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特許7447240シフト伝動装置を備えたハイブリッド駆動アッセンブリ、パワートレインアッセンブリおよびパワートレインアッセンブリを制御する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】シフト伝動装置を備えたハイブリッド駆動アッセンブリ、パワートレインアッセンブリおよびパワートレインアッセンブリを制御する方法
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/365 20071001AFI20240304BHJP
   B60K 6/387 20071001ALI20240304BHJP
   B60K 6/52 20071001ALI20240304BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20240304BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20240304BHJP
   B60K 17/04 20060101ALI20240304BHJP
   B60K 17/08 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
B60K6/365 ZHV
B60K6/387
B60K6/52
B60K6/547
B60K6/442
B60K17/04 G
B60K17/08 M
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022506267
(86)(22)【出願日】2019-09-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 EP2019074690
(87)【国際公開番号】W WO2021052557
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】517175611
【氏名又は名称】ジーケーエヌ オートモーティブ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】テオドア ガスマン
(72)【発明者】
【氏名】ディアク ギュート
(72)【発明者】
【氏名】マクシミリアン ヴェアクハウゼン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ハウプト
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103921666(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第02902230(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01122109(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20- 6/547
B60K 17/04-17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のためのハイブリッド駆動アッセンブリであって、
内燃機関(3)と、
電気機械(4)と、
前記内燃機関(3)および前記電気機械(4)に駆動接続されている、シフト伝動装置(6)と、
前記シフト伝動装置(6)から導入された回転運動を2つの出力部分(33,34)に分配するために構成されている、差動伝動装置(7)と、
を含み、
前記シフト伝動装置(6)が、第1の駆動ギヤ(23)および第2の駆動ギヤ(31)を備えた入力軸(11)を有しており、前記第1の駆動ギヤ(23)および前記第2の駆動ギヤ(31)が、前記入力軸(11)上に回転可能に支承されており、前記第1の駆動ギヤ(23)が、前記電気機械(4)に駆動接続されており、前記入力軸(11)が、前記内燃機関(3)に駆動接続されており、
軸方向で前記第1の駆動ギヤ(23)と前記第2の駆動ギヤ(31)との間に配置されているシフトクラッチ(20)であって、選択的に前記第1の駆動ギヤ(23)または前記第2の駆動ギヤ(31)を前記入力軸(11)に接続するか、または前記入力軸(11)から分離するために構成されている、シフトクラッチ(20)と、
第1の中間ギヤ(25)および第2の中間ギヤ(26)を備えた、前記入力軸(11)に対して平行な中間軸(24)であって、前記第1の中間ギヤ(25)が前記第1の駆動ギヤ(23)に係合しており、前記第2の中間ギヤ(26)が前記第2の駆動ギヤ(31)に係合しており、前記中間軸(24)が前記差動伝動装置(7)に駆動接続されている、中間軸(24)と、
トルク伝達を最適に行うか、または遮断するために、前記入力軸(11)と、前記差動伝動装置(7)の前記出力部分(33,34)の一方の出力部分との間の出力経路に配置されているクラッチ(8)と、
を含み、
前記電気機械(4)が、駆動ピニオン(21)を備えたモータ軸(19)を有しており、前記駆動ピニオン(21)が前記モータ軸(19)に同軸上で相対回動不能に接続されており、かつ前記第1の駆動ギヤ(23)に係合しており、
前記入力軸(11)が、前記内燃機関(3)の出力軸に対して同軸的に配置されており、該出力軸に永続的に相対回動不能に結合されている
ハイブリッド駆動アッセンブリ。
【請求項2】
前記第2の中間ギヤ(26)がリングギヤ(12)に係合しており、該リングギヤ(12)が、前記差動伝動装置(7)の差動装置キャリヤ(14)に対して同軸的に配置されており、該差動装置キャリヤ(14)に変速なしに駆動接続されている、請求項1記載のハイブリッド駆動アッセンブリ。
【請求項3】
自動車のためのハイブリッド駆動アッセンブリであって、
内燃機関(3)と、
電気機械(4)と、
前記内燃機関(3)および前記電気機械(4)に駆動接続されている、シフト伝動装置(6)と、
前記シフト伝動装置(6)から導入された回転運動を2つの出力部分(33,34)に分配するために構成されている、差動伝動装置(7)と、
を含み、
前記シフト伝動装置(6)が、第1の駆動ギヤ(23)および第2の駆動ギヤ(31)を備えた入力軸(11)を有しており、前記第1の駆動ギヤ(23)および前記第2の駆動ギヤ(31)が、前記入力軸(11)上に回転可能に支承されており、前記第1の駆動ギヤ(23)が、前記電気機械(4)に駆動接続されており、前記入力軸(11)が、前記内燃機関(3)に駆動接続されており、
