(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】ヒト化抗CA IX抗体、およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/40 20060101AFI20240304BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240304BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240304BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240304BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240304BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240304BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20240304BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240304BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20240304BHJP
【FI】
C07K16/40 ZNA
C07K16/46
A61K39/395 P
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
G01N33/574 A
C12N15/13
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2022526706
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(86)【国際出願番号】 IB2020060343
(87)【国際公開番号】W WO2021090187
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2019/059492
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】522178865
【氏名又は名称】マブプロ エー.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ザトヴィコヴァ,ミリアム
(72)【発明者】
【氏名】パストレコヴァ,シルヴィア
(72)【発明者】
【氏名】タカコヴァ,マルティナ
(72)【発明者】
【氏名】バラソヴァ,モニカ
(72)【発明者】
【氏名】パストレク,ヤロミール
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-535601(JP,A)
【文献】特表2023-508826(JP,A)
【文献】Zat'ovicova, M. et al.,"Monoclonal antibodies generated in carbonic anhydrase IX-deficient mice recognize different domains of tumour-associated hypoxia-induced carbonic anhydrase IX",J. Immunol. Methods,2003年,Vol. 282,pp. 117-134
【文献】Zatovicova, M. et al.,"Carbonic anhydrase IX as an anticancer therapy target: preclinical evaluation of internalizing monoclonal antibody directed to catalytic domain",Curr. Pharm. Des.,2010年,Vol. 16,pp. 3255-3263
【文献】Zatovicova, M. et al.,"Monoclonal antibody G250 targeting CA IX: Binding specificity, internalization and therapeutic effects in a non-renal cancer model",Int. J. Oncol.,2014年,Vol. 45,pp. 2455-2467
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域配列
EVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFNTNAMHWVRQAPGKGLEWVARIRSKSNNYTTYYADSVKDRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCVCGSWFAYWGQGTLVTVSS(配列番号12);および
、
軽鎖可変領域配列
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLLNSSNQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYFTSTRQSGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQHYSIPLTFGQGTKLEIK(配列番号18)を含む、ヒトCA IXのプロテオグリカン領域を特異的に認識するヒト化抗体。
【請求項2】
前記ヒト化抗体は、重鎖のアロタイプG1m17、1のヒトIgG定常領域、および、軽鎖のアロタイプKm3のヒトκ定常領域を有する、請求項
1に記載のヒト化抗体。
【請求項3】
請求項1
または2に記載のヒト化抗体の治療有効量、および、薬学的に許容可能なキャリア、希釈剤または賦形剤を含み、
前記ヒト化抗体は、ヒトCA IXを特異的に認識するものである、医薬組成物。
【請求項4】
細胞増殖性疾病または細胞増殖性障害から選択される疾病または障害の治療に使用するための、前記ヒト化抗体、または、前記医薬組成物であって、
前記疾病または障害は、好ましくは、扁平上皮癌、骨髄腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、消化器(管)癌、腎臓癌、卵巣癌、肝臓癌、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、大腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、黒色腫、軟骨肉腫、神経芽腫、膵臓癌、多形性膠芽腫、子宮頸癌、脳腫瘍、胃癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、中皮腫、および、頭頚部癌からなる群より選択される癌である、請求項1
または2に記載のヒト化抗体、または、請求項
3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
CA IXを発現する乳癌、中皮腫、または多形性膠芽腫の治療における、請求項
4に記載の使用のためのヒト化抗体または医薬組成物。
【請求項6】
請求項1
または2に記載のヒト化抗体の治療有効量の組み合わせを含み、
前記ヒト化抗体は、ヒトCA IXを特異的に認識するものであり、
前記ヒト化抗体の1つが、第2のヒト化抗体の投与前または投与後に投与される、細胞増殖性疾病または細胞増殖性障害の治療に使用するための、医薬組成物。
【請求項7】
CA IXに対する前記ヒト化抗体の日用量または週用量は、0.001mg/kg体重~15mg/kg体重の範囲である、請求項
4~
6のいずれか1項に記載の使用のためのヒト化抗体または医薬組成物。
【請求項8】
下記i)~iii)の用量レジメンが含まれる、請求項
4~
7のいずれか1項に記載の使用のためのヒト化抗体または医薬組成物:
i)前記ヒト化抗体の複数の同一、または、異なる用量;
ii)前記ヒト化抗体の複数の漸増用量;または、
iii)1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、または、5週間に1回投与する前記ヒト化抗体の用量。
【請求項9】
用量レジメンは、1~10の投与サイクルを含み、
前記投与サイクルはそれぞれ、ヒト化抗体を使用した、1~4週間毎の2~5投入/用量を含み、
前記投与サイクルは、それぞれ2つのサイクルの間に1~8週間の中断が続く、請求項
4~
8のいずれか1項に記載の使用のためのヒト化抗体または医薬組成物。
【請求項10】
請求項1
または2に記載のヒト化抗体の少なくとも1つ、および、少なくとも1つのキャリア、希釈剤、または、賦形剤を含む、診断用組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、ヒト炭酸脱水酵素IXに特異的に結合することができるヒト化抗体に関する。より具体的には、本発明は、CA IXのプロテオグリカン領域に対する抗体に関する。前記抗体は、マウス由来の相補性決定領域、ならびに、ヒト化重鎖領域およびヒト化軽鎖領域を含む。
【0002】
〔発明の背景〕
CA IXは、Zavada、Pastorekova、Pastorek(US5387676)によって同定された癌関連炭酸脱水酵素である。当該CA IXは、M75モノクローナル抗体(Pastorekova et al,Virology,187:620e626,1992にて最初に説明された)を使用して同定される。当該抗体は、cDNAおよびCA IXをコードする遺伝子のクローニング、腫瘍および正常組織におけるCA IX発現の評価、CA IX調節の研究、ならびに、癌の進行および治療抵抗性とCA IXとの関係の研究において使用された。これら全ての研究により、CA IXは発癌前の腫瘍マーカー/新生物の腫瘍マーカーとして診断および/または予後判定に使用することができ、かつ標的として治療に使用することができるという、最初のUS5387676でなされた仮定が立証された。これら全ての研究により、M75モノクローナル抗体は、種々の免疫学的検出方法および免疫標的アプローチに有用であり、価値あるCA IXに特異的な試薬であることが示された。
【0003】
CA IX(代替名:MNタンパク質)は、二酸化炭素の重炭酸イオンおよびプロトンへの可逆的水和を触媒する亜鉛金属酵素の炭酸脱水酵素ファミリーに属する。15個のヒトCAアイソフォームが存在し、そのうち3個は不活性であり、その他の12個は弱い活性から非常に強い活性にわたる。大部分のアイソザイムは分化した細胞内で主に発現し、種々の組織および器官にて、特定の生理的な役割を果たす(例えば、Pastorekova et al, J Enzyme Inhib Med Chem 19, 199-229, 2004を参照のこと)。CA IXは、癌、低酸素関連発現パターン、酸性最適pKa、および酵素の球状触媒領域から突出する余分なプロテオグリカン様領域(PG)との強い関連のために、特有のポジションを有する。触媒領域(CA)にて、CA IX酵素活性部位は細胞外空間に面し、原形質膜全体のpH調整に寄与する。CA IXは、ナトリウム依存性重炭酸塩輸送体NBCe1、およびナトリウム依存性重炭酸塩輸送体NBCn1、および乳酸塩、およびプロトン輸送モノカルボン酸塩輸送体MCT1、およびプロトン輸送モノカルボン酸塩輸送体MCT4、を含む多様な酸の放出体(extruders)および重炭酸塩の取り込み体(importers)と協働することが、現在十分に立証されている。CA IXは、pH調節に関して、腫瘍表現型の支持に関与するという複数の結果を有する。CA IXはまた、細胞接着の間および固体支持体上での拡散の間に、フォーカルアドヒージョンコンタクトの組立ておよび成熟の一因となる接着分子として作用する。一方で、CA IXは、ベータカテニンへの競合的結合を介して、E-カドヘリンを細胞骨格固定から切り離すことにより、細胞間接着接触を不安定化することができる。実験エビデンスの蓄積により、CA IXは、低酸素およびアシドーシスの条件下での癌細胞の生存保護、癌細胞の移動/浸潤の促進、転移性播種の助長、ホーミングおよび転移性病変の増殖を含む、癌発症の多様な態様に機能的に関与することが示唆されている。
【0004】
CA IXは、低酸素化(無酸素症から中等度の低酸素症までの範囲)に対する最良の応答物の1つである。これは主に、転写開始部位近傍に局在する低酸素応答因子(HRE)コンセンサス配列に結合する低酸素誘導因子HIF-1による転写調節のためである(例えば、Wykoff et al,Cancer Res 60,7075-7083,2000を参照のこと)。HIFの分解を引き起こすpVHL(von Hippel-Lindau)癌抑制タンパク質の不活性化により、腎臓腫瘍におけるCA IX発現が上昇する(例えば、Ivanov et al,Proc Natl Acad Sci USA 95,12596-12601,1998を参照のこと)。さらに、低酸素は、CA IX mRNAのスプライシングおよびCA IXタンパク質の細胞質尾部のプロテインキナーゼA(PKA)媒介リン酸化を調節する。両方の場合において、それらはその酵素活性に影響を及ぼす(例えば、Barathova et al,Br J Cancer 98,129-136,2008; Ditte et al,Cancer Res 71,7558-7567,2011を参照のこと)。
【0005】
CA IXは、低酸素およびカルシウム枯渇によって、ならびに、その細胞外部分に結合する特異的抗体によって、誘導されるエンドサイトーシスを介して、細胞表面から細胞質に内在化し得る(例えば、Zatovicova et al,Curr Pharm Des 16,3255-3263,2010を参照のこと)。CA IXの外部領域は、マトリックスメタロプロテイナーゼADAM17によって切断され、炭酸脱水酵素阻害剤または化学療法剤の低酸素症、アシドーシスおよび毒性障害に反応して微環境に放出され得る(例えば、Zatovicova et al,Br J Cancer 93,1267-1276,2005; Vidlickova et al,BMC Cancer 16,239,2016を参照のこと)。
【0006】
非癌組織におけるCA IX発現はまれである。CA IX発現は、一般的に胃、胆のう、膵臓および腸の上皮に限定される。
【0007】
CA IXの臨床的価値については、1000を超える研究があり、多様な腫瘍の種類や状況において、バイオマーカーおよび/または治療の標的となり得ることが示唆されている(例えば、Pastorek and Pastorekova,Seminars in Cancer Biology 31,52-64,2015を参照のこと)。
【0008】
CA IXは、VHL癌抑制遺伝子の不活性化変異/欠失を有する明細胞腎細胞癌(ccRCC)の90%を超える細胞に高率に発現する。多くの他の腫瘍型では、CA IXは、低酸素および/または酸性の領域で局所的に発現し、一般的には腫瘍の病期および悪性度の進行に伴って増加する。CA IXは、癌患者の体液中にも検出することができ、癌患者の非侵襲的スクリーニングまたはモニタリングのために、臨床的に利用することができる。
