IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニコン・メトロロジー・エヌヴェの特許一覧

特許7447138X線装置内のフィラメントデマンドを設定する方法、コントローラ、X線装置、制御プログラム及び記憶媒体
<>
  • 特許-X線装置内のフィラメントデマンドを設定する方法、コントローラ、X線装置、制御プログラム及び記憶媒体 図1
  • 特許-X線装置内のフィラメントデマンドを設定する方法、コントローラ、X線装置、制御プログラム及び記憶媒体 図2
  • 特許-X線装置内のフィラメントデマンドを設定する方法、コントローラ、X線装置、制御プログラム及び記憶媒体 図3
  • 特許-X線装置内のフィラメントデマンドを設定する方法、コントローラ、X線装置、制御プログラム及び記憶媒体 図4A
  • 特許-X線装置内のフィラメントデマンドを設定する方法、コントローラ、X線装置、制御プログラム及び記憶媒体 図4B
  • 特許-X線装置内のフィラメントデマンドを設定する方法、コントローラ、X線装置、制御プログラム及び記憶媒体 図4C
  • 特許-X線装置内のフィラメントデマンドを設定する方法、コントローラ、X線装置、制御プログラム及び記憶媒体 図5A
  • 特許-X線装置内のフィラメントデマンドを設定する方法、コントローラ、X線装置、制御プログラム及び記憶媒体 図5B
  • 特許-X線装置内のフィラメントデマンドを設定する方法、コントローラ、X線装置、制御プログラム及び記憶媒体 図6
  • 特許-X線装置内のフィラメントデマンドを設定する方法、コントローラ、X線装置、制御プログラム及び記憶媒体 図7
  • 特許-X線装置内のフィラメントデマンドを設定する方法、コントローラ、X線装置、制御プログラム及び記憶媒体 図8
  • 特許-X線装置内のフィラメントデマンドを設定する方法、コントローラ、X線装置、制御プログラム及び記憶媒体 図9
  • 特許-X線装置内のフィラメントデマンドを設定する方法、コントローラ、X線装置、制御プログラム及び記憶媒体 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】X線装置内のフィラメントデマンドを設定する方法、コントローラ、X線装置、制御プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H05G 1/34 20060101AFI20240304BHJP
【FI】
H05G1/34 E
【請求項の数】 36
(21)【出願番号】P 2021557147
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 EP2020056013
(87)【国際公開番号】W WO2020193103
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】1904168.0
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】511054444
【氏名又は名称】ニコン・メトロロジー・エヌヴェ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ベニー
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン,アレクサンダー チャールズ
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-273889(JP,A)
【文献】特開2008-218338(JP,A)
【文献】特開昭54-157491(JP,A)
【文献】特開昭56-050100(JP,A)
【文献】特開2018-190581(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0064410(US,A1)
【文献】特開平06-060994(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0189463(US,A1)
【文献】国際公開第2003/092336(WO,A1)
【文献】特開2010-049974(JP,A)
【文献】特開昭63-318098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05G 1/00 - 1/70
A61B 6/00 - 6/58
G21K 1/00 - 7/00
H01J 35/00 -35/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線装置内でフィラメントデマンドを設定する方法であって、
前記X線装置は、
加熱電流が流れることによって熱電子を放出することができるフィラメントと、
前記フィラメントから放出される前記熱電子からX線を生成するように配置されたターゲットと、
X線画像を形成するために前記ターゲットによって生成されるX線を検出するように配置された検出器と、
コントローラであって、前記X線装置の測定動作を実行して前記X線装置のパラメータを測定し、前記フィラメントに対してフィラメントデマンドを設定するように構成されており、前記フィラメントデマンドは前記フィラメントを流れる電流と相関する、コントローラと、を備え、
前記方法は、
低フィラメント電流に対応する第1値と高フィラメント電流に対応する第2値との間で前記フィラメントデマンドを変化させるステップと、
前記第1値と前記第2値との間の前記フィラメントデマンドの一連の値において前記パラメータを測定するステップと、
測定された前記パラメータ内の屈曲点を検出するステップと、
前記パラメータ内の検出された前記屈曲点に対応する前記フィラメントデマンドを決定するステップと、
前記パラメータ内の検出された前記屈曲点に対応する決定された前記フィラメントデマンドに基づいて前記X線装置の前記フィラメントデマンドを設定するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記コントローラは、前記検出器による前記X線の検出に基づいて前記パラメータを測定するように構成されている、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記パラメータは、画像品質の客観的な測定の対象である、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記パラメータは、前記検出器によって受信される前記X線から導出されるX線画像の、シャープネス、ノイズ、ダイナミックレンジ、解像度又はコントラストのうちの1つと相関する、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記パラメータは、前記検出器によって受信される前記X線から導出されるX線画像のコントラスト対ノイズ比と相関する、
請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記パラメータは、前記検出器によって受信される前記X線の強度と相関する、
請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記パラメータは、前記検出器によって受信される前記X線から導出されるX線画像のコントラスト対ノイズ値の測定値である、
請求項2記載の方法。
【請求項8】
前記パラメータは、前記フィラメントと前記ターゲットとの間のビーム電流、前記ターゲット上の電子ビームスポットサイズ、又は前記ターゲット上の電子ビームスポット強度と相関する、
請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記フィラメントデマンドを設定するステップは、
所定の比例又は絶対量によって識別された前記屈曲点に対応する前記フィラメントデマンド以下のフィラメントデマンドを設定するステップを含む、
請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記フィラメントデマンドを設定するステップは、
所定の比例又は絶対量によって識別された前記屈曲点に対応する前記フィラメントデマンドよりもより高いフィラメントデマンドを設定するステップを含む、
請求項1乃至9いずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記屈曲点を識別することは、
測定された前記パラメータの勾配を前記フィラメントデマンドの関数として決定するステップと、
決定された前記勾配に基づいて前記フィラメントデマンドの値を前記屈曲点の値として選択する、
請求項1乃至10いずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記屈曲点を識別することは、
測定された前記パラメータの決定される前記勾配が、前記第1値と前記第2値との間の測定された前記パラメータの最大勾配の設定されたパーセンテージに低下するフィラメントデマンドの値を決定するステップを含む、
請求項11記載の方法。
【請求項13】
決定される前記屈曲点は、前記第1値と前記第2値との間で順に決定される前記第1値である
請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記フィラメントデマンドは設定される動作フィラメント電流を表す、
請求項1乃至13いずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記フィラメントデマンドは設定される動作フィラメント電圧を表す、
請求項1乃至14いずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記方法は前記フィラメントの寿命にわたる複数の間隔で繰り返される、
請求項1乃至15いずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記間隔は、請求項1記載の方法の以前の繰り返しからの経過クロック時間に基づく所定の間隔である、
請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記間隔は、請求項1記載の方法の以前の繰り返しからの経過動作時間に基づく予め定められた間隔である、
請求項17記載の方法。
【請求項19】
設定された前記フィラメントデマンドに基づいて前記フィラメントの残存寿命を計算するプロセスを
さらに含む、
請求項16乃至18いずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記フィラメントの前記残存寿命を計算するプロセスは、
設定された前記フィラメントデマンドを、設定されたフィラメントデマンドをフィラメント寿命に関連付ける所定の表現と比較するステップと、
前記比較に基づいて、前記フィラメントの残存寿命を決定するステップと、を含む、
