(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】電極
(51)【国際特許分類】
H01M 4/133 20100101AFI20240304BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240304BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240304BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240304BHJP
H01G 11/28 20130101ALI20240304BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240304BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/36 C
H01M4/62 Z
H01M4/587
H01G11/28
H01M4/48
(21)【出願番号】P 2022039100
(22)【出願日】2022-03-14
(62)【分割の表示】P 2019181471の分割
【原出願日】2015-03-06
【審査請求日】2022-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2014050374
(32)【優先日】2014-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2014216071
(32)【優先日】2014-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】池沼 達也
(72)【発明者】
【氏名】栗城 和貴
(72)【発明者】
【氏名】中川 亜衣
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-232403(JP,A)
【文献】特開2005-078800(JP,A)
【文献】特開2011-233497(JP,A)
【文献】特開2008-041465(JP,A)
【文献】特開2009-123465(JP,A)
【文献】国際公開第2013/151047(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/069197(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/133
H01M 4/36
H01M 4/62
H01M 4/587
H01G 11/28
H01M 4/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、
前記集電体上の活物質層と、を有し、
前記活物質層は、複数の粒状の活物質と、導電助剤と、バインダーと、膜と、を有し、
前記複数の粒状の活物質は、黒鉛を有し、
前記膜は、酸素と、シリコン
からなり、
前記膜のヤング率は、70GPa以下であり、
前記導電助剤は、グラフェンを有し、
前記グラフェンに含まれる酸素の割合が、3atomic%以上15atomic%以下であり、
前記複数の粒状の活物質の少なくとも一は、その表面において、前記複数の粒状の活物質の他の少なくとも一と接触する第1の領域、前記導電助剤と接触する第2の領域、前記バインダーと接触する第3の領域の少なくとも一を有し、
前記第1乃至第3の領域を除いた前記複数の粒状の活物質の表面は、その一部又は全部が、前記膜と接触していることを特徴とする電極。
【請求項2】
請求項
1において、
前記バインダーは、水溶性の高分子を有することを特徴とする電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、電極、蓄電装置、及び電子機器、並びに電極の作製方法に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の
一態様の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明
の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・
オブ・マター)に関するものである。そのため、より具体的に本明細書で開示する本発明
の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、照明装
置、蓄電装置、記憶装置、撮像装置、それらの駆動方法、または、それらの製造方法、を
一例として挙げることができる。
【背景技術】
【0003】
近年、リチウムイオン二次電池(LIB)等の非水系二次電池、リチウムイオンキャパシ
タ(LIC)、空気電池等、種々の蓄電装置の開発が盛んに行われている。特に高出力、
高エネルギー密度であるリチウムイオン二次電池は、携帯電話やスマートフォン、ノート
型コンピュータ等の携帯情報端末、携帯音楽プレーヤ、デジタルカメラ等の電子機器、あ
るいは医療機器、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、またはプラグインハ
イブリッド車(PHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車など、半導体産業の発展
と併せて急速にその需要が拡大し、充電可能なエネルギーの供給源として現代の情報化社
会に不可欠なものとなっている。
【0004】
リチウムイオン二次電池やリチウムイオンキャパシタ等の蓄電装置の負極は、集電体(以
下、負極集電体という。)と、該負極集電体の表面に設けられた活物質層(以下、負極活
物質層という。)と、を少なくとも有する構造体である。また負極活物質層は、キャリア
となるリチウムイオンの吸蔵および放出が可能な、炭素またはシリコン等の活物質(以下
、負極活物質という。)を含む。
【0005】
現在リチウムイオン二次電池の負極として一般的な黒鉛系炭素材料を用いた負極は、例え
ば、負極活物質である黒鉛(グラファイト)と、導電助剤としてのアセチレンブラック(
AB)と、結着剤(バインダー)としての樹脂であるPVdFとを混練して形成されたス
ラリーを、集電体上に塗布し乾燥させて製造されている。
【0006】
このようなリチウムイオン二次電池やリチウムイオンキャパシタの負極は、電極電位が非
常に低く、還元力が強い。よって、有機溶媒を用いた電解液は、還元分解されてしまう。
電解液が電気分解されない電位の幅を電位窓(potential window)とい
うが、本来、負極は、その電極電位が電解液の電位窓内にある必要がある。しかし、リチ
ウムイオン二次電池やリチウムイオンキャパシタの負極電位は、そのほとんどが、全ての
電解液の電位窓を越えているため、電解液は還元分解され、その分解物として、負極表面
に不動態被膜(固体電解質被膜ともいう。)が形成される。そして、この不動態被膜がさ
らなる還元分解を抑制するため、電解液の電位窓を越えた低い電極電位を用いて、負極へ
のリチウムイオンの挿入が可能となる(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】小久見善八 編著、「リチウム二次電池」、オーム社、平成20年3月20日第1版第1刷発行、p.116-118
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
不動態被膜は、電解液の還元的分解反応によって生成する還元分解生成物、または還元分
解生成物と電解液との反応性生成物である。また、例えば、負極活物質が黒鉛の場合、黒
鉛は層状構造であるため、黒鉛の端面(エッジ面)における各層の間、及び黒鉛の表面(
ベイサル面)に不動態被膜が形成される。キャリアイオンが黒鉛に挿入され、黒鉛の体積
が膨張すると、不動態被膜の一部が剥離してしまい、黒鉛が露出されてしまう。
【0009】
また、不動態被膜の生成は、速度論的に電解液の分解を抑えているため、充放電の繰り返
しにより不動態被膜の厚膜化が徐々に進行してしまう。このため、不動態被膜が厚膜化さ
れると、負極活物質の体積膨張の影響を受けやすく、不動態被膜の一部が剥離しやすい。
【0010】
不動態被膜の剥離により露出された負極活物質の表面においては、不動態被膜が再生成さ
れてしまう。
【0011】
従来の負極の不動態被膜は、充電時の電池反応によって形成されているとされており、不
動態被膜の形成に用いられた電荷量は放電することができない。このため、不可逆容量と
してリチウムイオン二次電池の初回の放電容量を減少させていた。また、充放電の繰り返
しによる不動態被膜の剥離、及び不動態被膜の再生成により、放電容量がさらに低減して
しまう。
【0012】
電気化学的な電解液の分解の進行に伴い、充放電を担うリチウムの量は、電解液の分解反
応に用いられた電子の量に対応して減少する。このため、充放電の繰り返しによる不動態
被膜の再生成により、リチウムイオン二次電池はやがて容量を喪失する。また、電気化学
的な反応は、高温下である程その進行が早まる。従って、高温下で充放電を繰り返すほど
リチウムイオン二次電池の容量の減少が大きくなる。
【0013】
以上の課題は、リチウムイオン二次電池に限らずリチウムイオンキャパシタについても同
様のことがいえる。
【0014】
そこで、本発明の一態様は、リチウムイオン二次電池またはリチウムイオンキャパシタに
おいて、電極における電解液等の電気化学的な分解を最小限に抑えることを課題とするも
のである。
【0015】
また、本発明の一態様は、リチウムイオン二次電池またはリチウムイオンキャパシタの充
放電の繰り返しにおいて、充放電の副反応として生じる電解液等の分解反応を最小限に抑
えることで、リチウムイオン二次電池またはリチウムイオンキャパシタの長期的なサイク
ル特性を向上させることを課題とするものである。
【0016】
また、本発明の一態様は、リチウムイオン二次電池またはリチウムイオンキャパシタにお
いて、電解液等の分解反応を最小限に抑えることができる電極を提供することを課題とす
るものである。
【0017】
また、本発明の一態様は、電極における電解液等の分解反応を最小限に抑えることができ
る蓄電装置を提供することを課題とするものである。
【0018】
また、本発明の一態様は、リチウムイオン二次電池またはリチウムイオンキャパシタにお
いて、電解液等の分解反応を最小限に抑えることができる電極の作製方法を提供すること
を課題とするものである。
【0019】
または、本発明の一態様は、新規な電極、または、新規な蓄電装置などを提供することを
課題とするものである。なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものでは
ない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はない。
また、本発明の一態様では、上記課題の少なくとも一を解決するものとする。なお、これ
ら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり
、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である
。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一態様は、集電体と、集電体上の活物質層と、を有し、活物質層は、複数の粒状
の活物質と、導電助剤と、バインダーと、酸化ケイ素を主成分とする膜と、を有し、前記
複数の粒状の活物質の少なくとも一は、その表面において、前記複数の粒状の活物質の他
の一と接触する第1の領域、導電助剤と接触する第2の領域、バインダーと接触する第3
の領域の少なくとも一を有し、第1乃至第3領域を除いた前記複数の粒状の活物質の前記
一の表面は、その一部又は全部が、酸化ケイ素を主成分とする膜と接触することを特徴と
する電極である。
【0021】
また、上記構成において、複数の粒状の活物質は、黒鉛を有することが好ましい。また、
上記構成において、導電助剤は、針状の形状を有することが好ましい。また、上記構成に
おいて、バインダーは、水溶性の高分子を有することが好ましく、水溶性の高分子として
、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロ
ピルセルロース、ジアセチルセルロース、スチレンモノマー、ブタジエンモノマーのいず
れか一又は複数を有することが好ましい。
【0022】
また、本発明の一態様は、上記に記載の電極と、第2の電極と、を有し、上記に記載の電
極は、正極または負極の一方として動作させることができる機能を有し、第2の電極は、
正極または負極の他方として動作させることができる機能を有する蓄電装置である。
【0023】
また、本発明の一態様は、上記に記載の蓄電装置と、表示装置と、を有することを特徴と
する電子機器である。
【0024】
また、本発明の一態様は、複数の粒状の活物質、有機ケイ素化合物、及び溶媒を有する分
散液を用意する工程と、スプレードライヤーを用いて、分散液を噴射して乾燥させて粉末
を形成する工程と、粉末に加熱処理を行う工程と、加熱処理後、粉末、導電助剤、バイン
ダー、及び溶媒を混練してスラリーを形成する工程と、集電体上にスラリーを塗布し、乾
燥させて活物質層を形成する工程と、を有し、加熱処理を行う工程により、複数の粒状の
活物質に付着した有機ケイ素化合物を加水分解及び縮合反応させ、複数の粒状の活物質の
各々において、その表面の一部又は全部に、酸化ケイ素を主成分とする膜を形成する電極
の作製方法である。
【0025】
また、本発明の一態様は、複数の粒状の活物質、有機ケイ素化合物、導電助剤、及び溶媒
を有する分散液を用意する工程と、スプレードライヤーを用いて、分散液を噴射して乾燥
させて粉末を形成する工程と、粉末に加熱処理を行う工程と、加熱処理後、粉末、バイン
ダー、及び溶媒を混練してスラリーを形成する工程と、集電体上にスラリーを塗布し、乾
燥させて活物質層を形成する工程と、を有し、加熱処理を行う工程により、複数の粒状の
活物質の表面及び導電助剤の表面に付着した有機ケイ素化合物を加水分解及び縮合反応さ
せ、複数の粒状の活物質のうち、少なくとも一の粒状の活物質の表面の一部又は全部に、
酸化ケイ素を主成分とする膜を形成し、複数の粒状の活物質のうち、少なくとも他の一の
粒状の活物質と導電助剤とが互いに接触する領域を有する状態で、その表面の一部又は全
部に、酸化ケイ素を主成分とする膜を形成する電極の作製方法である。
【0026】
また、上記構成において、複数の粒状の活物質は、黒鉛を有することが好ましい。また、
上記構成において、有機ケイ素化合物は、エチルシリケート、エチルポリシリケート、メ
チルポリシリケート、プロピルポリシリケート、ブチルポリシリケート、テトラメトキシ
シラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、又はテトラプロポキシシランで
あることが好ましい。また、上記構成において、導電助剤は、炭素繊維を有することが好
ましい。また、上記構成において、バインダーは、水溶性の高分子を有することが好まし
く、水溶性の高分子として、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセ
ルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、スチレンモノマー、
ブタジエンモノマーのいずれか一又は複数を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様により、リチウムイオン二次電池またはリチウムイオンキャパシタ等の蓄
電装置において、電極における電解液等の電気化学的な分解を最小限に抑えることができ
る。
【0028】
また、本発明の一態様により、リチウムイオン二次電池またはリチウムイオンキャパシタ
等の蓄電装置の充放電の繰り返しにおいて、充放電の副反応として生じる電解液等の分解
反応を最小限に抑えることで、不動態被膜の再生成を抑制することができる。その結果、
リチウムイオン二次電池またはリチウムイオンキャパシタの長期的なサイクル特性を向上
させることができる。
【0029】
また、本発明の一態様により、活物質の表面の一部又は全部に、被膜を効率よく形成する
ことができる。
【0030】
また、本発明の一態様により、活物質と導電助剤とが接触する領域を有する状態において
、その表面の一部又は全部に、被膜を効率よく形成することができる。また、本発明の一
態様により、新規な電極、または、新規な蓄電装置などを提供することができる。なお、
これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は
、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細
書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求
項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図2】スプレードライヤーおよび電極の作製フローを説明する図。
【
図6】コイン型リチウムイオン二次電池を説明する図。
【
図7】円筒型リチウムイオン二次電池を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異な
る態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及
び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、
以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0033】
なお、本明細書で説明する各図において、膜や層、基板などの厚さや領域の大きさ等の各
構成要素の大きさは、個々に説明の明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、
必ずしも各構成要素はその大きさに限定されず、また各構成要素間での相対的な大きさに
限定されない。
【0034】
なお、本明細書等において、第1、第2などとして付される序数詞は、便宜上用いるもの
であって工程の順番や積層の順番などを示すものではない。そのため、例えば、「第1の
」を「第2の」又は「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明
細書等に記載されている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は
一致しない場合がある。
【0035】
なお、本明細書等で説明する本発明の構成において、同一部分又は同様の機能を有する部
分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また
、同様の機能を有する部分を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さ
ない場合がある。
【0036】
なお、本明細書等において、蓄電装置の正極及び負極の双方を併せて電極とよぶことがあ
るが、この場合、電極は正極及び負極のうち少なくともいずれか一方を示すものとする。
【0037】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る電極について、
図1を用いて説明する。
【0038】
図1(A)及び(B)は、本発明の一態様に係る電極を示した図である。
図1(A)は、
電極101の断面図である。
図1(A)に、集電体102の両面又は片面(図では、片面
の場合を示す。)に、活物質層103が形成されている模式図を示す。
【0039】
集電体102には、蓄電装置内で顕著な化学変化を引き起こさずに高い導電性を示す材料
であれば、特別な制限はない。例えば、ステンレス、金、白金、亜鉛、鉄、ニッケル、銅
、アルミニウム、チタン、タンタル、マンガン等の金属、及びこれらの合金、焼結した炭
素などを用いることができる。また、銅またはステンレス鋼を炭素、ニッケル、チタン等
で被覆してもよい。また、シリコン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性
を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることができる。また、集電体1
02は、箔状、板状(シート状)、網状、円柱状、コイル状、パンチングメタル状、エキ
スパンドメタル状、多孔質状および不織布を包括する様々な形態等の形状を適宜用いるこ
とができる。さらに、活物質層との密着性を上げるために、集電体102は、表面に細か
い凹凸を有していてもよい。また、集電体102は、厚みが5μm以上30μm以下のも
のを用いるとよい。
【0040】
活物質層103は、活物質を含む。活物質とは、キャリアであるイオンの挿入・脱離に関
わる物質のみを指すが、本明細書等では、本来「活物質」である材料に加えて、導電助剤
やバインダーなどを含めたものも、活物質層と呼ぶ。
【0041】
活物質に負極活物質を用いる場合は、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反
応を行うことが可能な材料、例えば炭素系材料等を用いることができる。
【0042】
また炭素系材料としては、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(