【0009】
24,000人を超える非RCC腫瘍患者を対象とした研究のメタアナリシスから、免疫組織化学により評価したCA IX発現と、全てのエンドポイント(全生存、無病、局所領域制御、疾病特性、無転移生存、および無増悪生存)との間に強い有意な関連性が示された(例えば、van Kuijk et al,Front Oncol 6,69,2016を参照のこと)。サブグループ分析では、大部分の腫瘍部位および腫瘍型について、同様の関連性が示された。要するに、これらの結果は、高いCA IX発現を伴う腫瘍を有する患者が、腫瘍型または腫瘍部位とは無関係に、疾病の進行、および転移発生のより高いリスクを有することを示す。さらに、CA IX陽性と、他の癌関連分子標的(例えば、HER-2(ヒト上皮増殖因子受容体2)、VEGF(血管内皮細胞増殖因子)、およびPD-1(プログラム細胞死タンパク質1))に向けた化学療法、放射線療法、さらには免疫療法に対する抵抗性との相関を示す研究が数多く存在する。これらの知見は、CA IX発現に基づいて患者の予後および治療転帰を決定する臨床検査の有用性を立証し、新しいCA IX標的治療計画の発展のための理論的根拠を提供する。
【0010】
免疫療法に基づくCA IX標的計画は、CA IXの腫瘍関連発現パターンを利用する。このアプローチは、モノクローナル抗体(mAb)を使用する。従って、当該アプローチは、現在、化学的な化合物では獲得できないCA IXに対する高い特異性および選択性を保証する。抗体依存性細胞障害(ADCC)を主な作用メカニズムとする場合、殺傷効果は速く、代償メカニズムの発達をサポートしない。CA IX特異的モノクローナル抗体を用いた従来の臨床試験では、患者の層別化(ADCC応答誘導GcG250、Wilex)が行われていなかったため、または許容不可能な毒性(抗体-薬物結合体MMAE-BAY79-4620、Bayer)が認められたため、主要エンドポイントを満たさなかった。このように、免疫療法の好ましい計画には、ADCCおよびCA IX発現レベルに基づく患者の層別化が含まれる。
【0011】
特異性は、特定のmAbが癌治療にうまく使用され得るか否かに関する決定において重要な因子である。この特性は、CA IXに特有の腫瘍関連発現パターンによって獲得される。一方で、この特性は、正常組織ではわずかに限定された発現のみである。ccRCC研究の従来の臨床エビデンスは、CA IXを標的とした抗体に基づく免疫療法が安全で、かつ耐容性も良好であることを示唆している(例えば、Chamie et al,JAMA Oncology 3:913-920,2017を参照のこと)。さらに、治療の安全性は、CA IX発現が腫瘍表現型と強く関連しており、CA IX発現がごく少数の非癌組織に限定され、当該非癌組織では、基底膜が静脈内投与された抗体を上皮細胞に到達させない、という複数の研究エビデンスと関連している。CA IX特異的キメラ抗体cG250(マウスG250の可変領域およびヒトIgGに由来する定常領域を有し、RENCAREX(登録商標)またはGIRENTUXIMAB(登録商標)としても知られる)に関する文献データは、グレードIIIおよびグレードIV、ならびに、用量制限毒性を示さなかった。一方で、RCCにおける優れた蓄積、および中央値/全生存率の増加を示した(例えば、Steffens et al,J Clin Oncol 15:1529-1537,1997; Davis et al,Cancer Immunity 7:14-23 2007; Bleumer et al,Br J Cancer 90:985-990,2004を参照のこと)。さらに、cG250および低用量インターフェロンαの併用療法は、進行性転移性RCC患者にとって安全で、耐容性が良好であり、臨床的に有用であった(例えば、Siebels et al,World J Urol 29:121-126,2011を参照のこと)。
【0012】
WO2003/100029は、Car9遺伝子の標的破壊を伴う、CA IX欠損マウスにて生成されたCA IX特異的マウスモノクローナル抗体を開示する。特異的ハイブリドーマ細胞によって産生される抗体セットは、VII/20mAbおよびIV/18mAbを含む(Zatovicova et al,J Immunol Methods 282,117-134,2003に記載されるように)。mAbはCA IXに対して高度に選択的であり、正常な分化組織において主に発現するヒトCAI、CAIIおよびCAXIIタンパク質と交差反応しない。従って、両方のモノクローナル抗体は、腫瘍特異的効果を正確に有することが期待されている。
【0013】
抗体VII/20は、CA IXの触媒(CA)領域にてコンフォメーションエピトープに結合する。前記抗体は、CA IXの内在化を誘導し、皮下腫瘍異種移植片を有するマウスモデルにて、強力な抗腫瘍効果をin vivoで示す(例えば、Zatovicova et al,Curr Pharm Des 16,3255-3263,2010を参照のこと)。抗体IV/18は、CA IXのプロテオグリカン様(PG)領域中にて線状エピトープに結合し、内在化を誘導しない。これら2つのmAbの能力は、CA IXの2つの別々の細胞外領域上にて抗原領域を認識し、有効な標的化の機会を提供する。VII/20モノクローナル抗体およびIV/18モノクローナル抗体の両方が、CA IX欠損マウス中にて生成されるが、これらはもはや利用し得ない。従って、前記抗体は再生成することができず、その独自性を強調するに過ぎない。モノクローナル抗体に関する全ての前記特性は、抗癌免疫療法において、使用を意図したそれらヒト化のための理論的根拠を提供する。
【0014】
CA IXに関連する状態(例えば、癌)の治療のために、CA IXを標的とする、安全かつ有効な抗体に対する必要性が当該分野において存在する。本発明はその必要性を満たし、かつ他の利点を提供する。
【0015】
〔発明の概要〕
本発明は、ヒトCA IXのプロテオグリカン領域を特異的に認識するヒト化抗体を提供する。これらは、特異的かつ効果的な結合活性、ならびに癌細胞の浸潤および貪食能力の阻害において驚くべき活性を示す。さらに、それらは、安全であり、望ましくない副作用を引き起こさない。
【0016】
本発明は、下記a)およびb)を含むヒトCA IXのプロテオグリカン領域を特異的に認識するヒト化抗体を提供する:
a)下記の配列と同一であるCDR配列、または、下記の配列と1または2個のアミノ酸が異なるCDR配列を含む重鎖可変領域配列:
GFTFNTNAMH(配列番号1)、および、
RIRSKSNNYTTYYADSVKD(配列番号2)、および、
VCGSWFAY(配列番号3);
および、
b)下記の配列と同一であるCDR配列、または、下記の配列と1個または2個のアミノ酸が異なるCDR配列を含む軽鎖可変領域配列:
KSSQSLLNSSNQKNYLA(配列番号4)、および、
FTSTRQS(配列番号5)、および、
QQHYSIPLT(配列番号6)。
【0017】
いくつかの実施形態では、本発明のヒト化抗体は、GFTFNTNAMH(配列番号1)、および、RIRSKSNNYTTYYADSVKD(配列番号2)、および、VCGSWFAY(配列番号3)の配列と同一であるCDR配列、または、当該配列と1または2個のアミノ酸が異なるCDR配列を含む重鎖可変領域配列;および、下記配列と同一であるCDR配列、または、下記配列と1または2個のアミノ酸が異なるCDR配列を含む軽鎖可変領域配列を含む:KSSQSLLNSSNQKNYLA(配列番号4)、および、FTSTRQS(配列番号5)、および、QQHYSIPLT(配列番号6)。
【0018】
一態様では、本発明によるヒトCA IXを特異的に認識するヒト化抗体は、下記からなる群より選択される少なくとも1つの可変領域を含む:
-下記の配列を含む、または、有する重鎖可変領域:
X32VQLVESGGGX33VQPGX34SLX35LSCAASGFTFNTNAMHWVRQAX36GX37GLEWVX38
RIRSKSNNYTTYYADSVKDRFTISRDX39SKX40TX41YLQX42NSLX43X44EDTAVYYCVCGSWFAYWGQGTX45VTVSS(配列番号7)
ここで、
X32=E、または、Q
X33=L、または、V
X34=G、または、R
X35=K、または、R
X36=S、または、P
X37=K、または、R
X38=A、または、G
X39=D、または、N
X40=N、または、S
X41=A、または、L
X42=M、または、V
X43=K、または、R
X44=T、または、A
X45=L、または、T;および、
-下記の配列を含む、または、有する軽鎖可変領域:
DX46X47MTQSPDSLAVSLGERX48TINCKSSQSLLNSSNQKNYLAWX49QQKPGQX50PX51X52X53IYFTSTRQSGVPDRFX54GSGSGTDFTLTIX55SLQAEDVAVYX56CQQHYSIPLTFGQGTX57X58EIK(配列番号8)
X46=V、または、I
X47=V、または、Q
X48=V、または、A
X49=Y、または、F
X50=S、または、P
X51=K、または、N
X52=L、または、V
X53=L、または、V
X54=S、または、T
X55=S、または、N
X56=Y、または、F
X57=K、または、Q
X58=L、または、V。
【0019】
好ましい一態様では、本発明は、ヒトCA IXを特異的に認識するヒト化抗体を提供する。前記ヒト化抗体は、下記からなる群より選択される少なくとも1つの可変領域を含む:
a)下記からなる群より選択される配列を含む、または、有する、重鎖可変領域アミノ酸配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFNTNAMHWVRQASGKGLEWVGRIRSKSNNYTTYYADSVKDRFTISRDDSKNTAYLQMNSLKTEDTAVYYCVCGSWFAYWGQGTLVTVSS(配列番号9)、
EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFNTNAMHWVRQASGKGLEWVGRIRSKSNNYTTYYADSVKDRFTISRDDSKSTAYLQMNSLKTEDTAVYYCVCGSWFAYWGQGTLVTVSS(配列番号10)、
QVQLVESGGGVVQPGGSLRLSCAASGFTFNTNAMHWVRQAPGRGLEWVARIRSKSNNYTTYYADSVKDRFTISRDNSKNTLYLQVNSLRAEDTAVYYCVCGSWFAYWGQGTLVTVSS(配列番号11)、
EVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFNTNAMHWVRQAPGKGLEWVARIRSKSNNYTTYYADSVKDRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCVCGSWFAYWGQGTLVTVSS(配列番号12)、
EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFNTNAMHWVRQASGKGLEWVGRIRSKSNNYTTYYADSVKDRFTISRDDSKNTAYLQMNSLKTEDTAVYYCVCGSWFAYWGQGTTVTVSS(配列番号13);および、
b)下記からなる群より選択される配列を含む、または、有する軽鎖可変領域アミノ酸配列
DVVMTQSPDSLAVSLGERVTINCKSSQSLLNSSNQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYFTSTRQSGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQHYSIPLTFGQGTKLEIK(配列番号14)、
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLLNSSNQKNYLAWFQQKPGQPPNLVIYFTSTRQSGVPDRFSGSGSGTDFTLTINSLQAEDVAVYFCQQHYSIPLTFGQGTQVEIK(配列番号15)、
DIQMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLLNSSNQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYFTSTRQSGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYFCQQHYSIPLTFGQGTKVEIK(配列番号16)、
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLLNSSNQKNYLAWFQQKPGQPPKVLIYFTSTRQSGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQHYSIPLTFGQGTKLEIK(配列番号17)、および、
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLLNSSNQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYFTSTRQSGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQHYSIPLTFGQGTKLEIK(配列番号18)。
【0020】
好ましくは、本発明のヒト化抗体は、配列番号11および配列番号12からなる群より選択される配列を含む、または、有する重鎖可変領域アミノ酸配列;および、配列番号14、配列番号15および配列番号18からなる群より選択される配列を含む、または、有する軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む。
【0021】
特に好ましくは、本発明の抗体は、配列番号12の配列を含む、または、有する重鎖可変領域アミノ酸配列と、配列番号18の配列を含む、または、有する軽鎖可変領域アミノ酸配列とを含む。
【0022】
好ましくは、本発明のヒト化抗体は、重鎖のアロタイプG1m17、1のヒトIgG定常領域、および軽鎖のアロタイプKm3のヒトκ定常領域を有する。
【0023】
本発明はさらに、前述したヒト化抗体、および、薬学的に許容可能なキャリア、希釈剤または賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。前記ヒト化抗体は、ヒトCA IXを特異的に認識する。
【0024】
