択の任意の他の置換基から選択される。
【0252】
好ましくは、R1~R4はそれぞれ水素である。
【0253】
連結部分Lの化学組成および分子量は、得られたポリイミドの特性を決定する。
【0254】
いくつかの実施形態において、L連結部分は、本明細書に定義したような炭化水素である。いくつかの実施形態において、炭化水素は、1つ以上のアルキレン鎖からなる。いくつかの実施形態において、炭化水素は、分枝単位を介して接続された2つ以上のアルキレン鎖を含む。いくつかの実施形態において、分枝単位は、シクロアルキルを含む、またはシクロアルキルからなる。
【0255】
いくつかの実施形態において、L連結部分は、式:
A1-B-A2
によって表され、式中、A1およびA2はそれぞれ、アルキレン鎖であり、Bは分枝単位である。いくつかの実施形態において、Bは、シクロアルキル、例えば、シクロヘキシルであり、これは1つ以上のアルキレン鎖によってさらに置換される。
【0256】
いくつかの実施形態において、A1およびA2ならびにシクロアルキルを置換する任意選択のアルキレン鎖は、それぞれ独立に、3~20個の炭素原子の長さ、または3~15個、または3~10個、または5~10個の炭素原子の長さである。
【0257】
用語「分枝単位」は、本明細書で用いられる場合、マルチラジカル、好ましくは脂肪族または脂環式基を表す。「マルチラジカル」とは、連結部分が、2つ以上の原子および/または基もしくは部分の間を連結するような結合点を2つ以上有することを意味する。
【0258】
いくつかの実施形態において、分枝単位は、2つ、3つまたはそれ以上の官能基を有する化学部分に由来する。いくつかの実施形態において、分枝単位は、本明細書で定義する分枝アルキルまたはシクロアルキルである。
【0259】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、連結部分は、BMIの分子量が200~5000ダルトン、好ましくは300~2000ダルトン、または300~1000ダルトン、または500~1000ダルトンの範囲であるように選択される。
【0260】
例示的なBMIは、分子量が689ダルトンのBMI-689を含む。
【0261】
ポリイミド前駆体を含む配合物または配合物系(2種以上の準配合物の組み合わせ)は、追加の硬化性材料、例えば、本明細書に記載の一官能性もしくは多官能性アクリル材料、および/または有機溶媒をさらに含んでもよい。
【0262】
ポリイミド前駆体と組み合わせて使用可能な例示的硬化性材料は、例えば、国際公開第2019/130312号および国際公開第2019/130310号に記載されている。
【0263】
一官能性アクリレートの非限定例としては、アクリル酸イソボルニル(IBOA)、メタクリル酸イソボルニル、アクリロイルモルホリン(ACMO)、アクリル酸フェノキシエチル(Sartomer Company(USA)から商標名SR-339で市販されている)、アクリル酸ウレタンオリゴマー(名称CN131Bで市販されているものなど)、ならびにAM法において使用可能な任意の他のアクリレートおよびメタクリレートが挙げられる。
【0264】
多官能性(メタ)アクリレートの非限定例としては、プロポキシル化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート(Sartomer Company(USA)から商標名SR-9003で市販されている)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DiTMPTTA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(TETTA)、およびジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DiPEP)、ならびに脂肪族ウレタンジアクリレート、例えば、Ebecryl230として市販されているものなどが挙げられる。多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーの非限定例としては、エトキシル化またはメトキシル化ポリエチレングリコールジアクリレートまたはジメタクリレート、エトキシル化ビスフェノ0ルAジアクリレート、ポリエチレングリコール-ポリエチレングリコールウレタンジアクリレート、部分的にアクリル化されたポリオールオリゴマー、ポリエスエル系ウレタンジアクリレート(CNN91として市販されているものなど)が挙げられる。
【0265】
D-ABS配合物系に関連する実施形態との関係において使用可能な硬化性材料は、例えば、本明細書中に完全に記述されているかのように参照により組み込まれる国際公開第2018/055521号および国際公開第2018/055522号に記載されている。
【0266】
語句「シアン酸エステル」は、1種以上のシアン酸エステル化合物および/または1種以上のそれらのプレポリマー(ホモプレポリマーおよび/またはヘテロプレポリマーを含む)を包含する。
【0267】
プレポリマーは、分子量200または400g/molから4000または8000g/molのプレポリマーをもたらす(初期のシアネート官能基の)1または5%から20または40%のシアネート基の変換度まで重合されるシアン酸エステルを含む。
【0268】
本明細書に記載の、本実施形態のいくつかとの関係において使用可能なシアン酸エステル化合物は、次式によってまとめて表すことができる。
【0269】
【化2】
式中:
mは、1~6の整数であり、例えば、1、2、3、4、5または6、好ましくは2、3、4または5、より好ましくは2または3、例えば2であり、
Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロ非環式基である。あるいは、Rは、任意選択によりSi、P、S、O、Nなどの1個以上のヘテロ原子によって中断および/または置換される炭化水素(飽和または不飽和)である。
【0270】
いくつかの実施形態において、Rは、アリール、例えば、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、またはピレニル基であり、それぞれ置換または非置換である。
【0271】
いくつかの実施形態において、Rは、アリール、例えばフェニル、ビフェニル、ナフチル、ビス(フェニル)メタン、ビス(フェニル)エタン、ビス(フェニル)プロパン、ビス(フェニル)ブタン、ビス(フェニル)エーテル、ビス(フェニル)チオエーテル、ビス(フェニル)スルホン、ビス(フェニル)ホスフィンオキシド、ビス(フェニル)シラン、ビス(フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(フェニル)トリフルオロエタン、もしくはビス(フェニル)ジシクロペンタジエン、またはフェノールホルムアルデヒド樹脂であり、それぞれ、非置換か、または、例えば、1~6つの置換基によって置換されている。
【0272】
例示的なシアン酸エステル化合物としては、これらに限定されないが、1,3-または1,4-ジシアナトベンゼン、1,3,5-トリシアナトベンゼン、1,3-、1,4-、1,6-、1,8-、2,6-または2,7-ジシアナトナフタレン、1,3,6-トリシアナトナフタレン、2,2’または4,4’-ジシアナトビフェニル、ビス(4-シアナトフェニル)メタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-シアナトフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-ジブロモ-4-ジシアナトフェニル)プロパン、ビス(4-シアナトフェニル)エーテル、ビス(4-シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアナトフェニル)スルホン、亜リン酸トリス(4-シアナトフェニル)、リン酸トリス(4-シアナトフェニル)、ビス(3-クロロ-4-シアナトフェニル)メタン、4-シアナトビフェニル、4-クミルシアナトベンゼン、2-tert-ブチル-1,4-ジシアナトベンゼン、2,4-ジメチル-1,3-ジシアナトベンゼン、2,5-ジ-tert-ブチル-1,4-ジシアナトベンゼン、テトラメチル-1,4-ジシアナトベンゼン、4-クロロ-1,3-ジシアナトベンゼン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’ジシアナトジフェニル、ビス(3-クロロ-4-シアナトフェニル)メタン、1,1,1-トリス(4-シアナトフェニル)エタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)エタン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-シアナトフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-シアナトフェニル)プロパン、ビス(p-シアノフェノキシフェノキシ)ベンゼン、および前述の任意の混合物が挙げられる。
【0273】
式Iのシアン酸エステル(式中、mは2である)は、典型的には、次式のポリシアヌレートを形成することによって重合を経る。
【0274】
【0275】
第2の造形材料配合物がシアン酸エステルを含む場合、好ましくは、シアン酸エステルの重合を促進する助剤をさらに含み、上に記載する通りであり、助剤は、シアン酸エステルを含まない準配合物に含まれる。
【0276】
シアン酸エステルの重合を促進する助剤は、当該技術分野において公知であり、すべてが本実施形態との関係における使用に適している。
【0277】
そのような例示的な助剤としては、1つ以上の求核基を含む化合物が挙げられる。
【0278】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、シアン酸エステルの重合を促進する助剤は、第2の硬化条件に曝露される前は、シアン酸エステルの重合を促進することに対して不活性(非活性、非反応性)であるか、または部分的に活性(部分的に反応性)である。
【0279】
いくつかの実施形態によれば、シアン酸エステルの重合を促進する助剤は、第1の硬化条件および/または第2の硬化条件に曝露することによって活性化することができる。
【0280】
いくつかの実施形態によれば、シアン酸エステルの重合を促進する助剤は、第1の硬化条件および第2の硬化条件に曝露することによって活性化することができる。