ハードカーボン)、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック等がある。
【0043】
黒鉛としては、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ
系人造黒鉛等の人造黒鉛や、球状化天然黒鉛等の天然黒鉛がある。
【0044】
黒鉛はリチウムイオンが黒鉛に挿入されたとき(リチウム-黒鉛層間化合物の生成時)に
リチウム金属と同程度に卑な電位を示す(0.1以上0.3V以下vs.Li/Li+)
。これにより、リチウムイオン二次電池は高い作動電圧を示すことができる。さらに、黒
鉛は、単位体積当たりの容量が比較的高い、体積膨張が小さい、安価である、リチウム金
属に比べて安全性が高い等の利点を有するため、好ましい。
【0045】
負極活物質として、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可
能な材料も用いることができる。キャリアイオンがリチウムイオンである場合、例えば、
Al、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Ag、Au、Zn、Cd、In、Ga等の
うち少なくとも一つを含む材料がある。このような元素は炭素に対して容量が大きく、特
にシリコンは理論容量が4200mAh/gと飛躍的に高い。このため、負極活物質にシ
リコンを用いることが好ましい。リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を
行うことが可能な材料としては、例えば、SiO、Mg2Si、Mg2Ge、SnO、S
nO2、Mg2Sn、SnS2、V2Sn3、FeSn2、CoSn2、Ni3Sn2、
Cu6Sn5、Ag3Sn、Ag3Sb、Ni2MnSb、CeSb3、LaSn3、L
a3Co2Sn7、CoSb3、InSb、SbSn等がある。なお、SiOとは、ケイ
素リッチの部分を含むケイ素酸化物の粉末を指しており、SiOy(2>y>0)とも表
記できる。例えばSiOは、Si2O3、Si3O4、またはSi2Oから選ばれた単数
または複数を含む材料や、Siの粉末と二酸化ケイ素SiO2の混合物も含む。また、S
iOは他の元素(炭素、窒素、鉄、アルミニウム、銅、チタン、カルシウム、マンガンな
ど)を含む場合もある。即ち、単結晶Si、アモルファスSi、多結晶Si、Si2O3
、Si3O4、Si2O、SiO2から選ばれる複数を含む材料を指しており、SiOは
有色材料である。SiOではないSiOx(Xは2以上)であれば無色透明、或いは白色
であり、区別することができる。ただし、二次電池の材料としてSiOを用いて二次電池
を作製した後、充放電を繰り返すなどによって、SiOが酸化した場合には、SiO2に
変質する場合もある。
【0046】
また、負極活物質として、二酸化チタン、リチウムチタン酸化物、リチウム-黒鉛層間化
合物、五酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化モリブデン等の酸化物を用いることができ
る。
【0047】
また、負極活物質として、リチウムと遷移金属の複窒化物である、Li3N型構造をもつ
Li3-xMxN(M=Co、Ni、Cu)を用いることができる。例えば、Li2.6
Co0.4N3は、大きな充放電容量(900mAh/g、1890mAh/cm3)を
示し、好ましい。
【0048】
リチウムと遷移金属の複窒化物を用いると、負極活物質中にリチウムイオンを含むため、
正極活物質としてリチウムイオンを含まないV2O5、Cr3O8等の材料と組み合わせ
ることができ好ましい。なお、正極活物質にリチウムイオンを含む材料を用いる場合でも
、あらかじめ正極活物質に含まれるリチウムイオンを脱離させることで、負極活物質とし
てリチウムと遷移金属の複窒化物を用いることができる。
【0049】
また、コンバージョン反応が生じる材料を負極活物質として用いることもできる。例えば
、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化鉄等の、リチウムと合金化反応を行わない遷移金属
酸化物を負極活物質に用いてもよい。コンバージョン反応が生じる材料としては、さらに
、Fe2O3、CuO、Cu2O、RuO2、Cr2O3等の酸化物、CoS0.89、
NiS、CuS等の硫化物、Zn3N2、Cu3N、Ge3N4等の窒化物、NiP2、
FeP2、CoP3等のリン化物、FeF3、BiF3等のフッ化物でも起こる。
【0050】
上述した炭素材料は、それぞれ負極の活物質としても、導電助剤としても機能させること
ができる。よって、活物質層103として、上述の炭素材料を一又は複数含んでいてもよ
い。また、上述の炭素材料は、正極の導電助剤としても機能させることができる。ただし
、導電助剤は、比表面積が大きい炭素材料を用いることが好ましい。導電助剤として、比
表面積が大きい炭素材料を用いることにより、活物質同士の接触点や、接触面積を増加さ
せることができる。
【0051】
また、電極101が正極の場合は、正極活物質として、リチウムイオンの挿入および脱離
が可能な材料を用いることができ、例えば、オリビン型構造、層状岩塩型構造、またはス
ピネル型構造、NASICON型結晶構造を有する材料等を用いることができる。
【0052】
例えば、正極活物質として、LiFeO2、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O
4、V2O5、Cr2O5、MnO2等の化合物を材料として用いることができる。
【0053】
または、オリビン型構造のリチウム含有複合リン酸塩(一般式LiMPO4(Mは、Fe
(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上))を用いることができ
る。一般式LiMPO4の代表例としては、LiFePO4、LiNiPO4、LiCo
PO4、LiMnPO4、LiFeaNibPO4、LiFeaCobPO4、LiFe
aMnbPO4、LiNiaCobPO4、LiNiaMnbPO4(a+bは1以下、
0<a<1、0<b<1)、LiFecNidCoePO4、LiFecNidMneP
O4、LiNicCodMnePO4(c+d+eは1以下、0<c<1、0<d<1、
0<e<1)、LiFefNigCohMniPO4(f+g+h+iは1以下、0<f
<1、0<g<1、0<h<1、0<i<1)等のリチウム金属リン酸化合物が挙げられ
る。
【0054】
または、一般式Li(2-j)MSiO4(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(
II)、Ni(II)の一以上、0≦j≦2)等のリチウム含有複合ケイ酸塩を用いるこ
とができる。一般式Li(2-j)MSiO4の代表例としては、Li(2-j)FeS
iO4、Li(2-j)NiSiO4、Li(2-j)CoSiO4、Li(2-j)M
nSiO4、Li(2-j)FekNilSiO4、Li(2-j)FekColSiO
4、Li(2-j)FekMnlSiO4、Li(2-j)NikColSiO4、Li
(2-j)NikMnlSiO4(k+lは1以下、0<k<1、0<l<1)、Li(
2-j)FemNinCoqSiO4、Li(2-j)FemNinMnqSiO4、L
i(2-j)NimConMnqSiO4(m+n+qは1以下、0<m<1、0<n<
1、0<q<1)、Li(2-j)FerNisCotMnuSiO4(r+s+t+u
は1以下、0<r<1、0<s<1、0<t<1、0<u<1)等のリチウムシリケート
化合物が挙げられる。
【0055】
また、正極活物質として、AxM2(XO4)3(A=Li、Na、Mg、M=Fe、
Mn、Ti、V、Nb、Al、X=S、P、Mo、W、As、Si)の一般式で表される
NASICON型化合物を用いることができる。ナシコン型化合物としては、Fe2(M
nO4)3、Fe2(SO4)3、Li3Fe2(PO4)3等が挙げられる。また、正
極活物質として、Li2MPO4F、Li2MP2O7、Li5MO4(M=Fe、Mn
)の一般式で表される化合物、NaF3、FeF3等のペロブスカイト型フッ化物、Ti
S2、MoS2等の金属カルコゲナイド(硫化物、セレン化物、テルル化物)、LiMV
O4等の逆スピネル型の結晶構造を有する材料、バナジウム酸化物系(V2O5、V6O
13、LiV3O8等)、マンガン酸化物、有機硫黄化合物等の材料を用いることができ
る。
【0056】
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属
イオンの場合、正極活物質として、上記リチウム化合物及びリチウム含有複合リン酸塩及
びリチウム含有複合ケイ酸塩において、リチウムを、アルカリ金属(例えば、ナトリウム
やカリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、
ベリリウム、マグネシウム等)などのキャリアで置換した化合物を用いてもよい。
【0057】
正極活物質の粒径は、例えば5nm以上100μm以下が好ましい。
【0058】
また、例えば正極活物質としてオリビン型構造のリチウム含有複合リン酸塩を用いた場合
には、リチウムの拡散経路が一次元であるため、リチウム拡散が遅い。よって充放電の速
度を高めるためには活物質の粒径は、例えば好ましくは5nm以上1μm以下とするとよ
い。または、活物質の比表面積は、例えば好ましくは10m2/g以上50m2/g以下
とするとよい。
【0059】
オリビン構造を有する正極活物質では、例えば層状岩塩型の結晶構造を有する活物質など
と比較して充放電に伴う構造変化がきわめて少なく、結晶構造が安定であるため、過充電
などの動作に対しても安定であり、正極活物質として用いた場合に安全性の高い蓄電装置
を実現することができる。
【0060】
また、活物質層103は導電助剤を有してもよい。例えば、天然黒鉛、メソカーボンマイ
クロビーズ等の人造黒鉛、グラフェンなどの炭素材料、炭素繊維などを用いることができ
る。また、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金などの金属粉末や金属繊維、導電性セラ
ミックス材料等を用いることができる。
【0061】
また、導電助剤として、薄片状や、針状、繊維状の形状を有する材料を用いることができ
る。薄片状のグラフェンは、高い導電性を有するという優れた電気特性、及び柔軟性並び
に機械的強度という優れた物理特性を有する。そのため、グラフェンを導電助剤として用
いることにより、活物質同士の接触点や、接触面積を増大させることができる。
【0062】
なお、本明細書において、グラフェンは、単層のグラフェン、又は2層以上100層以下
の多層グラフェンを含む。単層グラフェンとは、π結合を有する1原子層の炭素分子のシ
ートのことをいう。また、酸化グラフェンとは、上記グラフェンが酸化された化合物のこ
とをいう。なお、酸化グラフェンを還元してグラフェンを形成する場合、酸化グラフェン
に含まれる酸素は全て脱離されずに、一部の酸素はグラフェンに残存する。グラフェンに
酸素が含まれる場合、酸素の割合は、XPS(X線光電子分光法)で測定した場合に全体
の2atomic%以上20atomic%以下、好ましくは3atomic%以上15
atomic%以下である。
【0063】
炭素繊維としては、例えばメソフェーズピッチ系炭素繊維、等方性ピッチ系炭素繊維等の
炭素繊維を用いることができる。また炭素繊維として、カーボンナノファイバーやカーボ
ンナノチューブなどを用いることができる。また、炭素繊維として、気相成長炭素繊維(
VGCF:Vapor-Grown Carbon Fiber)を用いることができる
。VGCFの代表値は、繊維径150nm、繊維長10μm以上20μm以下、真密度2
g/cm3、比表面積13m2/gである。なお、繊維径とは、SEMで観察して、二次
元的に撮影された画像から繊維軸に対して垂直方向の断面を切断面とし、この切断面に外
接する真円の径のことを指す。また、真密度とは、物質自身が占める体積だけを密度算定
用の体積とする密度のことを指す。また、比表面積とは、対象物について単位質量あたり
の表面積または単位体積あたりの表面積のことである。
【0064】
針状の形状を有するVGCFは、高い導電性を有するという優れた電気特性、及び機械的
強度という優れた物理特性を有する。そのため、VGCFを導電助剤として用いることに
より、活物質同士の接触点や、接触面積を増大させることができる。
【0065】
また、導電助剤として粒状の材料を用いることもできる。粒状の材料としては、代表的に
は直径3nm以上500nm以下のアセチレンブラックや、ケッチェンブラックなどのカ
ーボンブラックを用いることができる。
【0066】
薄片状や、針状、繊維状の導電助剤は、活物質どうしをつなぐ役目を果たし、電池の劣化
を抑制する。また、導電助剤は、活物質層103の形状を維持する構造体、或いは緩衝材
としても機能する。活物質層103の形状を維持する構造体、或いは緩衝材としても機能
するということは、活物質の膨張、収縮が繰り返される場合や、二次電池を曲げた時など
で、集電体と活物質との間で剥がれが生じにくくなる。また、上記材料に代えてアセチレ
ンブラックや、ケッチェンブラックなどのカーボンブラックを用いてもよいが、VGCF
を用いると、活物質層103の形状を維持するための強度が大きくできるため、好ましい
。活物質層103の形状を維持するための強度が大きくできると、二次電池の曲げなどの
変形による劣化を防止することができる。
【0067】
活物質層103は、バインダーを有してもよい。また、活物質層103は複数の種類のバ
インダーを有してもよい。活物質層103が有することができるバインダーについて、以
下に説明する。
【0068】
バインダーとしては、水溶性の高分子を用いることができる。水溶性の高分子としては、
例えば多糖類などを用いることができる。多糖類としては、カルボキシメチルセルロース
(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよ
びジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体や、澱粉、などを用い
ることができる。
【0069】
ここで水溶性の高分子は水に溶けるため、電極作製時にスラリーを形成する際に、スラリ
ーの粘度を調整する役割や、粘度を安定化させる役割がある。また、他の材料、ここでは
活物質や他の材料、例えばバインダーや導電助剤などがスラリー中に分散しやすくする役
割もある。スラリーは最終的に塗布した後、水分を乾燥させて電極となる。なお、ここで
水に溶けるとは、例えば水中において、高分子が有する官能基がイオン化することを指す
。
【0070】
また、ここで水溶性の高分子は、必ずしも水のみに溶けるとは限らず、水以外の溶媒に溶
解する高分子を用いてもよく、例えば他の極性溶媒を用いて高分子を溶解させ、活物質や
他の材料を分散させてスラリーを形成すればよい。また、水に溶けずに他の溶媒にのみ溶
ける高分子を用いてもよい。
【0071】
また、バインダーとしては、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン・イソプレ
ン・スチレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プ
ロピレン・ジエン共重合体などのゴム材料を用いることが好ましい。これらのゴム材料は
、前述の水溶性高分子と併用して用いると、さらに好ましい。これらのゴム材料は、ゴム
弾性を有し、伸び縮みしやすいため、充放電に伴う活物質の膨張収縮や、電極の曲げなど
に伴うストレスに強く、信頼性の高い電極を得ることができる一方で、疎水基を有し水に
溶けにくい場合がある。このような場合には、水溶液中で粒子が水に溶解しない状態で分
散し、スラリーを電極塗布のために適した粘度まで高めることが難しいことがある。この
際に、粘度調整機能の高い水溶性高分子、例えば多糖類を用いると、溶液の粘度を適度に
高める効果が期待できるうえに、ゴム材料と互いに均一に分散し、均一性の高い良好な電
極、例えば電極膜厚や電極抵抗の均一性が高い電極を得ることができる。
【0072】
また、バインダーとしては、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メ
チル(PMMA)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ
エチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、
ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、イソブチレン、ポリエチ
レンテレフタレート、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニト
リル(PAN)、等の材料を用いてもよい。
【0073】
バインダーはそれぞれ単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい
。
【0074】
例えば接着力や弾力に優れるものと、粘度調整効果の大きいものを合わせて使用してもよ
い。粘度調整効果の大きいものとしては、例えば水溶性高分子を用いるとよい。また、粘
度調整効果に特に優れた水溶性高分子としては、前述の多糖類、例えばカルボキシメチル
セルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセル
ロースおよびジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体や、澱粉を
用いることができる。
【0075】
なお、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体は、例えばカルボキシメチル
セルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩などの塩とすることにより溶解度が上がり、
粘度調整剤としての効果を発揮しやすくなる。溶解度が高くなることにより電極のスラリ
ーを形成する際に活物質や他の構成要素との分散性を高めることもできる。本明細書にお
いては、電極のバインダーとして使用するセルロースおよびセルロース誘導体としては、
それらの塩も含むものとする。
【0076】
水溶性高分子は水に溶解することにより粘度を安定化させ、活物質や第2のバインダー、
例えばスチレンブタジエンゴムなどを、水溶液中に安定して分散させることができる。ま
た、官能基を有するために活物質表面に安定に吸着しやすいことが期待される。また、例
えばカルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体は、例えば水酸基やカルボキシ
ル基などの官能基を有する材料が多く、官能基を有するために高分子同士が相互作用し、
活物質表面を広く覆って存在することが期待される。
【0077】
図1(B)に、活物質層103の断面を拡大した模式図を示す。
図1(B)では、活物質
111として粒状の活物質を示し、導電助剤114として針状の導電性材料を示している
。粒状の活物質111の粒径は特に限定されず、活物質111が負極活物質である場合に
は、粒径が例えば5μm以上50μm以下の範囲にある負極活物質を用いることができる
。また、活物質111が正極に用いる正極活物質であって、正極活物質が2次粒子である
場合には、当該2次粒子を構成する1次粒子の粒径が5nm以上100μm以下の範囲で
ある正極活物質を用いることができる。
【0078】
粒状の活物質111は、その表面において、他の粒状の活物質と接触する領域を有する。
また、粒状の活物質111は、その表面において、導電助剤114と接触する領域を有す
る。また、粒状の活物質111は、その表面において、バインダー113と接触する領域
を有する。これらの領域を除いた活物質111の表面は、その一部または全部が、被膜1
12によって覆われている。被膜112は、上記領域を除いた活物質111の表面の全て
を覆うことが好ましいが、活物質111の表面の一部に設けられているだけでもよい。ま
た、複数の活物質111どうしは、互いに接触する領域を有する状態、導電助剤114を
介して隣接している状態、導電助剤114及び被膜112を介して隣接している状態で、
バインダー113によって結着されている。また、活物質層103には、複数の活物質1
11によって形成された空隙115が存在することもある。
【0079】
なお、本明細書における被膜との記載は、対象物の表面の全てを覆う場合に限定されず、
対象物の表面の一部を覆う場合も含むものとする。
【0080】
被膜112は、キャリアイオンを通過させることができることが好ましい。したがって、
当該被膜112は、キャリアイオンを通過させることができる材料によって構成され、キ
ャリアイオンを通過させることができる程度に膜厚が薄いことが好ましい。
【0081】
被膜112としては、金属酸化物を主成分とする膜、酸化ケイ素を主成分とする膜、又は
リチウム塩を主成分とする膜を用いることができる。当該金属酸化物を主成分とする膜と
しては、ニオブ、チタン、バナジウム、タンタル、タングステン、ジルコニウム、モリブ
デン、ハフニウム、クロム、アルミニウムのいずれか一の酸化膜、又はこれら元素のいず