本発明はまた、CA IXタンパク質の発現、活性化、または、機能に関連する疾病または障害の治療に使用するための、前述の前記ヒト化抗体または前記医薬組成物を含む。該疾病および該障害は、一般的には、細胞増殖性疾病または細胞増殖性障害を含む。前記疾病および障害は、例えば、扁平上皮癌、骨髄腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、消化器(管)癌、腎臓癌、卵巣癌、肝臓癌、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、大腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、黒色腫、軟骨肉腫、神経芽腫、膵臓癌、多形性膠芽腫、子宮頸癌、脳腫瘍、胃癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、中皮腫、および、頭頚部癌からなる群より選択される癌などが挙げられる。
【0025】
好ましくは、本発明は、CA IXを発現する乳癌、中皮腫、または多形性膠芽腫の治療に使用するためのものである、前述のヒト化抗体または医薬組成物を提供する。
【0026】
医薬組成物のヒト化抗体の医学的使用では、1つ以上のヒト化抗体を使用することができる。前記ヒト化抗体、または前記ヒト化抗体を含む医薬組成物は、同時にまたは連続して投与することができる。好ましくは、前記医薬組成物は連続的に投与される。
【0027】
さらに、本発明は、CA IXタンパク質の発現、活性化、または、機能に関連する疾病または障害の治療方法を提供する。前記方法は、それを必要とする対象に、前述のヒト化抗体または医薬組成物の治療有効量を投与する工程を含む。該疾病または該障害は、一般的には、細胞増殖性疾病または細胞増殖性障害を含む。前記疾病および障害としては、扁平上皮癌、骨髄腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、消化器(管)癌、腎臓癌、卵巣癌、肝臓癌、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、大腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、黒色腫、軟骨肉腫、神経芽腫、膵臓癌、多形性膠芽腫、子宮頸癌、脳腫瘍、胃癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、中皮腫、および、頭頚部癌からなる群より選択される癌などが挙げられる。
【0028】
好ましくは、本発明は、CA IXを発現する乳癌、中皮腫、または多形性膠芽腫の治療方法を提供する。前記方法は、それを必要とする対象に、前述のヒト化抗体または医薬組成物の治療有効量を投与する工程を含む。
【0029】
さらに、本発明は、対象の腫瘍の侵襲性を低減する、または、抑制する方法を提供する。前記方法は、前述のヒト化抗体または医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含み、それにより、対象内の腫瘍の侵襲性を低減する、または、抑制する。
【0030】
CA IXに対するヒト化抗体の患者に投与する適切な日用量または週用量は、好ましくは、0.001mg/kg体重~15mg/kg体重の範囲である。
【0031】
CA IXに対するヒト化抗体は、多くの実行可能なレジメンで投与することができる。一般的には、下記i)~iii)のレジメンが適し得る:
i)ヒト化抗体の複数の同一、または、異なる用量;
ii)ヒト化抗体の複数の漸増用量;または、
iii)1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、または、5週間に1回投与するヒト化抗体の用量。
【0032】
いくつかの実施形態では、前述のCA IXに対するヒト化抗体または医薬組成物の投与は、1~10の投与サイクルを含む。前記投与サイクルはそれぞれ、ヒト化抗体を使用した、1~4週間毎の2~5回投入/用量を含む。前記投与サイクルは、それぞれ2つのサイクルの間に1~8週間の中断が続く。
【0033】
本発明はさらに、本明細書中で前述したヒト化抗体の少なくとも1つ、および、少なくとも1つのキャリア、希釈剤、または、賦形剤を含む、診断用組成物を提供する。
【0034】
本発明の抗体を用いる適切な診断アッセイには、イムノアッセイ(例えば、ELISA、アフィニティークロマトグラフィー、免疫組織化学、および、ウェスタンブロッティング法など)が挙げられる。
【0035】
従って、本発明は、それを必要とする対象の癌を診断するための方法を提供する。該方法は、本明細書に記載の診断用組成物を、前記対象に由来するか、または、前記対象から得られた生物学的サンプルと接触させる工程を含む。ここで、規定の閾値を超える複合体の形成は、前記対象内の癌を示す。
【0036】
前記診断用組成物において、または、対象の癌を診断するための前記方法において、前記ヒト化抗体は、常磁性、放射性、または、蛍光性である部分に対して、連結、結合、または、共役され得る。前記部分は、イメージング時に検出可能なものである。
【0037】
〔図面の簡単な説明〕
図1:肺転移形成に対するマウスIV/18モノクローナル抗体の効果。(A)全放射効率は、対照群またはIV/18mAb処置群のいずれかのマウス肺のHT1080-RFP癌細胞の量を反映する。(B)対照マウスおよびIV/18mAb処置マウスの、蛍光の肺転移の代表的なex vivo画像。
【0038】
図2:CA9hu-2変異体と、CA IX陽性(C-33a_CA IX)抗原またはCA IX陰性(C-33a_neo)抗原との反応性を、ELISAで測定した。抗体希釈剤のみを含むサンプルは、「抗体なし」と記す。親IV/18(A)(「マウス抗体」と記す)、ならびにキメラHC0LC0(マウス可変領域およびヒトIg定常領域を有する)抗体を、参照サンプルとして使用した。グラフ中のデータは、誘導の倍数として表す。当該データは、(CA IX陽性抗原から492nmで測定された吸光度のO.D.値)/(CA IX陰性抗原から492nmで測定された吸光度のO.D.値)として計算される。
【0039】
図3:CA IX陽性(C-33a_CA IX)細胞またはCA IX陰性(C-33a_neo)細胞のいずれかを使用した、抗体依存性細胞障害に関するCA9hu-2のヒト化変異体のスクリーニング。キメラHC0LC0(マウス可変領域およびヒトIg定常領域を有する)抗体を、参照サンプルとして使用した。グラフ中のデータは、発光を相対発光単位(RLU)で表す。当該データは、平均±標準偏差値で表す。
【0040】
図4:ヒト化抗体変異体CA9hu-2_HC4LC5の存在下で、ヒトPBMCと共に培養したBT-20スフェロイドの3Dモデル。BT-20スフェロイド内のPBMC細胞の突起(両方とも、CellBrite(商品商標)染料を使用して予め染色した)は、スフェロイド体積を横切って得た処置3日後のZ-スタック切片由来のものである(図の上部)。ヒト化抗体変異体CA9hu-2_HC4LC5が、スフェロイド形態に及ぼす影響に関する免疫組織化学分析。PBMCと共培養し、ヒト化抗体変異体を使用して11日間処置した、BT-20スフェロイド由来の代表的な切片。CA IX染色の特徴的なパターンが、BT-20スフェロイドを横切る膜内で観察された(図の下部)。
【0041】
図5:ヒト化抗体変異体CA9hu-2_HC4LC5の存在下で低酸素プレインキュベートしたC-33a_CA IX細胞の浸潤能力を、xCELLigence装置によるリアルタイム測定により評価した。Matrigelコーティングトップチャンバーに播種した細胞を刺激して、さらに下部のチャンバー内の化学誘引物質に向かって浸潤させた。ヒト化抗体の非存在下で播種したC-33a_CA IX細胞を、「抗体なし」と記す。グラフ中のデータは、細胞指数の時間依存度を示す。当該データは、平均値±標準偏差値で表す。
【0042】
図6:24時間後および72時間後の、ポリ-HEMAコーティング皿上での、ヒト化抗体CA9hu-2_HC4LC5を使用したC-33a_CA IXの多細胞凝集分析。ヒト化抗体の非存在下でインキュベートしたC-33a_CA IX細胞を「陰性対照」と記す。
【0043】
図7:ヒト化抗体CA9hu-2_HC4LC5を使用した、処置72時間後のヨウ化プロピジウム染色およびフローサイトメトリーによるC-33a_CA IX細胞の分析。ヒト化抗体の非存在下でインキュベートしたC-33a_CA IX細胞を「陰性対照」と記す。
【0044】
〔発明の詳細な説明〕
<略語>
本発明の詳細な説明および実施例の全体にわたって、下記の略語が使用される:
3D 三次元
ADCC 抗体依存性細胞障害
ADCP 抗体依存性細胞貪食
ccRCC 明細胞腎細胞癌
CA IX 炭酸脱水酵素IX
CDC 補体依存性細胞障害
CDR 相補性決定領域
CRA サイトカイン放出アッセイ
DOX ドキソルビシン
ELISA 酵素結合免疫吸着アッセイ
FCS 胎仔血清
FR フレームワーク領域
HER-2 ヒト上皮増殖因子受容体2
HIF-1 低酸素誘導因子1
HRE 低酸素応答因子
HVR 超可変領域
IFNγ インターフェロンγ
IL インターロイキン
IMGT 免疫遺伝学情報システム
INN 国際一般名
kDa キロダルトン
KD 解離定数
mAb モノクローナル抗体
M モーラー
MCT モノカルボン酸輸送体
MHC 主要組織適合遺伝子複合体
NFAT 活性化T細胞の核因子
PBMC 末梢血単核球
PBS リン酸緩衝生理食塩水
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
PD-1 プログラム細胞死タンパク質1
PD-L1 プログラム細胞死リガンド1
PG プロテオグリカン様領域
PKA プロテインキナーゼA
PPA プロテオームプロファイラアレイ
RFP 赤色蛍光タンパク質
SEB ブドウ球菌エンテロトキシンB
TNBC トリプルネガティブ乳癌
TNFα 腫瘍壊死因子α
VH 免疫グロブリン重鎖可変領域
VL 免疫グロブリン軽鎖可変領域
VEGF 血管内皮細胞増殖因子
VHL フォンヒッペルリンドウ病
WHO 世界保健機関
<細胞株>
8-MG-BA ヒト膠芽腫癌細胞(Cellosaurus CVCL_1052)
BT-20 ヒト乳癌細胞(ATCC HTB-19)
C-33a ヒト子宮頸癌細胞(ATCC HTB-31)
HT1080 ヒト線維肉腫癌細胞(ATCC CCL-121)
<定義>
本発明をより容易に理解することができるように、特定の技術用語および科学用語を下記に具体的に定義する。本明細書の他の箇所で特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。
【0045】
用語「CA IX」は、CA9遺伝子のタンパク質産物を指すために使用される(例えば、NP_001207.2)。
【0046】
用語「抗CA IX抗体」、「CA IXを認識する抗体」、「CA IXに対する抗体」および「CA IXへの抗体」は、互換性がある。これらは本明細書にて、CA IXタンパク質に結合する抗体を指すために使用される(その結果、前記抗体は、CA IXを標的化する場合に、診断薬および/または治療薬として有用である)。
【0047】
用語「PG領域」は、CA IXタンパク質のN末端部分に存在するプロテオグリカンに相同な領域を指すために使用される。
【0048】
本明細書で使用される用語「抗原」は、抗体形成を誘導し、抗体による結合を受けやすい分子または分子の一部を指す。抗原は、1つまたは複数のエピトープを有し得る。特異的反応は、抗原が高度に選択的な方法でその対応する抗体と反応し、他の抗原によって誘導され得る多数の他の抗体とは反応しないことを意味する。本発明による抗原は、CA IXタンパク質またはその断片である。
【0049】
本明細書で使用される用語「抗原決定基」または「エピトープ」は、特定の抗体と特異的に反応する抗原分子の領域を指す。エピトープに由来するペプチド配列は、動物に免疫性を与え、さらなる抗体またはモノクローナル抗体を産生するために、当該分野で公知の方法を適用して、単独で、または、キャリア部分と共に使用することができる。エピトープに由来する単離されたペプチドは、抗体を検出するための診断方法において、前記抗体の抑制が必要とされる場合の治療薬として使用することができる。
【0050】
本明細書で使用される用語「抗体」または「免疫グロブリン」は、ジスルフィド結合によって共に連結された2つの重鎖および2つの軽鎖の組成物を指す。それぞれの軽鎖は、「Y」字形配置のジスルフィド結合によって、それぞれの重鎖に連結されている。抗体のタンパク質分解消化は、Fv(断片可変)およびFc(断片結晶)領域を生じる。抗原結合領域Fabは、ポリペプチド配列が変化する領域を含む。用語F(ab')2は、ジスルフィド結合によって共に連結された2つのFab’アームを表す。抗体の中心軸は、Fc断片と呼ばれる。それぞれの重鎖は、一端に可変領域(VH)と、それに続く多数の定常領域(CH)とを有する。それぞれの軽鎖可変は、一方の端に可変領域(VL)を有し、他方の端に定常領域(CL)を有する。軽鎖可変領域は、重鎖可変領域とアラインされ、軽鎖定常領域は、重鎖の最初の定常領域とアラインされている。軽鎖および重鎖のそれぞれの対の可変領域は、抗原結合部位を形成する。軽鎖上および重鎖上の領域は、同じ一般構造を有しており、それぞれの領域は、4つのフレームワーク領域を含む。これらの配列は比較的保存されており、相補性決定領域(CDR1~3)として知られる3つの超可変領域によって連結されている。これらの領域は、抗原結合部位の特異性および親和性に寄与する。重鎖のアイソタイプ(γ、α、δ、εまたはμ)は、免疫グロブリンクラス(それぞれ、IgG、IgA、IgD、IgEまたはIgM)を決定する。軽鎖は、全ての抗体クラスにおいて見出される2つのアイソタイプ(カッパ、κまたはラムダ、λ)のいずれかである。
【0051】
「単離された」抗体は、自然環境の成分から分離されたものである。いくつかの実施形態では、抗体は、95%または99%を超える純度まで精製される(例えば、電気泳動またはクロマトグラフィーによって測定される場合)。
【0052】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の母集団から得られる抗体を指す。すなわち、母集団を構成する個々の抗体は、少しの頻度で生じ得る自然発生的な突然変異の可能性を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原に対するものである。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、それぞれのモノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対するものである。
【0053】
本明細書で使用される用語「キメラ抗体」は、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の供給源または種に由来する一方で、重鎖および/または軽鎖の残部が異なる供給源に由来する抗体を指す。
【0054】
本明細書で使用される用語「ヒト化抗体」は、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基およびヒトFR由来のアミノ酸残基を含む抗体を指す。特定の実施形態では、ヒト化抗体は少なくとも1つ、一般的には2つの可変領域の実質的に全てを含む。HVR(例えば、CDR)の全てまたは実質的に全ては、非ヒト化抗体の可変領域に対応する。FRの全てまたは実質的に全ては、ヒト化抗体の可変領域に対応する。ヒト化抗体は、ヒト化抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を任意に含んでいてもよい。抗体の「ヒト化形態」(例えば、非ヒト化抗体)は、ヒト化を経た抗体を指す。