軸方向で前記第1の駆動ギヤ(23)と前記第2の駆動ギヤ(31)との間に配置されているシフトクラッチ(20)であって、選択的に前記第1の駆動ギヤ(23)または前記第2の駆動ギヤ(31)を前記入力軸(11)に接続するか、または前記入力軸(11)から分離するために構成されている、シフトクラッチ(20)と、
第1の中間ギヤ(25)および第2の中間ギヤ(26)を備えた、前記入力軸(11)に対して平行な中間軸(24)であって、前記第1の中間ギヤ(25)が前記第1の駆動ギヤ(23)に係合しており、前記第2の中間ギヤ(26)が前記第2の駆動ギヤ(31)に係合しており、前記中間軸(24)が前記差動伝動装置(7)に駆動接続されている、中間軸(24)と、
トルク伝達を最適に行うか、または遮断するために、前記入力軸(11)と、前記差動伝動装置(7)の前記出力部分(33,34)の一方の出力部分との間の出力経路に配置されているクラッチ(8)と、
を含み、
前記第2の中間ギヤ(26)がリングギヤ(12)に係合しており、該リングギヤ(12)が、前記差動伝動装置(7)の差動装置キャリヤ(14)に対して同軸的に配置されており、該差動装置キャリヤ(14)に変速なしに駆動接続されている、
ハイブリッド駆動アッセンブリ。
【請求項4】
前記シフト伝動装置(6)が、前記リングギヤ(12)を含む、トルクを伝達する単に6つのギヤしか有していない、請求項2または3記載のハイブリッド駆動アッセンブリ。
【請求項5】
前記クラッチ(8)が、前記リングギヤ(12)と前記差動装置キャリヤ(14)との間の出力経路において有効であるように配置されており、前記クラッチ(8)の締結状態において、トルクが前記リングギヤ(12)から前記差動装置キャリヤ(14)に伝達され、前記クラッチ(8)の解放状態において、トルク伝達が遮断されており、
前記リングギヤ(12)が、差動装置ハウジング(27)に固定的に結合されており、前記差動装置ハウジング(27)が、定置のハウジング(18)内で回転可能に支承されており、前記差動装置キャリヤ(14)が、前記差動装置ハウジング(27)内で回転可能に支承されている、
請求項または記載のハイブリッド駆動アッセンブリ。
【請求項6】
前記シフトクラッチ(20)が、前記入力軸(11)に相対回動不能に接続されている入力部分(70)と、前記第1の駆動ギヤ(23)に相対回動不能に接続されている第1の出力部分(71)と、前記第2の駆動ギヤ(31)に相対回動不能に接続されている第2の出力部分(72)と、連結エレメント(73)とを有しており、該連結エレメント(73)により、前記入力部分(70)が、前記第1の出力部分(71)または前記第2の出力部分(72)に、トルクを伝達するために任意に連結可能であり、
前記連結エレメント(73)が摺動スリーブの形で構成されており、該摺動スリーブが、前記入力部分(70)上に相対回動不能に保持されており、該入力部分(70)に対してアクチュエータ(74)によって軸方向で摺動可能であり、
前記摺動スリーブが、ニュートラルポジション(P0)において、前記第1の出力部分(71)および前記第2の出力部分(72)に対して自由に回転可能であり、第1のシフトポジション(P1)では、前記第1の出力部分(71)に相対回動不能に接続されており、第2のシフトポジション(P2)では、前記第2の出力部分(72)に相対回動不能に接続されている、
請求項1から5までのいずれか1項記載のハイブリッド駆動アッセンブリ。
【請求項7】
前記入力軸(11)から前記中間軸(24)への変速にとって、以下のうちの少なくとも1つが当てはまる、すなわち、
前記第1の駆動ギヤ(23)と前記第1の中間ギヤ(25)との間の第1の変速比(i1)が、1.5~2.5であり、
前記第2の駆動ギヤ(31)と前記第2の中間ギヤ(26)との間の第2の変速比(i2)が、0.7~1.7である、請求項1から6までのいずれか1項記載のハイブリッド駆動アッセンブリ。
【請求項8】
自動車のためのパワートレインアッセンブリであって、
一次駆動装置としての一次電気機械(51)によって回転駆動可能である、一次駆動アクスル(46)と、
請求項1から7までのいずれか1項記載のハイブリッド駆動アッセンブリ(2)を備えた二次駆動アクスル(48)と、
を含み、
前記一次駆動アクスル(46)および前記二次駆動アクスル(48)が、機械的に互いに分離されており、
電気エネルギを貯蔵するための貯蔵アッセンブリ(52)であって、該貯蔵アッセンブリ(52)が、前記一次電気機械(51)および前記ハイブリッド駆動アッセンブリ(2)の電気機械(4)に電気的に接続されている、貯蔵アッセンブリ(52)と、
前記一次電気機械(51)および前記ハイブリッド駆動アッセンブリ(2)を制御するための制御ユニット(53)と、
を含む、パワートレインアッセンブリ。
【請求項9】
請求項8記載のパワートレインアッセンブリを制御する方法であって、
クラッチ(8)を解放し、シフト伝動装置(6)を、第1の駆動ギヤ(23)が入力軸(11)に接続されている第1のシフトポジション(P1)に移行し、
燃機関(3)が、前記クラッチ(8)の解放時に、電気機械(4)を駆動し、かつ
記電気機械(4)を、発電機モードで運転し、前記内燃機関(3)から導入された機械エネルギを電気エネルギに変換し、
前記電気エネルギを貯蔵アッセンブリ(52)に貯蔵するか、または第1の駆動ユニット(49)に供給する、方法。
【請求項10】
前記クラッチ(8)を締結し、
前記電気機械(4)をモータモードで運転し、前記貯蔵アッセンブリ(52)からの電気エネルギを機械エネルギに変換し、かつ
前記シフト伝動装置(6)を、前記第1の駆動ギヤ(23)が前記入力軸(11)に接続されている第1のシフトポジション(P1)または前記第2の駆動ギヤ(31)が前記入力軸(11)に接続されている第2のシフトポジション(P2)に移行し、
記電気機械(4)と前記内燃機関(3)とが、前記入力軸(11)を一緒に駆動する、請求項9記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の駆動アクスルのためのハイブリッド駆動アッセンブリと、このようなハイブリッド駆動アッセンブリによって駆動可能である1つの軸を含む複数の駆動アクスルを備えたパワートレインアッセンブリと、このようなパワートレインアッセンブリを制御する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2010063735号に基づいて、ハイブリッド駆動ユニットが知られている。このハイブリッド駆動ユニットは、内燃機関による駆動装置、電動モータによる駆動装置およびシフト可能な多段伝動装置を有している。多段伝動装置は、入力部材としてのサンギヤを備えた遊星歯車伝動装置を含んでいる。この入力部材には、内燃機関による駆動出力も、電動モータによる駆動出力も導入される。内燃機関による駆動装置とサンギヤとの間には、形状結合式の第1のクラッチが設けられている。サンギヤとプラネタリキャリヤとの間には、第2のクラッチが設けられている。