れか一又は複数とリチウムとを含む酸化膜を用いることができる。また、リチウム塩とし
て、炭酸リチウム等を用いることができる。なお、主成分とは、EDX(energy
dispersive X-ray spectrometry)分析、XPS(X-r
ay photoelectron spectroscopy)、又はToF-SIM
S(Time-of-flight secondary ion mass spec
trometry)により検出される元素をいう。
【0082】
例えば、活物質として黒鉛を用いた場合、酸化ケイ素を主成分とする被膜は、黒鉛を構成
する炭素原子が、酸素原子を介してシリコン原子と結合されており、シリコン原子は、他
のシリコン原子と酸素原子を介して結合された網状構造となることが好ましい。
【0083】
また、被膜112の膜厚は、例えば、1nm以上1μm以下、より好ましくは、1nm以
上100nm以下とすることで、活物質111と電解液との間の分解反応を抑制すること
ができる。
【0084】
なお、活物質111として、充放電時に体積変化を伴う活物質を用いる場合には、被膜1
12は活物質111の体積変化による形状の変化に追随することが好ましい。このため、
被膜112のヤング率は、70GPa以下であることが好ましい。活物質111の表面を
覆う領域を有する被膜112は、活物質111の体積変化による形状の変化に追随するこ
とができるため、被膜112が、活物質111から剥離してしまうことを抑制することが
できる。
【0085】
粒状の活物質111は、その表面において、他の粒状の活物質と接触する領域、導電助剤
114と接触する領域、バインダー113と接触する領域のうち少なくとも一つを有し、
これらの領域を除いた活物質の表面は、その一部または全部が被膜112によって覆われ
ていることにより、蓄電装置の充電時において、活物質111の表面と電解液との間への
電子の供給を妨げることができるため、電解液の還元分解を抑制することができる。これ
により、電解液の還元分解によって、活物質111に不動態被膜が形成されることを抑制
することができる。よって、蓄電装置の初期容量の減少を抑制することができる。
【0086】
また、活物質111の表面を覆う被膜112は、活物質111の体積変化による形状の変
化に追随することができるため、被膜112が、活物質111から剥離してしまうことを
防止することができる。さらに、充放電の繰り返しによって、不動態被膜が厚膜化するこ
とが抑制されることにより、活物質の体積膨張の影響を受けににくくなり、不動態被膜が
活物質から剥離してしまうことを抑制することができる。
【0087】
複数の活物質111の電子の伝導経路について説明する。
図1(B)に示すように、粒状
の活物質111が、他の粒状の活物質と接触する領域、導電助剤114を介して他の粒状
の活物質と隣接する領域のうち、少なくとも一つを有することにより、電子が伝導する経
路が形成される。また、活物質111が被膜112と接触している領域においても、被膜
112の膜厚が薄い部分であれば、導電助剤114を介して電子が伝導する経路が形成さ
れる。このように、電子の伝導経路が形成された状態において、粒状の活物質111の表
面の一部又は全部が被膜112によって覆われていることにより、蓄電装置の充電時にお
いて、活物質111の表面と電解液との間への電子の供給を妨げることができるため、活
物質111と電解液との間の分解反応を抑制することができる。これにより、電極の抵抗
の上昇を抑制し、蓄電装置の容量を増加させることができる。
【0088】
以上のように、本発明の一態様に係る電極は、活物質111の表面を覆う領域を有する被
膜112によって、電極における電解液等の電気化学的な分解を最小限に抑えることがで
きる。
【0089】
また、当該電極を、リチウムイオン二次電池またはリチウムイオンキャパシタなどの蓄電
装置に用いることにより、充放電の繰り返しにおいて、充放電の副反応として生じる電解
液の分解反応を最小限に抑えることで、長期的なリチウムイオン二次電池またはリチウム
イオンキャパシタ等の蓄電装置のサイクル特性を向上させることができる。
【0090】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0091】
(実施の形態2)
本実施の形態では、電極の作製方法の一例について、
図2を参照して説明する。本実施の
形態では、スプレードライヤーを用いて、活物質の表面に被膜を形成する。
【0092】
スプレードライヤーとは、熱風受熱連続乾燥装置の中において原液を瞬時に乾燥粒子にす
ることが可能な装置である。スプレードライヤーの概略を
図2(A)に示す。原液は、二
流体ノズル121から微細な液滴の形で噴射され、単位体積当たりの表面積を増大しなが
ら、加熱手段122から送られてきた熱風に連続的に接触し、スプレーシリンダー123
内で瞬間的に乾燥し、固形粒子となる。そして、サイクロン124によって粒子の分離が
行われ、容器125において微粉末が回収される。二流体ノズル121にはチューブ(図
示なし)が接続されており、原液は、ポンプによって二流体ノズル121へ送り出される
。チューブには、シリコーン製等のものを用いればよい。また、126は微粒子を除去す
る出口フィルター、127は気体の流れを作りだすアスピレーターである。なお、
図2(
A)中の矢印は、乾燥気体の流れを示す。
【0093】
(作製方法1)
電極の作製フローを
図2(B)に示す。
【0094】
まず、活物質、被膜形成材、溶媒、及び触媒を混合して、分散液を用意する(ステップ1
31)。活物質は、実施の形態1にて説明した材料を用いることができる。本実施の形態
では、活物質として黒鉛を用いる場合について説明する。なお、本明細書等において分散
液とは、溶媒に、活物質や被膜形成材等の粒子が一様に存在している状態のものを指す。
【0095】
被膜形成材は、有機金属化合物又は有機ケイ素化合物を用いることができる。有機金属化
合物としては、有機リチウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ガリウム化合物等を
用いることができる。また、有機ケイ素化合物としては、エチルシリケート、エチルポリ
シリケート、メチルポリシリケート、プロピルポリシリケート、ブチルポリシリケート、
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、又はテトラプロ
ポキシシラン等を用いることができる。また、これらの有機ケイ素化合物を部分加水分解
して縮合したオリゴマーを用いてもよい。また、有機ケイ酸リチウム化合物、有機アルミ
ン酸リチウム化合物などのリチウム化合物を含む有機複合金属化合物を用いることもでき
る。
【0096】
有機ケイ素化合物を用いる場合、有機ケイ素化合物に含まれる酸化ケイ素が、黒鉛に対し
て、例えば、1wt%(重量パーセント)となるように、有機ケイ素化合物の量を決定す
る。つまり、当該数値は、被膜の状態における酸化ケイ素の黒鉛に対する割合ではなく、
分散液作製時における、仕込み量としての、黒鉛に対する酸化ケイ素の重量比を示す。
【0097】
本実施の形態では、有機ケイ素化合物として、平均5量体のエチルシリケートを用いる場
合について説明する。
【0098】
また、溶媒としては、エタノールを用いることができ、触媒としては、塩酸を用いること
ができる。また、添加物として水を加えてもよい。
【0099】
次に、
図2(A)で示したスプレードライヤーに分散液を投入し、二流体ノズル121か
ら分散液を噴射して、スプレーシリンダー123内で瞬時に乾燥させる(ステップ132
)。噴射された微細な液滴は、粒状の活物質の表面の一部又は全部が、有機ケイ素化合物
で覆われた状態となっており、加熱手段122により加熱された気体に接触することによ
り、瞬時に乾燥する。例えば、乾燥は、加熱手段122により加熱された窒素の温度を1
00℃として行う。
【0100】
こうして得た微粉末に対し、加熱処理を行う(ステップ133)。例えば、ホットプレー
トを用いて、温度70℃で行う。これにより、活物質に付着した有機ケイ素化合物が、大
気中の水分と反応して加水分解が起こり、これに伴う縮合反応により、活物質の表面に酸
化ケイ素を主成分とする被膜が形成される。より好ましくは、ベルジャーを用いて、温度
70℃で水蒸気をあてることによって、加水分解の時間を短縮することが可能となる。
【0101】
本実施の形態では、スプレードライヤーを用いることにより、活物質の表面に、酸化ケイ
素を主成分とする膜を効率よく形成することができる。また、本実施の形態では、スプレ
ードライヤーを用いることにより、活物質を覆う領域を有する膜を効率よく形成すること
ができるため、被膜を有する活物質の粉末を効率よく得ることができる。
【0102】
そして、被膜を有する活物質、導電助剤、バインダー、及び溶媒を混練し、スラリーを形
成する(ステップ134)。
【0103】
当該混練において、被膜を有する活物質、導電助剤、及びバインダーが互いに接触しなが
ら混ぜ合わされるため、被膜の一部が剥げて、活物質の表面が露出し、当該露出した領域
において、活物質が他の活物質、導電助剤、バインダーのいずれか一又は複数と直接接触
する場合がある。
【0104】
導電助剤は、実施の形態1にて説明した材料を用いることができる。また、バインダーは
、実施の形態1にて説明した材料を用いることができる。バインダーとして水溶性高分子
を用いることにより、塗工に適した粘度のスラリーを形成することができる。また、分散
性の高いスラリーを形成することができる。また、溶媒としては、水や、極性溶媒を用い
ることができる。例えば、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン(T
HF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチル
スルホキシド(DMSO)のいずれか一種又は二種以上の混合液を用いることができる。
安全性とコストの観点から、水を用いることは好ましい。本実施の形態では、導電助剤と
してVGCF、バインダーとしてCMC-Na及びSBR、溶媒として水を用いる場合に
ついて説明する。
【0105】
まず、被膜を有する黒鉛及びVGCFを混練する。混練には、例えば混練機を用いればよ
い。この際に、例えば、被膜を有する黒鉛、VGCF、及び少量の水を混合し、固練り(
高粘度での混練)を行うと、被膜を有する黒鉛とVGCFとを互いに均一に分散しやすく
なる場合があり、より好ましい。
【0106】
次に、CMC-Naを加えて混練機等により混練し、混合物を得る。この際に、例えばC
MC-Naをあらかじめ水と混合し、CMC-Na水溶液を調整した後に加えると、CM
C-Naの凝集を防げる場合があり、より好ましい。また、CMC-Naよりも先に水を
加えると、粘度が低くなり黒鉛とVGCFの分散状態が崩れてしまう場合がある。
【0107】
この後、さらに水を加えて混練してもよい。
【0108】
次に、該混合物にSBRを加えて混練機等により混練する。ここで、あらかじめSBRと
水を混合した分散液を作製した後、該混合物に加えることにより、SBRを粉末で加える
場合と比較してSBRの凝集を防げる場合があり、好ましい。または、他の材料とSBR
との分散性を高めることができる場合がある。
【0109】
次に、混合物のはいった混練機を減圧することにより、脱泡を行ってもよい。以上の工程
により、被膜を有する黒鉛、炭素繊維、CMC-Na、及びSBRが均一に分散した良好
なスラリーを形成することができる。
【0110】
なお、被膜を有する黒鉛、炭素繊維、CMC-Na、及びSBRを混合する順番は、上記
に限定されない。また、全ての材料を一度に加えて、混練を行っても構わない。
【0111】
例として、別の作製方法を示す。まず、被膜を有する黒鉛、VGCF、及びCMC-Na
の粉末を、混練機等を用いて混練する。次に、材料が混合した状態で水を加え、さらに混
練する。
【0112】
このとき、加える水の量を少なくして粘度の高い状態での混練(固練り)を経ることによ
り、活物質である黒鉛の凝集をほどき、また、黒鉛、VGCF、およびCMC-Naの分
散性を高めることができるため、より好ましい。
【0113】
固練りの工程を経た後、さらに水を加えて混練機等で混練してもよい。
【0114】
次に、該混合物にSBRを加えて混練機等により混練する。ここで、あらかじめSBRと
水を混合した分散液を作製した後、該混合物に加えることにより、SBRを粉末で加える
場合と比較してSBRの凝集を防げる場合があり、好ましい。または、他の材料とSBR
との分散性を高めることができる場合がある。
【0115】
その後、脱泡を行ってもよい。以上の工程により、被膜を有する黒鉛、VGCF、CMC
-Na、及びSBRが均一に分散した良好なスラリーを形成することができる。
【0116】
CMC-NaやSBRを均一に分散させることにより、これらのバインダーが、被膜を有
する活物質の表面や導電助剤の表面を覆い、膜を形成する際に、厚くなり過ぎず、効率よ
く覆うことができる。あるいは、少ないバインダー量で、活物質の全表面に対し、膜状の
バインダーに接している面積の割合を高めることができる。また、バインダーは、電気伝
導性が低く、凝集してしまうと、電極の抵抗を高めてしまう可能性がある。バインダーが
均一に分散させることによりバインダーの凝集を抑えることができるため、電気伝導性の
高い良好な電極を作製することができる。
【0117】
集電体102には、表面処理を行ってもよい。このような表面処理としては、例えば、コ
ロナ放電処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等が挙げられる。表面処理を行うこと
により、集電体102のスラリーに対するぬれ性を高めることができる。また、集電体1
02と、活物質層103との密着性を高めることができる。
【0118】
ここでアンダーコートとは、集電体上にスラリーを塗布する前に、活物質層と集電体との
界面抵抗を低減する目的や、活物質層と集電体との密着性を高める目的で集電体上に形成
する膜を指す。なお、アンダーコートは、必ずしも膜状である必要はなく、島状に形成さ
れていてもよい。また、アンダーコートが活物質として容量を発現しても構わない。アン
ダーコートとしては、例えば炭素材料を用いることができる。炭素材料としては、例えば
、黒鉛や、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、カーボンナ
ノチューブなどを用いることができる。
【0119】
次に、集電体の片面又は両面に、当該スラリーを塗布し、乾燥させる(ステップ135)
。当該塗布工程を、集電体の両面に行う場合には、両面に同時にまたは一面ずつスラリー
を塗布し乾燥させる。この後、ロールプレス機を用いて圧延加工し、集電体の両面に、活
物質層を形成する。
【0120】
塗布には、ブレード法等を用いればよい。また、塗布には連続塗工機等を用いてもよい。
スラリーの乾燥工程は、ホットプレートや乾燥炉などを用いて、大気雰囲気下または減圧
雰囲気下において、室温以上200℃以下の温度で行う。乾燥は、複数回に分けて行って
もよいし、温度を段階的に上げて行ってもよい。また、乾燥時間は、適宜設定することが
できる。例えば、30℃以上70℃以下、10分以上の条件で、大気雰囲気下でホットプ
レートを用いて行った後、例えば、室温以上100℃以下、1時間以上10時間以下の条
件で減圧環境下にて行えばよい。
【0121】
乾燥炉を用いる場合は、例えば、30℃以上120℃以下の温度で、30秒以上20分以
下の乾燥を行えばよい。または、例えば、60℃以下で10分以下の乾燥を行った後、6
5℃以上の温度で更に1分以上の乾燥を行ってもよい。
【0122】
このようにして形成された活物質層103の厚さは、例えば、好ましくは5μm以上50
0μm以下、より好ましくは5μm以上200μm以下であればよい。また、活物質層1
03の活物質担持量は、例えば、好ましくは2mg/cm2以上50mg/cm2以下で
あればよい。
【0123】
また、活物質層103は、集電体102の両面に形成されていてもよいし、片面のみに形
成されていてもよい。または、集電体102の両面に、活物質層103が部分的に形成さ
れていても構わない。
【0124】
なお、活物質層103に、プレドープを行っても良い。活物質層103にプレドープを行
う方法は特に限定されないが、例えば、電気化学的に行うことができる。例えば、電池組
み立て前に、対極としてリチウム金属を用いて、後述の電解液中において、リチウムを活
物質層103にプレドープすることができる。
【0125】
以上の方法により、
図1に示した電極101を作製することができる。なお、
図1(B)
では図示していないが、スラリー形成時に材料を混練することにより、活物質の表面から
剥げた被膜が、バインダー内に含まれている。
【0126】
(作製方法2)
作製方法1では、活物質、被膜形成材、溶媒、及び触媒を含む分散液をスプレードライヤ
ーに投入して、活物質の表面に被膜を形成する例を説明したが、当該分散液に導電助剤を
加えてもよい。以下に、電極の作製方法の他の一例について説明する。なお、分散液の構
成以外は、作製方法1を参照することができるので、重複する説明は省略する。
【0127】
まず、活物質、被膜形成材、導電助剤、溶媒、及び触媒を混合して、分散液を用意する。
活物質及び導電助剤は、実施の形態1にて説明した材料を用いることができる。ここでは
、粒状の活物質として黒鉛、導電助剤として針状のVGCFを用いる場合について説明す
る。
【0128】
被膜形成材は、上記の材料を用いることができる。ここでは、平均5量体のエチルシリケ
ートを用いる場合について説明する。
【0129】
また、溶媒としては、エタノールを用いることができ、触媒としては、塩酸を用いること
ができる。また、添加物として水を加えてもよい。
【0130】
次に、活物質、被膜形成材、導電助剤、溶媒、及び触媒を混合して作製した分散液をスプ
レードライヤーに投入し、二流体ノズル121から分散液を噴射して、スプレーシリンダ
ー123内で瞬時に乾燥させる。噴射された微細な液滴は、粒状の活物質の表面の一部又
は全部が有機ケイ素化合物で覆われた状態や、互いに接触する領域を有する活物質と導電
助剤の表面の一部又は全部が有機ケイ素化合物で覆われた状態を有しており、瞬時に乾燥
が行われることによって、微粉末となる。
【0131】
次に、微粉末に対し、加熱処理を行う。例えば、ホットプレートを用いて、温度70℃で
行う。より好ましくは、ベルジャーを用いて、温度70℃で水蒸気をあてる。これにより
、活物質や導電助剤に付着した有機ケイ素化合物が、水分と反応して加水分解が起こり、
これに伴う縮合反応により、活物質の表面の一部又は全部に、酸化ケイ素を主成分とする
被膜を形成することができる。また、活物質と導電助剤とが互いに接触する領域を有する
状態で、その表面の一部又は全部に、酸化ケイ素を主成分とする被膜を形成することがで
きる。
【0132】
そして、加熱処理後の微粉末、バインダー、及び溶媒を混練し、スラリーを形成する。な
お、導電助剤は先に分散液に混ぜることで既に微粉末に含まれているので、この段階では
添加しない。
【0133】
当該混練において、活物質、導電助剤、及びバインダーが互いに接触しながら混ぜ合わさ
れるため、被膜の一部が剥げて、活物質の表面が露出し、当該露出した領域において、活
物質が他の活物質、導電助剤、バインダーのいずれか一又は複数と直接接触する場合もあ
る。また、被膜の一部が剥げることよって導電助剤の表面が露出し、当該露出した領域に
おいて、導電助剤が活物質、他の導電助剤、バインダーのいずれか一又は複数と直接接触
する場合もある。
【0134】
スラリー形成後の工程は、作製方法1を参照することができるため、ここでは説明を省略
する。
【0135】
図3に、作製方法2を用いて作製した活物質層の断面を拡大したものを示す。粒状の活物
質141は、その表面において、他の粒状の活物質と接触する領域を有する。また、粒状
の活物質141は、その表面において、導電助剤144と接触する領域を有する。また、
粒状の活物質141は、その表面において、バインダー143と接触する領域を有する。
これらの領域を除いた活物質141の表面は、その一部または全部が、被膜142によっ
て覆われている。被膜142は、上記領域を除いた活物質141の表面の全てを覆うこと
が好ましいが、活物質141の表面の一部に設けられているだけでもよい。
【0136】
また、作製方法2では、分散液を調整する段階で導電助剤を添加したことにより、活物質
と導電助剤とが互いに接触する領域を有する状態で、その表面の一部又は全部に被膜を形
成することができる。そのため、作製方法1にて形成した活物質層と比べて、被膜142
を介することなく導電助剤144と接触する領域を有する活物質141の割合を多くする
ことができ、電子の伝導経路を増やすことができる。
【0137】
また、複数の活物質141どうしは、互いに接触する領域を有する状態や、導電助剤14
4を介して隣接している状態、導電助剤144及び被膜142を介して隣接している状態
で、バインダー143によって結着されている。また、活物質層には、複数の活物質14
1によって形成された空隙が存在することもある。
【0138】
本実施の形態に示したとおり、スプレードライヤーを用いることにより、被膜形成材を含
む分散液が噴射されると瞬時に乾燥するため、被膜を有する活物質を効率よく得ることが
できる。また、本実施の形態で示した手法を用いることにより、電極作製用のスラリーを