【0055】
本明細書で使用される用語「アクセプターヒトフレームワーク」は、下記に定義されるように、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する重鎖可変領域(VH)フレームワークまたは軽鎖可変領域(VL)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに「由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含んでもよく、またはアミノ酸配列の変化を含んでもよい。いくつかの実施形態では、アミノ酸変化の数は、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、または2個以下である。いくつかの実施形態では、VLアクセプターヒトフレームワークは、配列中にてVLヒトイムノグロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と同一である。
【0056】
本明細書で使用される用語「超可変領域」または「HVR」は、それぞれの抗体可変領域を指す。当該超可変領域は配列中にて超可変であり、および/または、構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成する。一般に、本来の4鎖抗体は、6つのHVR、3つのVH、3つのVLを含む。HVRは一般に、超可変ループおよび/または「相補性決定領域」(CDR)由来のアミノ酸残基を含む。後者は最も高い配列変異性であり、および/または抗原認識に関与する。
【0057】
本明細書で使用される用語「親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合相互作用の強度の総計を指す。本明細書で使用される場合、別段の指示がない限り、「結合親和性」は、結合ペア(例えば、抗体および抗原)のメンバー間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。パートナーYに対するX分子の親和性は、一般に解離定数(KD)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載されるものを含む、当該分野で公知の一般的な方法によって測定することができる。
【0058】
本明細書で使用される用語「エフェクター機能」は、抗体のFc領域に起因する生物学的活性を指す。当該エフェクター機能は、抗体クラスによって変化する。抗体エフェクター機能の例として、補体依存性細胞障害(CDC)および抗体依存性細胞障害(ADCC)が挙げられる。
【0059】
本明細書で使用される用語「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を指す。
【0060】
本明細書で使用される用語である、薬剤(例えば、医薬製剤)の「有効量」は、所望の治療的転帰または予防的転帰を達成するために必要な用量および必要な期間における、有効な量を指す。
【0061】
本明細書で使用される用語「医薬製剤」は、調製物を指す。当該医薬製剤は、その中に含まれる活性成分の生物学的活性が有効となるような形態である。前記医薬製剤は、製剤が投与される対象に対して、許容できない毒性を有するさらなる成分を含まない。
【0062】
本明細書で使用される用語「処置(treatment)」は、処置を受ける個々の自然経過を変化させる試みにおいて、臨床的な介入を指す。当該処置は、予防の間、または臨床病理の経過の間のいずれかで実施され得る。処置の望ましい効果としては、疾病の発生または再発の防止、症状の緩和、疾病の直接的または間接的な病理的転帰の減少、転移の防止、疾病進行速度の低下、病状の改善または緩和、ならびに寛解または予後の改善が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、疾病の発症を遅らせる(delay)ために、または疾病の進行を遅延させる(slow)ために使用される。
【0063】
本明細書で使用される用語「対象」または「個体」は、哺乳動物を指す。哺乳動物には、家畜化された動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、および、ウマ)、霊長類(例えば、ヒト、およびサルのようなヒト以外の霊長類)、ウサギ、および、げっ歯類(例えば、マウス、および、ラット)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、対象または個体はヒトである。
【0064】
本明細書で使用される用語「癌」および「癌性」は、調節されていない細胞増殖を典型的な特徴とする、哺乳動物における生理的な状態を指すか、または記載する。癌の例としては、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、および白血病が挙げられるが、これらに限定されない。このような癌のより具体的な例としては、扁平上皮癌、骨髄腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、消化器(管)癌、腎臓癌、卵巣癌、肝臓癌、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、大腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、黒色腫、軟骨肉腫、神経芽腫、膵臓癌、多形性膠芽腫、子宮頸癌、脳腫瘍、胃癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、中皮腫、および、頭頚部癌が挙げられる。本発明に従って処置することができる特に好ましい癌は、試験された組織サンプル中にてCA IX発現の上昇によって特徴付けられる癌が挙げられる。
【0065】
本明細書で使用される用語「抗腫瘍組成物」は、腫瘍の増殖または機能を抑制または予防することができ、および/または、腫瘍細胞の破壊を引き起こすことができる少なくとも1つの活性治療剤を含む癌の治療に有用な組成物を指す。癌を治療するための抗腫瘍組成物に適切な治療薬には、化学療法剤、放射性同位体、毒素、サイトカイン(例えば、インターフェロン)およびサイトカイン、サイトカイン受容体または腫瘍細胞に関連する抗原を標的とする拮抗剤、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
本明細書で使用される用語「診断する」は、病理の存在または非存在を決定すること、病理または症状を分類すること、病理の重症度を決定すること、病理の進行をモニタリングすること、病理の結果を予測すること、および/または、回復の見込みを指す。
【0067】
本発明の記載との関連において(特に、下記の特許請求の範囲との関連において)、用語「a」および「an」および「the」ならびに同様の指示対象の使用は、本明細書に別段の指示がないか、あるいは明らかに状況に矛盾しない限り、単数および複数の両方を含むと解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含む(containing)」は、別段の指示がない限り、限定されない用語として解釈されるべきである(すなわち、「含む(including)が、これに限定されない」を意味する)。本明細書の値の範囲の記載は、本明細書で別段の指示がない限り、単に範囲内に含まれるそれぞれ別の値を、個々に指す簡潔な方法として機能することを意図する。それぞれ別の値は、あたかもそれが本明細書に個々に列挙されているかのように、明細書に組み込まれる。
【0068】
本明細書で記載された全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、あるいは明らかに状況に矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行してもよい。本明細書で提供される任意のおよび全ての実施例または例示的な言い回し(例えば、「例えば」)の使用は、単に本発明をより明確にすることを意図しており、別段の記載がない限り、本発明の範囲に対する限定を提示するものではない。本明細書のいかなる言葉も、請求項に記載されていない構成要素を本発明の実行に不可欠なものを示すものとして解釈されるべきではない。
【0069】
<医薬製剤>
本発明の医薬組成物は、抗体のためのキャリア、望ましくは薬学的に許容可能なキャリアを含む。薬学的に許容可能なキャリアは、任意の適切な薬学的に許容可能なキャリアであり得る。本明細書で使用される用語「薬学的に許容可能なキャリア」は、ヒトまたは家畜の患者への投与に適した、1つまたは複数の適合性の固体充填剤または液体充填材、希釈剤、他の賦形剤、またはカプセル化物質を意味する(例えば、生理的に許容されるキャリア、または薬理的に許容されるキャリア)。用語「キャリア」は、適用を容易にするために活性成分が組み合わされた、天然または合成の有機成分または無機成分を意味する。所望の薬学的効力を実質的に損なわないような方法で、組成物中に1つまたは複数の薬学的に許容可能なキャリアが存在する場合、薬学的に許容可能なキャリアは、1つまたは複数の活性成分(例えば、ハイブリッド分子)と、互いに同時混合することができる。「薬学的に許容可能な」材料は、一般的には望ましくない生理的な反応(例えば、悪心、めまい、発疹、または胃の不調)を有意に生じることなく、患者に投与することができる。例えば、薬学的に許容可能なキャリアを含む組成物は、治療を目的としてヒト患者に投与する場合、免疫原性でないことが望ましい。
【0070】
医薬組成物は、適切な緩衝剤(例えば、酢酸またはその塩、クエン酸またはその塩、ホウ酸またはその塩、およびリン酸またはその塩)を含み得る。医薬組成物はまた、任意に適切な防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベン、およびチメロサール)を含み得る。
【0071】
本明細書の製剤はまた、治療される特定の適応症に必要不可欠な1つまたは複数の活性化合物を含むことができる。当該製剤は、好ましくは互いに有害な影響を及ぼすことのない補完的な活性を有するものである。そのような分子は、意図される目的のために有効な量を組み合わせた中に適切に存在する。
【0072】
非経口投与に適した組成物は、本発明の組成物の滅菌された水性調製物を任意に含む。当該組成物は、好ましくはレシピエントの血液と等張である。この水性調製物は、適切な分散剤または湿潤剤、および懸濁剤を使用して、公知の方法に従って製剤化することができる。滅菌された注射調製物はまた、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒中(例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液として)の、滅菌された注射溶液または懸濁液であってもよい。使用し得る許容可能な媒介物および溶媒中には、水、リンガー溶液、および生理食塩水が存在する。さらに、滅菌された不揮発性油を溶媒または懸濁媒として常用できる。この目的のために、任意の無刺激の不揮発性油(例えば、合成モノ-グリセリド、またはジ-グリセリド)を使用することができる。さらに、脂肪酸(例えば、オレイン酸)を注射剤の調製に使用することができる。経口、皮下、静脈内、筋肉内などの投与に適したキャリア製剤は、下記参照に見出すことができる(例えば、Remington Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co,Easton,PA,22nd edition,2013を参照のこと)。
【0073】
in vivoでの投与に使用される製剤は、無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通した濾過によって容易に行うことができる。
【0074】
<抗CA IX抗体の診断的使用>
本発明は、少なくとも1つのヒト化抗体を含む、診断用組成物を提供する。当該ヒト化抗体は、前述のようにヒトCA IXを特異的に認識する。
【0075】
別の態様では、本発明は、さらにそれを必要とする対象の癌を診断するための方法を提供する。当該方法は、前記対象に由来するか、または前記対象から得られた生物学的サンプルを診断用組成物と接触させる工程を含む。ここで、規定の閾値を超える複合体の形成は、前記対象体内の癌を示す。
【0076】
別の態様では、本発明はさらに、CA IXの発現を決定するための方法を提供する。当該方法は、生物学的サンプルを前述の抗体と接触させる工程、および免疫複合体形成のレベルを測定する工程を含む。
【0077】
別の態様では、本発明は、CA IXタンパク質の発現に関連する疾病または障害を診断するための方法をさらに提供する。当該方法は、生物学的サンプルを前述のヒト化抗体とインキュベートする工程;検出可能なプローブを使用して結合したCA IXタンパク質を検出する工程;結合したCA IXタンパク質の量を参照サンプルから得られた標準曲線と比較する工程;標準曲線から生物学的サンプル中のCA IXタンパク質の量を計算する工程;および患者に適切な治療を任意に施す工程を含む。
【0078】
別の態様では、本発明は、癌に関連する疾病または障害の診断のための診断用組成物の調製のための、前述のヒト化抗体の使用を提供する。
【0079】
別の態様では、本発明は、合成分子に対する本発明の抗体の結合体をさらに提供する。合成分子は標識であり得る。標識は診断用途に役立ち得る(例えば、造影剤)。造影剤は、放射性同位元素標識(例えば、ヨウ素(131Iまたは125I)、インジウム(111In)、テクネチウム(99Tc)、リン(32P)、炭素(14C)、トリチウム(3H)、他の放射性同位元素(例えば、放射性イオン)または前記に列挙した治療用放射性同位元素)であり得る。さらに、造影剤は、放射線不透過性材料、磁気共鳴画像(MRI)剤、および超音波画像剤、ならびに身体を撮像する装置による検出に適した任意の他の造影剤を挙げることができる。合成分子はまた、蛍光標識、生物学的に活性な酵素標識、発光標識、または発色団標識であり得る。
【0080】
<抗CA IX抗体の治療的使用>
本明細書に提供されるいずれの抗CA IX抗体をも、治療方法にて使用され得る。
【0081】
一態様では、薬剤として使用するための抗CA IX抗体が提供される。特定の実施形態では、治療方法で使用するための抗CA IX抗体が提供される。
【0082】
さらなる態様では、本発明は、薬剤の製造または調製における抗CA IX抗体の使用を提供する。
【0083】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に提供される任意の抗CA IX抗体を含む医薬製剤を提供する。一実施形態では、医薬製剤が本明細書に提供される任意の抗CA IX抗体および薬学的に許容可能なキャリアを含む。
