(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】巻取りスピンドル
(51)【国際特許分類】
B65H 54/20 20060101AFI20240304BHJP
B65H 54/547 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
B65H54/20
B65H54/547
(21)【出願番号】P 2021561829
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(86)【国際出願番号】 EP2020059767
(87)【国際公開番号】W WO2020212181
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】102019002865.1
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D-42897 Remscheid, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ ヴァルターマン
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン コヴァルスキー
(72)【発明者】
【氏名】ライナルト フォス
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-237817(JP,A)
【文献】特開2002-265150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 54/20
B65H 54/547
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の糸を巻き取ってパッケージを形成するための巻取りスピンドルであって、中空円筒形の複数の巻管(3.1~3.4)を受容するための突出したパッケージマンドレル(2)を備えており、前記巻管(3.1~3.4)が、相前後して前記パッケージマンドレル(2)上に被せ嵌め可能であり、前記巻管が、前記パッケージマンドレル(2)の周面に設けられた巻管ストッパ(4)に対して緊締手段(5)によって軸方向で位置固定可能である、巻取りスピンドルにおいて、
前記巻管(3.1~3.4)のそれぞれが、少なくとも一方の端面端部(6.1,6.2)に位置固定要素(7)を有しており、該位置固定要素(7)が、前記パッケージマンドレル(2)の周面において前記巻管(3.1~3.4)を半径方向で緊締するために弾性変形可能に形成されて
おり、
前記位置固定要素(7)が、前記巻管(3.1)の前記端面端部(6.1,6.2)に設けられた複数の弾性的な緊締舌片(7.2)により形成されており、該緊締舌片(7.2)が、前記巻管(3.1)の周囲に沿って均等に分配されて配置されており、前記パッケージマンドレル(2)の前記周面に対向して配置されていることを特徴とする、巻取りスピンドル。
【請求項2】
前記巻管(3.1~3.4)が、それぞれ同一に形成されており、前記緊締手段(5)が、前記パッケージマンドレル(2)の前記周面に設けられた緊締リング(9)により形成されており、該緊締リング(9)が、前記パッケージマンドレル(2)の自由端において前記巻管(3.4)に対応して配置されている、請求項
1記載の巻取りスピンドル。
【請求項3】
前記巻管(3.1)の軸方向に張り出す前記緊締舌片(7.2)が、斜面状に形成されており、対応するクランプ円錐部(10)によって、前記パッケージマンドレル(2)の前記周面に向かって緊締可能である、請求項
1記載の巻取りスピンドル。
【請求項4】
前記クランプ円錐部(10)が、前記巻管(3.1)の反対側に位置する端面端部(6.1,6.2)に形成されており、かつ/または前記パッケージマンドレル(2)の前記周面に設けられた緊締リング(12)に配設されており、緊締手段(5)として作用する前記緊締リング(12)が、前記パッケージマンドレル(2)の自由端に位置する前記巻管(3.4)に対応して配置されている、請求項
3記載の巻取りスピンドル。
【請求項5】
前記緊締リング(12)に、切換え可能なロック機構(13)が対応して配置されており、該ロック機構(13)が、前記パッケージマンドレル(2)の前記自由端に配置されている、請求項