形成する前の、材料の段階において、被膜を有する活物質を得ることができるため、電極
を作製した後に諸々の工程を経て被膜を形成する手法と比較して、電極の作製に要する時
間(タクトタイム)を短縮させることができ、生産性を向上させることができる。
【0139】
また、本実施の形態で示した手法を用いることにより、材料の段階で、活物質の表面に被
膜を形成することができるため、電極を作製した後に被膜を形成する手法を用いる場合(
つまり、活物質どうしが既に接触している状態で被膜を形成する場合)と比較して、活物
質の表面が被膜で覆われる面積を増加させることができ、その結果、電極における電解液
等の分解を抑制することができる。
【0140】
また、本実施の形態で示したとおり、材料の段階で、活物質の表面に被膜を形成すること
により、複数の活物質どうしが隣接することにより形成された微細な空隙にも、被膜を配
置させることができ、その結果、電極における電解液等の分解を抑制することができる。
【0141】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0142】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様である電極を用いた蓄電装置の一例を示す。
【0143】
なお、本明細書等において、蓄電装置とは、蓄電機能を有する素子および装置全般を指す
。例えば、リチウムイオン二次電池などの蓄電池、リチウムイオンキャパシタ、および電
気二重層キャパシタなどを含む。
【0144】
(薄型の蓄電池)
図4に、蓄電装置の一例として、薄型(ラミネート型とも呼ぶ)の蓄電池について示す。
薄型の蓄電池は、可撓性を有する構成とし、可撓性を有する部位を少なくとも一部有する
電子機器に実装すれば、電子機器の変形に合わせて蓄電池も曲げることもできる。
【0145】
図4に示すラミネート型のリチウムイオン二次電池500は、正極集電体501及び正極
活物質層502を有する正極503と、セパレータ507と、負極集電体504及び負極
活物質層505を有する負極506とを積層し、外装体509に封入して電解液508を
注入した電池である。
図4では、ラミネート型のリチウムイオン二次電池500は、シー
ト状の正極503と負極506とを一枚ずつ重ねた構造を示しているが、電池容量を増加
させるために上記の積層構造体を捲回し、または複数枚重ね合わせてからラミネートする
ことが好ましい。特にリチウムイオン二次電池の形態をラミネート型とした場合、電池が
可撓性を有するため、フレキシビリティを要求される用途に適している。
【0146】
図4に示すラミネート型のリチウムイオン二次電池500において、正極集電体501及
び負極集電体504は、外部との電気的接触を得る端子の役割も兼ねている。そのため、
正極集電体501及び負極集電体504の一部は、外装体509から外側に露出するよう
に配置される。
【0147】
ラミネート型のリチウムイオン二次電池500において、外装体509には、例えばポリ
エチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料から
なる膜上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設
け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等
の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のラミネートフィルムを用いることができる。この
ような三層構造とすることで、電解液や気体の透過を遮断するとともに、絶縁性を確保し
、併せて耐電解液性を有する。
【0148】
負極506または正極503の少なくとも一方には、本発明の一態様である電極を用いる
ことができる。また、負極506と正極503の両方に、本発明の一態様である電極を用
いてもよい。
【0149】
負極506と正極503の両方に本発明の一態様である電極を用いる場合には、負極反応
に伴う電解液の分解、例えば主に酸化分解と、正極反応に伴う電解液の分解、例えば主に
還元分解の、両方を抑制することができる。よって、従来よりも狭い電位窓の電解液を用
いたとしても、優れた特性の蓄電池を得られる可能性がある。つまり、蓄電池に使用する
電解液として、より幅広く選択できるようになる。例えば、より安全性に優れた電解液、
例えば、フッ素が添加された難燃性の電解液等では、例えば、場合によっては酸化耐性が
低下することもあるが、そのような電解液を選択した場合においても、充放電における容
量低下を抑制し、より優れた特性の蓄電装置とすることができる。
【0150】
まず、負極506の構成について説明する。ここでは、負極506に、実施の形態1に記
載した電極101を用いる例を示す。
【0151】
負極506には、実施の形態1に記載した負極活物質および導電助剤を用いればよい。負
極活物質は、その表面の一部又は全部が、被膜で覆われていることが好ましい。また、導
電助剤としては、炭素繊維を用いることが好ましい。また、負極506には、実施の形態
1に記載したバインダーを用いてもよい。
【0152】
また、負極506は、実施の形態2に記載した方法で作製すればよい。
【0153】
次に、正極503の構成について説明する。
【0154】
図5(A)に、正極503の断面の模式図を示す。正極503は、正極集電体501と、
正極集電体501の両面又は片面(図では、両面の場合を示す。)に設けられた正極活物
質層502と、を有する。
【0155】
正極活物質層502は、正極集電体501上に直接接して形成する場合に限らない。正極
集電体501と正極活物質層502との間に、正極集電体501と正極活物質層502と
の密着性の向上を目的とした密着層や、正極集電体501の表面の凹凸形状を緩和するた
めの平坦化層、放熱のための放熱層、正極集電体501または正極活物質層502の応力
を緩和するための応力緩和層などの機能層を、金属等の導電性材料を用いて形成してもよ
い。
【0156】
正極集電体501としては、実施の形態1に記載した材料から選んで用いることができる
。正極活物質層502の厚さは、5μm以上500μm以下、好ましくは5μm以上20
0μm以下の間で、所望の厚さを選択する。なお、クラックや剥離が生じないように、正
極活物質層502の厚さを適宜調整することが好ましい。
【0157】
図5(B)に、正極活物質層502の断面図を示す。正極活物質層502は、正極活物質
521を有する。上述したように、活物質とは、キャリアであるイオンの挿入・脱離に関
わる物質のみを指すが、本明細書等では、本来「活物質」である材料に加えて、導電助剤
やバインダーなどを含めたものも、活物質層と呼ぶ。
【0158】
正極活物質521としては、実施の形態1に記載した正極活物質を用いればよい。
図5(
B)では、正極活物質521として粒状の活物質を示している。正極活物質521の粒径
は、5nm以上100nm以下が好ましい。なお、正極活物質521内を電子が移動する
ため、正極活物質521の粒径は、より小さい方が好ましい。
【0159】
また、正極活物質層502は、導電助剤524を有してもよい。導電助剤524としては
、実施の形態1に記載した導電助剤を用いればよい。
図5(B)では、導電助剤524と
して、繊維状の導電性材料を示している。
【0160】
また、正極活物質層502は、バインダー523を有してもよい。バインダー523とし
ては、実施の形態1に記載したバインダーを用いればよい。
【0161】
ここで、正極活物質521は、その表面の一部又は全部が、被膜522で覆われているこ
とが好ましい。被膜522としては、実施の形態1に記載した被膜形成材を用いて形成す
ればよい。
図5(B)では、被膜522として、酸化ケイ素を主成分とする膜を示してい
る。
【0162】
粒状の正極活物質521は、その表面において、他の粒状の活物質と接触する領域、導電
助剤524と接触する領域、バインダー523と接触する領域のうち、少なくとも一つを
有する。これらの領域を除いた正極活物質521の表面は、その一部または全部が、被膜
522によって覆われている。被膜522は、上記領域以外の表面の全てを覆うことが好
ましいが、正極活物質521の表面の一部に設けられているだけでもよい。また、複数の
粒状の正極活物質521どうしは、互いに接触する領域を有する状態、導電助剤524を
介して隣接している状態、導電助剤524及び被膜522を介して隣接している状態で、
バインダー523によって結着されている。また、正極活物質層502には、複数の粒状
の正極活物質521によって形成された空隙が存在することもある。
【0163】
被膜522は、キャリアイオンを通過させることができることが好ましく、キャリアイオ
ンを通過させることができる程度に膜厚が薄いことが好ましい。
【0164】
被膜522の膜厚は、例えば、1nm以上1μm以下、より好ましくは、1nm以上10
0nm以下とすることで、正極活物質521と電解液との間の分解反応を抑制することが
できる。
【0165】
なお、正極活物質521として、充放電時に体積変化を伴う活物質を用いる場合には、被
膜522は、正極活物質521の体積変化による形状の変化に追随することが好ましい。
このため、被膜522のヤング率は、70GPa以下であることが好ましい。正極活物質
521の表面を覆う領域を有する被膜522は、正極活物質521の体積変化による形状
の変化に追随することができるため、被膜522が、正極活物質521から剥離してしま
うことを抑制することができる。
【0166】
正極活物質521は、その表面において、他の粒状の活物質と接触する領域、導電助剤5
24と接触する領域、バインダー523と接触する領域のうち少なくとも一つを有し、こ
れらの領域を除いた活物質の表面は、その一部または全部が被膜522によって覆われて
いることにより、蓄電装置の充電時において、正極活物質521の表面と電解液との間へ
の電子の供給を妨げることができるため、正極活物質521と電解液との間の分解反応を
抑制することができ、正極活物質521に不動態被膜が形成されることを抑制することが
できる。これにより、蓄電装置の初期容量の減少を抑制することができる。また、正極5
03の抵抗の上昇を抑制し、蓄電装置の容量を増加させることができる。
【0167】
また、正極503を、リチウムイオン二次電池またはリチウムイオンキャパシタなどの蓄
電装置に用いることにより、長期的なリチウムイオン二次電池またはリチウムイオンキャ
パシタ等の蓄電装置のサイクル特性を向上させることができる。
【0168】
次に、正極503の作製方法の一例について説明する。
【0169】
まず、正極活物質の表面の一部又は全部に、被膜を形成する。正極活物質、被膜形成材、
溶媒、及び触媒を混合して分散液を調整し、当該分散液をスプレードライヤーに投入して
、表面の一部又は全部が被膜で覆われた正極活物質からなる微粉末を得る。
【0170】
正極活物質としては、実施の形態1に記載した材料を用いることができる。被膜形成材と
しては、実施の形態2に記載した材料を用いることができる。ここでは、被膜形成材とし
て、有機ケイ素化合物を用いる例を説明する。また、分散液の詳細については、実施の形
態2にて説明した通りである。
【0171】
次に、微粉末に対して加熱処理を行う。加熱処理を行うことにより、正極活物質に付着し
た有機ケイ素化合物が大気中の水分と反応して加水分解反応が起こり、これに伴う縮合反
応によって、正極活物質の表面に酸化ケイ素を主成分とする膜が形成される。加熱処理の
詳細については、実施の形態2にて説明した通りである。
【0172】
そして、被膜を有する正極活物質、導電助剤、バインダー、及び溶媒を混練し、スラリー
を形成する。導電助剤、バインダーとしては、実施の形態1に記載した材料を用いればよ
い。例えば、PVDFは、酸化耐性が高く、特に正極反応などの高い電位に対して安定で
ある。また、例えば、水溶性高分子は、分散性が高く、小さい活物質とも均一に分散し合
うことができ、より少ない量でも機能を発揮することができる。また、溶媒としては、実
施の形態2に記載した溶媒から選んで用いればよい。なお、混練の詳細については、実施
の形態2を参照することができる。混練後、さらに溶媒を添加してスラリーの粘度調整を
行ってもよく、混練と溶媒の添加を複数回繰り返し行ってもよい。
【0173】
次に、正極集電体501上にスラリーを塗布し、乾燥を行って、正極活物質層502を形
成する。塗布には、ブレード法、連続塗工機等を用いればよい。スラリーの乾燥工程は、
例えば、30℃以上70℃以下、10分以上の条件で、大気雰囲気下でホットプレートを
用いて行った後、例えば、室温以上100℃以下、1時間以上10時間以下の条件で減圧
環境下にて行えばよい。
【0174】
あるいは、乾燥炉等を用いて乾燥を行ってもよい。乾燥炉を用いる場合は、例えば、30
℃以上120℃以下の温度で、30秒以上20分以下の乾燥を行えばよい。または、温度
は段階的に上げてもよい。例えば、60℃以下で10分以下の乾燥を行った後、65℃以
上の温度で更に1分以上の乾燥を行ってもよい。
【0175】
なお、正極活物質層502は正極集電体501の両面に形成されていてもよいし、片面の
みに形成されていてもよい。または、正極集電体501は、部分的に正極活物質層502
が形成されている領域を有しても構わない。
【0176】
正極集電体501に、表面処理を行ってもよい。このような表面処理としては、例えば、
コロナ放電処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等が挙げられる。表面処理を行うこ
とにより、正極集電体の正極スラリーに対するぬれ性を高めることができる。また、正極
集電体と、正極活物質層との密着性を高めることができる。
【0177】
正極活物質層502を、ロールプレス法や平板プレス法等の圧縮方法によりプレスして圧
密化してもよい。
【0178】
以上の工程により、被膜522を有する正極活物質521と、導電助剤524と、バイン
ダー523とを含む正極活物質層502を有する正極503を作製することができる。
【0179】
次に、セパレータ507について説明する。セパレータ507としては、例えば、紙、不
織布、ガラス繊維、セラミックス、或いはナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニ
ルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタンを用い
た合成繊維等で形成されたものを用いることができる。
【0180】
セパレータ507は袋状に加工し、正極503または負極506のいずれか一方を包むよ
うに配置することが好ましい。例えば、負極506を挟むようにセパレータ507を2つ
折りにし、負極506と重なる領域よりも外側で封止することで、負極506をセパレー
タ507内に確実に有することができる。そして、セパレータ507に包まれた負極50
6と正極503とを交互に積層し、これらを外装体509内に配置することでラミネート
型のリチウムイオン二次電池500を作製するとよい。
【0181】
電解液508について説明する。電解液508の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が
好ましく、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、
ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ-ブチ
ロラクトン、γ-バレロラクトン、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネ
ート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸
メチル、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、ジメ
チルスルホキシド、ジエチルエーテル、メチルジグライム、アセトニトリル、ベンゾニト
リル、テトラヒドロフラン、スルホラン、スルトン等の1種、又はこれらのうちの2種以
上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0182】
また、電解液の溶媒としてゲル化される高分子材料を用いることで、漏液性等に対する安
全性が高まる。また、二次電池の薄型化及び軽量化が可能である。ゲル化される高分子材
料の代表例としては、シリコーンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエチ
レンオキサイド系ゲル、ポリプロピレンオキサイド系ゲル、フッ素系ポリマーのゲル等が
ある。
【0183】
また、電解液の溶媒として、難燃性及び難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を一つ
又は複数用いることで、蓄電装置の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇しても
、蓄電装置の破裂や発火などを防ぐことができる。イオン液体は、カチオンとアニオンか
らなり、有機カチオンとアニオンとを含む。電解液に用いる有機カチオンとして、四級ア
ンモニウムカチオン、三級スルホニウムカチオン、及び四級ホスホニウムカチオン等の脂
肪族オニウムカチオンや、イミダゾリウムカチオン及びピリジニウムカチオン等の芳香族
カチオンが挙げられる。また、電解液に用いるアニオンとして、1価のアミド系アニオン
、1価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホ
ン酸アニオン、テトラフルホウ酸アニオン、パーフルオロアルキルホウ酸アニオン、ヘキ
サフルオロリン酸アニオン、またはパーフルオロアルキルリン酸アニオン等が挙げられる
。
【0184】
また、上記の溶媒に溶解させる電解質としては、キャリアにリチウムイオンを用いる場合
、例えばLiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiAlCl4、Li
SCN、LiBr、LiI、Li2SO4、Li2B10Cl10、Li2B12Cl1
2、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2
F5SO2)3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C4F9SO2)(CF3SO2
)、LiN(C2F5SO2)2等のリチウム塩を一種、又はこれらのうちの二種以上を
任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0185】
また、蓄電装置に用いる電解液は、粒状のごみや電解液の構成元素以外の元素(以下、単
に「不純物」ともいう。)の含有量が少ない高純度化された電解液を用いることが好まし
い。具体的には、電解液に対する不純物の重量比を1%以下、好ましくは0.1%以下、
より好ましくは0.01%以下とすることが好ましい。
【0186】
また、電解液にビニレンカーボネート、プロパンスルトン(PS)、tert-ブチルベ
ンゼン(TBB)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、LiBOBなどの添加剤
を添加してもよい。添加剤の濃度は、例えば溶媒全体に対して0.1wt%以上5wt%
以下とすればよい。
【0187】
また、ポリマーを電解液で膨潤させたゲル電解質を用いてもよい。ゲル電解質(ポリマー
ゲル電解質)の例としては、担体としてホストポリマーを用い、上述の電解液を含有させ
たものが挙げられる。
【0188】
ホストポリマーの例を以下に説明する。ホストポリマーとしては、例えばポリエチレンオ
キシド(PEO)などのポリアルキレンオキシド構造を有するポリマーや、PVDF、お
よびポリアクリロニトリル等、およびそれらを含む共重合体等を用いることができる。例
えばPVDFとヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体であるPVDF-HFP
を用いることができる。また、形成されるポリマーは、多孔質形状を有してもよい。
【0189】
また、電解液の代わりに、硫化物系や酸化物系等の無機物材料を有する固体電解質や、P
EO(ポリエチレンオキシド)系等の高分子材料を有する固体電解質を用いることができ
る。固体電解質を用いる場合には、セパレータやスペーサの設置が不要となる。また、電
池全体を固体化できるため、漏液のおそれがなくなり安全性が飛躍的に向上する。
【0190】
ラミネート型のリチウムイオン二次電池500において、外装体509には、例えばポリ
エチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料から
なる膜上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設
け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等
の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のフィルムを用いることができる。
【0191】
また
図4では、一例として、向かい合う正極と負極の組の数を1組としているが、勿論、
電極の組は1組に限定されず、多くてもよい。電極層数が多い場合には、より多くの容量