【0084】
本発明の抗体は、治療において、単独で、または他の薬剤と組み合わせて使用され得る。例えば、本発明の抗体は、少なくとも1つの追加の治療剤と共に投与してもよい。
【0085】
前述のこのような併用療法は、併用投与を含む(ここで、2つより多い治療薬は、同じまたは別々の製剤に含まれる)。当該併用療法では投与を分割する。その場合、本発明の抗体は、追加の治療剤および/またはアジュバントの、投与前、投与時、および/または投与後に投与され得る。本発明の抗体はまた、放射線療法と組み合わせて使用され得る。
【0086】
本発明はまた、CA IXレベルの上昇に関連する障害を有する対象を治療する方法を提供する。一般に、当該方法は、本発明の単離ヒト化抗体の治療有効量を対象に投与する工程を含む。前記抗体は、前述した本発明の任意の抗CA IX抗体であり得る。前記抗体は、他の薬剤(例えば、細胞毒性、細胞増殖抑制性、抗血管新生性、免疫チェックポイント阻害剤または治療用放射性同位元素)と組み合わせて投与することができる。
【0087】
本発明の抗体(および、任意のさらなる治療剤)は、任意の適切な手段(非経口、肺内および鼻腔内を含む)によって、ならびに局所治療のために所望される場合には、病変内投与によって投与され得る。非経口輸液には、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、または皮下投与が挙げられる。投与が短期間であるか、慢性であるかに部分的に依存して、投薬は任意の適切な経路(例えば、静脈内注射または皮下注射のような注射による)によることができる。様々な時点にわたる、単回投与または複数回投与、ボーラス投与、ならびにパルス注入が挙げられるが、これらに限定されない様々な投薬スケジュールが本明細書で企図される。
【0088】
本発明の抗体は、良好な医療行為と一致した方法で処方され、投薬され、そして投与され得る。この関連について考慮すべき因子としては、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジューリング、および、医師に公知の他の因子が挙げられる。抗体は問題の障害を予防または治療するために、現在使用されている1つまたは複数の薬剤と共に処方される必要はないが、任意に処方される。そのような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、障害の型または治療の型、および前述の他の因子に依存する。これらは、一般に、本明細書に記載されるのと同じ用量および投与経路で、または適切であると経験的/臨床的に決定される任意の用量および任意の経路で使用される。
【0089】
疾病の治療のために、本発明の抗体の適切な用量(単独で、または1つまたは複数の他のさらなる治療剤と組み合わせる場合)は、治療される疾病の型、抗体の型、疾病の重症度および経過、抗体が予防目的または治療目的のために投与されるか否か、過去の治療、患者の臨床歴および抗体に対する応答、ならびに主治医の判断に依存する。抗体は一度に、または一連の治療にわたって患者に適切に投与される。疾病の型および重症度に応じて、約0.001mg/kg~15mg/kgの抗体が、(例えば、1回または複数回の別々の投与によるか、または持続注入によるかに関わらず)、患者への投与の最初の候補用量であり得る。数日以上にわたる反復投与の間、状態に依存して、治療は疾病症状の所望の抑制が生じるまで一般的に継続される。このような用量は間欠的に(例えば、1週間毎または3週間毎に)投与され得る。初期により高い負荷用量、続いて1つまたは複数のより低い用量が投与されてもよい。この治療の経過は、従来の技術およびアッセイにより容易にモニターされる。
【0090】
〔実施例〕
実施された実験および得られた結果を含む下記の実施例は、例示の目的のためにのみ提供されるものであって、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0091】
本実施例で言及する市販の試薬は、別段の指示がない限り、製造業者の指示に従って使用した。
【0092】
〔実施例1:親としてのIV/18mAb由来のヒト化抗体〕
本実施例は、CA IXのプロテオグリカン領域に対するヒト化抗体変異体CA9hu-2の構築および特徴付けを実証する。
【0093】
ヒト化工程は、抗体構造に関する最新の研究と、成熟ヒトIgG配列の最新のデータベースとを組み合わせた、標準的なCDRグラフト技術の組み合わせを用いた。最初に、VII/20マウス抗体可変領域を配列決定した。相補性決定領域(CDR)は、Immunogenetics Information system(登録商標)(IMGT(登録商標))またはKabat numbering system(例えば、Lefranc et al,Nucleic Acid Res 27:209-212,1999; Lefranc et al,Dev Comp Immunol 27:55-77,2003; Kabat et al,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th edition,1991を参照のこと)を使用して同定した。CDRループコンフォーメーションを最適に保持するために、両方のナンバリングシステムを使用して、マウス可変重領域(VH)内ならびにマウス可変軽領域(VL)内のCDRを同定した。続いて、多数のヒトフレームワーク配列を同定して、CDR配列の「アクセプター」フレームワークとして使用した(下記本文参照)。それぞれのVH領域を、ヒトIgGアイソタイプ定常領域配列(アロタイプG1m17,1)を使用してインフレームで合成した。さらに、それぞれのVL領域を、ヒトIgKアイソタイプ定常領域配列(アロタイプKm3)を使用してインフレームで合成した。全ての重鎖配列および全ての軽鎖配列では、コドンを最適化し、DNA配列を検証した。
【0094】
5つのVH鎖および5つのVL鎖の組み合わせは、ヒト化可変領域(下記本文では、重鎖(HC)および軽鎖(LC)と記す)ならびにヒトIg定常領域を有する、25個のヒト化変異体の生成をもたらした。25個のヒト化抗体変異体を特徴付けるために、MHC Class II結合エピトープ、Fvグリコシル化モチーフ、および、脱アミド化モチーフについて、全ての配列をスクリーニングした。
【0095】
CA IXのプロテオグリカン(PG)様領域に対するマウスモノクローナル抗体IV/18(アイソタイプIgG2a)を、CA IX欠損マウスにて作製した(例えば、WO2003/100029; Zatovicova et al,J Immunol Methods 282,117-134,2003を参照のこと)。低酸素腫瘍細胞をIV/18mAbとプレインキュベーションすると、マウス肺コロニー形成モデルの肺転移数が減少した(
図1A)。PBS潅流マウス肺において、HT1080赤色蛍光タンパク質(RFP)にて蛍光標識された細胞の転移コロニーを、IVIS Caliper imaging systemを使用して、12日後に、ex vivoでイメージングした(
図1B)。全放射効率は、マウス肺における癌細胞の量を反映する。HT1080-RFP細胞とIV/18mAbとのプレインキュベーション、および、それに続く、最初の尾静脈注射(1,500,000細胞/マウス、1グループあたり10マウス)の後の12日間での3用量の抗体(50μg/マウス)の投与は、IVISによる蛍光シグナルによって決定されるように、これらの細胞による肺コロニー形成の顕著な減少をもたらした。転移コロニーは、尾静脈接種の直後に評価した。このことは、血管外遊出の減少が、転移形成の減少の主な要因であったことを意味する。これらのデータは、腫瘍細胞の血管外遊出および転移形成の減少における、抗CA IX療法の有益性を示している。
【0096】
重鎖
マウスVH領域は、下記の配列を含んでいた。マウスVH領域は、マウスシグナルペプチド配列を含まない:
EVQLVETGGGLVQPKGSLKLSCAASGFTFNTNAMHWVRQAPGKGLEWVARIRSKSNNYTTYYADSVKDRFTISRDDSQSMLYLQMNNLKTEDTAMYYCVCGSWFAYWGQGTLVTVSA(配列番号19)
CDR残基(下線)は、IMGT numbering systemまたはKabat numbering systemを使用して同定した。
【0097】
CDR1 VH IV/18(配列番号1)
GFTFNTNAMH
CDR2 VH IV/18(配列番号2)
RIRSKSNNYTTYYADSVKD
CDR3 VH IV/18(配列番号3)
VCGSWFAY。
【0098】
ヒトIgG配列のオンラインデータベースを、BLAST検索アルゴリズムを使用して、マウスVH領域との対比のために検索した。ヒト可変領域候補を、上位200のBLAST結果から選択した。これらを5つの候補に還元し(フレームワーク相同性の組み合わせに基づき、主要なフレームワーク残基およびカノニカルループ構造を維持する)、CDRを移植した。
【0099】
5つのアクセプターフレームワークは、下記である:
AGP01286(配列番号20)
EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSGSAMHWVRQASGKGLEWVGRIRSKANSYATAYAASVKGRFTISRDDSKNTAYLQMNSLKTEDTAVYYCTRLVGAIPFDYWGQGTLVTVSS
AEX29087(配列番号21)
EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFNFSGPAIHWVRQASGKGLEWVGRIRSKAKNFATAYAASVKGRFTISRDDSKSTAYLQMNSLKTEDTAVYYCTTTSSSINDYWGQGTLVTVSS
ACS95862(配列番号22)
QVQLVESGGGVVQPGGSLRLSCAASGFAFSSYGMHWVRQAPGRGLEWVAFIRSDGSNTYYSDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQVNSLRAEDTAVYYCAFGGDYYFGYWGQGTLVTVSS
BAC01516(配列番号23)
EVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVISYDGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKGRTGDYWGQGTLVTVSS
IGHV3-73(配列番号24)
EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSGSAMHWVRQASGKGLEWVGRIRSKANSYATAYAASVKGRFTISRDDSKNTAYLQMNSLKTEDTAVYYCTRYYGMDVWGQGTTVTVSS。
【0100】
マウスVHのCDRがこれらのアクセプターフレームワークに移植されると、当該アクセプターフレームワークは、ヒト化変異体になる:
HC1 CA9hu-2(配列番号9)
EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFNTNAMHWVRQASGKGLEWVGRIRSKSNNYTTYYADSVKDRFTISRDDSKNTAYLQMNSLKTEDTAVYYCVCGSWFAYWGQGTLVTVSS
HC2 CA9hu-2(配列番号10)
EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFNTNAMHWVRQASGKGLEWVGRIRSKSNNYTTYYADSVKDRFTISRDDSKSTAYLQMNSLKTEDTAVYYCVCGSWFAYWGQGTLVTVSS
HC3 CA9hu-2(配列番号11)
QVQLVESGGGVVQPGGSLRLSCAASGFTFNTNAMHWVRQAPGRGLEWVARIRSKSNNYTTYYADSVKDRFTISRDNSKNTLYLQVNSLRAEDTAVYYCVCGSWFAYWGQGTLVTVSS
HC4 CA9hu-2(配列番号12)
EVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFNTNAMHWVRQAPGKGLEWVARIRSKSNNYTTYYADSVKDRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCVCGSWFAYWGQGTLVTVSS
HC5 CA9hu-2(配列番号13)
EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFNTNAMHWVRQASGKGLEWVGRIRSKSNNYTTYYADSVKDRFTISRDDSKNTAYLQMNSLKTEDTAVYYCVCGSWFAYWGQGTTVTVSS。
【0101】
【0102】
軽鎖
マウスVL領域は、下記の配列を含んでいた。マウスVL領域は、マウスシグナルペプチド配列を含まない:
DIVMTQSPSSLAMSLGQKVTMSCKSSQSLLNSSNQKNYLAWFQQKPGQSPKLLVYFTSTRQSGVPDRFIGSGSGTDFTLTISSVQAEDLADYFCQQHYSIPLTFGAGTKLELK(配列番号25)
CDR残基(下線)は、IMGT numbering systemまたはKabat numbering systemを使用して同定した。
【0103】
CDR1 VL IV/18(配列番号4)
KSSQSLLNSSNQKNYLA
CDR2 VL IV/18(配列番号5)
FTSTRQS
CDR3 VL IV/18(配列番号6)
QQHYSIPLT。
【0104】
ヒトIgκ配列のオンラインデータベースを、BLAST検索アルゴリズムを使用して、マウスVL領域との対比のために検索した。そして、ヒト可変領域候補を、上位200のBLAST結果から選択した。これらを5つの候補に還元し(フレームワーク相同性の組み合わせに基づき、主要なフレームワーク残基およびカノニカルループ構造を維持する)、CDRを移植した。
【0105】
5つのアクセプターフレームワークは、下記である:
AAW69164(配列番号26)
DVVMTQSPDSLAVSLGERVTINCKSSQSVLNTSNNKNYLVWYQQKPGQSPKLLIYLASTREFGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYHSSPHTFGQGTKLEIK
CAI99839(配列番号27)
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVLYNSNNKNYLAWFQQKPGQPPNLVIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTINSLQAEDVAVYFCLQYYSTPLTFGQGTQVEIK
AMK70392(配列番号28)
