(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】感光性組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
G03F 7/023 20060101AFI20240304BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240304BHJP
C08F 32/00 20060101ALI20240304BHJP
C08G 59/32 20060101ALI20240304BHJP
C08G 59/40 20060101ALI20240304BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
G03F7/023
G03F7/004 501
C08F32/00
C08G59/32
C08G59/40
G03F7/20 501
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2022522909
(86)(22)【出願日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 US2019056647
(87)【国際公開番号】W WO2021076131
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】303043461
【氏名又は名称】プロメラス, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【氏名又は名称】谷 征史
(72)【発明者】
【氏名】ナップ, ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ, シェリル
(72)【発明者】
【氏名】シャーガー, キャロライン
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/063909(WO,A1)
【文献】特表2016-525219(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0127294(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/023
G03F 7/004
C08F 32/00
C08G 59/32
C08G 59/40
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性組成物であって、
a)式(I)のモノマーに由来する式(IA)の第1タイプの繰り返し単位、
【化1】
式(II)のモノマーに由来する式(IIA)の第2タイプの繰り返し単位、
【化2】
式(III)のモノマーに由来する式(IIIA)の第3タイプの繰り返し単位、
【化3】
(
【化4】
は、別の繰り返し単位と結合する位置を示し、
aは、0~3の整数であり、
bは、1~4の整数であり、
cは、1~4の整数であり、
R
1は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、およびn-ブチルからなる群から選択され、
R
18は、-(CH
2)
s-、-(CH
2)
t-OCH
2-または-(CH
2)
t-(OCH
2CH
2)
u-OCH
2-から選択され、
sは、0~6の整数であり、
tは、0~4の整数であり、
uは、0~3の整数であり、
R
19は、-(CH
2)
v-CO
2R
20であり、vは0~4の整数であり、
R
20は、水素またはC
1-C
4アルキルである)
を含むポリマー、
b)式(A)のジアゾキノン部分(moiety)を含む光活性化合物、
【化5】
c)下記の化合物からなる群から選択される多官能性架橋剤、
【化17】
d)下記の化合物からなる群から選択されるフェノール性化合物、
【化7】
e)
下記の化合物:
2,2’-(4-メチルペンタン-2,2-ジイル)ジフェノール;
4,4’-(4-メチルペンタン-2,2-ジイル)ジフェノール;
2,2’-(5-メチルヘプタン-3,3-ジイル)ジフェノール;
4,4’-(5-メチルヘプタン-3,3-ジイル)ジフェノール;および
これらを組み合わせた混合物;
からなる群から選択される、フェノール性化合物;
を含む感光性組成物。
【請求項2】
前記ポリマーの前記第1繰り返し単位は、
トリオキサノナンノルボルネン(NBTON);
テトラオキサドデカンノルボルネン(NBTODD);
5-(3-メトキシブトキシ)メチル-2-ノルボルネン(NB-3-MBM);および
5-(3-メトキシプロパンオキシ)メチル-2-ノルボルネン(NB-3-MPM)からなる群から選択されるモノマーに由来する、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
前記ポリマーの前記第2繰り返し単位は、
4-(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-イル)-1,1,1-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ブタン-2-オール(HFACH
2NB);
ノルボルネニル-2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロパン-2-オール(HFANB);および
5-(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-イル)-1,1,1-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン-2-オール(HFACH
2CH
2NB)からなる群から選択されるモノマーに由来する、請求項2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
前記ポリマーの前記第3繰り返し単位は、
3-(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-イル)酢酸(NBMeCOOH);
エチル3-(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2-イル)プロパノエート(EPEsNB);
ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-カルボン酸(Acid NB);および
ノルボルネニルプロパン酸(NBEtCOOH)からなる群から選択されるモノマーに由来する、請求項3に記載の感光性組成物。
【請求項5】
前記ポリマーは、
トリオキサノナンノルボルネン(NBTON);
テトラオキサドデカンノルボルネン(NBTODD);
5-(3-メトキシブトキシ)メチル-2-ノルボルネン(NB-3-MBM);
5-(3-メトキシプロパンオキシ)メチル-2-ノルボルネン(NB-3-MPM);
4-(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-イル)-1,1,1-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ブタン-2-オール(HFACH
2NB);
ノルボルネニル-2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロパン-2-オール(HFANB);
5-(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-イル)-1,1,1-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン-2-オール(HFACH
2CH
2NB);
3-(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-イル)酢酸(NBMeCOOH);
エチル3-(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2-イル)プロパノエート(EPEsNB);
ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-カルボン酸(Acid NB);および
ノルボルネニルプロパン酸(NBEtCOOH)からなる群から選択される3種のモノマーに由来する三元ポリマーである、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項6】
前記ジアゾキノン部分は、式(C)、(D)または(E)で示される、請求項1に記載の感光性組成物。
【化9】
【請求項7】
前記光活性化合物は、
【化10】
のうちの1つ以上から選択され、
少なくとも1つのQは、式(C)または(D)の基であり、
【化11】
残りのQは水素である、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項8】
前記多官能性架橋剤は、下記の化合物からなる群から選択される、請求項1に記載の感光性組成物。
【化18】
【請求項9】
前記フェノール性化合物は、
【化13】
からなる群から選択される、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項10】
前記フェノール性化合物は、
【化14】
である、請求項1に記載の感光性組成物
【請求項11】
【化15】
【化16】
これらを組み合わせた混合物
からなる群から選択された1つ以上の化合物をさらに含む、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項12】
フェノール性樹脂、レベリング剤、抗酸化剤、難燃剤、可塑剤、シランカップリング剤、硬化促進剤からなる群から選択された1つ以上の化合物をさらに含む、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項13】
アルカリ現像液に可溶性である、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項14】
積層半導体素子または接着素子を含む半導体または光電子デバイスであって、
前記素子が請求項1に記載の感光性組成物からなる、半導体または光電子デバイス。
【請求項15】
請求項1に記載の感光性組成物をさらに含むチップスタック構造を含む、半導体デバイス。
【請求項16】
請求項1に記載の組成物を含む、フィルム。
【請求項17】
請求項1に記載の組成物をさらに含む再配線層(RDL)構造、チップスタック構造、CMOSイメージセンサダム構造のうちの1つ以上を含む、マイクロ電子または光電子デバイス。
【請求項18】
適切な基板を請求項1に記載の組成物でコーティングしてフィルムを形成するステップ、
前記フィルムを適切な放射線に露光してマスクでパターン化するステップ、
露光後の前記フィルムを現像して光パターンを形成するステップ、および
前記フィルムを適切な温度に加熱して硬化させるステップ、
を含む、マイクロ電子または光電子デバイス作製用フィルムの形成方法。
【請求項19】
前記コーティングするステップはスピンコーティングにより実施される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記現像ステップは水性現像液により実施される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記現像液は水性の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記基板を先ずハードベークしてから、130~160℃の温度で20~60分間硬化させる、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記硬化ステップは170~200℃の温度で、5℃ずつ昇温させながら1~5時間実施される、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による実施形態は、一般に、マイクロ電子および/または光電子デバイスとそのアセンブリの作製に有用に用いられる多種多様な添加剤を含むポリノルボルネン(PNB)組成物に関し、より具体的には、ポリエーテル官能化末端基を含有する少なくとも1つのノルボルネン型繰り返し単位を有するPNBを包含する組成物であり、熱的、機械的、光電子的特性が改善された組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
