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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】アクティブ放電デバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240304BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240304BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H02J7/00 P
H01M10/44 P
H01M10/48 P
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022533494
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 EP2020084751
(87)【国際公開番号】W WO2021110980
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】1913894
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】521442084
【氏名又は名称】ヴァレオ、シーメンス、イーオートモーティブ、フランス
【氏名又は名称原語表記】VALEO SIEMENS EAUTOMOTIVE FRANCE
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】ヤムナ、バカリ
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/125010(WO,A1)
【文献】特開2006-311682(JP,A)
【文献】特開2016-086578(JP,A)
【文献】特開2016-212948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02H 7/18
H01M 10/44
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギー蓄積デバイス(C1、C2、C3、102、114)を能動的に放電させるためのデバイス(200;500)であって、
- 分岐部(204)であって、
・ 前記電気エネルギー蓄積デバイス(C1、C2、C3、102、114)の正端子及び負端子にそれぞれ接続されるように構成される第1端部及び第2端部(206、208)と、
・ 前記2つの端部(206、208)間における、サーミスタ(210)の温度とともに増大する抵抗を有するサーミスタ(210)と、開状態から閉状態に変わるために制御信号(vGS)を受け取るように設計されるスイッチ(212)とであって、スイッチ(212)が閉じられている場合に、放電電流(i )が前記第1端部(206)を介して入って、サーミスタ(210)及びスイッチ(212)を次々に流れ、前記第2端部(208)を介して出るようにサーミスタ及びスイッチが互いに接続される、サーミスタ及びスイッチと、を有する分岐部(204)と、
- 前記スイッチ(212)を制御するためのデバイス(214)であって、前記制御信号(vGS)を前記サーミスタ(210)の抵抗とは無関係に提供するように当該制御デバイス(214)は前記スイッチ(212)に接続されることを特徴とする、デバイス(214)と、
- 前記サーミスタ(210)の前記端子間の電圧を測定することにより前記放電電流(i )を監視するように設計される検証モジュール(226)であって、前記電圧の測定値が、前記スイッチ(212)を制御するための前記デバイス(214)によって提供される前記制御信号(v GS )に基づく前記電圧の予想される値と異なる場合に、エラーメッセージを送信するように設計される検証モジュール(226)と、
を備えるデバイス(200;500)。
【請求項2】
前記制御信号(vGS)を提供するための少なくとも1つの接続部(216、218)を更に備え、当該少なくとも1つの接続部(216、218)は前記制御デバイス(214)を前記スイッチ(212)に接続し、前記サーミスタ(210)は、前記制御信号(vGS)を提供するための各接続部(216、218)の外側に位置する、請求項1に記載のアクティブ放電デバイス(200;500)。
【請求項3】
