(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】SDC2遺伝子のメチル化検出方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6876 20180101AFI20240304BHJP
C12Q 1/686 20180101ALN20240304BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240304BHJP
【FI】
C12Q1/6876 Z ZNA
C12Q1/686 Z
C12N15/12
(21)【出願番号】P 2021574933
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(86)【国際出願番号】 KR2020006692
(87)【国際公開番号】W WO2020256293
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-02-16
(31)【優先権主張番号】10-2019-0072080
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519124327
【氏名又は名称】ゲノミックツリー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】GENOMICTREE,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】アン ソンファン
(72)【発明者】
【氏名】オ テジョン
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/194280(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/066910(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/114150(WO,A1)
【文献】特表2016-500521(JP,A)
【文献】特表2013-509872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00- 3/00
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の段階を含むSDC2遺伝子のメチル化を検出する方法:
(a)メチル化されたSDC2遺伝子と非メチル化されたSDC2遺伝子を互いに異なるように修飾させる一つ以上の試薬でサンプルを処理する段階;
(b)メチル化されたSDC2遺伝子を特異的に増幅する配列番号31及び32の配列を含むプライマー対
によって処理する段階;及び
(c)前記(b)段階でプライマーによって特異的に増幅されたメチル化されたSDC2遺伝子に相補的にハイブリダイゼーション可能な配列番号33の配列を含むプローブを処理する段階。
【請求項2】
前記試薬は、ビスルファイト、ヒドロゲンスルファイト、ジスルファイト、又はこれらの組合せであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試薬処理によって少なくとも一つのシトシン塩基がウラシル又はシトシンと異なる塩基に変換されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記メチル化検出は、PCR、メチル化特異PCR(methylation specific PCR)、リアルタイムメチル化特異PCR(real time methylation specific PCR)、メチル化DNA特異的結合タンパク質を用いたPCR、メチル化DNA特異的結合抗体を用いたPCR、定量PCR、遺伝子チップ、シーケンシング、シーケンシングバイシンセシス及びシーケンシングバイライゲーションからなる群から選ばれる方法によって行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記プローブに結合して蛍光を示す物質を検出して、SDC2遺伝子のメチル化を検出することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
メチル化されたSDC2遺伝子と非メチル化されたSDC2遺伝子を互いに異なるように修飾させる一つ以上の試薬;
前記メチル化されたSDC2遺伝子を特異的に増幅する配列番号31及び32の配列を含むプライマー対;及び
前記プライマーによって特異的に増幅されたメチル化されたSDC2遺伝子に相補的にハイブリダイゼーション可能な配列番号33の配列を含むプローブを含む、SDC2遺伝子のメチル化検出用組成物。
【請求項7】
前記試薬は、ビスルファイト、ヒドロゲンスルファイト、ジスルファイト、又はこれらの組合せであることを特徴とする、請求項
6に記載の組成物。
【請求項8】
前記試薬処理によって少なくとも一つのシトシン塩基がウラシル又はシトシンと異なる塩基に変換されることを特徴とする、請求項