各種のマイクロ電子および光電子分野において有機ポリマー材料が用いられる頻度は増加し続けている。例えば、マイクロ電子および光電子デバイス用の層間誘導体、再配線層、応力緩衝層、レベリングまたは平坦化層、アルファ粒子バリア、パッシベーション層にも有機ポリマー材料が用いられている。上述の有機ポリマー材料は感光性材料であるので、自己画像形成が可能であり、その材料から形成された上記層および構造に求められる工数を減らすことができるという利点がある。さらに、上記有機ポリマー材料では、デバイスとデバイス部品を直接接着結合して多様な構造を形成することも可能である。上記デバイスには、微小電気機械システム(MEMS)および微小光電気機械システム(MOEMS)が含まれる。
【発明の概要】
【0003】
ポリイミド(PI)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ベンゾシクロブタン(BCB)組成物は、熱安定性と機械的強度が全般的に優れており、上記の用途でよく選択される材料である。各材料は、反応して、ポリマーの骨格を修飾するか(PIとPBO)、骨格自体を形成する(BCB)前駆体から硬化時に形成され、そのため、硬化時に形成される副産物を除去するか、および/または硬化を防止する酸素または水蒸気を排除するために、一般に硬化時に特別な取扱条件を守る必要がある。さらに、上記材料の硬化は250℃を超える(材料によっては最大400℃)プロセス温度を必要とし、結果として過度な水準の工程コストが必要とされる。したがって、上記材料は一部の用途、例えば再配線層、層間誘電体層、イメージ感知アレイを覆う透明カバーの直接接着結合などには適していない可能性がある。
【0004】
したがって、既知のPI、PBO、BCB組成物と同等の水準の熱安定性および機械的強度を有し、上述の構造の形成に有用であり、200℃以下の温度で硬化可能である完全に形成されたポリマー骨格を有する材料を提供する必要がある。またその材料は、用途に適した水準の応力、弾性率、誘電率、破断伸び率、および水蒸気透過性を有するように、材料の特性を適宜調整可能でなければならない。さらには、自己画像形成性が要求される。一方、現在利用可能な組成物の一部は、望ましい解像度と光速度(photospeed)を含む溶解速度(DR)特性を示さないため、特定の用途には適していない場合がある。これについては以下で詳述する。
【0005】
上記問題点のいくつかは、米国特許第9,341,949号および第9,696,623号に開示されるポリノルボルネン系感光性組成物により、成功裏に克服されたが、接着強度および機械的強度、特に各種のマイクロ光電子デバイス、ディスプレイ装置の製造に必要なダイシェア強度(die shear strength)の要求水準を満たす適切な可撓性材料に対する需要は依然として解決されていない。
【0006】
したがって、熱特性、溶解速度、デバイス作製工程の各種のステップにおいて用いられる溶媒に対する直交性(orthogonality)、結合接着性、さらに最も重要な各関連工程ステップにおける親和性(integration)を満たす自己画像形成性の感光性ポリマー組成物を開発する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明による実施形態を、下記の添付図面を参照して次のように説明する。図面は、本発明の各種の実施形態の一部を単純化して示し、説明の目的でのみ提供されるものである。
【
図1】
図1A~
図1Dは、各種の露光量で本発明による組成物から形成されたフォトリソグラフィ画像を示す。
【
図2】
図2は、本発明による組成物と比較対象組成物のダイシェア強度を比べた図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明による実施形態は、ノルボルネン型のポリマーを含む自己画像形成組成物と、該組成物を用いて形成することができるフィルム、層、構造、デバイス、またはアセンブリに関する。このうちの一部は、水性塩基現像液を用いて形成されたフィルムをイメージ形態に露光してポジティブトーンイメージを提供できる組成物を包含する。
【0009】
さらに、本明細書で記述する実施形態は、約2~5ミクロン(μm)以上の厚さを有するフィルムと、該フィルムの分離ライン/トレンチ解像度でアスペクト比が1:2を超えるイメージを提供することが可能である。本発明の実施形態が提示するポリマーで形成したフィルム、層、構造は、マイクロデバイスと光電子デバイスの両方に用いることができる層間誘電体、再配線層、応力緩衝層、レベリングまたは平坦化層、アルファ粒子バリア、およびこれらで形成したアセンブリ、チップスタックを形成し、イメージ感知アレイの上に透明カバーを固定式で取り付ける接着剤などに特に有用である。
【0010】
本明細書で用いられる用語は、以下の意味を有する。
【0011】
本明細書および明細書に添付の特許請求の範囲に記載される成分、反応条件、ポリマー組成物、配合物などの量を示す数字、数値および/または式は、その数字、数値および/または式を得るために実施された測定の不確定要素を反映しているので、別途の記載がない限り、すべて「約(about)」という表現を含むものとみなす。本明細書に数字の範囲が開示される場合、上記範囲は連続的であり、別途の記載がない限り、その範囲の最大値と最小値、さらに上記最大値と最小値との間のすべての値を含むものとみなす。上記範囲が整数を指す場合、別途の記載がない限り、範囲の最大値と最小値との間のすべての整数を含む。特徴または特性を説明するために多くの範囲を提示する場合、その範囲を結合して特徴または特性をさらに説明してもよい。
【0012】
冠詞の「a」、「an」、「the」を使用した場合、明示的に1つの対象に限定されない限り、複数の対象まで含むものとみなす。
【0013】
本明細書における「マイクロ電子デバイス」という用語は「マイクロ光電子デバイス」と「光電子デバイス」を包含するものと理解される。したがって、マイクロ電子デバイスまたはマイクロ電子デバイスアセンブリを言及することは、光電子デバイスとマイクロ光電子デバイスおよびこれらのアセンブリをいずれも含むものとなる。同様に、微小電気機械システム(MEMS)は微小光電気機械システム(MOEMS)を含む。
【0014】
「再配線層(RDL)」という用語は、好適かつ信頼できる特性を特徴とする電気信号ルーティング絶縁材料を指す。RDLという用語は、半田ボールと脆い低誘電体構造との間にある応力緩和層または緩衝層などの緩衝コーティング層の説明に置き換え可能に使用される。
【0015】
本明細書の「ポリマー」は、別個のタイプの繰り返し単位(ポリマーの最も小さな構成単位)の1つ以上の骨格を含む分子を意味し、ポリマー自体は勿論、開始剤、触媒、ポリマーの形成に伴うその他の要素からの残基まで包含する。ここで、残基は一般にここに共有的には混入されていないが、特定の触媒開始重合のように、ポリマー鎖の前方または後方の末端に共有結合することができる。さらに、残基およびその他の要素は一般に重合後の精製工程で除去されるが、容器間、あるいは溶媒または分散媒質間を移動するときに少量がポリマーとともに残ってポリマーに混入する。
【0016】
本明細書における「ポリマー組成物」は、少なくとも1つの合成ポリマー、ならびに該組成物に特定の特性を付与するか、既知の特性を変形するためにポリマー形成後に添加された物質を含むものである。添加できる物質の例としては、溶媒、光活性化合物(PAC)、溶解速度抑制剤、溶解速度向上剤、溶解促進剤、架橋部分、反応性希釈剤、抗酸化剤、接着促進剤、可塑剤が挙げられるが、これに限定されない。
【0017】
本明細書における「弾性率」は、応力と変形率の割合を示す用語であり、別途の記載がない限り、応力-変形率曲線の線形弾性領域で測定されたヤング率または引張弾性率を示す。弾性率値は、一般にASTM法 DI708-95により測定される。弾性率値が低いと、内部応力も低いものと理解される。
【0018】
「感光性」は、材料、または本発明の実施形態によるポリマーまたはポリマー組成物のような材料の組成物の特徴を示す表現であり、パターン層またはパターン構造の内部およびそれ自体に形成される特性をいう。換言すれば、「感光成層」は上述のパターン層またはパターン構造の形成において、感光成層上に形成されたその他材料の層、例えばフォトレジスト層を必要としない。すなわち、上記特徴を有するポリマー組成物をパターン形成スキームに採択してパターン膜/層またはパターン構造を形成することができる。また、上記スキームは、感光性材料または感光成層の「イメージ形態の露光(imagewise exposure)」を含む。イメージ形態の露光とは、層の選択部位を化学放射線に露出させ、選択されていない部位は化学放射線の露出から保護されることを意味する。
【0019】
本明細書において、「自己画像形成(self-imageable)組成物」は、感光性がある物質を意味し、よって、該物質で形成したフィルムに直接的にイメージ形態に露光した後、適切な現像液を用いてフィルム内の画像を現像することによりパターン化層および/または構造を得ることができる。
【0020】
本明細書における「ヒドロカルビル」は、炭素および水素原子を含むラジカルまたは基を指し、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルカリル、アルケニルなどが挙げられる。「ハロヒドロカルビル」は、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置き換えられたヒドロカルビル基を示す。「パーハロカルビル」は、すべての水素がハロゲン原子で置き換えられたヒドロカルビル基である。「ヘテロヒドロカルビル」は、上述のヒドロカルビル、ハロヒドロカルビル、パーハロヒドロカルビルであり、炭素鎖の少なくとも1つの炭素原子がN、O、S、SiまたはP原子で置き換えられたものを指す。
【0021】
本明細書における記号
【化1】
は、示された基の構造により、他の繰り返し単位、あるいは他の原子、分子、基、部分とともに結合を形成する位置を指す。
【0022】
本明細書における「アルキル」は、指定された数の炭素原子を有する飽和、直鎖、または分枝鎖の炭化水素置換体を示す。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチルなどが挙げられる。「アルコキシ」、「チオアルキル」、「アルコキシアルキル」、「ヒドロキシアルキル」、「アルキルカルボニル」、「アルコキシカルボニルアルキル」、「アルコキシカルボニル」、「ジフェニルアルキル」、「フェニルアルキル」、「フェニルカルボキシアルキル」、および「フェノキシアルキル」などの派生表現も同様に解釈される。
【0023】
本明細書における「シクロアルキル」は、周知の環状脂肪族ラジカルをすべて含む。「シクロアルキル」の代表例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどが挙げられる。「シクロアルコキシ」、「シクロアルキルアルキル」、「シクロアルキルアリール」、「シクロアルキルカルボニル」などの派生表現も同様に解釈される。
【0024】
本明細書における「アルケニル」は、指定された数の炭素原子を有し、少なくとも1つの炭素-炭素の二重結合を含む非環式、直鎖または分枝鎖の炭化水素鎖で、エテニル基および直鎖または分枝鎖のプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基を含む。同様に、「アルキニル」もまた、指定された数の炭素原子を有し、少なくとも1つの炭素-炭素の三重結合を含む非環式、直鎖または分枝鎖の炭化水素鎖で、エチニル基およびプロピニル基、ひいては直鎖または分枝鎖のブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基を含む。
【0025】