請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記設定されたフィラメントデマンドは、前記フィラメントの累積された動作時間とともに、前記フィラメントデマンドの設定の、各繰り返し又は繰り返しのサブセットについて記録され、
前記フィラメントの前記残存寿命を計算するプロセスは、
累積された動作時間に依存して設定される前記フィラメントデマンドの表現を、動作時間に対する予測され設定されるフィラメントデマンドの所定の表現と比較するステップと、
前記比較に基づいて、前記フィラメントの残存寿命を決定するステップと、を含む、
請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記残存寿命に対する設定されたフィラメントデマンドの所定の表現は、分析的表現である、
請求項20又は21記載の方法。
【請求項23】
前記残存寿命に対する設定されたフィラメントデマンドの所定の表現は、曲線又は値のセットである、
請求項20又は21記載の方法。
【請求項24】
前記残存寿命に対する設定されたフィラメントデマンドの所定の表現は、理論的に決定される、
請求項20乃至23いずれか1項記載の方法。
【請求項25】
そこにおいて、請求項20または23の任意の一つの方法
前記残存寿命に対する設定されたフィラメントデマンドの所定の表現は、経験的に決定される、
請求項20乃至23いずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記所定の表現は、フィラメントデマンド及びフィラメント寿命の値の範囲について、設定されたフィラメントデマンドをフィラメントの残存寿命に関連付ける受信情報に基づいて確立される、
請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記所定の表現は、設定された前記フィラメントデマンドの以前に記録された値及び前記X線装置内に以前に取り付けられたフィラメントの累積動作時間に基づいて確立される、
請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記フィラメントと前記ターゲットとの間のビーム電流又は前記フィラメントと前記ターゲットの間の電位が変更された後、前記フィラメントデマンドを異なるフィラメントデマンドに変更する、
請求項1乃至27いずれか1項記載の方法。
【請求項29】
請求項1記載の、変化させるステップ、検出するステップ、決定するステップ及び設定するステップを繰り返すことにより、前記フィラメントデマンドを異なるフィラメントデマンドに変更する、
請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記フィラメントデマンドと前記ビーム電流及び前記電位との間の所定の関係に基づいて、フィラメントデマンドを異なるフィラメントデマンドに変化させる、
請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記所定の関係は、前記フィラメントデマンドと、前記ビーム電流及び前記電位のうちの一方と、の間の関係であり、
その比率は前記ビーム電流及び前記電位のうちの他方と関連する、
請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記所定の関係は、ビーム電流及び電位の対の各々についてフィラメントデマンドを画定するマップによって決定される、
請求項30記載の方法。
【請求項33】
X線装置用のコントローラであって、
前記コントローラは、データプロセッサを備え、前記データプロセッサは前記X線装置に請求項1乃至3いずれか1項記載の方法を実行させるように構成されている、
コントローラ。
【請求項34】
請求項33に記載のコントローラを備えるX線装置。
【請求項35】
X線装置用の制御プログラムであって、マシン可読命令を備え、前記マシン可読命令は、実行されたときに、前記X線装置に請求項1乃至31いずれか1項記載の方法を実行させる、
制御プログラム。
【請求項36】
請求項35に記載の制御プログラムを格納している非一時的記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線装置のフィラメントデマンドの設定方法、X線装置のコントローラ、X線装置、X線装置の制御プログラム、及びこれらの方法を実施するための手段を含む非一時記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
X線装置では、フィラメントは加熱電流によって加熱され、フィラメントから熱電子が放出される。これらの電子は、加速電圧下で加速され、比較的高い原子番号(高Z)の元素を含むターゲットに衝突し、それによってターゲットからX線ビームを発生する。かかるX線ビームは、関心対象のサンプルに方向づけられてもよく、検出器によって検出された透過X線は、例えば画像を形成する。異なる材料は異なる程度までX線を減衰させるので、このような画像は、試料の構造を解釈する(interpret)ために使用され得る。
【0003】
通常、X線装置においては、高品質の画像を得ることが望ましい。得られた画像の質に影響するパラメータの中にフィラメントの温度があり、これが熱電子放出によってフィラメントで生成される電子の量を決定する。しかしながら、ユーザがフィラメント温度を正しく設定して適切な画質を得ることは困難である。
【0004】
典型的には、X線装置のフィラメントは、抵抗加熱によってフィラメントを加熱するために、フィラメントに電流を流すことによって加熱される。フィラメントに供給される電流、又はフィラメントと相関する量は、典型的にフィラメントデマンドと呼ばれる。
【0005】
しばしば、ユーザは、フィラメントデマンドを適切に設定するために、高度な技術レベルを必要とする。このプロセスは労働集約的であり、通常X線装置及びその背景にある物理学の高度な知識を必要とする。これは、X線システムの有用性を制限し、高度に自動化された又はターンキーX線システムの開発を困難にする。
【0006】
したがって、X線装置におけるフィラメントデマンドを設定する改善された方法、及び、かかる方法を実施することができる改善されたX線装置並びにその構成要素が必要とされている。
【0007】
特に、ユーザにとってより複雑でない、より高度な自動化、より長いフィラメント寿命及びより信頼性の高いフィラメント寿命、装置の適切な機能に関するより高度な保証、及びより信頼性の高い画像品質のうちの1つ以上を有するX線装置、及び、特に、これらの要求のうちの1つ以上が同時に満たされ得るX線装置に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、X線装置内のフィラメントデマンドを設定する方法が提供される。X線装置は、加熱電流が流れることによってフィラメントから熱電子を放出することができるフィラメントを有する。X線装置は、フィラメントから放出される電子からX線を生成するように配置されたターゲットを有する。X線装置は、X線画像を形成するためにターゲットによって生成されるX線を検出するように配置された検出器を有する。X線装置は、X線装置の測定動作を実行するように構成されたコントローラを有する。測定は、X線装置のパラメータを測定する。コントローラは、フィラメントデマンドをフィラメントに設定するように構成される。フィラメントを通過する電流と、フィラメントデマンドは、相関する。方法は、低フィラメント電流に対応する第1値と高フィラメント電流に対応する第2値との間でフィラメントデマンドを変化させるステップを含む。方法は、第1値と第2値との間のフィラメントデマンドの一連の値において前記パラメータを測定するステップを含む。方法は、測定された前記パラメータ内の屈曲点を検出するステップを含む。方法は、パラメータ内の検出された屈曲点に対応するフィラメントデマンドを決定するステップを含む。方法は、パラメータ内の検出された屈曲点に対応する決定されたフィラメントデマンドに基づいてX線装置のフィラメントデマンドを設定するステップを含む。
【0009】
コントローラは、検出器によるX線の検出に基づいてパラメータを決定するように構成され得る。
【0010】
パラメータは、画像品質の客観的な測定の対象であり得る。
【0011】
パラメータは、検出器によって受信されるX線から導出されるX線画像の、シャープネス、ノイズ、ダイナミックレンジ、解像度又はコントラストのうちの1つと相関し得る。
【0012】
パラメータは、検出器によって受信されるX線から導出されるX線画像のコントラスト対ノイズ比と相関し得る。
【0013】
パラメータは、検出器によって受信されるX線の強度と相関し得る。
【0014】
パラメータは、検出器によって受信されるX線から導出されるX線画像のコントラスト対ノイズ値の測定値であり得る。
【0015】
パラメータは、フィラメントとターゲットとの間のビーム電流、ターゲット上の電子ビームスポットサイズ、又はターゲット上の電子ビームスポット強度と相関し得る。
【0016】
フィラメントデマンドの設定は、識別された屈曲点に対応するフィラメントデマンドに等しいフィラメントデマンドを設定することを含み得る。
【0017】
フィラメントデマンドの設定は、識別された屈曲点に対応するフィラメントデマンドよりも、所定の比例又は絶対量だけ、低いフィラメントデマンドを設定することを含み得る。
【0018】
フィラメントデマンドの設定は、識別された屈曲点に対応するフィラメントデマンドよりも、所定の比例又は絶対量だけ、高いフィラメントデマンドを設定することを含み得る。
【0019】
屈曲点を識別することは、フィラメントデマンドの関数として、測定パラメータの勾配を決定することを含み得る。屈曲点を識別することは、屈曲点の値として決定された曲率に基づいてフィラメントデマンドの値を選択することを含み得る。
【0020】
屈曲点を確認することは、測定されたパラメータの決定される勾配が、第1値と前記第2値との間の測定されたパラメータの最大勾配の設定されたパーセンテージに低下する、フィラメントデマンドの値を決定するステップを含み得る。
【0021】
決定される点は、第1値と第2値との間で順に決定される第1値であり得る。
【0022】
フィラメントデマンドは設定される動作フィラメント電流を表し得る。
【0023】
フィラメントデマンドは設定される動作フィラメント電圧を表し得る。
【0024】
方法はフィラメントの寿命にわたる複数の間隔で繰り返され得る。
【0025】
間隔は、第1態様の方法の以前の繰り返しからの経過クロック時間に基づく所定の間隔であり得る。
【0026】
間隔は、第1態様の方法の以前の繰り返しからの経過動作時間に基づく所定の間隔である。
【0027】
方法はさらに、設定フィラメントデマンドに基づいてフィラメントの残存寿命を計算するプロセスを含み得る。
【0028】
フィラメントの残存寿命を計算するプロセスは、設定フィラメントデマンドをフィラメント寿命に関連する所定の表現と比較することを含み得る。フィラメントの残存寿命を計算するプロセスは、比較に基づいて残存フィラメント寿命を決定することを含み得る。
【0029】