【0003】
国際公開第2015150407号に基づいて、電動モータと、多段伝動装置と、差動伝動装置とを備えた自動車のための駆動アッセンブリが知られている。多段伝動装置は、互いに異なる変速比を有する差動伝動装置を駆動するために、シフトユニットを備えた2つの伝動装置段を有している。シフトユニットは、駆動アクスルに相対回動不能に結合された入力ギヤと、連結エレメントによってトルク伝達のために選択的に入力ギヤに結合可能である、駆動アクスル上で回転可能な2つの出力ギヤとを含んでいる。
【0004】
米国特許出願公開第20080223635号明細書に基づいて、内燃機関と電動モータとを備えたハイブリッド駆動装置が知られている。電動モータは、変速伝動装置と、自動車の両駆動輪のうちの1つの駆動輪との間に、内燃機関に対して平行かつ差動伝動装置に対して同軸的な配向で配置されている。電動モータは、伝動装置段を介して差動伝動装置のデフケージに結合されている。このために、副軸が設けられており、この副軸は第1の歯車を介して電動モータに駆動接続されている。副軸の第2の歯車は、デフケージに固定的に結合されているリングギヤに噛み合っている。
【0005】
国際公開第2011064364号に基づいて、自動車の駆動アクスルを駆動するための、電動モータおよび差動伝動装置を備えた駆動アッセンブリが知られている。電動モータと差動伝動装置との間のパワートレインにクラッチが配置されており、クラッチは、選択的にトルクを伝達するか、またはトルク伝達を遮断するために、アクチュエータにより制御可能である。シフトクラッチの複数のシフトポジションを決定するためのセンサが設けられている。
【0006】
独国特許出願公開第102015118759号明細書に基づいて、第1の駆動アクスルを駆動する第1のパワートレインと、第2の駆動アクスルを駆動する第2のパワートレインとを備えた、自動車のためのパワートレインアッセンブリが知られている。第1のパワートレインは、第1の駆動ユニットと、アクスル差動装置と、2つの側軸とを含んでいる。第2のパワートレインは、電気機械の形態の第2の駆動ユニットと、アクスル差動装置と、クラッチと、2つの側軸とを含んでいる。第1のパワートレインと第2のパワートレインとは、機械的に互いに分離されている。第1の駆動アクスルおよび第2の駆動アクスルの回転数に依存して電気機械およびクラッチを制御する制御ユニットが設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の根底にある課題は、種々異なる運転モードで使用可能であり、単純かつコンパクトな構造を有する、自動車の駆動アクスルのためのシフト伝動装置(Schaltgetriebe)を備えたハイブリッド駆動アッセンブリを提案することである。さらに、課題は、このようなハイブリッド駆動アッセンブリにより種々異なる動作モードで運転することができる、2つの駆動アクスルを備えたパワートレインアッセンブリを提案することにある。さらに、このようなハイブリッド駆動アッセンブリまたはパワートレインアッセンブリを制御する方法を提案することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、自動車の駆動アクスルのためのハイブリッド駆動アッセンブリであって、内燃機関と、電気機械と、内燃機関および電気機械に駆動接続されたシフト伝動装置と、シフト伝動装置から導入された回転運動を2つの出力部分に分割するために構成されている差動伝動装置とを含み、シフト伝動装置が、第1の駆動ギヤおよび第2の駆動ギヤを備えた入力軸を有しており、第1の駆動ギヤおよび第2の駆動ギヤが、入力軸上に回転可能に支承されており、第1の駆動ギヤが、電気機械に駆動接続されており、入力軸が、内燃機関に駆動接続されており、軸方向で第1の駆動ギヤと第2の駆動ギヤとの間に配置されているシフトクラッチであって、選択的に第1の駆動ギヤまたは第2の駆動ギヤを入力軸に接続するか、または入力軸から分離するために構成されている、シフトクラッチと、第1の中間ギヤおよび第2の中間ギヤを備えた、入力軸に対して平行な中間軸であって、第1の中間ギヤが第1の駆動ギヤに係合しており、第2の中間ギヤが第2の駆動ギヤに係合しており、中間軸が差動伝動装置に駆動接続されている、中間軸と、トルク伝達を最適に行うか、または遮断するために、入力軸と、差動伝動装置の出力部分の一方の出力部分との間の出力経路に配置されているクラッチとを含む、ハイブリッド駆動アッセンブリが提案される。
【0009】
シフト伝動装置を備えたハイブリッド駆動アッセンブリは、有利な形式で特にコンパクトに構成されている。両駆動ギヤ間の駆動アクスルに対して同軸的なシフトクラッチの配置により、提供されている構造空間を極めて良好に使用することができる。さらに、内燃機関と電気機械との駆動に関する切離しまたは種々異なる運転モードにおけるハイブリッド駆動アッセンブリの運転が可能にされる。伝動装置入力軸は、内燃機関によっても電気機械によっても回転駆動可能である。本開示の枠内では、「回転駆動可能」または「駆動接続」という表現は、駆動するエレメントと駆動されるエレメントとが直接に互いに接続されているか、または場合によっては、たとえば歯車またはクラッチのような1つ以上の別の構成部材の介在下で接続されている可能性をそれぞれ含んでいてよい。
【0010】
シフトクラッチは、アクチュエータによって制御可能であり、選択的に第1の駆動ギヤまたは第2の駆動ギヤを入力軸に相対回動不能に接続するか、両駆動ギヤを入力軸から切り離すことができる。これにより、複数のシフト段が実現される。第1のシフト段は、第1のギヤ対、つまり第1の駆動ギヤと第1の中間ギヤとにより形成されているので、トルクは入力軸から差動装置に第1の変速比で伝達される(第1速)。第2のシフト段は、第2のギヤ対、つまり第2の駆動ギヤと第2の中間ギヤとによって形成されており、この第2のシフト段により、トルクは第2の変速比で差動装置に伝達可能である(第2速)。ニュートラルポジションでは、両駆動ギヤが駆動軸から切り離されているので、差動装置へトルクは伝達されない。
【0011】