4記載の巻取りスピンドル。
【請求項6】
前記位置固定要素(7)が、前記巻管(3.1)の前記端面端部(6.1,6.2)に互いに対して所定の間隔で配置された複数の緊締舌片(7.3)により形成されており、該緊締舌片(7.3)が、隣接する巻管(3.2)の端面端部(6.1,6.2)に設けられた対峙する複数のクランプ突起(11)により緊締可能である、請求項1記載の巻取りスピンドル。
【請求項7】
前記巻管(3.1)の両端面端部(6.1,6.2)にそれぞれ複数の緊締舌片(7.3)および複数のクランプ突起(11)が互いにずらされて形成されている、請求項
6記載の巻取りスピンドル。
【請求項8】
前記緊締手段(5)が、前記パッケージマンドレル(2)の端部に配置された、複数の調節可能なクランプ部材(17)を備えたカバーユニット(16)により構成されており、前記クランプ部材(17)が、調節機構(18)により、締結された緊締位置と、締結解除された弛緩位置との間で移動可能である、請求項
6または
7記載の巻取りスピンドル。
【請求項9】
前記巻管ストッパ(4)が、ストッパリング(26)により形成されており、該ストッパリング(26)が、互いに対してずらされて配置された複数の緊締舌片(7.3)およびクランプ突起(11)を有しており、該緊締舌片(7.3)および前記クランプ突起(11)が、前記巻管(3.1)の前記クランプ突起(11)および前記緊締舌片(7.3)と同一に形成されている、請求項
6から
8までのいずれか1項記載の巻取りスピンドル。
【請求項10】
前記巻管(3.1)が、周面に周方向に延びる半径方向の引出し溝(17)を有しており、該引出し溝(17)が、前記端面端部(6.1,6.2)のうちの一方の端面端部に配置されている、請求項1から
9までのいずれか1項記載の巻取りスピンドル。
【請求項11】
前記巻管(3.1)が、内径面側に分配されて形成された複数の軸方向溝(20)を有しており、該軸方向溝(20)が、前記パッケージマンドレル(2)の前記周面に設けられた長手方向ウェブ(21)と協働する、請求項1から
10までのいずれか1項記載の巻取りスピンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の、複数本の糸を巻き取ってパッケージを形成するための巻取りスピンドルに関する。
【0002】
複数本の糸を巻き取ってパッケージを形成するための冒頭で述べた形式の巻取りスピンドルは、国際公開第2010/094533号から公知である。
【0003】
溶融紡糸プロセスにおいて合成糸を製造する場合、通常は1つの紡糸位置内で形成された複数本の糸が並行して相並んで巻き取られてパッケージを形成する。複数のパッケージのそれぞれは、巻管の周面において形成される。巻管は、複数個で巻管スタック(巻管の積重ね体)として1つの巻取りスピンドルの周面に支持されており、この巻取りスピンドルによって、予め規定された周速度で駆動される。この場合、たとえば6000m/分の糸の最大速度およびたとえば25kgの最大パッケージ重量でも確実な保持を保証するために、通常は、巻管を巻取りスピンドルの周面に固定的に結合する。したがって、通常は巻管を緊締手段によって巻取りスピンドルの周面に位置固定する。このような緊締手段は、概して巻取りスピンドル内に統合されており、巻管のそれぞれに作用する。
【0004】
冒頭で述べた形式の巻取りスピンドルは、専ら、巻取りスピンドルの自由端に対応配置された巻管に作用する緊締手段を有しており、これにより隣接する巻管を一緒に巻管スタックにおいて巻取りスピンドルの周面に位置固定することができる。このためには、必要となる保持力を形成するために、巻管が、軸方向で互いに対して緊締される。したがって、複数の巻管を相前後して収容する、極めて長く突き出した巻取りスピンドルでは、巻管を位置固定するために比較的高い軸方向力が加えられなければならず、この高い軸方向力は、巻管への極めて高い負荷をもたらす。
【0005】
したがって、本発明の課題は、冒頭で述べた形式の巻取りスピンドルを改良して、複数の巻管も巻取りスピンドルのパッケージマンドレルの周面に確実に位置固定可能であるようにすることである。
【0006】
本発明の別の目的は、実質的に内側に位置する緊締要素を用いることなしに、使用される、冒頭で述べた形式の巻取りスピンドルを提供することである。