設定フィラメントデマンドは、フィラメントの累積動作時間とともに、フィラメントデマンドの設定の、各繰り返し又は繰り返しのサブセットについて記録され得る。フィラメントの残存寿命を計算するプロセスは、累積動作時間に依存して設定されるフィラメントデマンドの表現を、動作時間に対する予測される設定フィラメントデマンドの所定の表現と比較するステップを含み得る。フィラメントの残存寿命を計算するプロセスは、比較に基づいて、フィラメントの残存寿命を決定するステップを含み得る。
【0030】
残存フィラメント寿命に対する設定フィラメントデマンドの所定の表現は、分析的表現であり得る。
【0031】
残存寿命に対する設定フィラメントデマンドの所定の表現は、曲線又は値のセットであり得る。
【0032】
残存寿命に対する設定されたフィラメントデマンドの所定の表現は、理論的に決定され得る。
【0033】
残存寿命に対する設定されたフィラメントデマンドの所定の表現は、経験的に決定され得る。
【0034】
所定の表現は、フィラメントデマンド及びフィラメント寿命の値の範囲について、設定フィラメントデマンドをフィラメントの残存寿命に関連付ける受信情報に基づいて確立され得る。
【0035】
所定の表現は、設定フィラメントデマンドの以前に記録された値及びX線装置内に以前に取り付けられたフィラメントの累積動作時間に基づいて確立され得る。
【0036】
フィラメントとターゲットとの間のビーム電流又はフィラメントとターゲットの間の電位が変更された後、フィラメントデマンドを異なるフィラメントデマンドに変更し得る。
【0037】
第1態様の、変化させるステップ、検出するステップ、決定するステップ及び設定するステップを繰り返すことにより、前記フィラメントデマンドを異なるフィラメントデマンドに変更し得る。
【0038】
フィラメントデマンドとビーム電流及び電位との間の所定の関係に基づいて、フィラメントデマンドを異なるフィラメントデマンドに変化させ得る。
【0039】
所定の関係は、フィラメントデマンドと、ビーム電流及び電位のうちの一方と、の間の関係であり得、比はビーム電流及び電位のうちの他方と関連し得る。
【0040】
所定の関係は、ビーム電流及び電位の対の各々についてフィラメントデマンドを画定するマップによって決定され得る。
【0041】
本発明の第2態様によれば、X線装置用のコントローラが提供される。コントローラは、X線装置に第1態様にしたがって方法を実行させるように構成されたデータ処理装置を備える。
【0042】
本発明の第3態様によれば、第2の態様のコントローラを備えるX線装置が提供される。
【0043】
本発明の第4の態様によれば、X線装置の制御プログラムが提供される。制御プログラムは、実行されると、X線装置に第1態様にしたがって方法を実行させる機械可読命令を備える。
【0044】
本発明の第5の態様によれば、第4態様の制御プログラムを記憶する非一時記憶媒体が提供される。
【0045】
第1~第5の態様のいずれか1つにしたがって本発明を適用すること又は施形態及びそれらの実施により、以下の例示的、解説的、非限定的な説明及び図面を考慮して当業者に明らかなように、X線装置におけるフィラメントデマンドの設定の改良、フィラメント寿命の改良、及び残存フィラメント寿命の予測の改良を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
本発明をより良く理解するために、また、本発明をどのように実施することができるかを示すために、添付の図面を例示するに過ぎないが、以下のものを参照する。
図1図1は、本発明を実施するX線装置を模式的に示す図である。
図2図2は、本発明を実施するX線装置のためのコントローラを模式的に示す図である。
図3図3は、パラメータPとフィラメントデマンドIfの関係を、左軸にはフィラメントデマンドIfが初期値から最終値まで変化するときのパラメータPの進行を、右軸にはフィラメントデマンドに応じて変化するときのパラメータPの勾配又は一次導関数の進行を示す模式的グラフの形態で示す図である。
図4A図4Aは、図3に示す状態Iに対応する状態でのフィラメントにおける電位を示す図である。
図4B図4Bは、図3に示す状態IIに対応する状態でのフィラメントにおける電位を示す図である。
図4C図4Cは、図3に示す状態IIIに対応する状態でのフィラメントにおける電位を示す図である。
図5A図5Aは、本発明の一実施形態である設定技術のステップを含むフローチャートを示す。
図5B図5Bは、本発明の一実施形態である変形設定技術のステップを有するフローチャートを示す図である。
図6図6は、フィラメントの動作寿命中の一連の点におけるフィラメントデマンドとパラメータPの関係を示す図である。
図7図7は、適切なフィラメントデマンドとフィラメントの動作作動時間との関係を曲線の形で示す図である。
図8図8は、本発明の一実施形態であるフィラメント寿命推定技術のステップを有するフローチャートを示す図である。
図9図9は、フィラメントと、例えば、アノードとの間のビーム電圧VB、フィラメントと、例えば、アノードとの間のビーム電流IB、及び、適切なフィラメントデマンドIfの関係を示す図である。
図10図10は、フィラメントデマンドIfに関するパラメータPの曲線、フィラメントデマンドIfに関するパラメータPの一次及びさらなる導関数との関係を示している。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1は、本発明を実施することができるX線装置の構成を示す図である。
X線装置100は、X線検出器130に向かってX線ビームBxを放射するX線発生器110を有する。
【0048】
X線装置100はまた、X線発生器110からX線検出器130へのX線ビームBxの経路内で観察中の試料Sを支持するように配置された試料マウント120を備える。
【0049】
X線検出器130は、X線検出器130で受け取った、試料Sを通過したX線ビームBxのX線に基づいて画像データDIMGを生成し、さらになる処理のために画像データDIMGを利用可能にするように構成される。画像データDIMG画像によって表される画像は、サンプルSの内部構造及び組成の詳細を明らかにすることができる。
【0050】
X線発生器110には、比較的容易に熱電子放出を経験するタングステンなどの金属から形成されるフィラメント111が設けられている。あるいは、ニクロムなどの、比較的高い抵抗を有する金属から形成され、タングステンなどの、比較的容易に熱電子放出を経験するコーティング材料でコーティングされたフィラメントである複合フィラメントを使用することができる。少量のパーセントの別の材料を含むドープされたフィラメント、例えば約2%のトリウムを有するタングステンから形成されたフィラメントもまた公知であり、使用可能である。かかるフィラメントは、改良された熱電子放出特性を示すことができる。フィラメント111は、電子の熱電子放出を促進するために負電位に設定される。かかる負の電位は、典型的には、所望の発光スペクトル及びX線の強度にしたがってX線装置のユーザによって選択され、例えば、-160keVに設定され得る。
【0051】
フィラメント111のわずかに後方にグリッド電極112が取り囲むように延在して配置されており、これはときにウェネルトと称され、フィラメントによって放出された電子を反発させるためにフィラメントの周囲に局所的な負電位を提供し、フィラメントから離れる方向に移動する電子ビームBeを形成する。グリッド電極の形態は、当業者にはよく理解されており、放出された電子をビームに収束させる収束静電レンズとしても機能する。
【0052】
グリッド電極112によって提供される別の機能は、フィラメント111からの電子ビーム電流をフィラメント111の温度として調節することであり、したがって、フィラメント111によって放出される自由電子の量は変化する。所与のフィラメント温度に対して、フィラメント111の電位に関連するグリッド電極112の電位は、フィラメント111の先端近傍の等電位線を制御する。グリッド電極112がより負になると、等電位線がフィラメントの先端に向かって上昇し、フィラメントの先端で生成される自由電子のうちの少数が加速されて電子ビームBeを形成する。したがって、フィラメント111からの電子ビーム電流は、フィラメント温度が変化するにつれて、フィラメント111に関連するグリッド電極112の電位を適切に制御することによって、ビーム電流設定点と称される義された値に設定することができる。グリッド電極の電位は、例えば、フィラメント111の電位の約1%だけ変化し得る。例えば、フィラメント111が-160keVの電位に設定される場合、グリッド電極112の電位は、フィラメント111と同じ電位又はフィラメント111よりも負の電位になるように調整され得る。かかる調整は、後述するように、所望の電子ビーム電流に基づいて自動的に行うことができる。
【0053】
フィラメント111とは反対に配置されたターゲット113は、ターゲット113に入射する電子ビームBeがターゲット113からのX線ビームBxの放射を引き起こすように、タングステン、ロジウム又はモリブデンなどのX線発生材料を含む。ターゲット材料の選択は、X線の発光スペクトルに影響を及ぼし得る。ターゲット113は、グラウンドに接続されてもよく、又は、電子ビームBeの電子をそれに向かって引き寄せ、加速するために、正電位のようなグラウンドとは異なる電位に接続され得る。
【0054】
また、フィラメント111とターゲット113との間には、アノード電極117が配置されている。いくつかの実施形態において、アノード電極117は、アースに接続されてもよく、又はその電位は、フィラメント111とアノード電極117との間の電子ビームBeのフラックス及びエネルギーのさらなる制御を提供するように調整可能であり得る。アノード電極117は、中心に貫通孔を有し、ビームを通過させるように寸法決めされたディスクの形状を有する。
【0055】
た、フィラメント111とターゲット113との間、及びアノード電極111のターゲット側には、集束コイル114が配置されており、電流Ilは、ターゲット113に衝突する電子ビームBeの焦点を制御するように調整することができる。集束コイル114は、電子ビームBeを通過させるように寸法決めされた円筒形コイルの形態を有する。
【0056】
フィラメント111、グリッド電極112、アノード電極117、ターゲット113、及び集束コイル114の全ては、エンクロージャ115内部に収容されており、エンクロージャ115は、内側の真空を支持するようにシール可能である。エンクロージャ115は、フィラメント111からターゲット113への電子ビームBeの自由透過を可能にするように、相対的真空の状態にすることができる。エンクロージャ115の形成部分は、ウィンドウ116であり、これは、ベリリウムなどの、X線に対しては比較的透過性であるが、電子に対しては比較的不透明な材料から形成され得る。ウィンドウ116は、ビームBxがエンクロージャ115から出て行くことを可能にする。
【0057】