6に記載の組成物。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか一項に記載の組成物を含む、メチル化DNA検出用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SDC2遺伝子のメチル化を検出する方法、SDC2遺伝子のメチル化検出のための組成物及びこれを含むキットに関し、より詳細には、メチル化されたSDC2遺伝子を特異的に増幅するプライマー及びプライマーによって特異的に増幅されたメチル化されたSDC2遺伝子に相補的にハイブリダイゼーション可能なプローブを用いて、SDC2遺伝子のメチル化を検出する方法、SDC2遺伝子のメチル化検出のための組成物及びこれを含むキットに関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳類細胞のゲノムDNAには、A、C、G、Tの他に5番目の塩基が存在し、これはシトシン環の5番目の炭素にメチル基が付いた5-メチルシトシン(5-mC)である。5-mCは、常に、CGジヌクレオチドのCにのみ付き(5’-mCG-3’)、このようなCGを通常、CpGと表示する。CpGのCは、殆どがメチル基が付いてメチル化されている。このようなCpGのメチル化は、Aluや転移因子(transposon)のようにゲノム内に反復される塩基配列(repetitive sequence)が発現しないように抑制し、哺乳類細胞において遺伝子外変化が最も頻繁に現れる部位である。このようなCpGの5-mCは自ずから脱アミノ化(deamination)してTに変わり、これによって、哺乳類ゲノム内のCpGは正常に現れるべき頻度(1/4×1/4=6.25%)よりも遥かに低い1%の頻度しか示さない。
【0003】
CpG中に例外的に密集して現れるものがあり、これをCpG部位(CpG島)という。CpG部位は、長さが0.2~3kbであり、C及びG塩基の分布百分率が50%を超え、CpGの分布百分率が3.75%以上と高く集中して現れる部位のことを指す。CpG部位は、全体の人体遺伝体に約45,000個が現れ、特に、遺伝子の発現を調節するプロモーター部位に集中して現れる。実際に人体遺伝子の約半分を占める重要遺伝子(housekeeping genes)のプロモーターにはCpG部位が現れる(Cross,S.et al.,Curr.Opin.Gene Develop.,5:309,1995)。非正常のDNAメチル化は、主に該当の遺伝子の5’発現調節部位(5’ regulatory region)で起き、該当の遺伝子の発現を減少させることが知られている。
【0004】
一方、正常人の体細胞(somatic cell)では、それらの重要遺伝子プロモーター部位のCpG島がメチル化されていないが、発生中に発現しないように刻印された(imprinted)遺伝子と非活性化(inactivation)されたX染色体上の遺伝子はメチル化されている。
【0005】
発癌過程中ではプロモーターCpG島にメチル化が現れ、その該当の遺伝子の発現に障害が起きる。特に、細胞周期やアポトーシスを調節し、DNAを復旧し、細胞の付着と細胞間相互協力作用に関与し、浸潤と転移を抑制する腫瘍抑制遺伝子のプロモーターCpG島にメチル化が発生する場合、これは、コーディング配列の突然変異と同様に、それらの遺伝子の発現と機能を遮断し、結果として癌の発生と進行が促進される。その他にも、老化によってCpG島に部分的にメチル化が現れることもある。
【0006】
腫瘍関連遺伝子のプロモーターメチル化が癌の重要な指標であり、したがって、これは癌の診断と早期診断、発癌危険の予測、癌の予後予測、治療後追跡調査、抗癌療法に対する反応予測など、多方面に利用可能である。実際に、近年、血液や客談、唾液、大便、小便などで腫瘍関連遺伝子のプロモーターメチル化を調べて、各種の癌診療に使用しようとする試みが活発に行われている(Ahlquist,D.A.et al.,Gastroenterol.,119:1219,2000)。
【0007】
このような技術的背景下で、本出願の発明者らは、メチル化されたSDC2遺伝子を特異的に増幅するプライマー及びプライマーによって特異的に増幅されたメチル化されたSDC2遺伝子に相補的にハイブリダイゼーション可能なプローブを用いて、SDC2遺伝子のメチル化を高い検出限度と正確度で検出できることを確認し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、プライマー及びプローブを用いてSDC2遺伝子のメチル化を検出する方法を提供することにある。
【0009】
本発明の目的は、プライマー及びプローブを含むSDC2遺伝子のメチル化検出用組成物を提供することにある。
【0010】
本発明の目的は、上記組成物を含むSDC2遺伝子のメチル化検出用キットを提供することにある。
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、次の段階を含む、SDC2遺伝子のメチル化を検出する方法を提供する:(a)メチル化されたSDC2遺伝子と非メチル化されたSDC2遺伝子を互いに異なるように修飾させる一つ以上の試薬でサンプルを処理する段階;(b)メチル化されたSDC2遺伝子を特異的に増幅するプライマーを処理する段階;及び、(c)前記(b)段階でプライマーによって特異的に増幅されたメチル化されたSDC2遺伝子に相補的にハイブリダイゼーション可能なプローブを処理する段階。
【0012】
本発明は、また、メチル化されたSDC2遺伝子と非メチル化されたSDC2遺伝子を互いに異なるように修飾させる一つ以上の試薬;前記メチル化されたSDC2遺伝子を特異的に増幅するプライマー;及び、前記プライマーによって特異的に増幅されたメチル化されたSDC2遺伝子に相補的にハイブリダイゼーション可能なプローブを含む、SDC2遺伝子のメチル化検出用組成物を提供する。
【0013】
本発明は、また、前記組成物を含むSDC2遺伝子のメチル化検出用キットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】糞便DNAを対象に多重プライマーセットのメチル化検証結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