を有する蓄電池とすることができる。また、電極層数が少ない場合には、薄型化でき、可
撓性に優れた蓄電池とすることができる。
【0192】
(コイン型蓄電池)
次に蓄電装置の一例として、コイン型の蓄電池の一例を、
図6を用いて説明する。
図6(
A)はコイン型(単層偏平型)の蓄電池の外観図であり、
図6(B)は、その断面図であ
る。
【0193】
コイン型の蓄電池300は、正極端子を兼ねた正極缶301と負極端子を兼ねた負極缶3
02とが、ポリプロピレン等で形成されたガスケット303で絶縁シールされている。正
極304は、正極集電体305と、これと接するように設けられた正極活物質層306に
より形成される。正極活物質層306は、正極活物質層502の記載を参照すればよい。
【0194】
また、負極307は、負極集電体308と、これに接するように設けられた負極活物質層
309により形成される。負極活物質層309は、実施の形態1の活物質層103の記載
を参照すればよい。またセパレータ310は、セパレータ507の記載を参照すればよい
。また電解液は、電解液508の記載を参照すればよい。
【0195】
なお、コイン型の蓄電池300に用いる正極304および負極307は、それぞれ活物質
層は片面のみに形成すればよい。
【0196】
正極缶301、負極缶302には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウ
ム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレ
ス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミ
ニウム等を被覆することが好ましい。正極缶301は正極304と、負極缶302は負極
307とそれぞれ電気的に接続する。
【0197】
これら負極307、正極304及びセパレータ310を電解質に含浸させ、
図6(B)に
示すように、正極缶301を下にして正極304、セパレータ310、負極307、負極
缶302をこの順で積層し、正極缶301と負極缶302とをガスケット303を介して
圧着してコイン形の蓄電池300を製造する。
【0198】
(円筒型蓄電池)
次に蓄電装置の一例として、円筒型の蓄電池を示す。円筒型の蓄電池について、
図7を参
照して説明する。円筒型の蓄電池600は
図7(A)に示すように、上面に正極キャップ
(電池蓋)601を有し、側面及び底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら
正極キャップと電池缶(外装缶)602とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によっ
て絶縁されている。
【0199】
図7(B)は、円筒型の蓄電池の断面を模式的に示した図である。中空円柱状の電池缶6
02の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで捲回
された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲回
されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602には、
電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの
合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。ま
た、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい
。電池缶602の内側において、正極、負極及びセパレータが捲回された電池素子は、対
向する一対の絶縁板608、609により挟まれている。また、電池素子が設けられた電
池缶602の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。非水電解液は、コイン
型の蓄電池と同様のものを用いることができる。
【0200】
正極604及び負極606は、上述した薄型の蓄電池の正極及び負極と同様に作製すれば
よい。また、円筒型の蓄電池に用いる正極及び負極は捲回するため、集電体の両面に活物
質層を形成することが好ましい。正極604には正極端子(正極集電リード)603が接
続され、負極606には負極端子(負極集電リード)607が接続される。正極端子60
3及び負極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正
極端子603は安全弁機構612に、負極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵抗
溶接される。安全弁機構612は、PTC素子(Positive Temperatu
re Coefficient)611を介して正極キャップ601と電気的に接続され
ている。安全弁機構612は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャッ
プ601と正極604との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子611
は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を
制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTi
O3)系半導体セラミックス等を用いることができる。
【0201】
なお、本実施の形態では、蓄電池として、薄型、コイン型、および円筒型の蓄電池を示し
たが、その他の封止型蓄電池、角型蓄電池等様々な形状の蓄電池を用いることができる。
また、正極、負極、及びセパレータが複数積層された構造、正極、負極、及びセパレータ
が捲回された構造であってもよい。例えば、他の蓄電池の例を
図8乃至
図12に示す。
【0202】
(蓄電池の構成例)
図8および
図9に、薄型の蓄電池の構成例を示す。
図8(A)に示す捲回体993は、負
極994と、正極995と、セパレータ996と、を有する。
【0203】
捲回体993は、セパレータ996を挟んで負極994と、正極995とが重なり合って
積層され、該積層シートを捲回したものである。この捲回体993を角型の封止容器など
で覆うことにより角型の二次電池が作製される。
【0204】
なお、負極994、正極995及びセパレータ996からなる積層の積層数は、必要な容
量と素子体積に応じて適宜設計すればよい。負極994はリード電極997及びリード電
極998の一方を介して負極集電体(図示せず)に接続され、正極995はリード電極9
97及びリード電極998の他方を介して正極集電体(図示せず)に接続される。
【0205】
図8(B)及び
図8(C)に示す蓄電池980は、外装体となるフィルム981と、凹部
を有するフィルム982とを熱圧着などにより貼り合わせて形成される空間に上述した捲
回体993を収納したものである。捲回体993は、リード電極997及びリード電極9
98を有し、フィルム981と、凹部を有するフィルム982との内部で電解液に含浸さ
れる。
【0206】
フィルム981と、凹部を有するフィルム982は、例えばアルミニウムなどの金属材料
や樹脂材料を用いることができる。フィルム981及び凹部を有するフィルム982の材
料として樹脂材料を用いれば、外部から力が加わったときにフィルム981と、凹部を有
するフィルム982を変形させることができ、可撓性を有する蓄電池を作製することがで
きる。
【0207】
また、
図8(B)及び
図8(C)では2枚のフィルムを用いる例を示しているが、1枚の
フィルムを折り曲げることによって空間を形成し、その空間に上述した捲回体993を収
納してもよい。
【0208】
また、蓄電装置の外装体や、封止容器を樹脂材料などにすることによって可撓性を有する
蓄電装置を作製することができる。ただし、外装体や、封止容器を樹脂材料にする場合、
外部に接続を行う部分は導電材料とする。
【0209】
例えば、可撓性を有する別の薄型蓄電池の例を
図9に示す。
図9(A)の捲回体993は
、
図8(A)に示したものと同一であるため、詳細な説明は省略することとする。
【0210】
図9(B)及び
図9(C)に示す蓄電池990は、外装体991の内部に上述した捲回体
993を収納したものである。捲回体993は、リード電極997及びリード電極998
を有し、外装体991、992の内部で電解液に含浸される。外装体991、992は、
例えばアルミニウムなどの金属材料や樹脂材料を用いることができる。外装体991、9
92の材料として樹脂材料を用いれば、外部から力が加わったときに外装体991、99
2を変形させることができ、可撓性を有する薄型蓄電池を作製することができる。
【0211】
(蓄電システムの構造例)
また、蓄電システムの構造例について、
図10、
図11、および
図12を用いて説明する
。ここで蓄電システムとは、例えば、蓄電装置を搭載した機器を指す。
【0212】
図10(A)及び
図10(B)は、蓄電システムの外観図を示す図である。蓄電システム
は、回路基板900と、蓄電池913と、を有する。蓄電池913には、ラベル910が
貼られている。さらに、
図10(B)に示すように、蓄電システムは、端子951と、端
子952と、アンテナ914と、アンテナ915と、を有する。
【0213】
回路基板900は、端子911と、回路912と、を有する。端子911は、端子951
、端子952、アンテナ914、アンテナ915、及び回路912に接続される。なお、
端子911を複数設けて、複数の端子911のそれぞれを、制御信号入力端子、電源端子
などとしてもよい。
【0214】
回路912は、回路基板900の裏面に設けられていてもよい。なお、アンテナ914及
びアンテナ915は、コイル状に限定されず、例えば線状、板状であってもよい。また、
平面アンテナ、開口面アンテナ、進行波アンテナ、EHアンテナ、磁界アンテナ、誘電体
アンテナ等のアンテナを用いてもよい。又は、アンテナ914若しくはアンテナ915は
、平板状の導体でもよい。この平板状の導体は、電界結合用の導体の一つとして機能する
ことができる。つまり、コンデンサの有する2つの導体のうちの一つの導体として、アン
テナ914若しくはアンテナ915を機能させてもよい。これにより、電磁界、磁界だけ
でなく、電界で電力のやり取りを行うこともできる。
【0215】
アンテナ914の線幅は、アンテナ915の線幅よりも大きいことが好ましい。これによ
り、アンテナ914により受電する電力量を大きくできる。
【0216】
蓄電システムは、アンテナ914及びアンテナ915と、蓄電池913との間に層916
を有する。層916は、例えば蓄電池913による電磁界を遮蔽することができる機能を
有する。層916としては、例えば磁性体を用いることができる。
【0217】
なお、蓄電システムの構造は、
図10に限定されない。
【0218】
例えば、
図11(A-1)及び
図11(A-2)に示すように、
図10(A)及び
図10
(B)に示す蓄電池913のうち、対向する一対の面のそれぞれにアンテナを設けてもよ
い。
図11(A-1)は、上記一対の面の一方側方向から見た外観図であり、
図11(A
-2)は、上記一対の面の他方側方向から見た外観図である。なお、
図10(A)及び図
10(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、
図10(A)及び
図10(B)に
示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
【0219】
図11(A-1)に示すように、蓄電池913の一対の面の一方に層916を挟んでアン
テナ914が設けられ、
図11(A-2)に示すように、蓄電池913の一対の面の他方
に層917を挟んでアンテナ915が設けられる。層917は、例えば蓄電池913によ
る電磁界を遮蔽することができる機能を有する。層917としては、例えば磁性体を用い
ることができる。
【0220】
上記構造にすることにより、アンテナ914及びアンテナ915の両方のサイズを大きく
することができる。
【0221】
又は、
図11(B-1)及び
図11(B-2)に示すように、
図10(A)及び
図10(
B)に示す蓄電池913のうち、対向する一対の面のそれぞれに別のアンテナを設けても
よい。
図11(B-1)は、上記一対の面の一方側方向から見た外観図であり、
図11(
B-2)は、上記一対の面の他方側方向から見た外観図である。なお、
図10(A)及び
図10(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、
図10(A)及び
図10(B)
に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
【0222】
図11(B-1)に示すように、蓄電池913の一対の面の一方に層916を挟んでアン
テナ914及びアンテナ915が設けられ、
図11(A-2)に示すように、蓄電池91
3の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ918が設けられる。アンテナ918は
、例えば、外部機器とのデータ通信を行うことができる機能を有する。アンテナ918に
は、例えばアンテナ914及びアンテナ915に適用可能な形状のアンテナを適用するこ
とができる。アンテナ918を介した蓄電システムと他の機器との通信方式としては、N
FCなど、蓄電システムと他の機器の間で用いることができる応答方式などを適用するこ
とができる。
【0223】
又は、
図12(A)に示すように、
図10(A)及び
図10(B)に示す蓄電池913に
表示装置920を設けてもよい。表示装置920は、端子919を介して端子911に電
気的に接続される。なお、表示装置920が設けられる部分にラベル910を設けなくて
もよい。なお、
図10(A)及び
図10(B)に示す蓄電システムと同じ部分については
、
図10(A)及び
図10(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
【0224】
表示装置920には、例えば充電中であるか否かを示す画像、蓄電量を示す画像などを表
示してもよい。表示装置920としては、例えば電子ペーパー、液晶表示装置、エレクト
ロルミネセンス(ELともいう)表示装置などを用いることができる。例えば、電子ペー
パーを用いることにより表示装置920の消費電力を低減することができる。
【0225】
又は、
図12(B)に示すように、
図10(A)及び
図10(B)に示す蓄電池913に
センサ921を設けてもよい。センサ921は、端子922を介して端子911に電気的
に接続される。なお、
図10(A)及び
図10(B)に示す蓄電システムと同じ部分につ
いては、
図10(A)及び
図10(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
【0226】
センサ921としては、例えば、力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離
、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線
、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むものを用いることが
できる。センサ921を設けることにより、例えば、蓄電システムが置かれている環境を
示すデータ(温度など)を検出し、回路912内のメモリに記憶しておくこともできる。
【0227】
本実施の形態で示す蓄電池や蓄電システムには、本発明の一態様に係る電極が用いられて
いる。そのため、蓄電池や蓄電システムの容量の大きくすることができる。また、エネル
ギー密度を高めることができる。また、信頼性を高めることができる。また、寿命を長く
することができる。
【0228】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0229】
(実施の形態4)
本実施の形態では、可撓性を有する蓄電池を電子機器に実装する例について説明する。
【0230】
実施の形態3に示す可撓性を有する蓄電池を電子機器に実装する例を
図13に示す。フレ
キシブルな形状を備える蓄電装置を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置
(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタル
カメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯
電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの
大型ゲーム機などが挙げられる。
【0231】
また、フレキシブルな形状を備える蓄電装置を、家屋やビルの内壁または外壁や、自動車
の内装または外装の曲面に沿って組み込むことも可能である。
【0232】
図13(A)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401
に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、ス
ピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、蓄電
装置7407を有している。
【0233】
図13(B)は、携帯電話機7400を湾曲させた状態を示している。携帯電話機740
0を外部の力により変形させて全体を湾曲させると、その内部に設けられている蓄電装置
7407も湾曲される。また、その時、曲げられた蓄電装置7407の状態を
図13(C
)に示す。蓄電装置7407は薄型の蓄電池である。蓄電装置7407は曲げられた状態
で固定されている。なお、蓄電装置7407は集電体と電気的に接続されたリード電極7
408を有している。例えば、集電体は銅箔であり、一部ガリウムと合金化させて、集電
体と接する活物質層との密着性を向上し、蓄電装置7407が曲げられた状態での信頼性
が高い構成となっている。
【0234】
図13(D)は、バングル型の携帯表示装置の一例を示している。携帯表示装置7100
は、筐体7101、表示部7102、操作ボタン7103、及び蓄電装置7104を備え
る。また、
図13(E)に曲げられた蓄電装置7104の状態を示す。蓄電装置7104
は曲げられた状態で使用者の腕への装着時に、筐体が変形して蓄電装置7104の一部ま
たは全部の曲率が変化する。なお、曲線の任意の点における曲がり具合を相当する円の半
径の値で表したものを曲率半径であり、曲率半径の逆数を曲率と呼ぶ。具体的には、曲率
半径が40mm以上150mm以下の範囲内で筐体または蓄電装置7104の主表面の一
部または全部が変化する。蓄電装置7104の主表面における曲率半径が40mm以上1
50mm以下の範囲であれば、高い信頼性を維持できる。
【0235】
図13(F)は、腕時計型の携帯情報端末の一例を示している。携帯情報端末7200は
、筐体7201、表示部7202、バンド7203、バックル7204、操作ボタン72
05、入出力端子7206などを備える。
【0236】
携帯情報端末7200は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インタ
ーネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができ
る。
【0237】
表示部7202はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うこ
とができる。また、表示部7202はタッチセンサを備え、指やスタイラスなどで画面に
触れることで操作することができる。例えば、表示部7202に表示されたアイコン72
07に触れることで、アプリケーションを起動することができる。
【0238】
操作ボタン7205は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ
動作、マナーモードの実行及び解除、省電力モードの実行及び解除など、様々な機能を持
たせることができる。例えば、携帯情報端末7200に組み込まれたオペレーションシス
テムにより、操作ボタン7205の機能を自由に設定することもできる。
【0239】
また、携帯情報端末7200は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能で
ある。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで
通話することもできる。
【0240】
また、携帯情報端末7200は入出力端子7206を備え、他の情報端末とコネクターを
介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子7206を介して充電
を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子7206を介さずに無線給電により行
ってもよい。
【0241】
携帯情報端末7200の表示部7202には、本発明の一態様の電極を備える蓄電装置を
有している。例えば、
図13(E)に示した蓄電装置7104を、筐体7201の内部に