X線装置100全体には、典型的には、X線装置の外部へのX線の漏洩を防止するのに役立つ、図示されていない高放射線密度(radiodense)エンクロージャが設けられている。
【0058】
フィラメント111は、交流であっても直流であってもよい電流Ifをフィラメントに通すことによって加熱される。上述のように、フィラメントからの電子の熱電子放出を促進するために、フィラメントは比較的負の電位Vfに設定される。また、上述したように、加熱されたフィラメント111からの電子の放出を制御するために、グリッド電極112は、通常、フィラメントの電位Vfよりも相対的に負の電位Vgに設定される。一実施形態では、ターゲット113は、接地電位に設定されるが、他の実施形態では、例えば、ターゲット113への電子の加速を促進するために、ターゲット113は、ターゲット電位Vtに設定され得る。
【0059】
必要な電流及び電位を供給するために、X線発生器110の種々の要素をそれぞれの電源に接続するために、適切な電気接続が、横断エンクロージャ115に提供される。
【0060】
集束コイル114の電流は、集束電流Ilに設定される。
【0061】
X線装置100の電源及び制御構成を示す図2に示されるように、X線発生器100への電気的接続の各々は適切な電源に接続される。
【0062】
例えば、X線装置にはフィラメント111に電位Vfを供給するフィラメント電位供給部140が設けられている。X線装置100には、フィラメント111を通るフィラメント電流Ifを提供するフィラメント電流供給部150も設けられている。X線装置100には、グリッド電極112にグリッド電位Vgを供給するグリッド電位供給部160を設けられている。X線装置には、アノード電位Vaをアノード電極117に供給するアノード電位供給部165も設けられている。X線装置100には、集束コイル114に焦点電流Ilを供給する集束コイル電流供給部170も設けられている。X線装置100には、ターゲット電位Vtをターゲット113に供給するターゲット電位供給部180も設けられている。
【0063】
フィラメント電位供給部140、フィラメント電流供給部150、グリッド電位供給部160、アノード電位供給部165、集束コイル電流供給部170、及びターゲット電位供給部180の各々は、個別のユニットとして提供されてもよく、又は全体の電源供給部に一体化されてもよい。一変形例では、フィラメント電流供給部150及びフィラメント電位供給部140は、共通フィラメント電流及び電位供給部によって提供されてもよい。
【0064】
開示された構成では、フィラメント電位供給部140、フィラメント電流供給部150、グリッド電位供給部160、及びアノード電位供給部165は、全体的な高電圧発生器HVGの一部を形成する。
【0065】
開示された構成では、集束コイル電流供給部170及びターゲット電位Vtをターゲット113に供給するターゲット電位供給部180は、全体的なガン制御ユニットGCUの一部を形成する。
【0066】
開示された構成では、ガン制御ユニットGCUは、制御信号C1を介して制御装置190から制御信号及びステータス信号を送受信する。ガン制御ユニットGCUは、制御及びステータス信号を高電圧発生器HVGに送信するための補助制御リンクC2を有する。そのような信号は、アナログ量を定義するために定義された範囲にわたって変化するアナログ電位のようなアナログ信号であってもよく、又はデジタル量を定義するために高い又は低いデジタル値に対応するデジタル電位のようなデジタル信号であり得る。アナログ又はデジタル制御信号の組合せも、限定されるものではないが、実施することができる。
【0067】
開示された構成では、コントローラ190は、高電圧発生器HVGを間接的に、すなわちガン制御ユニットGCUによって仲介されて、制御する。ガン制御ユニットGCUは、コントローラ190に代わって高電圧発生器HVGとの間で信号を中継することができ、あるいは、それ自体が、さもなければコントローラ190によって実行され得る制御機能を具現化することができる。制御機能の正確な分配は変えることができる。
【0068】
フィラメント電位供給部140、グリッド電位供給部160、集束コイル電流供給170、及びターゲット電位供給部180の各々は、接地電位に対する適切な電位を提供するものとして示されている。しかしながら、変形構成では、限定されるものではないが、様々な潜在的供給源のうちのあるものは、システム内の他のポテンシャルのうちの1つに対して割り当てられたポテンシャルを提供するように構成されてもよい。特に、ターゲット電位Vt及びアノード電位Vaは、アースに直接接続されてもよい。いくつかの構成では、集束コイル114内の電流は、電流供給ではなく、電位供給によって制御されてもよい。本実施形態では、DC電流供給源を使用する。
【0069】
上述の種々の供給源は、本構成では、コントローラ190によって制御され、コントローラ190は、図2に示すように、メモリMEMに接続された中央処理ユニットCPU、命令記憶部INS、入出力ユニットIO、記憶コントローラSTC、及びユーザインタフェースコントローラUICを含む。
【0070】
メモリMEM、命令記憶部INS、ユーザインタフェースコントローラUIC、記憶コントローラSTC、及び入出力ユニットIOの各々は、中央処理ユニットCPUがコントローラ190の列挙された要素の種々の機能を制御及び中間処理することができるように、中央処理ユニットCPUに接続される。
【0071】
例えば、命令記憶部INSは、コントローラ190の動作を決定する機械可読命令を記憶することができる。メモリMEMは、X線装置の制御に関するパラメータ値及び取得されたX線画像に関する取得された画像データを含む、コントローラ190の動作に関連するデータ値を格納することができる。入出力ユニットIOは、特に制限されることなく、コントローラ190と、コントローラ190の制御下にある露光装置100の要素、例えば、フィラメント電位供給部140、フィラメント電流供給部150、グリッド電位供給部160、アノード電位供給部165、フォーカスコイル電流供給部170、及びターゲット電位供給部180、並びに装置の他の態様との間でデータを送受信することができる。ユーザインタフェースコントローラUICは、コントローラ190が、ユーザインタフェース出力データDUIOを、ディスプレイ又は制御パネルの視覚及び聴覚要素などの個別出力エレメントなどのユーザインタフェース出力ユニットに出力し、ユーザインタフェース入力データDUIIを、例えばキーボード及び/又はマウスなどの周辺機器であってもよいが、制御パネルの一部として形成される対話型入力エレメントであってもよいから読み込むことを可能にする。
【0072】
本構成では、コントローラ190はまた、図1に示すX線検出器130からの画像データDIMGの読み取り、及びそのようなデータの処理を制御する。あるいは、X線検出器130からのデータDIMGの読み取りは、別個の画像取得システムによって実行されてもよく、又は、コントローラ190がX線検出器130から画像データDIMGを取得するが、その後、別のユニットに転送してさらなる処理を行うハイブリッド構成で提供されてもよい。
【0073】
本構成では、コントローラ190は、ストレージコントローラSTCを備えており、これは、取得された画像データDingを含み得るストレージデータDSTOを、ハードドライブ又はストレージエリアネットワークなどの外部ストレージ装置に書き込むことを可能にする。
【0074】
コントローラ190は、本構成では、ユーザインタフェースコントローラUICを通してユーザによって提供される命令に基づいて、又は命令記憶装置INSから読み出される命令に基づいて、又はこれらの組み合わせに基づいて、X線装置100の全ての材料の態様及び機能を制御するために提供されるが、本開示は、フィラメントデマンドの設定におけるコントローラ190の使用に関する一態様であり、ここでは、フィラメント111を通過すべきフィラメント電流Ifに対応する。この方法は、図3の曲線及び図4A~4Cに示されるフィラメントにおけるポテンシャルの概略図も参照して、図5のフロー図を参照して説明される。
【0075】
まず、ステップS110において、コントローラは、フィラメントデマンドを低値Io、例えばゼロ値又は熱電子放出のかなりの量を確立するための初期値に維持しながら、X線装置100の初期設定、例えば、フィラメント電位Vf、グリッド電位Vg、集束電流Il、アノード電位Va、及びターゲット電位Vtを確立する。したがって、この状態では、電子ビーム電流Beは存在しないか又は無視できる。
【0076】
本実施形態では、フィラメントデマンドはフィラメント電流と同一である。他の実施形態において、フィラメントデマンドは、フィラメント両端の電圧などのフィラメント電流と相関する量であってもよく、又は、スケーリング及び/又はオフセット関係によってフィラメント電流又はフィラメント電圧に関連する任意のパラメータであってもよい。
【0077】
種々の電位Vs、Vf、Vg、Vl、Vt及び電流Ilの一部又は全部の値は、最後に使用された値又はデフォルト値のなどのメモリMEMに格納された所定の値にしたがって設定されることができ、又は、ユーザインタフェースコントローラUICを介して、制御コンソール又は制御パネルなどのユーザ入力デバイスから、デバイスの意図された機能にしたがって受信されることができる。いくつかの実施形態では、これらの値は、ユーザによって直接指定されてることができ、他の実施形態では、これらの値は、所望のビーム電流IB及び所望のビーム加速電位VBなどの必要な性能パラメータに基づいてコントローラ190によって決定されることができる。例えば、ターンキー又は高度に自動化されたシステムでは、これらの値は、実行されるべき画像化操作のユーザ選択に基づいて決定され得る。
【0078】
概して、これらの電位は、一旦、フィラメント111に十分なフィラメント電流Ifが流れることによって熱電子放出が確立されると、フィラメント111とアノード117との間に、最終的にはターゲット113まで電子ビームを確立し、したがって、フィラメントを加熱し、自由電子を生成するようなものでなければならない。
【0079】
これは、図4Aに示される状況に対応し、そこでは、グリッドとフィラメントとが同じ電位にあり、破線で示された等電位線がフィラメントとグリッド電極112の表面にある。
【0080】
次に、ステップS120において、コントローラ190は、以前に設定された値から第2値に向かってフィラメントデマンドを増加させる。第2値は、最大許容可能なフィラメント電流を表すことができ、再び、メモリMEMから読み出されることができ、又は、ユーザインタフェースコントローラUICによって受け取られたデータにしたがって設定されることができる。第2値は、事前に既知である必要はなく、概して、特定の上限値の知識なしにフィラメントデマンドを増加させることは、フィラメントデマンドを上限値に向かって増加させることと考えられる。
【0081】
フィラメントデマンドが初期の画像形成フィラメントデマンドIiに向かって増大するにつれて、フィラメント111は、自由電子を生成するのに十分に高温になる。これは、依然として、図4Aに示される状況に対応し、ここでは、グリッドとフィラメントは同じ電位にあり、破線で示された等電位線は、フィラメントとグリッド電極112の表面上にある。