本明細書における「アシル」は、「アルカノイル」と同じ意味を有し、構造的には「R-CO-」で示すことができる。ここでRは、本明細書で定義するように指定された数の炭素原子を有する「アルキル」である。さらに「アルキルカルボニル」も本明細書で定義するアシルと同じ意味を有する。特に「(C1-C4)アシル」は、ホルミル、アセチルまたはエタノイル、プロパノイル、n-ブタノイルなどを意味する。「アシルオキシ」および「アシルオキシアルキル」などの派生表現も同様に解釈される。
【0026】
本明細書における「パーフルオロアルキル」は、上記アルキル基のすべての水素原子がフッ素原子で置き換えられたものを意味する。具体例としては、トリフルオロメチル基とペンタフルオロエチル基、直鎖または分枝鎖のヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ウンデカフルオロペンチル基およびトリデカフルオロヘキシル基が挙げられる。「パーフルオロアルコキシ」などの派生表現も同様に解釈される。
【0027】
本明細書における「アリール」は置換もしくは未置換のフェニルまたはナフチルを示す。置換フェニルまたは置換ナフチルの具体例としては、o-、p-、m-トリル、1,2-、1,3-、1,4-シリル、1-メチルナフチル、2-メチルナフチルなどが挙げられる。また「置換フェニル」または「置換ナフチル」は、本明細書で定義するか、または当業者に周知である可能な置換基をすべて含む。「アリールスルホニル」などの派生表現も同様に解釈される。
【0028】
本明細書における「アリールアルキル」または「アラルキル」は、互いの代わりとして使用でき、具体的には「(C6-C10)アリール(C1-C4)アルキル」または「(C7-C14)アラルキル」は、本明細書で定義する(C6-C10)アリールが本明細書で定義する(C1-C4)アルキルに結合されていることを指す。代表例としては、ベンジル、フェニルエチル、2-フェニルプロピル、1-ナフチルメチル、2-ナフチルメチルなどが挙げられる。
【0029】
本明細書における「ヘテロアリール」は、周知のすべての芳香族ラジカル含有ヘテロ原子を指す。代表的な5員のヘテロアリールラジカルには、フラニル、チエニル、チオフェニル、ピロリル、イソピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリルなどが含まれる。代表的な6員のヘテロアリールラジカルとしては、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニルなどのラジカルが挙げられる。二環式ヘテロアリールラジカルの代表例としては、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリル、ベンズイミダゾリル、インダゾリル、ピリドフラニル、ピリドチエニルなどのラジカルが含まれる。
【0030】
本明細書における「複素環」は、周知の環状ラジカル含有還元(reduced)ヘテロ原子をすべて含む。代表的な5員の複素環ラジカルには、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ピロリジニル、2-チアゾリニル、テトラヒドロチアゾリル、テトラヒドロオキサゾリルなどが含まれる。代表的な6員の複素環ラジカルとしては、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニルなどが挙げられる。その他の各種の複素環ラジカルには、アジリジニル、アゼパニル、ジアゼパニル、ジアザビシクロ[2.2.1]ヘブト-2-イル、トリアゾカニルなどが含まれる。
【0031】
「ハロゲン」または「ハロ」は、クロロ、フルオロ、ブロモ、およびヨードを意味する。
【0032】
広義で、「置換(substituted)」は、有機化合物の許容可能な置換基をすべて含むものと解釈することができる。本明細書に開示された一部の特定の実施形態において、「置換」は(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C1-C6)パーフルオロアルキル、フェニル、ヒドロキシ、-CO2H、エステル、アミド、(C1-C6)アルコキシ、(C1-C6)チオアルキル、(C1-C6)パーフルオロアルコキシ、-NH2、Cl、Br、I、F、-NH-低級アルキル、および-N(低級アルキル)2からなる群から独立して選択された1つ以上の置換基で置換されることを意味する。しかし、その実施形態では、当業者に周知の適切なその他の置換基を使用してもよい。
【0033】
本明細書における「有機電界効果トランジスタ(OFET)」は、有機薄膜トランジスタ(OTFT)として知られているデバイスの下位部類を含むものと理解される。
【0034】
「誘電体(dielectric)」および「絶縁(insulating)」は、本明細書で互いの代わりとして使用できる。よって、絶縁物質または絶縁層を言及する場合、誘電物質または誘電層も含み、逆の場合も同様である。さらに、本明細書で「有機電子素子」は「有機半導体素子」と有機電界効果トランジスタ(OFET)などのその素子のいくつかの特定の具現事例を含むものとして理解される。
【0035】
本明細書における「直交(orthogonal)」または「直交性(orthogonality)」は、化学的直交性を意味するものと解釈される。例えば直交溶媒とは、以前に堆積された層の上に、溶媒で溶解された物質の層が堆積されるときに、以前に堆積された層を溶解または膨脹させない溶媒を指す。
【0036】
本明細書における「ポリシクロオレフィン」、「ポリ(シクリック)オレフィン」、「ポリノルボルネン型」は、付加重合性モノマーから形成されたポリマー、結果として得られたポリマーの繰り返し単位、またはそのポリマーを包含する組成物であり、上記繰り返し単位が少なくとも1つのノルボルネン型部分(moiety)を包含する物質を指し、互いの代わりとして使用できる。本発明による実施形態に含まれる最も単純なノルボルネン型重合性モノマーとしては、ノルボルネン自体であるビシクロ[2.2.1]ヘブト-2-エンが挙げられ、構造式は以下のとおりである。
【0037】
【0038】
しかしながら、本明細書のノルボルネン型モノマー、ノルボルネン型繰り返し単位またはノルボルネン型ポリマー(PNB)は、ノルボルネン自体のみを含む部分に限定されず、任意の置換ノルボルネン、またはその置換もしくは未置換の高級環状誘導体を包含する。
【0039】
本発明の組成物と特定の添加剤をともに用いる場合、チップ積層アプリケーション、再配線層(RDL)、相補型金属酸化物半導体(CMOS)イメージセンサのダム(dam)構造、その他様々なMEMSおよびMOEMSを含む素子などの機械的、電気的または電気機械的デバイスを含み、これに限定されない各種の用途で用いられる厚膜または薄膜の形成での組成物の性能を著しく向上することが知られている。
したがって、本発明により提供する感光性組成物において、
a)式(I)のモノマーに由来する式(IA)の第1タイプの繰り返し単位、
【化3】
式(II)のモノマーに由来する式(IIA)の第2タイプの繰り返し単位、
【化4】
式(III)のモノマーに由来する式(IIIA)の第3タイプの繰り返し単位、
【化5】
(
【化6】
は、別の繰り返し単位と結合する位置を示し、
aは、0~3の整数であり、
bは、1~4の整数であり、
cは、1~4の整数であり、
R
1は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、およびn-ブチルからなる群から選択され、メチレン基、すなわちCH
2基は、(C
1-C
4)アルキル、フェニル、およびフェニル(C
1-C
4)アルキルからなる群から選択された基で独立に置換されてもよく、
R
18は、-(CH
2)
s-、-(CH
2)
t-OCH
2-または-(CH
2)
t-(OCH
2CH
2)
u-OCH
2-から選択され、
sは、0~6の整数であり、
tは、0~4の整数であり、
uは、0~3の整数であり、
R
19は、-(CH
2)
v-CO
2R
20であり、vは0~4の整数であり、
R
20は、水素またはC
1-C
4アルキルである)
を含むポリマー、
b)式(A)のジアゾキノン部分(moiety)を含む光活性化合物、
【化7】
c)下記の化合物からなる群から選択される多官能性架橋剤、
【化8】
(nは、5~8の整数であり、
Aは、C、CH-(CR
2)
d-CH、置換もしくは未置換のアリールからなる群から選択され、dは、0~4の整数であり、Rは、水素、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチルからなる群から選択され、
Bは、置換もしくは未置換の(C
2-C
6)アルキレン、および置換もしくは未置換のアリールからなる群から選択され、
前記置換基は、ハロゲン、メチル、エチル、直鎖または分枝の(C
3-C
6)アルキル、(C
3-C
8)シクロアルキル、(C
6-C
10)アリール、(C
7-C
12)アラルキル、メトキシ、エトキシ、直鎖または分枝の(C
3-C
6)アルキルオキシ、(C
3-C
8)シクロアルキルオキシ、(C
6-C
10)アリールオキシ、(C
7-C
12)アラルキルオキシからなる群から選択される)
d)下記の化合物からなる群から選択されるフェノール性化合物、
【化9】
d)式(VI)の化合物、
【化10】
(dとeは、1~4の整数であり、
fとgは、0~4の整数であり、
R
2およびR
3は、同一または異なり、それぞれ独立して水素、メチル、エチル、直鎖または分枝のC
3-C
6アルキル、C
3-C
8シクロアルキル、C
6-C
10アリール、およびC
7-C
12アラルキルから選択され、
R
2およびR
3は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、置換もしくは未置換の5~8員の炭素原子を形成し、前記置換基はC
1-C
8アルキルから選択され、
R
4およびR
5は同一または異なり、それぞれ独立して水素、メチル、エチル、直鎖または分枝の(C
3-C
6)アルキル、(C
3-C
8)シクロアルキル、(C
6-C
10)アリール、および(C
7-C
12)アラルキルから選択される)
を含む感光性組成物を提供する。
【0040】
一実施形態において、本発明のポリマーは、式(IIIA)の繰り返し単位を含み、この場合、R20は一般に水素である。しかしながら、一実施形態において、R20が水素である式(IIIA)の繰り返し単位の一部分と、R20が(C1-C4)アルキルである式(IIIA)の繰り返し単位の他部分を混合した繰り返し単位を有するポリマーを含んでもよい。よって、このような変形は本発明の一部にあたることは、当業者に容易に理解される。
【0041】
本発明によるポリマーの第1繰り返し単位を形成するのに使用されるモノマーの例示は以下のとおりであるが、これに限定されない。
【0042】
【0043】
本発明によるポリマーの第2繰り返し単位の形成に使用できるモノマーの例示は以下のとおりであるが、これに限定されない。
【0044】
【0045】
本発明によるポリマーの第2繰り返し単位の形成に使用できるモノマーの例示は以下のとおりであるが、これに限定されない。
【0046】
【0047】
しかしながら、本発明の感光性組成物は、式(I)~(III)のモノマーの範囲内にある上記に挙げた任意の3つのモノマーから誘導されたポリマーを使用することにより製造できることに注意すべきである。さらに、式(I)~(III)のモノマーを任意の量で使用して、下記にさらに記載したように意図した利点と目的を達成するポリマーを形成することができる。よって、当業者が着眼できるモノマーの割合は、すべて本発明の一部としてみなす。
【0048】
本発明の一実施形態において、本発明の感光性組成物は、本願に記載されている3つのモノマーのいずれかを含むターポリマーを使用して製造することができる。
【0049】
一般に、本発明によるポリマーの実施形態は、以下で見られるように、別個の第1繰り返し単位、第2繰り返し単位、第3繰り返し単位のうちの上述した1つ以上を含み、このようなポリマーの実施形態に含まれる他の繰り返し単位は、その実施形態が意図する用途に適切かつ望ましい特性をポリマーの実施形態に与えるので、このようなポリマーの実施形態は、様々なアプリケーションに合わせて調整することができる。