湾曲した状態で、またはバンド7203の内部に湾曲可能な状態で組み込むことができる
。
【0242】
図13(G)は、腕章型の表示装置の一例を示している。表示装置7300は、表示部7
304を有し、本発明の一態様の蓄電装置を有している。例えば、
図13(E)に示した
蓄電装置7104を、筐体の内部に湾曲した状態で組み込むことができる。また、表示装
置7300は、表示部7304にタッチセンサを備えることもでき、また、携帯情報端末
として機能させることもできる。
【0243】
表示部7304はその表示面が湾曲しており、湾曲した表示面に沿って表示を行うことが
できる。また、表示装置7300は、通信規格された近距離無線通信などにより、表示状
況を変更することができる。
【0244】
また、表示装置7300は入出力端子を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接デ
ータのやりとりを行うことができる。また入出力端子を介して充電を行うこともできる。
なお、充電動作は入出力端子を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0245】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0246】
(実施の形態5)
本実施の形態では、蓄電装置を搭載することのできる電子機器の一例を示す。
【0247】
図14(A)および
図14(B)に、2つ折り可能なタブレット型端末の一例を示す。図
14(A)および
図14(B)に示すタブレット型端末9600は、筐体9630a、筐
体9630b、筐体9630aと筐体9630bを接続する可動部9640、表示部96
31aと表示部9631bを有する表示部9631、表示モード切り替えスイッチ962
6、電源スイッチ9627、省電力モード切り替えスイッチ9625、留め具9629、
操作スイッチ9628、を有する。
図14(A)は、タブレット型端末9600を開いた
状態を示し、
図14(B)は、タブレット型端末9600を閉じた状態を示している。
【0248】
また、タブレット型端末9600は、筐体9630aおよび筐体9630bの内部に蓄電
体9635を有する。蓄電体9635は、可動部9640を通り、筐体9630aと筐体
9630bに渡って設けられている。
【0249】
表示部9631aは、一部をタッチパネルの領域9632aとすることができ、表示され
た操作キー9638にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部963
1aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領域
がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部963
1aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部96
31aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表示
画面として用いることができる。
【0250】
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一部
をタッチパネルの領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボード
表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで
表示部9631bにキーボードボタン表示することができる。
【0251】
また、タッチパネルの領域9632aとタッチパネルの領域9632bに対して同時にタ
ッチ入力することもできる。
【0252】
また、表示モード切り替えスイッチ9626は、縦表示又は横表示などの表示の向きを切
り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えスイ
ッチ9625は、タブレット型端末9600に内蔵している光センサで検出される使用時
の外光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は
光センサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出
装置を内蔵させてもよい。
【0253】
また、
図14(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示し
ているが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表示
の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネル
としてもよい。
【0254】
図14(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、太陽電池96
33、DCDCコンバータ9636を含む充放電制御回路9634を有する。また、蓄電
体9635として、本発明の一態様の蓄電体を用いる。
【0255】
なお、タブレット型端末9600は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630aおよ
び筐体9630bを重ね合せるように折りたたむことができる。折りたたむことにより、
表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、タブレット型端末9600の耐
久性を高めることができる。また、本発明の一態様の蓄電体を用いた蓄電体9635は可
撓性を有し、曲げ伸ばしを繰り返しても充放電容量が低下しにくい。よって、信頼性の優
れたタブレット型端末を提供できる。
【0256】
また、この他にも
図14(A)および
図14(B)に示したタブレット型端末は、様々な
情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻な
どを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ
入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有する
ことができる。
【0257】
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、
表示部、又は映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、筐
体9630の片面又は両面に設けることができ、蓄電体9635の充電を効率的に行う構
成とすることができる。なお蓄電体9635としては、リチウムイオン二次電池を用いる
と、小型化を図れる等の利点がある。
【0258】
また、
図14(B)に示す充放電制御回路9634の構成、および動作について
図14(
C)にブロック図を示し説明する。
図14(C)には、太陽電池9633、蓄電体963
5、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3、表
示部9631について示しており、蓄電体9635、DCDCコンバータ9636、コン
バータ9637、スイッチSW1乃至SW3が、
図14(B)に示す充放電制御回路96
34に対応する箇所となる。
【0259】
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。
太陽電池で発電した電力は、蓄電体9635を充電するための電圧となるようDCDCコ
ンバータ9636で昇圧又は降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池
9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9637
で表示部9631に必要な電圧に昇圧又は降圧をすることとなる。また、表示部9631
での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにして蓄電体9635の充
電を行う構成とすればよい。また、表示部9631の動作に蓄電体9635からの電力が
用いられる際にはスイッチSW1をオフ、スイッチSW2をオフ、スイッチSW3をオン
にする構成とすればよい。
【0260】
なお太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、圧
電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段による蓄電
体9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受信し
て充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成とし
てもよい。
【0261】
図15に、他の電子機器の例を示す。
図15において、表示装置8000は、本発明の一
態様に係る蓄電装置8004を用いた電子機器の一例である。具体的に、表示装置800
0は、TV放送受信用の表示装置に相当し、筐体8001、表示部8002、スピーカ部
8003、蓄電装置8004等を有する。本発明の一態様に係る蓄電装置8004は、筐
体8001の内部に設けられている。表示装置8000は、商用電源から電力の供給を受
けることもできるし、蓄電装置8004に蓄積された電力を用いることもできる。よって
、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る
蓄電装置8004を無停電電源として用いることで、表示装置8000の利用が可能とな
る。
【0262】
表示部8002には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光
装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Devi
ce)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field
Emission Display)などの、半導体表示装置を用いることができる。
【0263】
なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用など
、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
【0264】
図15において、据え付け型の照明装置8100は、本発明の一態様に係る蓄電装置81
03を用いた電子機器の一例である。具体的に、照明装置8100は、筐体8101、光
源8102、蓄電装置8103等を有する。
図15では、蓄電装置8103が、筐体81
01及び光源8102が据え付けられた天井8104の内部に設けられている場合を例示
しているが、蓄電装置8103は、筐体8101の内部に設けられていても良い。照明装
置8100は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8103に蓄
積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が
受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8103を無停電電源として用いる
ことで、照明装置8100の利用が可能となる。
【0265】
なお、
図15では天井8104に設けられた据え付け型の照明装置8100を例示してい
るが、本発明の一態様に係る蓄電装置は、天井8104以外、例えば側壁8105、床8
106、窓8107等に設けられた据え付け型の照明装置に用いることもできるし、卓上
型の照明装置などに用いることもできる。
【0266】
また、光源8102には、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることができ
る。具体的には、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LEDや有機EL素子などの発光
素子が、上記人工光源の一例として挙げられる。
【0267】
図15において、室内機8200及び室外機8204を有するエアコンディショナーは、
本発明の一態様に係る蓄電装置8203を用いた電子機器の一例である。具体的に、室内
機8200は、筐体8201、送風口8202、蓄電装置8203等を有する。
図15で
は、蓄電装置8203が、室内機8200に設けられている場合を例示しているが、蓄電
装置8203は室外機8204に設けられていても良い。或いは、室内機8200と室外
機8204の両方に、蓄電装置8203が設けられていても良い。エアコンディショナー
は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8203に蓄積された電
力を用いることもできる。特に、室内機8200と室外機8204の両方に蓄電装置82
03が設けられている場合、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時で
も、本発明の一態様に係る蓄電装置8203を無停電電源として用いることで、エアコン
ディショナーの利用が可能となる。
【0268】
なお、
図15では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナーを
例示しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有する一体型のエアコン
ディショナーに、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることもできる。
【0269】
図15において、電気冷凍冷蔵庫8300は、本発明の一態様に係る蓄電装置8304を
用いた電子機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫8300は、筐体8301、冷
蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303、蓄電装置8304等を有する。
図15では、蓄
電装置8304が、筐体8301の内部に設けられている。電気冷凍冷蔵庫8300は、
商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8304に蓄積された電力を
用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時
でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8304を無停電電源として用いることで、電気冷
凍冷蔵庫8300の利用が可能となる。
【0270】
なお、上述した電子機器のうち、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器などの電子
機器は、短時間で高い電力を必要とする。よって、商用電源では賄いきれない電力を補助
するための補助電源として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることで、電子機器の
使用時に商用電源のブレーカーが落ちるのを防ぐことができる。
【0271】
また、電子機器が使用されない時間帯、特に、商用電源の供給元が供給可能な総電力量の
うち、実際に使用される電力量の割合(電力使用率と呼ぶ)が低い時間帯において、蓄電
装置に電力を蓄えておくことで、上記時間帯以外において電力使用率が高まるのを抑える
ことができる。例えば、電気冷凍冷蔵庫8300の場合、気温が低く、冷蔵室用扉830
2、冷凍室用扉8303の開閉が行われない夜間において、蓄電装置8304に電力を蓄
える。そして、気温が高くなり、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303の開閉が行わ
れる昼間において、蓄電装置8304を補助電源として用いることで、昼間の電力使用率
を低く抑えることができる。
【0272】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0273】
(実施の形態6)
本実施の形態では、車両に蓄電装置を搭載する例を示す。
【0274】
また、蓄電装置を車両に搭載すると、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、
又はプラグインハイブリッド車(PHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車を実現
できる。
【0275】
図16において、本発明の一態様を用いた車両を例示する。
図16(A)に示す自動車8
400は、走行のための動力源として電気モーターを用いる電気自動車である。または、
走行のための動力源として電気モーターとエンジンを適宜選択して用いることが可能なハ
イブリッド自動車である。本発明の一態様を用いることで、航続距離の長い車両を実現す
ることができる。また、自動車8400は蓄電装置を有する。蓄電装置は電気モーターを
駆動するだけでなく、ヘッドライト8401やルームライト(図示せず)などの発光装置
に電力を供給することができる。
【0276】
また、蓄電装置は、自動車8400が有するスピードメーター、タコメーターなどの表示
装置に電力を供給することができる。また、蓄電装置は、自動車8400が有するナビゲ
ーションシステムなどの半導体装置に電力を供給することができる。
【0277】
図16(B)に示す自動車8500は、自動車8500が有する蓄電装置にプラグイン方
式や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができ
る。
図16(B)に、地上設置型の充電装置8021から自動車8500に搭載された蓄
電装置に、ケーブル8022を介して充電を行っている状態を示す。充電に際しては、充
電方法やコネクタの規格等はCHAdeMO(登録商標)やコンボ等の所定の方式で適宜
行えばよい。充電装置8021は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、ま
た家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給に
より自動車8500に搭載された蓄電装置を充電することができる。充電は、ACDCコ
ンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
【0278】
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給
して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を組
み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電
の方式を利用して、車両どうしで電力の送受信を行ってもよい。さらに、車両の外装部に
太陽電池を設け、停車時や走行時に蓄電装置の充電を行ってもよい。このような非接触で
の電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
【0279】
本発明の一態様によれば、蓄電装置のサイクル特性が良好となり、信頼性を向上させるこ
とができる。また、本発明の一態様によれば、蓄電装置の特性を向上することができ、よ
って、蓄電装置自体を小型軽量化することができる。蓄電装置自体を小型軽量化できれば
、車両の軽量化に寄与するため、航続距離を向上させることができる。また、車両に搭載
した蓄電装置を車両以外の電力供給源として用いることもできる。この場合、電力需要の
ピーク時に商用電源を用いることを回避することができる。
【0280】
なお、ある一つの実施の形態の中で述べる内容(一部の内容でもよい)は、その実施の形
態で述べる別の内容(一部の内容でもよい)、及び/又は、一つ若しくは複数の別の実施
の形態で述べる内容(一部の内容でもよい)に対して、適用、組み合わせ、又は置き換え
などを行うことが出来る。
【0281】
なお、実施の形態の中で述べる内容とは、各々の実施の形態において、様々な図を用いて
述べる内容、又は明細書に記載される文章を用いて述べる内容のことである。
【0282】
なお、ある一つの実施の形態において述べる図(一部でもよい)は、その図の別の部分、
その実施の形態において述べる別の図(一部でもよい)、及び/又は、一つ若しくは複数
の別の実施の形態において述べる図(一部でもよい)に対して、組み合わせることにより
、さらに多くの図を構成させることが出来る。
【0283】
なお、明細書の中の図面や文章において規定されていない内容について、その内容を除く
ことを規定した発明の一態様を構成することが出来る。または、ある値について、上限値
と下限値などで示される数値範囲が記載されている場合、その範囲を任意に狭めることで
、または、その範囲の中の一点を除くことで、その範囲を一部除いた発明の一態様を規定
することができる。これらにより、例えば、従来技術が本発明の一態様の技術的範囲内に
入らないことを規定することができる。
【0284】
具体例としては、ある回路において、第1乃至第5のトランジスタを用いている回路図が
記載されているとする。その場合、その回路が、第6のトランジスタを有していないこと
