(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】優れた耐黒変性及び耐アルカリ性を付与する三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板用表面処理組成物、これを用いて表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 175/04 20060101AFI20240304BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20240304BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240304BHJP
B32B 15/095 20060101ALI20240304BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20240304BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20240304BHJP
C09D 5/10 20060101ALI20240304BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20240304BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240304BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240304BHJP
C09D 175/06 20060101ALI20240304BHJP
C09D 183/00 20060101ALI20240304BHJP
C09D 183/02 20060101ALI20240304BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20240304BHJP
C23C 28/00 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
C09D175/04
B05D7/14 A
B05D7/24 302T
B05D7/24 302Y
B05D7/24 303B
B32B15/095
C08G18/00 C
C08G18/42
C09D5/10
C09D7/40
C09D7/61
C09D7/63
C09D175/06
C09D183/00
C09D183/02
C09D183/04
C23C28/00 A
(21)【出願番号】P 2022518825
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(86)【国際出願番号】 KR2020012844
(87)【国際公開番号】W WO2021060818
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】10-2019-0117527
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】チョ、 ス-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、 ウォン-ホ
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03524711(EP,A1)
【文献】国際公開第2019/124990(WO,A1)
【文献】特開2007-051323(JP,A)
【文献】特開2006-192717(JP,A)
【文献】特開2017-087501(JP,A)
【文献】特開2004-263252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 175/04
B05D 7/14
B05D 7/24
B32B 15/095
C08G 18/00
C08G 18/42
C09D 5/10
C09D 7/40
C09D 7/61
C09D 7/63
C09D 175/06
C09D 183/00
C09D 183/02
C09D 183/04
C23C 28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の固形分100重量%に対して、
水溶性ポリウレタン樹脂20~40重量%;
3種のシラン化合物が架橋結合されたシラン系ゾル-ゲル(sol-gel)樹脂40
~60重量%;
硬化剤5~15重量%;
防錆耐食剤0.5~1.5重量%;
モリブデン系化合物0.1~1.0重量%;
シランカップリング剤1.0~3.0重量%;
有機金属錯体化合物1.0~2.0重量%;
酸除去剤(acid scavenger)1.0~2.0重量%;
アルミニウム系化合物0.1~1.0重量%;及び
潤滑剤1.0~2.0重量%を含み、
前記3種のシラン化合物が架橋結合されたシラン系ゾル-ゲル樹脂は、
テトラエチルオルトシリケート、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、
メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランの中
から選択された1種である第1シラン;2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルト
リメトキシシラン、3-グリシルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシルオキ
シプロピルメチルジエトキシシランの中から選択された1種である第2シラン;3-アミ
ノプロピル-トリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチ
ルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラ
ン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシランの中から選択さ
れた1種である第3シランの重合物から得られ、
前記硬化剤は、メラミン系硬化剤
、ブロックイソシアネート系硬化剤、及びアジリジン系硬化剤から選択された1種以上であり、
前記防錆耐食剤は、リン酸系化合物、フッ素系化合物、バナジウム系化合物、セリウム
塩系化合物及びセレニウム塩系化合物から選択された1種以上であり、
前記酸除去剤は、カルボジイミド系化合物及びオキサゾリン系化合物から選択された1
種以上であることを特徴とする、表面処理組成物。
【請求項2】
前記水溶性ポリウレタン樹脂は、ポリエステルポリオールまたはポリカーボネートポリ
オールとポリイソシアネート化合物の反応生成物であることを特徴とする、請求項1に記
載の表面処理組成物。
【請求項3】
前記ポリエステルポリオールまたはポリカーボネートポリオールは、水酸基価が80~
200mgKOH/gであり、重量平均分子量が1,000~5,000であることを特
徴とする、請求項2に記載の表面処理組成物。
【請求項4】
前記モリブデン系化合物は、モリブデン酸化物、モリブデン硫化物、モリブデン酢酸塩
、モリブデンリン酸塩、モリブデン炭化物、モリブデン塩化物及びモリブデン窒化物から
選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項5】
前記シランカップリング剤は、ビニルトリエトキシシラン、3-グリシルオキシプロピ
ルトリメトキシシラン、3-グリシルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシル
オキシプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル))-3-アミノプロ
ピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピル
トリエトキシシラン、及び2-パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシランから選択
された1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項6】
前記有機金属錯体化合物は、チタン系化合物及びジルコニウム系化合物から選択された
1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項7】
前記アルミニウム系化合物は、アルミニウムオキシド、アルミニウムヒドロキシド、ア
ルミニウムクロライド, アルミニウムサルフェート、アルミニウムニトレート、アルミニ
ウムカーボネート、アルミニウムアセテート、アルミニウムシリケート、アルミニウムホ
スフェート、アルミニウムフルオリド及びアルミニウムニトリドから選択された1種以上
であることを特徴とする、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項8】
前記潤滑剤は、パラフィン系ワックス、オレフィン系ワックス、カルナバ系ワックス、
ポリエステル系ワックス、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、ポリエ
チレン-テフロン(登録商標)系ワックス及びポリテフロン(登録商標)系ワックスから
選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項9】
前記表面処理組成物は、溶媒をさらに含み、固形分含有量が10~20重量%であり、
残部溶媒であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の表面処理組成
物。
【請求項10】
前記溶媒は、溶媒全重量に対してアルコール3~5重量%及び残部の水を含むことを特
徴とする、請求項9に記載の表面処理組成物。
【請求項11】
三元系溶融亜鉛合金めっき層が形成された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板上に請求項1
から8のいずれか一項に記載の表面処理組成物をコーティングする段階;及び
前記コーティングされた表面処理組成物を乾燥して表面処理皮膜層を形成する段階を含
む、表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項12】
前記表面処理組成物を1.5~30μmの厚さでコーティングすることを特徴とする、
請求項11に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項13】
前記コーティングは、ロールコーティング、スプレー、浸漬、スプレースクイージング
または浸漬スクイージングによって行われることを特徴とする、請求項11に記載の表面
処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項14】
前記乾燥は、素材鋼板の最終到達温度(PMT)基準で70~150℃温度で行われる
ことを特徴とする、請求項11に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の
製造方法。
【請求項15】
前記乾燥は熱風乾燥炉または誘導加熱炉で行われることを特徴とする、請求項11に記
載の表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項16】
前記熱風乾燥炉は、内部温度が100~250℃であることを特徴とする、請求項15
に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項17】
前記誘導加熱炉は、1000~4500Aの電流が印加されることを特徴とする、請求
項15に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項18】
前記表面処理皮膜層を水冷させる段階をさらに含む、請求項11に記載の表面処理され
た三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項19】
前記三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法は連続工程で行われ、前記連続工程の速
度は80~120mpmである、請求項11に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛合金
めっき鋼板の製造方法。
【請求項20】
鋼板;
前記鋼板の少なくとも一面に形成された三元系溶融亜鉛合金めっき層;及び
前記三元系溶融亜鉛合金めっき層上に形成された表面処理皮膜層を含み、
前記表面処理皮膜層は、請求項1から8のいずれか一項に記載の表面処理組成物で形成
された、表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板。
【請求項21】
前記三元系溶融亜鉛合金めっき層は、界面に形成されたAl濃化層を含み、前記Al濃
化層の占有面積率は70%以上(100%を含む)であることを特徴とする、請求項20
に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板。
【請求項22】
前記三元系溶融亜鉛合金めっき層は、Al0.2~15重量%、Mg0.5~3.5重
量%、残部Zn及び不可避不純物を含むことを特徴とする、請求項20に記載の表面処理
された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板。
【請求項23】
前記表面処理皮膜層は、厚さが0.3~3μmであることを特徴とする、請求項20に
記載の表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料の表面に適用される表面処理組成物及びその適用に関するものであり、より詳細には、特に家電用途に用いられ、マグネシウム(Mg)及びアルミニウム(Al)を含有する三元系溶融亜鉛合金めっき層を有する鋼板の耐黒変性、耐アルカリ性及び耐食性を向上させるためのクロムフリー表面処理組成物、上記表面処理組成物を用いて表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板及びこの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にマグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)を含有した溶融亜鉛合金めっき層を有する鋼板は、純粋亜鉛めっき鋼板に比べて、赤錆に対する耐食性に優れた鋼材である。
【0003】
このようなマグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)を含有した溶融亜鉛合金めっき層を有する鋼板は、露出面のほとんどが亜鉛(Zn)または亜鉛合金(Zn alloy)となっており、一般環境、特に湿潤雰囲気に露出する時に表面に白錆の発錆現象が起こる。また、めっき層に含まれているマグネシウム及びアルミニウムは、亜鉛よりも酸素親和力が良いため、亜鉛に結合する酸素が不足すると黒変現象が起こりやすい。
【0004】
従来には防錆処理の一環として、金属表面に5~100mg/m2のクロメート前処理皮膜を形成した後、有機皮膜を形成した。しかし、前処理剤に含まれたクロムなどの重金属によって付加的な前処理設備及び工程が必要であるだけでなく、重金属廃水によって作業者の安全性が問題となった。また、水洗水や廃水などで発生する6価クロム含有溶液は、特殊な処理工程によって処理する必要があるため、製造費用が上昇する問題があり、クロメート処理されためっき鋼板も使用中または廃棄時にクロムイオンが溶出されるという問題があり、環境汚染の問題が深刻であった。
【0005】
このような問題を解決しながら耐食性を確保するため、従来技術ではクロムが含有されていない耐食用金属コーティング剤などの表面処理剤を開発した。
【0006】