【0007】
この課題は、本発明によれば、巻管のそれぞれが、少なくとも一方の端面端部において位置固定要素を有しており、位置固定要素が、パッケージマンドレルの周面において巻管を半径方向で緊締するために弾性変形可能に形成されていることにより解決される。
【0008】
本発明の有利な改良形は、各従属請求項に記載の特徴および特徴の組み合わせにより定義されている。
【0009】
本発明は、軸線方向で多かれ少なかれ緊締されている巻管スタック内で複数の巻管のそれぞれが、半径方向の緊締によってパッケージマンドレルの周面に保持されている、という特別な利点を有している。これにより、一方ではセンタリング性が達成され、他方では付加的な緊締手段なしに巻管の自動的な緊締が生じる。したがって、パッケージマンドレル内の手間のかかる緊締装置を回避することができるので、パッケージマンドレルの荷重を支持する横断面の寸法が巻管の内径に達するまで拡張される。巻管スタックの軸方向の緊締は、巻管のそれぞれを位置固定するための半径方向の緊締を引き起こす位置固定要素の変形のためにのみ必要とされる。
【0010】
本発明の有利な第1の改良形では、位置固定要素が、ゴムリングにより形成されており、ゴムリングが、巻管の端面端部において、収容凹部内に取り付けられている。これにより、軸方向の極めて小さな移動でさえ、ゴムリングの材料挙動に基づいて、巻管とパッケージマンドレルとの間で半径方向に作用する高い緊締力を引き起こすことができる。
【0011】
巻管スタック内で巻管の各端面端部においてそれぞれ半径方向の緊締を生じさせるために、巻管が両端面端部にそれぞれ1つの別個のゴムリングを有しており、このゴムリングが、負荷軽減された状態で、巻管の端面端部を越えて張り出している本発明の改良形が好適に構成されている。したがって、巻管スタック内の複数の巻管を一緒に移動させることを半径方向の緊締力を形成するために既に有利に利用することができる。
【0012】
巻管スタック内の巻管を規定された軸方向の予荷重でパッケージマンドレルの周面において保持することができるようにするために、さらに、巻管が、同一に形成されており、緊締手段が、パッケージマンドレルの周面に設けられた緊締リングにより形成されており、緊締リングが、パッケージマンドレルの自由端において巻管に対応配置されている。パッケージマンドレルの周面における緊締リングの位置固定により、巻管の半径方向の緊締のために必要となる軸方向の最小予荷重は、巻管スタックにおいて保持された状態で維持される。
【0013】
本発明の別の有利な1つの改良形によれば、位置固定手段が、巻管の端面端部に設けられた複数の弾性的な緊締舌片により形成されており、これらの緊締舌片が、巻管の周面に沿って均等に分配されて配置されており、パッケージマンドレルの周面に対向して配置されている。巻管の端面端部に設けられたこのような緊締舌片は、これらの緊締舌片を直接に端面端部に形成することができる、という特別な利点を成す。したがって、位置固定要素と巻管とは、付加的な結合部なしに一体的な構成部材を形成する。
【0014】
巻管の、パッケージマンドレルの周面にわたって均一な半径方向の緊締を生じさせるために、さらに、巻管の軸方向に張り出す緊締舌片が斜面状に形成されており、対応するクランプ円錐部によって、パッケージマンドレルの周面に向かって緊締可能であることが規定されている。これにより、巻管の半径方向の緊締は、実質的に軸方向の予荷重なしに可能である。
【0015】
クランプ円錐部は、有利には、巻管の反対側に位置する端面端部に形成されるので、巻管スタック内で隣接する巻管がクランプ円錐部および緊締舌片により組み合わせ可能である。
【0016】
パッケージマンドレルの自由端に配置された巻管を緊締するために、クランプ円錐部がパッケージマンドレルの周面に設けられた緊締リングに配置されており、この緊締リングは、巻管の緊締手段としてパッケージマンドレルの自由端において作用する。ここで重要であるのは、巻管を、緊締舌片およびクランプ円錐部を介して、巻管スタック内において半径方向で緊締して保持することである。
【0017】
緊締リングは、このためには、好適には切換え可能なロック機構を介して、パッケージマンドレルの周面に保持される。したがって、パッケージマンドレルの周面における緊締リングのロックおよび解放は簡単な形式で可能である。