を発明として規定することが可能である。または、その回路が、容量素子を有していない
ことを規定することが可能である。さらに、その回路が、ある特定の接続構造をとってい
るような第6のトランジスタを有していない、と規定して発明を構成することができる。
または、その回路が、ある特定の接続構造をとっている容量素子を有していない、と規定
して発明を構成することができる。例えば、ゲートが第3のトランジスタのゲートと接続
されている第6のトランジスタを有していない、と発明を規定することが可能である。ま
たは、例えば、第1の電極が第3のトランジスタのゲートと接続されている容量素子を有
していない、と発明を規定することが可能である。
【0285】
別の具体例としては、ある値について、例えば、「ある電圧が、3V以上10V以下であ
ることが好適である」と記載されているとする。その場合、例えば、ある電圧が、-2V
以上1V以下である場合を除く、と発明の一態様を規定することが可能である。または、
例えば、ある電圧が、13V以上である場合を除く、と発明の一態様を規定することが可
能である。なお、例えば、その電圧が、5V以上8V以下であると発明を規定することも
可能である。なお、例えば、その電圧が、概略9Vであると発明を規定することも可能で
ある。なお、例えば、その電圧が、3V以上10V以下であるが、9Vである場合を除く
と発明を規定することも可能である。なお、ある値について、「このような範囲であるこ
とが好ましい」、「これらを満たすことが好適である」となどと記載されていたとしても
、ある値は、それらの記載に限定されない。つまり、「好ましい」、「好適である」など
と記載されていたとしても、必ずしも、それらの記載には、限定されない。
【0286】
別の具体例としては、ある値について、例えば、「ある電圧が、10Vであることが好適
である」と記載されているとする。その場合、例えば、ある電圧が、-2V以上1V以下
である場合を除く、と発明の一態様を規定することが可能である。または、例えば、ある
電圧が、13V以上である場合を除く、と発明の一態様を規定することが可能である。
【0287】
別の具体例としては、ある物質の性質について、例えば、「ある膜は、絶縁膜である」と
記載されているとする。その場合、例えば、その絶縁膜が、有機絶縁膜である場合を除く
、と発明の一態様を規定することが可能である。または、例えば、その絶縁膜が、無機絶
縁膜である場合を除く、と発明の一態様を規定することが可能である。または、例えば、
その膜が、導電膜である場合を除く、と発明の一態様を規定することが可能である。また
は、例えば、その膜が、半導体膜である場合を除く、と発明の一態様を規定することが可
能である。
【0288】
別の具体例としては、ある積層構造について、例えば、「A膜とB膜との間に、ある膜が
設けられている」と記載されているとする。その場合、例えば、その膜が、4層以上の積
層膜である場合を除く、と発明を規定することが可能である。または、例えば、A膜とそ
の膜との間に、導電膜が設けられている場合を除く、と発明を規定することが可能である
。
【0289】
なお、本明細書等において記載されている発明の一態様は、さまざまな人が実施すること
が出来る。しかしながら、その実施は、複数の人にまたがって実施される場合がある。例
えば、送受信システムの場合において、A社が送信機を製造および販売し、B社が受信機
を製造および販売する場合がある。別の例としては、トランジスタおよび発光素子を有す
る発光装置の場合において、トランジスタが形成された半導体装置は、A社が製造および
販売する。そして、B社がその半導体装置を購入して、その半導体装置に発光素子を成膜
して、発光装置として完成させる、という場合がある。
【0290】
このような場合、A社またはB社のいずれに対しても、特許侵害を主張できるような発明
の一態様を、構成することが出来る。つまり、A社のみが実施するような発明の一態様を
構成することが可能であり、別の発明の一態様として、B社のみが実施するような発明の
一態様を構成することが可能である。また、A社またはB社に対して、特許侵害を主張で
きるような発明の一態様は、明確であり、本明細書等に記載されていると判断する事が出
来る。例えば、送受信システムの場合において、送信機のみの場合の記載や、受信機のみ
の場合の記載が本明細書等になかったとしても、送信機のみで発明の一態様を構成するこ
とができ、受信機のみで別の発明の一態様を構成することができ、それらの発明の一態様
は、明確であり、本明細書等に記載されていると判断することが出来る。別の例としては
、トランジスタおよび発光素子を有する発光装置の場合において、トランジスタが形成さ
れた半導体装置のみの場合の記載や、発光素子を有する発光装置のみの場合の記載が本明
細書等になかったとしても、トランジスタが形成された半導体装置のみで発明の一態様を
構成することができ、発光素子を有する発光装置のみで発明の一態様を構成することがで
き、それらの発明の一態様は、明確であり、本明細書等に記載されていると判断すること
が出来る。
【0291】
なお、本明細書等においては、能動素子(トランジスタ、ダイオードなど)、受動素子(
容量素子、抵抗素子など)などが有するすべての端子について、その接続先を特定しなく
ても、当業者であれば、発明の一態様を構成することは可能な場合がある。つまり、接続
先を特定しなくても、発明の一態様が明確であると言える。そして、接続先が特定された
内容が、本明細書等に記載されている場合、接続先を特定しない発明の一態様が、本明細
書等に記載されていると判断することが可能な場合がある。特に、端子の接続先が複数の
ケース考えられる場合には、その端子の接続先を特定の箇所に限定する必要はない。した
がって、能動素子(トランジスタ、ダイオードなど)、受動素子(容量素子、抵抗素子な
ど)などが有する一部の端子についてのみ、その接続先を特定することによって、発明の
一態様を構成することが可能な場合がある。
【0292】
なお、本明細書等においては、ある回路について、少なくとも接続先を特定すれば、当業
者であれば、発明を特定することが可能な場合がある。または、ある回路について、少な
くとも機能を特定すれば、当業者であれば、発明を特定することが可能な場合がある。つ
まり、機能を特定すれば、発明の一態様が明確であると言える。そして、機能が特定され
た発明の一態様が、本明細書等に記載されていると判断することが可能な場合がある。し
たがって、ある回路について、機能を特定しなくても、接続先を特定すれば、発明の一態
様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能である。または
、ある回路について、接続先を特定しなくても、機能を特定すれば、発明の一態様として
開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能である。
【0293】
なお、本明細書等においては、ある一つの実施の形態において述べる図または文章におい
て、その一部分を取り出して、発明の一態様を構成することは可能である。したがって、
ある部分を述べる図または文章が記載されている場合、その一部分の図または文章を取り
出した内容も、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成する
ことが可能であるものとする。そして、その発明の一態様は明確であると言える。そのた
め、例えば、能動素子(トランジスタ、ダイオードなど)、配線、受動素子(容量素子、
抵抗素子など)、導電層、絶縁層、半導体層、有機材料、無機材料、部品、装置、動作方
法、製造方法などが単数もしくは複数記載された図面または文章において、その一部分を
取り出して、発明の一態様を構成することが可能であるものとする。例えば、N個(Nは
整数)の回路素子(トランジスタ、容量素子等)を有して構成される回路図から、M個(
Mは整数で、M<N)の回路素子(トランジスタ、容量素子等)を抜き出して、発明の一
態様を構成することは可能である。別の例としては、N個(Nは整数)の層を有して構成
される断面図から、M個(Mは整数で、M<N)の層を抜き出して、発明の一態様を構成
することは可能である。さらに別の例としては、N個(Nは整数)の要素を有して構成さ
れるフローチャートから、M個(Mは整数で、M<N)の要素を抜き出して、発明の一態
様を構成することは可能である。さらに別の例としては、「Aは、B、C、D、E、また
は、Fを有する」と記載されている文章から、一部の要素を任意に抜き出して、「Aは、
BとEとを有する」、「Aは、EとFとを有する」、「Aは、CとEとFとを有する」、
または、「Aは、BとCとDとEとを有する」などの発明の一態様を構成することは可能
である。
【0294】
なお、本明細書等においては、ある一つの実施の形態において述べる図または文章におい
て、少なくとも一つの具体例が記載される場合、その具体例の上位概念を導き出すことは
、当業者であれば容易に理解される。したがって、ある一つの実施の形態において述べる
図または文章において、少なくとも一つの具体例が記載される場合、その具体例の上位概
念も、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可
能である。そして、その発明の一態様は、明確であると言える。
【0295】
なお、本明細書等においては、少なくとも図に記載した内容(図の中の一部でもよい)は
、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能で
ある。したがって、ある内容について、図に記載されていれば、文章を用いて述べていな
くても、その内容は、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構
成することが可能である。同様に、図の一部を取り出した図についても、発明の一態様と
して開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能である。そして、そ
の発明の一態様は明確であると言える。
【0296】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例1】
【0297】
以下、本発明の一態様について実施例を用いて具体的に説明する。なお、本発明の一態様
は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0298】
はじめに、本実施例で用いた電極の作製方法について説明する。
【0299】
(電極A)
電極Aは、被膜を有する活物質を用いて作製した電極である。まず、活物質として人造黒
鉛MCMBと、被膜形成材としてエチルシリケート40と、97%エタノール水溶液と、
塩酸とを用いて、分散液を用意した。エチルシリケート40の量は、実施の形態2で説明
したとおり、分散液を用意する段階で、黒鉛に対する酸化ケイ素の割合が1wt%となる
ように、量を決定した。当該分散液をスプレードライヤーに投入し、スプレーシリンダー
内の温度を100℃、窒素雰囲気として、噴射された分散液を瞬時に乾燥させ、粉末を得
た。
【0300】
当該粉末に対し、ベルジャーを用いて、温度70度で水蒸気をあてた。これにより、黒鉛
粒子の表面に付着した有機ケイ素化合物を、水分と加水分解反応させ、引き続いて起こる
脱水反応により縮合させた。このようにして、黒鉛粒子の表面に、酸化ケイ素を主成分と
する膜を形成し、被膜を有する黒鉛を得た。
【0301】
次に、導電助剤としてVGCF、バインダーとしてCMC及びSBRを用いて、被膜を有
する黒鉛、VGCF、CMC、及びSBRの重量比が96:1:1:2となるようにスラ
リーを形成した。スラリーの溶媒としては、純水を用いた。
【0302】
スラリーを形成する際は、まず、被膜を有する黒鉛、VGCF、及び少量の純水を混練し
、CMC-Naを純水に均一に溶解させた水溶液を添加して、これらの混合物を混練した
。混練は、遊星方式の混練機を用いて行った。
【0303】
次に、これらの混合物にSBRの分散液を添加し、混練機で混練した。
【0304】
次に、これらの混合物に、所定の粘度になるまで純水を添加し、混練機を用いて5分間の
混練を2回行った。
【0305】
次に、ブレードを用いて、集電体にスラリーを塗布した後、乾燥を行った。乾燥は、まず
大気雰囲気下、30℃でスラリーの表面を乾燥させた後、そのまま温度を50℃に昇温し
て行い、さらに、減圧雰囲気下、100℃で10時間行った。なお、集電体には膜厚18
μmの圧延銅箔を用いた。
【0306】
以上の工程により、電極Aを作製した。
【0307】
(電極B)
電極Bは、黒鉛に対する酸化ケイ素の割合が、電極Aと異なる電極である。電極Bでは、
分散液を用意する段階で、黒鉛に対する酸化ケイ素の割合が2wt%となるように、エチ
ルシリケート40の量を決定して、電極を作製した。酸化ケイ素の割合を除き、電極Bの
構成及び作製方法は、電極Aと同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0308】
(比較電極C)
電極Aおよび電極Bが、被膜を有する活物質を用いて作製された電極であるのに対し、比
較電極Cは、被膜なしの活物質を用いて作製した電極である。比較電極Cでは、活物質と
して人造黒鉛MCMB、導電助剤としてVGCF、バインダーとしてCMC及びSBRを
用いて、黒鉛、VGCF、CMC、及びSBRの重量比が、96:1:1:2となるよう
にスラリーを形成した。スラリーの溶媒としては、水を用いた。
【0309】
まず、黒鉛、VGCF、及び少量の純水を混練し、CMC-Naを純水に均一に溶解させ
た水溶液を添加し、これらの混合物を混練した。混練は、遊星方式の混練機を用いて行っ
た。
【0310】
次に、これらの混合物にSBRの水溶液を添加し、混練機で混練した。
【0311】
次に、これらの混合物に、所定の粘度になるまで純水を添加し、混練機を用いて5分間の
混練を2回行った。
【0312】
次に、ブレードを用いて、集電体にスラリーを塗布した後、まず大気雰囲気下、30℃で
スラリーの表面を乾燥させ、そのまま温度を50℃に昇温して乾燥を行い、さらに、減圧
雰囲気下、100℃で10時間の乾燥を行った。なお、集電体には膜厚18μmの圧延銅
箔を用いた。
【0313】
以上の工程により、比較電極Cを作製した。
【0314】
(TEM観察およびEDX分析)
図17に、被膜を有する黒鉛の観察像を示す。断面観察は、高分解能透過電子顕微鏡(T
EM、日立製作所製「H9000-NAR」)を用いて、加速電圧を200kVとして行
った。上記電極Aの作製に用いられた、スプレードライヤー工程終了後の黒鉛粉末を、F
IB(Focused Ion Beam System:集束イオンビーム加工観察装
置)を用いて薄片化加工した後、観察を行った。205万倍で観察をおこなったところ、
黒鉛1401の表面に、膜1402が薄く、均一に形成されていることを観察することが
できた。また、その膜厚は、おおよそ5nm以下であると見積もられた。なお、1403
は、断面観察用に形成した保護膜である。
【0315】
また、スプレードライヤー工程終了後の黒鉛粉末を、FIBを用いて薄片化加工した試料
に対し、エネルギー分散型X線分析(EDX)を行った結果を、表1に示す。表1の数値
は、いずれも質量%を示す。分析箇所9点のうち、ほとんどの領域からシリコンと酸素が
検出された。また、同様の試料に対し、ラインスキャンによるEDXを行ったところ、シ
リコンと酸素が検出された。このことから、黒鉛1401に接する膜1402は、酸化ケ
イ素を主成分とすることが分かった。また、スプレードライヤーを用いることにより、黒
鉛表面を覆う領域を有する膜を形成することができることが確認された。
【0316】
【0317】
(サイクル特性評価)
次に、電極Aを負極として用い、電解液、セパレータ、及び正極を有するフルセルを組み
立てた後、1回充放電してリチウムイオン二次電池Aを作製し、二次電池のサイクル試験
を行った。また、電極Bおよび比較電極Cについても、同様に負極として用い、電解液、
セパレータ、及び正極を有するフルセルを組み立てた後、1回充放電してリチウムイオン
二次電池B、リチウムイオン二次電池Cを作製し、サイクル試験を行った。
【0318】
サイクル試験は、ラミネートセルの形態で行った。正極には、活物質としてLiFePO
4、導電助剤として酸化グラフェン、バインダーとしてPVdFを用いて、黒鉛、酸化グ
ラフェン、PVdFの重量比が、94.2:0.8:5となるようにスラリーを形成した
。スラリーの溶媒としては、NMPを用いた。
【0319】
LiFePO4には、グルコースが添加された原材料を用いることにより固相合成の段階
でカーボンコートされたLiFePO4を用いた。まず、カーボンコートされたLiFe
PO4に酸化グラフェンを加えたものに、溶媒としてNMPを添加して、固練りを行った
。次に、これらの混合物に、PVDFを溶解させたNMP溶液を添加した後、NMPをさ
らに添加して混練することでスラリーを形成した。当該スラリーを、集電体上に塗布し、
大気雰囲気下、90℃で4分乾燥させることにより、集電体上に正極活物質層が形成され
た正極を作製した。
【0320】
電解液には、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを
重量比で3:7の割合で混合した溶液中へ、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1
モル/リットルの濃度で溶解し、さらにビニレンカーボネート(VC)を少量(1wt%
)添加したものを用いた。セパレータには、ポリプロピレン(PP)を用いた。
【0321】
ここで、充電レートおよび放電レートについて説明する。例えば、容量X[Ah]の二次
電池を定電流充電する際に、充電レート1Cとは、ちょうど1時間で充電終了となる電流
値I[A]のことであり、充電レート0.2Cとは、I/5[A](すなわち、ちょうど
5時間で充電終了となる電流値)のことである。同様に、放電レート1Cとは、ちょうど
1時間で放電終了となる電流値I[A]のことであり、放電レート0.2Cとは、I/5
[A](すなわち、ちょうど5時間で放電終了となる電流値)のことである。
【0322】
本実施例では、1サイクル目の充放電は0.2C(5時間で充電)のレートで行い、2サ
イクル以降の充放電は、0.5C(2時間で充電)のレートで定電流充放電を繰り返すサ
イクル試験を行った。また、電圧範囲は2V以上4V以下とし、環境温度は60℃に設定
して測定を行った。
【0323】
サイクル試験の測定結果を
図18に示す。横軸はサイクル数(回)を示し、縦軸は二次電
池の放電容量(mAh/g)を示す。
図18において、リチウムイオン二次電池Aが示す
サイクル特性は曲線1202であり、リチウムイオン二次電池Bのサイクル特性は曲線1
203であり、リチウムイオン二次電池Cのサイクル特性は、曲線1201である。
【0324】
測定の結果、被膜なしの黒鉛を含む負極活物質層を有するリチウムイオン二次電池Cの場
合、曲線1201が示すように、サイクル数が進むとともに放電容量は低下した。
【0325】
これに対し、被膜を有する黒鉛を含む負極活物質層を有するリチウムイオン二次電池A及
びBの場合、曲線1202及び1203が示すように、放電容量は低下の傾向はみせるも
のの、リチウムイオン二次電池Cに比べて、大幅な容量の低下は見られず、電解液等の分
解による充放電劣化が十分に抑制されていることが分かった。
【0326】
図18に示す結果より、リチウムイオン二次電池A及びBでは、負極活物質層を構成する
黒鉛の表面が、酸化ケイ素を主成分とする膜に覆われる領域を有することにより、電極に
おける電解液などの電気化学的な分解を最小限に抑えることができたと考えられる。また
、リチウムイオン二次電池A及びBでは、充放電の繰り返しによる不動態被膜の再生成が
抑制されたため、サイクル特性が向上したものと考えられる。
【0327】
(評価)
以上のことから、本発明の一態様に係る電極をリチウムイオン二次電池に適用することに
より、リチウムイオン二次電池の充放電の繰り返しにおいて、充放電の副反応として生じ
る電解液等の分解反応を最小限に抑制することができ、リチウムイオン二次電池のサイク
ル特性を向上させることができた。
【実施例2】
【0328】
以下、本発明の一態様について実施例を用いて具体的に説明する。なお、本発明の一態様
は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0329】
本実施例では、活物質の表面に被膜を形成する処理回数や、被膜材料の活物質に対する割
合を変化させた場合について説明する。
【0330】
より具体的には、被膜形成処理を2回行って得た活物質(活物質D)と、被膜形成処理は
1回で、被膜材料の活物質に対する割合を活物質Dよりも増やした活物質(活物質E)と
を比較した。
【0331】
(活物質D)
活物質Dは、被膜形成処理を2回行って得た活物質である。まず、活物質として人造黒鉛
MCMBと、被膜形成材としてエチルシリケート40と、97%エタノール水溶液と、塩
酸とを用いて、分散液を用意した。エチルシリケート40の量は、実施の形態2で説明し
たとおり、分散液を用意する段階で、黒鉛に対する酸化ケイ素の割合が1wt%となるよ
うに、量を決定した。当該分散液をスプレードライヤーに投入し、スプレーシリンダー内
の温度を100℃、窒素雰囲気として、噴射された分散液を瞬時に乾燥させ、粉末を得た
。
【0332】