前記スイッチ(212)は、前記放電電流(i)のための入力端子(D)と、前記放電電流(i)のための出力端子(S)と、制御端子(G)とを有し、前記制御信号(vGS)は、前記制御端子(G)と前記出力端子(S)との間の制御電圧(vGS)であり、アクティブ放電デバイス(200;500)は前記制御信号(vGS)を提供するための2つの接続部(216、218)を備え、当該2つの接続部(216、218)は、前記制御デバイス(214)をそれぞれ前記制御端子(G)に及び前記出力端子(S)に接続する、請求項2に記載のアクティブ放電デバイス(200;500)。
【請求項4】
前記サーミスタ(210)は、前記分岐部(204)の前記第1端部(206)と前記スイッチ(212)の前記入力端子(D)との間に接続される、請求項3に記載のアクティブ放電デバイス(200)。
【請求項5】
前記サーミスタ(210)は、前記スイッチ(212)の前記出力端子(S)と前記分岐部(204)の前記第2端部(208)との間に接続される、請求項3に記載のアクティブ放電デバイス(500)。
【請求項6】
前記制御信号を提供するための前記接続部(218)であって前記制御デバイス(214)を前記出力端子(S)に接続する前記接続部(218)は、前記制御デバイス(214)と、前記スイッチ(212)の前記出力端子(S)と前記サーミスタ(210)との間に位置する前記分岐部(204)のポイント(P)との間の接続部(220)を備える、請求項5に記載のアクティブ放電デバイス(500)。
【請求項7】
前記サーミスタ(210)は前記スイッチ(212)から、それらの間に介在する断熱バリア(213)によって、熱的に切り離される、請求項1~6のいずれか一項に記載のアクティブ放電デバイス(200;500)。
【請求項8】
前記サーミスタ(210)は、前記スイッチ(212)から少なくとも1cmの距離に位置する、請求項1~7のいずれか一項に記載のアクティブ放電デバイス(200;500)。
【請求項9】
25℃における前記サーミスタ(210)の抵抗は、閉じられた状態における前記スイッチ(212)の抵抗よりも、少なくとも、10倍高い、請求項1~8のいずれか一項に記載のアクティブ放電デバイス(200;500)。
【請求項10】
前記サーミスタ(210)は、以下の機能のうちの1つ以上を実行するように設計される:
- 前記スイッチ(212)よりも大きな電力を消散する;
- 前記サーミスタ(210)の温度が上昇する場合に前記放電電流(i )を制限する
請求項1~9のいずれか一項に記載のアクティブ放電デバイス(200;500)。
【請求項11】
電気エネルギー蓄積デバイス(C1、C2、C3、102、114)を能動的に放電させるための方法(400)であって:
- 制御信号(vGS)をスイッチ(212)に提供してそれを開状態から閉状態に変え、前記スイッチ(212)に加え、分岐部(204)のスイッチ(212)形成部は、
・ 前記電気エネルギー蓄積デバイス(C1、C2、C3、102、114)の正端子及び負端子にそれぞれ接続される第1端部及び第2端部(206、208)と、
・ サーミスタ(210)の温度に応じて増大する抵抗を有するサーミスタ(210)であって、前記サーミスタ(210)及び前記スイッチ(212)が、前記2つの端部(206、208)間で互いに接続される、サーミスタ(210)と、を含む、
ように制御信号(vGS)をスイッチ(212)に提供すること(404)と、
- 放電電流(i )が前記第1端部(206)を介して入り、前記サーミスタ(210)及び前記スイッチ(212)を次々に流れ、前記第2端部(208)を介して出るように、前記スイッチ(212)を前記閉状態に変えること(406)と、
- 前記制御信号(vGS)を、放電時間の間、前記サーミスタ(214)の抵抗の変化とは無関係に維持することと、
- 検証モジュールによって、前記サーミスタ(210)の前記端子間の電圧を測定することにより前記放電電流(id)を監視し、前記電圧の測定値が、前記制御信号(v GS )に基づく前記電圧の予想される値と異なる場合に、エラーメッセージを送信することと、
を含む方法(400)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブ放電方法及びデバイスに関する。
【発明の概要】
【0002】
発明は、特に自動車の分野に、とりわけ電気推進又はハイブリッド推進を有する自動車の分野に、適用される。
【0003】
具体的には、そのような自動車は、入力側及び/又は出力側における、例えばコンデンサといった、電気エネルギー蓄積デバイスを含む電気部品を備える。これらの蓄積デバイスの端子間の電圧は、例えば60V~1000Vのように、高くなりうる。電気部品の入力又は出力が切断される場合、電気エネルギーは蓄積デバイスに蓄えられたままとなる。そのため、例えば自動車の整備作業中に、人が蓄積デバイスに接触する場合、蓄積されたエネルギーは、この人に放電され、怪我をさせうる。
【0004】