【0050】
例えば、ポリマーの実施形態は、一般にイメージ性(imageability)を付与する少なくとも1つの繰り返し単位を必要とする。したがって、構造式(IIIA)で示される繰り返し単位の別個のタイプは、R19がペンダント基を含むカルボン酸である繰り返し単位を含むことができる。しかしながら、酸性ペンダント部分(moiety)を生成する官能基であれば特に制限されない。カルボン酸ペンダント基は、一般に適切に選択された添加剤または現像後の熱架橋を通じてポジティブトーンイメージを固定することができるその他の繰り返し単位との反応に関与するのに有用である。よって、フェノール、スルホンまたはその他の官能基などを含む類似したペンダント基を本発明の当該実施形態において使用してもよい。また、本発明の当業者は、適切なモノマーを使用することで重合後に酸性ペンダント基を含むこのようなポリマー組成物を製造することができることを理解できる。例えば、NBEtCOOHモノマーの繰り返し単位を含むポリマーは、一般に、先ずEPEsNBを使用してポリマーを形成した後、当該分野において周知の任意の手順を適用して生成されたポリマーでエステル官能基を加水分解することで製造することができる。したがって、エステルモノマーの繰り返し単位の特定の残基量が本願で使用されるポリマーに常に存在してもよい。すなわち、NBEtCOOHなどの繰り返し単位を含むポリマーを使用するとき、該ポリマーはEPEsNB、すなわち出発モノマーから誘導された一部のモノマーの繰り返し単位を依然として含んでいてもよい。
【0051】
式(I)~(III)の各モノマーのうちの2つ以上の別個のタイプを任意のモル比で使用して本発明のポリマーを形成することができる。すなわち、式(I)で示すモノマーの1つ以上のモノマーは、式(II)で示すモノマーの1つ以上、および式(III)で示すモノマーの1つ以上とともに使用して本発明のポリマーを形成することができる。したがって、本発明のポリマーは、一般に式(IA)の繰り返し単位を約1モル%~約98モル%含む。残りの繰り返し単位は、式(IIA)および(IIIA)の1つ以上の繰り返し単位を組み合わせたものに由来する。よって、一実施形態において、式(IA)、(IIA)、(IIIA)で示すモノマーの繰り返し単位の任意の組み合わせを含むターポリマーの繰り返し単位のモル比は、40:30:30、40:40:20、50:20:30、50:25:25、50:30:20、50:40:10、50:45:5、60:20:20などであってもよい。その他の実施形態において、ポリマーの形成に採択されるモノマーのモル比(I):(II):(III)は、それぞれ1:1:98~98:1:1~1:98:1の範囲であり、式(IA):(IIA):(IIIA)の繰り返し単位のモル比も、本質的に等しいオーダーである。一実施形態において上記モル比は、30:40:30、40:30:30、40:40:20、40:45:15、40:50:10、45:40:15、45:35:20、50:35:15、50:40:10、またはその他の任意の組み合わせを含む。
【0052】
一般に、酸性ペンダント基を有するモノマーの繰り返し単位を含むポリマー(一般に式(IIIA))が本発明の感光性組成物に有益な効果を提供することが知られている。よって、本発明の一実施形態において、本発明の感光性組成物に使用されるポリマーは、約10~80モル%の酸性ペンダント基を含むモノマーの繰り返し単位を有し、他の実施形態では、20~70モル%である。他の実施形態において、ポリマー内の式(IA)で示されるモノマーの繰り返し単位は、モル%基準で約0~80モル%、約10~80モル%でもよく、他の一実施形態では約20~70モル%でもよい。さらに他の一実施形態でポリマー内の式(IIA)で示されるモノマーの繰り返し単位は、モル%基準で約0~80モル%、約10~80モル%でもよく、他の実施形態では、約20~70モル%でもよい。
【0053】
本願に記載されているような望ましい結果を提供する適切なポリマーを形成するために、本願に記載されている3つのモノマーをすべて含む必要はない。式(IA)、(IIA)または(IIIA)のいずれか1つの繰り返し単位を含むホモポリマーも本発明で使用することができるためである。また、式(IA)、(IIA)または(IIIA)の繰り返し単位のうちの任意の2つを有するコポリマーも本発明の組成物でポリマー樹脂として有用に機能することができる。より具体的には、HFANBとNBEtCO2Hのコポリマーが本発明の感光性組成物に使用できることが見出された。上述したように、ターポリマーが本発明の一実施形態において使用され得る。
【0054】
本発明の感光性組成物を形成するポリマーは、一般に少なくとも約5,000の重量平均分子量(Mw)を示す。他の実施形態において、本発明で採択されるポリマーのMwは、少なくとも約7,000である。さらに他の実施形態において、ポリマーのMwは、少なくとも約500,000である。本発明の任意の実施形態において、ポリマーは5,000~500,000、7,000~200,000、または8,000~100,000の重量平均分子量を有する。重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)は、一般にポリスチレン較正標準を使用するゲル透過クロマトグラフィ(GPC)で判定する。その他周知の方法もMwとMnの判定に使用できる。これに基づいてポリマーの多分散指数(Mw/Mn)も算出できる。
【0055】
本発明の別の態様において、本発明の感光性組成物は、一般に光活性ジアゾキノン部分を含有する光活性化合物を含む。該光活性化合物(PAC)は、使用されるPACの特性により適切な波長、例えば254nm、365nm、405nm、または436nmの化学放射線(または電磁)に露出したとき、光転位を起こすことが知られている。適切な光源を使用すれば、該放射線を調整できる。例えば、本発明の一実施形態において採択されたPACは、式(C)、(D)または(E)で示す1つ以上のジアゾキノン部分を含む。
【0056】
【0057】
一般に、式(C)、(D)および/または(E)の構造は、それぞれのスルホニルクロリド(または他の反応性部分)、およびフェノール性化合物(例:下記のb-1~b-6で示す構造のうちの1つ)のエステル化生成物として感光性組成物に組み込まれる。それぞれは、一般に上述したように光活性化合物またはPACと呼ばれる。したがって、PACのうちの任意の1つ、または2つ以上の混合物は、ポリマーと組み合わせて本発明によるポジティブトーン組成物の実施形態を形成する。それぞれの式(b-1)~(b-6)において、Qは式(C)、(D)または(E)の構造のうちの任意の1つを示す。感光性組成物で構成されたフィルムまたは層の一部を適切な化学放射線または電磁放射線に露出すると、上記エステル化生成物は、該フィルムの未露光部分に比べて、アルカリ水溶液における露光部分の溶解度を高めるカルボン酸を生成する。一般に、感光性物質は、5~50pphrのポリマーの量で組成物に組み込まれる。ここで、ポリマーに対する感光性物質の特定比は、未露光部分と比較したときに露光した部分の溶解速度と、所望の溶解速度との差の達成に必要な放射線の量に比例する。本発明による実施形態に有用な感光性物質を下記式b-1~b-6で示した。その他の有用な感光性物質は、本願に参照により米国特許第7,524,594号の14~20カラムが組み込まれる。
【0058】
【0059】
ここで、Qの少なくとも1つは、式(C)または(D)の基であり、残りのQは水素である。市販されている該光活性化合物の例としては、東洋合成工業株式会社のTrisP-3M6C-2(4)-201が挙げられる。
【0060】
光活性化合物を任意の量で本発明の感光性組成物に使用することにより、本願に記載されているような望ましい結果を得ることができる。一般に、上記量は本願に記載されているように、ポリマー(樹脂)100質量部当たり1~50部(pphr)の範囲である。他の実施形態において、上記量は5~30pphrの範囲である。
【0061】
本発明の感光性組成物に本願に記載されているような式(IV)または(V)の適切な多官能性架橋剤を1つ以上使用することにより、本発明の組成物に有益な効果を与えることができる。その利点としては機械的および熱的特性の改善が挙げられるが、これに限定されない。
【0062】
式(IV)または(V)の架橋剤を任意の量で本発明の組成物に使用でき、これにより意図した利点を付与することができる。一実施形態において、本発明の組成物に採択された式(IV)または(V)の1つ以上の化合物の量は、樹脂、すなわちその組成物に使用されたポリマー100部当たり約8~30部(pphr)の範囲であってもよい。他の実施形態では、約10~25pphrの範囲であり、さらに他の実施形態では、約12~20pphrの範囲であり、さらに他の実施形態では、約14~18pphrの範囲であってもよい。しかしながら、式(IV)または(V)の化合物を2つ以上使用する場合、式(IV)または(V)の化合物の量は、30pphrを超えてもよい。
【0063】
本発明の組成物に使用できる式(IV)または(V)の多官能性架橋剤の例示は以下のとおりであるが、これに限定されない。
【化16】
【0064】
他の適切な架橋剤としては、次の例が挙げられる。
【化17】
【0065】
式a-1~a-6のフェノール性化合物の任意の1つ以上を採択すれば、本発明の組成物に有益な効果を与えることができることをさらに確認した。このようなフェノール性化合物のいくつかは市販されており、例えば、TrisP-3M6C-2Ballastは、東洋合成工業株式会社から入手できる。式a-1~a-6のフェノール性化合物の1つ以上を任意の量で本発明の感光性組成物に使用でき、これは、本願に記載されているような望ましい結果を誘導する。一般に、上記量は本願に記載されているポリマー(すなわち、樹脂)の100質量部当たり1~25部(pphr)の範囲であってもよい。他の実施形態では3~20pphrの範囲、また他の実施形態では5~15部の範囲であってもよい。
【0066】
上述のように、式(VI)の1つ以上の化合物も本発明の組成物に採択できる。式(VI)で示す化合物の例示は以下のとおりであるが、これに限定されない。
2,2’-メチレンジフェノール(または2,2’-ビス(ヒドロキシフェニル)メタン、またはo,o’-BPF);
4,4’-メチレンジフェノール;
2,2’-(エタン-1,1-ジイル)ジフェノール;
4,4’-(エタン-1,1-ジイル)ジフェノール;
2,2’-(プロパン-1,1-ジイル)ジフェノール;
4,4’-(プロパン-1,1-ジイル)ジフェノール;
2,2’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノール;
4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノール;
2,2’-(4-メチルペンタン-2,2-ジイル)ジフェノール;
4,4’-(4-メチルペンタン-2,2-ジイル)ジフェノール;
2,2’-(5-メチルヘプタン-3,3-ジイル)ジフェノール;
4,4’-(5-メチルヘプタン-3,3-ジイル)ジフェノール;
4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(2-シクロヘキシルフェノール);
4,4’-(2-メチルプロパン-1,1-ジイル)ビス(2-シクロヘキシル-5-メチルフェノール);
5,5’-(シクロヘキサン-1,1-ジイル)ビス(([1,1’-ビフェニル]-2-オール));
4,4’-(シクロヘキサン-1,1-ジイル)ビス(2-シクロヘキシルフェノール);
4,4’-(4-メチルシクロヘキサン-1,1-ジイル)ジフェノール;
2-シクロヘキシル-4-(2-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-イル)-5-メチルフェノール;
6,6’-メチレンビス(2-(tert-ブチル)-4-メチルフェノール);
6,6’-(2-メチルプロパン-1,1-ジイル)ビス(2,4-ジメチルフェノール);