シフトクラッチと、パワートレインにおいて後置されたクラッチ(分離クラッチとも呼ぶことができる)との協働により、有利な形式でハイブリッド駆動アッセンブリの種々異なる機能が生じる。たとえば、ハイブリッド駆動アッセンブリはパラレルモードで運転することができ、パラレルモードでは、両方の機械が、分離クラッチの締結時に一緒に駆動アクスルを駆動し、これは、シフト段に応じて、第1速または第2速で行うことができる。さらに、このアッセンブリは、さらなる電気的な駆動アクスルに関連して、シリアルモードで運転することができる。この場合、ハイブリッド駆動アッセンブリは、分離クラッチの解放時かつシフトクラッチが第1のシフトポジションにある場合に、電気エネルギを生成し、この電気エネルギは次いで、別の電動モータによる別の駆動アクスルの駆動のために使用される。さらに、アッセンブリは、車両の停止時に、分離クラッチが解放していてシフトクラッチが第1のシフトポジションにある場合に、電流を生成するか(発電機モード)、または電気機械に接続されたバッテリを充電することができる。反対に、内燃機関を、電気機械によって、分離クラッチおよびシフトクラッチが対応する位置にある場合に始動することができる(モータモード)。
【0012】
シフトクラッチは、1つの実施形態によれば、入力軸に相対回動不能に接続されている入力部分と、第1の駆動ギヤに相対回動不能に接続されている第1の出力部分と、第2の駆動ギヤに相対回動不能に接続されている第2の出力部分と、連結エレメントとを有しており、連結エレメントにより、入力部分が第1の出力部分または第2の出力部分に、トルクを伝達するために任意に連結可能である。連結エレメントは、摺動スリーブの形で構成されており、摺動スリーブは、入力部分上に相対回動不能に保持されており、入力部分に対してアクチュエータによって軸方向で摺動可能である。摺動スリーブは、ニュートラルポジション(P0)において、第1の出力部分および第2の出力部分に対して自由に回転可能であり、第1のシフトポジション(P1)では、第1の出力部分に相対回動不能に接続されており、第2のシフトポジション(P2)では、第2の出力部分に相対回動不能に接続されている。シフトクラッチの入力軸には、第1の駆動ギヤおよび第2の駆動ギヤのための支承区分への潤滑剤供給のための長手方向孔および複数の横方向孔が設けられていてよい。
【0013】
1つの可能な実施形態によれば、電気機械は、第1の駆動ギヤに係合している駆動ピニオンを備えたモータ軸を有していてよい。この場合、電動モータのモータ軸は、入力軸に対して平行に配置されている。第1の駆動ギヤへのピニオンを介したトルク伝達により、第1の予備変速を実現することができ、このことは、電気機械を内燃機関のためのスタータとして使用するか、または両方の機械を有利な効率範囲で運転することを容易にする。入力軸は、内燃機関の出力軸に対して同軸的に配置されていてよく、特にこの出力軸に永続的に相対回動不能に接続されていてよい。電気機械および内燃機関は、伝動装置入力軸に関して同一の側または反対側に配置されていてよい。
【0014】
入力軸、中間軸および差動装置の回転軸線は、互いに対して平行に配置されてもよい。また、第2の中間ギヤは、差動伝動装置を駆動するためのリングギヤに係合していてよい。第1の駆動ギヤが電気機械の駆動ピニオンおよび第1の中間ギヤに噛み合っていることにより、または第2の中間ギヤが第2の駆動ギヤおよびリングギヤに噛み合っていることにより、上述のギヤの二重機能が実現される。このことは全体的に、少ない部品数につながり、シフト伝動装置が、リングギヤを含む、トルクを伝達する6つのギヤしか有していなくてよいことを可能にする(駆動ピニオン、第1の駆動ギヤ、第2の駆動ギヤ、第1の中間ギヤ、第2の中間ギヤ)。
【0015】
リングギヤは、特に差動伝動装置に対して同軸的に配置されており、好適には差動伝動装置の差動装置キャリヤに変速なしに駆動接続されているか、または分離クラッチを介して駆動接続可能である。減速伝動装置のギヤは、特にはす歯を有する平歯車として構成されていてよい。
【0016】
なお、互いに噛み合うギヤの軸間隔および歯数は、構造空間状況および技術的な設定に合わせて調整され、必要に応じて適合することができることは自明である。第1の駆動ギヤと第1の中間ギヤとの間の第1の変速比(i1)は、1.5~2.5であってよく、かつ/または、第2の駆動ギヤと第2の中間ギヤとの間の第2の変速比(i2)は、1.0~1.6であってよい。さらに、第2の中間ギヤとリングギヤとの間の第3の変速比(i3)は、1.5~2.5であってよい。全体的に、第1速のためには2.25~6.25、第2速のためには1.5~4であってよい、全体変速比が生じる。
【0017】
1つの実施形態によれば、リングギヤは、定置のハウジングに回転可能に支承されている差動装置ハウジングに固定的に結合されていてよい。差動装置キャリヤは、差動装置ハウジング内に同軸的に配置されており、差動装置ハウジングに対して回転可能に支承されていてよい。この差動伝動装置は、特に、第1の側軸を駆動する第1の差動装置出力部分と、第2の側軸を駆動する第2の差動装置出力部分とを有しており、2つの出力部分は、互いに対して補償する作用を有している。
【0018】
機械は、その出力に関して必要に応じて設計されている。たとえば、内燃機関および/または電気機械は、それぞれ30kWを超える、かつ/または70kW未満の最大出力を有していてよい。さらに、内燃機関は、たとえば、5500回転/分未満の最大の回転数を有していてよい。電気機械は、たとえば、10,000回転/分を超える、かつ/または13,000回転/分未満の最大の回転数を有していてよい。
【0019】
分離クラッチは、好適には、簡単かつコンパクトに構成されている形状結合式クラッチとして構成されているが、原則的には摩擦クラッチも可能である。1つの可能な実施形態によれば、クラッチは、減速伝動装置の出力部材と差動装置キャリヤとの間で作用するように配置されている。クラッチの締結状態では、トルクは出力部材から差動装置キャリヤに伝達され、クラッチの解放状態では、トルク伝達が遮断されるので、両方の機械は車両アクスルから連結解除されている。クラッチが、伝動装置入力軸と駆動アクスルとの間の出力経路の別の場所、たとえば入力軸と中間軸との間、または中間軸に、または差動装置の側軸ギヤのうちの1つと関連する側軸との間に配置されていてよいことは自明である。
【0020】