一例として、日本公開特許公報昭53-28857号公報及び日本公開特許公報昭51-71233号公報では、重リン酸アルミニウムを含有するか、タンニン酸に酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、イミダゾールなどの芳香族カルボン酸、界面活性剤などの組み合わせによって皮膜物質を形成したが、耐食性に劣る。一方、日本公開特許公報第2002-332574号公報には、炭酸ジルコニウム、バナジルイオン、ジルコニウム化合物などで構成された表面処理剤が開示されているが、これは耐食性が良好であるものの耐黒変性に脆弱である。
【0007】
そして、日本登録特許公報平7-096699号公報には、チタン系、ジルコニウム系、リン酸系、モリブデン系化合物などで構成された表面処理剤が開示されているが、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)などが用いられた溶融亜鉛合金めっき鋼板では黒変が抑制できない。また、日本公開特許公報2005-146340号公報には、モリブデン酸アンモニウム、水分散ウレタン樹脂、イソプロピルアミン、炭酸ジルコニウムアンモニウム、エポキシ系シランカップリング剤、シリカゾルで構成された表面処理剤が開示されているが、この場合には表面処理塗膜の厚さが増加して導電性及び溶接性が要求されるところに適用し難く、厚さを減少させる場合には、十分な耐食性が付与できないという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】日本公開特許公報昭53-28857号公報
【文献】日本公開特許公報昭51-71233号公報
【文献】日本公開特許公報2002-332574号公報
【文献】日本登録特許公報平7-096699号公報
【文献】日本公開特許公報2005-146340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような実情に鑑みて案出されたものであって、優れた耐黒変性、耐アルカリ性、及び耐食性の特性を付与する溶融亜鉛合金めっき鋼板用表面処理組成物、これを用いた表面処理方法及び表面処理された溶融亜鉛合金めっき鋼板を提供する。
【0010】
また、本発明は、環境汚染物質であるクロムなどの重金属成分を全く含まず、人体に無害であり、環境汚染による問題を生じさせないめっき鋼板の表面処理組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面によると、組成物の固形分100重量%に対して、水溶性ポリウレタン樹脂20~40重量%;3種のシラン化合物が架橋結合されたシラン系ゾル-ゲル樹脂40~60重量%;硬化剤5~15重量%;防錆耐食剤0.5~1.5重量%;モリブデン系化合物0.1~1.0重量%;シランカップリング剤1.0~3.0重量%;有機金属錯体化合物1.0~2.0重量%;酸除去剤(Acid scavenger)1.0~2.0重量%;アルミニウム系化合物0.1~1.0重量%;及び潤滑剤1.0~2.0重量%を含む表面処理組成物が提供される。
【0012】
上記水溶性ポリウレタン樹脂は、ポリエステルポリオールまたはポリカーボネートポリオールとポリイソシアネート化合物の反応生成物であることができる。
【0013】
上記ポリエステルポリオールまたはポリカーボネートポリオールは、水酸基価が80~200mgKOH/gであり、重量平均分子量が1,000~5,000であることができる。
【0014】
上記3種のシラン化合物が架橋結合されたシラン系ゾル-ゲル樹脂は、テトラエチルオルトシリケート、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、及びジメチルジエトキシシランの中から選択された1種である第1シラン;3-グリシルオキシプロピル-トリメトキシシラン、2-(3,4エポキシシクロヘキシル-エチルトリメトキシシラン、3-グリシルオキシプロピルトリメトキシシラン、及び3-グリシルオキシプロピルメチルジエトキシシランの中から選択された1種である第2シラン;及び3-アミノプロピル-トリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシランの中から選択された1種である第3シランの重合物から得られるものであることができる。
【0015】
上記硬化剤は、メラミン系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤、アジリジン系硬化剤及びオキサゾリン系硬化剤から選択された1種以上であることができる。
【0016】
上記防錆耐食剤は、リン酸系化合物、フッ素系化合物、バナジウム系化合物、セリウム塩系化合物及びセレニウム塩系化合物から選択された1種以上であることができる。
【0017】
上記モリブデン系化合物は、モリブデン酸化物、モリブデン硫化物、モリブデン酢酸塩、モリブデンリン酸塩、モリブデン炭化物、モリブデン塩化物及びモリブデン窒化物から選択された1種以上であることができる。
【0018】
上記シランカップリング剤は、ビニルトリエトキシシラン、3-グリシルオキシプロックトリメトキシシラン、3-グリシルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル))-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、及び2-パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシランから選択された1種以上であることができる。
【0019】
上記有機金属錯体化合物は、シラン系化合物、チタン系化合物及びジルコニウム系化合物から選択された1種以上であることができる。
【0020】
上記酸除去剤は、カルボジイミド系化合物及びオキサゾリン系化合物から選択された1種以上であることができる。
【0021】
上記アルミニウム系化合物は、アルミニウムオキシド、アルミニウムヒドロキシド、アルミニウムクロライド, アルミニウムサルフェート、アルミニウムニトレート、アルミニウムカーボネート、アルミニウムアセテート、アルミニウムシリケート、アルミニウムホスフェート、アルミニウムフルオリド及びアルミニウムニトリドから選択された1種以上であることができる。
【0022】
上記潤滑剤は、パラフィン系ワックス、オレフィン系ワックス、カルナバ系ワックス、ポリエステル系ワックス、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、ポリエチレン-テフロン(登録商標)系ワックス及びポリテフロン(登録商標)系ワックスから選択された1種以上であることができる。
【0023】
上記表面処理組成物は溶媒をさらに含み、固形分含有量が10~20重量%であり、残部溶媒からなるものであることができる。
【0024】
上記溶媒は、溶媒の全重量に対してアルコール3~5重量%及び残部の水を含むことができる。
【0025】
本発明の他の側面によると、三元系溶融亜鉛合金めっき層が形成された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板上に上記表面処理組成物のいずれか1つの表面処理組成物をコーティングする段階;及び上記コーティングされた表面処理組成物を乾燥して表面処理皮膜層を形成する段階を含む表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法が提供される。
【0026】
上記表面処理組成物を1.5~30μmの厚さでコーティングすることができる。
【0027】
上記コーティングは、ロールコーティング、スプレー、浸漬、スプレースクイージング、または浸漬スクイージングによって行われることができる。
【0028】
上記乾燥は、素材鋼板の最終到達温度(PMT)の基準で70~150℃の温度で行われることができる。
【0029】
上記乾燥は、熱風乾燥炉または誘導加熱炉で行われることができる。
【0030】
上記熱風乾燥炉は、内部温度が100~250℃であることができる。
【0031】