【0018】
本発明の別の代替的な別の構成は、位置固定要素が、巻管の端面端部に互いに対して所定の間隔で配置された複数の緊締舌片により形成されており、これらの緊締舌片が、隣接する巻管の端面端部に設けられた対峙する複数のクランプ突起により緊締可能である改良形により与えられている。これにより、パッケージマンドレルの周面に沿って分配されて配置された複数の緊締領域が生じ、これらの緊締領域は、緊締舌片およびクランプ突起の誤差がある場合でも確実な保持を生じさせる。
【0019】
巻管の両端面端部にそれぞれ複数の緊締舌片および複数のクランプ突起が互いに対してずらされて形成されている改良形が特に有利である。したがって、軸方向の移動時に自動的に生じる半径方向の緊締を得るために、巻管の端面端部を任意に互いに組み合わせることができる。
【0020】
巻管の端面端部において交互に配置された複数の緊締舌片およびクランプ突起の構成の別の利点は、形成された半径方向応力が実質的に巻管ロッドの軸方向の予荷重なしでも保持されることにある。巻管は、緊締舌片とクランプ突起との間の自己ロックに基づいて、軸方向の荷重なしでもパッケージマンドレルの周面において半径方向で緊締された状態に持される。
【0021】
巻管をパッケージマンドレルの自由端において位置固定するために、本発明の有利な改良形による緊締手段は、複数の調節可能なクランプ部材を備えたカバーユニットにより形成されており、クランプ部材が、調節機構により、カバーユニット内で締結された緊締位置と締結解除された弛緩位置との間で運動可能である。
【0022】
パッケージマンドレルの巻管ストッパにおいて、複数の緊締舌片および複数のクランプ突起を備えて構成された巻管の確実な保持を達成するために、さらに、巻管ストッパが、ストッパリングにより形成されており、このストッパリングが、互いに対してずらされて配置された複数の緊締舌片およびクランプ突起を有しており、これらの緊締舌片およびクランプ突起が、巻管のクランプ突起および緊締舌片に対して同等に形成されていることが規定されている。これにより、各巻管がその端面端部において半径方向の緊締によりパッケージマンドレルにおいて保持されていることが保証されている。
【0023】
複数本の糸が巻管に巻き取られてパッケージが形成されるパッケージ形成過程の最後に、パッケージマンドレルからの巻管の取出しを可能にするために、巻管が、周面に環状に周方向に延びる半径方向の引出し溝を有しており、この引出し溝が、端面端部のうちの一方の端面端部に配置されている、本発明の改良形が規定されている。これにより、たとえば自動操作ユニットまたはドッファを、パッケージを有する巻管を引き出すために使用することができる。
【0024】
巻管がパッケージマンドレル上への被せ嵌め時にできるだけ予め規定された位置を占め、かつ巻管の回転を回避するように、巻管が、内径面において分配されて形成された複数の軸方向溝を有しており、これらの軸方向溝が、パッケージマンドレルの周面に設けられた長手方向ウェブと協働する、本発明の改良形が特に有利である。これにより、巻管とパッケージマンドレルとの間の形状結合式の結合部は、既に巻管の被せ嵌め時に実現される。
【0025】
したがって、本発明に係る巻取りスピンドルは、長く突出したパッケージマンドレルにより複数の巻管を受容するために特に適しており、巻管は、その位置固定要素によって自己緊締式若しくはセルフロック式に構成されている。手間のかかるクランプ装置は、もはや不要である。パッケージマンドレルの端部においてのみ、緊締手段を介して変形を開始するための軸方向の移動が確保されればよい。
【0026】
本発明を以下に本発明に係る巻取りスピンドルの幾つかの実施例につき、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1.1】本発明に係る巻取りスピンドルの第1の実施形態を1つの視点で概略的に示す図である。
【
図1.2】本発明に係る巻取りスピンドルの第1の実施形態を別の視点で概略的に示す図である。
【
図2】
図1.1および
図1.2に示した実施例による巻管を横断面で概略的に示す図である。
【
図3.1】本発明に係る巻取りスピンドルの別の実施例を1つの視点で概略的に示す図である。
【
図3.2】本発明に係る巻取りスピンドルの別の実施例を別の視点で概略的に示す図である。