4,4’-(2-メチルプロパン-1,1-ジイル)ビス(2-(tert-ブチル)-5-メチルフェノール);
4-(4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン-1,2,3-トリオール(または1,2,3-トリヒドロキシ-4-[(4’-ヒドロキシフェニル)メチル]ベンゼン;および
これらを組み合わせた混合物。
【0067】
式(VI)の1つ以上の化合物を任意の量で本発明の感光性組成物に使用することができ、これは、本願に記載されているような望ましい結果を誘導する。一般に、上記量は、本願に記載されているポリマー(すなわち、樹脂)の100質量部当たり5~30部(pphr)の範囲であってよい。他の実施形態では7~20pphrの範囲、他の実施形態では9~15pphrの範囲であってもよい。
【0068】
さらに、本発明の感光性組成物は、ポリマー樹脂の酸性ペンダント基と結合することができる添加剤を含む。上記物質としては、グリシジル基、エポキシシクロヘキシル基、オキセタン基などのエポキシ基;2-オキサゾリン-2-イル基などのオキサゾリン基;N-ヒドロキシメチルアミノカルボニル基などのメチロール基;N-メトキシメチルアミノカルボニル基などのアルコキシメチル基の1つ以上を含む添加剤が挙げられるが、これに限定されない。一般に、ポリマーの酸性ペンダント基との結合は、適切な時間に、一般に110℃以上の適切な温度に加熱することにより開始される架橋反応である。よって、本発明の一実施形態において、本発明の感光性組成物は下記から選択された1つ以上のエポキシ化合物を含むが、これに限定されない。
【0069】
【0070】
本発明の感光性組成物の形成において、添加剤として使用することができる架橋剤または架橋性物質の他の例示としては、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、シリコーン含有エポキシ樹脂、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、ポリメチル(グリシジルオキシプロピル)シクロヘキサンなど;2-メチル-2-オキサゾリン、2-エチル-2-オキサゾリン、1,3-ビス(2-オキサゾリン-2-イル)ベンゼン、1,4-ビス(2-オキサゾリン-2-イル)ベンゼン、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、2,6-ビス(4-イソプロピル-2-オキサゾリン-2-イル)ピリジン、2,6-ビス(4-フェニル-2-オキサゾリン-2-イル)ピリジン、2,2’-イソプロピリデンビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、(S,S)-(-)-2,2’-イソプロピリデンビス(4-tert-ブチル-2-オキサゾリン)、ポリ(2-プロペニル-2-オキサゾリン)などのオキサゾリン環含有ポリマー;N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクルアミド、フルフリルアルコール、ベンジルアルコール、サリチルアルコール、1,2-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノール、1,4-ベンゼンジメタノール、レゾール型フェノール樹脂またはこれらの混合物が挙げられる。一般に、このような物質は、ポリマーを基準に5pphr~40pphrの量で含まれていることが効果的である。しかしながら、その有効性は、少なくとも部分的には、使用されるポリマーの特性と架橋結合性ペンダント基を包含する繰り返し単位のモル%に依存するので、より高い、またはより低い負荷も有効であることが証明されることを理解されたい。
【0071】
本発明の他の態様において、感光性組成物は様々な用途のうち光速度および溶解特性を増加させるなど、その組成物の特性の向上に有用な化合物または化合物の混合物を含む。式(VII)の化合物を本発明の実施において添加剤として使用することができる。
【化19】
【0072】
ここで、xとyは0~4の整数である。R21およびR22は同一または異なり、水素、ハロゲン、メチル、エチル、直鎖または分枝のC3-C18アルキル、C1-C18パーフルオロアルキル、メトキシ、エトキシ、直鎖または分枝のC3-C18アルコキシ、C3-C16シクロアルキル、C6-C16ビシクロアルキル、C8-C16トリシクロアルキル、C6-C10アリール、C7-C18アラルキル、-(CH2)wCO2R23、-(CH2)zOR24からそれぞれ独立して選択される。Ar1およびAr2は、同一または異なり、C6-C10アリール、C7-C18アラルキルからそれぞれ独立して選択され、ここでアリール基またはアラルキル基は、当該分野において周知の置換基のうち任意の置換基でさらに置き換えられてもよい。Zは、結合、O、S、P、-NR-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C(=O)-NR-、-SO-、-SO2-、-SO2NH-アルキル、またはシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アラルキルなどを含む炭素環式架橋基から選択される。ここで、任意のシクロアルキル、ビシクロアルキル、またはトリシクロアルキル環は、O、S、N、PおよびSiから選択された1つ以上のヘテロ原子を含んでもよい。wが0~8の整数の場合、R23は水素、メチル、エチル、直鎖または分枝のC3-C18アルキルとなる。zが0~8の整数の場合、R24は水素、メチル、エチル、直鎖または分枝のC3-C18アルキルとなる。ここでRは、水素、メチル、エチル、直鎖または分枝のC3-C18アルキル、C1-C18パーフルオロアルキル、C3-C16シクロアルキル、C6-C16ビシクロアルキル、C8-C16トリシクロアルキルである。
【0073】
その他の各種のフェノール性化合物も本発明の組成物で使用され得る。該化合物は以下の化合物からなる群から選択することができるが、これに限定されない。
【0074】
式(VIII)の化合物:
【化20】
(ここで、hは0~4の整数であり;
iは1または2であり;
R
6は独立して水素、メチル、エチル、直鎖または分枝のC
3-C
16アルキル、C
3-C
8シクロアルキル、C
6-C
10アリール、C
7-C
12アラルキル、または-CO
2Hである。)
式(IX)の化合物:
【化21】
(ここで、jおよびkは1~4の整数であり;
lおよびmは0~4の整数であり;
R
7およびR
8は同一または異なり、それぞれ独立して水素、メチル、エチル、直鎖または分枝のC
3-C
6アルキル、C
3-C
8シクロアルキル、C
6-C
10アリール、C
7-C
12アラルキルから選択される。)
式(X)の化合物:
【化22】
(ここで、nおよびoは1~4の整数であり、
pおよびqは1~4の整数であり、
R
9、R
10、R
11、およびR
12は同一または異なり、水素、メチル、エチル、直鎖または分枝のC
3-C
6アルキルからそれぞれ独立して選択され、
R
13が-(CH
2)r-の場合、R
9とR
10のうちの1つとR
11とR
12のうちの1つが、それらが結合している炭素原子と一緒になって、5~8員の置換もしくは未置換の炭素環を形成し、置換基はC
1-C
6アルキルから選択され、
R
13は-(CH
2)r-またはフェニレンであり、ここで、rは1~2であり、
R
14およびR
15は同一または異なり、それぞれ独立して水素、メチル、エチル、直鎖または分枝のC
3-C
6アルキル、C
3-C
8シクロアルキル、C
6-C
10アリール、C
7-C
12アラルキルから選択される。)
【0075】
式(VIII)の化合物に含まれる添加剤の例示としては、
2-シクロヘキシルフェノール;
4-シクロヘキシルフェノール;
2-シクロヘキシル-5-メチルフェノール;
2,4-ジ-sec-ブチルフェノール;
2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール;
2,4-ジ-tert-ブチルフェノール;
4-ドデシルフェノール;
4-エチルレゾルシノール;
2-プロピルレゾルシノール;
4-ブチルレゾルシノール;
4-ヘキシルレゾルシノール(4-ヘキシルベンゼン-1,3-ジオールとも呼ばれる);および
これらを組み合わせた混合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0076】
式(IX)の化合物が含む添加剤の例示としては、
[1,1’-ビフェニル]-2,2’,4,4’-テトラオール;
2’-メチル-[1,1’-ビフェニル]-2,3,4,4’-テトラオール;
[1,1’-ビフェニル]-2,2’,4,4’,6-ペンタオール;
[1,1’-ビフェニル]-2,2’,3,4,4’-ペンタオール;および
これらを組み合わせた混合物
が挙げられるが、これに限定されない。
【0077】
式(X)の化合物に含まれる添加剤の例示としては、
4,4’,4’’-(ブタン-1,1,3-トリイル)トリス(2-(tert-ブチル)-5-メチルフェノール);
4,4’-(4-イソプロピル-1-メチルシクロヘキサン-1,3-ジイル)ジフェノール;
4,4’-(1,4-フェニレンビス(プロパン-2,2-ジイル))ビス(2-シクロヘキシル-5-メチルフェノール);
4,4’-(1,3-フェニレンビス(プロパン-2,2-ジイル))ビス(2-シクロヘキシル-5-メチルフェノール);
4,4’-(1,4-フェニレンビス(プロパン-2,2-ジイル))ビス(2-シクロヘキシルフェノール);
4,4’-([1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4,4’-ジイル)ジフェノール;
4-(4-(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)-2-メチルフェノール;および
これらを組み合わせた混合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0078】
本発明の組成物に使用できる他の各種の化合物としては、
【化23】
1-エチル-4-メチルピペラジン-2,5-ジオン;
1,4-ジエチルピペラジン-2,5-ジオン;
1-メチル-4-プロピルピペラジン-2,5-ジオン;
1-エチル-4-プロピルピペラジン-2,5-ジオン;
1-エチル-4-イソプロピルピペラジン-2,5-ジオン;および
これらを組み合わせた混合物が挙げられる。
【0079】
他の実施形態において、以下の化合物も本発明の組成物に使用できる。
ビス(オキシラン-2-イルメチル)シクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート;
ビス(オキシラン-2-イルメチル)シクロヘキサン-1,3-ジカルボキシレート;
ビス(オキシラン-2-イルメチル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート;
ビス(オキシラン-2-イルメチル)フタレート;
ビス(オキシラン-2-イルメチル)イソフタレート;
ビス(オキシラン-2-イルメチル)テレフタレート;および
これらを組み合わせた混合物。
【0080】
本願に提示している各種の化合物および添加剤は、本発明の感光性組成物のすべての性能を改善して多様な用途に用いられる光パターン化構造を提供する。上記用途は、チップスタックアプリケーション、再配線層、CMOSイメージセンサダム構造の形成を含むが、これに限定されない。本明細書に記載した一部の添加剤は、2つ以上の機能を特徴とする。例えば、上述した添加剤の一部は、露光後に特定の溶解促進活性を示すだけでなく、上述のように架橋剤として促進することもできる。よって、本明細書で使用される添加剤は、化合物の活性を特性の1つとして制限せず、本発明の感光性組成物の他の機能も促進することができる。
【0081】