これを回避するために、指令により電気エネルギー蓄積デバイスを放電させるように設計されたアクティブ放電デバイスを使用することが知られている。短時間に大量の電気エネルギーを放電させる必要があるため、アクティブ放電デバイスによって消費される電力が大きく、そのことはその構成部品の加熱をもたらしうるものであり、場合によっては火災を起こすことをもたらしうる。そのため、一般に、加熱に対する保護が提供される。
【0005】
例えば、US2011/0057627A1の番号で公開された特許出願は、電気エネルギー蓄積デバイスを能動的に放電させるためのデバイスであって、
- 分岐部であって、
・ 電気エネルギー蓄積デバイスの正端子及び負端子にそれぞれ接続されることが意図された第1端部及び第2端部と、
・ 前記2つの端部間における、サーミスタの温度とともに増大する抵抗を有するサーミスタと、開状態から閉状態に変化するために制御信号を受け取るように設計されるスイッチとであって、前記スイッチが閉じられている場合に放電電流が前記第1端部を介して入って、前記サーミスタ及び前記スイッチを次々に流れ、前記第2端部を介して出るように前記サーミスタ及び前記スイッチが互いに接続される、サーミスタ及びスイッチと、を有する分岐部と、
- 前記スイッチを制御するためのデバイスと、
を備えるタイプのデバイスを記述する。
【0006】
この特許出願において、前記スイッチは、金属酸化物ゲートを有する電界効果型トランジスタ(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor、すなわちMOSFET)であり、電流入力ドレーン、電流出力ソース及びゲートを有する。このスイッチに関し、制御信号はゲート-ソース電圧である。より正確には、スイッチはゲート-ソース電圧がゼロの場合に開き、それがゼロではない場合に閉じられる。後者の場合、スイッチによって流される放電電流は、ゲート-ソース電圧の上昇に伴って、増大する。さらに、サーミスタはスイッチのソースに接続され、サーミスタとスイッチのゲートと間にスイッチの閉鎖電圧を提供するために制御デバイスが配置される。制御デバイスの出力におけるツェナーダイオードの存在により、閉鎖電圧は実質的に一定である。したがって、ゲート-ソース電圧は、閉鎖電圧(一定)とサーミスタの端子間電圧との間の差に等しい。
【0007】
スイッチの加熱が起きた場合、スイッチとサーミスタとの間の熱的結合によりサーミスタの温度が上昇し、それは抵抗の増大につながり、そのためその端子間電圧の増大につながる。これは、ゲート-ソース電圧の低下をもたらし、したがってスイッチに流れる放電電流の低下をもたらし、そのことはその発熱を制限する。
【0008】
前述の特許で提案されているアクティブ放電デバイスの1つの問題は、熱のほとんどが必然的にスイッチに放熱されることであり、そのことはその寿命を短くしうるものであり、それにダメージを与えさえもしうる。
【0009】
そのため、スイッチによって消費される電力を低減することを可能にするアクティブ放電デバイスを提供することが望ましいかもしれない。
【0010】
したがって電気エネルギー蓄積デバイスを能動的に放電させるための前述のタイプのデバイスであって、サーミスタの抵抗とは無関係に制御信号を提供するように制御デバイスがスイッチに接続されることを特徴とするデバイスが、提案される。
【0011】
具体的には、上記特許出願では、ゲート-ソース電圧がサーミスタの抵抗に依存するため、サーミスタは、その端子間電圧が高くなり過ぎず且つ非常に低い放電電流でゲート-ソース電圧を打ち消さないように、必然的に低抵抗を有する必要がある。
【0012】
発明によれば、制御デバイスは、抵抗とは無関係にサーミスタに制御信号を提供する。そのため、サーミスタは、それが放電電流の大部分を消費するように、非常に高い抵抗を有するように選択されうる。そしてスイッチは、放電電力の小さい部分のみを消散させる必要があり、経時的な劣化や加熱のリスクがない。
【0013】
任意選択で、アクティブ放電デバイスは、さらに、制御信号を提供するための少なくとも1つの接続部を備え、当該少なくとも1つの接続部は制御デバイスをスイッチに接続し、当該少なくとも1つの接続部において、サーミスタは、制御信号を提供するための各接続部の外側に配置される。すなわち、制御デバイスと制御信号を提供するためのスイッチとの間の接続部は、前記サーミスタを含まない。
【0014】
また任意選択で、スイッチは、放電電流のための入力端子と、放電電流の出力端子と、制御端子とを有し、制御信号は、制御端子と出力端子との間の制御電圧であり、アクティブ放電デバイスは、制御信号を提供するための2つの接続部を備え、当該2つの接続部は、制御デバイスをそれぞれ制御端子に及び出力端子に接続する。
【0015】