【
図4】
図3.1および
図3.2に示した実施例による巻管を横断面で概略的に示す図である。
【
図5.1】本発明に係る巻取りスピンドルのさらに別の実施例を1つの視点で概略的に示す図である。
【
図5.2】本発明に係る巻取りスピンドルのさらに別の実施例を別の視点で概略的に示す図である。
【
図6】
図5.1および
図5.2に示した実施例による巻管を横断面で概略的に示す図である。
【0028】
図1.1および
図1.2には、本発明に係る巻取りスピンドルの第1の実施例が複数の視点で図示されている。
図1.1は、長手方向の図を示しており、
図1.2には、半径方向で緊締された巻管の部分図が図示されている。両図面のうちの一方の図面に明確に関連付けがなされない限り、以下の説明は両方の図面に適用される。
【0029】
図1.1には、巻取りスピンドル1が概略的に図示されている。
図1.1には、巻取りスピンドル1の、本発明にとって重要な部分のみが示されている。したがって、巻取りスピンドル1は、長く突出したパッケージマンドレル2を有している。このパッケージマンドレル2は、
図1.1には詳細に図示されていない駆動軸に結合されている。このためには、パッケージマンドレル2は、管状に構成されており、図面には詳細に図示されていない支持体に回転可能に支承されている。
【0030】
一方の端部において、パッケージマンドレル2は、巻管ストッパ4を有している。パッケージマンドレル2の周面には、複数の巻管が保持されている。
図1.1には、巻管3.1~3.4しか図示されていない。複数の巻管3.1~3.4のそれぞれは、同一に形成されている。巻管3.1~3.4の説明のために、付加的に
図2が参照される。
【0031】
図2には、巻管3.1~3.4の横断面が概略的に図示されている。
【0032】
図2に示した巻管3.1は、中空円筒形の巻管ボディ3を有している。巻管ボディ3は、互いに反対側に位置する2つの端面端部6.1,6.2を有している。端面端部6.1,6.2のそれぞれには、それぞれ1つの収容凹部8が形成されている。収容凹部8は、巻管ボディ3の内部において内径および切込み深さにより画定されている。収容凹部8のそれぞれには、弾性変形可能な位置固定要素7が配置されている。位置固定要素7は、本実施例では、弾性的なゴムリング7.1により形成されている。端面端部6.1,6.2に配置されたゴムリング7.1は、巻管ボディ3の端面端部6.1,6.2から張り出すように寸法設定された、軸方向の延在長さを有している。
【0033】
端面端部のうちの一方の端面端部6.2の周面には、環状に延びる半径方向の引出し溝19が形成されている。
【0034】
図1.1および
図1.2には、巻管3.1~3.4が、緊締状態で図示されている。このためには、巻管3.1~3.4は相前後してパッケージマンドレル2上に被せ嵌められ、軸方向で互いに対して緊締される。その際に、端面端部6.1,6.2に存在するゴムリング7.1が押し縮められる。ゴムリング7.1の難圧縮性に基づいて、半径方向の位置固定の極めて高い硬直性と同時に、巻管3.1~3.4とパッケージマンドレル2との間で半径方向に作用する緊締力が生じる。
【0035】
これに関しては、
図1.2に、隣接する2つの巻管3.1,3.2間の接合箇所の横断面が概略的に示されている。
【0036】
巻管3.1,3.2は、互いに突き合わせられているので、互いに向かい合って位置しているゴムリング7.1が変形する。この場合、端面端部6.1,6.2に設けられた収容凹部8により形成された空間は、パッケージマンドレル2の周面に至るまで完全にゴムリング7.1により占められている。ゴムリング7.1のサイズにより、かつ収容凹部8のサイズにより、巻管3.1,3.2を位置固定するために有効な緊締力および有効な硬直性を予め設計することができる。これにより、パッケージマンドレル2の周面における巻管3.1~3.4の半径方向の緊締が達成される。
【0037】
図1.1から明らかであるように、第1の巻管3.1の端面端部6.1は、巻管ストッパ4に向かって軸方向に押し付けられる。その限りでは、巻管ストッパ4によって、巻管3.1の端面端部6.1に設けられたゴムリング7.1の変形が発生する。
【0038】