構造式(VI)~(X)で示す上述の添加剤は、単独で、言い換えれば単一化合物として使用してもよく、あるいは1つ以上の化合物と組み合わせて使用してもよい。例えば、一実施形態において、式(VI)の1つ以上の化合物は、式(VII)~(X)の他の化合物のうちの任意の化合物と組み合わせて使用してもよい。すなわち、式(VI)の化合物を式(VII)の化合物、式(VII)の化合物、式(IX)の化合物、または式(X)の化合物などと組み合わせてもよい。使用できる添加剤の量は、本発明の感光性組成物で得ようとする結果による。よって、意図した結果を引き起こせる任意の量を本発明に適用することができる。一般に使用可能な添加剤の量は、0.5~20pphrの範囲であり、一実施形態では1~12pphrの範囲である。
【0082】
構造式(XIa)~(XIh)が示す他の各種の化合物を単独で、または上述した式(VI)~(X)の化合物のうちの任意の物質と組み合わせて1つ以上の添加剤として使用することで本発明の感光性組成物を形成することができる。すなわち、構造式(XIa)~(XIh)が示す化合物は単独で、または任意の組み合わせの混合物として、任意の望ましい量で使用できる。
【0083】
【0084】
本発明の他の態様において、本発明の組成物とともに使用するのに適切な他の各種の添加剤の例示は以下のとおりであるが、これに限定されない。
【化25】
【化26】
【0085】
本発明の感光性組成物は、接着促進剤、抗酸化剤、架橋結合剤、カップリング剤または硬化剤などとして有用な1つ以上の化合物をさらに含む。該化合物は下記の群から選択できるが、これに限定されず、市販の物質は商標名として表示する。
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【0086】
他のエポキシ樹脂または架橋添加剤の例示としては、Araldite MTO163およびAraldite CY179(Ciba Geigy社製)、EHPE-3150、Epolite GT300(Daicel Chemical社製)が挙げられる。
【0087】
これらの化合物のうちの任意の1つを単独で使用してもよく、任意の組み合わせで混合して使用してもよいが、意図した用途に応じて、望ましい利点を得るために必要な場合にのみ使用できることに注意されたい。上述の1つ以上の化合物を任意の量で本発明の感光性組成物に使用すると、所望の結果を得ることができる。一般に上記量は、ポリマー樹脂100部当たり0.5~20部(pphr)の範囲であり、一実施形態では1~10pphrの範囲である。
【0088】
本発明による感光性組成物は、組成物および生成されたフィルムまたはポリマー層の特性の改善に有用な他の成分を含んでもよい。例えば、好ましい露光放射線の波長に対する組成物の感度は、下記にさらに説明するように、特性を改善して望ましい結果を引き起こせる。選択的成分の例示としては、1つ以上の化合物/各種の添加剤、例えば界面活性剤、シランカップリング剤、レベリング剤、フェノール樹脂、抗酸化剤、難燃剤、可塑剤、硬化促進剤が挙げられ、これに限定されない。
【0089】
本発明による感光性組成物の実施形態を所望の基板に塗布してフィルムを形成する。上記基板は、任意の適切な基板を含んでもよく、電気、電子または光電子デバイス、例えば半導体基板、セラミック基板、ガラス基板に使用されてもよい。塗布には、任意の適切なコーティング法を適用することができ、これには、スピンコーティング、スプレーコーティング、ドクターブレードコーティング、メニスカスコーティング、インクジェットコーティング、スロットコーティングなどが含まれる。
【0090】
次に、コーティングされた基板を、例えば70~130℃の温度で1~30分間加熱して、残留キャスティング溶媒の除去を促す。温度および時間は適宜変更できる。一般に、加熱後は、フィルムを適切な波長の化学放射線にイメージ形態で露出させる。波長は一般に、本願に記載されているように、ポリマー組成物に混入された光活性化合物および/または感光剤の選択に基づいて選択される。一般には200~700nmである。「イメージ形態の露光」とは、フィルムの露光部分と未露光部分からなるパターンを形成するためにマスキング要素を用いて露光させることである。
【0091】
本発明による感光性組成物または配合物の実施形態から形成されたフィルムをイメージ形態で露光した後、現像工程に進む。本発明のポジティブトーンポリマーの配合物の場合、現像工程でフィルムの露光部分のみを除去してフィルムにマスキング層のポジティブイメージを残す。本発明のネガティブトーンポリマー配合物の場合、現像工程でフィルムの未露光部分のみを除去してフィルムにマスキング層のネガティブイメージを残す。一実施形態の場合、前述の現像工程を実施する前に露光後ベークを採択することができる。
【0092】
ポジティブトーン配合物に特に適合な現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニアなどの無機アルカリ水溶液と、0.26N水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、エチルアミン、トリエチルアミン、およびトリエチルアルコールアミンのような有機アルカリの水溶液が挙げられる。有機アルカリを使用する場合、一般に、本質的に水と完全混和性の有機溶媒を使用して有機アルカリを適切に溶解する。TMAHの水溶液は、半導体産業において周知の現像液である。適合な現像液は、さらにプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、ブチルアセテートのような有機溶媒を含んでもよい。
【0093】
したがって、本発明の一部の配合物の実施形態では、イメージ形態の露光後に生成されたイメージを水性塩基溶液を使用して現像する。他の実施形態では、生成されたイメージを有機溶媒を使用して現像する自己画像形成フィルムを提供する。現像液の種類によらず、イメージを現像した後、基板はリンスして過剰な現像液を除去する。一般的なリンス剤は、水または適切なアルコール、あるいはこれらの混合物である。
【0094】
リンス後、基板を乾燥し、イメージ化フィルムは最終的に硬化される。言い換えれば、イメージが固定される。イメージ形態の露光中に残りの層が露光されていない場合、一般にフィルムの残りの部分内で反応を起こすことでイメージを固定するようになる。上記反応は、一般に加熱および/または残留物質の非イメージ形態の露光または全面露光で開始することができる架橋反応である。上記露光および加熱は、別途のステップで実施してもよく、イメージ化フィルムの特定の用途に適していると判断される場合に組み合わせてもよい。全面露光は一般にイメージ形態露光に使用されたものと同様のエネルギー源を使用するが、他にも任意の適切なエネルギー源を使用してもよい。加熱は、一般に好ましい温度、例えば110℃以上で40分~1時間以上実施する。イメージ形態露光において残りの層を露光する場合、イメージは一般に露出により開始された反応を完了するように調整された加熱ステップで固定される。上述のように追加の全面露光と加熱を使用できる。しかしながら、最終硬化工程は、形成されるデバイスのタイプによって決まる。よって、イメージの最終固定は、残りの層が接着層または構造として使用される最終硬化でなくてもよい。
【0095】
本発明のアルカリ可溶性の感光性樹脂組成物の実施形態を使用して高耐熱性、適切な吸収率、高透明度、および低誘電率を有することを特徴とする層を形成することでデバイスを製造する。このような層は、一般に、硬化後に優れた弾性係数を有し、0.1kg/mm2~200kg/mm2が一般的である。
【0096】
上述のように、本発明による感光性組成物の実施形態の適用例としては、ダイアタッチ接着剤、ウェハボンディング接着剤、絶縁フィルム(層間誘電体層)、保護フィルム(パッシベーション層)、機械的緩衝フィルム(応力緩衝層)、または多様な半導体素子および印刷配線板用の平坦化フィルムが挙げられる。上記実施形態の特定の用途は、単層または多層の半導体素子を形成するためのダイアタッチ接着剤、半導体素子上に形成される誘電膜;上記パッシベーション膜上に形成されたバッファ塗膜;半導体素子に形成された回路上に形成される層間絶縁膜などを含む。
【0097】
したがって、本発明による一実施形態は、代替物質に比べて、1つ以上の機械的特性(例:老化後の低応力維持破断伸び率)、および少なくとも同等の耐化学性と関連して向上した特性を示すポジティブトーン感光性ポリマー組成物を提供する。また、その実施形態で一般に優れた電気絶縁性、基板に対する接着性などを提供する。よって、本発明による実施形態を含む半導体素子、素子パッケージ、およびディスプレイ装置が提供される。
【0098】
本発明の感光性組成物は、チップスタック用途のように、半導体チップを互いに接合するための接着層の形成に有用である。例えば、このような目的で使用される接着層は、本発明の感光性接着剤組成物の硬化物からなる。接着層が単層構造であっても、基板に対する十分な接着性を表し、硬化ステップによって発生する大きな応力はないことが明らかになった。よって、積層体としてチップを取り囲む厚いフィルム層を回避できる。また、本発明により形成された積層体は、熱膨脹差などにより引き起こされる層間の応力集中を緩和できる点で非常に好ましい。その結果、高さが低く、信頼性の高い半導体素子が得られる。すなわち、アスペクト比が低く、薄肉の素子が得られる。このような半導体素子は、内部容積が非常に小さな電子機器、例えばモバイルデバイスに特に有用である。本発明によれば、これまで達成できなかった水準の小型化、薄型化、および軽量化を特徴とする様々な電子デバイスを形成することが可能であり、振動または落下する場合でも半導体素子の機能は損傷されにくい。
【0099】
本発明の感光性接着剤組成物の硬化物、すなわち接着層またはフィルムは、一般に25℃で2~3.5GPaの押込み弾性率を示す。本発明の感光性接着剤組成物の硬化物は、25℃、すなわち、硬化前のステップで未硬化物の押込み弾性率が70~120%である。また、本発明の感光性接着剤組成物は、例えば半導体チップのような適した基板に対する接着力に優れており、硬化前、ならびにエッチングおよびアッシング工程後の接着力は、一般に25℃で20~200ニュートン(N)である。
【0100】
本発明の感光性接着剤組成物は、硬化後室温で未硬化のサンプルの押込み弾性率と比較的類似した押込み弾性率を示し、半導体チップの間に大きな応力集中を起こさないが、十分な接着力を有する接着層の形成に寄与する。また、硬化前の状態の押込み弾性率が硬化後の押込み弾性率の所定の範囲内にあるので、例えば、硬化前の感光性接着剤組成物が著しく変形し、または流れ出る可能性がなく、代わりに、半導体チップを積層するときにアラインメントの精度を高めることできる。硬化前後の押込み弾性率の変化が相対的に小さいため、感光性と関連した収縮を減少させることができ、硬化時に収縮による半導体チップ界面の応力が減少する。これにより、チップ積層体の信頼性の向上にも寄与することができる。
【0101】
一方、本発明の感光性接着剤組成物は、エッチング工程およびアッシング工程後、硬化前の状態でダイボンディング可能になるように、半導体チップとの接着力を十分に確保する。よって、半導体チップを接着するための接着層は、半導体チップを互いにしっかりと固定して、チップ積層体の信頼性の向上に寄与する。
【0102】
本発明の感光性接着剤組成物によれば、接着力に優れながらも応力を緩和する接着層を実現することができる。言い換えれば、接着層は単一層としてバッファ塗膜の素子保護機能(またはバッファ塗膜機能)と、ダイボンディングフィルムの接着機能(またはダイボンディング機能)を両方有するので、信頼性の低下なしにチップ積層体を形成することは勿論、2層で構成し、既存のチップ積層体に比べて薄く作製することができる。また、チップ積層体の薄型化によるモールド部の体積減少およびボンディングワイヤの短縮が可能であるため、軽量化およびコスト節減に寄与する。
【0103】
したがって、一実施形態において、本発明の感光性接着剤組成物の硬化物の押込み弾性率は、上述のように25℃で一般に2~3GPa、他の実施形態では約2.2~3.2GPa、また他の実施形態では約2.4~3.0GPaである。硬化物の押込み弾性率が上記下限値未満であれば、接着層の接着力が低下して半導体チップとの層の界面が剥離し、フィラーがモールド部品に含まれる場合、フィラーが接着層を通過して半導体チップに悪影響を与え得る。一方、硬化物の押し込み弾性率が上記上限値よりも大きければ、接着層の柔軟性が低下して応力緩和が低下し、例えば、半導体チップの積層に伴って発生する残留応力および半導体チップと接着層との間の熱膨脹差による局所的な熱応力集中を緩和することできない。その結果、半導体チップにクラックが生じ、または半導体チップと接着層が剥離する。上記の問題は、本発明の感光性接着剤組成物を使用することで克服できる。