また任意選択で、サーミスタは、分岐部の第1端部とスイッチの入力端子との間に接続される。
【0016】
また任意選択で、サーミスタは、スイッチの出力端子と分岐部の第2端部との間に接続される。
【0017】
また任意選択で、制御信号を提供するための接続部であって制御デバイスを出力端子に接続する接続部は、制御デバイスと、スイッチの出力端子とサーミスタとの間に位置する分岐部のポイントとの間の接続部を備える。
【0018】
また任意選択で、サーミスタはスイッチから熱的に切り離され、例えばそれらの間に介在する断熱バリアによって、サーミスタはスイッチから熱的に切り離される。
【0019】
また任意選択で、サーミスタはスイッチから少なくとも1cmの距離に配置される。
【0020】
また任意選択で、25℃におけるサーミスタの抵抗は、閉じられた状態におけるスイッチの抵抗よりも、少なくとも、10倍高く、好ましくは100倍高く、より好ましくは1000倍高い。
【0021】
また任意選択で、サーミスタは、以下の機能のうちの1つ以上、好ましくは3つすべて、を実行するように設計される:
- スイッチよりも大きな電力を消散する;
- サーミスタの温度が上昇する場合に放電電流を制限する;及び
- 放電電流の電圧代表(voltage representative)を有し、当該電圧代表は、測定された電圧がスイッチのコマンドに従って予想される電圧と異なる場合に、エラーメッセージを送信するように設計された検証モジュールによって測定される。
【0022】
また電気エネルギー蓄積デバイスを能動的に放電させるための方法が提案され、当該方法は:
- 制御信号をスイッチに提供してそれを開状態から閉状態に変え、前記スイッチに加え、分岐部のスイッチ形成部は、
・ 前記電気エネルギー蓄積デバイスの正端子及び負端子にそれぞれ接続される第1端部及び第2端部と、
・ サーミスタの温度に応じて増大する抵抗を有するサーミスタであって、前記サーミスタ及び前記スイッチは、その2つの端部間で互いに接続される、サーミスタと、を含む、
ように制御信号をスイッチに提供することと、
- 放電電流が前記第1端部を介して入り、前記サーミスタ及び前記スイッチを順に流れ、前記第2端部を介して出るように、前記スイッチを閉状態に変えることと、
- 前記制御信号を、放電時間の間、前記サーミスタの抵抗の変化とは無関係に維持することと、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
発明は、もっぱら例示として与えられ且つ添付図面を参照して提供される以下の説明の助けによって、より明確に理解され、当該添付図面において:
図1図1は、電気部品とともに電気推進又はハイブリッド推進を有する自動車を概略的に表し、当該電気部品のいくつかは、少なくとも1つのエネルギー蓄積デバイスを含む。
図2図2は、図1のエネルギー蓄積デバイスのうちの1つの、発明の第1実施形態によるアクティブ放電デバイスの回路図である。
図3図3は、図2のアクティブ放電デバイスのスイッチの電流-電圧特性を表すグラフである。
図4図4は、発明の一実施形態に係るアクティブ放電方法の連続ステップを示す。
図5図5は、図1のエネルギー蓄積デバイスのうちの1つの、発明の第2実施形態によるアクティブ放電デバイスの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1を参照して、(電気モータ及び熱機関による)電気推進又はハイブリッド推進を有する自動車100は、種々の電気部品を備える。
【0025】
特に、自動車100は、まず、60Vよりも大きな、一般には60V~1000Vの直流高電圧HTを提供するように設計された高電圧バッテリ102を備える。
【0026】
自動車100は、さらに、電気ネットワーク105から高電圧バッテリ102を充電するように設計された充電器104を備える。
【0027】
自動車100は、さらに、高電圧HTから少なくとも1つの交流電圧TAを提供すること、又は、その1つ又は複数の交流電圧TAから高電圧バッテリ102を再充電すること、のいずれかを選択的に行うように設計されたインバータ/整流器106を備える。
【0028】
自動車100は、さらに、自動車100の駆動輪110に動力を供給するための電気モータ108を備える。電気モータ108には、その1又は複数の交流電圧TAが供給される。一般に、電気モータ108はさらに発電機モードで機能することができ、当該発電機モードにおいて、車輪110の動力供給が1又は複数の交流電圧TAを発生させることで、インバータ/整流器106は高電圧バッテリ102を再充電する。
【0029】
自動車100はさらに、高電圧HTから直流低電圧を提供するように設計されたDC-DCコンバータ112を備える。
【0030】