上記誘導加熱炉は1000~4500Aの電流が印加されることができる。
【0032】
上記表面処理皮膜層を水冷させる段階をさらに含むことができる。
【0033】
上記三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法は、連続工程からなり、上記連続工程の速度は80~120mpmであることができる。
【0034】
本発明のまた他の側面によると、鋼板;上記鋼板の少なくとも一面に形成された三元系溶融亜鉛合金めっき層;及び上記三元系溶融亜鉛合金めっき層上に形成された表面処理皮膜層を含み、上記表面処理皮膜層は、上記表面処理の組成物のいずれか一つで形成されたものである表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板が提供される。
【0035】
上記三元系溶融亜鉛合金めっき層は、界面に形成されたAl濃化層を含み、上記Al濃化層の占有面積率は70%以上(100%を含む)であることができる。
【0036】
上記三元系溶融亜鉛合金めっき層は、Al0.2~15重量%、Mg0.5~3.5重量%、残部Zn及び不可避不純物を含むことができる。
【0037】
上記表面処理皮膜層の厚さは0.3~3μmであることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明の一実施例に係るクロムフリー表面処理組成物で処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板は、特に耐黒変性、耐アルカリ性及び耐食性に優れた効果があり、クロムを処理するために付加設備の設置問題、製造費用の上昇問題、及び環境汚染問題の心配なしに優れた効果を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、様々な実施例を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。
【0040】
本発明は、金属材料の表面に適用される表面処理溶液組成物及びその適用に関するものであって、水溶性有機樹脂及び無機化合物を含有したクロムフリー表面処理溶液組成物、上記組成物を用いて表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板及び上記三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法に関するものである。
【0041】
本発明の一側面に係る表面処理組成物は、組成物の固形分100重量%に対して、水溶性ポリウレタン樹脂20~40重量%;3種のシラン化合物が架橋結合されたシラン系ゾル-ゲル樹脂40~60重量%;硬化剤5~15重量%;防錆耐食剤0.5~1.5重量%;モリブデン系化合物0.1~1.0重量%;シランカップリング剤1.0~3.0重量%;有機金属錯体化合物1.0~2.0重量%;酸除去剤(Acid scavenger)1.0~2.0重量%;アルミニウム系化合物0.1~1.0重量%;及び潤滑剤1.0~2.0重量%を含み、残部溶媒からなる。
【0042】
本発明の一実施例に係る水溶性有機樹脂及び無機化合物を含有したクロムフリー表面処理溶液組成物で表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板は、耐黒変性、耐アルカリ性及び耐食性に優れた効果がある。また、有害な環境物質である6価クロムを含有せず、人体に無害な水溶性有機樹脂及び無機化合物を主成分として含むことで、人体への被害及び環境汚染の問題点を防止することができる。
【0043】
上記水溶性ポリウレタン樹脂は、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板用表面処理溶液組成物の主剤樹脂であって、表面処理される三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板に優れた耐食性及び耐アルカリ性を付与するために含まれる。
【0044】
上記水溶性ポリウレタン樹脂は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物の反応による反応生成物であって、上記ポリオールはポリエステルポリオールまたはポリカーボネートポリオールを用いることが好ましい。
【0045】
上記ポリエステルポリオールまたはポリカーボネートポリオールは、水酸基価が80~
200mgKOH/gであることが好ましい。上記ポリエステルポリオールまたはポリカ
ーボネートポリオールの水酸基値が80mgKOH/g未満である場合、水分散安定性が
低下し、無機化合物との反応のための官能基部位(site)が不足することで、要求さ
れる物性を確保し難いことができる。一方、水酸基値が200mgKOH/gを超える場
合、水分散安定性は優れるものの、皮膜転造後の耐水性、耐食性及びアルカリ脱脂性が低
下する問題が発生する可能性がある。上記ポリエステルポリオールまたはポリカーボネー
トポリオールの水酸基値は、例えば、80~180mgKOH/g、80~150mgKOH/g、100~200mgKOH/g、100~150mgKOH/gであり、より好ましくは100~150mgKOH/gである。
【0046】
上記ポリエステルポリオールまたはポリカーボネートポリオールは、重量平均分子量が1,000~5,000であることが好ましい。重量平均分子量が1,000未満である場合、十分な耐食性の確保が難しく、5,000を超える場合は溶液安定性が低下する問題が発生する可能性がある。上記重量平均分子量は、例えば、1,000~4,500、1000~4000、1000~3500、1500~5000、1500~4500、1500~4000、2000~5000、2000~4500、2000~4000であり、より好ましくは2000~4000である。
【0047】
上記水溶性ポリウレタン樹脂は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して、20~40重量%であることが好ましい。水溶性ポリウレタン樹脂が20重量%未満である場合、十分な耐食性及び耐アルカリ性の確保が難しいのに対し、40重量%を超える場合には表面処理組成物内のシラン系ゾル-ゲル(Sol-Gel)樹脂及び無機化合物の含有量が比較的少なくなるため、耐食性が却って低下し、耐黒変性が低下する問題が発生する可能性がある。
【0048】
上記3種のシラン化合物が架橋結合されたシラン系ゾル-ゲル樹脂は、耐食性及び耐スクラッチ性を向上させるために含まれ、テトラエチルオルトシリケート、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、及びジメチルジエトキシシランの中から選択された1種である第1シラン;3-グリシルオキシプロピル-トリメトキシシラン、2-(3,4エポキシシクロヘキシル-エチルトリメトキシシラン、3-グリシルオキシプロピルトリメトキシシラン、及び3-グリシルオキシプロピルメチルジエトキシシランの中から選択された1種である第2シラン;及び3-アミノプロピル-トリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシランの中から選択された1種である第3シランを用いた重合物を用いることができる。
【0049】
上記3種のシラン化合物が架橋結合されたシラン系ゾル-ゲル樹脂は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して、40~60重量%であることが好ましい。40重量%未満で添加される場合には、目的とする耐食性及び耐スクラッチ性の確保が難しいという問題があり、一方、60重量%を超える場合、塗膜がブリトル(brittle)となって加工性に問題が生じる。
【0050】
上記硬化剤は、表面処理組成物の主剤樹脂である水溶性ポリウレタン樹脂及び補助主剤樹脂である水溶性アクリルエマルジョン樹脂との架橋結合を介して堅固な有機樹脂皮膜を形成するために含まれる。
【0051】