【0104】
また、硬化物の押込み弾性率は、25℃でナノインデンターを使用して測定する。
【0105】
また、本発明の感光性接着剤組成物の硬化前の状態の溶融粘度は、一般に100~200℃の範囲で約20~500パスカル秒(Pa・s)である。該組成物は、半導体チップ20(
図2)に対する濡れ性に優れるため、接着層にボイドなどが生じにくくなる。よって、物理的特性のバラツキの少ない均質な接着層を形成することができるので、接着層を介して半導体チップを接着するときに接着層は局所的な応力集中がほとんど生じない。これにより、半導体チップのクラック発生、および接着層と半導体チップとの間の剥離発生を抑えることができる。
【0106】
本発明の感光性接着剤組成物硬化物の溶融粘度は、レオメータで測定することができる。本発明の一実施形態において、硬化前の溶融粘度は約25~400Pa・sであり、他の実施形態では約30~300Pa・sである。
【0107】
本発明の感光性接着剤組成物は、硬化前の状態である程度の接着力を有しているが、UV照射で接着力を低下させることができる。よって、本発明の感光性接着剤組成物は、UV照射で接着力を制御することができる。
【0108】
具体的に、本発明の感光性接着剤組成物は、上記のような硬化前およびエッチングおよびアッシング工程後の状態下で25℃でUV照射時に剥離可能なバックグラインドテープに対して一般に約3.0N/25mm以上の接着力を有する。本発明の感光性接着剤組成物は、有機物の劣化を促すエッチング、アッシングなどの特定の工程後でも、バックグラインドフィルムに対して十分な接着力を確保することができるので、本発明の感光性接着剤組成物のフィルムで形成した半導体ウェハにダイシング工程を行うときに半導体ウェハを確実に固定することが依然として可能であり、ダイシングの精度を向上することができる。
【0109】
したがって、本発明の一実施形態では、接着力(すなわち、結合強度)は3.5~10.0N/25mmである。
【0110】
一方、本発明の感光性接着剤組成物は、硬化前およびUV照射後の状態下で一般に50℃でUV照射により剥離可能なバックグラインドテープに対して0.5N/25mm以下の接着力を有する。本発明の感光性接着剤組成物は、UV照射時にバックグラインドテープに対する接着力が小さく、ダイシング工程後チップピックアップ時にダイシングテープと塗膜との間の分離が容易であるので、チップ破損のような潜在的な欠陥を防止できる。
【0111】
また、接着力(すなわち、粘着力)を減少させることにより、例えば、本発明の感光性接着剤組成物が、ダイシング工程でダイシングブレードに付着し、または装着工程においてコレットに付着することを抑制することができる。その結果、ダイシングやピックアップの不良が発生することを防止できる。
【0112】
したがって、本発明の一実施形態で、接着力は0.05N/25mm~0.4N/25mmである。
【0113】
また、上記UV照射工程は、365nmの波長の光を積算光量基準で最大600mJ/cm2の露光量で照射する工程である。一実施形態で光源の露光量は約100~500mJ/cm2の範囲である。他の実施形態で光源の露光量は約150~400mJ/cm2の範囲である。さらに他の実施形態で光源の露光量は約200~250mJ/cm2の範囲である。
【0114】
本発明の感光性組成物を使用することにより非常に高分解能の円形ビアが形成できる。ビアの分解能は1~100mmの範囲である。他の実施形態でビアの分解能は3~30mmの範囲である。さらに他の実施形態でビアの分解能は約5~15mmの範囲である。
【0115】
また、上記実施形態で使用するバックグラインド用のUV剥離テープは、一般にアクリル樹脂で作られる。しかしながら、上述の結果をもたらすことができれば、それ以外のテープでもよい。
【0116】
したがって、上述のような本発明の一実施形態において、感光性組成物はアルカリ現像液に可溶性である。
【0117】
また、上述のような本発明の一実施形態において、本発明による電子および/または半導体素子は、積層体が本発明による感光性組成物からなる積層半導体素子を含む。
【0118】
本発明の一実施形態において、再配線層(RDL)構造を含む半導体素子は、本発明による感光性組成物をさらに含む。
【0119】
また、上述のような本発明の一実施形態において、チップスタック構造を含む半導体素子は、本発明による感光性組成物をさらに含む。
上述のような本発明の他の実施形態において、相補型金属酸化物半導体(CMOS)イメージセンサダム構造を含む半導体素子は、本発明による感光性組成物をさらに含む。
【0120】
また、上述のような本発明の一実施形態において、フィルムは本発明による感光性組成物により形成される。上述のように、そのフィルムは一般に優れた誘電特性を特徴とする電子、光電子、マイクロ電子機械の応用分野において非常に様々な有用性を有する優れた化学的、機械的、弾性特性を表す。
【0121】
したがって、本発明の一実施形態において、再配線層(RDL)構造、チップスタック構造、CMOSイメージセンサダム構造の1つを含むマイクロ電子または光電子デバイスを提供し、ここで上記構造は本発明による感光性組成物をさらに含む。
【0122】
また、本発明の一実施形態において、マイクロ電子または光電子デバイスの製造のためのフィルムを形成する方法を提供し、その方法は、
適切な基板を本発明による組成物でコーティングしてフィルムを形成するステップ、
上記フィルムを適切な放射線に露光してマスクでパターン化するステップ、
露光後の上記フィルムを現像して光パターンを形成するステップ、および
上記フィルムを適切な温度に加熱して硬化させるステップ、を含む。
【0123】
本発明の感光性組成物で基板をコーティングする場合、本願に記載されている、または当該分野において公知のコーティング手順、例えばスピンコーティングを適用できる。
【0124】
また、本発明の方法による現像は、水性現像液の使用のように任意の公知の現像技術を採択することができる。
【0125】
本発明の一実施形態において、本発明による方法は、水性の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の現像液を使用する。
【0126】
また、本発明の一実施形態において、本発明による方法で基板を先ずハードベークした後、130~160℃の温度で20~60分間硬化する。
【0127】
本発明のさらに他の一実施形態において、硬化は170~200℃の温度で、5℃ずつ昇温させながら1~5時間実施する。
【実施例】
【0128】
本発明の感光性組成物の形成に用いられたポリマーは、文献に記載の周知のポリマーであり、また当該分野における周知の方法で調製することができる。例えば、本願に組み込まれた米国特許第9,696,623号を参照されたい。
【0129】
実施例1
一般に、本明細書に記載のポリマーであれば使用可能である。例えば、本明細書に記載のポリノルボルネン誘導体のターポリマーをプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)などの適切な溶媒に溶解させ、これに樹脂100部当たりの部数(pphr)で示される特定量の添加剤(表1を参照)を、適切な大きさの琥珀色のHDPEボトルで混合した。混合物を18時間回転させて均一溶液を生成した。汚染粒子を、圧力35psi下で孔径0.45mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のディスクフィルタで濾過して除去し、濾過されたポリマー溶液を低粒子の琥珀色のHDPEボトルに収集し、該溶液を5℃で保管した。
【0130】
【0131】
形成された組成物を室温に戻し、最初の10秒間は200rpmで、次の30秒間は500rpmでスピンコーティングを実施して直径125mmのシリコンウェハ(厚さ:625mm)数枚に被覆した。形成された基板を120℃のホットプレートに4分間載置して約2ミクロン(μm)の厚さのポリマーフィルムを得た。各ポリマーフィルムに、125~500mJ/cm2の範囲の露光エネルギーでイメージ形態の露光を実施した。各フィルムを0.26N TMAHに5秒ずつ約2回浸漬させるパドル現像法を利用して現像した。現像工程後、各ウェハに5秒間脱イオン水を噴霧してウェハをリンスし、15秒間3000rpmで回転させて乾燥した。
【0132】
図1は、本発明の代表組成物を用いて、異なる露光エネルギーで得たフォトリソグラフィ画像である。具体的に、
図1A~1Dはそれぞれ125mJ/cm
2、175mJ/cm
2、225mJ/cm
2、および300mJ/cm
2の閾値の露光量でステッパおよびマスクアライナを用いて撮影したフォトリソグラフィ画像を示す。
【0133】
比較例1
実施例1と実質的に類似しているが、4官能性エポキシ化合物パッケージの代わりに、実施例2および3に記載の比較テスト用の他の添加剤(表1を参照)を含む組成物を調製した。
【0134】
実施例2
ダイシェア強度の測定
実施例1の組成物をシリコンウェハにスピンコーティングして、120℃で4分間ベークして10mmの厚さのフィルムを得た。フィルムを150℃で40分間ハードベークした。次に、ウェハを10mm×20mmのチップに分割した。チップを150℃のホットプレートに載置し、4mm×4mmのシリコンチップを別に準備して1kg-fの力で1秒間被覆分割チップ表面に押しつけた。結合したチップを窒素オーブンに移し、実施例1の組成物を180℃で2時間硬化させた。硬化後、チップアセンブリを加熱ステージ(260℃)に移し、実施例1の組成物を含む10mm×20mmのチップから4mm×4mmのダイを切断した。ダイシェア力(die shear force)を測定して記録した。
上述した内容とほぼ同じ方式で、しかしながら比較例1の組成物を用いてサンプルを製造した。
図2はダイシェア測定で得られた結果を示す。このデータから、実施例1の組成物が比較例1の組成物に比べて非常に優れていることが明らかである。
【0135】
実施例3
実施例1の組成物を適切な基板にスピンコーティングして120℃で4分間ベークした。被覆フィルムを水銀蒸気ランプ(200~450nm)を利用して適切な化学放射線にイメージ形態で露出した。露光された基板を水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)現像液を用いて現像することにより未露光部位を露わにした。次に、基板を約150~240℃の温度範囲で最大2時間加熱して本発明の組成物を完全に硬化した。硬化されたサンプルを酸性エッチャントに露出して酸化表面をすべて除去した。エッチャントの温度を、ほぼ室温から最大50℃までの温度範囲で約5~15分間維持した。エッチング工程後、ポリマーサンプルを光学顕微鏡で観察して工程中に発生した層間剥離または過度なエッチングを探した。実施例1を比較例1と比べたとき、本発明により製造された各種の組成物は、より少ない層間剥離を示した。
【0136】
上記の特定の実施形態で本発明を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、上述した一般的な領域を包含するものとみなされるべきである。
【0137】
本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、各種の変更および実施が可能である。
この明細書により開示される事項には、以下のものが含まれる。
〔1〕
感光性組成物であって、
a)式(I)のモノマーに由来する式(IA)の第1タイプの繰り返し単位、
【化51】
式(II)のモノマーに由来する式(IIA)の第2タイプの繰り返し単位、
【化52】
式(III)のモノマーに由来する式(IIIA)の第3タイプの繰り返し単位、
【化53】
(
【化54】
は、別の繰り返し単位と結合する位置を示し、
aは、0~3の整数であり、