【0082】
最終的に、フィラメント111とアノード117との間の所望のビーム電流が達成され、これは、典型的には、X線装置100の適切な動作のために維持される。これは、ビーム電流設定点と称され、フィラメントに供給される電流によって決定され得る。
【0083】
フィラメントデマンドが初期画像形成フィラメント要求IIiに達すると、ビーム電流Beは、図4Bも参照して、図3に示す状態IIに対応するビーム電流設定点に達する。図4Bにおいて、グリッド112は、フィラメント111よりも低い電位を有する。図4Bの破線で表される等電位線は、フィラメント電位にある。この線より下で(below)放出される電子はアノード117に向かって加速されず、したがってターゲット113に向かって加速されないが、この線をより上で(above)放出される電子はアノード117に向かって加速され、したがってターゲット113に向かって加速される。図4Bにおいて、電子ビームBeを形成するために電子を放出するフィラメントの面積が大きいため、電子ビームBeは非常に分散し、放出された電子の大部分は、ターゲット113に到達するために陽極117を通過するのではなく、陽極117で失われることが注目される。
【0084】
フィラメントデマンドIfがさらに増加すると、よく知られたRichardsonの式によれば、フィラメント111による自由電子の発生も増加する。ターゲットに向かって加速される電子の割合はグリッド電位Vgによって調節される。図4Cに示されるように、グリッド電位Vgが図4Bに示される状態よりも負の状態を表し、点線で示された等電位線は、再びフィラメント電圧にあり、この線より下で放出された電子は、アノードに向かって加速されない。電子ビームBeを形成するために電子を放出するフィラメントの面積は、図4Bにおけるよりも小さく、したがって、より負のグリッド電位Vgを有するために、電子ビームBeの発散はより小さい。その結果、放出された電子のうち、アノード117で失われる電子の割合が少なく、アノード117を通過してターゲット113に到達する電子の割合が大きくなる。
【0085】
ビーム電流設定点を所定のレベルに維持するために、フィラメントデマンドがさらに増加するにつれて、グリッド112の電位Vgは、ビーム電流設定点においてビーム電流IBを維持するように漸進的に調節される。かかる調整は、例えば、コントローラ190、高電圧発生器HVG又はガン制御ユニットGCUによって実施されるフィードバックループによって行うことができる。
【0086】
したがって、上述のようにグリッド電位を適切に調整することにより、フィラメントデマンドIfの調整を通して、ビーム電流IBを設定点に維持することができる。さらに、フィラメントのデマンドが増加すると、グリッド電位Vgの調整により、電子ビームBeを形成するために電子を放出するフィラメントの面積が小さくなり、電子ビームBeの発散が少なくなり、放出された電子のうちのアノード117を通過してターゲット113に到達する割合が大きくなる。
【0087】
一旦、ビーム電流Beが図3に示す状態IIに対応するビーム電流設定点に到達すると、図4Bも参照して、ステップS130において、コントローラ190は、初期撮像電流Iiに対応する第1値からより高いフィラメント電流に対応する第2値へフィラメントデマンドをさらに増加させ、コントローラは、X線検出器130から撮像データDIMGを収集し、画像データDIMGに基づいて、X線検出器130上に形成された画像の画像品質に相関するパラメータPを得る。
【0088】
例えば、パラメータPは、強度、コントラスト対ノイズ値、シャープネス値、ノイズ値、解像度値、ダイナミックレンジ値、又はコントラスト値であり得る。かかるこのような値の決定は、当業者に公知である。例えば、解像度は、エッジ、ピンホール又はJIMAチャートの画像の、例えば高速フーリエ変換アルゴリズムによるフーリエ変換を実行することによって測定することができる。解像度測定は、50%値などの特定のモジュレーション伝達関数(MTF)値に対応する空間周波数として選択することができる。パラメータは、撮像データDIMGによって表される画像全体についての平均値に基づいてもよく、又は画像の所定の領域についての平均値に基づいてもよい。画像の領域は、ユーザのコマンドにしたがって、制御コンソール又は制御パネルのようなユーザ入力デバイスからユーザインタフェースコントローラUICを通して受信されることができる。
【0089】
かかる測定中、画像品質を決定するための参照オブジェクトを提供するために、試料Sの代わりにテストオブジェクトを配置することができる。かかる参照オブジェクトは、ユーザによって手動で配置されることができ、あるいは、例えばスライド機構、ロボットアーム、又は他の位置決め機構によって、試料の位置に自動的に配置されることができる。かかるテストオブジェクトは、ピンホール、エッジ、一対の球体、又はJIMA(日本検査機器工業会)が提供するJIMA-C006-R:2006のようなテストパターンを提供するチャートであることができる。
【0090】
上述したように、このプロセスの間、グリッド112の電位Vgは、ビーム電流設定点においてビーム電流IBを維持するように漸進的に調整される。
【0091】
パラメータPの少なくとも2つの測定値が得られるまで、ステップS130を繰り返す。
各パラメータPは、フィラメントデマンドのそれぞれの値Ifに関連付けられ、メモリMRMに格納される。ステップS130で、2つ以上のかかる測定値を取得することができる。複数の測定値はそのように一連の測定から得られる。
【0092】
次に、パラメータPの一連の測定に基づいて、コントローラ190は、測定されたパラメータ内の屈曲点(knee)を検出する。パラメータの屈曲点は、一つの定義において、パラメータの曲率(二次導関数又は凹面)が局所的な絶対最大を有する点であるとみなすことができる。以下では、屈曲点は、測定パラメータの曲率において、局所的に負の最大値、すなわち最小値と関連している。したがって、ステップS140において、コントローラ190は、フィラメントデマンドIfに対するパラメータPの曲率を決定し、その曲率に基づいてフィラメントデマンドの値における屈曲点を識別又は同定する(identifies)。この識別は、例えば、パラメータの曲率が局所的な絶対最大、例えば、局所的な負の最大又は最小を有する点の識別によって行うことができる。
【0093】
コントローラ190は、フィラメント需要Ifに関するパラメータPの変化率(一次導関数)の勾配、すなわち二次導関数(second derivative)に基づいて、測定されたパラメータの曲率を決定することができる。かかる二次導関数は、二次曲線などの曲線をパラメータPの収集された測定値にフィッティングし、その曲線の二次導関数を計算することによって決定することができる。このような二次導関数は、数値的方法によって得られた測定値から直接計算することもできる。
【0094】
曲線は、所定のサイズのウィンドウ内で収集された測定値に適合され得る。コントローラは、パラメータPの曲率を決定する前に、Savitzky-Golayフィルタなどの平滑化アルゴリズムによって、パラメータPに関するデータを平滑化するように構成され得る。あるいは、比較的少数の点が測定され、例えばスプライン補間によって補間によって生成される曲線が得られる。
【0095】
次に、ステップS150において、パラメータを増加させるステップS130のプロセスと、曲率を決定するS140のプロセスが繰り返され、フィラメント要求に対するパラメータPの曲率の事前に決定された値の比較によって、曲率の局所的最大が検出される。
【0096】
図3において、パラメータPの値は、図3の実線Aとして示され、一方、破線Bとして示される曲線の勾配の値は、フィラメントデマンドIfに対するパラメータPの導関数として理解され得る。したがって、フィラメントデマンドIfにおける屈曲点は、曲線の勾配が絶対的(負の)最大になる値Ikとして、又は、代わりに最小となる値Ikとして識別され得る。
【0097】
極大値は、窓内で決定された、勾配の最大値の後の曲率の最大値として識別され得、ウィンドウはまた、極大値よりも低い、その後に収集された曲率の値を含む。窓は、ステップS150以降に取得されたすべての値を含むことができ、又は、所定の複数の最近の値など、より限定された値のセットを含むことができる。ステップS160は、フィラメントデマンドIfの第2値(最大値)に達するまで継続してもよく、又は、曲率の極大が決定されるまで、又は、その後定義された状態までのみ継続することができる。例えば、ステップS160は、曲線の勾配(第1導関数)が曲線の最大勾配の10%又は5%などの所定のパーセント未満になるまで継続することができ、又は所定の数のデータ点について継続することができる。
【0098】
代替的アプローチでは、パラメータPの勾配が、勾配における最大の後に、勾配における最大の所定のパーセンテージに達する点として、屈曲の値が、近似法によって決定され得る。例えば、屈曲点の値は、パラメータPの勾配が、例えば、最大勾配の25%~5%、例えば、25%、20%、15%、10%又は5%の間の値に落ちる点として決定され得る。
【0099】
一実施形態では、フィラメントデマンドは、パラメータPの勾配を測定しながら増加し、パラメータPが最大勾配の第1パーセンテージに低下した点、例えば10%が識別される。
一旦この点が識別されると、スプライン補間などの補間が、より大きな分解能で勾配を計算できる曲線を生成するために適用され得る。生成された曲線に基づいて、勾配が最大勾配の第2パーセンテージ、例えば25%に低下した点を識別し、屈曲値として決定する。
【0100】
かかるアプローチは、二次導関数と比較して、勾配又は一次導関数の計算の容易さに関して計算上の利点を提供し得る。かかるアプローチは、図5Bの例示的なフローチャートに示されている。
【0101】
さらなる代替的アプローチでは、フィラメントデマンドがコントローラ190のメモリMEMに記憶された値又はユーザによる入力よりも、より高いフィラメントデマンドに設定される逆プロセス(reverse process)によって、屈曲点の値を決定することができる。かかるデマンドは、事前に決定された屈曲点の値に対応し得る。次に、屈曲点を見つけるために、上述のようにフィラメントデマンドを漸進的に増加させるのではなく、フィラメントデマンドは、パラメータPを測定しながら漸進的に減少させることができる。曲率の屈曲点は、上記の方法に対応するプロセスによって、又はフィラメントデマンドに関してパラメータPの曲率の以前に決定された値の比較によって検出され得る。例えば、屈曲点は、パラメータPがパラメータPの最高点の所定のパーセンテージ又は絶対値に減少するとき、又はパラメータPの勾配が所定の値に増加するときに決定され得る。
【0102】