【0281】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第1の硬化性材料(シアン酸エステル)の重合を促進する助剤は、求核剤、すなわち、シアン酸エステルに対して反応性の求核基を含む化合物である。例示的な求核基としては、アミン、チオレート、水酸化物、アルコキシドなどが挙げられる。
【0282】
例示的な実施形態において、第1の硬化性材料の重合を促進する助剤は、チオール化合物、すなわち、1つ以上のチオール基を含む化合物である。
【0283】
当該技術分野において公知であるように、チオールを活性化させてチオレートを形成することができ、これは、シアン酸エステルの重合において反応性の求核種である。
【0284】
いくつかの実施形態において、チオール化合物は、1個以上の炭素原子に結合された1つ以上のチオール基を含み、これらの1個以上の炭素原子は、例えば、メチルなどのアルキルによってさらに置換される。
【0285】
例示的なチオール化合物は、商標名Karenzで市販されているファミリーに属するものである。
【0286】
いくつかの実施形態において、シアン酸エステルの重合を促進する助剤としてチオール化合物を含むシアン酸エステルの硬化性系は、好ましくは、チオレート種を発生する助剤をさらに含む。
【0287】
いくつかの実施形態において、そのような助剤は、塩基、例えば、アミン、好ましくは第3級アミンである。
【0288】
いくつかの実施形態において、チオレートを発生する助剤は、照射への曝露の際に塩基を発生する光塩基である。例示的な光塩基は、照射への曝露の際に第3級アミンなどの塩基を発生するようなものである。
【0289】
いくつかの実施形態において、第2の造形材料配合物は、本明細書に記載のシアン酸エステル、シアン酸エステルの重合を促進する助剤としてのチオール、およびチオレートを発生することによってチオールを活性化させる塩基を含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、シアン酸エステルおよび塩基は一準配合物中に含まれ、チオールは別の準配合物中に含まれる。
【0290】
これらの実施形態のいくつかにおいて、塩基は、照射に曝露されたときに第3級アミンを発生する光塩基である。
【0291】
チオールは、第1の硬化条件(チオレート基が発生されるとき)および第2の硬化条件(チオレートが重合を促進するとき)への曝露によって活性化できるシアン酸エステルの重合を促進する助剤の一例である。
【0292】
例示的な実施形態において、第1の硬化性材料の重合を促進する助剤は、アミン、すなわち、1つ以上のアミン基を含む化合物である。
【0293】
アミンは、芳香族または非芳香族(脂肪族または脂環式)アミンであってもよい。
【0294】
アミンは、第1級、第2級または第3級アミンであってもよく、好ましくは第1級または第2級アミンである。
【0295】
いくつかの実施形態において、アミンは、1つ以上のアミン基および/またはアミン基を含む1つ以上の置換基(本明細書では、まとめてアミン含有置換基と呼ぶ)、ならびに任意選択の1つ以上の追加の置換基によって置換されるアリールを含む芳香族アミンである。アミン含有置換基はそれぞれ、独立に、第1級または第2級アミンであってもよい。
【0296】
例示的な芳香族アミンは、商標名Ethacure 100LC(第1級アミン)、Ethacure 320(第1級アミン)およびEthacure 420(第2級アミン)で市販されている。
【0297】
いくつかの実施形態において、アミンは第2級アミンである。
【0298】
いくつかの実施形態において、アミンは、1つ以上のアミン含有置換基によって置換されるアリールを含む第2級芳香族アミンであり、ここで、1つ以上のアミン含有置換基は第2級アミンである。
【0299】
アミン(例えば、本明細書に記載のアミン)は、熱、例えば80℃以上の温度に曝露されたとき、シアン酸エステルの重合に対して活性である。
【0300】
アミン(例えば、芳香族アミン)は、第2の硬化条件に曝露することによって活性化することができるシアン酸エステルの重合を促進する助剤の一例である。
【0301】
いくつかの実施形態において、第2の造形材料配合物は、本明細書に記載のシアン酸エステルと、シアン酸エステルの重合を促進する助剤としてのアミン(例えば、芳香族アミン)とを含む。シアン酸エステルは一準配合物中に含まれ、アミンは別の準配合物中に含まれる。
【0302】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、シアン酸エステルの重合を促進する助剤は、第1の硬化条件に曝露されたとき、本明細書に定義するように、重合に対して不活性であるか、または部分的に活性である。いくつかの実施形態において、第1の硬化条件に曝露すると助剤を活性化できるとき、第2の硬化条件に曝露される前は、シアン酸エステルの重合に対して依然として不活性または部分的に活性なままである。
【0303】
本実施形態のいくつかによれば、シアン酸エステル硬化性系は、シアン酸エステル化合物、その重合を促進する助剤、およびそれを活性化させる助剤(存在する場合)が互いに接触し、第1の硬化条件への曝露の際に、30%以下、または20%以下、または10%以下のシアン酸エステルの重合が生じるように選択される。
【0304】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、シアン酸エステルの重合を促進する助剤は、熱(熱エネルギー)に、例えば、本明細書に記載の昇温(例えば、80℃超または100℃超)に曝露されると、重合に対して活性である。
【0305】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、シアン酸エステル硬化性系を含む第2の造形材料配合物は、光硬化性系、例えば、紫外線硬化性系である別の硬化性系をさらに含む。第2の硬化性系は、光硬化性材料、例えば、紫外線硬化性材料を含む。
【0306】
いくつかの実施形態において、第2の硬化性系は、紫外線硬化性材料の重合を促進する助剤をさらに含む。例示的な実施形態において、この助剤は光開始剤である。
【0307】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、紫外線硬化性材料の重合を促進する助剤は一準配合物中に含まれ、紫外線硬化性材料は別の準配合物中に含まれる。
【0308】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、一準配合物は、シアン酸エステル材料および光開始剤を含み、別の準配合物は、紫外線硬化性材料と、シアン酸エステルの重合を促進する助剤とを含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、第1の準配合物は、シアン酸エステルの強化を促進する助剤を活性化させる助剤をさらに含む。
【0309】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、紫外線硬化性材料の重合を促進する助剤は、本明細書で定義するように、シアン酸エステルの重合に対して不活性であるか、または部分的に活性である。
【0310】
そのような例示的な助剤は、本明細書に記載のジェッティング温度でシアン酸エステルの重合に対して活性である基を含まない。例示的な実施形態において、そのような助剤は、本明細書に記載の求核基を含まない。いくつかの実施形態において、第3級アミン、および/またはヒドロキシおよび/またはチオールおよび/またはチオエーテルは含まれない。いくつかの実施形態において、ヒドロキシは含まれない。
【0311】
本実施形態との関係において使用可能な例示的光開始剤は、以下の実施例の項で説明する。
【0312】
いくつかの実施形態において、紫外線硬化性系は、アクリル系化合物および/またはフリーラジカル重合によって重合可能な他の光硬化性材料を含み、光開始剤はフリーラジカル光開始剤である。
【0313】
フリーラジカル光開始剤は、本明細書に記載の求核剤を含まない、発生しない、または必要としない限り、紫外線または可視光放射線などの放射線に曝露されるとフリーラジカルを生成し、それによってアクリル系材料の重合反応を開始する任意の化合物であってもよく、好ましくは、シアン酸エステルに溶解性である。
【0314】
例示的な光開始剤としては、ベンゾフェノン、芳香族α-ヒドロキシケトン、ベンジルケタール、芳香族α-アミノケトン、フェニルグリオキサル酸エステル、モノアシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、トリスアシルホスフィンオキシドおよび/または芳香族ケトン由来のオキシムエステルが挙げられる。
【0315】
例示的な光開始剤としては、これらに限定されないが、カンフルキノン、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体(2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2-メトキシカルボニルベンゾフェノン、4,4’-ビス(クロロメチル)ベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、[4-(4-メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、メチル-2-ベンゾイルベンゾエート、3-メチル-4’-フェニルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチル-4’-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなど)、チオキサントン、チオキサントン誘導体、高分子チオキサントン(例えば、OMNIPOL