自動車100は、さらに、自動車100の様々な電気システム(図示せず)に低電圧BTを提供してそれらに供給するように設計された低電圧バッテリ114を備える。低電圧バッテリ114は、さらに、DC-DCコンバータ112を介して、高電圧バッテリ102により再充電されてもよい。
【0031】
充電器104、インバータ/整流器106及びDC-DCコンバータ112は、各々、コンデンサC1、C2、C3を有し、当該コンデンサC1、C2、C3には、高電圧HTが印加されて、それによって膨大な量のエネルギーを蓄積する。
【0032】
次に、図2を参照して、自動車100において存在する発明の第1実施形態によるアクティブ放電デバイス200を説明する。
【0033】
アクティブ放電デバイス200は、オンデマンドで、自動車100の電気エネルギー蓄積デバイスを放電させるように設計される。例えば、コンデンサC1~C3及びバッテリ102、114の各々は、アクティブ放電デバイス200などのアクティブ放電デバイスと関連付けられてもよい。以下の説明では、コンデンサC1を能動的に放電させる場合が非限定的な例として取り上げられる。
【0034】
アクティブ放電デバイス200は、まず、プリント基板(PCB)202を備える。
【0035】
アクティブ放電デバイス200は、さらに、放電電流iを受けるためにコンデンサC1の正端子(+)に接続される第1端部206と、例えば負端子(-)が接続される電気グランド209を介して、コンデンサC1の負端子(-)に接続される第2端部208と、を含む電流放電分岐部204を、プリント回路基板上に、備える。
【0036】
分岐部204は、2つの端部206、208間に、説明される例では、3つの機能を果たすことが意図されるサーミスタ210を更に備え、当該3つの機能は以下の通りである:電力を散逸させる第1の機能、放電を熱的に保護する第2の機能、及び放電の正しい動作を検証する第3の機能。これらの3つの機能は、残りの説明を読むことで、明らかになる。分岐部204は、やはり2つの端部206、208間に、スイッチ212をさらに備える。サーミスタ210及びスイッチ212は、放電電流iが次々とそれらを流れるように、互いに接続される。説明される例において、サーミスタ210が第1端部206に接続される一方で、スイッチ212は第2端部208に接続される。したがって、放電電流iは、まずサーミスタ210を流れ、その後、スイッチ212を流れる。
【0037】
サーミスタ210は、正温度係数(PTC:Positive Temperature Coefficient)サーミスタであり、つまりそれは、サーミスタ210の温度とともに増大する抵抗RTを有する。好ましくは、アクティブ放電デバイス200は、25℃において、例えば1kΩ~100kΩの、非常に高い抵抗RTを有するサーミスタを使用する。
【0038】
スイッチ212は、その状態、開又は閉を定める制御信号を受信するように設計されている。開状態において、スイッチ212は、放電電流iがゼロであるように分岐部204を切断する。閉状態において、スイッチ212は放電電流iをドレーンする。そして、後者の場合、それは、一般に1mΩ~10ドレーン、低抵抗rを有する。したがって、25℃における抵抗RTは、抵抗rよりも少なくとも、10倍大きく、好ましくは100倍大きく、又はさらに1000倍大きい。このように、放電中、ほとんどの電力がサーミスタ210で消費される。より正確には、サーミスタ210は電力RT×i を消費する一方で、スイッチ212は電力r×i を消費する。したがって、抵抗RTが抵抗rの100倍である場合、サーミスタ210は、スイッチ212よりも100倍多くのエネルギーを消費する。そのため、スイッチ212はほとんど加熱されず、火災を発生させるリスクが極めて低い。
【0039】
サーミスタ210及びスイッチ212は、好ましくは、サーミスタ210がスイッチ212を加熱しないように、互いに熱的に切り離される。これは、少なくとも1cmの距離でそれらを互いに分離することによって、及び/又は、断熱バリア213を使用することによって、得られうる。
【0040】
スイッチ212は、放電電流iのための入力端子D及び出力端子Sと、制御端子Gとを有する。説明される例において、制御信号は、制御端子Gと出力端子Sとの間の制御電圧VGSである。さらに、抵抗rは、入力端子Dと出力端子Sとの間の抵抗である。
【0041】
説明される例において、スイッチ212は、それ自体既知のように、入力端子D、出力端子S及び制御端子Gをそれぞれが形成するドレーン、ソース及びゲートを持つ金属酸化物ゲートを有する電界効果トランジスタ(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ、すなわちMOSFET)である。