パッケージマンドレル2の反対側に位置する自由端において、最後の巻管3.4には、緊締手段5が対応配置されている。緊締手段5は、この実施例では緊締リング9により構成されている。緊締リング9は、ねじ締結またはクランプによりパッケージマンドレル2に保持されていてよい。この場合に重要であるのは、緊締リング9が巻管3.1~3.4により形成された巻管スタックを軸方向で突き合わせて保持することである。
【0039】
巻管3.1~3.4の取出しために、巻管3.1~3.4のそれぞれは、端面端部においてそれぞれ1つの引出し溝19を有している。引出し溝19は、環状に延びる半径方向の溝として、巻管3.1~3.4の周面に形成されており、補助装置内においてパッケージマンドレル2から引き出すために適した構成となっている。
【0040】
ゴムリング7.1としての位置固定要素7の構成により、巻管3.1~3.4は、使用後であっても再利用可能である。したがって、このような巻管3.1~3.4は、パッケージマンドレルにおいて位置固定してパッケージを受容するために、複数回使用することができる。
【0041】
図3.1~
図3.2には、本発明に係る巻取りスピンドルの別の実施例が複数の視点で図示されている。
図3.1は、巻取りスピンドルを長手方向の断面図で示しており、
図3.2は、隣接する2つの巻管の部分断面図を概略的に示している。
【0042】
図3.1および
図3.2に示した実施例は、上述の実施例と実質的に同一であるので、ここでは単に差異のみを説明し、その他の部分については上述の説明が参照される。
【0043】
図3.1および
図3.2に図示された実施例では、複数の巻管3.1~3.4がパッケージマンドレル2の周面に保持されている。巻管3.1~3.4はそれぞれ、一方の端面端部6.2において位置固定要素7として作用する複数の緊締舌片7.2を有している。巻管3.1~3.4の説明のために、ここでは付加的に
図4が参照される。
【0044】
図4には、巻管3.1~3.4のうちの1つの巻管3.1が概略的に横断面で図示されている。巻管3.1~3.4は、同一に形成されているので、この説明は全ての巻管に適用される。
【0045】
巻管3.1~3.4はそれぞれ、中空円筒形の巻管ボディ3を有している。巻管ボディ3は、端面端部6.2において、複数の緊締舌片7.2の形態の位置固定要素7を有している。緊締舌片7.2は、巻管ボディ3の内側輪郭に一致するように配置されている。緊締舌片7.2は、軸方向の斜面を形成している。この斜面は、巻管ボディ3の直径段部により画定されている。緊締舌片7.2は、変形継手22を介して端面端部6.2に弾性変形可能に形成されている。したがって、緊締舌片7.2は、巻管ボディ3の外側輪郭の切込みを形成する。緊締舌片7.2間には、それぞれ1つの切抜き部27が形成されている。この切抜き部27は、変形継手22にまで延びている。
【0046】
反対側に位置する端面端部6.1には、巻管ボディ3の内側輪郭にクランプ円錐部10が形成されている。クランプ円錐部10は、複数の巻管の接合時に緊締舌片7.2に弾性変形が生じるように、対峙する緊締舌片7.2の勾配および直径に適合されている。クランプ円錐部10は、内側で直径段部28により画定されており、好適にはスリットが形成されている。
【0047】
図3.1および
図3.2の図面から明らかであるように、巻管3.1~3.4は、軸方向で接合されて巻管スタックを形成するので、2つの巻管の対峙する端面端部6.1,6,2において、緊締舌片7.2がクランプ円錐部10と協働する。
【0048】
これに関しては、
図3.2に、隣接する2つの巻管3.1,3.2の接合箇所の横断面が図示されている。巻管3.1,3.2は、好適には端面端部6.1と6.2との間の所定の当付けにより突き合わされている。この場合、巻管3.2の端面端部6.1に設けられたクランプ円錐部10が、巻管3.1の端面端部6.2に設けられた緊締舌片7.2と協働することになる。これにより、緊締舌片7.2は、これによりパッケージマンドレル2の周面に対して押圧される。したがって、巻管3,1,3.2とパッケージマンドレル2との間で半径方向の緊締が生じる。
【0049】