上記の課題は、さらに、自動車のためのパワートレインアッセンブリであって、一次駆動装置としての一次電気機械によって回転駆動可能である、一次駆動アクスルと、上述の実施形態のうちの1つまたは複数の実施形態のように構成されている、ハイブリッド駆動アッセンブリを備えた二次駆動アクスルとを含み、一次駆動アクスルおよび二次駆動アクスルが、機械的に互いに分離されており、電気エネルギを貯蔵するための貯蔵アッセンブリであって、該貯蔵アッセンブリが、一次電気機械およびハイブリッド駆動アッセンブリの電気機械に電気的に接続されている、貯蔵アッセンブリと、一次電気機械およびハイブリッド駆動アッセンブリを制御するための制御ユニット(ECU)とを含む、パワートレインアッセンブリにより解決される。
【0021】
パワートレインアッセンブリは、ハイブリッド駆動アッセンブリと同一の利点を有しているので、上記の説明が参照される。ハイブリッド駆動アッセンブリに関連して説明されたすべての特徴を、パワートレインアッセンブリにおいて実現することができる。電気機械は、エネルギを変換し、モータまたは発電機として働くことができる。モータ運転では、電気機械は、電気エネルギを機械エネルギに変換するので、自動車の駆動アクスルまたは内燃機関を駆動することができる。発電機運転では、電気機械が機械エネルギを電気エネルギに変換し、この電気エネルギを次いでバッテリに蓄えることができる。全体として、複数の伝動装置段を有すると同時に、極めてコンパクトな構造を有するハイブリッド駆動アッセンブリが提供される。一次電気機械の最大出力は、ハイブリッド駆動アッセンブリの複数の機械のうちの少なくとも1つの機械の最大電力よりも大きく選択することができるが、これに限定されるものではない。
【0022】
上述のパワートレインアッセンブリを制御する本発明に係る方法は、以下のステップを有している。すなわち、クラッチを解放するステップ、ハイブリッド駆動アッセンブリの電気機械を発電機モードで運転するステップであって、内燃機関が、クラッチの解放時に電気機械を駆動し、これにより電気機械が、内燃機関から入力された機械エネルギを電気エネルギに変換するステップ、および発電された電気エネルギを貯蔵アッセンブリ内に貯蔵するステップを有している。
【0023】
この運転モードでは、バッテリを内燃機関によって充電することができ、したがってこのモードを充電モード(「チャージモード」)と呼ぶことができる。バッテリの充電は車両の停止時にも行うことができる。したがって、付加的な電気エネルギにより、純粋な電気走行のための走行距離延長(「レンジエクステンダ」)が達成される。このために、電気エネルギは、後続の時点で、エミッションフリー走行のために一次電動駆動装置によって内燃機関が停止した状態で使用することができるか(「シリアルモード」)、または短期的な出力向上のためにハイブリッド駆動によって使用することができる(「ブースト」)。したがって、両電気機械は、必要に応じて電気的な貯蔵アッセンブリにアクセスすることができる。メイン駆動装置は、一次駆動アクスルを駆動する出力の強い電動駆動装置により形成することができる。
【0024】
分離クラッチの解放時、シフト伝動装置を第1速に入れた場合に行われる別の方法手順によれば、電気機械は、モータモードにおいて、内燃機関を停止状態から始動するために、内燃機関を短期間だけ駆動することができる(「ICE始動」)。
【0025】
さらなる運転モードでは、分離クラッチが締結され、ハイブリッド駆動アッセンブリの電気機械を、貯蔵アッセンブリからの電気エネルギを機械エネルギに変換するために、モータモードで運転することができる。シフト伝動装置の第1のシフトポジションでは、トルクは電気機械および内燃機関から、第1の変速比で二次駆動アクスルに伝達される(第1速)。第2のシフトポジションでは、シフト伝動装置は対応してトルクを第2の変速比で駆動アクスルに伝達する(第2速)。ハイブリッド駆動アッセンブリによる二次駆動アクスルの駆動は、一次電動モータによる一次駆動アクスルの駆動に並行して行うことができる。その限りで、このモードはパラレル運転モードとも呼ばれる。電気機械と内燃機関とを組み合わせることにより、より高い効率を有する範囲への内燃機関の負荷点シフトが可能である(「負荷点シフト」)。電気機械のみで入力軸を駆動することも可能である。このために、分離クラッチを締結し、シフト伝動装置をニュートラルポジションに移行し、電気機械をモータモードで運転させる。
【0026】
好適な実施例を以下に図面につき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】自動車の駆動アクスルのためのハイブリッド駆動アッセンブリを示す縦断面図である。
図2図1に示したハイブリッド駆動アッセンブリを示す斜視図である。
図3図1に示したハイブリッド駆動アッセンブリを、ハウジングを切り取った状態で示す斜視図である。
図4図1に示したハイブリッド駆動アッセンブリを示す概略図である。
図5図1に示したハイブリッド駆動アッセンブリの可能な運転モードの一覧である。
図6図1に示したハイブリッド駆動アッセンブリを備えた自動車のパワートレインアッセンブリを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に併せて説明する図1図5は、自動車の駆動アクスルのためのハイブリッド駆動アッセンブリ2を示している。車両は、一次電気機械によって駆動される一次駆動アクスルと、ハイブリッド駆動アッセンブリ2を備えていてよい二次駆動アクスルとを有していてよい。
【0029】
ハイブリッド駆動アッセンブリ2は、内燃機関3と、電気機械4と、シフト伝動装置6および差動伝動装置7を備えた伝動装置アッセンブリ5とを有している。電気機械4は、特に、ステータ10と、このステータ10に対して回転可能なロータ13とを有しており、ロータ13は、電気機械への通電時にモータ軸19を回転式に駆動する。モータ軸19は、軸受手段15,15’によって、モータハウジング22内で回転軸線A19を中心として回転可能に支承されていてよい。モータ軸19の回転運動は、シフト伝動装置6の第1の入力部材(23)に伝達される。電気機械4にはバッテリ52から電流が供給され、バッテリは、発電機運転中に電気機械4によって充電することができる。内燃機関3は、シフト伝動装置6の入力軸11に結合されている。この入力軸11は、第2の入力部材を形成する。シフト伝動装置6は2つのシフト段を有しており、これにより、入力軸11から導入されたトルクを互いに異なる2つの変速比i1,i2で中間軸24に伝達することができる。中間軸24は、差動伝動装置7の差動装置キャリヤ14に、この差動装置キャリヤ14を駆動するために駆動接続されている。差動伝動装置7によって、シフト伝動装置6により導入された回転運動は、2つの出力部分33,34に分割される。アクチュエータ9により制御可能であり、選択的に駆動アクスルにトルクを伝達するか、またはトルク伝達を遮断するように構成されている別のクラッチ8が設けられている。トルク伝達を遮断するという点で、クラッチ8は分離クラッチと呼ぶこともできる。