【0042】
また、スイッチ212は、バイポーラトランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、サイリスタ、又は他の任意の制御可能なスイッチであってもよい。
【0043】
アクティブ放電デバイス200は、スイッチ212を制御するためのデバイス214をさらに備え、それはスイッチ212に接続されて、サーミスタ210の抵抗RTとは無関係に、例えば自動車100のコンピュータ215から来る放電コマンドCMDの受信に応えてそれに制御信号VGSを与える。制御デバイス214は、好ましくは、低電圧バッテリ114の低電圧LVによって供給される。また制御デバイス214は、高電圧バッテリ102の高電圧HTによって間接的に供給されてもよい。
【0044】
説明される例において、アクティブ放電デバイス200は、制御信号VGSを提供するための2つの接続部216,218を備え、当該2つの接続部216,218は、それぞれ制御デバイス214をスイッチ212の制御端子G及び出力端子Sに接続する。サーミスタ210は第1端部206と入力端子Dとの間に接続されているので、制御信号VGSを提供するためのこれらの接続部216、218の各々の外側に位置していることが理解される。したがって、制御信号VGSを提供するための接続部216、218は、サーミスタ210を回避又は迂回する。
【0045】
より詳細には、アクティブ放電デバイス200は、制御デバイス214と、分岐部204のポイントPとの間に接続部220を備え、当該分岐部204は出力端子Sと第2端部208との間に位置する。したがって、制御デバイス214を出力端子Sに接続する制御信号VGSを提供するための接続部218は、接続部220と、ポイントPと出力端子Sとの間に延びる分岐部204の部分222と、を含む。
【0046】
したがって、制御信号VGSは、制御デバイス214によって定められ、サーミスタ210の抵抗RTとは無関係である。
【0047】
制御デバイス214によって提供される制御信号VGSは、(制御信号VGSを確立する時間の後)実質的に一定の値を有していてもよく、あるいは代替的に、所望の制御の種類に応じて、放電中に変わってもよい。
【0048】
さらに、アクティブ放電デバイス200は、スイッチ212の正しい動作(例えば、電圧vDSの値)を検証するように設計された診断モジュール224であって、スイッチ212の故障を検出した場合には、アクティブ放電を停止するためにアクティブ放電コマンドCMDを中断するように設計された診断モジュール224を備える。
【0049】
さらに、アクティブ放電デバイス200は、放電の正しい動作を検証するように設計される検証モジュール226を含む。この目的のため、検証モジュール226は、サーミスタ210の端子間の電圧vRTを測定することにより、電流iを監視するように設計されている。さらに、コマンドCMDに従って予想される電圧と、測定された電圧とを比較するように設けられている。乖離する場合、モジュール226は、コンピュータ215にエラーメッセージを送信するように設計されている。電圧vRTを測定するために、検証モジュール226は、サーミスタ210の端子に、例えば端子206及びDに、接続される。
【0050】
図2に示される例では、コンデンサC1は、抵抗器の端子間の電圧vRTとスイッチ212の端子間の電圧vDSとの和に等しい電圧Eを有する。したがって、サーミスタ210の温度の上昇は、電圧vRTの上昇につながり、それ故に電圧vDSの低下につながる。
【0051】
図3は、電圧vGSの様々な増大値に関するスイッチ212の電流i-電圧vDS特性を表し、それぞれ電圧vGS0=0<vGS1<vGS2<vGS3である。このように、vGSのすべての値に関し、電圧vDSが低下すると、放電電流iは低減することが分かる。この結果、サーミスタ210の温度の上昇は、放電電流iの低減につながり、それはサーミスタ210の発熱を抑制する。これにより、サーミスタ210の温度が調節され、それは後者の過剰な加熱のリスクを、ひいては「危険な熱事象」(HTE)のリスクを、低減する。
【0052】
次に、図4を参照して、発明によるアクティブ放電方法400を説明する。
【0053】
初期ステップ402の間、制御デバイス214は、スイッチ212に制御電圧vGSを供給しないこと(電圧vGSはゼロ)によって、スイッチ212を開状態に保つ。したがって、放電電流iはゼロとなる。さらに、サーミスタ210は、環境温度(例えば85℃程度)であり、この温度に応じた抵抗RTを有する。電圧vDSはコンデンサC1の電圧Eと等しく、それはそれ自体が高電圧HTと等しい。
【0054】