上記硬化剤は、メラミン系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤、アジリジン系硬化剤及びオキサゾリン系硬化剤からなる群から選択された1種以上であることができる。
【0052】
上記硬化剤は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して5~15重量%含まれることが好ましい。上記硬化剤の含有量が5重量%未満である場合には十分な架橋結合を形成できず、物性向上が期待できず、15重量%を超える場合には過度な架橋結合によって溶液の安定性が低下されるため、時間の経過によって固形化する現象が発生する可能性がある。上記硬化剤は、例えば、7~15重量%、10~15重量%であり、好ましくは10~15重量%であることができる。
【0053】
上記防錆耐食剤は、表面処理組成物の耐食性を向上させるために含まれる物質として、リン酸系化合物、フッ素系化合物、バナジウム系化合物、セリウム塩系化合物及びセレニウム塩系化合物から選択された1種以上の防錆耐食剤が用いられることができる。
【0054】
上記防錆耐食剤は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して0.5~1.5重量%含有されることが好ましい。0.5重量%未満添加される場合、目的とする耐食性の確保が難しいのに対し、1.5重量%を超えると、耐黒変性及び耐アルカリ性の確保が難しいという問題がある。
【0055】
上記表面処理組成物の耐黒変性を向上させるためにモリブデン系化合物が含まれ、上記モリブデン系化合物は、モリブデン酸化物、モリブデン硫化物、モリブデン酢酸塩、モリブデンリン酸塩、モリブデン炭化物、モリブデン塩化物及びモリブデン窒化物から選択された1種以上を用いることができる。
【0056】
上記モリブデン系化合物は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して0.1~1重量%含まれることが好ましい。モリブデン系化合物の含有量が0.1重量%未満である場合、耐黒変性の確保が難しいという問題があり、一方、1重量%を超える場合、耐黒変性の向上効果が僅かであり、却って耐食性が大きく低下する傾向にあるため、好ましくない。一方、モリブデン系化合物を無機バインダーとして用いる際に、無機バインダーではなく配合内にブランディング形態で投入する場合には耐食性が大きく低下するため、好ましくない。
【0057】
本発明の表面処理組成物は、表面処理組成物の水溶性有機樹脂と無機化合物との間の堅固な結合を形成させるために上記水溶性有機樹脂を変性させてカップリング結合反応を行うためにシランカップリング剤を含む。
【0058】
上記シランカップリング剤は、ビニルトリエトキシシラン、3-グリシルオキシプロックトリメトキシシラン、3-グリシルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル))-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、及び2-パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシランから選択された1種以上であることができる。
【0059】
上記シランカップリング剤は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して1.0~3.0重量%の含有量で含まれることが好ましい。上記シラン化合物の含有量が1.0重量%未満である場合、耐食性及び撥水性の確保が難しいという問題があるのに対し、3.0重量%を超えても耐食性及び撥水性の上昇に効果が大きくないため、経済的な側面で好ましくない。
【0060】
上記有機金属錯体化合物は、表面処理組成物と素材鋼板との結合密着性を向上させて耐食性を向上させるために添加される。上記有機金属錯体化合物は、シラン系化合物、チタン系化合物及びジルコニウム系化合物から選択された1種以上であることができる。
【0061】
上記有機金属錯体化合物は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して、1.0~2.0重量%含まれることが好ましい。有機金属錯体化合物の含有量が1.0重量%未満である場合、表面処理組成物と鋼板との密着性及び耐食性の低下が発生し、2.0重量%を超える場合、それ以上の密着性及び耐食性の上昇効果がないだけでなく、保存安定性が確保されない。
【0062】
本発明の表面処理組成物で酸除去剤(acid scavenger)は、表面処理組
成物内に存在する残留酸を制御することにより、耐黒変性の低下及び耐食性の低下を防止
するために添加され、カルボジイミド系化合物及びオキサゾリン系化合物から選択された1種以上が用いられることができる。
【0063】
上記酸除去剤は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して、1.0~2.0重量%の含有量で含まれることが好ましい。1.0重量%未満である場合、耐黒変性改善及び耐食性低下防止の効果が発現されないのに対し、2.0重量%を超える場合、それ以上の耐黒変性改善及び耐食性低下防止の効果がないだけでなく、保存安定性が確保されない。
【0064】
本発明の表面処理組成物は、表面処理組成物による耐黒変性の向上のためにアルミニウム系化合物を含む。上記アルミニウム系化合物は、アルミニウムオキシド、アルミニウムヒドロキシド、アルミニウムクロライド, アルミニウムサルフェート、アルミニウムニトレート、アルミニウムカーボネート、アルミニウムアセテート、アルミニウムシリケート、アルミニウムホスフェート、アルミニウムフルオリド及びアルミニウムニトリドから選択された1種以上であることができる。
【0065】
上記アルミニウム系化合物は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して、0.1~1.0重量%の含有量で含まれることが好ましい。0.1重量%未満である場合、耐黒変性の確保が難しいという問題があるのに対し、1.0重量%を超える場合、耐水性が低下して好ましくない。
【0066】
上記潤滑剤は、上記クロムフリー表面処理組成物に潤滑性を付与し、特に顧客社加工工程時に潤滑特性による加工性を向上させる機能をする。このような上記潤滑剤は、パラフィン系ワックス、オレフィン系ワックス、カルナバ系ワックス、ポリエステル系ワックス、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、ポリエチレン-テフロン(登録商標)系ワックス及びポリテフロン(登録商標)系ワックスから選択された1種以上であることができる。
【0067】
上記潤滑剤は、上記表面処理組成物の固形分100重量%に対して、1.0~2.0重量%の含有量で含まれることが好ましい。1.0重量%未満である場合、上記表面処理組成物のスリップ性が不足し、追って表面処理された鋼板に対してプレス加工時に表面処理層及び素材の破壊が発生する可能性があり、一方、上記2.0重量%を超える場合には塗膜表面に過度な潤滑剤粒子が分布して耐食性が却って低下することがある。
【0068】
本発明の表面処理組成物は、各成分を希釈させるために溶媒として水を含む。上記水は脱イオン水または蒸留水を意味する。上記溶媒は、本発明の各構成成分の他に残部として含まれるものであるため、その含有量は80~90重量%であることができる。
【0069】
さらに、本発明の表面処理溶液組成物は、溶液安定性を確保するための補助溶媒としてアルコールを含むことができ、上記アルコールはエタノール、イソプロピルアルコールであることができる。上記アルコールは、全溶媒中の3~5重量%含むことが好ましい。
【0070】
本発明の他の実施例によると、上述した表面処理溶液組成物で表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板が提供される。
【0071】