特に断りのない限り、本明細書で使われる技術的及び科学的用語はいずれも、本発明の属する技術の分野における熟練した専門家によって通常理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書における命名法は、本技術分野でよく知られており、通常用いられるものである。
【0016】
本出願の発明者らは、SDC2遺伝子のCpG島全体を代弁できるメチル化特異的検出プライマー及びプローブを設計し、メチル化特異的増幅により、メチル化DNAでのみメチル化が特異的に検出され得ることを確認した。また、メチル化特異的検出プライマー及びプローブを用いて大腸癌組織、大便、血液においてSDC2遺伝子の大腸癌診断能力を評価した。その結果、大腸癌診断に対する敏感度及び特異度が非常に高く、大腸癌診断に有用性が高いことを確認した。
【0017】
したがって、本発明は、一観点において、次の段階を含む、SDC2遺伝子のメチル化を検出する方法に関する:(a)メチル化されたSDC2遺伝子と非メチル化されたSDC2遺伝子を互いに異なるように修飾させる一つ以上の試薬でサンプルを処理する段階;(b)メチル化されたSDC2遺伝子を特異的に増幅するプライマーを処理する段階;及び、(c)前記(b)段階でプライマーによって特異的に増幅されたメチル化されたSDC2遺伝子に相補的にハイブリダイゼーション可能なプローブを処理する段階。
【0018】
本発明において、段階(a)は、メチル化されたDNA部位と非メチル化されたDNA部位を互いに異なるように修飾させる一つ以上の試薬で、ターゲットDNAが含まれているサンプルを処理する段階である。
【0019】
本発明における“メチル化”とは、シトシン(cytocine)塩基環の5番目の炭素にメチル基が付いて5-メチルシトシン(5-mC)に修飾されたことを意味し、5-メチルシトシンは、常に、CGジヌクレオチドのCにのみ付き(5’-mCG-3’)、このようなCGを通常、CpGと表示する。このようなCpGのメチル化は、Aluや転移因子(transposon)のようにゲノム内に反復される塩基配列(repetitive sequence)が発現しないように抑制し、哺乳類細胞において遺伝子外変化が最も頻繁に現れる部位である。このようなCpGの5-mCは自ずから脱アミノ化してTに変わり、これによって、哺乳類ゲノム内のCpGは、正常に現れるべき頻度(1/4×1/4=6.25%)よりも遥かに低い1%の頻度しか示さない。
【0020】
CpG中に例外的に密集して現れるものがあり、これをCpG島という。CpG島は、長さが0.2~3kbであり、C及びG塩基の分布百分率が50%を超え、CpGの分布百分率が3.75%以上と高く集中して現れる部位のことを指す。CpG島は、全体の人体遺伝体に約45,000個が現れ、特に、遺伝子の発現を調節するプロモーター部位に集中して現れる。実際に人体遺伝子の約半分を占める重要遺伝子(housekeeping genes)のプロモーターにはCpG島が現れる。
【0021】
検体から分離された核酸は、検体の生物学的試料によって得られる。腸癌や腸癌の進行段階を診断したい場合は、スクレイピングや生検により腸組職から核酸を分離しなければならない。このような試料は、当該分野で知られた種々の医学的過程によって得ることができる。
【0022】
前記検体から得られたサンプルの核酸のメチル化程度は、腸組職の細胞成長性異常がない検体の同じ核酸部分と比較して測定する。ハイパーメチル化は、一つ以上の核酸でメチル化された対立遺伝子が存在することを意味する。腸組職の細胞成長性異常がない検体は、同じ核酸を検査した時、メチル化対立遺伝子が現れない。
【0023】
“正常”細胞は、異常な細胞形態又は細胞学的性質の変化を示さない細胞を意味する。“腫瘍”細胞は、癌細胞を意味し、“非腫瘍”細胞は、病症組織の一部であるが、腫瘍部位ではないと判断される細胞を意味する。
【0024】
本発明によれば、検体から分離された一つ以上の核酸のメチル化段階を決定して、検体の腸組織の細胞成長性異常を早期診断することができる。前記一つ以上の核酸のメチル化段階は、腸組職の細胞成長性異常を持たない検体から分離された一つ以上の核酸のメチル化状態と比較することを特徴とし得る。核酸は、CpG島のようなCpG含有核酸であることが好ましい。
【0025】
本発明によれば、検体から分離された一つ以上の核酸のメチル化を決定することを含む検体の腸組織の細胞成長性異常素質を診断できる。前記一つ以上の核酸のメチル化段階は、腸組職の細胞成長性異常に対する素質を持っていない検体から分離された一つ以上の核酸のメチル化状態と比較することを特徴とし得る。
【0026】
“素質”は、前記細胞成長性異常にかかりやすい性質を意味する。素質を持つ検体は、まだ細胞成長性異常を持っていないが、細胞成長性異常が存在したり或いは存在する傾向が増加している検体のことを指す。
【0027】
前記ターゲットDNAのうちCpGメチル化の存在が疾病の指標であり得、例えば、ターゲットDNAのプロモーター、5’非番駅領域及びイントロンのいずれか一部位のCpGメチル化が測定できる。
【0028】
CpG含有遺伝子は、通常、DNAである。しかし、本発明の方法は、例えば、DNA、又はDNAとmRNAを含むRNAを含有する試料を適用することができ、ここで、DNA又はRNAは、一本鎖又は二本鎖であり得、又はDNA-RNAハイブリッドを含有した試料であることを特徴とし得る。
【0029】