TXなど)、ケタール化合物(例えば、ベンジルジメチルケタール(IRGACURE(登録商標)651)など)、アセトフェノン、アセトフェノン誘導体、例えば、α-ヒドロキシシクロアルキルフェニルケトンまたはα-ヒドロキシアルキルフェニルケトン、例えば、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン(DAROCUR(登録商標)1173)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE(登録商標)184)、1-(4-ドデシルベンゾイル)-1-ヒドロキシ-1-メチル-エタン、1-(4-イソプロピルベンゾイル)-1-ヒドロキシ-1-メチル-エタン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパ-1-ノン(IRGACURE(登録商標)2959);2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパ-1-ノン(IRGACURE(登録商標)127);2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン-イル)-フェノキシ]フェニル}-2-メチル-プロパ-1-ノン;ジアルコキシアセトフェノン、α-ヒドロキシ-またはα-アミノアセトフェノン、例えば、(4-メチルチオベンゾイル)-1-メチル-1-モルホリノエタン(IRGACURE(登録商標)907)、(4-モルホリノベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン(IRGACURE(登録商標)369)、(4-モルホリノベンゾイル)-1-(4-メチルベンジル)-1-ジメチルアミノプロパン(IRGACURE(登録商標)379)、(4-(2-ヒドロキシエチル)アミノベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン、(3,4-ジメトキシベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン;4-アロイル-1,3-ジオキソラン、ベンゾインアルキルエーテルおよびベンジルケタール、例えばジメチルベンジルケタール、フェニルグリオキサル酸エステルおよびそれらの誘導体、例えば、α-オキソベンゼン酢酸メチル、オキソフェニル酢酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステル、二量体フェニルグリオキサル酸エステル、例えばオキソフェニル酢酸1-メチル-2-[2-(2-オキソ-2-フェニルアセトキシ)プロポキシ]エチルエステル(IRGACURE(登録商標)754);ケトスルホン、例えばESACURE KIP 1001M(登録商標);オキシムエステル、例えば、1,2-オクタンジオン1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム)(IRGACURE(登録商標)OXE01)、エタノン1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾル-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)(IRGACURE(登録商標)OXE02)、9H-チオキサンテン-2-カルボキシアルデヒド9-オキソ-2-(O-アセチルオキシム)、ペルエステル、ベンゾフェノンテトラカルボキシルペルエステル、モノアシルホスフィンオキシド、例えば(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド(DAROCUR(登録商標)TPO)、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニル)ホスフィン酸エステル;ビスアシルホスフィンオキシド、例えば、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE(登録商標)819)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,4-ジペントキシフェニルホスフィンオキシド、トリスアシルホスフィンオキシド、ハロメチルトリアジン、例えば、2-[2-(4-メトキシフェニル)ビニル]-4,6-ビス-トリクロロメチル-[1,3,5]トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス-トリクロロメチル-[1,3,5]トリアジン、2-(3,4-ジメトキシフェニル)-4,6-ビス-トリクロロメチル-[1,3,5]トリアジン、2-メチル-4,6-ビス-トリクロロメチル-[1,3,5]トリアジン、ヘキサアリールビスイミダゾール/共開始剤形、例えば、2-メルカプトベンズチアゾールと合わせたオルト-クロロヘキサフェニル-ビスイミダゾール、フェロセニウム化合物、またはチタノセン、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-ピリルフェニル)チタン(IRGACURE(登録商標)784)が挙げられる。
【0316】
例示的なα-ヒドロキシケトンPIとしては、これらに限定されないが、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE(登録商標)184、I-184)、2-ヒドロキシ-1-{1-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)フェニル]-1,3,3-トリメチルインダン-5-イル}-2-メチルプロパ-1-ノン(ESACURE ONE(登録商標))、および1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパ-1-ノン(IRGACURE(登録商標)2959、I-2959)が挙げられる。
【0317】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかによれば、光開始剤は、ホスフィンオキシド型(例えば、モノアシル化またはビス-アシル化ホスフィンオキシド型;BAPOまたはBPO)光開始剤を含む、またはこれから本質的になる。
【0318】
例示的なモノアシルおよびビスアシルホスフィンオキシドとしては、これらに限定されないが、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ジベンゾイルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、トリス(2,4-ジメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、トリス(2-メトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,3,5,6-テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイル-ビス(2,6-ジメチルフェニル)ホスホネート、および2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシドが挙げられる。約380nm超から約450nmの波長範囲で照射されたときにフリーラジカル開始できる市販のホスフィンオキシド光開始剤としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE819)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド(CGI403)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパ-1-ノンとの混合物(25:75重量比)(IRGACURE1700)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンとの混合物(1:1重量比)(DAROCUR4265)、および2,4,6-トリメチルベンジルフェニルホスフィン酸エチル(LUCIRIN LR8893X)が挙げられる。
【0319】
光開始剤の非限定例としては、アシルホスフィンオキシド型光開始剤(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(TMPO)、2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド(TEPO)、およびビスアシルホスフィンオキシド(BAPO)など);ベンゾインおよびベンゾインアルキルエーテル(ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルなど)が挙げられる。光開始剤の例は、α-アミノケトンおよびビスアシルホスフィンオキシド(BAPO)である。さらなる例としては、Irgacure(登録商標)ファミリーの光開始剤が挙げられる。
【0320】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、紫外線硬化性材料は、強化されたとき、少なくとも150℃のTgをもたらすように選択される。
【0321】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、紫外線硬化性材料は、1種以上の多官能性硬化性材料を含む。
【0322】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、紫外線硬化性材料は、1種以上の多官能性硬化性材料を含み、これらの材料のうちの少なくとも1つは、強化されたとき、少なくとも150℃のTgをもたらす。
【0323】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第2の硬化性材料は、1種以上の多官能性硬化性材料を含み、これらの材料の種類および量は、強化されたとき、少なくとも150℃の平均Tgをもたらすように選択される。
【0324】
本明細書全体にわたって、平均Tgは、各成分のTgの合計にその相対的重量部を乗じて、相対的重量部の合計で割ることを意味する。
【0325】
例えば、材料AがX重量%の量に含まれ、Tg1を特徴とし、材料BがY重量%の量に含まれ、Tg2を特徴とする場合、材料AおよびBの平均Tgは、本明細書において、次式から算出する。
平均Tg=(X×Tg1+Y×Tg2)/X+Y
【0326】
本実施形態との関係において使用可能な、例示的な二官能性硬化性材料は、以下の式によってまとめて表される。
【0327】
【化4】
式中:
Xは、-O-および-O-C(=O)-から選択され、
Dは、本明細書中の各実施形態のいずれかで定義した炭化水素であり、
RxおよびRyは、それぞれ独立に、水素、アルキルおよびシクロアルキルから選択される。
【0328】
XがOのとき、二官能性硬化性材料はジビニルエーテルである。
【0329】
Xが-O-C(=O)-のとき、二官能性硬化性材料はジ(メタ)アクリレートである。
【0330】
Xが-O-C(=O)-のとき、RxおよびRyはそれぞれ水素であり、二官能性材料はジアクリレートである。
【0331】
Xが-O-C(=O)-のとき、RxおよびRyはそれぞれメチルであり、二官能性材料はジメタクリレートである。
【0332】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、二官能性硬化性材料は、式IIで表されるジビニルエーテルである。