当該粉末に対し、ベルジャーを用いて、温度70度で水蒸気をあてた。これにより、黒鉛
粒子の表面に付着した有機ケイ素化合物を、水分と加水分解反応させ、引き続いて起こる
脱水反応により縮合させた。このようにして、黒鉛粒子の表面に、酸化ケイ素を主成分と
する膜を形成し、被膜を有する黒鉛を得た。
【0333】
次に、この被膜を有する黒鉛と、エチルシリケート40と、97%エタノール水溶液と、
塩酸とを用いて再び分散液を用意し、スプレードライヤーに投入して、スプレーシリンダ
ー内の温度を100℃、窒素雰囲気として、噴射された分散液を瞬時に乾燥させ、粉末を
得た。
【0334】
なお、2回目の処理におけるエチルシリケート40の量は、分散液を用意する段階で、被
膜を有する黒鉛に対する酸化ケイ素の割合が1wt%となるように、量を決定した。
【0335】
そして、粉末に対し、ベルジャーを用いて、温度70度で水蒸気をあてた。これにより、
有機ケイ素化合物を水分と加水分解反応させ、引き続いて起こる脱水反応により縮合させ
た。このようにして、黒鉛粒子の表面に、酸化ケイ素を主成分とする膜を形成し、被膜を
有する黒鉛を得た。
【0336】
(ToF-SIMS分析)
活物質Dに対して飛行時間二次イオン質量分析(ToF-SIMS:Time-of-f
light secondary ion mass spectrometr
y)を行って、黒鉛表面における被膜の状態を調べた。分析は、ION-TOF社製のT
OF-SIMS300を用いて、一次イオン源をBiとして行った。
【0337】
ToF-SIMS分析結果を
図19に示す。
図19(B)にCイオンのマッピング測定の
結果を示し、
図19(C)にSi
2O
5Hイオンのマッピング測定の結果を示し、
図19
(A)に両測定結果を重ねたものを示す。なお、観察領域は、500μm角であり、Si
2O
5Hイオンは、酸化ケイ素に起因するものである。また、各イメージデータにおいて
、輝度が高い箇所ほど、イオンが強く検出されていることを示す。
【0338】
図19(A)~19(C)より、黒鉛表面には、酸化ケイ素を主成分とする被膜が形成さ
れていることが分かった。また、イメージデータにおけるSi
2O
5Hイオンの濃度分布
により、黒鉛表面には、酸化ケイ素を主成分とする被膜が形成されていない領域も存在し
ていることが分かった。
【0339】
(TEM観察)
図20(A)に、活物質Dの観察像を示す。断面観察は、活物質DをFIB(Focus
ed Ion Beam System:集束イオンビーム加工観察装置)を用いて薄片
化加工した後、高分解能透過電子顕微鏡(TEM、日立製作所製「H-9000NAR」
)を用いて、加速電圧を200kVとして行った。205万倍で観察をおこなったところ
、黒鉛1301の表面に、膜1302が形成されていることを観察することができた。ま
た、その膜厚は、厚いところでおよそ5、6nmであった。
【0340】
(活物質E)
次に、活物質Eについて説明する。活物質Eは、被膜材料の活物質に対する割合を活物質
Dよりも増やし、被膜形成処理を1回行って得た活物質である。まず、活物質として人造
黒鉛MCMBと、被膜形成材としてエチルシリケート40と、97%エタノール水溶液と
、塩酸とを用いて、分散液を用意した。エチルシリケート40の量は、実施の形態2で説
明したとおり、分散液を用意する段階で、黒鉛に対する酸化ケイ素の割合が2wt%とな
るように、量を決定した。当該分散液をスプレードライヤーに投入し、スプレーシリンダ
ー内の温度を100℃、窒素雰囲気として、噴射された分散液を瞬時に乾燥させ、粉末を
得た。
【0341】
当該粉末に対し、ベルジャーを用いて、温度70度で水蒸気をあてた。これにより、黒鉛
粒子の表面に付着した有機ケイ素化合物を、水分と加水分解反応させ、引き続いて起こる
脱水反応により縮合させた。このようにして、黒鉛粒子の表面に、酸化ケイ素を主成分と
する膜を形成し、被膜を有する黒鉛を得た。
【0342】
(TEM観察)
図20(B)に、活物質Eの観察像を示す。断面観察は、活物質Dと同様に行い、黒鉛1
303の表面に、膜1304が形成されていることを観察することができた。
【0343】
図20(A)の活物質Dと
図20(B)の活物質Eとを比較すると、活物質Eは活物質D
に比べて膜厚のばらつきが大きく、活物質Dは活物質Eに比べて被膜の厚さが均一である
ことが分かった。
【0344】
次に、活物質Dを用いて電極Dを作製し、活物質Eを用いて電極Eを作製した。
【0345】
(電極D)
活物質D、導電助剤としてVGCF、バインダーとしてCMC及びSBRを用いて、活物
質D、VGCF、CMC、及びSBRの重量比が96:1:1:2となるようにスラリー
を形成した。スラリーの溶媒としては、純水を用いた。
【0346】
スラリーを形成する際は、まず、活物質D、VGCF、及び少量の純水を混練し、CMC
-Naを純水に均一に溶解させた水溶液を添加して、これらの混合物を混練した。混練は
、遊星方式の混練機を用いて行った。
【0347】
次に、これらの混合物にSBRの分散液を添加し、混練機で混練した。
【0348】
次に、これらの混合物に、所定の粘度になるまで純水を添加し、混練機を用いて5分間の
混練を2回行った。
【0349】
次に、ブレードを用いて、集電体にスラリーを塗布した後、乾燥を行った。乾燥は、まず
大気雰囲気下、30℃でスラリーの表面を乾燥させた後、そのまま温度を50℃に昇温し
て行い、さらに、減圧雰囲気下、100℃で10時間行った。なお、集電体には膜厚18
μmの圧延銅箔を用いた。
【0350】
以上の工程により、電極Dを作製した。
【0351】
(電極E)
電極の構成及び作製方法は、活物質として活物質Eを用いることを除き、電極Dと同じで
あるので、ここでは説明を省略する。
【0352】
(サイクル特性評価)
電極Dを負極として用い、電解液、セパレータ、及び正極を有するフルセルを組み立てた
後、1回充放電してリチウムイオン二次電池Dを作製し、二次電池のサイクル試験を行っ
た。また、電極Eについても、同様に負極として用い、電解液、セパレータ、及び正極を
有するフルセルを組み立てた後、1回充放電してリチウムイオン二次電池Eを作製し、サ
イクル試験を行った。
【0353】
(リチウムイオン二次電池D)
サイクル試験は、ラミネートセルの形態で行った。正極には、活物質としてLiFePO
4、導電助剤として酸化グラフェン、バインダーとしてPVdFを用いて、LiFePO
4、酸化グラフェン、PVdFの重量比が、94.2:0.8:5となるようにスラリー
を形成した。スラリーの溶媒としては、NMPを用いた。
【0354】
LiFePO4には、グルコースが添加された原材料を用いることにより固相合成の段階
でカーボンコートされたLiFePO4を用いた。まず、カーボンコートされたLiFe
PO4に酸化グラフェンを加えたものに、溶媒としてNMPを添加して、固練りを行った
。次に、これらの混合物に、PVDFを溶解させたNMP溶液を添加した後、NMPをさ
らに添加して混練することでスラリーを形成した。当該スラリーを集電体上に塗布し、大
気雰囲気下、90℃で4分乾燥させ、続いて酸化グラフェンの還元処理を行い、正極を作
製した。
【0355】
電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを重量
比で1:1の割合で混合した溶液中へ、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルアミ
ド(LiTFSA)を0.65mol/Kgの濃度で溶解し、添加剤として六フッ化リン
酸リチウム(LiPF6)を少量(2wt%)添加し、さらにビニレンカーボネート(V
C)を少量(1wt%)添加したものを用いた。セパレータには、ポリプロピレン(PP
)を用いた。
【0356】
本実施例では、1サイクル目の充放電は0.2C(5時間で充電)のレートで行い、2サ
イクル以降の充放電は、0.5C(2時間で充電)のレートで定電流充放電を繰り返すサ
イクル試験を行った。また、電圧範囲は2V以上4V以下とし、環境温度は60℃に設定
して測定を行った。
【0357】
サイクル試験の測定結果を
図21に示す。横軸はサイクル数(回)を示し、縦軸は二次電
池の放電容量(mAh/g)を示す。放電容量は低下の傾向をみせるものの、大幅な容量
の低下は見られず、電解液等の分解による充放電劣化が十分に抑制されていることが分か
った。
【0358】
(リチウムイオン二次電池E)
サイクル試験に用いたラミネートセルは、電解液を除き、リチウムイオン二次電池Dと同
じ条件で作製したものであるので、ここでは説明を省略する。リチウムイオン二次電池E
の電解液には、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)と
を重量比で3:7の割合で混合した溶液中へ、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を
1Mの濃度で溶解し、さらにビニレンカーボネート(VC)を少量(1wt%)添加した
ものを用いた。セパレータには、ポリプロピレン(PP)を用いた。
【0359】
サイクル試験の測定結果を
図22に示す。放電容量は低下の傾向をみせるものの、大幅な
容量の低下は見られず、電解液等の分解による充放電劣化が十分に抑制されていることが
分かった。
【0360】
(評価)
以上のことから、本発明の一態様に係る電極をリチウムイオン二次電池に適用することに
より、リチウムイオン二次電池の充放電の繰り返しにおいて、充放電の副反応として生じ
る電解液等の分解反応を最小限に抑制することができ、リチウムイオン二次電池のサイク
ル特性を向上させることができた。
【実施例3】
【0361】
以下、本発明の一態様について実施例を用いて具体的に説明する。なお、本発明の一態様
は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0362】
本実施例では、被膜形成手段として互いに異なる方法を用いて作製した電極を比較する例
について説明する。
【0363】
より具体的には、被膜形成手段として、ディップコート法を用いて作製した電極(電極F
)と、スプレードライヤーによるコート法を用いて作製した電極(電極G)とを比較した
。
【0364】
(電極F)
電極Fは、活物質表面への被膜形成手段として、ディップコート法を用いて作製した電極
である。まず、活物質として黒鉛(G10)と、導電助剤としてVGCFと、バインダー
としてCMC及びSBRと、溶媒として水とを混練し、スラリーを形成した。黒鉛、VG
CF、CMC、及びSBRの重量比が、96:1:1:2となるようにスラリーを形成し
た。
【0365】
次に、集電体の片面に、当該スラリーを塗布して乾燥させ、活物質層を形成した。
【0366】
そして、活物質の表面に被膜を形成するにあたり、まず、被膜形成材として有機ケイ素化
合物であるエチルシリケート40(平均5量体のエチルシリケート)と、溶媒としてエタ
ノールと、触媒として塩酸とを混合して、処理液を調整した。エチルシリケートの量は、
処理液に対する割合が1wt%となるように、量を決定した。
【0367】
次に、集電体上に形成された活物質層を、室温で処理液に1分間含浸させ、処理液から引
き揚げた後、活物質層に付着した処理液の溶媒を蒸発させた。そして、活物質層に対し、
温度70度、水蒸気雰囲気において加熱処理を行った。これにより、黒鉛の表面に付着し
た有機ケイ素化合物を、水分と加水分解反応させ、引き続いて起こる脱水反応により縮合
させた。このようにして、黒鉛の表面に、酸化ケイ素を主成分とする膜を形成した。
【0368】
電極Fの活物質層では、複数の粒状の活物質はバインダーによって結着されている。この
状態で、有機ケイ素化合物が含まれる処理液に活物質層を含浸させることで、複数の粒状
の活物質は、バインダーによって結着された状態を保ったまま、処理液が活物質層の全体
に行き渡る。この後に、水蒸気雰囲気で加熱処理を行って、有機ケイ素化合物を加水分解
および縮合反応させることにより、複数の粒状の活物質の表面上に、酸化ケイ素を主成分
とする膜を形成することができた。
【0369】
(電極G)
電極Gは、スプレードライヤーを用いて形成された被膜を有する活物質を含む電極である
。まず、活物質として黒鉛(G10)を用いる以外は、実施例2に記載された(活物質D
)及び(電極D)を参照することができるので、ここでは説明を省略する。
【0370】
(サイクル特性評価)
電極Fを負極として用い、電解液、セパレータ、及び正極を有するフルセルを組み立てた
後、1回充放電してリチウムイオン二次電池Fを作製し、二次電池のサイクル試験を行っ
た。また、電極Gについても、同様に負極として用い、電解液、セパレータ、及び正極を
有するフルセルを組み立てた後、1回充放電してリチウムイオン二次電池Gを作製し、サ
イクル試験を行った。
【0371】
(リチウムイオン二次電池F)
サイクル試験は、ラミネートセルの形態で行った。正極には、活物質としてLiFePO
4、導電助剤として酸化グラフェン、バインダーとしてPVdFを用いて、LiFePO
4、酸化グラフェン、PVdFの重量比が、94.2:0.8:5となるようにスラリー
を形成した。スラリーの溶媒としては、NMPを用いた。
【0372】
LiFePO4には、グルコースが添加された原材料を用いることにより固相合成の段階
でカーボンコートされたLiFePO4を用いた。まず、カーボンコートされたLiFe
PO4に酸化グラフェンを加えたものに、溶媒としてNMPを添加して、固練りを行った
。次に、これらの混合物に、PVDFを溶解させたNMP溶液を添加した後、NMPをさ
らに添加して混練することでスラリーを形成した。当該スラリーを集電体上に塗布し、大
気雰囲気下、65℃で15分乾燥させ、続いて75℃で15分乾燥を行った。得られた電
極に含まれる酸化グラフェンの還元処理を行い、正極を作製した。
【0373】
電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを重量
比で1:1の割合で混合した溶液中へ、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルアミ
ド(LiTFSA)を1Mの濃度で溶解し、添加剤として六フッ化リン酸リチウム(Li
PF6)を少量(2wt%)添加し、さらにビニレンカーボネート(VC)を少量(1w
t%)添加したものを用いた。セパレータには、ポリプロピレン(PP)を用いた。
【0374】
(リチウムイオン二次電池G)
サイクル試験に用いたラミネートセルは、リチウムイオン二次電池Fと同じ条件で作製し
たものであるので、ここでは説明を省略する。リチウムイオン二次電池Gの電解液には、
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを重量比で1:1の
割合で混合した溶液中へ、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルアミド(LiTF
SA)を0.65mol/Kgの濃度で溶解し、添加剤として六フッ化リン酸リチウム(
LiPF6)を少量(2wt%)添加し、さらにビニレンカーボネート(VC)を少量(
1wt%)添加したものを用いた。
【0375】
本実施例では、1サイクル目の充放電は0.2C(5時間で充電)のレートで行い、2サ
イクル以降の充放電は、0.5C(2時間で充電)のレートで定電流充放電を繰り返すサ
イクル試験を行った。また、電圧範囲は2V以上4V以下とし、環境温度は60℃に設定
して測定を行った。
【0376】
サイクル試験の測定結果を
図23に示す。横軸はサイクル数(回)を示し、縦軸は二次電
池の放電容量(mAh/g)を示す。点線は、リチウムイオン二次電池Fのサイクル特性
を示し、実線は、リチウムイオン二次電池Gのサイクル特性を示している。
【0377】
両者の比較により、被膜形成手段としてスプレードライヤーを用いたリチウムイオン二次
電池Gにおいて、電解液等の分解による充放電劣化が十分に抑制されていることが分かっ
た。
【0378】
リチウムイオン二次電池Gに用いた電極Gは、実施例2に記載された(活物質D)及び(
電極D)を参照することができるので、電極Gに用いた活物質の観察像は、
図20(A)
を参照することができる。
図20(A)に示すとおり、黒鉛1301の表面には直接、酸
化ケイ素を主成分とする膜1302が薄く均一に形成されているため、黒鉛表面に酸化ケ
イ素膜が形成されない領域があったとしても、電極Gにおける電解液などの電気化学的な
分解を最小限に抑えることができたと考えられる。これにより、充放電の繰り返しによる
不動態被膜の再生成を抑制し、リチウムイオン二次電池Gのサイクル特性を向上させるこ
とができた。
【0379】
一方、リチウムイオン二次電池Fに用いた電極Fの活物質層では、複数の粒状の活物質が
バインダーによって結着された状態を保ったまま、被膜形成処理が行われるので、活物質
の表面には、バインダーを介して酸化ケイ素を主成分とする膜が形成される。しかし、酸
化ケイ素を主成分とする膜が形成されていない領域から電解液が侵入すると、活物質がバ
インダーで覆われていたとしても、侵入した電解液は活物質表面に行きわたり、最終的に
は活物質表面のほぼ全体において、電解液の電気化学的な分解が起こると考えられる。
【0380】
電解液の電気化学的な分解は、電解液が活物質に接することによりおこるため、活物質表
面にバインダーを介して被膜が形成されたリチウムイオン二次電池Fよりも、活物質表面
に直接被膜が形成されたリチウムイオン二次電池Gの方が、充放電の繰り返しによる不動
態被膜の再生成が抑制され、サイクル特性が向上したものと考えられる。
【0381】
(評価)
以上のことから、本発明の一態様に係る電極をリチウムイオン二次電池に適用することに
より、リチウムイオン二次電池の充放電の繰り返しにおいて、充放電の副反応として生じ
る電解液等の分解反応を最小限に抑制することができ、リチウムイオン二次電池のサイク
ル特性を向上させることができた。
【符号の説明】
【0382】
101 電極
102 集電体
103 活物質層
111 活物質
112 被膜
113 バインダー
114 導電助剤
115 空隙
121 二流体ノズル
122 加熱手段
123 スプレーシリンダー
124 サイクロン
125 容器
141 活物質
142 被膜
143 バインダー
144 導電助剤
300 蓄電池
301 正極缶
302 負極缶
303 ガスケット
304 正極
305 正極集電体
306 正極活物質層
307 負極
308 負極集電体
309 負極活物質層
310 セパレータ
500 リチウムイオン二次電池
501 正極集電体
502 正極活物質層
503 正極
504 負極集電体
505 負極活物質層
506 負極
507 セパレータ
508 電解液
509 外装体
521 正極活物質
522 被膜
523 バインダー
524 導電助剤
600 蓄電池
601 正極キャップ
602 電池缶
603 正極端子
604 正極
605 セパレータ
606 負極
607 負極端子
608 絶縁板
609 絶縁板
611 PTC素子
612 安全弁機構
900 回路基板
910 ラベル
911 端子
912 回路
913 蓄電池
914 アンテナ
915 アンテナ
916 層
917 層
918 アンテナ
919 端子
920 表示装置
921 センサ
922 端子
951 端子
952 端子
980 蓄電池
981 フィルム
982 フィルム
991 外装体
992 外装体
993 捲回体
994 負極
995 正極
996 セパレータ
997 リード電極
998 リード電極
1201 曲線
1202 曲線
1203 曲線
1301 黒鉛
1302 膜
1303 黒鉛
1304 膜
1401 黒鉛
1402 膜
7100 携帯表示装置
7101 筐体
7102 表示部
7103 操作ボタン
7104 蓄電装置
7200 携帯情報端末
7201 筐体
7202 表示部
7203 バンド
7204 バックル
7205 操作ボタン
7206 入出力端子
7207 アイコン
7300 表示装置
7304 表示部
7400 携帯電話機
7401 筐体
7402 表示部
7403 操作ボタン
7404 外部接続ポート
7405 スピーカ
7406 マイク
7407 蓄電装置
7408 リード電極
8000 表示装置
8001 筐体
8002 表示部
8003 スピーカ部
8004 蓄電装置
8021 充電装置
8022 ケーブル
8100 照明装置
8101 筐体
8102 光源
8103 蓄電装置
8104 天井
8105 側壁
8106 床
8107 窓
8200 室内機
8201 筐体
8202 送風口
8203 蓄電装置
8204 室外機
8300 電気冷凍冷蔵庫
8301 筐体
8302 冷蔵室用扉
8303 冷凍室用扉
8304 蓄電装置
8400 自動車
8401 ヘッドライト
8500 自動車
9600 タブレット型端末
9625 省電力モード切り替えスイッチ
9626 表示モード切り替えスイッチ
9627 電源スイッチ
9628 操作スイッチ
9629 留め具
9630 筐体
9630a 筐体
9630b 筐体
9631 表示部
9631a 表示部
9631b 表示部
9632a タッチパネルの領域
9632b タッチパネルの領域
9633 太陽電池
9634 充放電制御回路
9635 蓄電体
9636 DCDCコンバータ
9637 コンバータ
9638 操作キー
9639 キーボード表示切り替えボタン
9640 可動部