核酸混合物も使用することができる。本発明で使われる“多重”は、一種の遺伝子内に検出される特異的な核酸配列部位が複数個である場合も、一つのチューブ(単一反応器)内に複数のターゲットDNAを含む場合をも含む。検出される特異的な核酸配列は、大きい分子の分画であり得、最初から特異配列が全体核酸配列を構成する分離された分子形態で存在し得る。前記核酸配列は、純粋な形態で存在する核酸である必要はなく、核酸は、全体ヒトDNAが含まれているもののように、複雑な混合物内の少ない分画であってもよい。
【0030】
具体的に、本発明は、単一反応器内のサンプルのうち、複数のターゲットDNAのメチル化を検出するためのものであり、前記サンプルは、複数の多重ターゲットDNAを含むことができ、ターゲットDNAは、対照群遺伝子の他に、非正常にメチル化されて発現が抑制される場合、癌の発生又は進行に影響を与える遺伝子であればいずれも利用可能である。
【0031】
本発明において、前記サンプルは、人体から由来したものであることを特徴とし、例えば、前記サンプルは、大腸癌組織、細胞、大便、小便、血液、血清又はプラズマを使用することができる。
【0032】
前記メチル化されたDNAと非メチル化されたDNAを互いに異なるように修飾させる一つ以上の試薬は、非メチル化されたシトシン塩基とメチル化されたシトシン塩基とを区別できるものであれば、いずれも使用可能であり、例えば、ビスルファイト、ヒドロゲンスルファイト、ジスルファイト、及びこれらの組合せであり得、これに限定されるものではない。具体的に、前記試薬によって、メチル化されたシトシン塩基は変換されなく、非メチル化されたシトシン塩基はウラシル又はシトシン以外の塩基に変換されてよい。
【0033】
本発明において、段階(b)は、メチル化されたSDC2遺伝子を特異的に増幅するプライマーを処理する段階である。
【0034】
前記プライマーは、一つ以上のCpGジヌクレオチドを含むことができる。例えば、PCRのために正方向及び逆方向プライマーを対にして同時に使用することができる。前記正方向プライマーは、例えば、配列番号1、4、7、10、13、16、19、22、25、28、31、34~1140からなる群から選ばれる配列を含むことができる。前記逆方向プライマーは、例えば、配列番号2、5、8、11、14、17、20、23、26、29、32、1141~1159からなる群から選ばれる配列を含むことができる。メチル化されたSDC2遺伝子を特異的に増幅するプライマーに対するプライマー対は、実施例1の表1及び実施例4の表5に具体的に記載されている。
【0035】
本発明において、段階(c)は、プライマーによって特異的に増幅されたメチル化されたSDC2遺伝子に相補的にハイブリダイゼーション可能なプローブを処理する段階である。
【0036】
ハイブリダイゼーション反応において、厳格な特定レベルを達成するために用いられる条件は、ハイブリダイゼーションされる核酸の性質によって様々である。例えば、ハイブリダイゼーションされる核酸部位の長さ、相同性程度、ヌクレオチド配列組成(例えば、GC/AT組成比)及び核酸タイプ(例えば、RNA、DNA)などがハイブリダイゼーション条件を選択する上で考慮される。更なる考慮条件は、核酸が、例えばフィルターなどに固定化されているか否かである。
【0037】
非常に厳格に進行される条件の例を挙げると、次の通りである:室温の2X SSC/0.1% SDS(ハイブリダイゼーション条件);室温の0.2X SSC/0.1% SDS(厳格性の低い条件);42℃での0.2X SSC/0.1% SDS(普通の厳格性を有する条件);68℃で0.1X SSC(高い厳格性を有する条件)。洗浄過程は、これら条件のいずれか一条件を用いて行うことができ、例えば、高い厳格性を有する条件、又は前記条件をそれぞれ使用することができ、前記記載の順にそれぞれ10~15分ずつ、前記記載の条件を全部又は一部反復して行うことができる。しかし、上述したように、最適条件は、含まれた特別なハイブリダイゼーション反応によって様々であり、実験から決定できる。一般に、重要なプローブのハイブリダイゼーションには、高い厳格性を有する条件が用いられる。
【0038】
前記プローブは、例えば、一つ以上のCpGジヌクレオチドを含むことができる。具体的に、前記プローブは、配列番号3、6、9、12、15、18、21、24、27、30、33、1160~1178からなる群から選ばれる配列を含むことができる。
【0039】
場合によって、プローブは検出可能に標識され、例えば、放射線同位元素、蛍光化合物、バイオ発光化合物、化学発光化合物、金属キレート又は酵素で標識されてよい。前記のようなプローブを適切に標識することは、当該分野で広く知られた技術であり、通常の方法で行うことができる。
【0040】
前記増幅産物の量は、蛍光信号によって検出できる。プローブの結合した増幅産物の二重螺旋DNAに結合して蛍光を示す試薬(intercalator)を使用するインターカレーティング(Intercalating)法、5’末端は蛍光物質、3’末端は消光子(quencher)で標識されたオリゴヌクレオチドを使用する方法などがある。
【0041】
本願発明に係る増幅は、リアルタイム定量増幅、例えば、リアルタイム重合酵素連鎖反応(Real-Time PCR)によって行われてよく、リアルタイム重合酵素連鎖反応においてPCR増幅産物の量は蛍光信号によって検出されてよい。リアルタイム重合酵素連鎖反応が進みながら増加するポリヌクレオチド量によって蛍光信号の強度が増加し、増幅サイクル回数による蛍光信号強度を示す増幅プロファイル(amplification profile)曲線が得られる。
【0042】
増幅プロファイル曲線は、一般に、実質的なポリヌクレオチド量が反映されていない背景の蛍光信号が現れるベースライン(baseline)領域、ポリヌクレオチド生成物量の増加による蛍光信号増加が現れる指数的領域(exponential region)、及びPCR反応が飽和状態となって蛍光信号強度の増加が現れない停滞状態領域(plateau region)に分けられる。