具体的には、鋼板;上記鋼板の少なくとも一面に形成された三元系溶融亜鉛合金めっき層;及び上記三元系溶融亜鉛合金めっき層上に形成された表面処理皮膜層を含み、上記表面処理皮膜層は、上述した表面処理組成物で形成されたものである表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板が提供される。
【0072】
上記三元系溶融亜鉛合金めっき層は、Al0.2~15重量%、Mg0.5~3.5重量%、残部Zn及び不可避不純物を含む三元系溶融亜鉛合金めっき鋼材であることが好ましい。
【0073】
さらに、上記素地鋼板と上記三元系溶融亜鉛合金めっき層の界面にはAl濃化層を含み、上記Al濃化層の占有面積率が70%以上(100%を含む)、より好ましくは、73%以上(100%を含む)であることができる。ここで、占有面積率とは、めっき鋼材の表面から素地鉄の厚さ方向に投影してみたとき、3次元的な曲げなどを考慮せずに平面であると仮定する場合の素地鉄の面積に対するAl濃化層の面積の比を意味する。Al濃化層の占有面積率を70%以上確保する場合、Al濃化層は微細な粒子が連続的に形成された形態を有するようになり、めっき性及びめっき密着性を著しく向上させることができる。
【0074】
本発明の三元系溶融亜鉛合金めっき鋼材において、Mgは三元系溶融亜鉛合金めっき鋼材の耐食性向上のために重要な役割を果たし、腐食環境下でめっき層の表面に緻密な亜鉛水酸化物系腐食生成物を形成することによって三元系溶融亜鉛合金めっき鋼材の腐食を効果的に防止する。
【0075】
本発明において目的とする耐食効果を確保するために、上記Mgは0.5重量%以上、より好ましくは0.9重量%以上含まれることができる。但し、その含有量が過度な場合、めっき浴表面にMg酸化性ドロスがめっき浴表面に急増し、微量元素添加による酸化防止効果が相殺される。これを防止するために、Mgは3.5重量%以下含まれることが好ましく、より好ましくは3.2重量%以下含まれることができる。
【0076】
本発明の三元系溶融亜鉛合金めっき鋼材において、Alはめっき浴内のMg酸化物ドロス形成を抑制し、めっき浴内のZn及びMgと反応してZn-Al-Mg系金属間化合物を形成することで、めっき鋼材の耐腐食性を向上させる。
【0077】
本発明において、このような効果を得るためには、Alは0.2重量%以上含まれることができ、より好ましくは0.9重量%以上含まれることができる。但し、その含有量が過度な場合、めっき鋼材の溶接性及びリン酸塩処理性が劣化することがある。これを防止するためにAlは15重量%以下含まれることが好ましく、より好ましくは12重量%以下含まれることができる。
【0078】
上記表面処理皮膜層は、上述した表面処理組成物が乾燥されたコーティング層であり、表面処理皮膜層に含まれた揮発性物質が全て揮発した後に残った成分に該当する。これにより、上記表面処理皮膜層には溶媒である水またはアルコールが含まれておらず、また、表面処理成分に含まれていた溶媒も含まれていない。したがって、有機樹脂及び無機化合物を含有した表面処理皮膜層に含まれた成分は、全固形分100重量%を基準とした含有量に該当する。
【0079】
上記表面処理皮膜層の各成分に対する具体的な説明は、表面処理皮膜組成物で詳細に説明したため、ここでは省略する。
【0080】
本発明の他の実施例によると、三元系溶融亜鉛合金めっき層が形成された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板上に上述した表面処理組成物をコーティングする段階;及び上記コーティングされた表面処理組成物を乾燥して表面処理皮膜層を形成する段階を含む表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法が提供される。
【0081】
本発明の一実施例によって提供される上記のような表面処理組成物を三元系溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層表面にコーティングする段階を含む。上記表面処理組成物は、1.5~30μmの厚さでコーティングすることができる。このような厚さでコーティングされた表面処理溶液組成物は、乾燥工程を介して乾燥皮膜層の厚さが0.3~3μmになることができる。
【0082】
上記表面処理溶液組成物の厚さが1.5μm未満であると、鋼板粗度の酸部位に表面処理溶液組成物が薄く塗布されて耐食性が低下する問題が発生する可能性があり、30μmを超えると、厚い皮膜層が形成されることで、溶接性及び加工性などが劣化する問題が発生する可能性がある。
【0083】
上記表面処理溶液組成物をコーティングする方法は、通常行われるコーティング方法であれば特に制限しないが、例えば、ロールコーティング、スプレー、浸漬、スプレースクイージング及び浸漬スクイージングなどが挙げられる。
【0084】
上記合金化溶融亜鉛めっき鋼板上にコーティングされた表面処理溶液組成物を乾燥する工程は、素材鋼板の最終到達温度(PMT)の基準で70~150℃温度で行われることが好ましい。上記乾燥温度が素材鋼板の最終到達温度(PMT)の基準で70℃未満であると、有機樹脂の硬化反応が完璧に行われず、堅固な皮膜構造の形成が不十分であり、耐食性及び耐アルカリ性が劣化することがあり、150℃を超えると、水冷過程の間に水蒸気及びヒューム発生によって作業生産性が悪くなり、蒸発した水蒸気が乾燥設備の上部に凝縮する結露現象によって製品の表面品質が劣化することがある。
【0085】
上記乾燥は、熱風乾燥炉または誘導加熱炉で行うことが好ましい。上記熱風乾燥炉を用いて表面処理コーティング組成物を乾燥する場合、上記熱風乾燥炉は内部温度が100~250℃であることが好ましい。一方、上記誘導加熱炉を用いて表面処理コーティング組成物を乾燥する場合、上記誘導加熱炉に印加される電流は、1000~4500Aであることが好ましく、1500~3500Aであることがさらに好ましい。
【0086】
上記熱風乾燥炉の内部温度が100℃未満であるか、誘導加熱炉に印加される電流が1000A未満であると、表面処理コーティング組成物の硬化反応が完璧に行われず、耐食性及び耐アルカリ性が劣化することがある。また、上記熱風乾燥炉の内部温度が250℃超過であるか、誘導加熱炉に印加される電流が4500A超過すると、水冷過程の間に水蒸気及びヒューム発生によって作業生産性が悪くなり、蒸発した水蒸気が乾燥設備の上部に凝縮する結露現象によって製品の表面品質が劣化することがある。
【0087】
また、上記表面処理溶液組成物を乾燥して表面処理皮膜層を形成した後、上記表面処理皮膜層を水冷して最終的に表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板を提供することができる。
【0088】
本発明の一実施例による上記三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法は、連続工程からなることができ、上記連続工程の速度は80~120mpmであることが好ましい。上記連続工程速度が80mpm未満であると生産性が低下するという問題点が発生する可能性があり、120mpmを超過すると表面処理溶液組成物が乾燥される工程で溶液が飛散して表面欠陥を発生させることがある。
【実施例】
【0089】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。下記実施例は本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0090】
(実施例)
(試験及び評価方法)
本実施例で表面処理された鋼板の物性評価の方法及び評価基準は、以下のとおりである。
【0091】
<評判耐食性>
ASTM B117に規定した方法に基づいて、試験片を処理した後、経時による鋼板
の白錆発生率を測定した。この時、評価基準は以下のとおりである。
◎:白錆発生時間が144時間以上
〇:白錆発生時間が96時間以上144時間未満
△:白錆発生時間が55時間以上96時間未満
×:白錆発生時間が55時間未満
【0092】
<加工部の耐食性>
試験片をエリクセン試験機(Erichsen tester)を用いて6mmの高さ