さらに他の代替的アプローチでは、一次導関数又は勾配及び二次導関数又は曲率よりもフィラメントデマンドに関するパラメータPの高次導関数を使用して、パラメータPの屈曲点を識別することができる。例えば、図10に示すように、パラメータPの3次導関数は、第1最大値、最小値、及び第2最大値を示す場合がある。要件にしたがって、パラメータPにおける屈曲点の近似値は、第1最小値、第2最大値、第1最小値と第2最大値との間の位置、第1最小値と第2最大値との加重平均、又は選択された最大値もしくは最小値のオフセットもしくはパーセンテージに基づいて識別され得る。さらに、四次導関数以上を使用して、三次導関数の選択された最大若しくは最小勾配、又は最小/最大勾配の位置の特定のパーセンテージ又は分数を、屈曲点の近似値として選択することができる。最大又は最小ではなく、関連する導関数のゼロ交差を、屈曲点の位置を近似するための基礎として使用することができる。
【0103】
さらなる一代替例では、フィラメントデマンドに関するパラメータPの曲線への接線の交差を用いて、近似的な屈曲点を識別することができる。例えば、最も急勾配の接線と、最大フィラメントデマンド値での接線とを識別することができる。これらの2つの接線が交差するフィラメントデマンドの値は、屈曲点の近似値として決定され得る。
【0104】
さらに別の代替的アプローチでは、パラメータPの最大値の、あるパーセンテージに対応する位置として屈曲点を識別することができる。
【0105】
さらに、パラメータPにおいて屈曲点を識別するための他のアプローチを適用することができるが、これらに限定されない。フィラメントデマンドを伴うパラメータPの曲線の任意の特徴は、原則として、そのような特徴が繰り返し識別可能であることを条件として、近似的な屈曲値を確立するための基礎として使用され得ることに留意されたい。
【0106】
次に、ステップS160において、検出された屈曲点に基づいて、フィラメントデマンドの値としてフィラメントデマンド屈曲値Ikが設定され、パラメータPに屈曲点が存在すると決定された場合には、フィラメントデマンドひざ値Ikが設定される。決定されたフィラメントデマンド屈曲値Ikに基づいてフィラメントデマンド設定点Isが設定される。例えば、フィラメントデマンド設定点Isは、フィラメントデマンド屈曲点と同じ値に対応するフィラメントデマンドの値として確立されることができる。あるいは、フィラメントデマンド設定点Isは、図3に示すオフセット量dだけフィラメントデマンド屈曲点より低い値(Ik)に対応するフィラメントデマンドの値として確立されることができる。
【0107】
さらに、フィラメントデマンド設定点Isは、フィラメントデマンド屈曲点よりも比例的に低い値に対応するフィラメントデマンドの値として確立されることができる。
さらに、代替的に、フィラメントデマンドの値は、フィラメントデマンド屈曲点より比例的に又は絶対的に高い値に対応する。フィラメントデマンドが屈曲点よりも低く設定されると、画質は低下する傾向にあるが、フィラメント寿命は増加する傾向にある。フィラメントデマンドが屈曲点よりも高く設定されると、画質は増加する傾向にあるが、フィラメント寿命は短くなる傾向にある。
【0108】
ステップS170において、フィラメントデマンドIfはフィラメントデマンド設定点Isの値に設定され、X線装置は試料Sの調査のために動作させることができる。パラメータPを決定するために手動で配置される参照オブジェクトが使用される場合、そのオブジェクトは、試料Sが導入される前に除去されることができる。参照オブジェクトが自動的に導入される場合、参照オブジェクトは、X線ビームBxの経路から自動的に引き出されることができる。
【0109】
ステップS180で、画像データDIMGが収集され、さらなる分析のために格納される。
【0110】
したがって、フィラメントデマンドを設定するための上述の手順を実施する際に、コントローラ190は、フィルタデマンドIfを、値I0から屈曲点IFが特定されるまで増加させる。屈曲値Ikが識別されると、コントローラは、識別された新しい値Ikに基づいてフィラメントデマンドの設定値を計算する。
【0111】
他の構成では、所定の絶対的又は比例的オフセットdを代替的又は付加的に使用して、設定されたフィラメントデマンドを、識別されたフィラメントデマンド屈曲点Ikに基づいて計算することができる。
【0112】
フィラメントデマンドが屈曲点Ikを超えてさらに増加する場合、図3及び図4CのIIIで示される点に到達し、フィラメント110から放出された自由電子による最大空間電荷に到達し、これは、単位面積あたりの最大放出電子に対応する。次に、フィラメントデマンドが図3にIVとして示される状況までさらに増加すると、フィラメントは過熱され、図4Cに点線として示される等電位線はフィラメントをさらに上方に移動し、それにより、最大空間電荷にすでに達しているので、電子を放出するより小さなフィラメント領域を提供するが、画像品質のさらなる向上は不可能である。したがって、パラメータPは、IIIからIVへとそれ以上増加しない。かかる条件下では、フィラメント111は過熱され、フィラメントの動作寿命は著しく短くなる。
【0113】
そのために、上述の技術を実装することによって、図4CのIIIの点に近づき、到達し、又はそれを超えること、及びフィラメントデマンドを設定するプロセスの間にフィラメントが過熱されることを回避することができる。フィラメントを高温で動作させると、動作中のフィラメントの寿命が短くなり、したがって、開示された技術にしたがうことによって、フィラメントの寿命を改善することができる。
【0114】
上述の技術では、コントローラ190は、フィラメントデマンドに対するパラメータPの変化率に基づいてリアル時間で屈曲点Ikを識別できるように、フィラメントデマンドが増加するにつれてパラメータの値を決定しながら、フィラメントデマンドを低値から高値に向かって漸進的に増加させることができる。
【0115】
かかる変形例は、フィラメントデマンドの比較的低い値で屈曲点が見出される場合には、
フィラメントデマンドに対する設定値Isを得るために、フィラメントデマンドがこの点を大きく上回る必要がなく、それによって、短時間であっても、フィラメント温度が過剰な値に上昇することを回避するという利点を有する。
【0116】
しかしながら、実際には、フィラメントデマンドの曲率における局所的最大の存在を確認するために、フィラメントデマンドの屈曲点Ikをある量だけオーバーシュートする必要があり得る。特に、X線装置100がずれている場合には、二重屈曲の現象が観察されている。フィラメントデマンドが増加するにつれて、パラメータPは一時的に増加しないことがある。このような状況を避けるために、手技は一時的に膝ポイントをオーバーシュートすることがある。したがって、適切に整列されたシステムと整合するように、屈曲点の後のパラメータPの挙動は、屈曲点の後のパラメータPの期待される挙動によって確認され得る。これには、正しい屈曲点が特定されたことを確認するために、フィラメントを必要以上に高い温度で一時的に実行することが含まれる。このようなオーバーシュートは、フィラメントの寿命に及ぼす影響を最小限にするために、非常に限られた時間にとどめることができる。
【0117】
代替的技術では、コントローラ190は、フィラメントデマンド値の所定の範囲にわたってフィラメントデマンド値を変化させて、それらの値内の屈曲点を識別することができる。換言すると、フィラメントの屈曲点が識別される前に、フィラメントデマンドを、図3に示されるI0~Imaxのような所定の範囲全体にわたって変化させることができる。
かかる手技は、屈曲点が確実に特定される利点を有する。いくつかの実施形態において、Io及びImaxの値は、膝ポイントが位置すると予想される範囲に基づいて設定されてもよい。いくつかの実施形態において、かかる範囲は、以前に同定された1つ以上の屈曲点に基づいて決定されてもよい。
【0118】
上記の説明は、フィラメント電流Ifによって表されるフィラメントデマンドに関して与えられたことに留意されたい。しかしながら、フィラメント111を横切って加熱フィラメント111に印加されるフィラメント電流供給部150による電位に基づいて、同じ手順を同等の効果で適用することができる。換言すれば、フィラメント供給部150は、等価的に定電流供給部又は定電圧供給部であってもよい。
【0119】
上記の技術は、X線装置の動作期間を通して維持され得るX線機械に対するフィラメントデマンドを確立するために使用され得るが、状況によっては、この方法を間隔を置いて繰り返すことが有利であり得る。
【0120】
特に、フィラメントが動作中に経時変化するにつれて、フィラメントは典型的に劣化する。このような劣化は、とりわけ、フィラメントの薄化をもたらす局所的な蒸発によるものであろう。その結果、フィラメントの抵抗は、典型的には、その動作寿命にわたって増加する。この劣化プロセスは、ホットスポットが融解又は破断するまで加速され、フィラメントの破損につながる。したがって、所与のフィラメントデマンド値に対して、フィラメント内に散逸する電力、したがってフィラメントの温度は、オーミック加熱の法則にしたがって、経時的に増加する。
【0121】
フィラメントのデマンドが1度だけ設定される場合、しばらくするとフィラメントは不適切に高温になる状態で動作する。しかしながら、しかし、図3の状態IIIとして示されているフィラメントデマンドを超えて画質が増加しないので、このことは、典型的にはユーザによって気付かれないであろう。
【0122】
機械の運転期間後に上述の技術を繰り返すことにより、フィラメントが長時間にわたって過度に高温になる状態でX線装置を動作させることを避けながら、新しいフィラメントデマンド値を識別することができる。
【0123】
特に、全てのビーム電流及びビームポテンシャルに対して1つのフィラメントデマンドが設定される技術と比較して、2倍以上のフィラメント寿命時間拡張の強化を得ることができる。
【0124】
このような動作期間は、規定されたフィラメント温度を維持するのに必要なフィラメント温度又はフィラメントデマンドが、20%と1%との間の比率、例えば20%、10%、5%又は1%の間の比率のように、少なくとも一定の比率だけ変化すると予想されるように選択された動作期間であり得る。
【0125】
ある状況では、この技術は、フィラメントデマンドの以前の設定から経過したクロック時間に基づいて繰り返されてもよい。例えば、この技術は、少なくとも1日に2回、少なくとも1日に1回、少なくとも1週間に2回、少なくとも1週間に1回、少なくとも2週間に1回、少なくとも2週間に1回、又は少なくともひと月に1回繰り返すことができる。かかる場合、コントローラ190は、電流クロック時間をフィラメントデマンドの最後の設定時間と比較して、所定の時間を超えた場合には、自動的にこの技術を実行することができる。
【0126】