【0043】
通常、ベースライン領域から指数的領域に移る地点、すなわち、PCR増幅産物量が蛍光で検出可能な量に到達した時の蛍光信号強度を臨界値(threshold)といい、増幅プロファイル曲線で臨界値に対応する増幅サイクル回数を、臨界サイクル(threshold cycle:Ct)値という。
【0044】
前記Ct値を測定し、標準物質に対するCt(threshold cycle)値に基づいて濃度が決定された標準曲線を分析し、増幅された遺伝子の濃度を確認することによって、メチル化特異的敏感度及び/又は特異度が決定できる。
【0045】
一実施例において、前記メチル化検出はPCR、メチル化特異PCR(methylation specific PCR)、リアルタイムメチル化特異PCR(real time methylation specific PCR)、メチル化DNA特異的結合タンパク質を用いたPCR、メチル化DNA特異的結合抗体を用いたPCR、定量PCR、遺伝子チップ、シーケンシング、シーケンシングバイシンセシス(Sequencing by synthesis)及びシーケンシングバイライゲーション(Sequencing by ligation)からなる群から選ばれる方法によって行われてよい。
【0046】
(1)メチル化特異PCR(methylation specific PCR):前記メチル化特異PCRで検出する場合、ビスルフェートを処理すれば、5’-CpG’-3部位のシトシンがメチル化された場合にはそのままシトシンが残っており、非メチル化された場合には、ウラシルに変わる。したがって、ビスルファイト処理後に変換された塩基配列を対象に、5’-CpG-3’塩基配列が存在する部位に該当するプライマーを作製することができる。プライマーを用いてPCRをすれば、メチル化された場合には、メチル化された塩基配列に該当するプライマーを使用したものからPCR産物が作られ、アガロースゲル電気泳動方法でメチル化の有無が確認できる。ここで、前記メチル化検出プローブは、TaqMan、分子標識(Molecular Beacon)、自己報告(self-reporting)機能を有するか或いはエネルギー転移標識機能を有するプローブであり得、これに制限されるものではない。
【0047】
(2)リアルタイムメチル化特異PCR(real time methylation specific PCR):前記リアルタイムメチル化特異PCRは、メチル化特異PCR方法をリアルタイム測定方法に転換したものであって、ゲノムDNAにビスルファイトを処理した後、メチル化された場合に該当するPCRプライマーをデザインし、これらのプライマーを用いてリアルタイムPCRを行う。このとき、増幅された塩基配列と相補的なTaqManプローブを用いて検出する方法とサイバーグリーン(Sybr green)を用いて検出する2つの方法がある。したがって、リアルタイムメチル化特異PCRは、メチル化されたDNAだけを選択的に定量分析できる。このとき、in vitroメチル化DNAサンプルを用いて標準曲線を作成し、標準化のために、塩基配列内に5’-CpG-3’配列のない遺伝子を陰性対照群として共に増幅してメチル化程度を定量分析することができる。
【0048】
(3)メチル化DNA特異的結合タンパク質を用いたPCR又は定量PCR及びDNAチップ:前記メチル化DNA特異的結合タンパク質を用いたPCR又はDNAチップ方法は、メチル化DNAにのみ特異的に結合するタンパク質をDNAと混合すると、メチル化DNAにのみ特異的にタンパク質が結合するので、メチル化DNAのみを選択的に分離することができる。
【0049】
また、定量PCR方法でもメチル化の有無が測定でき、メチル化DNA特異的結合タンパク質で分離したメチル化DNAは、蛍光染料で標識し、相補的なプローブが集積されたDNAチップにハイブリダイゼーションさせることによって、メチル化の有無が測定できる。
【0050】
(4)差別的メチル化の検出-ビスルファイトシーケンシング方法:メチル化CpGを含有した核酸を検出する他の方法は、核酸を含有した試料を、非メチル化シトシンを修飾させる製剤と接触させる段階、及びCpG-特異的オリゴヌクレオチドプライマーを使用し、試料のCpG含有核酸を増幅させる段階を含む。ここで、前記オリゴヌクレオチドプライマーは、修飾されたメチル化及び非メチル化核酸とを区別してメチル化核酸を検出することを特徴とし得る。前記増幅段階は選択的であり、好ましいものではあるが、必須のものではない。前記方法は、修飾された(例えば、化学的に修飾された)メチル化及び非メチル化DNAを区別するPCR反応に依存する。
【0051】
(5)ビスルファイトシーケンシング方法:メチル化CpGを含有した核酸を検出する他の方法は、核酸を含有した試料を、非メチル化シトシンを修飾させる製剤と接触させる段階、及びメチル化非依存的(Methylation independent)オリゴヌクレオチドプライマーを使用して試料のCpG含有核酸を増幅させる段階を含む。ここで、前記オリゴヌクレオチドプライマーは、修飾されたメチル化及び非メチル化核酸を区別せずに核酸を増幅することを特徴とし得る。前記増幅された産物をシーケンシングプライマーを用いてサンガー(Sanger)方法でシーケンシングするか、次世代シーケンシング(next generation sequencing)方法として、メチル化核酸の検出のためのビスルファイト(bisulfite)シーケンシングと関連付いて記載されている。
【0052】