に押し上げた後、48時間経過したときに白錆発生程度を測定した。この時、評価基準は
以下のとおりである。
◎:48時間経過後に白錆発生が5%未満
△:48時間経過後に白錆発生が5%以上7%未満
×:48時間経過後に白錆発生が7%以上
【0093】
<耐黒変性>
試験片を50℃、相対湿度95%が維持される恒温恒湿器に120時間放置することにより、試験前/後の試験片の色変化(色差:ΔE)を観察した。この時、評価基準は以下のとおりである。
◎:ΔE≦2
〇:2<ΔE≦3
△:3<ΔE≦4
×:ΔE>4
【0094】
<耐アルカリ性>
試験片をアルカリ脱脂溶液に60℃、2分間浸漬後に水洗、Air blowing後の前/後の色差(ΔE)を測定した。アルカリ脱脂溶液は、大韓パーカライジング社のFinecleaner L 4460 A:20g/2.4L+L 4460 B 12g/2.4L(pH=12)を用いた。この時、評価基準は以下のとおりである。
◎:ΔE≦2
〇:2<ΔE≦3
△:3<ΔE≦4
×:ΔE>4
【0095】
<溶接性>
溶接性は、空圧式AC Spot溶接機を用いて加圧力250kg、溶接時間15Cycle、通電電流は7.5kAでSpatterがなく、一定の強度を維持するから評価した。この時、評価基準は以下のとおりである。
〇:溶接可能
△:溶接は可能であるが品質不良
×:溶接不可能
【0096】
<溶液安定性>
製造された表面処理溶液組成物200ミリリットルを50℃の温度のオーブンに保管した後、7日経過後の沈殿またはゲル発生の有無を観察して評価した。この時、評価基準は以下のとおりである。
〇:良好
×:不良
【0097】
実施例1:水溶性ポリウレタン樹脂含有量に応じた物性変化
水溶性ポリウレタン樹脂でポリエステルポリオールの水酸基価が120mgKOH/gであり、重量平均分子量が3,000であるカチオンポリウレタン樹脂、3種のシラン化合物が架橋結合されたシラン系ゾル-ゲル樹脂でメチルトリエトキシシランと3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びN-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシランを用いた重合物、硬化剤としてメラミン硬化剤(CYMEL 303)、防錆耐食剤としてバナジウム系防錆剤、モリブデン系化合物としてモリブデン硫化物、シランカップリング剤として2-パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、有機金属錯体化合物としてチタン系化合物、酸除去剤としてオキサゾリン系酸除去剤、アルミニウム系化合物としてアルミニウムニトリド、潤滑剤としてポリエチレン-テフロン(登録商標)ワックスを固形分100重量%に対して、表1に示した含有量で用い、上記固形分を溶媒として水81.4重量%及びエタノール3.4重量%と混合して表面処理溶液組成物を製造した。
【0098】
めっき層が重量%で、Mg1.5重量%、Al1.5重量%及び残部Znからなる三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板(片面めっき量の厚さ0.5~2.0μm)を7cm×15cm(横×縦)の大きさで切断して油分を除去した3元系溶融亜鉛めっき鋼板を用意した。上記溶融亜鉛めっき鋼板は、めっき層と素地鋼板の界面にAl濃化層を含み、上記Al濃化層の占有面積率は85%であった。この後、上記のような3元系溶融亜鉛めっき鋼板表面に上記表面処理溶液組成物をバーコーター(Bar Coater)で7μmの厚さで塗布した後、PMT(Peak Metal Temperature(素地表面温度))120±20℃の条件で硬化させて試験用試験片を製作した。
【0099】
上記のようなコーティング層を有する溶融亜鉛めっき鋼板について、平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性及び耐アルカリ性を評価し、その結果を表1に示した。
【0100】
【0101】
上記表1に示したように、水溶性ポリウレタン樹脂の含有量が本発明が提案する含有量を満たす発明例1~3は、全ての物性において良好以上の結果を示した。
【0102】
一方、水溶性ポリウレタン樹脂を非常に少なく添加する比較例1は、平板耐食性、加工部耐食性、耐アルカリ性において不良な結果を示し、過度に添加された比較例2は、平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性において不良な結果を示した。
【0103】
実施例2:シラン系ゾル-ゲル樹脂含有量に応じた物性変化
実施例1と同一組成成分を固形分100重量部基準で表2に示した含有量で用い、上記固形分を溶媒として水81.4重量%及びエタノール3.4重量%と混合して表面処理溶液組成物を製造した。
【0104】
上記表面処理溶液組成物を用いて実施例1と同様の方法で試験用試験片を製作し、上記のようなコーティング層を有する溶融亜鉛めっき鋼板に対して平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性及び耐アルカリ性を評価し、その結果を表2に示した。
【0105】
【0106】
上記表2に示したように、シラン系ゾル-ゲル樹脂の含有量が本発明が提案する含有量を満たす場合、発明例4~6は全ての物性において良好以上の結果を示した。
【0107】
一方、シラン系Sol-Gel樹脂を非常に少なく添加する比較例3は、平板耐食性、加工部耐食性において不良な結果を示し、過度に添加した比較例4は、平板耐食性、加工部耐食性及び耐黒変性において不良な結果を示した。
【0108】
実施例3:硬化剤含有量に応じた物性変化
実施例1と同一組成成分を固形分100重量部基準で表3に示した含有量で用い、上記固形分を溶媒として水81.4重量%及びエタノール3.4重量%と混合して表面処理溶液組成物を製造した。
【0109】
上記表面処理溶液組成物を用いて実施例1と同様の方法で試験用試験片を製作した。
【0110】
上記のようなコーティング層を有する溶融亜鉛めっき鋼板について、平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性及び溶液安定性を評価し、その結果を表3に示した。
【0111】
【0112】
上記表3に示したように、メラミン硬化の含有量が本発明が提案する含有量を満たす発明例7~9は、全ての物性において良好以上の結果を示した。
【0113】
一方、メラミン硬化を非常に少なく添加する比較例5は溶液安定性を除いた全ての物性において不良な結果を示し、過度に添加する比較例6は耐アルカリ性及び溶液安定性において不良な結果を示した。
【0114】
実施例4:防錆耐食剤の含有量に応じた物性変化
実施例1と同一組成成分を固形分100重量部基準で表4に示した含有量で用い、上記固形分を溶媒として水81.4重量%及びエタノール3.4重量%と混合して表面処理溶液組成物を製造した。
【0115】
上記表面処理溶液組成物を用いて実施例1と同様の方法で試験用試験片を製作した。
【0116】
上記のようなコーティング層を有する溶融亜鉛めっき鋼板について、平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性及び溶液安定性を評価し、その結果を表4に示した。
【0117】
【0118】
上記表4に示したように、防錆耐食剤の含有量が本発明が提案する含有量を満たす発明例10~12は、全ての物性において良好以上の結果を示した。
【0119】
一方、防錆耐食剤を非常に少なく添加する比較例7は平板耐食性、加工後耐食性が不良な結果を示し、過度に添加する比較例8は耐アルカリ性が脆く、吸湿作用によって耐黒変性が不良な結果を示した。
【0120】
実施例5:モリブデン系化合物の含有量に応じた物性変化
実施例1と同一組成成分を固形分100重量部基準で表5に示した含有量で用い、上記固形分を溶媒として水81.4重量%及びエタノール3.4重量%と混合して表面処理溶液組成物を製造した。
【0121】