【0333】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、二官能性硬化性材料は、式IIで表されるジメタクリレートである。
【0334】
本明細書で定義される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、炭化水素は、剛性部分、例えば、シクロアルキル(脂環式部分)および/またはアリール(例えば、フェニル)もしくはアルカリル(例えば、ベンジル)などの環状部分である、または該部分を含む。
【0335】
多官能性(メタ)アクリレートの非限定例としては、Sartomer Company(USA)によって商標名SR-9003で市販されているプロポキシル化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DiTMPTTA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(TETTA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DiPEP)、および脂肪族ウレタンジアクリレート(例えば、Ebecryl 230として市販されているものなど)、エトキシル化またはメトキシル化ポリエチレングリコールジアクリレートまたはジメタクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、ポリエチレングリコール-ポリエチレングリコールウレタンジアクリレート、部分的にアクリル化されたポリオールオリゴマー、ポリエステル系ウレタンジアクリレート(CNN91として市販されているものなど)が挙げられる。
【0336】
150℃より高いTgを特徴とし、各実施形態との関係において使用可能な多官能性(メタ)アクリレートの例としては、これらに限定されないが、Sartomerによって商標名SR834、SR444D、SR368、SR833s、SR351、SR355およびSR299で市販されている材料が挙げられる。その他の材料も企図される。
【0337】
いくつかの実施形態において、紫外線硬化性材料は、二官能性アクリル系材料、好ましくは二官能性アクリレートまたはメタクリレートを含む。
【0338】
いくつかの実施形態において、紫外線硬化性材料は、二官能性アクリル系材料、好ましくは二官能性アクリレートまたはメタクリレート、および別の多官能性アクリレートまたはメタクリレート(三官能性または四官能性アクリレートまたはメタクリレートなど)を含む。
【0339】
これらの実施形態のいくつかにおいて、二官能性アクリレートまたはメタクリレートと他の多官能性アクリレートまたはメタクリレートとの重量比は、約10:1から2:1の範囲である(任意の中間値およびそれらの間の部分的範囲を含む)。
【0340】
紫外線硬化性材料は、代替的には、一官能性であってもよい、または、一官能性アクリレートおよび/またはメタクリレートなどの1種以上の一官能性硬化性材料を含んでもよい。
【0341】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、シアン酸エステルの重合を促進する助剤の量は、第2の配合物のまたはそれを含む準配合物の総重量の約5~25重量%、または約8~約20重量%の範囲である(任意の中間値およびそれらの間の部分的範囲を含む)。
【0342】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、準配合物中の紫外線硬化性材料の重合を促進する助剤の量は、配合物の総重量の約1~約5重量%の範囲である(任意の中間値およびそれらの間の部分的範囲を含む)。
【0343】
シアン酸エステルを含む配合物系は、本明細書に記載のチオールもしくはアミン化合物の代わりに、またはそれらに加えて、シアン酸エステルの重合を促進する助剤として、本明細書において金属触媒とも呼ばれる金属種を含んでもよい。
【0344】
シアン酸エステル(金属触媒として)の重合を促進するために、当該技術分野において公知の任意の金属系材料が企図される。これらには、例えば、銅、亜鉛、マンガン、スズ、鉛、コバルト、ニッケル、鉄、アルミニウム、もしくはチタンなどの金属のキレートもしくは酸化物、または有機酸の金属塩(その金属は、銅、亜鉛、鉛、ニッケル、鉄、スズ、もしくはコバルトである)が含まれる。
【0345】
金属種は、好ましくは、シアン酸エステルを含む配合物または準配合物中に含まれない。
【0346】
例示的な金属種は、亜鉛イオンの錯体および有機部分、好ましくは疎水性部分を含む。
【0347】
いくつかの実施形態において、金属種(金属触媒)の量は、これを含む配合物の総重量の約0.01~約0.5重量%、または約0.01~約0.2重量%の範囲である。
【0348】
シアン酸エステルを含む配合物系は、シアン酸エステルと相互作用することができ、それによって共重合体網目を形成することができる追加の硬化性材料をさらに含んでもよい。
【0349】
これらの実施形態のいくつかにおいて、追加の硬化性材料は、第1および/または第2の硬化条件への曝露の際にシアン酸エステルと相互作用することができる。
【0350】
そのような例示的な材料は、エポキシ含有硬化性材料である。
【0351】
エポキシ含有硬化性材料は、芳香族、脂肪族または脂環式部分を置換する1つ以上の硬化性エポキシ基を含む。
【0352】
本明細書全体にわたって、「芳香族部分」は、1つ以上のアリール基またはヘテロアリール基である、またはそれらを含む部分を表す。
【0353】
本明細書全体にわたって、「脂肪族部分」または「非芳香族部分」は、アリール基またはヘテロアリール基を含まず、非環式であっても環式(その場合、本明細書において脂環式部分とも呼ばれる)であってもよい。
【0354】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、追加の硬化性材料は、室温で、1000センチポアズ未満または500センチポアズ未満の粘度を特徴とする。
【0355】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、エポキシ含有硬化性材料は、室温で、1000センチポアズ未満または500センチポアズ未満の粘度を特徴とする。そのような例示的な材料は、典型的には、一官能性であっても多官能性であってもよい、脂肪族または脂環式エポキシ含有材料である。
【0356】
例示的なエポキシ含有硬化性材料としては、これらに限定されないが、アジピン酸ビス(3,4-シクロヘキシルメチル)、カルボン酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシル、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、1,2-エポキシヘキサデカン、カルボン酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサン(例えば、Cytec Surface Specialties SA/NV(ベルギー)から商標名UVACURE 1500で入手可能)、および一または多官能性シリコンエポキシ樹脂(Polyset Company(USA)から入手可能なPC1000など)が挙げられる。
【0357】
追加の硬化性材料の量は、所望に応じて、また、得られたシアン酸エステル含有高分子網目の機械的性質および費用などを検討して選択することができる。
【0358】
これらの実施形態のいくつかにおいて、第2の造形材料配合物中の準配合物の重量比は、約80:20から約20:80または約70:30から30:70または約70:30から50:50の範囲である(任意の中間値およびそれらの間の部分的範囲を含む)。
【0359】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第1および/または第2の造形材料配合物は、独立に、本明細書において非反応性材料(非硬化性材料)とも呼ばれる、1種以上の追加の材料をさらに含む。
【0360】
そのような材料としては、例えば、表面活性剤(界面活性剤)、開始剤、酸化防止剤、充填剤、顔料、染料、および/または分散剤が挙げられる。
【0361】
表面活性剤を使用して、配合物の表面張力を、ジェッティングまたはプリンティングプロセスに必要な値まで低減することができ、その値は、典型的には約30ダイン/cmである。そのような助剤としては、シリコーン材料、例えば、PDMSなどの有機ポリシロキサンおよびその誘導体、例えばBYK型界面活性剤として市販されているものが挙げられる。
【0362】
好適な分散剤(分散させる助剤)もまた、シリコーン材料、例えば、PDMSなどの有機ポリシロキサンおよびその誘導体、例えばBYK型界面活性剤として市販されているものであってもよい。
【0363】
好適な安定剤(安定化させる助剤)としては、例えば、高温で配合物を安定化させる熱安定剤が挙げられる。
【0364】
用語「充填剤」は、高分子材料の特性を改変する、および/または最終生成物の品質を調整する不活性物質を表す。充填剤は、無機粒子、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、およびクレイであってもよい。
【0365】
重合中または冷却中の収縮を低減するために、例えば、熱膨張係数を減少し、強度を増加し、熱安定性を増加し、費用を低減し、かつ/またはレオロジー特性を採用するために、充填剤をモデリング配合物に添加してもよい。ナノ粒子充填剤は、典型的には、インクジェット用途などの低い粘度を要する用途において有用である。
【0366】
いくつかの実施形態において、界面活性剤および/または分散剤および/または安定剤および/または充填剤(存在する場合)それぞれの濃度は、各配合物の総重量の0.01~2重量%、または0.01~1重量%の範囲である。分散剤は、典型的には、各配合物の総重量の0.01~0.1重量%、または0.01~0.05重量%の範囲の濃度で使用される。
【0367】
いくつかの実施形態において、第1および/または第2の配合物は、阻害剤をさらに含む。阻害剤は、硬化条件に曝露する前に硬化を防止または低減するために含まれる。好適な阻害剤としては、例えば、「Genorad」タイプまたはMEHQとして市販されているものが挙げられる。その他にも任意の好適な阻害剤が企図される。
【0368】
顔料は、有機および/または無機および/または金属顔料であってもよく、いくつかの実施形態では、顔料は、ナノ粒子を含むナノスケール顔料である。
【0369】