図3.1の図面から明らかであるように、巻管ストッパ4は、ストッパ円錐部23を有している。このストッパ円錐部23に、クランプ円錐部10が被せ嵌め可能である。パッケージマンドレル2の、反対側に位置する自由端には、緊締リング12の形態の緊締手段がパッケージマンドレル2の周面に保持されている。緊締リング12は、クランプ円錐部12.1を有している。このクランプ円錐部12.1は、巻管3.4の緊締舌片7.2と協働する。緊締リング12を、巻管3.1~3.4の巻管スタックの軸方向の移動を阻止するための位置に保持するために、緊締リング12は、ロック機構13と協働する。ロック機構13は、本実施例では例示的に複数の緊締ピン14により形成されている。これらの緊締ピン14は、実質的に半径方向に滑動するようにパッケージマンドレル2内で案内されている。パッケージマンドレル2の内部には、調節手段15が設けられており、この調節手段15は、突出する操作端部24において手動または自動の操作により往復移動可能である。この場合、緊締ピン14は、調節手段15の調節斜面25を介してロック位置とロック解除位置との間で移動される。
【0050】
巻管3.1~3.4を引き出せるように、それぞれの巻管3.1~3.4は、端面端部のうちの少なくとも一方の端面端部6.2に引出し溝19を有している。したがって、手動の操作または補助装置の自動的な操作により、巻管3.1~3.4の周面に巻き付けられたパッケージをパッケージマンドレル2から引き出すことができる。
【0051】
図5.1および
図5.2には、本発明に係る装置のさらに別の実施例が複数の視点で図示されている。
図5.1には長手方向の断面が、
図5.2には部分図が概略的に示されている。
【0052】
図5.1および
図5.2に示した実施例は同様に、上述の実施例と実質的に同一に形成されている巻取りスピンドル1を示している。巻取りスピンドル1のパッケージマンドレル2の周面には、複数の巻管3.1~3.4が、端面端部6.1,6.2に設けられた弾性変形可能な位置固定要素7によってパッケージマンドレル2に半径方向で緊締されている。このためには、巻管3.1~3.4は、その端面端部6.1,6.2において位置固定要素7として作用する複数の緊締舌片7.3を有している。巻管3.1~3.4の説明のために、ここでは付加的に
図6が参照される。
【0053】
図6には、巻管3.1~3.2の実施例が概略的に横断面図および側面図で図示されている。巻管3.1~3.4は、同一に形成されており、それぞれ巻管ボディ3を有している。巻管ボディは、端面端部6.2において、軸方向に張り出す複数の緊締舌片7.3を有している。これらの緊締舌片7.3は、弾性的に形成されており、半径方向の緊締を生ぜしめる位置固定手段7として作用する。このためには、緊締舌片7.3は、巻管ボディの内側輪郭に整合しており、外側に向かって僅かに円錐形の形状を有している。緊締舌片7.3は、端面端部6.2において、互いに対して所定の間隔で周面に沿って分配されて形成されている。隣り合う2つの緊締舌片7.3の間の中間空間内に、端面端部6.2に設けられたそれぞれ1つのクランプ突起11が配置されている。端面端部6.2に設けられたクランプ突起11は、緊締舌片7.3に適合する内側輪郭を有しており、これにより、接合時に対峙する端面端部がクランプ突起11による緊締舌片7.3の変形を引き起こすことができる。
【0054】
クランプ突起11および緊締舌片7.3の肉厚、長さおよび角度などの幾何学的な形状付与により、クランプ力の大きさを個別に調節することができる。
【0055】
したがって巻管ボディ3の、反対側に位置する端面端部6.1は、同様に複数の緊締舌片7.3およびクランプ突起11を交互に備えて形成されている。
【0056】
クランプ突起11と緊締舌片7.2とは、端面端部6.1,6.2において、同様に、複数の巻管の突き合わせによる接合時にそれぞれ1つの緊締舌片7.3が対峙する巻管のクランプ突起11と協働するように、互いに対してその角度位置をずらされて配置されている。
【0057】
図5.1および
図5.2に図示された実施例では、巻管3.1~3.4が軸方向で当接するまで突き合わされている。この状態では、それぞれクランプ突起11が、隣接する緊締舌片7.3に作用するので、巻管3.1~3.4のそれぞれは、半径方向で緊締されてパッケージマンドレル2の周面に保持される。
【0058】
自己クランプ作用を引き起こすための隣接する巻管3.1,3.2のこのような状況が、
図5.2に概略的に図示されている。