bは、1~4の整数であり、
cは、1~4の整数であり、
R
1
は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、およびn-ブチルからなる群から選択され、
R
18
は、-(CH
2
)
s
-、-(CH
2
)t-OCH
2
-または-(CH
2
)
t
-(OCH
2
CH
2
)
u
-OCH
2
-から選択され、
sは、0~6の整数であり、
tは、0~4の整数であり、
uは、0~3の整数であり、
R
19
は、-(CH
2
)
v
-CO
2
R
20
であり、vは0~4の整数であり、
R
20
は、水素またはC
1
-C
4
アルキルである)
を含むポリマー、
b)式(A)のジアゾキノン部分(moiety)を含む光活性化合物、
【化55】
c)下記の化合物からなる群から選択される多官能性架橋剤、
【化56】
(nは、5~8の整数であり、
Aは、C、CH-(CR
2
)
d
-CH、置換もしくは未置換のアリールからなる群から選択され、dは、0~4の整数であり、Rは、水素、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチルからなる群から選択され、
Bは、置換もしくは未置換の(C
2
-C
6
)アルキレン、および置換もしくは未置換のアリールからなる群から選択され、
前記置換基は、ハロゲン、メチル、エチル、直鎖または分枝の(C
3
-C
6
)アルキル、(C
3
-C
8
)シクロアルキル、(C
6
-C
10
)アリール、(C
7
-C
12
)アラルキル、メトキシ、エトキシ、直鎖または分枝の(C
3
-C
6
)アルキルオキシ、(C
3
-C
8
)シクロアルキルオキシ、(C
6
-C
10
)アリールオキシ、(C
7
-C
12
)アラルキルオキシからなる群から選択される)
d)下記の化合物からなる群から選択されるフェノール性化合物、
【化57】
e)式(VI)の化合物、
【化58】
(dとeは、1~4の整数であり、
fとgは、0~4の整数であり、
R
2
およびR
3
は、同一または異なり、それぞれ独立して水素、メチル、エチル、直鎖または分枝のC
3
-C
6
アルキル、C
3
-C
8
シクロアルキル、C
6
-C
10
アリール、およびC
7
-C
12
アラルキルから選択され、
R
2
およびR
3
は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、置換もしくは未置換の5~8員の炭素原子を形成し、前記置換基はC
1
-C
8
アルキルから選択され、
R
4
およびR
5
は、同一または異なり、それぞれ独立して水素、メチル、エチル、直鎖または分枝の(C
3
-C
6
)アルキル、(C
3
-C
8
)シクロアルキル、(C
6
-C
10
)アリール、および(C
7
-C
12
)アラルキルから選択される)
を含む感光性組成物。
〔2〕
前記ポリマーの前記第1繰り返し単位は、
トリオキサノナンノルボルネン(NBTON);
テトラオキサドデカンノルボルネン(NBTODD);
5-(3-メトキシブトキシ)メチル-2-ノルボルネン(NB-3-MBM);および
5-(3-メトキシプロパンオキシ)メチル-2-ノルボルネン(NB-3-MPM)からなる群から選択されるモノマーに由来する、上記〔1〕に記載の感光性組成物。
〔3〕
前記ポリマーの前記第2繰り返し単位は、
4-(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-イル)-1,1,1-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ブタン-2-オール(HFACH
2
NB);
ノルボルネニル-2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロパン-2-オール(HFANB);および
5-(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-イル)-1,1,1-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン-2-オール(HFACH
2
CH
2
NB)からなる群から選択されるモノマーに由来する、上記〔2〕に記載の感光性組成物。
〔4〕
前記ポリマーの前記第3繰り返し単位は、
3-(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-イル)酢酸(NBMeCOOH);
エチル3-(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2-イル)プロパノエート(EPEsNB);
ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-カルボン酸(Acid NB);および
ノルボルネニルプロパン酸(NBEtCOOH)からなる群から選択されるモノマーに由来する、上記〔3〕に記載の感光性組成物。
〔5〕
前記ポリマーは、
トリオキサノナンノルボルネン(NBTON);
テトラオキサドデカンノルボルネン(NBTODD);
5-(3-メトキシブトキシ)メチル-2-ノルボルネン(NB-3-MBM);
5-(3-メトキシプロパンオキシ)メチル-2-ノルボルネン(NB-3-MPM);
4-(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-イル)-1,1,1-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ブタン-2-オール(HFACH
2
NB);
ノルボルネニル-2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロパン-2-オール(HFANB);
5-(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-イル)-1,1,1-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン-2-オール(HFACH
2
CH
2
NB);
3-(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-イル)酢酸(NBMeCOOH);
エチル3-(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2-イル)プロパノエート(EPEsNB);
ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-カルボン酸(Acid NB);および
ノルボルネニルプロパン酸(NBEtCOOH)からなる群から選択される3種のモノマーに由来する三元ポリマーである、上記〔1〕に記載の感光性組成物。
〔6〕
前記ジアゾキノン部分は、式(C)、(D)または(E)で示される、上記〔1〕に記載の感光性組成物。
【化59】
〔7〕
前記光活性化合物は、
【化60】
のうちの1つ以上から選択され、
少なくとも1つのQは、式(C)または(D)の基であり、
【化61】
残りのQは水素である、上記〔1〕に記載の感光性組成物。
〔8〕
前記多官能性架橋剤は、下記の化合物からなる群から選択される、上記〔1〕に記載の感光性組成物。
【化62】
〔9〕
前記式(VI)の化合物は、
2,2’-メチレンジフェノール;
4,4’-メチレンジフェノール;
2,2’-(エタン-1,1-ジイル)ジフェノール;
4,4’-(エタン-1,1-ジイル)ジフェノール;
2,2’-(プロパン-1,1-ジイル)ジフェノール;
4,4’-(プロパン-1,1-ジイル)ジフェノール;
2,2’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノール;
4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノール;
2,2’-(4-メチルペンタン-2,2-ジイル)ジフェノール;
4,4’-(4-メチルペンタン-2,2-ジイル)ジフェノール;
2,2’-(5-メチルヘプタン-3,3-ジイル)ジフェノール;
4,4’-(5-メチルヘプタン-3,3-ジイル)ジフェノール;
4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(2-シクロヘキシルフェノール);
4,4’-(2-メチルプロパン-1,1-ジイル)ビス(2-シクロヘキシル-5-メチルフェノール);
5,5’-(シクロヘキサン-1,1-ジイル)ビス(([1,1’-ビフェニル]-2-オール));
4,4’-(シクロヘキサン-1,1-ジイル)ビス(2-シクロヘキシルフェノール);
4,4’-(4-メチルシクロヘキサン-1,1-ジイル)ジフェノール;
2-シクロヘキシル-4-(2-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-イル)-5-メチルフェノール;
6,6’-メチレンビス(2-(tert-ブチル)-4-メチルフェノール);
6,6’-(2-メチルプロパン-1,1-ジイル)ビス(2,4-ジメチルフェノール);
4,4’-(2-メチルプロパン-1,1-ジイル)ビス(2-(tert-ブチル)-5-メチルフェノール);および
これらを組み合わせた混合物からなる群から選択される、上記〔1〕に記載の感光性組成物。
〔10〕
前記フェノール性化合物は、
【化63】
からなる群から選択される、上記〔1〕に記載の感光性組成物。
〔11〕
前記フェノール性化合物は、
【化64】
である、上記〔1〕に記載の感光性組成物
〔12〕
前記式(VI)のフェノール性化合物は、
2,2’-(4-メチルペンタン-2,2-ジイル)ジフェノール;
4,4’-(4-メチルペンタン-2,2-ジイル)ジフェノール;
2,2’-(5-メチルヘプタン-3,3-ジイル)ジフェノール;
4,4’-(5-メチルヘプタン-3,3-ジイル)ジフェノール;および
これらを組み合わせた混合物からなる群から選択される、上記〔1〕に記載の感光性組成物。
〔13〕
【化65】
【化66】
これらを組み合わせた混合物
からなる群から選択された1つ以上の化合物をさらに含む、上記〔1〕に記載の感光性組成物。
〔14〕
フェノール性樹脂、レベリング剤、抗酸化剤、難燃剤、可塑剤、シランカップリング剤、硬化促進剤からなる群から選択された1つ以上の化合物をさらに含む、上記〔1〕に記載の感光性組成物。
〔15〕
アルカリ現像液に可溶性である、上記〔1〕に記載の感光性組成物。
〔16〕
積層半導体素子または接着素子を含む半導体または光電子デバイスであって、
前記素子が上記〔1〕に記載の感光性組成物からなる、半導体または光電子デバイス。
〔17〕
上記〔1〕に記載の感光性組成物をさらに含むチップスタック構造を含む、半導体デバイス。
〔18〕
上記〔1〕に記載の組成物を含む、フィルム。
〔19〕
上記〔1〕に記載の組成物をさらに含む再配線層(RDL)構造、チップスタック構造、CMOSイメージセンサダム構造のうちの1つ以上を含む、マイクロ電子または光電子デバイス。
〔20〕
適切な基板を上記〔1〕に記載の組成物でコーティングしてフィルムを形成するステップ、
前記フィルムを適切な放射線に露光してマスクでパターン化するステップ、
露光後の前記フィルムを現像して光パターンを形成するステップ、および
前記フィルムを適切な温度に加熱して硬化させるステップ、
を含む、マイクロ電子または光電子デバイス作製用フィルムの形成方法。
〔21〕
前記コーティングするステップはスピンコーティングにより実施される、上記〔20〕に記載の方法。
〔22〕
前記現像ステップは水性現像液により実施される、上記〔20〕に記載の方法。
〔23〕
前記現像液は水性の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)である、上記〔22〕に記載の方法。
〔24〕
前記基板を先ずハードベークしてから、130~160℃の温度で20~60分間硬化させる、上記〔20〕に記載の方法。
〔25〕
前記硬化ステップは170~200℃の温度で、5℃ずつ昇温させながら1~5時間実施される、上記〔20〕に記載の方法。