DIQMTQSPDSLAVSLGERATINCKASQSVLYSSKNKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYRASTRDSGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYFCQQYYSTPQTFGQGTKVEIK
ALV87854(配列番号29)
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVLYRSKNKNYLAWFQQKPGQPPKVLIYSTSTRASGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCLQYYITPYTFGQGTKLEIK
IGKV4-1(配列番号30)
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVLYSSNNKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYSTPYTFGQGTKLEIK。
【0106】
マウスVLのCDRがこれらのアクセプターフレームワークに移植されると、当該アクセプターフレームワークは、ヒト化変異体になる:
LC1 CA9hu-2(配列番号14)
DVVMTQSPDSLAVSLGERVTINCKSSQSLLNSSNQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYFTSTRQSGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQHYSIPLTFGQGTKLEIK
LC2 CA9hu-2(配列番号15)
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLLNSSNQKNYLAWFQQKPGQPPNLVIYFTSTRQSGVPDRFSGSGSGTDFTLTINSLQAEDVAVYFCQQHYSIPLTFGQGTQVEIK
LC3 CA9hu-2(配列番号16)
DIQMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLLNSSNQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYFTSTRQSGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYFCQQHYSIPLTFGQGTKVEIK
LC4 CA9hu-2(配列番号17)
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLLNSSNQKNYLAWFQQKPGQPPKVLIYFTSTRQSGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQHYSIPLTFGQGTKLEIK
LC5 CA9hu-2(配列番号18)
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLLNSSNQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYFTSTRQSGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQHYSIPLTFGQGTKLEIK。
【0107】
【0108】
<ヒト化試験>
ヒト化変異体は、ヒト化抗体の世界保健機関(WHO)の定義に従って、ヒト化されたか否かを決定するために試験された:ヒト化鎖の可変領域は、他の種よりもヒトに近いV領域アミノ酸配列を有する。これは、全体として分析される(IMGT(登録商標)DomainGapAlign toolを使用して評価される)(例えば、Ehrenmann et al,Nucleic Acids Res 38,D301-307,2010を参照のこと)。
【0109】
【0110】
<T細胞エピトープスクリーニング>
主要組織適合遺伝子複合体(MHC) Class II分子の溝にペプチド配列が提示されると、CD4+T細胞の活性化および免疫原性応答が起こる。この応答を減少させるために、治療タンパク質は、MHC Class II分子への結合の親和性を減少させることによって、T細胞を活性化し得る「T細胞エピトープ」の取り込みを回避するように設計され得る。
【0111】
オリジナルなマウス抗体VHおよびマウス抗体VL、ならびにヒト化変異体配列を、MHCII結合ペプチドについてスクリーニングした。これにより、ヒト化工程は、in silicoアルゴリズムを使用して、高親和性でペプチド配列を除去したことを明らかにした。下記の8つの対立遺伝子は、世界人口の99%以上を占める。当該対立遺伝子は、MHC Class IIエピトープの予測に用いられる標準的な対立遺伝子セットである:DRB1*01:01;DRB1*03:01;DRB1*04:01;DRB1*07:01;DRB1*08:02;DRB1*11:01;DRB1*13:02;DRB1*15:01(例えば、Nielsen et al,BMC Bioinformatics 8:238,2007;Wang et al,BMC Bioinformatics 11:568,2010;Gonzalez-Galarza et al,Nucleic Acid Research 39,D913-D919,2011;Greenbaum et al,Immunogenetics 63(6):325-35,2011を参照のこと)。
【0112】
VH領域については、全てのヒト化変異体は、T細胞エピトープスクリーニングに関して良好に機能し、HC3は最小の生殖細胞系T細胞エピトープを有すると予測された。相同性のみによる解析では、HC2およびHC1は親であるマウス配列に最も近い順位にあった。
【0113】
VL領域については、全てのヒト化変異体が、T細胞エピトープスクリーニングから等しく順位付けされた。相同性のみでは、LC1およびLC4は最も高い順位であった。
【0114】
<翻訳後修飾のスクリーニング>
Fvグリコシル化
N結合グリコシル化モチーフは、NXS/Tである。ここで、Xはプロリンを除く任意のアミノ酸である。このモチーフNYTは、マウスCDR2 VH変異体中に存在し、CDRがマウスCDR2 VH変異体全体に移植された際に、全てのヒト化変異体に運ばれた。
【0115】
モチーフNSSは、軽鎖のマウスCDR1内に存在する。さらに、このモチーフは、全てのヒト化変異体に運ばれた。
【0116】
脱アミド化
アミノ酸モチーフSNG、ENN、LNG、および、LNNは、アスパラギンのアスパラギン酸への脱アミド化を起こしやすい傾向にあり得る(例えば、Chelius et al,Anal Chem 77(18):6004-11,2005を参照のこと)。他のモチーフ内のアスパラギンは、脱アミド化の傾向がない。これら4つのモチーフは、IV/18mAbのVHまたはVLのマウスまたはヒト化変異体中には存在しない。
【0117】
前述のデータは、ヒト化可変領域およびヒトIg定常領域を有する25個のヒト化変異体(下記本文では、CA9hu-2_HCxLCxと記す)の生成を実証する。
【0118】
〔実施例2:ヒト化抗体の結合能の特徴付け〕
本実施例は、炭酸脱水酵素IXに対する25個のCA9hu-2ヒト化変異体の望ましい結合特性を実証する。
【0119】
抗原結合特異性を評価するために、25個のCA9hu-2ヒト化変異体の全てを、CA IX陽性抗原またはCA IX陰性抗原のいずれかを使用した酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)に供した。抗原は、CA IXを発現する安定にトランスフェクトされたC-33a細胞株(C-33a_CA IX)、および、CA IX発現を伴わない親の偽トランスフェクトされたC-33a細胞(C-33a_neo)から調製した。
【0120】
RIPA溶解緩衝液(PBS中、0.1%デオキシコール酸、1%トリトンX-100およびプロテアーゼインヒビターカクテル)を使用して、細胞単層からタンパク質を抽出した。タンパク質濃度は、製造業者の指示に従って、ビシンコニン酸アッセイ(ThermoFisher Scientific、Waltham、MA USA)によって決定した。タンパク質抽出物を、PBS中にて最終濃度0.2mg/mlに希釈した。ELISAによって試験される抗原-抗体特異的相互作用のスクリーニングにて、使用される抗原サンプルのタンパク質濃度は、さもなければ分析全体にわたって妨害し得る界面活性剤の低い含有量について、要件を満たす。50μlのCA IX陽性抗原またはCA IX陰性抗原のいずれかを、37℃で一晩、マイクロプレートウェルの表面上にコーティングした。PBS pH7.2中に0.05%のTween-20を含むPBS-Tを使用して洗浄した後、CA9hu-2の全てのヒト化変異体50μl(10%FCSを含むPBS-T中で濃度5μg/mlに希釈)を添加し、室温で2時間インキュベートした。ペルオキシダーゼ標識ブタ抗ヒトIgG(10%のFCSを含むPBS-T中で1:5000に希釈;Sigma-Aldrich、StLouis、MO USA)を検出に使用した。親IV/18抗体(「マウス抗体」と記す)、ならびに、キメラHC0LC0抗体(マウス可変領域およびヒトIg定常領域を有する)を、参照サンプルとして使用した。結果を誘導の倍数として表し、(CA IX陽性抗原から492nmで測定した吸光度のO.D.値)/(CA IX陰性抗原から492nmで測定した吸光度のO.D.値)として計算する。
【0121】
図2は、抗CA IX抗体の25個のヒト化変異体の特異的かつ有効な結合を示す。CA9hu-2抗体変異体の大部分は、キメラ変異体よりもさらに高い特異性を示した。
【0122】
前述の結果は、ヒト化抗体変異体CA9hu-2が、それらの抗原に対して望ましい特異性を保持し、CA IXを発現する腫瘍細胞を特異的に識別するために使用され得ることを実証する。
【0123】
〔実施例3:ヒト化抗体のADCC(抗体依存性細胞障害)およびCDC(補体依存性細胞障害)効果〕 本実施例は、抗体依存性細胞障害(ADCC)および補体依存性細胞障害(CDC)における抗CA IX抗体のヒト化変異体の望ましい関与を実証する。
【0124】
ADCC
細胞障害効果を媒介するヒト化抗体変異体の能力を評価するために、ADCCレポーターバイオアッセイシステム(Promega、Madison WI、USA)を適用した。ADCCレポーターバイオアッセイシステムは、ADCC作用メカニズムにおける治療用抗体薬剤による経路活性化に関する生物学的活性を定量するための生物発光レポーターアレイを示す(例えば、Chung et al,Monoclonal Antibodies 4:326-40,2012を参照のこと)。当該ADCCレポーターバイオアッセイシステムは、エフェクター細胞として、FcγRIIIa受容体、V158高親和性変異体、およびホタルルシフェラーゼの発現を駆動するNFAT(活性化T細胞の核因子)応答因子を安定に発現する、操作されたJurkat細胞を使用する。従って、ADCC作用メカニズムは、NFAT活性化の結果として、ルシフェラーゼ産生を介して定量される。
【0125】
ADCCレポーターアッセイは、C-33a_CA IXならびにC-33a_neo細胞を使用して、製造業者の指示に従って行った。両方の細胞型(12,500細胞/ウェル)を無菌96ウェルプレート上にプレーティングし、37℃で一晩、培養培地中にてインキュベートした。ヒト化抗体変異体CA9hu-2をPBS中で1μg/mlに希釈し、ウェル当たり75,000個のエフェクター細胞(推奨されるエフェクター:標的比6:1に従う)を使用した。6時間インキュベートした後、Bio-Glo(商品商標)ルシフェラーゼアッセイ試薬(Promega)を使用してホタルルシフェラーゼの検出を行った。ヒト化抗体を添加しない、ADCCアッセイ緩衝液とエフェクター細胞を使用したサンプルとの混合物を、「抗体なし」と記す。抗体およびエフェクター細胞を含まないサンプルの混合物は、「抗体なし、ECなし」と記す。これは、「プレートバックグラウンド」として役立つ。結果は、相対発光単位(RLU)での発光として表され、誘導の倍数として計算される(ヒト化抗体変異体よって誘導されるRLU/抗体のないRLU)。
【0126】
図3に示すように、CA9hu-2変異体は高い発光シグナル示し、従って、C-33a_CA IX発現細胞に対して高い細胞障害性を示した。サンプルのRLUがプレートバックグラウンドRLU(「抗体なし、ECなし」と記す)よりも100倍高かったという事実により、サンプルRLUからプレートバックグラウンドを差し引く必要はなかった。
【0127】
本発明のヒト化抗体変異体のエフェクター機能(ADCCレポーターアッセイによる)、ならびにそれらの抗原結合特異性(ELISAによる)の評価は、下記の抗体変異体の選択をもたらした:HC3LC1、HC3LC2、HC4LC1、HC4LC2およびHC4LC5。最後の1つを、最良の候補として選択した。
【0128】
CA IXを自然発現する癌細胞について抗体依存性細胞障害を証明するために、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)細胞株BT-20および膠芽腫細胞株8-MG-BAを分析した。分析の1日前に、癌細胞株を低酸素中でプレインキュベートして、最も高いCA IX発現を確保した。低酸素のプレインキュベーション後、12,500細胞/ウェルを無菌96ウェルプレート上にプレートし、37℃で一晩、培養培地中にてインキュベートした。ADCCスクリーニングの場合と同様に、ADCCレポーターアッセイを製造業者の指示に従って行った。ヒト化抗体変異体CA9hu-2_HC4LC5をPBS中で1μg/mlに希釈し、ウェル当たり75,000個のエフェクター細胞(推奨されるエフェクター:標的比6:1に従う)を使用した。6時間インキュベートした後、Bio-Glo(商品商標)ルシフェラーゼアッセイ試薬を使用して、ホタルルシフェラーゼの検出を行った。
【0129】
【0130】
ADCCレポーターアッセイは、エフェクター細胞における遺伝子転写のNFATが媒介する活性化を介した、ADCC経路の初期のポイントを分析することを可能にする。表4は、ヒト化抗体変異体CA9hu-2_HC4LC5がADCC経路を活性化し、CA IXを発現するターゲット細胞について細胞障害効果を媒介する能力を保持することを明確に示す。抗体のない処置と比較して、ADCCレポーター活性は、CA9hu-2_HC4LC5を使用して癌細胞のそれぞれをインキュベートした後に上昇した。膠芽腫8-MG-BA細胞で、最も高い誘導(>4倍)が観察された。
【0131】
CDC
CDCに関与するヒト化抗体変異体の能力を評価するために、細胞力価青色生存率アッセイキット(Promega)を適用した。当該細胞力価青色生存率アッセイは、指示薬色素レザズリンを介して生存細胞の数を推定するための、従って、細胞の生存率の指標としての細胞の代謝能力の測定のための、均質蛍光測定法を提供する。生存細胞において、レザズリンは、蛍光シグナルを生成する高度に蛍光性のレゾルフィンに還元される。当該レゾルフィンは、測定可能であり得る(530Ex/590Em)。従って、細胞力価青色試薬由来の蛍光シグナルは、生存細胞の数に比例する。