【0030】
シフト伝動装置6は、入力軸11上で回転可能に支承されている第1の駆動ギヤ23および第2の駆動ギヤ31、ならびに入力軸11に対して平行な中間軸24を含んでいる。中間軸24は、第1の駆動ギヤ23に係合している第1の中間ギヤ25と、第2の駆動ギヤ31に係合している第2の中間ギヤ26とを備えている。軸方向で第1の駆動ギヤ23と第2の駆動ギヤ31との間に配置されており、選択的に第1の駆動ギヤ23または第2の駆動ギヤ31を入力軸11に接続するか、または入力軸11から分離するように構成されているシフトクラッチ20がさらに設けられている。第1の駆動ギヤ23は、特に永続的に電気機械4に駆動接続されており、その点に関してシフト伝動装置6の第1の入力部材を形成する。このために、特に、電気機械4のモータ軸19が、第1の駆動ギヤ23に係合している駆動ピニオン21を有していることが規定されている。電気機械4のモータ軸19と入力軸11とは、平行に互いに対してずらされて配置されている。駆動ピニオン21の適切な構成によって、必要に応じて第1の予備変速を実現することができる。入力軸11は、本実施形態では内燃機関の出力軸(図示せず)に対して同軸に配置されており、この出力軸に特に永続的に相対回動不能に接続されていてよい。入力軸11は、軸受手段16,17により、定置のハウジング18内で第1の回転軸線A11を中心として回転可能に支承されている。入力軸11は、好適には、第1の駆動ギヤ23のための支承区分77および第2の駆動ギヤ31のための支承区分77’への潤滑剤供給のために、1つの長手方向孔75と複数の横方向孔76,76’とを備えている。軸方向で第1の駆動ギヤ23と第2の駆動ギヤ31との間に入力部分70が設けられており、この入力部分70は、入力軸11に相対回動不能に結合されている。電気機械4および内燃機関3は、伝動装置入力軸11に関して同一の側に配置されているが、この配置に限定されることはない。
【0031】
シフトクラッチ20は、アクチュエータ74により制御可能である。クラッチ20のシフトポジションに応じて、複数のシフト段が実現される。第1のシフト段は、第1のギヤ対、つまり第1の駆動ギヤ23と第1の中間ギヤ25とによって形成されているので、トルクは入力軸11から差動装置7に第1の変速比i1で伝達される(第1速)。第2のシフト段は、第2のギヤ対、つまり第2の駆動ギヤ31と第2の中間ギヤ26とによって形成されており、この第2のシフト段により、トルクは第2の変速比i2で差動装置7に伝達可能である(第2速)。ニュートラルポジション(P0)では、両駆動ギヤ23,31が、入力部分70または入力軸11から連結解除されている。
【0032】
シフトクラッチ20は、入力部分70の他に、特に第1の駆動ギヤ23に相対回動不能に結合されている第1の出力部分71と、第2の駆動ギヤ31に相対回動不能に結合されている第2の出力部分72と、入力部分70を第1の出力部分71または第2の出力部分72にトルクを伝達するために任意に連結することができる連結エレメント73とを含んでいる。連結エレメント73は、本実施形態では、摺動スリーブの形態で構成されており、摺動スリーブは、入力部分70上に相対回動不能に保持されており、この入力部分70に対してアクチュエータ74によって軸方向で摺動可能である。摺動スリーブは、ニュートラルポジション(P0)では、第1の出力部分71および第2の出力部分72に対して自由に回転可能であり、第1のシフトポジション(P1)では第1の出力部分71に相対回動不能に接続されており、第2のシフトポジション(P2)では第2の出力部分72に相対回動不能に接続されている。
【0033】
摺動スリーブの操作は、アクチュエータ74を介して行われ、このアクチュエータ74は、電動モータ式の回転駆動装置78と、回転運動を線形運動に変換する変換ユニット79とを含んでいてよい。変換ユニット79は、本実施形態では、回転駆動可能なスピンドルと、スピンドルの回転時に軸方向に運動させられるスピンドルスリーブとを備えたスピンドル駆動装置を有している。スピンドルスリーブにはシフトフォーク80が取り付けられており、シフトフォーク80は、2つのスライドブロックで摺動スリーブ73の環状溝に係合する。アクチュエータ74は、電子的な調整ユニット53によって制御可能であり、この調整ユニット53により、自動車の走行状態に応じて、必要に応じて制御することができる。別の電子機械式のアクチュエータ、または電磁式、ハイドロリック式またはニューマチック式のアクチュエータも使用できることは自明である。
【0034】
両中間ギヤ25,26は、中間軸24に相対回動不能に結合されている。この結合は、たとえばスプライン軸結合部による形状結合によって、かつ/または溶接結合のような材料結合によって実現することができる。複数のギヤのうちの少なくとも1つのギヤと軸との一体的な構成も可能である。中間軸24は、ハウジング18内で軸受手段28,28’により回転軸線A24を中心として回転可能に支承されている。この回転軸線A24は、入力軸11の回転軸線A11に対して、かつ差動伝動装置7の回転軸線A7に対して平行に延びている。
【0035】
入力軸11、中間軸24および差動装置7の回転軸線A7は、互いに平行に配置されている。第2の中間ギヤ26は、差動伝動装置7を駆動するためにリングギヤ12に係合している。したがって、第1の駆動ギヤ23は、電気機械4の駆動ピニオン21と、第1の中間ギヤ25とに噛み合う。第2の中間ギヤ26は、第2の駆動ギヤ31と、リングギヤとに噛み合う。これにより、ギヤ23,26の二重機能がそれぞれ得られており、このことは、部品数および構造サイズに関して有利である。特に、シフト伝動装置6は、トルクを伝達する6つのギヤ、すなわち駆動ピニオン21、第1の駆動ギヤ23、第2の駆動ギヤ31、第1の中間ギヤ25、第2の中間ギヤ26およびリングギヤ12のみで構成することができる。シフト伝動装置6の上述のギヤは、たとえば、はす歯を有する平歯車として構成されていてもよい。
【0036】
ギヤまたは歯数の具体的な構成は、技術的な要求および構造空間状況に合わせて調整される。たとえば、第1の駆動ギヤ23と第1の中間ギヤ25との間の第1の変速比i1は、1.5~2.5であってよい。第2の駆動ギヤ31と第2の中間ギヤ26との間の第2の変速比i2は、1.0~1.6であってよい。さらに、第2の中間ギヤ26とリングギヤ12との間の第3の変速比i3は、1.5~2.5であってよい。全体として、第1速のためには2.25~6.25、第2速のためには1.5~4であってよい、全体変速比が生じる。