(6)ここで、次世代シーケンシング方法は、シーケンシングバイシンセシスとシーケンシングバイライゲーション方法とすることを特徴とし得る。この方法の特徴は、細菌のクローン(bacterial clone)を作る代わりに、単一DNA断片を空間的に分離してin situで増幅し(clonal amplification)、シーケンシングをするということにある。このとき、数十万個の断片を同時に読み出すことから、マッシブパラレルシーケンシング(massively parallel sequencing)方法と呼ばれることもある。
【0053】
基本的には、シーケンシングバイシンセシス(Sequencing by synthesis)方法であり、モノ或いはジヌクレオチドを順次に付けながらシグナルを得る方法を使用するが、パイロシーケンシング、イオントレント(ion torrent)、Solexa方法がそれに該当する。
【0054】
シーケンシングバイシンセシスに基づくNGS装備としては、ロシュ(Roche)社の454プラットホーム、イルミナ(Illumina)社のHiSeqプラットホーム、ライフテクノロジー(Life Technology)社のIon PGMプラットホーム、最後にパシフィックバイオサイエンス(Pacific BioSciences)社のPacBioプラットホームがある。454とIon PGMは、クローナル増幅(clonal amplification)方法としてemersion PCRを使用し、HiSeqは、ブリッジ増幅(Bridge amplification)を使用する。シーケンシングバイシンセシス方法は、1個のヌクレオチドを順次に付けながらDNAを合成させて行く時に発生するリン酸(phosphate)、水素イオン、或いはあらかじめ付けておいた蛍光を検出して配列を読んで行く。配列を検出する方法において、454は、リン酸を用いるパイロシーケンシング(pyroseqeuncing)方法を使用し、Ion PGMは水素イオン検出を利用する。HiSeqとPacBioは、蛍光を検出して配列を読み取る。
【0055】
シーケンシングバイライゲーション(Sequencing by Ligation)は、DNAリガーゼを利用するシーケンシング技術であり、DNA塩基配列に存在する特定位置のヌクレオチドを確認する技術である。大部分のシーケンシング技術が重合酵素を使用するのと違い、重合酵素を使用しなく、DNAリガーゼがミスマッチ配列をライゲーションしない特徴を利用する。SOLiDシステムがそれに該当する。この技法では、間隔を置いて2個ずつ塩基を読むが、プライマーリセット(primer reset)を用いて独立して5回を反復するので、最終的には各塩基を2回ずつ重複して読み、正確度を高める。
【0056】
シーケンシングバイライゲーション(Sequencing by Ligation)の場合、16個の組合せからなるジヌクレオチドプライマーセットのうち、該当の塩基配列に対応するジヌクレオチドプライマーが順次にライゲーションされ、このライゲーションの組合せを最終的に分析することで、当該DNAの塩基配列が完成する。
【0057】
ここで、次世代シーケンシング方法は、シーケンシングバイシンセシス(Sequencing by synthesis)又はシーケンシングバイライゲーション(Sequencing by Ligation)方法とすることを特徴とし得る。ここで、メチル化DNA特異的結合タンパク質はMBD2btに制限されなく、抗体は5’-メチル-シトシン(5’-methyl-cytosine)抗体であり、これに制限されない。
【0058】
本発明で用いられるプライマーと関連して、前記段階(a)によって試薬、例えば、ビスルファイトを処理すれば、5’-CpG’-3部位のシトシンがメチル化された場合にはそのままシトシンとして残っており、非メチル化された場合にはウラシルに変わる。したがって、試薬、例えば、ビスルファイト処理後に変換された塩基配列を対象に、5’-CpG-3’塩基配列が存在する部位に該当するプライマーを作製することができる。
【0059】
前記プライマーは、SDC2遺伝子のうち、増幅されるローカスの各鎖と“概略的に”相補性を有するように作製されてよい。これは、重合反応を行う条件でプライマーが対応する核酸鎖とハイブリダイゼーションされるのに十分な相補性を有することを意味する。
【0060】
本発明は、他の観点において、メチル化されたSDC2遺伝子と非メチル化されたSDC2遺伝子を互いに異なるように修飾させる一つ以上の試薬;前記メチル化されたSDC2遺伝子を特異的に増幅するプライマー;及び、前記プライマーによって特異的に増幅されたメチル化されたSDC2遺伝子に相補的にハイブリダイゼーション可能なプローブを含むSDC2遺伝子のメチル化検出用組成物に関する。
【0061】
本発明に係る組成物に含まれる構成は、前述した構成と重なるので、これについては同様の説明が適用される。
【0062】
本発明は、さらに他の観点において、前記組成物を含むターゲットDNAのメチル化検出用キットに関する。
【0063】
一実施例において、前記キットは、サンプルを入れる区切られたキャリア手段、試薬を含む容器、SDC2遺伝子5’-CpG-3’を増幅できるプライマーを含む容器、及び前記増幅産物を検出するためのプローブを含む容器を含むことができる。
【0064】
前記キャリア手段は、瓶、チューブのような一つ以上の容器を収容するに適し、各容器は、本発明の方法に用いられる独立した構成要素を含有する。本発明の明細書において、当該分野における通常の知識を有する者は、容器中の必要な製剤を容易に分配できる。