かかる自動的実行(automatic performance)は、例えば、X線装置100のリスタートのときでもよいし、例えば、X線装置100の測定動作の終了のとき、又は、測定動作のシーケンスなどの条件を含んでもよい。かかる自動実行は、例えば、繰り返しの技術がスケジューリングされていることを、ユーザインタフェースコントローラUICを介してユーザ出力デバイス、例えば、コントローラコンソール若しくはコントロールパネル、又はディスプレイスクリーン等に通知して、ユーザインタフェースコントローラUICを介して、コントロールコンソール又はコントロールパネル等のユーザ入力デバイスから繰り返しを延期、省略、又は開始するコマンドを受信することによって、X線装置100のユーザに、設定技術の繰り返しを延期又は省略するオプションを与えることができる。
【0127】
この技術が自動的に又はユーザによって手動で繰り返されるかにかかわらず、コントローラ190は、ユーザインタフェースコントローラUICを介して、コントロールコンソール又はコントロールパネル又はディスプレイスクリーンなどのユーザ出力デバイスに、通知を供給することによって、この技術を繰り返す必要があることをユーザに通知することができる。通知は、自動的実行がスケジューリングされているという警告であることができ、例えば、自動パフォーマンスが次の測定の完了後、又は通知された期間が経過した後に行われるという警告であることができ、又は、ユーザが技術の実行を開始するように勧告であることができる。かかる開始は、制御コンソール又は制御パネルのようなユーザ入力装置から、ユーザインタフェース制御装置UICを介してそうするコマンドを受信することによって行われる。
【0128】
あるいは、この技術は、X線装置の経過した動作時間、例えば、フィラメントデマンドが以前に設定されてから、フィラメントに電流が供給される間の経過時間に基づいて繰り返されることができる。このような場合、コントローラ190は、フィラメントデマンドが前もって設定されてからの時間を記録することができ、その時間の量を、技術の実施のための所定の最大時間と比較することができる。このような場合、コントローラ190は、前述のように所定の時間を超えた場合に、自動的に技術を実行することができ、あるいは、ユーザに前述のように再度技術の実行を開始するように促すことができる。
【0129】
あるいは、この技術は、X線装置100が所定回数オンになった後、X線装置がオンになるたびに繰り返すことができる。このような場合、コントローラ190は、フィラメントデマンドが以前に設定された後にX線装置がオンにされた回数をカウントし、その回数を、技術の実行のために所定の最大回数と比較することができる。このような場合、コントローラ190は、所定の最大回数を上述のように超過した場合には、自動的に技術を実行することができ、あるいは、ユーザに再び上述のように技術の実行を開始するように促すことができる。
【0130】
あるいは、この技術は、ユーザのリクエストにしたがって、要求に応じて開始することができる。また、このような開始は、制御コンソール又は制御パネルのようなユーザ入力装置から、ユーザインタフェース制御装置UICを介してそうするコマンドを受信することによってもよい。
【0131】
さらに、上述の技術にしたがってフィラメントの屈曲点を得ることは、X線装置におけるフィラメントの残存するフィラメント動作寿命を推定するために使用することができる。
【0132】
特に、所与のフィラメントタイプについて、形状、構造及び組成に関して、特定のフィラメントデマンドにおけるフィラメントの動作寿命と、フィラメントデマンドIfに対するパラメータPの曲線内の検出された屈曲点との間に、明確な関係が存在する。
【0133】
フィラメントの動作寿命は、フィラメントの最初の動作からフィラメントの故障までのフィラメントの動作時間として定義される。フィラメント動作時間は、フィラメントのデマンドに応じてフィラメントが加熱される時間として定義される。
【0134】
典型的には、フィラメントは、加熱及びイオン逆衝撃の下でのフィラメント材料の劣化のために非常に薄くなり、フィラメントの薄化による加熱の増加がフィラメントの融解及び破損を引き起こすときに、フィラメントが破損する。フィラメントが薄くなるにつれて、フィラメントの劣化過程は加速する傾向がある。そして、特定の時間における残存フィラメント寿命は、一定のフィラメントデマンドを仮定して、特定の時間からフィラメントが故障するまでの動作時間として定義される。例えば、図6に示すように、特定のタイプのフィラメントは、フィラメントが動作中に維持されると、フィラメントデマンドIfに応じてパラメータPの特性曲線のシフトを示す。
【0135】
図6を参照すると、曲線αは新しいフィラメントを表し、曲線βは一定の時間作動中のフィラメントを表し、曲線γはより長い時間作動中のフィラメントを表す。図6から分かるように、曲線αに関連する識別された屈曲値Iαは曲線βに関連する識別された屈曲値Iβよりも大きく、曲線Iβに関連する識別された屈曲値Iβは曲線γに関連する識別された屈曲値Iγよりも大きい。つまり、フィラメントの動作時間が経過するにつれて、所与のフィラメントの識別された屈曲値Ikは減少する。
【0136】
さらに、所定のフィラメントに対する同定された屈曲値Ikは、フィラメントのタイプに依存する予測可能な関係でフィラメントの動作時間が経過するにつれて減少する。この予測可能な関係を用いて、フィラメントの残存寿命を決定することができる。
【0137】
例えば、決定されたフィラメントデマンドIs又は決定された屈曲値Ikは、任意の特定のフィラメント又はフィラメントのタイプについて設定されたフィラメントデマンドと経過フィラメント動作時間との間の既知の関係と比較され、予想される破損までの残存時間、すなわち、残存フィラメント寿命を決定することができる。経過した動作時間は、フィラメントの最初の動作から経過した動作時間であることができる。
【0138】
例えば、フィラメントの残存寿命の決定は、図8に示されるフローチャートを参照して説明される。
【0139】
特定のタイプのフィラメントは、上記の技術で決定されたフィラメント屈曲点Ikと経過フィラメント動作時間T0との間の関係を定義する特性曲線Cを示す。かかる曲線は、図7に示すような曲線Cの形をとることができる。特定のタイプのフィラメントは、一定の条件下で、フィラメントが一定時間動作した後、特徴的な破損までの時間Tf、つまり特徴的なフィラメント寿命を示すため、図7にT1として示されるように、フィラメントデマンド屈曲点は特定の特性値I1を有する。特性曲線Cは、X線装置100の構成に特有であってもよく、X線装置100の一例に特有であり得る。特性曲線C及びフィラメントデマンド屈曲点T1の知識に基づいて、フィラメントの破損までの予測残存時間、すなわち残存フィラメント寿命をTf-T1として確立することができる。
【0140】
したがって、第1ステップS210において、フィラメントデマンド屈曲点が識別され、設定されたフィラメント要求の値が決定される。ステップS210は、例えば、前述のステップS110~S150によって実行されてもよい。
【0141】
第2ステップS220では、装置100のフィラメントデマンドは、設定フィラメントデマンドの得られた値に設定され、X線装置100は、このフィラメントデマンドに基づいて動作する。得られた値の設定は、例えば、前述のステップS180により行うことができる。このフィラメントデマンドの設定値は、前述のフィラメントデマンドI1とみなすことができる。
【0142】
第3ステップS230では、フィラメントは、このフィラメントデマンドで動作状態に維持される。例えば、1つ以上のX線画像は、フィラメントデマンドの設定値を使用して1つ以上の試料Sから取得され得る。このステップの間、フィラメントデマンドの設定からの経過動作時間はコントローラ190によって測定される。
【0143】
特定のさらなる長さの間、例えば時間T2まで、フィラメントを動作させた後、フィラメントデマンド屈曲点Tkがその後決定される場合、フィラメントデマンド屈曲点は値I2まで減少する。これは上述したように、フィラメントが薄くなっており、フィラメントの特定の温度を維持し、したがって電子ビームBeの電子束を維持するためにはより小さな電流が必要であるためである。曲線C及び決定されたフィラメントデマンド屈曲点I2の知識に基づいて、新たな、故障までの残存時間をTf-T2として確立することができる。
【0144】
図7に示す関係は、フィラメント111とアノード117との間のフィラメントデマンド、ビーム電流IB、及びビーム電位VBなどのX線装置の動作パラメータの特定の値に対して成立する。
【0145】
したがって、第4ステップS240において、フィラメント屈曲点の識別が繰り返される。ステップS240は、例えば、前述のステップS110~S150を繰り返すことによって実行されてもよい。フィラメントデマンドの新しい値は、前述のフィラメントデマンドI2として得られる。
【0146】
次に、第5ステップS250において、コントローラ190は、ステップS230とステップS240との間のI1、I2及び経過動作時間T2-T1を曲線Cと比較し、その比較に基づいて新たな故障までの残存時間Tf-T2を決定する。
【0147】
最後に、第6ステップS260において、コントローラは、例えば、故障までの残存時間に関する情報を読取用メモリに記憶することによって、又はユーザインタフェースコントローラUICで故障までの残存時間に関する情報を報告することによって、Tf-T2の故障までの残存時間に関する情報を利用可能にし、ユーザは、その情報に留意することができる。情報は、故障までの残存時間の値のような値であってもよく、又は、残りのフィラメント寿命が短いための警告フラグ又は警告インジケータのような状態に関する情報であってもよい。一実施形態では、コントローラは、フィラメント寿命が短いことをサプライヤに通知し、それにより、代替フィラメントを電子的に発注することができる。かかる通知は、SMS又は電子メールのような周知のメッセージングプロトコルにしたがって、インターネット又はGPRS又はGSMモバイルネットワークのようなネットワークを介して行うことができる。
【0148】
特に、曲線Cの形状は、所与のフィラメントタイプに対して実質的に変化しない。したがって、フィラメントの残存寿命を予測するために、異なる条件下で、このような曲線のセットCを保存し、特定のフィラメント寿命を含む関連する状況に対して適切な曲線Cを選択することができる。
【0149】
あるいは、1つの曲線を記憶し、X線装置の動作パラメータにしたがってスケールすることができる。かかる曲線は、たとえば、代数式などの分析式によって定義することも、曲線の特定の値を使用した補間に基づいて生成することもできる。かかる値は、あらかじめ理論的に得られていてもよいし、異なる条件下での所与のタイプのフィラメントの寿命挙動の研究から得られていてもよい。
【0150】
一実施形態では、曲線Cは、コントローラ190のメモリMRYに表現として格納されてもよい。かかる表現は、例えば、外部記憶装置から記憶コントローラSTCを介してメモリMRYに、表現を表すデータをロードすることによって、周期的に更新することができる。
【0151】
あるいは、コントローラ190は、上述のフィラメントデマンド設定技術の各反復に対してフィラメントの動作時間を測定し、記憶することができ、動作時間と共にフィラメントデマンド屈曲点の挙動に基づいて表現を周期的に更新することができる。