図5.2の図面から明らかであるように、巻管3.2の端面端部6.1に設けられたクランプ突起11は、巻管3.1の端面端部6.2に設けられた、その下にある緊締舌片7.3と協働する。緊締舌片7.3の円錐形の賦形によって、クランプ突起11を介して、緊締舌片7.3における変形、この場合は屈曲が生じ、この変形は、パッケージマンドレル2の周面に対する半径方向の緊締をもたらす。
【0059】
図5.1の図面から明らかであるように、パッケージマンドレル2の巻管ストッパ4には、ストッパリング26が配置されている。ストッパリング26は、第1の巻管3.1の端面端部6.1または6.2に対向して、緊締舌片7.3およびクランプ突起11と同等の構成を有している。ここで、ストッパリング26は、本実施例では、パッケージマンドレル2の周面において、接着されるか、またはプレス嵌めによって保持することができる。
【0060】
巻管3.1~3.4を半径方向で緊締するために、巻管3.1~3.4は相前後して軸方向で当接するまで突き合わせられる。この場合、巻管スタックの軸方向の締め付けは不要である。巻管3.1,3.2に生じた半径方向の緊締は、巻管3.1~3.4を突き合わせ移動させた後に安定的である。その限りでは、最後の巻管3.4の自由端は、緊締手段5によって半径方向の力で位置固定することができる。
【0061】
図5.1の図面から明らかであるように、パッケージマンドレル2の自由端には、カバーユニット16が設けられている。カバーユニット16は、半径方向に移動可能な複数のクランプ部材17を有しており、これらのクランプ部材17は、最後の巻管3.4の緊締舌片7.3を緊締するために働く。クランプ部材17は、調節機構18に結合されている。調節機構18は、軸方向へのカバーユニット16の操作により、かつカバーユニット16の回転により、複数の機能を奏するように操作される。
図5.1に図示された状況では、カバーユニット16は、クランプ部材17が巻管3.4の緊締舌片7.3に圧力を作用させている緊締状態にある。
【0062】
弛緩させるためには、カバーユニット16は、軸方向でパッケージマンドレル2から出るように移動させられる。引き出された位置では、クランプ部材17が緩められて、内側の位置に入る。次いで、カバーユニット16が調節機構18によって出発位置に戻される。クランプ部材17は引き込まれており、巻管3.1~3.4を、対応する引出し溝19によりパッケージマンドレル2から引き出すことができる。
【0063】
緊締するためには、カバーユニット16が改めて引き出される。この場合クランプ部材17は、カバーユニット16を出発位置へと戻した際に巻管3.4のそれぞれの緊締舌片7.3をクランプできるように、調節機構18により外方に向かって移動する。カバーユニット16の操作は、手動で、またはドッファによって実施することができる。カバーユニット16内のクランプ部材17の個数は、巻管に設けられた緊締舌片7.3の個数に合わせられている。その限りでは、パッケージマンドレル2の自由端の巻管3.4は、有利には、緊締手段5として機能するクランプ部材17により半径方向で緊締される。
【0064】
パッケージマンドレル2の周面において巻管3.1~3.4のできるだけセンタリングされたガイドを達成し、さらに巻管の回転を回避するために、巻管3.1~3.4のそれぞれが、巻管を貫通する複数の軸方向溝を有していてよい。これに関して、例示的な実施例が
図6に示されている。巻管ボディ3の内側輪郭に、複数の軸方向溝20が形成されている。軸方向溝20は、端面端部6.1から端面端部6.2に至るまで巻管ボディ3を完全に貫通している。このような軸方向溝20は、パッケージマンドレル2の周面に設けられた長手方向ウェブに対応している。このためには、長手方向ウェブは、巻管3.1~3.4を対応する軸方向溝20によって受容することができるように、パッケージマンドレル2の周面において隆起するように形成されてよい。
図5.1には長手方向ウェブ21が概略的に図示されている。
【0065】
本発明に係る巻取りスピンドルの
図1から
図6に図示した実施例は、巻管の端面端部において位置固定要素を形成するための幾つかの可能な構成のみを示している。ここで重要であるのは、半径方向の緊締を行うための位置固定要素が弾性変形可能に形成されており、この変形が、巻管の軸方向の移動によって生じるということである。したがって、位置固定要素をゴムリングとして構成した場合、別の構造的な賦形若しくは形態も可能であってよい。