【0065】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は、単に本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるものと解釈されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0066】
実施例1:大腸癌組織でSDC2遺伝子の大腸癌診断能力評価
SDC2遺伝子の大腸癌診断能力を評価するために、SDC2遺伝子のCpG島全体を代弁できる11セットのメチル化特異的検出プライマー及びプローブを設計し(表1)、メチル化特異的リアルタイムPCR(qMSP)を行った。そのために、20人の大腸癌患者手術組織からの癌組織とこれに連接する正常組織を使用し、これらからゲノムDNAを分離(QIAmp DNA mini kit,Qiagen)し、ゲノムDNA(2.0ug)にEZ DNA methylation-Gold kit(Zymo Research,USA)を用いてビスルフェートを処理した後、滅菌蒸留水10μlで溶出してメチル化特異的リアルタイムPCR(qMSP;Methylation-Specific real time PCR)に用いた。ビスルファイトで処理されたゲノムDNAを鋳型とし、表1で設計したメチル化特異的プライマー及びプローブを使用してqMSPを行った。qMSPは、Rotor-Gene Q PCR装備(Qiagen)を用いた。合計20μlPCR反応溶液(鋳型DNA、20ng;5X AptaTaq DNA Master(Roche Diagnostics)、4μl;PCRプライマー、2μl(2pmole/μl)、TaqManプローブ、2μl(2pmole/μl);D.W.10μl)を準備し、PCR条件は95℃、5分処理した後、95℃で15秒、適切なアニーリング温度(58℃~61℃)で1分として合計40回行った。PCR産物の増幅の有無は、CT(cycle threshold)値を測定して確認した。メチル化及び非メチル化対照DNAは、EpiTect PCR対照DNAセット(Qiagen,cat.no.59695)を使用し、サンプルDNAと共に試験した。内部対照遺伝子としてはCOL2A1遺伝子(Kristensen et al.,2008)を使用した。各サンプルのメチル化程度は、CT(Cycle threshold)値で測定した。
【0067】
大腸癌組織とこれに連接した正常組織のCT値を用いてROC曲線分析(MedCalcプログラム、ベルギー)から、各プライマー及びプローブセットの大腸癌診断に対する敏感度及び特異度を計算した(表2)。
【0068】
【0069】
大腸癌組織及びこれに連接した正常組織DNAを用いたSDC2遺伝子メチル化検証の結果、腸癌診断に対する敏感度は、80%(16/20)~95.0%(19/20)、そして特異度は85.0%(3/20)~95.0%(1/20)と優れていることを確認した。したがって、SDC2遺伝子メチル化を用いて大腸癌診断の有用性が高いことを確認した。
【0070】
【0071】
実施例2:大便(Stool)DNAを用いたSDC2遺伝子の大腸癌診断能力評価
SDC2遺伝子の大腸癌診断能力を評価するために、実施例1で記載されたSDC2遺伝子のメチル化特異的検出プライマー及びプローブ(表1)を用いてメチル化特異的リアルタイムPCR(qMSP)を行った。そのために、20人の大腸癌患者(ヨンセ医療院セブランス病院)及び20人の正常人(ヨンセ医療院セブランス病院チェックアップ)の大便(stool)DNAを使用し、これらからゲノムDNAを分離(Stool DNA mini kit,Qiagen)し、前記ゲノムDNA(2.0ug)にEZ DNA methylation-Gold kit(Zymo Research,USA)を用いてビスルフェートを処理した後、滅菌蒸留水10μlで溶出してメチル化特異的リアルタイムPCR(qMSP;Methylation-Specific real time PCR)に用いた。qMSPは、実施例1に記載の方法で行った。
【0072】
大腸癌患者と正常人の大便DNAからCT値を用いてROC曲線分析(MedCalcプログラム、ベルギー)から各プライマー及びプローブセットの大腸癌診断に対する敏感度及び特異度を計算した(表3)。
【0073】
【0074】
大腸癌患者(20人)及び正常人(20人)の大便DNAを用いたSDC2遺伝子メチル化検証の結果、大腸癌診断に対する敏感度は80%(16/20)~90.0%(18/20)そして特異度は85.0%(3/20)~90.0%(2/20)と優れていることを確認した。したがって、SDC2遺伝子メチル化を用いて大便DNAで大腸癌診断の有用性が高いことを確認した。
【0075】
実施例3:血液でSDC2遺伝子の大腸癌診断能力評価
SDC2遺伝子の大腸癌診断能力を評価するために、実施例1に記載されたSDC2遺伝子のメチル化特異的検出プライマー及びプローブ(表1)を用いてメチル化特異的リアルタイムPCR(qMSP)を行った。そのために、10人の大腸癌患者(チュンナム大学校病院)及び10人の正常人(Innovative Research、米国)の血清各1mLからDNAを分離(Dynabead,Thermo Fisher)し、前記DNAにEZ DNA methylation-Gold kit(Zymo Research,USA)を用いてビスルファイトを処理した後、滅菌蒸留水10μlで溶出してメチル化特異的リアルタイムPCR(qMSP;Methylation-Specific real time PCR)に用いた。qMSPは、実施例1に記載の方法で行った。
【0076】