例示的な無機顔料としては、酸化チタンおよび/または酸化亜鉛および/またはシリカのナノ粒子が挙げられる。例示的な有機顔料としては、ナノサイズカーボンブラックが挙げられる。
【0370】
いくつかの実施形態において、顔料の濃度は、各配合物の総重量の0.1~2重量%、または0.1~1.5重量%の範囲である。
【0371】
いくつかの実施形態において、白色顔料と染料との組み合わせを使用して着色硬化物質を調製する。
【0372】
染料は、広い分類のいずれかの溶剤可溶性染料であってもよい。いくつかの非限定例として、黄色、橙色、茶色および赤色のアゾ染料;緑色および青色のアントラキノンおよびトリアリルメタン色素;ならびに黒色のアジン染料がある。
【0373】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、本明細書中の各実施形態のいずれかおよびそれらの任意の組み合わせに記載の第1の配合物および第2の配合物(準配合物AおよびBを含む)を含むキットが提供される。
【0374】
いくつかの実施形態において、各配合物は、個別にキット中に包装される。
【0375】
例示的な実施形態において、配合物は、好適な包装材料、好ましくは不浸透性材料(例えば、水およびガス不浸透性材料)、さらに好ましくは不透明材料中のキット内部に包装される。いくつかの実施形態において、キットは、付加製造プロセス、好ましくは本明細書に記載の3Dインクジェットプリンティングプロセス中で配合物を使用するための取扱説明書をさらに含む。キットは、本明細書に記載の方法によるプロセス中で配合物を使用するための取扱説明書をさらに含んでもよい。
【0376】
本出願から成熟していく特許の寿命の間、多くの関連の硬化性材料および/または硬化性材料の重合を促進するための各助剤が開発されていくことが予測され、第1の硬化性材料、第2の硬化性材料およびそれらの重合を促進する助剤の各用語の範囲は、先験的なすべての該新規の技術を含むことが意図される。
【0377】
本明細書で使用される場合、用語「約」は±10%または±5%を指す。
【0378】
用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「有する(having)」およびこれらの語形変化は、「を含むが、これらに限定されない」を意味する。
【0379】
用語「からなる」は、「を含み、これらに限定される」を意味する。
【0380】
用語「から本質的になる」は、組成、方法または構造が、追加の成分、ステップおよび/または部分を含み得るが、追加の成分、ステップおよび/または部分が、請求される組成、方法または構造の基本および新規の特性を著しく変更しない場合に限ることを意味する。
【0381】
単語「例示的な」は、本明細書において、「一例、実例または例証として役立つ」を意味して用いられる。「例示的な」と言われている任意の実施形態は、必ずしも、他の実施形態より好ましいまたは有利であると解釈すべきでなく、かつ/または他の実施形態からの特徴の導入を除外しない。
【0382】
単語「任意選択により」は、本明細書において、「いくつかの実施形態において提供され、他の実施形態では提供されない」を意味して用いられる。本発明の任意の特定の実施形態は、複数の「任意選択の」特徴を、そのような特徴が矛盾しない限り、含んでもよい。
【0383】
本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上特に明記されていない限り、複数形の言及を含む。例えば、用語「(ある)化合物」または「少なくとも1種の化合物」は、複数の化合物(それらの混合物を含む)を含んでもよい。
【0384】
本出願全体にわたって、本発明のさまざまな実施形態は、範囲の形式で提示されてよい。範囲の形式の説明は、利便性および簡単のために過ぎず、本発明の範囲に確固たる制限が敷かれるものと解釈すべきではないことを理解されたい。これに応じて、範囲の説明は、詳細には、開示されるすべての可能な部分的範囲ならびにその範囲内の個々の数値を含むと考えるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、詳細には、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの開示される部分的範囲、ならびにその範囲内の個々の数値、例えば、1、2、3、4、5および6を含むと考えるべきである。これは、範囲の広さに関係なく適用される。
【0385】
本明細書中で数値範囲が示されるときはいつでも、指定された範囲内に列挙された数値(分数または整数)はすべて含まれることを意味する。第1の指示される数と第2の指示される数との「間の範囲」という語句、ならびに、第1の指示される数「から」第2の指示される数「までの範囲」という語句は、本明細書において区別なく用いられ、第1および第2の指示された数ならびにそれらの間のすべての分数および整数が含まれることを意味する。
【0386】
本明細書で用いられる場合、用語「方法」または「プロセス」は、これらに限定されないが、公知のまたは化学、薬理学、生物学、生化学および医学分野の施術者による公知のやり方、手段、技術および手順から容易に開発されたやり方、手段、技術および手順を含めた所与のタスクを達成するためのやり方、手段、技術および手順を指す。
【0387】
本明細書全体にわたって、用語「(メタ)アクリル系」は、アクリル系およびメタクリル系材料を包含する。
【0388】
本明細書全体にわたって、語句「連結部分」または「連結基」は、化合物中の2つ以上の部分または基を接続する基を表す。連結部分は、典型的には、二または三官能性化合物由来であり、ビまたはトリラジカル部分として見なすことができ、それぞれ、それらの2または3個の原子を介して2つまたは3つの他の部分に接続される。
【0389】
例示的な連結部分としては、本明細書に規定の1個以上のヘテロ原子によって任意選択により中断される炭化水素部分もしくは鎖、および/または、連結基として定義される場合、以下に列挙する化学基のいずれかが挙げられる。
【0390】
本明細書において化学基が「末端基」と呼ばれる場合、置換基として解釈され、その一原子を介して別の基に接続される。
【0391】
本明細書全体にわたって、用語「炭化水素」は、まとめて、主に炭素原子および水素原子で構成される化学基を表す。炭化水素は、アルキル、アルケン、アルキン、アリール、および/またはシクロアルキルで構成され得、それぞれ、置換されていても置換されていなくてもよく、1個以上のヘテロ原子によって中断され得る。炭素原子の数は、2~30の範囲であってもよく、好ましくはより少なく、例えば、1~10、または1~6、または1~4である。炭化水素は、連結基であっても末端基であってもよい。
【0392】
ビスフェノールAは、2つのアリール基および1つのアルキル基で構成される炭素水素の一例である。ジメチレンシクロヘキサンは、2つのアルキル基および1つのシクロアルキル基で構成される炭化水素の一例である。
【0393】
本明細書で用いられる場合、用語「アミン」は、-NR’R”基および-NR’-基の両方を表し、式中、R’およびR”は、それぞれ独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、アリールであり、これらの用語は以下に定義する通りである。
【0394】
したがってアミン基は、R’およびR”の両方が水素である第1級アミン、R’が水素であり、R”がアルキル、シクロアルキルもしくはアリールである第2級アミン、またはR’およびR”それぞれが独立に、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールである第3級アミンであってもよい。
【0395】
あるいは、R’およびR”は、それぞれ独立に、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハロゲン化合物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジンおよびヒドラジンであってもよい。
【0396】
用語「アミン」は、本明細書において、アミンが末端基である場合の-NR’R”基を説明するために用いられ、本明細書において、アミンが連結基であるか、または連結部分の一部である場合の-NR’-基を説明するために用いられる。
【0397】
用語「アルキル」は、直鎖基および分枝鎖基を含む飽和脂肪族炭化水素を表す。好ましくは、アルキル基は、1~30個、または1~20個の炭素原子を有する。数値範囲、例えば、「1~20」が本明細書において指定されるときはいつでも、基、この場合はアルキル基が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子など、最大で20個の炭素原子などを含有し得ることが含意される。アルキル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。置換アルキルは、1つ以上の置換基を有していてもよく、それによって各置換基は、独立に、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハロゲン化合物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジンおよびヒドラジンであってもよい。
【0398】
アルキル基は、この語句を上で定義したように、単一の隣接の原子に結合される、末端基であってもよい、または、この語句を上で定義したように、その鎖の中の少なくとも2個の炭素原子を介して2つ以上の部分を接続する連結基であってもよい。アルキルが連結基である場合、本明細書において「アルキレン」または「アルキレン鎖」とも呼ばれる。
【0399】
アルケンおよびアルキンは、本明細書で用いられる場合、それぞれ、1つ以上の二重結合または三重結合を含有する、上記のアルキルである。
【0400】
用語「シクロアルキル」は、すべてが炭素の単環または縮合環(すなわち、炭素原子の隣接ペアを共有する環)基であって、1つ以上の環が、完全に共役したπ電子系を有さない基を表す。例としては、限定されないが、シクロヘキサン、エナメル、ノルボルニル、イソボルニルなどが挙げられる。シクロアルキル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。置換シクロアルキルは、1つ以上の置換基を有していてもよく、それによって各置換基は、独立に、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハロゲン化合物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジンおよびヒドラジンであってもよい。シクロアルキル基は、この語句が上記の通りであり、単一の隣接の原子に結合される、末端基であってもよい、または、この語句を上で定義したように、その2つ以上の位置で2つ以上の部分を接続する連結基であってもよい。