【0132】
C-33a_CA IXならびにC-33a_neo細胞を使用して、製造業者の指示に従って、細胞力価青色アッセイを行った。両方の細胞(200,000細胞/ウェル)を無菌96ウェルプレート上にプレーティングし、37℃で一晩、培養培地中にてインキュベートした。5μg/mlに希釈したヒト化抗体変異体CA9hu-2_HC4LC5を両方の細胞株に添加した。ウサギ補体血清(総容量から10%、BAG Health Care、Lich、Germany)をそれぞれのウェルに添加し、混合し、インキュベートした。細胞生存率を定量し、24時間後に分析した。結果は、530Ex/590Emで測定した分子量で表す。
【0133】
【0134】
表5は、ヒト化抗体変異体CA9hu-2_HC4LC5が補体の存在下でCAIX発現細胞の生存率に影響を及ぼす能力を示す。補体の存在下でCA9hu-2_HC4LC5と24時間インキュベートした後、C-33a_CA IX細胞は64%の生存率しか示さなかった。C-33a_neo細胞の生存率はほとんど影響を受けなかった。
【0135】
前述の結果は、ヒト化抗体変異体CA9hu-2を使用して、CA IXを発現する腫瘍細胞上で、ADCCまたはCDCを介して細胞障害応答を特異的に区別し、結果として媒介し得ることを実証する。
【0136】
〔実施例4:3次元スフェロイドにおける末梢血単核細胞を介したヒト化抗体のADCC効果〕
本実施例は、三次元培養においてADCC活性を媒介するヒト化抗体変異体の望ましい特性を実証する。
【0137】
多細胞スフェロイドのような三次元(3D)培養は、より現実的な条件下で、細胞生物学および生理学を研究するための基礎研究で使用されることが増えている。3Dシステムにて癌細胞に対する細胞障害効果の媒介におけるヒト化抗体の効率を検証するために、TNBC BT-20細胞と末梢血単核細胞(PBMC)との共培養を行った。PBMCを、Ficoll-Paque Plus(GE Healthcare)を使用する密度勾配遠心分離によって、ヒト末梢血(健康なドナー)から単離した。スフェロイド内のPBMCを可視化するために、単離された細胞を、CellBrite(商標)オレンジ細胞質膜標識色素(Biotium,Hayward CA,USA)で染色した。BT-20細胞を、最初に、CellBrite(商標)緑色細胞質膜標識色素で染色した。続いて、BT-20スフェロイドを、37℃で7日間、組織培養皿の蓋にぶら下げたドロップ中にて、25μlの培養培地当たり10,000個の細胞から、予め形成した。培養10日後、予め染色したPBMC/オレンジ細胞(2,000,000)を40個のBT-20スフェロイドと共にペトリ皿に添加し、ヒト化抗体CA9hu-2_HC4LC5(25μg/ml)と混合した。ヒト化抗体なしで培養したスフェロイドをPBS(陰性対照)で処置した。スフェロイド内の予め染色されたPBMC細胞の分布を、共焦点レーザー走査顕微鏡Zeiss LSM510 Metaによる処置の3日後に分析した。
【0138】
PBMC細胞との長期(11日間)共培養の効果を確認するために、BT-20スフェロイドを回収し、Carnoy固定液中で2時間固定し、標準的な組織学的手順に従ってパラフィン中に包埋した。スフェロイドブロックを4μmの薄切片にスライスし、製造業者の推奨に従って、DAKO Cytomation EnVision+System-HRP(DAB;DAKO、Glostrup、Denmark)を使用して、免疫組織化学染色に供した。CA IXマウスモノクローナルM75に特異的な一次抗体を希釈し(1μg/ml)、室温で60分間インキュベートした。染色をDAB溶液で可視化した。最後に、切片をマイヤーヘマトキシリンで対比染色した。染色した切片をLeicaDM4500B顕微鏡で検査し、LeicaDFC480カメラで写真撮影した。
【0139】
図4は、BT-20スフェロイド内への予め染色されたPBMCの組み込みを明確に示す。共焦点顕微鏡による可視化は、ヒト化抗体CA9hu-2_HC4LC5での治療後、PBMCのより強力な取り込みを明らかにした。PBMCからの陽性シグナルの割合を、ImageJ 1.38xソフトウェア(Rasband、W.S.、ImageJ,NIH、Bethesda MD、USA)によってBT-20スフェロイド全体について評価した。CA9hu-2_HC4LC5での処置後、スフェロイド全体におけるPBMC染色ピクセルの割合は6.624%であった。未処置のスフェロイドの場合、2.781%のPBMC陽性ピクセルのみが明らかにされた。PBMCおよびヒト化抗体によるBT-20スフェロイドの長期処置の効果を、11日後に調べた。
図4に示すように、BT-20スフェロイドをヒトPBMCと共培養し、ヒト化変異体CA9hu-2_HC4LC5で処置した後、有意な形態的変化が観察された。免疫組織化学分析を使用して、BT-20スフェロイドにわたるCA IX発現を可視化した。
【0140】
前述の結果は、本発明のヒト化抗体CA9hu-2_HC4LC5が3D培養物-スフェロイド中にてADCC応答を促進することを実証する。これは、PG特異的ヒト化抗体を使用して記載された前述の効果の最初の実証である。
【0141】
〔実施例5:ヒト化抗体のADCP(抗体依存性細胞貪食)効果〕
本実施例は、抗体依存性細胞貪食(ADCP)について、ヒト化抗体の望ましい関与を実証する。
【0142】
食作用を媒介するヒト化抗体変異体の能力を評価するために、ADCPレポーターバイオアッセイシステム(Promega)を適用した。FcγRIIa-H ADCPレポーターバイオアッセイは、FcγRIIaに特異的に結合し、活性化するFc領域を有する抗体および他の生物学的製剤の能力および安定性を測定する、生物発光細胞に基づくアッセイである。当該アッセイシステムは、FcγRIIa受容体、H131高親和性変異体、および、ホタルルシフェラーゼの発現を促進するNFAT応答因子を発現する操作されたJurkatT細胞を、エフェクター細胞として使用する。従って、ADCP作用メカニズムは、NFAT活性化の結果としてのルシフェラーゼ産生を介して定量される。
【0143】
ADCPレポーターアッセイは、製造業者の指示に従って、BT-20、C-33a_CA IX、ならびに、C-33a_neo細胞を使用して、実施した。最も高いCA IX発現を確保するために、BT-20細胞を低酸素中で48時間プレインキュベートした。分析の1日前に、3つの細胞株全て(12,500細胞/ウェル)を無菌96ウェルプレート上にプレーティングし、37℃で一晩、培養培地中にてインキュベートした。ヒト化抗体変異体CA9hu-2_HC4LC5をPBS中で2μg/mlに希釈し、75,000個のエフェクター細胞(推奨されるエフェクター:標的比6:1に従う)を1ウェル毎に使用した。2μg/mlに希釈したキメラ抗体HC0LC0(マウス可変領域およびIg定常領域を有する)を、参照サンプルとして使用した。6時間インキュベートした後、Bio-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイ試薬(Promega)を使用して、ホタルルシフェラーゼの検出を行った。サンプルと、ADCPアッセイ緩衝液およびヒト化抗体を添加しないエフェクター細胞との混合物を、「抗体なし」と記す。抗体およびエフェクター細胞を含まないサンプルの混合物は、「抗体なし、ECなし」と記す。これは、「プレートバックグラウンド」として役立つ。結果は、相対発光単位(RLU)で発光と表す。サンプルのRLUがプレートバックグラウンドRLU(「抗体なし、ECなし」と記す)よりも100倍高かったという事実により、サンプルRLUからプレートバックグラウンドを差し引く必要はなかった。
【0144】
【0145】
表6に示すように、CA IX陰性C-33a_neo細胞を標的細胞として使用した場合、貪食活性はほとんど観察されなかった。これらの結果は、C-33a細胞がCA IX特異的抗体の存在下または非存在下でインキュベートされたか否かに、関わらない。ヒト化抗体変異体CA9hu-2_HC4LC5の存在下で、CA IX発現癌細胞をインキュベートした後、最も高い貪食能力が得られた。抗体なしの処置と比較して、C-33a_CA IX細胞、ならびに、低酸素プレインキュベートBT-20細胞にて、最も高い発光シグナルが観察された。ADCPレポーターアッセイはまた、ヒト化抗体の貪食能力がキメラ抗体HC0LC0よりもさらに高いことを明らかにした。
【0146】
前述の結果は、ヒト化抗体変異体CA9hu-2_HC4LC5を使用して、CA IXを発現する癌細胞を特異的に認識し、当該癌細胞の貪食作用を結果として媒介することができることを実証する。ADCPが治療用抗体の重要な作用メカニズムであるという事実を考慮すると、本発明のヒト化抗体の貪食能力は、非常に有益な特性を表す。これは、PG特異的ヒト化抗体を使用して記載された、前述の効果の最初の実証である。
【0147】
〔実施例6:ヒト化抗体が癌細胞の浸潤に及ぼす効果〕
本実施例は、ヒト化抗体が癌細胞の浸潤を阻害するという驚くべき特性を実証する。
【0148】
転移カスケードは、浸潤、血管内侵入および血管外遊出の3つの主要な工程に分けることができる。マウス肺コロニー形成モデルにより、癌細胞の血管外遊出および転移形成の減衰において、抗CA IX療法に生じ得る有益性を明らかにすることができた(
図1)。in vivoで親IV/18mAbとプレインキュベートした低酸素腫瘍細胞を使用して観察された、肺転移数の減少により、本発明者らは、in vitroでの癌細胞浸潤に対するヒト化抗体の効果の調査を進めた。この目的のために、本発明者らは、CIM-Plate16およびRTCA DP stationを使用して、供給者(Roche、Basel、Switzerland)の指示に従って、xCELLigence細胞インデックスインピーダンス測定を行った。C-33a_CA IX細胞を、25μg/mlに希釈したヒト化抗体変異体CA9hu-2_HC4LC5の存在下または非存在下で、無血清培地中に40,000細胞/mlの密度で再懸濁した。C-33a_CA IX細胞をCIM-プレートのMatrigelコーティングトップチャンバーに添加した後、C-33a_CA IX細胞を、化学誘引物質として10%FCSを含む培地を含有するボトムチャンバーに向かって移動させた。CIMプレートをRTCA DP stationに置き、15分毎に60時間、低酸素状態で浸潤をモニターした。
【0149】
図5は、抗体なしの処置と比較した、癌細胞の浸潤を阻害するヒト化抗体の能力を示す。CA IXを発現するC-33a細胞の浸潤能力は、ヒト化抗体変異体CA9hu-2_HC4LC5を使用した治療の後に、有意に低下した。
【0150】
前述の結果は、本発明のヒト化抗体変異体CA9hu-2_HC4LC5が、CA IX発現C-33a細胞の浸潤を阻害する能力を有することを実証する。癌細胞浸潤の阻害は限定された腫瘍進行へと導き、その結果、癌患者の死亡率低下につながる可能性があるという事実を考慮すると、この作用メカニズムは、驚くべき有益な特性を表している。さらに、これは、PG特異的ヒト化抗体を使用して記載された前述の効果の最初の実証である。
【0151】
〔実施例7:ヒト化抗体の細胞生存率への影響〕
本実施例は、ヒト化抗体変異体が細胞生存率に影響を及ぼさないという望ましい特性を実証する。
【0152】
細胞生存率に対するヒト化抗体の影響を推定するために、C-33a_CA IXおよびC-33a_neo細胞を使用して、実施例3(補体の非存在下)と同様に、製造業者の指示に従って、細胞力価青色生存率アッセイを行った。両方の細胞(200,000細胞/ウェル)を無菌96ウェルプレート上にプレーティングし、37℃で一晩、培養培地中にてインキュベートした。5μg/mlに希釈したヒト化抗体変異体CA9hu-2_HC4LC5を、両方の細胞株に添加し、24時間後に細胞生存率を測定した。細胞力価青色試薬由来の蛍光シグナルは、生存細胞の数に比例する。
【0153】
【0154】
表7に示すように、細胞力価青色生存率アッセイは、処置されたC-33a細胞の生存率(CA IX陽性でもなく、CA IX陰性でもない)が24時間後に影響を受けないことを明らかにした。
【0155】
前述のデータは、本発明のヒト化抗体変異体CA9hu-2_HC4LC5が処置された癌細胞に対して毒性効果を発揮しないことを実証する。
【0156】
〔実施例8:サイトカイン放出アッセイ(「サイトカインストーム」)によるヒト化抗体の安全性の予測〕
本実施例は、in vitroサイトカイン放出アッセイにて、選択されたヒト化抗体変異体の望ましい特性を実証する。
【0157】
サイトカイン放出アッセイ(CRA)は、危険有害性の同定には最良に使用されるが、リスクの定量化には使用されない。当該サイトカイン放出アッセイは、潜在的なリスクを理解し、リスク軽減計画を知らせるのに役立ち得る(例えば、Vidal et al,Cytokine 51:213-215,2010を参照のこと)。CRAは、予測された安全性によって治療方法を順位付けする際に使用でき、ヒトにおけるサイトカイン放出の潜在的なメカニズムに関する追加データを提供することができる。膜結合型抗原または膜結合型受容体を標的とする薬剤は、可溶性分子を標的とする薬剤よりもサイトカイン放出を誘導するリスクが高い。サイトカイン放出の測定は、対照として高応答および低応答を引き起こすことが知られている薬剤化合物と比較して行われる。アッセイの結果は、危険有害性の同定および相対リスクの推定を知らせ得る。完全なサイトカイン応答プロファイルのために、下記のサイトカインを測定する:インターロイキン(IL)-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、インターフェロンγ(IFNγ)、および、腫瘍壊死因子α(TNFα)(例えば、Suntharalingam et al,N Engl J Med 355(10): 1018-1028,2006を参照のこと)。
【0158】
本発明のヒト化抗体に関連するサイトカイン放出を評価するために、CRA(ProImmune Ltd、Oxford、UK)を実施し、20人の健康なドナーの新鮮な全血サンプルを使用して分析した。希釈していない全血サンプルを、種々の濃度(100、10、1、および、0.1μg/ml)の試験された抗体の存在下で、37℃で24時間インキュベートした。サイトカイン放出の測定は、ProArray Ultra(登録商標)マイクロアレイアッセイによって実施した。全てのサイトカインを、公知の濃度の標準曲線に対して定量した。2つの対照抗体(低応答対照として、Erbitux(登録商標)/Cetuximab、および、高応答対照として、Campath(登録商標)/Alemtuzumab)もまた、CRAに含まれた。PBSはアッセイ陰性対照として使用された。アッセイの正の対照であるブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)を使用して、全てのドナーについてサイトカイン放出の上昇を誘導した。これによって、当該アッセイが、予想の範囲内で実施されることを確認した。
【0159】