ステップ404の間、制御デバイス214は放電コマンドCMDを受信し、これに応答して、スイッチ212に制御信号vGSを提供し、それは、説明される例では予め定められた値で、例えば値vGS3で、一定である。
【0055】
ステップ406の間、制御信号vGSに応答して、スイッチ212は閉状態に変わり、放電電流iをドレーンし、当該放電電流iは、第1端部206を介して入り、サーミスタ210とスイッチ212を次々に流れ、第2端部208を通って出る。放電電流iの出現のせいで、サーミスタ210の端子間電圧vRTは、RT×iの値をとる。
【0056】
ステップ408の間、制御デバイス214は、制御信号vGSを、例えば一定値(例えば値vGS3など)で、又は代替的に放電時間中に制御デバイス214によって与えられる予め定められた変化に従って、維持する。
【0057】
この放電時間の間、サーミスタ210は、電力の大部分(上記で説明したように、スイッチ212よりも少なくとも10倍大きい電力)を消散することによって、電力消散のその第1の機能を果たす。同時に、サーミスタは、放電電流iの流れにより、(例えば105℃まで)加熱されることによって放電を熱的に保護するというその第2の機能を果たし、それによって抵抗RTが上昇する。上述したように、これは、スイッチ212の電圧VDSを低減する効果を有し、したがって放電電流iを低減する効果を有し、それはサーミスタ210の加熱を低減する。このようにして、サーミスタ210の温度が調整される。
【0058】
並行して、放電電流iはコンデンサC1を放電させ、放電時間終了の際に許容可能な閾値、例えば60V未満、までの電圧Eの低下をもたらす。
【0059】
放電時間の間、制御デバイス214がサーミスタ210を避けながらスイッチ212に接続されているという事実によって、制御信号vGSはサーミスタ214の抵抗RTの変動とは無関係に維持されることが理解される。つまり、制御信号vGSは、抵抗RTの変動に影響されない。
【0060】
制御デバイス214が制御信号vGSを一定に保つように設計されている場合、制御信号vGSは、抵抗RTの変動とは無関係に、一定に保たれる。
【0061】
制御デバイス214が放電中に制御信号vGSを変動させるようになっている場合、これらの変動は、抵抗RTの変動とは無関係に、制御デバイス214によって提供されるように実行される。アクティブ放電と同時に、サーミスタは、検証モジュール226が電圧vRTを介して電流iを監視することを可能にすることで検証のその第3の機能を果たす。コマンドCMDに従って予想される電圧と測定された電圧との間に乖離がある場合、検証モジュール226はコンピュータ215にエラーメッセージを送信する。
【0062】
次に、図5を参照して、発明の第2実施形態に係る自動車100のアクティブ放電デバイス500について説明する。
【0063】
アクティブ放電デバイス500は、サーミスタ210とスイッチ212が入れ替わっている以外は、図2のものと同じである。したがって、スイッチ212の入力端子Dは第1端部206に接続されるのに対し、サーミスタ210は、一方では出力端子Sに接続され、他方では第2端部208に接続される。
【0064】
接続部220は、スイッチ212の出力端子Sとサーミスタ210との間に位置する分岐部204のポイントPに接続されており、それによって制御デバイスの制御信号vGSを出力端子Sに提供するための接続部218がサーミスタ210を回避することは理解される。したがって、制御信号vGSは、常にサーミスタ210の抵抗RTに依存しない。
【0065】
さらに、サーミスタ210がその端子のうちの1つによって電気グランド209に接続されて電圧vRTが電気グランド209を基準にしてとられることによって、図2の回路と比較して、サーミスタ210の端子に対する検証モジュール226の接続は単純化されることが理解される。
【0066】
アクティブ放電デバイス500の動作は、アクティブ放電デバイス200の動作と同じである。
【0067】
上述のもののようなアクティブ放電デバイスは、スイッチによって消費される電力を制限することを可能にすることが、よく分かりうる。
【0068】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、むしろ以下の特許請求の範囲によって定められる。当業者にとって、それに修正を加えうることは、実に明らかである。
【0069】
例えば、制御信号は、非ゼロ電圧ではなく、電圧のない状態(又はゼロ電圧)を構成しうる。
【0070】
さらに、特許請求の範囲で使用される用語は、上述した実施形態の要素に限定されるものではなく、むしろ当業者がそれらの一般的な知識に基づいて推論し得る同等の要素をすべてカバーものと理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5