大腸癌患者と正常人血清DNAを使用してqMMSP結果から得たCT値を用いてROC曲線分析(MedCalcプログラム、ベルギー)から、各プライマー及びプローブセットの大腸癌診断に対する敏感度及び特異度を計算した(表4)。
【0077】
【0078】
大腸癌患者(10人)及び正常人(10人)の血液DNAを用いたSDC2遺伝子メチル化検証の結果、大腸癌診断に対する敏感度は70%(14/20)~90.0%(18/20)そして特異度は85.0%(3/20)~90.0%(2/20)と優れていることを確認した。したがって、SDC2遺伝子メチル化を用いて血液DNAで大腸癌診断の有用性が高いことを確認した。
【0079】
実施例4:大便(Stool)DNAを用いたSDC2遺伝子の大腸癌診断能力評価
SDC2遺伝子の大腸癌診断能力を評価するために、実施例1で記載されたSDC2遺伝子のメチル化特異的検出プライマー及びプローブ(表1)を用いてメチル化特異的リアルタイムPCR(qMSP)を行った。そのために、20人の大腸癌患者(ヨンセ医療院セブランス病院)及び20人の正常人(ヨンセ医療院セブランス病院チェックアップ)の大便(stool)DNAを使用し、これらからゲノムDNAを分離(Stool DNA mini kit,Qiagen)し、前記ゲノムDNA(2.0ug)にEZ DNA methylation-Gold kit(Zymo Research,USA)を用いてビスルファイトを処理した後、滅菌蒸留水10μlで溶出してメチル化特異的リアルタイムPCR(qMSP;Methylation-Specific real time PCR)に用いた。qMSPは、実施例1に記載の方法で行った。
【0080】
大腸癌患者と正常人の大便DNAからC
T値を用いて各プライマー及びプローブセットの大腸癌診断に対する陽性頻度を計算した(
図1)。
【0081】
図1に見られるように、全てのプライマーセットに対して大腸内視鏡正常人ではメチル化陰性を示した(特異度:100%)。大腸癌患者では、韓国登録特許第1142131号に記載された配列番号27(TAGAAATTAATAAGTGAGAGGGCGT)及び配列番号28(GACTCAAACTCGAAAACTCGAA)SDC2プライマーセットに比べて、新規設計したプライマーのメチル化陽性頻度が高く現れた(
図1で、SDC2項目が韓国登録特許第1142131号のプライマーに対するメチル化陽性頻度)。
【0082】
各プライマー及びプローブセットの大腸癌患者におけるメチル化陽性頻度は、表5に示した。
【0083】
【0084】
その結果、新規設計された全てのプライマー及びプローブセットに対して大腸癌患者において高いメチル化陽性頻度を示すことを確認した。
【0085】
実施例5:多重メチル化特異的プライマー及びプローブ設計を用いたSDC2遺伝子のメチル化検出評価
SDC2遺伝子の大腸癌診断能力を評価するために、SDC2遺伝子のCpG島全体を代弁できる1,107セットのメチル化特異的検出プライマー及びプローブを設計し(表6)、メチル化特異的リアルタイムPCR(qMSP)を行った。そのために、ビスルファイトで変換させたヒトメチル化DNA及び非メチル化DNA(EpiTect PCR control DNA セット,Qiagen,Cat.no.59695)を用いて各プライマー及びプローブのSDC2遺伝子メチル化検出能力を評価した。前記DNA 20ngを滅菌蒸留水10μlに溶かした後、メチル化特異的リアルタイムPCR(qMSP;Methylation-Specific real time PCR)に用いた。qMSPは、Rotor-Gene Q PCR装備(Qiagen)を用いた。合計20μlのPCR反応溶液(鋳型DNA、20ng;5X AptaTaq DNA Master(Roche Diagnostics)、4μl;PCRプライマー、2μl(2pmole/μl)、TaqManプローブ、2μl(2pmole/μl);D.W.10μl)を準備し、PCR条件は95℃、5分処理した後、95℃で15秒、適切なアニーリング温度(58℃~61℃)で1分として合計40回行った。PCR産物の増幅の有無は、CT(cycle threshold)値を測定して確認した。内部対照遺伝子としてはCOL2A1遺伝子(Kristensen et al.,2008)を使用した。各サンプルのメチル化程度は、CT(Cycle t)値を用いてROC曲線分析(MedCalcプログラム、ベルギー)から各プライマー及びプローブセットの大腸癌診断に対する敏感度及び特異度を計算した。
【0086】
【0087】
各プライマー及びプローブのSDC2遺伝子のメチル化を測定した結果、非メチル化DNAではメチル化が一切検出されななく、メチル化DNAでのみメチル化が検出されることを確認し(表6)、これらのプライマー及びプローブがSDC2メチル化検出に適していることを確認した。
【0088】
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、腸癌特異的マーカー遺伝子であるSDC2遺伝子のCpG島のメチル化を高い検出敏感度で検出することにより、腸癌診断のための情報を与える方法を提供する効果がある。腸癌を初期形質転換段階で診断できるので、早期診断が可能であり、通常の方法に比べて正確で早期に腸癌が診断でき、有用である。
【0090】
以上、本発明内容の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的記述は単に好ましい実施様態であるだけで、これによって本発明の範囲が制限されるものでない点は明らかであろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付する請求項及びそれらの等価物によって定義されるといえよう。
【配列表】