表8は、サイトカイン放出アッセイの結果を、それぞれの薬剤/用量の組み合わせについての中央値(pg/ml)で示す。全てのサイトカインについて、SEBに対する応答の中央値はゼロを超えており、ドナー細胞がサイトカインを産生する機能的能力を有することが実証された。Erbitux(登録商標)は全体的に低レベルのサイトカイン放出を誘導したが、Campath(登録商標)の適用により、ドナーの大半でIL-6、IL-8およびIFNγの放出レベルが上昇した(臨床的に、この薬剤はサイトカイン放出症候群と関連している)。Erbituxの場合と同様に、ヒト化抗体変異体CA9hu-2_HC4LC5は、試験されたサイトカインの放出に影響を及ぼさなかった。これは、この特定のヒト化変異体の有益な特性を示す。
【0160】
【0161】
前述の結果は、ヒト化抗体変異体CA9hu-2_HC4LC5がサイトカイン応答を誘導しないという望ましい特性を実証する。
【0162】
〔実施例9:ヒト化抗体の多細胞凝集に及ぼす効果〕
本実施例は、分離状態の間の多細胞凝集を阻害するヒト化抗体変異体の驚くべき特性を実証する。
【0163】
処置された細胞が多細胞凝集体を形成する能力に対する本発明のヒト化抗体の効果を検証するために、本発明者らは多細胞凝集分析を実施した。マトリックス沈着および細胞接着を阻害する非イオン性酸ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(ポリ-HEMA;Sigma-Aldrich)を、10mg/mlで99%エタノールに溶解した。6ウェル組織培養プレートを、0.5mlのポリHEMA溶液でコーティングし、乾燥させ、PBSで洗浄し、4℃で保存した。C-33a_CA IX細胞(400,000細胞/ウェル)を、ポリ-HEMAコーティングウェルに添加し、ヒト化抗体変異体CA9hu-2_HC4LC5(30μg/ml)の存在下または非存在下で、24時間および72時間培養した。多細胞凝集体を形成するC-33a_CA IX細胞の能力を評価するために、処置された細胞および未処置細胞のいずれかの画像を取得し、ImageJソフトウェアを使用して、累積画素密度を測定した。より長い処置(72時間)の終わりに、C-33a_CA IX細胞を回収し、遠心分離した。続いて、死細胞を染色するためにヨウ化プロピジウムを使用するフローサイトメトリーによって分析した。
【0164】
細胞外マトリックス(ECM)剥離中の癌細胞の多細胞凝集は、アノイキス阻害の効率的なメカニズムを表す。
図6は、本発明のヒト化抗体変異体が、ポリ-HEMAでコーティングされた皿上での分離状態の間に、C-33a_CA IX細胞が多細胞凝集体を形成する能力を阻害することを明確に示す。
【0165】
ヒト化抗体を使用した治療の後、C-33a_CA IX細胞のアノイキスに対する増強された感受性を確認するために、本発明者らはフローサイトメトリーおよびヨウ化プロピジウム染色を実施した。
【0166】
図7は、ヒト化抗体変異体CA9hu-2_HC4LC5が、分離状態で72時間増殖した後の、処置されたC-33a_CA IX細胞の生存率に影響を及ぼすことを示す。CA9hu-2_HC4LC5で処置された死細胞の割合は、35.1%であった。抗体処置なしのC-33a_CA IX細胞(「陰性対照」)の場合、15.7%のみの死細胞が観察された。
【0167】
前述のデータは、CA IX発現C-33a癌細胞の多細胞凝集を阻害し(分離状態の間に)、続いて、アノイキスに対するそれらの感受性を増強する、本発明のヒト化抗体の能力を実証する。この作用メカニズムは、非常に有益な特性を表す。さらに、CA9hu-2_HC4LC5は、処置された細胞の生存率を低下させた。ヒト化抗体の存在下で培養された死細胞の割合は、対照細胞と比較した場合に、より高かった。
【0168】
〔実施例10:影響を受けた細胞のプロテオーム/セクレトームならびにトランスクリプトームに対するヒト化抗体の効果〕
本実施例は、サイトカインパターンならびに抗腫瘍免疫の回避に関与するタンパク質の発現に影響を及ぼす、ヒト化抗体の予想外の特性を実証する。
【0169】
in vitroでのサイトカインパターンに対するヒト化抗体変異体の影響を、プロテオームプロファイラサイトカインアレイ(PPA;R&D Systems、Inc.)を使用して分析した。PPAは、ニトロセルロース膜上のサンプル間のサイトカイン差を同時に検出するための迅速、高感度、および経済的ツールである。PPAサイトカインアレイは、製造業者の指示に従って、低酸素中で72時間インキュベートしたTNBC細胞株BT-20を使用して実施した。BT-20細胞を12ウェルプレート(200,000細胞/ウェル)に播種し、ヒト化抗体CA9hu-2_HC4LC5(50μg/ml)の存在下または非存在下でインキュベートした。続いて、細胞溶解物(BT-20_プロテオーム)ならびに細胞培養上清(BT-20_セクレトーム)を調製し、分析した。希釈したサンプルをPPA膜と共に一晩インキュベートし、洗浄し(結合していない物質を除去するために)、ビオチン化検出抗体のカクテルと共にインキュベートした。次いで、ストレプトアビジン-HRPおよび化学発光検出試薬を加え、発現させた。シグナルは、結合したタンパク質の量に対応して、それぞれの捕捉スポットで生成される。現像されたX線フィルム上の画素密度を収集し、ImageJ1.38xソフトウェアによって分析した。それぞれのサンプルを表す二重スポットのペアの平均シグナル(ピクセル密度)を決定し、続いて、平均バックグラウンドシグナルをそれぞれのスポットから差し引いた。結果を、抗体処置後の倍数変化として表す(表9)。
【0170】
【0171】
予想通り、プロテオームプロファイラサイトカインアレイは、発現(BT-20_プロテオーム)または放出(BT-20_セクレトーム)のいずれかで、いくつかの異なる影響を受けたサイトカイン(アップレギュレートまたはダウンレギュレート)を明らかにした。IL-8およびVEGFの発現は、ヒト化抗体変異体CA9hu-2_HC4LC5の存在下でのBT-20細胞のインキュベーション後に、セクレトームならびにプロテオームにおいて、一貫してダウンレギュレートされた(表9)。
【0172】
処置された細胞の転写プロファイルに対する本発明のヒト化抗体の効果を検証するために、逆転写-定量リアルタイムPCR(RT-qPCR)を使用した。TNBC細胞株BT-20を使用して、抗腫瘍免疫の回避を担うタンパク質をコードする遺伝子の発現を定量し、分析した。スフェロイド中で予め形成されたBT-20細胞を、最初に、化学療法薬ドキソルビシン(DOX;Sigma-Aldrich)に、濃度1μMで4日間曝露した。その後、DOXなしで3日間培養した。ヒト化抗体変異体CA9hu-2_HC4LC5(25μg/ml)での処置を、期間全体(7日間)にわたって実施した。同時に、DOXで前処置しないBT-20細胞を、ヒト化抗体に7日間曝露した。TRIzol(ThermoFisher Scientific)を使用して、全てのRNAを抽出した。続いて、高容量cDNA逆転写キット(Biosystems、Foster City CA、USAを適用)で転写した。Power SYBR Green PCR Master Mix(Biosystemsを適用)、CD47およびプログラムされた細胞死リガンド1(PD-L1)の遺伝子特異的プライマー、ならびに、内部対照として作用するβ-アクチンのプライマーを使用して、StepOneリアルタイムPCRシステム(Biosystemsを適用)で、定量PCRを実施した。プライマーは、下記の通りであった:CD47センス:5’-AGAAGGTGAAACGATCATCGAGC-3’(配列番号31)、および、CD47アンチセンス:5’-CTCATCCATACCACCGGATCT-3’(配列番号32);PD-L1センス:5’-TGGCATTTGCTGAACGCATTT-3’(配列番号33)、および、PD-L1アンチセンス:5’-AGTGCAGCCAGGTCTAATTGT-3’(配列番号34);β-アクチンセンス:5’-CCAACCGCGAGAAGATGACC-3’(配列番号35)、および、β-アクチンアンチセンス:5’-GATCTTCATGAGGTAGTCAGT-3’(配列番号36)。結果を、抗体処置後の倍数変化として表す(表10)。
【0173】
【0174】
表10に示すように、ヒト化抗体変異体CA9hu-2_HC4LC5で7日間処置されたBT-20細胞から単離された全てのRNAのRT-qPCR分析は、CD47ならびにPD-L1の発現の減少を明らかにした。両方のmRNAのダウンレギュレーションは、ドキソルビシンに曝露された(DOX+)BT-20細胞でより明らかであり、CA9hu-2_HC4LC5ヒト化抗体による処置の後、PD-L1発現およびCD47発現は、それぞれ略40%の減少、および、30%以上の減少をもたらした。
【0175】
前述のデータは、癌細胞のサイトカインプロファイルに影響を及ぼすヒト化抗体CA9hu-2_HC4LC5の能力を実証する。VEGFおよびIL-8は、乳癌細胞から分泌される2つの強力な血管新生因子である。それらは、腫瘍新生血管系の確立および拡大に寄与する。血管新生は腫瘍進行に極めて重要であり、VEGFおよびIL-8のような血管新生促進分子が癌治療の潜在的標的として検討されている。本発明のヒト化抗体を使用したTNBC細胞での処置が、いくつかの間接的効果(例えば、VEGF発現およびIL-8発現のダウンレギュレーション)を誘導する能力があることを考慮すると、CA IX標的化療法は、患者にさらなる治療上の利益をもたらすことができると想定される。
【0176】
癌細胞が免疫系(自然免疫応答と適応応答の両方)を回避する能力は、癌の再燃および転移においてきわめて重要な役割を果たす。CD47は、マクロファージ上のシグナル調節タンパク質αと相互作用して貪食作用を遮断する細胞表面タンパク質である。その発現は、癌細胞による自然免疫の回避を媒介する主要なメカニズムを表している。CD274としても知られているPD-L1は、抗原提示細胞および腫瘍細胞の表面上に一般的に発現される膜貫通タンパク質である。PD-L1は、その受容体PD-1に特異的に結合する。当該PD-1は、免疫関連リンパ球の表面上に発現している。PD-L1/PD-1相互作用の破綻は、T細胞の活性化、増殖、サイトカイン生成および癌細胞排除につながる。従って、本発明のヒト化抗体を使用して処置された、化学療法で曝露された癌細胞中における、腫瘍PD-L1およびCD47発現のダウンレギュレーションは、癌細胞増殖の阻害をもたらし得る。それらは、本発明のヒト化抗体の予想外の特性を提示し得る。さらに、ドキソルビシンに曝露されたBT-20細胞のヒト化抗体治療に応答したPD-L1およびCD47発現の同等の阻害は、癌患者の転帰を向上するために、本発明の化学療法および抗CA IX抗体を組み合わせるための理論的根拠を提供する。
【0177】
結論として、本発明のヒト化抗体は、抗原結合特異性を保持し、エフェクター機能(ADCC、CDC、ADCP)を有することが実証された。さらに、20人のドナーの新鮮な全血サンプルを使用して、ヒト化抗体の使用の望ましい安全性を、サイトカイン放出アッセイによって決定した。非常に有益な特性(例えば、癌患者の治療に重要な作用メカニズムである癌細胞浸潤の阻害)が証明された。さらに重要なことに、ヒト化抗体の予期せぬ驚くべき性質が、分離状態の間の多細胞凝集アッセイ、ならびに、プロテオームプロファイラアレイ、および、RT-qPCRを使用した処置された癌細胞のプロテオーム、セクレトーム、および、トランスクリプトームの分析において、明らかにされた。最後に、これは、CA IXのPG領域に対するヒト化抗体の予想外の有益な作用の最初の説明および実証である。従って、本発明のヒト化抗体は、引用された先行技術に対して新規性があり、創意に富んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【
図1】肺転移形成に対するマウスIV/18モノクローナル抗体の効果。(A)全放射効率は、対照群またはIV/18mAb処置群のいずれかのマウス肺のHT1080-RFP癌細胞の量を反映する。(B)対照マウスおよびIV/18mAb処置マウスの、蛍光の肺転移の代表的なex vivo画像。
【
図2】CA9hu-2変異体と、CA IX陽性(C-33a_CA IX)抗原またはCA IX陰性(C-33a_neo)抗原との応答度を、ELISAで測定した。抗体希釈剤のみを含むサンプルは、「抗体なし」と記す。親IV/18(A)(「マウス抗体」と記す)ならびにキメラHC0LC0(マウス可変領域およびヒトIg定常領域を有する)抗体を参照サンプルとして使用した。グラフ中のデータは誘導の倍数として表す。当該データは、(CA IX陽性抗原から492nmで測定された吸光度のO.D.値)/(CA IX陰性抗原から492nmで測定された吸光度のO.D.値)として計算する。
【
図3】CA IX陽性(C-33a_CA IX)細胞またはCA IX陰性(C-33a_neo)細胞のいずれかを使用した、抗体依存性細胞障害に関するCA9hu-2のヒト化変異体のスクリーニング。キメラHC0LC0(マウス可変領域およびヒトIg定常領域を有する)抗体を参照サンプルとして使用した。グラフ中のデータは、発光を相対発光単位(RLU)で表す。当該データは、平均±標準偏差値で表す。
【
図4】ヒト化抗体変異体CA9hu-2_HC4LC5の存在下でヒトPBMCと共に培養したBT-20スフェロイドの3Dモデル。BT-20スフェロイド内のPBMC細胞の突起(両方とも、CellBrite(商品商標)染料を使用して予め染色した)は、スフェロイド体積を横切って得た処置3日後のZ-スタック切片由来のものである(図の上部)。ヒト化抗体変異体CA9hu‐2_HC4LC5のスフェロイド形態に対する影響の免疫組織化学分析。PBMCと共培養し、ヒト化抗体変異体を使用して11日間処置したBT-20スフェロイド由来の代表的な切片。CA IX染色の特徴的なパターンが、BT-20スフェロイドを横切る膜内で観察された(図の下部)。
【
図5】ヒト化抗体変異体CA9hu-2_HC4LC5の存在下で低酸素プレインキュベートしたC-33a_CA IX細胞の浸潤能力を、xCELLigence装置によるリアルタイム測定により評価した。Matrigelコーティングトップチャンバーに播種した細胞を刺激して、さらに下部のチャンバーにて化学誘引物質に対して浸潤させた。ヒト化抗体の非存在下で播種したC-33a_CA IX細胞を、「抗体なし」と記す。グラフ中のデータは細胞指数の時間依存度を示す。当該データは、平均値±標準偏差値で表す。
【
図6】24時間後および72時間後の、ポリ-HEMAコーティング皿上でのヒト化抗体CA9hu-2_HC4LC5を使用したC-33a_CA IXの多細胞凝集分析。ヒト化抗体の非存在下でインキュベートしたC-33a_CA IX細胞を「陰性対照」と記す。
【
図7】ヒト化抗体CA9hu-2_HC4LC5を使用した、処置72時間後のヨウ化プロピジウム染色およびフローサイトメトリーによるC-33a_CA IX細胞の分析。ヒト化抗体の非存在下でインキュベートしたC-33a_CA IX細胞は、「陰性対照」と記す。
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