【0037】
リングギヤ12は、差動装置ハウジング27に固定的に結合されている。この差動装置ハウジング27は、軸受手段29,29’によりハウジング18内で回転軸線A7を中心として回転可能に支承されている。リングギヤ12と差動装置ハウジング27との結合は、本実施形態では溶接結合であるが、ねじ結合のような別の結合手段も可能である。差動装置ハウジング27は2つのハウジング部分を含んでいてよく、これらのハウジング部分は、その開口の領域においてそれぞれフランジ区分を有しており、このフランジ区分により、ハウジング部分はリングギヤ12の対応する収容部内に挿入され、リングギヤ12に結合されている。
【0038】
差動装置ハウジング27内には、差動装置キャリヤ14が回転軸線A7を中心として回転可能に支承されており、この差動装置キャリヤ14は、導入された回転運動を第1の側軸を駆動する第1の差動装置出力部分33と、第2の側軸を駆動する第2の差動装置出力部分34とに分割する。具体的には、差動装置キャリヤ14内に、ピン30が収容されていてよく、このピン30上に、2つの差動装置ギヤ32がピン軸線を中心として回転可能に支承されている。差動装置ギヤ32は、回転軸線A7に対して同軸的に配置されている第1の差動装置出力部分33および第2の差動装置出力部分34に歯列によって係合している。両差動装置出力部分33,34は、特に側軸ギヤの形態で構成されており、関連する側軸(ここでは図示せず)との相対回動不能な接続のためのシャフト歯列を有していてよい。両側軸ギヤ33,34は、差動装置ハウジング27に対して、摩擦を減じる滑りディスクを介して軸方向で支持されていてよい。
【0039】
クラッチ8は、形状結合式の分離クラッチとして、特にギアクラッチとして構成されていてよいが、別の形態のクラッチ、たとえば摩擦クラッチも同様に可能である。クラッチ8は、差動装置キャリヤ14に固定的に結合され、特に一体的に構成されている第1のクラッチ部分36と、第1のクラッチ部分36に対して軸方向に可動で、差動装置ハウジング27に相対回動不能に結合されている第2のクラッチ部分37とを含んでいる。第2のクラッチ部分37は、トルクを伝達するために、第1のクラッチ部分36にエンゲージされてよく、両クラッチ部分の間で形状結合式の結合部が生じる。第2のクラッチ部分37を再びレリーズすることにより、トルク伝達を再び遮断することができる。第1のクラッチ部分36は、形状結合手段として歯付きリングを有しており、この歯付きリングは、差動装置キャリヤ14の端面に一体成形されている。対応して、第2のクラッチ部分37が、差動装置ハウジング27内に配置されている鏡像反転の歯付きリングを有している。さらに、第2のクラッチ部分37は、全周にわたって分配された軸方向の複数の突起38を有している。これらの突起38は、差動装置ハウジング27の対応する貫通開口を通って貫通する。アクチュエータ9の適切な制御により、第2のクラッチ部分37を第1のクラッチ部分36に対して軸方向に運動させることができ、エンゲージ状態においてリングギヤ12から差動装置キャリヤ14へのトルク伝達が行われるのに対して、レリーズ状態ではトルク伝達が遮断されている。
【0040】
アクチュエータ9は、電磁石39と磁石ピストン40とを含んでおり、電磁石39への通電時に、磁石ピストン40にクラッチ8の方向に負荷を加えるので、クラッチ8が締結される。第2のクラッチ部分37にはセンサディスク35が取り付けられており、このセンサディスク35は、センサ(図示せず)と協働し、これにより、クラッチ8のシフト位置を特定することができる。差動装置ハウジング27とセンサディスク35との間には、戻しばね41が配置されている。電磁石39がスイッチオフされると、第2のクラッチ部分37がその初期位置に運動させられるので、クラッチ8は再び解放される。
【0041】
差動装置ハウジング27は、第1のスリーブ突起42および第2のスリーブ突起43を有しており、これらの突起42,43は、軸受29,29’を介して伝動装置ハウジング18内で回転可能に支承されている。図示しない側軸は、スリーブ突起42,43を通して挿入し、その内側の端部において関連する側軸ギヤ33,34にそれぞれ接続することができる。
【0042】
ハイブリッド駆動アッセンブリ2により、多数の運転モードを実現することができる。図5には、種々異なるシフト・運転状態のためのシフト一覧が示されている。図5ではC1と記載されているシフトクラッチ20は、3つのシフトポジションP1、P0、P2に移行することができる。図5ではC2と記載されている分離クラッチ8の締結時には、種々異なる駆動状態を実現することができる。シフトポジションP1またはP2では、電気機械4がスイッチオフになっている場合、駆動は、純粋に内燃機関3によって第1速または第2速で行うことができる(行「ICE1」および「ICE2」)。電気機械4がスイッチオンされている場合、両方の機械3,4による駆動アクスルの同時的な駆動が可能である(行「PM1」,「PM2」)。トルクは、電気機械4から駆動部分21,23,25,24,26を介してリングギヤ12に導入される。内燃機関3により、第1速では駆動部分21,23,25,24,26を介して、第2速では駆動部分31,26を介してトルクがリングギヤ12に導入される。行M1は、負荷点シフト(load point shifting)のためのシフト状態を示している。シフトポジションP0では、駆動は、純粋に電気機械4により行うことができる(行「EV1」)。この場合、内燃機関3は停止されている。
【0043】
さらに、ハイブリッド駆動アッセンブリ2は-別の電気駆動アクスルに関連して-シリアルモードで運転することができる。アッセンブリ2は、分離クラッチ8の解放時かつシフトクラッチ20が第1のシフトポジションP1にある場合に、電気エネルギを生成し、この電気エネルギは次いで、別の電動モータによる別の駆動アクスルの駆動のために使用することができる(行「M2」)。この場合、内燃機関3から構成要素31,26,24,25,23,21を介して電気機械4へ動力伝達が行われる。さらに、アッセンブリは、車両の停止時に、分離クラッチ8が解放していてシフトクラッチ20が第1のシフトポジションP1にある場合に、電流を生成するか(発電機モード)、または電気機械に接続されたバッテリを充電することができる(行「M3」)。反対に、内燃機関3を、電気機械4によって、分離クラッチ8が解放位置にありかつシフトクラッチ20が第1のシフトポジションP1にある場合に始動することができる(モータモード)。