【0401】
用語「ヘテロ脂環式」は、環の中に窒素、酸素および硫黄などの1個以上の原子を有する単環または縮合環の基を表す。環は、1つ以上の二重結合も有し得る。しかしながら、環は、完全に共役したπ電子系を有さない。代表例は、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリノ、オキサリジンなどである。
【0402】
ヘテロ脂環式基は、置換されていても置換されていなくてもよい。置換ヘテロ脂環式基は、1つ以上の置換基を有していてもよく、それによって各置換基は、独立に、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハロゲン化合物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O-カルバメート、N-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジンおよびヒドラジンであってもよい。ヘテロ脂環式基は、この語句を上で定義したように、単一の隣接の原子に結合される、末端基であってもよい、または、この語句を上で定義したように、その2つ以上の位置で2つ以上の部分を接続する連結基であってもよい。
【0403】
用語「アリール」は、すべてが炭素の単環式基または縮合環多環式基(すなわち、炭素原子の隣接ペアを共有する環)であって、完全に共役したπ電子系を有する基を表す。アリール基は、置換されていても置換されていなくてもよい。置換アリールは、1つ以上の置換基を有していてもよく、それによって各置換基は、独立に、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハロゲン化合物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジンおよびヒドラジンであってもよい。アリール基は、この用語を上で定義したように、単一の隣接の原子に結合される、末端基であってもよい、または、この用語を上で定義したように、その2つ以上の位置で2つ以上の部分を接続する連結基であってもよい。
【0404】
用語「ヘテロアリール」は、単環式基または縮合環(すなわち、炭素原子の隣接ペアを共有する環)基であって、環の中に、例えば、窒素、酸素および硫黄などの1個以上の原子を有し、さらに、完全に共役したπ電子系を有する基を表す。ヘテロアリール基の非限定例としては、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリンおよびプリンが挙げられる。ヘテロアリール基は、置換されていても置換されていなくてもよい。置換ヘテロアリールは、1つ以上の置換基を有していてもよく、それによって各置換基は、独立に、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハロゲン化合物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O-カルバメート、N-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジンおよびヒドラジンであってもよい。ヘテロアリール基は、この語句を上で定義したように、単一の隣接の原子に結合される、末端基であってもよい、または、この語句を上で定義したように、その2つ以上の位置で2つ以上の部分を接続する連結基であってもよい。代表例は、ピリジン、ピロール、オキサゾール、インドール、プリンなどである。
【0405】
用語「ハロゲン化合物」および「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を表す。
【0406】
用語「ハロアルキル」は、1つ以上のハロゲン化合物によってさらに置換される、上記のアルキル基を表す。
【0407】
用語「サルフェート」は、-O-S(=O)2-OR’末端基(この用語は上記の通りである)、または、-O-S(=O)2-O-連結基(これらの語句は上記の通りである)を表し、式中、R’は上記の通りである。
【0408】
用語「チオサルフェート」は、-O-S(=S)(=O)-OR’末端基または-O-S(=S)(=O)-O-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’は上記の通りである。
【0409】
用語「サルファイト」は、-O-S(=O)-O-R’末端基または-O-S(=O)-O-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’は上記の通りである。
【0410】
用語「チオサルファイト」は、-O-S(=S)-O-R’末端基または-O-S(=S)-O-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’は上記の通りである。
【0411】
用語「スルフィネート」は、-S(=O)-OR’末端基または-S(=O)-O-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’は上記の通りである。
【0412】
用語「スルホキシド」または「スルフィニル」は、-S(=O)R’末端基または-S(=O)-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’は上記の通りである。
【0413】
用語「スルホネート」は、-S(=O)2-R’末端基または-S(=O)2-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’は本明細書に規定の通りである。
【0414】
用語「S-スルホンアミド」は、-S(=O)2-NR’R”末端基または-S(=O)2-NR’-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’およびR”は本明細書に規定の通りである。
【0415】
用語「N-スルホンアミドは、R’S(=O)2-NR”-末端基または-S(=O)2-NR’-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’およびR”は本明細書に規定の通りである。
【0416】
用語「ジスルフィド」は、-S-SR’末端基または-S-S-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’は本明細書に規定の通りである。
【0417】
用語「ホスホネート」は、-P(=O)(OR’)(OR”)末端基または-P(=O)(OR’)(O)-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’およびR”は本明細書に規定の通りである。
【0418】
用語「チオホスホネート」は、-P(=S)(OR’)(OR”)末端基または-P(=S)(OR’)(O)-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’およびR”は本明細書に規定の通りである。
【0419】
用語「ホスフィニル」は、-PR’R”末端基または-PR’-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’およびR”は上記の通りである。
【0420】
用語「ホスフィンオキシド」は、-P(=O)(R’)(R”)末端基または-P(=O)(R’)-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’およびR”は本明細書に規定の通りである。
【0421】
用語「ホスフィンスルフィド」は、-P(=S)(R’)(R”)末端基または-P(=S)(R’)-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’およびR”は本明細書に規定の通りである。
【0422】
用語「ホスファイト」は、-O-PR’(=O)(OR”)末端基または-O-PH(=O)(O)-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’およびR”は本明細書に規定の通りである。
【0423】
用語「カルボニル」または「カーボネート」は、本明細書で用いられる場合、-C(=O)-R’末端基または-C(=O)-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’は本明細書に規定の通りである。
【0424】
用語「チオカルボニル」は、本明細書で用いられる場合、-C(=S)-R’末端基または-C(=S)-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’は本明細書に規定の通りである。
【0425】
用語「オキソ」は、本明細書で用いられる場合、(=O)基を表し、ここで、酸素原子は、指定の位置の原子(例えば、炭素原子)への二重結合によって連結される。
【0426】
用語「チオオキソ」は、本明細書で用いられる場合、(=S)基を表し、ここで、硫黄原子は、指定の位置の原子(例えば、炭素原子)への二重結合によって連結される。
【0427】
用語「オキシム」は、=N-OH末端基または=N-O-連結基を表し、これらの語句は上記の通りである。
【0428】
用語「ヒドロキシル」は、-OH基を表す。
【0429】
用語「アルコキシ」は、本明細書に規定するように、-O-アルキルおよび-O-シクロアルキル基の両方を表す。用語アルコキシドは、-R’O-基を表し、式中、R’は本明細書に規定の通りである。
【0430】
用語「アリールオキシ」は、本明細書に規定するように、-O-アリールおよび-O-ヘテロアリール基の両方を表す。
【0431】
用語「チオヒドロキシ」または「チオール」は、-SH基を表す。用語「チオレート」は、-S-基を表す。
【0432】
用語「チオアルコキシ」は、本明細書に規定するように、-S-アルキル基および-S-シクロアルキル基の両方を表す。
【0433】
用語「チオアリールオキシ」は、本明細書に規定するように、-S-アリールおよび-S-ヘテロアリール基の両方を表す。
【0434】
「ヒドロキシアルキル」は、本明細書において「アルコール」とも呼ばれ、本明細書に規定するように、ヒドロキシ基によって置換されるアルキルを表す。
【0435】
用語「シアノ」は、-C≡N基を表す。
【0436】
用語「イソシアネート」は、-N=C=O基を表す。