上記表面処理溶液組成物を用いて実施例1と同様の方法で試験用試験片を製作した。
【0122】
上記のようなコーティング層を有する溶融亜鉛めっき鋼板について、平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性及び溶液安定性を評価し、その結果を表5に示した。
【0123】
【0124】
上記表5に示したように、モリブデン系化合物の含有量が本発明が提案する含有量を満たす発明例13~15は、全ての物性において良好以上の結果を示した。
【0125】
一方、モリブデン系化合物を非常に少なく添加する比較例9は耐黒変性において不良な結果を示し、過度に添加する比較例10は平板耐食性及び加工部耐食性において不良な結果を示した。
【0126】
実施例6:シランカップリング剤の含有量に応じた物性変化
実施例1と同一組成成分を固形分100重量部基準で表6に示した含有量で用い、上記固形分を溶媒として水81.4重量%及びエタノール3.4重量%と混合して表面処理溶液組成物を製造した。
【0127】
上記表面処理溶液組成物を用いて実施例1と同様の方法で試験用試験片を製作した。
【0128】
上記のようなコーティング層を有する溶融亜鉛めっき鋼板について、平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性及び溶液安定性を評価し、その結果を表6に示した。
【0129】
【0130】
上記表6に示したように、シランカップリング剤の含有量が本発明が提案する含有量を満たす発明例16~18は、全ての物性において良好以上の結果を示した。
【0131】
一方、シランカップリング剤を非常に少なく添加する比較例11は、平板耐食性、加工部耐食性、及び耐黒変性が不良の結果を示し、過度に添加する比較例12は、皮膜の乾燥度が高くなってHardな皮膜が形成されて加工部耐食性が脆弱であり、耐黒変性が不良な結果を示した。
【0132】
実施例7:有機金属錯体化合物の含有量に応じた物性変化
実施例1と同一組成成分を固形分100重量部基準で表7に示した含有量で用い、上記固形分を溶媒として水81.4重量%及びエタノール3.4重量%と混合して表面処理溶液組成物を製造した。
【0133】
上記表面処理溶液組成物を用いて実施例1と同様の方法で試験用試験片を製作した。
【0134】
上記のようなコーティング層を有する溶融亜鉛めっき鋼板について、平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性及び溶液安定性を評価し、その結果を表7に示した。
【0135】
【0136】
上記表7に示したように、有機金属錯体化合物の含有量が本発明が提案する含有量を満たす発明例19~21は、全ての物性において良好以上の結果を示した。
【0137】
一方、有機金属錯体化合物を非常に少なく添加する比較例13は、表面処理組成物と鋼板との密着性及び耐食性が低下し、平板耐食性、加工部耐食性、及び耐黒変性が不良な結果を示しており、過度に添加する比較例14はそれ以上の効果がなく、溶液安全性が不良な結果を示した。
【0138】
実施例8:酸除去剤の含有量に応じた物性変化
実施例1と同一組成成分を固形分100重量部基準で表8に示した含有量で用い、上記固形分を溶媒として水81.4重量%及びエタノール3.4重量%と混合して表面処理溶液組成物を製造した。
【0139】
上記表面処理溶液組成物を用いて実施例1と同様の方法で試験用試験片を製作した。
【0140】
上記のようなコーティング層を有する溶融亜鉛めっき鋼板について、平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性及び溶液安定性を評価し、その結果を表8に示した。
【0141】
【0142】
上記表8に示したように、酸除去剤の含有量が本発明が提案する含有量を満たす発明例22~24は、全ての物性において良好以上の結果を示した。
【0143】
一方、酸除去剤を非常に少なく添加する比較例15は平板耐食性及び加工部耐食性が不良な結果を示し、過度に添加する比較例16は溶液安定性が不良な結果を示した。
【0144】
実施例9:アルミニウム系化合物の含有量に応じた物性変化
実施例1と同一組成成分を固形分100重量部基準で表9に示した含有量で用い、上記固形分を溶媒として水81.4重量%及びエタノール3.4重量%と混合して表面処理溶液組成物を製造した。
【0145】
上記表面処理溶液組成物を用いて実施例1と同様の方法で試験用試験片を製作した。
【0146】
上記のようなコーティング層を有する溶融亜鉛めっき鋼板について、平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性及び溶液安定性を評価し、その結果を表9に示した。
【0147】
【0148】
上記表9に示したように、アルミニウム系化合物の含有量が本発明が提案する含有量を満たす発明例25~27は、全ての物性において良好以上の結果を示した。
【0149】
一方、アルミニウム系化合物を非常に少なく添加する比較例17は耐黒変性が不良な結果を示し、過度に添加する比較例18は耐アルカリ性が不良な結果を示した。
【0150】
実施例10:潤滑剤の含有量に応じた物性変化
実施例1と同一組成成分を固形分100重量部基準で表10に示した含有量で用い、上記固形分を溶媒として水81.4重量%及びエタノール3.4重量%と混合して表面処理溶液組成物を製造した。
【0151】
上記表面処理溶液組成物を用いて実施例1と同様の方法で試験用試験片を製作した。
【0152】
上記のようなコーティング層を有する溶融亜鉛めっき鋼板について、平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性及び溶液安定性を評価し、その結果を表10に示した。
【0153】
【0154】
上記表10に示したように、潤滑剤の含有量が本発明が提案する含有量を満たす発明例28~30は、全ての物性において良好以上の結果を示した。
【0155】
一方、潤滑剤を非常に少なく添加する比較例19は加工部耐食性が不良な結果を示し、過度に添加する比較例20は平板耐食性及び加工部耐食性が不良であり、耐黒変性及び耐アルカリ性が低下する結果を示した。
【0156】
実施例11:皮膜層の厚さ及び乾燥温度に応じた物性変化
発明例2の組成物を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で表面処理組成物を製造し、上記表面処理組成物を試験片にコーティングするが、コーティングされた皮膜層の厚さとPMT温度を下記表11に記載された厚さで制御した。
【0157】
製作した試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性及び溶接性を評価し、その結果は表11に示した。
【0158】
【0159】
上記表11に示したように、0.3~3.0μmで皮膜層を形成する発明例65~68は、全ての物性において良好以上の結果を示した。一方、形成された皮膜が薄すぎる比較例19は、平板耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性において普通(△)の結果を示し、加工部耐食性は不良な結果を示した。一方、非常に厚く形成させた比較例20は、耐黒変性及び溶接性が不良な結果を示し、発明例68に比べて向上した物性がないため、経済的側面から発明例68よりも厚い皮膜厚さは要求されない。
【0160】
また、上記表11に示したように、皮膜の乾燥温度を70~150℃の間で皮膜層を形成した発明例69~71は、全ての物性において良好以上の結果を示した。
【0161】
一方、乾燥温度が低すぎる比較例21は十分に乾燥されず、溶接性を除いた全ての物性において不良な結果を示した。一方、乾燥温度が高すぎる比較例22は、空気冷却過程(水冷)の間に鋼板で発生した水蒸気の結露現象による鋼板上のヒュームドロップによって耐黒変性が不良な結果を示した。
【0162】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。