【0044】
図6は、図1または図4に示した本発明に係るハイブリッド駆動アッセンブリ2を備えた本発明に係るパワートレインアッセンブリ44を概略図で示している。パワートレインアッセンブリ44は、第1の駆動アクスル46のための第1のパワートレイン45と、第2の駆動アクスル48のための第2のパワートレイン47とを含んでいる。
【0045】
第1のパワートレイン45は、電気機械51および後置された伝動装置アッセンブリ50を備えた第1の駆動ユニット49を含んでおり、伝動装置アッセンブリ50によって、モータトルクが駆動トルクに変換されるか、またはモータ回転数が駆動回転数に変換される。第2のパワートレイン47は、構造的に図1に示したように構成されていてよいハイブリッド駆動アッセンブリ2を含んでいる。さらに、第1の電気機械51にもハイブリッド駆動アッセンブリ2の電気機械3にも電気的に接続されている、電気エネルギを貯蔵する貯蔵アッセンブリ52と、第1の駆動ユニット49および/または第2の駆動ユニット2または第1の駆動ユニット49の機械3または第2の駆動ユニット2の機械4を制御する制御ユニット53とが設けられている。
【0046】
第1の駆動アクスル46が自動車のリアアクスルを形成し、第2の駆動アクスル48が自動車のフロントアクスルを形成していることが確認可能であるが、逆の配置も可能である。両パワートレイン45,47は、機械的に互いに分離されており、つまり、両パワートレイン間での動力伝達は不可能である。第1の駆動ユニット49は、第1の駆動アクスル46の唯一の機械的な駆動のために働く一方で、ハイブリッド駆動アッセンブリ2は、第2の駆動アクスル48の唯一の機械的な駆動のために働く。
【0047】
第1の駆動アクスル46を駆動する第1の駆動機械51は、ハイブリッド駆動アッセンブリ2の駆動機械3,4の少なくとも一方または両方よりも強い出力で構成されていてよい。その限りでは、第1の駆動ユニット49は一次駆動ユニットと呼ぶことができ、第1の駆動アクスル46は、対応して一次駆動アクスルと呼ぶことができる一方で、第2の駆動ユニット2は二次駆動ユニットと呼ぶことができ、第2の駆動アクスル48は、対応して二次駆動アクスルと呼ぶことができる。1つの可能な実施形態では、一次駆動ユニット49の電気機械51が、60kWを超える、特に70kWを超える最大電力を有していてよい。
【0048】
一次駆動アクスル46の伝動装置アッセンブリ50は、電動モータ51によって導入された回転運動を低速に変換するための減速伝動装置54と、後置された差動伝動装置55と含んでいる。差動伝動装置55により、導入されたトルクが両側軸ギヤ56,57に分配され、これらの側軸ギヤに駆動接続された側軸58,59に伝達される。側軸58,59の端部には等速回転ジョイントが位置しており、等速回転ジョイントは、角運動における車両ホイール60,61へのトルク伝達を可能にする。
【0049】
二次駆動アクスル48も同様に構成されている。差動伝動装置7から、クラッチ8の締結時に導入されるトルクが、両側軸ギヤ33,34に伝達される。側軸ギヤのシャフト歯部内には、対応する出力軸62,63が、トルク伝達のために相対回動不能に挿入されている。出力軸62,63は、関連する側軸64,65を介して、二次駆動アクスル48のホイール66,67へのトルク伝達のために、等速ジョイントに接続されている。
【0050】
一次駆動アッセンブリ49と二次ハイブリッド駆動アッセンブリ2とを備えたパワートレインアッセンブリ44は、有利な形式で、複数の運転モードを可能にする。
【0051】
たとえば、ハイブリッド駆動アッセンブリ2はパラレルモードで運転することができ、パラレルモードでは、両方の機械3,4が、クラッチ8の締結時に一緒に二次駆動アクスル48を駆動し、しかも選択的に第1速または第2速で駆動する。さらに、駆動アッセンブリ2,49はシリアルモードで運転することができ、この場合、ハイブリッド駆動アッセンブリ2は、クラッチ8の解放時に電気エネルギを生成し、この電気エネルギは、次いで一次駆動アクスル46を駆動するために、一次電動モータ51により使用される。車両の停止時にも、ハイブリッド駆動アッセンブリ2は、クラッチ8の解放時に電気エネルギを生成することができ(発電機モード)、または貯蔵手段52を充電することができる。逆に、内燃機関3を、電気機械4によって始動させることができる(モータモード)。さらに、内燃機関3が電気機械4によってより高い効率を有する負荷範囲で運転される負荷点上昇が可能である。
【0052】
全体として、シフト伝動装置6を備えたハイブリッド駆動アッセンブリ2は、高い性能を、コンパクトかつ単純な構造と同時に提供する。一次駆動アクスル46との協働において、上述の運転可能性が生じる。
【符号の説明】
【0053】
2 ハイブリッド駆動アッセンブリ
3 内燃機関
4 電気機械
5 伝動装置アッセンブリ
6 シフト伝動装置
7 差動伝動装置
8 クラッチ
9 アクチュエータ
10 ステータ
11 入力軸
12 出力部材/リングギヤ
13 ロータ
14 差動装置キャリヤ
15,15’ 軸受
16 軸受
17 軸受
18 ハウジング
19 モータ軸
20 シフトクラッチ
21 駆動ピニオン
22 モータハウジング
23 第1の駆動ギヤ
24 中間軸
25 第1の中間ギヤ
26 第2の中間ギヤ
27 差動装置ハウジング
28,28’ 軸受手段
29,29’ 軸受手段
30 ピン
31 第2の駆動ギヤ
32 差動装置ギヤ
33,34 出力部分/側軸ホイール
35 センサディスク
36 第1のクラッチ部分
37 第2のクラッチ部分
38 突起
39 電磁石
40 磁石ピストン
41 戻しばね
42 スリーブ突起
43 スリーブ突起
44 パワートレインアッセンブリ
45 第1のパワートレイン
46 第1の駆動アクスル
47 第2のパワートレイン
48 第2の駆動アクスル
49 第1の駆動ユニット
50 伝動装置アッセンブリ
51 電気機械
52 貯蔵アッセンブリ
53 制御ユニット
54 減速伝動装置
55 差動伝動装置
56,57 側軸ギヤ
58,59 側軸
60 ホイール
61 ホイール
62,63 出力軸
64,65 側軸
66,67 ホイール
70 入力部分
71 第1の出力部分
72 第2の出力部分
73 連結エレメント
74 アクチュエータ
75 長手方向孔
76,76’ 横方向孔
77,77’ 支承区分
78 回転駆動装置
79 変換ユニット
80 シフトフォーク
A 回転軸線
i 変速比
M モード
n 回転数
P ポジション
図1
図2
図3
図4
図5
図6