【0152】
かかる更新は、動作寿命に関連するフィラメントデマンドの記録値を含むことができ、任意に、これらの値を補間して、フィラメントデマンド屈曲点が識別された時間の間の動作時間の中間値に関連する予測フィラメントデマンドを推定することができる。あるいは、更新は、決定されたフィラメントデマンド屈曲点Ikの測定値及び累積動作時間T0に基づいて、メモリMRYに記憶された曲線Cの解析的表現における係数を調整することを含むことができる。
【0153】
さらに、フィラメントの累積動作時間T0に基づいて、適切なフィラメントデマンドを予測することができるので、フィラメントデマンドの初期設定後フィラメントデマンド屈曲点Ikの決定に基づいて、フィラメントデマンドはそれから、適切なフィラメントデマンド屈曲点Ikの予測値に基づいて図7の曲線Cにしたがって変化させることができる。これは、フィラメントデマンド屈曲点Ikの上述の設定技法をさらに繰り返すのではなく、初期フィラメントデマンドが決定された後にフィラメントデマンドを設定するための代替的又は付加的なメカニズムを提供することができる。
【0154】
さらに、例えば、特定の動作時間における識別された屈曲点Ikを、曲線Cに基づいて予測された屈曲点と比較することによって、識別された屈曲点Ikが曲線Cと矛盾することが判明した場合、例えば、一貫した値が識別されるまで、屈曲点の識別を繰り返すことができる。1回以上の繰り返しの後、識別された屈曲点が曲線Cと一致しないことが確認された場合、それは故障を示す可能性がある。したがって、そのような状況では、例えば、ユーザインタフェースコントローラUICを介して、コントロールコンソール又はコントロールパネル、又はディスプレイスクリーンなどのユーザ出力装置に通知を供給することにより、ユーザは故障状態を通知される。あるいは、故障状態は、管理システム、管理部門、ユーザ又はサービスシステム、サービス部門又はサービスエンジニアに通知され得る。かかる通知は、SMS又は電子メールなどの周知のメッセージングプロトコルにしたがって、インターネット又はGPRS又はGSMモバイルネットワークなどのネットワークを介して行うことができる。
【0155】
曲線Cは、予め定められているか、又は経過フィラメント動作時間に対する識別された屈曲点のIkの以前の測定に基づいて経験的に決定されることができる。例えば、曲線Cの代数的表現のパラメータは、1つ以上の先行測定に基づいて更新されてもよく、又は曲線Cは、1つ以上の先行測定に基づいて経時的に構築されてもよい。推定技術、例えば、最尤推定技術を使用して、先行する測定の履歴に基づいて曲線Cを更新することができる。また、機械学習技術を使用して、先行する測定の履歴に基づいて曲線Cを決定及び/又は更新することもできる。かかる曲線は、ローカルで記憶され、特定の装置100と関連付けられることができ、又は同じ構成の他の装置100とコピー又は共有されることができる。いくつかの実施形態において、いくつかの装置100からの測定値、又はいくつかの装置100からの曲線を組み合わせて、上記の技術のいずれかによって共通(consensus)曲線を得ることができる。
【0156】
さらに、図9に示される例示的なマップに示されるように、フィラメントとアノードとの間で測定されるビーム電流値IB、フィラメントとアノードとの間のビーム電位VB、及びフィラメントデマンドの間に一貫した関係が存在する。かかる関係は、図9に示すようなマップとして、ルックアップテーブル内の値のセットとして、3d表面として、曲線のセットとして、又は量の間の分析的関係として表すことができる。そのような関係の存在は、フィラメントデマンド、ビーム電流及び電位の間の関係の表現に基づいて、任意の所望の状況のセットについて、フィラメントデマンドの適切な値を決定するために再び使用することができる。例えば、フィラメントデマンド値、ビーム電流値IB及びビーム電位VBのセットが与えられて、ビーム電流値IB及びビーム電位VBのいずれか又は両方を調整することが望ましい場合、適切なフィラメントデマンド値を再決定する必要はない。むしろ、図9に例示された関係は、調整された量に対する適切な新しいフィラメントデマンド値を識別するために使用され得る。そのような決定の後、新しいフィラメントデマンド値を設定し、ビーム電流値IB及び/又はビーム電位VBの新しい条件下で新しい測定のために装置を動作させることができる。
【0157】
有利には、図9のマップは、フィラメントデマンドに応じてスケーリングされる。すなわち、ビーム電位及びビーム電流の各セットに関連するフィラメントデマンドの値は、上述した技術によって適切なフィラメントデマンドを新たに決定した後に、直接的に決定することができる。かかる新たな決定は、例えば、X線装置100の長時間の動作の結果として行われ得る。新たな決定に基づいて、新たな関係、例えば新たなマップは、以前の適切なフィラメントデマンドと新たに決定されたフィラメントデマンドとの差に基づいて決定された補正係数にしたがって、マップ中の各値を補正することによって決定され得る。かかる補正係数は、マップ中の各値が、各値に適用される同じ補正係数、例えばスケーリング定数によって調整されるように、比例スケーリングであることができる。
【0158】
開示された技術を実装することにより、フィラメントデマンドの適切な値が、ユーザによる専門的知識なしに得られる。
【0159】
例えば、フィラメントデマンドが、低電流及び低電位に対応する条件下でユーザによって設定された場合、概して、適切なフィラメントデマンドも低く成り得る。その後、装置100がより高いビーム電流及びビーム電位で動作するように調整されると、画像品質が劣化する。
【0160】
対照的に、フィラメントデマンドが、高いビーム電流及び高いビーム電位に対応する条件下でユーザによって設定された場合、概して、適切なフィラメントデマンドもまた、高くなり得る。その後、装置100がより低いビーム電流及びビーム電位で動作するように調整されると、概して画像品質は増加しないことがある。しかしながら、フィラメントデマンドは不適切に高い可能性がある。不適切に高いフィラメントデマンドで動作すると、概して、適切なフィラメント寿命で動作する場合と比較してフィラメント寿命が短くなる。
【0161】
したがって、開示された技術を実装することによって、フィラメントデマンドの不適切な設定と比較してフィラメント寿命の増加を可能にしつつ、適切な画質が保証され得る。
【0162】
上記では、コントローラ190を使用して検出器130によって測定された画像品質に基づいてパラメータを決定することを参照したことに留意されたい。しかしながら、画像品質と相関するが検出器130を用いた測定には基づかない他の量も、フィラメントデマンド屈曲点を決定するためのパラメータとして使用することができる。ここで、画質との相関は、フィラメントデマンドに関して画質と同じように挙動する量を指し、より具体的には、画質と比例的又は実質的に比例的な関係を有する量を指す。
【0163】
例えば、コントローラ190は、フィラメント111からターゲット113への電子ビーム電流を測定するように構成されることができる。これは、ターゲット113によって発生されるX線の強度に直接関係し、したがって、検出器130によって決定される画像の品質に直接関係する。このような測定は、ターゲット電位供給部180によって供給される電流を測定することによって行うことができ、入力/出力ユニットIOを介してターゲット電位供給部180によって報告され得る。このような測定は、例えば、ターゲットとターゲットポテンシャル電源180との間に抵抗器を配置し、電圧計を用いて抵抗器の両端間の電圧降下を測定することによって行うことができる。
【0164】
さらに、X線検出器130における画質と相関する他の任意のパラメータ、例えばターゲット113によって放射されるX線の強度又はフラックスと相関する任意のパラメータを、フィラメントデマンドを設定するためのパラメータPとして同等に使用することができる。
【0165】
さらなる例として、ターゲット上の電子ビームスポットサイズ、又はターゲット上の電子ビームスポット強度もまた、ターゲットによって放射されるX線の強度又はフラックスと相関し、したがって、パラメータとして使用され得る。これは、例えば、シンチレータの層をターゲット113の上に配置するか、又は一時的にターゲット113の代わりに配置して、フィラメント111によって放出される電子ビームBeと交差させ、シンチレータを、例えば電荷欠同デバイス(CCD)で、観察することによって検出することができる。あるいは、ターゲット113からのX線強度は、ウィンドウ116をカバーするように配置されたシンチレータで観察することができ、またCCDで観察することができる。
【0166】
上述の説明では、図1に示すように中央処理装置CPUと、補助構成要素MEM、INS、IO、UIC及びSTCを使用して実装されたコントローラ190を参照した。しかしながら、このようなコントローラは、ワークステーション、パーソナルコンピュータ、ラップトップなどの適切に構成された汎用データ処理装置にロードされた、離散エレクトロニクス、プログラマブル論理コントローラ、汎用工業用コントローラ、又は適切な命令を使用して実現することもできる。
【0167】
このようなコントローラは、汎用コンピュータ・ハードウェアの制御下にある専用の制御電子回路を含むハイブリッド構成によっても提供することができる。コントローラ190は、単一の位置に位置決めされてもよく、又は、互いにネットワーク接続された個別の構成要素を有してもよい。特に、コントローラ190は、共通コントローラとしていくつかのそのようなX線装置100を制御することができ、又は、いくつかのそのようなコントローラ190は、例えば、ネットワーク端末又はキーボード・ビデオ・マウス・スイッチのような共通ユーザインタフェースを介してコントローラとすることができる。
【0168】
しかしながら、当業者には容易に理解されるように、上述のような本質的な機能性は変更されない。
【0169】
したがって、本開示はまた、本明細書に開示された技術を実行するように構成されたX線装置用のコントローラ、実行したときにX線装置に本明細書に開示された技術を実行させる機械読み取り可能な命令を含むX線装置用の制御プログラム、及びこのようなプログラムを機械読み取り可能な形式で記憶する非一時記憶媒体を包含する。
【0170】
さらに、当業者に直ちに明らかなように、本開示の概念は、限定されることなく、特定の要件に適した範囲の状況及び代替及び同等のモードで実施することができる。
特に、本明細書に示されかつ説明されたX線装置及びコントローラの構成は、完全に例示的であり、本技術は、一般に、限定されることなく、任意の形態のX線装置に適用することができる。
【0171】
特に、本明細書に示されかつ説明されたX線装置及びコントローラの構成は、完全に例示的であり、本技術は、一般に、限定されることなく、任意の形態のX線装置に適用することができる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10