【0437】
用語「イソチオシアネート」は、-N=C=S基を表す。
【0438】
用語「ニトロ」は、-NO2基を表す。
【0439】
用語「ハロゲン化アシル」は、-(C=O)R’’’’基を表し、式中、R’’’’は、上記のハロゲン化合物である。
【0440】
用語「アゾ」または「ジアゾ」は、-N=NR’末端基または-N=N-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’は上記の通りである。
【0441】
用語「ペルオキソ」は、-O-OR’末端基または-O-O-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’は上記の通りである。
【0442】
用語「カルボキシレート」は、本明細書で用いられる場合、C-カルボキシレートおよびO-カルボキシレートを包含する。
【0443】
用語「C-カルボキシレート」は、-C(=O)-OR’末端基または-C(=O)-O-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’は本明細書に規定の通りである。
【0444】
用語「O-カルボキシレート」は、-OC(=O)R’末端基または-OC(=O)-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’は本明細書に規定の通りである。
【0445】
カルボキシレートは、直鎖状であっても環状であってもよい。環状の場合、C-カルボキシレート中で、R’および炭素原子が一緒に連結して環を形成し、この基はラクトンとも呼ばれる。あるいは、O-カルボキシレート中で、R’およびOが一緒に連結して環を形成する。環状カルボキシレートは、例えば、形成された環の中の原子が別の基に連結されるとき、連結基として機能することができる。
【0446】
用語「チオカルボキシレート」は、本明細書で用いられる場合、C-チオカルボキシレートおよびO-チオカルボキシレートを包含する。
【0447】
用語「C-チオカルボキシレート」は、-C(=S)-OR’末端基または-C(=S)-O-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’は本明細書に規定の通りである。
【0448】
用語「O-チオカルボキシレート」は、-OC(=S)R’末端基または-OC(=S)-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’は本明細書に規定の通りである。
【0449】
チオカルボキシレートは、直鎖状であっても環状であってもよい。環状の場合、C-チオカルボキシレート中で、R’および炭素原子が一緒に連結して環を形成し、この基はチオラクトンとも呼ばれる。あるいは、O-チオカルボキシレート中で、R’およびOが一緒に連結して環を形成する。環状チオカルボキシレートは、例えば、形成された環の中の原子が別の基に連結されるとき、連結基として機能することができる。
【0450】
用語「カルバメート」は、本明細書で用いられる場合、N-カルバメートおよびO-カルバメートを包含する。
【0451】
用語「N-カルバメート」は、R”OC(=O)-NR’-末端基または-OC(=O)-NR’-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’およびR”は本明細書に規定の通りである。
【0452】
用語「O-カルバメート」は、-OC(=O)-NR’R”末端基または-OC(=O)-NR’-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’およびR”は本明細書に規定の通りである。
【0453】
カルバメートは、直鎖状であっても環状であってもよい。環状の場合、O-カルバメート中で、R’および炭素原子が一緒に連結して環を形成する。あるいは、N-カルバメート中で、R’およびOが一緒に連結して環を形成する。環状カルバメートは、例えば、形成された環の中の原子が別の基に連結されるとき、連結基として機能することができる。
【0454】
用語「カルバメート」は、本明細書で用いられる場合、N-カルバメートおよびO-カルバメートを包含する。
【0455】
用語「チオカルバメート」は、本明細書で用いられる場合、N-チオカルバメートおよびO-チオカルバメートを包含する。
【0456】
用語「O-チオカルバメート」は、-OC(=S)-NR’R”末端基または-OC(=S)-NR’-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’およびR”は本明細書に規定の通りである。
【0457】
用語「N-チオカルバメート」は、R”OC(=S)-NR’-末端基または-OC(=S)-NR’-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’およびR”は本明細書に規定の通りである。
【0458】
チオカルバメートは、カルバメートについて本明細書に記載されるように、直鎖状であっても環状であってもよい。
【0459】
用語「ジチオカルバメート」は、本明細書で用いられる場合、S-ジチオカルバメートおよびN-ジチオカルバメートを包含する。
【0460】
用語「S-ジチオカルバメート」は、-SC(=S)-NR’R”末端基または-SC(=S)-NR’-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’およびR”は本明細書に規定の通りである。
【0461】
用語「N-ジチオカルバメート」は、R”SC(=S)-NR’-末端基または-SC(=S)-NR’-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’およびR”は本明細書に規定の通りである。
【0462】
用語「尿素」は、本明細書において「ウレイド」とも呼ばれ、-NR’C(=O)-NR’’R’’’末端基または-NR’C(=O)-NR”-連結基を表し、これらの語句は上記の通りである(式中、R’およびR”は本明細書に規定の通りであり、R’’’は、R’およびR”について本明細書に規定の通りである)。
【0463】
用語「チオ尿素」は、本明細書において「チオウレイド」とも呼ばれ、-NR’-C(=S)-NR’’R’’’末端基または-NR’-C(=S)-NR”-連結基を表し、式中、R’、R”およびR’’’は本明細書に規定の通りである。
【0464】
用語「アミド」は、本明細書で用いられる場合、C-アミドおよびN-アミドを包含する。
【0465】
用語「C-アミド」は、-C(=O)-NR’R”末端基または-C(=O)-NR’-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’およびR”は本明細書に規定の通りである。
【0466】
用語「N-アミド」は、R’C(=O)-NR”-末端基またはR’C(=O)-N-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’およびR”は本明細書に規定の通りである。
【0467】
アミドは、直鎖状であっても環状であってもよい。環状の場合、C-アミド中で、R’および炭素原子が一緒に連結して環を形成し、この基はラクタムとも呼ばれる。環状アミドは、例えば、形成された環の中の原子が別の基に連結されるとき、連結基として機能することができる。
【0468】
用語「グアニル」は、R’R”NC(=N)-末端基または-R’NC(=N)-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’およびR”は本明細書に規定の通りである。
【0469】
用語「グアニジン」は、-R’NC(=N)-NR”R’’’末端基または-R’NC(=N)-NR”-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’、R”およびR’’’は本明細書に規定の通りである。
【0470】
用語「ヒドラジン」は、-NR’-NR”R’’’末端基または-NR’-NR”-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’、R”およびR’’’は本明細書に規定の通りである。
【0471】
本明細書で用いられる場合、用語「ヒドラジド」は、-C(=O)-NR’-NR”R’’’末端基または-C(=O)-NR’-NR”-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’、R”およびR’’’は本明細書に規定の通りである。
【0472】
本明細書で用いられる場合、用語「チオヒドラジド」は、-C(=S)-NR’-NR”R’’’末端基または-C(=S)-NR’-NR”-連結基を表し、これらの語句は上記の通りであり、式中、R’、R”およびR’’’は本明細書に規定の通りである。
【0473】
本明細書で用いられる場合、用語「アルキレングリコール」は、-O-[(CR’R”)z-O]y-R’’’末端基または-O-[(CR’R”)z-O]y-連結基を表し、式中、R’、R”およびR’’’は本明細書に規定の通りであり、zは1~10、好ましくは2~6、より好ましくは2または3の整数であり、yは1以上の整数である。好ましくは、R’およびR”は両方とも水素である。zが2であり、yが1であるとき、この基はエチレングリコールである。zが3であり、yが1であるとき、この基はプロピレングリコールである。yが2~4であるとき、アルキレングリコールは、本明細書においてオリゴ(アルキレングリコール)と呼ばれる。
【0474】
明確にするために、別々の実施形態の文脈の中で記載される本発明の特定の特徴は、単一の実施形態の中で組み合わせて提供することもできることを理解されたい。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈の中で記載される本発明のさまざまな特徴は、別々に提供することもできる、または任意の好適な準組み合わせで提供することもできる、または本発明の他に記載される実施形態の中で適宜提供することもできる。さまざまな実施形態の文脈の中で記載される特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしで無効でない限り、それらの実施形態の必須の特徴とは見なされないものとする。
【0475】
上で描写し、以下の特許請求の範囲の項で請求される本発明のさまざまな実施形態および態様は、以下の実施例において裏付けられる。
【実施例】
【0476】
ここで、上記の説明と共に以下の実施例を参照して、本発明のいくつかの実施形態を非限定的に例示する。
【0477】
材料および方法
すべての物体は、別段の指定がない限り、Stratasys(登録商標)Ltd.(イスラエル)製のPolyJet(商標)プリンターを使用してプリントした。
【0478】
本明細書に記載の反り棒は、以下の寸法:25×1×1cmを有する矩形の物体である。
【0479】
RGD515、VeroWhiteおよびRGD537(商標)は、譲受人によって調製および市販されている、紫外線硬化性アクリル系配合物である。
【0480】
他の配合物は、以下に記載する。
【0481】
紫外線硬化は、水銀灯を使用して実施した。
【0482】
熱硬化は、標準実験室用オーブンで実施した。
【0483】
[実施例1]
シアン酸エステル硬化性材料およびアクリル系硬化性材料を含む配合物系
シアン酸エステル硬化性材料(本明細書に規定の高いHDTを特徴とする)およびアクリル系硬化性材料(本明細書に規定の高いTgを特徴とする)を含む例示的な配合物系を、第2の造形材料配合物として使用した。
【0484】
配合物系は、一般的に、2つのモデリング材料準配合物を以下の通りに含む。準配合物Aは、紫外線硬化性アクリル系材料およびシアン酸エステルの重合を促進する助剤を含み、準配合物Bは、熱硬化性シアン酸エステルおよびアクリル系材料の硬化を促進する光開始剤を含む。
【0485】
以下の表1Aは、例示的な準配合物Aの組成を提示し、以下の表1Bは、例示的な準配合物Bの組成を提示する。
【0486】
【0487】
内部領域を包むシェルを形成する第1の配合物は、一般的に、1種以上のアクリル系材料と、紫外線照射に曝露されたときに強化に対して活性の配合物になる量の光開始剤とを含む。
【0488】
物体を本実施形態にしたがって製造したが、異なるインクジェットプリントヘッドまたは異なるノズルから各配合物および準配合物を分注し、分注された各層を本明細書に記載の紫外線照射に曝露し、それによって、アクリル系材料(第1の配合物)で形成されたシェルと準配合物AおよびBで形成されたコアとを有し、未硬化または部分硬化されたシアン酸エステルモノマーおよび硬化アクリル系材料を含む未硬化物体が得られた。
【0489】
結果として得られた、プリントされた未硬化物体を、以下の通り:100℃で2時間、後続して150℃で2時間、後続して200℃で2時間、後続して220℃で4時間、昇温下で後硬化した。
【0490】
図11Aは、第2の配合物として、表1Aおよび1Bに記載の配合物系を使用し、第1の配合物として、RGD515として市販されている配合物を使用して得られた未硬化物体の写真を示す。
【0491】
図11Bは、第2の配合物として、表1Aおよび1Bに記載の配合物系を使用し、第1の配合物として、RGD515として市販されている配合物を使用し、第2の硬化条件を受けさせて得られた未硬化物体の写真を示す。
【0492】
プリントされた部分の最終HDTは、250℃超である。
【0493】
図11Cおよび11Dは、それぞれ、未硬化物体としてAMによって製造され、熱的後処理で強化された反り棒の写真を示す。
【0494】
以下の表1Cおよび1Dは、それぞれ、追加の例示的な準配合物AおよびBの組成を示す。
【0495】
【0496】
【0497】
以下の表1Eおよび1Fは、それぞれ、追加の例示的な準配合物AおよびBの組成を示す。
【0498】
【0499】
【0500】
[実施例2]
アクリル系材料を含む配合物系
例えば、参照によりそれらが本明細書に完全に記載されているかのように組み込まれる米国特許出願公開第2013/0040091号および国際公開第2018/055522号に記載のD-ABS(コア-シェル)モードで物体をプリンティングするために使用可能な例示的配合物系を最初に試験した。配合物系は、2つのアクリル系配合物:高いHDTを特徴とする補強剤材料を形成する第1の配合物と、高い耐衝撃性および低いHDTを特徴とする強化材料を形成するDLM材料と、を含む。コア-シェルD-ABSモードにおいて、形成された物体は、典型的には、DLM材料で作られたシェルおよび補強剤で作られたコアを有する。
【0501】
図12Aは、強化されたときに約140℃のHDTを有するDR-83(RGD537)として知られる補強剤配合物およびDLM材料としてのRGD515で作製されたシェルでプリントされた反り棒モデルを示す。補強剤配合物は、3~4重量%の光開始剤を含む100%反応性の配合物だった。プリンティング面から棒の大きな反りおよび分離を観察することができる。反りおよびプリントヘッドへの潜在的リスクのために4mm後にプリンティングは停止した。
【0502】
図12Bは、高いHDTを特徴とするが、光開始剤を含まない、DR-83と同様の準配合物AおよびDR-83と同様の準配合物Bを含む改変アクリル系補強剤配合物系で作製された内部コアを有する同じ物体をプリントした結果を示す。準配合物AおよびBの体積%は、それぞれ、4%および96%だった。シェルはRGD515で作製される。
図12Bの反り棒モデルは、若干の反りから反りがない状態を示す。準配合物Bは、層ごとに分注されて、内部コアの層ごとのパターンを形成し、準配合物Aは、内部コアの層ごとのパターンでディザー処理した。
【0503】
本発明者らは、強化されたときに高いHDTの材料を形成する、ビスマレイミドなどのポリイミド前駆体を含有する配合物を設計した。これらの配合物は、本明細書で定義され、また、その内容が本明細書に完全に記載されているかのように組み込まれる、2017年12月17日出願の米国仮特許出願第62/610984号に記載されるように、反応性希釈液をさらに含むときに3Dインクジェットプリンティングで使用可能である。
【0504】
反り棒モデルは、約79~80%のBMI-689(Designer Molecules,Inc.によって市販されている)と、シクロヘキシルジメタノールジビニルエーテル(約19~20%)と、1%の光開始剤とを含む、例示的なビスマレイミド含有配合物でプリントした。プリンティングは、反りによってプリントヘッドにリスクを与える大きな反りのために、3.5mm後に終了した。
図13Aは、得られる反り棒を示す。
【0505】
図13Bは、本発明のいくつかの実施形態にしたがって形成された棒を示す。
図13Bでは、
図13Aで使用した配合物を、0.3mm厚のシェルとして用い、光開始剤を含まない配合物をコアの形成のために用いた。この構成に基づいて、反りは観察されなかった。
【0506】
[実施例3]
透明な配合物系
透明な矩形の物体を、1.2および2重量%の光開始剤を含む反応性VeroClear対照アクリル系配合物および同じ配合物(本実施形態によるコア-シェルコンフィギュレーションにおいて使用したとき)を使用してプリントしたが、ここで、第1の配合物は、対照配合物と類似のものであり、外部領域を形成し、第2の配合物は、同じ硬化性成分および同じ光開始剤を含み、該光開始剤の量は0.5および0重量%である。得られた未硬化本体を、昼光電球に6時間曝露させることによって硬化を受けさせた。
【0507】
図14は、得られた物体の写真であり、本発明の実施形態にしたがってプリントされた物体が、望ましくない色が少なくなり、透明性が改善されたことを示す。左の物体は、対照VeroClear配合物でプリントされ、右の物体は、本実施形態にしたがって、0.5mm厚の外層としてVeroClearを使用し、内部領域中の準配合物AおよびBとして0.5重量%または0重量%の光開始剤を有する同様の配合物を用いてプリントした。
【0508】
[実施例4]
高スループットプリンティング
物体を、本明細書に記載の方法を用いて高スループットで製造することができる。本明細書に記載されるように、物体のプリント部分、例えば第2の造形材料配合物を有する物体のコアは、AMプロセスを通して増大する温度を低下させる。達成された増大温度の低下に基づいて、走査速度およびスループットを増すことができる。AMプロセス中の物体の詳細の不鮮明化は、本明細書に記載の第1の造形材料配合物で物体の外側を形成する比較的硬質のシェルまたは比較的硬質のコーティング(固化シェルまたはコーティング)のプリントに基づいて回避することができる。高スループット用途に使用されるシェルまたはコーティングは、他の用途、例えば、反りを低減し、透明性を改善するための用途において使用されるシェルまたはコーティングより厚くなるように選択的に画定することができる。任意選択により、シェルまたはコーティングは、他の用途で典型的に使用され得る0.15mm~0.3mmに反して、0.5mm~2mmであってもよい。いくつかの実施形態例において、プリントされた物体を、高スループットプリンティング用途の後処理プロセスに曝露してよい。あるいは、後処理プロセスを発動させる。
【0509】
本発明を、その具体的な実施形態と共に説明してきたが、多くの変更、改変、およびバリエーションが当業者に明らかであることが明白である。これに応じて、添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲内に含まれるそのようなすべての変更、改変およびバリエーションを採用することが意図される。
【0510】
本明細書に記載されるすべての刊行物、特許および特許出願は、その全内容が参照により本明細書中に、それぞれの個別の刊行物、特許または特許出願が詳細にかつ個別に参照によって本明細書中に組み込まれるかのように同程度に組み込まれる。加えて、本出願中の任意の参考文献の引用または識別は、該参考文献が従来技術から本発明として利用可能であることを認めるものとは解釈すべきでない。項の見出しを使用する程度まで、必ずしも限定されるものとは解釈すべきでない。
【0511】
加えて、本出願のいずれの優先権書類も、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0512】
14 縦軸
26 作業領域
28 垂直駆動装置
30 安定化構造
32 レベリング装置
34 対称軸
36 トレイ取り換え装置
38 駆動装置
40 アーム
100 インクジェットプリンティングシステム
101 システム
106 ユーザーインターフェース
112 物体
113 層
114 インクジェットプリンター
115 支持構造体
116 分注ヘッド
122 ノズルアレイ
124 固化システム
128 フレームまたはブロック
130 造形材料供給システムまたは装置
130’ 造形材料供給システムまたは装置
132 レベリング装置
152 コントローラ
154 データ処理装置
154’ データ処理装置
180 トレイ
190 加熱室
200 インクジェットプリンティングシステム
210 コア
211 内部領域
215 液滴
218 シェル
220 シェル
221 外部領域
330 供給システム